説明

ポリマーの付着を低減させる方法及び装置

スラリー重合システムにおける反応器表面へのポリマー付着を低減させる方法であって:反応器へ供給モノマーと供給触媒とを供給して重合媒体を形成する工程と;前記重合媒体に、前記供給触媒とは別の供給路からアルコールを供給する工程とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、反応媒体との接触面へのポリマー付着を減少させる添加剤を用いる、新規なスラリー重合法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
イソオレフィンポリマーは、カルボカチオン重合プロセスで製造される。特に重要なものは、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体のブチルゴムである。ブチルゴムは低温カチオン重合によって製造される。低温カチオン重合では一般に、高分子量のブチルゴムを製造するために、純度>99.5wt%のイソブチレンと、純度>98.0wt%のイソプレンとが必要とされる。
【0003】
イソブチレンのカルボカチオン重合、及びイソブチレンとイソプレン等との共重合は、機構的に複雑である。例えばOrganic Chemistry 第6版、MorrisonとBoyd著、Prentice-Hall社、1084-1085頁(Englewood Cliffs, New Jersey 1992年)、及びK. Matyjaszewski著、Cationic Polymerizations(Marcel Dekker社,New York,1996年)が参照される。
触媒は一般に、開始剤とルイス酸の2成分から成る。ルイス酸の例として、AlCl3及びBF3が挙げられる。開始剤の例としては、HCl、RCOOH(Rはアルキル基)、及びH2O等のブレンステッド酸が挙げられる。
重合プロセスの開始段階と呼ばれるステップにおいて、イソブチレンはルイス酸/開始剤のペアと反応してカルベニウムイオンを生成する。次に、成長段階と呼ばれるステップにおいて、生成したカルベニウムイオンに別のモノマーニットが付加する。これらのステップは、一般に希釈剤または溶媒中で生じる。成長段階の化学反応には、温度、希釈剤の極性、及びカウンターイオン種が影響する。
【0004】
ブチルゴム、ポリイソブチレン等の製造には、塩化メチル希釈剤中でのスラリー重合が広く用いられている。一般にこのようなスラリー重合では反応混合物の希釈剤として、通常−90℃以下の低温の塩化メチルが広く用いられている。塩化メチルは、モノマーと塩化アルミニウム触媒は溶解するがポリマー製品は溶解しない等の、様々な理由で用いられている。また、塩化メチルは低温重合に適した凝固点と、ポリマーと未反応モノマーとの効率的分離に適した沸点を有している。
さらに、塩化メチルを用いたスラリー重合プロセスには、溶液重合のポリマー濃度が約8%から12%であるのに対し、反応混合物中において容積比で26%から37%のポリマー濃度を達成できる等の様々な利点がある。重合系全体の粘度が相対的に低いため、より有効に重合熱を熱交換によって除熱することができる。
塩化メチルを用いたスラリー重合プロセスは、高分子量ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレンブチルゴムポリマー、イソブチレンとパラ−メチルスチレンの共重合体、及び星状分岐ブチルゴムの製造に用いられている。
【0005】
しかし、塩化メチルを用いる重合には、多くの問題点がある。
例えば、反応器中のポリマー粒子が互いに凝集して反応器壁、熱交換器表面、インペラー、及び撹拌機/ポンプに集合する傾向がある。凝集速度は、反応温度が上昇すると急激に増加する。凝集した粒子は、反応器の出口ラインや、発熱反応の重合熱を除去するために用いられる熱交換設備等の、凝集した粒子が接触する表面に付着、成長して、被覆する傾向がある。低温の反応条件を維持しなければならないため、これは重要な問題である。
【0006】
スラリー重合に伴う別の問題は、ポリマーが反応器の壁において生成または付着する傾向があることである。このようなポリマーの形成または付着は、ポリマーが反応器の壁面において生成するとき生じ、本願では「フィルム付着」または「付着」と呼んで、スラリー中での「粘着性」ポリマー粒子の凝集または集合と区別する。本願では、スラリー中での「粘着性」ポリマー粒子の凝集または集合は、「ポリマー凝集」、「粒子凝集」、または「凝集」と呼ぶ。
反応器壁面へのポリマーフィルム付着速度は、一般に重合速度に比例する。一方、粒子凝集は、主にスラリーの性状、流動状態、粒子の付着性に依存する。
【0007】
ブチルゴムの製造に用いられる商業生産用反応容器は、容積が10から30リットル以上で、インペラーポンプにより高流速で循環されて十分に撹拌され得る反応容器である。重合反応とポンプの両者から熱が生じるので、スラリーを低温に保つためには、重合システムが除熱能力を有することが必要である。このような、定流速撹拌槽反応器(CFSTR)の例は、本願に参照として組み込まれる米国特許第5,417,930号に開示されており、本願では「反応器」または「ブチル反応器」と呼ぶ。
【0008】
ブチル反応器では、スラリーはポンプによって熱交換器のチューブを通して循環される。シェル側で液体エチレンを沸騰させることにより冷却が行なわれ、スラリーの温度は沸騰エチレンの温度、要求される熱流束、及び全熱伝達抵抗によって定まる。
スラリー側では、凝集または付着によって熱交換器の表面に次第にポリマーが付着して熱交換が妨害され、スラリーの温度が上昇する。
熱交換に対する熱伝達抵抗は、冷却液の入口及び出口温度と流速を計測することにより監視することができ、ポリマー付着の指標とすることができる。熱交換器表面へのポリマー付着による熱交換に対する熱伝達抵抗が許容範囲を超えた場合、反応器を停止して掃除しなければならない。
ポリマーの付着に関し、いくつかの特許出願がなされている(例えば米国特許第2,534,698号、米国特許第2,548,415号、米国特許第2,644,809号)。しかし、これらの特許出願では、商業生産を行なうためのプロセスにおける熱交換器表面のフィルム付着の問題は十分解決されていない。
【0009】
公開番号CN 1417234Aの中国特許出願第01134710.4号には、カチオン重合によるイソオレフィンのポリマーまたはコポリマーの製造方法が開示されている。この出願には、塩化炭化水素希釈剤中でC〜Cのイソオレフィンモノマーの重合反応や他のモノマーとの共重合体反応を、ルイス酸をプライマーに用いて行ない、反応系にカルボン酸エステル、エーテル、ケトン、アミン、スチレン、アルキル置換スチレン等の分散剤を添加することが提案されている。
分散剤は、重合系の粘度を低下させ、希釈剤中における不溶性ポリマー粒子の分散状態をより均一にするとしている。この出願によれば、反応温度が−200℃より低いとき、安定した分散状態の重合系が得られ、熱移動及び物質移動の問題が解決され、添加する分散剤は容易に入手でき、さらに、分子量分布(MWD)の狭いポリマーが得られるという。
しかし、ルイス酸に対する共開始剤は開示されておらず、効果があるとされる分散剤のいくつかは、公知のコモノマーである。
【0010】
ヒドロフルオロカーボン(HFC)は、オゾン層を破壊する可能性が低い(ゼロのこともある)ことから、近年環境にやさしい冷媒として使用されている。HFCには塩素が含まれていないことが、オゾン層を破壊しにくいことに関係していると考えられている。また、HFCは一般に炭化水素や塩素化炭化水素と比べて燃えにくい。
最近、HFCを重合系の希釈剤に用いることが開示されている。HFCを用いることができる重合媒体、プロセス、反応器及び重合システムは、次の特許文献に開示されている。国際公開第2004/058827号; 国際公開第2004/058828号; 国際公開第2004/058829号; 国際公開第2004/067577号; 国際公開第2006/011868号; 米国出願第2005101751号; 米国出願第2005107536号; 米国出願第2006079655号; 米国出願第2006084770号; 米国出願第2006094847号; 米国出願第2006100398号; 及び米国出願第2006111522号。
【0011】
国際公開第02/34794号には、ヒドロフルオロカーボンを用いたフリ−ラジカル重合法が開示されている。このほかの参照特許文献として、独国特許出願第100 61 727 A号、国際公開第02/096964号、国際公開第00/04061号、米国特許第5,624,878号、米国特許第5,527,870号、及び米国特許第3,470,143号が挙げられる。
【0012】
重合方法及びシステムを改良して反応器表面へのフィルム付着を低減させるために、従来とは異なる希釈剤の混合物、または希釈剤用添加剤を開発することが望ましい。このような改良された方法及びシステムは、ポリマー付着と反応器の熱伝達抵抗を、プロセスのパラメータ、条件または構成要素に関し妥協することなく、および/または生産性/生産能力、および/または高分子量ポリマーを製造可能な能力を犠牲にすることなく、改良することができるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は、供給触媒とは別の供給路から供給されるアルコールを用い、反応器表面へのフィルム付着速度を低減させてポリマーを製造する重合システム及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一側面では、この発明はスラリー重合システムの反応器表面へのポリマー付着を低減させる方法に関する。この方法には、反応器にモノマーと触媒とを供給して反応媒体を形成する工程が含まれる。この発明の1つの実施形態では、アルコールを反応媒体に非触媒供給路、例えば供給モノマーから供給することにより、フィルム付着を防止する。
【0015】
ひとつの実施形態では、アルコールの炭素数は1から4である。
別の実施形態では、アルコールはメタノールである。アルコールは、重合される前のモノマー中に少なくとも2または5重量ppm(wppm)含まれる。
【0016】
ひとつの実施形態では、フィルム付着を防止可能な量のアルコールが供給モノマーに添加され、アルコール添加量は重合される前のモノマーの全重量に対し好ましくは最大30wppm添加され、好ましくは2から20wppm、好ましくは5から10wppm添加される。
別の実施形態では、供給触媒にアルコールが添加されない。
【0017】
別の実施形態では、この方法には、重合媒体の全重量に対し最大10wppmの1種類以上の非イオン性またはブロンステッド酸ではない酸素含有化合物を、重合媒体に供給することが含まれる。酸素含有化合物は、例えば、炭素数2から12のエーテル、ケトン、アルデヒドからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、1種類以上の酸素含有化合物はポリマー付着をさらに低減させることができる。
別の実施形態では、1種類以上の非イオン性酸素含有化合物は、重合媒体の全重量に対し5wppm未満含まれる。1種類以上の酸素含有化合物は触媒とともに供給される。
【0018】
触媒には、1以上のルイス酸と、1以上の開始剤とが含まれる。
ひとつの実施形態では、1以上の開始剤はそれぞれ独立して、水、ハロゲン化水素、カルボン酸、カルボン酸ハライド、スルホン酸、アルコール、フェノール、多価ハライド、三級アルキルハライド、三級アラルキルハライド、三級アルキルエステル、三級アラルキルエステル、三級アルキルエーテル、三級アラルキルエーテル、アルキルハライド、アリールハライド、アルキルアリールハライド、アリールアルキル酸ハライドからなる群から選択される。
別の実施形態では、触媒にアルコールが含まれていない。触媒にはさらに、弱く配位したアニオンが含まれる。
【0019】
ひとつの実施形態では、供給モノマーには、希釈剤と、1以上のモノマーとが含まれている。
1以上のモノマーはそれぞれ独立して、オレフィン、α−オレフィン、二置換オレフィン、イソオレフィン、共役ジエン、非共役ジエン、スチレン系、置換されたスチレン系、ビニルエーテルからなる群から選択される。
別の実施形態では、1以上のモノマーはそれぞれ独立して、スチレン、パラ−アルキルスチレン、パラ−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、β−ピネン、ミルセン、6,6−ジメチルフルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、ピペリレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルからなる群から選択される。
【0020】
希釈剤には、例えば塩化および/またはフッ化炭化水素等のハロゲン化炭化水素を用いることができる。
ひとつの実施形態では、希釈剤は塩化メチルからなる。別の実施形態では、希釈剤は1以上のヒドロフルオロカーボン(HFC)からなる。
HFCは、式:CxHyFzで表される。ここで、xは1から40の整数であり、yとzは1以上の整数である。
別の実施形態では、xは1から10、1から6、または1から3である。
HFCは、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、1、1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。希釈剤は、希釈剤の全容積に対し25から100容積%のHFCを含む。HFC希釈剤にはさらに、例えば塩化メチル等のHFC以外のハロゲン化炭化水素が含まれる。希釈剤に炭化水素、非反応性オレフィン、および/または不活性ガスが含まれていてもよい。
別の実施形態では、希釈剤は−85℃において、40より大きい誘電率を有する。
【0021】
反応器は、連続流撹拌槽反応器、プラグフロー反応器、走行ベルトまたは回転ドラム反応器、ジェットまたはノズル反応器、チューブ状反応器、バッチ反応器、及び自動冷却ボイリングプール反応器からなる群から選択される。
【0022】
ひとつの実施形態では、反応器内において、フィルムは生成したポリマー1gに対し10mg以下の比率で形成され、別の実施形態では生成したポリマー1gに対し8,6,4,3,または2mg以下の比率で形成される。
【0023】
別の実施形態では、この発明の方法には、反応器からポリマースラリーを回収し、ポリマースラリーから低アルコール濃度の希釈剤を分離し、分離された希釈剤をモノマー供給路に再循環し、供給モノマーにアルコールを添加することが含まれる。
ひとつの実施形態では、希釈剤の分離には、酸素含有化合物を除去することが含まれる。
ひとつの実施形態では、希釈剤の分離には、例えば単純な蒸留または抽出蒸留等の蒸留操作が含まれる。
【0024】
ひとつの実施形態では、アルコールをモノマー供給路に添加する。このとき、1以上の供給路の内の少なくとも1におけるアルコール濃度を測定し、アルコール添加速度を制御することにより、所望のレベルのアルコール濃度を得る。
所望のレベルのアルコール濃度は、反応器表面への付着を減らすため、必要に応じて調整することができる。
【0025】
この発明の他の側面によれば、ハロゲン化炭化水素希釈剤と、1以上のモノマーと、1以上のルイス酸及び1以上の開始剤から成る触媒とを含む重合媒体を有する反応器を備えるスラリー重合システムが提供される。
このスラリー重合システムは、触媒を反応器に供給するラインと、触媒ラインとは別にモノマーを反応器へ供給するラインと、触媒ラインとは別にアルコールを反応器へ供給するラインとを備える。
別の実施形態では、反応器にブチル反応器を用いることができる。
【0026】
このスラリー重合システムの別の実施形態には、例えば流量計や分析器等の、反応器へのアルコールの総添加量を測定する手段と、流量調整器や調整弁等の、アルコール添加ラインからのアルコール添加速度を調整して所望のアルコール供給速度を得るための手段とが含まれる。
ひとつの実施形態では、アルコール添加ラインはモノマー供給ラインに接続される。アルコール分析器には、モノマー供給ラインからサンプルを採るオンライン分析器が含まれる。
ひとつの実施形態では、スラリー重合システムには、反応器からの流出液から希釈剤を回収し、この希釈剤を精製し、低アルコール濃度の希釈剤をモノマー供給ラインへ再循環する希釈剤回収ループを備える。
希釈剤の精製は、例えば単蒸留または抽出蒸留等の分留により行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、この発明のひとつの実施形態に係る重合システムのフローを模式的に表わす図である。
【図2】図2は、別の重合システムについての、酸素含有化合物の有無によるフィルム付着速度を比較する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願で触媒というときは、この発明に開示するオレフィンモノマーの重合反応の触媒に用いることができるルイス酸またはその他の金属錯体と、少なくとも1の開始剤と、任意成分としての他の少量の触媒成分とを含む触媒を意味する。
供給触媒とは、重合媒体へ導入されるルイス酸を含有する供給物を意味し、開始剤及び他の触媒成分が別の供給路、または供給モノマーから添加されるか否かは問わない。
供給モノマーとは、ルイス酸触媒、またはルイス酸と開始剤との複合体が含まれていない、反応器への直接的または間接的な供給流を意味する。
重合媒体とは、反応器へモノマーと触媒とを別々に供給して得られる、触媒と、重合可能なモノマーと、希釈剤とからなる混合物を意味する。
【0029】
ひとつの実施形態では、この発明は、アルコールを反応媒体へモノマーとともに供給することにより、スラリー重合システムの反応器表面へのポリマー付着を低減可能な方法を提供する。
【0030】
所望のポリマーの製造を実施するための重合条件の選択と、ポリマーを生成させるための適切な重合性モノマーの選択は、本願に開示するプロセスのパラメータと原料成分の性質に基づいて当業者の能力の範囲内で行なえる。
重合プロセスには多くの工程順序があり、所望の性質のポリマーを製造するために用いることができる重合成分には多くの種類がある。
好ましい実施形態では、このようなポリマーにはポリイソブチレンホモポリマー、イソブチレン−イソプレン(ブチルゴム)コポリマー、イソブチレンとパラメチルスチレンのコポリマー、及び星状分岐ブチルゴムターポリマーが含まれる。
【0031】
希釈剤とは、希釈用または溶解用の薬剤を意味する。希釈剤は、特に、ルイス酸、その他の金属錯体、開始剤、モノマー、その他の添加剤の溶剤として作用する薬剤と定義される。この発明では、希釈剤は重合媒体中の各成分、すなわち触媒成分やモノマー等の一般的性質を変化させない。しかし、希釈剤と反応物との相互作用は生じ得る。
好ましい実施形態では、希釈剤と触媒成分やモノマー等との実用上問題となるような反応は生じない。さらに、希釈剤と言う用語には、2種類以上の希釈剤の混合物が含まれる。
【0032】
反応器とは、その中で化学反応が生じる容器を意味する。
反応器表面には、重合媒体やスラリーと接触または接触可能な反応容器の壁面や、熱交換器の内面、撹拌器、インペラー、反応器出口または流出ライン等の、ポリマー付着やフィルム付着が生じ得る部分が含まれる。
【0033】
スラリーとは、希釈剤から沈殿したポリマーと、ルイス酸、及び開始剤を含む希釈剤を意味する。スラリー濃度とは、スラリーの全容積に対する、一部または全部が沈殿したポリマーの容積パーセントを意味する。
【0034】
本願では、CHEMICAL AND ENGINEERING NEWS, 63(5)、27頁 (1985年)に記載されている周期律表の新しい番号付与方式を用いる。
【0035】
ポリマーと言う用語は、ホモポリマー、コポリマー、中間体ポリマー、ターポリマー等の意味で用いる。
また、コポリマーと言う用語は、少なくとも2種類のモノマーを含み、任意に他のモノマーを含むポリマーを意味する。ポリマーがモノマーから成ると言うときは、そのモノマーは重合された形態またはそのモノマーの誘導体の形態でポリマー中に存在する。また、触媒成分がその成分の中立安定化形態から成ると言うときは、当業者であれば、その成分のイオン化された形態がモノマーと反応してポリマーを生成させる形態を意味することが理解できるであろう。
【0036】
イソオレフィンとは、同一の炭素原子上に2つの置換基を有するモノマーを意味する。マルチオレフィンとは、二重結合を2つ有するモノマーを意味する。本願でエラストマーまたはエラストマー組成物と言うときは、ASTM D 1566の定義に従うポリマーまたはポリマー組成物を意味する。本願では、エラストマーまたはエラストマー組成物と「ゴム」を同義で用いることがある。
【0037】
アルキル基とは、パラフィン系炭化水素基であって、アルカンの示性式から1以上の水素を除いて誘導される基であり、例えばメチル基(CH3)、あるいはエチル基(CH3CH2)等を言う。アリール基とは、例えばベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン等の、芳香族の特徴を有する環構造の炭化水素基を意味し、一般に、その構造中に二重結合(「不飽和」)を交互に有する炭化水素基である。従って、アリール基とは芳香族化合物の示性式から1以上の水素を除いて誘導される基であり、例えばフェニル基、あるいはC6H5等を言う。
【0038】
置換されたとは、少なくとも1の水素原子を少なくとも1の置換基で置き換えることを意味する。置換基は、例えば、ハロゲン(塩素、臭素、フッ素、ヨウ素)、アミノ基、ニトロ基、スルホキシ基(スルホネートまたはアルキルスルホネート)、チオール基、アルキルチオール基、及びヒドロキシ基;アルキル基、炭素数1から20の直鎖または分岐鎖を有する基であって、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等を有する基;アルコキシ基、炭素数1から20の直鎖または分岐鎖を有するアルコキシ基であって、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、ter-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、 ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、及びデシルオキシ基を含む基;ハロアルキル基、すなわち、少なくとも1のハロゲンで置換された直鎖または分岐鎖の炭素数1から20のアルキル基であり、例えばクロロメチル基、ブロモメチル基、フルオロメチル基、ヨードメチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2-フルオロエチル基、3-クロロプロピル基、3-ブロモプロピル基、3-フルオロプロピル基、4-クロロブチル基、4--フルオロブチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジフルオロメチル基、ジヨードメチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2ジブロモエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、3,3-ジクロロプロピル基、3,3-ジフルオロプロピル基、4,4- ジクロロブチル基、4,4-ジフルオロブチル基、トリクロロメチル基、4,4-ジフルオロブチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、及び2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基から成る群から選択される。
従って、例えば「置換されたスチレンユニット」には、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン等が含まれる。
【0039】
ひとつの実施形態では、この発明は、供給モノマーの希釈剤中でのアルコールの使用により、反応器表面にポリマーフィルムが形成されにくいポリマースラリーを製造することに関する。希釈剤は、例えば塩化炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、あるいはヒドロフルオロカーボンと炭化水素および/または塩化炭化水素の混合物等である。
より詳しくは、この発明は、塩化炭化水素希釈剤、ヒドロフルオロカーボン(HFC)希釈剤、またはHFC希釈剤と炭化水素および/または塩化炭化水素の混合希釈剤とともに供給されるモノマー中にアルコール添加剤を使用して、イソオレフィンとジエンおよび/またはアルキルスチレンの重合あるいは共重合を行い、反応器表面でのポリマーフィルム形成が顕著に低減されたイソオレフィンのホモポリマーあるいはコポリマーを製造することに関する。
この発明はさらに、供給モノマー中にアルコール添加剤を使用してイソオレフィンとジエンの重合あるいは共重合を行い、従来の重合システムと比較して反応器表面でのポリマーフィルム形成が顕著に低減されることによって、反応器の操業時間がより延長され得る、イソオレフィンコポリマーを製造することに関する。
【0040】
別の実施形態では、チューブ状反応器へ供給されるモノマー中にアルコール添加剤を使用して、熱交換チューブへのポリマー付着を低減させ、および/または、インペラーへのポリマー付着を低減させることにより、操業時間をより長くすることができる。
別の実施形態では、チューブ状反応器へ供給されるモノマー中にアルコール添加剤を高温下で使用して、はるかに長い操業時間でポリマーを製造する(例えば他の重合システムで可能な操業時間よりも15時間を超えて長く、好ましくは20時間を超えて長く、好ましくは30時間を超えて長く、より好ましくは48時間を超えて長い)
【0041】
別の実施形態では、除熱が希釈剤とモノマーの混合物の蒸発により行われる自動冷却ボイリングプール反応器へ供給されるモノマー中にアルコール添加剤を使用して、特に反応器表面と撹拌機/インペラーでのフィルム形成あるいは付着を低減させる。
【0042】
ひとつの実施形態では、この発明は、アルコールを含有する供給モノマー希釈剤を使用する新規な重合システムの発見に関する。これらの希釈剤は、選択された触媒とモノマーを溶解するが、ポリマー製品に対しては貧溶媒である。これらの希釈剤を用いた重合システムは、アルコール添加剤を使用しない重合システム、または供給触媒中の1成分としてのみアルコールを使用する重合システムと比較して、反応器表面へのポリマー付着が生じにくい。
【0043】
<モノマー及びポリマー>
本願の重合システムで重合されるモノマーには、この発明により重合可能な全ての炭化水素モノマーが含まれる。
好ましいモノマーには、1以上のオレフィン、α−オレフィン、二置換オレフィン、イソオレフィン、共役ジエン、非共役ジエン、スチレン系および/または置換されたスチレン系、及びビニルエーテルが含まれる。
スチレン系モノマーは、アルキル基、アリール基、ハライド、またはアルコキサイド基で置換(環上で)されている。好ましくは、モノマーには炭素原子が2から20個含まれ、より好ましくは2から9個含まれ、さらに好ましくは3から9個含まれている。
好ましいオレフィンの例として、スチレン、パラ−アルキルスチレン、パラ−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、イソブチレン、2-メチル-1-ブテン、3 -メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ペンテン、イソプレン、ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、β-ピネン、ミルセン、6,6-ジメチル-フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ピペリレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル及びイソブチルビニルエーテル等が挙げられる。
2以上のモノマーを組み合わせることもできる。スチレン系ブロックコポリマーをモノマーとして用いることもできる。好ましいブロックコポリマーには、スチレン、パラ−メチルスチレン、アルファ−メチルスチレン等のスチレン系モノマーと、イソプレン、ブタジエン等のCからC30のジオレフィンとのコポリマーが含まれる。
特に好ましいモノマーの組合せには、1)イソブチレンとパラ−メチルスチレン、2)イソブチレンとイソプレンが含まれ、イソブチレンのホモポリマーを用いることもできる。
【0044】
また、好ましいモノマーには、「Cationic Polymerization of Olefins, A Critical Inventory」、Joseph Kennedy著、(Wiley Interscience社、New York、1975年)に記載された、カチオン重合可能なモノマーが含まれる。
モノマーには、電子供与基を有することによりカチオンを安定化するか、中心を成長させることができるような、カチオン重合可能な全てのモノマーが含まれる。
【0045】
ひとつの実施形態では、モノマーは重合媒体中に75wt%から0.01wt%の範囲で存在し、別の実施形態では60wt%から0.1wt%、あるいは40wt%から0.2wt%、あるいは30から0.5wt%、あるいは20wt%から0.8wt%、あるいは15wt%から1wt%存在する。
【0046】
好ましいポリマーには、本願に開示する全てのモノマーのホモポリマーが含まれる。
ホモポリマーの例として、ポリイソブチレン、ポリパラ-メチルスチレン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリアルファ-メチルスチレン、ポリビニルエステル(ポリメチルビニルエステル、ポリエチルビニルエステル等)などが挙げられる。また、好ましいポリマーには、1)イソブチレンとアルキルスチレンのコポリマー、及び2)イソブチレンとイソプレンのコポリマーが含まれる。
【0047】
ひとつの実施形態では、ブチルポリマーはコモノマーの混合物を反応させて製造される。この混合物は、少なくとも(1)イソブテン等のCからCのイソオレフィンモノマーと、(2)マルチオレフィン、または共役ジエンモノマー成分とを含有する。
ひとつの実施形態では、全コモノマー混合物に対するイソオレフィン含有量は70から99.5wt%であり、別の実施形態では85から99.5wt%、または92から99.5wt%である。
全コモノマー混合物に対する共役ジエン含有量は、ひとつの実施形態では30から0.5wt%であり、別の実施形態では15から0.5wt%、または8から0.5wt%である。
からCのイソオレフィンモノマーは、イソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、及び4-メチル-l-ペンテンの内の1種類以上である。
マルチオレフィンは、イソプレン、ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、β-ピネン、ミルセン、6,6-ジメチル-フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、及びピペリレン等の、CからC14の共役ジエンである。
この発明のひとつの実施形態のブチルゴムポリマーは、85から99.5wt%のイソブチレンと、15から0.5wt%のイソプレンとを反応させて得られ、別の実施形態では、95から99.5wt%のイソブチレンと、5.0から0.5wt%のイソプレンとを反応させて得られる。
【0048】
この発明はさらに、上記のモノマーの組み合わせから成るターポリマー及びテトラポリマーに関する。
好ましいターポリマー及びテトラポリマーには、イソブチレン、イソプレン、及びジビニルベンゼンから成るポリマー、イソブチレン、パラ−アルキルスチレン(好ましくはパラ−メチルスチレン)及びイソプレンから成るポリマー、シクロペンタジエン、イソブチレン、及びパラ−アルキルスチレン(好ましくはパラ−メチルスチレン)から成るポリマー、イソブチレン、シクロペンタジエン、及びイソプレンから成るポリマー、シクロペンタジエン、イソブチレン、及びメチルシクロペンタジエンから成るポリマー、イソブチレン、パラ−メチルスチレン、及びシクロペンタジエンから成るポリマーが含まれる。
【0049】
<アルコール及び他の酸素含有化合物>
この発明で用いられるアルコールは、1分子当たり少なくとも1の水酸基を有する炭化水素と定義される。
この発明において供給モノマーとともに用いられるアルコールは、1から12個の炭素原子、好ましくは1から8個の炭素原子、より好ましくは1から4個の炭素原子を有する。
代表的な例として、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、2-メチルプロパン-2-オール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコールが挙げられる。供給モノマーとともに用いられるフェノール類の例として、フェノール;2-メチルフェノール;2,6-ジメチルフェノール;p-クロロフェノール;p-フルオロフェノール;2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノール;及び2-ヒドロキシナフタレンが挙げられる。ジオール、グリコール、ポリオールを用いることもできる。アルコールは、置換されていてもよく、あるいは非置換でもよい。
【0050】
供給モノマー中には、アルコールを含まない供給モノマーとの比較において、反応器表面でのフィルム形成速度を有効に低減させることができる量のアルコールが存在する。
ひとつの実施形態では、供給モノマー中のアルコールの量は、重合される前のモノマーの重量に対し少なくとも2wppmであり、好ましくは少なくとも5wppmである。供給モノマー中のアルコールの量の上限値は無いように見受けられるが、30wppmを超える量を用いてもフィルム形成をさらに低減させる効果は得られず、アルコールを大量に用いると希釈剤の性質に悪影響を及ぼす場合がある。
アルコールの量は、2から20wppm、または5から10wppmであることが好ましい。
【0051】
ひとつの実施形態では、重合媒体は実質的に他の酸素含有化合物を含まない。例えば、アルコールの反応器表面でのポリマーフィルムの形成または付着を妨害する効果に影響を及ぼす開始剤酸素含有化合物や、アルコール以外のブロンステッド酸酸素含有化合物等の含有量は、重合される前の供給モノマーの重量に対し5wppm未満、好ましくは1wppm未満である。
ひとつの実施形態では、重合媒体は実質的にアルデヒド、エーテル、ケトン等の、非イオン性の酸素含有化合物も含まない。しかし、非イオン性の酸素含有化合物の存在により、フィルム形成の妨害効果が高められる場合がある。この場合、非イオン性の酸素含有化合物は、アルデヒド、エーテル、および/またはケトンから選択され、特にエーテルとケトンが好ましい。非イオン性の酸素含有化合物は、重合される前の供給モノマーの重量に対し、下限1または2wppmから、上限5、10、または20wppmの範囲で含まれる。しかし、エーテル及びケトン酸素含有化合物が大量に存在すると、フィルム形成速度が増加するという弊害が生じる。
好ましいエーテルとケトンは、炭素原子を2から12個有し、好ましくは2から8個の炭素原子、より好ましくは2から4個の炭素原子を有する。代表例として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0052】
<希釈剤>
この発明の希釈剤には、ハロゲン化炭化水素、特に塩化および/またはフッ化炭化水素等が含まれる。
希釈剤の非限定的例示として、ハロゲン化されたプロパン、イソブタン、ペンタン、メチルシクロペンタン、イソヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2-メチルヘプタン、3-エチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、2,24,-トリメチルペンタン、オクタン、ヘプタン、ブタン、エタン、メタン、ノネン、デカン、ドデカン、ウンデカン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、1,1-ジメチルシクロペンタン、シス1,2-ジメチルシクロペンタン、トランス-1,2-ジメチルシクロペンタン、トランス-1,3-ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、オルト-キシレン、パラ-キシレン、及びメタ-キシレン、好ましくは上記の炭化水素の塩化物、より好ましくは上記の全ての炭化水素のフッ化物が挙げられる。
【0053】
この発明の希釈剤には、ヒドロフルオロカーボンを単独で、または他のヒドロフルオロカーボンと組合せて、または他の希釈剤と組み合わせて用いることができる。本願では、ヒドロフルオロカーボン(HFC)は、実質的に水素、炭素、及びフッ素から成り、少なくとも1の水素、少なくとも1の炭素、及び少なくとも1のフッ素が存在する、飽和または不飽和の化合物と定義される。
【0054】
ひとつの実施形態では、希釈剤は式:CxHyFzで表わされるヒドロフルオロカーボンであり、ここでxは1から40の整数、または1から30、または1から20、または1から10、または1から6、または2から20、または3から10、または3から6、最も好ましくは1から3の整数であり、yとzは整数であって少なくとも1である。
【0055】
ひとつの実施形態では、希釈剤は非パーフルオロ化合物、または非パーフルオロ希釈剤である。パーフルオロ化合物は炭素とフッ素から成る。
しかし別の実施形態では、希釈剤がブレンド物である場合、このブレンド物はパーフルオロ化合物を含み、好ましくは、触媒、モノマー及び希釈剤は均一相となる。または、後述するように、前記の化合物は希釈剤と混和し得る。別の実施形態では、このブレンド物には塩素、フッ素、及び炭素から成る化合物が含まれる。
【0056】
別の実施形態では、所望の製品が高重量平均分子量(Mw)(一般に10,000 Mwより大きく、好ましくは50,000 Mwより大きく、より好ましくは100,000 Mwより大きい)の場合、ヒドロフルオロカーボン等の好ましい希釈剤の-85°Cにおける誘電率は10より大きく、好ましくは15より大きく、より好ましくは20より大きく、より好ましくは25より大きく、より好ましくは40より大きい。
所望の製品が低分子量(一般に10,000 Mwより小さく、好ましくは5000 Mwより小さく、より好ましくは3,000 Mwより小さい)の場合、誘電率は10未満であり、誘電率が10を超える場合は、多量の開始剤または連鎖移動剤を添加する。
希釈剤の誘電率εDは、希釈剤に浸漬した平行板キャパシターのキャパシタンス(測定値CD)と、誘電率が既知の参照液のキャパシタンス(測定値CR)と、空気中のキャパシタンスεA=1(測定値CA)とから求めることができる。この場合、キャパシタンスの測定値CMはCM=εCC+CSであり、ここで、εはキャパシターが浸漬される液の誘電率、CCはセル定数、はCS浮遊容量である。
これらの測定値から、εDは式εD=((CD-CAR + (CR-CD))/(CR-CA)で求められる。あるいは、Brookhaven Instrument Corporation 社製のBIC-870のような専用の測定装置で希釈剤の誘電率を直接測定することもできる。
一例として、-85℃における塩化メチルの誘電率(ε)は18.34であり、ジフルオロメタンの誘電率(ε)は36.29であり、134aの誘電率(ε)は23.25である。
【0057】
別の実施形態では、1以上のHFCは他の希釈剤、または希釈剤の混合物と組み合わせて用いられる。
好ましい他の希釈剤は、炭化水素、特にヘキサン及びヘキサン、ハロゲン化炭化水素、特に塩化炭化水素などである。これらの希釈剤の例には前記のものも含まれる。
【0058】
別の実施形態では、非反応性オレフィンを希釈剤として用い、HFC等の他の希釈剤と組み合わせて用いる。このようなオレフィンの非限定的例示として、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0059】
ひとつの実施形態では、HFCは塩化メチル等の塩化炭化水素と組み合わせて用いられる。
更なる実施形態には、HFCをヘキサン、または塩化メチルとヘキサンの混合物と組み合わせて用いることが含まれる。
別の実施形態では、HFC等の希釈剤は、重合反応に対し不活性なガスと組み合わせ用いられる。このような不活性ガスの例は、二酸化炭素、窒素、水素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、および/または反応器の入口で液状となるその他の不活性ガスである。
【0060】
別の実施形態では、HFCを含め、希釈剤を、C1からC40の硝酸化された直鎖、環状または分岐アルカンを含む硝酸化アルカンの1以上と組み合わせて用いられる。
好ましい硝酸化アルカンの非限定的例示として、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロペンタン、ニトロヘキサン、ニトロヘプタン、ニトロオクタン、ニトロデカン、ニトロノナン、ニトロドデカン、ニトロウンデカン、ニトロシクロメタン、ニトロシクロエタン、ニトロシクロプロパン、ニトロシクロブタン、ニトロシクロペンタン、ニトロシクロヘキサン、ニトロシクロヘプタン、ニトロシクロオクタン、ニトロシクロデカン、ニトロシクロノナン、ニトロシクロドデカン、ニトロシクロウンデカン、ニトロベンゼン、及び前記のジ−またはトリ−ニトロ化物が挙げられる。
好ましい実施形態では、HFCをニトロメタンとブレンドする。
【0061】
HFCを希釈剤として用いる場合、HFCは希釈剤の全容積に対する割合は、1から100容積%であり、あるいは、下限値が5, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 95, 97, 98, または99容積%である。
好ましい実施形態では、HFCは1以上の塩化炭化水素と組み合わせて用いられる。別の好ましい実施形態では、HFCはジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0062】
別の実施形態では、希釈剤または希釈剤混合物は、ポリマーへの溶解性を考慮して選択される。ある種の希釈剤はポリマー中に溶解する。好ましい希釈剤は、ポリマー中への溶解性が極小さいか、全く無い。
ポリマー中への溶解性は、ポリマーを厚み50から100ミクロンのフィルムに成形し、-75℃において希釈剤に(フィルムが十分浸漬されるようにして)4時間浸漬することにより測定する。フィルムを希釈剤から取り出し、室温で外気に90秒間曝して過剰な希釈剤をフィルム表面から蒸発させた後、重量を測定する。質量の増加から、浸漬後の重量増加パーセントを求める。いくつかの実施形態では、希釈剤または希釈剤の混合物を、ポリマーの質量増加率が4wt%未満となるよう選択し、好ましくは3wt%未満、好ましくは2wt%未満、好ましくは1wt%未満、より好ましくは0.5wt%未満となるよう選択する。
【0063】
好ましい実施形態では、希釈剤または希釈剤の混合物は、希釈剤、未反応モノマー、及び添加剤の含有量が0.1wt%未満のポリマーを50から100ミクロンのフィルムに成形し、このフィルムを希釈剤に浸漬する前のガラス転移温度Tgと、希釈剤に(フィルムが十分浸漬されるようにして)-75℃において4時間浸漬した後のTgとの差が15℃以内となるように選択する。
ガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)により求める。この測定方法は、例えば “Assignment of the Glass Transition” ASTM STP 1249, R. J. Seyler, 著, American Society for Testing and Materials, Philadelphia, 1994年, 17-31ページの「The Nature of the Glass Transition and its Determination by Thermal Analysis」に記載されている。
測定用サンプルを上記のようにして調製し、浸漬後直ちにDSC測定用容器に封入し、DSC測定の直前まで-80℃以下に保つ。希釈剤を含まないポリマーと、希釈剤に浸漬後のポリマーのTg値の差は12℃以内であり、好ましくは、11℃、10℃、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、4℃、3℃、2℃、1℃以内である。
【0064】
<ルイス酸>
好ましい実施形態では、ルイス酸(共開始剤または触媒とも呼ばれる)は、周期律表の第4,5,13,14及び15族の金属のルイス酸であり、周期律表の第4,5,13,14及び15族の金属のルイス酸には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、バナジウム、砒素、アンチモニー、及びビスマスが含まれる。
当業者であれば、これらの元素のいくつかはこの発明に適していることを理解できるであろう。ひとつの実施形態では、金属はアルミニウム、ホウ素、及びチタンであり、アルミニウムが好ましい。
一例として、AlCl3、(アルキル)AlCl2、(C2H5)2AlCl 及び(C2H5)3Al2Cl3、BF3、SnCl4、TiCl4が挙げられる。特に好ましい実施形態では、BF3は好ましいルイス酸ではない。
【0065】
特に好ましいルイス酸は、イソブチレンコポリマーのカチオン重合に適したものであり、アルミニウムトリクロリド 、アルミニウムトリブロミド 、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ボロントリフルオリド、チタンテトラクロリド等が挙げられ、エチルアルミニウムジクロリドと、エチルアルミニウムセスキクロリドが好ましい。
【0066】
この発明では、メチルアルミノキサン(MAO)や、B(C6F5)3等の特別に設計され弱配位性ルイス酸も、好ましいルイス酸である。
【0067】
<開始剤>
この発明で用いる開始剤は、適切な希釈剤中において選択されたルイス酸とコンプレックスを形成し、オレフィンと急速に反応してオレフィン鎖を成長させる錯体となり得るものである。一例として、H2O、HCl、RCOOH (Rはアルキル基)等のブロンステッド酸、(CH3)3CC1、C6H5C(CH3)2C1、及び(2-塩化-2,4,4-トリメチルペンタン) 等のアルキルハライドである。
最近、弱配位性のルイス酸またはルイス酸塩で活性化されたとき、シングルサイト触媒として作用するメタロセン等の遷移金属錯体がイソブチレンの重合に用いられている。
【0068】
ひとつの実施形態では、反応器と触媒には実質的に水が存在しない。実質的に水が存在しないとは、水の量が(触媒の全重量に対し)30wppm未満、好ましくは20wppm未満、好ましくは10wppm未満、好ましくは5wppm未満、好ましくは1wppm未満であることを意味する。
しかし、水を開始剤として選択したときは、水の量は(触媒の全重量に対し)30wppmより多く、好ましくは40wppmより多く、好ましくは50 wppmより多い。
【0069】
好ましい実施形態では、開始剤はハロゲン化水素、カルボン酸、カルボン酸ハライド、スルホン酸、アルコール、フェノール、三級アルキルハライド、三級アラルキルハライド、三級アルキルエステル、三級アラルキルエステル、三級アルキルエーテル、三級アラルキルエーテル、アルキルハライド、アリールハライド、アルキルアリールハライド、アリールアルキル酸ハライドのうちの、いずれか1以上である。
別の実施形態では、開始剤は重合媒体の重量に対し5wppm、特に2wppmを超えて存在する酸素含有化合物ではなく、特にアルコールではない。
【0070】
好ましいハロゲン化水素開始剤には、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が含まれる。特に好ましいハロゲン化水素は、塩化水素である。
【0071】
好ましいカルボン酸には、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸の両者が含まれる。この発明で用いられるカルボン酸の例には、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、桂皮酸、安息香酸、1-クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p-クロロ安息香酸、及びp-フルオロ安息香酸が含まれる。特に好ましいカルボン酸は、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、及びp-フルオロ安息香酸である。
【0072】
この発明で用いられるカルボン酸ハライドは、カルボン酸に構造が類似しており、カルボン酸のOHがハライドで置換されている。ハライドはフルオリド、クロリド、ブロミド、またはヨードであり、クロリドが好ましい。親のカルボン酸からカルボン酸ハライドを合成する方法は公知であり、当業者にとってこの方法は公知である。
この発明で用いられるカルボン酸ハライドの例には、アセチルクロリド、アセチルブロミド、シナミルクロリド、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、トリクロロアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド及び、p-フルオロベンゾイルクロリドが含まれる。
特に好ましいカルボン酸ハライドには、アセチルクロリド、アセチルブロミド、トリクロロアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、及びp-フルオロベンゾイルクロリドが含まれる。
【0073】
この発明で開始剤に用いられるスルホン酸には、脂肪族スルホン酸及び芳香族スルホン酸の両者が含まれる。好ましいスルホン酸の例として、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸が挙げられる。
【0074】
この発明で用いられるスルホン酸ハライドは、スルホン酸に構造が類似しており、スルホン酸のOHがハライドで置換されている。ハライドはフルオリド、クロリド、ブロミド、またはヨードであり、クロリドが好ましい。親のスルホン酸からスルホン酸ハライドを合成する方法は公知であり、当業者にとってこの方法は公知である。
この発明で用いられるスルホン酸ハライドの例には、メタンスルホン酸クロリド、メタンスルホン酸ブロミド、トリクロロメタンスルホン酸クロリド、トリフルオロメタンスルホン酸クロリド、及びp-トルエンスルホン酸クロリドが含まれる。
【0075】
ひとつの実施形態では、アルコールには実質的に触媒が含まれない。すなわち、供給触媒のアルコールとルイス酸のモル比は0.05未満である。
触媒とともに用いられる場合、この発明の触媒中で用いられるアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、2-メチルプロパノール-2-オール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコールが含まれる。
この発明の触媒中で用いられるフェノールには;2-メチルフェノール;2,6-ジメチルフェノール;p-クロロフェノール;p-フルオロフェノール;2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノール;及び2-ヒドロキシナフタレンが含まれる。
【0076】
好ましい第三級アルキル及びアラルキル開始剤には、次式で表わされる第三級化合物が含まれる:
【化1】

ここで、Xはハロゲン、擬ハロゲン、エーテル、エステル、またはこれらの混合物であり、好ましくはハロゲンであり、好ましくは塩素である。R1, R2, R3はそれぞれ独立して、好ましくは1から15個の炭素原子、より好ましくは1から8個の炭素原子を有する直鎖、環状または分岐鎖アルキル、アリール、アリールアルキルである。nは開始剤のサイト数であり1以上の数、好ましくは1から30の数、より好ましくは1から6の数である。アリールアルキルは置換、非置換のいずれでもよい。本願では、アリールアルキルとは芳香族構造と脂肪族構造の両者を有する化合物を意味する。
好ましい開始剤の例として、2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-ブロモ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-クロロ-2-メチルプロパン;2-ブロモ-2-メチルプロパン;2-クロロ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;2-ブロモ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;1-クロロ-1-メチルエチルベンゼン;1-クロロアダマンタン;1-クロロエチルベンゼン;1,4-ビス(l-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-ターシャリ-ブチル-l,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン;2-アセトキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-ベンゾイルオキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-アセトキシ-2-メチルプロパン;2-ベンゾイルオキシ-2-メチルプロパン;2-アセトキシ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;2-ベンゾイル-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;1-アセトキシ-1-メチルエチルベンゼン;1-アセトキシアダマンタン;1-ベンゾイルオキシエチルベンゼン;l,4-ビス(l-アセトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-ターシャリ-ブチル-l,3-ビス(1-アセトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;2-メトキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-イソプロポキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-メトキシ-2-メチルプロパン;2-ベンジルオキシ-2-メチルプロパン;2-メトキシ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;2-イソプロポキシ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;1-メトキシ-1-メチルエチルベンゼン;1-メトキシアダマンタン;1-メトキシエチルベンゼン;l,4-ビス(l-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-ターシャリ-ブチル-l,3-ビス(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、及びl,3,5-トリス(l-クロロ-l-メチルエチル)ベンゼンが挙げられる。
このほかの適切な開始剤は、本願に参照として組み込まれる米国特許第4,946,899号に開示されている。本願では、擬ハロゲンとは、アジド化合物、イソシアネート化合物、チオシアネート化合物、イソチオシアネート化合物、またはシアニド化合物を意味する。
【0077】
このほかの好ましい開始剤は高分子性ハライドであり、前記の式のRl,R2,R3のいずれか1がオレフィンポリマーで、残余のR基は前述の通りである。好ましいオレフィンポリマーには、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニルが含まれる。高分子性開始剤は、高分子鎖末端、または高分子主鎖上または主鎖に沿った位置に、ハロゲン化された三級炭素を有する。
オレフィンポリマーが、主鎖から吊下がっているか、または主鎖上にある三級炭素上に、複数のハロゲン原子を有する場合、オレフィンポリマー上のハロゲン原子の位置と数に応じて、最終製品は櫛型構造となり、および/または、分岐側鎖を有する構造となる。
同様に、高分子主鎖の末端が三級のハライド開始剤を用いることにより、ブロックコポリマーを含む製品を製造する方法が提供される。
【0078】
特に好ましい開始剤はイソブチレンコポリマーのカチオン重合に適したものであり、塩化水素、2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン、2-クロロ-2-メチルプロパン、1-クロロ-1-メチルエチルベンゼン、及びメタノールが含まれる。
【0079】
この発明に用いられる触媒組成物は、(1)開始剤、及び(2)ルイス酸共開始剤を含む。
好ましい実施形態では、存在する開始剤に対するルイス酸共開始剤のモル比が、約0.1から約200の範囲にある。さらに好ましい実施形態では、存在する開始剤に対するルイス酸共開始剤のモル比が、約0.8から約20の範囲にある。
好ましい実施形態では、開始剤は1リットル当り約0.1モルから約10−6モルの範囲で存在する。開始剤がこの範囲より多い場合や少ない場合も、本願発明の範囲に含まれることはいうまでも無い。
【0080】
使用する触媒の量は、製造しようとするポリマーの分子量及び分子量分布の目標値に依存する。一般に、触媒の量の範囲は、1リットル当り約1×10-6モルから3×10-2モル、最も好ましくは10-4モルから10-3モルである。
【0081】
この発明で用いられる触媒にはさらに、反応性カチオンと弱配位性アニオン(「WCアニオン」または「WCA」または「NCA」)が含まれる。WCアニオンを含む触媒組成物には反応性カチオンが含まれ、新規な触媒である場合もある。
【0082】
弱配位性アニオンは、カチオンに配位しないか、カチオンに弱く配位して、この発明において安定化アニオンとして作用するとき、WCAはアニオン性部位または置換基をカチオンへ転移させず、これにより中性の副生物またはその他の中性化合物を生成する。
このような弱配位性アニオンの好ましい例には、アルキルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン (RB(pfp)3)、テトラペルフルオロフェニルボロン(B(pfp)4)、テトラペルフルオロフェニルアルミニウムカルボラン、ハロゲン化カルボラン等が含まれる。
【0083】
アニオンは当業者にとって公知の方法でカチオンと組み合わされる。好ましい実施形態では、例えばWCアニオンは希釈剤中にアニオンとカチオンの両者を含む活性触媒の形態の化合物として導入される。
別の好ましい実施形態では、WCアニオン性部位を含む化合物を、先ずカチオンまたは反応性カチオンの存在下で処理してアニオンを生成させる。すなわち、アニオンが活性化される。
また、WCアニオンはカチオンまたは反応性カチオンの不存在下で活性化され、カチオンまたは反応性カチオンはその後導入される。好ましい実施形態では、アニオンを含む化合物と、カチオンを含む化合物とを組合せて反応させ、副生物としてアニオンとカチオンを生成させる。
【0084】
<重合システム及びプロセス>
この発明により、反応器表面に過度のポリマーフィルム付着を生じることなく1以上のモノマーを重合させて、イソオレフィンポリマー及びコポリマーを製造する重合システムが提供される。
この重合システムは、1以上のモノマー、希釈剤、触媒からなる重合媒体中の1以上のモノマーを重合させる反応ゾーンと;反応ゾーンの重合媒体に1以上のモノマーと希釈剤を供給するモノマー供給ラインと;アルコール供給ラインと;アルコール供給ラインとは別に設けられ、反応ゾーンの重合媒体に1以上のルイス酸を供給する触媒供給ラインと;反応ゾーンへのアルコール供給ラインのアルコール供給速度を調整するための制御ループとを備える。希釈剤には、1以上のハロゲン化炭化水素を用いることができる。
【0085】
ひとつの実施形態では、重合システムにはさらに、反応ゾーンからポリマーと希釈剤の混合物を回収する製品ラインと;この混合物から希釈剤を分離してポリマーを回収するポリマー回収ユニットと;分離された希釈剤を濃縮する希釈剤回収ユニットと;濃縮された希釈剤をモノマー供給ラインへ再循環する移送ラインとを備える。
アルコール供給ラインからのアルコールは、反応ゾーンへ直接導入してもよいし、モノマー供給ラインを経由して反応ゾーンへ導入してもよいし、これらの両者でもよい。
【0086】
ひとつの実施形態では、希釈剤回収ユニットに分留工程を設けることができる。分留工程は、再循環用の低アルコール濃度の希釈剤を生成する抽出蒸留ユニットとすることができる。
別の実施形態では、希釈剤回収ユニットにアルコール除去手段を設けることができる。
【0087】
別の実施形態では、制御ループに、モノマー供給ライン中のアルコール濃度を検知するためのアルコール分析計と、このアルコール分析計と通信し、例えばアルコール分析計において所望のアルコール濃度が得られるようにアルコール供給ラインの流量を制御可能な流量比例制御装置を設けることができる。
ひとつの実施形態では、制御ループは反応器でのポリマーフィルム付着速度を求めるために設けられ、アルコール供給ラインの流量を制御する流量比例制御装置と通信可能な、フィルム付着速度分析ユニットを備える。
この発明の実施形態では、アルコール供給ラインは、反応ゾーンの反応器ハウジングに接続されたモノマー供給ラインに接続される。
【0088】
前記の重合システムの実施形態では、反応器は連続流撹拌槽反応器、プラグフロー反応器、走行ベルトまたは回転ドラム反応器、ジェットまたはノズル反応器、チューブ状反応器、バッチ式反応器、及び自動冷却ボイリングプール反応器からなる群から選択される。反応器を連続的または半連続的に操業することができる。
【0089】
図1は、この発明の非限定的実施形態の重合システムまたはプロセスの模式図である。
ライン10からのイソブチレン、ライン12からのコモノマー、貯槽14からの希釈剤14a、及びライン16からのアルコールと任意成分の他の酸素含有化合物が、供給物混合装置18において混合される。アルコールおよび/または酸素含有化合物が添加される点を除き、供給物混合装置18は公知である。
必要に応じて不純物を除くために、イソブチレン、および/またはコモノマーを供給物混合装置18へ送る前に乾燥し分留することは、一般に公知である。
触媒調合ユニット20は、開始剤22とルイス酸24とを混合し、この触媒錯体を希釈剤貯槽14から供給される所定量の希釈剤14bで希釈するための公知の装置を備える。所望により、任意成分の酸素含有化合物を、ライン26から触媒調合ユニット20へ導入することができる。
【0090】
モノマーは供給物混合装置18からライン28を経由し、任意にチラー30を通して重合反応器32へ供給される。同様に、触媒錯体は触媒調合ユニット20からライン34を経由し、任意にチラー36を通して重合反応器32へ供給される。
この発明は連続及びバッチプロセスで実施することができる。さらに、反応器32にはプラグフロー反応器、および/または、撹拌槽反応器を用いることができる。チラー30と36は任意に設けることができ、供給物混合装置18、および/または触媒調合ユニット20の上流または下流に設けることができる。
【0091】
反応器32へ供給される酸素含有化合物には、モノマー供給物混合装置18からのアルコール、触媒調合ユニット20からの任意成分の酸素含有化合物、またはこの両者の組合せが含まれる。
さらに、酸素含有化合物の濃度または流量は、供給物混合装置18または触媒調合ユニット20に出入りする供給ラインの1以上において監視することができる。このようなラインは例えば、ライン0,12,14a,14b,22,24,28または34、あるいは反応器32への別のライン(図示せず)である。
図1の実施形態では、アルコール酸素含有化合物はライン16を経由して供給物混合装置18に添加される。ライン16は、流量制御弁40を備え、これに接続される制御ループには酸素含有化合物流量または流速用トランスミッタ42と流量調整器44を備える。
図1の別の実施形態では、別の酸素含有化合物がライン26を経由して触媒調合ユニット20へ添加される。ライン26は、流量制御弁46を備え、これに接続される制御ループには酸素含有化合物の流量または流速用トランスミッタ48と流量調整器50を備える。
制御ループは公知である。酸素含有化合物用トランスミッタは、ガスクロマトグラフや流量計等のオンライン分析器を備える。
【0092】
流量制御ループにより、アルコール含有酸素含有化合物16、及び任意成分の他の酸素含有化合物26の流量が、流量トランスミッタ42,46各々の設定値に合うように調整される。例えば、酸素含有化合物の流量が設定値を下回る場合には、対応する調整弁40,46を開いて酸素含有化合物の流量を増加させる。
酸素含有化合物の目標値は、手動、あるいは、独立、または分散または集中制御システムの一部であるフィルム付着速度コントローラー52の一部として自動的に入力される。
酸素含有化合物の流量の設定値は、反応器32の操業に付随する、付着速度分析ユニット54で検出されたフィルム付着速度に基づき決定し調整することができる。例えば、付着速度分析ユニット54で反応器32におけるフィルム付着速度の増加が認められるまでは、酸素含有化合物供給速度を初期最大設定値から減少させておくことができる。または、付着速度分析ユニット54がフィルム付着速度の増加を示した場合は、安定状態における設定値よりも増加させることができる。付着速度分析ユニット54は公知であり、反応器32におけるフィルム付着速度は、例えば反応器32と熱流束のヒートバランスから計算される熱伝達抵抗の増加から求めることができる。
一般に反応器32の伝熱表面へのフィルム付着厚みは全熱伝導抵抗に比例するので、熱伝導抵抗の増加は、フィルム付着速度に比例する。
【0093】
反応器32からのポリマーを含有する流出液は、所望により、ライン58から供給されるスチームまたは熱水等の失活媒体により失活させることができる。次に、ポリマー回収ユニット60において、例えばフラッシュタンクまたはストリッパー中で、失活媒体の熱を利用して希釈剤と未反応モノマーを蒸発させることにより、ポリマーをスラリーから分離する。
蒸発した蒸気流れ62は、希釈剤回収ユニット64で乾燥、分留されて、再循環希釈剤流れ66と、同様に再循環される回収モノマー流れ68と、1以上の酸素含有化合物または水流れ70とが得られる。
また、酸素含有化合物の一部または全部を、プロセスに過剰量が蓄積することを防止するためのパージまたはブリード機構が備えられていることを条件に、再循環希釈剤流れ66と回収モノマー流れ68から生成させることもできる。例えば、酸素含有化合物の一部または全部を、失活媒体、および/または製造されたポリマーから抽出することができる。
ひとつの実施形態では、ポリマー回収ユニット60は、適切な温度・圧力条件を維持することにより、蒸気流れ62と液状失活媒体の間の酸素含有化合物の分離が制御されるように操業される。回収されたポリマーはライン72からこれに続くスクリーン及び押出機によって、ポリマーから残留希釈剤、モノマー失活媒体を除去する最終工程74へ移送され、次いで、ベール形状に圧縮され、所望により包装され、コンテナーに積み込まれる。
ポリマー回収ユニット60、希釈剤回収ユニット64、及び最終工程74に用いられる装置と方法は公知である。
【0094】
別の側面では、反応器32からの除熱は、熱交換面により行なわれる。例えばチューブ状反応器の場合、チューブの一方の側に冷媒を通し、他方の側に重合混合物を通す。また除熱は、例えば自動冷却ボイリングプール反応器のように、重合混合物を蒸発させることによって行うことができる。また別の例として、重合混合物が反応器内を移動するときに、重合混合物の一部を蒸発させるプラグフロー反応器が挙げられる。また別の例は、プラグフロー反応器において、熱交換面の重合混合物とは反対側に冷媒を用いて除熱する方法である。
別の例は、走行ベルトまたは回転ドラム反応器で重合させる際に、希釈剤/モノマー/触媒の混合物をベルトまたはドラムに向けて噴射し、反応の進行に伴い希釈剤を蒸発させて除熱する方法である。さらに、これらの反応器では、熱交換面(冷媒がドラム内部またはベルトの下に存在し、ポリマーはドラムまたはベルトの反対側で生成する)により除熱することもできる。
別のタイプの反応器32は、ジェットまたはノズル反応器である。これらの反応器の滞留時間は相対的に短く、ライン28から供給されるモノマーと、ライン34から供給される触媒錯体は、ジェットまたはノズルにおいて混合され、この混合物がノズルを高速で通過するときに重合反応が生じる。
【0095】
好ましい反応器32には、バッチまたは連続操業され、撹拌機付タンクまたは管状反応器中で操業される連続流撹拌槽反応器が含まれる。好ましい反応器32にはまた、重合反応が熱交換面の一方の側で生じ、冷媒が他の側に存在する反応器が含まれる。一例は、冷媒を通す管が反応器内の重合ゾーンに設けられている反応器である。別の例は、重合反応が管の中で生じ、冷媒が反応器内において管の外側に存在する反応器である。
【0096】
この発明は、モノマー、希釈剤、触媒及び酸素含有化合物が反応器32に投入され、次に重合反応を生じさせて(例えば失活させて)完了させた後、ポリマーを回収するバッチ反応器で実施することもできる。
【0097】
反応器32内にある反応したモノマーは、スラリーの一部を構成する。ひとつの実施形態では、スラリー中の固形分は10vol%以上、別の実施形態では25vol%以上で、75vol%未満である。あるいは、1から70vol%、5から70vol%、10から70vol%、15から70vol%、20から70vol%、25から70vol%、30から70vol%、または40から70vol%の範囲である。
【0098】
一般に、連続流撹拌機付タンク型反応器32が用いられる。反応器32は、通常ターボミキサーやインペラー等の効率的な撹拌手段、及び外部冷却ジャケット、および/または、内部冷却管および/またはコイル等の、重合熱を除熱して所定の反応温度を維持するための手段、及びモノマー、希釈剤、触媒及び酸素含有化合物の(個別または組合せられた)供給手段(例えばライン28とライン34の各末端に設けられた入口パイプ)、及び温度測定手段、反応器からポリマー、希釈剤、及び未反応モノマーを抜き出して貯蔵ドラムまたは失活タンク(図示せず)へ移送するオーバーフローまたはアウトフロー配管を備える。
反応器32から、空気と水分がパージされていることが好ましい。当業者であれば、装置の構成と操作方法を理解できるであろう。
【0099】
反応器32は、反応器内において触媒とモノマーの良好な混合、熱交換チューブまたはコイル内での良好な乱流、及び反応物内でのポリマーの蓄積または希釈剤からの分離を防止可能な十分な流動性が得られるように設計されていることが好ましい。
この発明を実施するために用いられる反応器には、本願に参照として組み込まれる米国特許第5,417,930号に開示されたもの等の、連続スラリープロセスを実施可能な公知の反応器、または公知の反応器と均等な反応器が含まれる。反応器のポンプのインペラーには、アップポンピング傾斜翼またはダウンポンピング傾斜翼を用いることができる。反応器32には、モノマーを含む供給原料を重合させて、所望の性質を有するポリマーを製造することができる十分な量の触媒が含有されている。
ひとつの実施形態では、ライン28から供給される原料には、(モノマー、希釈剤、酸素含有化合物、及び触媒の全重量を基準として)5wt%を超える濃度のモノマーが含まれ、好ましくは15wt%、20wt%、25wt%、または30wt%を超える濃度のモノマーが含まれる。別の実施形態では、ライン28から供給される原料には、モノマー、希釈剤、酸素含有化合物、及び触媒の全重量を基準として5wt%から50wt%、または30wt%から50wt%の濃度のモノマーが含まれる。
【0100】
反応条件は、反応媒体が液体状態に保たれ、所望の性質を有する所望のポリマーが得られる所定の温度、圧力、及び滞留時間とすることができる。ライン28から供給されるモノマーには、重合条件下で触媒を阻害する反応を生じるような不純物が実質的に含まれていない。例えば、いくつかの実施形態では、ライン28から供給されるモノマーには塩基(例えば苛性ソーダ)、管理された酸素含有化合物として用いられるのではない硫黄含有化合物(例えばH2S、COS、及びメチルメルカプタンやエチルメルカプタン等の有機メルカプタン)、窒素含有塩基、アルコール等の酸素含有化合物を含む塩基が含有されていないことが好ましい。
しかし、ライン28から供給されるモノマーの純度は、ライン10と12から供給される全オレフィンモノマーの重量を基準として95%以上、好ましくは98%以上、99%以上である。好ましい実施形態では、不純物の量は、ライン10と12から供給される全オレフィンモノマーの重量を基準として、10,000wppm未満(重量基準)、好ましくは500wppm未満、好ましくは250wppm未満、好ましくは150wppm未満、好ましくは100wppm未満である。
【0101】
通常、製品の分子量と分子量分布(MWD)は反応時間、温度、濃度、反応物の性質、及び同様の要素により決まる。重合反応温度は、目標とするポリマーの分子量及び重合されるモノマー、さらに例えば反応速度や温度制御などの標準的プロセス変動、及び経済性要因等に基づいて選択される。
重合温度は0℃未満であり、ひとつの実施形態では好ましくは-10℃からスラリーの凝固点まで、別の実施形態では-25℃から-120℃の温度範囲である。さらに別の実施形態では、重合温度は-400℃から-100℃、また別の実施形態では-70℃から-100℃の温度範囲である。また別の好ましい実施形態では、-80℃から-100℃の温度範囲である。
【0102】
好ましい実施形態では、重合温度は希釈剤の凝固点より10℃高い温度までの範囲であり、好ましくは希釈剤の凝固点より8℃、6℃、4℃、2℃、または1℃高い温度までの範囲である。
【0103】
反応圧力は、ひとつの実施形態では0を超える圧力から14,000kPaまでの範囲(ここで0kPaは完全な真空である)、また別の実施形態では、7kPaから12,000kPaまで、100kPaから2000kPaまで、200kPaから1500kPaまで、200kPaから1200kPaまで、200kPaから1000kPaまで、7kPaから100kPaまで、20kPaから70kPaまで、40kPaから60kPaまで、1000kPaから14,000kPaまで、3000kPaから10,000kPaまで、または3,000kPaから6,000kPaまでの範囲である。
【0104】
別の実施形態では、開始剤22とルイス酸24は、ライン26から供給される酸素含有化合物と、選択された希釈剤中において任意の順序で混合され、0.01秒から10時間の範囲の予め決められた時間混合されて予備錯体化され、次いで、触媒ノズルまたは触媒注入装置から連続反応器32に注入される。
また別の実施形態では(図示せず)、開始剤22とルイス酸24は反応器32に別々に添加され、ライン26から供給される酸素含有化合物とともに、あるいは別に添加される。酸素含有化合物には、開始剤22とルイス酸24のいずれか一方、または両方が含まれていてもよい。
別の実施形態では(図示せず)、開始剤22は、反応器32に注入される前に供給物混合装置18中で供給モノマーと混合される。モノマーが反応器に入る前に、モノマーとルイス酸24とを接触させないことが好ましく、または、モノマーとルイス酸24及び開始剤22の組み合わせとを接触させないことが好ましい。
【0105】
この発明のひとつの実施形態では、酸素含有化合物26を含むか、または含まない開始剤22とルイス酸24は、選択された希釈剤中で混合され、予備錯体化される。混合と予備錯体化は、反応器に注入する前に、-40℃から希釈剤の凝固点の間の温度で、接触時間0.01秒から数時間、または0.1秒から5分間、好ましくは3分間未満、好ましくは0.2秒から1分間行われる。
この発明の別の実施形態では、酸素含有化合物26を含むか、または含まず、好ましくは酸素含有化合物26を含む開始剤22とルイス酸24は、選択された希釈剤中で+80℃から-150℃の温度範囲、一般に-40℃から-98℃の温度範囲において混合され、予備錯体化される。
【0106】
反応器32での全滞留時間は、例えば触媒活性及び触媒濃度、モノマー濃度、供給物注入速度、生産速度、反応温度、及び目標分子量によって異なり、一般的には約数秒から5時間、典型的には約10から60分である。滞留時間に影響する要因には、モノマー及び希釈剤供給速度及び反応器の全容積が含まれる。
【0107】
触媒(ルイス酸)とモノマーの比はカルボカチオン重合プロセスにおいて従来公知の範囲である。例えば、モノマーと触媒のモル比は500から10000、あるいは2000から6500の範囲である。
また別の実施形態では、ルイス酸と開始剤のモル比は0.5から10、または0.75から8の範囲である。反応器中の開始剤の全濃度は一般に5から300wppm、または10から250wppmである。供給触媒中の開始剤濃度は、ひとつの実施形態では50から3000wppmである。反応器中の開始剤の量を記述する他の方法は、ポリマーに対する開始剤の量であり、例えばポリマーモル数/開始剤モル数の比が0.25から20、または0.5から12である。
【0108】
反応器中の触媒効率(ルイス酸基準)は、ルイス酸の開始剤に対するモル比を制御することにより、触媒1kg当りのポリマーが10,000から300kgの範囲、好ましくは触媒1kg当りのポリマーが4000から1000kgの範囲に維持される。
【0109】
ひとつの実施形態では、カチオン重合可能なモノマーの重合(例えばイソブチレンとイソプレンの重合によるブチルゴムの製造)はいくつかの工程からなる。
まず、アップポンピングまたはダウンポンピング可能なポンプインペラーを有する反応器を準備する。ポンプインペラーは電流を測定可能な電気モーターで駆動される。反応器は一般に、液体エチレンを保有するジャケット内に設けられた、複数の平行な垂直反応チューブを備える。反応器の反応チューブを含む全内部容積は30から50リッターより大きく、大容量スケールでの重合反応が可能である。この反応器では一般に、形成されるスラリーの重合反応熱の除熱を液体エチレンを用いて行う。ポンプインペラーは、スラリー、希釈剤、触媒、及び未反応モノマーを、一定速度で反応チューブを流通させる。極性希釈剤中のカチオン重合可能な供給モノマー(例えばイソブチレンとイソプレン)は、添加されたアルコールとともに反応器に投入される。次に触媒が反応器に投入される。触媒中のルイス酸と開始剤のモル比は、0.50から10.0である。反応器の中で、供給されたモノマーと触媒が互いに接触し、反応して、ポリマー(例えばブチルゴム)のスラリーを生じる。スラリー中の固形分は20vol%から50vol%である。生成したポリマーは最終的に、出口ラインまたはアウトフローラインを通って反応器から取り出される。これと並行して、原料の供給が継続して行なわれ、連続スラリー重合が行なわれる。
このプロセスは、本願発明の多くの手段により改良される。例えば、反応器表面、熱交換面、撹拌機、および/または、インペラー、及び出口ライン内または出口ポート内の、熱伝導抵抗の増加により検出されるポリマーフィルム付着を低減させ、最終的に反応器中に蓄積するポリマーの量を低減させることによって、反応器を付着物除去または他の保守点検作業のために停止すること無く、長時間操業を続けることができる。
【0110】
ひとつの実施形態では、この発明により得られるポリマーは、分子量分布が約2から5で、不飽和度がモノマー100モルにつき0.5から2.5モルの、ポリイソブチレン/イソプレン(ブチルゴム)である。この製品を、さらにハロゲン化して、ハロゲン化ブチルゴムを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
この発明のポリマーは種々の用途に応用可能な化学的及び物理的性質を備える。気体の透過性が低いことにより、これらのポリマーの主用途である、タイヤのインナーチューブやインナーライナーに用いることができる。これらの性質は、エアークッション、空気バネ、エアーベローズ、アキュームレータバッグ、及び医薬用封止材の用途において重要である。この発明のポリマーは熱安定性がよいことにより、ゴムタイヤ加硫ブラダー、高温用ホース、及び高温物質を取り扱うコンベアベルトの用途に適している。
【0112】
このポリマーは高い振動減衰特性を示し、また、温度及び振動周期の広い範囲において優れた振動減衰性及び衝撃吸収性を有する。これらは自動車用ゴム成形部品として有用であり、自動車のサスペンションダンパー、排気管ハンガー、車体マウントに広く用いられる。
【0113】
この発明のポリマーは、タイヤのサイドウォール及びトレッド用コンパウンドに用いることができる。サイドウォールの場合、このポリマーの有する性質により、良好な耐オゾン性、亀裂抵抗性、及び外観が得られる。この発明のポリマーをブレンドに用いることもできる。高ジエン含量ジエンゴムと適切に配合され、共連続相となるブレンド物から、優れたサイドウォールが得られる。この発明のポリマーを用いることにより、ハイパフォーマンスタイヤの水、雪、氷の上でのスキッド抵抗性を改良し、耐摩耗性及び転がり抵抗を損なうことなく乾燥時静摩擦係数を改良することができる。
【0114】
この発明のポリマーと熱可塑性樹脂とをブレンドすることにより、この配合物を強靱化することができる。高密度ポリエチレン、あるいはアイソタクチックポリプロピレンを、5から30wt%のポリイソブチレンで改質することができる。いくつかの用途では、この発明のポリマーから、熱可塑性樹脂用成形機で加工可能な高弾性配合物を得ることができる。この発明のポリマーをポリアミドとブレンドして、他の工業用途に用いることもできる。
【0115】
この発明のポリマーを、接着剤、コーキング材、シーラント材、及びグレージング材に用いることもできる。
この発明のポリマーを、ブチルゴム、SBR、天然ゴムを配合する際の可塑剤に用いることもできる。直鎖低密度ポリエチレンとのブレンドの場合、ストレッチ包装用フィルムに粘着性が賦与される。また、この発明のポリマーは、潤滑油の分散剤、あるいは封止材または電線被覆の充填材に用いることができる。
【0116】
いくつかの用途では、この発明のポリマーをチューインガムや、医薬品のゴム栓等の医学用途、あるいは塗装ローラー等に用いることができる。
【0117】
以下の実施例に基づき本願の実施形態を説明するが、本願発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0118】
重合は、実験室スケールの連続反応器を用いて行なった。この反応器はステンレス製であり、モノマー及び供給触媒を導入可能で、また製造されたポリマーを連続的に取り出せるように設計されていた。混合は、ステンレス製シャフトに取り付けられた三枚の撹拌翼を有し、外部電気モーターで駆動されるインペラーを用いて行なった。
このモーターを1200から1600rpmで回転させた。また、この反応器には、反応器の内容物の温度を監視するための熱電対が設けられていた。
この反応器の温度制御は、不活性雰囲気下のグローブボックス内で、ペンタンまたはイソヘキサン浴に反応器を浸して所望の反応温度に冷却することにより行なった。この炭化水素浴を撹拌し、温度を、±2℃で制御した。反応媒体と液接触する全ての装置は、使用する前に120℃で乾燥させ、窒素雰囲気下で乾燥させた。
【0119】
イソブチレン(Matheson社製、またはExxonMobil社製)及び塩化メチル(Air Gas社製)の乾燥は、これらのガスを3本の酸化バリウム入りステンレス製カラムに通して乾燥させ、グローブボックス中で凝縮させ、生じた液を回収することにより行なった。または、塩化メチルの乾燥は、液状の塩化メチルにトリエチルアルミニウムを低温で添加し、次にこの溶液から塩化メチルをそれ自身の蒸気圧で蒸発させることにより蒸留して行なった。
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(134a)(National Refrigerants社製)の乾燥は、ガスを3本の3Åのモレキュラーシーブ入りステンレス製カラムに通して乾燥させ、グローブボックス中で凝縮させ、生じた液を回収することにより行なった。
イソプレン(Aldrich社製)は使用する前に蒸留するか、またはそのまま使用した。イソプレンは、イソブチレンに対し2.8モル%となるように供給モノマーに添加した。HCl溶液は、塩化メチルまたは134aを用い、この凝縮液に低温下で気体状のHCl (Aldrich社製、純度99%)を溶解させて調製した。この溶液中のHCl濃度は、標準的な滴定法で測定した。以下の実施例で、「ブレンド」と呼ぶ希釈剤組成物は134aと塩化メチルの50/50wt/wt混合物である。
【0120】
スラリー共重合反応は、先ず供給モノマーと供給触媒を調製して行なった。
供給モノマーはイソブチレン、イソプレン、選択された希釈剤、及びアルコールまたは他の酸素含有化合物から成り、ガラス製または金属製容器内で調製した。
供給触媒は、共重合反応毎に別々の容器で調製した。供給触媒は、所定量の前記HCl溶液、エチルアルミニウムジクロリド(EADC)炭化水素溶液、及び任意成分の酸素含有化合物を添加して調製した。全ての実施例において、供給触媒中のEADC/HClモル比は3.0であった。
【0121】
また、重合を開始するために、開始供給モノマーを調製して反応器へ投入した。この開始供給モノマー中のイソブチレンモノマー濃度は、10wt%であった。またこの開始供給モノマーに、イソブチレンに対し2.8モル%のイソプレンを添加した。全ての供給原料を、グローブボックス中の前記炭化水素浴を用いて、反応器と同じ温度まで冷却した。
塩化メチル中での重合は、反応器温度約-95℃±3℃で行なった。134a、またはブレンド中での重合は、反応器温度約-75±3℃で行なった。
重合開始前に、炭化水素浴の温度を数度下げ、炭化水素浴と反応器内容物の初期温度差を付けた。反応器に触媒を導入して共重合反応を開始した。反応器と炭化水素浴の温度差が一定になるように触媒の流量を調整して、その重合実験の目標重合温度を達成した。任意に、目標重合温度を達成するために、炭化水素浴の温度を下げた。
ポリマー粒子(スラリー粒子)の沈殿が生じたことで反応の開始を確認した約10分後に、追加の供給モノマーを容器から反応器に導入した。重合実験は、容器中の供給モノマーが無くなるか、あるいは予定量の供給モノマーが消費されるまで行なった。一般に、平均モノマー転換率は75%を超えており、95%に達することもあった。
【0122】
重合実験の最後に、反応器の内容物を全て取り出し、反応器内壁の気−液界面より下のポリマーフィルムを採取し、乾燥した後、秤量した。また、重合実験により生じたポリマーの全量を採取し、乾燥した後、秤量した。
次いで、各重合実験における壁付着フィルム比を、内壁から採取したフィルムの質量(単位ミリグラム、mg)を、各重合実験で生じたポリマーの全重量(単位グラム、g)で割り算して求めた。以下に示す壁付着フィルム比の単位はmgフィルム/gポリマーである。各実施例のデータは、同等の希釈剤と所定量の有機酸素含有化合物を用いた少なくとも3回の重合実験の平均値である。平均供給モノマー速度のデータと、平均壁付着フィルム比のデータは、同一条件で行なった複数回の重合実験のトータル回数による単純平均値として求めた。
【0123】
表1、表2、及び図2で用いる用語の定義は下記の通りである。
MeOH = メタノール;DME = ジメチルエーテル;Et2O = ジエチルエーテル;DIPE = ジイソプロピルエーテル;MEK = メチルエチルケトン;134a = 1,1,1,2-テトラフルオロエタン;MeCl = 塩化メチル;ブレンド = 134aとMeClの50/50wt/wt混合物;IB =イソブチレン
【0124】
<重合実験1−10>
重合実験1−10は、供給触媒中に酸素含有化合物が存在しない場合に、供給モノマーにアルコールを添加したときの効果を示している。重合実験1,2,4及び8では有機酸素含有化合物を用いておらず、比較例である。重合実験3,5−7及び9−10はこの発明の実施例であり、供給原料に有機酸素含有化合物を添加することにより、表1と図2に示すように、壁付着フィルム比が減少する。
【0125】
重合実験1−10で用いた供給モノマー中のイソブチレン濃度を表1に示す。添加されたアルコールの濃度を表1に示す。重合実験4,5及び7で用いた塩化メチルは、そのガスを前記の乾燥剤に通して乾燥させたものである。微量のメタノール、ジメチルエーテル、及びアセトンは、この乾燥剤では完全に除去されず、塩化メチル中に残存する。
塩化メチル中のこれらの成分の残存量はガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。GCで測定したこれらの有機酸素含有化合物の分析値は、最終的供給原料中におけるこれらの成分の全濃度の計算に用いた。全酸素含有化合物濃度を表1に示す。
重合実験6,8,9及び10で用いた塩化メチルは、トリエチルアルミニウムで処理された液状塩化メチルから蒸発させて得たものである。この方法では、有用なメタノール、ジメチルエーテル、及びアセトンが除去される。このため、表1に示すように、これらの重合実験で用いられた塩化メチルはこれらの酸素含有化合物を、故意に添加されない限り、含有していなかった。HFC 134aは、これらの酸素含有化合物を含有しない。
【表1】

【0126】
<重合実験11−16>
表2に示す重合実験11−16は、供給触媒に酸素含有化合物が添加されている場合に、供給モノマー中にアルコールを添加したときの効果を示している。これらの重合実験では、供給モノマーは20wt%のイソブチレンと、イソブチレンに対し2.8モル%のイソプレンとを含む。表2に平均モノマー供給速度を示す。また、表2に供給触媒に故意に添加した酸素含有化合物の種類と、供給触媒中のEADCに対するモル%を示す。これらの重合実験で用いた塩化メチルは、そのガスを前記の乾燥剤に通して乾燥させた。この乾燥剤では、塩化メチルに偶然存在する微量のメタノール、ジメチルエーテル、及びアセトンは完全に除去されない。
GCで求めたこれらの有機酸素含有化合物の分析値を、最終的供給原料中におけるこれらの成分の全濃度の計算に用いた。表2に示すアルコールと他の酸素含有化合物の濃度は、これらの化合物を反応器に添加したことにより反応器が安定した状態での濃度である。
【表2】

【0127】
<重合実験17−19>
重合実験3,5,及び15と同じ比率のメタノールを、供給モノマーではなく供給触媒に添加した点を除き、重合実験3,5,及び15と同様にして重合した。メタノールが供給モノマーから添加されない場合、壁付着フィルム比に対する効果は実質的に認められなかった。
【0128】
本願に引用した全ての特許文献と特許出願、試験方法(ASTM試験法等)及び他の文献は本願と抵触しない限り、それが許される法域において、本願に参照として組み込まれる。複数の上限値と下限値が記載されている場合、いずれかの下限値といずれかの上限値との組合せが考慮される。
【0129】
この発明について実施形態に基づき説明したが、当業者であれば、この発明の真髄から離れることなく、明細書に開示された事項に基づき、種々の変更、修正を行なうことが可能であろう。従って本願発明の範囲は実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載に基づいて、当業者であればこの発明と均等と認められる範囲を含め、本願に開示された全ての新規で特許性のある事項が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー重合システムにおける反応器表面へのポリマー付着を低減させる方法であって:
反応器へ供給モノマーと供給触媒とを供給して重合媒体を形成する工程と;
前記重合媒体に、前記供給触媒とは別の供給路からアルコールを供給する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記アルコールの炭素数が1から4である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給触媒にアルコールが添加されていない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
重合される前の前記供給モノマーに、前記アルコールが少なくとも2重量ppm含まれる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコールが前記供給モノマーの全重量に対し最大30重量ppmの量で、付着フィルムの低減に有効な量含まれる、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記アルコールを前記供給モノマーに添加する工程を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記反応媒体に、前記モノマーまたは前記触媒を含まない前記アルコールを、別の供給路から添加する工程を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、炭素数1から12のエーテル及びケトンからなる群から選択される酸素含有化合物の1以上を、前記重合媒体に供給する工程を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1以上の酸素含有化合物が、前記重合媒体の重量に対し最大10重量ppm含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1以上の酸素含有化合物がさらにポリマー付着を低減させる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記1以上の酸素含有化合物が前記供給触媒とともに供給される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記供給触媒に、1以上のルイス酸と、1以上の開始剤とが含まれる、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上の開始剤が、水、ハロゲン化水素、カルボン酸、カルボン酸ハライド、スルホン酸、アルコール、フェノール、多価ハライド、三級アルキルハライド、三級アラルキルハライド、三級アルキルエステル、三級アラルキルエステル、三級アルキルエーテル、三級アラルキルエーテル、アルキルハライド、アリールハライド、アルキルアリールハライド、アリールアルキル酸ハライドからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
触媒が、さらに弱配位性アニオンを含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記供給モノマーが、1以上のモノマーと、希釈剤とを含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記1以上のモノマーが、オレフィン、α−オレフィン、二置換オレフィン、イソオレフィン、共役ジエン、非共役ジエン、スチレン系、置換されたスチレン系、ビニルエーテルからなる群から選択される、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記1以上のモノマーが独立して、スチレン、パラ−アルキルスチレン、パラ−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、β−ピネン、ミルセン、6,6−ジメチルフルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、ピペリレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルからなる群から選択される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記希釈剤がハロゲン化炭化水素から成る、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記希釈剤が塩素化炭化水素から成る、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記希釈剤が塩化メチルから成る、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記希釈剤が、1以上のハイドロフルオロカーボン(HFC)から成る、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記1以上のハイドロフルオロカーボンが式:CxHyFzで表わされ、ここでxは1から40の整数であり、yとzは整数であって1以上である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記希釈剤が独立して、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記反応器が、連続流撹拌槽反応器、プラグフロー反応器、走行ベルトまたは回転ドラム反応器、ジェットまたはノズル反応器、チューブ状反応器、バッチ式反応器、及び自動冷却ボイリングプール反応器からなる群から選択される、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
付着フィルムが、前記反応器中において生成したポリマー1gに対しフィルム10mg以下の比率で形成される、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
さらに、反応器からポリマースラリーを回収する工程と;ポリマースラリーから低アルコール濃度の希釈剤を分離する工程と;分離された希釈剤を供給モノマーに再循環する工程と;供給モノマーにアルコールを添加するする工程と;が含まれる、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
さらに、供給モノマー中のアルコール濃度を監視する工程と;供給モノマーへのアルコール添加速度を調整して、供給モノマー中のアルコール濃度検出値を所望のレベルに制御する工程と;を備える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
スラリー重合システムであって:ハロゲン化炭化水素希釈剤と、1以上のモノマーと、1以上のルイス酸及び1以上の開始剤から成る触媒とを含む重合媒体を重合させるための反応器と;反応器に触媒を供給するための触媒ラインと;モノマーを反応器へ供給するために触媒ラインとは別に設けられたラインと;アルコールを反応器へ供給するために触媒ラインとは別に設けられたラインと;を備えるスラリー重合システム。
【請求項29】
前記反応器がブチル反応器である、請求項28に記載のスラリー重合システム。
【請求項30】
さらに、反応器への全アルコール供給速度を測定する手段と、アルコール添加速度を調整して全アルコール供給速度を所望のレベルとする手段とを備える、請求項28または29に記載のスラリー重合システム。
【請求項31】
アルコール添加ラインがモノマー供給ラインに接続される、請求項28から30のいずれか1項に記載のスラリー重合システム。
【請求項32】
前記反応器への全アルコール供給速度を測定する手段が、オンライン分析器及びフローメーターのいずれかである、請求項30に記載のスラリー重合システム。
【請求項33】
さらに、反応器からの流出物から希釈剤を回収し、前記希釈剤を精製して低アルコール濃度の希釈剤をモノマー供給ラインに再循環する希釈剤回収ループを備える、請求項28から32のいずれか1項に記載のスラリー重合システム。
【請求項34】
前記希釈剤回収ループが分留装置を備える、請求項33に記載のスラリー重合システム。
【請求項35】
前記アルコール添加速度を調整して全アルコール供給速度を所望のレベルとする手段が、弁と流量調整器の少なくともいずれかである、請求項30に記載のスラリー重合システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−522263(P2010−522263A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554615(P2009−554615)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/054581
【国際公開番号】WO2008/118577
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】