説明

ポリプロピレン樹脂組成物

【課題】耐衝撃性と耐スクラッチ性、耐衝撃性および剛性と流動性を同時に満足させ、かつ、自動車用内装材としての優れた性質を有するポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレン−プロピレンブロック共重合体30〜70重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム10〜30重量%、スチレン系重合体ゴム1〜10重量%、ポリプロピレン−シリコーンゴムマスターバッチ2〜8重量%、マグネシウム化合物1〜7重量%および無機充填剤10〜40重量%の組成でなっている。エチレン−プロピレンブロック共重合体は、エチレンの含量が共重合体中3〜20重量%で、かつ溶融指数が20〜50g/10分(230℃、2.6kgf)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムは、エチレンプロピレン共重合体(EPR)、エチレンブテン−1共重合体(EBM)およびエチレンオクテン−1共重合体(EOM)の中から選ばれる1種以上が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン樹脂組成物に関し、詳細には自動車内装材用、特にインストルメントパネルなどのような自動車内装材として使用するに適合したポリプロピレン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン複合樹脂は成形性、耐衝撃性、耐薬品性に優れ、加えて低比重、低価という大きな長所を有し、自動車の内外装材に幅広く使用され、特に、安全性および機能性が要求されるインストルメントパネル素材として使用されている。しかし、今日まで開発されたポリプロピレン樹脂組成物は、剛性、耐衝撃性などの物性面で優れているが、剛性、耐衝撃性を高くするほど流動性が減少し、従って、部品の軽量化のために厚さを薄くするときに射出性が良好でなく、さらに成形品の表面外観の問題、耐スクラッチ性の面で問題があった。逆に、樹脂の流動性を高めようとすると、耐衝撃性が下がって事故時に破片が発生する危険が伴い、更に、剛性が低くなって変形およびねじれ現象が生じ、インストルメントパネル周辺部品との組立に不利であった。
【0003】
これまでインストルメントパネルなど自動車内装材として開発されたポリプロピレン系の樹脂組成物では、プライマーの処理をせずにペイント塗料で直接塗装が可能な樹脂組成物〔特許文献1参照〕、プライマーを処理せずにペイント塗料で直接塗装が可能なエアバッグ一体形インストルメントパネル用樹脂組成物〔特許文献2参照〕、耐スクラッチ性および成形性を向上させた自動車内装材用ポリプロピレン樹脂組成物〔特許文献3参照〕、その他、耐熱性、耐衝撃性、耐スクラッチ性を高めたポリプロピレン樹脂組成物〔特許文献4参照〕、軽量性、表面硬度、剛性、耐衝撃性および引張強度特性のバランスに優れ、自動車内装材に適したポリプロピレン樹脂〔特許文献5参照〕良好な塗装密着性と導電性を有し、優れた加工性と機械的強度をバランスよく有するポリプロピレン系樹脂組成物〔特許文献6参照〕、射出成形後の塗装外観が良好で、耐衝撃特性、線膨張特性、塗装鮮鋭性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物〔特許文献7参照〕などの提案があるが、耐衝撃性と耐スクラッチ性、耐衝撃性または剛性と流動物性、の一方を満たすようにすると他方が満たされなくなるとういう互いに相反する傾向があり、これらの物性を同時に満足するようなインストルメントパネル用樹脂組成が望まれていた。
【0004】
上記エアバッグ一体形インストルメントパネル用樹脂組成物〔特許文献2〕は、剛性などの物性と塗装性が優れ、エアバッグを全開時に必要な優れれた低温衝撃性を有しているが、この樹脂組成物は流動性が低いため、製品成形後に製品の外観性の問題(Weold line,Sink,Flow Mark)を有しており、耐スクラッチ性も低いため塗装を行わなければならないという問題点があった。
【0005】
従って、塗装工程を必要とせず、高剛性、耐衝撃性、高流動性、耐スクラッチ性に優れ、特にエアバッグの展開時に必要な低温衝撃性を有するポリプロピレン樹脂組成物の開発が切実である。
【0006】
【特許文献1】大韓民国特許第10−0263332号公報
【特許文献2】大韓民国特許第10−0412452号公報
【特許文献3】大韓民国特願第2005−72514号公報
【特許文献4】特開2002−146129号公報
【特許文献5】特開平11−060886号公報
【特許文献6】特開2005−264032号公報
【特許文献7】特開2007−091789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、耐衝撃性と耐スクラッチ性、耐衝撃性および剛性と流動性、というこれまで相反すると考えられていた要求を同時に満足させることができ、かつ、塗装工程を必要とせず、自動車用内装材としての優れた性質を有するポリプロピレン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、エチレン−プロピレンブロック共重合体を30〜70重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを10〜30重量%、スチレン系重合体ゴムを1〜10重量%、ポリプロピレン−シリコーンゴムマスターバッチを2〜8重量%、マグネシウム化合物を1〜7重量%および無機充填剤を10〜40重量%を主要構成成分とし、任意にその他添加剤を加えて全体が100重量%とした組成でなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、剛性、低温衝撃性、耐スクラッチ性、光沢が優れ、レーザー加工成形性に優れ、流動性も充分あり、自動車内装材として適し、特に無塗装エアバッグ一体形インストルメントパネルに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は自動車内装材として使用するのに適したポリプロピレン樹脂組成物に関し、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、スチレン系重合体ゴム、ポリプロピレン−シリコーンゴムマスターバッチ、マグネシウム化合物および無機充填剤を主要構成成分とし、任意にその他添加剤を加えてなっている。
【0011】
本発明によるポリプロピレン樹脂組成物は、射出成形したときの表面特性が優れ、さらに、レーザー加工成形性および低温衝撃強度が従来の成形品より遥かに優れ、無塗装でインストルメントパネルなど自動車内装材成形品とすることができる。
【0012】
本発明の自動車内装材用ポリプロピレン樹脂組成物は、エチレン−プロピレンブロック共重合体を30〜70重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを10〜30重量%、スチレン系重合体ゴムを1〜10重量%、ポリプロピレン−シリコーンゴムマスターバッチを2〜8重量%、マグネシウム化合物を1〜7重量%および無機充填剤を10〜40重量%を含有し、任意にその他添加剤を加えて全体で100重量%とする組成である。
【0013】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物における一成分であるエチレン−プロピレンブロック共重合体は、ポリプロピレン樹脂組成物の全体重量に対して30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%使用する。この成分が30重量%未満であると流動性が減少して成形性が低下し、70重量%を超えると剛性と衝撃物性が充分でなく、性状のバランス面で満足しないことがある。
【0014】
エチレン−プロピレンブロック共重合体において、エチレン含有量は、エチレンとプロピレンの合計量に対して3〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がさらに好ましい。エチレンが3重量%未満であるとポリプロピレン樹脂組成物の衝撃強度が低くなり、20重量%を超えると剛性が低下する。また、エチレン−プロピレンブロック共重合体の溶融指数が230℃、2.6kgfで20g/10分〜50g/10分であるのが好ましく、25〜40g/10分であるのがさらに好ましい。溶融指数が10g/10分未満であると流動性が低くなり、成形後、ウエルドライン、ヒケ、フローマークなどの成形品の表面不良による外観上の問題が発生することがあり、50g/10分を超えると剛性および衝撃強度が低下することがある。
【0015】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物における一成分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムは、ポリプロピレン樹脂組成物に弾性を付与して耐衝撃性を増加させる成分であり、ポリプロピレン樹脂組成物の全体重量に対して10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%である。10重量%未満であると耐衝撃強度が充分でなく、30重量%を超えるとポリプロピレン樹脂組成物の剛性および成形性が劣ることがある。
【0016】
エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムは、代表的には、エチレンプロピレン共重合体(EPR)、エチレンブテン−1共重合体(EBM)、エチレンオクテン−1共重合体(EOM)があり、1種単独でも、または2種以上の混合使用でもよい。これら共重合体におけるα−オレフィンの最適含有量は、αオレフィンの化学構造により異なるが、エチレンとα−オレフィン合計量に対して、エチレンプロピレン共重合体の場合には20〜80重量%、エチレンブテン−1共重合体の場合には12〜25重量%、エチレンオクテン−1共重合体の場合には15〜45重量%であるのが好ましい。
【0017】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物における一成分であるスチレン系重合体ゴムは、剛性の低下なしに衝撃強度を向上させる役目をし、ポリプロピレン樹脂組成物の全体重量に対して1〜10重量%、好ましくは1.5〜7重量%使用する。スチレン系重合体ゴムが1重量%未満では伸度が低くなり、耐衝撃強度が劣ることになり、10重量%を超えるとポリプロピレン樹脂組成物の光沢が落ち、レーザー加工性の低下、剛性の低下がみられることがある。
【0018】
スチレン系重合体ゴムは、一般式a−b−aで表される線形もしくは非線形構造を有する重合体ゴムを使用する。ここで、aは、スチレンまたはその誘導体のスチレン重合体ブロック群(以下、「aブロック群」とする)であり、bは、エチレン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンおよびこれらの誘導体から選ばれる単量体の1種よりなる単一重合体ブロック群、または2種以上の共重合体ブロック群(以下、単一重合体ブロック群と共重合体ブロック群をまとめて、「bブロック群」とする)である。aブロック群は、ポリプロピレン樹脂組成物の硬度、引張強度などの剛性を向上させ、さらに光沢を増す役割をし、bブロック群は衝撃強度を高める役割をする。
【0019】
aブロック群とbブロック群の構成比は、aブロック群とbブロック群の合計に対し、aブロック群を10〜50重量%、bブロック群を50〜90重量%とするのが好ましい。aブロック群が10重量%未満であるとポリプロピレン樹脂組成物の硬度などの剛性が劣り、50重量%を超えると衝撃強度が低下することがある。
スチレン系重合体ゴムは、不飽和結合の好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上が水添されたものが選ばれる。不飽和結合の水添が97%未満であるとポリプロピレン組成物の耐衝撃強度に劣り、剛性が低いことがある。
【0020】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物における一成分であるポリプロピレン−シリコーンゴムマスターバッチは、ポリプロピレン樹脂組成物にシリコーンゴムを加えるためにあり、シリコーンゴムにより耐衝撃性および耐スクラッチ性を向上させる効果がある。
ポリプロピレン−シリコーンゴムマスターバッチは、ポリプロピレン樹脂とシリコーンゴムの混合物であり、通常、ポリプロピレンとシリコーンゴムの重量比が1:(0.5〜1.5)で製造され、ポリプロピレン樹脂組成物の全体重量に対して2〜8重量%、好ましくは3〜6重量%を使用する。2重量%未満であるとポリプロピレン樹脂組成物の耐磨耗性および耐スクラッチ性が低くなり、8重量%を超えると分散性の問題を引き起こし全般的な物性低下となることがある。
【0021】
ポリプロピレン−シリコーンゴムマスターバッチにおける一方の成分であるポリプロピレンは、分子量35,000〜40,000、溶融指数25〜40g/10分(230℃、2.6kgf)、固有粘度1.1〜1.2dL/gであるのが好ましい。
シリコーンゴムは、分子量80,000〜100,000、比重0.95〜0.98であるのが好ましく、特に、耐衝撃性だけでなく、耐熱性、耐寒性、耐候性および耐オゾン性などにおいて優れ、産業全般に幅広く応用されているシロキサン系のシリコーンゴムが好ましい。シロキサン系シリコーンゴムでは、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部がビニル基またはフェニル基に置換されたものを単独で含有するか、またはポリジメチルシロキサンのメチル基の一部がビニル基に置換されたものとフェニル基に置換されたものを混合して含有するシリコーンゴム複合体とし、さらにオイル成分を含んでいてもよい。
【0022】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物における一成分であるマグネシウム化合物は、ポリプロピレン樹脂組成物の耐衝撃性を大きく低下することなく剛性を向上させるに寄与し、ポリプロピレン樹脂組成物の全体重量に対して1〜7重量%であり、好ましくは2〜6重量%である。1重量%未満では剛性補強効果が少なく、7重量%超えると耐衝撃性が劣ることがある。
【0023】
マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどであり、好ましくは水酸化マグネシウム30重量%と硫酸マグネシウム70重量%でなる単結晶繊維形態のマグネシウム化合物である。マグネシウム化合物は、平均粒径0.1〜1.0μm、平均長さ10〜80μmであるのが好ましく選ばれる。
【0024】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物における一成分である無機充填剤は、ポリプロピレン樹脂組成物の全体重量に対して10〜40重量%、好ましくは15〜35重量%の範囲内で使用する。10重量%未満のとき剛性および耐熱性が低下し、40重量%を超えると衝撃強度および耐スクラッチ性が低下することがある。無機充填剤は、平均粒度が0.5〜7μmであるのが分散性および物性側面で好ましい。
【0025】
無機充填剤は、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、珪灰石などであり、1種単独でもよく、2種以上の混合物でもよい。
【0026】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、さらに、本発明の意図する性能が損なわれない範囲で各種添加剤をさらに加えることができる。
添加剤は、通常使用されるものであり、酸化防止剤、中和剤、帯電防止剤などがあり、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸塩系酸化防止剤、チオジプロピオン酸系酸化防止剤などがあり、中和剤として、ステアリン酸カルシウム、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛などがある。これらの添加剤は、その他添加剤を含め、本発明の意図する性能が損なわれない範囲で各種添加剤を任意の量で、また任意の組合せで使用することができ、上記に羅列した添加剤の種類により本発明が限定されるものではない。
【0027】
以上説明した成分および含有比で製造した本発明のポリプロピレン組成物は、好ましくは溶融指数が10〜50g/10分(230℃、2.6kgf)、更に好ましくは25〜40g/10分を有する。溶融指数が10g/10分未満のとき、成形後、製品にウエルドライン、ヒケ、フローマークなどの外観上の問題が発生することがあり、50g/10分を超えると、剛性および衝撃強度が低下することがある。
【0028】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は特定なものに限定しない。例えば、各成分を通常の機械的混錬法により混合製造することが可能である。具体的に、バンバリーミキサー、シングルスクリュー圧出器、ツインスクリュー圧出器、多輪スクリュー圧出器などの一般的な溶融混錬器を利用する方法を採用することができる。更に、混錬温度は170〜240℃の範囲内で行うことが好ましい。
【0029】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物を成形するには、圧出成形、中空成形、射出成形、シート成形などが全て可能であり、特に限定されることはないが、射出成形が最も適合する。
【0030】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物から成形した自動車内装材部品は、別途の塗装加工なしに、レーザーを利用してエアバッグ部位に加工して製品とすることができる。ここで、加工後の厚さを一定にするために、特定赤外線波長(例えば、943cm−1)を使用することができるが、使用される樹脂組成物は特定赤外線波長に対する透過率が高くなければならない。透過率が低いと厚さの調節が不可能であるため、厚さが不均一になりエアバッグがうまく膨らなかったり、膨らんでも破片が生じ安全に問題が生じるためである。従って、エアバッグの展開実験を行い、破片が生じるかの可否を事前確認することが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例および比較例に依拠して更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
〔ポリプロピレン樹脂組成物の製造〕
実施例および比較例におけるポリプロピレン樹脂組成物の製造に用いた成分を表1に、各成分の使用比率を表2に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、各成分を所定の割合で配合し、ヘンセルミキサーを使用して3分間ドライブレンドをした後、190℃に設定した2軸圧出器(直径45mmφ)を使用して混錬および射出成形した。
【0035】
〔物性評価〕
実施例および比較例で製造した試片を、表3の方法で物性評価し、その結果を表8に示した。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
【表6】

【0040】
【表7】

【0041】
【表8】

【0042】
この結果から、実施例1〜4のポリプロピレン樹脂組成物は、流動性および屈曲弾性率が優れ、表面状態が良好であり、耐スクラッチ性が高く、レーザー加工性がよく、優れたエアバッグ展開衝撃強度を保有する成形品を得ることができることが分かる。
【0043】
反面、比較例1のように溶融指数が低いエチレン−プロピレンブロック共重合体を使用すると、樹脂のフロー性が低下し、成形製品表面にウエルドライン、ヒケ、フローマークなどが発生し、無塗装の適用が困難となる。比較例2のように、スチレン系重合体ゴム成分を過度に使用すると、物性の低下およびレーザー加工成形性が難しく、その結果エアバッグ展開時に衝撃強度が不良となる。比較例3のように、マグネシウム化合物を使用しないと、成形製品の屈曲弾性率が低下して後変形の発生が憂慮され、耐スクラッチ性が低下して外観品質が憂慮される。更に、比較例4のように、マグネシウム化合物を使用せずに別の無機充填剤の含量を増加させる場合や、比較例5、6のように、マグネシウム化合物が過処理されたり、粒径が大きい無機充填剤製品を使用する場合は衝撃物性の低下によりエアバッグ展開時に破片が発生し、安全上の問題を引き起こす。
【0044】
実験例1〜4とは大きく異なる含有比を有する実験例5〜6の場合にも、本発明の範囲内であれば、自動車内装材用ポリプロピレン樹脂組成物として優れた物性などを有することを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によるポリプロピレン樹脂組成物は、耐衝撃性と高剛性であり、かつ流動性が優れており、レーザー加工成形性および外観品質が優れ、製品の成形が容易である上に、無塗装で製品とすることができる。これは、エアバッグ一体形インストルメントパネルを含む自動車内装部品などの分野に広範囲に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−プロピレンブロック共重合体30〜70重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム10〜30重量%、スチレン系重合体ゴム1〜10重量%、ポリプロピレン−シリコーンゴムマスターバッチ2〜8重量%、マグネシウム化合物1〜7重量%および無機充填剤10〜40重量%を含有し、全体が100重量%とした組成でなることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン−プロピレンブロック共重合体は、エチレンとプロピレンの合計量に対して、エチレンが3〜20重量%であり、かつ、溶融指数が20〜50g/10分(230℃、2.6kgf)であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムは、エチレンプロピレン共重合体(EPR)、エチレンブテン−1共重合体(EBM)およびエチレンオクテン−1共重合体(EOM)の中から選ばれる1種、または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムは、エチレンとα−オレフィンの合計量に対して、α−オレフィンが、エチレンプロピレン共重合体では20〜80重量%、エチレンブテン−1共重合体では12〜25重量%、エチレンオクテン−1共重合体では15〜45重量%であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
前記スチレン系重合体ゴムは、線形または非線形構造であり、不飽和結合の97〜99.8%以上が水添されていることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
前記スチレン系重合体ゴムは、スチレン重合体ブロック群10〜50重量%と、エチレン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンおよびプロピレンから選ばれる1種の単一重合体ブロック群、またはエチレン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンおよびプロピレンから選ばれる2種以上の共重合体ブロック群50〜90重量%とからなることを特徴とする請求項4記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリプロピレン−シリコーンゴムマスターバッチは、ポリプロピレン樹脂とシリコーンゴムが重量比で1:(0.5〜1.5)で構成されていることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリプロピレン樹脂は、平均分子量35,000〜40,000、溶融指数25〜40g/10分(230℃、2.6kgf)、固有粘度は1.1〜1.2dL/gであり、前記シリコーンゴムは、平均分子量が80,000〜100,000、比重が0.95〜0.98であるシロキサン系シリコーンゴムであることを特徴とする請求項7記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項9】
前記シリコーンゴムは、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部がビニル基および/またはフェニル基で置換されたシリコーンゴム複合体であることを特徴とする請求項8記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項10】
前記マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム30重量%と硫酸マグネシウム70重量%で構成され、平均直径0.1〜1.0μm、平均長さ10〜80μmの単結晶繊維状であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機充填剤は、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよび珪灰石から選ばれる1種以上であり、平均粒度が0.5〜7μmであることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項12】
フェノール系酸化防止剤、亜リン酸塩系酸化防止剤およびチオジプロピオン酸系酸化防止剤から選ばれる1種以上の酸化防止剤、ステアリン酸カルシウム、酸化亜鉛およびステアリン酸亜鉛から選ばれる1種以上の中和剤、および帯電防止剤から選ばれる1種以上がさらに加えられることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリプロピレン樹脂組成物は、溶融指数が10〜50g/10分(230℃、2.6kgf)であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項14】
前記ポリプロピレン樹脂組成物は、射出成形されて成形品とすることを特徴とする請求項1項記載のポリプロピレン樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−127047(P2009−127047A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334199(P2007−334199)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】