ポリマーフィルムの延伸方法
【課題】延伸時にフィルム及び接合テープが破損することがない。
【解決手段】先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とを、ポリエステル基材を基材とする両面接合テープ41と、TACフィルム製造時に用いたドープ用溶媒のアセトンを用いて接合する。両面接合テープ41は、TACフィルム3と同材質の基材と、基材上に設けられる粘着層とを有するものであり、粘着層は基材の両面に塗布されている。テンタ部5でTACフィルム3を延伸する。アセトンを塗布エリアSAにスプレーにより塗布する。TACフィルム3の両側縁部を、耳切装置で切断する。TACフィルム3のスリット状に切り離された耳屑を、カットブロアで細かくカットする。カットされた耳屑小片は、風送装置によりクラッシャーに送られ、粉砕されてチップとなる。
【解決手段】先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とを、ポリエステル基材を基材とする両面接合テープ41と、TACフィルム製造時に用いたドープ用溶媒のアセトンを用いて接合する。両面接合テープ41は、TACフィルム3と同材質の基材と、基材上に設けられる粘着層とを有するものであり、粘着層は基材の両面に塗布されている。テンタ部5でTACフィルム3を延伸する。アセトンを塗布エリアSAにスプレーにより塗布する。TACフィルム3の両側縁部を、耳切装置で切断する。TACフィルム3のスリット状に切り離された耳屑を、カットブロアで細かくカットする。カットされた耳屑小片は、風送装置によりクラッシャーに送られ、粉砕されてチップとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムの延伸方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学用途に用いられる各種のポリマーフィルムは、一般には流延ダイを用いてドープを支持体上に流延させ、これを支持体から剥ぎ取った後、乾燥工程を経て巻き取ることにより製造されている。これは、溶液製膜方法と呼ばれている代表的なフィルムの製造方法である。ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が用いられている。
【0003】
上記した溶液製膜を行う溶液製膜設備により製造されたTACフィルムは、平面性や機械的強度、光学特性等を改良するために、溶液製膜ラインとは別にオフラインで延伸することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のように、溶液製膜ラインとは別にオフラインで延伸する場合には、延伸を効率よく行うために連続して延伸することが好ましい。この場合には、先行するフィルムの後端に、後行するフィルムの先端を、接合テープを用いて接合することが考えられる。
【特許文献1】特開2002−311240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、TACフィルムと接合テープとの剛性の違いにより、延伸時にTACフィルム及び接合テープが破損するという問題があった。このように、接合部による剛性の不均一に起因する接合部の破損という現象が発生すると、TACフィルムを連続してオフライン延伸することができないという問題がある。したがって、新たなTACフィルムをオフライン延伸装置にセットする度に、先行するTACフィルムの後端部がテンタ部を通過した後に、後行するTACフィルムをテンタ部に送り込む必要があるため、TACフィルムの損失部分が多くなり、さらには、テンタ部の調整作業及び送り込み作業により稼働時間が減少するという問題があった。このような問題は、TACフィルムに限らず、他のポリマーフィルムにもある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、フィルムをオフラインで延伸するときに、フィルム及び接合テープが破損することがないポリマーフィルムの延伸方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のポリマーフィルムの延伸方法は、先行するポリマーフィルムの後端部に、後行するポリマーフィルムの先端部を延伸追従接合テープにより接合して前記ポリマーフィルムを連続させて供給する供給工程と、前記供給工程からの前記ポリマーフィルムの両側縁部を複数のクリップにより把持して搬送しながらフィルム幅方向に延伸する延伸工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記延伸追従接合テープは、前記ポリマーフィルムと同材質の基材と、この基材上に設けられる粘着層とを有すること、または、前記ポリマーフィルムと略同じ延伸挙動を延伸温度域で示す材質からなる基材と、この基材上に設けられる粘着層とを有することが好ましい。
【0009】
さらに、前記ポリマーフィルム同士の接合における接合ラインがフィルム幅方向に交差して配置されることが好ましい。
【0010】
また、延伸後の前記ポリマーフィルムの、フィルム幅方向中央部の製品部分からこの製品部分の両側に位置し前記クリップによる把持される部分をスリット状に切り離し耳屑とする裁断工程と、前記耳屑をカットブロアにより小片に切断して風送するカットブロア工程と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリマーフィルムの延伸方法によれば、先行するポリマーフィルムと後行するポリマーフィルムとを延伸追従接合テープにより接合したから、延伸後に、フィルム及びテープが破損することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すように、オフライン延伸装置2は、TACフィルム3を延伸するものであり、供給室4と、テンタ部5と、熱緩和室6と、冷却室7と、巻取室8とを備える。供給室4には、溶液製膜設備で製造され、ロール状にされたTACフィルム3が収納されており、供給ローラ9により、TACフィルム3をテンタ部5に供給する。
【0013】
テンタ部5に送られたTACフィルム3は、その両端部がクリップ15(図2参照)で把持されて搬送されながら加熱され、TACフィルム3がフィルム幅方向B(図2参照)に延伸される。テンタ部5は、TACフィルム3を幅方向に100.5%〜300%延伸することが好ましい。
【0014】
供給室4とテンタ部5との間には、リザーバ10が設けられている。リザーバ10では、後述するフィルム接合処理に必要な時間分以上のループを形成した後に、TACフィルム3をテンタ部5に送り出している。
【0015】
図2に示すように、テンタ部5は、TACフィルム3をフィルム搬送方向Aに搬送してフィルム幅方向Bに延伸するものであり、第1レール11と、第2レール12と、これらレール11,12に案内される第1,第2チェーン(エンドレスチェーン)13,14とを備えている。テンタ部2の内部は、高温状態に保持されている。また、必要に応じて、テンタ部5を、フィルム搬送方向Aで複数のゾーンを分けて、ゾーン毎に、フィルム加熱条件を変えるようにしてもよい。例えば、フィルム搬送方向Aに順に、予熱ゾーン、加熱ゾーン、熱緩和ゾーンを設けるとよい。
【0016】
第1,第2チェーン13,14には、クリップ15が一定の間隔で多数取り付けられている。このクリップ15は、TACフィルム3の側縁部を把持しながら、各レール11,12に沿って移動することで、TACフィルム3をフィルム幅方向Bに延伸する。なお、本実施形態では、延伸前のTACフィルム3の幅を100%としたとき、延伸後の幅が103%となるように延伸するが、これに限定されることなく、延伸倍率は所望の光学特性等に合わせて適宜変更されるものである。
【0017】
第1,第2チェーン13,14は、原動スプロケット21,22及び従動スプロケット23,24の間に掛け渡されており、これらスプロケット21〜24の間では、第1チェーン13は第1レール11によって、第2チェーン14は第2レール12によって案内される。原動スプロケット21,22はテンタ出口27側に設けられており、これらは図示しない駆動機構により回転駆動され、従動スプロケット23,24はテンタ入口26側に設けられている。
【0018】
図3に示すように、クリップ15は、クリップ本体31とレール取付部32とから構成されている。クリップ本体31は、略コ字形状のフレーム33とフラッパ34とから構成されており、フラッパ34は、取付軸33aによりフレーム33に回動自在に取り付けられている。フラッパ34は鉛直状態となるフィルム把持位置(閉位置)と、開放部材40に係合頭部34aが接触して斜めに回転した状態となる開放位置(図3参照)との間で変位し、通常は自重によりフィルム把持位置となるように付勢されている。フィルム把持位置PAでは、フィルム把持面33bとフラッパ下面34bとによりTACフィルム3が把持される。
【0019】
レール取付部32は、取付フレーム35と、ガイドローラ36,37,38とから構成されている。取付フレーム35には、第1チェーン13または第2チェーン14が取り付けられる。ガイドローラ36〜38は、原動スプロケット21,22の各支持面に接触するか、第1レール11または第2レール12の支持面に接触するかして、回転する。これにより、各スプロケット21,22や各レール11,12からクリップ本体31が脱落することなく、各レール11,12に沿って案内される。
【0020】
スプロケット21〜24に近接して、クリップ15の開放部材40が配置されている。この開放部材40は、テンタ入口26の従動スプロケット23,24では、フィルム把持位置PAの前で、クリップ15の係合頭部34aに接触してこれを開放状態にし、TACフィルム3の側縁部の受け入れを可能にする。そして、フィルム把持位置PAを通過するときに開放部材40が前記係合頭部34aから離れ、クリップ15が開放位置から把持位置にセットされて、TACフィルム3の側縁部が把持される。同様にして、テンタ出口27の原動スプロケット21,22では、TACフィルム3の把持解除位置PBで開放部材40によりクリップ15が開放位置にされて、TACフィルム3の側縁部の把持が開放される。
【0021】
図4及び図5に示すように、テンタ部5でTACフィルム3を連続して延伸させるために、供給室4にセットされたTACフィルム(先行フィルム)3aの後端部と、新たなTACフィルム(後行フィルム)3bの先端部とを、日東電工(株)製のNo.532のポリエステル基材を基材とする両面接合テープ(延伸追従接合テープ)41を用いて接合する。両面接合テープ41は、TACフィルム3と略同じ延伸挙動を延伸温度域で示すポリエステル基材と、基材上に設けられる粘着層とを有するものであり、粘着層は基材の両面に塗布されている。
【0022】
先行フィルム3aの後端部と、後行フィルム3bの先端部とを両面接合テープ41により接合するときには、先ず、先行フィルム3aの後端部の上面に両面接合テープ41を貼り付ける。次に、先行フィルム3aの後端部の塗布エリアSAに、スプレーによりTACフィルム製造時に用いたドープ用溶媒の1つであるアセトンを塗布する。そして、後行フィルム3bの先端部を、先行フィルム3aの後端部の上に載せて、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とを両面接合テープ41により接合する。このとき、先行フィルム3aの後端部の両側縁部と後行フィルム3bの先端部の両側縁部とを圧着させてアセトンにより接合する。TACフィルム3の接合時、テンタ部5には、リザーバ10に収納されていたTACフィルム3が搬送されるから、テンタ部5を停止させることなく、TACフィルム3の接合を行うことができる。なお、この接合は、機械により自動的に行うようにしてもよいし、簡易システムの場合には、人手により行うようにしてもよい。また、両面接合テープ41と塗布エリアSAとは、耳切装置44(図1参照)による切り離しラインILを跨ぐように貼り付け及び塗布されている。
【0023】
両面接合テープ41及びアセトンを用いて、先行フィルム3aと後行フィルム3bとを接合し、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、TACフィルム3及び両面接合テープ41の延伸温度域における延伸挙動は略同じであり、延伸後のTACフィルム3及び両面接合テープ41の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。なお、本実施形態では、延伸前のTACフィルム3のフィルム幅W1=690mm、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とのフィルム搬送方向Aにおけるオーバーラップ量=100mmとしている。また、アセトンに代えて、酢酸メチル、ジオキソランにより溶着した場合にも、200℃での1.45倍の延伸後に、TACフィルム3及び両面接合テープ41の破損がない。
【0024】
さらに、両面接合テープ41を、東洋インキ(株)製のR390Sの基材なし素材から構成して、先行フィルム3aと後行フィルム3bとを接合し、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3、両面接合テープ41及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0025】
また、図6に示すように、両面接合テープ41に加えて、日東電工(株)製のNo.31Bのポリエステル基材からなる片面接合テープ(延伸追従接合テープ)42により、先行フィルム3aと後行フィルム3bとを接合し、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3、両面接合テープ41及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。片面接合テープ42は、TACフィルム3と同材質の基材と、基材上に設けられる粘着層とを有するものであり、粘着層は基材の片面に塗布されている。
【0026】
さらに、図7に示すように、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部との接合を、上記した両面接合テープ41を用いた接合に代えて、片面接合テープ42により、先行フィルム3aと後行フィルム3bとの上下両面を接合し、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0027】
また、図8に示すように、先行フィルム3aと後行フィルム3bとを重ねずに、先行フィルム3aの後端と後行フィルム3bの先端とを突き合わせた状態で、片面接合テープ42により、先行フィルム3aと後行フィルム3bとの上下両面を接合するようにしてもよく、この接合後、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0028】
さらに、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部との接合を、上記した両面接合テープ41を用いずに、図9に示すように、ヒートシーラ50により接合し、250℃での3倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0029】
ヒートシーラ50は、シールヘッド51を備える。先行フィルム3aの後端部を受台52に載せ、この上に後行フィルム3bの先端部を載せた状態で、加熱させたシールヘッド51を上方から加圧して、熱伝導により、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とを接合する。なお、ヒートシーラ50に代えて、インパルスシーラにより、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とを接合するようにしてもよい。この場合にも、250℃での3倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0030】
また、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部との接合を、上記した両面接合テープ41を用いずに、図10に示すように、超音波接合装置53により接合し、250℃での3倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0031】
超音波接合装置53は、TACフィルム3を、例えば、振幅0.03mm、毎秒2万〜2万8千回で機械的に振動させて発熱させて溶着するものであり、振動子54、ホーン55、発信器56を備える。振動子54は2個設けられており、2個の振動子54の間には永久磁石57が配され、2個の振動子54には、それぞれコイル58が巻き掛けられている。発信器56は、コイル58を介して振動子54を駆動させる。振動子54は、電気振動を機械的振動に変換する。ホーン55は、振動子54による機械的振動を拡大して、受台59に載せられた先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とにエネルギーを与える(振動させる)。先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とは、振動により発熱されて溶着される。
【0032】
さらに、図11に示すように、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部との接合ラインが、フィルム幅方向Bに対して傾斜(傾斜角度θ=30°)するように、両面接合テープ41及び片面接合テープ42により接合するようにしてもよい。先ず、図11(A)に示すように、先行フィルム3aの後端と後行フィルム3bの先端とを、TACフィルム3の幅方向に対して傾斜するようにカットし、傾斜に沿って両面接合テープ41を先行フィルム3aの後端部の上面に貼り付ける。
【0033】
次に、図11(B)に示すように、後行フィルム3bの先端部を、先行フィルム3aの後端部の上に載せ、上記傾斜に沿って、片面接合テープ42を、後行フィルム3bの先端部と先行フィルム3aの後端部とに貼り付けて接合する。この接合後、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3、両面接合テープ41及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。なお、このように接合部を斜めにすることにより、各接合テープ41,42をTACフィルム3とは異なる材質の基材から構成した場合にも、150℃での1.25倍の延伸後、及び、200℃での1.45倍の延伸後のTACフィルム3、両面接合テープ41及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。また、本実施形態では、延伸前のTACフィルム3のフィルム幅W1=690mm、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とのオーバーラップ量R1=100mm、片面接合テープ42の長さL1=80mmとしている。さらに、片面接合テープ42を用いずに、両面接合テープ41のみで接合した場合にも、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3及び両面接合テープ41の破損はなく、良好であった。
【0034】
なお、上記した傾斜角度θは30°に限定されることなく適宜変更可能である。また、先行フィルム3aの後端をカットせずに(後端がTACフィルム3の幅方向と平行のまま)、両面接合テープ41を、先行フィルム3aの後端部の上面に、TACフィルム3の幅方向に対して傾斜させて貼り付けるようにしてもよい。
【0035】
図1に示すように、TACフィルム3は、テンタ部5で延伸された後、耳切装置44に送り出される。TACフィルム3は、耳切装置44によりその両側縁部が切り離しラインIL(図4参照)で切り離され、切り離されたスリット状の側縁部である耳屑は、カットブロア45で細かく小片にカットされる。カットされた耳屑小片は、図示しない風送装置によりクラッシャー46に送られ、粉砕されてチップとなる。このチップはドープ調製用に再利用されるので、この方法はコストの点において有効である。
【0036】
先行フィルム3a及び後行フィルム3bの耳屑は、アセトンにより溶着されているため、接合した状態のまま、再利用することができる。これにより、再利用時のテープ除去の手間を省くことができる。耳切装置44によりその両側縁部が切り離されたTACフィルム3は、熱緩和室6に送られる。
【0037】
熱緩和室6には、多数のローラ47が備えられており、TACフィルム3はローラ47により熱緩和室6内を搬送されて熱緩和された後、冷却室7に送られる。なお、熱緩和室6では、送風機(図示せず)から所望の温度の風が送風される。このときの風の温度は、20℃〜250℃であることが好ましい。
【0038】
熱緩和後のTACフィルム3は、冷却室7で30℃以下に冷却された後、巻取室8に送られる。巻取室8の内部には、巻取ローラ48、プレスローラ49が設けられている。巻取室8に送られたTACフィルム3は、巻取ローラ48で巻き取られる。この際に、プレスローラ49で押圧されて巻き取られる。
【0039】
TACフィルム3は、周知の溶液製膜方法で製造されるものであればよく、例えば、特開2005−104148号公報に記載されているTACフィルムを用いることができる。特に、製膜速度の向上を図るべく、冷却した流延ドラムの周面に、TACと溶媒とを含むドープを流延し、この流延膜が冷却ゲル化して自己支持性を有した後に剥ぎ取って、ピンテンタを経て乾燥させ巻取り収納したTACフィルムに対して、本発明を実施することにより、効率よく且つ無駄なく光学特性に優れたTACフィルムを製造することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、ポリマーフィルムとしてTACフィルム3を用いて説明を行ったが、TACフィルム3に限定されることなく、本発明は各種ポリマーフィルムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】オフライン延伸装置を示す平面図である。
【図2】テンタ部を示す平面図である。
【図3】クリップを示す側面図である。
【図4】先行フィルムと後行フィルムと両面接合テープとを示す斜視図である。
【図5】先行フィルムと後行フィルムと両面接合テープとを示す側面図である。
【図6】先行フィルムと後行フィルムと両面接合テープと片面接合テープとを示す側面図である。
【図7】先行フィルムと後行フィルムと片面接合テープとを示す側面図である。
【図8】先行フィルムと後行フィルムと片面接合テープとを示す側面図である。
【図9】ヒートシーラを示す側面図である。
【図10】超音波接合装置を示す側面図である。
【図11】先行フィルムと後行フィルムとの接合部を、TACフィルムの幅方向に対して傾斜させた実施形態の先行フィルムと後行フィルムと両面接合テープと片面接合テープとを示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
2 オフライン延伸装置
3 TACフィルム
5 テンタ部
15 クリップ
41 両面接合テープ(延伸追従接合テープ)
42 片面接合テープ(延伸追従接合テープ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムの延伸方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学用途に用いられる各種のポリマーフィルムは、一般には流延ダイを用いてドープを支持体上に流延させ、これを支持体から剥ぎ取った後、乾燥工程を経て巻き取ることにより製造されている。これは、溶液製膜方法と呼ばれている代表的なフィルムの製造方法である。ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が用いられている。
【0003】
上記した溶液製膜を行う溶液製膜設備により製造されたTACフィルムは、平面性や機械的強度、光学特性等を改良するために、溶液製膜ラインとは別にオフラインで延伸することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のように、溶液製膜ラインとは別にオフラインで延伸する場合には、延伸を効率よく行うために連続して延伸することが好ましい。この場合には、先行するフィルムの後端に、後行するフィルムの先端を、接合テープを用いて接合することが考えられる。
【特許文献1】特開2002−311240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、TACフィルムと接合テープとの剛性の違いにより、延伸時にTACフィルム及び接合テープが破損するという問題があった。このように、接合部による剛性の不均一に起因する接合部の破損という現象が発生すると、TACフィルムを連続してオフライン延伸することができないという問題がある。したがって、新たなTACフィルムをオフライン延伸装置にセットする度に、先行するTACフィルムの後端部がテンタ部を通過した後に、後行するTACフィルムをテンタ部に送り込む必要があるため、TACフィルムの損失部分が多くなり、さらには、テンタ部の調整作業及び送り込み作業により稼働時間が減少するという問題があった。このような問題は、TACフィルムに限らず、他のポリマーフィルムにもある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、フィルムをオフラインで延伸するときに、フィルム及び接合テープが破損することがないポリマーフィルムの延伸方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のポリマーフィルムの延伸方法は、先行するポリマーフィルムの後端部に、後行するポリマーフィルムの先端部を延伸追従接合テープにより接合して前記ポリマーフィルムを連続させて供給する供給工程と、前記供給工程からの前記ポリマーフィルムの両側縁部を複数のクリップにより把持して搬送しながらフィルム幅方向に延伸する延伸工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記延伸追従接合テープは、前記ポリマーフィルムと同材質の基材と、この基材上に設けられる粘着層とを有すること、または、前記ポリマーフィルムと略同じ延伸挙動を延伸温度域で示す材質からなる基材と、この基材上に設けられる粘着層とを有することが好ましい。
【0009】
さらに、前記ポリマーフィルム同士の接合における接合ラインがフィルム幅方向に交差して配置されることが好ましい。
【0010】
また、延伸後の前記ポリマーフィルムの、フィルム幅方向中央部の製品部分からこの製品部分の両側に位置し前記クリップによる把持される部分をスリット状に切り離し耳屑とする裁断工程と、前記耳屑をカットブロアにより小片に切断して風送するカットブロア工程と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリマーフィルムの延伸方法によれば、先行するポリマーフィルムと後行するポリマーフィルムとを延伸追従接合テープにより接合したから、延伸後に、フィルム及びテープが破損することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すように、オフライン延伸装置2は、TACフィルム3を延伸するものであり、供給室4と、テンタ部5と、熱緩和室6と、冷却室7と、巻取室8とを備える。供給室4には、溶液製膜設備で製造され、ロール状にされたTACフィルム3が収納されており、供給ローラ9により、TACフィルム3をテンタ部5に供給する。
【0013】
テンタ部5に送られたTACフィルム3は、その両端部がクリップ15(図2参照)で把持されて搬送されながら加熱され、TACフィルム3がフィルム幅方向B(図2参照)に延伸される。テンタ部5は、TACフィルム3を幅方向に100.5%〜300%延伸することが好ましい。
【0014】
供給室4とテンタ部5との間には、リザーバ10が設けられている。リザーバ10では、後述するフィルム接合処理に必要な時間分以上のループを形成した後に、TACフィルム3をテンタ部5に送り出している。
【0015】
図2に示すように、テンタ部5は、TACフィルム3をフィルム搬送方向Aに搬送してフィルム幅方向Bに延伸するものであり、第1レール11と、第2レール12と、これらレール11,12に案内される第1,第2チェーン(エンドレスチェーン)13,14とを備えている。テンタ部2の内部は、高温状態に保持されている。また、必要に応じて、テンタ部5を、フィルム搬送方向Aで複数のゾーンを分けて、ゾーン毎に、フィルム加熱条件を変えるようにしてもよい。例えば、フィルム搬送方向Aに順に、予熱ゾーン、加熱ゾーン、熱緩和ゾーンを設けるとよい。
【0016】
第1,第2チェーン13,14には、クリップ15が一定の間隔で多数取り付けられている。このクリップ15は、TACフィルム3の側縁部を把持しながら、各レール11,12に沿って移動することで、TACフィルム3をフィルム幅方向Bに延伸する。なお、本実施形態では、延伸前のTACフィルム3の幅を100%としたとき、延伸後の幅が103%となるように延伸するが、これに限定されることなく、延伸倍率は所望の光学特性等に合わせて適宜変更されるものである。
【0017】
第1,第2チェーン13,14は、原動スプロケット21,22及び従動スプロケット23,24の間に掛け渡されており、これらスプロケット21〜24の間では、第1チェーン13は第1レール11によって、第2チェーン14は第2レール12によって案内される。原動スプロケット21,22はテンタ出口27側に設けられており、これらは図示しない駆動機構により回転駆動され、従動スプロケット23,24はテンタ入口26側に設けられている。
【0018】
図3に示すように、クリップ15は、クリップ本体31とレール取付部32とから構成されている。クリップ本体31は、略コ字形状のフレーム33とフラッパ34とから構成されており、フラッパ34は、取付軸33aによりフレーム33に回動自在に取り付けられている。フラッパ34は鉛直状態となるフィルム把持位置(閉位置)と、開放部材40に係合頭部34aが接触して斜めに回転した状態となる開放位置(図3参照)との間で変位し、通常は自重によりフィルム把持位置となるように付勢されている。フィルム把持位置PAでは、フィルム把持面33bとフラッパ下面34bとによりTACフィルム3が把持される。
【0019】
レール取付部32は、取付フレーム35と、ガイドローラ36,37,38とから構成されている。取付フレーム35には、第1チェーン13または第2チェーン14が取り付けられる。ガイドローラ36〜38は、原動スプロケット21,22の各支持面に接触するか、第1レール11または第2レール12の支持面に接触するかして、回転する。これにより、各スプロケット21,22や各レール11,12からクリップ本体31が脱落することなく、各レール11,12に沿って案内される。
【0020】
スプロケット21〜24に近接して、クリップ15の開放部材40が配置されている。この開放部材40は、テンタ入口26の従動スプロケット23,24では、フィルム把持位置PAの前で、クリップ15の係合頭部34aに接触してこれを開放状態にし、TACフィルム3の側縁部の受け入れを可能にする。そして、フィルム把持位置PAを通過するときに開放部材40が前記係合頭部34aから離れ、クリップ15が開放位置から把持位置にセットされて、TACフィルム3の側縁部が把持される。同様にして、テンタ出口27の原動スプロケット21,22では、TACフィルム3の把持解除位置PBで開放部材40によりクリップ15が開放位置にされて、TACフィルム3の側縁部の把持が開放される。
【0021】
図4及び図5に示すように、テンタ部5でTACフィルム3を連続して延伸させるために、供給室4にセットされたTACフィルム(先行フィルム)3aの後端部と、新たなTACフィルム(後行フィルム)3bの先端部とを、日東電工(株)製のNo.532のポリエステル基材を基材とする両面接合テープ(延伸追従接合テープ)41を用いて接合する。両面接合テープ41は、TACフィルム3と略同じ延伸挙動を延伸温度域で示すポリエステル基材と、基材上に設けられる粘着層とを有するものであり、粘着層は基材の両面に塗布されている。
【0022】
先行フィルム3aの後端部と、後行フィルム3bの先端部とを両面接合テープ41により接合するときには、先ず、先行フィルム3aの後端部の上面に両面接合テープ41を貼り付ける。次に、先行フィルム3aの後端部の塗布エリアSAに、スプレーによりTACフィルム製造時に用いたドープ用溶媒の1つであるアセトンを塗布する。そして、後行フィルム3bの先端部を、先行フィルム3aの後端部の上に載せて、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とを両面接合テープ41により接合する。このとき、先行フィルム3aの後端部の両側縁部と後行フィルム3bの先端部の両側縁部とを圧着させてアセトンにより接合する。TACフィルム3の接合時、テンタ部5には、リザーバ10に収納されていたTACフィルム3が搬送されるから、テンタ部5を停止させることなく、TACフィルム3の接合を行うことができる。なお、この接合は、機械により自動的に行うようにしてもよいし、簡易システムの場合には、人手により行うようにしてもよい。また、両面接合テープ41と塗布エリアSAとは、耳切装置44(図1参照)による切り離しラインILを跨ぐように貼り付け及び塗布されている。
【0023】
両面接合テープ41及びアセトンを用いて、先行フィルム3aと後行フィルム3bとを接合し、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、TACフィルム3及び両面接合テープ41の延伸温度域における延伸挙動は略同じであり、延伸後のTACフィルム3及び両面接合テープ41の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。なお、本実施形態では、延伸前のTACフィルム3のフィルム幅W1=690mm、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とのフィルム搬送方向Aにおけるオーバーラップ量=100mmとしている。また、アセトンに代えて、酢酸メチル、ジオキソランにより溶着した場合にも、200℃での1.45倍の延伸後に、TACフィルム3及び両面接合テープ41の破損がない。
【0024】
さらに、両面接合テープ41を、東洋インキ(株)製のR390Sの基材なし素材から構成して、先行フィルム3aと後行フィルム3bとを接合し、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3、両面接合テープ41及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0025】
また、図6に示すように、両面接合テープ41に加えて、日東電工(株)製のNo.31Bのポリエステル基材からなる片面接合テープ(延伸追従接合テープ)42により、先行フィルム3aと後行フィルム3bとを接合し、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3、両面接合テープ41及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。片面接合テープ42は、TACフィルム3と同材質の基材と、基材上に設けられる粘着層とを有するものであり、粘着層は基材の片面に塗布されている。
【0026】
さらに、図7に示すように、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部との接合を、上記した両面接合テープ41を用いた接合に代えて、片面接合テープ42により、先行フィルム3aと後行フィルム3bとの上下両面を接合し、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0027】
また、図8に示すように、先行フィルム3aと後行フィルム3bとを重ねずに、先行フィルム3aの後端と後行フィルム3bの先端とを突き合わせた状態で、片面接合テープ42により、先行フィルム3aと後行フィルム3bとの上下両面を接合するようにしてもよく、この接合後、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0028】
さらに、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部との接合を、上記した両面接合テープ41を用いずに、図9に示すように、ヒートシーラ50により接合し、250℃での3倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0029】
ヒートシーラ50は、シールヘッド51を備える。先行フィルム3aの後端部を受台52に載せ、この上に後行フィルム3bの先端部を載せた状態で、加熱させたシールヘッド51を上方から加圧して、熱伝導により、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とを接合する。なお、ヒートシーラ50に代えて、インパルスシーラにより、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とを接合するようにしてもよい。この場合にも、250℃での3倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0030】
また、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部との接合を、上記した両面接合テープ41を用いずに、図10に示すように、超音波接合装置53により接合し、250℃での3倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。
【0031】
超音波接合装置53は、TACフィルム3を、例えば、振幅0.03mm、毎秒2万〜2万8千回で機械的に振動させて発熱させて溶着するものであり、振動子54、ホーン55、発信器56を備える。振動子54は2個設けられており、2個の振動子54の間には永久磁石57が配され、2個の振動子54には、それぞれコイル58が巻き掛けられている。発信器56は、コイル58を介して振動子54を駆動させる。振動子54は、電気振動を機械的振動に変換する。ホーン55は、振動子54による機械的振動を拡大して、受台59に載せられた先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とにエネルギーを与える(振動させる)。先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とは、振動により発熱されて溶着される。
【0032】
さらに、図11に示すように、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部との接合ラインが、フィルム幅方向Bに対して傾斜(傾斜角度θ=30°)するように、両面接合テープ41及び片面接合テープ42により接合するようにしてもよい。先ず、図11(A)に示すように、先行フィルム3aの後端と後行フィルム3bの先端とを、TACフィルム3の幅方向に対して傾斜するようにカットし、傾斜に沿って両面接合テープ41を先行フィルム3aの後端部の上面に貼り付ける。
【0033】
次に、図11(B)に示すように、後行フィルム3bの先端部を、先行フィルム3aの後端部の上に載せ、上記傾斜に沿って、片面接合テープ42を、後行フィルム3bの先端部と先行フィルム3aの後端部とに貼り付けて接合する。この接合後、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3、両面接合テープ41及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。これにより、TACフィルム3を連続して延伸することができる。なお、このように接合部を斜めにすることにより、各接合テープ41,42をTACフィルム3とは異なる材質の基材から構成した場合にも、150℃での1.25倍の延伸後、及び、200℃での1.45倍の延伸後のTACフィルム3、両面接合テープ41及び片面接合テープ42の破損はなく、良好であった。また、本実施形態では、延伸前のTACフィルム3のフィルム幅W1=690mm、先行フィルム3aの後端部と後行フィルム3bの先端部とのオーバーラップ量R1=100mm、片面接合テープ42の長さL1=80mmとしている。さらに、片面接合テープ42を用いずに、両面接合テープ41のみで接合した場合にも、150℃での1.25倍の延伸、200℃での1.45倍の延伸を行ったところ、延伸後のTACフィルム3及び両面接合テープ41の破損はなく、良好であった。
【0034】
なお、上記した傾斜角度θは30°に限定されることなく適宜変更可能である。また、先行フィルム3aの後端をカットせずに(後端がTACフィルム3の幅方向と平行のまま)、両面接合テープ41を、先行フィルム3aの後端部の上面に、TACフィルム3の幅方向に対して傾斜させて貼り付けるようにしてもよい。
【0035】
図1に示すように、TACフィルム3は、テンタ部5で延伸された後、耳切装置44に送り出される。TACフィルム3は、耳切装置44によりその両側縁部が切り離しラインIL(図4参照)で切り離され、切り離されたスリット状の側縁部である耳屑は、カットブロア45で細かく小片にカットされる。カットされた耳屑小片は、図示しない風送装置によりクラッシャー46に送られ、粉砕されてチップとなる。このチップはドープ調製用に再利用されるので、この方法はコストの点において有効である。
【0036】
先行フィルム3a及び後行フィルム3bの耳屑は、アセトンにより溶着されているため、接合した状態のまま、再利用することができる。これにより、再利用時のテープ除去の手間を省くことができる。耳切装置44によりその両側縁部が切り離されたTACフィルム3は、熱緩和室6に送られる。
【0037】
熱緩和室6には、多数のローラ47が備えられており、TACフィルム3はローラ47により熱緩和室6内を搬送されて熱緩和された後、冷却室7に送られる。なお、熱緩和室6では、送風機(図示せず)から所望の温度の風が送風される。このときの風の温度は、20℃〜250℃であることが好ましい。
【0038】
熱緩和後のTACフィルム3は、冷却室7で30℃以下に冷却された後、巻取室8に送られる。巻取室8の内部には、巻取ローラ48、プレスローラ49が設けられている。巻取室8に送られたTACフィルム3は、巻取ローラ48で巻き取られる。この際に、プレスローラ49で押圧されて巻き取られる。
【0039】
TACフィルム3は、周知の溶液製膜方法で製造されるものであればよく、例えば、特開2005−104148号公報に記載されているTACフィルムを用いることができる。特に、製膜速度の向上を図るべく、冷却した流延ドラムの周面に、TACと溶媒とを含むドープを流延し、この流延膜が冷却ゲル化して自己支持性を有した後に剥ぎ取って、ピンテンタを経て乾燥させ巻取り収納したTACフィルムに対して、本発明を実施することにより、効率よく且つ無駄なく光学特性に優れたTACフィルムを製造することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、ポリマーフィルムとしてTACフィルム3を用いて説明を行ったが、TACフィルム3に限定されることなく、本発明は各種ポリマーフィルムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】オフライン延伸装置を示す平面図である。
【図2】テンタ部を示す平面図である。
【図3】クリップを示す側面図である。
【図4】先行フィルムと後行フィルムと両面接合テープとを示す斜視図である。
【図5】先行フィルムと後行フィルムと両面接合テープとを示す側面図である。
【図6】先行フィルムと後行フィルムと両面接合テープと片面接合テープとを示す側面図である。
【図7】先行フィルムと後行フィルムと片面接合テープとを示す側面図である。
【図8】先行フィルムと後行フィルムと片面接合テープとを示す側面図である。
【図9】ヒートシーラを示す側面図である。
【図10】超音波接合装置を示す側面図である。
【図11】先行フィルムと後行フィルムとの接合部を、TACフィルムの幅方向に対して傾斜させた実施形態の先行フィルムと後行フィルムと両面接合テープと片面接合テープとを示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
2 オフライン延伸装置
3 TACフィルム
5 テンタ部
15 クリップ
41 両面接合テープ(延伸追従接合テープ)
42 片面接合テープ(延伸追従接合テープ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行するポリマーフィルムの後端部に、後行するポリマーフィルムの先端部を延伸追従接合テープにより接合して前記ポリマーフィルムを連続させて供給する供給工程と、
前記供給工程からの前記ポリマーフィルムの両側縁部を複数のクリップにより把持して搬送しながらフィルム幅方向に延伸する延伸工程と、を備えたことを特徴とするポリマーフィルムの延伸方法。
【請求項2】
前記延伸追従接合テープは、前記ポリマーフィルムと同材質の基材と、この基材上に設けられる粘着層とを有することを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの延伸方法。
【請求項3】
前記延伸追従接合テープは、前記ポリマーフィルムと略同じ延伸挙動を延伸温度域で示す材質からなる基材と、この基材上に設けられる粘着層とを有することを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの延伸方法。
【請求項4】
前記ポリマーフィルム同士の接合における接合ラインがフィルム幅方向に交差して配置されることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のポリマーフィルムの延伸方法。
【請求項5】
延伸後の前記ポリマーフィルムの、フィルム幅方向中央部の製品部分からこの製品部分の両側に位置し前記クリップによる把持される部分をスリット状に切り離し耳屑とする裁断工程と、
前記耳屑をカットブロアにより小片に切断して風送するカットブロア工程と、を備えることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のポリマーフィルムの延伸方法。
【請求項1】
先行するポリマーフィルムの後端部に、後行するポリマーフィルムの先端部を延伸追従接合テープにより接合して前記ポリマーフィルムを連続させて供給する供給工程と、
前記供給工程からの前記ポリマーフィルムの両側縁部を複数のクリップにより把持して搬送しながらフィルム幅方向に延伸する延伸工程と、を備えたことを特徴とするポリマーフィルムの延伸方法。
【請求項2】
前記延伸追従接合テープは、前記ポリマーフィルムと同材質の基材と、この基材上に設けられる粘着層とを有することを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの延伸方法。
【請求項3】
前記延伸追従接合テープは、前記ポリマーフィルムと略同じ延伸挙動を延伸温度域で示す材質からなる基材と、この基材上に設けられる粘着層とを有することを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの延伸方法。
【請求項4】
前記ポリマーフィルム同士の接合における接合ラインがフィルム幅方向に交差して配置されることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のポリマーフィルムの延伸方法。
【請求項5】
延伸後の前記ポリマーフィルムの、フィルム幅方向中央部の製品部分からこの製品部分の両側に位置し前記クリップによる把持される部分をスリット状に切り離し耳屑とする裁断工程と、
前記耳屑をカットブロアにより小片に切断して風送するカットブロア工程と、を備えることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のポリマーフィルムの延伸方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−238678(P2008−238678A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84424(P2007−84424)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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