説明

ポリマービーズの製造装置及びポリマービーズの製造方法

【課題】簡便な手段を用いてポリマービーズの粒径を制御可能なポリマービーズの製造装置及びポリマービーズの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリマービーズの製造装置は、高分子樹脂を相溶性のある溶媒に溶解して成るポリマー溶液を滴下するためのノズル12と、ノズルの外周に沿って気体を吐出させる気体吐出手段であるスリット14とを備えたポリマー原液滴下装置10を有する。これにより、ノズル12の先端に形成されたポリマー溶液の液滴に気体を吹き付けられ、液滴の自重落下前に、ポリマー溶液の液滴が落下するので、同じノズル寸法であっても小粒径のポリマービーズが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマービーズの製造装置及びポリマービーズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アフェレシスと呼ばれる血液浄化技術が発展してきている。その中でも、直接血液灌流療法(DHP:Direct Hemo Perfusion)は、患者の血液を直接吸着材に接触させて血液を浄化することができるため、従来から行われている血漿分離膜を用いて分離した血漿を吸着材に接触させる血漿吸着法(PA:Plasma Adsorption)と比較して簡便であり、また、一度血漿分離膜(一次膜)を用いて分離した血漿から、更に二次膜を用いてグロブリンその他の病因(関連)を含む分子量の大きな物質を分離除去して、アルブミンを中心とする病因(関連)物質以下の分子量物質を回収する二重膜濾過血漿交換法(DFPP:Double Filtration Plasmapheresis)等と比較しても、直接血液灌流療法は簡便な方法であることから、急速に普及しつつある。
【0003】
上述した直接血液灌流療法に吸着材として、ビーズ状、不織布状、織編物状などが考案されており、例えば、白血球吸着療法に用いられる「アダカラム」(JIMRO社製)やβ2ミクログロブリン吸着療法に用いられる「リクセル」(株式会社カネカ製)は、ビーズ状の吸着材である。一方、白血球吸着療法に用いられる「セルソーバ」(旭化成クラレメディカル社製)は不織布状の吸着材であり、エンドドキシン吸着療法に用いられる「トレミキシン」(東レ社製)は、織編物状の吸着材である。
【0004】
しかしながら、上述した各種吸着材のなかで、ビーズ状の吸着材は、他の形態の吸着材に比べ、吸着材をケースに収容して構成された吸着モジュールにおける圧力損失が少なく、吸着モジュール内の血液流れの偏りも少ない。したがって、ビーズ状の吸着材が装填された吸着モジュールでは、治療中の吸着モジュール内での血液凝固に起因する圧力上昇が抑制され、また吸着モジュール内の血液流れの偏りに伴う性能のばらつきが低減される。このため、吸着材の形状はビーズ状が好ましい。
【0005】
また、直接血液灌流療法に用いる吸着材は、吸着効率を向上させ、吸着材が収容された吸着モジュールのサイズを最小限にするためにも、血液と接触可能なある一定の有効表面積を確保する必要がある。
【0006】
上述した直接血液灌流療法に好適なビーズ状の吸着材を得る方法として、例えば、吸着材の原料であるポリマーを溶媒に溶解して成るポリマー溶液をノズルから凝固液に滴下してビーズ状の吸着材を得る「滴下凝固法」が提案されている(例えば、特許文献1から特許文献5を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平1−278541号公報
【特許文献2】特公平6−22631号公報
【特許文献3】特開平7−247365号公報
【特許文献4】特開平11−322997号公報
【特許文献5】特開2007−191512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献2から特許文献5には、ビーズ状の吸着材の径を制御する方法について何ら開示されていない。一方、特許文献1には、ノズルの前方に電極を設置して直流電圧を印加することにより、ノズルから噴出させるポリマー溶液に1,000〜40,000Hzの振動を加えてノズルから気相中に液滴を噴出させるとともに、液滴を同符号に帯電させ、液滴同士の合体を抑制して、均一な大きさの多孔質均一ポリマー粒子を得るための製造方法が提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、ノズルから噴出させ同一符号に帯電させるために、ノズルから所定の距離に電極を設置する必要があり、製造装置が複雑になり、また帯電させる液滴のサイズは小粒径に限定されてしまう。
【0010】
本発明は、簡便な製造装置構成で、ポリマービーズの粒径を任意に調整可能なポリマービーズの製造装置及びポリマービーズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す本発明を完成するに至った。本願発明は、以下の特徴を有する。
【0012】
(1)ポリマー溶液を滴下するノズルと、前記ノズルの開口部に向かって気体を吐出させる気体吐出手段と、を備えたポリマービーズの製造装置である。
【0013】
(2)さらに、気体吐出手段から吐出される気体の流速を制御する流速制御装置を備える上記(1)に記載のポリマービーズの製造装置である。
【0014】
(3)前記ノズルは、二重管構造を有し、内側のノズルから前記ポリマー溶液が滴下され、外側のスリットから前記気体が吐出されることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリマービーズの製造装置である。
【0015】
(4)ノズルから押し出されノズル先端に形成されたポリマー溶液の液滴に気体を吹き付け、前記ポリマー溶液のポリマーに対し貧溶媒からなる凝固液中に、自重落下前に液滴を落下させるポリマービーズの製造方法である。
【0016】
(5)さらに、ノズル先端に形成されたポリマー溶液の液滴に吹き付ける気体の流速を制御してビーズの粒径を制御する上記(4)に記載のポリマービーズの製造方法である。
【0017】
(6)前記ポリマー溶液は、数平均分子量が10,000以上のポリマーと、各ポリマーに対して相溶性を有する溶媒とを含む上記(4)または(5)に記載のポリマービーズの製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吐出される気体の流速を制御することにより、ポリマービーズの径を任意に調整可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態におけるポリマービーズの製造装置及びポリマービーズの製造方法について、以下説明する。
【0020】
図1には、本実施の形態におけるポリマービーズの製造装置の一例の概要構成が示されている。但し、以下の内容に限定されるものではない。図1に示すように、本実施の形態におけるポリマービーズの製造装置は、高分子樹脂を相溶性のある溶媒に溶解して成るポリマー溶液(以下「ポリマービーズ原液」ともいう)を滴下するためのノズルと、ノズルの外周に沿って気体を吐出させる気体吐出手段とを備えたポリマー原液滴下装置10を有する。本実施の形態では、上記気体吐出手段として、ノズルの外周に設けられたスリット14を用い、スリット14は、ノズルの開口部に向かって気体が吐出されるようにノズルの外周面を囲むように少なくとも一部に設けられていればよいが、周方向に沿って等間隔に数カ所設けられることが好ましく、さらにノズルの外周全体に亘って設けられていることがより好ましい。すなわち、二重管構造にすることが好ましい。なお、本実施形態において、ポリマー原液滴下装置10は、二重管構造であり、内側のノズルが外側のスリット端面よりも突出した構造を有している。
【0021】
さらに、本実施の形態におけるポリマービーズの製造装置は、ポリマー原液が貯留されているポリマー原液貯留槽20と、ポリマー原液貯留槽20からポリマー原液滴下装置10のノズルへポリマー原液を供給するポリマー原液供給路22とを有し、ポリマー原液供給路22にはポリマー原液を送液するポンプ26とバルブ24とが設けられている。また、本実施の形態におけるポリマービーズの製造装置は、気体が貯蔵された気体貯蔵部50と、スリット14に気体貯蔵部50から気体を供給するための気体供給路52と、気体を圧縮するためのコンプレッサ54とが設けられ、気体供給路52には、供給される気体の流速を計測する流量計56とバルブ28が設けられている。なお、制御部(図示せず)は、流量計56で計測された気体流速に基づいて、コンプレッサ54の送気量やバルブ28の開閉度を調節することによって、気体の流速を制御する。また、本実施の形態におけるポリマービーズの製造装置は、ポリマー原液滴下装置10の下方に設けられ、ポリマー原液中のポリマーに対して貧溶媒である凝固液32が貯留された凝固液槽30を有する。なお、上記気体として例えば空気を用いる場合、上述した気体貯蔵部50は必ずしも必要ない。
【0022】
次に、図1及び図2を用いて、本実施の形態におけるポリマービーズの製造方法の一例を説明する。まずバルブ24を開け、ポンプ26を駆動させ、ポリマー原液供給路22を介してポリマー原液貯留槽20からポリマー原液滴下装置10のノズル12内に、ポリマー原液を供給する。これにより、ポリマー原液の液滴がノズル12の先端に形成される。一方、バルブ28を開け、コンプレッサ54を駆動させ、流量計56にて気体の流速を計測しながら、気体貯蔵部50から気体をポリマー原液滴下装置10のスリット14に送気する。スリット14から吐出された気体は、ノズル12の先端に形成された液滴に当たり、ポリマー原液の液滴は、自重落下前に強制的に凝固液槽30の凝固液32に落下し、凝固液32内でポリマーが凝固し、ポリマービーズ40が形成される。
【0023】
ここで、上記ポリマー溶液は、数平均分子量が10,000以上のポリマーと、各ポリマーに対して相溶性を有する溶媒とを含有する。また、必要に応じて、上記ポリマー溶液として、例えば、数平均分子量が10,000以上であって、凝固価が異なる少なくとも2種のポリマーと、各ポリマーに対して相溶性を有する溶媒とを含有するポリマー溶液を用いてもよい。かかる場合、凝固価の異なる各ポリマーは凝固液内で凝固速度が異なり、その結果、各ポリマーが析出するまでに時間差が生じ、凝固価の相対的に小さいポリマーが先に凝集して析出を開始し、その時点で凝固価の相対的に大きいポリマーは溶解状態にあるため、凝固価の相対的に小さいポリマーは、凝固価の相対的に大きいポリマーによって運動が阻まれ、これにより、凝固価の相対的に小さいポリマーの凝集速度は、単独の場合に比べ遅くなり、ポリマー系全体が不均一な凝集が起こる。その結果、凝固したポリマー内に多数の細孔が形成され、多孔質ビーズが得られる。
【0024】
ポリマービーズ(上記多孔質ビーズを含む)40は、凝固液32から分別され、後に精製水にて洗浄され、乾燥させる。
【0025】
さらに、本実施の形態におけるポリマービーズの製造装置におけるポリマー原液滴下装置10の構成について、図2を用いて説明する。なお、図3には、従来の装置構成の一例を示す。図2に示すように、ポリマー原液滴下装置10は、ポリマー原液が供給され滴下するためのノズル12と、気体が吐出されるスリット14とを備える。一方、図3の装置は、ノズル12のみから成る。ここで、ポリマー原液は通常ある粘度を有し、図3に示すように、従来は、ノズル12から押し出されてノズル12の先端に形成された液滴は、自重により凝固液32に落下する。落下時の液滴142の大きさは、ノズル12径より遙かに大きく、得られるポリマービーズ140の径も大きかった。しかしながら、図2に示すように、スリット14より気体を吐出することにより、ノズル12の先端に形成された液滴に気体が当たり、液滴の自重落下前に落下させることができる。したがって、図2に示すように、図3の落下時に液滴142より径の小さい液滴42で落下させることができ、得られるポリマービーズ40の径を従来に比べ小さくすることができる。さらに、スリット14から吐出させる気体の流量に応じて、落下させる液滴42の径を制御することができる。また、スリット14から吐出させる気体の流速が小さい場合であっても、ノズル12の外径以上の径に成長したノズル12の先端の液滴の側面部分に気体が当たれば、液滴は、自重落下前にノズル12から離脱し落下される。また、例えば、粘度の高いポリマー原液をノズルから滴下する場合、ノズルの内径を大きくしたとしても、スリットからの気体吐出により、従来に比べ小粒径の液滴を落下させることができ、ポリマービーズの生産性も向上する。
【0026】
本実施の形態において、ノズル12から滴下されるポリマー原液の粘度は、0.1Pasから2.0Pasであり、一方、ノズル12の内径は、0.1mm以上0.3mm以下であり、ノズル12の外径は、0.2mm以上0.6mm以下であり、ノズル12の外径以下の粒径を有するポリマービーズを生成させるために、ノズル12の内径と外径の比は、2/6から5/6であって、ノズル突出長は、1mmから5mmである。また、ノズル12の外周に沿って気体が吐出されるスリット14のスリット間隔は、0.05mmから2.0mmであり、スリット14から吐出される気体の流速は、0.05L/minから0.3L/minである。
【0027】
さらに、本実施の形態において、ノズル12に振動を与える構成を加えてもよく、その際の振動周波数は、10kHzから100kHzが好ましい。
【0028】
さらに、本実施の形態におけるポリマー原液に含まれるポリマーとしては、例えば、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリスルホン酸樹脂(PES)、酢酸セルロース、ポルスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等から選ばれ、これらの樹脂のポリマーの組み合わせも使用することができる。
【0029】
上記ポリアリレート樹脂は、下記化学式(1)で表わされる繰り返し単位を有する樹脂である。
【0030】
【化1】

【0031】
化学式(1)において、R1およびR2は炭素数が1〜5の低級アルキル基であり、R1およびR2はそれぞれ同一であっても相違していてもよい。R1およびR2としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。好ましいR1およびR2は、メチル基である。
【0032】
ポリエーテルスルホン樹脂は、下記化学式(2)または化学式(3)で表わされる繰り返し単位を有する樹脂である。
【化2】

【0033】
化学式(2)において、R3およびR4は炭素数が1〜5の低級アルキル基であり、R3およびR4はそれぞれ同一であっても相違していてもよい。R3およびR4としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。好ましいR1およびR2は、メチル基である。
【0034】
【化3】

【0035】
本実施の形態における液滴に吹き付ける気体としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどが挙げられ、空気以外の気体は、通常図1に示す気体貯蔵部50に貯蔵されている。
【0036】
また、本実施の形態において、図1では1本のノズル12を図示したが、これに限るものではなく、複数本のノズル12からなるマルチノズルであってもよく、ノズル12は、例えば1本から500本の範囲で任意に選択される。また、複数本のノズル12を配置する場合、円周状、格子状など任意に配置される。また、複数本のノズル12を配置する場合、粒径のばらつきを抑制し、精度よく任意に粒径を調節するために、各ノズル12に気体吐出手段であるスリット14が設けられる。
【0037】
次に、本発明の他の実施の形態におけるポリマービーズの製造装置について、以下に説明する。なお、他の実施の形態におけるポリマービーズの製造装置は、上述したポリマー原液滴下装置10(図1に示す)と構成が異なる以外は、同じ構成であるため、同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
図4に示すように、他の実施の形態におけるポリマー原液滴下装置100は、ノズル先端がノズル長に対して斜めに切断された斜端面16を有するノズル12aと、ノズルの外周に沿って気体を吐出させるスリット14とが設けられている。したがって、スリット14から吐出される気体の流量が同じであっても、ノズル12aの先端の斜端面16に形成された液滴は、図2に示すノズル12の先端に形成された液滴より相対的に多くの気体が吹き付ける。このため、図4に示すポリマー原液滴下装置100は、図2に示すポリマービーズの製造装置10に比べ、同一吐出気体流量の場合であっても、落下する液滴44を図2に示す液滴42より小粒径にすることができ、さらに、スリット14から吐出される気体の流量を制御することにより、ノズル12aの外径未満の小粒径の液滴44を生成することができる。
【0039】
ノズル12aの斜端面16とノズル長方向との成す角度は、鋭角であるほど小粒径のポリマービーズを製造することができる。本実施の形態におけるノズル12aの斜端面16とノズル長方向との成す角度は、10°から80°が好ましく、より好ましくは10°から45°である。
【0040】
なお、他の実施の形態において、ノズル12aの寸法、ノズル12aの本数、ノズル12aの配置、スリット14の配置については、上述したノズル12の場合と同様であり、また、他の実施の形態に用いるポリマー原液及び気体の具体例も同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0041】
また、本発明のさらに他の実施の形態におけるポリマービーズの製造装置について、以下に説明する。なお、他の実施の形態におけるポリマービーズの製造装置は、上述したポリマー原液滴下装置10(図1に示す)と構成が異なる以外は、同じ構成であるため、同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図5に示すように、他の実施の形態では、ポリマー原液滴下装置10に加え、ノズル12から滴下されるポリマー原液の液滴の側面方向から気体を吐出する側面気体吐出装置60が設けられている。側面気体吐出装置60は、気体を間欠的または連絡的に吐出する。したがって、スリット14から吐出される気体の流量が同じであっても、ノズル12の先端に形成された液滴は、側面気体吐出装置60から吐出された気体によって、図2に示すノズル12の先端に形成された液滴より相対的に小粒径で凝固液32に落下する。ここで、さらに赤外線センサ等を用い、ノズル12の先端に形成される液滴の大きさをモニタしながら、側面気体吐出装置60から気体吐出タイミングや吐出量を制御してもよい。また、図5では、側面気体吐出装置60は、ノズル12のノズル長に対して略直交方向から気体と吐出するように配置されているが、これに限るものではなく、スリット14の吐出方向に対して少なくとも1°以上180°以下の角度から気体が吐出するように配置されていればよい。
【0043】
なお、上記実施の形態において、ノズル12の寸法、ノズル12の本数、ノズルの配置、スリット14の配置については、図1,2を用いて説明したノズル12の場合と同様であり、また、本実施の形態に用いるポリマー原液及び気体の具体例も上記同様であるため、ここではその説明を省略する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
ポリアリレート樹脂(以下PAR、数平均分子量25,000、ユニチカ製、商品名:Uポリマー)と、N−メチルピロリドン(NMP)とを用いてポリマー原液を調整した。PARとNMPとの質量混合比は14.0:86.0とした。N−メチルピロリドン水溶液(水にNMPを60%混合したもの)を凝固液とした。当該ポリマー溶液をノズル長5mm、内径0.19mm、外径0.36mmのノズル12(図1)からポリマー原液を吐出させ、同時にスリット間隔0.15mmのスリット14(図1)から流速(流量)0.15L/minで気体を吐出させ、ポリマー原液の液滴を凝固液槽へ滴下した。実施例1では、ポリマー原液の吐出量は72mg/minであった。凝固液内で十分に凝固を行った後、蒸留水で洗浄し、外径1.0mmの球形を呈するポリマービーズを得た。
【0046】
[実施例2]
ポリマー原液として、ポリアリレート樹脂(以下PAR、数平均分子量25,000、ユニチカ製、商品名:Uポリマー)とポリエーテルスルホン樹脂(以下PES、グレード4800P、数平均分子量21,000、住友化学工業製、商品名:スミカエクセルPES)と、N−メチルピロリドン(NMP)とを用い、PARとPESとNMPとの質量混合比は7.0:7.0:86.0とした以外は、実施例1に準じて多孔質ポリマービーズを製造した。得られた多孔質ポリマービーズは、外径0.8mmの球形を呈する多孔質ポリマービーズであった。
【0047】
[実施例3]
ノズル12(図1)として、ノズル長5mm、内径0.13mm、外径0.31mmのノズルを用い、スリット14から吐出される空気の流量を0.1L/minに代えた以外は、実施例1に準じてポリマービーズを製造した。得られたポリマービーズは、外径1.2mmの球形を呈するポリマービーズであった。
【0048】
[実施例4]
ノズル12(図1)として、ノズル長5mm、内径0.3mm、外径0.55mmのノズルを用い、スリット間隔2.0mmのスリット14から吐出される空気の流量を0.3L/minに代えた以外は、実施例1に準じてポリマービーズを製造した。得られたポリマービーズは、外径0.7mmの球形を呈するポリマービーズであった。
【0049】
[比較例]
スリット14から空気を吐出させない以外は実施例1に準じてポリマービーズを製造した。得られたポリマービーズは、外径2.0mmの球形を呈するポリマービーズであった。
【0050】
[実施例5]:
ノズル12a(図4)として、ノズル先端の斜端面とノズル長方向との成す角度が45°であって、ノズル長5mm、内径0.19mm、外径0.36mmのノズルを用いた以外は、実施例1に準じてポリマービーズを製造した。得られたポリマービーズは、外径0.8mmの球形を呈するポリマービーズであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、ポリマービーズの製造用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態におけるポリマービーズの製造装置の一例を示す概要構成図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるポリマービーズの製造装置のポリマー原液滴下装置の一例の構成を説明する図である。
【図3】従来のポリマービーズの製造装置のポリマー原液滴下装置の一例の構成を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるポリマービーズの製造装置の他のポリマー原液滴下装置の構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるポリマービーズの製造装置の他のポリマー原液滴下装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0053】
10,100 ポリマー原液滴下装置、12,12a ノズル、14 スリット、16 斜端面、20 ポリマー原液貯留槽、22 ポリマー原液供給路、24,28 バルブ、26 ポンプ、30 凝固液槽、32 凝固液、40,140 ポリマービーズ、42,44,142 液滴、50 気体貯蔵部、52 気体供給路、54 コンプレッサ、56 流量計、60 側面気体吐出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー溶液を滴下するノズルと、
前記ノズルの開口部に向かって気体を吐出させる気体吐出手段と、
を備えたことを特徴とするポリマービーズの製造装置。
【請求項2】
さらに、気体吐出手段から吐出される気体の流速を制御する流速制御装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のポリマービーズの製造装置。
【請求項3】
前記ノズルは、二重管構造を有し、内側のノズルから前記ポリマー溶液が滴下され、外側のスリットから前記気体が吐出されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリマービーズの製造装置。
【請求項4】
ノズルから押し出されノズル先端に形成されたポリマー溶液の液滴に気体を吹き付け、前記ポリマー溶液のポリマーに対し貧溶媒からなる凝固液中に、自重落下前に液滴を落下させることを特徴とするポリマービーズの製造方法。
【請求項5】
さらに、ノズル先端に形成されたポリマー溶液の液滴に吹き付ける気体の流速を制御してビーズの粒径を制御することを特徴とする請求項4に記載のポリマービーズの製造方法。
【請求項6】
前記ポリマー溶液は、数平均分子量が10,000以上のポリマーと、各ポリマーに対して相溶性を有する溶媒とを含むことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のポリマービーズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−144055(P2010−144055A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322911(P2008−322911)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】