説明

ポリマーナノ複合材料

未処理フィロケイ酸塩、層剥離剤、膨潤剤及びポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体を含有するポリマーナノ複合材料が開示される。ポリマーナノ複合材料は、引張弾性率、低温延性及び溶融容積速度などの優れた性能特性を合わせもつ物品を製造するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、未処理フィロケイ酸塩、層剥離剤、膨潤剤及びポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体を含有するポリマーナノ複合材料に関する。本発明はまた、ポリマーナノ複合材料の製造方法及び使用方法に関し、またポリマーナノ複合材料は物品を製造するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
ナノ複合材料は、2以上の相からなり、1つの相が少なくとも1つの次元においてナノメートル粒度範囲にある、相互作用混合物として定義できる。ナノ粒度成分の存在が特異な性質を付与し、技術的なきっかけとなると考えられる。
【0003】
ポリマー及び無機材料からなるナノ複合材料は、ポリマーの特性が、普通の粒子充填複合材料から得られるレベルを超えて向上するので、多大な注目を集めている。層状マイカ型ケイ酸塩をポリアミドなどのポリマーマトリックス用の無機強化材として用いて、ポリマーマトリックス中に無機相がナノスケールで分散したポリマーナノ複合材料を生成している。しかし、ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体と無機クレイ(又はケイ酸塩)を含有するナノ複合材料の形成は、実施困難なプロセスである。それは、主としてクレイとポリカーボネート及び/又はポリオルガノシロキサン成分との相溶性がないためである。その結果、ポリカーボネート及び/又はポリオルガノシロキサンはクレイ層間に拡散できない。ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートと無機クレイとを溶融混合又は溶液混合する普通のアプローチでは、薄片状ナノ複合材料の形成につながらない。
【特許文献1】米国特許第5578672号明細書
【特許文献2】米国特許第6143859号明細書
【特許文献3】米国特許第6414069号明細書
【特許文献4】特開2003−105189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、ナノ複合材料が優れた性能特性、例えば引張弾性率と低温延性の組合せ、引張弾性率と溶融容積速度の組合せなどをもつように、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含有するポリマーナノ複合材料の組成を定め、製造することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、未処理フィロケイ酸塩、層剥離剤、膨潤剤及びポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体を含有するポリマーナノ複合材料を提供する。
【0006】
本発明の別の実施形態による物品は、1種以上の層剥離フィロケイ酸塩、低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー及びポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体を含有するポリマーナノ複合材料を含有し、前記物品が下記条件:ISO527法に準拠して測定した引張弾性率が、前記層剥離フィロケイ酸塩及び低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーを含有しないこと以外は同様の物品に対して、約105%以上である;ASTM D256法に準拠して11Jハンマーを用いて測定した延性破壊温度が、約−20℃以上である;ASTM D1238法に準拠して測定した溶融容積速度(メルトボリュームレート)が、前記層剥離フィロケイ酸塩及び低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーを含有しないこと以外は同様の成形物品に対して、約110%以上である、の1以上を満たす。
【0007】
本発明の他の実施形態によるポリマーナノ複合材料の製造方法は、未処理フィロケイ酸塩を第1溶剤中で有機オニウム塩、IV族有機金属化合物及びイミダゾリウム塩からなる群から選択される層剥離剤と接触させ、第1溶剤を蒸発させて層剥離フィロケイ酸塩を生成し、前記層剥離フィロケイ酸塩を第2溶剤中で膨潤剤と接触させてオルガノクレイ生成物を生成し、前記オルガノクレイ生成物をポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体を含む熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドしてポリマーナノ複合材料を生成する工程を含む。
【0008】
本発明は、本発明の種々の特徴及びその実施例についての以下の詳細な説明を読むことで、容易に理解できるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、広義には、未処理フィロケイ酸塩、層剥離剤、膨潤剤及びポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体を含有するポリマーナノ複合材料を提供する。本発明の目的に関連して、用語「未処理フィロケイ酸塩」は、層剥離剤を含有しないフィロケイ酸塩として定義される。層剥離剤を未処理フィロケイ酸塩に導入することにより得られる材料を、「層剥離(した)フィロケイ酸塩」と呼ぶ。層剥離フィロケイ酸塩に膨潤剤を添加して得られる材料を「オルガノクレイ組成物」と呼ぶ。
【0010】
ここで用いる用語「ヒドロカルビル」は芳香族基及び脂肪族基、例えばアルキル基を表示するものである。用語「アルキル」は、線状アルキル、枝分れアルキル、アラルキル、シクロアルキル及びビシクロアルキル基を表示するものである。芳香族基の適当な具体例としては、特に限定されないが、例えば置換及び非置換フェニル基が挙げられる。線状及び枝分れアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルが挙げられる。種々の実施形態において、シクロアルキル基は環炭素原子数約3〜約12のものである。このようなシクロアルキル基の具体例としては、特に限定されないが、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる。種々の実施形態において、アラルキル基は炭素原子数約7〜約14のものであり、その例としては、特に限定されないが、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル及びフェニルエチルが挙げられる。種々の実施形態において、芳香族基は環炭素原子数約6〜約12の単環又は多環部分を示すものである。これらのアリール基は、1個以上のハロゲン原子又はアルキル基が環炭素原子上に置換していてもよい。このような芳香族基の具体例としては、特に限定されないが、フェニル、ハロフェニル、ビフェニル及びナフチルが挙げられる。
【0011】
適当な未処理フィロケイ酸塩は、部分的には、酸素原子によりリンクされ、二次元平面で他の環により共有された四面体の環が存在することから、通常層(シート)状構造を有する。ナトリウムイオンのような陽イオンの層がシート状構造を連結する。陽イオンは弱く結合され、中性な分子、例えば水分子で囲まれている。未処理フィロケイ酸塩におけるケイ素対酸素比は通常約1:1から約2.5:1である。未処理フィロケイ酸塩の例としては、特に限定されないが、アポフィライト(魚眼石)、バンニステライト(bannisterite)、カーレトナイト(carletonite)、キャバンサイト(cavansite)及びクリソコラ(珪孔雀石);フィロケイ酸塩のクレイ群、デルハイエライト(delhayelite)、エルピダイト、フェドライト(fedorite)、フランクリンフルナセイト(franklinfurnaceite)、ゴニエライト(gonyerite)、ジロライト、リューコスフェナイト;フィロケイ酸塩のマイカ群、ミネヒライト(minehillite)、ノーダイト、ペンタゴナイト(pentagonite)、ペタル石、プレーナイト(葡萄石)、ローデサイト(rhodesite)、サンボルナイト(sanbornite);及びフィロケイ酸塩の蛇紋石群が挙げられる。フィロケイ酸塩のクレイ群の例としては、緑泥石クレイ、例えばバイリークロア(baileychlore)、シャモス石、普通種の緑泥石鉱物、クックアイト、ニマイト(nimite)、ペンナンタイト、ペンニン及びスドイテ(sudoite);海緑石(グローコナイト)、イライト、カオリナイト、モンモリロナイト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、ソーコナイト、タルク及びバーミキュライトがある。未処理フィロケイ酸塩のマイカ群の例としては、黒雲母(バイオタイト)、紅雲母(レピドライト)、白雲母(ムスコバイト)、ソーダ雲母(パラゴナイト)、フロゴパイト(phlogopite)及びチンワルド雲母がある。適当な蛇紋石フィロケイ酸塩には、ケイ酸塩四面体の層がケイ酸塩シート間に差し込まれた水酸化マグネシウムの層でシート状にリンクされた構造を有するものがある。蛇紋石フィロケイ酸塩の例としては、特に限定されないが、アンチゴライト((Mg,Fe)Si(OH)、単斜構造を有する);クリノクリソタイル(clinochrysotile、MgSi(OH)、単斜構造を有する);リザルダイト(lizardite、MgSi(OH)、三方晶又は六方晶構造を有する);オルトクリソタイル(MgSi(OH)、斜方晶構造を有する);及びパラクリソタイル((Mg,Fe)Si(OH)、斜方晶構造を有する)が挙げられる。オルガノクレイ組成物に特に適当な未処理フィロケイ酸塩の例としては、特に限定されないが、アレバルダイト、アメサイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、サポナイト、バイデライト、タルク、モンモリロナイト、スメクタイト、イライト、セピオライト、パリゴルスカイト、白雲母、ノントロナイト、スチーブンサイト、ベントナイト、マイカ、バーミキュライト、フルオロバーミキュライト、ハロイサイト、蛇紋石クレイ及びフッ素含有合成タルク種から選択される1種以上の未処理フィロケイ酸塩が挙げられる。市販のフィロケイ酸塩の例として、Southern Clay Products社から市販されているCLOISITE(登録商標)30Bがある。
【0012】
未処理フィロケイ酸塩は通常、Na、Ca2+、K、Mg2+などの交換可能な陽イオンの中間層を有する。中間層凝集エネルギーは比較的強く、したがってフィロケイ酸塩層間に有機ポリマー分子が入り込むのを許さない。適当な層剥離剤は、この層間距離を広げ、ポリマー分子が入り込むのを容易にする。層剥離剤は、フィロケイ酸塩中間層を膨張剤及び/又はポリマー分子と相溶化する作用もなす。
【0013】
適当な層剥離剤は、有機オニウム塩、イミダゾリウム塩及びIV族有機金属化合物からなる群から選択される。有機オニウム層剥離剤には、有機オニウム塩、例えば脂肪族、芳香族、又はアリール脂肪族アミン、ホスフィン及びスルフィド各々の一級、二級、三級及び四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム誘導体がある。適当な有機オニウム塩は、一般に次式(I)で表すことができる。
【0014】
{(R}X (I)
式中、Rは各々独立に水素又はヒドロカルビル基であり、Zは窒素、リン又は酸素であり、fはZの原子価を表す整数であり、Rは有機基で、Xは一価陰イオンである。Xの適当な例としては、塩素、臭素、フッ素、酢酸イオンなどがある。
【0015】
式(I)の有機ホスホニウム、有機アンモニウム及び有機スルホニウム塩は、それぞれ対応するホスフィン、アミン及びスルフィドから、当業界で周知の方法で製造することができる。Rの例としては、特に限定されないが、置換及び非置換アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール及びアラルキル基が挙げられる。R基は同じでも異なってもよい。有機基Rの例としては、特に限定されないが、置換及び非置換アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール及びアラルキル基が挙げられる。Rが置換アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール及びアラルキル基である場合、置換基は、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、アジド、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アルキル、アリールオキシ、アラルキルアミノ、アルカリールアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アルキルシラン及び次式(II)及び(III)の基からなる群から選択される。
【0016】
【化1】

(式中、Rは、水素、アルキル及びアリールからなる群から選択され、qは1以上の整数であり、Rはアルキル、シクロアルキル又はアリールであり、Yは酸素又はNRであり、Rは水素、アルキル、アリール及びアルキルシランからなる群から選択される。)R基の具体例としては、特に限定されないが、水素、アルキル基、例えばメチル、エチル、オクチル、ノニル、tert−ブチル、ネオペンチル、イソプロピル、sec−ブチル、ドデシルなど;アルケニル基、例えば1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニルなど;アルコキシ基、例えばプロポキシ、ブトキシ、メトキシ、イソプロポキシ、ペンチルオキシ、ノニルオキシ、エトキシ、オクチルオキシなど;シクロアルケニル基、例えばシクロヘキセニル、シクロペンテニルなど;アルカノイルアルキル基、例えばブタノイルオクタデシル、ペンタノイルノナデシル、オクタノイルペンタデシル、エタノイルウンデシル、プロパノイルヘキサデシルなど;アミノ;(アルキルアミノ)アルキル基、例えばメチルアミノオクタデシル、エチルアミノペンタデシル、ブチルアミノナノデシルなど;ジアルキルアミノアルキル基、例えばジメチルアミノオクタデシル、メチルエチルアミノナノデシルなど;(アリールアミノ)アルキル基、例えば(フェニルアミノ)オクタデシル、(p−メチルフェニルアミノ)ノナデシルなど;(ジアリールアミノ)アルキル基、例えば(ジフェニルアミノ)ペンタデシル、(p−ニトロフェニル−p′−メチルフェニルアミノ)オクタデシルなど;並びに(アルカリールアミノ)アルキル基、例えば(2−フェニル−4−メチルアミノ)ペンタデシルなどが挙げられる。Rの硫黄含有基の例としては、特に限定されないが、(ブチルチオ)オクタデシル、(ネオペンチルチオ)ペンタデシル、(メチルスルフィニル)ノナデシル、(ベンジルスルフィニル)ペンタデシル、(フェニルスルフィニル)オクタデシル、(プロピルチオ)オクタデシル、(オクチルチオ)ペンタデシル、(ノニルスルホニル)ノナデシル、(オクチルスルホニル)ヘキサデシル、(メチルチオ)ノナデシル、(イソプロピルチオ)オクタデシル、(フェニルスルホニル)ペンタデシル、(メチルスルホニル)ノナデシル、(ノニルチオ)ペンタデシル、(フェニルチオ)オクタデシル、(エチルチオ)ノナデシル、(ベンジルチオ)ウンデシル、(フェネチルチオ)ペンタデシル、(sec−ブチルチオ)オクタデシル、(ナフチルチオ)ウンデシルなどが挙げられる。R基の他の例としては、特に限定されないが、(アルコキシカルボニル)アルキル基、例えば(メトキシカルボニル)エチル、(エトキシカルボニル)エチル、(ブトキシカルボニル)メチルなど;シクロアルキル基、例えばシクロヘキシル、シクロペンチル、シクロオクチル、シクロヘプチルなど;アルコキシアルキル基、例えばメトキシメチル、エトキシメチル、ブトキシメチル、プロポキシエチル、ペントキシブチルなど;アリーロキシアルキル及びアリーロキシアリール基、例えばフェノキシフェニル、フェノキシメチルなど;アリーロキシアルキル基、例えばフェノキシデシル及びフェノキシオクチル;アリールアルキル基、例えばベンジル、フェネチル、8−フェニルオクチル及び10−フェニルデシル;アルキルアリール基、例えば3−デシルフェニル、4−オクチルフェニル及び4−ノニルフェニルが挙げられる。Rで表される式(II)及び(III)の基の例としては、特に限定されないが、置換及び非置換ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、並びにポリエチレンアミン、ポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンが挙げられる。有機ホスホニウム塩、有機アンモニウム塩及び有機スルホニウム塩からなる群から選択される2種以上の化合物を含む混合物も使用できる。
【0017】
置換及び非置換イミダゾリウム塩も有効な層剥離剤として作用しうる。イミダゾリウム塩は、例えば一般式(IV)で表される。
【0018】
【化2】

式中、R、R及びRは各々独立に水素及びC−C20アルキル基からなる群から選択され、Xは一価陰イオンである。一価陰イオンの例としては、ハロゲン陰イオン、例えば塩素、臭素及びフッ素イオン;テトラフルオロボーレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(N(SOCF)などがある。イミダゾリウム塩の具体例としては、特に限定されないが、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムクロリド、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムクロリド、1,2−ジメチル−3−デシルイミダゾリウムクロリド、1,2−ジメチル−3−ヘキサデシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−エイコシルイミダゾリウムブロミド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムテトラフルオロボーレート、1,2−ジメチル−3−ヘキサデシルイミダゾリウムテトラフルオロボーレート、1,2−ジメチル−3−エイコシルイミダゾリウムテトラフルオロボーレート、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1,2−ジメチル−3−デシルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート及び1,2−ジメチル−3−ヘキサデシルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。代表的には、イミダゾリウムテトラフルオロボーレート及びヘキサフルオロホスフェート塩の方が、対応するハライド塩より熱安定性が高い(前者の分解開始温度が約375℃〜約425℃の範囲にあるのに対し、後者の分解開始温度が通常約2225℃〜約275℃の範囲にある)。
【0019】
有機ホスホニウム塩及びイミダゾリウム塩は、通常有機アンモニウム塩及び有機ホスホニウム塩塩より熱安定性が高い点で、有利である。
【0020】
IV族有機金属化合物層剥離剤は式(V)で表される。
【0021】
(RM(R10O)4−n (V)
式中、Mはケイ素、チタン及びジルコニウムから選択される第IV族元素であり、R及びR10は各々独立に有機基を示し、nは0〜約2の値を有する。用語「有機基」は、炭素及び水素を含有するあらゆる種類の有機基、そしてさらにヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、アルミニウムなどを含有する有機基を包含する。一実施形態では、第IV族元素はケイ素、チタン及びジルコニウムからなる群から選択される。式(V)を満たす有機ゲルマニウム及び有機錫化合物も使用できる。このような有機金属化合物は当業界で周知の種々の方法で製造できる。膨大な一群のこの種の有機金属化合物が当業界で公知である。式(V)の有機ケイ素化合物の例としては、特に限定されないが、対称及び非対称な置換テトラアルキルオルトシリケート、テトラアルキルオルトチタネート、及びテトラアルキルオルトジルコネートが挙げられる。オルトシリケート群の化合物の例としては、特に限定されないが、テトラエチルオルトシリケート、テトラ(n−プロピル)オルトシリケート、テトライソプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、テトラキス(ジメチルシリル)オルトシリケート、テトラフェニルオルトシリケート、テトラエチルオルトチタネート、テトラメチルオルトチタネート、テトライソプロピルオルトチタネート、トリメチルアルミネート、トリエチルアルミネート、トリ(n−プロピル)アルミネート、トリ(イソプロピル)アルミネート、トリ(n−ブチル)アルミネート、トリ(sec−ブチル)アルミネート、トリ(tert−ブチル)アルミネート、テトラメチルジルコネート、テトラエチルジルコネート及びテトラプロピルジルコネートが挙げられる。別の実施形態では、テトラアルキルオルトシリケート、テトラアルキルオルトチタネート及びテトラアルキルオルトジルコネートは、ヒドロキシ基などの他の官能基を有していてもよく、その例としては、テトラキス(2−ヒドロキシエチル)オルトシリケート、テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)オルトシリケートなどがある。このような化合物の2種以上の混合物も使用できる。実施形態によっては、有機基R及び/又はR10がシロキサン部分を含有する。
【0022】
他の適当なIV族有機金属化合物には、オリゴマー状及びポリマー状ポリアルコキシシロキサン化合物、例えば線状、枝分れ及びハイパーブランチポリアルコキシシロキサン化合物がある。ハイパーブランチポリアルコキシシロキサンは、例えば、テトラアルコキシシランの制御された部分加水分解によって、簡単に製造できる。(オルガニル)トリアルコキシシランの制御された加水分解によっても、適当な層剥離剤として使用できる広い範囲のポリ(オルガニル)アルコキシシラン化合物が得られる。使用できるIV族有機金属化合物の他の例としては、特に限定されないが、オルガノ(トリアルコキシ)シラン及びジオルガノ(ジアルコキシ)シラン化合物が挙げられる。オルガノ(トリアルコキシ)シラン化合物の例としては、特に限定されないが、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランが挙げられる。ケイ素及びチタンのアルコキシ金属化合物が好ましい。これらは、当業界で周知の方法で簡単に製造でき、また、例えばDuPont社から市販のTYZORシリーズのチタンアルコキシ化合物などとして市販されているからである。
【0023】
本発明のポリマーナノ複合材料はさらに、未処理フィロケイ酸塩とのインターカレーション(層間挿入)及び/又はエクスフォリエーション(層状剥離)のための膨潤剤を含有する。未処理フィロケイ酸塩において、層間距離(即ち、各層からなる個別のシート状構造間の距離)は通常約4〜約10nm、場合によっては約10〜約15nmである。しかし、未処理フィロケイ酸塩を層剥離剤、例えば有機オニウム塩又はIV族有機金属化合物で処理すると、層間距離がさらに広がる。例えば、未処理フィロケイ酸塩を層剥離剤としてのテトラオルガノアンモニウム塩で処理すると、層剥離フィロケイ酸塩となり、ここでの層間距離は約15〜約20nmに広がる。層剥離フィロケイ酸塩をさらに膨潤剤で処理すると、膨潤剤がフィロケイ酸塩層間に取り込まれ、ここでシート状層はさらに約30〜約40nmに離される。
【0024】
一実施形態では、膨潤剤は、エポキシ化合物、低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー、オリゴマー状ポリエステル、オリゴマー状ポリアミド、オリゴマー状ポリエーテル、オリゴマー状ポリエステルアミド、オリゴマー状ポリエーテルイミド、オリゴマー状ポリイミド、オリゴマー状ポリエステルカーボネート、オリゴマー状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体、及びフェノール系レゾールからなる群から選択される1種以上の化合物である。本発明の目的には、「オリゴマー」は、対応する単量体又はコモノマーから誘導される繰返し単位を約3〜約15有する化合物を示す。例えば、オリゴマー状ポリエステルは、ポリエステル繰返し単位を約3〜約15有する材料を示す。低重量平均分子量ポリカーボネートは、カーボネートエステル及び芳香族ビスフェノールから誘導される繰返し単位を約3〜約15有するポリカーボネートを示す。低重量平均分子量ポリカーボネートオリゴマー及びエポキシ化合物は、低コストでかつ入手しやすいので、特に有効な膨潤剤である。低分子量ポリカーボネートは、重量平均分子量が、一実施形態では約20000ダルトン未満、別の実施形態では約2000〜約15000ダルトン、他の実施形態では約3000〜約8000ダルトンであるのが好ましい。
【0025】
本明細書で記載する分子量はすべて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準に対して測定した値である。
【0026】
低重量平均分子量ポリカーボネートは、1種以上の芳香族ビスフェノール、1種以上の脂肪族ジオール、又は1種以上の芳香族ビスフェノールと1種以上の脂肪族ジオールとの組合せから誘導される。別の実施形態では、低重量平均分子量ポリカーボネートは、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、C1−3アルキル置換レゾルシノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン及びこれらの組合せ、並びに上記ビスフェノール化合物の1種以上を含有する組合せからなる群から選択された1種以上のビスフェノール化合物から誘導されるものである。
【0027】
別の実施形態では、低重量平均分子量ポリカーボネートとして、硬質な脂肪族ジオール、例えば1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール(「イソソルビド」(isosorbide)と言うこともある)を単量体もしくはコモノマーとして用いて製造したポリカーボネートも挙げられる。イソソルビドはヘキサヒドロ−フラン−(3,2−b)−フラン−3,6−ジオールの一族に属する。このような硬質な脂肪族ジオールの他の例としては、特に限定されないが、1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール及び1,4;3,6−ジアンヒドロ−L−イジトールが挙げられる。これらのオリゴマー状ポリカーボネートは、界面重合や溶融重合法などの方法で製造できる。
【0028】
重量平均分子量約3000〜約8000ダルトンのビスフェノールAホモポリカーボネートは、ポリマーナノ複合材料及びその成型物品を製造するのに特に有効な膨潤剤である。
【0029】
低重量平均分子量ポリカーボネートオリゴマーは、当業界で周知の方法で製造でき、例えば界面重縮合法を用いる芳香族ビスフェノール化合物とホスゲンとの反応;芳香族ビスフェノール誘導ビスクロロホルメートと芳香族ビスフェノールもしくは脂肪族ジオールとの、又は脂肪族ジオール誘導ビスクロロホルメートと脂肪族もしくは芳香族ビスフェノールとの重縮合(例えばビスフェノールAビスクロロホルメートとビスフェノールAとの反応);適当な重縮合触媒の存在下でのジアリールカーボネートと芳香族ビスフェノールとの溶融重縮合などにより製造できる。さらに、上記方法で製造したポリカーボネートはヒドロキシ、アリーロキシ又はクロロホルメート末端基を有していてもよい。特定の実施形態では、芳香族ビスフェノールと電子求引性基を有する活性ジアリールカーボネート、例えばビス(メチルサリチル)カーボネートとの溶融重縮合で製造したポリカーボネートオリゴマーを膨潤剤として用いることができる。
【0030】
広い範囲のエポキシ化合物も有効な膨潤剤として作用する。エポキシ化合物は単量体分子であっても、1以上のエポキシ基を有するオリゴマーであっても、1以上のエポキシ基を有するポリマーであってもよい。エポキシ化合物は、当業界で周知の種々の方法を用いて容易に製造できる。例えば、エピクロロヒドリンを種々の脂肪族及び芳香族モノ及びポリヒドロキシ化合物と反応させて、対応するグリシジルエーテル誘導体を形成することができる。適当なエポキシ化合物の例としては、特に限定されないが、グリシドール(1,2−エポキシ−3−プロパノール)、ビスフェノールA(Shell Chemical社から入手可能)、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチル−ジフェニルプロパン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどの二価フェノールのジグリシジルエーテル;グリシジル末端封鎖ポリ(ビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン)オリゴマー、例えば数平均分子量約300〜約6100ダルトンのもの;ポリ[(o−クレジルグリシジルエーテル)−コ−ホルムアルデヒド]オリゴマー、例えば数平均分子量約500〜約1500ダルトンのもの;ジグリシジルエーテル末端ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ[ジメチルシロキサン−コ−[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]メチルシロキサン]、ポリ(エチレン−コ−グリシジルメタクリレート)、ポリ(エチレン−コ−メチルアクリレート−コ−グリシジルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、例えばイソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテルなど;ノボラック樹脂のグリシジルエーテル、脂肪族及び芳香族モノ及びポリカルボン酸のグリシジルエステル、例えばヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;フタル酸グリシジルエステル、トリデシル酢酸グリシジルエステル(別名「バーサト酸」(Versatic acid)、Resolution Performance Products社からCARDURAグリシジルエステルE10Pという登録商標で市販)など;グリシジルエーテル、例えばα−ナフチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、テトラグリシジル−4′,4″−ジアミノジフェニルメタン(Ciba Specialty Chemicals社から市販)、トリグリシジルグリセロールなど;並びに他の官能基を有するグリシジルエーテル、例えばトリグリシジルイソシアヌレート及びN,N′−ビス[(3−グリシジルオキシ)フェニル]ピロメリトイミドなどの化合物が挙げられる。
【0031】
上述の膨潤剤は、他の材料、例えばオリゴマー状ポリ(オレフィン−コ−無水マレイン酸)及びオリゴマー状(オレフィン−コ−マレイミド)、具体的にはポリ(プロピレン−コ−無水マレイン酸)、ポリ(プロピレン−コ−マレイミド)などと併用することもできる。
【0032】
オルガノクレイ組成物は、所望に応じて、溶剤を含有する。一実施形態では、溶剤は芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素又はハロゲン化炭化水素を含む。具体的には、溶剤は、容易に入手でき安価な溶剤であることから、トルエン、キシレン(異性体のo−、m−及びp−キシレンの任意の組合せ)、ジクロロメタン及びジクロロエタンからなる群から選択される。さらに、これらの溶剤は、オルガノクレイ組成物に存在する場合、加熱により簡単に除去でき、その際真空をかけてもかけなくてもよい。
【0033】
上述のオルガノクレイ組成物を製造するには、好ましくは、未処理フィロケイ酸塩を第1溶剤中で有機オニウム塩、イミダゾリウム塩及びIV族有機金属化合物からなる群から選択される層剥離剤と接触させ、第1溶剤を蒸発させて層剥離フィロケイ酸塩を生成し、前記層剥離フィロケイ酸塩を、所望に応じて第2溶剤中で、膨潤剤と接触させて第1生成物を生成し、(存在する場合)第2溶剤を第1生成物から蒸発させてオルガノクレイ組成物を生成する。場合によっては、未処理フィロケイ酸塩を、第1溶剤を用いずに、層剥離剤で直接処理することができる。第1溶剤及び任意の第2溶剤は、各々独立に、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素又はハロゲン化炭化水素を含有する。第2溶剤が任意であるのは次の理由による。場合によっては、第2溶剤とオルガノクレイ材料との組合せをポリマーマトリックスとの混合にそのまま使用できる。しかし、第2溶剤の存在が次の工程で望ましくない場合には、これを蒸発させてほぼ溶剤を含まないオルガノクレイ組成物を生成することができる。用語「ほぼ溶剤を含まない」は、オルガノクレイ組成物の第2溶剤含量がオルガノクレイ組成物の全重量に対して約2重量%未満であることを意味する。
【0034】
上述のオルガノクレイ組成物は、ポリマーナノ複合材料を製造するのに有用な材料である。ポリマーナノ複合材料は、前記オルガノクレイ生成物を1種以上のポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体、ランダム共重合体又はその混合物と混合することにより得られる。具体的には、ポリマーナノ複合材料の製造に、ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体を用いることができる。さらに、通常ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体、特にポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体を含有するポリマーナノ複合材料を種々の他の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー(マトリックスポリマーとみなすことができる)と混合して、種々の有用な熱硬化性ポリマーナノ複合材料又は熱可塑性ポリマーナノ複合材料を生成することができる。この目的に、任意の熱可塑性ポリマーを使用できる。マトリックスとなる熱可塑性ポリマーの例としては、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンエーテル、オレフィン系ニトリル−ジエン−アルケニル芳香族化合物共重合体、オレフィン系ニトリル−アルケニル芳香族化合物−アクリレート共重合体、ポリスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリオレフィン、及びこれらの熱可塑性ポリマーの組合せが挙げられる。使用できるポリカーボネートの例としては、特に限定されないが、芳香族ビスフェノール化合物、例えばビスフェノールAを単量体もしくはコモノマーとして用いて製造したホモポリカーボネート及びコポリカーボネートが挙げられる。
【0035】
前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体は、次式(VI)のポリオルガノシロキサンブロックを含有する。
【0036】
【化3】

式中、R11及びR12は各々独立に水素、ヒドロカルビル又はハロゲン置換ヒドロカルビルである。R11及びR12基が各々メチルであるのが好ましく、別の実施形態では、R11がメチル、R12がフェニル、α−メチルフェネチル、又はこれらの組合せである。
【0037】
別の実施形態では、前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体は、以下の式(VII)で表されるポリオルガノシロキサンブロックと式(VIII)で表されるポリカーボネートブロックとを含有するブロック共重合体である。
【0038】
【化4】

式中、R11及びR12は各々独立に水素、ヒドロカルビル又はハロゲン置換ヒドロカルビルであり、R13は水素、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ又はハロゲンであり、bは約10〜約120の整数である。
【0039】
【化5】

式中、Gは各々独立に芳香族基であり、Eはアルキレン、アルキリデン、脂環式基、含硫黄結合、含リン結合、エーテル結合、カルボニル基又は三級窒素基であり、R14は各々独立に水素又は一価炭化水素基であり、Yは各々独立に一価炭化水素基、アルケニル、アリル、ハロゲン、臭素、塩素及びニトロからなる群から選択され、mは0からG上の置換可能な部位の数までの整数であり、m′は0からE上の置換可能な部位の数までの整数であり、tは1以上の整数であり、sは0又は1であり、uは0を含む整数である。特定の実施形態では、R11及びR12基は各々メチルであり、別の実施形態では、R11がメチル、R12がフェニル、α−メチルフェネチル、又はこれらの組合せである。式(VIII)のカーボネートブロックに有用なビスフェノール化合物の好ましい例としては、特に限定されないが、ビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0040】
式(VI)及び(VII)に示すシロキサン単位には、種々の比較的短いブロック長さから比較的長いブロック長さまで使用できる。したがって、例えば、式(VII)の整数bは、一実施形態では約2〜約10の値とすることができ、別の実施形態では約2〜約5の値とすることができる。他の実施形態では、式(VII)の整数bは、一実施形態では約30〜約70の値とすることができ、別の実施形態では約40〜約55の値とすることができる。ブロック共重合体の重量平均分子量は、一実施形態では約20000〜約80000ダルトン、別の実施形態では約30000〜約60000ダルトンである。
【0041】
ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体の具体例は、次式(IX)で表され、シロキサンブロックはブロック共重合体の約5〜約10重量%を占める。
【0042】
【化6】

(式中、R13はメトキシ基で、cは約20〜約60の値、好ましくは約50である)。さらに式(IX)において、dは約2〜約3の値を有し、eは約170〜約180の値を有する。この共重合体の重量平均分子量は約57000ダルトンである。
【0043】
式(VIII)のポリカーボネートブロックを製造するのに用いるビスフェノール化合物の例としては、特に限定されないが、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、C1−3アルキル置換レゾルシノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン及びこれらの組合せ、並びに上述のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せが挙げられる。
【0044】
一実施形態において、ポリマーナノ複合材料は、1種以上のポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体と1種以上のマトリックスポリカーボネートポリマーを含有し、ここで1種以上のマトリックスポリカーボネートポリマーは式(X)の1種以上のビスフェノール化合物から誘導される構造単位を含む。
【0045】
【化7】

式中、Gは各々独立に芳香族基であり、Eはアルキレン、アルキリデン、脂環式基、含硫黄結合、含リン結合、エーテル結合、カルボニル基又は三級窒素基であり、R14は各々独立に水素又は一価炭化水素基であり、Yは各々独立に一価炭化水素基、アルケニル、アリル、ハロゲン、臭素、塩素及びニトロからなる群から選択され、mは0からG上の置換可能な部位の数までの整数であり、m′は0からE上の置換可能な部位の数までの整数であり、tは1以上の整数であり、sは0又は1であり、uは0を含む整数である。
【0046】
式(X)のビスフェノール化合物において、Gは芳香族基を示し、例えばフェニレン、ビフェニレン、ナフチレン及び同様の芳香族基である。Eはアルキレン又はアルキリデン基、例えばメチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン、イソアミリデンなどとすることができる。或いは、Eは2以上のアルキレン又はアルキリデン基を芳香族結合のようなアルキレン又はアルキリデンとは異なる部分で連結したもの、三級アミノ結合、エーテル結合、カルボニル結合、含硫黄結合(例えばスルフィド、スルホキシド、スルホン)、含リン結合(例えばホスフィニル、ホスホニル)、その他の結合とすることもできる。さらに、Eは脂環式基であってもよい。R14は各々独立に一価炭化水素基、例えばアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキルなどを示す。Yはハロゲン(例えばフッ素、臭素、塩素、ヨウ素など)、ニトロ基、アルケニル基、アリル基、上述のR14と同じ基、オキシ基、例えばOR、などを含む。好適な実施形態では、Yは、ポリマーを製造するのに用いる反応物質及び反応条件に不活性で、またそれらにより影響されない。添字mは0からG上の置換可能な部位の数までの整数であり、pは0からE上の置換可能な部位の数までの整数であり、tは1以上の整数であり、sは0又は1であり、uは0を含む整数である。
【0047】
マトリックスポリカーボネートポリマーが誘導される元の適当なビスフェノール化合物は、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、C1−3アルキル置換レゾルシノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン及びこれらの組合せ、並びに上述のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せからなる群から選ぶことができる。
【0048】
ある実施形態では、適当なマトリックスポリカーボネートポリマーは、硬質な脂肪族ジオール、例えばヘキサヒドロ−フラン−(3,2−b)−フラン−3,6−ジオールを単量体又はコモノマーとして用いて製造することができる。イソソルビドを単量体として、或いは1種以上の芳香族ビスフェノールコモノマー、例えばビスフェノールAとともにコモノマーとして用いて製造したポリカーボネートも、マトリックスポリカーボネートポリマーを製造するのに用いることができる。
【0049】
ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体を含有するポリマーナノ複合材料は、膨潤剤を、ポリマーナノ複合組成物の全重量を基準にして、約1重量%〜約20重量%の量含有するのが好ましく、約1重量%〜約10重量%の量含有するのがより好ましい。未処理フィロケイ酸塩、層剥離剤及び膨潤剤からなるオルガノクレイ成分は、ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体を含有するポリマーナノ複合材料全体の約0.1重量%〜約22重量%を占めるのが好ましい。膨潤剤対層剥離フィロケイ酸塩の相対重量比は、広い範囲に及び、一実施形態では約0.5〜約2000、別の実施形態では約1〜約100、他の実施形態では約1〜約10の範囲とすることができる。
【0050】
ポリマーナノ複合材料を製造するには、通常、未処理フィロケイ酸塩を第1溶剤中で層剥離剤と接触させる。層剥離剤は第1溶剤に溶解し、未処理フィロケイ酸塩との完全な混合が容易である。次に溶剤を除去し、次いで得られた層剥離フィロケイ酸塩を第2溶剤中で膨潤剤で処理して、オルガノクレイ生成物を第2溶剤への分散液として得る。オルガノクレイ分散液はそのまま熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドして、所望の熱可塑性ポリマーナノ複合材料を製造することができる。溶融ブレンドプロセス中に高温条件を維持することは、第2溶剤を蒸発させるのに役立つ。さらに、高温条件は、ポリマーをオルガノクレイ層内により効率よく取り込むことになり、これにより層状剥離を向上する。即ちクレイ層が、未処理フィロケイ酸塩の層間分離に対して約60%以上に膨張させられる。別の実施形態では、第2溶剤を除去してほぼ溶剤を含まないオルガノクレイ生成物を得、次にこれを熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドして熱可塑性ポリマーナノ複合材料を生成する。低重量平均分子量ポリカーボネートオリゴマー、例えばビスフェノールA及び炭酸誘導体の反応から製造したものは、このような熱可塑性ポリマーナノ複合材料を製造するための膨潤剤として特に有用である。
【0051】
熱可塑性ポリマーナノ複合材料を製造する両方の方法について、用語「ほぼ溶剤を含まない」は、残留溶剤レベルが熱可塑性ポリマーナノ複合材料の全重量に対して約2重量%以下であることを意味する。さらに、両方の方法において、第1溶剤は、水、水と混和性の脂肪族アルコール又はこれら第1溶剤の組合せを含有するのが好ましい。好適な溶剤は水又は水とエタノールもしくはメタノールの混合物である。第2溶剤は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素及びこれら第2溶剤の組合せからなる群から選択される。溶融ブレンド工程は、一実施形態では約150℃〜約400℃、別の実施形態では約200℃〜約300℃の温度で行う。所望の操作温度は、オルガノクレイ組成物の性質及びマトリックス熱可塑性ポリマーの性質に依存する。両方の方法に用いるオリゴマー状ポリカーボネートの重量平均分子量は通常、一実施形態では約20000ダルトン以下、第2の実施形態では約1000〜約10000ダルトン、第3の実施形態では約3000〜約8000ダルトンである。前記方法は、1種以上のポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体及びマトリックス熱可塑性ポリマー、特にポリカーボネートポリマーを含有するポリマーナノ複合材料を製造するのに極めて有用である。
【0052】
上述のポリマーナノ複合材料は、ポリマー加工に通常用いられる添加剤、例えば酸化防止剤、加工助剤、熱安定剤、紫外線安定剤(以下紫外線をUVと記すこともある)、難燃剤、着色剤などの1種以上を含有することもできる。本発明に使用するのに適当な酸化防止剤の例としては、特に限定されないが、ホスファイト、ホスホナイト、ヒンダードフェノール類、その他当業界で周知の酸化防止剤が挙げられる。ホスファイト(亜リン酸塩)及びホスホナイト型酸化防止剤の例としては、特に限定されないが、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジ(2,4−ジクミルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、2,2′,2″−ニトリロ[トリエチル−トリス[3,3′,5,5′−テトラ−tert−ブチル−1,1′−ビフェニル−2′−ジイル]ホスファイト]、3,9−ジステアリルオキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ジラウリルホスファイト、3,9−ジ[2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4′−ビス(ジフェニレン)ホスホナイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、トリイソデシルホスファイト、及びこれらの1種以上を含有するホスファイト混合物がある。酸化防止剤としては、ヒンダードホフファイト類が好ましい。
【0053】
使用できる加工助剤の例としては、特に限定されないが、Doverlube(登録商標)FL−599(Dover Chemical社から市販)、Polyoxyter(登録商標)(Polychem Alloy社から市販)、Glycolube P(Lonza Chemical社から市販)、ペンタエリスリトールテトラステアレート、メタブレンA−3000(三菱レーヨン社から市販)、ネオペンチルグリコールジベンゾエートなどがある。ペンタエリスリトールテトラステアレートを用いるのが好ましい。
【0054】
使用できるUV安定剤には、ヒンダードアミン光安定剤及びベンゾトリアゾール類が挙げられる。UV安定剤の具体例を以下に挙げるが、これらに限らない。2−(2′−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾール類、例えば5′−メチル−、3′,5′−ジ−tert−ブチル−、5′−tert−ブチル−、5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−、5−クロロ−、3′,5′−ジ−tert−ブチル−、5−クロロ−3′−tert−ブチル−5′−メチル−、3′−sec−ブチル−、5′−tert−ブチル−、3′−α−メチルベンジル−5′−メチル、3′−α−メチルベンジル−5′−メチル−5−クロロ−、4′−ヒドロキシ−、4′−メトキシ−、4′−オクトキシ−、3′,5′−ジ−tert−アミル−、3′−メチル−5′−カルボメトキシエチル−、5−クロロ−3′,5′−ジ−tert−アミル−誘導体、及びTinuvin(登録商標)234(Ciba Specialty Chemicals社から市販)。2,4−ビス(2′−ヒドロキシフェニル)−6−アルキル−s−トリアジン類、例えば6−エチル−、6−ヘプタデシル−又は6−ウンデシル−誘導体。2−ヒドロキシベンゾフェノン類、例えば4−ヒドロキシ−、4−メトキシ−、4−オクトキシ−、4−デシルオキシ−、4−ドデシルオキシ−、4−ベンジルオキシ−、4,2′,4′−トリヒドロキシ−、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−又は2′−ヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−誘導体。1,3−ビス(2′−ヒドロキシベンゾイル)−ベンゼン類、例えば1,3−ビス(2′−ヒドロキシ−4′−ヘキシルオキシベンゾイル)−ベンゼン、1,3−ビス(2′−ヒドロキシ−4′−オクチルオキシベンゾイル)−ベンゼン、又は1,3−ビス(2′−ヒドロキシ−4′−ドデシルオキシベンゾイル)−ベンゼン。置換されていてもよい安息香酸のエステル類、例えばフェニルサリシレート、オクチルフェニルサリシレート、ジベンゾイルレゾルシン、ビス(4−tert−ブチルベンゾイル)−レゾルシン、ベンゾイルレゾルシン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸−2,4−ジ−tert−ブチルフェニルエステルもしくは−オクタデシルエステルもしくは−2−メチル−4,6−ジ−tert−ブチルエステル。アクリレート類、例えばα−シアノ−β,β−ジフェニルアクリル酸−エチルエステル又はイソオクチルエステル、α−カルボメトキシ−桂皮酸メチルエステル、α−シアノ−β−メチル−p−メトキシ−桂皮酸メチルエステルもしくはブチルエステル又はN−(β−カルボメトキシビニル)−2−メチル−インドリン。シュウ酸ジアミド類、例えば4,4′−ジオクチルオキシ−オキサニリド、2,2′−ジオチルオキシ−5,5′−ジ−tert−ブチル−オキサニリド、2,2′−ジドデシルオキシ−5,5−ジ−tert−ブチル−オキサニリド、2−エトキシ−2′−エチル−オキサニリド、N,N′−ビス(3−ジメチル−アミノプロピル)−オキサルアミド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2′−エチルオキシアニリド及びこれらの2−エトキシ−2′−エチル−5,4′−ジ−tert−ブチル−オキサニリドとの混合物、又はo−及びp−メトキシ−二置換オキサニリドの混合物並びにo−及びp−エトキシ−二置換オキサニリドの混合物。
【0055】
使用できる難燃剤の例としては、特に限定されないが、ノナフルオロブチルスルホン酸カリウム、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム、及びレゾルシノールやビスフェノールAのような多価フェノール化合物のモノマー状及び/又はオリゴマー状リン酸エステル、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0056】
本発明のポリマーナノ複合材料はさらに他の添加剤、例えば離型剤、滴下防止剤、核生成剤、染料、顔料、粒状材料、導電性充填剤(例えば導電性カーボンブラック、平均直径約3〜約500nmの気相成長炭素繊維)、強化充填剤、帯電防止剤及び発泡剤を含有してもよい。強化充填剤には、例えば、無機及び有機材料、具体的にはE、NE、S、T及びD型ガラス及び石英の繊維、織布及び不織布;炭素繊維、具体的にはポリ(アクリロニトリル)(PAN)繊維、気相成長炭素繊維、特に黒鉛質気相成長炭素繊維;チタン酸カリウム単結晶繊維、炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、石膏繊維、酸化アルミニウム繊維、アスベスト、鉄繊維、ニッケル繊維、銅繊維、ウォラストナイト繊維;などがある。強化充填剤は、ガラスロービングクロス、ガラスクロス、チョップドグラス、中空ガラス繊維、ガラスマット、ガラス表面マット、及びガラス不織布、セラミック繊維布及び金属繊維布の形態とすることができる。さらに、繊維を形成できる有機ポリマーなどの合成有機強化充填剤も使用できる。このような強化有機繊維の具体例としては、ポリ(エーテルケトン)、ポリイミドベンズオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドもしくはポリエーテルイミド、アクリル樹脂、及びポリ(ビニルアルコール)がある。ポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマーを用いてもよい。当業者に周知の天然有機繊維も包含され、例えば木綿布、ヘンプ布、フェルト、炭素繊維布、並びに天然セルロール布、例えばクラフト紙、コットン紙、ガラス繊維含有紙などがある。このような強化充填剤はモノフィラメント繊維もしくは多フィラメント繊維の形態とすることができ、単独で用いても、或いは、例えば同時製織、又はコア−シース、並列、オレンジ型、又はマトリックス及びフィブリル構成にて、或いは繊維製造業界の当業者に知られた他の方法で、他の種類の繊維と組み合わせて用いてもよい。これらは、例えば、製織繊維強化材、不織繊維強化材又は紙の形態とすることができる。タルクを強化充填剤として使用することもできる。
【0057】
本発明のポリマーナノ複合材料は、多数の有用な特性を有し、中でも、低温弾性率及び延性を保持しながら、約−20℃以上の温度での優れた低温衝撃特性を有する。一般にポリマー材料は低温になるほど脆くなる。本発明のナノ複合材料はこの性能問題を効果的に解決する。別の観点では、本発明のナノ複合材料は、優れた加工性を与え、難燃性を達成しやすい。さらに本発明のナノ複合材料は、他のポリカーボネート(ガラス転移温度が異なり、また曲げ弾性率、衝撃、流れなど他の特性が異なる)とあらゆる割合でブレンドでき、こうして優れた機械的特性を有し、広い範囲の高温及び低温性能要求を満たすことができる材料を製造することができる。
【0058】
ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体及び熱可塑性ポリマーを含有するポリマー組成物を成形物品の製造に用いる場合、その物品は通常、ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体を含有しない物品と比較して、弾性率(モジュラス)が低い。しかし、前述の通りの、未処理フィロケイ酸塩、層剥離剤、膨潤剤、ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体及び1種以上の熱可塑性ポリマーを含有するポリマーナノ複合材料は、格別に優れた特性を有する。一般に、マトリックスポリマーに強化充填剤を添加すると、得られる組成物の引張弾性率が増加するが、その組成物は通常、マトリックスポリマーが示す延性破壊モードを維持できない。つまり、弾性率の向上が低温延性を犠牲にして達成される。例えば、BPAポリカーボネートとポリカーボネート−ポリオルガノシロキサンブロック共重合体とのブレンドは、−20℃で延性破壊モードを示すことが知られている。これらのBPAポリカーボネートとポリカーボネート−ポリオルガノシロキサンブロック共重合体とのブレンドに炭化ケイ素やタルクのような充填剤を配合すると、得られる組成物は優れた弾性率を示すが、マトリックスポリマーが当初示していた低温延性破壊モードを維持できない。しかし、本明細書で後述する実施例から明らかになるように、このようなBPAポリカーボネートとポリカーボネート−ポリオルガノシロキサンブロック共重合体とのブレンドに、未処理のフィロケイ酸塩を層剥離剤及び膨潤剤とともに添加すると、得られるナノ複合材料の弾性率が向上するだけでなく、−20℃での低温延性破壊モードも維持される。
【0059】
本発明のポリマーナノ複合材料を含有する成形物品は、層剥離フィロケイ酸塩及び低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーを含有しないこと以外は同様の成形物品に対して、一実施形態では、ISO527法に準拠して測定した引張弾性率が約105%以上である;別の実施形態では、ASTM D256法に準拠して11Jハンマーを用いて測定した延性破壊温度が約−20℃以上である;第3の実施形態では、ASTM D1238法に準拠して測定した溶融容積速度(略称MVR)が約110%以上である。熱可塑性ナノ複合材料を構成する個々の材料の性質に応じて、上述の特性の2以上の向上を達成することも時にあり得る。したがって、一実施形態では、1種以上の層剥離フィロケイ酸塩、低重量平均分子量ポリカーボネート膨潤剤、ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体、及び熱可塑性ポリマーを含有するポリマーナノ複合材料からなる物品は、前記層剥離フィロケイ酸塩及び低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーを含有しないこと以外は同様の成形物品について同じ条件下で測定した場合に対して、ISO527法に準拠して測定した引張弾性率が約105%以上であること、ASTM D256法に準拠して測定した延性破壊温度が約−20℃以上であること、ASTM D1238法に準拠して測定した溶融容積速度が約110%以上であることの少なくとも一つを満たす。物品そのもの又は物品の一部をとりあげ、そのMVRを測定することが可能である。しかし、代表的には、MVRの測定はポリマーナノ複合材料のペレットで行う。さらに、ナノ複合材料は潜在的に、加熱変形温度、蒸気バリヤ性及び/又は低いガス透過性、耐薬品性など他の特性の向上を示し得、そのため自動車、航空宇宙、電子、医薬、アパレル、食品及び光学用途に関係する物品を始めとする各種物品の製造に特に適当である。
【0060】
ポリマーナノ複合材料の組成は、他の有利な特性、例えば透明性、半透明性又は不透明性を達成するために、適当に変更することもでき、顔料を用いて着色することもできる。
【0061】
本発明の成形組成物を製造するには、オルガノクレイ組成物と1種以上のポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体とを、所望に応じて上述のような他の熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーと共に、普通の混合装置、例えば単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサ、又は他の普通の溶融混練装置で、機械的にブレンドする。溶剤を含有するオルガノクレイ組成物を熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーとの配合に用いる場合には、配合操作中に装置を真空に引いて、組成物からの揮発性有機溶剤の放出を防ぐこともできる。組成物の成分を混合する順序は一般に重要ではなく、当業者が簡単に決めることができる。
【0062】
一実施形態では、ポリマーナノ複合材料を製造する方法は、未処理フィロケイ酸塩を層剥離剤で処理することにより別の工程で層剥離フィロケイ酸塩を製造し、次いで層剥離フィロケイ酸塩を膨潤剤及び1種以上のポリマーとドライブレンドするか溶融ブレンドする工程を含む。別の実施形態では、ポリマーナノ複合材料を製造する方法は、上述のようなオルガノクレイ組成物のマスターバッチを製造し、次いでこのマスターバッチの一部を1種以上のポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体及び所望に応じて他の熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーとブレンドする工程を含む。
【0063】
上述の成形組成物は、例えば電気及び遠隔通信インターフェース装置、スマートネットワークインターフェース装置、車両外装及び内装部品、ガーデン器具の外部ハウジング、建築及び土木の外装及び内装部品など、種々の有用な物品を製造するのに有用である。このような物品の例としては、特に限定されないが、自動車外装及び内装部品、ウィンドウフレーム、ウィンドウプロファイル、ガター、ダウンスパウト、サイディング、自動車バンパー、ドアライナー、テイルゲート、内装部品及びフェンダー;ガーデン器具の外部ハウジング、及びスノースクーターが挙げられる。本発明のポリマーナノ複合材料は、当業界で知られた種々の塗工技術、例えば高速オキシ燃料溶射(HVOF)、高スラスト高速オキシ燃料溶射法を用いて、耐久性コーティング、特にミクロン程度の薄いコーティングを形成するのにも、使用できる。ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体及び1種以上の他のポリカーボネート(ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体ではない)を含有するポリマーナノ複合材料は、この点で特に有用である。
【0064】
モンモリロナイトは、入手しやすく、低価格であるので、未処理フィロケイ酸塩として好適である。好適な実施形態では、物品を製造するための熱可塑性ポリマーナノ複合材料は、熱可塑性樹脂ナノ複合材料の全重量を基準にして、約10重量%以下のモンモリロナイト、約20重量%以下の低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー、約5重量%以下の層剥離剤、約25重量%以下のポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体(重量平均分子量約40000〜約60000ダルトン)及び約50重量%以上のビスフェノールAホモポリカーボネート(重量平均分子量約30000〜約80000ダルトン)を含有し、ここで前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体は、式(XI)で表されるポリオルガノシロキサンブロックと式(XII)で表されるポリカーボネートブロックを含有するブロック共重合体である。
【0065】
【化8】

式中、R15は水素、メトキシ又はアリルであり、aは約40〜約55の値の整数である。
【0066】
【化9】


別の好適な実施形態では、ポリマーナノ複合材料は、本質的に、熱可塑性樹脂ナノ複合材料の全重量を基準にして、約20重量%以下の、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約40000〜約60000ダルトンの重量平均分子量を有するポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体、約55重量%以上の、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約30000〜約80000ダルトンの重量平均分子量を有するビスフェノールAホモポリカーボネート、約10重量%以下のモンモリロナイト、約20重量%以下の低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー、及び約5重量%以下の層剥離剤からなり、前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体が、式(XI)で表されるポリオルガノシロキサンブロックと、式(XII)で表されるポリカーボネートブロックを含有するブロック共重合体である。
【実施例】
【0067】
予想実施例1
本例は、重量平均分子量約8000の低分子量ヒドロキシ末端封鎖ビスフェノールAホモポリカーボネートの製造を説明する。手順は、本発明の先行技術として援用する米国特許第6143859号第6欄27〜42行に実施例2の一部として記載されている。
【0068】
1Lガラス溶融重合反応器を酸洗いし、脱イオン化水でリンスし、約70℃で一晩乾燥することにより、清浄にする。次に反応器に130.4g(608.6mmol)のジフェニルカーボネート及び120g(525.6mmol)のビスフェノールAを仕込む。中実ニッケルスターラを混合物中に挿入し、反応器を窒素パージし、約180℃に加熱すると、反応混合物が溶融する。完全に溶融したら、かきまぜながら、反応混合物を5〜10分間平衡化させる。次に、かきまぜながら、600μLの0.221Mテトラメチルアンモニウムマレエート水溶液及び500μLの0.01M水酸化ナトリウム水溶液を添加する。得られる混合液を約180℃に加熱し、撹拌を約5分間続けた後、温度を約210℃に上げ、圧力を約180mmHgに下げると、フェノールの蒸留が始まる。約10分後、目的の低分子量ビスフェノールAホモポリカーボネートが生成する。
【0069】
実施例2
本例は、予想実施例1に記載した通りに製造した、重量平均分子量約8000ダルトンの低分子量ヒドロキシ末端封鎖ビスフェノールAホモポリカーボネートを用いて、ポリマーナノ複合材料成形組成物を製造するのに用いた手順全般を説明する。
【0070】
ポリマーナノ複合材料を製造する一つの方法(以下の表1では方法Xと表示)では、表1に示す必要な個別の成分を別々に秤量し、次いでバンバリーミキサでブレンドした。或いは、個別の成分を溶剤、例えばトルエン又はジクロロメタン中で混合し、高速撹拌及び溶剤還流下で撹拌し、次いで減圧下での蒸留及び/又は蒸発により溶剤を除去して、乾燥ポリマーナノ複合材料を得た。得られた材料を押出機から押出した。
【0071】
別の方法(以下方法Yと表示)では、まず膨潤剤(300g)を1.5Lの適当な溶剤、例えばトルエン又はアセトンに溶解した。この溶液にCLOISITE(登録商標)30B(150g)を添加し、得られた混合物を、(縦型スターラを用いて約2000rpmで)激しくかきまぜながら、約2時間加熱還流した。次に、常圧もしくは減圧での蒸留により溶剤を除去し、さらに真空下で完全に乾燥して、CLOISITE30B及び膨潤剤からなるマスターバッチのドライサンプルを得た。この方法は、エポキシ膨潤剤及びR2PC膨潤剤を用いてマスターバッチサンプルを製造する場合に用いた。なお、R2PCは、重量平均分子量約8000ダルトンのヒドロキシ末端封鎖ビスフェノールAホモポリカーボネートを示す。使用したビスフェノールAホモポリカーボネート(略称BPA−PC)は、重量平均分子量がクロロホルム溶剤を用いるGPCで測定して約57000ダルトンであった。測定した分子量はポリスチレン標準に対するものである。既知重量のマスターバッチサンプル(前述の通り製造)を熱可塑性ポリマー、例えばビスフェノールAホモポリカーボネート又はビスフェノールAホモポリカーボネートとビスフェノールAホモポリカーボネート−ポリオルガノシロキサンブロック共重合体との混合物と配合することにより、成形組成物を製造した。
【0072】
こうして製造した種々の組成物A〜Eを表1に比較例1及び実施例3〜6として示す。CLOISITE(登録商標)30BはSouthern Clay Products社から購入した。Na−MMTはナトリウムモンモリロナイトを示す。成形組成物A及びBは、酸化防止剤、熱安定剤、UV安定剤及び難燃剤を用いずに製造し、一方成形組成物C〜Iはこれらの添加剤を用いて製造した。
【0073】
製造した組成物に、表2及び表3に示す条件での押出及び成形操作を行った。数値は、表示成分のすべてを合せて形成した全体混合物の重量に対する各成分の重量割合(%)を示す。PC−STは、前記式(IX)で表される、重量平均分子量約57000ダルトンのポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体を示す。
【0074】
組成物を押出して、ペレットを形成し、その後試験片の製造に用いられる標準金型を用いてペレットを成形した。混練は、ポリカーボネートポリマー用の標準スクリュー設計のW&P ZSK25ラボラトリー二軸押出機を用いて行った。射出成形は、L&T Demag De−Tech60LNC4−E成形機を用いて行った。略語RPMは毎分回転数を示す。略語psiはポンド/平方インチを示す。
【0075】
表3は、上述の通り製造したポリマーナノ複合材料からなる成形サンプルを試験した結果を示す。溶融容積速度(MVR)は、押出ペレットについて、ASTM D1238に準拠して測定した。MVRは、滞留時間約5分で、約6〜7gのサンプルを一定荷重1.2kg及び300℃に10分間置いたときに、ピストンでオリフィスを通過するサンプルの容積として定義される。結果は立方センチメートル/10分(cc/10分)で表示する。引張弾性率、降伏点引張強さ、降伏点引張ひずみ、破断点引張強さ、破断点引張ひずみは、国際標準化機構の方法ISO527にしたがって測定した。−20℃でのノッチ付きアイゾット衝撃強さ(略号NII)は、11Jハンマーを用いてASTM D256法に準拠して測定した。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCでポリスチレン標準に対して測定した。NAはデータが得られないことを示す。
【0076】
表1中の実施例4と比較例3から得られた結果を比較すると、1重量%の層剥離フィロケイ酸塩、例えばCLOISITE及びポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体を含有するポリマーナノ複合材料成形組成物は、−20℃での延性破壊モードを維持しながら、引張弾性率が約2.2GPaから約2.3GPaに増加していることが分かる。約2重量%の低重量平均分子量BPAポリカーボネートをナノ複合材料に導入すると、得られた成形組成物は、依然として延性破壊モードを維持しながら、引張弾性率が約2.5GPaにさらに増加している(実施例3及び4参照)。これに対して、CLOISITE(登録商標)、R2PCオリゴマー状ポリカーボネート及びBPAホモポリカーボネートを含有するが、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含有しない成形組成物は、より高い引張弾性率(2.8GPa)を示すものの、−20℃で脆性破壊モードを示す(比較例2)。タルク、炭化ケイ素及びマイカのような他の充填剤では、BPAホモポリカーボネート及びポリカーボネート−ポリオルガノシロキサンブロック共重合体を含有する成形組成物は、引張弾性率が向上するが、すべて−20℃で脆性破壊モードを示す。これらの結果から分かるように、CLOISITE(登録商標)のような層剥離フィロケイ酸塩とポリカーボネート及びポリカーボネート−ポリオルガノシロキサンブロック共重合体からなるポリマーマトリックスとの組合せから、向上した引張弾性率と−20℃のような低温での延性破壊性とを適切に合わせもつ有用な成形組成物が得られる。さらに、組成物D及びFは、組成物Cと比較して高いMVRを示し、このことから、タイプD及びFのポリマーナノ複合材料が、向上した機械的特性、例えば引張弾性率、降伏点引張強さ及び低温での延性破壊モードを有するだけでなく、比較的良好な加工性も有することが分かる。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

以上、本発明を例示の実施形態について説明したが、当業者であれば、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の変更を加えたり、その要素を均等物に置き換えたりできることが理解できるはずである。さらに、本発明の要旨から逸脱することなく、特定の状況や材料が本発明の教示に合うように種々の改変を加えることもできる。したがって、本発明は、ここに発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲に入るすべての実施形態を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理フィロケイ酸塩、
層剥離剤、
膨潤剤及び
ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体
を含有するポリマーナノ複合材料。
【請求項2】
前記層剥離剤が有機オニウム塩、IV族有機金属化合物、イミダゾリウム塩又はこれらの層剥離剤の組合せからなる群から選択される、請求項1記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項3】
前記有機オニウム塩が有機アンモニウム塩又は有機ホスホニウム塩を含有する、請求項2記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項4】
前記IV族有機金属化合物が式(RM(R10O)4−n(式中、Mはケイ素、チタン及びジルコニウムからなる群から選択される第IV族元素であり、R及びR10は各々独立にC−C12アルキル及びアリール基であり、nは0〜約2の値を有する。)で表される、請求項2記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項5】
前記未処理フィロケイ酸塩が、アレバルダイト、アメサイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、サポナイト、バイデライト、タルク、モンモリロナイト、スメクタイト、イライト、セピオライト、パリゴルスカイト、白雲母、ノントロナイト、スチーブンサイト、ベントナイト、マイカ、バーミキュライト、フルオロバーミキュライト、ハロイサイト、フッ素含有タルク及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項6】
前記膨潤剤が、エポキシ化合物、低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー、オリゴマー状ポリエステル、オリゴマー状ポリアミド、オリゴマー状ポリエーテル、オリゴマー状ポリエステルアミド、オリゴマー状ポリエーテルイミド、オリゴマー状ポリイミド、オリゴマー状ポリエステルカーボネート、フェノール系レゾール及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項7】
前記エポキシ化合物が、モノマー状エポキシ化合物、オリゴマー状エポキシ化合物及びポリマー状エポキシ化合物からなる群から選択される、請求項6記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項8】
前記低分子量ポリカーボネートポリマーの重量平均分子量がクロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約20000ダルトン以下である、請求項6記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項9】
前記低分子量ポリカーボネートポリマーが、1種以上の芳香族ビスフェノール、1種以上の脂肪族ジオール、又は1種以上の芳香族ビスフェノールと1種以上の脂肪族ジオールの組合せから誘導される、請求項6記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項10】
前記1種以上の芳香族ビスフェノールが、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、C1−3アルキル置換レゾルシノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン及びこれらの組合せ、並びにこれらのビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せからなる群から選択される、請求項9記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項11】
前記1種以上の脂肪族ジオールが1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトールを含有する、請求項9記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項12】
さらに溶剤を含有し、この溶剤が芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素又はハロゲン化炭化水素を含有する、請求項1記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項13】
前記溶剤がトルエン、キシレン、ジクロロメタン及び1,2−ジクロロエタンからなる群から選択される、請求項12記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項14】
前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体がブロック共重合体である、請求項1記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項15】
さらに1種以上の熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを含有する、請求項1記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項16】
前記1種以上の熱可塑性ポリマーが、1種以上のポリカーボネート、ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンエーテル、オレフィン系ニトリル−ジエン−アルケニル芳香族化合物共重合体、オレフィン系ニトリル−アルケニル芳香族化合物−アクリレート共重合体、ポリスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリオレフィン、及びこれらの熱可塑性ポリマーの組合せからなる群から選択される、請求項15記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項17】
前記1種以上のポリカーボネートポリマーが次式のビスフェノール1種以上から誘導される構造単位を含有する、請求項16記載のポリマーナノ複合材料。
【化1】

式中、Gは各々独立に芳香族基であり、Eはアルキレン、アルキリデン、脂環式基、含硫黄結合、含リン結合、エーテル結合、カルボニル基又は三級窒素基であり、R11は各々独立に水素又は一価炭化水素基であり、Yは各々独立に一価炭化水素基、アルケニル、アリル、ハロゲン、臭素、塩素及びニトロからなる群から選択され、mは0からG上の置換可能な部位の数までの整数であり、m′は0からE上の置換可能な部位の数までの整数であり、tは1以上の整数であり、sは0又は1であり、uは0を含む整数である。
【請求項18】
前記1種以上のポリカーボネートポリマーが、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約20000〜約80000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項16記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項19】
前記ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体が次式のシロキサン単位を含有する、請求項1記載のポリマーナノ複合材料。
【化2】

式中、R11及びR12は各々独立に水素、ヒドロカルビル又はハロゲン置換ヒドロカルビルである。
【請求項20】
前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体が、
次式のポリオルガノシロキサンブロック
【化3】

(式中、R11及びR12は各々独立に水素、ヒドロカルビル又はハロゲン置換ヒドロカルビルであり、R13は水素、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ又はハロゲンであり、bは約30〜約70の値の整数である。)と、
次式のポリカーボネートブロック
【化4】

(式中、Gは各々独立に芳香族基であり、Eはアルキレン、アルキリデン、脂環式基、含硫黄結合、含リン結合、エーテル結合、カルボニル基又は三級窒素基であり、R14は各々独立に一価炭化水素基であり、Yは各々独立に一価炭化水素基、アルケニル、アリル、ハロゲン、臭素、塩素及びニトロからなる群から選択され、mは0からG上の置換可能な部位の数までの整数であり、m′は0からE上の置換可能な部位の数までの整数であり、tは1以上の整数であり、sは0又は1であり、uは0を含む整数である。)と
を含有するブロック共重合体である、請求項1記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項21】
前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体が、
次式のポリオルガノシロキサンブロック
【化5】

(式中、R11及びR12は各々独立に水素、ヒドロカルビル又はハロゲン置換ヒドロカルビルであり、R13は水素、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ又はハロゲンであり、bは約2〜約10の値の整数である。)と、
次式のポリカーボネートブロック
【化6】

(式中、Gは各々独立に芳香族基であり、Eはアルキレン、アルキリデン、脂環式基、含硫黄結合、含リン結合、エーテル結合、カルボニル基又は三級窒素基であり、R14は各々独立に一価炭化水素基であり、Yは各々独立に一価炭化水素基、アルケニル、アリル、ハロゲン、臭素、塩素及びニトロからなる群から選択され、mは0からG上の置換可能な部位の数までの整数であり、m′は0からE上の置換可能な部位の数までの整数であり、tは1以上の整数であり、sは0又は1であり、uは0を含む整数である。)と
を含有するブロック共重合体である、請求項1記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項22】
前記ポリカーボネートブロックが、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、C1−3アルキル置換レゾルシノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン及びこれらの組合せ、並びにこれらのビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せからなる群から選択されるビスフェノール化合物から誘導される、請求項20記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項23】
前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体がクロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約20000〜約80000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項20記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項24】
請求項1記載のポリマーナノ複合材料を含有する成形物品。
【請求項25】
前記成形物品はISO527法に準拠して測定した引張弾性率が、前記層剥離フィロケイ酸塩及び低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーを含有しないこと以外は同様の成形物品に対して、約105%以上である、請求項24記載の成形物品。
【請求項26】
前記成形物品はASTM D256法に準拠して11Jハンマーを用いて測定した延性破壊温度が、前記層剥離フィロケイ酸塩及び低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーを含有しないこと以外は同様の成形物品に対して、約−20℃以上である、請求項24記載の成形物品。
【請求項27】
前記成形物品はASTM D1238法に準拠して測定した溶融容積速度が、前記層剥離フィロケイ酸塩及び低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーを含有しないこと以外は同様の成形物品に対して、約110%以上である、請求項24記載の成形物品。
【請求項28】
約5重量%以下の未処理フィロケイ酸塩、
約15重量%以下の低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー、
約2.5重量%以下の層剥離剤、
約25重量%以下の、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約40000〜約60000ダルトンの重量平均分子量を有するポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体、及び
約50重量%以上の、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約30000〜約80000ダルトンの重量平均分子量を有するビスフェノールAホモポリカーボネート
を含有するポリマーナノ複合材料。
【請求項29】
1種以上の層剥離フィロケイ酸塩、低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー及びポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体を含有するポリマーナノ複合材料を含有する物品であって、
前記物品が下記条件:
ISO527法に準拠して測定した引張弾性率が、前記層剥離フィロケイ酸塩及び低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーを含有しないこと以外は同様の物品に対して、約105%以上である、
ASTM D256法に準拠して11Jハンマーを用いて測定した延性破壊温度が、約−20℃以上である、
ASTM D1238法に準拠して測定した溶融容積速度が、前記層剥離フィロケイ酸塩及び低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーを含有しないこと以外は同様の成形物品に対して、約110%以上である、
の1以上を満たす、物品。
【請求項30】
熱可塑性樹脂ナノ複合材料の全重量を基準にして、
約20重量%以下の、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約40000〜約60000ダルトンの重量平均分子量を有するポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体、
約55重量%以上の、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約30000〜約80000ダルトンの重量平均分子量を有するビスフェノールAホモポリカーボネート、
約10重量%以下のモンモリロナイト、
約20重量%以下の低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー、及び
約5重量%以下の層剥離剤を含有し、
前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体が、
次式のポリオルガノシロキサンブロック
【化7】

(式中、R15は水素、メトキシ又はアリルであり、aは約40〜約55の値の整数である。)と、
次式のポリカーボネートブロック
【化8】

を含有するブロック共重合体であるポリマーナノ複合材料。
【請求項31】
前記低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーが、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約3000〜約8000ダルトンの重量平均分子量を有するビスフェノールAホモポリカーボネートである、請求項30記載のポリマーナノ複合材料。
【請求項32】
熱可塑性樹脂ナノ複合材料の全重量を基準にして、
約20重量%以下の、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約40000〜約60000ダルトンの重量平均分子量を有するポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体、
約55重量%以上の、クロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約30000〜約80000ダルトンの重量平均分子量を有するビスフェノールAホモポリカーボネート、
約10重量%以下のモンモリロナイト、
約20重量%以下の低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー、及び
約5重量%以下の層剥離剤を含有し、
前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体が、
次式のポリオルガノシロキサンブロックと、
【化9】

(式中、R15は水素、メトキシ又はアリルであり、aは約40〜約55の値の整数である。)
次式のポリカーボネートブロック
【化10】

を含有するブロック共重合体である、
ポリマーナノ複合材料。
【請求項33】
未処理フィロケイ酸塩を第1溶剤中で有機オニウム塩、IV族有機金属化合物及びイミダゾリウム塩からなる群から選択される層剥離剤と接触させ、
第1溶剤を蒸発させて層剥離フィロケイ酸塩を生成し、
前記層剥離フィロケイ酸塩を第2溶剤中で膨潤剤と接触させてオルガノクレイ生成物を生成し、
前記オルガノクレイ生成物をポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体を含む熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドしてポリマーナノ複合材料を生成する
工程を含む、ポリマーナノ複合材料の製造方法。
【請求項34】
前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体がポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記ポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体が、
次式のポリオルガノシロキサンブロック
【化11】

(式中、R11及びR12は各々独立に水素、ヒドロカルビル又はハロゲン置換ヒドロカルビルであり、R13は水素、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ又はハロゲンであり、bは約30〜約70の値の整数である。)と、
次式のポリカーボネートブロック
【化12】

(式中、Gは各々独立に芳香族基であり、Eはアルキレン、アルキリデン、脂環式基、含硫黄結合、含リン結合、エーテル結合、カルボニル基又は三級窒素基であり、R14は各々独立に水素又は一価炭化水素基であり、Yは各々独立に一価炭化水素基、アルケニル、アリル、ハロゲン、臭素、塩素及びニトロからなる群から選択され、mは0からG上の置換可能な部位の数までの整数であり、m′は0からE上の置換可能な部位の数までの整数であり、tは1以上の整数であり、sは0又は1であり、uは0を含む整数である。)
を含有する、請求項33記載の方法。
【請求項36】
第1溶剤が水、水混和性脂肪族アルコール又はこれらの組合せを含有する、請求項33記載の方法。
【請求項37】
第2溶剤が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族及び芳香族カルボニル含有化合物、ハロゲン化炭化水素及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項38】
前記溶融ブレンドを約150℃〜約400℃の温度で行う、請求項33記載の方法。
【請求項39】
前記膨潤剤が、エポキシ化合物、低重量平均分子量ポリカーボネートポリマー、オリゴマー状ポリエステル、オリゴマー状ポリアミド、オリゴマー状ポリエーテル、オリゴマー状ポリエステルアミド、オリゴマー状ポリエーテルイミド、オリゴマー状ポリイミド、フェノール系レゾール及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項40】
前記低重量平均分子量ポリカーボネートポリマーの重量平均分子量がクロロホルム溶剤中ポリスチレン標準で測定して約20000ダルトン以下である、請求項33記載の方法。
【請求項41】
前記熱可塑性ポリマーが、1種以上のポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンエーテル、オレフィン系ニトリル−ジエン−アルケニル芳香族化合物共重合体、オレフィン系ニトリル−アルケニル芳香族化合物−アクリレート共重合体、ポリスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリオレフィン、及びこれらの熱可塑性ポリマーの組合せからなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項42】
前記1種以上のポリカーボネートがポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートブロック共重合体以外である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
請求項33記載の方法で製造したポリマーナノ複合材料を含有する物品。
【請求項44】
さらに、前記オルガノクレイ生成物から第2溶剤を蒸発させて、本質的に溶剤を含まないオルガノクレイ生成物を生成し、
この本質的に溶剤を含まないオルガノクレイ生成物をポリオルガノシロキサン−ポリカーボネート共重合体を含む熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドしてポリマーナノ複合材料を生成する
工程を含む、請求項33記載の方法。

【公表番号】特表2007−514854(P2007−514854A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545658(P2006−545658)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038663
【国際公開番号】WO2005/061623
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】