説明

ポリマーの流動性変性

本発明は流動性変性型ポリマー組成物である。この生成する流動性の変性されたポリマーは、フリーラジカルの形成時に優先的に分解するか、あるいは炭素−炭素で架橋する少なくとも1つのポリマーから製造される。本発明によって、この優先的な反応の抑制が可能となり、このポリマーがフリーラジカル捕捉種によりカップリングされることが可能になる。この望ましくない分解または炭素−炭素架橋反応を抑制し、望ましいカップリング反応を可能とさせることによって、流動性の変性されたポリマーが生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル反応を受けるポリマー系に関し、望ましくはポリマーの流動性が変性される。
【背景技術】
【0002】
ポリマーの多くがフリーラジカル反応を受ける。これらの反応の一部はカップリング(または流動性変性)などのように有用であり、他のものは分解または炭素−炭素架橋などのように有害である。この有害な反応の影響を最小にする一方でこの有用なカップリング反応を促進する必要性がある。
【0003】
非選択的なフリーラジカル化学反応を用いて、ポリオレフィンの流動性を変性する場合が多々ある。しかしながら、フリーラジカル化学反応を高温で行う場合には、特に三級水素を含有するポリマー、例えばポリプロピレンおよびポリスチレンにおいて分子量が低下することもある。加えて、フリーラジカル化学反応によれば、炭素−炭素架橋を促進して、ポリエチレンに望ましくないレベルのゲルを生成することもある。
【0004】
ポリプロピレンのフリーラジカル分解を緩和するために、ペルオキシドとペンタエリスリトールトリアクリレートを使用することがWangら,Journal of Applied Polymer Science,Vol.61,1395−1404(1996)で報告されている。彼らは、アイソタクチックポリプロピレンを分岐させることが、ポリプロピレンにジ−およびトリ−ビニル化合物をフリーラジカルグラフトすることにより、実現可能であるということを教示している。しかしながら、このアプローチは、鎖切断が限定された量の鎖結合を高い率で占める傾向があるので、実際の場合うまく働かない。
【0005】
鎖切断により、分子量が低下し、鎖結合が切断を伴わない場合に観察されるよりも高いメルトフローレートになる。切断は均一でないために、当分野で「テール」と呼ばれる低分子量ポリマー鎖が形成されるに従って分子量分布が増大する。
【0006】
流動性の変性されたポリマーを製造するもう1つのアプローチ、すなわちC−H結合の中へのニトレン挿入による、ある種のポリ(スルホニルアジド)化合物とアイソタクチックポリプロピレンまたは他のポリオレフィンとの反応が、米国特許第3,058,944号;第3,336,268号;および第3,530,108号で述べられている。米国特許第3,058,944号で報告されている生成物は架橋されている。米国特許第3,530,108号で報告されている生成物は、シクロアルカン−ジ(スルホニルアジド)により発泡され、硬化されている。米国特許第3,336,268号においては、ポリマー鎖がスルホンアミド架橋により「架橋」されているために、生成する反応生成物は「架橋されたポリマー」と呼ばれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリマーの鎖切断または炭素−炭素架橋を起こさずに、このポリマーのカップリングにより種々のポリマーのメルト粘度とメルト強度を増大させることが望ましい。このポリマーは、ハロゲン化される場合には、脱ハロゲン化水素化を受けないことも望ましい。
【0008】
ゲルレベルの低い、そして透明性の優れた流動性の変性されたポリマーを生成させることが望ましい。ポリマーがカップリング反応を受けるときに、ポリマーの分子構造を制御することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は流動性変性可能なポリマー組成物(a rheology-modifiable polymeric composition)である。生成する流動性の変性されたポリマーは、フリーラジカルの形成時に優先的に分解するか、あるいは炭素−炭素で架橋する少なくとも1つのポリマーから製造される。本発明によって、この優先的な反応の抑制が可能となり、このポリマーのフリーラジカル捕捉種によるカップリングが可能となる。この望ましくない分解または炭素−炭素架橋反応を抑制し、望ましいカップリング反応を可能とさせることによって、流動性の変性されたポリマー(a rheology-modified polymer)が生成する。
【0010】
本発明は、電線・電纜(wire-and-cable)、履物、フィルム(例えば、温室、収縮性および弾性)、エンジアリング熱可塑性樹脂、高充填、難燃剤、反応性コンパウンド、熱可塑性エラストマー、熱可塑性加硫物、自動車、加硫ゴム代替品、建設、自動車、家具、フォーム、湿潤処理、接着剤、塗装性基材、染色性ポリオレフィン、水分硬化、ナノコンポジット、相溶化、ワックス、カレンダー掛けされたシート、医薬品、分散物、共押し出し、セメント/プラスチック補強、食品包装、不織布、紙変性、多層容器、スポーツ用品、配向構造物および表面処理用途において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書で使用される「炭素−FRTS−炭素カップリング結合」は、ポリマー分子の炭素、フリーラジカル捕捉種、および他のポリマー分子の炭素の間で形成される共有結合を意味する。炭素−FRTS−炭素カップリング結合を形成する前に、このフリーラジカル捕捉種は少なくとも2つの捕捉部位を有する。この捕捉部位の2個所において、このフリーラジカル捕捉種はこのポリマー分子にグラフトされる。
【0012】
本明細書で使用される「拘束幾何触媒(constrained geometry catalyst)で触媒される(catalyzed)ポリマー」、「CGCで触媒されるポリマー」または類似の用語は、拘束幾何触媒の存在下で製造されるいかなるポリマーも意味する。本明細書で使用される「拘束幾何触媒」または「CGC」は、この用語が米国特許第5,272,236号および第5,278,272号で定義され、述べられているのと同一の意味を有する。
【0013】
本明細書で使用される「ゲル数」は、ポリマーをフィルムダイから押し出し、オプティカルカウンターシステム(OCS:Optical Counter System)からのフィルムスキャニングシステム(Film Scanning System, FS-3)を使用することにより測定して、評価されるポリマー組成物の1平方メートル当たりのゲルの平均数を意味する。本明細書で使用される「GN−300」は、少なくとも300マイクロメートルの粒子サイズを有する1平方メートル当たりのゲルの平均数を意味する。GN−300は300〜1600マイクロメートルの測定に対するゲルの全数を表すといえる。本明細書で使用される「GN−600」は、少なくとも600マイクロメートルの粒子サイズを有する1平方メートル当たりのゲルの平均数を意味する。GN−600は600〜1600マイクロメートルの測定に対するゲルの全数を表すといえる。
【0014】
本明細書で使用される「均質にカップリングされた」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(「GPC」)分析から得られるMark−Houwinkプロットにより示されるような、分岐が存在する分子量の範囲を指す。範囲が広いほどカップリングが均質であることを示す。
【0015】
本明細書で使用される「長鎖分岐(LCB)」は、例えばエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーについては、ポリマー骨格の中へのアルファ−オレフィンの組み込みから生じる、短鎖分岐よりも長い鎖長を意味する。各長鎖分岐はポリマー骨格と同一のコモノマー分布を有し、それが結合するポリマー骨格ほどに長いものであることができる。
【0016】
本明細書で使用される「メルト加工性」は、ポリマーが流動変性後に慣用の加工装置、例えば押し出し機および成形ダイで成形可能であるように溶融され、粘性流動することができると特徴付けられる熱可塑性挙動を継続して呈するポリマーを意味する。
【0017】
本明細書で使用される「メルト強度」は、破断時の、あるいは引き取り共振の開始時(at the onset of draw resonance)における最大引っ張り力を意味する。メルト強度はRheotensメルト強度法にしたがって測定される。これは、毛管レオメーターまたは押し出し機のいずれかを用いてポリマーの溶融ストランドを一定の押し出し速度で押し出し、そしてこのストランドを一組のホイールの間を下方に引っ張ることからなる。このホイールは一定の加速で回転され、時間と共に直線的に増加する引っ張り速度を生じる。このストランドはドローダウン比の増加により破壊するまで細くなる。この過程の間、このホイール上に作用するストランドの張力が記録され、次の情報(a)本明細書で使用される、所定の速度で材料を延伸するのに必要とされる応力を意味する「延伸強度」;(b)本明細書で使用される、材料がウエブ(web)あるいは繊維の破壊無しで延伸可能である最大速度または歪速度を意味する「延伸性」;および(c)本明細書で使用される、ウエブあるいは泡に振動が起こるであろう臨界的な速度を意味する「ドローダウン安定性」が提供される。この測定条件は次の通りである。Gottfert Incから市販されているRheotester2000毛管レオメーターを使用する。ダイ寸法はL/D=30/2mmおよび180°の角度である。バレル直径は12mmである。試験温度は200℃である。ピストン速度(剪断速度)は0.265mm/秒(38.2 l/秒)である。延伸距離は100mmである。rheotensホイール加速は24mm/秒2である。
【0018】
本明細書で使用される「メタロセン」は、金属に結合した少なくとも1つの置換あるいは非置換のシクロペンタジエニル基を有する金属含有化合物を意味する。「メタロセンで触媒されるポリマー」または類似の用語は、メタロセン触媒の存在下で製造されるいかなるポリマーも意味する。
【0019】
本明細書で使用される「多分散性」、「分子量分布」、および類似の用語は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)を意味する。
【0020】
本明細書で使用される「ポリマー」は、同一のあるいは異なるタイプのモノマーの重合により製造される高分子化合物を意味する。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどを含む。用語「インターポリマー」は、少なくとも2つのタイプのモノマーまたはコモノマーの重合により製造されるポリマーを意味する。これは、限定ではないが、コポリマー(3つ以上の異なるタイプのモノマーあるいはコモノマーから製造されるポリマーを指すのに「インターポリマー」としばしば互換的に使用されるが、2つの異なるタイプのモノマーあるいはコモノマーから製造されるポリマーを通常指す)、ターポリマー(3つの異なるタイプのモノマーあるいはコモノマーから製造されるポリマーを通常指す)、テトラポリマー(4つの異なるタイプのモノマーあるいはコモノマーから製造されるポリマーを通常指す)などを含む。用語「モノマー」または「コモノマー」は互換的に使用され、ポリマーを製造するために反応器に添加される重合性部分の付いたいかなる化合物も指す。ポリマーが1つ以上のモノマーを含んでなるとして記述される場合には、例えばプロピレンとエチレンを含んでなるポリマーの場合には、このポリマーは、勿論、モノマーから誘導される単位、モノマーそれ自身、例えばCH2=CH2でなく、例えば−CH2−CH2−を含んでなる。
【0021】
本明細書で使用される「P/E*コポリマー」および類似の用語は、(i)約14.6および約15.7ppmにおけるレギオエラーに対応する、ほぼ等しい強度の13C NMRピーク、および(ii)本質的に同一のままに留まるTmeと、コポリマー中のコモノマー、すなわちエチレンおよび/または不飽和コモノマーから誘導される単位の量が増加するにしたがって減少するTヒ゜ークを持つ示差走査熱分析(DSC)曲線の性質の少なくとも1つを有することを特徴とする、プロピレン/不飽和コモノマーコポリマーを意味する。「Tme」は溶融が終了する温度を意味する。「Tヒ゜ーク」はピーク溶融温度を意味する。通常、本実施形態のコポリマーはこれらの性質の両方を特徴とする。これらの性質の各々およびそれぞれの測定は、参照して本明細書に組み込まれる、2002年5月5日出願の米国特許出願番号10/139,786(WO2003040442)で詳細に述べられている。
【0022】
これらのコポリマーは、約−1.20以上のスキューネスインデックス(skewness index)、Sixを有するとしても更に特徴付けられる。スキューネスインデックスは昇温溶離分別(TREF)から得られるデータから計算される。このデータは溶離温度の関数としての重量分率の正規化されたプロットとして表現される。アイソタクチックプロピレン単位のモル含量が主として溶離温度を決定する。
【0023】
この曲線の形状の主要な特徴は、高溶離温度におけるこの曲線の鋭さまたは急峻さに比較して低溶離温度でのテーリングである。このタイプの非対称性を反映する統計はスキューネスである。式1はこの非対称性の尺度としてのスキューネスインデックス、Sixを数学的に表す。
【数1】

【0024】
値Tmaxは、TREF曲線において50と90℃の間で溶離する最大重量分率の温度として定義される。TiおよびwiはそれぞれTREF分布における任意のi番目の区分の溶離温度および重量分率である。この分布は30℃以上で溶離する曲線の全面積に関して正規化(wiの和は100%に等しい)されたものである。このように、このインデックスは結晶化されたポリマーの形状のみを反映する。いかなる非結晶化ポリマー(30℃以下でなお溶液中にあるポリマー)も式1に示す計算から除外される。
【0025】
P/E*コポリマー用の不飽和コモノマーは、C4-20α−オレフィン、特にC4-12α−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなど;C4-20ジオレフィン、好ましくは1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)およびジシクロペンタジエン;スチレン、o−、m−、およびp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンを含むC8-40ビニル芳香族化合物;およびハロゲン置換C8-40ビニル芳香族化合物、例えばクロロスチレンおよびフルオロスチレンを含む。エチレンとC4-12α−オレフィンが好ましいコモノマーであり、エチレンが特に好ましいコモノマーである。
【0026】
P/E*コポリマーはP/Eコポリマーの独特な下位組(subset)である。P/EコポリマーはP/E*コポリマーだけでなくプロピレンおよび不飽和コモノマーのすべてのコポリマーを含む。P/E*コポリマー以外のP/Eコポリマーは、メタロセンで触媒されたコポリマー、拘束幾何触媒で触媒されたコポリマー、およびZ−Nで触媒されたコポリマーを含む。本発明のために、P/Eコポリマーは50重量パーセント以上のプロピレンを含んでなり、EP(エチレン−プロピレン)コポリマーは51重量パーセント以上のエチレンを含んでなる。本明細書で使用される、「...プロピレンを含んでなる」、「...エチレンを含んでなる」および類似の用語は、このポリマーが化合物それ自身とは対照的にプロピレン、エチレンなどから誘導される単位を含んでなるということを意味する。
【0027】
「プロピレンホモポリマー」および類似の用語は、全て、あるいは本質的に全てプロピレンから誘導される単位からなるポリマーを意味する。「ポリプロピレンコポリマー」および類似の用語は、プロピレンとエチレンおよび/または1つ以上の不飽和コモノマーから誘導される単位を含んでなるポリマーを意味する。
【0028】
本明細書で使用される「流動性の変性された」は、動的機械的スペクトル法(DMS)により求めた、ポリマーのメルト粘度の変化を意味する。メルト粘度の変化は、100ラド(rad)/秒の剪断で測定される高剪断粘度および0.1ラド(rad)/秒の剪断で測定される低剪断粘度について評価される。
【0029】
望ましいこととしては、ポリマーの流動性は、本発明によればほぼ同一の高剪断粘度を維持しながら、メルト強度が増加するように変性される。すなわち、この流動性の変性されたポリマーは、ベースポリマーと比較した場合、低剪断条件において溶融ポリマーを延ばしたときに延伸に対して更なる抵抗性を呈するが、高剪断条件における押し出し量を犠牲にしない。本発明においては、低剪断条件における粘度はベースポリマーよりも少なくとも約5パーセント増加することが望ましい。メルト強度の増加は、通常、長鎖分岐または類似の構造がポリマーの中に導入される場合に観察される。
【0030】
別法としては、本発明により変性されるポリマーの流動性は、高剪断粘度に対する低剪断粘度の比(「低/高・剪断粘度比」)を参照することによって記述され得る。特に、本発明の流動性の変性されたポリマーは、ベースポリマーの低/高・剪断粘度比よりも大きい低/高・剪断粘度比を有するものと特徴付けられ得る。好ましくは、この低/高・剪断粘度比は、少なくとも5パーセント、更に好ましくは少なくとも10%、なお更に好ましくは少なくとも20%増加する。また、好ましくは、高剪断粘度を維持するか、あるいは減少させる一方で、この低/高・剪断粘度比は増加する。更に好ましくは、匹敵する高剪断粘度を維持する一方で、この低/高・剪断粘度比が増加する。この低/高・剪断粘度比の増加は、通常、長鎖分岐または類似の構造がポリマーの中に導入される場合に観察される。
【0031】
流動性の変性されたポリマーがメルト強度または低/高・剪断粘度比により特徴付けられるかどうかに無関係に、この流動性の変性されたポリマーは、好ましくはベースポリマーと等しいか、あるいはそれ未満のGN−300を有する。また、好ましくは、この流動性の変性されたポリマーは、好ましくはベースポリマーと等しいか、あるいはそれ未満のGN−600を有する。また、好ましくは、この流動性の変性されたポリマーのGNはベースポリマーの約50パーセント未満である。
【0032】
別法としては、また好ましくは、流動性の変性されたポリマーがメルト強度または低/高・剪断粘度比により特徴付けられるかどうかに無関係に、この流動性の変性されたポリマーは、100ゲル未満のGN−300を達成する。更に好ましくは、この流動性の変性されたポリマーは50ゲル未満のGN−300を達成する。
【0033】
別法としては、また好ましくは、流動性の変性されたポリマーがメルト強度または低/高・剪断粘度比により特徴付けられるかどうかに無関係に、生成される流動性の変性されたポリマーは、キシレン抽出(ASTM2765)により測定して、約10重量パーセント未満、更に好ましくは約5重量パーセント未満のゲル含量を有する。また好ましくは、この流動性の変性されたポリマーのゲル含量は、ベースポリマー(非変性ポリマー)のゲル含量よりも5絶対重量パーセント未満大きい(less than an absolute 5 weight percent greater than the gel content of the base polymer)。
【0034】
別法としては、また好ましくは、この生成する流動性の変性されたポリマーは、このポリマーの架橋温度で測定して、最小トルクの約1.30倍未満の最大トルクを有する。
H<1.30×ML
【0035】
「チーグラー・ナッタで触媒されたポリマー」、「Z−Nで触媒されたポリマー」、または類似の用語は、チーグラー・ナッタ触媒の存在下で製造されるいかなるポリマーも意味する。
【0036】
1つの実施形態においては、本発明は、フリーラジカル分解性ポリマー(a free-radical degradable polymer)、フリーラジカル誘導種(a free-radical inducing species)、および少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種(a free-radical trapping species)を含んでなる流動性変性可能なポリマー組成物である。このポリマーはフリーラジカル誘導種により誘導される場合、フリーラジカルの形成能を有する。
【0037】
フリーラジカル捕捉種が存在せず、フリーラジカル誘導種により誘導される場合、このポリマーはフリーラジカル誘導種の存在下で分解反応を受ける。この分解反応は鎖切断または脱ハロゲン化水素化であることができる。フリーラジカル捕捉種はこの分解反応を実質的に抑制する。
【0038】
このポリマーがフリーラジカルを形成した後、捕捉部位において、このフリーラジカル捕捉種はこのポリマー上にグラフト可能である。メルト加工型の流動性の変性されたポリマーが生じる。好ましくは、この流動性の変性されたポリマーは分岐している。また、好ましくは、この流動性の変性されたポリマーは実質的に均質的にカップリングされたものである。
【0039】
種々のフリーラジカル分解性ポリマーがこのポリマーとして本発明において有用である。このフリーラジカル分解性ポリマーは炭化水素ベースであることができる。好適なフリーラジカル分解性の炭化水素ベースのポリマーは、ブチルゴム、ポリアクリレートゴム、ポリイソブテン、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、ビニル芳香族モノマーのポリマー、ビニルクロリドポリマー、およびこれらのブレンドを含む。
【0040】
好ましくは、このフリーラジカル分解性の炭化水素ベースのポリマーはイソブテン、プロピレン、およびスチレンポリマーからなる群から選択される。
【0041】
好ましくは、本発明のブチルゴムはイソブチレンとイソプレンのコポリマーである。このイソプレンは、通常、約1.0重量パーセントと約3.0重量パーセントの間の量で使用される。
【0042】
本発明で有用なプロピレンポリマーの例はプロピレンホモポリマーおよびP/Eコポリマーを含む。特に、これらのプロピレンポリマーはポリプロピレンエラストマーを含む。このプロピレンポリマーはいかなる方法によっても製造可能であり、チーグラー・ナッタ、CGC、メタロセン、および非メタロセン、金属中心、ヘテロアリール配位子の触媒により製造可能である。
【0043】
有用なプロピレンコポリマーはランダム、ブロックおよびグラフトコポリマーを含む。例示のプロピレンコポリマーは、Exxon−Mobil VISTAMAX、Mitsui TAFMER、およびThe Dow Chemical CompanyによるVERSIFY(商標)を含む。これらのコポリマーの密度は、通常、少なくとも約0.850、好ましくは少なくとも約0.860、更に好ましくは少なくとも約0.865グラム/立方センチメートル(g/cm3)である。
【0044】
通常、これらのプロピレンコポリマーの最大密度は、約0.915であり、好ましくはこの最大は約0.900であり、更に好ましくはこの最大は約0.890g/cm3である。これらのプロピレンコポリマーの重量平均分子量(Mw)は広範に変わることができるが、通常、約10,000と1,000,000の間にある。これらのコポリマーの多分散性は、通常、約2と約4の間にある。
【0045】
これらのプロピレンコポリマーは、通常、少なくとも約0.01、好ましくは少なくとも約0.05、更に好ましくは少なくとも約0.1のメルトフローレート(MFR)を有する。この最大のMFRは、通常、約2,000を超えず、好ましくは約1000を超えず、更に好ましくは約500を超えず、なお更に好ましくは約80を超えず、最も好ましくは約50を超えない。プロピレンとエチレンおよび/または1つ以上のC4−C20α−オレフィンのコポリマーに対するMFRは、ASTM D−1238、条件L(2.16kg、230℃)にしたがって測定される。
【0046】
本発明で有用なスチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーは相分離した系である。スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーも本発明で有用である。
【0047】
ビニル芳香族モノマーのポリマーは本発明で有用である。好適なビニル芳香族モノマーは、限定ではないが、米国特許第4,666,987号;第4,572,819号および第4,585,825号で述べられているものなど、重合法での使用に既知のビニル芳香族モノマーを含む。
【0048】
好ましくは、このモノマーは式、
【化1】

のものである。式中、R’は水素または3個以下の炭素を含有するアルキル基であり、Arはアルキル、ハロ、あるいはハロアルキル置換を含むか、あるいは含まない1〜3個の芳香族環を有する芳香族環構造であり、ここで、いかなるアルキル基も1〜6個の炭素原子を含み、ハロアルキルはハロ置換アルキル基を指す。好ましくは、Arはフェニルまたはアルキルフェニルであり、ここでアルキルフェニルはアルキル置換フェニル基を指し、フェニルが最も好ましい。使用可能な通常のビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルトルエンのすべての異性体、特にパラ−ビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどのすべての異性体、およびこれらの混合物を含む。
【0049】
このビニル芳香族モノマーは他の共重合性モノマーとも合体され得る。このようなモノマーの例は、限定ではないが、アクリルモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アクリル酸、およびメチルアクリレート;マレイミド、フェニルマレイミド、およびマレイン酸無水物を含む。加えて、この重合は、衝撃性の変性された、あるいはグラフトゴム含有製品を製造するために予め溶解されたエラストマーの存在下で行われ得、その例が米国特許第3,123,655号、第3,346,520号、第3,639,522号、および第4,409,369号で述べられている。
【0050】
本発明は、ゴム変性されたモノビニリデン芳香族ポリマー組成物の剛性、マトリックスあるいは連続相のポリマーにも適用可能である。
【0051】
有用なフリーラジカル誘導種は、有機ペルオキシド、アゾフリーラジカル開始剤、およびビクメン(bicumene)を含む。好ましくは、このフリーラジカル誘導種は有機ペルオキシドである。また、酸素の多い環境も有用なフリーラジカルの開始(initiating useful free-radicals)に好ましい。好ましい有機ペルオキシドはジクミルペルオキシド、Vulcup R、およびジアルキルペルオキシドを含む。更に好ましくは、この有機ペルオキシドは、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンおよび2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンからなる群から選択されるジアルキルペルオキシドである。最も好ましくは、この有機ペルオキシドは2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンである。
【0052】
この有機ペルオキシドは直接注入により添加可能である。好ましくは、このフリーラジカル誘導種は、約0.005重量パーセントと約20.0重量パーセントの間、更に好ましくは約0.01重量パーセントと約10.0重量パーセントの間、最も好ましくは約0.03重量パーセントと約5.0重量パーセントの間の量で存在する。
【0053】
このフリーラジカル誘導種に加えて、あるいはこの代替として、このポリマーは、剪断エネルギー、熱、または輻射線(radiation)を受けた場合にフリーラジカルを形成することができる。従って、剪断エネルギー、熱、または輻射線はフリーラジカル誘導種として作用することができる。更には、このフリーラジカル捕捉種は、前述のフリーラジカル誘導種により生成されるフリーラジカルの存在下で作用するので、剪断エネルギー、熱、または輻射線により生成されるフリーラジカルの存在下で作用することができる。
【0054】
このフリーラジカルが有機ペルオキシド、酸素、空気、剪断エネルギー、熱、または輻射線により生成する場合には、このフリーラジカル捕捉種とフリーラジカル源の組み合わせがこのポリマーのカップリングに必要とされると考えられる。この組み合わせの制御がこのカップリングされたポリマー(すなわち、流動性の変性されたポリマー)の分子構造を決定する。フリーラジカル捕捉種を順次添加し、引き続いてフリーラジカルを徐々に開始させることによって、従来になかった制御がこの分子構造にもたらされる。
【0055】
グラフト化部位はこのポリマー上で開始され、このフリーラジカル捕捉種によりキャップされて、ペンダントな安定なフリーラジカル(a pendant stable free radical)を形成することができると考えられる。後に、このペンダントな安定なフリーラジカルは、以降に形成されるフリーラジカルとカップリングし、生成する流動性の変性されたポリマーに所望のレベルの均質性を付与することができる。
【0056】
本発明で有用なフリーラジカル捕捉種の例はヒンダードアミンから誘導される安定な有機フリーラジカルを含む。好ましくは、このフリーラジカル捕捉種がヒンダードアミンから誘導される安定な有機フリーラジカルである場合には、これは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(TEMPO)およびこの誘導体の少なくとも2つの官能基を有する多官能基分子からなる群から選択される。更に好ましくは、この安定な有機フリーラジカルはビス−TEMPOである。ビス−TEMPOの例は、ビス(l−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートである。また、なお更に好ましくは、この安定な有機フリーラジカルは、オキソ−TEMPO、ヒドロキシ−TEMPO、ヒドロキシ−TEMPOのエステル、ポリマーと結合したTEMPO、PROXYL、DOXYL、ジ−tert−ブチル−N−オキシル、ジメチルジフェニルピロリジン−1−オキシル、4 ホスホノオキシTEMPO、またはTEMPOとの金属錯体から誘導される少なくとも2つのニトロキシ基を有する多官能基分子である。
【0057】
好ましくは、このフリーラジカル捕捉種は、約0.005重量パーセントと約20.0重量パーセントの間、更に好ましくは約0.01重量パーセントと約10.0重量パーセントの間、最も好ましくは約0.03重量パーセントと約5.0重量パーセントの間の量で存在する。
【0058】
好ましくは、フリーラジカル捕捉種に対するフリーラジカル誘導種の比とフリーラジカル捕捉種の濃度がポリマーのカップリングを促進する。更に好ましくは、フリーラジカル誘導種:フリーラジカル捕捉種は約1以上、更に好ましくは約20:1と約1:1の間の比で存在する。
【0059】
フリーラジカル捕捉種とフリーラジカル誘導種は、直接混練、直接含浸、および直接注入を含む種々の方法でポリマーと合体可能である。
【0060】
代替の実施形態においては、本発明は、フリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマー、フリーラジカル誘導種、および少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種を含んでなる流動性変性型ポリマー組成物である。このポリマーは、フリーラジカル誘導種により誘導される場合にフリーラジカル形成能を有する。
【0061】
フリーラジカル捕捉種が存在せず、フリーラジカル誘導種により誘導される場合、ポリマーは炭素−炭素架橋反応を受ける。フリーラジカル捕捉種は炭素−炭素架橋反応を実質的に抑制する。
【0062】
捕捉部位においては、ポリマーがフリーラジカルを形成した後、このフリーラジカル捕捉種はポリマー上にグラフト可能である。メルト加工性の流動性の変性されたポリマーが生成される。好ましくは、この流動性の変性されたポリマーは分岐している。また、好ましくは、この流動性の変性されたポリマーは実質的に均質的にカップリングされたものである。
【0063】
種々のフリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマーがこのポリマーとして本発明において有用である。このポリマーは炭化水素ベースであることができる。好適なフリーラジカル炭素−炭素架橋型の炭化水素ベースのポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、エチレン/ジエンコポリマー、エチレンホモポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/スチレンインターポリマー、エチレン/不飽和エステルコポリマー、フルオロポリマー、ハロゲン化ポリエチレン、水素化ニトリルブタジエンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーおよびこれらのブレンドを含む。
【0064】
本発明では、クロロプレンゴムは一般に2−クロロ−1,3−ブタジエンのポリマーである。好ましくは、このゴムは乳化重合により製造される。加えて、この重合はイオウの存在下で行われて、このポリマー中に架橋を組み込むことができる。
【0065】
好ましくは、このフリーラジカル炭素−炭素架橋型の炭化水素ベースのポリマーはエチレンポリマーである。
【0066】
好適なエチレンポリマーに関しては、このポリマーは、一般に、(1)高分岐(highly-branched);(2)不均質直鎖(heterogeneous linear);(3)均質分岐直鎖(homogeneously branched linear);および(4)均質分岐実質的に直鎖(homogeneously branched substantially linear)の4つの主要な分類のなかに入る。これらのポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセンあるいはバナジウムベースの単一部位触媒、または拘束幾何の単一部位触媒により製造可能である。
【0067】
高分岐エチレンポリマーは低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。これらのポリマーはフリーラジカル開始剤により高温および高圧で製造可能である。別法としては、これらは配位触媒により高温および比較的低圧で製造可能である。これらのポリマーは、ASTM D−792で測定して、約0.910グラム/立方センチメートルと約0.940グラム/立方センチメートルの間の密度を有する。
【0068】
不均質直鎖エチレンポリマーは、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超超低密度(ultra-low density)ポリエチレン(ULDPE)、超低密度(very low density)ポリエチレン(VLDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。直鎖低密度エチレンポリマーは、ASTM1238、条件Iにより測定して、約0.850グラム/立方センチメートルと約0.940グラム/立方センチメートルの間の密度および約0.01と約100グラム/10分の間のメルトインデックスを有する。好ましくは、このメルトインデックスは約0.1と約50グラム/10分の間にある。また、好ましくは、このLLDPEは、エチレンと、3〜18個の炭素原子、更に好ましくは3〜8個の炭素原子を有する1つ以上の他のアルファ−オレフィンとのインターポリマーである。好ましいコモノマーは1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンを含む。
【0069】
超超低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンは互換的に既知である(known interchangeably)。これらのポリマーは約0.870グラム/立方センチメートルと約0.910グラム/立方センチメートルの間の密度を有する。高密度エチレンポリマーは、一般に、約0.941グラム/立方センチメートルと約0.965グラム/立方センチメートルの間の密度を有するホモポリマーである。
【0070】
均質分岐直鎖エチレンポリマーは均質LLDPEを含む。この均一に分岐し/均質なポリマーは、コモノマーが所与のインターポリマー分子内でランダム分布し、インターポリマー分子がこのインターポリマー内で類似のエチレン/コモノマー比を有するポリマーである。
【0071】
均質分岐の実質的に直鎖のエチレンポリマーは、(a)C2−C20オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、および4−メチル−1−ペンテンのホモポリマー、(b)エチレンと、C3−C20α−オレフィン、C2−C20アセチレン性不飽和モノマー、C4−C18ジオレフィン、またはこのモノマーの組み合わせの少なくとも1つとのインターポリマー、および(c)エチレンと、このC3−C20アルファ−オレフィン、ジオレフィン、または他の不飽和モノマーと組み合わせたアセチレン性不飽和モノマーの少なくとも1つとのインターポリマーを含む。これらのポリマーは、一般に、約0.850グラム/立方センチメートルと約0.970グラム/立方センチメートルの間の密度を有する。好ましくは、この密度は、約0.85グラム/立方センチメートルと約0.955グラム/立方センチメートルの間、更に好ましくは約0.850グラム/立方センチメートルと0.920グラム/立方センチメートルの間にある。
【0072】
本発明で有用なエチレン/スチレンインターポリマーは、オレフィンモノマー(すなわち、エチレン、プロピレン、またはα−オレフィンモノマー)とビニリデン芳香族モノマー、ヒンダード脂肪族ビニリデンモノマー、または脂環式ビニリデンモノマーとを重合させることにより製造される実質的にランダムなインターポリマーを含む。好適なオレフィンモノマーは、2〜20個、好ましくは2〜12個、更に好ましくは2〜8個の炭素原子を含有する。好ましいこのようなモノマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンを含む。最も好ましいのはエチレンおよびエチレンとプロピレンまたはC4-8アルファ−オレフィンとの組み合わせである。場合によっては、このエチレン/スチレンインターポリマー重合成分はエチレン性不飽和モノマー、例えば歪み環オレフィン(strained ring olefins)も含むことができる。歪み環オレフィンの例は、ノルボルネンおよびC1-10アルキル−あるいはC6-10アリール置換ノルボルネンを含む。
【0073】
本発明で有用なエチレン/不飽和エステルコポリマーは慣用の高圧法により製造可能である。この不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートであることができる。このアルキル基は1〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。このカルボキシレート基は2〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは2〜5個の炭素原子を有する。このエステルコモノマーに帰属されるコポリマーの部分は、このコポリマーの重量基準で約5〜約50重量パーセントの範囲にあることができ、好ましくは約15〜約40重量パーセントの範囲にある。このアクリレートとメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートである。このビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルブタノエートである。このエチレン/不飽和エステルコポリマーのメルトインデックスは、約0.5〜約50グラム/10分の範囲にあることができる。
【0074】
本発明で有用なハロゲン化エチレンポリマーは、フッ素化、塩素化、および臭素化オレフィンポリマーを含む。このベースオレフィンポリマーは、2〜18個の炭素原子を有するオレフィンのホモポリマーまたはインターポリマーであることができる。好ましくは、このオレフィンポリマーは、エチレンとプロピレンまたは4〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンモノマーとのインターポリマーである。好ましいアルファ−オレフィンコモノマーは、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンを含む。好ましくは、このハロゲン化オレフィンポリマーは塩素化ポリエチレンである。
【0075】
本発明で好適な天然ゴムはイソプレンの高分子量ポリマーを含む。好ましくは、この天然ゴムは約5000の数平均重合度と広い分子量分布を有する。
【0076】
好ましくは、本発明のニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルのランダムコポリマーである。
【0077】
本発明で有用なポリブタジエンゴムは、好ましくは1,4−ブタジエンのホモポリマーである。
【0078】
有用なスチレン/ブタジエンゴムはスチレンとブタジエンのランダムコポリマーを含む。通常、これらのゴムはフリーラジカル重合により製造される。本発明のスチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーは相分離系である。このスチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーも本発明で有用である。
【0079】
有用なフリーラジカル誘導種は、有機ペルオキシド、アゾフリーラジカル開始剤、およびビクメンを含む。好ましくは、このフリーラジカル誘導種は有機ペルオキシドである。また、酸素の多い環境も有用なフリーラジカルの開始(initiating useful free-radicals)に好ましい。好ましい有機ペルオキシドはジクミルペルオキシド、Vulcup R、およびジアルキルペルオキシドを含む。更に好ましくは、この有機ペルオキシドは、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンおよび2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンからなる群から選択されるジアルキルペルオキシドである。最も好ましくは、この有機ペルオキシドは2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンである。
【0080】
この有機ペルオキシドは直接注入により添加可能である。好ましくは、このフリーラジカル誘導種は、約0.005重量パーセントと約20.0重量パーセントの間、更に好ましくは約0.01重量パーセントと約10.0重量パーセントの間、最も好ましくは約0.03重量パーセントと約5.0重量パーセントの間の量で存在する。
【0081】
このフリーラジカル誘導種に加えて、あるいはこの代替として、このポリマーは剪断エネルギー、熱、または輻射線を受けた場合にフリーラジカルを形成することができる。従って、剪断エネルギー、熱、または輻射線はフリーラジカル誘導種として作用することができる。更には、このフリーラジカル捕捉種は、前述のフリーラジカル誘導種により生成されるフリーラジカルの存在下で作用するので、剪断エネルギー、熱、または輻射線により生成されるフリーラジカルの存在下で作用することができる。
【0082】
このフリーラジカルが有機ペルオキシド、酸素、空気、剪断エネルギー、熱、または輻射線により生成する場合には、このフリーラジカル捕捉種とフリーラジカル源の組み合わせがこのポリマーのカップリングに必要とされると考えられる。この組み合わせの制御がこのカップリングされたポリマー(すなわち、流動性の変性されたポリマー)の分子構造を決定する。フリーラジカル捕捉種を順次添加し、引き続いてフリーラジカルを徐々に開始させることによって、従来にない精度でこの分子構造を制御することができる。
【0083】
グラフト化部位はこのポリマー上で開始され、このフリーラジカル捕捉種によりキャップされて、ペンダントな安定なフリーラジカルを形成することができるとも考えられる。後に、このペンダントな安定なフリーラジカルは以降に形成されるフリーラジカルとカップリングし、生成する流動性の変性されたポリマーに所望のレベルの均質性を付与することができる。
【0084】
更にもう1つの実施形態においては、本発明は、(1)フリーラジカル分解性ポリマーおよびフリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマーからなる群から選択されるポリマーおよび(2)ペンダントな安定なフリーラジカルを含んでなる流動性変性型ポリマー組成物である。
【0085】
このペンダントな安定なフリーラジカルはこのポリマー上にフリーラジカル捕捉種をグラフトすることから誘導される。ペンダントな安定なフリーラジカルを生成する前に、このフリーラジカル捕捉種は少なくとも2つの捕捉部位を有する。形成後、このペンダントな安定なフリーラジカルは少なくとも1つの捕捉部位を有する。
【0086】
このポリマーはこのフリーラジカル誘導種により誘導される場合にフリーラジカル形成能を有する。ペンダントな安定フリーラジカルが存在せず、フリーラジカル誘導種により誘導される場合、このポリマーはフリーラジカルの形成能を有し、望ましくない反応を優先的に受ける。この望ましくない反応は分解反応または炭素−炭素架橋反応である。
【0087】
流動性変性型ポリマー組成物においては、この望ましくない反応は実質的に抑制される。
【0088】
捕捉部位においては、ポリマーがフリーラジカルを形成した後、このフリーラジカル捕捉種はこのポリマー上にグラフト可能である。メルト加工性の流動性の変性されたポリマーが生成する。この流動性の変性されたポリマーはこのペンダントな安定なフリーラジカルにカップリングされたポリマーを含んでなる。好ましくは、この流動性の変性されたポリマーは分岐している。また、好ましくは、この流動性の変性されたポリマーは実質的に均質的にカップリングされたものである。
【0089】
フリーラジカル捕捉種とフリーラジカル誘導種は、直接混練、直接含浸、および直接注入を含む種々の方法でポリマーと合体可能である。
【0090】
代替の実施形態においては、本発明は、流動性変性型ポリマーを製造するための方法である。この方法の第1の段階は、成分を混合することによりポリマー・マトリックス混合物を製造することである。この成分は、フリーラジカル分解性ポリマー、フリーラジカル誘導種、および少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種を含む。このフリーラジカル捕捉種はこの分解反応を実質的に抑制する。第2の段階においては、このポリマーはフリーラジカル捕捉種によりグラフトされる。
【0091】
この実施形態においては、この生成する流動性の変性されたポリマーの分子構造を制御することが可能である。そうするためには、この第1の段階においてこのフリーラジカル誘導種を添加する速度を(1)制御し、そして(2)続いてその添加を行うか、あるいはフリーラジカル捕捉種の添加と同時に行わなければならない(should (1) be controlled and (2) follows the addition or occur simultaneously with the addition of the free-radical trapping species)。好ましくは、フリーラジカル捕捉種の添加に続いてこのフリーラジカル誘導種を添加する(すなわち、第2の段階において添加し、グラフトを第3の段階で行う)。
【0092】
このフリーラジカル捕捉種にペンダントな安定なフリーラジカルを置き換えることが可能である。この目的で、フリーラジカル捕捉種はポリマー上に別々にグラフトされ、不活性雰囲気中でペンダントな安定なフリーラジカルを形成することができる。次に、このポリマー・マトリックスは、このポリマー、このペンダントな安定なフリーラジカル、およびフリーラジカル誘導種を含む。
【0093】
代替の実施形態においては、本発明は流動性変性型ポリマーを製造するための方法である。この方法の第1段階は、成分を混合することによりポリマー・マトリックス混合物を製造することである。この成分は、フリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマー、フリーラジカル誘導種、および少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種を含む。このフリーラジカル捕捉種はこの炭素−炭素架橋反応を実質的に抑制する。第2段階においては、このポリマーはフリーラジカル捕捉種によりグラフトされる。
【0094】
この実施形態においては、この生成する流動性の変性されたポリマーの分子構造を制御することが可能である。こうするためには、この第1段階においてこのフリーラジカル誘導種を添加する速度を(1)制御し、そして(2)続いてその添加を行うか、あるいはフリーラジカル捕捉種の添加と同時に行わなければならない(should (1) be controlled and (2) follows the addition or occur simultaneously with the addition of the free-radical trapping species)。好ましくは、フリーラジカル捕捉種の添加に続いてフリーラジカル誘導種を添加する(すなわち、第2段階において添加し、グラフトを第3段階で行う)。
【0095】
このフリーラジカル捕捉種にペンダントな安定なフリーラジカルを置き換えることが可能である。その目的で、このフリーラジカル捕捉種はこのポリマー上に別々にグラフトされ、不活性雰囲気中でペンダントな安定なフリーラジカルを形成することができる。次に、このポリマー・マトリックスは、このポリマー、このペンダントな安定なフリーラジカル、およびフリーラジカル誘導種を含む。
【0096】
好ましい実施形態においては、本発明は、流動性変性型ポリマー組成物から製造される製造物品である。いかなる数の方法もこの製造物品を製造するのに使用可能である。特に有用な方法は、射出成形、押し出し、圧縮成形、回転成形、加熱成形、ブロー成形、粉末被覆、バンバリーバッチミキサー、繊維紡糸、およびカレンダー掛けを含む。
【0097】
好適な製造物品は、電線・電纜絶縁物、電線・電纜半導性物品、電線・電纜被覆物およびジャケット、電纜付属品、靴底、多成分靴底(異なる密度およびタイプのポリマーを含む)、ウエザーストリップ、ガスケット、プロフィール、耐久消費財、剛性超延伸テープ、ランフラットタイヤ挿入物、建設パネル、複合体(例えば、木材複合体)、パイプ、フォーム、ブローフィルム、および繊維(バインダー繊維および弾性繊維を含む)を含む。
【0098】
フォーム製品は、例えば押し出された熱可塑性ポリマーフォーム、押し出されたポリマーストランドフォーム、発泡型熱可塑性フォームビーズ、発泡熱可塑性フォームビーズ、発泡および融解熱可塑性フォームビーズ、および種々のタイプの架橋フォームを含む。このフォーム製品は、任意の既知の物理的立体構造、例えばシート、円形物、ストランド形状、棒、中実厚板、積層厚板、融合ストランド厚板、プロフィール、およびバンストック(bun stock)をとり得る。
【0099】
本発明の流動性の変性されたプロピレンコポリマーから製造されるフォームは特に有用である。例は、この全プロピレンコポリマー材料基準で少なくとも50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位およびエチレン性不飽和コモノマーから誘導される単位を含み、0.5〜8g/10分の範囲のメルトフローレートおよび少なくとも5センチニュートンのメルト強度を有する流動性の変性されたプロピレンコポリマーを含んでなるフォームである。この例示されるフォームは800kg/m3以下の密度を更に有することができる。
【実施例】
【0100】
次の非限定的な実施例は本発明を例示する。
【0101】
比較例1〜2および実施例3
2つの比較例と本発明の1つの実施例を15重量パーセントのエチレン含量、2グラム/10分のメルトフローレート、および0.858グラム/立方センチメートルの密度を有するポリプロピレンエラストマーにより作製した。ASTM D−1238にしたがってこのメルトフローレートを230℃で測定した。
【0102】
ペルオキシドを除いて表Iに示す配合物の各々をブラベンダーミキサー中で調製して、40グラムの試料を110℃、3分間で作製した。引き続いて、ペルオキシドを添加した。この組成物を更に4分間混練した。
【0103】
PROSTAB(商標)5415 ビス(l−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート(「ビス−TEMPO」)はCiba Specialty Corporationから市販されているものであった。Dicup R(商標)有機ペルオキシドは、Geo Specialty Chemicalsから市販されているものであり、Luperox(商標)130 2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン有機ペルオキシドはAtofinaから市販されているものであった。
【0104】
ムービングダイレオメーター(MDR)を182℃で使用して、この反応動力学を調べた。この結果を表Iに示す。
【0105】
評価される各組成物に対して、MDRは時間に対するトルクのデータを生成した。182℃のセット温度に加えて、100サイクル/分の周波数および0.5度の円弧(arc)に対してMDRを設定した。この試験試料は約5グラムの重さがあり、これをマイラー(商標)シートの間に挟み、次に評価のためにMDRの中に入れた。最終使用用途と組成に依って、セット温度と評価時間を設定した。
【表1】

【0106】
このフリーラジカル捕捉種を含有する組成物は、このフリーラジカル捕捉種無しの組成物と比較して高いトルク値を生じた。この流動性変性型ポリマー組成物は、望ましくない度合いの鎖切断あるいは炭素−FRTS−炭素架橋を起こさずにトルク(粘度の尺度)の増加を有する流動性の変性されたポリマーを生成した。
【0107】
比較例4〜5および実施例6〜8
2つの比較例と3つの実施例を12重量パーセントのエチレン含量、8グラム/10分のメルトフローレート、および0.866グラム/立方センチメートルの密度を有する実験グレードのプロピレン−エチレンコポリマーにより作製した。この配合物を表IIに示す。
【0108】
PROSTAB(商標)5415 ビス−TEMPOはCiba Specialty Corporationから市販されているものであった。Dicup R(商標)有機ペルオキシドはHercules,Inc.から市販されているものであった。
【0109】
最初に、このポリマー材料をブラベンダーミキサー中に添加して、40グラムの試料を作製し、溶解し、均質性を得るために混合した(トルク曲線により示されるように)。次に、ペルオキシドとフリーラジカル捕捉種をこの溶融したポリマーに添加した。表IIに示すように所望のサイクルを完了するまで、この混合を継続した。また、表IIはこの混合段階が不活性ガス被覆下で終結されたかどうかを示す。
【0110】
この種々の組成物をミキサーから取り出し、そしてシートにプレスした。固化後、メルトフローレートを測定(230℃、2.16kg)するために、この組成物を顆粒形に切断した。
【表2】

【0111】
比較例9〜10および実施例11
2つの比較例と本発明の実施例を2.3グラム/10分のメルトフローレート、および0.900グラム/立方センチメートルの密度を有する粉末耐衝撃性プロピレンコポリマー(powder impact propylene copolymer)により作製した。ASTM D−1238にしたがってこのメルトフローレートを230℃で測定した。
【0112】
1000ppmのIrganox1330 1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン酸化防止剤および70ppmのステアリン酸カルシウムの安定化パッケージを配合した場合、この耐衝撃性プロピレンコポリマー配合物は1.6グラム/10分のメルトフローレートを有していた。
【0113】
ミキサーから取り出された加工試料に対しては、メルトフローレート測定時に安定化添加物を添加しなかった。この配合物を表IIIに示す。
【0114】
最初に、このポリマー材料をブラベンダーミキサー中に添加して、40グラムの試料を作製し、溶解し、均質性を得るために混合した(トルク曲線により示されるように)。次に、ペルオキシドとフリーラジカル捕捉種をこの溶解したポリマーに添加した。表IIIに示すように所望のサイクルを完了するまで、この混合を継続した。また、表IIIはこの混合段階が不活性ガス被覆下で終結されたかどうかを示す。
【0115】
この種々の組成物をミキサーから取り出し、そしてシートにプレスした。固化後、メルトフローレートを測定(230℃、2.16kg)するために、この組成物を顆粒形に切断した。
【0116】
このポリプロピレンはThe Dow Chemical CompanyからC104−01耐衝撃性プロピレンコポリマーとして市販されているものであった。PROSTAB(商標)5415 ビス−TEMPOはCiba Specialty Corporationから市販されているものであった。Dicup R(商標)有機ペルオキシドはHercules,Inc.から市販されているものであった。
【表3】

【0117】
比較例12および13および実施例14〜16
2つの比較例と本発明の3つの実施例を1.05グラム/10分のメルトフローレート、および0.900グラム/立方センチメートルの密度を有する粉末耐衝撃性プロピレンコポリマー、1000ppmのIrganox 1330 1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン酸化防止剤および70ppmのステアリン酸カルシウムにより作製した。ASTM D−1238にしたがってこのメルトフローレートを230℃で測定した。
【0118】
比較例13に対しては、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルアジド)CAS#[7456−68−0](「BSA」)をベースポリマー樹脂と予備ブレンドした。実施例14〜16に対しては、このポリマーをLuperox(商標)130 有機ペルオキシドおよびPROSTAB(商標)5415 ビス−TEMPOと予備ブレンドし、次に約1時間含浸させて、このペルオキシドを吸収させた。
【0119】
すべての例示された配合物を2軸押し出し機(Coperion Corporationより入手可能なZSK−30)による連続混合工程により作製し、評価材料とした。窒素被覆下で、この押し出し機は20ポンド/時の製造速度および190〜200℃の範囲の押し出しメルト排出温度と共に200rpmの速度を使用した。押し出し後、この材料をペレット化した。
【0120】
この材料をメルトフローレート、メルト強度、ゲル測定、動的振動剪断粘度、および鎖分岐について解析した。この材料をフィルムダイから押し出し、オプティカルカウンターシステム(OCS)からのフィルムスキャニングシステム(FS−3)を用いて、このゲルを測定した。平行板構成(parallel plate geometry)のワイゼンベルグレオゴニオメーターを用いて、動的振動剪断粘度を求め、200℃および2パーセント歪で測定した。
【0121】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(「GPC」)分析を用いて、固有粘度および分子量(すなわち、鎖分岐)を求めた。GPC分析には、3つの直線混合床カラム(linear mixed bed columns)、300×7.5mm(Polymer Laboratories PLgel Mixed B(10ミクロン粒子サイズ))を設けたLaboratories PL−GPC−220高温クロマトグラフユニットを使用する。オーブン温度は160℃であり、オートサンプラー高温域は160℃であり、中温域は145℃である。この溶剤は200ppmの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを含有する1,2,4−トリクロロベンゼンである。この流量は1.0ミリリットル/分であり、注入サイズは100マイクロリットルである。200ppmの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを含有する窒素掃気した1,2,4−トリクロロベンゼン中にこの試料を穏やかに混合しながら160℃、2.5時間で溶解することにより、この試料の0.15重量%の溶液を注入用に作製する。
【0122】
添加物の量、メルトフローレート、メルト強度、およびゲル測定を表IVに示す。振動剪断粘度測定を表Vに示す。
【表4】

【表5】

【0123】
比較例12は約15.5の低/高・剪断粘度比を有していた。比較例13は約20.6の低/高・剪断粘度比を有していた。実施例14は約20.4の低/高・剪断粘度比を有していた。
【0124】
比較例17および実施例18および19
1つの比較例と2つの実施例を12重量パーセントのエチレンコモノマー含量、2.0グラム/10分のメルトフローレート、および0.867グラム/立方センチメートルの密度を有する実験グレードのプロピレン−エチレンコポリマーにより作製した。ASTM D−1238にしたがってこのメルトフローレートを230℃で測定した。
【0125】
実施例18および19に対しては、このポリマーをLuperox(商標)130 有機ペルオキシドおよびPROSTAB(商標)5415 ビス−TEMPOと予備ブレンドし、次に約1時間含浸させて、このペルオキシドを吸収させた。
【0126】
すべての例示された配合物を2軸押し出し機(Coperion Corporationより入手可能なZSK−30)による連続混合工程により作製し、評価材料とした。窒素被覆下で、この押し出し機は10〜15ポンド/時の製造速度および210〜217℃の範囲の押し出しメルト排出温度と共に200rpmの速度を使用した。押し出し後、この材料をペレット化した。
【0127】
この材料をメルトフローレートおよび動的振動剪断粘度について解析した。平行板構成のワイゼンベルグレオゴニオメーターを用いて、動的振動剪断粘度を求め、200℃および2パーセント歪で測定した。添加物の量、メルトフローレート、および振動剪断粘度測定を表VIに示す。
【表6】

【0128】
比較例17は約6.26の低/高・剪断粘度比を有していた。実施例18は約25.9の低/高・剪断粘度比を有していた。実施例19は約52.3の低/高・剪断粘度比を有していた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フリーラジカル分解性ポリマー、
(b)フリーラジカル誘導種、および
(c)少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種
を含んでなり、
(A1)このフリーラジカル捕捉種が(i)このフリーラジカル誘導種の存在下でこのポリマーの分解を実質的に抑制し、(ii)このポリマーがフリーラジカルを形成した後、捕捉部位において、このポリマー上にグラフト可能なものであり、
(A2)この流動性変性型ポリマー組成物がメルト加工可能な流動性の変性されたポリマーを生成する流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項2】
この分解が鎖切断により起こる、請求項1に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項3】
このポリマーがハロゲン化され、この分解が脱ハロゲン化水素化により起こる、請求項1に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項4】
この生成する流動性の変性されたポリマーが分岐している、請求項1に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項5】
この流動性の変性されたポリマーの分岐がMark−Houwinkプロットにより実証可能である、請求項4に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項6】
この生成する流動性の変性されたポリマーがキシレン抽出(ASTM2765)により測定して、約10重量パーセント未満のゲル含量を有する、請求項1に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項7】
この生成する流動性の変性されたポリマーがキシレン抽出(ASTM2765)により測定して、ベースポリマーのゲル含量よりも約5絶対重量パーセント未満大きいゲル含量を有する、請求項1に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項8】
このポリマーがブチルゴム、ポリアクリレートゴム、ポリイソブテン、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、ビニル芳香族モノマーのポリマー、ビニルクロリドポリマー、およびこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項9】
このフリーラジカル誘導種が有機ペルオキシド、アゾフリーラジカル開始剤、ビクメン、酸素、および空気である、請求項1に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項10】
このフリーラジカル捕捉種がヒンダードアミンから誘導されるフリーラジカル捕捉種である、請求項1に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項11】
このヒンダードアミンから誘導されるフリーラジカル捕捉種が2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシおよびその誘導体の少なくとも2つの官能基を有する多官能基分子からなる群から選択される、請求項10に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項12】
このヒンダードアミンから誘導されるフリーラジカル捕捉種がオキソ−TEMPO、ヒドロキシ−TEMPO、ヒドロキシ−TEMPOのエステル、ポリマーと結合したTEMPO、PROXYL、DOXYL、ジ−tert−ブチルNオキシル、ジメチルジフェニルピロリジン−1−オキシル、4−ホスホノオキシTEMPO、またはTEMPOとの金属錯体から誘導される少なくとも2つのニトロキシ基を有する、請求項11に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項13】
(a)剪断エネルギー、熱または輻射線を受けた場合にフリーラジカルの形成能を有するフリーラジカル分解性ポリマー、および
(b)少なくとも2つの捕捉部位を有し、このフリーラジカル捕捉種が(i)このポリマーが剪断エネルギー、熱、または輻射線を受けた場合、このポリマーの分解を実質的に抑制し、(ii)このポリマーがフリーラジカルを形成した後、捕捉部位において、このポリマー上にグラフト可能であるフリーラジカル捕捉種
を含んでなる流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項14】
(a)フリーラジカル分解性ポリマーおよび
(b)フリーラジカル誘導種、および
(c)フリーラジカルで開始される炭素−FRTS−炭素カップリング結合によりこのポリマーにグラフト可能なフリーラジカル捕捉種
を含んでなり、この生成する流動性の変性されたポリマーがこのポリマーのカップリング温度、100サイクル/分の周波数、および0.5度の円弧においてムービングダイレオメーターで測定して
最大トルク<1.30*最小トルク
を有する流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項15】
(a)フリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマー、
(b)フリーラジカル誘導種、および
(c)少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種
を含んでなり、
(A1)このフリーラジカル捕捉種が(i)このフリーラジカル誘導種の存在下でこのポリマーの炭素−炭素架橋を実質的に抑制し、(ii)この第1のポリマーがフリーラジカルを形成した後、捕捉部位において、この第1のポリマー上にグラフト可能なものであり、
(A2)この流動性変性型ポリマー組成物がメルト加工可能な流動性の変性されたポリマーを生成する
流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項16】
この生成する流動性の変性されたポリマーが分岐している、請求項15に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項17】
この流動性の変性されたポリマーの分岐がMark−Houwinkプロットにより実証可能である、請求項16に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項18】
この生成する流動性の変性されたポリマーがキシレン抽出(ASTM2765)により測定して、約10重量パーセント未満のゲル含量を有する、請求項15に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項19】
この生成する流動性の変性されたポリマーがキシレン抽出(ASTM2765)により測定して、ベースポリマーのゲル含量よりも約5絶対重量パーセント未満大きいゲル含量を有する、請求項15に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項20】
このポリマーがアクリロニトリルブタジエンスチレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン酸化ポリエチレンゴム、エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、エチレン/ジエンコポリマー、エチレンホモポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/スチレンインターポリマー、エチレン/不飽和エステルコポリマー、フルオロポリマー、ハロゲン化ポリエチレン、水素化ニトリルブタジエンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、およびこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項15に記載の流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項21】
(a)剪断エネルギー、熱または輻射線を受けた場合にフリーラジカルの形成能を有するフリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマー、および
(b)少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種
を含んでなり、このフリーラジカル捕捉種が(i)このポリマーが剪断エネルギー、熱または輻射線を受けた場合、このポリマーの炭素−炭素架橋を実質的に抑制し、(ii)このポリマーがフリーラジカルを形成した後、捕捉部位において、このポリマー上にグラフト可能なものである
流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項22】
(a)フリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマーおよび
(b)フリーラジカル誘導種、および
(c)フリーラジカルで開始される炭素−FRTS−炭素カップリング結合によりこのポリマーにグラフト可能なフリーラジカル捕捉種
を含んでなり、この生成する流動性の変性されたポリマーがこのポリマーのカップリング温度、100サイクル/分の周波数、および0.5度の円弧においてムービングダイレオメーターで測定して、
最大トルク<1.30*最小トルク
を有する流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項23】
(a)フリーラジカル分解性ポリマーおよびフリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマーからなる群から選択されるポリマー、および
(b)ペンダントな安定なフリーラジカル
を含んでなる流動性変性型ポリマー組成物。
【請求項24】
ペンダントな安定なフリーラジカルに結合したフリーラジカル分解性ポリマーを含んでなる流動性の変性されたポリマー。
【請求項25】
ペンダントな安定フリーラジカルに結合したフリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマーを含んでなる流動性の変性されたポリマー。
【請求項26】
(a)フリーラジカル分解性ポリマーおよび
(b)フリーラジカルで開始される炭素−FRTS−炭素カップリング結合によりこのポリマーにグラフトされたフリーラジカル捕捉種
を含んでなる流動性の変性されたポリマー。
【請求項27】
(a)フリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマーおよび
(b)フリーラジカルで開始される炭素−FRTS−炭素カップリング結合によりこのポリマーにグラフトされたフリーラジカル捕捉種
を含んでなる流動性の変性されたポリマー。
【請求項28】
(a)(1)フリーラジカル分解性ポリマー、
(2)フリーラジカル誘導種、および
(3)少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種
を混和することによりポリマー・マトリックス混合物を製造し、ここで、このフリーラジカル捕捉種が(i)このポリマーの分解を実質的に抑制し、(ii)このポリマーがフリーラジカルを形成した後、捕捉部位において、このポリマー上にグラフト可能のものであり、
(b)このフリーラジカル捕捉種をこのポリマーにグラフトして、流動性の変性されたポリマーを形成する
段階を含んでなる流動性の変性されたポリマーを製造する方法。
【請求項29】
(a)(1)フリーラジカル分解性ポリマーおよび
(2)少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種
を混和することによりポリマー・マトリックス混合物を製造し、ここで、このフリーラジカル捕捉種が(i)このポリマーの分解を実質的に抑制し、(ii)このポリマーがフリーラジカルを形成した後、捕捉部位において、このポリマー上にグラフト可能のものであり、
(b)このポリマーへのフリーラジカル捕捉種のグラフトとこの流動性の変性されたポリマーの生成する分子構造に対する制御を可能とさせるのに充分な速度でフリーラジカル誘導種を混和し、
(c)このポリマーがフリーラジカルを形成した後、このフリーラジカル捕捉種をこのポリマーにグラフトする
段階を含んでなる流動性の変性されたポリマーを製造する方法。
【請求項30】
(a)(1)フリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマー、
(2)フリーラジカル誘導種、および
(3)少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種
を混和することによりポリマー・マトリックス混合物を製造し、ここで、このフリーラジカル捕捉種が(i)このポリマーの炭素−炭素架橋を実質的に抑制し、(ii)このポリマーがフリーラジカルを形成した後、捕捉部位において、このポリマー上にグラフト可能なものであり、
(b)このフリーラジカル捕捉種をこのポリマーにグラフトして、流動性の変性されたポリマーを形成する
段階を含んでなる流動性の変性されたポリマーを製造する方法。
【請求項31】
(a)(1)フリーラジカル炭素−炭素架橋型ポリマー、および
(2)少なくとも2つの捕捉部位を有するフリーラジカル捕捉種
を混和することによりポリマー・マトリックス混合物を製造し、ここで、このフリーラジカル捕捉種が(i)このポリマーの炭素−炭素架橋を実質的に抑制し、(ii)このポリマーがフリーラジカルを形成した後、捕捉部位において、このポリマー上にグラフト可能なものであり、
(b)このポリマーへのフリーラジカル捕捉種のグラフトとこの流動性の変性されたポリマーの生成する分子構造に対する制御を可能とさせるのに充分な速度でフリーラジカル誘導種を混和し、
(c)このポリマーがフリーラジカルを形成した後、このフリーラジカル捕捉種をこのポリマーにグラフトする
段階を含んでなる流動性の変性されたポリマーを製造する方法。
【請求項32】
請求項28から31のいずれか一項に記載の方法から製造される製造物品。
【請求項33】
この物品が電線・電纜絶縁物、電線・電纜半導性物品、電線・電纜被覆物、電線・電纜ジャケット、電纜付属品、靴底、多成分靴底、ウエザーストリップ、ガスケット、プロフィール、耐久消費財、剛性超延伸テープ、ランフラットタイヤ挿入物、建設パネル、複合体、パイプ、フォーム、ブローフィルム、および繊維からなる群から選択されて製造される、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法から製造される製造物品。
【請求項34】
この全プロピレンコポリマー材料基準で少なくとも50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位およびエチレン性不飽和コモノマーから誘導される単位を含み、0.5〜8g/10分の範囲のメルトフローレートおよび少なくとも5cNのメルト強度を有する、流動性の変性されたプロピレンコポリマーを含んでなるフォーム。
【請求項35】
このフォームが800kg/m3以下の密度を有する、請求項34に記載のフォーム。


【公表番号】特表2007−517121(P2007−517121A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547381(P2006−547381)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/043355
【国際公開番号】WO2005/066282
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】