説明

ポリベンズイミダゾール系高分子及びその製造方法

【課題】燃料電池、特に燃料電池用膜を製造するために、高温および無加湿の条件下で使用されることができ、高いドーピング濃度及び優れた機械的特性を有するとともに安価なポリベンズイミダゾール系高分子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】3,3’−ジアミノベンジジンと、イソフタル酸またはテレフタル酸、ジアミノ安息香酸を反応させた共重合体に、リン酸をドーピングしたポリベンズイミダゾール系高分子、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池に関し、特に燃料電池用膜の製造に使用されるポリベンズイミダゾール系高分子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ[2,2−(m−フェニレン)−5,5−ビベンズイミダゾール](ポリベンズイミダゾール:PBI)及びポリ[2,5−ベンズイミダゾール](ABPBI)は、燃料電池において高温および無加湿の条件下で使用されることができる。
【0003】
無機酸に対するPBIの耐性が高いことから、PBIのドーピング濃度(doping level)を増加させることができる。しかし、PBIには、その単量体が高価であるとともに、PBIの機械的強度が特にドーピングされた状態で低いという短所がある。
【0004】
PBIとは対照的に、ABPBIは、その機械的強度が高く、且つ安価に製造される。しかし、ABPBIの有機溶媒に対する溶解性が低いことから、ABPBIを利用して膜を製造することは難しい。さらに、ABPBIの無機酸に対する溶解性が高いことから、ABPBIのドーピング濃度を増加させることは非常に困難である。
【0005】
従来、燃料電池、特に燃料電池用膜を製造するために、PBIとABPBIとが別々に利用されていた。よって、高い機械的強度を得ることと、ドーピング濃度を容易に増加させることとを同時に達成することはできなかった。
【特許文献1】米国特許第4,842,740号明細書
【特許文献2】欧州特許第1076676号明細書
【特許文献3】米国特許第4,020,142号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0261616号明細書
【特許文献5】国際公開第01/18894号パンフレット
【特許文献6】特開平5−339401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点に着目してなされたものである。その目的は、燃料電池、特に燃料電池用膜を製造するために高温および無加湿の条件下で使用されることができ、更に高いドーピング濃度及び優れた機械的特性を有するとともに安価なポリベンズイミダゾール系高分子を提供することである。本発明の他の目的は、前記ポリベンズイミダゾール系高分子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記本発明の目的を達成するために、下記化学式1で示される繰返し単位を有する共重合体であることを特徴とするポリベンズイミダゾール系高分子が提供される。
【0008】
【化1】

(nは繰返し単位数を示し、X及びYは繰返し単位を構成する割合をそれぞれ示す。)
前記本発明の目的を達成するために、3,3’―ジアミノベンジジンと、イソフタル酸またはテレフタル酸と、3,4−ジアミノ安息香酸とを単量体として共重合反応させる工程を含むことを特徴とするポリベンズイミダゾール系高分子の製造方法が提供される。
【0009】
この製造方法は、前記共重合反応工程前に、前記各単量体とポリリン酸とを混合させる工程、又は前記各単量体と、CHSOH及びCFSOHから選択される少なくとも一種ならびにPの混合物とを混合させる工程を含むことが好ましい。
【0010】
また、前記共重合反応工程において、前記各単量体を150〜200℃で共重合反応させることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の望ましい実施形態を説明することによって本発明を詳細に説明する。
本発明では、PBI及びABPBIの短所を有さずにPBI及びABPBIの長所のみを有するポリベンズイミダゾール系高分子を製造するために、PBIとABPBIとが共重合される。3,3’―ジアミノベンジジンと、イソフタル酸またはテレフタル酸とが単量体として使用される。更に、3,4−ジアミノ安息香酸が単量体として使用される。各単量体は、ポリリン酸と混合されてもよいし、P及びCHSOHの混合物と混合されてもよいし、P及びCFSOHの混合物と混合されてもよいし、P、CHSOH及びCFSOHの混合物と混合されてもよい。次いで、各単量体は、150〜200℃で下記反応式1に示すように共重合される。
【0012】
【化2】

(nは繰返し単位数を示し、X及びYは繰返し単位を構成する割合をそれぞれ示す。例えば、XとYとの合計が1である場合、Xが0.1〜0.9を示し、Yが0.9〜0.1を示す。)
前記反応式1に示すように製造され、前記化学式1に示される繰返し単位を有するポリベンズイミダゾール系高分子を用いて、ドーピング濃度を容易に増加させることできる。また、前記ポリベンズイミダゾール系高分子は高い機械的強度を有する。さらに、前記ポリベンズイミダゾール系高分子は比較的安価に製造されることができる。
【実施例】
【0013】
[実施例]
<ポリベンズイミダゾール系高分子の合成>
本発明に係る本実施例のポリベンズイミダゾール系高分子を以下のように製造した。
【0014】
ポリリン酸(35g)に3,4―ジアミノ安息香酸(2.60g、17.08mmol、Acros社から入手可能)、3,3’―ジアミノベンジジン(1.83g、8.54mmol、Aldrich社から入手可能)及びイソフタル酸(1.42g、8.85mmol)を混合した後、200℃で3時間反応させた。
【0015】
次いで、製造された高分子溶液を水中に沈殿させて前記ポリベンズイミダゾール系高分子を得た。
<ポリベンズイミダゾール系高分子膜の製造>
前記ポリベンズイミダゾール系高分子で構成される膜を以下のように製造した。
【0016】
(8g)と、CFSOH(25mL)と、CHSOH(25mL)との混合物に、3,4―ジアミノ安息香酸(2.60g、17.08mmol、Acros社から入手可能)、3,3’―ジアミノベンジジン(1.83g、8.54mmol、Aldrich社から入手可能)及びテレフタル酸(1.42g、8.85mmol)を混合した後、160℃で1時間反応させた。
【0017】
ドクターブレードを用いて、製造された高分子溶液をガラス板上に均一に塗布した後、前記高分子溶液が塗布されたガラス板を水に浸漬して膜をガラス板から分離することにより、前記ポリベンズイミダゾール系高分子膜を得た。
【0018】
<ポリベンズイミダゾール系高分子膜へのリン酸のドーピング>
製造された膜を85%HPOに48時間浸漬して、リン酸がドーピングされたポリベンズイミダゾール系高分子膜を得た。
【0019】
[比較例1―ABPBI]
(8g)とCHSOH(40mL)との混合物に3,4―ジアミノ安息香酸(4g、26.3mmol、Acros社から入手可能)を混合した後、160℃で1時間反応させた。
【0020】
ドクターブレードを用いて、製造された高分子溶液をガラス板上に均一に塗布した後、前記高分子溶液が塗布されたガラス板を水に浸漬して膜をガラス板から分離することにより、ABPBI膜を得た。
【0021】
前記膜を60%HPOに48時間浸漬して、リン酸がドーピングされたABPBI膜を得た。
[比較例2―PBI]
(8g)と、CFSOH(25mL)と、CHSOH(25mL)との混合物に、3,3’―ジアミノベンジジン(3.66g、17.1mmol、Aldrich社から入手可能)及びテレフタル酸(2.84g、17.1mmol)を混合した後、160℃で1時間反応させた。
【0022】
ドクターブレードを用いて、製造された高分子溶液をガラス板上に均一に塗布した後、前記高分子溶液が塗布されたガラス板を水に浸漬して膜をガラス板から分離することにより、PBI膜を得た。
【0023】
前記膜を60%HPOに48時間浸漬して、リン酸がドーピングされたPBI膜を得た。
下記表1は、比較例1のABPBI、比較例2のPBI及び実施例のポリベンズイミダゾール系高分子の物性を示す。
【0024】
【表1】

<結果>
前記表1に示すように、本実施例のポリベンズイミダゾール系高分子は無機酸(HPO)に溶解せず、そのドーピング濃度を容易に増加させることができた。さらに、本実施例のポリベンズイミダゾール系高分子の機械的強度は75MPaであり、比較例2のPBIの機械的強度(すなわち、55Mpa)と比べて高かった。また、安価な単量体を用いて高分子を製造することができることから、本発明のポリベンズイミダゾール系高分子は経済的観点からも非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示される繰返し単位を有する共重合体であることを特徴とするポリベンズイミダゾール系高分子。
【化1】

(nは繰返し単位数を示し、X及びYは繰返し単位を構成する割合をそれぞれ示す。)
【請求項2】
3,3’―ジアミノベンジジンと、イソフタル酸またはテレフタル酸と、3,4−ジアミノ安息香酸とを単量体として共重合反応させる工程を含むことを特徴とするポリベンズイミダゾール系高分子の製造方法。
【請求項3】
前記共重合反応工程前に、前記各単量体とポリリン酸とを混合させる工程、又は前記各単量体と、CHSOH及びCFSOHから選択される少なくとも一種ならびにPの混合物とを混合させる工程を含むことを特徴とする請求項2に記載のポリベンズイミダゾール系高分子の製造方法。
【請求項4】
前記共重合反応工程において、前記各単量体を150〜200℃で共重合反応させることを特徴とする請求項2に記載のポリベンズイミダゾール系高分子の製造方法。

【公開番号】特開2006−257390(P2006−257390A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314812(P2005−314812)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(399101854)コリア インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (68)
【Fターム(参考)】