説明

ポリマー粒子の改良

標識たんぱく質をポリマー粒子に共有結合させる方法であり、標識たんぱく質(標識は、少なくとも2つのヒスチジン残基と、少なくとも2つのリジン残基とを有する)を、キレート化剤(三座、四座、または五座のキレート化剤であり、少なくとも2つのカルボキシル基を有し、Co2+イオンが配位されている)−ポリマー粒子結合体と接触させ、たんぱく質−ポリマー粒子−キレート化剤Co2+イオン錯体を形成することと、前記錯体をカルボジイミドに接触させることと、任意に行われる前記Co2+イオンの除去とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標識たんぱく質に共有結合したポリマー粒子に関する。特に、本発明は、カルボキシメチル化アスパラギン酸塩(Cm−Asp)基の残基を介してHAT標識たんぱく質のHAT標識に結合した磁気ポリマー粒子、ならびに前記共有結合を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ポリマー粒子は、様々な医療および生化学の分野において、例えば、医薬製品の運搬のための輸送ビヒクルとして、診断目的、分離、および合成目的のため、一般に有用である。このような粒子は、機能を発揮するためにその磁気特性に依拠している。診断アッセイへの応用では、例えば、磁気ポリマー粒子に結合した分析物を含有する試料に磁場をかけると、遠心分離またはろ過を使用しなくても前記分析物を単離することが可能となる。また、治療への応用においては、例えば、患者に磁場をかけることにより、薬物を担持する磁気ポリマー粒子を所望の身体部位へと送り込むことができる。
【0003】
本明細書において、「磁気」とは、ポリマー粒子が超常磁性(superparamagnetic)結晶を含有することを意味する。したがって、この磁気ポリマー粒子は、磁気的に置き換え可能であるが、永久に磁化可能というものではない。磁気ポリマー粒子の製造方法は多数知られており、その大多数には、予め形成された磁気酸化鉄、例えば、マグネタイトから、マグヘマイトまたはマグネタイトを含有するポリマー粒子を形成することが含まれる。関連する方法のいくつかが、米国特許第4,654,267号明細書(Ugelstad)(特許文献1)に記載されており、その内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0004】
固定金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)の使用は、長年にわたって公知である。IMAC精製法は、遷移金属イオン、例えば、Cu2+またはNi2+(このCu2+またはNi2+は、たんぱく質表面に存在する電子供与基、特に、ヒスチジンのイミダゾール側鎖に結合することができる)を有するキレートマトリックスの使用に基づいている。電子供与基は、前記金属イオンの周りの空配位部位に配位すると考えられている。前記たんぱく質表面に存在する前記電子供与基と前記金属イオンとの間の相互作用は、例えば、pHを変化させることにより変更することができ、ゆえに、可逆性金属錯体/たんぱく質相互作用によって精製を行うことが可能である。最も一般的には、たんぱく質が前記金属イオンとヒスチジンのイミダゾリル側鎖との相互作用によって固相に結合されていれば、前記たんぱく質を、イミダゾール自体の添加、すなわち、競合的溶離によって除去することができる。
【0005】
数種の異なるキレート化リガンドが、IMACにおいて、たんぱく質の精製に用いられている。ニトリロトリアセテート(NTA)(四座配位子)および五座配位子であるトリス(カルボキシメチル)エチレンジアミンがそのようなリガンドの例であるが、これらには、非特異的たんぱく質相互作用、金属漏れ等の様々な短所がある。
【0006】
米国特許第6,242,581号明細書(特許文献2)は、金属漏れの問題に対し、カルボキシメチル化アスパラギン酸塩(Cm−Asp)基のIMACでの使用(ここで、結合した遷移金属イオンは八面体形態を有する)による解決策を提案している。前記リガンドは、ヒスチジン標識組換えたんぱく質を単離するのに理想的であると言われている。Cm−Aspの他の長所、例えば、還元剤への耐性が、米国特許第5,962,641号明細書(特許文献3)で説明されている。
【0007】
ポリスチレン、ナイロン、およびセファロース等の他のポリマーマトリックスが提案されているが、これらの特許において、前記Cm−Aspリガンドは、アガロース固相(架橋しているのが好ましい)に結合している。これらのマトリックスは磁性を有していてもよいが、磁気粒子は懸濁状態を維持しないため、アッセイにおける固相の用途は限られる。
【0008】
固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー技術は、金属イオンと、キレート化リガンドと、通常は、たんぱく質内に存在するイミダゾール基との間で起こるキレート化に依拠している。しかしながら、前記錯体(すなわち、固相、キレートリガンド、およびたんぱく質)が時々解離し、金属イオン漏れが起こることは避けられない。したがって、ポリマー粒子が実際にたんぱく質に共有結合してこれを固定化することが好ましい。共有結合は、錯体中におけるイオン相互作用と比べてはるかに強力な結合であり、例えば、たんぱく質複合体のプルダウンやスクリーニングのようなアッセイの手順において、多数のさらなる選択肢を当業者に提供するものである。粒子に共有結合したたんぱく質は、はるかに強固なものとなり、より強力な処理および精製方法の実施が可能となる。
【0009】
米国特許第6,441,146号明細書(Minh)(特許文献4)においては、たんぱく質の共有結合固定化のための方法であって、銅(II)イオンに配位した五座キレート剤に結合している非磁性樹脂にたんぱく質を接触させることを含む方法が記載されている。得られた錯体をカルボジイミドに接触させ、銅(II)イオンを除去して固定化たんぱく質を形成する。
【特許文献1】米国特許第4,654,267号明細書
【特許文献2】米国特許第6,242,581号明細書
【特許文献3】米国特許第5,962,641号明細書
【特許文献4】米国特許第6,441,146号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この方法での使用が提案されているたんぱく質は、ウシ血清アルブミンであり、好適な樹脂は、セファロースである。しかしながら、銅(II)イオンは、この方法において理想的な金属イオンではないことがわかっている。これは、銅(II)イオンは、五座配位子を強力にキレート化し、この相互作用の強力さにより、前記共有結合固定化工程、すなわち、カルボジイミド処理において、多くの非特異的結合が生じてしまうからである。
【0011】
Minhに記載の方法によれば、前記キレートリガンドと、ウシ血清アルブミン(BSA)中のあらゆる天然由来のリジン残基との間に結合を生じさせることができる。したがって、MinhにおけるBSAには、結合リガンドの指向が多数存在する場合があり、これにより、この技術が精製または増幅に不適切なものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
現在、キレート化リガンド、例えば、Cm−Aspキレート化リガンドは、ポリマー粒子に共有結合し、組換えたんぱく質の標識に共有結合する能力を有する部分を生じることがわかっている。これにより、熟練の生化学者に、アッセイの手順に関してさらなる融通性を与えることが可能になった。さらに、キレート化リガンドは、固定化の間における非特異的結合を最小限に抑えるため、コバルト(II)イオン等の金属イオンに配位することが好ましい。
【0013】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、標識たんぱく質、例えば、HAT標識たんぱく質を、ポリマー粒子、例えば、磁気ポリマー粒子に共有結合させる方法であり、標識たんぱく質(標識は、少なくとも2つのヒスチジン残基と、少なくとも2つのリジン残基とを有する)を、キレート化剤(三座、四座、または五座のキレート化剤であり、少なくとも2つのカルボキシル基を有し、金属イオン(好ましくはCo2+イオン)が配位されている)−ポリマー粒子結合体と接触させ、たんぱく質−ポリマー粒子−キレート化剤金属イオン錯体を形成することと、前記錯体をカルボジイミドに接触させることと、任意に行われる前記金属イオンの除去とを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
見方を変えれば、本発明は、細胞溶解物から標識たんぱく質を単離するための方法であり、少なくとも1つの標識たんぱく質(標識は、少なくとも2つのヒスチジン残基と、少なくとも2つのリジン残基とを有する)、例えば、複数の標識たんぱく質を含む細胞溶解物を、キレート化剤(三座、四座、または五座のキレート化剤であり、少なくとも2つのカルボキシル基を有し、金属イオンが配位されている)−ポリマー粒子結合体と接触させ、標識たんぱく質−ポリマー粒子−キレート化剤金属イオン錯体を形成することと、前記錯体をカルボジイミドに接触させることと、任意に行われる前記金属イオンの除去とを含む方法を提供する。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、先に述べたような方法によって得ることが可能な、例えば、得られた標識を介してポリマー粒子に共有結合した標識たんぱく質を提供する。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、以下の式で表される残基を含むリンカーを介して標識たんぱく質に共有結合するポリマー粒子であって、前記標識は、少なくとも2つのヒスチジン残基と、少なくとも2つのリジン残基を含むポリマー粒子を提供する。
【0017】
【化2】

【0018】
本発明で使用されるたんぱく質は、標識されている、すなわち、ラベルに結合している。本発明で使用される標識は、少なくとも2つのヒスチジン残基と少なくとも2つのリジン残基、例えば、少なくとも3つのヒスチジン残基と少なくとも3つのリジン残基を有していなければならない。
【0019】
本発明で使用される最も好ましい標識は、当該技術分野において周知なHAT標識である。HAT標識は、6つのヒスチジン残基と3つのリジン残基を含有するαヘリックスを有している。ヒスチジンのイミダゾール側鎖とリジンのアミノ基側鎖の両方が存在することは、共有結合固定化方法において決定的に重要である。理論によって限定しようとするものではないが、ヒスチジンのイミダゾールにより、前記金属イオンへの、ゆえに、前記キレート化剤への標識たんぱく質の配位が可能になるものと思われる。よって、カルボジイミドによる処理において、リジン残基におけるアミノ基が、アミド結合によって前記キレート化剤に共有結合できる。
【0020】
このように、配位/結合に利用可能な必要なヒスチジンおよびリジン残基を有するあらゆるたんぱく質標識(すなわち、たんぱく質ラベル)が、この発明における使用に適している。
【0021】
したがって、別の態様によれば、本発明は、たんぱく質上の標識に共有結合したポリマー粒子、例えば、磁気ポリマー粒子であり、前記標識が、少なくとも2つのヒスチジン残基と、少なくとも2つのリジン残基を有し、前記粒子は、前記少なくとも2つのリジン残基を介し、アミド結合によって前記標識に結合する連結基を有しているポリマー粒子を提供する。
【0022】
標識、例えば、HAT標識のたんぱく質への導入は、従来の方法により、例えば、対象となるたんぱく質のCまたはN末端に対して行える。
【0023】
カルボジイミド化合物は、公知の方法により、前記キレート化剤のカルボキシル基を活性化する。前記キレート化剤のカルボキシル基は、ジイミドと反応して式−COO−C(NHR)=NRで表されるリンカーを含む中間生成物を形成し、次に、このリンカーがリジン残基上の遊離アミノ基と反応して前記キレート剤から前記標識たんぱく質へのアミド結合を形成すると考えられている。前記たんぱく質標識中のリジン残基の数は、前記キレート化剤中のカルボキシル基の数と一致していることが好ましい。HAT標識たんぱく質は、このような残基を3つ有している。したがって、前記キレート化剤は、カルボキシル基を3つ有し、これにより、3つの共有アミド結合を形成させることが好ましい。
【0024】
この反応に好適なカルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、t−ブチルエチルカルボジイミド、t−ブチル−メチルカルボジイミドまたはそれらの塩が挙げられる。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)が好ましい。
【0025】
カルボジイミドがこの反応に最適であるが、その他のカルボキシル基活性化物質もまた好適である場合がある。活性化物質の代表例としては、ホスホニウム塩(例えば、BOP、PyBOP、PyBrOP)、ウロニウム塩(例えば、HBTU、TBTU、TNTU、TSTU)、ピリジニウム塩−Bu3N、N,N’−カルボニルジイミダゾールおよびTi(OBu)4が挙げられる。
【0026】
使用されるジイミド化合物の量は、決定的に重要ではないものの、キレート剤に対して過量のジイミドを存在させるべきである。
【0027】
金属イオンは、周期表の1から13族の任意の金属、ランタニドもしくはアクチニドまたは金属Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、PoもしくはAtであってもよい。金属イオンは、銅イオンでないことが好ましい。金属イオンは、遷移金属イオン(すなわち、周期表の3から12族)であることが好ましい。好ましい金属イオンは、2+または3+の酸化状態、特に、2+の酸化状態にあるイオンである。金属イオンが2+の酸化状態にある場合、粒子−リンカー−リガンド−金属イオンの集合体全体が非荷電であり、これにより、非特異性結合の可能性が減少する。
【0028】
好ましい金属は、Ni、Fe、Ga、Mn、Co、およびZnであり、そのうち、Fe、Ga、Mn、およびCoが好ましく、特に、Co2+が好ましい。
【0029】
前記キレート化剤に配位した金属イオンは、共有結合により固定化されたたんぱく質の形成後に除去してもよく、このような除去は、前記イオンに配位する別のキレート化剤を使用することによって行える。これは従来、強力なキレート化剤であるEDTAによって行われているが、DTPA等のその他のキレート化剤もまた好適である。金属イオンを除去することが好ましいが、これは必須ではない。
【0030】
本発明で使用されるキレート化リガンドは、少なくとも2つのカルボキシル基を有する三座、四座または五座配位子である。キレート化リガンドは、四座または三座、特に、四座であることが好ましい。好適なリガンドとしては、イミノ二酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリス(カルボキシメチルエチレンジアミンまたはCm−Aspが挙げられる。これらの中でも、Cm−Aspが特に好ましい。
【0031】
任意に磁性を有するポリマー粒子(MPP)に結合したCm−Aspリガンド(すなわち、粒子−キレート化剤結合体)を、その非配位状態および金属イオンに配位した状態の両方で以下に示す(波線は、Cm−Aspと粒子との間の結合またはリンカーを表す)。窒素原子もまた配位に関与する、すなわち、Cm−Aspは四座であると考えられている。
【0032】
【化3】

【0033】
驚くべきことに、上述の反応により、配向が制御された固定化標識たんぱく質が得られることがわかった。前記標識は、たんぱく質のN末端かC末端のいずれかに位置し、たんぱく質配向の容易な測定を可能にすることが好ましい。
【0034】
本発明の方法で使用されるポリマー粒子は、磁性を有することが好ましく、どのような磁気ポリマー粒子であってもよく、例えば、米国特許第4,654,267号明細書(特許文献1)に記載のようなものであってもよい。前記粒子は、多孔性のものであると、その孔中に超常磁気結晶が存在することが可能なので好ましい。前記粒子の表面は、通常、官能化され、前記キレートリガンドが前記ポリマー粒子にカップリングできるようにされており、例えば、官能化により、カルボキシル基、トシル基、アミノ基、エポキシ基、マレアミド基、チオール基等の任意の公知の表面構造体を有していてもよい。ゆえに、その表面は、リガンドカップリングの前にアミン官能化されてもよい。あるいは、アミン官能化表面自体をさらに官能化し、他の官能基、例えばCOOH基を有するようにしてもよい。
【0035】
前記ポリマー粒子は、ビニル系ポリマー(例えば、スチレン)、アクリレート類および/またはメタクリレート類の組み合わせから形成されるのが好ましい。ポリマー材料は、例えば、コモノマーである架橋剤(例えば、ジビニルベンゼン(DVB)またはエチレングリコールジメタクリレート)の取り込みによって、任意に架橋されてもよい。必要な架橋剤(例えば、コモノマー)の適切な量は、当業者には周知であろう。前記ポリマーは、架橋スチレン系ポリマー(例えば、ニトロ基含有コモノマー(例えば、ニトロスチレン)の使用、およびその後の還元によって表面官能化されたスチレン−ジビニルベンゼンポリマー)または、エポキシ基含有コモノマー(例えば、グリシジルメタクリレート)の使用、およびその後のアミノ化(例えば、エチレンジアミンとの反応によるアミノ化)によって表面官能化された架橋(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。
【0036】
本発明の方法で用いるポリマー粒子における超常磁性結晶は、多孔性ポリマー粒子中に超常磁気結晶の形態で沈積することが可能な材料であれば、いかなる材料の結晶であってもよい。磁気酸化鉄、例えば、マグネタイトまたはマグヘマイトが好ましいが、前記結晶は、望ましい場合には、混合金属酸化物または他の磁気材料の結晶であってもよい。存在する結晶磁気材料の総量は、通常1%より多く、好ましくは3%より多く、望ましくは5%以上である(重量比であり、例えば、40重量%まで)。パーセンテージは、Fe(または酸化鉄以外の磁気材料の場合、同等の金属)について、被覆粒子の乾燥総重量に基づき、重量ベースで計算される。
【0037】
本発明の様々な態様に係るポリマー粒子は、概して、一般にマイクロメーター範囲のサイズ(すなわち、直径)を有し、0.2〜120ミクロン等の範囲、例えば、0.3〜100μm、特に、0.5〜50μm、より特に、0.8〜5μm、例えば、0.8〜1.5μm、好ましくは1〜1.2μmが挙げられる。
【0038】
典型的には、使用される多孔性粒子は、平均粒子直径を2.7μmに補正した場合(すなわち、表面積に2.7/MDを乗じた場合。ここで、MDとはマイクロメーターで表した平均直径である。)に、少なくとも15m2/g(BET窒素吸着法により測定)、より好ましくは少なくとも30m2/g、例えば、700m2/gまでの表面積を有する。同様に縮尺を合わせたとき、前記粒子の孔容積は、少なくとも0.1ml/gであることが好ましい。
【0039】
前記ポリマー粒子は、それらがコーティングされる前は、球状でありかつ、実質的には単分散であることが典型的であり、それら粒子がコーティングされても、球状かつ実質的に単分散のままであることが特に好ましい。
【0040】
「実質的に単分散」とは、複数の粒子(例えば、少なくとも100個、より好ましくは少なくとも1000個)について、これらの粒子が、20%未満の変動係数(CV)、例えば15%未満、好ましくは12%未満、より好ましくは11%未満、さらにより好ましくは10%未満、最も好ましくは約8%以下、例えば、2%から5%の変動係数(CV)を有することを意味する。CVは、以下のようにパーセンテージで求められる。
【0041】
【数1】

【0042】
前記式中、「平均」は、平均粒子直径であり、「標準偏差」は、粒子サイズにおける標準偏差である。CVは、主最頻値を基に、すなわち、単峰性(monomodal)分布曲線を検出粒子サイズ分布に適合させることにより、計算されることが好ましい。したがって、最頻値サイズより小さいかまたは大きい粒子の幾つかは、計算において無視されてもよく、例えば、約90%(すなわち、検出可能な粒子の)の全粒子数を基にしてもよい。そのようなCVの測定は、コールター(Coulter)LS130粒子サイズ分析器で行うことができる。
【0043】
ポリマー材料の官能化は、重合の後、例えば、ニトロ化、次いで形成したニトロ基をペンダント・アミン基へ還元することによって、あるいは、直接アミノ化(例えば、アミノエタノール処理による)によって行うことができる。さらに別の選択肢としては、周知のUgelstadの2工程膨潤方法、および国際公開第00/61647号パンフレット(Dyno)に記載のその改良法により製造されたポリマー粒子を用いてもよい。この公報に記載の方法にしたがって製造された多孔性ポリマー粒子は、標準的技術により、その孔中に磁気粒子が沈積されていてもよい。
【0044】
さらなる可能性としては、多孔性ポリマー粒子は、ニトロスチレンおよびDVBや、米国特許第4,654,267号明細書に教示されているように導入した磁気材料から製造してもよい。
【0045】
商標名ダイナビーズ(Dynabeads)、特にダイナビーズマイワン(Dynabeads MyOne)でダイナル・バイオテック・エイエスエー(Dynal Biotech ASA)により販売されている超常磁性ポリマービーズが、特に好ましい。ダイナビーズは、懸濁状態を維持し、しばしば他の磁気ビーズと関連して起こる磁気粒子沈降を示さないことから、特に有利である。ダイナビーズはまた、鉄を高濃度で含む他の磁気粒子と比較して優れた磁気可動性を示す。ダイナビーズは、反応時間の短縮と処理量の増加を可能にする有益な動態を示す。ダイナビーズは他の磁気ビーズと比べて非特異的結合の程度が低く、ダイナビーズを適切に使用することにより、所望の材料の集結が起こり、その結果、より容易でより効率的な洗浄手順を行える。最後に、ダイナビーズ、例えば、マイワンビーズは、自動化するのが容易であり、かつ単分散である。
【0046】
キレート化リガンドは、ポリマー粒子に結合して結合体を形成している。「結合する」とは、前記リガンドが、以下にCm−Aspリガンドとの関連において詳細に説明する連結基を任意に用いて、ポリマー粒子に共有結合することを意味する。当業者であれば、上述の原理および化学作用は、他のリガンドのポリマー粒子への結合においても同様に当てはまることを認識するであろう。
【0047】
Cm−Aspリガンドは、様々な方法によってポリマー粒子に結合させることができるが、前記ポリマー粒子の表面と前記Cm−Aspの窒素原子との間、例えば、スチレン表面とCm−Aspリガンドの窒素原子との間に、連結原子が少なくとも3つ存在することが好ましい。前記ポリマー粒子表面から前記Cm−Aspリガンドを隔てる少なくとも6つの原子が存在することが好ましく、前記ポリマー粒子表面から前記Cm−Aspリガンドを隔てる6から20の原子が存在することがより好ましい。
【0048】
米国特許第6,242,581号明細書においては、Cm−Aspリガンドを形成するカルボキシメチル化に先立ち、アスパラギン酸を固相にカップリングさせる。しかしながら、この技術を用いてポリマー粒子上にCm−Asp基を供することは不可能であった。そこで、本発明者らは、磁気ポリマー粒子へのカップリング前にCm−Aspリガンドが完全に形成されている別の合成を考案した。
【0049】
この点に関し、ポリマー表面とCm−Aspリガンドとの間に存在する原子が3個未満の場合には、カップリング収率が低いことがわかった。Cm−Aspを有するアガロース支持体(米国特許第5,962,641号明細書に記載)とは対照的に、本発明においては、ポリマー粒子とCm−Aspとの間において比較的高いカップリング収率を確保することが必要である。アガロース支持体の表面積は、ポリマー粒子の表面積と比べてかなり大きく、したがって、Cm−Aspの前記支持体への結合は、高収率で生じる必要はない。本件において、充分なポリマー粒子がCm−Aspリガンドを担持することを確実にするため、より高い収率が必要である。
【0050】
少なくとも3つの原子からなるリンカーがアミノ基(−NH−)を有することが好ましい。ポリマービーズは、硝酸処理によって表面にNO2基を形成したスチレンポリマーで形成されることが多い。これらの基の還元、例えばアンモニアを使用した還元処理の後、アミノ基が形成され、これらのアミノ基は、前記ポリマー粒子表面から最も一般的な結合を形成する。
【0051】
したがって、前記リンカーの隣の部分は、求電子剤の残基、すなわち、求核剤と求電子剤の反応後に残存している基を含むことが好ましい。したがって、前記リンカーは、オキソ基(C=O、エステル/カルボキシル基の残基)、−CH(OH)CH2−基(エポキシドの残基)、−CH2−(ここで、前記求電子剤は、例えば、CH2Halである)を含んでいてもよい。前記リンカーは、実際の求電子剤を前記−NH−基に連結する多数の原子、例えば、アルキレン鎖またはエーテル鎖、例えば、−CH2CH2CH2−または−CH2CH2CH2−O−におけるアルキレン鎖またはエーテル鎖をさらに組み込んでもよい。
【0052】
前記リンカーの最後の部分は、前記Cm−Asp由来の求核剤の残基、すなわち、この求核剤と前記求電子剤との反応後に得られる残基を表している。以下にさらに詳細に述べるように、これは、アミノアルキレンまたはアミノエーテル/ポリエーテル、チオールまたはヒドロキシル残基であってもよい。
【0053】
したがって、下記式(I)中の波線は、−NH−L1−Er−Nr−L2−を表していてもよく、ここで、L1は、1〜10の原子からなる、前記求電子剤残基(Er)へのリンカー、L2は、1〜10の原子からなる、前記求核剤残基(Nr)に対するリンカーを表す。
【0054】
【化4】

【0055】
言うまでもなく、前記磁気ポリマー粒子が求核剤を有し、前記Cm−Aspが求電子性基を有するように官能化されていることは、本発明の範囲内である。
【0056】
好ましい実施形態においては、ポリマー粒子は、Cm−Aspリガンドと反応して前記粒子を前記Cm−Aspにカップリングさせることができるコーティングを備えるように官能化されるべきである。
【0057】
特に好ましい実施形態においては、炭素−炭素二重結合を有する粒子コーティングが施されている。このようなコーティングは、例えば、アリルまたはビニル化合物、例えばブテン酸と前記粒子との反応によって施すことができる。ヒドロキシ官能化粒子表面は、臭化アリルと反応し、前記粒子表面上に二重結合を形成することができる。また、カルボキシ官能化粒子表面は、アリルアミンと反応し、前記粒子表面上に二重結合を形成することができる。前記Cm−Aspは、その後、適切な化学を用いて二重結合に直接カップリングさせてもよいし、あるいは、より好ましくは、その後、前記二重結合を還元、例えば、水性ハロゲン(aqueous halide)の存在下で還元し、Cm−Aspリガンドと反応して首尾よくカップリングし得るハロゲン求電子剤(halide electrophile)を生じてもよい。
【0058】
別の好ましい製造方法には、前記ポリマー粒子の表面を、カルボキシル基を担持するように官能化させることが含まれる。カルボン酸基は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応により活性化され、上述のようにCm−Aspリガンドと反応させてもよい。
【0059】
前記リガンドは、金属イオン、特に、Co2+に配位している。配位は、前記Cm−Aspを、例えば、金属塩化物(例えば、塩化コバルト(II))に暴露することにより、容易に行うことができる。コバルトの使用により、銅使用時とは対照的に、非特異的結合の発生量が最小限に抑えられる。銅(II)等の金属イオンを本明細書に記載の方法において使用した場合、キレート化リガンドが標識に直接結合するのではなく、たんぱく質に含まれる天然由来のlys/his残基に結合してしまう可能性がある。このような非特異的結合がおこると、意味のあるたんぱく質の単離がもはや不可能になるため、本明細書に記載の技術の有用性が著しく低減してしまう。コバルトイオンを使用することにより、キレート化結合は、実質的にたんぱく質の標識のみに結合するようになり、熟練の生化学者に対し、さらなる研究の対象となる理想的な結合体を提供する。
【0060】
前記リガンドもまた、前記ポリマー粒子とのカップリング前に、官能化されてもよい。例えば、前記粒子表面上の求電子性基との反応を助ける、第1級求核剤を担持する連結基を、前記Cm−Aspリガンドが備えていれば有利であることが証明されている。前記Cm−Aspリガンドの窒素原子は第2級求核剤であり、この原子は、おそらくは立体障害のため、前記粒子表面上の求電子性基、例えば、ハロゲンと高収率で反応するには反応性が低すぎることがわかっている。
【0061】
したがって、少なくとも2つの原子を有し、求核剤(例えば、アミン、ヒドロキシル、またはチオール基)を含むリンカー基に、前記Cm−Aspをカップリングさせることが好ましい。前記リンカーは、アルキルアミン、例えば、C5/6−アルキルアミンリンカーまたはエーテル/ポリエーテル結合、例えば、1個または2個の酸素原子と3〜6個の炭素原子とを含むものが好ましい。前記リンカーの前記Cm−Aspへのカップリング(前記Cm−Aspの窒素原子を介する)は、実施例で説明するように、公知の化学作用を用いて達成される。前記Cm−Aspリガンド自体は、公知の化学作用を用いて製造することができる。また、リンカーCm−Asp構造体全体を、実施例に示すような標準的な化学作用を用いて合成することも可能である。熟練した化学者であれば、本発明で使用されるCm−Aspリンカー分子のさらなる合成方法を考案することができるであろう。
【0062】
同様の化学作用を使用して、上記以外のキレート剤を作成することが可能である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態において、合成の間、前記リガンドのカルボキシル基の保護が必要とされる場合がある。このような保護は、公知の保護方法を用いることにより、例えば、当該技術分野で公知のように、酸または塩基中で加水分解可能なエステル保護基を用いることにより、容易に達成することができる。
【0064】
金属イオンが結合したリガンドを担持するポリマー粒子は、一般に、適切に標識されたたんぱく質に付着し結合するために用いることができ、ゆえに、多種多様なアッセイにおいて有用である。しかしながら、このようなポリマー粒子は、組換えたんぱく質のHAT標識の単離に特に有用である。したがって、別の態様によれば、本発明は、HAT標識たんぱく質に共有結合した磁気ポリマー粒子のアッセイでの使用を提供する。あるいは、本発明は、本明細書中で先に定義した方法を含むアッセイを提供する。好適なアッセイおよびこれらを行う方法は、熟練の生化学者には公知である。
【0065】
例えば、本発明の官能化粒子上の標識たんぱく質の捕捉には、様々な用途がある。単離されたたんぱく質は反応動態が迅速で、かつ扱いやすいことから、この技術は、大きなたんぱく質複合体の「プルダウン」に非常に適している。したがって、官能化ビーズを、マススペクトロメトリ分析のためのサンプル調製に用いることができる。共有結合固定化ビーズを用いて単離した複合体は、カラムまたは凹凸のある表面を有するその他の磁気粒子を含む他の固体支持体を用いて単離された複合体よりも損傷が少なく、したがって、マススペクトロメトリのサンプル単離での使用に理想的と考えられている。
【0066】
前記固定化技術を、アッセイの手順において使用される固相に応用することもできる。本発明のビーズは、凝集しにくく、溶液中での分散性が高く、非特異性結合の程度が低い。これらの特性により、高品位なスクリーニング結果や、広範囲の自動化プラットフォームで容易に自動化できるプロトコルが可能となる。前記ビーズはさらに、ファージディスプレイにおいて、おそらくは固相として使用できるか、あるいは、ライブラリから発現ファージディスプレイ選択たんぱく質を精製するために使用することができる。
【0067】
したがって、一般に、標識たんぱく質の捕捉により、マイクロスケールのたんぱく質精製、突然変異たんぱく質ライブラリの除去、たんぱく質/ペプチドの変性溶離、たんぱく質/ペプチドの穏やかな溶離、たんぱく質−たんぱく質間の相互作用研究、ならびにスクリーニング技術が、例えば、薬物の発見、分子表示、アプタマー・スクリーニング、ファージディスプレイ、設計酵素スクリーニング、および診断といった目的のために、可能となりうる。
【0068】
以下に挙げる非限定的な実施例を参照し、本発明についてさらに説明する。
【0069】
反応物の製造
以下のCm−Aspトリエステルを、次のように製造した。
【0070】
【化5】

【実施例1】
【0071】
臭素化
アリル基を0.5mmol/g有する磁気スチレン粒子のメタノール懸濁液17.3gを、45mlの酢酸ナトリウム緩衝液(pH=5.9)で4回洗浄した。粒子含有量を9重量%へ調節した後、10mlのDMF中に溶解された0.96gのピリジニウムトリブロマイドを、350rpmで攪拌しながら添加した。室温で5分後、前記粒子を45mlの脱イオン水で5回洗浄した。
【実施例2】
【0072】
Cm−Aspキレート剤による官能化
実施例1に記載の方法で製造した粒子の懸濁液18.0gを、20mlの50mM炭酸水素ナトリウムで3回洗浄した。粒子含有量を12重量%に調節した。その懸濁液に、Cm−Aspトリエステル(上述のように製造したもの)を0.17g添加した。50mM炭酸水素ナトリウムを、粒子含有量が10重量%となるまで添加した。反応混合物を、600rpm、40℃で15時間振盪した。次いで、前記粒子を、20mlの脱イオン水で4回洗浄した。
【実施例3】
【0073】
加水分解
実施例2に記載の方法で製造した粒子の懸濁液20.0gを、20mlの1M水酸化リチウムで2回洗浄した。粒子含有量を10重量%に調節した後、混合物を、250rpm、室温で4時間振盪した。次いで、前記粒子を、pHが6〜7となるまで脱イオン水で洗浄した。
【実施例4】
【0074】
コバルト負荷
実施例3に記載の方法で製造した粒子250mgを、5mlの逆浸透水で2回洗浄した。5mlの2.5mM CoCl2を前記粒子に添加し、5時間インキュベートした。管を磁石中に配置し、上澄み液を除去した。前記粒子を、5mlのリン酸緩衝生理食塩水(0.01% Tween20、pH7.4)で2回洗浄した。その後、前記粒子を20%エタノールで1回洗浄した。前記粒子を20%エタノール中で保管した。
【実施例5】
【0075】
細胞溶解物の製造
10mlの培養液から採取したHAT−CAT(HAT標識クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)を含有する細菌ペレットを、900μlの結合/洗浄緩衝液で、全体が1000μlとなるように再懸濁した。細胞を、次のようにして溶解させた。1000μlの細胞懸濁液、500μlのポップカルチャー(Popculture(商標))試薬(ノバゲン(Novagen)社)、および100μlのDNAse I(200μg/ml)を、ピペットを用いて混合し、室温または氷上で10分間インキュベートした。
【0076】
ビーズの平衡化
ダイナビーズ(登録商標)タロン(Talon(商標))(すなわち、実施例4で得られたビーズ)40mgを、3mlの結合/洗浄緩衝液(50mM NaP pH8.0、300mM NaCl、0.01%Tween20)中で2回洗浄することにより平衡化した。
【0077】
ポリヒスチジン標識(すなわち、HAT標識)たんぱく質のダイナビーズ(登録商標)タロン(商標)への結合
前記細胞溶解物を平衡化した前記ビーズに添加し、結合/洗浄緩衝液により、体積を7.5mlまで増加させた。前記ビーズを室温で10分間転がした。
【0078】
前記結合工程の終了後、ピペットを用いて上澄み液を除去し、前記ビーズを3mlの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄した。
【0079】
前記ビーズ20mgを、pH6の15mM MES緩衝液1ml中に再懸濁させた。RO水(逆浸透水)に溶解した50μlの10mg/mlEDCを添加した。管を、2時間回転させた。上澄み液を除去し、前記ビーズを1mlの溶離緩衝液(150mM イミダゾール、50mM NaP pH8.0、300mM NaCl、0.01%Tween20)で1回、PBS、0.05%Tween20で3回洗浄し、1mlのPBS、0.05%Tween20中に再懸濁させた。
【0080】
前記ビーズ20mgを、1mlの溶離緩衝液で洗浄した。前記ビーズを、1mlのPBS、0.05%Tween20中に再懸濁させた。
【0081】
ビーズ上のHAT−CATの検出
共有結合によりカップリングされたHAT−CATを、「Eu」で標識した抗CATを用いた時間分解蛍光を用いて検出した。
結果
EDCで処理したビーズ:ビーズ1mg当たり抗CAT2.6μg
溶離緩衝液で処理したビーズ:ビーズ1mg当たり抗CAT0.1μg
【実施例6】
【0082】
カルボン酸基のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルへの官能化
マイワンカルボン酸ビーズの粒子5.0gの懸濁液50gを、0.1M酢酸(3×50ml)で洗浄することにより酸性化した。次いで、酸性化した粒子(0.5mmol/g DSのカルボン酸含有量を有している)を、アセトン(4×50ml)で洗浄し、磁石上で集めた。アセトンを懸濁液全体が35.6gに達するまでさらに添加した。その後、N−ヒドロキシスクシンイミド(2.90g、25mmol)とジイソプロピルカルボジイミド(3.16g、25mmol)を添加する。反応混合物を、室温で5時間攪拌した。次いで、前記粒子をアセトン(5×50ml)で洗浄した。
【実施例7】
【0083】
Cm−Aspキレート剤による官能化
実施例6のビーズのアセトン懸濁液44gを、50mlのイソプロパノールで3回洗浄した。粒子含有量を12重量%に調節した後、トリエチルアミンを5.6g添加した。その後、イソプロパノールに溶解した0.10gのCm−Aspトリエステル(上述のように製造したもの)を添加した。この結果、粒子含有量は10重量%となる。次いで、反応混合物を250rpm、室温で20時間振盪した。前記粒子を50mlのイソプロパノールで3回洗浄した。
【実施例8】
【0084】
Cm−Aspキレート剤およびエタノールアミンによる官能化
実施例7に記載の方法で製造した粒子のイソプロパノール懸濁液10gに、エタノールアミンを0.32g添加した。次いで、反応混合物を、250rpm、室温で18時間振盪した。その後、前記粒子を、10mlのイソプロパノールで3回洗浄した。
【実施例9】
【0085】
Cm−Aspキレート剤による官能化
乾燥ダイナビーズ270エポキシ1.2gを、50mM炭酸水素ナトリウム8.8gと混合した。この懸濁液に、Cm−Aspトリエステル(上述のように製造したもの)0.17gを添加し、反応混合物を、600rpm、60℃で16時間振盪した。前記粒子を、20mlの脱イオン水で4回洗浄することにより後処理した。
【実施例10】
【0086】
Cm−Aspトリエステル合成の別の例
【0087】
【化6】

【0088】
2−アミノ−コハク酸ジエチルエステルの合成
【0089】
【化7】

【0090】
DL−アスパラギン酸(91.5g、0.69mol)の無水エタノール(800ml)中の懸濁液に、0℃で塩化チオニル(150ml、2.06mol)を滴下により添加した。冷却浴を除去して、前記混合物を3時間還流した。周囲温度に冷却した後、溶媒を真空下に蒸発させ、残渣にK2CO3の飽和水溶液をpH8となるまで添加した。ろ過、真空下への蒸発に先立ち、水相を酢酸エチルで抽出し(×3)、合わせた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させた(MgSO4)。これにより、124.8g(96%)の化合物1を黄色油状物として生じた。粗生成物を次の工程で直接用いた。
【0091】
【数2】

【0092】
2−(4−シアノ−ブチルアミノ)−コハク酸ジエチルエステルの合成
【0093】
【化8】

【0094】
化合物1(93.0g、0.49mol)、K2CO3(34.0g、0.25mol)およびKI(12.3g、0.07mol)のTHF(600ml)中懸濁液に、5−ブロモバレロニトリル(28.4ml、0.25mol)を滴下して添加した。反応混合物を還流加熱して5日間攪拌した。周囲温度に冷却した後、混合物をろ過し、ろ液を真空下に蒸発させた。ヘキサン/酢酸エチル(7:3)で溶離するシリカゲルでの精製により、64.1g(97%)の化合物2を黄色油状物として生じた。
【0095】
【数3】

【0096】
2−[(4−シアノ−ブチル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]−コハク酸ジエチルエステルの合成
【0097】
【化9】

【0098】
化合物2(86.6g、0.32mol)、K2CO3(44.3g、0.32mol)、およびKI(16.0g、0.10mol)のTHF(650ml)中の混合物に、ブロモ酢酸エチル(42.5ml、0.38mol)を添加した。反応混合物を加熱還流し、5日間攪拌した。周囲温度まで冷却した後、混合物をろ過し、ろ液を真空下に蒸発させた。ヘキサン/酢酸エチル(8:2)で溶離するシリカゲルでの精製により、103.7g(91%)の化合物3を生じた。
【0099】
【数4】

【0100】
2−[(5−アミノ−ペンチル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]−コハク酸ジエチルエステルの合成
【0101】
【化10】

【0102】
化合物3(15g、42mmol)の95%エタノール(60ml)および濃HCl(10ml)の溶液に、PtO2(600mg、2.6mmol)の95%エタノール(20ml)中の懸濁液を添加した。反応混合物に対し、50psiで一晩水素添加した。前記混合物をろ過し、ろ液を真空下に蒸発させ、一晩空気を吸い出して、定量的な収率の標題化合物をHCl塩として生じた。
【0103】
【数5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識たんぱく質をポリマー粒子に共有結合させる方法であり、
標識たんぱく質(標識は、少なくとも2つのヒスチジン残基と、少なくとも2つのリジン残基とを有する)を、キレート化剤(三座、四座、または五座のキレート化剤であり、少なくとも2つのカルボキシル基を有し、金属イオンが配位されている)−ポリマー粒子結合体と接触させ、たんぱく質−ポリマー粒子−キレート化剤金属イオン錯体を形成することと、
前記錯体をカルボジイミドに接触させることと、
任意に行われる前記金属イオンの除去とを含む方法。
【請求項2】
前記標識が、HAT−標識である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カルボジイミドが、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)またはそれらの塩である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記キレート化リガンドが、3つのカルボキシル基を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記キレート化リガンドが、四座である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記キレート化リガンドが、イミノ二酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリス(カルボキシメチルエチレンジアミンまたはCm−Aspである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記キレートリガンドが、Cm−Aspである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー粒子が、磁性を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー粒子が、多孔性である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー粒子の直径が、0.2〜1.5ミクロンの範囲である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー粒子が、ダイナビーズ(Dynabead)である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属イオンが、遷移金属イオンである請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記金属イオンが、2+酸化状態にある請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属イオンが、Co2+である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属イオンが除去される請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
細胞溶解物から標識たんぱく質を単離するための請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法によって得ることが可能な、標識を介してポリマー粒子に共有結合した標識たんぱく質。
【請求項18】
以下の式で表される残基を含むリンカーを介して標識たんぱく質に共有結合したポリマー粒子。
【化1】

前記標識は、少なくとも2つのヒスチジン残基と、少なくとも2つのリジン残基を含む。
【請求項19】
たんぱく質上の標識を介して当該たんぱく質に共有結合する磁気ポリマー粒子であり、前記標識が、少なくとも2つのヒスチジン残基と、少なくとも2つのリジン残基を有し、前記粒子は、前記少なくとも2つのリジン残基を介し、アミド結合によって前記標識に結合する連結基を有している磁気ポリマー粒子。
【請求項20】
単分散である請求項19に記載の複数の磁気粒子。
【請求項21】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法を含むアッセイ。
【請求項22】
HAT標識たんぱく質に共有結合した磁気ポリマー粒子のアッセイでの使用。

【公表番号】特表2007−529487(P2007−529487A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503405(P2007−503405)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000991
【国際公開番号】WO2005/089933
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506001516)
【Fターム(参考)】