説明

ポリペプチド修飾反応を制御する方法

本発明はポリペプチド修飾反応を制御する方法、排他的にではないが、特にヒト第VII(a)因子(FVII(a))を産生するためにヒト第VII因子(FVII)の活性化を制御する方法に関する。更に、本発明はポリペプチド修飾反応によって得ることができるポリペプチド及び前記ポリペプチドを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリペプチド修飾反応を制御する方法、排他的にではないが、特に、ヒト第VII(a)因子(FVII(a))を産生するためにヒト第VII因子(FVII)の活性化を制御する方法に関する。更に、本発明はポリペプチド修飾反応によって得られるポリペプチド及び前記ポリペプチドを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固は、様々な血液成分(又は因子)の複雑な相互作用からなるプロセスであって、最終的にフィブリン塊を生じる。通常、凝固「カスケード」と呼ばれているものに関わっている血液成分は、活性化因子(それ自身は活性化された凝固因子である)の作用によってタンパク質分解酵素に変換された酵素的に不活性なタンパク質(プロ酵素又はチモーゲン)である。上記の変換を受けた凝固因子は、「活性因子」と通常呼ばれ、凝固因子の名前に文字「a」を付加することによって示される(例えば第VII(a)因子)。
【0003】
FVII(別名、単鎖FVII、不活性化FVIIまたはチモーゲン)は、単一のポリペプチド鎖であり、Arg152とIle153との間のペプチド結合のタンパク質分解性切断により、活性型FVII(a)に変換される。この反応は、FVII(a)自己タンパク質分解によって、又はFXa又はラッセルクサリヘビ蛇毒のような他の酵素によって触媒されることができる。自動活性化は、酵素を付加してプロセスの終わりに物理的に除去する必要がないという点で有利である。
【0004】
活性化の割合が99%以上に到達したならば(すなわちArg152の好ましい基質が枯渇したならば)、重鎖分解生成物(AA290及びAA315)の含有量が劇的に増大するので、FVIIの活性化を注意深く制御できることは、非常に重要である。そのため、生成物を過度に活性化しないということは重要である。同時に、活性化の割合が高いこと(例えば94%より上)が望ましく、低い分解含有量と高い活性の両方が得ることができる、より狭い間隔(例えば94−99%)を残す。
【0005】
一定量の酵素活性化が、酵素の精製の間に同時に起こる。さらにまた、精製工程の間の活性化のレベルは、出発原料組成物、主に第VII因子(a)タイター、それゆえにカラムへの充填の変異のために、必然的に変化する。精製の間の予想外の保持時間は、更に活性化のレベルの変異を生じる。精製の間、第VII因子(a)分子は濃度、pH、温度及び滞留時間に関して変動状況を経験し、それは部分的な活性化に結果としてなる。精製後、活性化の割合が、精製手段と状況によって広く変化すること(例えば、16%〜74%)が、観察された。精製後の活性化の割合のこの変異は、精製に続く標準化された活性化プロセスを実施することに関して、重大な問題が引き起される。
【0006】
FVIIの活性化の割合は、知られている手順で算出することができる。しかしながら、リアルタイムの測定技術が現在のところ存在せず、知られている手順は典型的には約30分間の所要時間を有する。従って、活性化の割合が測定のための試料除去において99%に近づいている場合、次に結果が得られる頃には、この値を超えている。これは、高濃度の望ましくない重鎖分解生成物に結果としてなる。
【0007】
US4286056(Baxter Travenol Lab)は、出発原料の活性化状態を決定することによって活性化の程度を制御すること、及び、次に、前もって決められた活性化レベルに到達するために出発原料の活性化の進行の解析に従って活性化条件のうちの少なくとも1つを変化させることを含む活性化されたプロトロンビン複合体濃縮物を産生する方法を記載する。WO2007/013993(Maxygen Holdings Ltd)は、アミン化合物(Ca2+)の付加、溶液の最終的なpHを約7.2から8.6に合わせること、結果として生じた活性化混合物を約2℃と約25℃との間で少なくとも90%のscFVIIをFVII(a)に変換するために十分な時間の間インキュベートすることを含む、溶液中の第VII因子を第VII因子(a)に活性化する方法を記載する。US4456591(Baxter Travenol Lab)は、唯一の有効な、活性化された止血薬剤が第VII(a)因子である組成物の有効止血量を、欠乏症または阻害因子のような凝固因子障害を有する患者に投与する方法を記載する。
【0008】
従って、修飾酵素の望ましい濃度を提供する最適反応時間を決定するための改良された方法への大きな要求がある。また、本発明は、より純粋なプロテアーゼ生成物を提供する。
より純粋な生成物は、患者の抗プロテアーゼ(抗体)形成に結果としてなる可能性は少ない。
さらにまた、バッチのより大きな数が、品質の純度と均衡に関して、特定の要求を満たす場合に、廃棄される産生バッチがより少ないので、プロテアーゼ活性化の速度の厳しい制御は最終的に製造プラントの無駄の減少に結果としてなる。
【発明の開示】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも一つのプロセス変数を算出する工程、及び更なるプロセス変数の値を算出するために数理モデルに前記変数を適用する工程を含むポリペプチド修飾反応を制御する方法が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
(a)ポリペプチドの初期濃度を測定する工程、
(b)修飾されたポリペプチドの初期の比率を測定する工程、
(c)ポリペプチド修飾反応時間を、工程(a)及び(b)の各々で測定された値と、修飾されたポリペプチドの必要とされる比率の値との相関によって計算する工程、及び
(d)ポリペプチド修飾反応を工程(c)で計算された時間にわたって実施する工程を含むポリペプチド修飾反応を実施する方法が提供される。
本発明の第3の態様によれば、先に定義の方法に従って入手できるポリペプチドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の全体の概念を例示する。変数入力について、プロセスは出力が基本的に予測可能で一定であることを確実にする。
【図2】プロテアーゼが活性化される程度を密接に調整することの重要性を例示する。活性化の程度(%)が99.5%から100%へと増大するに従って、分解された生成物(プロテアーゼ)のパーセンテージは指数関数的に増大する。
【図3】より多くの酵素(すなわちプロテアーゼ)がバッチに存在すると、プロテアーゼのより速い活性化が生じることを例示する。パーセンテージとして記述されるモル分率(xb)は、ヘンダーソン・ハッセルバッハ線図を使用して見いだすことができる。酵素の活性な分画は、任意のpHについて算出することができる。非線形相関がある。
【図4】得られたFVII(a)の濃度は濃度依存性であることを示す。高い第VII因子(a)濃度における第VII因子活性化の速度は、低い第VII因子(a)濃度におけるよりも大きい。
【図5】得られたFVII(a)の濃度はpH依存性であることを示す。より高いpH(6.8)におけるFVII活性化の速度はより高く;より低いpH(6.2)におけるFVII活性化の速度はより低く、pH6.5におけるFVII活性化の速度は中間である。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明の第1の態様によれば、少なくとも一つのプロセス変数の値を算出する工程、及び更なるプロセス変数の値を計算するために数理モデルに前記変数を適用する工程を含むポリペプチド修飾反応を制御する方法が、提供される。
従って、本発明は、基本的なプロセス変数を評価するために物理的又は数学的モデルをプロセス分析的技術(PAT)ツールと組合わせる利点を提供する。PATツールは、修飾反応を正確に制御するためにオンライン、インラインおよび/またはアットラインの様式で適用されるという効果がある。したがって、反応は、最適な結果を得るために最適な方法で実施されることができるように、上記の技術の使用は、ユーザに、直近の必要値を提供する。ある実施態様において、少なくとも一つのプロセス変数は、修飾の程度、試薬濃度測定、pH測定、温度測定から選択されることができる。ある実施態様において、更なるプロセス変数は反応時間であってもよい。
【0012】
ある実施態様において、方法は、ポリペプチドのPEG化の程度を制御することを含む。したがって、本発明のさらに別の態様では、必要なPEG化の程度、酵素濃度、PEG濃度、ポリペプチド濃度及び温度を、数理モデルに適応する工程及反応時間を算出する工程を含むポリペプチドのPEG化の程度を制御する方法が、提供される。
ある実施態様において、方法は、第IX因子(FIX)ポリペプチドのPEG化の程度を制御することを含む。ある実施態様において、PEG化の程度は、以下のプロセス変数に従って算出される:反応時間、酵素濃度、PEG濃度、FIX濃度及び温度(典型的には22℃である)。当業者が数理モデルにプロセス変数の値を入力することによってFIXのPEG化の必要な程度を達成するための、最適反応時間を算出することが可能であることはいうまでもない。(それは、オイラー法、ルンゲ=クッタ法、ニュートンラプソン法またはDASPK法から導くことができる)。上記数学的方法は、ポリペプチド修飾反応の正確な制御を提供するために、有利に使用されることができる。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、
(a)ポリペプチドの初期濃度を測定する工程、
(b)修飾されたポリペプチドの初期の比率を測定する工程、
(c)ポリペプチド修飾反応時間を、工程(a)及び(b)の各々で測定された値と、修飾されたポリペプチドの必要とされる比率の値との相関によって計算する工程、及び
(d)ポリペプチド修飾反応を工程(c)で計算された時間にわたって実施する工程を含むポリペプチド修飾反応を実施する方法が提供される。
ある実施態様において、修飾反応は、ポリペプチドへの化合剤の付加(例えばPEG化)による酵素の切断または修飾を含む。
【0014】
驚くべきことに、修飾が酵素の切断を含む実施態様において、正確な反応時間を算出するために、初期濃度と切断の比率は、切断の必要な比率と相関関係にあることが見いだされた。この相関の結果は、極めて正確(しばしば、切断の約0.5%の割合の範囲内)で、再現性がある。また、プロセスは、2つの測定値だけ(すなわち、初期濃度と切断の比率)が反応前に算出されることを必要とする有意有利な条件を提供する。さらにまた、反応の状態を監視することを必要とすることなく(または、品質管理目的のために必要でない限り、切断の最終的な比率を測定することさえなく)、反応は、算出時間の間続けることができる。
【0015】
ここで使用される場合、「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」なる用語は、ペプチド結合により連結された少なくとも5つの構成アミノ酸からなる化合物を意味する。構成アミノ酸は遺伝暗号によりコードされるアミノ酸の群に由来してもよく、また遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸、並びに合成アミノ酸であってもよい。遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸は、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタマート、オルニチン、ホスホセリン、D−アラニン及びD−グルタミンである。合成アミノ酸は、化学合成により製造されたアミノ酸、すなわち遺伝暗号によりコードされるアミノ酸のD− 異性体、例えばD−アラニン及びD−ロイシン、Aib(α−アミノイソ酪酸)、Abu(α−アミノ酪酸)、Tle(tert−ブチルグリシン)、β−アラニン、3−アミノメチル安息香酸、アントラニル酸を含む。
【0016】
ある実施態様において、ポリペプチドは酵素であり、例えば、血液凝固因子または止血関連タンパク質(例えばセリンプロテアーゼ)である。上記ペプチドの例には、以下が含まれる:第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子(プロアクセレリン)、第VI因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子(クリスマス因子)、第X因子(スチュワート・プロワー因子)、第XI因子(血漿トロンボプラスチン前駆物質)、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォンビルブラント因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリンコファクターII、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼインヒビター(ZPI)、プラスミノーゲン、α2−抗プラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクティベータ・インヒビター−1(PAI1)、プラスミノーゲンアクティベータ・インヒビター−2(PAI2)及び癌凝血促進剤。
【0017】
さらなる実施態様において、ポリペプチドは自己活性化されたポリペプチドである。さらなる実施態様において、酵素は血液凝固因子(例えばセリンプロテアーゼ血液凝固因子)である。適切なセリンプロテアーゼ血液凝固因子は、EC3.4.21により、第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、プロテインC及びプラスミノーゲン(それぞれ、これら不活発なチモーゲンの活性型は、FIIa、FVIIa、FIXa、FXa、FXIa、FXIIa、カリクレイン、活性化プロテインC(aPC)及びプラスミンである)に分類されるものを含む。
【0018】
修飾反応が酵素の切断を含むある実施態様において、血液凝固因子は、その第VII因子またはアナログまたは誘導体である。
修飾反応がPEG化を含むある実施態様において、血液凝固因子は、その第IX因子またはアナログまたは誘導体である。
本発明の一態様では、発明は
(a)セリンプロテアーゼ血液凝固因子の初期濃度を測定する工程、
(b)活性化セリンプロテアーゼ血液凝固因子の初期の比率を測定する工程、
(c)セリンプロテアーゼ血液凝固因子活性反応時間を、工程(a)及び(b)の各々で測定された値と、活性化セリンプロテアーゼ血液凝固因子の必要とされる比率の値との相関によって計算する工程、及び
(d)セリンプロテアーゼ血液凝固因子活性反応を工程(c)で計算された時間にわたって実施する工程、及び
(e)工程(c)で計算された反応時間の後、反応を終結する工程を含むセリンプロテアーゼ血液凝固因子を活性化する方法を提供する。
【0019】
本発明の一態様では、本発明は
(a)第VII因子の初期濃度を測定する工程、
(b)活性化第VII因子の初期の比率を測定する工程、
(c)第VII因子活性反応時間を、工程(a)及び(b)の各々で測定された値と、活性化第VII因子の必要とされる比率の値との相関によって計算する工程、及び
(d)第VII因子活性反応を工程(c)で計算された時間にわたって実施する工程を含む第VII因子を第VII(a)因子に活性化する方法を提供する。
更なる任意の工程(e)において、工程(c)で計算された反応時間の後、反応を終結する。
【0020】
なお更なる態様において、本発明は、
(a)セリンプロテアーゼ血液凝固因子の初期濃度を測定する工程;
(b)活性化セリンプロテアーゼ血液凝固因子の初期の比率を測定する工程;
(c)セリンプロテアーゼ血液凝固因子活性反応時間を、工程(a)及び(b)の各々で測定された値と、活性化セリンプロテアーゼ血液凝固因子の必要とされる比率の値との相関によって計算する工程、及び
(d)セリンプロテアーゼ血液凝固因子活性反応を工程(c)で計算された時間にわたって実施する工程を含む活性化セリンプロテアーゼ産物の分解を防ぐ方法を提供する。
【0021】
本発明のある実施態様において、工程(c)に記載されている相関手順は、式(I):

[式中、「akt」は切断されたポリペプチドの必要な比率を示し、「akt0」は工程(b)で測定される切断されたポリペプチドの初期比率を示し、「F0」は工程(a)において測定されるポリペプチド(g/l)の初期濃度を指し、k(T)は温度(T)の関数として、所与の反応(L/g/min)についての反応定数を示し、xbはモル分率を示す]に従って算出される。
【0022】
ある実施態様において、k(T)は、温度によるkの変化を記載する多項式またはスプライン関数である。
rFVIIaの場合、以下の3次の多項式:
k(T)=k*(0.00001T^3−0.00147T^2+0.02566T+0.86729)[式中、Tは温度(5−60℃)である]が使われた。同じように、pKaは温度の関数として表されることができる。
【0023】
ある実施態様において、温度は5℃と25℃との間、好ましくは10℃から20℃である。更なる実施態様において、活性化反応は室温(例えば、約21.5℃)で実施される。
上記実施態様において、修飾は第VII因子の切断を含み、活性化反応は典型的には一定温度で実施される。
第VII因子の活性化に対する本発明の適用は、有益に、最小限の分解生成物を含む十分に活性化された第VII因子分子の産生に結果としてなる。
【0024】
ここで使用されるペプチドを指す「アナログ」なる用語は、ペプチドの一又は複数のアミノ酸残基が、他のアミノ酸残基で置換されているか、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基が該ペプチドから欠失されているか、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基が該ペプチドに付加されている修飾されたペプチドを意味する。アミノ酸残基の当該付加又は欠失は、ペプチドのN末端及び/又はペプチドのC末端に生じてもよい。光学異性体が言及されていない全てのアミノ酸については、L型異性体を意味すると理解される。
【0025】
第VII因子アナログの例はWO02/22776に見いだすことができ、そのアナログは引用により本願明細書に組み込まれる。ある実施態様において、第VII因子アナログは、ハイパーアクティヴなアナログ、すなわち野生型第VII因子より少なくとも2倍大きなアミド分解活性を有するものである。好ましい実施態様において、第VII因子アナログは、V158D/E296V/M298Q−FVII(a)(WO02/22776の実施例6)である。
【0026】
工程(a)のポリペプチドの初期濃度の測定は、紫外分光法によって典型的に行われることができる。ある実施態様において、濃度は約1.5g/Lと2.2g/Lとの間(例えば、約1.9g/L)に調整される。
【0027】
工程(b)の切断されたポリペプチドの初期比率の測定は、還元SDS−PAGE、還元又は非還元HPLCまたはチップ泳動(例えばAgilent Bioanalyzer)によって典型的に行われることができる。ある実施態様において、工程(b)は、チップ泳動(例えばAgilent Bioanalyzer)によって行われる。ポリペプチドが第VII因子を含む実施態様において、活性化第VII(a)因子の初期比率が、典型的に精製条件応じて10と90%との間にある。
【0028】
「修飾ポリペプチドの必要比率」はユーザによって必要とされる任意の修飾をさすことはいうまでもない。修飾が第VII因子の切断を含む実施態様において、切断の必要な比率は94と99%との間、例えば95と97%との間(例えば約95%)である。これらの範囲は、高い比率の活性化産物(例えば第VII(a)因子)を提供し、重鎖分解生成物(AA290とAA315)の量を最小にするために典型的に選択される。
【0029】
修飾が第VII因子の切断を含む実施態様において、切断反応は、アミン化合物(例えばヒスチジン、トリス、リジン、アルギニン、ホスホリルコリン又はベタイン)の付加を更に含む。さらなる実施態様において、アミン化合物はヒスチジンである。ある実施態様において、アミン化合物は約1〜500mM(例えば約10〜100mM(例えば10mM))の最終濃度まで加えられる。
【0030】
修飾が第VII因子の切断を含む実施態様において、切断反応はカルシウムイオン(例えば塩化カルシウム)の付加を更に含む。ある実施態様において、カルシウムイオンは、約1〜50mM、例えば10と25mMとの間(例えば12mM)の最終濃度まで加えられる。修飾が第VII因子の切断を含む実施態様において、切断反応は塩化ナトリウムの付加を更に含む。ある実施態様において、塩化ナトリウムは約1〜100mM、例えば20と80mMとの間(例えば60mM)のような最終濃度まで加えられる。
【0031】
本発明のある実施態様において、セリンプロテアーゼ切断の必要な比率は、90と99%との間にあり、例えば94と99%との間に、例えば95と97%との間に、例えば96と98%との間に、例えば97と99%との間にある。
【0032】
修飾が第VII因子の切断を含む実施態様において、活性化反応は6.0と8.0間とのpHで典型的に行われる。第VII因子の自己触媒反応は、pH依存性である。pHが上昇した場合、第VII因子のアミド分解活性は開始され、従って反応速度は増大する。従って、6.0と8.0との間のpH値を選択して、反応が適切な緩衝によってこのpHで進むことを確実にすることは望ましい。活性化反応の間にpHが変化する場合、活性化の速度は工程(c)において算出された速度から変化し、ゆえに反応生成物の品質に影響を与える。したがって、ある実施態様において、本発明の方法は、活性化反応の開始の前に6.0と8.0との間のpHを選択して、活性化反応の間、反応を選択されたpH値に維持する工程を含む。さらなる実施態様において、pHは6.25と6.75との間(例えば6.5±0.05)から選択される。
【0033】
本願明細書において記載されている方法論の相当な精度からみて、活性化反応が工程(c)において算出される反応時間の直後に終了されることを確実にすることは、望ましい。活性化反応が工程(c)において算出される時間を越えて続けることが可能である場合、これは望ましくない重鎖分解生成物の潜在的な存在を増大する。終了のための多くの代替の方法は、当業者に知られており、例えば反応混合物へのシリカの付加である。しかしながら、ある実施態様において、活性化反応は約6.0以下の値、例えば5.5と6.0との間(例えば5.8)までpHを下げることによって終了される。ある実施態様において、pHは強酸(例えば1Mの塩酸)の付加によって下げられる。
【0034】
本発明の別の実施態様では、反応時間(このあとは「t」と示す)を計算するために使用される、工程(c)に記載されている相関手順は、式(II):

[式中、「akt」は切断されたポリペプチドの必要な比率を示し、「akt0」は工程(b)で測定される切断されたポリペプチドの初期比率を示し、「F0」は工程(a)において測定されるポリペプチド(g/l)の初期濃度を示し、k(T)は温度(T)の関数として、所与の反応(L/g/min)についての反応定数を示し、xbはモル分率を示す]に従って算出したものである。
【0035】
モル分率(xb)は、任意のpH値で酵素の活性分画の間に相関するヘンダーソン・ハッセルバルヒ関係を使用して算出することができる。典型的に、この関係は非線形相関(例えばS字形曲線)である。
【0036】
修飾が第VII因子の切断を含む実施態様において、xbは、ヒスチジンのプロトン化(protonisation)の程度に基づいて算出することができる。セリンプロテアーゼ(第VII(a)因子を含む)は、3つの残基からなる触媒三つ組によって特徴付けられる:セリン139、ヒスチジン57及びアスパルテート81。ヒスチジン残基が反応するために脱プロトン化されなければならないことは知られており、セリンプロテアーゼはヒスチジン(それは7.61である)のpKaより上のpH範囲においてのみ活性である。
【0037】
従って、修飾が第VII因子の切断を含む実施態様で、xbは以下の式(III)の方程式:

[式中、pHは、反応の選択されたpHを指す。]
に従って算出されることができる。
値kは、測定されることを目的とする所与反応の化学反応カイネティクスに従って算出されることができる。したがって、kは、濃度依存を定める物理定数である。上記の定数は、当業者にとって自明な最小ニ乗の合計に従って、一般に算出されることができる。例えば、ポリペプチドが第VII因子を含む実施態様において、kの値は0.29L/g/minとして算出された。従って、修飾が第VII因子の切断を含む実施態様において、反応時間(「t」)を算出するために工程(c)に記載されている相関手順は、式(IV):

[式中、akt、akt0、xb及びF0は上記のように定義される]
に従って算出されることができる。
【0038】
本発明の別の実施態様では、工程(c)に記載されている相関手順は、式(V)(式中、式(II)のxbは1である):

[式中、「akt」は切断されたポリペプチドの必要な比率を示し、「akt0」は工程(b)で測定される切断されたポリペプチドの初期比率を指し、「F0」は工程(a)において測定されるポリペプチド(g/l)の初期濃度を指し、k(T)は温度(T)の関数として、所与の反応(L/g/min)についての反応定数を指し、xbはモル分率を指す]によって算出される。
【0039】
本発明の第3の実施態様によれば、方法に従って入手できるポリペプチドは上記のように提供される。
様々な実施態様において、前記凝固セリンプロテアーゼは、第II因子又は第VII因子又は第IX因子又は第X因子又は第XI因子又はXII因子;又は前記血液凝固因子の何れか一つのアナログ又は誘導体である。
ある実施態様において、ポリペプチドは第VII(a)因子又は第IX因子アナログ又は誘導体である。
本発明に係る第VII(a)因子又は第IX因子アナログ又は誘導体及び第VII(a)因子又は第IX因子アナログ又は誘導体を含む医薬組成物は、ヒト凝固第VII(a)又は第IX因子の投与によって軽減される疾患(例えば出血性疾患、血友病、血液疾患、関節血症、血腫、皮膚粘膜出血、遺伝性血液疾患、家族性出血性疾患)の治療に又は因子補充療法に使用されてもよい。ある実施態様において、ヒト凝固第VII(a)又はIX因子の投与によって軽減される疾患は、B型血友病又はクリスマス病のような血友病である。
したがって本発明のさらに別の態様では、上記の第VII(a)因子または第IX因子アナログまたは誘導体の治療上有効量を患者に投与することを含む血友病を治療する方法は、提供される。
また、血友病の治療ために、上記の第VII(a)因子または第IX因子アナログまたは誘導体が提供される。
また、血友病の治療のための医薬の製造において上記の第VII(a)因子または第IX因子アナログの使用または誘導体が提供される。
また、血友病の治療に使用されるための、上記の第VII(a)因子または第IX因子アナログまたは誘導体含んで成る医薬品組成物は提供される。
【0040】
本願明細書において使われる「治療」及び「処理」なる用語は、疾患または病気のような健康状態と戦うために患者の管理および保護を意味する。本用語には、兆候又は合併症を軽減し、疾患、疾病又は病状の進行を遅延させ、兆候及び合併症を軽減又は緩和し、及び/又は疾患、疾病又は病状を治癒又は除去し、並びに病状を防止するための活性化合物の投与等、患者が患っている病状に対するあらゆる範囲の治療を含むことを意図しており、ここで防止とは、疾患、病状又は疾病に抗することを目的として、患者を管理し世話することと理解され、兆候又は合併症の発症を防止する活性化合物を投与することが含まれる。治療される患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトであるが、さらにイヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ及びブタ等の動物を含んでもよい。しかし、治癒療法及び予防(再発防止)療法は、本発明の別の態様を表すことが認識されなければならない。
【0041】
ここで使用されるペプチドの「治療的有効量」は、所与の疾患とその合併症の臨床症状を治癒し、軽減し又は部分的に抑止するのに十分な量を意味する。これを達成するのに十分な量は「治療的有効量」として定義される。各目的のための有効量は疾患又は傷害の重症度並びに患者の体重、性別、年齢及び一般的状態に依存する。適した用量の決定は常套的な実験を使用し、値のマトリックスを構築しマトリックス中の異なった点を試験することによりなすことができることが理解され、これは全て熟練した医師又は獣医の技量の範囲にある。
【0042】
本発明のさらに別の態様では、上記ポリペプチドを含んで成る医薬製剤は提供される。
製剤は、バッファーシステム、防腐剤、張性調節剤、キレート化剤、安定化剤及び界面活性剤を更に含んでもよい。
本発明のある実施態様において、医薬製剤は、水性製剤(すなわち水を含んで成る製剤)である。上記製剤は、典型的に溶液または懸濁液である。本発明のある実施態様において、医薬製剤は水溶液である。
「水性製剤」なる用語は、少なくとも50%(重量/重量)の水分を含有する製剤と定義される。同様に「水溶液」なる用語も、少なくとも50%(重量/重量)の水分を含有する溶液と定義され、「水性懸濁液」なる用語は、少なくとも50%(重量/重量)の水分を含有する懸濁液と定義される。
ある実施態様において、医薬製剤は、使用前に医師又は患者がそこへ溶媒及び/又は希釈剤を加える凍結乾燥製剤である。
ある実施態様において、医薬製剤は、事前に溶解することなしに使用準備ができている乾燥製剤(例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥)である。
ある実施態様において、本発明は、本発明のペプチドの水性溶液及びバッファーを含む医薬製剤であって、前記ペプチドが0.1−100mg/mlの濃度で存在しており、前記製剤が約2.0から約10.0のpHを有する医薬製剤に関する。
【0043】
本発明のある実施形態において、製剤のpHは2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9及び10.0を含むリストから選択される。
【0044】
本発明のある実施態様において、バッファーは酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リシン、アルギニン、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びtris(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はその混合物からなる群から選択される。これらの特定のバッファーの各一は発明の別の実施形態を構成する。
【0045】
本発明のある実施態様において、製剤は薬学的に許容可能な防腐剤を更に含む。本発明のある実施態様において、防腐剤はフェノール、o−クレゾール、m− クレゾール、p−クレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、2−フェノキシエタノール、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、2−フェニルエタノール、ベンゾイルアルコール、クロロブタノール、チメロサール、ブロノポール、安息香酸、イミドウレア、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3p−クロロフェノキシプロパン−1,2−ジオール)又はその混合物から選択される。
【0046】
本発明のある実施態様おいて、防腐剤は、0.1mg/mlから20mg/mlまで濃度で存在する。本発明のある実施態様おいて、防腐剤は、0.1mg/mlから5mg/mlまで濃度で存在する。本発明のある実施態様おいて、防腐剤は、5mg/mlから10mg/mlまで濃度で存在する。本発明のある実施態様おいて、防腐剤は、10mg/mlから20mg/mlまで濃度で存在する。これらの特定の防腐剤の各々の一は、本発明の別の実施態様を構成する。医薬組成物の防腐剤の使用は、当業者にはよく知られている。便宜的な参照として、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,2000が挙げられる。
【0047】
本発明のある実施態様において、製剤は等張剤を更に含む。本発明のある実施態様において、製剤は、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、L−グリシン、L−ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、又はスレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、又は1,3−ブタンジオール)、ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、又はそれらの混合物からなる群から選択され得る等張剤をさらに含有する。任意の糖、例えば単糖類、二糖類又は多糖類、又は水溶性グルカン類、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、及びカルボキシメチルセルロース−Naを使用してもよい。一実施態様において、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは、少なくとも一の−OH基を有するC4−C8炭化水素と定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール(galactitol)、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一実施態様において、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述した糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せて使用されてよい。使用される量は、糖又は糖アルコールが液状調製物に溶解し、この発明の方法を使用して得られた安定化効果に悪影響を与えない限りは、限定されて固定されるものではない。ある実施態様において、糖又は糖アルコールの濃度は、約1mg/mlと約150mg/mlとの間である。本発明のある実施態様において、等張剤は1mg/mlと50mg/mlとの間の濃度で存在している。本発明のある実施態様において、等張剤は1mg/mlと7mg/mlとの間の濃度で存在している。本発明のある実施態様において、等張剤は8mg/mlと24mg/mlとの間の濃度で存在している。本発明のある実施態様において、等張剤は25mg/mlと50mg/mlとの間の濃度で存在している。これらの特定の等張剤の各々の一は、本発明の別の実施態様を構成する。薬学的組成物に等張剤を使用することは、当業者によく知られている。便宜的な参照として、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,2000が挙げられる。
【0048】
本発明の更なる実施態様では、製剤はキレート剤を更に含有する。本発明のある実施態様において、キレート剤は、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、及びアスパラギン酸の塩、及びそれらの混合物から選択されうる。本発明のある実施態様において、キレート剤は0.1mg/mlから5mg/mlの濃度で存在する。本発明のある実施態様において、キレート剤は0.1mg/mlから2mg/mlの濃度で存在する。本発明のある実施態様において、キレート剤は2mg/mlから5mg/mlの濃度で存在する。これらの特定のキレート剤の各一が本発明の別の実施態様を構成する。製薬用組成物にキレート剤を使用することは当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,2000が参照される。
【0049】
本発明の更なる実施態様では、製剤は安定剤を更に含有する。製薬用組成物に安定剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,2000が参照される。より具体的には、本発明の組成物は安定化液状製薬用組成物であり、その治療的活性化合物は、液状薬学的製剤の保存中に、凝集体の形成を示す可能性のあるポリペプチドを含む。「凝集体形成」とは、オリゴマーを形成するポリペプチド分子間の物理的相互作用を意図しており、これは、可溶性か、又は溶液から沈殿する大きな可視できる凝集体として残る。「保存中」とは、調製されて直ぐの液状製薬用組成物又は製剤が、患者に直ぐ投与されるものではないことを意図している。むしろ、調製後に、液状の形態、凍結状態、液状形態に後で再構成される乾燥した形態、又は患者への投与に適した他の形態で、包装されて保存される。「乾燥した形態」とは、液状製薬用組成物又は製剤が、フリーズドライ(すなわち凍結乾燥;例えばWilliams及びPolli(1984)J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59を参照)、噴霧乾燥(Masters(1991) Spray-Drying Handbook(第5版;Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp.491-676;Broadhead等, (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206;及びMumenthaler等,(1994) Pharm. Res. 11:12-20を参照)、又は空気乾燥(Carpenter及びCrowe(1988) Cryobiology 25:459-470;及びRoser (1991) Biopharm. 4:47-53)により乾燥されることを意図している。液状製薬用組成物の保存中におけるポリペプチドによる凝集体形成は、ポリペプチドの生物活性に悪影響を及ぼすおそれがあり、製薬用組成物の治療効果が損なわれる。更に、凝集体形成は、例えばチューブ、膜、又はポリペプチド含有製薬用組成物が注入システムを使用して投与される場合はポンプの閉塞のような、他の問題を生じさせうる。
【0050】
本発明の製薬用組成物は、組成物の保存中、ポリペプチドによる凝集体形成を低減させるのに十分な量のアミノ酸塩基を更に含有しうる。「アミノ酸塩基」とは、アミノ酸又はアミノ酸の組合せを意図しており、任意の与えられたアミノ酸が、その遊離塩基の形態又はその塩の形態の何れかで存在している。アミノ酸の組合せを使用する場合、全てのアミノ酸が遊離塩基の形態で存在していてもよく、全てが塩の形態で存在していてもよく、又は幾つかが遊離塩基の形態で存在していてもよく、残りが塩の形態で存在していてもよい。一実施態様では、本発明の組成物の調製に使用されるアミノ酸は、帯電側鎖を担持しているもの、例えばアルギニン、リジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸である。特定のアミノ酸(例えば、メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン及びそれらの混合物)の任意の立体異性体(すなわち、L、D、又はそれらの混合物)、又はこれらの立体異性体の組合せが、該特定のアミノ酸が遊離塩基の形態又は塩の形態の何れかで存在している限り、本発明の製薬用組成物中に存在していてもよい。一実施態様では、L−立体異性体が使用される。また本発明の組成物は、これらのアミノ酸の類似体と共に製剤化されうる。「アミノ酸類似体」とは、本発明の液状製薬用組成物の保存中に、ポリペプチドによる凝集体形成を低減させるという所望の効果をもたらす天然に生じるアミノ酸の誘導体を意図している。適切なアルギニン類似体は、例えばアミノグアニジン、オルニチン及びN−モノエチル−L−アルギニンを含み、適切なメチオニン類似体はエチオニン及びブチオニンを含み、適切なシステイン類似体はS−メチル−L−システインを含む。他のアミノ酸と同様、アミノ酸類似体は、遊離塩基の形態又は塩の形態の何れかで組成物中に導入される。本発明のある実施態様では、アミノ酸又はアミノ酸類似体は、タンパク質の凝集を防止し又は遅延化させるのに十分な濃度で使用される。
【0051】
本発明の更なる実施態様では、メチオニン(又は他の硫黄含有アミノ酸又はアミノ酸類似体)は、治療剤として作用するポリペプチドが酸化を受けやすい少なくとも一のメチオニン残基を有するポリペプチドである場合、メチオニン残基のメチオニンスルホキシドへの酸化を阻害するために添加されうる。「阻害」とは、経時的なメチオニン酸化種の蓄積を最小にすることを意図している。メチオニン酸化を阻害すると、適切な分子形態でのポリペプチドの保持が更に高まる。メチオニン(L、D又はその混合物)の任意の立体異性体又はそれらの任意の組合せを使用することができる。添加される量は、メチオニンスルホキシドの量が規制機関にとって許容可能であるような、メチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量とするべきである。典型的には、これは、組成物が約10%〜約30%を越えるメチオニンスルホキシドを含まないことを意味する。一般的に、これは、メチオニン残基に添加されるメチオニンの比率が、約1:1〜約1000:1、例えば10:1〜約100:1の範囲になるようにメチオニンを添加することで、達成することができる。
更なる実施態様では、本発明の製剤は高分子量ポリマー又は低分子量化合物の群から選択される安定剤を更に含有する。本発明のある実施態様では、安定剤は、ポリエチレングリコール(例えばPEG3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ−/ヒドロキシセルロース又はそれらの誘導体(例えばHPC、HPC−SL、HPC−L及びHPMC)、シクロデキストリン類、硫黄含有物質、例えばモノチオグリセロール、チオグリコール酸及び2−メチルチオエタノール、及び異なった塩(例えば塩化ナトリウム)から選択される。これらの特定の安定剤の各一が本発明の別の実施態様を構成する。
【0052】
製薬用組成物は、その中の治療的に活性なポリペプチドの安定性を更に高める付加的な安定剤をまた含有しうる。本発明にとって特に関心のある安定剤は、限定されるものではないが、メチオニンの酸化に対してポリペプチドを保護するEDTA及びメチオニン、及び凍結解凍又は機械的剪断に関連する凝集からポリペプチドを保護する非イオン性界面活性剤を含む。
【0053】
本発明の更なる実施態様では、製剤は界面活性剤を更に含有する。本発明のある実施態様において、界面活性剤は、洗浄剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロックポリマー(例えばプルロニック(登録商標)F68、ポロキサマー188及び407、トリトンX-100のようなポロキサマー類)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン及びポリエチレン誘導体、例えばアルキル化及びアルコキシル化誘導体(トゥイーン類、例えばTween-20、Tween-40、Tween-80及びBrij-35)、そのモノグリセリド又はそのエトキシル化誘導体、ジグリセリド又はそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レクチン及びリン脂質(例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール及びスフィンゴミエリン)、リン脂質誘導体(例えばジパルミトイルホスファチジン酸)及びリゾリン脂質誘導体(例えばパルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン及びエタノールアミン、コリン、セリンもしくはスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-ホスフェートエステル)並びにリゾホスファチジル及びホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)誘導体、例えばリゾホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及び極性頭部基、つまり、コリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール、正荷電DODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン及びリゾホスファチジルスレオニンの修飾体、及びグリセロリン脂質(例えばケファリン)、グリセロ糖脂質(例えばガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(例えばセラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、ニワトリ卵白リゾレシチン、フシジン酸誘導体(例えばタウロ-ジヒドロフシジン酸ナトリウム等々)、長鎖脂肪酸及びその塩C6−C12(例えばオレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン及び誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンのNα-アシル化誘導体、又はリジンもしくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンと中性又は酸性アミノ酸の任意の組合せを含むジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸と二つの荷電アミノ酸の任意の組合せを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体、DSS(ドキュセート・ナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドキュセート・カルシウム、CAS登録番号[128-49-4]、ドキュセート・カリウム、CAS登録番号[7491-09-0]、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸又はその誘導体、胆汁酸及びその塩及びグリシンもしくはタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、アニオン性(アルキル-アリール-スルホネート)一価界面活性剤、両性イオン性界面活性剤(例えばN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート類、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、カチオン性界面活性剤(第4級アンモニウム塩基)(例えば臭化セチル-トリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、非イオン性界面活性剤(例えばドデシルβ-D-グルコピラノシド)、エチレンジアミンに酸化プロピレンと酸化エチレンが連続して付加されたものに由来する四官能基ブロックコポリマーであるポロキサミン(例えばテトロニックス(Tetronic's))から選択することができ、あるいは該界面活性剤はイミダゾリン誘導体又はその混合物の群から選択されうる。これらの特定の界面活性剤の各一は本発明の別の実施態様を構成する。
【0054】
製薬用組成物に界面活性剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,2000が参照される。
【0055】
他の成分が本発明のペプチド薬学的製剤中に存在していてもよい。このような付加的な成分は、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、増量剤、張力修正剤、キレート剤、金属イオン、油性ビヒクル、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えばアミノ酸、特にベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン及びヒスチジン)を含みうる。もちろん、このような付加的な成分は、本発明の薬学的製剤の全体的な安定性に悪影響がないようにすべきである。
本発明のペプチドを含む製薬用組成物は、幾つかの部位、例えば局所的部位、特に皮膚及び粘膜部位、動脈、静脈、心臓への投与等、バイパス吸収がなされる部位、例えば皮膚、皮下、粘膜又は腹部への投与等、吸収に関連する部位において、このような治療が必要とされる患者に投与されうる。
【0056】
本発明の製薬用組成物は、幾つかの投与経路、例えば皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、舌、舌下、頬、口、経口、胃、及び腸、鼻、肺を介して、例えば細気管支及び肺胞又はそれらを組合せたもの、表皮、真皮、経皮、膣、直腸、眼球を介して、例えば結膜、尿管、及び非経口を介して、このような治療を必要としている患者に投与されうる
【0057】
本発明の組成物は、幾つかの投与形態、例えば溶液、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、多相エマルション、フォーム、膏薬、ペースト、プラスター、軟膏、錠剤、被覆錠剤、リンス、カプセル、例えば硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセル、坐薬、直腸用カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、パウダー、エアゾール、吸入剤、点眼剤、眼球用軟膏、眼球用リンス、膣用ペッサリー、膣用リング、膣用軟膏、注入溶液、インサイツ形質転換溶液、例えばインサイツゲル化、インサイツ硬化用、インサイツ沈殿化、インサイツ結晶化のもの、注入液、及び移植片として投与されうる。
【0058】
本発明の組成物は、更に、ペプチドの安定性を更に高め、生物学的利用能を増加させ、溶解度を高め、副作用を低減させ、当業者によく知られている時間療法を達成し、患者のコンプライアンスを高め、又はそれらの任意の組合せのために、例えば共有的、疎水的及び静電気的相互作用を介して、薬剤担体、薬剤送達系、及び進化した薬剤送達系において配合し、又は付加されうる。担体、薬剤送達系及び進化した薬剤送達系の例は、限定されるものではないが、ポリマー、例えばセルロース及び誘導体、多糖類、例えばデキストラン及び誘導体、デンプン及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリラート及びメタクリラートポリマー、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、及びそれらのブロックコ−ポリマー、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例えば熱ゲル化系、例えば当業者によく知られているブロックコポリマー系、ミセル、リポソーム、ミクロスフィア、ナノ粒子、液晶、及びそれらの分散液、L2相、及び脂質−水系における相挙動が当業者によく知られているそこでの分散液、ポリマー性ミセル、多相エマルション、自己乳化剤、自己−マイクロ乳化剤、シクロデキストリン及びそれらの誘導体、及びデンドリマーを含む。
【0059】
本発明の組成物は、全て当業者によく知られたデバイスである、定量吸入器、乾燥パウダー吸入器、及び噴霧器等を使用し、本発明のペプチドを肺に投与するための、固形、半固形、パウダー及び溶液の製剤に有用である。
【0060】
本発明の組成物はまた、制御、徐放性、持続性、遅延性及び低速放出性の薬剤送達系の製剤に有用である。特に限定されるものではないが、組成物は、当業者によく知られている非経口用の制御放出性及び徐放性系(双方の系とも、投与の数が何倍も低下する)製剤に有用である。更に好ましいのは、皮下投与される制御放出性及び徐放性系のものである。本発明の範囲を限定するものではないが、有用な制御放出性及び組成物の例は、ヒドロゲル、油性ゲル、液晶、ポリマー性ミセル、ミクロスフィア、ナノ粒子である。
【0061】
本発明の組成物に有用な制御放出性系の作製方法は、限定されるものではないが、結晶化、凝縮、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧ホモジナイズ、カプセル化、噴霧乾燥、マイクロカプセル化、コアセルベーション、相分離、ミクロスフィアを製造するための溶媒蒸発、押出及び超臨界流体プロセスを含む。一般的には、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release(Wise, D.L.編. Marcel Dekker, New York, 2000)及びDrug and the Pharmaceutical Sciences vol.99:Protein Formulation and Delivery(MacNally, E.J.編. Marcel Dekker, New York, 2000)を参照。
【0062】
非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン型シリンジにより、皮下、筋肉内、腹膜内又は静脈内注射によって実施されうる。あるいは、非経口投与は、注入ポンプにより実施することもできる。更なる選択肢は、鼻用又は肺用スプレーの形態でペプチドを投与するための溶液又は懸濁液であってよい組成物にある。更なる選択肢としては、本発明のペプチdを含む製薬用組成物を、例えば針のない注射、又はイオン導入パッチであってよいパッチによる経皮投与用、又は頬等の経粘膜投与用に適合させることもできる。
本発明の更なる詳細は、以下の非限定的な実施例により例示される。
【0063】
(方法論)
活性化の初期比率の算出
活性化の初期比率は、Agilent Bioanalyser 2100(分析的泳動を行うチップ・ベースの装置)を使用して、Agilent Protein 80キット (Agilent 5067-1515)を使用して測定された。解析は、「Agilent Bioanalyser 2100エキスパート・ユーザーズ・ガイド」(マニュアル・パート番号:G2946-90000、2003年11月版)において提供される製造業者インストラクション及び「Agilent Protein 80 キット・クイックスタートガイド」(パート番号:G2938-90063、2007年4月版(両方とも:Agilent Technologies、ドイツ社、ヒューレットパッカード通り8、76337 ワルドブロン、ドイツ)。
【0064】
500マイクロリットルのエッペンドルフチューブに、4マイクロリットルまでの試料を、2マイクロリットルのprotein80キット・サンプルバッファーに加える。試料は、100℃のヒートブロックで5分間沸騰した。試料は、picofugeで15秒間の遠心前に、10秒間冷却された。84マイクロリットルの精製水を加えて、バイアルは混合された。方法解析は、分解することが可能である上述した製造業者インストラクションに従って泳動した:重鎖FVII(a)、軽鎖FVII(a)、及び単鎖FVIIの順番で溶出させた活性化の比率は、トータルFVII(HC+LC+SC)と比例した重鎖FVII(a)(HC)+軽鎖FVII(a)(LC)との比率である。例えば:

活性化の比率=(HC+LC)/(HC+LC+SC)*100%
【実施例】
【0065】
実施例1:ヒト第VII因子の活性化のための反応時間の算出
10mMのヒスチジン、12mMのCaCl、60mMのNaCl(pH6.0、5℃)を含む6.316kgのV158D/E296V/M298Q−FVII(a)(WO02/22776の実施例6)溶液はUV280によって測定し、1cmの光路を用いて2.31AUの吸光度を有していた。濃度は、1.62g/kgであるモル吸光指数係数(0.7g/kg*AU)を使用して算出された。活性化の初期比率は、上記のプロトコルに従い20%であると決定された。反応のための変数は、以下の通りに決定された:
活性化の必要な比率:95%;
pH:6.50;
温度:21.5℃。

活性化時間は、式(I)の方程式に従って128分と算出された。

活性化反応は、25mlの1MのNaOHを使用して、pHを上方へ6.50(21.5℃)に調節することによって開始された。128分後に、22mlの1MのHClを使用して、pHは5.80(22.3℃)まで再び下げられた。活性化反応の終了後、試料は上記の方法論を使用して、解析に供され、それにより活性化の比率は95.6%と報告された。
活性化の実際の比率は、式(I)の方程式によって予測されたものから、2時間以上の酵素的活性化後、0.6%だけ変化した。
【0066】
実施例2:ヒト第VII因子の活性化のための反応時間の更なる算出
この実験は、V158D/E296V/M298Q−FVII(a)(WO02/22776の実施例6)の5つの別々の生成バッチについて実施され、本発明の方法の正確性と整合性を評価するため、各々は活性化の初期比率について異なる値を有する。この実験は、実施例1に記載の様式で実施され、結果は表1にみることができる。

この評価からの結果は5つのバッチのうち2つを示し、本発明の方法は活性化の最終的な比率を正確に予測した。残りの2つのバッチにおいて、変異は、重大なあるいは不利益な変異とは考えられない2%だけであった。従って、表1は本発明のモデルのクロス確認を示す。実験データは、パイロットプロジェクトの5つの異なる産生バッチで予測されたモデルであるデータと比較される。非常に可変的な入力(16−74%の活性化プロテアーゼ、「作動時間ゼロ」)について、一定の出力が予測され、且つ得ることができる。
【0067】
本願明細書の他で組み込まれた特定の資料が別に提供されているかに関わらず、ここに引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献は、各文献が、出典明示により個々にかつ特に援用され、その全内容がここに記載されているかの如く、その全体が出典明示によりその全内容がここに援用される(法律により許容される最大範囲)。
発明を記述する際に使用される「a」及び「an」及び「the」なる用語及び類似の指示語は、ここで別の記載がなされていないか、文脈上はっきりと矛盾していない限りは、単数形及び複数形の双方をカバーしていると解されるものである。例えば「化合物(the compound)」というフレーズは、特に他で示されていない限り、本発明の様々な「化合物(compounds)」又は特に記載された態様を指すものと理解される。
特に示さない限り、ここで提供される全ての正確な値は、対応する近似値の代表例である(例えば、特定の因子又は測定に対して提供される全ての正確な例示的値は、適切な場合は、「約」により修飾される、対応する近似測定値を提供するとみなすことができる)。
他に言及しない又は前後関係ではっきりと矛盾していない限りは、要素又は要素群に関して、「含有する」、「有する」、「含む」又は「含んでいる」等の用語を使用する本発明の任意の態様又は実施態様のここでの記載は、その特定の要素又は要素群「からなる」、「本質的になる」、又は「実質的に含む」本発明の類似した態様又は実施態様をサポートすることを意図したものである(例えば、特定の要素を含むものとしてここに記載されている組成物は、他に言及しない限り又は前後関係ではっきりと矛盾していないならば、その要素からなる組成物をまた記載しているものと理解すべきである)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セリンプロテアーゼ血液凝固因子の初期濃度を測定する工程、
(b)活性化セリンプロテアーゼ血液凝固因子の初期比率を測定する工程、
(c)セリンプロテアーゼ血液凝固因子活性反応時間を、工程(a)及び(b)の各々で測定された値と、活性化セリンプロテアーゼ血液凝固因子の必要とされる比率の値との相関によって計算する工程、及び
(d)セリンプロテアーゼ血液凝固因子活性反応を工程(c)で計算された時間にわたって実施する工程、及び
(e)工程(c)で計算された反応時間の後、反応を終結する工程を含むセリンプロテアーゼ血液凝固因子を活性化する方法。
【請求項2】
工程(c)の反応時間Tは式(I):

[式中、「akt」は切断されたポリペプチドの必要とされる比率を示し、「akt0」は工程(b)で測定された切断ポリペプチドの初期の比率を示し、「F0」は工程(a)で測定されたポリペプチドの初期濃度(g/l)を示し、「k(T)」は温度Tの関数として所与の反応の反応定数を示し、「xb」はモル分率を示す]
に従って計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
k(T)は多項式又はスプライン関数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)に記載の相関の手順は式(II):

[式中、akt、akt0、k、xb及びF0は請求項2に定義の通りであり、kは反応定数である]
に従って計算される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
k=0.29である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
xb=1である、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
(a)セリンプロテアーゼ血液凝固因子の初期濃度を測定する工程、
(b)活性化セリンプロテアーゼ血液凝固因子の初期比率を測定する工程、
(c)セリンプロテアーゼ血液凝固因子活性反応時間を、工程(a)及び(b)の各々で測定された値と、活性化セリンプロテアーゼ血液凝固因子の必要とされる比率の値との相関によって計算する工程、及び
(d)セリンプロテアーゼ血液凝固因子活性反応を工程(c)で計算された時間にわたって実施する工程、及び
(e)工程(c)で計算された反応時間の後、反応を終結する工程
を含む活性化セリンプロテアーゼ血液凝固因子の分解を防止する方法。
【請求項8】
前記セリンプロテアーゼは第VII因子、第VII因子アナログ又はその誘導体、あるいは第IX因子である、請求項1−7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第VII因子アナログはV158D/E296V/M298Q-FVII(a)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
切断の必要とされる比率は、90%と99%との間、例えば94%と99%との間、例えば95%と97%との間、例えば96%と98%との間、例えば97%と99%との間である、請求項1−9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
切断反応はカルシウムイオン(例えば、塩化カルシウム)の付加を更に含む、請求項1−10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
活性化反応は6.0と8.0との間、例えば6.25と6.75(例えば、6.5±0.05)との間のpHで実施される、請求項1−11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
終結はpHを約6.0より下の値に、例えば5.5と6.0との間(例えば、5.8)に下げることを含む、請求項1−12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1−13の何れか一項に記載の方法に従って得ることができるセリンプロテアーゼ。
【請求項15】
請求項1−14の何れか一項に記載の方法に従って得ることができる活性化第VII(a)因子アナログ又はその誘導体を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−522530(P2011−522530A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511031(P2011−511031)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056675
【国際公開番号】WO2009/144318
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】