説明

ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子

【課題】 アンダーウォーターカット方式により製造したポリプロピレン系樹脂粒子より成るポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形する際、低い成形加熱蒸気圧力で75%以上の融着率を有する型内発泡成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供すること。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂組成物を押出機で溶融混錬し、押出機の先端に装着されたダイノズルより水中に押し出し、該水中にて回転するカッター刃により切断して得られるポリプロピレン系樹脂粒子、及び、水、分散剤、発泡剤を耐圧容器内に仕込み、該ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点以上の温度に加熱し、加圧下で該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸したのち、前記耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによって得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、表面融解温度が130℃以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝包材、通箱、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材、断熱材などに用いられるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴をもつ。また同様の型内発泡成形体と比較しても、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体と比較すると、耐薬品性、耐熱性、圧縮後の歪回復率に優れており、またポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体と比較すると、寸法精度、耐熱性、圧縮強度が優れている。これらの特徴により、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材など様々な用途に用いられている。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法としては、原料となるポリプロピレン系樹脂を種々添加剤と共に押出機にて溶融混錬し、ストランドカット方式、アンダーウォーターカット方式、ホットカット方式等により任意の粒の大きさのポリプロピレン系樹脂粒子を得、該ポリプロピレン系樹脂粒子を水、分散剤、発泡剤などと共に耐圧容器内に仕込み、該ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点以上の温度に加熱し、加圧下で該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸したのち、前記耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによって得られることが知られている。
【0004】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得るための該ポリプロピレン系樹脂粒子を製造する方法としては、ストランドカット方式が広く用いられている。ストランドカット方式では、比較的安価な設備で均一な円柱形状の樹脂粒子を得ることができるが、型内成形での充填性向上のために粒重量が小さいものが要求されることが多く、粒重量が比較的小さいポリプロピレン系樹脂粒子を得ようとする場合、ミスカットの発生、ストランド切れの発生が多くなり生産性が悪くなる傾向がある。又、ペレタイザーへストランドを導入する生産スタートの際のハンドリングの問題からストランド本数を増すには限界があるため比較的生産性が低い等の課題があった。また、ポリプロピレン系樹脂ストランドの冷却工程から残留ひずみが大きく、予備発泡粒子製造時に樹脂粒子の押出方向に大きな収縮が起こり、予備発泡粒子の形状が大きく変化する場合がある。この形状変形を正確に把握して、厳密に管理することが要求される。
【0005】
一方、アンダーウォーターカット方式では、ストランドを操作する必要がない為、造粒のスタートが容易であり、ミスカットの発生等が少なく均質なポリプロピレン系樹脂粒子を生産性良く得ることができることが知られている。充填性などが要求される型内成形体用に予備発泡粒子を製造する場合、より小さい粒である粒重量2.0mg以下の樹脂粒子を生産することになるが、前記のとおり、ストランドカット方式では、ミスカットや操作性の低下から生産性が著しく低下し、アンダーウォーターカット方式の易造粒性が生産性の点で優位となる。しかしながら、この方式で製造したポリプロピレン系樹脂粒子を用いたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、広く用いられているストランドカット方式によって製造されたポリプロピレン系樹脂粒子によるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、型内成形に用いると、成形時の融着性が著しく低下する。原因は明らかではないが、この品質課題のために、アンダーウォーターカット方式は型内成形用ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造に用いられていないのが現状である。
【0006】
特許文献1には、アンダーウォーターカット方式のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子用ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法で、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の型内成形時の融着性が不良となりやすい課題が記述されており、その対策として溶融樹脂がダイノズルから押し出され、回転するカッターにより切断されるウォーターボックス内の循環水に難水溶性無機物および界面活性剤を添加する技術が開示されている。しかしながら、水質汚染が発生するという問題がある。
【0007】
特許文献2には、熱可塑性樹脂を多量の循環水を用いたアンダーウォーターカット方式で造粒する型内発泡成形用予備発泡粒子の製造に供する良好な形状の微細粒子の製造方法が開示されている。製造したポリプロピレン系樹脂粒子により製造された予備発泡粒子で型内成形を行う場合、高生産性で製造できないストランドカット方式で製造したポリプロピレン系樹脂粒子を用いるのと比較して、樹脂粒子および予備発泡粒子自体の形状は良化するが、型内成形時の融着性が不良となりやすく、そのため成形加熱蒸気圧を高くする必要があることを言及しておらず、相対的に低品質なものしか生産できない。
【0008】
特許文献3には、優れた緩衝性能を持ち、かつ耐衝撃性も大きく、さらに耐熱性の優れたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を提供することを目的として、特定の曲げ剛性を有するα−オレフィン・プロピレン共重合体55〜95重量%と、直鎖状ポリエチレン樹脂5〜45重量%との混合物を基材樹脂とする予備発泡粒子が開示されている。ポリプロピレン系樹脂がポリエチレン系樹脂を含有した場合、成形体収縮が大きくなる場合があり、単純に直鎖状ポリエチレン樹脂を含有するのみでは、成形体製造で不具合が生じる場合がある。
【特許文献1】特開平10−119037号公報
【特許文献2】特開平1−234212号公報
【特許文献3】特開平4−253741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者が、ポリプロピレン系樹脂をアンダーウォーターカット方式でポリプロピレン系樹脂粒子を作製し、該ポリプロピレン系樹脂粒子を水、分散剤、発泡剤を耐圧容器内に仕込み、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点以上の温度まで加熱し、加圧下で該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸したのち、前記耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによって得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて型内発泡成形体を得ようとすると、ストランドカット方式より製造したポリプロピレン系樹脂粒子から得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いた型内発泡成形体と比較して、型内発泡成形時に同等の予備発泡粒子同士の融着性の型内発泡成形体を得るには、高い成形加熱蒸気圧力が必要であるという問題を有しており、さらに、実際に得られる型内発泡成形体の引張強度および引張伸びは低下した型内発泡成形体しか得られないという問題が確認された。
【0010】
このような課題に鑑み、本発明の目的は、アンダーウォーターカット方式により良好な生産性で製造したポリプロピレン系樹脂粒子より成るポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形する際において、低成形圧で充分な融着性を得ることができ、得られた型内発泡成形体の引張強度および引張伸びが得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記実情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見が得られた。
即ち、ポリプロピレン系樹脂組成物を押出機にて溶融混錬し、押出機の先端に装着されたダイノズルより水中に押し出し、該水中にて回転するカッター刃により切断して得られる、所謂アンダーウォーターカット方式によって製造されるポリプロピレン系樹脂粒子を水、分散剤、発泡剤等と耐圧容器内に仕込み、該ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点以上の温度に加熱し、加圧下で該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸したのち、前記耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによって得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、表面融解温度が130℃以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は低圧成形でも融着性に優れ、得られた型内発泡成形体の引張強度および引張伸びが良好であることを見いだした。
【0012】
すなわち、本発明の第1は、ポリプロピレン系樹脂組成物を押出機にて溶融混錬し、押出機の先端に装着されたダイノズルより水中に押し出し、該水中にて回転するカッター刃により切断して得られるポリプロピレン系樹脂粒子、及び、水、分散剤、発泡剤を耐圧容器内に仕込み、該ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点以上の温度に加熱し、加圧下で該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸したのち、前記耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによって得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、表面融解温度が130℃以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0013】
好ましい態様としては、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の粒重量が0.5〜2.0mg/粒である前記記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0014】
本発明の第2は、前記記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形してなる型内発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アンダーウォーターカット方式で得られるポリプロピレン系樹脂粒子を用いたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、表面融解温度が130℃以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、良好な融着性を得るための、成形時に必要な成形加熱蒸気圧力を低下させることができる。また、得られた型内発泡成形体の引張強度および引張伸びが良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明において用いるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマー単位が50重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上からなる重合体であり、チーグラー型塩化チタン系触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒等で重合された、立体規則性の高いものが好ましい。具体例としては、例えば、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、無水マレイン酸−プロピレンランダム共重合体、無水マレイン酸−プロピレンブロック共重合体、プロピレン−無水マレイン酸グラフト共重合体等が挙げられ、それぞれ単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。特に、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体が好適に使用し得る。また、これらのポリプロピレン系樹脂は無架橋のものが好ましいが、架橋したものも使用できる。
【0017】
本発明に使用するポリプロピレン系樹脂は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトインデックス(以下、MI)が0.1〜15g/10分であることが好ましく、更に好ましくは2〜12g/10分である。MIが、0.1g/10分未満では、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造する際の発泡力が低く、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を効率的に得るのが難しくなる場合がある。またMIが15g/10分を越えるとポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造する際にセルが破泡する場合がある。
【0018】
本発明に使用するポリプロピレン系樹脂は、機械的強度、耐熱性に優れた型内発泡成形体を得るために、融点は、好ましくは130〜168℃、更に好ましくは135〜160℃、特に好ましくは135〜155℃である。融点が当該範囲内であると、成形性と機械的強度、耐熱性のバランスが取り易い傾向が強い。
【0019】
尚、本発明で、前記ポリプロピレン系樹脂の融点(以下、「Tm」という場合がある。)とは、示差走査熱量計によって、1〜10mgのポリプロピレン系樹脂を、40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線における吸熱曲線のピーク温度をいう。
【0020】
本発明では、ポリエチレン系組成物をポリプロピレン系樹脂に混合して本発明のポリプロピレン系樹脂組成物として使用することができる。ポリエチレン系組成物を混合することで、得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面融解温度が130℃以下としやすい傾向があり、換言すれば、本発明のポリプロピレン系樹脂は、ポリエチレン系組成物を混合しない場合よりも弾性率や機械強度が低下する場合があるが、成形時の融着を良化する効果を発現しやすくなる。
【0021】
具体的な混合できるポリエチレン系組成物の種類としては、たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、などのエチレン単独重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらは単独または2種類以上混合して用いることができる。これらの樹脂の中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)がより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂におけるポリエチレン系組成物の含有量としては、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して1重量部以上20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以上10重量部以下である。ポリエチレン系組成物の含有量が1重量部未満であると低蒸気圧力での型内成形で充分な融着性を得る事が難しい場合がある。また20重量部を超えると得られる型発泡成形体はヒケが発生し易くなり、対金型収縮率が大きくなる傾向がある。
【0022】
混合できるポリエチレン系組成物の140℃での溶融粘度は50mPa・s以上1000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは、50mPa・s以上500mPa・s以下が好ましい。アンダーウォーターカット方式で2.0mg/粒の微小粒子を造粒する場合、上記範囲のポリエチレン系組成物である場合、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子表面にポリエチレン系組成物が多く存在しやすく、なおかつ基材となるポリプロピレン系樹脂の剛性を低下させにくい。ポリエチレン系組成物の溶融粘度が50mPa・s未満である場合、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子表面やポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子型内発泡成形体表面から溶出しやすくなり、緩衝包材成形体などの場合、内包物に付着・汚染する場合がある。ポリエチレン系組成物の溶融粘度が1000mPa・sを超える場合、成形時の加熱による二次発泡性を低下させたり、破泡しやすくなるなどの不良なポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子、型内発泡成形体となりやすい。また、1000mPa・s超える場合、ポリエチレン組成物とポリプロピレン組成物が相分離しやすく、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が破泡しやすくなる他、得られる型内発泡成形体の収縮率が大きくなりやすい。本発明においてポリエチレン系組成物の溶融粘度は、ポリエチレン系組成物を加熱溶融し、140℃の溶融粘度を、ブルックフィールド粘度計により測定した値を言う。
【0023】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造の際、必要により種々の添加剤を、ポリプロピレン系樹脂組成物の特性を損なわない範囲内で添加することができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填材、核剤、着色剤等があげられる。
【0024】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂組成物は押出機にて溶融混練させる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、単軸もしくは二軸押出機2台を連結したタンデム押出機等が挙げられ、なかでも二軸押出機を使用して行うことが好ましい。さらに押出機から出たポリプロピレン系樹脂組成物はギヤポンプなどの設備を用いて吐出圧力を安定化させることが好ましい。ギヤポンプを通過した後の樹脂温度は好ましくは200〜280℃である。200℃未満であるとノズルの目詰まりを生じ易くなり、安定生産できない場合があり、280℃を越えるとポリプロピレン系樹脂の熱劣化が起こり、物性が低下する場合がある。
【0025】
本発明において、押出機の先端に装着されたダイノズル径は0.2〜1.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.7mmである。ダイノズル径が0.2mm未満であるとノズルの目詰まりを生じ易くなり、生産性が低下する場合がある。1.0mmを超えると、このようなダイノズル径で粒重量2.0mg/粒以下のポリプロピレン系樹脂粒子を作製し、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子とした場合、形状が扁平になりやすく、型内発泡成形時の充填性が悪化する場合がある。本発明において、ポリプロピレン系樹脂組成物は、ダイノズルから押し出され、ウォーターボックスにてカッターによって切断されるが、ウォーターボックスに導入される循環水温度は30〜100℃であることが好ましい。循環水温度が30℃未満ではノズルの目詰まりが生じ易くなり、生産性が低下する場合がある。100℃を超えるとポリプロピレン系樹脂粒子同士の結粒が生じ易くなる。循環水温度80℃〜100℃がより好ましく、さらに好ましくは90〜100℃である。当該範囲内の温度であると、前記ポリエチレン系組成物を含まなくとも、充分な融着性を得やすい傾向がある。また、そのウォーターボックス内の循環水圧は0.1〜2.0MPaであることが好ましい。循環水圧が0.1MPa未満の場合、ダイノズルから吐出されるポリプロピレン系樹脂組成物を切断する際に、回転するカッターの刃近傍で真空状態となり水蒸気泡を発生しやすく、互着や粒形状のバラツキを発生しやすくなる。水圧が2.0MPaを超えると、設備が大がかりになるため、簡便性を損なう場合がある。循環水にポリプロピレン系樹脂粒子同士の相互に融着することを防ぐための難水溶性無機化合物などの分散剤や界面活性剤を添加しても良い。また、カッター刃の周速度は10m/sec以上であることが好ましく、より好ましくは15m/sec以上である。10m/sec未満の場合、樹脂粒子形状が不定形となりやすく、また、樹脂粒子同士が相互に融着する場合もある。
【0026】
一般的に、アンダーウォーターカット方式で作製されたポリプロピレン系樹脂粒子は、ストランドカット方式で作製されたポリプロピレン系樹脂粒子と比べて、粒子の形状が球形に近い。ストランドカット方式で作製されたポリプロピレン系樹脂粒子は円柱形状であり、該ポリプロピレン系樹脂粒子からなるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子も、円柱形状に近い。一方、アンダーウォーターカット方式で作製されたポリプロピレン系樹脂粒子は球形に近く、該ポリプロピレン系樹脂粒子からなるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子も球形に近いという特徴を有しているため、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法をポリプロピレン系樹脂粒子や、該ポリプロピレン系樹脂粒子から得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子から判別することは可能である。
【0027】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、上記のポリプロピレン系樹脂粒子と、水、分散剤および発泡剤を含んでなる分散物を耐圧容器内に仕込み、該ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点以上の温度まで加熱し、加圧下で該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸したのち、前記ポリプロピレン系樹脂粒子と水との混合物を前記耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出して前記ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させることで得られる。具体的には、耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子、水、発泡剤、分散剤および分散助剤を含む分散物を仕込み、攪拌しながら昇温して該ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点以上の温度(以下、発泡温度という場合がある。)まで加熱し、加圧下で前記ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させたのち、必要に応じて発泡剤を追加添加して、耐圧容器内を一定圧力(以下、発泡圧力という場合がある。)に保持した後、耐圧容器下部から内容物を、該耐圧容器内圧より低圧雰囲気下に放出する方法が例示される。使用する耐圧容器には特に限定はなく、予備発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器が挙げられる。
【0028】
発泡剤としては、公知のものでよく、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素およびそれらの混合物;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス、水などが挙げられる。前記発泡剤の使用量は、使用するポリプロピレン系樹脂の種類、基材樹脂の組成、発泡剤の種類、目的とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率等により異なり、一概には規定できないが、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して、概ね2〜60重量部であることが好ましい。また、発泡剤として水を使用する場合、分散媒として使用している水を利用できる。
【0029】
分散剤としては、例えば、塩基性第三リン酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン等の難水溶性無機化合物を使用することが好ましい。また、分散助剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、直鎖アルキルフィンスルホン酸ソーダ等のアニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。これら分散剤及び分散助剤の使用量は、通常、水100重量部に対して、分散剤0.1〜3重量部、分散助剤0.0001〜0.1重量部であることが好ましい。
【0030】
また、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に付着する分散剤量を低減する目的で、ポリプロピレン系樹脂を分散させている水に酸を混合して、分散物を酸性にする場合もある。
【0031】
前記のようにして耐圧容器内に調製されたポリプロピレン系樹脂粒子を含んでなる分散物は、攪拌下、所定の発泡温度まで昇温され、一定時間、通常5〜180分間、好ましくは10〜60分間、その温度で保持されるとともに、耐圧容器内の圧力が上昇し、発泡剤がポリプロピレン系樹脂粒子に含浸される。この後、所定の発泡圧力になるまで発泡剤が追加供給され、一定時間、通常5〜180分間、好ましくは10〜60分間、そのままで保持される。こうして発泡温度、発泡圧力で保持されたポリプロピレン系樹脂粒子を含んでなる分散物を、耐圧容器下部に設けられたバルブを開放して低圧雰囲気下、通常は大気圧下に放出することにより、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が得られる。
【0032】
前記分散物を低圧雰囲気に放出する際、流量調整、倍率バラツキ低減などの目的で直径2〜10mmの開口オリフィスを通して放出することもできる。また、発泡倍率を高くする目的で、前記低圧雰囲気を飽和水蒸気で満たす場合もある。
【0033】
発泡温度は、用いるポリプロピレン系樹脂の融点[Tm(℃)]、発泡剤の種類等により異なり、一概には規定できないが、概ね(Tm−30)〜(Tm+10)℃の範囲から決定される。また、発泡圧力は、用いるポリプロピレン系樹脂の種類、発泡剤の種類、所望のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率等によって異なり、一概には規定できないが、概ね1〜8MPa(ゲージ圧)の範囲から決定される。
【0034】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、表面融解温度が130℃以下である。好ましくは128℃以下、より好ましくは126℃以下である。ここで表面融解温度の測定方法を説明する。ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子にサーマルプローブを接触させ先端を表層より深さ10nm未満の位置に配置させた状態で、加熱し、樹脂融解と共にプローブの高さ方向の変位を検知する。検知した変位曲線から表面融解温度を測定する。たとえば、(株)日本サーマルコンサルティング社製nano−TA2(サーマルプローブ先端径φ30nm)を用い、任意のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子表面を40℃から5℃/secで200℃まで加熱する。その際の温度−変位スペクトルの融解による高さ位置の変曲点を2本の接線の交点から算出し、その変曲点温度を30μm以上離れた位置で5点測定し、算出される変曲点温度を平均化し、本発明の表面融解温度とする。示差走査熱量測定(DSC)などの一般的な熱分析装置では試料全体を加熱することで、平均融解挙動の熱量を分析するのに対し、本発明の表面融解温度を測定するサーマルプローブは、表面という極めて局所的な融解挙動を測定することができる。したがって、本発明の表面融解温度は、DSCで測定される融解温度ピークとは異なったものとなることが多い。また、本発明の表面融解温度は型内成形時の水蒸気加熱によってポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子同士の融着を得るための融解温度と強く相関しており、一般的に0.20〜0.30MPaの水蒸気加熱によって融着を得るが、特に0.20〜0.24MPaの比較的低圧での加熱によりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子同士の充分な融着性を確保するために表面融解温度は130℃以下であることが必要である。
【0035】
表面融解温度を130℃以下とするための方法は、一概には既定し難いが、たとえば、ポリプロピレン系組成物よりも融解温度が低く、前記の溶融粘度特性を有するポリエチレン系組成物などを含有させ基材樹脂の表面融解温度を低下させることができる。また、アンダーウォーターカット方式で造粒する際の循環水温度を80℃〜100℃とすることで前記のように粒子表面の受ける結晶化履歴を制御して、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子表面の結晶状態もしくは結晶化度を低下させ、表面融解温度を低下させることが出来る。これらの方法や、樹脂温度、押出速度等の諸条件を適宜調整することで、表面融解温度を130℃以下とすることが出来る。
【0036】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、示差走査熱量測定(DSC)において、試料4〜10mgを40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線において、2つまたは3つの融解ピークを示し、この融解ピークが示す2つまたは3つの融点があることが好ましい。DSC曲線においてあらわれる2つ又は3つの融解ピークにおいて、DSC曲線の最も高温側ピークと、高温側ピークと隣のピークの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線で囲まれる熱量である高温側融解ピーク熱量Qh、高温側融解ピークより低温側に現れる1つ又は2つの融解ピークと、高温側ピークと隣のピークの間の極大点からの融解開始ベースラインへの接線で囲まれる熱量である低温側の融解ピーク熱量Qlから算出した、最も高温側の融解ピークの比率Qh/(Ql+Qh)×100をDSCピーク比(%)と呼ぶ。DSCピーク比が、10%以上50%以下となるように調整することが好ましく、さらに15%以上45%以下となるように調整することがより好ましい。DSCピーク比が10%未満である場合、成形体の収縮が発生しやすく。DSCピーク比が50%以上である場合、本発明の効果である低成形圧力での融着性が得られ難い。
【0037】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の嵩密度は10〜200g/Lであることが好ましく、より好ましくは15〜150g/Lである。尚、ここでの嵩密度とは一定容積の容器に一定の高さから、該容器中にポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を自由落下させ、該容器が、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子で完全に充填されたときの全重量(X)から容器の重量(Y)を差し引いた値(X−Y)を、該容器の容積(V)で割った値(X−Y/V)のことである。
【0038】
以上のようにして得たポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、公知の成形方法により、型内発泡成形体にすることができる。例えば、A)予備発泡粒子を金型に充填した後、予備発泡粒子の体積を15〜50%減ずるように圧縮し、水蒸気で加熱融着させる方法、B)予備発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、予備発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法、C)予備発泡粒子を無機ガスで加圧処理して予備発泡粒子内に無機ガスを含浸させ、予備発泡粒子内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、D)特に前処理することなく、予備発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法などの方法を利用することができる。
【0039】
前記無機ガスとしては、空気、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどが使用できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合使用してもよい。これらの中でも、汎用性の高い空気、窒素が好ましい。
【実施例】
【0040】
つぎに、本発明を実施例及び比較例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
また実施例及び比較例における評価は下記の方法で行った。
【0042】
〔ポリエチレン系組成物の溶融粘度の測定〕
ポリエチレン系組成物を加熱溶融し、140℃の溶融粘度を、ブルックフィールド粘度計により測定した。
【0043】
〔樹脂粒子粒重量〕
無作為に100粒を選定して総重量を測定し、100で除した値を樹脂粒子粒重量とした。
【0044】
〔予備発泡粒子の表面融解温度〕
(株)日本サーマルコンサルティング社製nano−TA2(サーマルプローブ先端径φ30nm)を用い、無作為に選定した予備発泡粒子表面を40℃から5℃/secで200℃まで加熱する。その際の温度−変位スペクトルの融解による高さ位置の変曲点を2本の接線の交点から算出し、その変曲点温度を30μm以上離れた位置で5点測定し、算出される変曲点温度を平均化し、本発明の表面融解温度とした。
【0045】
〔予備発泡粒子の嵩密度〕
一定容積(10.74L)の容器に一定の高さ(30cm)から、該容器中に予備発泡粒子を自由落下させ、該容器が、予備発泡粒子で完全に充填されたときの全重量から容器の重量を差し引いた値を、該容器の容積で割った値をポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の嵩密度とした。
【0046】
〔DSCピーク比の測定〕
示差走査熱量計法において、予備発泡粒子2〜5mgを40℃から220℃まで10℃/分で昇温してDSC曲線を得、当該DSC曲線において、DSC曲線の最も高温側ピークと、高温側ピークと隣のピークの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線で囲まれる熱量である高温側融解ピーク熱量Qh、高温側融解ピークより低温側に現れる1つ又は2つの融解ピークと、高温側ピークと隣のピークの間の極大点からの融解開始ベースラインへの接線で囲まれる熱量である低温側の融解ピーク熱量Qlを求め、Qh/(Ql+Qh)×100から算出した。
【0047】
〔型内発泡成形体の融着率〕
型内発泡成形体の表面にカッターで入れた約5mmの深さのクラックに沿って型内発泡成形体を割り、破断面を観察して、予備発泡粒子の全個数に対する破壊粒子の割合を融着率として求めた。本実施例においては、縦400mm×横300mm×厚み40mmの型内発泡成形体を作製し、融着率を評価した。
【0048】
〔最低成形加熱蒸気圧力〕
DAISEN株式会社製KD−345を用い、ブロック金型にポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を充填した後、金型内の体積を27%減ずるように圧縮し、まず0.1MPaの水蒸気で金型内の空気を追い出し、その後0.20〜0.40MPa(ゲージ圧)の任意の圧力の加熱蒸気を用いて10秒間加熱成形させた。えられた型内発泡成形体の融着率が75%以上となった最低の圧力を最低成形加熱蒸気圧力とした。本実施例においては、縦400mm×横300mm×厚み40mmの型内発泡成形体を作製し、最低成形加熱蒸気圧力を評価した。
【0049】
〔型内発泡成形体の対金型収縮率〕
縦400mm×横300mm×厚み40mmのブロック金型内で発泡成型した直後の直方体形状である型内発泡成形体を75℃で15時間乾燥させた後、23±2℃で24時間放置した後、縦、横、厚みの寸法測定し、縦400mm×横300mm×厚み40mmのブロック金型の寸法に対する、収縮率を求め、縦、横、厚みそれぞれの収縮率を平均化した値を対金型収縮率として求めた。
【0050】
(実施例1)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(Tm:146℃、MI:6g/10分、コモノマー量:3重量%)90重量部とポリエチレン系組成物(エチレン−ブテン共重合体、溶融粘度265mPa・s)10重量部、造核剤としてタルク0.01重量部を含んでなる組成物を一時間あたり150kg、φ40mm二軸押出機に投入し、溶融混練の後、押出機の先端に装着したダイノズル径0.6mmのダイ(穴数56)より、一時間あたり25mの速度で循環させる60℃、0.2MPa循環水(難水溶性無機化合物からなる分散剤や界面活性剤を添加していない水道水を使用)中に押し出し、回転するカッター刃(10枚刃)により切断し、粒重量1.2mg/粒のポリプロピレン系樹脂粒子を製造した。尚、押出機に取り付けられた樹脂温度計の指示は232℃であった。続いて、得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部、水150重量部、塩基性第三リン酸カルシウム1.21重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.03重量部を耐圧オートクレーブ中に仕込み、攪拌下、発泡剤としてイソブタンを11部添加した後、オートクレーブ内容物を昇温し、142.9℃の発泡温度まで加熱した。その後、イソブタンを追加圧入して1.65MPa(ゲージ圧)の発泡圧力まで昇圧し、該発泡温度、発泡圧力で30分間保持した後、オートクレーブ下部のバルブを開き、直径4.0mmの開口オリフィスを通して、オートクレーブ内容物を大気圧下に放出した。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面融解温度は、123℃、嵩密度が35g/L、DSCピーク比が26%であった。
【0051】
得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を縦400mm×横300mm×厚み60mmのブロック金型に充填した後、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の体積を27%減ずるように圧縮し、次いで0.20〜0.40MPa(ゲージ圧)の成形加熱蒸気圧力で加熱、融着させて型内発泡成形体を得た。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子および型内発泡成形体についての評価結果を、表1に示す。
【0052】
【表1】

(実施例2)
ポリエチレン系樹脂を添加せず、エチレン−プロピレンランダム共重合体(Tm:146℃、MI:6g/10min,コモノマー量:3重量%)100重量部と造核剤としてタルク0.01重量部を含んでなる組成物を押出機に投入し、樹脂温度250℃の溶融樹脂を96℃、0.4MPaの循環水中に押し出した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂粒子を製造し、該ポリプロピレン系樹脂粒子を、オートクレーブ内容物を142.2℃の発泡温度まで加熱し、イソブタンの追加圧入で1.80MPa(ゲージ圧)の発泡圧力まで昇圧した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子および型内発泡成形体を得た。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面融解温度は126℃、嵩密度が35g/L、DSCピーク比が24%であった。このようにして得られたポリプロピレン系発泡樹脂粒子および型内発泡成形体についての評価結果を、表1に示す。
【0053】
(実施例3)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(Tm:146℃、MI:6g/10min,コモノマー量:3重量%)95重量部と溶融粘度60mPa・sのエチレン単独共重合体5重量部を用い、表1記載の条件以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂粒子を製造し、該ポリプロピレン系樹脂粒子よりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得、型内発泡成形体を得た。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面融解温度は128℃、嵩密度が35g/L、DSC比が23%であった。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡樹脂粒子および型内発泡成形体についての評価結果を、表1に示す。
【0054】
(比較例1)
溶融樹脂を60℃、0.2MPaの循環水中に押し出した以外は、実施例2と同様にしてポリプロピレン系樹脂粒子を製造し、該ポリプロピレン系樹脂粒子よりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得、型内発泡成形体を得た。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面融解温度は145℃、嵩密度が35g/L、DSC比が22%であった。このようにして得られたポリプロピレン系発泡樹脂粒子および型内発泡成形体についての評価結果を、表1に示す。
【0055】
(比較例2)
ポリエチレン系樹脂を、溶融粘度10000mPa・sのエチレン単独重合体10重量部にし、表1記載の条件以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂粒子を製造し、該ポリプロピレン系樹脂粒子よりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得、型内発泡成形体を得た。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、嵩密度が31g/L、DSC比が24%であった。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡樹脂粒子および型内発泡成形体についての評価結果を、表1に示す。
【0056】
(比較例3)
ポリエチレン系樹脂の添加量を0.5重量部にし、表1記載の条件以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂粒子を製造し、該ポリプロピレン系樹脂粒子よりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得、型内発泡成形体を得た。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面融解温度は134℃、嵩密度が35g/L、DSC比が24%であった。このようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡樹脂粒子および型内発泡成形体についての評価結果を、表1に示す。
【0057】
表1に示すように、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面融解温度が130℃以下の場合、75%以上の融着率を持つ型内発泡成形体の成形時に必要な加熱蒸気圧力を0.24MPa以下という低成形圧で得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面融解温度を算出するための温度−変位スペクトルの一例である。横軸は温度、縦軸はプローブ位置(高さ)を表しており、変曲点を挟む2つの接線の交点から算出される変曲点温度(Tmst)を算出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂組成物を押出機にて溶融混錬し、押出機の先端に装着されたダイノズルより水中に押し出し、該水中にて回転するカッター刃により切断して得られるポリプロピレン系樹脂粒子、及び、水、分散剤、発泡剤を耐圧容器内に仕込み、該ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点以上の温度に加熱し、加圧下で該ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸したのち、前記耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによって得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、表面融解温度が130℃以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項2】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の粒重量が0.5〜2.0mg/粒である請求項2記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形してなる型内発泡成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−221258(P2009−221258A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64697(P2008−64697)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】