ポリマーの分子量分布の決定方法
【課題】ポリマーの分子量分布の決定方法を提供する。
【解決手段】ポリマーの分子量分布の決定方法に関する。ポリマーを調製する場合、さまざまな長さの鎖が形成される。それに応じて、ポリマー鎖の分子量分布を生じる。数値形式で利用可能な出発データG*(ω)を記述することにより、すなわち、周波数の関数として測定された複素剪断弾性率またはそれから作成されたマスターカーブを解析関数で記述することにより達成される。このようにすれば、緩和挙動に関する正確な知識が、とくに長時間の緩和時間の場合にも、改良された形で利用可能である。これにより緩和時間スペクトルの効果的な決定が可能になるので、基本的に分子量分布のより効果的な計算が可能になる。
【解決手段】ポリマーの分子量分布の決定方法に関する。ポリマーを調製する場合、さまざまな長さの鎖が形成される。それに応じて、ポリマー鎖の分子量分布を生じる。数値形式で利用可能な出発データG*(ω)を記述することにより、すなわち、周波数の関数として測定された複素剪断弾性率またはそれから作成されたマスターカーブを解析関数で記述することにより達成される。このようにすれば、緩和挙動に関する正確な知識が、とくに長時間の緩和時間の場合にも、改良された形で利用可能である。これにより緩和時間スペクトルの効果的な決定が可能になるので、基本的に分子量分布のより効果的な計算が可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの分子量分布の決定方法に関する。ポリマーを調製する場合、さまざまな長さの鎖が形成される。それに応じて、ポリマー鎖の分子量分布を生じる。
【背景技術】
【0002】
先行技術には、分子量分布の種々の決定方法、たとえば「GPC」という名称の方法が開示されている。GPC法では、ポリマーは、溶解されて多孔性カラムに適用される。カラム内を迅速に通過するものほど、分子量は大きい。したがって、カラム内を通過する速度は、分子量分布の尺度である。
【0003】
この方法は、可溶性のポリマーだけを解析しうるにすぎないという欠点を有する。また、この方法の感度は、分子量が大きくなるにつれて減少する。
【0004】
分子量の増大に伴う感度に関する欠点を克服するために、先行技術では、物理的データに基づいて分子量分布を計算することが提案されている。そのような方法は、とくに、(非特許文献1)の論文から公知になっている。
【0005】
最初に、さまざまな温度で周波数の関数として複素剪断弾性率を測定する。技術上の理由から、測定は、10−3〜103Hzの周波数で行われる。10−3Hz未満の周波数に減少すると、測定時間は、大幅に増大する。たとえば、10−3Hzでの測定時間は、1・1/2時間である。装置上の理由から、103Hz超での測定は、測定装置の固有振動により結果が歪むので問題がある。
【0006】
この問題にかかわらず比較的広い周波数範囲にわたりデータを評価できるようにするために、比較的低い温度での測定値を比較的高い周波数での測定値に計算により変換可能であるという事実を利用する。そのような変換の結果として、比較的広い周波数スペクトルをカバーするいわゆるマスターカーブが得られる。その場合、周波数に対して複素剪断弾性率を特徴付けかつ再現する2つの関数が数値形式で存在する。一方は実数部であり、他方は虚数部である。実数部は、貯蔵弾性率と呼ばれ、虚数部は、損失弾性率と呼ばれる。典型的な周波数範囲は、14〜20桁に及ぶにもかかわらず、測定は、以上に挙げた周波数範囲内で行われてきたにすぎない。
【0007】
先行技術によれば、いわゆる緩和時間スペクトルが、それから数値的に決定される。数値の出発データから緩和時間スペクトルへの数値変換は、不利なことに、いわゆる不良設定問題である。出発データ(測定値またはマスターカーブの値)の誤差は、変換により増幅される可能性がある。
【0008】
緩和時間スペクトルおよび一般化混合則を用いて、分子量mの分布が数値的に決定される。一般化混合則は、緩和時間スペクトルh(m)と分子量分布ω(m)との関係を記述する。緩和時間スペクトルh(m)は、数値形式で利用可能である。したがって、この式は、先行技術に従って数値的に解かれる。
【非特許文献1】W.ティム(W.Thimm)ら著、緩和時間スペクトルと分子量分布との解析的関係(An analytical relation between relaxation time spectrum and molecular weight distribution)、レオロジー誌(J.Rheol.)、第43巻、第6号(1999年)、1663−1672頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、先行技術と比較して改良された形で分子量分布を決定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、数値形式で利用可能な出発データG*(ω)を記述することにより、すなわち、周波数の関数として測定された複素剪断弾性率またはそれから作成されたマスターカーブを解析関数で記述することにより達成される。このようにすれば、緩和挙動に関する正確な知識が、とくに長時間の緩和時間の場合にも、改良された形で利用可能である。これにより緩和時間スペクトルの効果的な決定が可能になるので、基本的に分子量分布のより効果的な計算が可能になる。
【0011】
分子量分布は、緩和時間スペクトルおよび一般化混合則から計算可能である。この計算に以下の一般混合則が使用可能である。
【0012】
【数1】
式中、
ω(m):分子量分布
m、m’:分子量
β:混合パラメーター
G0:プラトー弾性率
【0013】
混合パラメーターベータ(β)は、フィッティングパラメータである。実際に行ってみたところ、所望の効果的な分布関数を求めるのにβ=2が好適な値であることが判明した。しかしながら、βは、たとえば、1であってもよい。しかしながら、この値は、それほど好適ではない。
【0014】
最初に、一般的には、周波数の関数として測定された複素剪断弾性率からマスターカーブが作成される。緩和時間スペクトルh(τ)は、好ましくは解析的に、それから決定される。
【0015】
緩和時間スペクトルh(τ)から関係式h(m)を導くために、一実施形態では、緩和時間τと個々のポリマー鎖のモル質量mとの以下の関係式から開始される。以下の関係式は、経験から明らかなように、個々のポリマー鎖の分子量と緩和時間τとの所望の関係を正確に記述する。
τ=k・mα
個々のポリマー鎖の分子量mは、関係式τ=k・mαにより緩和時間τから計算可能である。定数kは、校正測定により決定可能である。値アルファ(α)は、測定から取得可能である。この目的のために、既知の分子量分布を有するポリマーを利用しうる。そのようなポリマーは、校正ポリマーとして知られる。そのような既知のポリマーの緩和時間を測定する際、所望の定数を決定しうる。通常、α=3.4であることが判明した。
【0016】
定数kを決定することは、必要というわけではない。これは、原理的には、任意に選択することさえも可能である。しかしながら、その場合、決定される分子量分布は、相対的なものであり、絶対的なものではない。
【0017】
数値形式で利用可能な出発データを記述するための解析式を見いだすうえでの困難は、ポリマーの緩和を全範囲にわたり記述することにある。利用可能な通常の式では、ポリマーの粘性流がカバーされない。このことは、とくに、「コール R.(Cole R.)、コール H.(Cole H.)著、化学物理学誌(J.Chem Phys.)、第9巻:341頁、1941年」から公知であるコール・コール関数
【0018】
【数2】
に対してもあてはまる。この関数は、振幅F0、平均緩和時間τ0、および幅パラメーターbを用いて緩和過程を記述する。
【0019】
この問題を克服するために、本発明の一実施形態では、数値形式で利用可能な出発データを解析関数により記述すべく幅パラメーターb=0.5を用いてコール・コール関数の和を使用する。好結果を得るために少なくとも3つのコール・コール関数の和をとることが望ましいことが判明した。とくに好ましい5つのコール・コール関数の和を以下に示す。
【0020】
【数3】
式中、ω=2πfおよびτ0=1/(2πf0)。和をとるコール・コール関数の数にかかわらず、とくに良好な結果を得るために0.5の幅パラメーターを選択することがとくに重要であることが判明した。
【0021】
パラメーターF0νおよびf0νは、有利には、コール・コール関数の和が次のようになるように選択することが望ましい。すなわち、log−logプロットにおいて、実数部は、小さい周波数の極限の場合に2の傾きを有していなければならず、かつ虚数部は、小さい周波数の極限の場合に1の傾きを有していなければならない。そのようにすれば、粘性流領域における貯蔵弾性率および損失弾性率の周波数依存挙動は、正確に記述される。
【0022】
したがって、5つのコール・コール関数の和の場合、以上に挙げたパラメーターF0νおよびf0νの間には、以下の関係が存在する。
【0023】
【数4】
これらの3つの式が満たされた場合、貯蔵弾性率および損失弾性率の周波数依存挙動は、粘性流領域において正確に記述される。
【0024】
Δは、フィッティングパラメータであり、種々の過程の周波数分離を記述する。ある程度まで、それは、コール・コール関数から公知の幅パラメーターである。F0およびf0は、さらなるフィッティングパラメータである。したがって、全体として3つのフィッティングパラメータが残る。以上に挙げた小さい周波数fの極限の場合は、とくにf<<f0/Δのときに存在する。
【0025】
本発明に係る方法により、次の利点が提供される。すなわち、不溶性のポリマーおよび1,000,000g/mol超の非常に大きい分子量を有するポリマーを特徴付けることが可能である。長鎖分岐をより良好に可視化することが可能である。
【0026】
混合則を利用して分子量分布を正確に計算するために、本発明の一実施形態では、ガラス過程のセグメント緩和の寄与により緩和時間スペクトルを補正する。マスターカーブにおいて、ガラス転移は、貯蔵弾性率が109程度の大きさから106程度の大きさに低下することから、可視化される。したがって、ガラス過程と流動過程との明確な識別が可能である。ガラス過程は、好ましくは、以上に挙げた方法で独立関数により解析的に検出され、次に、計算式から除去される。したがって、緩和スペクトル中のガラス過程部分を決定する場合、その手順は、本発明に係るものである。
【0027】
本発明の利点および可能性を例示するために、3種のポリマーNR、NBR、およびHNBRについて、解析により決定された分子量分布をGPC測定により決定された結果と比較した。
【0028】
ペールクレープ(NR)を特定の練りサイクル回数で粉砕した。10サイクルごとにサンプルを採取した。すべての練り実験を20℃の温度で行った。練りに使用したローラーの直径は、200mmであった。遅い方のローラーの回転数を20回転/分に調整し、速い方のローラーを24回転/分に調整した。2つのローラー間のギャップは、0.35mmであった。その場合、最大剪断速度
【0029】
【数5】
の概算値は、
【0030】
【数6】
に従って導出可能である。ミル間のギャップgおよびローラー回転数の差Δωは、既知である。
【0031】
図1は、ムーニー粘度M[MU](ML1+4/100℃)に及ぼす練りサイクル回数nの影響を示している。ムーニー粘度は、練りサイクル回数の増加に伴って指数関数的に低下する。100回の練りサイクルの後、ムーニー粘度は、約5のムーニーグレード値で一定に保たれる。以下の表は、練りサイクルの関数としてムーニー測定およびGPC測定で決定された結果をまとめたものである。
【0032】
【表1】
【0033】
MNは数平均モル質量であり、MWは重量平均モル質量であり、MZはZ平均モル質量であり、MPはモル質量分布のピーク値であり、そしてDは多分散度である。これに関連して、式
【0034】
【数7】
は、N本の鎖よりなるポリマーの平均モル質量を計算するための一般関係式を記述する。Niは、モル質量Miを有する鎖の数である。
【0035】
ν=1の場合、この式は、数平均モル質量MNの定義を提供する。ν=2は、重量平均モル質量MWの定義になる。ν=3は、Z平均モル質量MZとして知られる。
【0036】
多分散度Dは、
【0037】
【数8】
に従って計算される。
【0038】
以下の表は、ムーニー測定およびGPC測定で決定された結果を示しており、特徴付けされたNBRサンプルを含む。モル質量の減少は、ポリマー鎖の長さのランダムな減少を生じるメタセシス反応により達成された。この場合、メタセシス反応の平衡状態は、多分散度2により特徴付けられる。メタセシス反応の後、すべてのNBRサンプルをHNBR(約2%の残留二重結合を有する)に水素化した。
【0039】
【表2】
【0040】
以下の表は、ムーニー測定およびGPC測定の結果を示している。同一の数字を有するNBRサンプルおよびHNBRサンプル(たとえば、NBR1およびHNBR1)は、水素化プロセスの前後の同一のポリマーを示している。したがって、性質の差はいずれも、水素化プロセスに帰属可能である。
【0041】
【表3】
【0042】
さまざまな温度における複素剪断弾性率G*(ω)の周波数掃引から作成されたマスターカーブにより、すべてのサンプルの緩和挙動を特徴付けた。「ダブルサンドイッチサンプルホルダー」を用いて0.01Hz〜1000Hzの範囲内においてメトラーSTDA816e(Mettler STDA 816e)により−80℃〜100℃の温度範囲内で複素弾性率の周波数掃引を測定した。40℃〜140℃の温度範囲内における0.001Hz〜100Hzでの周波数依存測定および100℃における0.1秒〜40,000秒の時間範囲内でのクリープ測定のために、パール・フィジカMCR300(Paar Physica MCR 300)レオメーターを使用した。
【0043】
クリープ測定は、通常、長時間または小さい周波数(t≒1/f)での時間依存動的機械的挙動を特徴付けるために使用される。プログラム「NLREG」(フライブルクのマテリアル・リサーチ・センター(Freiburg,Material Research Center)、非線形正則化のためのNLREG、レオロジー2.0版,2001年)を用いて、時間依存クリープ弾性率G(t)から周波数依存弾性率G*(ω)を計算した。これにより、非常に小さい周波数(f<10−4Hz)における周波数依存挙動の特徴付けが可能である。
【0044】
図2は、60回のサイクルで練られた天然ゴム(ペールクレープ)のクリープ実験から周波数依存挙動を計算した結果を示している。60回の練りサイクルの後のNR(ペールクレープ)のクリープ測定値(図2a)および計算された周波数依存挙動(図2b)が示されている。
【0045】
時間−温度等価原理を用いて、クリープ実験から計算された周波数依存データとさまざまな温度における周波数依存測定値とを組み合わせて、約20桁の周波数範囲内の動的機械的挙動をカバーするマスターカーブを得た。図3は、60回の練りサイクルの後のNRのマスターカーブを作成した結果を示している。60回の練りサイクルの後のNR(ペールクレープ)の周波数依存測定値(図3a)および作成されたマスターカーブ(図3b)が示されている。
【0046】
測定値を解析的に評価するために、定数b=0.5を用いた5つのコール・コール関数の和を使用した。
【0047】
【数9】
以下の境界条件が満たされるように、パラメーターFνおよびf0νを選択した。
【0048】
【数10】
粘性端を有するこのコール・コール関数F*CCV(f)は、パラメーターF0、f0、およびΔにのみ依存する。図4は、粘性端を有する緩和過程の例を示している。図4aでは、5つのコール・コール関数は、独立してプロットされている。図4bは、F0=1、f0=1、かつΔ=100のときに得られた過程を示している。
【0049】
図5は、周波数依存挙動に及ぼすパラメーターΔ(Δ=1010、105、1、および101/2)の影響を示している。端条件を導入すると、緩和過程の以下の性質が得られる。
・粘性流の条件下で、貯蔵弾性率および損失弾性率は、理想ニュートン液体の挙動を反映する周波数依存挙動により特徴付けられる。
・損失弾性率がその極大に達する周波数は、緩和周波数f0と同一である。
・粘性端を有する緩和過程は、3つのパラメーター:F0、f0、およびΔにより特徴付けられる。幅パラメーターbは、一定である(b=0.5)。
【0050】
緩和時間スペクトルは、式
【0051】
【数11】
および
【0052】
【数12】
に基づいて解析的に計算される。
【0053】
結果をパラメーターΔの関数として図6aに示す。図6bは、以上の緩和過程に対してコール・コール式
【0054】
【数13】
を用いてモル質量分布を計算した結果を示している。
【0055】
以下の節では、60回の練りサイクルの後のNRを対象として、本発明に係る方法によるモル質量分布の計算(これ以降ではDMAと記す)について具体的に説明する。図6は、緩和時間スペクトルに及ぼす端比(Δ=1010、105、1、および101/2)の影響を示している。
【0056】
粘性端を有する6つの緩和関数の和により、マスターカーブ(図3a参照)を解析的に記述した。図7は、貯蔵弾性率および損失弾性率の周波数依存値に緩和関数を最小二乗法によりフィッティングされた結果を示している。
【0057】
最小二乗法によるフィッティングをエクセル(Excel)のマクロとして組み込んだ。これにより、所与のマスターカーブの貯蔵弾性率および損失弾性率の値に粘性端を有する8つまでの緩和関数をフィッティングすることが可能である。最良フィッティング条件は、次式で示される。
【0058】
【数14】
【0059】
貯蔵弾性率および損失弾性率の偏差が大きいため、データおよび関数値の対数目盛を選択した。これにより、全周波数範囲にわたりガラス転移状態の優位性もまた制限される。
【0060】
マスターカーブに緩和関数をフィッティングすると(図7参照)、緩和関数のパラメーターが得られる。図7は、粘性端を有する緩和関数による60回の練りサイクルの後のNR(ペールクレープ)のマスターカーブの解析的記述を示している。
【0061】
粘性端を有する緩和関数の和により緩和時間スペクトルが記述されるので(式
【0062】
【数15】
を参照されたい)、緩和時間スペクトルの数値計算は、もはや必要ではない。図8は、緩和時間パラメーターから計算された緩和時間スペクトルを示している。
【0063】
緩和時間スペクトルからモル質量分布を計算する際、次の仮定を行った。ティム(Thimm)ら[ティム W.(Thimm W.)、フリードリッヒ C.(Friedrich C.)、ホーナーカンプ J.(Honerkamp J.)著、レオロジー誌(J.Rheol.)、6:43、1999年]は、チューブ中の鎖のレプテーション時間だけが鎖長と直接相関することに気づいた。より短い緩和時間は、鎖セグメントの緩和により引き起こされる(いわゆるラウスモード)。したがって、鎖長の分布は、有利には、緩和時間スペクトルからラウスモードを差し引くことにより計算される。
【0064】
緩和時間スペクトルへのラウスモードの寄与の理論的誘導[ラウス,P.E.(Rouse,P.E.)著、化学物理学誌(J.Chem.Phys.)、第21巻:1272頁、1953年]は、実験結果と良い相関を示さないので(とくにガラス転移条件下)、経験的手法を選択し、粘性端を有する2つの緩和関数により鎖セグメントの緩和を近似した(図8a中の点線を参照されたい)。2つの緩和関数を差し引いた後、残存する緩和関数スペクトルからモル質量分布を解析的に計算した(図8b参照)。図8は、60回の練りサイクルの後のNR(ペールクレープ)の緩和時間スペクトルおよびモル質量分布を示している。
【0065】
図9は、最初の表に基づく練りサイクル回数の関数としてNRのGPC結果(曲線1)およびDMA結果(曲線2)を示している。動的機械的データ(すなわちDMAデータ)は校正されていないので、上側の軸上に示されるモル質量の値は、単に相対数であるにすぎない。
【0066】
GPCおよびDMAから得られたモル質量分布の比較は、80回超のサイクルで練られたNRサンプルで良好な相関を示し、動的機械的データの粗い校正を可能にする。混合サイクルの回数が比較的少ない場合、2つの方法の結果は、有意に異なる。
【0067】
動的機械的解析の結果は、次のようにまとめることが可能である。
・練られていないNRは、モル質量M1≒105g/molおよびM2≒2×106g/molを有する二モード分布により特徴付けられる。
・10回の練りサイクルの後、第3のピーク(M3≒4×105g/mol)がモル質量分布に現れる。50回の練りサイクルが行われるまで、このピークのモル質量は、不変のまま保持される。
・最大モル質量M2≒2×106g/molを有するピークの強度は、練りサイクル回数の増加に伴って減少し、約50回の混合サイクルの後で消失する。
・約50回の練りサイクルの後、モル質量分布は、M1≒7×104g/molおよびM3≒3×105g/molを有して再び二モードになる。練りサイクル回数をさらに増加させると、大きいほうのモル質量M3を有する部分の強度が減少する。約80回の練りサイクルで、モル質量分布は、約MP≒1.4×105g/molの極大を有する単一モード分布関数に近づく。
・練りサイクル回数をさらに増加させても、ピーク値のわずかな減少を生じるにすぎない(80回の練りサイクルの後の約1.4×105g/molから110回の練りサイクルの後の約1.0×105g/molまで)。
【0068】
動的機械的解析(DMA)の結果は、2つの仮定を行った場合に解釈可能である。
1.解析されたNRは、異なるモル質量を有する少なくとも3つの部分のブレンドであり、最大モル質量を有する部分が優位である。
2.より短い鎖は、より長い鎖よりも安定である。
【0069】
より長い鎖が最初に破壊される場合、最大モル質量を有する部分が、練りプロセスにより最初に最も多く影響を受ける。
【0070】
10回の練りサイクルの後、最大モル質量を有する部分は、もはや混合物中で優位ではない。約50回の練りサイクルの後、最長鎖は、ほぼ消失した。この時点で、モル質量分布は、2番目に大きいモル質量を有する部分が優位になる。80回の練りサイクルの後、ほとんどの鎖が破壊されて、モル質量分布は、最小モル質量を有する部分が優位になる。
【0071】
鎖の安定性がその長さに依存する場合、モル質量の減少は、臨界値になるような制約を受ける。臨界長では、剪断速度に比例する適用力学場(式
【0072】
【数16】
を参照されたい)は、小さすぎて鎖を破壊できない。このことは、特定回数の練りサイクルの後で本質的に一定のモル質量分布になることを意味する。行った実験では、モル質量の最大値は、約90回の練りサイクルの後で1×105g/molであり、さらなる練りを行った後でも一定に保たれる。
【0073】
DMAの結果とGPC解析の結果との比較では、最初の練りサイクルで有意差を生じる。練りサイクル回数が増加すると、2つの方法は同等になる。
【0074】
大きいモル質量を有する部分は、不溶性であるのでGPC法により検出されないことを想定すれば、2つの方法の結果の差は、説明可能である。特定回数の練りサイクルの後、最大モル質量を有する不溶性画分は除去された。したがって、GPC測定の結果は、本発明(DMA)により決定された結果に類似している。2つの方法の定量的比較から、ポリマー鎖のモル質量が1×106g/molを超えた場合、GPC法の使用には問題があることが示される。結果から判断して、より大きいモル質量を有する鎖は、使用したGPC法により検出されない。
【0075】
NBRおよびHNBRのサンプルのモル質量分布を決定した結果を図10および11に示す。曲線1は、GPC測定の結果を表し、曲線2は、動的機械的実験(DMA)の結果、すなわち、本発明により得られた結果を表す。動的機械的測定(DMA)の結果は、独立に校正されていないので、次いで2つの方法の定量的比較を行うことはできない。したがって、上側の軸上に示されるDMAから得られたモル質量の値は、この場合も相対数である。
【0076】
NBRの結果の比較から、GPC法とDMA法との間の良好な定性的一致が示される。比較的高いモル質量でのみ有意差を生じる。2つの方法の結果の差は、この場合も、不溶性ポリマー部分によってのみ説明可能である。GPC法により検出できないこれらの不溶性画分は、非常に大きいモル質量を有する鎖または分岐状構造を有する鎖のいずれかに起因する。
【0077】
両方法を裏付ける理論は、ポリマーの鎖がすべて線状であるという仮定に基づく。分岐がある時、GPCおよびDMAの結果は、異なった影響を受ける。GPC法の原理は、ポリマー鎖のサイズ(すなわち慣性半径)が多孔性材料内の拡散に依存することである。より小さい鎖は、より長い鎖よりも多孔性材料内を拡散するのにより長い時間を必要とする。分岐状構造は、同等のモル質量の直鎖よりも常に小さい慣性半径を有するので、分岐状構造は、拡散過程でより長い時間を必要とする。したがって、分岐状構造のモル質量は、GPC測定では過小評価される。
【0078】
図10は、GPC(曲線1)およびDMA(曲線2)によるNBRのモル質量の特徴付けを示している。DMAの場合、モル質量が鎖全体の緩和時間に関連付けられ、分岐鎖の緩和が同等のモル質量を有する直鎖の緩和よりも遅いので、モル質量は、DMAでは過大評価される可能性があることを想定すべきである。したがって、大きいモル質量の領域におけるGPCから得られたモル質量分布とDMAから得られたモル質量分布との比較は、長鎖分岐の存在の指標として使用可能である。
【0079】
GPCおよびDMAから得られたモル質量分布を比較的大きいモル質量の領域においてNBRサンプルで比較した場合(図10参照)、DMA値は、GPC測定値よりもわずかに大きい。このことは、長鎖の分岐状構造のわずかな寄与の存在を意味する。
【0080】
同一の比較をHNBRサンプルで行った場合[図11(GPC(曲線1)およびDMA(曲線2)によるHNBRのモル質量分布の特徴付け)を参照されたい]、DMAから得られた結果は、GPC測定から得られた結果よりも大きいモル質量を有する鎖の部分が有意に多いことが示される。可能な1つの説明は、水素化中のポリマー鎖のさらなる分岐化であろう。
【0081】
他の説明は、緩和挙動に及ぼすポリマー鎖の可撓性の影響に基づく。水素化ポリマー鎖の可撓性が増大すると、緩和時間が長くなり、体積粘性が増大される。粘度に及ぼす鎖の可撓性の影響は、長鎖の分岐鎖ではより大きいので、モル質量分布への分岐鎖の寄与は、分岐鎖がより大きい可撓性を得た場合に増大されるであろう。
【0082】
本結果に基づいて、水素化反応中に起こりうる分岐化反応の定量的確認を行うことはできない。これを行うには、さまざまな粘度および完全な直鎖状構造を有する一連のNBRサンプルを用いた反復実験が必要であろう。
【0083】
水素化中に副反応が起こらない場合、水素化は、ポリマー鎖の可撓性にのみ影響を及ぼすであろう。鎖の可撓性の影響は、鎖の構造の粘度に依存し、分岐状構造の水素化は、直鎖状構造の水素化よりも有意に高い粘度をもたらすので、NBRの結果とHNBRの結果との差は、NBR中の分岐状ポリマー鎖の部分の存在の定性的指標になりうる。
【0084】
頻繁に議論される効果は、NBR中の二重結合の水素化後にムーニー粘度が有意に上昇するという事実を記述するいわゆる「ムーニージャンプ」である。
【0085】
これは、図12に明確に示されている。この図には、NBRのムーニー粘度ML1+4/100℃(これ以降ではMLと記す)が、HNBRのMLとNBRのMLとの比に対してプロットされている。HNBRのMLは、誘導に用いられたNBRのMLよりも高いだけでなく、ムーニー粘度の比は、NBRのムーニー粘度が低いときに最大値に達する。NBRのムーニー粘度が高いほど、「ムーニージャンプ」の効果は小さい。
【0086】
現在までのところ、どの機構が「ムーニージャンプ」およびNBRのムーニー粘度へのその依存性に関与しているかは、明らかでない。
【0087】
NBRと比較してHNBRのムーニー粘度がより高いことの可能な説明は、より多量の高分子量鎖および/または分岐鎖を生成する化学副反応が水素化プロセス中に存在することである。
【0088】
他の説明は、水素化に起因して増大するNBRポリマー鎖の可撓性に基づく。水素化ポリマー鎖の可撓性が高くなるほど、より多くの絡み合いを生じるであろう。絡み合いの数が多くなると粘度が高くなるので、主鎖の可撓性の増大には体積粘性の増加が常に伴うと結論付けることが可能である。
【0089】
NBRポリマーのGPCの結果とHNBRポリマーのGPCの結果との比較から、HNBRサンプルの数平均モル質量および重量平均モル質量は、対応するNBRサンプルの平均値よりも単に約10%〜20%高いにすぎないことが示される(図13(GPCにより測定されたNBRおよびHNBRのモル質量の平均値の比較)を参照されたい)。そのほかに、GPCの結果から、モル質量の比は、NBRのモル質量になんら依存しないことが示される。
【0090】
GPCでは非常に大きい分子量部分および/または長鎖分枝状部分を検出できないが、ムーニージャンプを裏付ける機構を解明するために、DMAの結果を利用することが可能である。
【0091】
NBRポリマーの動的機械的結果とHNBRポリマーの動的機械的結果との比較(図14参照)から、HNBRの数平均モル質量は、対応するNBRサンプルの平均値よりも約10%〜20%高いことが示される。この結果は、GPC測定の結果に類似している。
【0092】
重量平均モル質量の特徴付けは、GPC測定とDMA測定とで対照的な結果を与える。GPCの結果では、HNBRの重量平均モル質量とNBRの重量平均モル質量との一定比が検出されるが、DMAでは、モル質量の有意な影響が検出される。HNBRの重量平均モル質量とNBRの重量平均モル質量との比は、モル質量と共に増大し、最大モル質量でプラトー値に達する(図14(動的機械的解析により測定されたNBRおよびHNBRのモル質量の平均値の比較)の中央図および右側図を参照されたい)。
【0093】
NBRおよびHNBRのGPCおよび動的機械的解析(DMA)の結果から、ムーニージャンプの理由として2つの可能な機構が示唆される。
【0094】
水素化NBR鎖のより高い可撓性
これにより、慣性半径の増大および粘度の上昇がもたらされる。モル質量は、慣性半径(GPC法)または体積粘性(DMA)から計算されるので、水素化鎖の可撓性が増大すれば、モル質量の一定の増加が起こるであろう。数平均モル質量の比が両方法ともモル質量に依存しないことが明らかであるという事実により、実験的確認が得られる。
【0095】
長い分岐鎖の存在
分岐度が増大した場合、慣性半径は減少し、粘度は増大する。したがって、GPC法では分岐状構造のモル質量が過小評価され、一方、動的機械的解析では逆の効果が現れる。
【0096】
水素化されると鎖の可撓性が高くなるが、慣性半径や粘度に及ぼす分岐化の影響は、より高い可撓性の鎖の場合よりも大きい。
【0097】
したがって、比較的大きいモル質量におけるGPC法の結果と動的機械的方法の結果との差は、分岐状ポリマー鎖の部分に帰属しうる。このことは、モル質量分布の図(図10および図11を参照されたい)ならびに重量平均モル質量に及ぼすモル質量の影響の比較(図13と図14とを比較されたい)に見いだしうる。
【0098】
以上の説明により、ムーニージャンプは、水素化ポリマー鎖の可撓性の増大に帰属可能である。
【0099】
比較的高いムーニー粘度におけるムーニー粘度比の減少(図12参照)は、ポリマー鎖の可撓性の増大により説明することはできない。可撓性が増大すると、線状ポリマー鎖の場合、HNBRとNBRとの一定の粘度比を生じ、分岐状ポリマーまたは部分分岐状ポリマーの場合、粘度比の増加を生じるであろう。
【0100】
ムーニー測定の条件は、実際には明確に規定されないので、式
【0101】
【数17】
を用いて動的機械的測定値から剪断粘度比を追加的に計算し、NBRの粘度の関数としてプロットした(NBRおよびHNBRの粘度を示す図15を参照されたい)。この結果は、ムーニー測定の結果とは完全に異なる。NBRの粘度が増加すると、HNBRの粘度とNBRの粘度との比は増大する。NBRの最高粘度では、比は、一定のプラトーに達する。
【0102】
逆の結果の説明は、この場合も、粘度に及ぼす鎖の構造およびその可撓性の影響に基づく。
【0103】
絡み合った線状ポリマーの場合、剪断速度が増大すると体積粘性の減少が起こる。同等のモル質量を有する分岐状ポリマーは、低剪断速度ではより高い粘度により特徴付けられ、増大された剪断速度ではより大きい粘度低下により特徴付けられる。
【0104】
異なる鎖長および構造を有するポリマーを対象として、この挙動の概略図を図16(線状構造(a)および長鎖分岐鎖状構造(b)を有するポリマーの粘度に及ぼす剪断速度の影響)に示す。図16aは、線状NBR(実線の曲線)の挙動を示している。NBRを水素化すると可撓性が増大し、その結果、粘度が増大する(点線の曲線を参照されたい)。低剪断速度および高剪断速度におけるHNBRの粘度とNBRの粘度との比は、粘度に及ぼす剪断速度の影響が線状ポリマー鎖の場合には比較的低いので事実上一定である。
【0105】
長鎖分岐鎖部分を有するNBRを考慮対象とした場合、この変化は劇的である(図16b参照)。低剪断速度のとき、長鎖分岐鎖部分は、より高い体積粘性を生じる(図16aおよび16bの実線の曲線を比較されたい)。低剪断速度のとき、分岐状構造の粘度に及ぼす水素化の影響がより強いので、HNBRの粘度はより高い(図16bの点線の曲線を参照されたい)。したがって、大きさが小さいとき、HNBRの粘度とNBRの粘度との比は、直鎖の粘度比よりも有意に高い。
【0106】
分岐鎖の粘度に及ぼす剪断速度の影響は、より明確であるが、分岐鎖の粘度は、高剪断速度の限界値のとき、直鎖の粘度よりも小さい。したがって、比較的高い剪断速度のとき、ポリマーの分岐状構造は、同等のモル質量を有する線状ポリマーよりもHNBRの粘度とNBRの粘度との比がより小さくなる(剪断速度が
【0107】
【数18】
のときの図16aおよび16bの粘度を比較されたい)。
【0108】
NRおよびNBR/HNBRの測定の結果から、DMA(すなわち、本発明に従って行われる方法)は、モル質量およびその分布を特徴付ける新規な方法を提供することが示される。比較的高いモル質量または長鎖分岐状構造部分を有するポリマー鎖が存在する場合、GPCよりも優れたDMAの利点が明瞭になる。
【0109】
DMAは校正が行われていないので、結果をモル質量の定量に使用することはできない。しかしながら、DMAの結果とGPCの結果とを比較することにより、モル質量の概略推定値を得た。これを図9、10、および11に示す。ただし、GPC測定およびDMA測定から得られたモル質量のピーク値を比較の基準として使用した。
【0110】
GPCの校正は、通常、さまざまなモル質量および狭いモル質量分布を有する一連のポリスチレン(またはポリイソプレン)サンプルを用いて行われる。一般的には、未知のポリマーのモル質量は、ポリスチレン校正に基づいて計算される。特徴付けされるポリマーのポリマー−溶媒相互作用または鎖の可撓性がポリスチレン(またはポリイソプレン)とは異なる場合、モル質量の系統的偏差を生じる。その場合、GPC測定は、単にモル質量およびその分布に対する定性的結果を与えるにすぎない。
【0111】
所要により、GPC法の場合と同様にDMAの校正を行うことが可能である。さまざまなポリマー(たとえば、ポリスチレンやポリイソプレン)を用いて校正の比較を行えば、それらのモル質量の定量的な特徴付けが可能になるだけでなく、さらにそれらの鎖の可撓性に関する直接的な情報が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】ムーニー粘度M[MU](ML1+4/100℃)に及ぼす練りサイクル回数nの影響を示す。
【図2】60回のサイクルで練られた天然ゴム(ペールクレープ)のクリープ実験から周波数依存挙動を計算した結果を示す。
【図3】60回の練りサイクルの後のNRのマスターカーブを作成した結果を示す。
【図4】粘性端を有する緩和過程の例を示す。
【図5】周波数依存挙動に及ぼすパラメーターΔ(Δ=1010、105、1、および101/2)の影響を示す。
【図6】図6aはパラメーターΔの関数として緩和時間スペクトルを示す。図6bは、コール・コール式を用いてモル質量分布を計算した結果を示す。
【図7】貯蔵弾性率および損失弾性率の周波数依存値に緩和関数を最小二乗法によりフィッティングした結果を示す。
【図8】緩和時間パラメーターから計算された緩和時間スペクトルを示す。
【図9】最初の表に基づく練りサイクル回数の関数としてNRのGPC結果(曲線1)およびDMA結果(曲線2)を示す。
【図10】GPC(曲線1)およびDMA(曲線2)によるNBRのモル質量の特徴付けを示す。
【図11】GPC(曲線1)およびDMA(曲線2)によるHNBRのモル質量分布の特徴付けを示す。
【図12】NBRのムーニー粘度ML1+4/100℃(これ以降ではMLと記す)が、HNBRのMLとNBRのMLとの比に対してプロットされている。
【図13】GPCにより測定されたNBRおよびHNBRのモル質量の平均値の比較を示す。
【図14】NBRポリマーの動的機械的結果とHNBRポリマーの動的機械的結果との比較を示す。
【図15】NBRおよびHNBRの粘度を示す。
【図16】線状構造(a)および長鎖分岐鎖状構造(b)を有するポリマーの粘度に及ぼす剪断速度の影響を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの分子量分布の決定方法に関する。ポリマーを調製する場合、さまざまな長さの鎖が形成される。それに応じて、ポリマー鎖の分子量分布を生じる。
【背景技術】
【0002】
先行技術には、分子量分布の種々の決定方法、たとえば「GPC」という名称の方法が開示されている。GPC法では、ポリマーは、溶解されて多孔性カラムに適用される。カラム内を迅速に通過するものほど、分子量は大きい。したがって、カラム内を通過する速度は、分子量分布の尺度である。
【0003】
この方法は、可溶性のポリマーだけを解析しうるにすぎないという欠点を有する。また、この方法の感度は、分子量が大きくなるにつれて減少する。
【0004】
分子量の増大に伴う感度に関する欠点を克服するために、先行技術では、物理的データに基づいて分子量分布を計算することが提案されている。そのような方法は、とくに、(非特許文献1)の論文から公知になっている。
【0005】
最初に、さまざまな温度で周波数の関数として複素剪断弾性率を測定する。技術上の理由から、測定は、10−3〜103Hzの周波数で行われる。10−3Hz未満の周波数に減少すると、測定時間は、大幅に増大する。たとえば、10−3Hzでの測定時間は、1・1/2時間である。装置上の理由から、103Hz超での測定は、測定装置の固有振動により結果が歪むので問題がある。
【0006】
この問題にかかわらず比較的広い周波数範囲にわたりデータを評価できるようにするために、比較的低い温度での測定値を比較的高い周波数での測定値に計算により変換可能であるという事実を利用する。そのような変換の結果として、比較的広い周波数スペクトルをカバーするいわゆるマスターカーブが得られる。その場合、周波数に対して複素剪断弾性率を特徴付けかつ再現する2つの関数が数値形式で存在する。一方は実数部であり、他方は虚数部である。実数部は、貯蔵弾性率と呼ばれ、虚数部は、損失弾性率と呼ばれる。典型的な周波数範囲は、14〜20桁に及ぶにもかかわらず、測定は、以上に挙げた周波数範囲内で行われてきたにすぎない。
【0007】
先行技術によれば、いわゆる緩和時間スペクトルが、それから数値的に決定される。数値の出発データから緩和時間スペクトルへの数値変換は、不利なことに、いわゆる不良設定問題である。出発データ(測定値またはマスターカーブの値)の誤差は、変換により増幅される可能性がある。
【0008】
緩和時間スペクトルおよび一般化混合則を用いて、分子量mの分布が数値的に決定される。一般化混合則は、緩和時間スペクトルh(m)と分子量分布ω(m)との関係を記述する。緩和時間スペクトルh(m)は、数値形式で利用可能である。したがって、この式は、先行技術に従って数値的に解かれる。
【非特許文献1】W.ティム(W.Thimm)ら著、緩和時間スペクトルと分子量分布との解析的関係(An analytical relation between relaxation time spectrum and molecular weight distribution)、レオロジー誌(J.Rheol.)、第43巻、第6号(1999年)、1663−1672頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、先行技術と比較して改良された形で分子量分布を決定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、数値形式で利用可能な出発データG*(ω)を記述することにより、すなわち、周波数の関数として測定された複素剪断弾性率またはそれから作成されたマスターカーブを解析関数で記述することにより達成される。このようにすれば、緩和挙動に関する正確な知識が、とくに長時間の緩和時間の場合にも、改良された形で利用可能である。これにより緩和時間スペクトルの効果的な決定が可能になるので、基本的に分子量分布のより効果的な計算が可能になる。
【0011】
分子量分布は、緩和時間スペクトルおよび一般化混合則から計算可能である。この計算に以下の一般混合則が使用可能である。
【0012】
【数1】
式中、
ω(m):分子量分布
m、m’:分子量
β:混合パラメーター
G0:プラトー弾性率
【0013】
混合パラメーターベータ(β)は、フィッティングパラメータである。実際に行ってみたところ、所望の効果的な分布関数を求めるのにβ=2が好適な値であることが判明した。しかしながら、βは、たとえば、1であってもよい。しかしながら、この値は、それほど好適ではない。
【0014】
最初に、一般的には、周波数の関数として測定された複素剪断弾性率からマスターカーブが作成される。緩和時間スペクトルh(τ)は、好ましくは解析的に、それから決定される。
【0015】
緩和時間スペクトルh(τ)から関係式h(m)を導くために、一実施形態では、緩和時間τと個々のポリマー鎖のモル質量mとの以下の関係式から開始される。以下の関係式は、経験から明らかなように、個々のポリマー鎖の分子量と緩和時間τとの所望の関係を正確に記述する。
τ=k・mα
個々のポリマー鎖の分子量mは、関係式τ=k・mαにより緩和時間τから計算可能である。定数kは、校正測定により決定可能である。値アルファ(α)は、測定から取得可能である。この目的のために、既知の分子量分布を有するポリマーを利用しうる。そのようなポリマーは、校正ポリマーとして知られる。そのような既知のポリマーの緩和時間を測定する際、所望の定数を決定しうる。通常、α=3.4であることが判明した。
【0016】
定数kを決定することは、必要というわけではない。これは、原理的には、任意に選択することさえも可能である。しかしながら、その場合、決定される分子量分布は、相対的なものであり、絶対的なものではない。
【0017】
数値形式で利用可能な出発データを記述するための解析式を見いだすうえでの困難は、ポリマーの緩和を全範囲にわたり記述することにある。利用可能な通常の式では、ポリマーの粘性流がカバーされない。このことは、とくに、「コール R.(Cole R.)、コール H.(Cole H.)著、化学物理学誌(J.Chem Phys.)、第9巻:341頁、1941年」から公知であるコール・コール関数
【0018】
【数2】
に対してもあてはまる。この関数は、振幅F0、平均緩和時間τ0、および幅パラメーターbを用いて緩和過程を記述する。
【0019】
この問題を克服するために、本発明の一実施形態では、数値形式で利用可能な出発データを解析関数により記述すべく幅パラメーターb=0.5を用いてコール・コール関数の和を使用する。好結果を得るために少なくとも3つのコール・コール関数の和をとることが望ましいことが判明した。とくに好ましい5つのコール・コール関数の和を以下に示す。
【0020】
【数3】
式中、ω=2πfおよびτ0=1/(2πf0)。和をとるコール・コール関数の数にかかわらず、とくに良好な結果を得るために0.5の幅パラメーターを選択することがとくに重要であることが判明した。
【0021】
パラメーターF0νおよびf0νは、有利には、コール・コール関数の和が次のようになるように選択することが望ましい。すなわち、log−logプロットにおいて、実数部は、小さい周波数の極限の場合に2の傾きを有していなければならず、かつ虚数部は、小さい周波数の極限の場合に1の傾きを有していなければならない。そのようにすれば、粘性流領域における貯蔵弾性率および損失弾性率の周波数依存挙動は、正確に記述される。
【0022】
したがって、5つのコール・コール関数の和の場合、以上に挙げたパラメーターF0νおよびf0νの間には、以下の関係が存在する。
【0023】
【数4】
これらの3つの式が満たされた場合、貯蔵弾性率および損失弾性率の周波数依存挙動は、粘性流領域において正確に記述される。
【0024】
Δは、フィッティングパラメータであり、種々の過程の周波数分離を記述する。ある程度まで、それは、コール・コール関数から公知の幅パラメーターである。F0およびf0は、さらなるフィッティングパラメータである。したがって、全体として3つのフィッティングパラメータが残る。以上に挙げた小さい周波数fの極限の場合は、とくにf<<f0/Δのときに存在する。
【0025】
本発明に係る方法により、次の利点が提供される。すなわち、不溶性のポリマーおよび1,000,000g/mol超の非常に大きい分子量を有するポリマーを特徴付けることが可能である。長鎖分岐をより良好に可視化することが可能である。
【0026】
混合則を利用して分子量分布を正確に計算するために、本発明の一実施形態では、ガラス過程のセグメント緩和の寄与により緩和時間スペクトルを補正する。マスターカーブにおいて、ガラス転移は、貯蔵弾性率が109程度の大きさから106程度の大きさに低下することから、可視化される。したがって、ガラス過程と流動過程との明確な識別が可能である。ガラス過程は、好ましくは、以上に挙げた方法で独立関数により解析的に検出され、次に、計算式から除去される。したがって、緩和スペクトル中のガラス過程部分を決定する場合、その手順は、本発明に係るものである。
【0027】
本発明の利点および可能性を例示するために、3種のポリマーNR、NBR、およびHNBRについて、解析により決定された分子量分布をGPC測定により決定された結果と比較した。
【0028】
ペールクレープ(NR)を特定の練りサイクル回数で粉砕した。10サイクルごとにサンプルを採取した。すべての練り実験を20℃の温度で行った。練りに使用したローラーの直径は、200mmであった。遅い方のローラーの回転数を20回転/分に調整し、速い方のローラーを24回転/分に調整した。2つのローラー間のギャップは、0.35mmであった。その場合、最大剪断速度
【0029】
【数5】
の概算値は、
【0030】
【数6】
に従って導出可能である。ミル間のギャップgおよびローラー回転数の差Δωは、既知である。
【0031】
図1は、ムーニー粘度M[MU](ML1+4/100℃)に及ぼす練りサイクル回数nの影響を示している。ムーニー粘度は、練りサイクル回数の増加に伴って指数関数的に低下する。100回の練りサイクルの後、ムーニー粘度は、約5のムーニーグレード値で一定に保たれる。以下の表は、練りサイクルの関数としてムーニー測定およびGPC測定で決定された結果をまとめたものである。
【0032】
【表1】
【0033】
MNは数平均モル質量であり、MWは重量平均モル質量であり、MZはZ平均モル質量であり、MPはモル質量分布のピーク値であり、そしてDは多分散度である。これに関連して、式
【0034】
【数7】
は、N本の鎖よりなるポリマーの平均モル質量を計算するための一般関係式を記述する。Niは、モル質量Miを有する鎖の数である。
【0035】
ν=1の場合、この式は、数平均モル質量MNの定義を提供する。ν=2は、重量平均モル質量MWの定義になる。ν=3は、Z平均モル質量MZとして知られる。
【0036】
多分散度Dは、
【0037】
【数8】
に従って計算される。
【0038】
以下の表は、ムーニー測定およびGPC測定で決定された結果を示しており、特徴付けされたNBRサンプルを含む。モル質量の減少は、ポリマー鎖の長さのランダムな減少を生じるメタセシス反応により達成された。この場合、メタセシス反応の平衡状態は、多分散度2により特徴付けられる。メタセシス反応の後、すべてのNBRサンプルをHNBR(約2%の残留二重結合を有する)に水素化した。
【0039】
【表2】
【0040】
以下の表は、ムーニー測定およびGPC測定の結果を示している。同一の数字を有するNBRサンプルおよびHNBRサンプル(たとえば、NBR1およびHNBR1)は、水素化プロセスの前後の同一のポリマーを示している。したがって、性質の差はいずれも、水素化プロセスに帰属可能である。
【0041】
【表3】
【0042】
さまざまな温度における複素剪断弾性率G*(ω)の周波数掃引から作成されたマスターカーブにより、すべてのサンプルの緩和挙動を特徴付けた。「ダブルサンドイッチサンプルホルダー」を用いて0.01Hz〜1000Hzの範囲内においてメトラーSTDA816e(Mettler STDA 816e)により−80℃〜100℃の温度範囲内で複素弾性率の周波数掃引を測定した。40℃〜140℃の温度範囲内における0.001Hz〜100Hzでの周波数依存測定および100℃における0.1秒〜40,000秒の時間範囲内でのクリープ測定のために、パール・フィジカMCR300(Paar Physica MCR 300)レオメーターを使用した。
【0043】
クリープ測定は、通常、長時間または小さい周波数(t≒1/f)での時間依存動的機械的挙動を特徴付けるために使用される。プログラム「NLREG」(フライブルクのマテリアル・リサーチ・センター(Freiburg,Material Research Center)、非線形正則化のためのNLREG、レオロジー2.0版,2001年)を用いて、時間依存クリープ弾性率G(t)から周波数依存弾性率G*(ω)を計算した。これにより、非常に小さい周波数(f<10−4Hz)における周波数依存挙動の特徴付けが可能である。
【0044】
図2は、60回のサイクルで練られた天然ゴム(ペールクレープ)のクリープ実験から周波数依存挙動を計算した結果を示している。60回の練りサイクルの後のNR(ペールクレープ)のクリープ測定値(図2a)および計算された周波数依存挙動(図2b)が示されている。
【0045】
時間−温度等価原理を用いて、クリープ実験から計算された周波数依存データとさまざまな温度における周波数依存測定値とを組み合わせて、約20桁の周波数範囲内の動的機械的挙動をカバーするマスターカーブを得た。図3は、60回の練りサイクルの後のNRのマスターカーブを作成した結果を示している。60回の練りサイクルの後のNR(ペールクレープ)の周波数依存測定値(図3a)および作成されたマスターカーブ(図3b)が示されている。
【0046】
測定値を解析的に評価するために、定数b=0.5を用いた5つのコール・コール関数の和を使用した。
【0047】
【数9】
以下の境界条件が満たされるように、パラメーターFνおよびf0νを選択した。
【0048】
【数10】
粘性端を有するこのコール・コール関数F*CCV(f)は、パラメーターF0、f0、およびΔにのみ依存する。図4は、粘性端を有する緩和過程の例を示している。図4aでは、5つのコール・コール関数は、独立してプロットされている。図4bは、F0=1、f0=1、かつΔ=100のときに得られた過程を示している。
【0049】
図5は、周波数依存挙動に及ぼすパラメーターΔ(Δ=1010、105、1、および101/2)の影響を示している。端条件を導入すると、緩和過程の以下の性質が得られる。
・粘性流の条件下で、貯蔵弾性率および損失弾性率は、理想ニュートン液体の挙動を反映する周波数依存挙動により特徴付けられる。
・損失弾性率がその極大に達する周波数は、緩和周波数f0と同一である。
・粘性端を有する緩和過程は、3つのパラメーター:F0、f0、およびΔにより特徴付けられる。幅パラメーターbは、一定である(b=0.5)。
【0050】
緩和時間スペクトルは、式
【0051】
【数11】
および
【0052】
【数12】
に基づいて解析的に計算される。
【0053】
結果をパラメーターΔの関数として図6aに示す。図6bは、以上の緩和過程に対してコール・コール式
【0054】
【数13】
を用いてモル質量分布を計算した結果を示している。
【0055】
以下の節では、60回の練りサイクルの後のNRを対象として、本発明に係る方法によるモル質量分布の計算(これ以降ではDMAと記す)について具体的に説明する。図6は、緩和時間スペクトルに及ぼす端比(Δ=1010、105、1、および101/2)の影響を示している。
【0056】
粘性端を有する6つの緩和関数の和により、マスターカーブ(図3a参照)を解析的に記述した。図7は、貯蔵弾性率および損失弾性率の周波数依存値に緩和関数を最小二乗法によりフィッティングされた結果を示している。
【0057】
最小二乗法によるフィッティングをエクセル(Excel)のマクロとして組み込んだ。これにより、所与のマスターカーブの貯蔵弾性率および損失弾性率の値に粘性端を有する8つまでの緩和関数をフィッティングすることが可能である。最良フィッティング条件は、次式で示される。
【0058】
【数14】
【0059】
貯蔵弾性率および損失弾性率の偏差が大きいため、データおよび関数値の対数目盛を選択した。これにより、全周波数範囲にわたりガラス転移状態の優位性もまた制限される。
【0060】
マスターカーブに緩和関数をフィッティングすると(図7参照)、緩和関数のパラメーターが得られる。図7は、粘性端を有する緩和関数による60回の練りサイクルの後のNR(ペールクレープ)のマスターカーブの解析的記述を示している。
【0061】
粘性端を有する緩和関数の和により緩和時間スペクトルが記述されるので(式
【0062】
【数15】
を参照されたい)、緩和時間スペクトルの数値計算は、もはや必要ではない。図8は、緩和時間パラメーターから計算された緩和時間スペクトルを示している。
【0063】
緩和時間スペクトルからモル質量分布を計算する際、次の仮定を行った。ティム(Thimm)ら[ティム W.(Thimm W.)、フリードリッヒ C.(Friedrich C.)、ホーナーカンプ J.(Honerkamp J.)著、レオロジー誌(J.Rheol.)、6:43、1999年]は、チューブ中の鎖のレプテーション時間だけが鎖長と直接相関することに気づいた。より短い緩和時間は、鎖セグメントの緩和により引き起こされる(いわゆるラウスモード)。したがって、鎖長の分布は、有利には、緩和時間スペクトルからラウスモードを差し引くことにより計算される。
【0064】
緩和時間スペクトルへのラウスモードの寄与の理論的誘導[ラウス,P.E.(Rouse,P.E.)著、化学物理学誌(J.Chem.Phys.)、第21巻:1272頁、1953年]は、実験結果と良い相関を示さないので(とくにガラス転移条件下)、経験的手法を選択し、粘性端を有する2つの緩和関数により鎖セグメントの緩和を近似した(図8a中の点線を参照されたい)。2つの緩和関数を差し引いた後、残存する緩和関数スペクトルからモル質量分布を解析的に計算した(図8b参照)。図8は、60回の練りサイクルの後のNR(ペールクレープ)の緩和時間スペクトルおよびモル質量分布を示している。
【0065】
図9は、最初の表に基づく練りサイクル回数の関数としてNRのGPC結果(曲線1)およびDMA結果(曲線2)を示している。動的機械的データ(すなわちDMAデータ)は校正されていないので、上側の軸上に示されるモル質量の値は、単に相対数であるにすぎない。
【0066】
GPCおよびDMAから得られたモル質量分布の比較は、80回超のサイクルで練られたNRサンプルで良好な相関を示し、動的機械的データの粗い校正を可能にする。混合サイクルの回数が比較的少ない場合、2つの方法の結果は、有意に異なる。
【0067】
動的機械的解析の結果は、次のようにまとめることが可能である。
・練られていないNRは、モル質量M1≒105g/molおよびM2≒2×106g/molを有する二モード分布により特徴付けられる。
・10回の練りサイクルの後、第3のピーク(M3≒4×105g/mol)がモル質量分布に現れる。50回の練りサイクルが行われるまで、このピークのモル質量は、不変のまま保持される。
・最大モル質量M2≒2×106g/molを有するピークの強度は、練りサイクル回数の増加に伴って減少し、約50回の混合サイクルの後で消失する。
・約50回の練りサイクルの後、モル質量分布は、M1≒7×104g/molおよびM3≒3×105g/molを有して再び二モードになる。練りサイクル回数をさらに増加させると、大きいほうのモル質量M3を有する部分の強度が減少する。約80回の練りサイクルで、モル質量分布は、約MP≒1.4×105g/molの極大を有する単一モード分布関数に近づく。
・練りサイクル回数をさらに増加させても、ピーク値のわずかな減少を生じるにすぎない(80回の練りサイクルの後の約1.4×105g/molから110回の練りサイクルの後の約1.0×105g/molまで)。
【0068】
動的機械的解析(DMA)の結果は、2つの仮定を行った場合に解釈可能である。
1.解析されたNRは、異なるモル質量を有する少なくとも3つの部分のブレンドであり、最大モル質量を有する部分が優位である。
2.より短い鎖は、より長い鎖よりも安定である。
【0069】
より長い鎖が最初に破壊される場合、最大モル質量を有する部分が、練りプロセスにより最初に最も多く影響を受ける。
【0070】
10回の練りサイクルの後、最大モル質量を有する部分は、もはや混合物中で優位ではない。約50回の練りサイクルの後、最長鎖は、ほぼ消失した。この時点で、モル質量分布は、2番目に大きいモル質量を有する部分が優位になる。80回の練りサイクルの後、ほとんどの鎖が破壊されて、モル質量分布は、最小モル質量を有する部分が優位になる。
【0071】
鎖の安定性がその長さに依存する場合、モル質量の減少は、臨界値になるような制約を受ける。臨界長では、剪断速度に比例する適用力学場(式
【0072】
【数16】
を参照されたい)は、小さすぎて鎖を破壊できない。このことは、特定回数の練りサイクルの後で本質的に一定のモル質量分布になることを意味する。行った実験では、モル質量の最大値は、約90回の練りサイクルの後で1×105g/molであり、さらなる練りを行った後でも一定に保たれる。
【0073】
DMAの結果とGPC解析の結果との比較では、最初の練りサイクルで有意差を生じる。練りサイクル回数が増加すると、2つの方法は同等になる。
【0074】
大きいモル質量を有する部分は、不溶性であるのでGPC法により検出されないことを想定すれば、2つの方法の結果の差は、説明可能である。特定回数の練りサイクルの後、最大モル質量を有する不溶性画分は除去された。したがって、GPC測定の結果は、本発明(DMA)により決定された結果に類似している。2つの方法の定量的比較から、ポリマー鎖のモル質量が1×106g/molを超えた場合、GPC法の使用には問題があることが示される。結果から判断して、より大きいモル質量を有する鎖は、使用したGPC法により検出されない。
【0075】
NBRおよびHNBRのサンプルのモル質量分布を決定した結果を図10および11に示す。曲線1は、GPC測定の結果を表し、曲線2は、動的機械的実験(DMA)の結果、すなわち、本発明により得られた結果を表す。動的機械的測定(DMA)の結果は、独立に校正されていないので、次いで2つの方法の定量的比較を行うことはできない。したがって、上側の軸上に示されるDMAから得られたモル質量の値は、この場合も相対数である。
【0076】
NBRの結果の比較から、GPC法とDMA法との間の良好な定性的一致が示される。比較的高いモル質量でのみ有意差を生じる。2つの方法の結果の差は、この場合も、不溶性ポリマー部分によってのみ説明可能である。GPC法により検出できないこれらの不溶性画分は、非常に大きいモル質量を有する鎖または分岐状構造を有する鎖のいずれかに起因する。
【0077】
両方法を裏付ける理論は、ポリマーの鎖がすべて線状であるという仮定に基づく。分岐がある時、GPCおよびDMAの結果は、異なった影響を受ける。GPC法の原理は、ポリマー鎖のサイズ(すなわち慣性半径)が多孔性材料内の拡散に依存することである。より小さい鎖は、より長い鎖よりも多孔性材料内を拡散するのにより長い時間を必要とする。分岐状構造は、同等のモル質量の直鎖よりも常に小さい慣性半径を有するので、分岐状構造は、拡散過程でより長い時間を必要とする。したがって、分岐状構造のモル質量は、GPC測定では過小評価される。
【0078】
図10は、GPC(曲線1)およびDMA(曲線2)によるNBRのモル質量の特徴付けを示している。DMAの場合、モル質量が鎖全体の緩和時間に関連付けられ、分岐鎖の緩和が同等のモル質量を有する直鎖の緩和よりも遅いので、モル質量は、DMAでは過大評価される可能性があることを想定すべきである。したがって、大きいモル質量の領域におけるGPCから得られたモル質量分布とDMAから得られたモル質量分布との比較は、長鎖分岐の存在の指標として使用可能である。
【0079】
GPCおよびDMAから得られたモル質量分布を比較的大きいモル質量の領域においてNBRサンプルで比較した場合(図10参照)、DMA値は、GPC測定値よりもわずかに大きい。このことは、長鎖の分岐状構造のわずかな寄与の存在を意味する。
【0080】
同一の比較をHNBRサンプルで行った場合[図11(GPC(曲線1)およびDMA(曲線2)によるHNBRのモル質量分布の特徴付け)を参照されたい]、DMAから得られた結果は、GPC測定から得られた結果よりも大きいモル質量を有する鎖の部分が有意に多いことが示される。可能な1つの説明は、水素化中のポリマー鎖のさらなる分岐化であろう。
【0081】
他の説明は、緩和挙動に及ぼすポリマー鎖の可撓性の影響に基づく。水素化ポリマー鎖の可撓性が増大すると、緩和時間が長くなり、体積粘性が増大される。粘度に及ぼす鎖の可撓性の影響は、長鎖の分岐鎖ではより大きいので、モル質量分布への分岐鎖の寄与は、分岐鎖がより大きい可撓性を得た場合に増大されるであろう。
【0082】
本結果に基づいて、水素化反応中に起こりうる分岐化反応の定量的確認を行うことはできない。これを行うには、さまざまな粘度および完全な直鎖状構造を有する一連のNBRサンプルを用いた反復実験が必要であろう。
【0083】
水素化中に副反応が起こらない場合、水素化は、ポリマー鎖の可撓性にのみ影響を及ぼすであろう。鎖の可撓性の影響は、鎖の構造の粘度に依存し、分岐状構造の水素化は、直鎖状構造の水素化よりも有意に高い粘度をもたらすので、NBRの結果とHNBRの結果との差は、NBR中の分岐状ポリマー鎖の部分の存在の定性的指標になりうる。
【0084】
頻繁に議論される効果は、NBR中の二重結合の水素化後にムーニー粘度が有意に上昇するという事実を記述するいわゆる「ムーニージャンプ」である。
【0085】
これは、図12に明確に示されている。この図には、NBRのムーニー粘度ML1+4/100℃(これ以降ではMLと記す)が、HNBRのMLとNBRのMLとの比に対してプロットされている。HNBRのMLは、誘導に用いられたNBRのMLよりも高いだけでなく、ムーニー粘度の比は、NBRのムーニー粘度が低いときに最大値に達する。NBRのムーニー粘度が高いほど、「ムーニージャンプ」の効果は小さい。
【0086】
現在までのところ、どの機構が「ムーニージャンプ」およびNBRのムーニー粘度へのその依存性に関与しているかは、明らかでない。
【0087】
NBRと比較してHNBRのムーニー粘度がより高いことの可能な説明は、より多量の高分子量鎖および/または分岐鎖を生成する化学副反応が水素化プロセス中に存在することである。
【0088】
他の説明は、水素化に起因して増大するNBRポリマー鎖の可撓性に基づく。水素化ポリマー鎖の可撓性が高くなるほど、より多くの絡み合いを生じるであろう。絡み合いの数が多くなると粘度が高くなるので、主鎖の可撓性の増大には体積粘性の増加が常に伴うと結論付けることが可能である。
【0089】
NBRポリマーのGPCの結果とHNBRポリマーのGPCの結果との比較から、HNBRサンプルの数平均モル質量および重量平均モル質量は、対応するNBRサンプルの平均値よりも単に約10%〜20%高いにすぎないことが示される(図13(GPCにより測定されたNBRおよびHNBRのモル質量の平均値の比較)を参照されたい)。そのほかに、GPCの結果から、モル質量の比は、NBRのモル質量になんら依存しないことが示される。
【0090】
GPCでは非常に大きい分子量部分および/または長鎖分枝状部分を検出できないが、ムーニージャンプを裏付ける機構を解明するために、DMAの結果を利用することが可能である。
【0091】
NBRポリマーの動的機械的結果とHNBRポリマーの動的機械的結果との比較(図14参照)から、HNBRの数平均モル質量は、対応するNBRサンプルの平均値よりも約10%〜20%高いことが示される。この結果は、GPC測定の結果に類似している。
【0092】
重量平均モル質量の特徴付けは、GPC測定とDMA測定とで対照的な結果を与える。GPCの結果では、HNBRの重量平均モル質量とNBRの重量平均モル質量との一定比が検出されるが、DMAでは、モル質量の有意な影響が検出される。HNBRの重量平均モル質量とNBRの重量平均モル質量との比は、モル質量と共に増大し、最大モル質量でプラトー値に達する(図14(動的機械的解析により測定されたNBRおよびHNBRのモル質量の平均値の比較)の中央図および右側図を参照されたい)。
【0093】
NBRおよびHNBRのGPCおよび動的機械的解析(DMA)の結果から、ムーニージャンプの理由として2つの可能な機構が示唆される。
【0094】
水素化NBR鎖のより高い可撓性
これにより、慣性半径の増大および粘度の上昇がもたらされる。モル質量は、慣性半径(GPC法)または体積粘性(DMA)から計算されるので、水素化鎖の可撓性が増大すれば、モル質量の一定の増加が起こるであろう。数平均モル質量の比が両方法ともモル質量に依存しないことが明らかであるという事実により、実験的確認が得られる。
【0095】
長い分岐鎖の存在
分岐度が増大した場合、慣性半径は減少し、粘度は増大する。したがって、GPC法では分岐状構造のモル質量が過小評価され、一方、動的機械的解析では逆の効果が現れる。
【0096】
水素化されると鎖の可撓性が高くなるが、慣性半径や粘度に及ぼす分岐化の影響は、より高い可撓性の鎖の場合よりも大きい。
【0097】
したがって、比較的大きいモル質量におけるGPC法の結果と動的機械的方法の結果との差は、分岐状ポリマー鎖の部分に帰属しうる。このことは、モル質量分布の図(図10および図11を参照されたい)ならびに重量平均モル質量に及ぼすモル質量の影響の比較(図13と図14とを比較されたい)に見いだしうる。
【0098】
以上の説明により、ムーニージャンプは、水素化ポリマー鎖の可撓性の増大に帰属可能である。
【0099】
比較的高いムーニー粘度におけるムーニー粘度比の減少(図12参照)は、ポリマー鎖の可撓性の増大により説明することはできない。可撓性が増大すると、線状ポリマー鎖の場合、HNBRとNBRとの一定の粘度比を生じ、分岐状ポリマーまたは部分分岐状ポリマーの場合、粘度比の増加を生じるであろう。
【0100】
ムーニー測定の条件は、実際には明確に規定されないので、式
【0101】
【数17】
を用いて動的機械的測定値から剪断粘度比を追加的に計算し、NBRの粘度の関数としてプロットした(NBRおよびHNBRの粘度を示す図15を参照されたい)。この結果は、ムーニー測定の結果とは完全に異なる。NBRの粘度が増加すると、HNBRの粘度とNBRの粘度との比は増大する。NBRの最高粘度では、比は、一定のプラトーに達する。
【0102】
逆の結果の説明は、この場合も、粘度に及ぼす鎖の構造およびその可撓性の影響に基づく。
【0103】
絡み合った線状ポリマーの場合、剪断速度が増大すると体積粘性の減少が起こる。同等のモル質量を有する分岐状ポリマーは、低剪断速度ではより高い粘度により特徴付けられ、増大された剪断速度ではより大きい粘度低下により特徴付けられる。
【0104】
異なる鎖長および構造を有するポリマーを対象として、この挙動の概略図を図16(線状構造(a)および長鎖分岐鎖状構造(b)を有するポリマーの粘度に及ぼす剪断速度の影響)に示す。図16aは、線状NBR(実線の曲線)の挙動を示している。NBRを水素化すると可撓性が増大し、その結果、粘度が増大する(点線の曲線を参照されたい)。低剪断速度および高剪断速度におけるHNBRの粘度とNBRの粘度との比は、粘度に及ぼす剪断速度の影響が線状ポリマー鎖の場合には比較的低いので事実上一定である。
【0105】
長鎖分岐鎖部分を有するNBRを考慮対象とした場合、この変化は劇的である(図16b参照)。低剪断速度のとき、長鎖分岐鎖部分は、より高い体積粘性を生じる(図16aおよび16bの実線の曲線を比較されたい)。低剪断速度のとき、分岐状構造の粘度に及ぼす水素化の影響がより強いので、HNBRの粘度はより高い(図16bの点線の曲線を参照されたい)。したがって、大きさが小さいとき、HNBRの粘度とNBRの粘度との比は、直鎖の粘度比よりも有意に高い。
【0106】
分岐鎖の粘度に及ぼす剪断速度の影響は、より明確であるが、分岐鎖の粘度は、高剪断速度の限界値のとき、直鎖の粘度よりも小さい。したがって、比較的高い剪断速度のとき、ポリマーの分岐状構造は、同等のモル質量を有する線状ポリマーよりもHNBRの粘度とNBRの粘度との比がより小さくなる(剪断速度が
【0107】
【数18】
のときの図16aおよび16bの粘度を比較されたい)。
【0108】
NRおよびNBR/HNBRの測定の結果から、DMA(すなわち、本発明に従って行われる方法)は、モル質量およびその分布を特徴付ける新規な方法を提供することが示される。比較的高いモル質量または長鎖分岐状構造部分を有するポリマー鎖が存在する場合、GPCよりも優れたDMAの利点が明瞭になる。
【0109】
DMAは校正が行われていないので、結果をモル質量の定量に使用することはできない。しかしながら、DMAの結果とGPCの結果とを比較することにより、モル質量の概略推定値を得た。これを図9、10、および11に示す。ただし、GPC測定およびDMA測定から得られたモル質量のピーク値を比較の基準として使用した。
【0110】
GPCの校正は、通常、さまざまなモル質量および狭いモル質量分布を有する一連のポリスチレン(またはポリイソプレン)サンプルを用いて行われる。一般的には、未知のポリマーのモル質量は、ポリスチレン校正に基づいて計算される。特徴付けされるポリマーのポリマー−溶媒相互作用または鎖の可撓性がポリスチレン(またはポリイソプレン)とは異なる場合、モル質量の系統的偏差を生じる。その場合、GPC測定は、単にモル質量およびその分布に対する定性的結果を与えるにすぎない。
【0111】
所要により、GPC法の場合と同様にDMAの校正を行うことが可能である。さまざまなポリマー(たとえば、ポリスチレンやポリイソプレン)を用いて校正の比較を行えば、それらのモル質量の定量的な特徴付けが可能になるだけでなく、さらにそれらの鎖の可撓性に関する直接的な情報が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】ムーニー粘度M[MU](ML1+4/100℃)に及ぼす練りサイクル回数nの影響を示す。
【図2】60回のサイクルで練られた天然ゴム(ペールクレープ)のクリープ実験から周波数依存挙動を計算した結果を示す。
【図3】60回の練りサイクルの後のNRのマスターカーブを作成した結果を示す。
【図4】粘性端を有する緩和過程の例を示す。
【図5】周波数依存挙動に及ぼすパラメーターΔ(Δ=1010、105、1、および101/2)の影響を示す。
【図6】図6aはパラメーターΔの関数として緩和時間スペクトルを示す。図6bは、コール・コール式を用いてモル質量分布を計算した結果を示す。
【図7】貯蔵弾性率および損失弾性率の周波数依存値に緩和関数を最小二乗法によりフィッティングした結果を示す。
【図8】緩和時間パラメーターから計算された緩和時間スペクトルを示す。
【図9】最初の表に基づく練りサイクル回数の関数としてNRのGPC結果(曲線1)およびDMA結果(曲線2)を示す。
【図10】GPC(曲線1)およびDMA(曲線2)によるNBRのモル質量の特徴付けを示す。
【図11】GPC(曲線1)およびDMA(曲線2)によるHNBRのモル質量分布の特徴付けを示す。
【図12】NBRのムーニー粘度ML1+4/100℃(これ以降ではMLと記す)が、HNBRのMLとNBRのMLとの比に対してプロットされている。
【図13】GPCにより測定されたNBRおよびHNBRのモル質量の平均値の比較を示す。
【図14】NBRポリマーの動的機械的結果とHNBRポリマーの動的機械的結果との比較を示す。
【図15】NBRおよびHNBRの粘度を示す。
【図16】線状構造(a)および長鎖分岐鎖状構造(b)を有するポリマーの粘度に及ぼす剪断速度の影響を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複素剪断弾性率を周波数の関数として測定し、測定された前記複素剪断弾性率にまたは測定された前記複素剪断弾性率から決定されたマスターカーブに解析関数をフィッティングし、そしてそれから分子量分布を計算する、ポリマーの分子量分布の決定方法。
【請求項2】
測定された前記複素剪断弾性率にまたは測定された前記複素剪断弾性率から決定されたマスターカーブにフィッティングされる前記解析関数としてコール・コール関数の和が選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コール・コール関数で選択される幅パラメーターがb=0.5である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
周波数の関数として測定されて数値形式で存在する複素剪断弾性率にまたは数値形式で存在するマスターカーブに、
【数1】
で示される少なくとも3つのコール・コール関数の和が解析的にフィッティングされ、そしてそれから出発して緩和時間スペクトルが計算され、ただし、log−logプロットにおいて小さい周波数の極限の場合に実数部が2の傾きを有しかつ小さい周波数の極限の場合に虚数部が1の傾きを有するコール・コール関数の和を生じるようにパラメーターF0νおよびf0νが選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記緩和時間スペクトルが、前記解析関数から決定され、かつ前記分子量分布が、前記緩和時間スペクトルと一般化混合則とを用いて計算される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複素剪断弾性率がさまざまな温度で測定され、かつその測定値からマスターカーブが曲線化される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分子量分布を決定するために、一般化混合則
【数2】
が使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記緩和時間スペクトルが、ガラス過程のセグメント緩和により補正される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
複素剪断弾性率を周波数の関数として測定し、測定された前記複素剪断弾性率にまたは測定された前記複素剪断弾性率から決定されたマスターカーブに解析関数をフィッティングし、そしてそれから分子量分布を計算する、ポリマーの分子量分布の決定方法。
【請求項2】
測定された前記複素剪断弾性率にまたは測定された前記複素剪断弾性率から決定されたマスターカーブにフィッティングされる前記解析関数としてコール・コール関数の和が選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コール・コール関数で選択される幅パラメーターがb=0.5である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
周波数の関数として測定されて数値形式で存在する複素剪断弾性率にまたは数値形式で存在するマスターカーブに、
【数1】
で示される少なくとも3つのコール・コール関数の和が解析的にフィッティングされ、そしてそれから出発して緩和時間スペクトルが計算され、ただし、log−logプロットにおいて小さい周波数の極限の場合に実数部が2の傾きを有しかつ小さい周波数の極限の場合に虚数部が1の傾きを有するコール・コール関数の和を生じるようにパラメーターF0νおよびf0νが選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記緩和時間スペクトルが、前記解析関数から決定され、かつ前記分子量分布が、前記緩和時間スペクトルと一般化混合則とを用いて計算される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複素剪断弾性率がさまざまな温度で測定され、かつその測定値からマスターカーブが曲線化される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分子量分布を決定するために、一般化混合則
【数2】
が使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記緩和時間スペクトルが、ガラス過程のセグメント緩和により補正される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−157922(P2008−157922A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−292264(P2007−292264)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292264(P2007−292264)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】
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