説明

ポリマーの孔中にグルコースプローブを捕捉する方法

前駆体溶液中でポリマー前駆体を重合させることによって、孔を画定するポリマーマトリクスを形成する。前駆体溶液は、第一の連続相における第一の流体と第二の連続相における第二の流体との両連続マイクロエマルションを含む。第一の流体は、ポリマー前駆体を含む。第二の流体は、グルコースプローブを含む。いくつかの内孔は、グルコース分子の通過を可能にするがグルコースプローブの通過を制限する大きさの開口部を介して、マトリクス中の表面孔につながっている。重合前にグルコースプローブが前駆体溶液に分散されるので、いくつかのグルコースプローブ分子は、重合後に内孔中に捕捉される。形成されたポリマーは、眼液中のグルコースの存在を検出するために、コンタクトレンズなどの眼科用装置に用いられうる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2008年7月9日に提出された米国特許仮出願第61/129,646号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は全体として、グルコースレベルをモニターするための方法および生成物に関し、より具体的にはポリマーに組み込まれたグルコースプローブによってグルコースレベルをモニターするための方法および生成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
グルコース感知コンタクトレンズは、糖尿病を患っている患者の場合などのグルコースレベルをモニターするための有望な新規技術を提供する。1つの技術は、ボロン酸溶液中に材料を浸漬することによって、多孔性のコンタクトレンズ材料の孔にボロン酸を負荷することである。負荷されたコンタクトレンズをユーザーが装着すると、ユーザーの涙液がコンタクトレンズに接触する。グルコースの存在下では、ボロン酸は、その電子的および幾何学的特性を変化させて、それによってその蛍光スペクトルの変化を誘導する。ユーザーの涙液中でグルコース濃度が上昇した場合、ユーザーが装着するコンタクトレンズにおけるスペクトルの変化(色または強度)を視覚的に検出することが可能である。しかし、そのようなコンタクトレンズは不良なグルコース応答を生じることが報告されている。プローブが孔表面に付着していない場合、これは使用中に浸出することがあり、これによって検出感度が低減される。プローブ分子のポリマーへの結合は、浸出を防止する場合があるが、レンズ材料の光学的および生物学的特性の変更などの他の望ましくない効果が起こりうる。プローブとポリマーとの間の化学結合はまた、グルコースに対するプローブの応答機序を変化させ、そのため合併症および予測不可能な性能を引き起こす場合もある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の発明者らは、ボロン酸プローブなどのグルコースプローブが、プローブをポリマーに結合させることなく、ポリマーの形成時に多孔性ポリマーの孔に捕捉されうることを発見した。ポリマーの内孔が互いにおよび表面孔とつながっている場合、グルコースは、使用中に、つながった孔の中を移動して、孔におけるプローブと相互作用することができる。プローブの浸出を防止するために、孔は、プローブの開口部通過を制限する大きさの開口部を介してつながりうる。
【0005】
孔が約20 nm〜約80 nmの範囲であり、開口部が約5 nm〜約20 nmの範囲である場合などの、孔とつながっている開口部とがプローブの動きを制限するように適した大きさである場合、グルコースの存在下でのプローブの放射強度もまた、溶液中で分散された制限されていないプローブと比較して増大されうる。
【0006】
よって、本発明の1つの局面において、眼科用装置に用いるためのポリマーを形成する方法が提供される。この方法において、内孔と表面孔とを画定するポリマーマトリクスを形成するために、前駆体溶液中のポリマー前駆体を重合させる。前駆体溶液は、第一の連続相における第一の流体と第二の連続相における第二の流体との両連続マイクロエマルションを含む。第一の流体は、ポリマー前駆体を含む。複数の内孔が、グルコース分子の通過を可能にするがグルコースプローブの通過を制限する大きさの開口部を介して、表面孔につながっている。グルコースプローブの分子は、重合前に第二の流体中で分散され、それにより、重合後にグルコースプローブ分子の一部が内孔中に捕捉される。内孔は、約20 nm〜80 nmの平均孔サイズを有する。開口部のサイズは、約5 nm〜約10 nmであってもよい。グルコースプローブは、式R-B(OH)2を有してもよいボロン酸を含んでもよく、式中Rはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニルおよびアリールアリールアキル(aryl arylakyl)のうちの1つである。ボロン酸は、1,3-ジフェニルプロパ-2-エン-1-オンまたは1,5-ジフェニルペンタ-2,4-ジエン-1-オンを含んでもよい。ボロン酸は、第二の流体中約0.1重量%〜約5重量%の濃度を有してもよい。ポリマー前駆体は、ポリマーマトリクスを形成するためのモノマーおよびモノマーと共重合可能な界面活性剤を含んでもよく、かつ第二の流体は水を含んでもよい。
【0007】
本発明の別の局面において、眼科用装置に用いるためのポリマーが提供される。ポリマーは、複数の内孔が、グルコース分子の通過を可能にするがグルコースプローブの通過を制限する大きさの開口部を介して、表面孔につながっている、内孔と表面孔とを画定するポリマーマトリクス、および内孔内に捕捉され、かつポリマーが眼液に接触する場合に検出可能なスペクトル応答を生成するために十分な量の、グルコースプローブの分子を含む。ポリマーマトリクスによって画定される孔は、約20 nm〜80 nmの平均孔サイズを有してもよい。開口部のサイズは、約5 nm〜約10 nmであってもよい。グルコースプローブは、式R-B(OH)2を有してもよいボロン酸を含んでもよく、式中Rはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニルおよびアリールアリールアキルのうちの1つである。ボロン酸は、1,3-ジフェニルプロパ-2-エン-1-オンまたは1,5-ジフェニルペンタ-2,4-ジエン-1-オンを含んでもよい。ボロン酸は、ポリマー中約0.1重量%〜約5重量%の密度を有してもよい。
【0008】
本発明のさらなる局面において、本明細書において記載される任意の方法に従って形成されたポリマーを含む眼科用装置が提供される。眼科用装置はコンタクトレンズを含んでもよい。
【0009】
本発明の別の局面において、ポリマーを形成するための前駆体溶液が提供される。前駆体溶液は、第一の連続相における第一の流体と第二の連続相における第二の流体との両連続マイクロエマルションを含み、第一の流体はポリマーマトリクスを形成するための重合可能なポリマー前駆体を含み、第二の流体はグルコースプローブを含み、ポリマー前駆体が重合すると前駆体溶液から形成されたポリマーマトリクスが内孔と表面孔とを画定するように、かつグルコース分子の開口部通過を可能にするがグルコースプローブ分子の開口部通過を制限する大きさの開口部を介してグルコースプローブの分子が表面孔につながっている内孔中に捕捉されるように、両連続マイクロエマルションは選択される。
【0010】
本発明の他の局面および特色は、添付の図面と共に本発明の特異的態様に関する以下の説明を再検討することによって、当業者に明らかとなると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面は、ほんの一例として本発明の態様を図示する。
【図1】本発明の態様の例としてのコンタクトレンズの概略斜視図である。
【図2】図1のコンタクトレンズの概略部分的断面図である。
【図3】例示的なボロン酸の化学構造の模式図である。
【図4】例示的なボロン酸の化学構造の模式図である。
【図5】本発明の態様の例としての両連続マイクロエマルションの構造の模式図である。
【図6】試料ポリマーの断面の走査型電子顕微鏡分光画像である。
【図7】異なる環境における試料ボロン酸プローブから測定された放射スペクトルを比較する、折れ線グラフである。
【図8】異なるグルコース濃度のグルコースの存在下での試料眼科用ポリマーから測定された放射スペクトルの変化を示す、折れ線グラフである。
【図9】固定されたグルコース濃度のグルコースの存在下での異なる試料眼科用ポリマーから測定された放射スペクトルを示す、折れ線グラフである。
【図10】図9の試料および比較試料から測定された経時的な蛍光強度の変化を比較する、折れ線図である。
【図11】異なるグルコース濃度での別の試料から測定された放射スペクトルを比較する、折れ線グラフである。
【図12】異なる試料に関する前駆体溶液の内容に対する放射スペクトル依存性を示す、折れ線グラフである。
【図13】図12の試料から測定された経時的な蛍光強度の変化を示す、折れ線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本発明の例示的な態様に従ったコンタクトレンズ100を図1および2において概略的に図示する。コンタクトレンズ100は、標準的なコンタクトレンズの形状を有してもよく、ポリマー102で作製される。図2においてよりよく示されるポリマー102は、使用中に眼液と接触する表面104を有する。たとえば表面104は、コンタクトレンズ100を眼に装着した場合に涙液に接触する場合がある。ポリマー102には、孔108を画定するポリマーマトリクス106が含まれる。孔108には、表面104に対して開口している孔である表面孔と、表面104から離れており、かつ表面に対して直接開口していない内孔とが含まれる。孔108の少なくともいくつかは、開口部110を介して互いにつながっている。いくつかのつながった孔108が、つながった孔のネットワークを形成してもよく、この場合、各ネットワークにおける孔は、開口部または他の孔を介して互いに相互につながっている。いくつかの内孔108は、開口部110を介して表面孔108につながっている。内孔108は、1つもしくは複数の開口部108を介して表面孔108に直接つながってもよいか、または内孔を1つもしくは複数の表面孔につながる1つもしくは複数の他の孔108を介して間接的につながってもよい。(直接または間接的に)つながっている孔108は、流体中で互いにつながっている。ポリマー102において、つながった孔108のネットワークが含まれるいくつかの内孔108が、表面孔108から孤立することがありうる。内孔は、いかなる表面孔にも直接または間接的につながっていない場合、表面孔から孤立している。
【0013】
孔108の平均孔サイズは、ナノメートルの範囲、たとえば約20 nm〜約80 nmの範囲である。孔108の平均孔サイズは、孔108の平均断面サイズを指す。孔108は、不規則な形状を有してもよく、一般的に伸長した管状形状を有してもよい。不規則な伸長した孔の平均孔サイズは、伸長した孔の平均直径または幅を指す。個々の伸長した孔108の長さは様々であってもよく、100 nmより長くてもよい。個々の孔108の容積は、閉鎖末端(孔を取り囲むポリマー壁)によって、およびポリマー壁における1つまたは複数の開口部110によって画定されうる。孔サイズは、当業者によって理解されうるように、ポリマー材料の電子的断面画像から測定または推定されてもよい。開口部110は、2つの隣接する孔108の間のポリマー壁における開口部を指し、これは平均孔サイズより実質的に小さい。たとえば、開口部110は、約5 nm〜約10 nm、約10 nm〜約20 nm、または約5 nm〜約20 nmなどの約5 nm〜約50 nmのサイズを有してもよい。いくつかの開口部110は他より狭い。いくつかのまたは全ての内孔108は、グルコース分子の開口部通過を可能にするが選択されたグルコースプローブの開口部通過を制限する大きさの狭い開口部110を介して、直接または間接的に表面孔108につながっていてもよい。
【0014】
選択されたグルコースプローブの分子112は、分散され、かつ狭い開口部110を介して表面孔108につながっている内孔108内に捕捉される。いくつかのグルコースプローブ分子112はまた、表面孔108から孤立した内孔108中に捕捉されてもよい。孔108はまた、水などの流体を含有してもよい。グルコースプローブ分子112は、ポリマー102を形成するための前駆体溶液に分散されてもよく、ポリマーが形成される際にこれらの内孔108内に捕捉される。グルコースプローブ分子112は、グルコース分子の分子サイズより大きい分子サイズを有するべきであり、そうでない場合はプローブ分子を孔内に捕捉し、なお孔の中でグルコース分子を移動させることが難しくなると考えられる。グルコース分子は分子サイズ約1 nmを有することから、適したグルコースプローブ分子は、たとえば約5 nmまたはそれより大きい分子サイズを有してもよい。グルコースプローブ分子はより大きいサイズを有することから、孔108におけるその運動および動きは、周囲のポリマー壁と孔間の狭い開口部110とによって制限される。
【0015】
都合のよいことにかつ理解されうるように、グルコースプローブ分子112の動きは、孔108内で制限される。プローブ分子の狭い開口部110の通過が制限されることから、捕捉されたプローブ分子は、使用中に内孔108内に保持され、そのために、プローブ分子の「浸出」を低減または消失させることができる。驚くべきことに、試料グルコースプローブ分子がナノメートルサイズの孔内で制限された場合、グルコースの存在に対するそのスペクトル応答は、溶液中で分散した制限されないプローブと比較して増大されたことが見出された(以下の実施例を参照されたい)。
【0016】
異なる適用において、孔108および開口部110の形状およびサイズは、様々であってもよいが、孔は、特定の適用のために選択された特定のグルコースプローブに適合するように適したサイズおよび形状を有するべきであり、ならびに開口部は、特定のグルコースプローブの通過を制限するために適した形状およびサイズを有するべきである。
【0017】
グルコースプローブは、グルコースの存在下で蛍光応答の変化などの検出可能なスペクトルシグナルを生成する任意の化合物でありうる。例として、グルコースプローブは、接触するとグルコースと反応し、従って当初のプローブ分子のスペクトルとは異なる蛍光スペクトルを有する新規化合物構造を形成することができる。適したグルコースプローブは、ボロン酸に基づく蛍光体などのボロン酸プローブであることができる。たとえば、ボロン酸を用いることができる。ボロン酸は式R-B(OH)2を有してもよく、式中Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、またはアリールアリールアキルである。適したボロン酸には、1,3-ジフェニルプロパ-2-エン-1-オンまたは3-[4'(ジメチルアミノ)フェニル]-1-(4"-ボロノフェニル)-プロパ-2-エン-1-オン(「カルク(Chalc)-1」と呼ばれる)として表記される1,3-ジフェニルプロパ-2-エン-1-オン;および1,5-ジフェニルペンタ-2,4-ジエン-1-オンまたは5-[4"-(ジメチルアミノ)フェニル]-1-(4'-ボロノフェニル)-ペント-2,4-ジエン-1-オン(カルク-2と呼ばれる)として表記される1,5-ジフェニルペンタ-2,4-ジエン-1-オンが含まれる。図3および4はそれぞれ、カルク-1およびカルク-2の化学構造を示す。
【0018】
たとえば、カルク-1は、溶液中で約438 nmで橙赤色の蛍光吸収周波数を示し、約575 nmで放射周波数を示す。放射周波数は、グルコースの存在下で変化すると考えられる。グルコースの存在に対するカルク-2またはカルク-2などのボロン酸プローブの特異的蛍光応答に関する基礎となる機序のいくつかは、文献において考察されている。同様に、以下にさらに考察されるように、その動きを制限する孔中にプローブが捕捉されると、放射周波数が同様に変化することも、本発明者らによって見いだされている。
【0019】
当業者は、グルコースの存在に対して類似の構造および電子的応答、それゆえ類似の反応を示す他の化合物または材料を同定することができると考えられる。
【0020】
たとえば、適したグルコースプローブにはまた、以下の刊行物のいずれかにおいて開示されるグルコース感知化合物または蛍光化合物が含まれてもよい:2007年2月8日に公開されたChapoyらに対するUS 2007/0030443(本明細書において以降、「Chapoy」);2007年1月25日に公開されたGeddesらに対するUS 2007/0020182(本明細書において以降「Geddes I」);Kaur et al., "Boronic acid-based fluorescence sensors for glucose monitoring," Topics in Fluorescence Spectroscopy, 2007, vol. 11, pp. 377-397(本明細書において以降「Kaur」);Badugu et al., "A glucose sensing contact lens: a new approach to non-invasive continuous physiological glucose monitoring," Proceedings of SPIE, 2004, vol. 5317, Optical Fibers and Sensors for medical Applications IV, pp. 234-245(本明細書において以降「Badugu I」);Badugu et al. "A glucose-sensing contact lens: from bench top to patient," Current Opinion in Biotechnology, 2005, vol. 16, pp. 100-107(本明細書において以降「Badugu II」);Robinson et al., "Non-invasive glucose monitoring in diabetic patients: A preliminary evaluation," Clinical Chemistry, 1992, vol. 38, pp. 1618-1622(本明細書において以降「Robinson」);およびGlucose Sensing, Topics in Fluorescence Spectroscopy Vol. 11, eds. C. D. Geddes and J. R. Lakowicz, 2006, Springer(本明細書において以降「Geddes II」)。
【0021】
適したグルコースプローブにはまた、40-ジメチルアミノスチルベン-4-ボロン酸または40-シアノスチルベン-4-ボロン酸などのスチルベン誘導体;または9,10-ビス[[N-メチル-N-(o-ボロノベンジル)アミノ]メチル]-アントラセンなどのアントラセン誘導体が含まれてもよい。
【0022】
ポリマー102中のグルコースプローブ分子112は、ポリマーが眼液に接触すると、流体中のグルコースの存在により検出可能なスペクトル応答を生成するために十分な量(または密度)で存在する。いくつかの態様において、ポリマー102中のグルコースプローブの密度は、約0.1重量%〜約5重量%(重量パーセント)であってもよい。
【0023】
ここで理解されうるように、孔108は、ネットワークのいくつかの内部区分が、これらの内部区分内のグルコースプローブが使用中に捕捉されかつ保持されうるように、グルコースプローブの通過を制限する狭い開口部110のみを介して表面孔につながっている限り、つながった孔108の連続的なネットワークを形成してもよい。さらに、いくつかの孔108は、他のいくつかの孔108がグルコースプローブの動きを制限すると考えられるより小さい孔サイズを有する限り、より大きいサイズを有してもよい。
【0024】
向上した性能のために、いくつかの適用において、グルコースプローブが分散される孔108は、ポリマー102全体にわたって均一に分布しうる。しかし、いくつかの適用において、グルコースプローブを含有する孔108は、ポリマーにおける限られた領域に集中してもよい。たとえば、認識されうるように、コンタクトレンズ100のごく限られた領域(スポット)が、グルコースの存在に対して検出可能なスペクトル応答を示す場合であっても、検出目的にとって十分である。ポリマーにおけるグルコースプローブの局所濃度は、当業者に公知の任意の適した技術を用いて異なって作製されてもよい。たとえば、プローブ分子の分布は、前駆体溶液への添加後の拡散によって制限されてもよい。異なる態様において、コンタクトレンズは、異なるポリマー材料で作製されてもよく、そのうちの1つはポリマー102を含有してもよく、別のポリマーはほとんどまたは全くグルコースプローブを含有しなくてもよい。コンタクトレンズにおけるスポットのみがグルコースプローブをドープされる場合、グルコースプローブをドープされたスポットは、いくつかの場合において視覚的に同定可能であれば簡便であることができるが、これは必ずしも必要ではない。
【0025】
孔108は、使用前に、水が含まれてもよい流体(示されていない)、空気、または選択された溶液によって最初に満たされてもよい。
【0026】
使用中、コンタクトレンズ100はユーザーの眼に装着され、かつユーザーの涙液に接触するようになる。涙液中のグルコースは、コンタクトレンズ100における孔108中に拡散すると考えられる。涙液中のグルコース濃度が十分に高い場合、コンタクトレンズ10の色は、グルコースプローブの蛍光応答により視覚的に変化して、グルコースの存在を示すと考えられる。蛍光放射強度は涙液中のグルコース濃度に依存する。したがって、涙液中のグルコースレベルは、検出されたスペクトル応答に基づいて測定されうるが、これは以下でさらに記載される。
【0027】
グルコース分子は、表面孔108および開口部110を通ってコンタクトレンズ100における内孔108まで移動することができる。しかし、捕捉されたプローブ分子112の浸出は、それらが狭い開口部110を通過することを阻止されることから、防止される。
【0028】
しかしながら、大きい導管を介して表面孔につながっている孔108中で最初に分散されうるいくつかの非捕捉プローブ分子が存在する場合がある。非捕捉プローブ分子は、コンタクトレンズ100が液体に接触すると、孔を通って表面に拡散して、ポリマーから浸出する可能性がある。加工後にポリマーをすすぐことによって、非捕捉プローブ分子を予め除去してもよい。
【0029】
放射強度を安定な値に到達させるために、ユーザーがコンタクトレンズ100を一定の「待機」時間装着した後にグルコースレベルを測定してもよい。この待機時間によって、コンタクトレンズにおける非捕捉プローブ分子とグルコース分子の双方が再分布することができ、最終的に動的平衡に達すると考えられる。
【0030】
適した待機期間の後、コンタクトレンズ100の色を視覚的に検査して、標準的な色チャートと比較して、ユーザーの涙液におけるグルコースレベル、またはユーザーの血液もしくは体における対応するグルコースレベルを測定してもよい。グルコースレベルはまた、そうでない場合は、観察されたスペクトル応答と関連するグルコースレベルとの間の予め決定された関係に基づいて測定されてもよい。当業者によって容易に認識されうるように、スペクトル応答およびグルコースレベルをより正確に測定するために適した光学機器を用いてもよい。
【0031】
例示的な態様において、グルコースレベルに対するコンタクトレンズ100の蛍光応答の関係を、使用前に決定してもよく、これは当業者によって容易に行われうる。たとえば、各々の起こりうる色を特異的グルコースレベルに相関させる色チャートが提供されてもよい。チャートにおけるグルコースレベルは、意図される用途またはユーザーに応じて、涙液、血液、または体におけるレベルを示してもよい。
【0032】
使用中に、ユーザーが装着するコンタクトレンズ100の色を、医師、看護士、または患者による視覚的検査などで検査してもよい。色はまた、色のセンサー、蛍光検出器などの適した機器によってより正確に分析されてもよい。最初の待機期間は、所定のポリマー材料について行われる試験に基づいて選択されてもよい、または用いられる特定のコンタクトレンズ材料にかかわらず、涙液の十分な分散を確実にするために異なる材料に関して標準化されてもよい。たとえば、初回待機時間の長さは30分であってもよい。
【0033】
次に、上記の予め決定された関係に基づいて、コンタクトレンズ100の観察された色を特定のグルコースレベルに相関させる。次にユーザーが特定のグルコースレベルを有することを判定することができる。
【0034】
コンタクトレンズ100の色を、ユーザーが装着している間、経時的にモニターしてもよい。たとえば、色を日中にわたって定期的に検査してもよい。適した検査回数を、特定の状況に応じて、医師などによって決定してもよい。
【0035】
例示的な態様において、コンタクトレンズ100または他の眼科用装置に用いられるポリマーは、前駆体溶液中でポリマー前駆体を重合させることによって調製されてもよい。前駆体溶液には、第一の連続相における第一の流体および第二の連続相における第二の流体の両連続マイクロエマルションが含まれてもよい。ポリマー前駆体は第一の流体に分散され、かつグルコースプローブは少なくとも第二の流体に分散される。第二の流体によって占有される孔を画定するポリマーマトリクスを形成するために、ポリマー前駆体を重合させる。
【0036】
両連続マイクロエマルション114の例示的な構造を図5において図示し、ここで第一の流体相はドメイン116として図示され、第二の流体相はドメイン118として図示される。ドメイン116、118は、無作為に分布し、かつ各々が相互につながっており、あらゆる三次元で伸長する。ドメイン116が重合すると、ドメイン118の存在によって、第二の流体によって満たされつながった孔が形成される。適した両連続マイクロエマルションは、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる2006年2月9日にChowらに対するWO 2006/014138(本明細書において以降「Chow」)として公開されたPCT出願において開示された技術などの、両連続マイクロエマルションからポリマーを形成するための既存の技術を適合および改変させることによって、形成されてもよい。
【0037】
第二の流体が連続相中に存在する場合、孔の少なくともいくつかは、開口部を介して互いにつながっている。都合のよいことに、重合の際にマイクロエマルションにおいてもたらされた張力により、形成されたポリマーにおいて孔をつなぐ中空のチャンネルが狭くなり、かつこれらのチャンネルに対する開口部のサイズが平均孔サイズより小さくなることも起こる。
【0038】
都合のよいことに、複数の孔が、グルコース分子の通過を可能にする開口部を介して表面孔に流体でつながっている。グルコースプローブ分子が重合前に第二の流体において分散されるので、グルコースプローブ分子の少なくとも一部は、重合後に、プローブ分子の開口部通過が制限される狭い開口部を介して表面孔につながっている孔中に、および表面孔から孤立した孔中に捕捉される。
【0039】
前駆体溶液において、第一の流体は疎水性溶媒を含有してもよく、かつ第二の流体は水溶液を含有してもよい。ポリマー前駆体には、1つまたは複数の共重合可能なモノマー、およびモノマーの少なくとも1つと共重合可能な1つまたは複数の界面活性剤が含まれてもよい。孔構造が本明細書において記載される通りである限り、第二の流体における成分のいくつかは重合の際または後にポリマーに結合してもよいが、第二の流体は、ポリマー前駆体と共重合しないように選択される。このように、第一の相においてポリマー前駆体が重合された後でも、第二の流体の少なくとも実質的な部分が液体相に残っていてもよい。ポリマーの形成は、連続性である第一の相における第一の流体内に実質的に限定されることから、得られたポリマーはマトリクス構造を有する。第二の相における第二の液体は重合されないが少なくとも大部分が液体などの個別の相に留まることから、第二の液体は、少なくともそのいくつかがつながっている孔を形成する。このように、孔は第二の流体によって占有される。認識されうるように、孔は第二の流体によって占有されるが、第一の流体の非重合部分もまた孔に存在することが起こりうる。さらに、2つの相の界面領域における界面活性剤分子などの分子も同様に、重合後に孔に及ぶ場合がある。
【0040】
いくつかの適用において、グルコースプローブおよびポリマー前駆体は、プローブ分子がポリマー前駆体またはポリマーマトリクスに結合しないように選択されてもよい。そのような結合は、検出性能に負の影響を及ぼすかまたは応答機序を変化させる可能性があり、これによっていくつかの適用において望ましくない効果が起こる可能性がある。
【0041】
上記で考察したように、ポリマー前駆体には、1つまたは複数のモノマーが含まれてもよい。ポリマーマトリクスを形成するためのモノマーには、コポリマーを形成するための、別のモノマーと共重合することができる当業者に公知の任意の適したモノマーが含まれうる。モノマーは界面活性剤などの別のモノマーと共重合可能であるが、モノマーはまたはそれ自身と重合可能であってもよい。適した両連続マイクロエマルションを調製するために使用してもよいモノマーのタイプおよび量は、所定の適用に関して当業者によって決定されうる。用いられてもよい例示的なモノマーには、メタクリル酸メチル(MMA)、2-ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシルエチルアクリレート、アクリル酸(AA)およびメタクリル酸(MA)などのモノカルボン酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、ならびにシリコン型モノマーが含まれるエチレン不飽和モノマーが含まれる。これらのモノマーの適した組み合わせも同様に用いてもよい。
【0042】
ポリマー前駆体にはまた、重合可能な界面活性剤が含まれてもよい。ポリマーを形成するために、重合可能な界面活性剤は、それ自身または他のモノマー化合物と重合させることができる。界面活性剤には、第一の流体中でモノマーの少なくとも1つと共重合することができる任意の適した界面活性剤が含まれてもよい。認識されうるように、界面活性剤がポリマーに共重合される場合、重合後にポリマーから界面活性剤を分離する必要はない。いくつかの適用において、これは、ポリマー形成工程が単純化されることから有利である場合がある。界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、または両イオン性でありうる。例示的な界面活性剤には、本明細書においてC1-PEO-C11-MA-40として表されるω-メトキシポリ(エチレンオキサイド)40ウンデシルα-メタクリレートマクロモノマーなどのポリ(エチレンオキサイド)-マクロモノマー(PEO-マクロモノマー)が含まれる。マクロモノマーの鎖長は、様々でありうる。たとえば、マクロモノマーは、CH3O(CH2CH2O)x-(CH2)nVの形であってもよく、またはSO3-(CH2)m+NCHCHCHN(CH2)nVなどの両イオン性界面活性剤であってもよく、式中、mは1〜20の範囲の整数であり、nは6〜20の範囲の整数であり、xは10〜110の範囲の整数であり、およびVは(メチル)アクリレートまたは別の共重合可能な不飽和基である。
【0043】
所定の適用に関する特定のモノマーおよび界面活性剤の選択ならびに重量比は、該適用に依存する場合がある。一般的に、それらは得られたポリマーが、ポリマーが用いられる環境にとって適しかつ適合性であるように、および望ましい特性を有するように選ばれるべきである。
【0044】
第二の相における第二の流体は、純水または水に基づく液体を含有してもよい。水溶液を用いてもよく、グルコースプローブの他に、任意で特異的特性を有する様々な添加剤を含有してもよい。そのような添加剤は、得られた生成物において1つまたは複数の望ましい特性を達成するために選択されることができ、これには、薬物、タンパク質、酵素、増量剤、色素、無機電解質、pH調節剤等のうちの1つまたは複数が含まれうる。特に、pH調節剤は、グルコースプローブの性能を向上するために得られたポリマーにおけるpHを調節するために都合よく添加されてもよい。ポリマーのpHはグルコースプローブの性能に影響を及ぼしうることが見いだされている。いくつかの態様において、約7のpHが適当である場合がある。
【0045】
異なる態様において、前駆体溶液にはまた、重合触媒、クロスリンク剤、または他の添加剤が含まれてもよい。
【0046】
重合を行うために用いられる触媒は、選択されたモノマーおよび界面活性剤の重合を促進する任意の触媒または重合開始剤であってもよい。選ばれる特異的触媒は、特定のモノマー、および用いられる重合可能な界面活性剤、または重合法に依存する場合がある。たとえば、重合は、光開始剤を触媒として用いる場合、マイクロエマルションを紫外線(UV)照射に供することによって達成されうる。例示的な光開始剤には、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)およびジベンジルケトンが含まれる。酸化還元開始剤も同様に用いてもよい。例示的な酸化還元開始剤には、過硫酸アンモニウムおよびN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が含まれる。光開始剤と酸化還元開始剤の組み合わせも同様に用いてもよい。前駆体溶液におけるなどのこの点において、開始剤は有利でありうる。重合開始剤は、マイクロエマルションの約0.1重量%〜約0.4重量%であってもよい。
【0047】
得られたポリマーにおけるポリマー分子間のクロスリンクを促進するために、クロスリンク剤を前駆体溶液に添加してもよい。適したクロスリンク剤には、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、およびジエチレングリコールジアクリレート等が含まれる。
【0048】
認識されうるように、孔のサイズは、第一の相対第二の相の容積比を調節することによって、限度内で調節されうる。したがって、用いられる特定のグルコースプローブおよび特定の適用におけるポリマーに関する望ましい機械的特性に応じて、前駆体溶液における成分の比を、孔サイズを制御するために調節することができる。
【0049】
両連続マイクロエマルションを形成するために異なる成分の適した濃度および相対比率は、Chowおよび本明細書において引用される参考文献において開示される原理を考慮して選択されてもよい。たとえば、モノマー、水、および界面活性剤に関する三元系状態図(ternary phase diagram)を用いてもよい。前駆体溶液中の少量のプローブ分子などのドーパントの添加は典型的に、2つの連続相の分離を乱さないと考えられる。いずれにしても、両連続マイクロエマルションの形成は、当業者に公知の技術を用いて確認されうる。たとえば、前駆体溶液の導電率は、マイクロエマルションが両連続性である場合に実質的に増加する場合がある。前駆体溶液の導電率は、0.1 M塩化ナトリウム溶液を前駆体溶液に滴定後に導電率計を用いて測定されてもよい。
【0050】
1つの態様において、全て重量パーセントである(以降重量%として表す)成分の割合がそれぞれ、水に関して約15〜約50%、モノマーに関して約5%〜約40%、および界面活性剤に関して約10%〜約50%である適した両連続マイクロエマルションを形成することができる。当業者は、得られたポリマーの様々な特性に対して望ましい効果を達成するために、たとえば得られたポリマーの機械的強度または親水性を向上するために、異なるモノマーと界面活性剤とを異なる比率で組み合わせる方法を理解すると考えられる。さらに、比率は、本明細書において記載される孔構造を産生すると考えられる比率に限定されるべきである。
【0051】
ポリマーは、コンタクトレンズが含まれる眼科用装置などの眼科用材料として用いられる場合に、ヒトの細胞に対して、特にヒトの眼に対して安全で生体適合性であるべきである。ポリマーは、涙液、気体(たとえば、O2およびCO2)、様々な塩、栄養、水、および涙液の多様な他の成分などの流体に対して透過性であることが望ましい。つながった孔はまた、ポリマー内の異なる位置へのグルコースを含む涙液の成分の輸送を促進し、かつそれらを、内孔内に捕捉されたグルコースプローブと相互作用させるためにポリマーの内部深くに移動させ、それにより検出効率を増加させる。つながった孔はまた、気体、分子、栄養、およびミネラルの眼および周辺への輸送を促進する。この目的のため、孔はポリマー全体に分布してもよい。涙液成分および他の物質の効率的な輸送は、たとえ孔がマイクロメートル下の範囲の断面サイズを有する場合であっても可能でありうる。
【0052】
グルコースプローブは、販売元から得てもよい、または特に設計されかつ調製されてもよい。たとえば、カルク-1は、たとえばMarch J., "Advanced Organic Chemistry", fourth Edition, 1992, p. 940, Wiley lnterscience(本明細書において以降「March」)において記載されているクライゼン-シュミット反応におけるアルデヒドとケトンとの縮合反応によって調製されてもよい。カルク-1およびカルク-2はまた、Nicolas DiCesare et al., "Chalcone-analogue fluorescent probes for saccharides signaling using the boronic acid group," Tetrahedron Letters, 2002,vol. 43, pp. 2615-2618(以降、「Nicolas」)において記載される通りに調製されてもよい。
【0053】
グルコースプローブはまた、Chapoy、Geddes I、Geddes II、Kaur、Badugu I、Badugu II、またはRobinsonにおいて記載される通りに調製されてもよい。
【0054】
前駆体溶液に含まれるグルコースプローブの量は、様々な因子に基づいて決定されうる。たとえば、得られたポリマーにおける望ましいプローブ密度に関して、前駆体溶液中のプローブ濃度を決定してもよい。より強い検出シグナルを提供するために、より高いプローブ濃度を用いてもよい。しかし、前駆体溶液中のプローブの溶解度は、ポリマーに組み込まれうるグルコースプローブの量を制限する場合がある。一般的に、プローブは、コンタクトレンズの他の機能に有意な負の影響を及ぼすことなく、涙液中のグルコース濃度の望ましいレベルを検出するために適した濃度を有するべきである。たとえば、コンタクトレズの透明性は適したレベルで維持されるべきである。約0.1重量%から0.5重量%までのボロン酸プローブを前駆体両連続マイクロエマルションに添加した場合、透明なポリマーを調製できることが試験により示されている。本明細書において用いられる場合、「透明な」という用語は、コンタクトレンズまたは類似の装置にとって容認されうる透明度、たとえばコンタクトレンズまたは他の眼科用装置の製造において使用される他の材料の可視光透過度と同等の、ポリマーを通しての可視光の透過度を広く表す。コンタクトレンズ材料はまた、コンタクトレンズ100の孔内に捕捉されたプローブ分子からの蛍光応答を有効に検出するために蛍光励起および放射光の十分な透過も可能にするべきである。
【0055】
さらに、実験は、グルコースプローブの濃度が、得られたポリマーの機械的特性に影響を及ぼす場合があることを示している。したがって、プローブ濃度の選択は、この因子を考慮に入れるべきである。都合のよいことに、ポリマーの機械的特性はまた、水などの他の成分の濃度を調節することによって調節される場合もある。したがって、所定の望ましいプローブ濃度に関して、たとえば前駆体溶液における水濃度を調節することによって、適したまたは最適な機械的および光学特性を有するポリマー材料を産生することが可能である。
【0056】
前駆体溶液における様々な成分の濃度は、グルコース検出感度、検出応答時間、可逆性、有効期限等のうちの1つまたは複数などの、コンタクトレンズの一定の特性を最適にするように選択されてもよい。
【0057】
マイクロエマルションは、当業者に公知の任意の適した重合技術を用いて重合されてもよい。たとえば、重合は、熱によって、触媒の添加によって、放射線照射によって、マイクロエマルションへのフリーラジカルの導入によって、またはこれらの技術の組み合わせによって行われてもよい。重合開始技術は、マイクロエマルションの成分の性質に応じて選択されてもよい。
【0058】
マイクロエマルションは、重合前に望ましい最終形状およびサイズに形成されてもよい。たとえば、前駆体溶液を望ましい厚さの層に注ぐかもしくは広げることによって、または重合前に前駆体溶液をガラスプレートの間に入れることによって、シート材料を形成してもよい。前駆体溶液はまた、たとえば重合前に前駆体溶液を型または鋳型に注ぐことによって、コンタクトレンズの形状また棒状などの所望の形状に形成してもよい。
【0059】
重合後に、非反応モノマーとポリマーに組み込まれなかったプローブとを除去するためにポリマーをすすいで、水によって平衡にしてもよい。すすいだポリマーを、医学的適用または臨床的適用に用いるための調製において、任意で乾燥および滅菌することができる。乾燥および滅菌はいずれも、当業者に公知である任意の適した様式で成就されうる。いくつかの態様において、乾燥および滅菌は、低温で、たとえばエチレンオキサイドガスまたはUV照射を用いることによって行われうる。
【0060】
形成されたポリマーは、ポリマー102を参照して上記の孔構造を有する。ポリマーは、都合のよいことに、ヒト皮膚線維芽細胞と適合しておよび機械的に強く作製されうる。ポリマーは、様々な望ましい物理的特性、化学的特性、および生化学的特性を有しうる。たとえば、グルコースに対する試料ポリマーの蛍光応答の変化を、約250μMもの低いグルコース濃度で視覚的に検出できることが実験によって示されている。試料ポリマーを試験したところ、コンタクトレンズ材料として用いるために生理的に適合性であることが示されている。合成工程は柔軟であり、たとえば前駆体溶液中の水分含有量を変えることによって、得られた材料の機械的特性および光学的特性を都合よく調節するように適合させることができる。たとえば、前駆体溶液中の水分含有量を増加させることによって、材料の親水性および酸素透過性(Dk)を約16から約24まで様々であってもよく;前駆体溶液中の水分含有量を減少させることによって、材料の抗張力を約3.8から約5.7 MPaまで様々であってもよい。材料のヤング率は、約120から約280 MPaまで様々であってもよい。強度についての前記の範囲は、耐久性があるコンタクトレンズ製品を提供するために十分である。同様に、ヒト角膜上皮細胞(HCEC)を試料ポリマーにおいて支持、付着および増殖させることができることが示されている。細胞は、健康な形態および高い生存率を示した。
【0061】
ポリマーから形成されたコンタクトレンズは、糖尿病コンタクトレンズとして用いることができ、使い捨てであることができ、かつ涙液のグルコースレベルを連続的に非侵襲的にモニターすることが可能である。
【0062】
得られたポリマーはまた、グルコースの存在を検出するための他の眼科用装置を形成するために用いることができるか、または様々な眼科的適用において用いることができる。たとえば、ポリマーは、患者の体に挿入されるインプラントにおいて用いられてもよい。したがって、体内のグルコースレベルを、インプラントにおけるプローブのスペクトル応答の変化を検出することによってモニターしてもよい。
【0063】
以下の非制限的な実施例は、本明細書において記載される例示的な態様をさらに説明する。
【実施例】
【0064】
実施例I(試料I、II、およびIIIの調製)
試料前駆体溶液を水、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);メタクリル酸メチル(MMA);界面活性剤としてのω-メトキシポリ(エチレンオキサイド)40ウンデシルα-メタクリレートマクロモノマー(PEO-R-MA-40);プローブとしてのカルク-1;クロスリンク剤としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA);および開始剤としての2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)の混合物から調製した。
【0065】
前駆体溶液に用いられるカルク-1蛍光体は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、J. P. Lorand and J. O. Edwards, J. Org. Chem., 1959, vol. 24, pp. 769において記載される通りに合成された。固体のカルク1試料は橙色の固体であり、以下の特性を有した;融点、157〜158℃;1H核磁気共鳴(NMR)(CD3OD)(ppm)、3.01(s, 6H)、6.79〜8.05(m, 10H)。
【0066】
予想される分子式C17H18BNO3の分析的分析からの計算された結果は、C、69.18;H、6.15;N、4.75であった。比較すると、試料生成物から測定された結果は、C、68.47;H、6.38;N, 4.53であった。λ吸収=438 nmおよびλ蛍光=575 nm。
【0067】
異なる試料前駆体溶液中の成分濃度を表1に記載する。前駆体溶液は、両連続マイクロエマルションを形成し、かつUVリアクターチャンバーにおいて重合した。
【0068】
得られた試料ポリマーメンブレン材料を型に入れて、型鋳造によってコンタクトレンズを形成した。
【0069】
異なる前駆体溶液から形成された試料をそれぞれ、表Iにおいて示されるように試料I、II、およびIIIと呼ぶ。
【0070】
【表1】

【0071】
代表的な試料IIの断面の電子顕微鏡画像を図6に示す。図6において示されるように、ポリマー試料は上記の孔構造を有した。具体的に、図6における明るい部分は、ポリマーマトリクス(106として示される)を表す。黒っぽい部分は孔(108として示される)を表し、および狭く黒っぽい部分は狭い開口部(110として示される)を表す。同様に、孔のいくつかが他の孔につながって、つながった孔のネットワークを形成することが認められうる。いくつかの孔は、他の孔から孤立した。いくつかの孔は、狭い開口部のみによって他の孔につながった。平均孔サイズは、約20 nm〜約30 nmであり、孔間の開口部のサイズは約10 nm〜約20 nmであった。
【0072】
実施例II(試料の特徴付け)
実施例Iの試料ポリマーメンブレンのひずみ(%)、ヤング率、および抗張力をInstron(商標)4502マイクロフォーステスターを用いて、ASTM(American Society for Testing and Materials)638標準に従って測定した。試料はASTM 638によって指示される標準サイズの試料であった。
【0073】
材料の酸素透過性を、Rehder(商標)M201T透過性測定装置によって測定した。
【0074】
代表的な結果を表IIに記載する。
【0075】
【表2】

【0076】
実施例III(試料における細胞培養および生存率アッセイ法)
HCECを、実施例1において調製された試料ポリマーメンブレン上に播種して、コンフルエンスになるまで無血清培地を添加した。無血清培地は、10 ng/mLヒト上皮細胞増殖因子(hEGF)、5μg/mLインスリン、0.5μg/mLヒドロコルチゾン、8.4 ng/mLコレラ毒素、30μg/mLウシ下垂体抽出物、50μg/mLゲンタマイシンおよび50 ng/mLアンフォテリシンBを添加したケラチノサイト増殖培地を含有した。細胞を5%CO2において37℃でインキュベートして、培地交換を2日ごとに行った。細胞は、7日後にポリマーメンブレン上にコンフルエントな上皮シートを形成した。細胞培養物を倒立位相差顕微鏡下でモニターした。培養細胞の生存率を4'-6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)染色によって測定した。試験結果は、生存HCECが、試験した全ての試料ポリマーメンブレンにおいて培養されて増殖することを示した。細胞の生存率はDAPIに関する陽性染色によって確認された。
【0077】
実施例IV(蛍光応答)
実施例Iにおいて調製した試料ポリマーメンブレンおよび比較試料の蛍光測定を、Perkin- Elmer(商標)LS-50B蛍光計において、試料を保持するために4 cm×1 cm×1 cm石英キュベットを用いて行った。励起スペクトルおよび放射スペクトルを蛍光計によって、そのレンズの凹面の端部が励起源に面するように測定した。試料は測定の際にその前面および後面の両方で溶液約1.5 mLに接触した。励起波長λ励起は430 nmであった。代表的な結果を図7、8、および9に示す。
【0078】
図7はそれぞれ、(i)水溶液中(下の線)、(ii)重合していない、約25重量%水溶液および3 mg/mL カルク-1を含有する両連続マイクロエマルション(中央の線)、ならびに(iii)重合によって両連続マイクロエマルションから調製された試料ポリマー(上の線)におけるカルク-1の放射スペクトルを示す。これらのスペクトルはグルコースの非存在下で測定された。
【0079】
図7において認められうるように、放射強度は、試料ポリマーマトリクスにおいてカルク-1プローブを固定することによって、水溶液中および前駆体溶液中の双方のプローブと比較して有意に増大された。いかなる特定の理論にも制限されないが、放射強度の実質的な増加は、プローブの重合およびその後の固定(運動または動きの制限)に帰因するリジッドクロミズム(rigidochromism)によりうる。カルク-1の分子の動きが制限される場合、放射強度は、より遅い非放射崩壊工程により増大されうる。
【0080】
図8は、異なるグルコース濃度のグルコースの存在下で試料Iから測定された放射スペクトルの変化を示す。約575 nmでピークに達したスペクトル線(右手側)は、グルコースを有しないブランク溶液に関するスペクトルであった。約542 nmでピークに達する線(左手側)はそれぞれ、上から下へ、250μM、500μM、1 mM、50 mM、100 mM、150 mM、および200 mMでのグルコース濃度に対応する。
【0081】
認められうるように、約30 nmのスペクトルシフトがグルコースの存在によって誘導された。放射強度も同様に、グルコース濃度が増加すると徐々に減少する。いかなる特定の理論にも制限されないが、観察されたスペクトルの変化は、グルコースの存在下で中性状態[R-B(OH)2]から陰イオン状態[R-B(OH)3-]へのボロン酸種の変化に関連する励起状態電荷移動(CT)による可能性がある。この電子変化は、ホウ素基の電子誘引特性を変更し、従って励起状態の分子内電荷移動(ICT)のスペクトル特性を変更した。溶媒分子が自身を有効に再配列させてCT励起状態を安定化することができる溶液中では、固定されたプローブにおけるCT励起状態が移動可能なプローブにおける励起状態と比較してより安定でないと考えられることから、青色シフトはまた、リジッドクロミック(rigidochromic)効果によるものでもあることができる。
【0082】
図9は、固定グルコース濃度50 mMの存在下で試料I(上の線)、II(中央の線)、およびIII(下の線)から測定された放射スペクトルを示す。
【0083】
認められうるように、試料の前駆体溶液中の水分含有量が35重量%から25重量%までに減少すると、カルク-1プローブの放射強度が減少する。この依存性は、上記で考察したリジッドクロミック効果と一致する。前駆体溶液中の水分含有量がより低くなるにつれて、ポリマーマトリクスに対する流体導管の容積比はより小さくなり、従って環境はより「堅固」であると見なされ、ゆえに放射強度は増加する。別の考えられる理由は、前駆体溶液中の水分含有量が減少するにつれて、およびポリマーマトリクスに対する流体導管の容積比がその結果として小さくなるにつれて、グルコース溶液とポリマーマトリクスとの間の界面容積がより小さくなったという点である。
【0084】
実施例V(浸出試験)
試料IからIIIにおけるプローブの浸出を、試料を緩衝液1.5 mLに25℃で浸しながら蛍光計によって試料の蛍光応答の変化をモニターすることによって試験した。
【0085】
図10は、試料I(四角)、II(丸)、およびIII(白三角)、ならびにカルク-1プローブのみが3 mg/mL濃度で多孔性のコンタクトレンズの孔内に負荷された比較試料(黒三角)から測定された経時的な蛍光強度の変化を示す。比較試料のための多孔性のコンタクトレンズを販売元から得た。ポリマーから浸出したプローブ分子を、蛍光放射をモニターする際に、緩衝液溶液から持続的に除去した。
【0086】
対照試験として、ブランク緩衝液溶液(プローブ試料なし)における蛍光放射強度も同様にモニターした。対照試験において、経時的な蛍光強度の変化または変動は観察されなかった。
【0087】
これらの試験において経時的に放射強度が減少したことは、プローブが溶液中ではポリマーより低い強度を有することから、カルク-1プローブが浸出した可能性があることを示した。
【0088】
実施例VI(試料IVおよびVの調製)
非イオン性両連続マイクロエマルション前駆体溶液を、PEO-R-MA-40、HEMA、MMA、EGDMA、DMPA、およびグルコースプローブとして0.07 M カルク-2を含有する水溶液の混合物から調製した。異なる試料に関して、表IIIにおいて示されるように水およびモノマー濃度を変えた。
【0089】
【表3】

【0090】
用いたカルク-2化合物を、Nicolasにおいて記載される手順に従って調製した。調製されたカルク2化合物(M/Z 378.2)は、暗橙赤色の固体(40%)であり、以下の特性を有した:融点、266〜267℃;1H NMR(CD3OD)δ(ppm):3.05(s, 6H)、6.78〜7.92(m, 12H)、λabs=445 nmおよびλF=663nm。
【0091】
前駆体溶液中のポリマー前駆体を、UVリアクターチャンバーにおいて前駆体溶液をUV光照射に供することによって重合させた。コンタクトレンズは、得られたポリマーから鋳造によって形成された。
【0092】
調製された試料はそれぞれ、表IIIにおいて示されるように前駆体溶液の含有量に応じて試料IVおよびVと呼ばれる。
【0093】
試料レンズの抗張力および酸素透過性を、Dynamic Mechanical Analyzer(TA Instruments, DMA 2980)およびModel 201 T Permeometer(Rehder, M201T)によって3通り測定した。
【0094】
試料レンズは透明であり、酸素透過性(Dk)約20を有した。試料材料の抗張力は1.2(試料V)から8.8 MPa(試料IV)まで様々であった。
【0095】
実施例VII(試料IVおよびVの蛍光および浸出)
試料IVおよびVの定常状態蛍光スペクトルを、7.3 Wパルスキセノン放電ランプを備えたPerkin-Elmer LS-50B蛍光分光計において、平均出力50 Hz、励起波長445 nmで、0.01〜5 ppmの異なる濃度のグルコースの存在下で記録した。
【0096】
代表的な結果を図11および図12に示す。図11は、表記の異なるグルコース濃度レベルで試料IVから得られた放射スペクトルを示す。試験溶液のpHは7であった。図12は、グルコース濃度5 ppmで試料IVおよびVからそれぞれ得られたスペクトル応答における蛍光強度を示す。蛍光強度は試料IVにおけるよりも試料Vにおける方が低かった。
【0097】
試料IVおよびVは、溶液に分散したカルク-2プローブと比較して異なるグルコース濃度でのエネルギーの青色シフト(約25 nmのシフト)による蛍光強度の増大を示した。
【0098】
試料IVおよびVにおけるプローブの浸出を、異なる時間で放出培地(5 ppmグルコース溶液)中の浸出したプローブの放射強度測定によって判定した。代表的な結果を図13に示す。認められうるように、試料は溶液中で10時間後であっても強い放射強度を示し、このことは、プローブ分子の大部分がポリマーの孔中に捕捉されかつ固定されたことを示している。ポリマーにおける多くの孔が相互につながっていても、プローブ分子は孔から明らかに浸出することができず、それらが、行き止まりまたは孔をつなぐ狭い開口部によって妨害されたことを示している。
【0099】
実施例VIII(試料IVおよびVの生体適合性)
初代培養ヒト角膜上皮細胞(HCE)を、添加ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、10%ウシ胎児血清、2 mM L-グルタミン酸塩、100単位/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン)(GibcoBRL)において、試料IVおよびVから形成された試料レンズ上で培養した。細胞を負荷したレンズを、5%CO2を有する湿潤大気中で37℃でインキュベートした。細胞の形態を、カメラ(Nikon 4500)を備えた位相差顕微鏡(AVIOVERT, ZEISS, Germany)下でモニターして写真を撮影した。角膜上皮細胞を、培地において15,000個/mLの密度で試料上に播種した。
【0100】
試料レンズ材料は、培養細胞に対して生体適合性であることが見いだされた。
【0101】
項目の一覧に、本明細書における最後の項目の前に「または」という用語が提供される場合、項目のいずれか1つを用いてもよく、かつ組み合わせた項目が本質的に非適合性または排他的でない限り、記載の項目の任意の2つまたはそれより多くの考えられる組み合わせも同様に用いてもよい。
【0102】
本明細書において記載される態様の上記で明白に言及していない他の特色、利点、および長所は、当業者によって本説明および図面から理解されうる。
【0103】
当然のこととして、前記の態様は、例証に過ぎず、全く限定するものではないことを意図される。記載の態様は、形、部分の配置、詳細、および操作の順序に関して多くの改変が可能である。本発明はむしろ、特許請求の範囲によって定義されるように、その範囲内のそのような全ての改変を包含すると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、眼科用装置に用いるためのポリマーを形成する方法:
内孔と表面孔とを画定するポリマーマトリクスを形成するためのポリマー前駆体を含む第一の連続相における第一の流体と第二の連続相における第二の流体との両連続マイクロエマルションを含む、前駆体溶液中で、該ポリマー前駆体を重合させる段階であって、複数の該内孔が、グルコース分子の通過を可能にするがグルコースプローブの通過を制限する大きさの開口部を介して、表面孔につながっている段階;および
該重合させる段階の前に該第二の流体中で該グルコースプローブの分子を分散させ、それにより、重合後に該内孔中にグルコースプローブ分子の一部を捕捉する段階。
【請求項2】
前記内孔が約20 nm〜80 nmの平均孔サイズを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記開口部のサイズが約5 nm〜約10 nmである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記グルコースプローブがボロン酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ボロン酸が式R-B(OH)2を有し、式中Rがアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニルおよびアリールアリールアキル(aryl arylakyl)のうちの1つである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ボロン酸が、1,3-ジフェニルプロパ-2-エン-1-オンまたは1,5-ジフェニルペンタ-2,4-ジエン-1-オンを含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記ボロン酸が、前記第二の流体中約0.1重量%〜約5重量%の濃度を有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー前駆体が、前記ポリマーマトリクスを形成するためのモノマーおよび該モノマーと共重合可能な界面活性剤を含み、かつ前記第二の流体が水を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
複数の内孔が、グルコース分子の通過を可能にするがグルコースプローブの通過を制限する大きさの開口部を介して、表面孔につながっている、該内孔と表面孔とを画定するポリマーマトリクス;および
該内孔内に捕捉され、かつポリマーが眼液に接触する場合に検出可能なスペクトル応答を生成するために十分な量の、該グルコースプローブの分子
を含む、眼科用装置に用いるためのポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーマトリクスによって画定される孔が、約20 nm〜80 nmの平均孔サイズを有する、請求項9記載のポリマー。
【請求項11】
前記開口部のサイズが約5 nm〜約10 nmである、請求項9記載のポリマー。
【請求項12】
前記グルコースプローブがボロン酸を含む、請求項9記載のポリマー。
【請求項13】
前記ボロン酸が式R-B(OH)2を有し、式中Rがアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、およびアリールアリールアキルのうちの1つである、請求項12記載のポリマー。
【請求項14】
前記ボロン酸が、1,3-ジフェニルプロパ-2-エン-1-オンまたは1,5-ジフェニルペンタ-2,4-ジエン-1-オンを含む、請求項12記載のポリマー。
【請求項15】
前記ボロン酸が前記ポリマー中約0.1重量%〜約5重量%の密度を有する、請求項14記載のポリマー。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一項記載の方法に従って形成されたポリマー、または請求項9〜15のいずれか一項記載のポリマー
を含む、眼科用装置。
【請求項17】
コンタクトレンズを含む、請求項16記載の眼科用装置。
【請求項18】
第一の流体がポリマーマトリクスを形成するための重合可能なポリマー前駆体を含み、第二の流体がグルコースプローブを含む、第一の連続相における該第一の流体と第二の連続相における該第二の流体との両連続マイクロエマルション
を含む、ポリマーを形成するための前駆体溶液であって、
該両連続マイクロエマルションが、該ポリマー前駆体が重合すると該前駆体溶液から形成された該ポリマーマトリクスが内孔と表面孔とを画定するように、かつグルコース分子の開口部通過を可能にするが該グルコースプローブの分子の開口部通過を制限する大きさの開口部を介して表面孔につながっている該内孔中に、該グルコースプローブの分子が捕捉されるように選択される、前駆体溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−527713(P2011−527713A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517388(P2011−517388)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000245
【国際公開番号】WO2010/005398
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】