説明

ポリプロピレン系樹脂発泡粒子

【課題】 ビーズ法型内発泡成形法において、型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近へのポリプロピレン系樹脂発泡粒子の充填が充填機取り付け部位付近以外の周辺部位と同等に均一にでき、型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近の融着不良や表面伸び不良等の欠陥を発生させがたい型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供すること。
【解決手段】 安息角が27度以下である、好ましくは嵩密度が10.0g/L以上80.0g/L以下である型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーズ法型内発泡成形における表面性と融着性を改善するポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関する。特に型内発泡成形用金型に取り付けられた充填機部分に相当する部位の表面性、融着性を改善するポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型内に充填し、水蒸気で加熱成形して得られる型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴を持つ。この型内発泡成形体はポリスチレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体に比べて、耐薬品性、耐熱性、圧縮後の歪回復率に優れている。また、ポリエチレン系樹脂発泡粒子を用いる型内発泡成形体と比べて、寸法精度、耐熱性、圧縮強度が優れている。これらの特徴により、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、断熱材、緩衝包装材、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材など様々な用途に用いられている。
【0003】
しかして、このポリプロピレン系樹脂発泡粒子の成形方法として用いられるビーズ法型内発泡成形法とは、従来から発泡スチロール、発泡ポリプロピレン等で広く用いられてきた成形方法であって、閉鎖出来るが密閉出来ない金型の成形空間内に予備発泡させた発泡粒子(ビーズ)を充填機で充填した後、成形空間内に蒸気を供給して、ビーズを加熱発泡融着させ、冷却し金型から取り出し、所望形状の発泡成形体を得る方法である。これによって、所望する形状の成形体を容易に得られるが、用いる発泡ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の性状によっては、金型に取り付けられている充填機の周辺部分が、部分的に融着不良や表面伸び不良の欠陥を有する型内発泡成形体となる場合がある。
【0004】
図1に示すように、用いる充填機1は、空気の流れに発泡粒子を同伴させて金型2内に発泡粒子を送り込む機構である。金型は発泡粒子を通さないが空気や蒸気を通すことができる小口を有する。発泡粒子が金型内に充填されると、空気は金型内に進入せずに発泡粒子貯槽に逆流する。このとき充填機内に存在する発泡粒子は押し戻され充填機は空になる。この工程は自然ブローバックと呼ばれている。充填機内の発泡粒子が除去された後、ピストンプラグ3により、型内発泡成形用金型の発泡粒子充填口4が閉塞され、蒸気による加熱により型内成形がなされる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に説明されているように、自然ブローバック(吹き戻し)によって充填機1内の発泡粒子が完全に除去されず一部が残存する。残存した発泡粒子はピストンプラグ3により金型2内に押し込まれるが、これにより金型2の発泡粒子充填口4付近に発泡粒子が過剰に充填される。この現象は過充填と呼ばれており、過充填が生じるとこの部分に型内発泡成形用蒸気が通過しにくくなり、当該部位に部分的に融着不良や表面伸び不良の欠陥を有する型内発泡成形体となる。しかして、この様な欠陥の存在は、型内発泡成形体の商品価値を著しく損なう。
【0006】
特許文献1には、ブローバック時に金型内圧力を充填機内の圧力より高くなるように調整することにより、過充填を防止できることが開示されている。また、特許文献2には発泡粒子充填口を閉塞するのにピストンプラグでなく充填口に設けたシャッターを用いて充填機内に発泡粒子が残存しても、残存発泡粒子が金型内に押し込まれないようにして過充填を防止する方法が開示されている。特許文献1や特許文献2に開示された方法は成形装置において過充填を防止する方法である。しかし、発泡粒子の特性を特定することにより過充填を防止する方法は知られていない。
【特許文献1】特開2000−15707号公報
【特許文献2】特開平11−188732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題はビーズ法型内発泡成形法において、型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近へのポリプロピレン系樹脂発泡粒子の充填が充填機取り付け部位付近以外の周辺部位と同等に均一にでき、型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近の融着不良や表面伸び不良等の欠陥を発生させがたい型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、安息角が27度以下であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を使用すると、型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近の融着不良や表面伸び不良等の欠陥の発生を防止できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち本発明は次の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関する。
(1)安息角が27度以下である型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(2)嵩密度が10.0g/L以上80.0g/L以下である(1)記載の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(3)二段発泡法によって得られることを特徴とする(1)又は(2)記載の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(4)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の長さをL、直径をDとしたときL/Dが75%以上125%以下である(1)〜(3)何れかに記載の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(5)表面にアミド系化合物、シリコン系化合物、エステル系化合物の少なくとも1種が存在する、(1)〜(4)何れかに記載の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【発明の効果】
【0010】
本発明の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を使用すると、型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近へのポリプロピレン系樹脂発泡粒子の充填が、充填機から離れた部位と同等に均一にでき、型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の融着性や表面性がすぐれた型内発泡成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子と称する場合がある)の基材樹脂としては、単量体として、プロピレンを含むポリプロピレン系樹脂であれば、その組成、合成法に特に制限はなく、単独重合体、共重合体、また、重合体の混合物等が使用できる。例えば、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体、前記樹脂にポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂を添加した樹脂などが挙げられる。又、必要に応じて、例えば、タルク等の造核剤をはじめ紫外線吸収剤、帯電防止剤、熱安定剤、難燃剤、着色剤、充填剤などの1種又は2種以上を基材樹脂中にブレンドしてもよい。
【0012】
本発明の発泡粒子の基材樹脂となるポリプロピレン系樹脂は、融点が130℃以上160℃以下であることが好ましい。融点は、示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する事により樹脂粒子を融解し、その後10℃/minで220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minで40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度を融点として求める。融点が160℃より高い場合、成形時の加熱成形圧が高くなり、多大の蒸気を消費すると共に、成形圧力が高くなり、金型コストが高くなる傾向がある。
【0013】
さらに、前記ポリプロピレン系樹脂はメルトフローレート(以下、MFRと表記する場合がある)が2g/10min以上15g/10min以下であることが好ましい。ここで言うMFRの測定は、JIS−K7210記載のMFR測定器を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。
【0014】
MFRが2g/10minより小さい場合には、型内発泡成形体の表面のポリプロピレン系樹脂発泡粒子間隙が埋まりきらず表面平滑性に欠けた型内発泡成形体となる傾向にあり、15g/10minを超えては、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のセル膜が加熱時の熱に耐え切れず、発泡粒子間隙部分で樹脂が溶融し、外観の劣った型内発泡成形体になる傾向がある。
【0015】
前記ポリプロピレン系樹脂から発泡粒子を得る為に、ポリプロピレン系樹脂は、あらかじめ単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状であるポリプロピレン系樹脂粒子に加工することが好ましい。その粒子の平均粒重量は通常0.5〜5.0mg程度であることが好ましい。
【0016】
本発明の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、例えば、前記ポリプロピレン系樹脂粒子、水、分散剤を含む分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度、好ましくはポリプロピレン系樹脂粒子の融点−25℃以上融点+25℃以下、更に好ましくはポリプロピレン系樹脂粒子の融点−10℃以上融点+10℃以下の範囲の温度まで加熱し、発泡剤を含浸させ、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出する方法(以下、除圧発泡法、或いは、一段発泡法と称する場合がある)によって得られる。
【0017】
前記発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素およびそれらの混合物;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス、水等が例示できる。
【0018】
本発明において使用する分散剤として、例えば、第三リン酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、アルミノ珪酸塩等の無機系分散剤が挙げられる。また必要に応じて、分散助剤を併用することが好ましく、分散助剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、n−パラフィンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリプロピレン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水100重量部に対して分散剤0.2重量部以上3重量部以下を配合することが好ましく、分散助剤0.001受領部以上0.1重量部以下を配合することが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂粒子は、水中での分散性を良好なものにするために、通常、水100重量部に対して20重量部以上100重量部以下使用することが好ましい。
【0019】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は50μm以上800μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上600μm以下、さらに好ましくは200μm以上500μm以下である。平均気泡径が50μm未満の場合、得られた型内発泡成形体の形状が歪む、表面にしわが発生するなどの問題が生じる場合があり、800μmを越える場合、型内発泡成形を行う際の予備加熱工程でポリプロピレン系樹脂発泡粒子は二次発泡して、金型スリットの閉塞やポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士の融着によって加熱水蒸気の進入を妨げ、得られる型内発泡成形体の緩衝特性が低下する場合がある。
【0020】
なお平均気泡径は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の切断面について、表層部を除く部分に長さ2mmに相当する線分を引き、当該線分が通る気泡数を測定し、以後はASTM D3576に準拠して測定する。
【0021】
又、更にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を示差走査熱量測定において得られるDSC曲線における、低温側吸熱ピークの吸熱量と高温側吸熱ピークの吸熱量の合計に対する高温側吸熱ピークの吸熱量の比(%)(以下、DSC比ともいう)は、10%以上50%以下が好ましく、より好ましくは18%以上45%以下である。なお、DSC比の測定法は次のとおりである。
【0022】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子4〜10mgを40℃〜200℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線において、低温側吸熱ピークと、低温側吸熱ピークと高温側吸熱ピークの間の極大点からの融解開始ベースラインへの接線で囲まれる熱量である低温側吸熱ピークの吸熱量(QL)と、DSC曲線の高温側吸熱ピークと、低温側吸熱ピークと高温側吸熱ピークの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線で囲まれる熱量である高温側吸熱ピークの吸熱量(QH)から算出した、高温側吸熱ピークの吸熱量の比率を、以下に定義する。
DSC比(%)=QH×100/(QH+QL)
【0023】
本発明の技術が好適に適用されるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩密度は10g/L以上180g/L以下であることが好ましく、更には10g/L以上80g/L以下が好ましい。この範囲にある嵩密度の低いポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、通常充填不良あるいは過充填現象が起こりやすいため、本発明の技術が求められる所以である。
【0024】
以上のようにして得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、二段発泡法を利用して、さらに発泡させて発泡倍率のより高いポリプロピレン系樹脂発泡粒子にして、型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子としてもよい。ここで、二段発泡法とは、前記の除圧発泡法などによって得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子に窒素、空気、炭酸ガス等の無機ガスを圧入含浸する等して二次発泡力を付与したのち加熱し、所望の発泡倍率に発泡する方法である。
【0025】
具体的には、前記の除圧発泡法によって所望する倍率より低い倍率に発泡させた後、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子に窒素、空気、炭酸ガス等の無機ガスを圧入含浸し、次いで加圧式蒸気発泡機の中で加熱して所望する発泡倍率まで発泡する方法である。
【0026】
この時、二段発泡法に供する、もとのポリプロピレン系樹脂発泡粒子を「一段発泡粒子」、二段発泡法によって得られた、より発泡倍率の高いポリプロピレン系樹脂発泡粒子を「二段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
【0027】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形するに当たって、型内発泡成形用金型にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填するには、通常、空気同伴型の充填機で空気の流れにポリプロピレン系樹脂発泡粒子を同伴させる。その時、充填後の空気の吹き戻しと充填機プランジャー(ピストンプラグ)の閉塞タイミングによって、型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の充填率が高くなったり低くなったりして、当該部位に対応する型内発泡成形体の部位に局部的な不良が発生することがあるが、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いると、このような不良の発生が低減できる。
【0028】
すなわち、本発明の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の安息角は、27度以下であり、好ましくは25度以下である。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の安息角が27度以下であれば、充填機付近への充填不良あるいは過剰充填が発生しにくく、又、仮に充填不良あるいは過剰充填あったとしても、蒸気による加熱を行う際に、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の移動がしやすいため充填不良や過剰充填が緩和され、結果として、局部的な融着不良や表面伸び不良の欠陥を解消することが出来る。なお、本発明において、安息角はJIS R 9301−2−2を参考に後記のように発泡粒子に適用できるようにして測定する。
【0029】
このように安息角が27度以下の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る方法としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造条件によって、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の長さをL、直径をDとしたとき、L/Dを100%に近くする、発泡条件の調整によってポリプロピレン系樹脂発泡粒子の角を丸くするといったポリプロピレン系樹脂発泡粒子形状を調整する、内部添加剤の表面付近への溶出あるいは滑性物質の表面塗布剤等による表面性状を調整する、等の方法が挙げられ、これらの方法を組み合わせることによって、安息角が27度以下のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を獲得することができる。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の長さをL、直径をDとしたとき、L/Dは75%以上125%以下であることが好ましく、より好ましくは90%以上110%以下である。
【0031】
二段発泡法によって得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、角が丸みを帯びるためか、安息角が小さくなる傾向があるため、好ましい態様のひとつである。
【0032】
又、表面にエチレンビスステアリロアマイド等のアミド系化合物、シリコン樹脂等のシリコン系化合物、ステアリン酸ブチル等のエステル系化合物の少なくとも1種が存在するポリプロピレン系樹脂発泡粒子も、安息角の低減に効果がある場合がある。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の表面に前記化合物を存在させる方法としては、直接塗布をする方法、あるいはポリプロピレン系樹脂をポリプロピレン系樹脂粒子形状にする際に配合して、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する工程で表面にブリードさせる方法などがある。
【0033】
以上のようにして得られた本発明の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子から型内発泡成形体を型内発泡成形する方法としては、公知の方法を使用することが出来る。
【0034】
たとえば、あらかじめポリプロピレン系樹脂発泡粒子を耐圧容器内で空気加圧し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子中に空気を圧入することにより、内圧を、0.11〜0.4MPa付与し、これを2つの金型からなる閉鎖しうるが密閉し得ない成形空間に充填し、一方加熱、逆一方加熱工程を経た後、0.2〜0.4MPaG程度の水蒸気圧で3〜30秒程度の両面加熱工程を実施し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士を融着させ、このあと金型を水冷により型内発泡成形体取り出し後の型内発泡成形体の変形を抑制できる程度まで冷却した後、金型を開き、型内発泡成形体を得る方法、が挙げられる。
【0035】
本発明の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、断熱材、緩衝包装材、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材などの用途に用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
(安息角の測定方法)
安息角は注入法により測定した。すなわち、図2に示す上部が直径300mmの円筒形、下部が直径45mmで開閉用栓をノズル中央付近に有するノズル、上部円筒と下部ノズルが高さ160mmの円錐状物で接続されたロート型容器に測定するポリプロピレン系樹脂発泡粒子3Lを入れ、下部ノズル下端から9cm下に直径15cm、高さ7cmの円盤状の台をセットした後、ノズル部の栓を開きポリプロピレン系樹脂発泡粒子を全て落下せしめ、円盤状の台に堆積したポリプロピレン系樹脂発泡粒子の高さを測定し、円盤状の台の直径と堆積した発泡粒子の高さの関係から、堆積したポリプロピレン系樹脂発泡粒子の安息角を算出した。
【0038】
(発泡粒子の嵩密度測定方法)
嵩密度は、メスシリンダーで1L(1000mL)のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の重量W(g)を測定し、次式により求めた。
嵩密度=W(g/L)
【0039】
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子L/Dの測定方法)
発泡粒子容器内の任意の2箇所から10粒ずつの発泡粒子を採取して、発泡粒子の直径Dと長さLをノギスで測定しそれぞれ平均値を求め、次式から1箇所の10粒の平均値であるL1/D1および他の1箇所の10粒の平均値であるL2/D2を求める。
L1/D1=一箇所の平均長さL/一箇所の平均直径D
L2/D2=他の一箇所の平均長さL/他の一箇所の平均直径D
L1/D1とL2/D2の平均値をL/Dとした。
【0040】
(型内発泡成形体の成形)
耐圧容器内にて空気で加圧し、0.15MPa〜0.20MPaの内圧としたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、2本の充填機(フィーダー、充填口の外径34mm、内径17mm)を備えた300mm×400mm×50mmの直方体形状の型内発泡成形用金型に、5mmのクラッキング状態で充填し、金型を締めた後、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、0.25MPaGの両面加熱、を行った後、金型から取り出した。得られた型内発泡成形体を1時間室温で放置した後、75℃の恒温室内で3時間養生乾燥を行い、再び室温に取出してから室温で2時間放置した後、品質評価を行った。
【0041】
(型内発泡成形体全体の表面性評価方法)
得られた300mm×400mm×50mm厚みのポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近以外の表面を観察し、100cm当たりの発泡粒子間の1mm以上の陥没や間隙の平均個数を求めて以下の判定とした。
○・・・・100箇所未満
×・・・・100箇所以上
【0042】
(型内発泡成形体全体の融着性評価方法)
得られた300mm×400mm×50mm厚みのポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の長手方向の中心部(端から約200mmの所)に、カッターナイフで厚み方向に約1mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部から型内発泡成形体を破断し2等分し、その一方の破断面を観察して、破壊された発泡粒子の割合を求めて以下の判定とした。
◎・・・・90%以上
○・・・・80%以上90%未満
△・・・・60%以上80%未満
×・・・・60%未満
【0043】
(充填機部表面性評価方法)
型内発泡成形体において、二カ所の充填機充填口部跡の中心を中央にした40mm角のサンプルを2枚採取し、発泡粒子間の1mm以上の陥没や間隙のサンプル1個あたりの平均個数を求めて以下の判定とした。
○・・・・30箇所未満
×・・・・30箇所以上
【0044】
(充填機部融着性評価方法)
型内発泡成形体において、二カ所の充填機充填口部跡の中心を中央にした40mm角×10mm厚みのサンプルを2枚採取し表面部を外、カット面を内側にして縦・横に2回ずつ折り曲げビーズの融着度を以下の基準で評価した。
◎・・・・表面剥離が2枚とも無し
○・・・・表面剥離が1枚
×・・・・表面剥離が2枚とも有り
××・・・発泡粒子が型内発泡成形体からこぼれる
【0045】
実施例、比較例に用いた樹脂はプロピレン−エチレンランダム共重合体であり、その特性は次のとおりである。
樹脂A:融点 137℃、MFR 7g/10分、エチレン含量4.2重量%
樹脂B:融点 142℃、MFR 6g/10分、エチレン含量3.6重量%
樹脂C:融点 148℃、MFR 6g/10分、エチレン含量2.8重量%
【0046】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂A100重量部に対し、ポリエチレングリコール(平均分子量300、ライオン(株)製)0.5重量部をプリブレンドし、次にしてタルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.02重量部を加えブレンドした。50φ単軸押出機に供給し、溶融混練したのち、直径1.8mmの円筒ダイより押出し、水冷後、カッターで切断し、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を得た。
【0047】
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部を、純水200重量部、第3リン酸カルシウム1.0重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧容器に投入した後、脱気し、攪拌しながら炭酸ガス6.3重量部を耐圧容器内に入れ、142℃に加熱した。このときの圧力は2.6MPaであった。10分後、炭酸ガスを圧入し、発泡圧力を3.0MPaに調整し、すぐに耐圧容器下部のバルブを開いて、分散物を直径4mmのオリフィスを通じて大気圧下に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。この際、放出中は容器内の圧力が低下しないように、炭酸ガスで圧力を保持した。
【0048】
得られた一段発泡粒子の嵩密度は47g/Lであり、気泡の均一性に優れ、平均気泡径170μmであった。
【0049】
ここで得た一段発泡粒子を60℃にて6時間乾燥させたのち、耐圧容器内にて、加圧空気を含浸させて、内圧を0.4MPaにしたのち、約0.08MPaの蒸気と接触させることで二段発泡させ、嵩密度17g/L、平均気泡径270μmの二段発泡粒子を製造した。
【0050】
この二段発泡粒子を80℃の熱風乾燥機で1時間加熱し室温に取り出し2時間以上冷却して嵩密度を測定したところ、嵩密度は17g/Lであった。L/Dは1.13であり、安息角は23度であった。
【0051】
この二段発泡粒子を耐圧容器にて加圧空気を含浸させ、内圧0.2MPaにしたのち300mm×400mm×50mm厚み金型で型内発泡成形体を得、充填機部分の表面性と融着性評価をしたところ、良好な表面性、融着性を示した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2)
円柱状ポリプロピレン系樹脂粒子の長さを変更し、実施例1と同様に行い、L/Dが0.98のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0053】
(実施例3)
ポリプロピレン系樹脂A100重量部に対し、タルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.02重量部を加えブレンドした。50φ単軸押出機に供給し、溶融混練したのち、直径1.8mmの円筒ダイより押出し、水冷後、カッターで切断し、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を得た。
【0054】
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部を、純水200重量部、第3リン酸カルシウム1.0重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧容器に投入した後、脱気し、攪拌しながらブタンガス8.3重量部を耐圧容器内に入れ、130℃に加熱した。このときの圧力は2.6MPaであった。10分後、ブタンガスを圧入し、発泡圧力を2.8MPaに調整し、すぐに耐圧容器下部のバルブを開いて、分散物を直径4mmのオリフィスを通じて大気圧下に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。この際、放出中は容器内の圧力が低下しないように、ブタンガスで圧力を保持した。なお、実施例3では一段発泡法を用いた。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0055】
(実施例4)
ポリプロピレン系樹脂Bを用いたほかは実施例1と同様にして嵩密度17g/Lのポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0056】
(実施例5)
嵩密度を26g/Lに調整した以外は実施例4と同様にしてポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0057】
(実施例6)
ポリプロピレン系樹脂Cを用いて実施例5と同様にして嵩密度26g/Lの発泡粒子を得た、発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0058】
(実施例7)
嵩密度を38g/Lに調整した以外は実施例6と同様にしてポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0059】
(実施例8)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の粒重量を0.7mgとした以外は、実施例7と同様にして嵩密度38g/Lのポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0060】
(実施例9)
ポリプロピレン系樹脂B100重量部に対し、タルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.02重量部とエチレンビスステアリロアマイド1重量部を加えブレンドした。50φ単軸押出機に供給し、溶融混練したのち、直径1.8mmの円筒ダイより押出し、水冷後、カッターで切断し、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を得た。
【0061】
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部を、純水200重量部、第3リン酸カルシウム1.0重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧容器に投入した後、脱気し、攪拌しながらブタンガス8.3重量部を耐圧容器内に入れ、144℃に加熱した。このときの圧力は2.6MPaであった。10分後、ブタンガスを圧入し、発泡圧力を2.8MPaに調整し、すぐに耐圧容器下部のバルブを開いて、分散物を直径4mmのオリフィスを通じて大気圧下に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。この際、放出中は容器内の圧力が低下しないように、ブタンガスで圧力を保持した。なお、この発泡法は一段発泡法である。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0062】
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂B100重量部に対し、タルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.02重量部を加えブレンドした。50φ単軸押出機に供給し、溶融混練したのち、直径1.8mmの円筒ダイより押出し、水冷後、カッターで切断し、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を得た。
【0063】
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部を、純水200重量部、第3リン酸カルシウム1.0重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧容器に投入した後、脱気し、攪拌しながらブタンガス8.3重量部を耐圧容器内に入れ、144℃に加熱した。このときの圧力は2.6MPaであった。10分後、ブタンガスを圧入し、発泡圧力を2.8MPaに調整し、すぐに耐圧容器下部のバルブを開いて、分散物を直径4mmのオリフィスを通じて大気圧下に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。この際、放出中は容器内の圧力が低下しないように、ブタンガスで圧力を保持した。なお、この発泡法は一段発泡法である。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0064】
(比較例2)
ポリプロピレン系樹脂Cを用いて比較例1と同様にして嵩密度17g/Lの発泡粒子を得た、発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0065】
(比較例3)
ポリプロピレン系樹脂Cを用いて粒子の粒重量を0.7mgとした以外は、比較例2と同様にして嵩密度18g/Lのポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0066】
(比較例4)
ポリプロピレン系樹脂Cを用いて粒子の粒重量を1.2mgとした以外は、比較例3と同様にして嵩密度21g/Lのポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。発泡粒子特性と成形評価結果を表1に示した。
【0067】
【表1】

表1から明らかなように本発明の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を使用した型内発泡成形体は型内発泡成形用金型における充填機取り付け部位付近であっても、当該部位以外の部分においてもすぐれた融着性や表面性を有することが明らかである。これに対して、比較例の発泡粒子を使用した型内発泡成形体は充填機付近以外の部分においてはすぐれた融着性や表面性を有する場合があるが、成形機の充填機付近においては融着性や表面性が劣ることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】発泡粒子を用いる型内成形機の概略図である。
【図2】安息角測定装置の一部である。
【符号の説明】
【0069】
1 充填機
2 金型
3 ピストンプラグ
4 充填口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安息角が27度以下である型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
嵩密度が10.0g/L以上80.0g/L以下である請求項1記載の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
二段発泡法によって得られることを特徴とする請求項1または2記載の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の長さをL、直径をDとしたときL/Dが75%以上125%以下である請求項1〜3何れか一項に記載の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
表面にアミド系化合物、シリコン系化合物、エステル系化合物の少なくとも1種が存在する、請求項1〜4何れか一項に記載の型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−256477(P2009−256477A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107809(P2008−107809)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】