ポリマー結合のための一本鎖抗原結合ポリペプチド
本発明は部位特異的修飾を有する1価および多価一本鎖抗原結合ポリペプチドに関する。提供されるポリペプチドは、ポリアルキレンオキシドと修飾部位で共有結合または複合体化することができる。結果として生じる複合体は抗原結合特性を保持し、および複合体化されていない一本鎖抗原結合ポリペプチドと相対的に、延長された循環時間および低下した抗原性を示す。部位特異的修飾を有する一本鎖抗原結合ポリペプチドを作製および使用するための方法および組成物もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチドへのポリマーの部位特異的共有結合を促進する部位特異的修飾を有する1価および多価一本鎖抗原結合ポリペプチドに関する。本発明は、そのような修飾一本鎖抗原結合ポリペプチド、それをコードするベクターおよび宿主細胞、ならびにそのポリペプチドを作製および使用する方法を提供する。本発明はまた、新規でかつ改良されたプロドラッグを提供するための、修飾一本鎖抗原結合ポリペプチドとポリアルキレンオキシド(「PAO」)といったポリマーとの複合体、ならびにそのような複合体を作製および使用する方法を提供する。
【0002】
関連分野の説明
天然に存在する抗体は、1以上の特定物質すなわち抗原が動物の免疫細胞によって外来物と認識されたときに、それら抗原の存在に応答して、哺乳類を含む脊椎動物の免疫系によって産生される免疫グロブリンである。ヒトでは、特異的抗原を選択的に認識しおよび差別的に結合する能力を有する5つのクラスの抗体が存在する。各抗体クラスは同一の基本構造または複数のその構造を有する。基本単位は、重鎖またはH鎖(IgGで分子量各約50,000ダルトン)と呼ばれる2個の同一のポリペプチドおよび、軽鎖またはL鎖(分子量各約25,000ダルトン)と呼ばれる2個の同一のポリペプチドから成る。5つの抗体クラスのそれぞれは類似の組の軽鎖のおよび異なる組の重鎖を有する。軽鎖は1つの可変ドメインおよび1つの定常ドメインから構成され、一方、重鎖は1つの可変ドメインおよび3つ以上の定常ドメインから構成される。可変ドメインは免疫グロブリンの特異性を決定し、定常領域は他の機能を有する。
【0003】
概して、適当なポリペプチド軽鎖および重鎖の対が、天然抗体および他の種類の抗体において結合して、抗原結合部位を形成する。それぞれの個々の軽鎖および重鎖は約110アミノ酸の領域に折りたたまれ、保存された3次元立体構造を取る。軽鎖は1つの可変領域(VL)および1つの定常領域(CL)を含み、一方、重鎖は1つの可変領域(VH)および3つの定常領域(CH1、CH2およびCH3)を含む。対の領域が結合して、別個の構造を形成する。特に、軽鎖および重鎖可変領域は結合して、抗原結合部位を含む「Fv」部分を形成する。定常領域は抗原結合に必要でなく、場合によっては抗体分子からタンパク質分解によって分離することができ、軽鎖の半分および重鎖の四分の一から成る生物学的に活性な(すなわち、結合する)可変領域を与える。
【0004】
さらに、X線結晶構造解析によって構造が決定されている特定のクラスのすべての抗体およびそのFab断片(すなわち、VL、CL、VH、およびCH1で構成される断片)は、超可変部分の配列における大きな差にもかかわらず、異なる動物種に由来する場合さえ、同様の可変領域構造を示す。免疫グロブリン可変領域は、抗原結合ループにおける突然変異に対して寛容であるように見える。したがって、超可変領域内以外では、重鎖および軽鎖の両方によって定められる抗体のいわゆる「可変」領域の大部分は、実際、3次元構造において非常に定常的である。例えば、参照により本開示に含まれる非特許文献1を参照。
【0005】
天然抗体は通常不均一であり、多数の異なるエピトープ、または外来抗原の一部と結合する。対照的に、モノクローナル抗体(「Mab」)は結合親和性が均一である抗体である。Mabは診断薬および治療薬として両方で有用であることが示されている。MAbは例えば、マウスリンパ球様細胞の適当なマウス骨髄腫細胞株との融合によって、およびより進んだ組換え法によって作製されたハイブリドーマから、確立された方法によって定型的に製造されている。
【0006】
より小さな抗体様タンパク質またはポリペプチドは、最小限の追加の構造を有する抗原結合部位から成る。これらは、一本鎖抗原結合タンパク質またはポリペプチド(「SCA」)、または抗体の一本鎖可変断片(「sFv」)として本分野で公知である。これらは、リンカーポリペプチドを組み込んで、個々の可変領域、VLおよびVHを繋げて、単一のポリペプチド鎖とすることができる。
【0007】
一本鎖抗原結合タンパク質の理論の説明および製造は、Ladner et al.,特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に、およびHuston et al.,特許文献5(「生合成抗体結合部位」(BABS))に見出され、それらの開示はすべて参照により本開示に含まれる。上記の特許に記載された方法のもとに製造された一本鎖抗原結合タンパク質は、対応するFab断片と実質的に同様な結合特異性および親和性を有する。
【0008】
概して、適当な軽鎖および重鎖の対は、結合して抗原結合部位を形成することができる。それぞれの個別の軽鎖および重鎖は約110アミノ酸の領域に折りたたまれ、保存された3次元立体構造を取る。軽鎖は1つの可変領域(VL)および1つの定常領域(CL)を含み、一方、重鎖は1つの可変領域(VH)および3つの定常領域(CH1、CH2およびCH3)を含む。領域の対は結合して、別々の構造を形成する。特に、軽鎖および重鎖可変領域は結合して、抗原結合部位を含む「Fv」部分を形成する。定常領域は抗原結合に必要でなく、および一部の場合には抗体分子からタンパク質分解によって分離することができ、軽鎖の半分および重鎖の四分の一から成る生物学的に活性な(すなわち、結合する)可変領域を与える。
【0009】
さらに、X線結晶構造解析によって構造が決定されている特定のクラスのすべての抗体およびそのFab断片(すなわち、VL、CL、VH、およびCH1で構成される断片)は、同様の可変領域構造を示すが、しかしそれぞれの超可変部分の配列には大きな差を示す。これはまた、それぞれ異なる動物種に由来する抗体の比較においても観察される。免疫グロブリン可変領域は、抗原結合ループにおける突然変異に対して寛容であるように見える。したがって、超可変領域内以外では、重鎖および軽鎖の両方によって定められる抗体のいわゆる「可変」領域の大部分は、実際、3次元構造において非常に定常的である。例えば、参照により本開示に含まれる非特許文献1を参照。
【0010】
SCAポリペプチドのin vivo特性は、MAbおよびより大きな従来の抗体断片とは異なる。サイズの小ささは、SCAが血液からより早く消失し、および組織へより速やかに浸透することを可能にする(非特許文献2; 非特許文献3; 非特許文献4)。加えて、SCAポリペプチドは、抗体分子中に通常存在する定常領域が無いため、肝臓および腎臓といった組織中に保持されない。したがって、SCAポリペプチドは、迅速な組織浸透およびクリアランスが有利である癌診断および治療に有用である。
【0011】
合成抗原結合タンパク質はまた、参照により本開示に含まれる特許文献5(Hustonら)に記載されている。記載されたタンパク質は、生合成抗体結合部位(BABS)として挙動する領域を構成するアミノ酸の1つ以上の配列によって特徴づけられる。その部位は、(1)非共有的に結合したかまたはジスルフィド結合した合成VHおよびVL領域、(2)VHおよびVLがポリペプチドリンカーに結合しているVH−VLまたはVL−VH一本鎖、または(3)個別のVHまたはVLドメインを含む。結合ドメインはフレームワーク領域(FR)と結合した相補性決定領域(CDR)を含み、それらは別々の免疫グロブリンに由来し得る。Hustonらのタンパク質は最初の重鎖、すなわち、VH−ペプチドリンカー−VLドメインを有することによって特徴づけられるものを含むことに注意する。
【0012】
多価抗原結合タンパク質は公知である。本開示に記載される通り、多価抗原結合タンパク質は2つ以上の一本鎖タンパク質分子を含む。これらは共有または非共有結合によって随伴または結合され得る。多価抗原結合タンパク質の、抗原結合活性の上昇、2特異的および多特異的結合、および他の新規の用途が実証されている。例えば、すべて参照により本開示に含まれる、非特許文献5; 非特許文献6;および特許文献6、および共有の特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、および特許文献12を参照。
【0013】
上述の一本鎖ポリペプチド、およびその融合タンパク質といったペプチドは、哺乳類における顕著な抗原性と関連づけられていないが、循環寿命を延長しおよび抗原性反応の可能性をさらに低減さえすることが望ましい。
【0014】
循環寿命を延長しおよびタンパク質およびポリペプチドの抗原性を低下させる1つの方法は、それらをポリアルキレンオキシドといったポリマーに結合(conjugate)させることである。しかし、そのポリペプチドの相対的に小さなサイズおよびその繊細な構造/活性関係は、ポリエチレングリコール修飾を困難におよび予測不能にしている。
【0015】
ポリアルキレンオキシドのタンパク質との共有結合を行うためには、ポリマーの末端水酸基を最初に反応性官能基へ変換しなければならない。この過程はしばしば「活性化」と呼ばれ、およびその産物は「活性化PEG」または活性化ポリアルキレンオキシドと呼ばれる。例えば、一方の末端が官能基でキャッピングされた、タンパク質分子上のアミンに対して反応性である、メトキシポリ(エチレングリコール)(mPEG)が大部分の場合に用いられる。
【0016】
PEGのスクシンイミジルスクシナート誘導体(「SS−PEG」)といったいくつかの活性化ポリマーが紹介されている(非特許文献7)。SS−PEGはタンパク質(30分間)と穏和な条件下で迅速に反応し、活性でありながらよく修飾された複合体を与える。Zalipskyは、特許文献13で、ポリ(エチレングリコール)−N−スクシンイミドカルボナートおよびその調製を開示する。この形のポリマーは、タンパク質,および低分子量ペプチドおよび遊離アミノ基を含む他の材料の、アミノ基と容易に反応すると言われている。ウレタン結合(非特許文献8)、カルバマート結合(非特許文献9)、などといった、タンパク質のアミノ基とPEGとの間の他の結合もまた本分野で公知である。
【0017】
しかし、これらおよび他の方法にもかかわらず、結果として生じる複合体が十分な保持された活性を欠くことがしばしば見出されている。例えば、Benharら(非特許文献10)は、組換え一本鎖免疫毒素のPEG化が結果としてその免疫毒素の特異的標的免疫反応性の消失を生じたことを観察した。その免疫毒素の活性消失は、免疫毒素の抗体結合領域内部の2個のリジン残基でのPEG結合の結果であった。この問題を克服するために、Benharらはこれらの2個のリジン残基をアルギニン残基で置き換え、および誘導体化によって、不活性化に対する耐性が3倍高い活性な免疫毒素を得ることができた。
【0018】
上記で考察したこれらの問題を克服するための別の提案は、より長い、より高い分子量のポリマーを用いることである。これらの材料は、しかし、調製が困難でありおよび使用するのが高価である。さらに、それらは、より容易に入手可能なポリマーに対してわずかな改善しか提供しない。提案された別の代替案は、ポリマーの2本の鎖を、トリアジン環を介してタンパク質のアミノ基へ付加することである。例えば、非特許文献11および非特許文献12を参照。しかし、トリアジンは、結合後に許容し得るレベルへ低減するのが困難な有毒物質である。
【0019】
SCAタンパク質の3次元構造の検討は、C末端およびリンカー領域は抗原結合部位から非常に遠く離れており、したがって、それらタンパク質の製造中にin vivoでグリコシル化される挿入基へのポリマー結合のための部位を位置決定する中で、結合したポリマーが抗原結合部位または周囲のFv構造の立体構造を立体的に妨害または破壊しない、ポリマー結合(polymer conjugation)のための部位となり得ることを明らかにした(非特許文献13)。
【0020】
より効果的なポリマー結合のために、SCA構造内部のアミノ酸残基を位置決定する試みは、本特許出願の下記の共有発明者によって記載されており、そのすべてが参照により本開示に含まれる:選択的に位置決定されたCysおよびオリゴLys残基を記載する、共に2001年2月26日出願の、特許文献14および特許文献15。
【0021】
共有の、共に2001年9月20日の特許文献16および特許文献17は、ポリマーが選択的に結合する、選択的に位置決定されたグリコシル化のための、SCA中のタンデムおよびトリプレットASN、および関連する部位を記載する。しかし、ポリマーのSCAタンパク質への位置依存的結合における他の選択肢および改善、および、ポリペプチドの結合活性および特異性の保持を、ポリマー結合のすべての利益と共に可能にする、共役化学(conjugation chemistry)における他の選択肢および改善の本分野における必要性が残っている。
【特許文献1】米国特許第4,946,778号明細書
【特許文献2】米国特許第5,260,203号明細書
【特許文献3】米国特許第5,455,030号明細書
【特許文献4】米国特許第5,518,889号明細書
【特許文献5】米国特許第5,091,513号明細書
【特許文献6】国際公開第93/11161号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5,869,620号明細書
【特許文献8】米国特許第6,025,165号明細書
【特許文献9】米国特許第6,027,725号明細書
【特許文献10】米国特許第6,103,889号明細書
【特許文献11】米国特許第6,121,424号明細書
【特許文献12】米国特許第6,515,110号明細書
【特許文献13】米国特許第5,122,614号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第09/791,578号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第09/791,540号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第09/956,087号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第09/956,086号明細書
【非特許文献1】Huber,R.,Science 233: 702-703 (1986)
【非特許文献2】Milenic,D.E.et al.,Cancer Research 51: 6363-6371(1991)
【非特許文献3】Colcher et al.,J.Natl.Cancer Inst.82: 1191 (1990)
【非特許文献4】Yokota et al.,Cancer Research 52: 3402 (1992)
【非特許文献5】Whitlow,M.,et al.,Protein Engng.7: 1017-1026 (1994)
【非特許文献6】Hoogenboom,H.R.,Nature Biotech.15:125-126 (1997)
【非特許文献7】Abuchowski et al.,Cancer Biochem.Biophys.7: 175-186 (1984)
【非特許文献8】Veronese et al.,Appl.Biochem.Biotechnol.11: 141-152(1985)
【非特許文献9】Beauchamp et al,Anal.Biochem.131: 25-33 (1983)
【非特許文献10】Benhar et al.(Biocomueate Chem.5: 321-326 (1994))
【非特許文献11】Enzyme 26: 49-53 (1981)
【非特許文献12】Proc.Soc.Exper.Biol.Med.,188:364-369 (1988)
【非特許文献13】Wang M.,et al.,1998 Protein Engng 11: 1277-1283
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
これらの長年のニーズに対応するために、本発明は、
抗体重鎖または軽鎖の可変領域の抗原結合部分を含む第1ポリペプチド;
抗体重鎖または軽鎖の可変領域の抗原結合部分を含む第2ポリペプチド;および
第1および第2ポリペプチドを繋ぐペプチドリンカーを含み、
ポリアルキレンオキシドポリマーに結合可能な少なくとも1つのCys残基を有し、かつ少なくとも1つの抗原結合部位を有する、ポリアルキレンオキシドポリマーに部位特異的結合可能なTNF−α結合一本鎖抗原結合ポリペプチド(「SCA」)を提供する。Cys残基は好ましくは下記の位置の1以上に位置する:
重鎖または軽鎖可変領域のC末端;
重鎖または軽鎖可変領域のN末端;
ペプチドリンカーの任意のアミノ酸位置;
N末端およびC末端の両方;
リンカーの2位;
リンカーの5位;
リンカーの2位およびC末端の両方;および
それらの組合せ。
【0023】
好ましくは、TNF−α結合SCAはTNF−αに選択的に結合する。
【0024】
より好ましいCys位置は、例えば、リンカーの2位、C末端およびそれらの組合せを含む。C末端は好ましくは天然に存在するC末端であるが、しかしその当該分野で既知である任意の修飾を含み得る。
【0025】
本発明のSCAは必要に応じて、目的の抗体、例えば、好ましくは抗TNF−α抗体の軽鎖および/または重鎖に由来する可変領域から成る。
【0026】
本発明はまた、本発明の一本鎖抗原結合ポリペプチドまたはタンパク質を含む複合体であって、実質的に非抗原性のポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシドポリマーを含む複合体を提供する。ポリアルキレンオキシドは好ましくはポリエチレングリコールすなわち「PEG」ポリマーである。
【0027】
ポリアルキレンオキシドは任意の適当なサイズ範囲であるが、しかし好ましくはサイズが約5,000から約40,000ダルトンの範囲にわたる。
【0028】
好ましくは、ポリアルキレンオキシドポリマーは一本鎖抗原結合ポリペプチドにCys残基で共有結合する。
【0029】
好ましくは、ポリアルキレンオキシドは、例えば、マレイミド、ビニルスルホン、チオール、オルトピリジルジスルフィドおよび/またはヨードアセトアミドリンカーといったリンカーを介して、一本鎖抗原結合ポリペプチドにCys残基で結合する。マレイミドリンカーが非常に好ましい。
【0030】
本発明のポリマー結合した実施形態では、ポリアルキレンオキシドは必要に応じて、各一本鎖抗原結合ポリペプチドが同一であるかまたは異なる少なくとも2つの一本鎖抗原結合ポリペプチドに結合している。
【0031】
必要に応じて、複合体、例えばPAOまたはSCAのどちらか、または両方のような複合体は、さらに別の機能部分、例えば、検出可能な標識またはタグと結合または複合体化している。
【0032】
本発明はまた、一本鎖抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、そのポリヌクレオチドを含む複製可能な発現ベクター、およびそれを発現するための適当な宿主細胞を提供する。
【0033】
本発明のSCAタンパク質は、任意の適当な本分野で公知の工程または方法によって製造されるが、好ましくは、本明細書に例示される通り、SCAをコードする発現ベクターを含む宿主細胞を培養し、さらにその宿主細胞によって発現された一本鎖抗原結合ポリペプチドを回収することによって製造される。
【0034】
本発明はさらに、部位特異的結合可能な2以上の一本鎖抗原結合ポリペプチドを含むタンパク質を、二量体、三量体、四量体などの形態の多価抗原結合タンパク質として提供する。
【0035】
本発明の多価タンパク質は、個々のSCAが共有結合または非共有結合リンカー、例えば、ペプチドリンカー、ジスルフィドリンカー、などによって連結される、本分野で公知の方法によって調製される。別の選択肢では、タンパク質は、非共有結合リンカーを用いて、構成的SCAポリペプチドを還元および再折りたたみすることによって組み立てられる。後者の選択肢では、構成的一本鎖抗原結合タンパク質またはポリペプチドのペプチドリンカーが、2から18残基の大きさであることが特に好ましい。
【0036】
本発明はさらに、単一の多価タンパク質としてコードされる構成的SCAポリペプチドの1つ以上に特定のCys残基を有する多価タンパク質を提供する。そのような一本鎖多価タンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の一部として考えられている。
【0037】
本発明のSCAおよびポリマー複合体を用いる方法もまた提供される。単に一例として、そのような方法の1つは下記の工程を含む:TNF−αを含む疑いのある試料を、本発明に記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドまたは多価タンパク質を含む試薬と接触させ、および、本発明に記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドまたは多価タンパク質がTNF−αと結合したか否かを検出する。有利なことに、本発明に記載のポリペプチドまたは多価タンパク質は、ポリアルキレンオキシドポリマーと結合している。
【0038】
上記の方法のすべてについて、複合体は、SCAまたはポリマーのどちらかにおいて、必要に応じて固相担体に固定される。
【0039】
哺乳類、例えばヒトにおいて疾患または病気を治療または診断する方法であって、本発明のTNF−α結合一本鎖抗原結合ポリペプチドの有効量を投与することを含み、一本鎖抗原結合ポリペプチドがTNF−αと結合しおよびTNF−α関連中毒を阻害するのに有効な量で投与される方法も提供される。本発明の一本鎖抗原結合ポリペプチドおよび/またはそのポリマー複合体は、約10μg/kgから約4,000μg/kgの範囲の量で、およびより好ましくは約20μg/kgから約800μg/kgの範囲の量で、およびさらに好ましくは約20μg/kgから約400μg/kgで、本分野で公知である全身経路によって投与され、用量は臨床反応を生じるために必要に応じて反復される。体腔内への潅流、吸入または鼻腔内経路による投与もまた、局所投与と共に、本発明の抗TNF−αポリペプチド,タンパク質およびポリマー複合体化合物から利益を受ける全身症状およびより局所的な症状を治療するために考えられている。そのような症状は、例えば、毒素性ショック症候群、および、抗TNF−α治療に反応する、本分野で公知である任意の他の炎症過程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
したがって、本発明は、ポリマー、例えば、実質的に非抗原性のポリマーへの部位特異的結合を促進するために選択された、操作された官能基を有する改良された抗TNF−α一本鎖抗原結合ポリペプチドおよび/またはそのようなポリペプチドから成る多価タンパク質を提供する。本発明のポリペプチドとポリマーとの複合体、およびそれを作製および使用する方法もまた提供される。
【0041】
本発明は概して、一本鎖抗原結合タンパク質(「SCA」)または抗体の一本鎖可変断片(「sFv」)が、適当なポリアルキレンオキシドポリマーとSCAポリペプチド上の特定位置で結合した場合、向上した性質を有するという発見に基づく。本発明のSCAは、そのような特異的位置での選択的なポリマー結合のための官能基を含むように設計される。ポリマー結合の利益は概して、in vivoでの抗原性の実質的低減、および動物またはヒト患者への投与後の循環半減期の延長を含む。本発明のSCAが望ましい性質の複合体をどのように提供するかに関するいかなる理論または仮説に縛られることを意図することなく、1または複数のポリペプチド鎖上の選択された位置に結合部位を設計することによって、結合ポリマーの存在による抗原結合機能および鎖三次構造との干渉が回避されるかまたは最小化されると信じられている。
【0042】
本発明の範囲をよりよく理解するため、下記の用語が定義される。「一本鎖抗原結合分子」(「SCA」)または「一本鎖Fv」(sFv)の語は別に記載されない限り本明細書では相互に交換可能に用いられる。「タンパク質」および「ポリペプチド」の語もまた、別に記載されない限り互換的に用いられる。概して、SCAは、抗体VH(またはVL)の可変領域に由来する第2ポリペプチドの結合部分と結合した、抗体VL(またはVH)の可変領域に由来する第1ポリペプチドの結合部分を含み、その2つのポリペプチドは第1および第2ポリペプチドを繋いで単一のポリペプチド鎖とするペプチドリンカーによって、第1ポリペプチドがリンカーに対してN末端となりおよび第2ポリペプチドが第1ポリペプチドおよびリンカーに対してC末端となるように連結されていると構造的に定義される。
【0043】
SCAはこのように、ポリペプチドリンカーによって結合された可変領域の一対を含む。その領域は、適切に対となった相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖および重鎖可変領域対を領域が含む場合のように、結合して機能的抗原結合部位を形成し得る。この場合、一本鎖タンパク質は概して「一本鎖抗原結合タンパク質」または「一本鎖抗原結合分子」または「一本鎖抗原結合ポリペプチド」と呼ばれる。上で定義される通り、SCAは必要に応じて「1価」または「多価」である。1価SCAは、単一の抗原結合部位、すなわち、抗原結合部位を形成するように結合するポリペプチドリンカーによって連結された1対の可変領域のみを含むように設計される。多価SCAは、2つ以上の抗原結合部位、すなわち、ポリペプチドリンカーによって結合された可変領域を2対以上含むように改変された抗原結合タンパク質であり、2つ以上の上記の一本鎖抗原結合ポリペプチドを含むSCAを含む。構成的SCA部分は本分野で公知である任意の方法によって結合している。
【0044】
一実施形態では、本発明に記載の多価結合タンパク質は、抗原結合タンパク質として完全に機能を維持するように非共有結合した2つ以上のSCAを含む。別の一実施形態では、多価結合タンパク質は、共有結合によって、例えば、本分野で公知であるペプチドまたは非ペプチドリンカー化学のいくつかのうちの1つによって結合している2つ以上のSCAを含む。さらに、例えば複数のSCAから成る多価結合タンパク質を、1価SCAに類似しているが同一かまたは異なる2つ以上の反復SCAドメインを有する単一のペプチド鎖として発現するかまたは合成によって構築することができる。
【0045】
SCAは、VLがN末端ドメインでありその後にリンカーおよびVHが続くように構築されている(VL−リンカー−VH構造)。別の一実施形態では、SCAは、VHがN末端ドメインでありその後にリンカーおよびVLが続くように構築されている(VH−リンカー−VL構造)。その好ましい実施形態は、VLをN末端ドメインに含む(Anand,N.N.,et al.,J.Biol.Chem.266: 21874-21879 (1991)を参照)。必要に応じて、複数のリンカーが用いられる。
【0046】
一本鎖抗原結合タンパク質の理論および製造の説明は、すべて参照により本開示に含まれる、Ladner et al.,米国特許第4,946,778号明細書、第5,260,203号明細書、第5,455,030号明細書および第5,518,889号明細書、およびHuston et al.,米国特許第5,091,513号明細書(「生合成抗体結合部位」(BABS))に見出される。上記の特許に従って製造されたSCAは、対応するFab断片と実質的に同様の結合特異性および親和性を有する。
【0047】
可変ドメイン(Fv)
本発明のSCAは、任意の望ましい天然または人工抗体から選択されるかそれに由来するかまたはそれを原型とした可変ドメイン(「Fv」)を用いて構築される。別の好ましい一実施形態では、本発明における用途のためのFvは、置換ライブラリとして構成されるFvライブラリから得られ、目的の結合標的に対してスクリーニングされる。単に一例として、Fvドメインを得るために多数のMabが本分野で用いられており、および、Fvドメインはこれらのうちの任意のものから得ることができ、および本発明のSCAに用いることができると考えられている。単に一例として、および無制限に、下記のMabがFvドメインを得るために用いられる:
26-10, MOPC 315, 741F8, 520C9, McPC 603, D1.3, murinephOx, human phOx, RFL3.8 sTCR, 1A6, Sel55-4, 18-2-3, 4-4-20, 7A4-1, B6.2, CC49, 3C2, 2c, MA-15C5/Kl2Go, Ox, etc. (See, Huston, J.S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85: 5879-5883 (1988); Huston, J.S. et al., SIM News 38 4 (Supp.): 11 (1988); McCartney, J. et al., ICSU Short Reports 10: 114 (1990); McCartney, J.E. et al., unpublished results (1990); Nedelman, M. A. et al., J. Nuclear Med.32 (Supp.): 1005(1991); Huston, J. S. et al., In: Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications, Part B, edited by J. J. Langone, Methods in Enzymology 203: 46-88 (1991); Huston, J. S. et al., In: Advances in the Applications of Monoclonal Antibodies in Clinical Oncology, Epenetos, A. A. (Ed.), London, Chapman & Hall (1993); Bird, R. E. et al., Science 242: 423-426 (1988); Bedzyk, W. D. et al., J. Biol. Chem. 265: 18615-18620 (1990); Colcher, D. et al., J. Nat. Cancer Inst. 82: 1191-1197 (1990); Gibbs, R. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88 : 4001-4004 (1991) ; Milenic, D. E. et al., Cancer Research 51: 6363-6371(1991) ; Pantoliano, M. W. et al., Biochemistrv 30: 10117-10125 (1991); Chaudhary, V. K. et al., Nature 339: 394-397 (1989); Chaudhary, V. K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 87: 1066-1070 (1990); Batra, J. K. et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 171: 1-6 (1990); Batra, J. K et al., J. Biol. Chem. 265: 15198-15202 (1990); Chaudhary, V. K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 87: 9491-9494 (1990); Batra, J. K. et al., Mol. Cell. Biol. 11: 2200-2205 (1991) ;Brinkmann, U. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88: 8616-8620 (1991); Seetharam, S. et al., J. Biol. Chem. 266: 17376-17381 (1991); Brinkmann, U. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 89: 3075-3079 (1992); Glockshuber, R. et al., Biochemistry 29: 1362-1367 (1990); Skerra, A. et al., Bio/Technol. 9: 273-278 (1991); Pack, P. et al., Biochemistry 31 : 1579-1534 (1992); Clackson, T. et al., Nature 352: 624-628 (1991) ; Marks, J. D. et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991) ; Iverson, B. L. et al., Science 249: 659-662 (1990); Roberts, V. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 87 : 6654-6658 (1990); Condra, J. H. et al., J. Biol. Chem. 265: 2292-2295 (1990); Laroche, Y. et al., J. Biol. Chem. 266: 16343-16349 (1991); Holvoet, P. et al., J. Biol. Chem. 266: 19717-19724 (1991); Anand, N. N. et al., J. Biol. Chem. 266: 21874-21879 (1991) ; Fuchs, P. et al., Bio/Technol. 9: 1369-1372 (1991); Breitling, F. et al., Gene 104: 104-153 (1991); Seehaus, T. et al., Gene 114:235-237 (1992); Taldcinen, K. et al., Protein Engng. 4 : 837-841 (1991); Dreher, M. L. et al., J. Immunol. Methods 139:197-205 (1991); Mottez, E. et al., Eur. J. Immunol. 21: 467-471 (1991); Traunecker, A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88: 8646-8650 (1991) ; Traunecker, A. et al., EMBO J.10: 3655-3659 (1991); Hoo, W. F. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 89: 4759-4763 (1993) 。上記の引用の全ては参照により本開示に含まれる。
【0048】
特に、米国特許第6,258,562号明細書によってD2E7として記載される抗TNF−αMAb、およびCarter P et al.,1992,Proc Natl Acad Sci (USA) 89: 4285−4289に記載される抗erbB−2 MAb(HERCEPTIN(登録商標))は、本発明に記載のSCAおよびSCA−ポリアルキレンオキシド複合体の作製のためのモデル例の役割を果たした。D2E7はHumira(登録商標)(Abbott Immunology,Abbott Park,Illinois)として市販されている。加えて、CC49 MabはLaboratory of Tumor Immunology and Biology,National Cancer Institute のDr.Jeffrey Schlomのグループによって開発された。それは汎癌腫瘍抗原TAG−72に特異的に結合する。Muraro,R.et al.,Cancer Research 48: 4588-4596 (1988)を参照。Filpula et al.1996 (Antibody Engineering: A Practical Approach,Oxford University Press,pp 253-268)に記載された抗TAG−72 CC−49SCAは、本発明に記載のCys−修飾SCAとしておよび典型的な複合体としても調製された。上記の引用の全ては参照により本開示に含まれる。
【0049】
ペプチドリンカー
本発明に記載のSCAは、VLのC末端、またはその隣接部位、およびVHのN末端、またはその隣接部位にわたるように、または、VHのC末端とVLのN末端とを連結するように設計されたペプチドリンカーを含む。
【0050】
リンカーの長さは、連結されるべきポリペプチドの性質、および連結の結果として生じる連結された融合ポリペプチドの目的の活性に依存することを当業者は理解する。一般的に、リンカーは、結果として生じる連結された融合ポリペプチドが適切に立体構造へ折りたたまれ、目的の生物活性すなわち抗原結合を与えることを可能にする長さを有するべきである。個別の具体例では、好ましい長さは連結されるべきポリペプチドの性質、および連結の結果として生じる連結された融合ポリペプチドの目的の活性に依存する。
【0051】
下記で考察するSCAポリペプチドの場合のように、立体構造情報が入手可能である場合は、適当なリンカーの長さは、置換ポリペプチドの三次元立体構造および結果として生じる連結した融合ポリペプチドの目的の立体構造の検討によって推定することができる。そのような情報が入手できない場合は、適当なリンカーの長さは、さまざまな長さのリンカーを有する連結された融合ポリペプチドを目的の生物活性について試験することによって経験的に決定することができる。そのようなリンカーは、参照により本開示に含まれる国際公開第94/12520号パンフレットに詳細に記載される。
【0052】
SCAポリペプチドを構築するのに用いられるペプチドリンカーは一般的に、大きさが長さ2から約50アミノ酸残基、および好ましくは、約2から約10残基の範囲にわたる。別のある実施形態では、リンカーは大きさが約10から約30残基の範囲にわたる。より好ましいある実施形態では、特に2つ以上の非共有的に結合したSCAポリペプチドを含む多価結合体に関する実施形態については、リンカーは大きさが約2から約20アミノ酸残基の範囲にわたることが好ましい。より好ましくは、そのようなリンカーはセリンに富むかまたはグリシンに富む。
【0053】
リンカーは柔軟性となるように設計され、および、交互のGlyおよびSer残基の基礎配列を用いることが推奨される。リンカーおよびそれと結合した一本鎖Fvタンパク質の溶解度を高めるために、3個の荷電残基すなわち2個の正に荷電したリジン残基(K)および1個の負に荷電したグルタミン酸残基(E)を含めることができる。好ましくは、リジン残基のうち1個はVHのN末端付近に配置され、リンカーとVHとのペプチド結合を形成する際に失われる正電荷の代替となる。そのようなリンカーは、参照により本開示に含まれる共有の米国特許第5,856,456号明細書によって詳細に記載される。参照により本開示に含まれるWhitlow,M.,et al.,Protein Engng.7: 1017-1026 (1994)も参照。
【0054】
本発明に記載の多価抗原結合タンパク質については、2つ以上のSCAポリペプチドの共有または非共有結合が、それらのタンパク質の形成のために好ましい。しかし、多価SCAを、長さ25残基のリンカーを用いてSCAから作製することができるが、それは不安定となる傾向がある。Holliger,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 90: 6444-6448 (1993)は、長さ0から15残基のリンカーが2価Fvの形成を促進することを近年実証している。参照により本開示に含まれる、Whitlow,M.,et al.,Protein Ensns 7 :1017-1026 (1994); Hoogenboom,H.R.,Nature Biotech.15: 125-126 (1997);および国際公開第93/11161号パンフレットを参照。
【0055】
部位特異的PEG化配列の同定および合成
本発明は、ポリペプチド(VL、VHまたはその隣接部位)のC末端、ポリペプチド(VL、VHまたはその隣接部位)のN末端、第1および第2ポリペプチド領域の間のリンカー領域、またはそれら領域の組合せの領域に隣接する、チオール官能基部分、例えば、VLおよびVH領域中の特定部位に位置するチオール含有アミノ酸残基を提供する。本発明では、ポリマー結合のための特異的部位が、ポリペプチドリンカーに、C末端に、またはSCAのC末端に隣接して、および好ましくは、リンカーの第2の残基に位置することが好ましい。
【0056】
チオールを含む官能基は、天然アミノ酸残基、および/または天然に存在しないアミノ酸残基を含む、本分野で公知の任意のものであることができ、およびそれらのチオール官能基化誘導体を有する。好ましい一実施形態では、チオール官能基部分はシステイン残基である。SCA タンパク質は通常は2個の埋め込まれたジスルフィド結合を有するが (Padlan EA,1994,Antibody-Antigen Complexes,R.G.Landes Company,Austin)、しかし遊離システインを有しないため、このことは好ましい。したがって、改変されたCysチオールだけが、チオールとの反応に選択的である活性化ポリマーとの結合に利用可能である。
【0057】
Cys部位をさまざまな位置へ導入するために用いられる特定のヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド配列に依存する。最も好ましい部位は、Cys挿入を生じるために必要な変化の数が最小である一方で上述の立体構造の必要条件もまた満たす部位である。もちろん、遺伝コードの重複に基づき、特定のアミノ酸が複数のヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0058】
天然のタンパク質配列を、Cys残基を組み込んだものに変えるために、部位特異的突然変異誘発のための本分野で公知である任意の適当な方法が用いられる。突然変異タンパク質遺伝子は、細菌細胞、酵母または他の真菌細胞、昆虫細胞または哺乳類細胞といった他の発現系へ入れられる。突然変異タンパク質はその後、タンパク質の回収のための標準的な方法によって精製される。
【0059】
好ましくは、SCAムテインを発現している核酸分子は、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によって作製される。部位特異的Cysムテイン (Cys mutain)を作製するためのそのような方法およびクローンDNAの突然変異誘発のための関連する方法は、本分野でよく知られている。共に参照により本開示に含まれる、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989) ; Ausubel et al.(eds.)、 CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley and Sons (1987)を参照。
【0060】
宿主およびベクター
目的のSCAのヌクレオチド配列を突然変異させて希望の位置にCys残基を提供した後、突然変異させた核酸は好ましくは適当なクローニングベクターへ挿入され、そこでSCAをコードするヌクレオチドは転写発現を調節する調節配列へ調節可能に結合される。これらは、希望の宿主細胞系からのSCA産生を最適化するために、好ましくは本分野で公知である方法によって選択される。
【0061】
SCAは原核または真核宿主細胞によって発現されおよび産生されることが知られているが、多くの目的のためには真核宿主細胞が好ましい。好ましい原核宿主は、バチルス、ストレプトミセス、ストレプトコッカス、および/またはEscherichia coliといった細菌を含むがそれらに限定されない。好ましい真核宿主細胞は、酵母または他の真菌細胞、昆虫細胞および/または哺乳類細胞を含む。好ましくは、これらは、in vivo、または組織培養中のどちらかに存在する、ヒトまたは霊長類細胞を含む。より好ましくは、本発明のSCAはPichia pastorisといった形質転換酵母によって産生される。発現ベクターは、宿主細胞において一過性発現を提供するように、または宿主細胞ゲノムと一体化して形質転換細胞株を生じるように任意に選択される。
【0062】
標準的なタンパク質精製法を用いてこれらの突然変異タンパク質が精製される。天然タンパク質精製方法へのわずかな改変だけが必要であり得る。例えば、ベクター、宿主の選択、タンパク質、特にSCAポリペプチドの1価、多価および融合形の産生、単離および精製の方法は、例えば、参照により本開示に含まれる共有の米国特許第4,946,778号明細書および米国特許第6,323,322号明細書によって十分に記載されている。
【0063】
好ましい一実施形態では、目的のSCAおよび選択マーカーをコードする核酸分子は宿主細胞染色体中へ、単一のベクターまたは同時導入される複数のベクターとして導入される。マーカーは、宿主における栄養要求性(例えば一般的な酵母栄養要求性マーカーであるhis4、leu2、またはura3)、例えば抗生物質といった殺生物物質耐性、または銅といった重金属に対する耐性、などを補足し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現すべきSCA DNA配列と直接結合しているか、または同時トランスフェクションによって同一の細胞へ導入される。導入された核酸を安定して組み込んでいる細胞は、所定の系における生存またはマーカーのその他の効果によって選択される。
【0064】
別の一実施形態では、目的のSCAは、レシピエント宿主細胞における自律的複製の能力を有する適当なプラスミドベクターによってコードされる。本分野で公知である幅広いベクターのうち任意のものをこの目的に用いることができる。特定のプラスミドまたはウイルスベクターの選択における重要な要素は下記を含む:ベクターを含むレシピエント細胞が、ベクターを含まないレシピエント細胞から識別されおよび選択されることの容易さ;特定の宿主中で望まれるベクターのコピー数;および異なる種の宿主細胞間でベクターを「往復」することができることが望ましいかどうか。
【0065】
一連の酵母ベクター系のうち任意のものを利用することができる。そのような発現ベクターの例は、酵母2ミクロンサークル、発現プラスミドYEP13、YCPおよびYRPなど、またはそれらの誘導体を含む。そのようなプラスミドは本分野でよく知られている(Botstein et al.,Miami Wntr.Sump.19:265-274 (1982); Broach,J.R.,In: The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces : Life Cycle and Inheritance,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,p.445-470 (1981); Broach,J.R.,Cell 28: 203-204 (1982)) 115。
【0066】
哺乳類宿主については、本分野で公知であるいくつかのベクター系を利用可能である。ある種類のベクターは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、またはSV40ウイルスといった動物ウイルスに由来する、自律的に複製する染色体外プラスミドを提供するDNA配列を利用する。別の種類のベクターは、目的の遺伝子配列の宿主染色体への組み込みを基にする。導入されたDNAを染色体に安定して組み込んでいる細胞は、上記で考察した通り、マーカーによって選択される。mRNAの最適な合成のためには追加の配列もまた必要である。これらの配列は、スプライスシグナル、および転写プロモーター、エンハンサー、および終止シグナルを含む。そのような配列を組み込んだcDNA発現ベクターは、Okayama,H.,Mol.Cell.Biol.3: 280 (1983)に記載されたもの、および本分野によく知られているものを含む。
【0067】
ベクターの中でも、細菌における使用のために好ましいベクターは、Qiagenより入手可能なpQE70、pQE60およびpQE−9;Stratageneより入手可能なpBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;およびPharmaciaより入手可能なptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5を含む。好ましい真核ベクターには、Stratageneより入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTlおよびpSGa;およびPharmaciaより入手可能なpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVLがある。Pichiaにおける発現に好ましいベクターは、pHIL−S1(Invitrogen Corp.)およびpPIC9(Invitrogen Corp.)である。他の適当なベクターは当業者に容易に明らかとなる。
【0068】
その構造を含むベクターまたはDNA配列が発現のために一旦調製されると、そのDNA構築物は適当な宿主へ導入され、または形質転換され得る。形質転換、トランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈澱、エレクトロポレーション、または他の従来の方法といったさまざまな技術が使用可能である。細胞が組換えDNA(またはRNA)分子で形質転換された後、細胞を培地中で増殖させ、および適当な活性についてスクリーニングする。その配列の発現は、結果として本発明のPEG結合のための突然変異SCAの産生を生じる。
【0069】
SCAタンパク質の産生および精製
本発明の1価または多価抗原結合タンパク質は、本分野で公知である適当な任意の方法によって産生することができる。概して、その方法は、適当な発現ベクターを作製すること、そのベクターを適合する宿主細胞中で発現させること、宿主細胞を培養することおよび、目的のタンパク質を回収することを含む。
【0070】
組換えタンパク質を培地中へ分泌することができない原核細胞または他の培養細胞における発現については、回収は採取した細胞からである。採取された細胞物質は、細胞溶解および洗浄、形成された封入体の適合する変性溶媒中での可溶化、機能する結合タンパク質への再折りたたみを与えるために有効である条件下での希釈による再折りたたみ、および2つのイオン交換HPLCクロマトグラフィー工程に供される。好ましい原核発現系は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)(「E.coli」)を含む。例えば、また参照により本開示に含まれる、米国特許第4,946,778号明細書、第5,260,203号明細書、第5,455,030号明細書、第5,518,889号明細書、および第5,534,621号明細書、およびBirdet al.,Science 242: 423 (1988)を参照。
【0071】
例示されたSCAタンパク質の発現に関する最初の研究は、Xoma Corporationから入手したE.coli発現系を使用した(araBプロモーターおよびpelBシグナル)。SCAタンパク質の発現に成功した。しかし、Xoma Corp.系によって発現されたタンパク質は、周辺質(periplasm)中で細胞に結合したまま留まり、および追加の精製工程を必要とした。
【0072】
より好ましい発現系は、真核宿主細胞および、分泌シグナル配列を有する発現ベクターを用いる。この好ましい実施形態は、E.coli宿主細胞からの不溶性の封入体として、発現されたSCAを回収する必要性を回避する。
【0073】
必要な場合には、グリコシル化。酵母における目的タンパク質の産生に用いることができる、強力なプロモーター配列およびプラスミドの大きいコピー数を利用する、いくつかの組換えDNA戦略が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳類遺伝子産物上のリーダー配列を認識し、およびリーダー配列を有するペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。
【0074】
このため、本明細書で例示するSCA タンパク質はすべて、酵母Pichia pastorisからの分泌によって発現されおよび溶液から回収された。
【0075】
D2E7 MAb可変ドメインを有するSCAタンパク質
特に好ましい一実施形態では、本発明に記載のSCAがD2E7 Mabの可変ドメインを用いて開発された。D2E7 Mabは、Cambridge Antibody TechnologyおよびBASF Corporationによって開発された。それはヒトサイトカイン、腫瘍壊死因子α(TNF−α)と特異的に結合し、およびそのMabは、参照により本開示に含まれる米国特許第6,09,0382号明細書、米国特許第6,258,562号明細書によって詳細に記載される。この抗体の選択されたドメインは、それぞれのポリペプチド配列中へ特定の位置に組み込まれた1つ以上のCys残基を有するいくつかの典型的なSCA分子を調製するためのモデルの役割を果たした。
【0076】
要約すると、完全に合成された遺伝子がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、長さが20塩基から102塩基の範囲にわたる14種類の長い重複する合成オリゴヌクレオチドを用いて構築された。オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発がさらに用いられ、もとの配列の他の変異体を構築した。結果として生じるベクターによってコードされるSCAは、ペプチドリンカーによって結合した、D2E7 Mabの完全な可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)部分を含む。例示されたリンカーは、「218リンカー」で表される18残基リンカー、および15残基リンカーであった。
【0077】
18アミノ酸の「218リンカー」は、Filpula et al,1996,Antibody Engineering : A Practical Approach,1996,Oxford University Press,pp 253-268)に記載されている。長さ15アミノ酸の(GGGGS)3リンカー(配列番号42)は、Huston JS et al,1988,Proc Natl Acad Sci (USA) 85:5879-5883に記載されている。一部の場合には、C末端にヒスチジン6個のタグ(his6)(配列番号43)が、金属固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)による精製を簡略化するために含められた。完成した遺伝子は、Applied Biosystems (Foster City,California)からのABI PRISM(登録商標)310 Genetic Analyzer (以前はABI/Perkin−Elmerによって製造)でのDNA配列確認のために、E.coliプラスミドへクローニングされた。ドメイン方向、リンカー、および遊離システインの配置を下記の表1に要約する。
【表1】
【0078】
上記の表1によって要約される通り、図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hおよび1−Iは、上の9つの遺伝子のDNAおよびコードされるポリペプチド配列を示す。
【0079】
SCAタンパク質の組換え発現および精製
上述の通り、上に記載したSCA変異タンパク質の産生のためにPichia pastorisが用いられた。酵母α接合因子由来のシグナル配列が、これらのSCAタンパク質それぞれについての成熟コード配列の直接前に挿入された。このシグナルペプチドのアミノ酸配列はMet Arg Phe Pro Ser Ile Phe Thr Ala Val Leu Phe Ala Ala Ser Ser Ala Leu Ala^ Ala (配列番号36)であり、「^」は切断部位を示す。そのシグナルの20番目のアミノ酸(^の次のアラニン)もまたこれらの構造に含められた。したがって、成熟SCAタンパク質のアミノ末端はこのアラニンを含み、例示されたSCAのそれぞれにおいて、図2A〜2H(配列番号1〜9)によって図示される完全なアミノ酸配列がそれぞれ続く;表1に列挙する通り)。N末端タンパク質配列分析は、これらの配列は正しくプロセシングされたことを確認した。D2E7 SCAを発現する突然変異遺伝子を、Pichia転移プラスミドpHIL−D2(Invitrogen Corp.)中にEcoRI部位で個別にライゲーションさせ、および酵母Pichia pastoris宿主GS−115へ形質転換した。
【0080】
これらの手続のための詳細な手順書は、参照により本開示に含まれるInvitrogen CorporationからのPichia発現キット取扱説明書カタログ番号X1710−01(1994)に示される。発現の最初の評価は、SDS−PAGEゲルのクマシーブルー染色によって実施した。個々のSCAタンパク質に関して、Pichia発現株についてのクローン番号は、前出の表1の2−7−SC番号に対応する。
【0081】
SCAタンパク質(〜27kDa)は、組換えPichiaにおいて高いレベルで発現されおよび分泌された(約20〜100mg/L)。還元剤の非存在下でのSDS−PAGEゲルについての分析は、単量体および2個の単量体の単一のジスルフィド架橋によって形成される二量体の両方の、予想された存在を実証した。精製2−7−SC−1SCAタンパク質に対するウサギ抗血清を調製した。この試薬を用いたウェスタン分析は、発現されたSCAタンパク質の同一性を立証した。
【0082】
例えば、図8はD2E72−7−SC−2およびPEG化型の代表的なウェスタンブロット分析を示し、組換えSCAタンパク質およびPEG−SCA複合体とのこの抗D2E7抗血清の反応性を確認する。抗218−リンカー抗体を使用した。各試料の1μgを、4〜20%非還元SDS−PAGEゲルで分析した。一次および二次抗体は、それぞれ、ウサギで作製した抗18−リンカー抗体、およびヤギ抗ウサギ抗体結合ホースラディッシュペルオキシダーゼであった。酵素基質は、Moss,InからのTMBMペルオキシダーゼ基質であった。D2E7 2−7−SC−2はC末端にPEGを有し、および2−7−SC−5は218リンカーにPEGを有する。バンドAは2−7−SC−2であり、バンドBは2−7−SC−5であり、バンドCはPEG(20k)−2−7−SC−2であり、バンドDはPEG(20k)−2−7−SC−5であり、バンドEはPEG(40k)−2−7−SC−2であり、バンドFはPEG(40k)−2−7−SC−5である。
【0083】
SCAタンパク質は上清から純度95%超へ、単純な2または3のカラムクロマトグラフィー手順によって精製された。his6タグ(配列番号43)を有するSCAタンパク質については、透析した発酵培地をダイアフィルトレーションに供しおよびDEAEカラムを通し、次いでIMACニッケル親和性カラム(QIAGEN)に結合させた。結合したSCAタンパク質はイミダゾールを用いて溶出し、次いで第2のDEAE陰イオン交換カラムを通した。素通り画分を、SCAタンパク質の濃縮のためにダイアフィルトレーションに供し、およびさらに特徴づけを行った。his6タグ(配列番号43)を欠くSCAタンパク質については、SCAタンパク質は、Pierce Biotechnology,Inc (Rockford,Illinois)から入手したプロテインL−アガロースカラムで低pH溶出を用いて精製したか、またはAmersham Pharmacia (Piscataway,NJ)から入手したHS陽イオン交換クロマトグラフィーに捕捉し、次いで塩濃度勾配溶出およびダイアフィルトレーションを実施した。HSクロマトグラフィーが好ましい方法であった。
【0084】
図2Aおよび2Bは、クローン2−7−SC−2についての代表的な発現および精製データを示し、画分のクマシーブルー染色によるSDS−PAGEゲル分析、および各工程での収率を含む。少量の54kDaジスルフィド結合二量体が染色ゲルに見られる。
【0085】
チオール特異的活性化ポリマー
好ましくは、本発明のSCAはチオール特異的活性化ポリマーに結合している。具体的には、本発明に好ましくは使用される活性化ポリマーは、スルフヒドリル−またはチオール−選択性末端結合基を、その少なくとも一方の末端に有するものである。本分野で公知であるいくつかの活性化ポリマー、例えば、遊離チオールと反応するポリアルキレンオキシド(PAO)ポリマーが、本発明の実施に容易に用いられる。反応基の例は、マレイミド、ビニルスルホン、チオール、オルトピリジルジスルフィド、およびヨードアセトアミドを含み、マレイミド基がチオールに対して高度に特異的であることおよび結合反応が穏和な条件下で起こることから見てマレイミド活性化ポリエチレングリコール(PEG−mal's)が好ましい。また、例えば、参照により本開示に含まれる共有の米国特許第5,730,990号明細書を参照。別のスルフヒドラル選択的活性化PEG−ポリマーが、参照により本開示に含まれる2001Shearwater Corporationカタログに図解の通り(前Shearwater Corporation)から入手可能である。また、参照により本開示に含まれるGoodson,R.J.& Katre,N.V.1990,Bio/Technology 8: 343; Kogan,T.P.1992,Snythetic Comm.22,2417を参照。
【0086】
例えば、本発明のSCAと結合した、直鎖ポリマーmPEG−MAL(5kDa)(例えば、Shearwaterカタログ番号2D3XOT01)およびmPEG−MAL(20kDa)、および分枝鎖ポリマーmPEG2−MAL(40kDa)(例えば、Shearwaterカタログ番号2D2MOH01)複合体が本明細書で例示される。これらのマレイミド−PEGポリマーの構造、および共役化学を、便宜のために図3A〜3Eに示す。図3FはmPEG−ビニルスルホンを示す。さまざまなマレイミド活性化ポリマーは、図3Eに示す通り、遊離チオールと容易に反応する。図3Eでは、「SCA」は、少なくとも1つの遊離チオール(S−H)を有する本発明に記載のタンパク質である。下記の表2を参照。
【表2】
【0087】
スルフヒドリル特異的リンカーを含み得る他のポリマー基本骨格は、同一出願人による米国特許第5,643,575号明細書、米国特許第5,919,455号明細書、米国特許第6,113,906号明細書(U−PEG)、米国特許第6,153,655号明細書および米国特許第6,395,266号明細書(末端分岐PEG)、米国特許第6,251,382号明細書(ポリPEG)および米国特許出願公開第10/218,167号明細書(ビシン)などで開示されたものを含む。また、Shearwater Polymers,Inc.カタログ『Polyethylene Glycol and Derivatives 2001』も参照。前記のそれぞれの開示は、参照により本開示に含まれる。
【0088】
上述の通り、複合体のポリマー部分は好ましくはポリアルキレンオキシドである。より好ましくは、ポリマー部分は、実質的に非抗原性であるポリエチレングリコールである。PAOおよびPEGは重量平均分子量において相当に異なり得るが、本発明の組成物に含まれるものは、独立して、約2,000Daから約136,000Daの重量平均分子量を本発明の大部分の態様で有する。より好ましくは、ポリマーは約3,000Daから約100,000Daの重量平均分子量を有する。非常に好ましくは、ポリマー部分は約5,000Daから約40,000Daの重量平均分子量を有する。
【0089】
本明細書に含まれるポリマー物質は、好ましくは 室温にて水溶性である。そのようなポリマーの非限定的な一覧は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオールといったポリアルキレンオキシドホモポリマー、その共重合体およびそのブロック共重合体を含み、ただしブロック共重合体の水への溶解度が維持されることを条件とする。
【0090】
マレイミドポリマーの、遊離システインとの、しかしリジンまたはヒスチジンとではない特異的な反応性の確認は、これらの各遊離アミノ酸とのマレイミドの反応によって達成された。
【0091】
図4は、活性化PEG−MALとのシステインの反応性を確認する。3mM溶液としてのシステインについての吸収が曲線Aで表される。濃度1mMでの活性化PEG−MALについての吸収曲線は曲線Cで示され、および300nmを中心とする幅広い吸収ピークによって特徴づけられる。吸収曲線Bは、システインおよび活性化PEG−MALを1:3比で合わせた溶液について取った(1mM PEG−MALおよび3mMシステイン、100mMリン酸ナトリウム、pH6.0、1mM EDTA、25℃)。B曲線はA曲線を右にシフトしてたどるが、PEG−MALの特徴的な300nMの幅広ピークは存在せず、活性化PEG−MALとのシステインの反応性を確認する。ヒスチジンまたはリジンについての類似の吸収曲線(記載せず)が、使用した条件下ではこれらの残基は高度に反応性ではないことを確認する。
【0092】
標識化またはタグ化複合体
本発明に記載のポリアルキレンオキシド結合SCAの製造に際して、複合体は、診断薬または治療薬をSCA−ポリマー複合体へ結合または複合化することによって、必要に応じてさらに修飾される。本発明に記載の抗体複合体を調製する一般的方法は、参照により本開示に含まれるShih,L.B.,et al.,Cancer Res.51: 4192 (1991) ; Shih,L.B.,and D.M.Goldenberg,Cander Immunol.Immunother.31: 197 (1990); Shih,L.B.,et al.,Intl.J.Cancer 46 : 1101 (1990); Shih,L.B.,et al.,Intl.J.Cancer 41 : 832 (1988)に記載される。間接的な方法は、ポリアルキレンオキシドが官能基を有する抗体(またはSCA)を、1または複数の生物活性分子、例えば、ペプチド、脂質、核酸(すなわち、リン酸−リジン複合体)、医薬、毒素、キレート剤、ホウ素添加剤、または検出可能な標識分子を有するキャリヤーポリマーと反応させることを含む。
【0093】
一部の別の実施形態では、ポリアルキレンオキシド結合SCAが診断薬または治療薬と直接に複合体化または結合される。一般的手順は、診断薬または治療薬が酸化されたsFv部分へ直接結合される以外は、複合体化の間接法と同様である。参照により本開示に含まれるHansen et al.,米国特許第5,443,953号明細書を参照。
【0094】
医薬組成物およびSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の投与
本発明の医薬組成物は、本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の「治療上有効な量」または「予防的に有効な量」を含み得る。「治療上有効な量」は、目的の治療結果を達成するために、必要な投与量および期間にわたる、有効な量をいう。SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の治療上有効な量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重といった要素、および抗体または抗体部分がその個体において目的の反応を導く能力に応じて変化し得る。治療上有効な量はまた、抗体または抗体部分の毒性または有害な作用を治療上の有益な作用が上回る量である。「予防的に有効な量」は、目的の予防結果を達成するために、必要な投与量および期間にわたる、有効な量をいう。典型的には、予防的用量は疾患以前にまたは疾患のより早期の段階で用いられるため、予防的に有効な量は治療上有効な量より少なくなる。
【0095】
投与計画は、最適な望ましい反応(例えば治療的または予防的反応)を与えるように調整し得る。例えば、単回ボーラスを投与することができ、いくつかの分割用量を啓示的に投与することができ、または治療状況の要件によって指示される通りに用量を比例的に低減または増加することができる。非経口 組成物を単位用量剤形で処方することは、投与の容易さおよび投与量の均一性のために特に有益である。ここで用いられる単位用量剤形とは、治療すべき哺乳類対象のための単位用量として適している物理的に別個の単位をいい;各単位は目的の治療効果を生じるよう計算された規定量の活性化合物を、必要な医薬キャリヤーと共に含む。本発明の単位用量剤形についての規格は、(a)活性化合物の独自の特徴および達成すべき特定の治療的または予防的効果、および(b)そのような活性化合物を各対象の感受性の治療のために混合することの本分野に内在する制限に決定されおよびそれらに直接依存する。
【0096】
本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の治療上または予防的に有効な量の、典型的な、非限定的な範囲は、0.1〜20mg/kg、より好ましくは1〜10mg/kgである。用量の値は、緩和すべき症状の種類および重症度に伴って変化し得ることに注意する。さらに、いずれの特定の対象についても、具体的な投与計画は、個別の必要性、および組成物の投与を実施または監督する者の専門的判断に従って、経時的に調整すべきであること、および、本明細書に示す投与量範囲は単なる例でありおよび請求される組成物の範囲または実施を制限しないことが意図されることを理解すべきである。
【0097】
医薬組成物
好ましい別の一実施形態では、本発明のSCAは、目的の特定のSCAタンパク質の結合特異性に関係する症状を治療および/または診断するために用いられる。したがって、SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、本分野で公知である方法によって、投与されるSCAの結合特性が疾患または障害の治療に有用である疾患または障害を有する動物または人へ投与される。好ましくは、SCAは本発明にしたがってポリマー結合される。
【0098】
本発明のSCAおよび複合体化SCAは、例えば投与を必要とする動物または人のような対象への投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。典型的には、その医薬組成物は、少なくとも1種類の結合特異性を有するSCAポリペプチド、および医薬品として許容されるキャリヤーを含む。
【0099】
「医薬品として許容されるキャリヤー」は、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、例えば、抗細菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、などを含む。医薬品として許容されるキャリヤーの例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せのうちの1つ以上を含む。多くの場合で、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールといったポリアルコール、または塩化ナトリウムを、組成物に含むことが好ましい。医薬品として許容されるキャリヤーはさらに、抗体または抗体部分の保存期間または有効性を増大する、湿潤剤または乳化剤、保存料または緩衝液といった補助的物質の微量成分を含み得る。
【0100】
本発明の組成物は必要に応じてさまざまな形に調製される。これらは、例えば、液剤(例えば注射用および輸液用溶液)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、リポソームおよび坐剤といった、液体、半固体および固体剤形を含む。好ましい剤形は目的の投与様式および治療用途に依存する。典型的な好ましい組成物は、他の抗体を用いる人の受動免疫化に用いられるものと同様の組成物といった、注射用または輸液用液剤の形である。好ましい投与様式は非経口である(例えば、静脈、皮下、腹腔内、筋肉内)。
【0101】
好ましい一実施形態では、SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は静脈輸液または注射によって投与される。別の好ましい一実施形態では、抗体は筋肉内または皮下注射によって投与される。スプレー、エアロゾルまたはミストとしての吸入による投与もまた、例えば全身吸収および/または呼吸系内での局所作用のために、その経路が有利である場合に考慮される。
【0102】
治療用組成物は典型的には、製造および保存の条件下で、無菌および安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム、または高い医薬濃度に適した他の規則的構造として処方することができる。無菌注射液は、活性化合物(すなわち,抗体または抗体部分)を、上で挙げた成分の1または組合せを含む適当な溶媒に必要に応じて組み込み、次いで滅菌ろ過を実施することによって調製することができる。
【0103】
一般的に,分散液は、活性化合物を、基礎分散媒および上で挙げたものからの必要な他の成分を含む無菌賦形剤に組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末剤の場合には、調製の好ましい方法は、あらかじめ滅菌ろ過した溶液から活性成分および他の目的の成分の粉末を与える、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンといったコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。注射用組成物の遅い吸収は、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンといった、吸収を遅らせる物質を組成物に含めることによって実現できる。
【0104】
本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、本分野で公知であるさまざまな方法によって投与することができるが、多くの治療用途については、好ましい投与経路/様式は静脈注射または輸液である。当業者に理解される通り、投与経路/様式は目的とされる結果に応じて変化する。
【0105】
一部の実施形態では、本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、例えば、不活性な希釈剤または吸収できる食用のキャリヤーと共に、経口投与することができる。SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体(および必要に応じて他の成分)は、必要に応じて、硬質または軟質ゼラチンカプセルに封入されるか、錠剤に圧縮されるか、または対象の食事に直接組み込まれる。治療的な経口投与のためには、化合物は添加物と組み合わされおよび経口錠、舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁剤、シロップ、ウエファーなどの形で用いることができる。本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体を非経口投与以外によって投与するためには、その化合物を、不活性化を防ぐ物質でコーティングするかまたはそれと同時投与する必要があり得る。
【0106】
補助的な活性化合物もまた医薬組成物に組み込むことができる。一部の実施形態では、本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、疾患または障害に対して相加的、相乗的または補完的な治療活性または診断活性を提供する、1つ以上の追加の治療剤と共に処方されおよび/または同時に投与される。
【0107】
抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の投与
例えば、本発明の抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、他の標的を結合する1つ以上の別の抗体またはSCA(例えば、他のサイトカインを結合するもの、または細胞表面分子を結合するもの)、1つ以上のサイトカイン、可溶性hTNF−α受容体(例えば、国際公開第94/06476号パンフレット)および/またはhTNF−α産生または活性を阻害する1つ以上の化学物質(例えば国際公開第93119751号パンフレットに記載されたシクロヘキサン−イリデン誘導体)と共に処方および/または同時に投与することができる。さらに、本発明の1つ以上のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、前記の治療剤の2つ以上と組合せて用いることができる。そのような併用治療は、有利なことに、個別に投与された治療剤の、より低い用量を利用し得る。
【0108】
抗TNF−α SCAの適応および好ましい同時投与剤
単に一例として、参照により本開示に含まれる米国特許第6,258,562号明細書および第6,090,382号明細書は、TNF−αが疾患過程の一次または他の面の媒介因子または共媒介因子である疾患および障害の網羅的一覧を提供する。そのような疾患または障害を治療または緩和するための本分野で公知であるである薬剤が、本発明のSCAおよび/またはポリマー結合SCAの抗TNF−α実施形態と共に処方または同時投与されることが考えられている。要約すると、TNF−αによって媒介されるかまたはその作用と関連する、およびしたがって、必要に応じて本分野で公知である他の治療剤と併用して、TNF−α結合物質によって合理的に治療される疾患および障害の一覧は、米国特許第6,258,562号明細書によって例えば、敗血症、自己免疫疾患、感染症、移植/拒絶、悪性腫瘍、呼吸器障害および腸障害を含むと記載されている。
【0109】
これらの適応症および、適用可能な場合には、そのような適応症の治療において抗TNF−α SCAと必要に応じて同時処方される薬剤は、下記の通りである。
【0110】
敗血症。
【0111】
敗血症に随伴する治療可能な症状は、TNF−α媒介性敗血性ショック症候群、および随伴する低血圧、心筋抑制、血管漏出症候群、臓器壊死、毒性二次媒介因子の放出の刺激および凝固カスケードの活性化、内毒素性ショック、グラム陰性敗血症および毒素性ショック症候群を含む。
【0112】
自己免疫疾患
自己免疫疾患に随伴する治療可能な症状は、慢性関節リウマチにおける組織炎症および関節破壊、糖尿病における膵島細胞死およびインシュリン抵抗性、多発性硬化症における希突起膠細胞に対する細胞毒性および炎症性プラークの誘導を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと共に処方または同時投与することが考えられている薬剤は、ほんの数例を挙げると、例えば、副腎皮質ステロイド、非ステロイド抗炎症薬(NSAID);サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);CDP−57111BAY−10−3356(ヒト化抗TNF−α抗体;Celltech/Bayer);cA2(キメラ抗TNF−α抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG(75kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;Immunex;例えば、Arthritis&Rheumatism(1994)Vol.37.S295 ; J.Invest Med.(1996) Vol.44 235Aを参照);55kdTNFR−IgG(55kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffinann−LaRoche);IDEC−CE9.I/SB210396(非減少性霊長類化抗CD4抗体;IDEC/SmithKlineを含む、そのような自己免疫障害を治療するために利用可能な任意の本分野で公知の薬剤を含む。
【0113】
感染症
感染症に随伴する治療可能な症状は、TNF−α−媒介性脳炎症、マラリアにおける毛細管血栓症および梗塞、髄膜炎における静脈梗塞、感染症例えばHIVウイルス感染に二次的なカヘキシー、HIV感染におけるウイルス増殖の刺激および中枢神経系傷害、インフルエンザといった感染症が原因の発熱および筋肉痛)を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと同時処方または同時投与することが考えられている薬剤は、本分野で公知である任意の、例えば、抗生物質、抗細菌剤、抗ウイルス剤などといった抗感染剤、および非ステロイド抗炎症薬(「NSAID」)および/または感染物質および/またはその毒素または本質的成分と結合する抗体またはSCAを含む。
【0114】
移植
移植医療、移植片の拒絶、または必要な免疫抑制剤の副作用に随伴する治療可能な症状は、移植関連効果のほんの数例を挙げると、TNF−α媒介性同種移植片拒絶および移植片対宿主病(GVHD)、を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと同時処方または同時投与することが考えられている薬剤は、例えば、OKT3誘導性反応を阻害する、副腎皮質ステロイド、シクロスポリンA、FK506、および/またはOKT3、および、CD25(IL−2受容体−a)、CD11a(LFA−1)、CD54(ICAM−1)、CD4、CD45、CD28/CTLA4、CD80(B7−1)および/またはCD86(B7−2)への抗体またはSCA結合といった免疫細胞受容体への結合に向けられる結合物質を含む。
【0115】
悪性腫瘍
悪性腫瘍に随伴する治療可能な症状は、悪性腫瘍におけるTNF−α−媒介性悪液質(TNFα-mediated cachexia)、腫瘍増殖、転移可能性および細胞毒性を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと同時処方または同時投与することが考えられている薬剤は、本分野で公知である任意の抗腫瘍または抗癌剤を含む。
【0116】
肺障害
肺障害に随伴する治療可能な症状は、成人呼吸窮迫症候群、ショック肺、慢性肺炎、肺サルコイドーシス、肺線維症および珪肺症を含む。肺障害については、本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAは必要に応じて経口または鼻腔内スプレーによって投与され、または、任意の標準的な吸入系によるエアロゾルとしての投与のために処方される。そのような処方は、そのような肺疾患または障害を治療するのに適した他の薬剤、またはSCA処方の気管支への接近を促進する薬剤と同時に処方または投与することができる。
【0117】
腸障害
腸障害に随伴する治療可能な症状は、例えば、クローン病および/または潰瘍性大腸炎といった、炎症性腸障害の範囲を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと同時処方または同時投与することが考えられている薬剤は、ブデソニド;上皮増殖因子;副腎皮質ステロイド;シクロスポリン、スルファサラジン;アミノサリチル酸;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼ阻害因子;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;抗酸化剤;トロンボキサン阻害因子;IL−1受容体拮抗因子;抗IL−1βMAb;抗IL−6MAb;増殖因子;エラスターゼ阻害因子;ピリジニル−イミダゾール化合物;CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNF−α抗体;Celltech/Bayer);cA2(キメラ抗TNF−α抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG(75kDTNF受容体IgG融合タンパク質;Immunex;55kdTNFR−IgG(55kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);インターロイキン−10(SCH52000;Schering Plough);IL4;IL−10および/またはIL4作用因子(例えば、作用因子抗体);インターロイキン−11;プレドニゾロン、デキサメタゾンまたはブデソニドのグルクロニド−またはデキストラン−結合プロドラッグ;ICAM−1アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS2302;Isis Pharmaceuticals,Inc.);可溶性補体受容体1(TP10 ; T Cell Sciences,Inc.);徐放性メサラジン;メトトレキサート;血小板活性化因子(PAF)の拮抗因子;シプロフロキサシン;およびリグノカインを含む。
【0118】
診断法および測定法:抗TNF−α SCAまたはSCA−複合体
本発明の抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、従来のイムノアッセイを用いて、血清または血漿または他の臨床標本を含む生物試料中といった目的の試料中のhTNF−αを検出するのに用いることができる。これらは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)または組織免疫化学法を含む。
【0119】
本発明は、生物試料を本発明の抗体または抗体部分と接触させること、およびhTNF−αと結合した抗体(または抗体部分)または非結合SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体を検出し、それによって生物試料中の生物試料中のhTNF−αを検出することを含む、hTNF−αを検出するための方法を提供する。結合または非結合抗体の検出を円滑にするため、SCAは検出可能な物質を用いて直接的にまたは間接的に標識化されている。適当な検出可能な物質は、さまざまな酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質を含む。適当な酵素の例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む;適当な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含む;適当な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンを含む;発光物質の例はルミノールを含む;および適当な放射性物質の例は125I、131I、35Sまたは3Hを含む。
【0120】
随意的な一実施形態では、本発明のSCAは標識化されていないが、hTNF−αは、rhTNF−α標準物質が検出可能な物質で標識化されており、かつ未標識の抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体を用いる競合免疫測定法によって体液中で測定される。この測定法では、生物試料、標識化rhTNF−α標準物質、および抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体を混合し、さらに未標識のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体と結合した標識化rhTNF−α標準物質の量が測定される。生物試料中のhTNF−αの量は、抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体と結合した標識化rhTNF−α標準物質の量と反比例する。
【0121】
米国特許第6,258,562号明細書および第6,090,382号明細書は、D2E7 Mabはまたヒト以外の種に由来するTNF−α、特に霊長類(例えば、チンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザルおよびアカゲザル)、ブタおよびマウス由来のTNF−αを検出するのに用いることができることを示し、本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体はその目的にもまた容易に使用されると考えられる。
【実施例】
【0122】
下記の実施例は本発明のさらなる理解を提供する役割を果たすが、しかし本発明の有効な範囲をいかなる方法でも制限しないことが意図される。
【0123】
実施例1
少なくとも1つの遊離チオールを有するSCAタンパク質の設計
D2E7 Mabの可変ドメインに基づいて、9種類のSCAポリペプチドが設計された。本明細書で「D2E7 SCA」の語は、別に示されない限り、本明細書に例示するようにD2E7可変ドメインを用いて作製されたSCAの任意のものを称する。それぞれ下記の通り構築された。
【0124】
上記の通り、完全に合成の遺伝子が、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)によって、長さ20塩基から102塩基の範囲にわたる14種類の長い重複する合成オリゴヌクレオチドを用いて構築された。オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発をさらに用いて、元の配列の他の変異体を構築した。発現されたSCAタンパク質は、ペプチドリンカーによって連結された、D2E7Mabの完全な可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)部分を含む。2つのリンカーが用いられた。
【0125】
リンカー「218」は、Filpula et al.,1996 (Antibody Engineering: A Practical Approach,Oxford University Press,pp 253-268)に記載されている18アミノ酸残基218−リンカーである。
【0126】
「(GGGGS)3リンカー」(配列番号42)は、Huston JS et al,1988,Proc Natl Acad Sci (USA) 85 : 5879-5883に記載された15アミノ酸残基リンカーである。上の表1に記載される通り、一部の場合には、金属固定化金属イオン親和性 クロマトグラフィー (「IMAC」)による精製を容易にするために、C末端のヒスチジン6個のタグ(his6)(配列番号43)が含められた。
【0127】
完成した遺伝子は、Applied Biosystems (Foster City,California)からのABI PRISM(登録商標)310 Genetic Analyzer (以前はABI/Perkin−Elmerによって製造)でのDNA配列確認のために、E.coliプラスミドへクローニングされた。ドメイン方向、リンカー、および遊離システインの配置を上記の表1に要約する(クローン番号2−7−SC−1から9)。
【0128】
クローン番号2−7−SC−1から9のそれぞれを発現している核酸鎖は下記の通り調製された。
【0129】
D2E7 SCAのクローニングおよび発現の方法
D2E7 SCA遺伝子の合成VL−VH型は、2回のPCRによって、6種類の重複するオリゴヌクレオチドをVL鎖のテンプレートとして、および6種類の重複するオリゴヌクレオチドをVH鎖のテンプレートとして用いて構築した。D2E7SCA遺伝子のVL鎖およびVH鎖は、218リンカーで連結された。コードされたタンパク質のC末端には、IMAC精製目的のための6個の反復するヒスチジンが続いた。
【0130】
VLについての5’から3’末端への6種類のオリゴヌクレオチドは下記の通り設計された:
VL1:
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGGGAC(配列番号19)
VL2:GCATCTGTAGGGGACAGAGTCACCATCACTTGTCGGGCAAGTCAG
GGCATCAGAAATTACTTAGCCTGGTATCAGCAAAAACCAGGGAAAGCC
CCT(配列番号20)
VL3:
CCCTGATTGCAAAGTGGATGCAGCATAGATCAGGAGCTTAGGGGCTTT
CCCTGG
(配列番号45)
VL4:TCCACTTTGCAATCAGGGGTCCCATCTCGGTTCAGTGGCAGTGGAT
CTGGGACAGATTTC(配列番号21)
VL5:TCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTACAGCCTGAAG
ATGTTGCAACTTATTACTGTCAAAGGTATAACCGTGCACCGTATACTTT
TGGCCAG(配列番号22)
VL6:ACCACTCCCGGGTTTGCCGCTACCACTAGTAGAGCCTTTGATTTCC
ACCTTGGTCCCCTGGCCAAAAGTATA(配列番号23)。
【0131】
そのうち、VL1、2、4および5は順方向(センス)オリゴヌクレオチドであり、およびVL3および6は逆方向オリゴヌクレオチドであった。
【0132】
VHについての5’から3’末端への6種類のオリゴヌクレオチドは下記の通り設計された:
VH1:GGCAAACCCGGGAGTGGTGAAGGTAGCACTAAAGGTGAGGTGCA
GCTGGTGGAGTCTGGGGGA(配列番号24)。
【0133】
VH2:GTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCCGGCAGGTCCCTGAGA
CTCTCCTGTGCGGCCTCTGGATTCACCTTTGATGATTATGCCATGCACTG
GGTCCGG(配列番号25)
VH3:CCAAGTGATAGCTGAGACCCATTCCAGGCCCTTCCCTGGAGCTTGC
CGGACCCAGTGCAT(配列番号26)
VH4:TCAGCTATCACTTGGAATAGTGGTCACATAGACTATGCGGACTCTG
TGGAGGGCCGATTC(配列番号27)
VH5:GTGGAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCC
CTGTATCTGCAAATGAACAGTCTGAGAGCTGAGGATACGGCCGTATAT
TACTGTGCG(配列番号28)
VH6:AGACGAGACGGTGACCAGGGTACCTTGGCCCCAATAGTCAAGGGA
GGACGCGGTGCTAAGGTACGAGACTTTCGCACAGTAATATAC(配列番号29)
そのうち、VL1、2、4および5は順方向オリゴヌクレオチドであり、およびVL3および6は逆方向オリゴヌクレオチドであった。D2E7 SCAの合成VLおよびVHのために設計されたすべてのオリゴヌクレオチドは、MWG Biotech,Inc.によって合成された。
【0134】
D2E7 SCA 遺伝子のVLは1回目のPCRで、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、テンプレートとしてオリゴヌクレオチドVL1、2、3、4、5および6(各1pmol)、順方向プライマーとして5'TGGCGAGCTCTGACATCCAGATGACCCAGTCT(配列番号30)(50pmol)および逆方向プライマーとして5'ACCACTCCCGGGTTTGCCGCTACCACTAGTAGA(配列番号31)(50pmol)を用いて組み立てられた。
【0135】
PCRは、94℃30秒間、56℃30秒間、および72℃60秒間の30サイクル、続いて72℃10分間で実施した。
【0136】
D2E7SCA遺伝子のVHは1回目のPCRで、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、テンプレートとしてオリゴヌクレオチドVH1、2、3、4、5および6(各1pmol)、順方向プライマーとして5'GGCAAACCCGGGAGTGGTGA(配列番号32)(50pmol)および逆方向プライマーとして5'GCCACTCGAGCTATTAGTGATGGTGATGGTGGTGAGACGAGACGGTGACCAG(配列番号33)(50pmol)を用いて組み立てられた。PCRは、94℃30秒間、56℃30秒間、および72℃60秒間の30サイクル、続いて72℃10分間で実施した。
【0137】
表1の変異SCAタンパク質をコードする変異D2E7SCA遺伝子の遺伝子構造は、部位特異的突然変異誘発によって達成された。例えば、2−7−SC−5はD2E7SCA(2−7−SC−1)の突然変異体であり、218リンカー中の残基109でのセリンからシステインへのアミノ酸変化を有する。この遺伝子は2回のPCRによって、2−7−SC−1 DNAをテンプレートとしておよび4種類のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて作製された。
【0138】
クローン2−7−SC−8の構造のためのプライマーは下記の通り設計された:
順方向プライマー1:CTCGAATTCACCATGAGATTTCCTTC(配列番号37)
順方向プライマー2:
AAGGTGGAAATCAAAGGCTGTACTAGTGGTAGCGGCAAACCC(配列番号38)
逆方向プライマー1:GGGTTTGCCGCTACCACTAGTACAGCCTTTGATTTCCACCTT(配列番号39)
逆方向プライマー2:CGAGAATTCTCATTAATTGCGCAGGTAGCC(配列番号40)
2つの断片が別々に、1回目のPCRで、2通りのプライマー組合せ(順方向プライマー1および逆方向プライマー1、および順方向プライマー2および逆方向プライマー2、各50pmol)によって、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、およびテンプレートとして2−7−SC−8 DNA(10ng)を用いて増幅された。2−7−SC−8 についてのD2E7 SCA 遺伝子変異体は、2回目のPCRでのハイブリッド伸張によって、順方向プライマー1および逆方向プライマー2(各50pmol)、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、およびテンプレートとして1回目のPCRからの2つの断片(各10ng)を用いて完成した。
【0139】
残基109にシステインを有する、2−7−SC−8SCA遺伝子の完成したPCR産物は、下記の通り、ベクターpHilD2にクローニングされおよびPichiaGS115株を形質転換するのに用いられた。
【0140】
表1の残りの遺伝子は、同様の部位特異的突然変異誘発工程によって作製された。2−7−SC−2遺伝子(配列番号2)については、PCR逆方向オリゴヌクレオチドプライマーは、6個のC末端ヒスチジンコドンの後にシステインコドンTGCをコードした。2−7−SC−3遺伝子(配列番号3)については、PCR逆方向オリゴヌクレオチドプライマーは、6個のC末端ヒスチジンコドンの後にシステインコドンTGCをコードした。2−7−SC−4遺伝子(配列番号4)については、PCR逆方向オリゴヌクレオチドプライマーは、システインコドンTGCをC末端VHセリンコドンの直後にコードした。2−7−SC−6遺伝子(配列番号6)については、中央のオリゴヌクレオチドプライマーがシステインコドンTGCを218リンカーの2位にコードし、およびC末端逆方向プライマーがシステインコドンTGCを、6個のC末端ヒスチジンコドンの後にコードした。2−7−SC−7遺伝子(配列番号7)については、中央のオリゴヌクレオチドプライマーがシステインコドンTGCを、(GGGGS)3リンカー(配列番号42)の残基5位に対応する、ヌクレオチド376〜378にコードした(図1G)。
【0141】
2−7−SC−8遺伝子(配列番号8)については、PCR順方向オリゴヌクレオチドプライマーがシステインコドンTGCをN末端VLアミノ酸Aspの前にコードし、およびPCR逆方向オリゴヌクレオチドプライマーがシステインコドンTGCを、6個のC末端ヒスチジンコドンの後にコードした。2−7−SC−9遺伝子(配列番号9)については、GGGGS(配列番号44)をコードする5コドンリンカーが18コドン218リンカーを代替した。
【0142】
完全なD2E7SCA遺伝子の組み立ておよびD2E7SCAのPichiaにおける発現のために、シグナル配列をD2E7SCA遺伝子の5’末端に、2回目のPCRにおいて、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、テンプレートとしてD2E7SCA 遺伝子のVLおよびVHの1回目のPCR産物(各1ng)、順方向プライマーとして5'CCTCGGAATTCACCATGAGATTTCCTTCAATTTTTACTGCTGTTTTATTCGCAGCATCCTCCGCATTAGCTGCTGACATCCAGATGACCCAG(配列番号34)(50pmol)および逆方向プライマーとして5'CGCGGAATTCTATTAGTGATGGAGATGGAGGAGAGACGAGACGGTGACCAG(配列番号35)(50pmol)を用いて加えた。
【0143】
PCRは、94℃30秒間、56℃30秒間、および72℃60秒間の30サイクル、続いて72℃10分間で実施した。
【0144】
5'末端シグナル配列を有する、2回目のPCRで組み立てられたD2E7SCAの遺伝子産物は、1%アガロースゲルで精製され、EcoR1で37にて60分間消化され、およびベクターpHilD2(Invitrogen)のEcoR1部位に、T4DNAリガーゼを用いて12℃にて60分間ライゲーションした。100μlのDH5αコンピテント細胞(Invitrogen)をライゲーション反応産物で形質転換し、および氷上で30分間、および42℃にて45秒間インキュベートし、次いで1mlのS.O.C培地を添加し、および37℃にて50分間、250rpmで振とうしながらインキュベートした。0.1mlの形質転換混合物をLBアンピシリン(10mg/L)平板に播種しおよび37℃にて16時間インキュベートした。
【0145】
LBアンピシリン(10mg/L)平板上のpHilD2−D2E7SCAプラスミドで形質転換されたDH5aクローンのいくつかを、2mlのLB培地中で37℃にて16時間培養した。各クローンからのD2E7SCAのプラスミドミニプレパレーションを調製した。pHilD2−D2E7SCAプラスミドのDNA配列は、BigDyeターミネーターサイクルDNA配列決定キット(Applied Biosystem)を用いてABI Prism310 Genetic Analyzerによって確認された。
【0146】
表1に列挙された変異SCAクローンのそれぞれは、下記の手順によって作製された。Pichia形質転換のために、pHilD2−D2E7SCAプラスミドをSal1を用いて37℃にて60分間消化し、および、フェノール抽出およびエタノール沈澱後に、10μlの蒸留水に再懸濁した。PichiaGS115細胞を、50mlのYPD培地中で30℃にて16時間、250rpmで振とうしながら培養し(OD600=1.2)、氷冷蒸留水で3回および1Mソルビトールで1回洗浄し、および最後に0.1mlの1Mソルビトールに再懸濁した。
【0147】
調製されたPichiaGS115細胞を、Sal1消化した10μgのpHilD2−D2E7SCAプラスミドと、氷冷した0.1cmエレクトロポレーションキュベット中で混合し、および、800V、10pFおよび129 の条件下で、エレクトロセルマニピュレーター(BTX)によってパルスを加えた。パルス後に、1mlの氷冷1Mソルビトールをエレクトロポレーションキュベットに加えた。内容物全部を15ml試験管へ移し、および30℃にて1時間インキュベートした。形質転換混合物の0.2mlをRDB培地平板に播種し、および30℃にて4日間インキュベートした。
【0148】
RDB平板由来の、pHilD2−D2E7SCAプラスミドで形質転換されたPichiaクローンのいくつかを、500mlフラスコ中の25mlのBMGY培地に接種し、および30℃にて250rpmで振とうしながら2日間インキュベートした。細胞を3,000rpmでの遠心分離によって室温にて採取し、50mlフラスコ中の5mlのBMMY培地に再懸濁して発現を誘導し、および30℃にて振とうしながらさらに2日間インキュベートした。各培養から1mlの試料を超遠心管に移し、および14,000rpmで2分間室温にて遠心分離した。各培養の上清からの40μlの試料を、クマシーブルー染色SDS−PAGEおよびウェスタンブロットによって分析した。
【0149】
実施例2
SCAタンパク質の組換え発現および精製。
【0150】
実施例1に記載のSCAタンパク質(クローン番号2−7−SC−1から9)は、すべて酵母Pichia pastorisからの発現および分泌によって作製された。酵母α接合因子に由来する分泌シグナル配列が、これらのSCAタンパク質それぞれについての成熟コード配列の直接前に挿入された。
【0151】
このシグナルペプチドのアミノ酸配列はMet Arg Phe Pro Ser Ile Phe Thr Ala Val Leu Phe Ala Ala Ser Ser Ala Leu Ala ^ Ala (配列番号36)であり、「^」は切断部位を示す。我々はまた、そのシグナルのこの20番目のアミノ酸(^の次のアラニン)も我々の構造に含めた。したがって、各成熟SCAタンパク質のそれぞれのアミノ末端はこのアラニンを含み、その後に図1A〜1Fに記録される完全なアミノ酸配列が続く。N末端タンパク質配列分析は、これらの正しくプロセシングされた配列を確認した。これらの変異SCA遺伝子は、Pichia転移プラスミドpHIL−D2(Invitrogen Corp.)中へEcoRI部位で個別にライゲーションされ、および酵母Pichia pastoris宿主GS−115へ形質転換した。これらの手続のための詳細な手順書は、参照により本開示に含まれるInvitrogen CorporationからのPichia発現キット取扱説明書カタログ番号X1710−01(1994)に示される。発現の最初の評価は、SDS−PAGEゲルのクマシーブルー染色によって実施した。
【0152】
D2E7SCAクローンのPichia発酵
クローン2−7−SC−2、2−7−SC−3、2−7−SC−4、2−7−SC−5および2−7−SC−7を含む、抗TNF−α SCAD2E7のすべての発現クローンは、メタノール資化性酵母であるPichia pastoris内で生成され、およびタンパク質は培地中へ分泌された。D2E7SCA変異株の高密度発酵はYNBおよびビオチンを添加した基礎培地であるBMGY培地中で(「培地組成物」を参照)、自動供給制御発酵槽(型番:BioFlow3000およびBioFlow IV; NewBrunswick Scientific,Co,Edison,NJ,USA)を用いて実施した。
【0153】
BMGY中で16〜20時間、(c)グリセロール(50%)中で増殖期4時間、および(d)メタノールを用いて45時間D2E7変異株の誘導。各成分の供給は、30%に設定された溶存酸素レベルに関して最適化された。培養温度は29℃に設定され、およびpHは運転中には水酸化アンモニウムおよびリン酸を用いて6.0に維持された。さまざまなパラメーターを68時間の発酵期間にわたって監視し、ここで、生育する培養のOD600値は(b)期の終わりに0.5から125へ、グリセロール供給期(c期)の終わりに125から200へ、および最終的に,誘導期(d期)の終わりに200から300へ到達した。
【0154】
平均して、発酵上清中のD2E7変異株の発現は50 から100 mg/Lの間であった。カルボキシル末端に遊離 システインが組み込まれヒスチジン尾部が続くVL−VH変異株である2−7−SC−2は、発酵中に優れた再現性で良好な成績を上げた最も頑健なクローンであることが見出された。
【0155】
供給品の説明
BMGY(L当たり)
酵母抽出物:
ペプトン:
グリセロール:
リン酸緩衝液:(1M、pH6.0)
YNB:
ビオチン:
FMT30(Breox):
誘導物質
メタノール
酸素
圧縮酸素。
【0156】
実施例1のSCAタンパク質は上清から純度95%超へ、単純な2または3のカラムクロマトグラフィー手順によって精製された。
【0157】
ヒスチジンタグを用いたクローン2−7−SC−2、2−7−SC−3、2−7−SC−5、2−7−SC−7 D2E7SCAからのタンパク質の精製
D2E7変異体の、2−7−SC−2、SCA2−7−SC−3、SCA2−7−SC−4、SCA2−7−SC− 5、および 2−7−SC−7は発酵上清から、イオン交換およびアフィニティカラムクロマトグラフィーの組合せを用いて精製した。使用した培地を20mMトリスpH7.4および50mMNaClを含む緩衝液Cで交換する一方、上清を高度にダイアフィルトレーションして試料を濃縮した。緩衝液を交換した試料を次いでDEAEカラムクロマトグラフィー(品番17−0709−01;Amersham BioSciences,Piscataway,NJ)に供した。D2E7 SCAは指定の条件下ではDEAEカラムに結合しなかった。DEAEカラムからの素通り画分を、50mMトリスpH8.0および0.3MNaClを含む緩衝液Aに対して透析し、および同一の緩衝液で予め平衡化したNi−NTA樹脂(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)に加えた。非特異的結合は、10%グリセロールを緩衝液Aに含む緩衝液Bを用いた厳密な洗浄を用いて破壊され、その後に緩衝液Aによるグリセロールの除去を行った。さらに低親和性の相互作用は、カラムの3倍容量の60〜100mMイミダゾール(2−7−SC−2についてのみ100mM)を通すことによって洗い流した。最後に、結合したSCAをNi−NTAカラムから、カラムの3〜5倍容量の250mMイミダゾールを用いて溶出した。洗浄および溶出の両方について、イミダゾールは緩衝液Aで調製した。
【0158】
ピーク画分をプールし、およびDEAE緩衝液である緩衝液Cに対してよく透析した。透析した試料は高速遠心分離によって清澄化し、および精製の最終段階としてDEAEカラムを通した。次いで、将来の使用のために−20℃にて保存する前に、精製された試料のタンパク質濃度をUV280によって、およびBCA法によって測定した。
【0159】
ヒスチジンタグの無いタンパク質2−7−SC−4D2E7SCAの精製
プロテインLは多数の異なる種のVLドメインと強く結合する。その結合は極めて種特異的であり、およびまたサブタイプ特異的である。2−7−SC−4のVLドメインをプロテインLによって認識でき、および相互作用のこの特異性を利用して、我々は2−7−SC−4を1段階で、ダイアフィルトレーションした試料から直接精製した。プロテインLカラム(品番CLBL 201−5,CBD Technologies Ltd,Buffalo,NY)からの2−7−SC−4の低pH溶出は、SCAの構造的または機能的完全性に影響しなかった。要約すると、発酵上清をダイアフィルトレーションし、およびカラムへ試料を負荷するためにPBSで交換した。非特異的に結合したタンパク質は、負荷後に多量のPBSを用いて洗い流した。
【0160】
SCAタンパク質はカラムからpH2.0のグリシン緩衝液(10mM)を用いて溶出し、および溶液を中和するために直ちに3Mトリスへ回収した。画分はSDS−PAGE上で分析し、ポジティブ画分をプールし、およびPBSに対して透析した。SCAタンパク質は透析後に高速遠心分離によって清澄化し、タンパク質濃度を測定し、および将来の使用のために−20℃にて保存した。
【0161】
代替の、HS(POROS50HS、コード:1−3359−07;Applied BioSciences,Foster City,CA)またはQ−セファロースFF(品番17−0510−01,Amersham BioSciences,Piscataway,NJ)のようなより好ましくない方法もまた、SCA精製に効果的に用いられた。
【0162】
下記の表は、さまざまなカラムによる2−7−SC−2 D2E7変異体の精製、各精製工程後の収率パーセンテージ、および各変異体についての精製の品質を示す。
【表3】
【0163】
図2Aおよび2Bは、2−7−SC−2 SCAタンパク質の各精製工程からの試料の代表的なSDSPAGE分析を示す。ゲルはクマシーブルーを用いて染色した。最終試料の純度はゲルデンシトメトリースキャンから95%と推定された。少量の54kDaジスルフィド結合二量体を染色ゲル上に見ることができる。
【0164】
実施例3
ポリエチレングリコールのマレイミド誘導体の安定性および反応性
アミノ酸残基とのマレイミド反応性
マレイミドポリマーの、リジンまたはヒスチジンとでなく、遊離システインとの特異的反応性の確認は、これらの各遊離アミノ酸とのこれらの化合物の反応によって達成された。図4A〜4Cに示す通り、使用した標準的な反応条件下で、システインは、PEG−マレイミドと高度に反応性であるが、ヒスチジンまたはリジン(記載せず)はそうではない。
【0165】
活性マレイミド基の分析および安定性
官能基分析は下記の通り2段階で実施した:
MAL−PEGのシステインとの反応、および
反応後の残りの未反応システインの、ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)(「DTNB」)を用いた滴定による測定
活性MAL−PEGの測定は、反応モル比1:3(MAL−PEG:システイン)を含む50mMリン酸ナトリウム、pH6および1mM EDTAで実施した。
【0166】
反応は下記の通り実施した:
システインのH2O溶液の1/40容量を1mM PEG溶液へ加え、終濃度3mMとした。混合物を25℃にて暗所で10分間インキュベートし、その後DTNB滴定を実施した。DTNB滴定で、システインおよびCys−MAL−PEG混合物を含む反応混合物の1/50容量を、0.2〜0.3mM DTNBを含む100mMリン酸ナトリウム、pH7.3および1mM EDTAへ加えた。残留システインの終濃度は0.04〜0.06mMの間であった。
【0167】
412nmでの吸光度を、25℃にて5分間の平衡後に、13,300M−1cm−1をDTNBの吸光係数として用いて記録した。MAL−PEGのベータ−メルカプトエチルアミンとの反応もまた調べた。ベータ−メルカプトエチルアミンは空気に敏感でありおよび吸湿性であるため、この反応は定量的でない。MAL−PEGの安定性は240から400nmの間のUVスキャンによって監視した。MAL−PEGは300nmに最大吸収を有した。そのピークは、システインとの反応後または0.1 N NaOHの存在下で37℃にて2時間加水分解後に消失した。
【0168】
MAL−PEGの安定性
MAL−PEGの安定性は、pH、温度、およびインキュベート時間に依存する。300nmでの吸光度の低下が10%未満であれば安定とみなした。
【0169】
1mM MAL−PEGは4℃にて少なくとも24時間、試験したすべての緩衝液(pH5、pH6、およびpH7リン酸緩衝液)中で安定である。25℃およびpH5.0で、MAL−PEGは33時間安定である。したがって、好ましいPEG化条件は、pH5またはpH6、25℃2時間;または4℃24時間;またはpH5、25℃24時間である。
【0170】
システインとのMal−PEG反応の特異性
システインとの反応は、反応pH(5、6、または7)および温度(4℃または25℃)にかかわらず、2分未満で完了した。
【0171】
リジンとの反応(Lys:MAL−PEG=15:1)は、pH5およびpH6緩衝液中の4℃または25℃にての24時間インキュベート中に観察されなかった。しかし、pH7、25℃で、10%を超えるMAL−PEGが24時間のインキュベート中にリジンと反応した。ヒスチジンとの反応は、モル比15:1(ヒスチジン:MAL−PEG)pH5、6、および7での4℃または25℃にての24時間インキュベート中にみられなかった。
【0172】
実施例4
SCAタンパク質のPEG化
4A.材料および方法
HiPrep(登録商標)26/10およびG−25 PD−10脱塩カラム(Pharmacia Biotech,17−1408−01,New Jersey)およびPoros50ミクロンHSメディア(Applied Biosystems)を用いた。mPEG−マレイミド化合物はNektar Therapeutics (San Carlos,California; formerly Shearwater Corp.)から購入したかまたはEnzon Pharmaceuticals,Inc.にて合成した。
【0173】
この試験で使用したPEG−MALポリマーは、40kDa分枝鎖PEG2、20kDa直鎖PEG、5kDa直鎖PEG、20kDaビス−MAL二官能性PEG、および40kDa分枝鎖U−PEGを含んだ。N−エチルマレイミドおよび6−(ビオチンアミドカプロイルアミド)カプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルはSigmaから購入した。rProtein A Sepharose Fast FlowはAmersham Biosciences Corp.(Piscataway,New Jersey)から入手した。Ultralink Iodoacetyl(登録商標)はPierce Biotechnology,Inc(Rockford,Illinois)から入手した。 DMSO,(Minneapolis,Minnissota)。ストレプトアビジン−フィコエリトリンはBD Sciences (San Jose,California)から入手した。96ウェルマイクロタイタープレートはMidwest Scientific (St.Louis,Missouri)から購入した。
【0174】
ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼはSigmaから、および TMBペルオキシダーゼ基質はMoss,Inc.(Pasadena,Maryland)からであった。TNF−αはChemicon (Temecula,California)から購入した。Titrisol(登録商標)ヨウ素溶液はEM Science (Gibbstown,New Jersey)から入手した。
【0175】
4B.D2E7 SCAの還元
実施例3によって単離されたSCAのC末端遊離システイン残基またはリンカーを、MAL−PEGとの反応の前に還元した。還元溶液は、3mg/ml D2E7SCA、2mMジチオスレイトール(DTT)、2mM EDTA、および100mMリン酸ナトリウム、pH7.8を含んだ。還元は37℃にて2時間実施した。遊離DTTは15mlの試料についてはHiPrep(登録商標)脱塩カラムで、または4mlの試料についてはPD−10で除去した。カラムは100mMリン酸ナトリウムpH6.0、2mM EDTAで平衡化した。還元および脱塩後のD2E7SCAの回収率は85%であった。ベータ−メルカプトエチルアミンおよびベータ−メルカプトエタノールを含む他の還元剤もまた、改変した手順での使用に成功した。スルフヒドリル基定量を、参照により本開示に含まれるGrassetti DR et al,1967,Archives BiochemBiophys 119: 41−49,および Riddles PW et al,1979,Anal Biochem 94: 75−81による記載通りに実施した。SCA1当たり1のチオールのほぼ定量的な還元が達成された。
【0176】
4C.SCAのPEG化および精製
方法
実施例3によって単離されたSCAタンパク質を、PEGマレイミド化合物とのシステイン特異的反応によってPEG化した。2−7−SC−2および2−7−SC−5を、PEG−SCA特徴づけの広範囲な試験のために選択した。これらのSCAタンパク質に関して、5kDa、20kDa、40kDa(分枝鎖)およびビス−マレイミド化合物とのマレイミド−PEG複合体を調べた。N−エチルマレイミドとのSCAタンパク質の反応は、遊離チオールをブロックするが加わる分子量が最小である対照結合反応を提供した。他のD2E7SCAタンパク質を、BIAcore分析の項に列挙する通りの選択されたPEG−マレイミドポリマーを用いて修飾した。
【0177】
反応緩衝液は、1mg/ml還元SCA、100mMリン酸ナトリウムpH6.0、2mM EDTA、およびPEGマレイミド化合物を、10:1の反応モル比(PEG:D2E7)で含んだ。反応は25℃にて窒素中で2時間実施した。
【0178】
SDS−PAGEで分析した複合体化の典型的な収率は80%であった。未反応SCA、高分子量不純物、遊離PEG、副反応産物、およびエンドトキシンからのPEG−SCAの精製にHSカラムを用いた。より好ましくない方法では、SおよびSPカラムもまた使用に成功した。カラム平衡化緩衝液は10mMリン酸ナトリウム、pH5.0を含み、および溶出緩衝液は1M NaClを含む10mMリン酸ナトリウム、pH5.0から成った。遊離PEGは素通り画分に含まれた。PEG−D2E7SCA複合体は、結合したPEGをより多数有する複合体が先に溶出し、単一のポリマーが結合した複合体が続き、および最後に未反応D2E7SCAが、連続的に溶出した。異なるサイズのPEG−D2E7複合体は、したがって、異なる濃度のNaClで溶出した。
【0179】
4D.D2E7SCAの還元−結果要約
Pichia pastoris中で作製されおよび 記載の通り精製されたD2E7 SCAは、MAL−PEG.との反応の前に還元しなければならない。
【0180】
濃度0.5mMから50mMのDTTを試験した。二量体を単量体に還元するためには0.5mMが十分であることが示された。10mMより高濃度のDTTはいくらかの沈澱を生じた。使用したDTTの濃度が高いほど、沈澱したD2E7 SCAの量は多かった。沈澱は変性D2E7 SCAと思われた。2mM DTTが標準的なPEG化手順に選択された。
【0181】
2mMから10mMのベータ−メルカプトエチルアミン、グルタチオン、およびシステインもまた調べた。二量体を単量体へ還元するためには10mMより高い濃度が必要であったことが示された。
【0182】
0.5mMのDTTは、2−7−SC−2二量体から単量体への還元において、10mMの他の還元剤と同程度に効率的であった。
【0183】
還元後の複合体の収率は、開始時の還元SCAタンパク質の約80%であった。
【0184】
4E.PEG化−結果要約
1:1から10:1(MAL−PEG:D2E7SCA)にわたる反応比をPEG化収率についてpH6.0で調べた。複合体の公衆率を与えるためには、1:4の比が必要な最小限であった。
【0185】
10分から24時間の反応時間を25℃にて、および18時間4℃にて試験した。反応は25℃では10分間(試験した最短時間)で完了したことが示された。
【0186】
タンパク質の高濃度(例えば、1mg/mlより大)は、収率が低下するため、D2E7SCAの遊離システイン残基のMAL−PEGとの反応には望ましくない。このことは、非特異的複数PEG化のための最適手法とは対照的である。タンパク質濃度0.5、1.5、2.0、2.5、および3mg/mlを試験した。0.2〜1mg/mlのD2E7 SCAタンパク質が、複合体を構築するために好ましい濃度として用いられた。
【0187】
反応pH5〜8を調べた。PEG化には、pH6.0を用いた。
【0188】
複合体化していないD2E7SCAは、再複合体化に再利用することができた。第2の複合体化反応からの収率は、最初のD2E7 SCA PEG化について得られた収率と同様であった。
【0189】
複合体化の最高収率は85%であった。全体として、結果は、設計された1遊離チオール変異SCAタンパク質を用いた頑健な複合体化法によって、モノPEG化SCAタンパク質が良好な収率で生じ得ることを実証した。
【0190】
4F.精製結果要約
ポリエーテルスルホン膜を用いた限外濾過は、2−7−SC−2SCAタンパク質の大部分が膜に吸着されて失われたため、このタンパク質およびその複合体の濃縮および緩衝液交換に用いることはできない。
【0191】
Centriplus、Centricon、およびAmiconといったMillipore再生セルロース膜では本タンパク質の回収率100%であった。0.2μm低タンパク質結合無菌フィルターではタンパク質の10%損失があった。2段階の精製、2段階の濃縮、および1段階のろ過後の総収率は30〜40%であった。
【0192】
精製されたPEG−SCAタンパク質はSDSPAGE分析に供し、およびクマシーブルー染色で可視化した(データ記載せず)。分析は、痕跡量(1%以下)の未反応SCAタンパク質が精製40kDa MAL−PEGおよび20kDa MAL−PEG反応物中に残存したことを示した。SDSPAGEゲルのヨウ素染色は、ポリエチレングリコール含有化合物を示すが、また精製40kDaMAL−PEGおよび20kDa MAL−PEG反応物中に検出可能であった痕跡量(<1%)の遊離PEGを明らかにした。
【0193】
40 kDa MAL−PEG 反応物はまた時々、痕跡量(~1%) の非常に高い分子量の PEG不純物を示した。 非常に高い分子量範囲のポリマーはまた、開始材料の未反応40 kDa MAL−PEG ポリマー中にも検出可能であった。N−エチルマレイミド還元は、1個の遊離システインを有するSCA タンパク質における二量体形成を完全に遮断する。
【0194】
4G.イオン交換クロマトグラフィーによるエンドトキシンの除去
タンパク質試料中に存在するエンドトキシンを、DEAEまたはHSカラムによって除去した。pH7〜8で、エンドトキシンはDEAEカラムに結合した一方、D2E7SCAは素通り画分中に存在し、これに対してpH5.0では、エンドトキシンは素通り画分中に存在しおよびD2E7SCAはHSカラムに結合した。HSカラムはエンドトキシンをD2E7SCAタンパク質から除去するのに用いられた。カラム平衡化緩衝液は10mMリン酸ナトリウム、pH5.0を含み、および溶出緩衝液は1MNaClおよび10mMリン酸ナトリウム、pH5.0を含んだ。精製試料中の典型的なエンドトキシン値は1EU/ml未満であった。
【0195】
実施例5
SCAおよびPEG−SCAの分析的特徴づけ。
【0196】
5A.タンパク質濃度の測定
タンパク質濃度はUVによって280nmにて測定した。実施例3で得られたSCAの吸光係数は1.24ml/mg・cmであった。濃度はまた、Pierce Biotechnology,Inc(Rockford,Illinois)からのMicroBCAタンパク質検定試薬キットとして入手したビシンコニン酸検定法(「BCA」)によって、リゾチームまたはFabを標準物質として使用して確認した。BCA検定法は、取扱説明書に従って、および本質的に、参照により本開示に含まれるSmith,P.K.,et al.1985,Anal.Biochem.150,76−85の方法に従って実施した。
【0197】
タンパク質濃度測定結果
280nmでのUV(データ記載せず)および、上記で考察した通り、ヒトFabを標準物質として用いたBCAは、タンパク質濃度測定において同様の結果を与えた。
【0198】
BCA分析のために、EDTAは還元後のDTTと共に除去すべきであり、それはこれらの試薬は本検定法に干渉するからである。
【0199】
動物実験についてのすべての試料は、タンパク質含量に関してUVによって分析しおよびリゾチームを標準物質として用いてBCAによって確認した。
【0200】
5B.抗D2E7SCAポリクローナル抗体およびビオチン化抗D2E7SCA抗体
抗D2E7SCA抗体の精製
抗2−7−SC−1SCA抗体をウサギで作製し、および、プロテインAクロマトグラフィーおよびD2E7SCA−結合アフィニティカラムクロマトグラフィーによって精製した。プロテインAカラム精製のために、抗体を2倍容量のトリス緩衝液で希釈して終濃度を0.1Mトリス−HCl、pH8.0、0.02%NaN3とした。希釈した試料を、0.1Mトリス−HCl、pH8.0、0.02%NaN3で平衡化した2mlプロテインA Sepharoseカラムに、プロテインA樹脂に対して等量の抗血清として負荷した。
【0201】
抗2−7−SC−2 SCAは50mMグリシン、pH3.0を用いて、1/10容量の1Mトリス−HCl、pH8.0へ溶出した。抗体濃度は280nmにて、吸光係数0.8ml/mg・cmを用いて測定した。D2E7 SCA−結合アフィニティカラムを、2−7−SC−2SCAタンパク質の遊離システイン残基とのUltralink Iodoacetylのカップリング反応によって作製した。具体的には、2倍容量の50mMリン酸、5mM EDTA、pH7.8を用いて洗浄した7mlまでのUltralink Iodoacetyl樹脂を、6.5mlまでの1.45mg/ml 2−7−SC−2 SCAと25℃にて15分間混合した。カップリング反応を、280nmでの上清の吸光度を測定することによって監視した。上清中のタンパク質濃度は80%減少した。樹脂を3倍容量の50mMリン酸、pH7.8、5mM EDTAで洗浄し、および次いで50mMシステインで40分間処理した。試料を次いでカラムへ移し、および1M NaCl、50mMグリシン、pH3.0で洗浄し、および次にPBSで洗浄した。プロテインAカラムから精製した抗2−7−SC−2SCA抗体を、標準PBSで平衡化したD2E7SCA−結合カラムに通した。カラムをPBSでベースラインへ戻し、および抗体を、50mMグリシン、pH3.0を用いて1/10容量の1Mトリス−HCl、pH8.0へ溶出した。
【0202】
ビオチン化抗D2E7SCA抗体
試料中のグリシンおよびトリス成分を、50mMリン酸、pH7.6、100mM NaClで平衡化したPD−10脱塩カラムによって除去した。抗体溶液へ、1/10容量の活性化ビオチン含有DMSOを、反応モル比40:1(ビオチン:抗体)で加えた。25℃にて1時間後、ビオチン化抗体を、PBS(10mMリン酸ナトリウム、138mM NaCl、2.7mMKC1、pH7.4)で平衡化したPD−10脱塩カラムで精製した。
【0203】
5C.ウェスタンブロット
抗D2E7SCAウサギ抗血清を一次抗体として使用し、およびヤギ抗ウサギHRPを二次抗体として使用した。結合はTMBMペルオキシダーゼ基質を用いて測定した。ウサギ抗血清はまた、合成18残基218−リンカーペプチドに対してから以前も作製された。このリンカーを含むSCAタンパク質との反応性もまた確立された。
【0204】
ウェスタンブロット結果
精製された調製物からのゲル上に示されたすべてのバンドはウェスタンブロット陽性であった。図7は、抗2−7−SC−1抗血清を用いて検出した、D2E7SCAおよびPEG−SCA化合物のウェスタン分析の一例を示す。一次検出抗体は、精製組換えSCAタンパク質を用いて免疫されたウサギから作製された抗2−7−SC−1SCAウサギ抗血清であった。レーン1および7、分子量マーカー(250、148、98、64、50、36、22、16、6および4kDa);レーン2、2−7−SC−2SCAタンパク質;レーン3、エチル−2−7−SC−2;レーン4、PEG(5kDa)−2−7−SC−2;レーン5、PEG(20kDa)−2−7−SC−2;レーン6、PEG(40kDa)−2−7−SC−2。
【0205】
血漿中の低濃度のために、単量体および二量体として存在する2−7−SC−2SCAタンパク質がどのような比率かは動物実験で明らかにならなかった。しかし、N−エチルマレイミドで修飾された2−7−SC−2タンパク質のわずかにより速いクリアランスは、開始SCAタンパク質の一部が二量体であったことおよびより大きな質量または親和力のためにより遅いクリアランスを示したことを示唆する可能性があった。
【0206】
5D.純度分析
N−エチル−マレイミドで修飾された2−7−SC−2SCAは非還元SDS−PAGEで二量体を示さなかったため、二量体型は遊離システイン残基の架橋によって生じた。精製されたPEG−SCA複合体は、典型的には、ヨード染色によって検出された通り本質的に遊離PEGを含まず、SDS−PAGEで検出された通り1%未満の未修飾SCAおよび1%未満の高分子量分子を含んだ。
【0207】
5E.ヨード染色
SDSPAGEゲルをdH2Oで洗浄し、および5%塩化バリウム溶液に入れた。10分間緩やかに混合後、ゲルをH2Oで洗浄し、および次いで発色のために0.1M Titrisol(登録商標)ヨード溶液に入れた。
【0208】
5F.質量測定
SCAおよびPEG−SCA複合体の正確な質量値はマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(「MALDI−TOF」;Bruker Daltronics OmniFlex NT)によって、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)マトリクス上の同様の分子量を有する内部標準物質を用いて測定した。SCAタンパク質の見かけの分子量(Stoke半径)は、50mMリン酸ナトリウム、pH6.5および150mM NaClで平衡化したSuperdex 200 HR 10/30ゲルろ過カラムクロマトグラフィー[Amersham Biosciences、取扱説明書による]を用いて推定した
さらに、4〜20%SDS−PAGEゲル上での分子量の分析を、適当なタンパク質およびPEG−タンパク質標準物質を用いて実施した。サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された、PEG−40k−SCAの見かけの分子量は、670kDa、すなわち分子量の約10倍であった。
【0209】
2−7−SC−2の分子量測定結果:
分子量測定結果を表4に示す。
【表4】
【0210】
4〜20%SDSゲル上でのタンパク質サイズに対するPEGサイズの相関はY=0.00156Xであった。
【0211】
他のD2E7SCA変異体およびPEG−SCA化合物は、その分子量およびポリマーサイズと合致する同等の質量値を示した。
【0212】
5G.N末端配列決定およびペプチドマッピング:
2−7−SC−2および2−7−SC−5のN末端配列決定は、分泌されたSCAタンパク質のN末端アミノ酸がアラニンでありその後にVLの第1の残基が続くような、シグナル配列の予測されたプロセシングを確認した。
【0213】
2−7−SC−5−40kDaPEG上のペプチドマッピング
タンパク質(計0.2mg)を変性し、および、1mMEDTAおよび5mMDTTを含む6MグアニジンHCl中で還元した。溶液を37℃にて1時間インキュベートした。アルキル化試薬ヨードアセトアミドを終濃度15mMとなるように加え、および反応を室温にて1時間実施した。アルキル化後、β−メルカプトエタノールを45mM(終濃度)となるように加えることによって過剰のヨードアセトアミドを不活性化し、および、溶液をPD10脱塩カラムに供した。アルキル化されたPEG−2−7−SC−5を、Centricom10を用いて濃縮し、および次いでTPCK処理トリプシンによって、酵素対タンパク質比1:20(w/w)で用いて加水分解した。加水分解は6〜8時間、37℃にて行わせ、およびその後、同量の新しいトリプシンを加えて一夜反応させた。加水分解されたタンパク質溶液をSpeedvacによって乾燥し、およびHPLC用水で再構成した。
【0214】
結果として得られたペプチド混合物をHPLCサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex75)によってHPLC用水を用いて分画した。画分を手作業で回収しおよびヨード溶液(20mMを含む5%BaCI)を用いて染色するTricine SDS−PAGEによって分析した。ポジティブ染色された画分を、逆相HPLC(Jupiter Cl 8,2x250 mm)によって、60分間に5〜70%のアセトニトリル勾配(0.05%TFAを含む)を用いてさらに分離した。ピークを手作業で回収し、およびSpeedvacで乾燥した。ピークを10μlの水で再構成し、および5μlをTricine SDS−PAGE分析用に採取した。ヨード染色ポジティブの画分(1つのみ、保持時間40分まで)をアミノ酸シークエンサー分析(Applied Biosystems)に供した。分析から得られた配列はG□TSGSGKPG(配列番号41)であり、ここで空白の四角は修飾アミノ酸を表し、マレイミド−PEG40Kがシステイン(N末端Ala1から110位)へ正確に付加されていることを示す。
【0215】
5H.D2E7およびPEG−D2E7の安定性−結果
D2E7SCAおよびPEG−D2E7SCA複合体は凍結融解の10サイクル後に安定であることが示された。未修飾の2−7−SC−2SCA(濃度1.1mg/mlを含む50mMトリス/グリシン緩衝液、pH7.0)の部分標本を−80℃にて15分間の凍結に供し、その後37℃にて10分間の融解を行った。凍結融解の操作を3、5、および10サイクル実施し、および未修飾のSCAの完全性を、SDS−PAGEによって、および確立されたTNF感受性細胞レスキュー検定法によって分析した。SCAは非常に安定であることが見出され、およびポリアクリルアミドゲルのクマシーブルー染色によって判定された通り分解を示すことなく少なくとも10回の凍結融解サイクルに耐えられた(データ記載せず)。5回の凍結融解サイクルに際して、2−7−SC−2の生物活性に変化は無かった(IC50:224.6nM)。
【0216】
本試験においてすべてのD2E7PEG−SCAタンパク質は、30日間4℃にて20mMリン酸ナトリウム、pH6.5、150mM NaCl中で安定であることが見出された。2−7−SC−2SCAタンパク質は、pH3〜10、25℃、18時間インキュベートで安定であった。最大1.2Mまでの濃度のNaClは、25℃にて20mMリン酸ナトリウム、pH7.4中の2−7−SC−2の活性または溶解度に影響しなかった。
【0217】
5I.抗原性
PEG化D2E7SCAタンパク質は、抗D2E7SCAポリクローナル抗体との結合効率に顕著な低下を示す。PEG−SCA2−7−SC−5は、ウェスタンブロットによって抗218抗血清を用いて分析した際、抗218ペプチドウサギ血清とわずかに反応性である。
【0218】
実施例6
SCAおよびPEG−SCAタンパク質のフローサイトメトリー分析
2−7−SC−2、2−7−SC−3、2−7−SC−4、2−7−SC−5についての細胞表面受容体結合検定法
WEHI−13VAR細胞株を用いて、D2E7SCAまたはPEG−D2E7SCAの存在下での細胞受容体へのTNF−α結合を分析した。ビオチンTNF−α(0.04μg)をD2E7SCAまたはPEG−D2E7SCA(1〜4μg)と共に50μlのFACS緩衝液(1%FBSおよび0.05%NaN3を含むPBS)中で25℃にて30分間、および次いで4℃にて15分間振とうしながら予備インキュベートした。
【0219】
同時に、ビオチン化ダイズトリプシンインヒビター(0.05μg)、ポリクローナルヤギIgG抗ヒトTNF−α抗体(20μg)、およびCC49SCA(4μg)といった対照もまた、ビオチン−TNF−α(0.04μg)と共に50μlのFACS緩衝液中で予備インキュベートした。WEHI−13VAR細胞は氷冷20mMEDTA含有PBSを用いて、37℃にて2〜3分でフラスコから剥がした。細胞をRPMI1640培地に再懸濁し、および2000rpmにて5分間遠沈した。細胞を次いで培地で1回、およびFACS洗浄緩衝液で2回洗浄し、および血球計算盤を用いて計数した。
【0220】
細胞をFACS緩衝液に懸濁し、終濃度2x106細胞/mlとした。細胞に使用した褐色エッペンドルフチューブすべてを、FACS緩衝液を用いて少なくとも1時間4℃にてブロックした。細胞受容体へのTNF−α結合に対するアクチノマイシンDおよびFcブロック試薬(BD Biosciences)の作用については、細胞(105個)を0.05μgアクチノマイシンD/1x106細胞または1μgFcブロッキング/1x106細胞と共に50μlのFACS緩衝液中で15〜30分間4℃にて予備インキュベートした。TNF−αおよびPEG−D2E7SCAの混合物50μlに、50μlの1x105WEHI−13VAR細胞を加えた。60分間4℃にて暗所でのインキュベート後、細胞を遠沈し、および80μlの冷FACS緩衝液に再懸濁した。ストレプトアビジン−フィコエリトリンの全部を加えた。混合物を暗所で4℃にて30分間インキュベートした。細胞をその後冷FACS緩衝液1mlで2回洗浄し、および分析のために0.3mlFACS洗浄緩衝液に再懸濁した。
【0221】
フローサイトメトリー分析−結果
ビオチン化ダイズトリプシンインヒビター、ポリクローナルヤギ抗ヒトインターフェロン−αIgG、およびCC49SCA(Enzon)は結合を示さず、およびネガティブ対照の役割を果たした。細胞へのFcブロック試薬(BD Biosciences)およびアクチノマイシンDを用いた予備インキュベートは、TNF−α結合に対して効果が無かった。PEG−D2E7 2−7−SC−2SCA複合体(エチル−、5k、20kまたは40kPEG)は、16:1(D2E7SCA:TNF−α)より高いモル比で、細胞へのTNF−α結合を完全に消失させた。
【0222】
D2E7SCAのTNF−αに対するその同じモル比で、未修飾のD2E7SCAはまた細胞へのTNF−α結合を低下させたが完全にではなかった。したがって、この分析では、D2E7のPEG−SCA型は未修飾のSCAタンパク質よりも強力であった。
【0223】
図6A、6Bおよび6Cは、WEHI−13VAR細胞上の受容体とのビオチン標識化TNF−αの結合を妨げるこれらの化合物の能力のフローサイトメトリー分析における、2−7−SC−2SCAおよびPEG−SCA化合物の代表的なデータを示す。これらのデータは、抗TNF−αPEG−SCA化合物が、細胞系における受容体へのこのサイトカインの結合の阻害において活性が高いことを示す。
【0224】
2−7−SC−2またはPEG−2−7−SC−2の存在下での、細胞受容体へのTNF−α結合のフローサイトメトリー分析。1、蛍光標識化無しの細胞集団;2、ビオチン−TNF−αとの、および次いでストレプトアビジン−フィコエリトリンとの結合後の細胞集団;および3、細胞受容体へのTNF−α結合に及ぼす2−7−SC−2(図6A)、PEG(20k)−2−7−SC−2(図6B)、およびPEG(40k)−2−7−SC−2(図6C)の作用。2−7−SC−2またはPEG−2−7−SC−2のTNF−αに対するモル比は16:1である。低い蛍光強度へのシフトは、細胞へのTNF−αの結合の減少を示す。
【0225】
実施例7
BIACORE分析
D2E7SCAおよびPEG−SCAとの組換えhTNF−αの相互作用の動態分析
TNF−αとD2E7SCA変異体およびそのPEG化型との間の相互作用を、表面プラズモン共鳴(SPR)法によって、BiaCoreX装置(BiaCore,Inc.; Piscataway,New Jersey)を用いて分析した。純度>97%の組換えヒトTNF−α(Pierce;Rockford、IL)を、CM5チップ(BiaCore、品番BR−1000−14)上に、10μg/ml溶液pH5.0(酢酸緩衝液、BiaCore、品番BR−1003−51)として固定化した。固定化した表面を酢酸緩衝液、pH4.5(BiaCore、品番BR−1003−50)で3回洗浄し、および500 nMの未修飾SCAを用いる6サイクルのリガンド安定性分析に供した。
【0226】
D2E7SCAは分析対象となり、共にpH4.5の酢酸は再生緩衝液となった。安定なTNF−α−結合表面上で、異なる濃度のSCAまたはPEG−SCAが結合(3分間)および解離(2分間または5分間)について調べられ、およびデータを動態パラメーター(例えば、kon、koff、KA、およびKD値)についてBiaEvaluationソフトウェア(バージョン3.0)を用いて分析した。HBS−N(BiaCore、品番BR−1003−69)を本手順における泳動緩衝液として使用した。
【0227】
固定化rhTNF−αとD2E7SCAまたはPEG−SCAとの間の相互作用の動態分析
方法
TNF−α
起源:Pierce、組換え型、品番RTNFA50
MW:17.4kD、157アミノ酸
純度:>97%
再構成:蒸留水(DW)中で100μg/mlの濃度へ。調製物中に添加物は存在しない
保存:−70℃にて保存
D2E7SCA:クローン2−7−SC−2
起源:Enzon Pharmaceuticals,Inc.、組換え型、Pichiaで発現
MW:27kD、218リンカーを有する
純度:>90%
再構成:150mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液、pH7.0中
保存:4.0℃にて保存
固定化:新しいCM5チップを用いて
TNF濃度:10μg/ml、酢酸緩衝液pH5.0溶液のストックから直接希釈
流速:5.0μl/分
チャンネル:FC1〜2、1:1NHS/EDC混合物で3.0分活性化
チャンネル:FC2、15μlのTNFを手動注入、10μg/ml
(より低いRUを達成するために、より小さい容量を注入する)
チャンネル:FC1〜2、1Mメタノールアミン、pH8.5で3分間不活性化
チャンネル:FC1〜2、BSA1μg/mlを含むHBS−N緩衝液25μlを手動注入
チャンネル:FC1〜2、インジェクションポートを洗浄するため、10mM酢酸、pH4.5を1分間注入、100μl/分
最終RU(応答単位)は199であった。
【0228】
CM5チップをHBSN緩衝液で洗浄し、および少なくとも6サイクルの安定性について500nM2−7−SC−2で試験した。CM5チップを次いで動態分析に用いた。
【0229】
D2E72−7−SC−2の動態分析
2−7−SC−2の濃度:注入直前にHBS−Nで希釈
2.98g/ml(1080nM)
1.49μg/ml(540nM)
0.745μg/ml(270nM)
0.3725μg/ml(135nM)
0.186μg/ml(67.5nM)
93ng/ml(33.75nM)
46.5ng/ml(16.875nM)
23.28ng/ml(8.4375nM)
0g/ml(0nM)
流速:25μl/分(注:30μl/分は20および25l/分と同様の結合を結果として生じた)
結合期間:3分間
解離期間:2分間および5分間
再生緩衝液:10mM酢酸,pH4.5
再生は2段階で実施し、洗浄1回目として100μl/分で100μl洗浄および40
洗浄1回目の後にチップに残ったRUに応じて、洗浄2回目として100μl/分で80μl洗浄。
【0230】
データ分析
2分子結合反応について結合および解離動態曲線を、質量移動限界と適合するおよびしない1: 1 結合 を用いて分析した。質量移動パラメーターを含めることによって導体の顕著な改善は達成されず、本実験において質量移動現象は有力でなかったことを示した。
【0231】
2−7−SC−4およびPEG−40k−2−7−SC−4をこの目的のために調製した。
【0232】
FACS結果は、SCA his−タグ部分の有無でTNF−αへのD2E7/PEG−D2E7 SCA結合に差は無かったことを、独立して示した。
【0233】
Biacoreおよび細胞レスキュー試験からの結果はまた、his−タグ部分は抗原およびSCAの結合現象の原因でないことを確認した。
【0234】
直接結合動態は、TNF−αをCM5チップ上に固定化し、および結合したリガンドの上に2−7−SC−2の未修飾型およびPEG型のさまざまな濃度を流すことによって測定した。下記の表5は、異なる型の2−7−SC−2SCAのka(kon)、kd(koff)、KA、およびKD値を提供する。
【表5】
【0235】
上記の表5は、PEG化SCAタンパク質がリガンドに対する高い親和性を維持することを確認する。しかし、異なるPEG−SCA設計分子はon速度およびoff速度に差を示す。特に、2−7−SC−2の40kDaPEG型は、親SCAと比較した際に顕著に減少したon速度としかし保たれたoff速度を有する。これは、BIACoreチップ上のこの人工結合環境における、大きくおよび可塑性であるPEGポリマーによる立体障害作用を反映する可能性がある。対照的に、本研究で別に記載する細胞系検定法は、未修飾のおよび40kDaPEG化SCAタンパク質について同様の結合効力を示した。
【0236】
PEG化によるon速度およびoff速度動揺における特異的な傾向は、複合体化タンパク質に関してポリマーの化合物特異的な立体構造または配置を明らかにする可能性がある。追加の下記のPEG−SCA化合物についてのさらなる試験はこの可能性を強調する。2−7−SC−4−40kDa−PEGデータは、PEGポリマーのC末端への直接の配置は実質的にoff速度を改善したことを示す。この試験で開示された通りの、SCAシステイン配置およびPEGポリマー質量の規定のパラメーターを用いた戦略は、任意の個別のPEG−SCAタンパク質複合体について結合および活性特性の最適化を可能にする。
【0237】
2−7−SC−5および2−7−SC−7のrhTNFへの結合動態
直接結合動態は、TNF−αをCM5チップ上に固定化し、および結合したリガンドの上に2−7−SC−5および2−7−SC−7の未修飾型およびPEG型のさまざまな濃度を流すことによって測定した。下記の表は、異なる型の2−7−SC−5および2−7−SC−7のka、kd、KA、およびKD値を提供する。
【表6】
【表7A】
【表7B】
直接結合動態は、TNF−αをCM5チップ上に固定化し、および結合したリガンドの上に2−7−SC−3/2−7−SC−7の未修飾型およびPEG型のさまざまな濃度を流すことによって測定した。下記の表は、異なる型の2−7−SC−3および2−7−SC−7のka、kd、KA、およびKD値を提供する。
【表8A】
【表8B】
実施例8
TNF−α細胞毒性の中和の検定
TNF−α細胞毒性の中和の細胞系検定法を下記の通り実施した。
【0238】
WEHI−13VAR細胞(American Type Culture collectionから入手、ATCC番号CRL−2148)はアクチノマイシンDの存在下でTNF−αに対してより感受性が高く、および検定に用いられた。
【0239】
WEHI−13VAR細胞を96ウェルプレートにウェル当たり10,000細胞にて播種し、および一夜37℃にて加湿インキュベーター内で5%CO2でインキュベートした。
【0240】
D2E7SCAタンパク質およびそのPEG化型の、ある範囲の濃度を、96ウェルプレート中の播種された細胞へ、培地中の10g/mlから2.5ng/mlの段階希釈で加えた。
【0241】
D2E7 SCA化合物の添加の直後に、rhTNF−α(Pierce)を各ウェルへ1.0ng/mlの濃度で加えた。細胞を次いで24時間増殖させ、および細胞の生存を、15μlのMIT色素試薬(品番G4000,Promega Corporation [Madison,Wisconsin])(3−(4,5,ジメチルチアゾール2イル)2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)の添加によって取扱説明書に従って判定した。細胞レスキューの分析は、D2E7処理細胞の生存度を未処理細胞と、TNF−αの存在下で比較することによって実施した。
【0242】
対照ウェルは、未処理細胞、およびTNF−αだけで処理した細胞から成った。対照ウェルの細胞は、生存度の完全な消失を示した。実験ウェル中の生存細胞(またはレスキューされた細胞)の割合をD2E7濃度の対数に対してプロットし、およびデータの各セットについてIC50値を決定した。それぞれの値は3連の実験セットに由来した。
【0243】
TNF−α致死性からのD2E7SCAタンパク質による細胞レスキュー
後掲の表9A、9Bおよび9Cに列記されたもののような抗TNF−α SCAタンパク質の、細胞をTNF−αのネガティブな作用から保護する能力は、TNF−α感受性細胞株を使用し、およびその細胞を、SCAタンパク質2−7−SC−2と共にまたはそれ無しで、TNF−αと接触させることによって確認された。結果は、実施例1によって調製された他のSCAタンパク質を用いて実施された別の試験と合致した。
【0244】
材料および方法
細胞株:WEHI−13VAR細胞;ATCC番号CRL−2148、マウス細胞株
増殖:2mM G−グルタミン、1.5g/L重炭酸ナトリウム、4.5g/Lグルコース、10mM HEPES、および1.0mMピルビン酸ナトリウム、および10%FBSを含むRPMI1640培地
凍結保存用試薬:培地95%およびDMSO5%。
【0245】
測定方法
WEHI−13VAR細胞をトリプシン処理しおよび96ウェルプレートに10,000細胞/ウェルで完全RPMI−1640培地中に播種し、および12時間、37℃にて5%CO2の加湿インキュベーター内で定着させた。
【0246】
細胞をPBSで洗浄し、および各ウェルに新しい培地を加えた。後掲の表9A、9Bおよび9Cに列記されたものを含む、さまざまなD2E7SCA変異体およびそのPEG化型をウェルに加えた。SCAは10μg/mlから2.5ng/mlまで段階希釈した(完全RPMI培地で希釈)。対照細胞にはD2E7を加えなかった。
【0247】
D2E7化合物の添加直後に、組換えhTNF−α(1.0ng/ml、完全培地でないRPMI培地で希釈)を各ウェルに加えた。未処理の対照細胞にはTNF−αを加えなかった。
【0248】
細胞を24時間、37℃にて5%CO2の加湿インキュベーター内で培養した。インキュベート期間の終了時に、15μlのMTT染色試薬(品番G4000,Promega Corporation)を各ウェルに加え、および、停止溶液を各ウェルに加えるまで、プレートを4時間37℃にてインキュベートした。各ウェルの内容物をよく混合し、および結晶を一夜室温にて溶解させた。
【0249】
プレートを570nmおよび630nmにて96ウェルプレートリーダー(Molecular Devices)で読み取り、および吸光度単位における差(細胞生存度の指標)を、TNF−α細胞毒性に対して細胞をレスキューするために用いたD2E7化合物の濃度に対してプロットした。
【0250】
50%の細胞がレスキューされたD2E7SCAタンパク質濃度を、log[D2E7]をX軸および%レスキューをY軸パラメーターとして用いた生存度グラフから、実験の各セットについて決定した。
【0251】
25℃、50mMリン酸ナトリウムpH7.0、1mMEDTAでのMal−PEG(20kDa)ポリマーの安定性を、220nmから400nmまで0、2、4、22、および33時間のUV吸収スキャンによって調べた。33時間後25℃にて、3mMシステインを加え、および混合物を5分間インキュベート後にスキャンした。時間依存性300nmの特徴的なピークの時間依存的な変換が定量された。
【0252】
注:WEHI−13VAR細胞はTNF−αおよびリン補トキシンに対して、L929(ATCCCCL−1)よりも感受性が高い。アクチノマイシンDの非存在下ではこれらの細胞はTNFに対する感受性を30日以内に失う。また、アクチノマイシンDの添加はD2E7化合物による細胞のレスキューに有害であることが見出された。
【0253】
未修飾の2−7−SC−2、2−7−SC−2−NE−マレイミド、SK、20K、および40KPEG化2−7−SC−2を、細胞をTNF媒介性死滅からレスキューする能力について分析した。表9Aは2−7−SC−2の各型についてIC50値(50%のWEHI−13VAR細胞を1.0ng/ml TNFによる死滅からレスキューする)を提供する。
【表9A】
【表9B】
【表9C】
これらのデータは、D2E7 SCAの設計されたPEG化型が、サイトカインTNF−αの結合および中和における同様の生物活性をこの細胞系検定において示すことを確認する。PEG−SCA化合物は、したがって、このサイトカインを効果的に中和しおよびこれらの細胞上のTNF−α受容体へのその結合を妨げることができる。
【0254】
実施例9
D2E7SCAおよびPEG−SCAの薬物動態
試験手順:ICRマウスにおけるSCAおよびPEG−SCA複合体の薬物動態。
【0255】
試験目的
本試験は、SCAD2E7(2−7−SC−2および2−7−SC−5)、および、PEG(5kd)、PEG(20kd)およびPEG(43kd)複合体を含むPEG化型の、ICRマウスにおける血漿薬物動態を調べるために設計された。
【0256】
被験物質(投与前−20℃保存)
D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)(100%活性w/w)
PEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)(57.4%活性w/w)
PEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)(38.6%活性w/w)。
【0257】
試験システム
種:ICR(Sprague Dawley Harlan)マウス
週齢:7〜8週
性別:雌
体重:開始時体重範囲:約25g。
【0258】
動物管理:
マウスはUniversity of Medicine and Dentistry of New Jersey (「UMDNJ」)動物施設で飼育箱にケージ当たり5個体を飼育した。ケージは"Guide for the Care and Use of Laboratory Animals of the Institute of Laboratory Animal Resource",National Research Councilに準拠したサイズとした。汚物は少なくとも週2回除去した。ケージには試験、被験物質、動物数、性別、および用量レベルを示すケージカードを明瞭に標示した。動物は試験開始前1週間にわたって順化した。
【0259】
飼料
マウスは水道水および市販の実験動物飼料を自由摂取させた。
【0260】
試料調製
D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)はPBSで0.556mg/mL D2E7に希釈した;
PEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)はPBSで0.503mg/mL D2E7当量に希釈した;
PEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)はPBSで0.541mg/mL D2E7当量に希釈した;
リン酸緩衝生理食塩水;140mM NaClを含む10mMリン酸ナトリウム、pH6.5。
【0261】
投与部位
D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)、PEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)、およびPEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)複合体は単回投与(1日目)として尾静脈から静脈投与した。
【0262】
実験計画
54個体のマウスは下記の表10の図式に従って割付、投与および採血した。
【表10】
【0263】
未処理対照血清の採取のため、2個体の未処理マウスを心臓穿刺によりEDTA入り試験管へ採血した。
【0264】
マウスに個体当たり200μLのD2E7(2−7−SC−5)、個体当たり180μLのPEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−5)、および個体当たり190μLのPEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−5)複合体を静脈注射した。0.09%アベルチンを用いて鎮静後、マウスを後眼窩洞からEDTA入りバイアルへ採血した。2分、15分、30分および1時間にマウスを100μL採血し、および3時間、6時間、24時間、48時間、72時間および96時間にマウスを心臓穿刺により〜1000μL採血して死亡させた。血液の遠心分離後に血漿を回収し、およびドライアイス上で−80℃にて直ちに凍結させた。
【0265】
血漿試料を融解し、およびD2E7化合物の濃度をELISAによって測定した。データをWinNonlinソフトウェアを用いてモデル化してD2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)、PEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)、およびPEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)薬物動態パラメーターを決定した。
【0266】
臨床試験:マウスは受領時に目視検査した。臨床的異常の徴候に関する詳細な身体診察は、過剰な取り扱いを避けるために、目視評価に従って必要な場合のみに実施した。マウスを被験物質の輸液後に毎日1回、死亡および処置に対する反応の徴候に関して目視検査した。死亡および臨床徴候はすべて記録した。状況に応じて、より頻回の検査を実施した。
【0267】
動物管理規定:本試験は動物福祉に関する現行ガイドライン(NIH Publication 86−23,1985)に準拠して実施した。
【0268】
マウスにおけるD2E7SCAおよびPEG−D2E7SCA複合体の薬物動態:D2E7SCAおよびPEG−SCAの酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
試料調製
試験したSCAの直線範囲は0.2ng/mlから30ng/mlの間であった。直線範囲内のタンパク質濃度ng/mlおよび光学測定値を分析に用いた。
【0269】
標準SCAまたはPEG−SCAを、分析した血漿試料と同様の希釈係数となるように血漿で希釈したか、または直接に希釈緩衝液(0.1%BSAおよび0.05%Tween−20を含むPBS、pH7.4)で希釈した。手順を簡略化するため、標準品を血漿試料分析用の希釈緩衝液で希釈した。静脈または皮下投与による投与量は4.5mg/kgであった。静脈投与による血漿試料に関する希釈係数は、0.03〜3時間の試料について500、およびSCAの6〜96時間試料について10、PEG−5k−SCAの0.03〜24時間試料について500および4〜96時間試料について10、PEG−20k−SCAの0.033〜6時間試料について800および24〜96時間試料について100、およびPEG−40k−SCAのすべての試料について800であった。皮下投与による血漿試料の希釈係数は、SCAのすべての試料について200、およびPEG(20k)−SCA.のすべての試料について300であった。
【0270】
ELISA手順
サンドイッチELISAを用いてSCAおよびPEG−SCA複合体の血漿濃度を測定した。試料は抗体によって検出された規定の組成物に関して測定した。捕捉抗体は、プロテインAおよびD2E7−結合アフィニティカラムによって精製したポリクローナル抗D2E7抗体であった。TNF−αへの結合のために、プレートをTNF−αでコーティングした。一次および二次抗体はそれぞれ、ビオチン化抗D2E7抗体およびストレプトアビジン−ペルオキシダーゼであった。Maxisorpプレートを、400ng/ウェルの抗D2E7抗体またはTNF−αを含む50μlの50mM重炭酸ナトリウムで25℃にて一夜コーティングした。同時に、試料希釈のために、Nuncマイクロウェルプレートまたはタンパク質の吸収が最小である任意の標準96−ウェルプレートを、ブロッキング緩衝液(1%BSA、5%スクロース、および0.05%NaN3を含むPBS、pH7.4)を用いて4℃にて一夜ブロッキングした。翌日、コーティング溶液およびブロッキング溶液をELISAおよびNuncプレートの両方からアスピレーターを用いて除去した。ELISAプレートはブロッキング溶液(250ul/ウェル)を用いて少なくとも1時間25℃にてブロッキングし、およびNuncプレートは、洗浄緩衝液(0.05%Tween−20を含むPBS、pH7.4)を用いて3回洗浄したかまたは25℃にて風乾させおよび以降の分析のために4℃にて保存した。ブロッキング溶液を除去後のELISAプレートは洗浄緩衝液を用いて3回洗浄したかまたは25℃にて風乾させおよび以降の使用のために4℃にて密封して保存した。血漿試料はNuncプレートの上から下へ連続的に1:2希釈し、各ウェルに120μlを残した。希釈緩衝液を用いた前希釈後に、100μlの試料をELISAプレートへ移し、および4℃にて一夜インキュベートした。試料溶液を除去しおよびプレートを、洗浄緩衝液を用いて3回洗浄後、20ngビオチン抗D2E7抗体を含む50μlの希釈緩衝液を各ウェルに加えた。試料は25℃にて2時間インキュベートした。一次抗体を除去しおよびプレートを洗浄緩衝液で4回洗浄した後、100−ulストレプトアビジン−ペルオキシダーゼを1:16、000希釈で加えた。プレートを25℃にて1時間インキュベートした。溶液を除去しおよびプレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した100μlのTMBE基質を添加後10〜20分で発色し、および50μlの1M H2SO4を加えることによって停止した。450nmでの吸高度を記録した。
【0271】
データ取り込みおよび分析
データはMolecular Devicesマイクロプレートリーダーで取り込みおよび分析した。標準曲線は、標準物質の濃度に対する450nmでのエンドポイントの光学密度をプロットすることにより、および0.99以上の相関係数を有する最適な曲線を描くことによって得た。すべての未知試料濃度は、希釈係数を組み込んだ後に標準曲線から計算した。適当な光学密度を有するすべてのデータ点の最も近い数がその結果のために平均されている。
【0272】
マウスにおけるD2E7SCAおよびPEG−D2E7SCA複合体の薬物動態
すべての2−7−SC−2系(2−7−SC−2、エチル−2−7−SC−2、PEG−5k−2−7−SC−2、PEG−20k−2−7−SC−2、PEG−40k−2−7−SC−2)についてのPKパラメーターを決定した。2−7−SC−5、PEG−20k−2−7−SC−5、およびPEG−40k−2−7−SC−5についてのPKパラメーターを決定した。2−7−SC−2およびPEG−20k−2−7−SC−2についての皮下注射によるPKパラメーターもまた決定した。
【0273】
予備実験から、抗218リンカーを用いた2−7−SC−2のより低い検出感度(50ng/ml)が観察された。マウスにおける循環半減期の約100倍の延長が、40kDaPEG−SCA化合物(2−7−SC−2、2−7−SC−5)において、未修飾SCAタンパク質と比較した際に観察された。
【0274】
下記の表11は、静脈注射(IV)または皮下(SC)注射によって投与された2−7−SC−2、PEG−2−7−SC−2、2−7−SC−5、PEG−2−7−SC−5について決定された薬物動態パラメーターを示す。
【表11】
【0275】
これらの結果は、PEG化SCAタンパク質の循環寿命を、治療上有用な薬物動態の範囲にわたるように設計できることを実証する。40kDaPEG結合SCAにおける血清半減期の2logの延長は、これらの化合物を完全なモノクローナル抗体の薬物動態範囲に置く。抗原結合部位から離れた独特の部位でのPEGポリマーの部位特異的結合は、活性な抗原結合タンパク質の製造だけでなく、ランダムなアミン化学を用いたSCAタンパク質PEG化の相当な不均一性とは対照的な、組成が相対的に均一な製品の製造もまた可能にする。20kDaPEG化SCAタンパク質と比較した際の本試験の40kDaPEG化SCAタンパク質の循環寿命の大差は、いくぶん意外であった。約20kDaPEGでの薬物動態のプラトーの証拠があったランダムPEG化(CC49)SCAタンパク質の我々の結果に基づき、12kDaPEGは同等の循環寿命を示したため、我々はこれを予測しなかった。
【0276】
本発明がどのように作用し得るかに関してはいずれの理論または仮説にも拘束されない一方、40kDaPEG−SCA化合物の大幅に延長された循環寿命にも寄与するのは分枝鎖構造であると考えられている。特に興味深いのは、PEG−SCA(20kDaPEG)の皮下注射での使用における成功である。この投与経路は、静脈投与よりも顕著に良好なAUC値を与えた。皮下経路は、PEG−SCA治療薬の処方のために最終的に好ましい可能性がある。SCAへのPEGのリンカー結合は成功し、C末端PEG結合についての動物実験に劣らなかった。おそらく、PEGのリンカー結合はまた、SCA安定性の増大および、抗原性および/またはタンパク質分解の低下にも寄与し得る。
【0277】
実施例10
ビス−マレイミド−PEGを介する二量体D2E7PEG−SCAタンパク質
ポリマー1個当たりSCAタンパク質2個を有する2価PEG−SCA化合物を作製するために、ビス−マレイミド−PEGポリマーを使用した。これらは活性化マレイミド基をポリマーの両端に有する。SDSPAGE分析は、SCA−PEG−SCA化合物を本開示の方法を用いて合成できたことを実証した。反応pHおよび反応モル比の影響はそれぞれ表12および表13に示す。
【表12】
【0278】
データは4〜20%SDS−PAGEゲルについてのゲル画像分析によって得られた。ビス−mal−PEG(20k)を100mMリン酸ナトリウム、pH6に溶解して濃度3.7mg/mlとした。それを次いで1mg/ml D2E7 2−7−SC−2を含む100mMリン酸ナトリウム、pH6および1mM EDTAへ、D2E7 2−7−SC−2の1/30から1/10容量を徐々に加え、および反応モル比を示した。反応は25℃にて窒素中で1.5時間実施した。
【表13】
【0279】
反応は、1mg/ml D2E72−7−SC−2および0.12mg/mlビス−mal−PEG化合物を0.165:1(ビス−mal−PEG:2−7−SC−2)の反応モル比で含む100mMリン酸ナトリウムを、表記のpHで含んだ。反応は25℃にて窒素中で2時間実施した。試料は4〜20%SDS−PAGEゲルで分析し、および各化合物の相当するバンドを定量した。高分子量不純物は1%未満であり、および2−7−SC−2の二量体は5%未満であった。
【0280】
実施例11
マウスにおける抗TNF−α活性の確認
本実施例は、参照により本開示に含まれるGalanos et al.1979,Proc.Nat'l Acad Sci(USA) 76: 5939−5943に記載された通り、TNF−α曝露に基づく標準動物モデルにおいて、TNF−αによって促された炎症カスケードの中和(予防)における、PEG化抗腫瘍壊死因子−α一本鎖抗体(Peg−抗TNF−α SCA)、未修飾抗TNF−α SCA、およびHumira(登録商標)(完全なD2E7)抗TNF−α抗体の抗力を確認した。
【0281】
要約すると、TNF−αをD−ガラクトサミン(NGal)感作マウスへ腹腔内経路(i.p.)で注射することにより、C57/BL6マウスにおいてエンドトキシン血症が誘導された。要約すると、マウスを組換えヒトTNF−α(1.0μg/個体)およびN−ガラクトサミン(20mg/個体)の組合せに曝露する30分前に、C57/BL6マウスに異なる用量の未修飾SCA、PEG−SCA、およびHumira(登録商標)をi.p.注射した。生存したマウスを24時間後に安楽死させた。
【0282】
NGalおよびTNFの同時注射は、ほぼすべての動物に24時間以内に致死を生じた。1マイクログラムのTNFおよび20mgのNgalの腹腔内(「IP」)投与の30分前に、さまざまな用量のD2E7MAb(Humira(登録商標))、TNFを中和するMab、または20または40kDaPEG−SCA化合物を投与した。E2E7MAbおよびPEG−SCA化合物の両方で処理したマウスは、同等の用量で比較的高い生存率を示した。
【0283】
材料および方法
供試動物は雌C57B1/6(Sprague Dawley Harlan)マウス、7〜8週齢、開始時に体重約25gであった。マウスは水道水および市販の実験用飼料の自由摂取で維持された。TNF−αによる曝露に対する保護的性質について試験した物質は、上述の通り調製した2−7−SC−5未修飾SCA;2−7−SC−5−20K−PEG−SCA;2−7−SC−5−43K−PEG−SCA、および未修飾d2E7MAb(Abbott Immunology,Abbott Park,IllinoisからのHumira(登録商標))であった。対照はリン酸緩衝溶液(「PBS」)であった。物質は単回腹腔内(「IP」)注射によって投与した。
【0284】
マウス126個体を下記の手順書に従って割り付けた:
【表14】
【0285】
少なくとも1週間の順化後、マウスに上記に示した指定の処置をi.p.注射した。この注射(t=0)の30分後、マウスに指定の刺激物質をi.p.曝露した。(マウスは1.0μg/個体の組換えTNF−αを含む50μl PBSおよび/または20mg/個体のD−ガラクトサミンを含む200μl PBSを投与された。)
上記の実験を、その後同一の手順を用いて、しかしより高用量の被験化合物を用いて繰り返した:2−7−SC−5−20K−PEG−SCAおよび2−7−SC−5−40K−PEG−SCAのそれぞれについて1個体当たり0.125g、0.625μg、2.5gおよび10.0g。非複合体化2−7−SC−5SCAを20μgで試験し、および完全なD2E5(Humira)を0.625g/個体で試験した。
【0286】
結果
%生存データを化合物の用量に対してプロットした(データ記載せず)。TNF−αに曝露されたマウスに少なくとも70%保護を与える化合物の用量を効力比較のベースラインと考えた。同一の用量(0.625g/動物)のHumira(登録商標)およびPEG−SCA(20k−および40kDa−PEG−SCAの両方)が、TNFに誘導される致死からマウスを保護した。しかし、これらのマウスで同様のレベルの保護を達成するためには、より高用量の、未修飾の非複合体化SCA(20μg/動物すなわち約800μg/kg)が必要であった。モル比では、完全長抗体と同等の生存の等価を達成するためには、約3倍過剰の20−または40kDa−PEG−SCAが必要であることを、得られたデータは実証した。一方、TNFに誘導される致死に対する同様の保護を達成するためには100倍モル過剰の未修飾SCAが必要であった。これらのデータは、PEGによるD2E7SCAの修飾は、血漿中のタンパク質の循環半減期を増大させることによって、未修飾のタンパク質に対して明らかな長所を提供することを示唆する。
【0287】
供試動物は平均して約25グラムであったため、0.625μg/個体は約25μg/kgの用量に相当し、および10μg/個体は約400μg/kgに相当する。
【図面の簡単な説明】
【0288】
【図1A】図1Aは、構造VL−218−VH−his6を有しかつCysムテインを持たないSCA2−7−SC−1をコードするDNA分子の配列(配列番号1)、および発現されたタンパク質(配列番号10)を示す。
【図1B】図1Bは、構造VL−218−VH−his6を有しかつC末端Cysを持つSCAをコードする2−7−SC−2をコードするDNA分子の配列(配列番号2)、および発現されたタンパク質(配列番号11)を示す。
【図1C】図1Cは、構造VH−(GGGGS)3−VL−his6を有しかつC末端Cysを持つSCAをコードする2−7−SC−3をコードするDNA分子の配列(配列番号3)、および発現されたタンパク質(配列番号12)を示す。
【図1D】図1Dは、構造VL−218−VHを有しかつC末端Cysを持つSCAをコードする2−7−SC−4をコードするDNA分子の配列(配列番号4)、および発現されたタンパク質(配列番号13)を示す。
【図1E】図1Eは、構造VL−218−VH−his6を有しかつリンカー2位にCysを持つSCAをコードする2−7−SC−5をコードするDNA分子の配列(配列番号5)、および発現されたタンパク質(配列番号14)を示す。
【図1F】図1Fは、構造VL−218−VH−his6を有しかつリンカー2位にCysおよびC末端にCysを持つSCAをコードする2−7−SC−6をコードするDNA分子の配列(配列番号6)、および発現されたタンパク質(配列番号15)を示す。
【図1G】図1Gは、構造VH−(GGGGS)3−VL−his6を有しかつリンカー5位にCysを持つSCAをコードする2−7−SC−7をコードするDNA分子の配列(配列番号7)、および発現されたタンパク質(配列番号16)を示す。
【図1H】図1Hは、構造VL−218−VH−his6を有しかつN末端およびC末端の両方にCysを持つSCAをコードする2−7−SC−8をコードするDNA分子の配列(配列番号8)、および発現されたタンパク質(配列番号17)を示す。
【図1I】図1−Iは、構造VL−GGGGS−VH−his6を有しかつ遊離のCysを持たないSCAをコードする2−7−SC−9をコードするDNA分子の配列(配列番号9)、および発現されたタンパク質(配列番号18)を示す。
【図2】図2Aはクローン2−7−SC−2SCA発現を示す。SCAタンパク質の発現は、1%メタノールすなわちMeOHによってPichia培養で誘導した。27kDaを矢印(「→」)で示す。 図2Bは、クローン2−7−SC−2についての、画分のクマシーブルー染色によるSDS−PAGEゲル分析、および各工程の収率を含む、発現および精製データを示す。少量の54kDa以下のジスルフィド結合二量体を染色ゲルに見ることができる。図注:STD、Mark12タンパク質分子量標準物質;SUP、発酵採取物上清;DIA、ダイアフィルトレーション上清;DEAE、第1のDEAEクロマトグラフィー非吸着画分;Ni++、ニッケル親和性クロマトグラフィー後の溶出試料;DEAE、第2のDEAEクロマトグラフィー。ピークは、矢印(「→」)で示す通り、約27kDaに見ることができる。
【図3A】図3AはmPEG−MALの構造を示す。
【図3B】図3BはmPEG2(MAL)の構造を示す。
【図3C】図3CはmPEG(MAL)2の構造を示す。
【図3D】図3DはmPEG2(MAL)2の構造を示す。
【図3E】図3Eはチオール−SCAと活性化PEG−MALとの反応を示す。
【図3F】図3Fはビニルスルホン活性PEGを示す。
【図4】図4は、200から400nmの間の波長に対する吸収のスペクトルプロットである。曲線Aはシステイン、3mMである;曲線BはPEG−MAL(1mM)+システイン(3mM)反応後である;および曲線CはPEG−MAL 1mMである。
【図5】図5Aは、ブリリアントブルー染色によって可視化した2−7−SC−5および2−7−SC−5複合体のSDS−PAGE分析を示す。レーン1はMARK12(Invitrogen)タンパク質サイズ標準物質を提供し、レーン2は非複合体化2−7−SC−5SCAであり、レーン3はPEG(20K)2−7−SC−5SCAであり、およびレーン4はPEG(40K)2−7−SC−5SCAである。 図5Bは、ヨード染色によって可視化した2−7−SC−5および2−7−SC−5複合体のSDS−PAGE分析を示す。レーン1はMARK12タンパク質サイズ標準物質を提供し、レーン2は非複合体化2−7−SC−5SCAであり、レーン3はPEG(20K)2−7−SC−5SCAであり、およびレーン4はPEG(40K)2−7−SC−5SCAである。
【図6A】図6Aは、2−7−SC−2SCAの存在下での、細胞受容体へのビオチン化TNF−αの結合のフローサイトメトリー分析を示す。曲線1は蛍光標識化なしの細胞集団を表し、曲線2はビオチン−TNF−αおよび次いでストレプトアビジン−PEへの結合後の細胞集団を表し、曲線3はSCA、ビオチン−TNF−α、および次いでストレプトアビジン−PEとの予備インキュベート後の細胞集団を表す。
【図6B】図6Bは、2−7−SC−2PEG(20K)SCAの存在下での、細胞受容体へのビオチン化TNF−αの結合のフローサイトメトリー分析を示す。曲線1は蛍光標識化なしの細胞集団を表し、曲線2はビオチン−TNF−αおよび次いでストレプトアビジン−PEへの結合後の細胞集団を表し、曲線3はPEG−SCA、ビオチン−TNF−α、および次いでストレプトアビジン−PEとの予備インキュベート後の細胞集団を表す。
【図6C】図6Cは、2−7−SC−2PEG(40K)SCAの存在下での、細胞受容体へのビオチン化TNF−αの結合のフローサイトメトリー分析を示す。曲線1は蛍光標識化なしの細胞集団を表し、曲線2はビオチン−TNF−αおよび次いでストレプトアビジン−PEへの結合後の細胞集団を表し、曲線3はPEG−SCA、ビオチン−TNF−α、および次いでストレプトアビジン−PEとの予備インキュベート後の細胞集団を表す。
【図7】図7は、D2E72−7−SC−2SCAタンパク質およびPEG−SCA誘導体のウェスタンブロット分析を示す。一次検出抗体は、精製組換えSCAタンパク質で免疫したウサギから調製した抗2−7−SC−1SCAウサギ抗血清であった。レーン1および7、分子量マーカー(250、148、98、64、50、36、22、16、6および4kDa);レーン2、2−7−SC−2SCAタンパク質;レーン3、エチル−2−7−SC−2;レーン4、PEG(5kDa)−2−7−SC−2;レーン5、PEG(20kDa)−2−7−SC−2;レーン6、PEG(40kDa)−2−7−SC−2。
【図8】図8は、D2E72−7−SC−2およびPEG化型のバンドのスキャン画像濃度を示し、組換えSCAタンパク質およびPEG−SCA複合体とのこの抗D2E7抗血清の反応性を確認する。バンドAは2−7−SC−2であり、バンドBは2−7−SC−5であり、バンドCはPEG(20k)−2−7−SC−2であり、バンドDはPEG(20k)−2−7−SC−5であり、バンドEはPEG(40k)−2−7−SC−2であり、バンドFはPEG(40k)−2−7−SC−5である。
【図9】図9は、薬物動態試験のための代表的な一連の試料のSDSPAGE分析を示す。2−7−SC−2SCAタンパク質および2−7−SC−2PEG−SCA複合体はクマシーブルー染色ゲル上で調べた。左側のゲル上で、付加した試料は非還元であった。右側のゲル上で、試料は負荷前に3mMベータ−メルカプトエタノールで還元しおよび85℃へ2分間加熱した。約10マイクログラムのタンパク質を各レーンに負荷した。図注:MM−分子量標準物質;レーン1、2−7−SC−2SCA;レーン2、N−エチルマレイミドで修飾した2−7−SC−2SCA;レーン3、2−7−SC−2SCA−PEG(40kDa);レーン4、2−7−SC−2SCA−PEG(20kDa)。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチドへのポリマーの部位特異的共有結合を促進する部位特異的修飾を有する1価および多価一本鎖抗原結合ポリペプチドに関する。本発明は、そのような修飾一本鎖抗原結合ポリペプチド、それをコードするベクターおよび宿主細胞、ならびにそのポリペプチドを作製および使用する方法を提供する。本発明はまた、新規でかつ改良されたプロドラッグを提供するための、修飾一本鎖抗原結合ポリペプチドとポリアルキレンオキシド(「PAO」)といったポリマーとの複合体、ならびにそのような複合体を作製および使用する方法を提供する。
【0002】
関連分野の説明
天然に存在する抗体は、1以上の特定物質すなわち抗原が動物の免疫細胞によって外来物と認識されたときに、それら抗原の存在に応答して、哺乳類を含む脊椎動物の免疫系によって産生される免疫グロブリンである。ヒトでは、特異的抗原を選択的に認識しおよび差別的に結合する能力を有する5つのクラスの抗体が存在する。各抗体クラスは同一の基本構造または複数のその構造を有する。基本単位は、重鎖またはH鎖(IgGで分子量各約50,000ダルトン)と呼ばれる2個の同一のポリペプチドおよび、軽鎖またはL鎖(分子量各約25,000ダルトン)と呼ばれる2個の同一のポリペプチドから成る。5つの抗体クラスのそれぞれは類似の組の軽鎖のおよび異なる組の重鎖を有する。軽鎖は1つの可変ドメインおよび1つの定常ドメインから構成され、一方、重鎖は1つの可変ドメインおよび3つ以上の定常ドメインから構成される。可変ドメインは免疫グロブリンの特異性を決定し、定常領域は他の機能を有する。
【0003】
概して、適当なポリペプチド軽鎖および重鎖の対が、天然抗体および他の種類の抗体において結合して、抗原結合部位を形成する。それぞれの個々の軽鎖および重鎖は約110アミノ酸の領域に折りたたまれ、保存された3次元立体構造を取る。軽鎖は1つの可変領域(VL)および1つの定常領域(CL)を含み、一方、重鎖は1つの可変領域(VH)および3つの定常領域(CH1、CH2およびCH3)を含む。対の領域が結合して、別個の構造を形成する。特に、軽鎖および重鎖可変領域は結合して、抗原結合部位を含む「Fv」部分を形成する。定常領域は抗原結合に必要でなく、場合によっては抗体分子からタンパク質分解によって分離することができ、軽鎖の半分および重鎖の四分の一から成る生物学的に活性な(すなわち、結合する)可変領域を与える。
【0004】
さらに、X線結晶構造解析によって構造が決定されている特定のクラスのすべての抗体およびそのFab断片(すなわち、VL、CL、VH、およびCH1で構成される断片)は、超可変部分の配列における大きな差にもかかわらず、異なる動物種に由来する場合さえ、同様の可変領域構造を示す。免疫グロブリン可変領域は、抗原結合ループにおける突然変異に対して寛容であるように見える。したがって、超可変領域内以外では、重鎖および軽鎖の両方によって定められる抗体のいわゆる「可変」領域の大部分は、実際、3次元構造において非常に定常的である。例えば、参照により本開示に含まれる非特許文献1を参照。
【0005】
天然抗体は通常不均一であり、多数の異なるエピトープ、または外来抗原の一部と結合する。対照的に、モノクローナル抗体(「Mab」)は結合親和性が均一である抗体である。Mabは診断薬および治療薬として両方で有用であることが示されている。MAbは例えば、マウスリンパ球様細胞の適当なマウス骨髄腫細胞株との融合によって、およびより進んだ組換え法によって作製されたハイブリドーマから、確立された方法によって定型的に製造されている。
【0006】
より小さな抗体様タンパク質またはポリペプチドは、最小限の追加の構造を有する抗原結合部位から成る。これらは、一本鎖抗原結合タンパク質またはポリペプチド(「SCA」)、または抗体の一本鎖可変断片(「sFv」)として本分野で公知である。これらは、リンカーポリペプチドを組み込んで、個々の可変領域、VLおよびVHを繋げて、単一のポリペプチド鎖とすることができる。
【0007】
一本鎖抗原結合タンパク質の理論の説明および製造は、Ladner et al.,特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に、およびHuston et al.,特許文献5(「生合成抗体結合部位」(BABS))に見出され、それらの開示はすべて参照により本開示に含まれる。上記の特許に記載された方法のもとに製造された一本鎖抗原結合タンパク質は、対応するFab断片と実質的に同様な結合特異性および親和性を有する。
【0008】
概して、適当な軽鎖および重鎖の対は、結合して抗原結合部位を形成することができる。それぞれの個別の軽鎖および重鎖は約110アミノ酸の領域に折りたたまれ、保存された3次元立体構造を取る。軽鎖は1つの可変領域(VL)および1つの定常領域(CL)を含み、一方、重鎖は1つの可変領域(VH)および3つの定常領域(CH1、CH2およびCH3)を含む。領域の対は結合して、別々の構造を形成する。特に、軽鎖および重鎖可変領域は結合して、抗原結合部位を含む「Fv」部分を形成する。定常領域は抗原結合に必要でなく、および一部の場合には抗体分子からタンパク質分解によって分離することができ、軽鎖の半分および重鎖の四分の一から成る生物学的に活性な(すなわち、結合する)可変領域を与える。
【0009】
さらに、X線結晶構造解析によって構造が決定されている特定のクラスのすべての抗体およびそのFab断片(すなわち、VL、CL、VH、およびCH1で構成される断片)は、同様の可変領域構造を示すが、しかしそれぞれの超可変部分の配列には大きな差を示す。これはまた、それぞれ異なる動物種に由来する抗体の比較においても観察される。免疫グロブリン可変領域は、抗原結合ループにおける突然変異に対して寛容であるように見える。したがって、超可変領域内以外では、重鎖および軽鎖の両方によって定められる抗体のいわゆる「可変」領域の大部分は、実際、3次元構造において非常に定常的である。例えば、参照により本開示に含まれる非特許文献1を参照。
【0010】
SCAポリペプチドのin vivo特性は、MAbおよびより大きな従来の抗体断片とは異なる。サイズの小ささは、SCAが血液からより早く消失し、および組織へより速やかに浸透することを可能にする(非特許文献2; 非特許文献3; 非特許文献4)。加えて、SCAポリペプチドは、抗体分子中に通常存在する定常領域が無いため、肝臓および腎臓といった組織中に保持されない。したがって、SCAポリペプチドは、迅速な組織浸透およびクリアランスが有利である癌診断および治療に有用である。
【0011】
合成抗原結合タンパク質はまた、参照により本開示に含まれる特許文献5(Hustonら)に記載されている。記載されたタンパク質は、生合成抗体結合部位(BABS)として挙動する領域を構成するアミノ酸の1つ以上の配列によって特徴づけられる。その部位は、(1)非共有的に結合したかまたはジスルフィド結合した合成VHおよびVL領域、(2)VHおよびVLがポリペプチドリンカーに結合しているVH−VLまたはVL−VH一本鎖、または(3)個別のVHまたはVLドメインを含む。結合ドメインはフレームワーク領域(FR)と結合した相補性決定領域(CDR)を含み、それらは別々の免疫グロブリンに由来し得る。Hustonらのタンパク質は最初の重鎖、すなわち、VH−ペプチドリンカー−VLドメインを有することによって特徴づけられるものを含むことに注意する。
【0012】
多価抗原結合タンパク質は公知である。本開示に記載される通り、多価抗原結合タンパク質は2つ以上の一本鎖タンパク質分子を含む。これらは共有または非共有結合によって随伴または結合され得る。多価抗原結合タンパク質の、抗原結合活性の上昇、2特異的および多特異的結合、および他の新規の用途が実証されている。例えば、すべて参照により本開示に含まれる、非特許文献5; 非特許文献6;および特許文献6、および共有の特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、および特許文献12を参照。
【0013】
上述の一本鎖ポリペプチド、およびその融合タンパク質といったペプチドは、哺乳類における顕著な抗原性と関連づけられていないが、循環寿命を延長しおよび抗原性反応の可能性をさらに低減さえすることが望ましい。
【0014】
循環寿命を延長しおよびタンパク質およびポリペプチドの抗原性を低下させる1つの方法は、それらをポリアルキレンオキシドといったポリマーに結合(conjugate)させることである。しかし、そのポリペプチドの相対的に小さなサイズおよびその繊細な構造/活性関係は、ポリエチレングリコール修飾を困難におよび予測不能にしている。
【0015】
ポリアルキレンオキシドのタンパク質との共有結合を行うためには、ポリマーの末端水酸基を最初に反応性官能基へ変換しなければならない。この過程はしばしば「活性化」と呼ばれ、およびその産物は「活性化PEG」または活性化ポリアルキレンオキシドと呼ばれる。例えば、一方の末端が官能基でキャッピングされた、タンパク質分子上のアミンに対して反応性である、メトキシポリ(エチレングリコール)(mPEG)が大部分の場合に用いられる。
【0016】
PEGのスクシンイミジルスクシナート誘導体(「SS−PEG」)といったいくつかの活性化ポリマーが紹介されている(非特許文献7)。SS−PEGはタンパク質(30分間)と穏和な条件下で迅速に反応し、活性でありながらよく修飾された複合体を与える。Zalipskyは、特許文献13で、ポリ(エチレングリコール)−N−スクシンイミドカルボナートおよびその調製を開示する。この形のポリマーは、タンパク質,および低分子量ペプチドおよび遊離アミノ基を含む他の材料の、アミノ基と容易に反応すると言われている。ウレタン結合(非特許文献8)、カルバマート結合(非特許文献9)、などといった、タンパク質のアミノ基とPEGとの間の他の結合もまた本分野で公知である。
【0017】
しかし、これらおよび他の方法にもかかわらず、結果として生じる複合体が十分な保持された活性を欠くことがしばしば見出されている。例えば、Benharら(非特許文献10)は、組換え一本鎖免疫毒素のPEG化が結果としてその免疫毒素の特異的標的免疫反応性の消失を生じたことを観察した。その免疫毒素の活性消失は、免疫毒素の抗体結合領域内部の2個のリジン残基でのPEG結合の結果であった。この問題を克服するために、Benharらはこれらの2個のリジン残基をアルギニン残基で置き換え、および誘導体化によって、不活性化に対する耐性が3倍高い活性な免疫毒素を得ることができた。
【0018】
上記で考察したこれらの問題を克服するための別の提案は、より長い、より高い分子量のポリマーを用いることである。これらの材料は、しかし、調製が困難でありおよび使用するのが高価である。さらに、それらは、より容易に入手可能なポリマーに対してわずかな改善しか提供しない。提案された別の代替案は、ポリマーの2本の鎖を、トリアジン環を介してタンパク質のアミノ基へ付加することである。例えば、非特許文献11および非特許文献12を参照。しかし、トリアジンは、結合後に許容し得るレベルへ低減するのが困難な有毒物質である。
【0019】
SCAタンパク質の3次元構造の検討は、C末端およびリンカー領域は抗原結合部位から非常に遠く離れており、したがって、それらタンパク質の製造中にin vivoでグリコシル化される挿入基へのポリマー結合のための部位を位置決定する中で、結合したポリマーが抗原結合部位または周囲のFv構造の立体構造を立体的に妨害または破壊しない、ポリマー結合(polymer conjugation)のための部位となり得ることを明らかにした(非特許文献13)。
【0020】
より効果的なポリマー結合のために、SCA構造内部のアミノ酸残基を位置決定する試みは、本特許出願の下記の共有発明者によって記載されており、そのすべてが参照により本開示に含まれる:選択的に位置決定されたCysおよびオリゴLys残基を記載する、共に2001年2月26日出願の、特許文献14および特許文献15。
【0021】
共有の、共に2001年9月20日の特許文献16および特許文献17は、ポリマーが選択的に結合する、選択的に位置決定されたグリコシル化のための、SCA中のタンデムおよびトリプレットASN、および関連する部位を記載する。しかし、ポリマーのSCAタンパク質への位置依存的結合における他の選択肢および改善、および、ポリペプチドの結合活性および特異性の保持を、ポリマー結合のすべての利益と共に可能にする、共役化学(conjugation chemistry)における他の選択肢および改善の本分野における必要性が残っている。
【特許文献1】米国特許第4,946,778号明細書
【特許文献2】米国特許第5,260,203号明細書
【特許文献3】米国特許第5,455,030号明細書
【特許文献4】米国特許第5,518,889号明細書
【特許文献5】米国特許第5,091,513号明細書
【特許文献6】国際公開第93/11161号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5,869,620号明細書
【特許文献8】米国特許第6,025,165号明細書
【特許文献9】米国特許第6,027,725号明細書
【特許文献10】米国特許第6,103,889号明細書
【特許文献11】米国特許第6,121,424号明細書
【特許文献12】米国特許第6,515,110号明細書
【特許文献13】米国特許第5,122,614号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第09/791,578号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第09/791,540号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第09/956,087号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第09/956,086号明細書
【非特許文献1】Huber,R.,Science 233: 702-703 (1986)
【非特許文献2】Milenic,D.E.et al.,Cancer Research 51: 6363-6371(1991)
【非特許文献3】Colcher et al.,J.Natl.Cancer Inst.82: 1191 (1990)
【非特許文献4】Yokota et al.,Cancer Research 52: 3402 (1992)
【非特許文献5】Whitlow,M.,et al.,Protein Engng.7: 1017-1026 (1994)
【非特許文献6】Hoogenboom,H.R.,Nature Biotech.15:125-126 (1997)
【非特許文献7】Abuchowski et al.,Cancer Biochem.Biophys.7: 175-186 (1984)
【非特許文献8】Veronese et al.,Appl.Biochem.Biotechnol.11: 141-152(1985)
【非特許文献9】Beauchamp et al,Anal.Biochem.131: 25-33 (1983)
【非特許文献10】Benhar et al.(Biocomueate Chem.5: 321-326 (1994))
【非特許文献11】Enzyme 26: 49-53 (1981)
【非特許文献12】Proc.Soc.Exper.Biol.Med.,188:364-369 (1988)
【非特許文献13】Wang M.,et al.,1998 Protein Engng 11: 1277-1283
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
これらの長年のニーズに対応するために、本発明は、
抗体重鎖または軽鎖の可変領域の抗原結合部分を含む第1ポリペプチド;
抗体重鎖または軽鎖の可変領域の抗原結合部分を含む第2ポリペプチド;および
第1および第2ポリペプチドを繋ぐペプチドリンカーを含み、
ポリアルキレンオキシドポリマーに結合可能な少なくとも1つのCys残基を有し、かつ少なくとも1つの抗原結合部位を有する、ポリアルキレンオキシドポリマーに部位特異的結合可能なTNF−α結合一本鎖抗原結合ポリペプチド(「SCA」)を提供する。Cys残基は好ましくは下記の位置の1以上に位置する:
重鎖または軽鎖可変領域のC末端;
重鎖または軽鎖可変領域のN末端;
ペプチドリンカーの任意のアミノ酸位置;
N末端およびC末端の両方;
リンカーの2位;
リンカーの5位;
リンカーの2位およびC末端の両方;および
それらの組合せ。
【0023】
好ましくは、TNF−α結合SCAはTNF−αに選択的に結合する。
【0024】
より好ましいCys位置は、例えば、リンカーの2位、C末端およびそれらの組合せを含む。C末端は好ましくは天然に存在するC末端であるが、しかしその当該分野で既知である任意の修飾を含み得る。
【0025】
本発明のSCAは必要に応じて、目的の抗体、例えば、好ましくは抗TNF−α抗体の軽鎖および/または重鎖に由来する可変領域から成る。
【0026】
本発明はまた、本発明の一本鎖抗原結合ポリペプチドまたはタンパク質を含む複合体であって、実質的に非抗原性のポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシドポリマーを含む複合体を提供する。ポリアルキレンオキシドは好ましくはポリエチレングリコールすなわち「PEG」ポリマーである。
【0027】
ポリアルキレンオキシドは任意の適当なサイズ範囲であるが、しかし好ましくはサイズが約5,000から約40,000ダルトンの範囲にわたる。
【0028】
好ましくは、ポリアルキレンオキシドポリマーは一本鎖抗原結合ポリペプチドにCys残基で共有結合する。
【0029】
好ましくは、ポリアルキレンオキシドは、例えば、マレイミド、ビニルスルホン、チオール、オルトピリジルジスルフィドおよび/またはヨードアセトアミドリンカーといったリンカーを介して、一本鎖抗原結合ポリペプチドにCys残基で結合する。マレイミドリンカーが非常に好ましい。
【0030】
本発明のポリマー結合した実施形態では、ポリアルキレンオキシドは必要に応じて、各一本鎖抗原結合ポリペプチドが同一であるかまたは異なる少なくとも2つの一本鎖抗原結合ポリペプチドに結合している。
【0031】
必要に応じて、複合体、例えばPAOまたはSCAのどちらか、または両方のような複合体は、さらに別の機能部分、例えば、検出可能な標識またはタグと結合または複合体化している。
【0032】
本発明はまた、一本鎖抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、そのポリヌクレオチドを含む複製可能な発現ベクター、およびそれを発現するための適当な宿主細胞を提供する。
【0033】
本発明のSCAタンパク質は、任意の適当な本分野で公知の工程または方法によって製造されるが、好ましくは、本明細書に例示される通り、SCAをコードする発現ベクターを含む宿主細胞を培養し、さらにその宿主細胞によって発現された一本鎖抗原結合ポリペプチドを回収することによって製造される。
【0034】
本発明はさらに、部位特異的結合可能な2以上の一本鎖抗原結合ポリペプチドを含むタンパク質を、二量体、三量体、四量体などの形態の多価抗原結合タンパク質として提供する。
【0035】
本発明の多価タンパク質は、個々のSCAが共有結合または非共有結合リンカー、例えば、ペプチドリンカー、ジスルフィドリンカー、などによって連結される、本分野で公知の方法によって調製される。別の選択肢では、タンパク質は、非共有結合リンカーを用いて、構成的SCAポリペプチドを還元および再折りたたみすることによって組み立てられる。後者の選択肢では、構成的一本鎖抗原結合タンパク質またはポリペプチドのペプチドリンカーが、2から18残基の大きさであることが特に好ましい。
【0036】
本発明はさらに、単一の多価タンパク質としてコードされる構成的SCAポリペプチドの1つ以上に特定のCys残基を有する多価タンパク質を提供する。そのような一本鎖多価タンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の一部として考えられている。
【0037】
本発明のSCAおよびポリマー複合体を用いる方法もまた提供される。単に一例として、そのような方法の1つは下記の工程を含む:TNF−αを含む疑いのある試料を、本発明に記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドまたは多価タンパク質を含む試薬と接触させ、および、本発明に記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドまたは多価タンパク質がTNF−αと結合したか否かを検出する。有利なことに、本発明に記載のポリペプチドまたは多価タンパク質は、ポリアルキレンオキシドポリマーと結合している。
【0038】
上記の方法のすべてについて、複合体は、SCAまたはポリマーのどちらかにおいて、必要に応じて固相担体に固定される。
【0039】
哺乳類、例えばヒトにおいて疾患または病気を治療または診断する方法であって、本発明のTNF−α結合一本鎖抗原結合ポリペプチドの有効量を投与することを含み、一本鎖抗原結合ポリペプチドがTNF−αと結合しおよびTNF−α関連中毒を阻害するのに有効な量で投与される方法も提供される。本発明の一本鎖抗原結合ポリペプチドおよび/またはそのポリマー複合体は、約10μg/kgから約4,000μg/kgの範囲の量で、およびより好ましくは約20μg/kgから約800μg/kgの範囲の量で、およびさらに好ましくは約20μg/kgから約400μg/kgで、本分野で公知である全身経路によって投与され、用量は臨床反応を生じるために必要に応じて反復される。体腔内への潅流、吸入または鼻腔内経路による投与もまた、局所投与と共に、本発明の抗TNF−αポリペプチド,タンパク質およびポリマー複合体化合物から利益を受ける全身症状およびより局所的な症状を治療するために考えられている。そのような症状は、例えば、毒素性ショック症候群、および、抗TNF−α治療に反応する、本分野で公知である任意の他の炎症過程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
したがって、本発明は、ポリマー、例えば、実質的に非抗原性のポリマーへの部位特異的結合を促進するために選択された、操作された官能基を有する改良された抗TNF−α一本鎖抗原結合ポリペプチドおよび/またはそのようなポリペプチドから成る多価タンパク質を提供する。本発明のポリペプチドとポリマーとの複合体、およびそれを作製および使用する方法もまた提供される。
【0041】
本発明は概して、一本鎖抗原結合タンパク質(「SCA」)または抗体の一本鎖可変断片(「sFv」)が、適当なポリアルキレンオキシドポリマーとSCAポリペプチド上の特定位置で結合した場合、向上した性質を有するという発見に基づく。本発明のSCAは、そのような特異的位置での選択的なポリマー結合のための官能基を含むように設計される。ポリマー結合の利益は概して、in vivoでの抗原性の実質的低減、および動物またはヒト患者への投与後の循環半減期の延長を含む。本発明のSCAが望ましい性質の複合体をどのように提供するかに関するいかなる理論または仮説に縛られることを意図することなく、1または複数のポリペプチド鎖上の選択された位置に結合部位を設計することによって、結合ポリマーの存在による抗原結合機能および鎖三次構造との干渉が回避されるかまたは最小化されると信じられている。
【0042】
本発明の範囲をよりよく理解するため、下記の用語が定義される。「一本鎖抗原結合分子」(「SCA」)または「一本鎖Fv」(sFv)の語は別に記載されない限り本明細書では相互に交換可能に用いられる。「タンパク質」および「ポリペプチド」の語もまた、別に記載されない限り互換的に用いられる。概して、SCAは、抗体VH(またはVL)の可変領域に由来する第2ポリペプチドの結合部分と結合した、抗体VL(またはVH)の可変領域に由来する第1ポリペプチドの結合部分を含み、その2つのポリペプチドは第1および第2ポリペプチドを繋いで単一のポリペプチド鎖とするペプチドリンカーによって、第1ポリペプチドがリンカーに対してN末端となりおよび第2ポリペプチドが第1ポリペプチドおよびリンカーに対してC末端となるように連結されていると構造的に定義される。
【0043】
SCAはこのように、ポリペプチドリンカーによって結合された可変領域の一対を含む。その領域は、適切に対となった相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖および重鎖可変領域対を領域が含む場合のように、結合して機能的抗原結合部位を形成し得る。この場合、一本鎖タンパク質は概して「一本鎖抗原結合タンパク質」または「一本鎖抗原結合分子」または「一本鎖抗原結合ポリペプチド」と呼ばれる。上で定義される通り、SCAは必要に応じて「1価」または「多価」である。1価SCAは、単一の抗原結合部位、すなわち、抗原結合部位を形成するように結合するポリペプチドリンカーによって連結された1対の可変領域のみを含むように設計される。多価SCAは、2つ以上の抗原結合部位、すなわち、ポリペプチドリンカーによって結合された可変領域を2対以上含むように改変された抗原結合タンパク質であり、2つ以上の上記の一本鎖抗原結合ポリペプチドを含むSCAを含む。構成的SCA部分は本分野で公知である任意の方法によって結合している。
【0044】
一実施形態では、本発明に記載の多価結合タンパク質は、抗原結合タンパク質として完全に機能を維持するように非共有結合した2つ以上のSCAを含む。別の一実施形態では、多価結合タンパク質は、共有結合によって、例えば、本分野で公知であるペプチドまたは非ペプチドリンカー化学のいくつかのうちの1つによって結合している2つ以上のSCAを含む。さらに、例えば複数のSCAから成る多価結合タンパク質を、1価SCAに類似しているが同一かまたは異なる2つ以上の反復SCAドメインを有する単一のペプチド鎖として発現するかまたは合成によって構築することができる。
【0045】
SCAは、VLがN末端ドメインでありその後にリンカーおよびVHが続くように構築されている(VL−リンカー−VH構造)。別の一実施形態では、SCAは、VHがN末端ドメインでありその後にリンカーおよびVLが続くように構築されている(VH−リンカー−VL構造)。その好ましい実施形態は、VLをN末端ドメインに含む(Anand,N.N.,et al.,J.Biol.Chem.266: 21874-21879 (1991)を参照)。必要に応じて、複数のリンカーが用いられる。
【0046】
一本鎖抗原結合タンパク質の理論および製造の説明は、すべて参照により本開示に含まれる、Ladner et al.,米国特許第4,946,778号明細書、第5,260,203号明細書、第5,455,030号明細書および第5,518,889号明細書、およびHuston et al.,米国特許第5,091,513号明細書(「生合成抗体結合部位」(BABS))に見出される。上記の特許に従って製造されたSCAは、対応するFab断片と実質的に同様の結合特異性および親和性を有する。
【0047】
可変ドメイン(Fv)
本発明のSCAは、任意の望ましい天然または人工抗体から選択されるかそれに由来するかまたはそれを原型とした可変ドメイン(「Fv」)を用いて構築される。別の好ましい一実施形態では、本発明における用途のためのFvは、置換ライブラリとして構成されるFvライブラリから得られ、目的の結合標的に対してスクリーニングされる。単に一例として、Fvドメインを得るために多数のMabが本分野で用いられており、および、Fvドメインはこれらのうちの任意のものから得ることができ、および本発明のSCAに用いることができると考えられている。単に一例として、および無制限に、下記のMabがFvドメインを得るために用いられる:
26-10, MOPC 315, 741F8, 520C9, McPC 603, D1.3, murinephOx, human phOx, RFL3.8 sTCR, 1A6, Sel55-4, 18-2-3, 4-4-20, 7A4-1, B6.2, CC49, 3C2, 2c, MA-15C5/Kl2Go, Ox, etc. (See, Huston, J.S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85: 5879-5883 (1988); Huston, J.S. et al., SIM News 38 4 (Supp.): 11 (1988); McCartney, J. et al., ICSU Short Reports 10: 114 (1990); McCartney, J.E. et al., unpublished results (1990); Nedelman, M. A. et al., J. Nuclear Med.32 (Supp.): 1005(1991); Huston, J. S. et al., In: Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications, Part B, edited by J. J. Langone, Methods in Enzymology 203: 46-88 (1991); Huston, J. S. et al., In: Advances in the Applications of Monoclonal Antibodies in Clinical Oncology, Epenetos, A. A. (Ed.), London, Chapman & Hall (1993); Bird, R. E. et al., Science 242: 423-426 (1988); Bedzyk, W. D. et al., J. Biol. Chem. 265: 18615-18620 (1990); Colcher, D. et al., J. Nat. Cancer Inst. 82: 1191-1197 (1990); Gibbs, R. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88 : 4001-4004 (1991) ; Milenic, D. E. et al., Cancer Research 51: 6363-6371(1991) ; Pantoliano, M. W. et al., Biochemistrv 30: 10117-10125 (1991); Chaudhary, V. K. et al., Nature 339: 394-397 (1989); Chaudhary, V. K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 87: 1066-1070 (1990); Batra, J. K. et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 171: 1-6 (1990); Batra, J. K et al., J. Biol. Chem. 265: 15198-15202 (1990); Chaudhary, V. K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 87: 9491-9494 (1990); Batra, J. K. et al., Mol. Cell. Biol. 11: 2200-2205 (1991) ;Brinkmann, U. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88: 8616-8620 (1991); Seetharam, S. et al., J. Biol. Chem. 266: 17376-17381 (1991); Brinkmann, U. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 89: 3075-3079 (1992); Glockshuber, R. et al., Biochemistry 29: 1362-1367 (1990); Skerra, A. et al., Bio/Technol. 9: 273-278 (1991); Pack, P. et al., Biochemistry 31 : 1579-1534 (1992); Clackson, T. et al., Nature 352: 624-628 (1991) ; Marks, J. D. et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991) ; Iverson, B. L. et al., Science 249: 659-662 (1990); Roberts, V. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 87 : 6654-6658 (1990); Condra, J. H. et al., J. Biol. Chem. 265: 2292-2295 (1990); Laroche, Y. et al., J. Biol. Chem. 266: 16343-16349 (1991); Holvoet, P. et al., J. Biol. Chem. 266: 19717-19724 (1991); Anand, N. N. et al., J. Biol. Chem. 266: 21874-21879 (1991) ; Fuchs, P. et al., Bio/Technol. 9: 1369-1372 (1991); Breitling, F. et al., Gene 104: 104-153 (1991); Seehaus, T. et al., Gene 114:235-237 (1992); Taldcinen, K. et al., Protein Engng. 4 : 837-841 (1991); Dreher, M. L. et al., J. Immunol. Methods 139:197-205 (1991); Mottez, E. et al., Eur. J. Immunol. 21: 467-471 (1991); Traunecker, A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88: 8646-8650 (1991) ; Traunecker, A. et al., EMBO J.10: 3655-3659 (1991); Hoo, W. F. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 89: 4759-4763 (1993) 。上記の引用の全ては参照により本開示に含まれる。
【0048】
特に、米国特許第6,258,562号明細書によってD2E7として記載される抗TNF−αMAb、およびCarter P et al.,1992,Proc Natl Acad Sci (USA) 89: 4285−4289に記載される抗erbB−2 MAb(HERCEPTIN(登録商標))は、本発明に記載のSCAおよびSCA−ポリアルキレンオキシド複合体の作製のためのモデル例の役割を果たした。D2E7はHumira(登録商標)(Abbott Immunology,Abbott Park,Illinois)として市販されている。加えて、CC49 MabはLaboratory of Tumor Immunology and Biology,National Cancer Institute のDr.Jeffrey Schlomのグループによって開発された。それは汎癌腫瘍抗原TAG−72に特異的に結合する。Muraro,R.et al.,Cancer Research 48: 4588-4596 (1988)を参照。Filpula et al.1996 (Antibody Engineering: A Practical Approach,Oxford University Press,pp 253-268)に記載された抗TAG−72 CC−49SCAは、本発明に記載のCys−修飾SCAとしておよび典型的な複合体としても調製された。上記の引用の全ては参照により本開示に含まれる。
【0049】
ペプチドリンカー
本発明に記載のSCAは、VLのC末端、またはその隣接部位、およびVHのN末端、またはその隣接部位にわたるように、または、VHのC末端とVLのN末端とを連結するように設計されたペプチドリンカーを含む。
【0050】
リンカーの長さは、連結されるべきポリペプチドの性質、および連結の結果として生じる連結された融合ポリペプチドの目的の活性に依存することを当業者は理解する。一般的に、リンカーは、結果として生じる連結された融合ポリペプチドが適切に立体構造へ折りたたまれ、目的の生物活性すなわち抗原結合を与えることを可能にする長さを有するべきである。個別の具体例では、好ましい長さは連結されるべきポリペプチドの性質、および連結の結果として生じる連結された融合ポリペプチドの目的の活性に依存する。
【0051】
下記で考察するSCAポリペプチドの場合のように、立体構造情報が入手可能である場合は、適当なリンカーの長さは、置換ポリペプチドの三次元立体構造および結果として生じる連結した融合ポリペプチドの目的の立体構造の検討によって推定することができる。そのような情報が入手できない場合は、適当なリンカーの長さは、さまざまな長さのリンカーを有する連結された融合ポリペプチドを目的の生物活性について試験することによって経験的に決定することができる。そのようなリンカーは、参照により本開示に含まれる国際公開第94/12520号パンフレットに詳細に記載される。
【0052】
SCAポリペプチドを構築するのに用いられるペプチドリンカーは一般的に、大きさが長さ2から約50アミノ酸残基、および好ましくは、約2から約10残基の範囲にわたる。別のある実施形態では、リンカーは大きさが約10から約30残基の範囲にわたる。より好ましいある実施形態では、特に2つ以上の非共有的に結合したSCAポリペプチドを含む多価結合体に関する実施形態については、リンカーは大きさが約2から約20アミノ酸残基の範囲にわたることが好ましい。より好ましくは、そのようなリンカーはセリンに富むかまたはグリシンに富む。
【0053】
リンカーは柔軟性となるように設計され、および、交互のGlyおよびSer残基の基礎配列を用いることが推奨される。リンカーおよびそれと結合した一本鎖Fvタンパク質の溶解度を高めるために、3個の荷電残基すなわち2個の正に荷電したリジン残基(K)および1個の負に荷電したグルタミン酸残基(E)を含めることができる。好ましくは、リジン残基のうち1個はVHのN末端付近に配置され、リンカーとVHとのペプチド結合を形成する際に失われる正電荷の代替となる。そのようなリンカーは、参照により本開示に含まれる共有の米国特許第5,856,456号明細書によって詳細に記載される。参照により本開示に含まれるWhitlow,M.,et al.,Protein Engng.7: 1017-1026 (1994)も参照。
【0054】
本発明に記載の多価抗原結合タンパク質については、2つ以上のSCAポリペプチドの共有または非共有結合が、それらのタンパク質の形成のために好ましい。しかし、多価SCAを、長さ25残基のリンカーを用いてSCAから作製することができるが、それは不安定となる傾向がある。Holliger,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 90: 6444-6448 (1993)は、長さ0から15残基のリンカーが2価Fvの形成を促進することを近年実証している。参照により本開示に含まれる、Whitlow,M.,et al.,Protein Ensns 7 :1017-1026 (1994); Hoogenboom,H.R.,Nature Biotech.15: 125-126 (1997);および国際公開第93/11161号パンフレットを参照。
【0055】
部位特異的PEG化配列の同定および合成
本発明は、ポリペプチド(VL、VHまたはその隣接部位)のC末端、ポリペプチド(VL、VHまたはその隣接部位)のN末端、第1および第2ポリペプチド領域の間のリンカー領域、またはそれら領域の組合せの領域に隣接する、チオール官能基部分、例えば、VLおよびVH領域中の特定部位に位置するチオール含有アミノ酸残基を提供する。本発明では、ポリマー結合のための特異的部位が、ポリペプチドリンカーに、C末端に、またはSCAのC末端に隣接して、および好ましくは、リンカーの第2の残基に位置することが好ましい。
【0056】
チオールを含む官能基は、天然アミノ酸残基、および/または天然に存在しないアミノ酸残基を含む、本分野で公知の任意のものであることができ、およびそれらのチオール官能基化誘導体を有する。好ましい一実施形態では、チオール官能基部分はシステイン残基である。SCA タンパク質は通常は2個の埋め込まれたジスルフィド結合を有するが (Padlan EA,1994,Antibody-Antigen Complexes,R.G.Landes Company,Austin)、しかし遊離システインを有しないため、このことは好ましい。したがって、改変されたCysチオールだけが、チオールとの反応に選択的である活性化ポリマーとの結合に利用可能である。
【0057】
Cys部位をさまざまな位置へ導入するために用いられる特定のヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド配列に依存する。最も好ましい部位は、Cys挿入を生じるために必要な変化の数が最小である一方で上述の立体構造の必要条件もまた満たす部位である。もちろん、遺伝コードの重複に基づき、特定のアミノ酸が複数のヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0058】
天然のタンパク質配列を、Cys残基を組み込んだものに変えるために、部位特異的突然変異誘発のための本分野で公知である任意の適当な方法が用いられる。突然変異タンパク質遺伝子は、細菌細胞、酵母または他の真菌細胞、昆虫細胞または哺乳類細胞といった他の発現系へ入れられる。突然変異タンパク質はその後、タンパク質の回収のための標準的な方法によって精製される。
【0059】
好ましくは、SCAムテインを発現している核酸分子は、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によって作製される。部位特異的Cysムテイン (Cys mutain)を作製するためのそのような方法およびクローンDNAの突然変異誘発のための関連する方法は、本分野でよく知られている。共に参照により本開示に含まれる、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989) ; Ausubel et al.(eds.)、 CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley and Sons (1987)を参照。
【0060】
宿主およびベクター
目的のSCAのヌクレオチド配列を突然変異させて希望の位置にCys残基を提供した後、突然変異させた核酸は好ましくは適当なクローニングベクターへ挿入され、そこでSCAをコードするヌクレオチドは転写発現を調節する調節配列へ調節可能に結合される。これらは、希望の宿主細胞系からのSCA産生を最適化するために、好ましくは本分野で公知である方法によって選択される。
【0061】
SCAは原核または真核宿主細胞によって発現されおよび産生されることが知られているが、多くの目的のためには真核宿主細胞が好ましい。好ましい原核宿主は、バチルス、ストレプトミセス、ストレプトコッカス、および/またはEscherichia coliといった細菌を含むがそれらに限定されない。好ましい真核宿主細胞は、酵母または他の真菌細胞、昆虫細胞および/または哺乳類細胞を含む。好ましくは、これらは、in vivo、または組織培養中のどちらかに存在する、ヒトまたは霊長類細胞を含む。より好ましくは、本発明のSCAはPichia pastorisといった形質転換酵母によって産生される。発現ベクターは、宿主細胞において一過性発現を提供するように、または宿主細胞ゲノムと一体化して形質転換細胞株を生じるように任意に選択される。
【0062】
標準的なタンパク質精製法を用いてこれらの突然変異タンパク質が精製される。天然タンパク質精製方法へのわずかな改変だけが必要であり得る。例えば、ベクター、宿主の選択、タンパク質、特にSCAポリペプチドの1価、多価および融合形の産生、単離および精製の方法は、例えば、参照により本開示に含まれる共有の米国特許第4,946,778号明細書および米国特許第6,323,322号明細書によって十分に記載されている。
【0063】
好ましい一実施形態では、目的のSCAおよび選択マーカーをコードする核酸分子は宿主細胞染色体中へ、単一のベクターまたは同時導入される複数のベクターとして導入される。マーカーは、宿主における栄養要求性(例えば一般的な酵母栄養要求性マーカーであるhis4、leu2、またはura3)、例えば抗生物質といった殺生物物質耐性、または銅といった重金属に対する耐性、などを補足し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現すべきSCA DNA配列と直接結合しているか、または同時トランスフェクションによって同一の細胞へ導入される。導入された核酸を安定して組み込んでいる細胞は、所定の系における生存またはマーカーのその他の効果によって選択される。
【0064】
別の一実施形態では、目的のSCAは、レシピエント宿主細胞における自律的複製の能力を有する適当なプラスミドベクターによってコードされる。本分野で公知である幅広いベクターのうち任意のものをこの目的に用いることができる。特定のプラスミドまたはウイルスベクターの選択における重要な要素は下記を含む:ベクターを含むレシピエント細胞が、ベクターを含まないレシピエント細胞から識別されおよび選択されることの容易さ;特定の宿主中で望まれるベクターのコピー数;および異なる種の宿主細胞間でベクターを「往復」することができることが望ましいかどうか。
【0065】
一連の酵母ベクター系のうち任意のものを利用することができる。そのような発現ベクターの例は、酵母2ミクロンサークル、発現プラスミドYEP13、YCPおよびYRPなど、またはそれらの誘導体を含む。そのようなプラスミドは本分野でよく知られている(Botstein et al.,Miami Wntr.Sump.19:265-274 (1982); Broach,J.R.,In: The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces : Life Cycle and Inheritance,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,p.445-470 (1981); Broach,J.R.,Cell 28: 203-204 (1982)) 115。
【0066】
哺乳類宿主については、本分野で公知であるいくつかのベクター系を利用可能である。ある種類のベクターは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、またはSV40ウイルスといった動物ウイルスに由来する、自律的に複製する染色体外プラスミドを提供するDNA配列を利用する。別の種類のベクターは、目的の遺伝子配列の宿主染色体への組み込みを基にする。導入されたDNAを染色体に安定して組み込んでいる細胞は、上記で考察した通り、マーカーによって選択される。mRNAの最適な合成のためには追加の配列もまた必要である。これらの配列は、スプライスシグナル、および転写プロモーター、エンハンサー、および終止シグナルを含む。そのような配列を組み込んだcDNA発現ベクターは、Okayama,H.,Mol.Cell.Biol.3: 280 (1983)に記載されたもの、および本分野によく知られているものを含む。
【0067】
ベクターの中でも、細菌における使用のために好ましいベクターは、Qiagenより入手可能なpQE70、pQE60およびpQE−9;Stratageneより入手可能なpBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;およびPharmaciaより入手可能なptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5を含む。好ましい真核ベクターには、Stratageneより入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTlおよびpSGa;およびPharmaciaより入手可能なpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVLがある。Pichiaにおける発現に好ましいベクターは、pHIL−S1(Invitrogen Corp.)およびpPIC9(Invitrogen Corp.)である。他の適当なベクターは当業者に容易に明らかとなる。
【0068】
その構造を含むベクターまたはDNA配列が発現のために一旦調製されると、そのDNA構築物は適当な宿主へ導入され、または形質転換され得る。形質転換、トランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈澱、エレクトロポレーション、または他の従来の方法といったさまざまな技術が使用可能である。細胞が組換えDNA(またはRNA)分子で形質転換された後、細胞を培地中で増殖させ、および適当な活性についてスクリーニングする。その配列の発現は、結果として本発明のPEG結合のための突然変異SCAの産生を生じる。
【0069】
SCAタンパク質の産生および精製
本発明の1価または多価抗原結合タンパク質は、本分野で公知である適当な任意の方法によって産生することができる。概して、その方法は、適当な発現ベクターを作製すること、そのベクターを適合する宿主細胞中で発現させること、宿主細胞を培養することおよび、目的のタンパク質を回収することを含む。
【0070】
組換えタンパク質を培地中へ分泌することができない原核細胞または他の培養細胞における発現については、回収は採取した細胞からである。採取された細胞物質は、細胞溶解および洗浄、形成された封入体の適合する変性溶媒中での可溶化、機能する結合タンパク質への再折りたたみを与えるために有効である条件下での希釈による再折りたたみ、および2つのイオン交換HPLCクロマトグラフィー工程に供される。好ましい原核発現系は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)(「E.coli」)を含む。例えば、また参照により本開示に含まれる、米国特許第4,946,778号明細書、第5,260,203号明細書、第5,455,030号明細書、第5,518,889号明細書、および第5,534,621号明細書、およびBirdet al.,Science 242: 423 (1988)を参照。
【0071】
例示されたSCAタンパク質の発現に関する最初の研究は、Xoma Corporationから入手したE.coli発現系を使用した(araBプロモーターおよびpelBシグナル)。SCAタンパク質の発現に成功した。しかし、Xoma Corp.系によって発現されたタンパク質は、周辺質(periplasm)中で細胞に結合したまま留まり、および追加の精製工程を必要とした。
【0072】
より好ましい発現系は、真核宿主細胞および、分泌シグナル配列を有する発現ベクターを用いる。この好ましい実施形態は、E.coli宿主細胞からの不溶性の封入体として、発現されたSCAを回収する必要性を回避する。
【0073】
必要な場合には、グリコシル化。酵母における目的タンパク質の産生に用いることができる、強力なプロモーター配列およびプラスミドの大きいコピー数を利用する、いくつかの組換えDNA戦略が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳類遺伝子産物上のリーダー配列を認識し、およびリーダー配列を有するペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。
【0074】
このため、本明細書で例示するSCA タンパク質はすべて、酵母Pichia pastorisからの分泌によって発現されおよび溶液から回収された。
【0075】
D2E7 MAb可変ドメインを有するSCAタンパク質
特に好ましい一実施形態では、本発明に記載のSCAがD2E7 Mabの可変ドメインを用いて開発された。D2E7 Mabは、Cambridge Antibody TechnologyおよびBASF Corporationによって開発された。それはヒトサイトカイン、腫瘍壊死因子α(TNF−α)と特異的に結合し、およびそのMabは、参照により本開示に含まれる米国特許第6,09,0382号明細書、米国特許第6,258,562号明細書によって詳細に記載される。この抗体の選択されたドメインは、それぞれのポリペプチド配列中へ特定の位置に組み込まれた1つ以上のCys残基を有するいくつかの典型的なSCA分子を調製するためのモデルの役割を果たした。
【0076】
要約すると、完全に合成された遺伝子がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、長さが20塩基から102塩基の範囲にわたる14種類の長い重複する合成オリゴヌクレオチドを用いて構築された。オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発がさらに用いられ、もとの配列の他の変異体を構築した。結果として生じるベクターによってコードされるSCAは、ペプチドリンカーによって結合した、D2E7 Mabの完全な可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)部分を含む。例示されたリンカーは、「218リンカー」で表される18残基リンカー、および15残基リンカーであった。
【0077】
18アミノ酸の「218リンカー」は、Filpula et al,1996,Antibody Engineering : A Practical Approach,1996,Oxford University Press,pp 253-268)に記載されている。長さ15アミノ酸の(GGGGS)3リンカー(配列番号42)は、Huston JS et al,1988,Proc Natl Acad Sci (USA) 85:5879-5883に記載されている。一部の場合には、C末端にヒスチジン6個のタグ(his6)(配列番号43)が、金属固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)による精製を簡略化するために含められた。完成した遺伝子は、Applied Biosystems (Foster City,California)からのABI PRISM(登録商標)310 Genetic Analyzer (以前はABI/Perkin−Elmerによって製造)でのDNA配列確認のために、E.coliプラスミドへクローニングされた。ドメイン方向、リンカー、および遊離システインの配置を下記の表1に要約する。
【表1】
【0078】
上記の表1によって要約される通り、図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hおよび1−Iは、上の9つの遺伝子のDNAおよびコードされるポリペプチド配列を示す。
【0079】
SCAタンパク質の組換え発現および精製
上述の通り、上に記載したSCA変異タンパク質の産生のためにPichia pastorisが用いられた。酵母α接合因子由来のシグナル配列が、これらのSCAタンパク質それぞれについての成熟コード配列の直接前に挿入された。このシグナルペプチドのアミノ酸配列はMet Arg Phe Pro Ser Ile Phe Thr Ala Val Leu Phe Ala Ala Ser Ser Ala Leu Ala^ Ala (配列番号36)であり、「^」は切断部位を示す。そのシグナルの20番目のアミノ酸(^の次のアラニン)もまたこれらの構造に含められた。したがって、成熟SCAタンパク質のアミノ末端はこのアラニンを含み、例示されたSCAのそれぞれにおいて、図2A〜2H(配列番号1〜9)によって図示される完全なアミノ酸配列がそれぞれ続く;表1に列挙する通り)。N末端タンパク質配列分析は、これらの配列は正しくプロセシングされたことを確認した。D2E7 SCAを発現する突然変異遺伝子を、Pichia転移プラスミドpHIL−D2(Invitrogen Corp.)中にEcoRI部位で個別にライゲーションさせ、および酵母Pichia pastoris宿主GS−115へ形質転換した。
【0080】
これらの手続のための詳細な手順書は、参照により本開示に含まれるInvitrogen CorporationからのPichia発現キット取扱説明書カタログ番号X1710−01(1994)に示される。発現の最初の評価は、SDS−PAGEゲルのクマシーブルー染色によって実施した。個々のSCAタンパク質に関して、Pichia発現株についてのクローン番号は、前出の表1の2−7−SC番号に対応する。
【0081】
SCAタンパク質(〜27kDa)は、組換えPichiaにおいて高いレベルで発現されおよび分泌された(約20〜100mg/L)。還元剤の非存在下でのSDS−PAGEゲルについての分析は、単量体および2個の単量体の単一のジスルフィド架橋によって形成される二量体の両方の、予想された存在を実証した。精製2−7−SC−1SCAタンパク質に対するウサギ抗血清を調製した。この試薬を用いたウェスタン分析は、発現されたSCAタンパク質の同一性を立証した。
【0082】
例えば、図8はD2E72−7−SC−2およびPEG化型の代表的なウェスタンブロット分析を示し、組換えSCAタンパク質およびPEG−SCA複合体とのこの抗D2E7抗血清の反応性を確認する。抗218−リンカー抗体を使用した。各試料の1μgを、4〜20%非還元SDS−PAGEゲルで分析した。一次および二次抗体は、それぞれ、ウサギで作製した抗18−リンカー抗体、およびヤギ抗ウサギ抗体結合ホースラディッシュペルオキシダーゼであった。酵素基質は、Moss,InからのTMBMペルオキシダーゼ基質であった。D2E7 2−7−SC−2はC末端にPEGを有し、および2−7−SC−5は218リンカーにPEGを有する。バンドAは2−7−SC−2であり、バンドBは2−7−SC−5であり、バンドCはPEG(20k)−2−7−SC−2であり、バンドDはPEG(20k)−2−7−SC−5であり、バンドEはPEG(40k)−2−7−SC−2であり、バンドFはPEG(40k)−2−7−SC−5である。
【0083】
SCAタンパク質は上清から純度95%超へ、単純な2または3のカラムクロマトグラフィー手順によって精製された。his6タグ(配列番号43)を有するSCAタンパク質については、透析した発酵培地をダイアフィルトレーションに供しおよびDEAEカラムを通し、次いでIMACニッケル親和性カラム(QIAGEN)に結合させた。結合したSCAタンパク質はイミダゾールを用いて溶出し、次いで第2のDEAE陰イオン交換カラムを通した。素通り画分を、SCAタンパク質の濃縮のためにダイアフィルトレーションに供し、およびさらに特徴づけを行った。his6タグ(配列番号43)を欠くSCAタンパク質については、SCAタンパク質は、Pierce Biotechnology,Inc (Rockford,Illinois)から入手したプロテインL−アガロースカラムで低pH溶出を用いて精製したか、またはAmersham Pharmacia (Piscataway,NJ)から入手したHS陽イオン交換クロマトグラフィーに捕捉し、次いで塩濃度勾配溶出およびダイアフィルトレーションを実施した。HSクロマトグラフィーが好ましい方法であった。
【0084】
図2Aおよび2Bは、クローン2−7−SC−2についての代表的な発現および精製データを示し、画分のクマシーブルー染色によるSDS−PAGEゲル分析、および各工程での収率を含む。少量の54kDaジスルフィド結合二量体が染色ゲルに見られる。
【0085】
チオール特異的活性化ポリマー
好ましくは、本発明のSCAはチオール特異的活性化ポリマーに結合している。具体的には、本発明に好ましくは使用される活性化ポリマーは、スルフヒドリル−またはチオール−選択性末端結合基を、その少なくとも一方の末端に有するものである。本分野で公知であるいくつかの活性化ポリマー、例えば、遊離チオールと反応するポリアルキレンオキシド(PAO)ポリマーが、本発明の実施に容易に用いられる。反応基の例は、マレイミド、ビニルスルホン、チオール、オルトピリジルジスルフィド、およびヨードアセトアミドを含み、マレイミド基がチオールに対して高度に特異的であることおよび結合反応が穏和な条件下で起こることから見てマレイミド活性化ポリエチレングリコール(PEG−mal's)が好ましい。また、例えば、参照により本開示に含まれる共有の米国特許第5,730,990号明細書を参照。別のスルフヒドラル選択的活性化PEG−ポリマーが、参照により本開示に含まれる2001Shearwater Corporationカタログに図解の通り(前Shearwater Corporation)から入手可能である。また、参照により本開示に含まれるGoodson,R.J.& Katre,N.V.1990,Bio/Technology 8: 343; Kogan,T.P.1992,Snythetic Comm.22,2417を参照。
【0086】
例えば、本発明のSCAと結合した、直鎖ポリマーmPEG−MAL(5kDa)(例えば、Shearwaterカタログ番号2D3XOT01)およびmPEG−MAL(20kDa)、および分枝鎖ポリマーmPEG2−MAL(40kDa)(例えば、Shearwaterカタログ番号2D2MOH01)複合体が本明細書で例示される。これらのマレイミド−PEGポリマーの構造、および共役化学を、便宜のために図3A〜3Eに示す。図3FはmPEG−ビニルスルホンを示す。さまざまなマレイミド活性化ポリマーは、図3Eに示す通り、遊離チオールと容易に反応する。図3Eでは、「SCA」は、少なくとも1つの遊離チオール(S−H)を有する本発明に記載のタンパク質である。下記の表2を参照。
【表2】
【0087】
スルフヒドリル特異的リンカーを含み得る他のポリマー基本骨格は、同一出願人による米国特許第5,643,575号明細書、米国特許第5,919,455号明細書、米国特許第6,113,906号明細書(U−PEG)、米国特許第6,153,655号明細書および米国特許第6,395,266号明細書(末端分岐PEG)、米国特許第6,251,382号明細書(ポリPEG)および米国特許出願公開第10/218,167号明細書(ビシン)などで開示されたものを含む。また、Shearwater Polymers,Inc.カタログ『Polyethylene Glycol and Derivatives 2001』も参照。前記のそれぞれの開示は、参照により本開示に含まれる。
【0088】
上述の通り、複合体のポリマー部分は好ましくはポリアルキレンオキシドである。より好ましくは、ポリマー部分は、実質的に非抗原性であるポリエチレングリコールである。PAOおよびPEGは重量平均分子量において相当に異なり得るが、本発明の組成物に含まれるものは、独立して、約2,000Daから約136,000Daの重量平均分子量を本発明の大部分の態様で有する。より好ましくは、ポリマーは約3,000Daから約100,000Daの重量平均分子量を有する。非常に好ましくは、ポリマー部分は約5,000Daから約40,000Daの重量平均分子量を有する。
【0089】
本明細書に含まれるポリマー物質は、好ましくは 室温にて水溶性である。そのようなポリマーの非限定的な一覧は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオールといったポリアルキレンオキシドホモポリマー、その共重合体およびそのブロック共重合体を含み、ただしブロック共重合体の水への溶解度が維持されることを条件とする。
【0090】
マレイミドポリマーの、遊離システインとの、しかしリジンまたはヒスチジンとではない特異的な反応性の確認は、これらの各遊離アミノ酸とのマレイミドの反応によって達成された。
【0091】
図4は、活性化PEG−MALとのシステインの反応性を確認する。3mM溶液としてのシステインについての吸収が曲線Aで表される。濃度1mMでの活性化PEG−MALについての吸収曲線は曲線Cで示され、および300nmを中心とする幅広い吸収ピークによって特徴づけられる。吸収曲線Bは、システインおよび活性化PEG−MALを1:3比で合わせた溶液について取った(1mM PEG−MALおよび3mMシステイン、100mMリン酸ナトリウム、pH6.0、1mM EDTA、25℃)。B曲線はA曲線を右にシフトしてたどるが、PEG−MALの特徴的な300nMの幅広ピークは存在せず、活性化PEG−MALとのシステインの反応性を確認する。ヒスチジンまたはリジンについての類似の吸収曲線(記載せず)が、使用した条件下ではこれらの残基は高度に反応性ではないことを確認する。
【0092】
標識化またはタグ化複合体
本発明に記載のポリアルキレンオキシド結合SCAの製造に際して、複合体は、診断薬または治療薬をSCA−ポリマー複合体へ結合または複合化することによって、必要に応じてさらに修飾される。本発明に記載の抗体複合体を調製する一般的方法は、参照により本開示に含まれるShih,L.B.,et al.,Cancer Res.51: 4192 (1991) ; Shih,L.B.,and D.M.Goldenberg,Cander Immunol.Immunother.31: 197 (1990); Shih,L.B.,et al.,Intl.J.Cancer 46 : 1101 (1990); Shih,L.B.,et al.,Intl.J.Cancer 41 : 832 (1988)に記載される。間接的な方法は、ポリアルキレンオキシドが官能基を有する抗体(またはSCA)を、1または複数の生物活性分子、例えば、ペプチド、脂質、核酸(すなわち、リン酸−リジン複合体)、医薬、毒素、キレート剤、ホウ素添加剤、または検出可能な標識分子を有するキャリヤーポリマーと反応させることを含む。
【0093】
一部の別の実施形態では、ポリアルキレンオキシド結合SCAが診断薬または治療薬と直接に複合体化または結合される。一般的手順は、診断薬または治療薬が酸化されたsFv部分へ直接結合される以外は、複合体化の間接法と同様である。参照により本開示に含まれるHansen et al.,米国特許第5,443,953号明細書を参照。
【0094】
医薬組成物およびSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の投与
本発明の医薬組成物は、本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の「治療上有効な量」または「予防的に有効な量」を含み得る。「治療上有効な量」は、目的の治療結果を達成するために、必要な投与量および期間にわたる、有効な量をいう。SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の治療上有効な量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重といった要素、および抗体または抗体部分がその個体において目的の反応を導く能力に応じて変化し得る。治療上有効な量はまた、抗体または抗体部分の毒性または有害な作用を治療上の有益な作用が上回る量である。「予防的に有効な量」は、目的の予防結果を達成するために、必要な投与量および期間にわたる、有効な量をいう。典型的には、予防的用量は疾患以前にまたは疾患のより早期の段階で用いられるため、予防的に有効な量は治療上有効な量より少なくなる。
【0095】
投与計画は、最適な望ましい反応(例えば治療的または予防的反応)を与えるように調整し得る。例えば、単回ボーラスを投与することができ、いくつかの分割用量を啓示的に投与することができ、または治療状況の要件によって指示される通りに用量を比例的に低減または増加することができる。非経口 組成物を単位用量剤形で処方することは、投与の容易さおよび投与量の均一性のために特に有益である。ここで用いられる単位用量剤形とは、治療すべき哺乳類対象のための単位用量として適している物理的に別個の単位をいい;各単位は目的の治療効果を生じるよう計算された規定量の活性化合物を、必要な医薬キャリヤーと共に含む。本発明の単位用量剤形についての規格は、(a)活性化合物の独自の特徴および達成すべき特定の治療的または予防的効果、および(b)そのような活性化合物を各対象の感受性の治療のために混合することの本分野に内在する制限に決定されおよびそれらに直接依存する。
【0096】
本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の治療上または予防的に有効な量の、典型的な、非限定的な範囲は、0.1〜20mg/kg、より好ましくは1〜10mg/kgである。用量の値は、緩和すべき症状の種類および重症度に伴って変化し得ることに注意する。さらに、いずれの特定の対象についても、具体的な投与計画は、個別の必要性、および組成物の投与を実施または監督する者の専門的判断に従って、経時的に調整すべきであること、および、本明細書に示す投与量範囲は単なる例でありおよび請求される組成物の範囲または実施を制限しないことが意図されることを理解すべきである。
【0097】
医薬組成物
好ましい別の一実施形態では、本発明のSCAは、目的の特定のSCAタンパク質の結合特異性に関係する症状を治療および/または診断するために用いられる。したがって、SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、本分野で公知である方法によって、投与されるSCAの結合特性が疾患または障害の治療に有用である疾患または障害を有する動物または人へ投与される。好ましくは、SCAは本発明にしたがってポリマー結合される。
【0098】
本発明のSCAおよび複合体化SCAは、例えば投与を必要とする動物または人のような対象への投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。典型的には、その医薬組成物は、少なくとも1種類の結合特異性を有するSCAポリペプチド、および医薬品として許容されるキャリヤーを含む。
【0099】
「医薬品として許容されるキャリヤー」は、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、例えば、抗細菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、などを含む。医薬品として許容されるキャリヤーの例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せのうちの1つ以上を含む。多くの場合で、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールといったポリアルコール、または塩化ナトリウムを、組成物に含むことが好ましい。医薬品として許容されるキャリヤーはさらに、抗体または抗体部分の保存期間または有効性を増大する、湿潤剤または乳化剤、保存料または緩衝液といった補助的物質の微量成分を含み得る。
【0100】
本発明の組成物は必要に応じてさまざまな形に調製される。これらは、例えば、液剤(例えば注射用および輸液用溶液)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、リポソームおよび坐剤といった、液体、半固体および固体剤形を含む。好ましい剤形は目的の投与様式および治療用途に依存する。典型的な好ましい組成物は、他の抗体を用いる人の受動免疫化に用いられるものと同様の組成物といった、注射用または輸液用液剤の形である。好ましい投与様式は非経口である(例えば、静脈、皮下、腹腔内、筋肉内)。
【0101】
好ましい一実施形態では、SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は静脈輸液または注射によって投与される。別の好ましい一実施形態では、抗体は筋肉内または皮下注射によって投与される。スプレー、エアロゾルまたはミストとしての吸入による投与もまた、例えば全身吸収および/または呼吸系内での局所作用のために、その経路が有利である場合に考慮される。
【0102】
治療用組成物は典型的には、製造および保存の条件下で、無菌および安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム、または高い医薬濃度に適した他の規則的構造として処方することができる。無菌注射液は、活性化合物(すなわち,抗体または抗体部分)を、上で挙げた成分の1または組合せを含む適当な溶媒に必要に応じて組み込み、次いで滅菌ろ過を実施することによって調製することができる。
【0103】
一般的に,分散液は、活性化合物を、基礎分散媒および上で挙げたものからの必要な他の成分を含む無菌賦形剤に組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末剤の場合には、調製の好ましい方法は、あらかじめ滅菌ろ過した溶液から活性成分および他の目的の成分の粉末を与える、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンといったコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。注射用組成物の遅い吸収は、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンといった、吸収を遅らせる物質を組成物に含めることによって実現できる。
【0104】
本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、本分野で公知であるさまざまな方法によって投与することができるが、多くの治療用途については、好ましい投与経路/様式は静脈注射または輸液である。当業者に理解される通り、投与経路/様式は目的とされる結果に応じて変化する。
【0105】
一部の実施形態では、本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、例えば、不活性な希釈剤または吸収できる食用のキャリヤーと共に、経口投与することができる。SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体(および必要に応じて他の成分)は、必要に応じて、硬質または軟質ゼラチンカプセルに封入されるか、錠剤に圧縮されるか、または対象の食事に直接組み込まれる。治療的な経口投与のためには、化合物は添加物と組み合わされおよび経口錠、舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁剤、シロップ、ウエファーなどの形で用いることができる。本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体を非経口投与以外によって投与するためには、その化合物を、不活性化を防ぐ物質でコーティングするかまたはそれと同時投与する必要があり得る。
【0106】
補助的な活性化合物もまた医薬組成物に組み込むことができる。一部の実施形態では、本発明のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、疾患または障害に対して相加的、相乗的または補完的な治療活性または診断活性を提供する、1つ以上の追加の治療剤と共に処方されおよび/または同時に投与される。
【0107】
抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体の投与
例えば、本発明の抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、他の標的を結合する1つ以上の別の抗体またはSCA(例えば、他のサイトカインを結合するもの、または細胞表面分子を結合するもの)、1つ以上のサイトカイン、可溶性hTNF−α受容体(例えば、国際公開第94/06476号パンフレット)および/またはhTNF−α産生または活性を阻害する1つ以上の化学物質(例えば国際公開第93119751号パンフレットに記載されたシクロヘキサン−イリデン誘導体)と共に処方および/または同時に投与することができる。さらに、本発明の1つ以上のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、前記の治療剤の2つ以上と組合せて用いることができる。そのような併用治療は、有利なことに、個別に投与された治療剤の、より低い用量を利用し得る。
【0108】
抗TNF−α SCAの適応および好ましい同時投与剤
単に一例として、参照により本開示に含まれる米国特許第6,258,562号明細書および第6,090,382号明細書は、TNF−αが疾患過程の一次または他の面の媒介因子または共媒介因子である疾患および障害の網羅的一覧を提供する。そのような疾患または障害を治療または緩和するための本分野で公知であるである薬剤が、本発明のSCAおよび/またはポリマー結合SCAの抗TNF−α実施形態と共に処方または同時投与されることが考えられている。要約すると、TNF−αによって媒介されるかまたはその作用と関連する、およびしたがって、必要に応じて本分野で公知である他の治療剤と併用して、TNF−α結合物質によって合理的に治療される疾患および障害の一覧は、米国特許第6,258,562号明細書によって例えば、敗血症、自己免疫疾患、感染症、移植/拒絶、悪性腫瘍、呼吸器障害および腸障害を含むと記載されている。
【0109】
これらの適応症および、適用可能な場合には、そのような適応症の治療において抗TNF−α SCAと必要に応じて同時処方される薬剤は、下記の通りである。
【0110】
敗血症。
【0111】
敗血症に随伴する治療可能な症状は、TNF−α媒介性敗血性ショック症候群、および随伴する低血圧、心筋抑制、血管漏出症候群、臓器壊死、毒性二次媒介因子の放出の刺激および凝固カスケードの活性化、内毒素性ショック、グラム陰性敗血症および毒素性ショック症候群を含む。
【0112】
自己免疫疾患
自己免疫疾患に随伴する治療可能な症状は、慢性関節リウマチにおける組織炎症および関節破壊、糖尿病における膵島細胞死およびインシュリン抵抗性、多発性硬化症における希突起膠細胞に対する細胞毒性および炎症性プラークの誘導を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと共に処方または同時投与することが考えられている薬剤は、ほんの数例を挙げると、例えば、副腎皮質ステロイド、非ステロイド抗炎症薬(NSAID);サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);CDP−57111BAY−10−3356(ヒト化抗TNF−α抗体;Celltech/Bayer);cA2(キメラ抗TNF−α抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG(75kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;Immunex;例えば、Arthritis&Rheumatism(1994)Vol.37.S295 ; J.Invest Med.(1996) Vol.44 235Aを参照);55kdTNFR−IgG(55kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffinann−LaRoche);IDEC−CE9.I/SB210396(非減少性霊長類化抗CD4抗体;IDEC/SmithKlineを含む、そのような自己免疫障害を治療するために利用可能な任意の本分野で公知の薬剤を含む。
【0113】
感染症
感染症に随伴する治療可能な症状は、TNF−α−媒介性脳炎症、マラリアにおける毛細管血栓症および梗塞、髄膜炎における静脈梗塞、感染症例えばHIVウイルス感染に二次的なカヘキシー、HIV感染におけるウイルス増殖の刺激および中枢神経系傷害、インフルエンザといった感染症が原因の発熱および筋肉痛)を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと同時処方または同時投与することが考えられている薬剤は、本分野で公知である任意の、例えば、抗生物質、抗細菌剤、抗ウイルス剤などといった抗感染剤、および非ステロイド抗炎症薬(「NSAID」)および/または感染物質および/またはその毒素または本質的成分と結合する抗体またはSCAを含む。
【0114】
移植
移植医療、移植片の拒絶、または必要な免疫抑制剤の副作用に随伴する治療可能な症状は、移植関連効果のほんの数例を挙げると、TNF−α媒介性同種移植片拒絶および移植片対宿主病(GVHD)、を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと同時処方または同時投与することが考えられている薬剤は、例えば、OKT3誘導性反応を阻害する、副腎皮質ステロイド、シクロスポリンA、FK506、および/またはOKT3、および、CD25(IL−2受容体−a)、CD11a(LFA−1)、CD54(ICAM−1)、CD4、CD45、CD28/CTLA4、CD80(B7−1)および/またはCD86(B7−2)への抗体またはSCA結合といった免疫細胞受容体への結合に向けられる結合物質を含む。
【0115】
悪性腫瘍
悪性腫瘍に随伴する治療可能な症状は、悪性腫瘍におけるTNF−α−媒介性悪液質(TNFα-mediated cachexia)、腫瘍増殖、転移可能性および細胞毒性を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと同時処方または同時投与することが考えられている薬剤は、本分野で公知である任意の抗腫瘍または抗癌剤を含む。
【0116】
肺障害
肺障害に随伴する治療可能な症状は、成人呼吸窮迫症候群、ショック肺、慢性肺炎、肺サルコイドーシス、肺線維症および珪肺症を含む。肺障害については、本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAは必要に応じて経口または鼻腔内スプレーによって投与され、または、任意の標準的な吸入系によるエアロゾルとしての投与のために処方される。そのような処方は、そのような肺疾患または障害を治療するのに適した他の薬剤、またはSCA処方の気管支への接近を促進する薬剤と同時に処方または投与することができる。
【0117】
腸障害
腸障害に随伴する治療可能な症状は、例えば、クローン病および/または潰瘍性大腸炎といった、炎症性腸障害の範囲を含む。本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはポリマー結合SCAと同時処方または同時投与することが考えられている薬剤は、ブデソニド;上皮増殖因子;副腎皮質ステロイド;シクロスポリン、スルファサラジン;アミノサリチル酸;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼ阻害因子;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;抗酸化剤;トロンボキサン阻害因子;IL−1受容体拮抗因子;抗IL−1βMAb;抗IL−6MAb;増殖因子;エラスターゼ阻害因子;ピリジニル−イミダゾール化合物;CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNF−α抗体;Celltech/Bayer);cA2(キメラ抗TNF−α抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG(75kDTNF受容体IgG融合タンパク質;Immunex;55kdTNFR−IgG(55kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);インターロイキン−10(SCH52000;Schering Plough);IL4;IL−10および/またはIL4作用因子(例えば、作用因子抗体);インターロイキン−11;プレドニゾロン、デキサメタゾンまたはブデソニドのグルクロニド−またはデキストラン−結合プロドラッグ;ICAM−1アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS2302;Isis Pharmaceuticals,Inc.);可溶性補体受容体1(TP10 ; T Cell Sciences,Inc.);徐放性メサラジン;メトトレキサート;血小板活性化因子(PAF)の拮抗因子;シプロフロキサシン;およびリグノカインを含む。
【0118】
診断法および測定法:抗TNF−α SCAまたはSCA−複合体
本発明の抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体は、従来のイムノアッセイを用いて、血清または血漿または他の臨床標本を含む生物試料中といった目的の試料中のhTNF−αを検出するのに用いることができる。これらは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)または組織免疫化学法を含む。
【0119】
本発明は、生物試料を本発明の抗体または抗体部分と接触させること、およびhTNF−αと結合した抗体(または抗体部分)または非結合SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体を検出し、それによって生物試料中の生物試料中のhTNF−αを検出することを含む、hTNF−αを検出するための方法を提供する。結合または非結合抗体の検出を円滑にするため、SCAは検出可能な物質を用いて直接的にまたは間接的に標識化されている。適当な検出可能な物質は、さまざまな酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質を含む。適当な酵素の例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む;適当な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含む;適当な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンを含む;発光物質の例はルミノールを含む;および適当な放射性物質の例は125I、131I、35Sまたは3Hを含む。
【0120】
随意的な一実施形態では、本発明のSCAは標識化されていないが、hTNF−αは、rhTNF−α標準物質が検出可能な物質で標識化されており、かつ未標識の抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体を用いる競合免疫測定法によって体液中で測定される。この測定法では、生物試料、標識化rhTNF−α標準物質、および抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体を混合し、さらに未標識のSCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体と結合した標識化rhTNF−α標準物質の量が測定される。生物試料中のhTNF−αの量は、抗hTNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体と結合した標識化rhTNF−α標準物質の量と反比例する。
【0121】
米国特許第6,258,562号明細書および第6,090,382号明細書は、D2E7 Mabはまたヒト以外の種に由来するTNF−α、特に霊長類(例えば、チンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザルおよびアカゲザル)、ブタおよびマウス由来のTNF−αを検出するのに用いることができることを示し、本発明の抗TNF−α SCAおよび/またはSCA−ポリマー複合体はその目的にもまた容易に使用されると考えられる。
【実施例】
【0122】
下記の実施例は本発明のさらなる理解を提供する役割を果たすが、しかし本発明の有効な範囲をいかなる方法でも制限しないことが意図される。
【0123】
実施例1
少なくとも1つの遊離チオールを有するSCAタンパク質の設計
D2E7 Mabの可変ドメインに基づいて、9種類のSCAポリペプチドが設計された。本明細書で「D2E7 SCA」の語は、別に示されない限り、本明細書に例示するようにD2E7可変ドメインを用いて作製されたSCAの任意のものを称する。それぞれ下記の通り構築された。
【0124】
上記の通り、完全に合成の遺伝子が、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)によって、長さ20塩基から102塩基の範囲にわたる14種類の長い重複する合成オリゴヌクレオチドを用いて構築された。オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発をさらに用いて、元の配列の他の変異体を構築した。発現されたSCAタンパク質は、ペプチドリンカーによって連結された、D2E7Mabの完全な可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)部分を含む。2つのリンカーが用いられた。
【0125】
リンカー「218」は、Filpula et al.,1996 (Antibody Engineering: A Practical Approach,Oxford University Press,pp 253-268)に記載されている18アミノ酸残基218−リンカーである。
【0126】
「(GGGGS)3リンカー」(配列番号42)は、Huston JS et al,1988,Proc Natl Acad Sci (USA) 85 : 5879-5883に記載された15アミノ酸残基リンカーである。上の表1に記載される通り、一部の場合には、金属固定化金属イオン親和性 クロマトグラフィー (「IMAC」)による精製を容易にするために、C末端のヒスチジン6個のタグ(his6)(配列番号43)が含められた。
【0127】
完成した遺伝子は、Applied Biosystems (Foster City,California)からのABI PRISM(登録商標)310 Genetic Analyzer (以前はABI/Perkin−Elmerによって製造)でのDNA配列確認のために、E.coliプラスミドへクローニングされた。ドメイン方向、リンカー、および遊離システインの配置を上記の表1に要約する(クローン番号2−7−SC−1から9)。
【0128】
クローン番号2−7−SC−1から9のそれぞれを発現している核酸鎖は下記の通り調製された。
【0129】
D2E7 SCAのクローニングおよび発現の方法
D2E7 SCA遺伝子の合成VL−VH型は、2回のPCRによって、6種類の重複するオリゴヌクレオチドをVL鎖のテンプレートとして、および6種類の重複するオリゴヌクレオチドをVH鎖のテンプレートとして用いて構築した。D2E7SCA遺伝子のVL鎖およびVH鎖は、218リンカーで連結された。コードされたタンパク質のC末端には、IMAC精製目的のための6個の反復するヒスチジンが続いた。
【0130】
VLについての5’から3’末端への6種類のオリゴヌクレオチドは下記の通り設計された:
VL1:
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGGGAC(配列番号19)
VL2:GCATCTGTAGGGGACAGAGTCACCATCACTTGTCGGGCAAGTCAG
GGCATCAGAAATTACTTAGCCTGGTATCAGCAAAAACCAGGGAAAGCC
CCT(配列番号20)
VL3:
CCCTGATTGCAAAGTGGATGCAGCATAGATCAGGAGCTTAGGGGCTTT
CCCTGG
(配列番号45)
VL4:TCCACTTTGCAATCAGGGGTCCCATCTCGGTTCAGTGGCAGTGGAT
CTGGGACAGATTTC(配列番号21)
VL5:TCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTACAGCCTGAAG
ATGTTGCAACTTATTACTGTCAAAGGTATAACCGTGCACCGTATACTTT
TGGCCAG(配列番号22)
VL6:ACCACTCCCGGGTTTGCCGCTACCACTAGTAGAGCCTTTGATTTCC
ACCTTGGTCCCCTGGCCAAAAGTATA(配列番号23)。
【0131】
そのうち、VL1、2、4および5は順方向(センス)オリゴヌクレオチドであり、およびVL3および6は逆方向オリゴヌクレオチドであった。
【0132】
VHについての5’から3’末端への6種類のオリゴヌクレオチドは下記の通り設計された:
VH1:GGCAAACCCGGGAGTGGTGAAGGTAGCACTAAAGGTGAGGTGCA
GCTGGTGGAGTCTGGGGGA(配列番号24)。
【0133】
VH2:GTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCCGGCAGGTCCCTGAGA
CTCTCCTGTGCGGCCTCTGGATTCACCTTTGATGATTATGCCATGCACTG
GGTCCGG(配列番号25)
VH3:CCAAGTGATAGCTGAGACCCATTCCAGGCCCTTCCCTGGAGCTTGC
CGGACCCAGTGCAT(配列番号26)
VH4:TCAGCTATCACTTGGAATAGTGGTCACATAGACTATGCGGACTCTG
TGGAGGGCCGATTC(配列番号27)
VH5:GTGGAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCC
CTGTATCTGCAAATGAACAGTCTGAGAGCTGAGGATACGGCCGTATAT
TACTGTGCG(配列番号28)
VH6:AGACGAGACGGTGACCAGGGTACCTTGGCCCCAATAGTCAAGGGA
GGACGCGGTGCTAAGGTACGAGACTTTCGCACAGTAATATAC(配列番号29)
そのうち、VL1、2、4および5は順方向オリゴヌクレオチドであり、およびVL3および6は逆方向オリゴヌクレオチドであった。D2E7 SCAの合成VLおよびVHのために設計されたすべてのオリゴヌクレオチドは、MWG Biotech,Inc.によって合成された。
【0134】
D2E7 SCA 遺伝子のVLは1回目のPCRで、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、テンプレートとしてオリゴヌクレオチドVL1、2、3、4、5および6(各1pmol)、順方向プライマーとして5'TGGCGAGCTCTGACATCCAGATGACCCAGTCT(配列番号30)(50pmol)および逆方向プライマーとして5'ACCACTCCCGGGTTTGCCGCTACCACTAGTAGA(配列番号31)(50pmol)を用いて組み立てられた。
【0135】
PCRは、94℃30秒間、56℃30秒間、および72℃60秒間の30サイクル、続いて72℃10分間で実施した。
【0136】
D2E7SCA遺伝子のVHは1回目のPCRで、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、テンプレートとしてオリゴヌクレオチドVH1、2、3、4、5および6(各1pmol)、順方向プライマーとして5'GGCAAACCCGGGAGTGGTGA(配列番号32)(50pmol)および逆方向プライマーとして5'GCCACTCGAGCTATTAGTGATGGTGATGGTGGTGAGACGAGACGGTGACCAG(配列番号33)(50pmol)を用いて組み立てられた。PCRは、94℃30秒間、56℃30秒間、および72℃60秒間の30サイクル、続いて72℃10分間で実施した。
【0137】
表1の変異SCAタンパク質をコードする変異D2E7SCA遺伝子の遺伝子構造は、部位特異的突然変異誘発によって達成された。例えば、2−7−SC−5はD2E7SCA(2−7−SC−1)の突然変異体であり、218リンカー中の残基109でのセリンからシステインへのアミノ酸変化を有する。この遺伝子は2回のPCRによって、2−7−SC−1 DNAをテンプレートとしておよび4種類のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて作製された。
【0138】
クローン2−7−SC−8の構造のためのプライマーは下記の通り設計された:
順方向プライマー1:CTCGAATTCACCATGAGATTTCCTTC(配列番号37)
順方向プライマー2:
AAGGTGGAAATCAAAGGCTGTACTAGTGGTAGCGGCAAACCC(配列番号38)
逆方向プライマー1:GGGTTTGCCGCTACCACTAGTACAGCCTTTGATTTCCACCTT(配列番号39)
逆方向プライマー2:CGAGAATTCTCATTAATTGCGCAGGTAGCC(配列番号40)
2つの断片が別々に、1回目のPCRで、2通りのプライマー組合せ(順方向プライマー1および逆方向プライマー1、および順方向プライマー2および逆方向プライマー2、各50pmol)によって、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、およびテンプレートとして2−7−SC−8 DNA(10ng)を用いて増幅された。2−7−SC−8 についてのD2E7 SCA 遺伝子変異体は、2回目のPCRでのハイブリッド伸張によって、順方向プライマー1および逆方向プライマー2(各50pmol)、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、およびテンプレートとして1回目のPCRからの2つの断片(各10ng)を用いて完成した。
【0139】
残基109にシステインを有する、2−7−SC−8SCA遺伝子の完成したPCR産物は、下記の通り、ベクターpHilD2にクローニングされおよびPichiaGS115株を形質転換するのに用いられた。
【0140】
表1の残りの遺伝子は、同様の部位特異的突然変異誘発工程によって作製された。2−7−SC−2遺伝子(配列番号2)については、PCR逆方向オリゴヌクレオチドプライマーは、6個のC末端ヒスチジンコドンの後にシステインコドンTGCをコードした。2−7−SC−3遺伝子(配列番号3)については、PCR逆方向オリゴヌクレオチドプライマーは、6個のC末端ヒスチジンコドンの後にシステインコドンTGCをコードした。2−7−SC−4遺伝子(配列番号4)については、PCR逆方向オリゴヌクレオチドプライマーは、システインコドンTGCをC末端VHセリンコドンの直後にコードした。2−7−SC−6遺伝子(配列番号6)については、中央のオリゴヌクレオチドプライマーがシステインコドンTGCを218リンカーの2位にコードし、およびC末端逆方向プライマーがシステインコドンTGCを、6個のC末端ヒスチジンコドンの後にコードした。2−7−SC−7遺伝子(配列番号7)については、中央のオリゴヌクレオチドプライマーがシステインコドンTGCを、(GGGGS)3リンカー(配列番号42)の残基5位に対応する、ヌクレオチド376〜378にコードした(図1G)。
【0141】
2−7−SC−8遺伝子(配列番号8)については、PCR順方向オリゴヌクレオチドプライマーがシステインコドンTGCをN末端VLアミノ酸Aspの前にコードし、およびPCR逆方向オリゴヌクレオチドプライマーがシステインコドンTGCを、6個のC末端ヒスチジンコドンの後にコードした。2−7−SC−9遺伝子(配列番号9)については、GGGGS(配列番号44)をコードする5コドンリンカーが18コドン218リンカーを代替した。
【0142】
完全なD2E7SCA遺伝子の組み立ておよびD2E7SCAのPichiaにおける発現のために、シグナル配列をD2E7SCA遺伝子の5’末端に、2回目のPCRにおいて、2mMトリス(pH8.4)、5mM KCl、7.5mM MgCl2、1.5mMdNTP、2単位のPlatinumタグポリメラーゼ(Invitrogen)、テンプレートとしてD2E7SCA 遺伝子のVLおよびVHの1回目のPCR産物(各1ng)、順方向プライマーとして5'CCTCGGAATTCACCATGAGATTTCCTTCAATTTTTACTGCTGTTTTATTCGCAGCATCCTCCGCATTAGCTGCTGACATCCAGATGACCCAG(配列番号34)(50pmol)および逆方向プライマーとして5'CGCGGAATTCTATTAGTGATGGAGATGGAGGAGAGACGAGACGGTGACCAG(配列番号35)(50pmol)を用いて加えた。
【0143】
PCRは、94℃30秒間、56℃30秒間、および72℃60秒間の30サイクル、続いて72℃10分間で実施した。
【0144】
5'末端シグナル配列を有する、2回目のPCRで組み立てられたD2E7SCAの遺伝子産物は、1%アガロースゲルで精製され、EcoR1で37にて60分間消化され、およびベクターpHilD2(Invitrogen)のEcoR1部位に、T4DNAリガーゼを用いて12℃にて60分間ライゲーションした。100μlのDH5αコンピテント細胞(Invitrogen)をライゲーション反応産物で形質転換し、および氷上で30分間、および42℃にて45秒間インキュベートし、次いで1mlのS.O.C培地を添加し、および37℃にて50分間、250rpmで振とうしながらインキュベートした。0.1mlの形質転換混合物をLBアンピシリン(10mg/L)平板に播種しおよび37℃にて16時間インキュベートした。
【0145】
LBアンピシリン(10mg/L)平板上のpHilD2−D2E7SCAプラスミドで形質転換されたDH5aクローンのいくつかを、2mlのLB培地中で37℃にて16時間培養した。各クローンからのD2E7SCAのプラスミドミニプレパレーションを調製した。pHilD2−D2E7SCAプラスミドのDNA配列は、BigDyeターミネーターサイクルDNA配列決定キット(Applied Biosystem)を用いてABI Prism310 Genetic Analyzerによって確認された。
【0146】
表1に列挙された変異SCAクローンのそれぞれは、下記の手順によって作製された。Pichia形質転換のために、pHilD2−D2E7SCAプラスミドをSal1を用いて37℃にて60分間消化し、および、フェノール抽出およびエタノール沈澱後に、10μlの蒸留水に再懸濁した。PichiaGS115細胞を、50mlのYPD培地中で30℃にて16時間、250rpmで振とうしながら培養し(OD600=1.2)、氷冷蒸留水で3回および1Mソルビトールで1回洗浄し、および最後に0.1mlの1Mソルビトールに再懸濁した。
【0147】
調製されたPichiaGS115細胞を、Sal1消化した10μgのpHilD2−D2E7SCAプラスミドと、氷冷した0.1cmエレクトロポレーションキュベット中で混合し、および、800V、10pFおよび129 の条件下で、エレクトロセルマニピュレーター(BTX)によってパルスを加えた。パルス後に、1mlの氷冷1Mソルビトールをエレクトロポレーションキュベットに加えた。内容物全部を15ml試験管へ移し、および30℃にて1時間インキュベートした。形質転換混合物の0.2mlをRDB培地平板に播種し、および30℃にて4日間インキュベートした。
【0148】
RDB平板由来の、pHilD2−D2E7SCAプラスミドで形質転換されたPichiaクローンのいくつかを、500mlフラスコ中の25mlのBMGY培地に接種し、および30℃にて250rpmで振とうしながら2日間インキュベートした。細胞を3,000rpmでの遠心分離によって室温にて採取し、50mlフラスコ中の5mlのBMMY培地に再懸濁して発現を誘導し、および30℃にて振とうしながらさらに2日間インキュベートした。各培養から1mlの試料を超遠心管に移し、および14,000rpmで2分間室温にて遠心分離した。各培養の上清からの40μlの試料を、クマシーブルー染色SDS−PAGEおよびウェスタンブロットによって分析した。
【0149】
実施例2
SCAタンパク質の組換え発現および精製。
【0150】
実施例1に記載のSCAタンパク質(クローン番号2−7−SC−1から9)は、すべて酵母Pichia pastorisからの発現および分泌によって作製された。酵母α接合因子に由来する分泌シグナル配列が、これらのSCAタンパク質それぞれについての成熟コード配列の直接前に挿入された。
【0151】
このシグナルペプチドのアミノ酸配列はMet Arg Phe Pro Ser Ile Phe Thr Ala Val Leu Phe Ala Ala Ser Ser Ala Leu Ala ^ Ala (配列番号36)であり、「^」は切断部位を示す。我々はまた、そのシグナルのこの20番目のアミノ酸(^の次のアラニン)も我々の構造に含めた。したがって、各成熟SCAタンパク質のそれぞれのアミノ末端はこのアラニンを含み、その後に図1A〜1Fに記録される完全なアミノ酸配列が続く。N末端タンパク質配列分析は、これらの正しくプロセシングされた配列を確認した。これらの変異SCA遺伝子は、Pichia転移プラスミドpHIL−D2(Invitrogen Corp.)中へEcoRI部位で個別にライゲーションされ、および酵母Pichia pastoris宿主GS−115へ形質転換した。これらの手続のための詳細な手順書は、参照により本開示に含まれるInvitrogen CorporationからのPichia発現キット取扱説明書カタログ番号X1710−01(1994)に示される。発現の最初の評価は、SDS−PAGEゲルのクマシーブルー染色によって実施した。
【0152】
D2E7SCAクローンのPichia発酵
クローン2−7−SC−2、2−7−SC−3、2−7−SC−4、2−7−SC−5および2−7−SC−7を含む、抗TNF−α SCAD2E7のすべての発現クローンは、メタノール資化性酵母であるPichia pastoris内で生成され、およびタンパク質は培地中へ分泌された。D2E7SCA変異株の高密度発酵はYNBおよびビオチンを添加した基礎培地であるBMGY培地中で(「培地組成物」を参照)、自動供給制御発酵槽(型番:BioFlow3000およびBioFlow IV; NewBrunswick Scientific,Co,Edison,NJ,USA)を用いて実施した。
【0153】
BMGY中で16〜20時間、(c)グリセロール(50%)中で増殖期4時間、および(d)メタノールを用いて45時間D2E7変異株の誘導。各成分の供給は、30%に設定された溶存酸素レベルに関して最適化された。培養温度は29℃に設定され、およびpHは運転中には水酸化アンモニウムおよびリン酸を用いて6.0に維持された。さまざまなパラメーターを68時間の発酵期間にわたって監視し、ここで、生育する培養のOD600値は(b)期の終わりに0.5から125へ、グリセロール供給期(c期)の終わりに125から200へ、および最終的に,誘導期(d期)の終わりに200から300へ到達した。
【0154】
平均して、発酵上清中のD2E7変異株の発現は50 から100 mg/Lの間であった。カルボキシル末端に遊離 システインが組み込まれヒスチジン尾部が続くVL−VH変異株である2−7−SC−2は、発酵中に優れた再現性で良好な成績を上げた最も頑健なクローンであることが見出された。
【0155】
供給品の説明
BMGY(L当たり)
酵母抽出物:
ペプトン:
グリセロール:
リン酸緩衝液:(1M、pH6.0)
YNB:
ビオチン:
FMT30(Breox):
誘導物質
メタノール
酸素
圧縮酸素。
【0156】
実施例1のSCAタンパク質は上清から純度95%超へ、単純な2または3のカラムクロマトグラフィー手順によって精製された。
【0157】
ヒスチジンタグを用いたクローン2−7−SC−2、2−7−SC−3、2−7−SC−5、2−7−SC−7 D2E7SCAからのタンパク質の精製
D2E7変異体の、2−7−SC−2、SCA2−7−SC−3、SCA2−7−SC−4、SCA2−7−SC− 5、および 2−7−SC−7は発酵上清から、イオン交換およびアフィニティカラムクロマトグラフィーの組合せを用いて精製した。使用した培地を20mMトリスpH7.4および50mMNaClを含む緩衝液Cで交換する一方、上清を高度にダイアフィルトレーションして試料を濃縮した。緩衝液を交換した試料を次いでDEAEカラムクロマトグラフィー(品番17−0709−01;Amersham BioSciences,Piscataway,NJ)に供した。D2E7 SCAは指定の条件下ではDEAEカラムに結合しなかった。DEAEカラムからの素通り画分を、50mMトリスpH8.0および0.3MNaClを含む緩衝液Aに対して透析し、および同一の緩衝液で予め平衡化したNi−NTA樹脂(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)に加えた。非特異的結合は、10%グリセロールを緩衝液Aに含む緩衝液Bを用いた厳密な洗浄を用いて破壊され、その後に緩衝液Aによるグリセロールの除去を行った。さらに低親和性の相互作用は、カラムの3倍容量の60〜100mMイミダゾール(2−7−SC−2についてのみ100mM)を通すことによって洗い流した。最後に、結合したSCAをNi−NTAカラムから、カラムの3〜5倍容量の250mMイミダゾールを用いて溶出した。洗浄および溶出の両方について、イミダゾールは緩衝液Aで調製した。
【0158】
ピーク画分をプールし、およびDEAE緩衝液である緩衝液Cに対してよく透析した。透析した試料は高速遠心分離によって清澄化し、および精製の最終段階としてDEAEカラムを通した。次いで、将来の使用のために−20℃にて保存する前に、精製された試料のタンパク質濃度をUV280によって、およびBCA法によって測定した。
【0159】
ヒスチジンタグの無いタンパク質2−7−SC−4D2E7SCAの精製
プロテインLは多数の異なる種のVLドメインと強く結合する。その結合は極めて種特異的であり、およびまたサブタイプ特異的である。2−7−SC−4のVLドメインをプロテインLによって認識でき、および相互作用のこの特異性を利用して、我々は2−7−SC−4を1段階で、ダイアフィルトレーションした試料から直接精製した。プロテインLカラム(品番CLBL 201−5,CBD Technologies Ltd,Buffalo,NY)からの2−7−SC−4の低pH溶出は、SCAの構造的または機能的完全性に影響しなかった。要約すると、発酵上清をダイアフィルトレーションし、およびカラムへ試料を負荷するためにPBSで交換した。非特異的に結合したタンパク質は、負荷後に多量のPBSを用いて洗い流した。
【0160】
SCAタンパク質はカラムからpH2.0のグリシン緩衝液(10mM)を用いて溶出し、および溶液を中和するために直ちに3Mトリスへ回収した。画分はSDS−PAGE上で分析し、ポジティブ画分をプールし、およびPBSに対して透析した。SCAタンパク質は透析後に高速遠心分離によって清澄化し、タンパク質濃度を測定し、および将来の使用のために−20℃にて保存した。
【0161】
代替の、HS(POROS50HS、コード:1−3359−07;Applied BioSciences,Foster City,CA)またはQ−セファロースFF(品番17−0510−01,Amersham BioSciences,Piscataway,NJ)のようなより好ましくない方法もまた、SCA精製に効果的に用いられた。
【0162】
下記の表は、さまざまなカラムによる2−7−SC−2 D2E7変異体の精製、各精製工程後の収率パーセンテージ、および各変異体についての精製の品質を示す。
【表3】
【0163】
図2Aおよび2Bは、2−7−SC−2 SCAタンパク質の各精製工程からの試料の代表的なSDSPAGE分析を示す。ゲルはクマシーブルーを用いて染色した。最終試料の純度はゲルデンシトメトリースキャンから95%と推定された。少量の54kDaジスルフィド結合二量体を染色ゲル上に見ることができる。
【0164】
実施例3
ポリエチレングリコールのマレイミド誘導体の安定性および反応性
アミノ酸残基とのマレイミド反応性
マレイミドポリマーの、リジンまたはヒスチジンとでなく、遊離システインとの特異的反応性の確認は、これらの各遊離アミノ酸とのこれらの化合物の反応によって達成された。図4A〜4Cに示す通り、使用した標準的な反応条件下で、システインは、PEG−マレイミドと高度に反応性であるが、ヒスチジンまたはリジン(記載せず)はそうではない。
【0165】
活性マレイミド基の分析および安定性
官能基分析は下記の通り2段階で実施した:
MAL−PEGのシステインとの反応、および
反応後の残りの未反応システインの、ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)(「DTNB」)を用いた滴定による測定
活性MAL−PEGの測定は、反応モル比1:3(MAL−PEG:システイン)を含む50mMリン酸ナトリウム、pH6および1mM EDTAで実施した。
【0166】
反応は下記の通り実施した:
システインのH2O溶液の1/40容量を1mM PEG溶液へ加え、終濃度3mMとした。混合物を25℃にて暗所で10分間インキュベートし、その後DTNB滴定を実施した。DTNB滴定で、システインおよびCys−MAL−PEG混合物を含む反応混合物の1/50容量を、0.2〜0.3mM DTNBを含む100mMリン酸ナトリウム、pH7.3および1mM EDTAへ加えた。残留システインの終濃度は0.04〜0.06mMの間であった。
【0167】
412nmでの吸光度を、25℃にて5分間の平衡後に、13,300M−1cm−1をDTNBの吸光係数として用いて記録した。MAL−PEGのベータ−メルカプトエチルアミンとの反応もまた調べた。ベータ−メルカプトエチルアミンは空気に敏感でありおよび吸湿性であるため、この反応は定量的でない。MAL−PEGの安定性は240から400nmの間のUVスキャンによって監視した。MAL−PEGは300nmに最大吸収を有した。そのピークは、システインとの反応後または0.1 N NaOHの存在下で37℃にて2時間加水分解後に消失した。
【0168】
MAL−PEGの安定性
MAL−PEGの安定性は、pH、温度、およびインキュベート時間に依存する。300nmでの吸光度の低下が10%未満であれば安定とみなした。
【0169】
1mM MAL−PEGは4℃にて少なくとも24時間、試験したすべての緩衝液(pH5、pH6、およびpH7リン酸緩衝液)中で安定である。25℃およびpH5.0で、MAL−PEGは33時間安定である。したがって、好ましいPEG化条件は、pH5またはpH6、25℃2時間;または4℃24時間;またはpH5、25℃24時間である。
【0170】
システインとのMal−PEG反応の特異性
システインとの反応は、反応pH(5、6、または7)および温度(4℃または25℃)にかかわらず、2分未満で完了した。
【0171】
リジンとの反応(Lys:MAL−PEG=15:1)は、pH5およびpH6緩衝液中の4℃または25℃にての24時間インキュベート中に観察されなかった。しかし、pH7、25℃で、10%を超えるMAL−PEGが24時間のインキュベート中にリジンと反応した。ヒスチジンとの反応は、モル比15:1(ヒスチジン:MAL−PEG)pH5、6、および7での4℃または25℃にての24時間インキュベート中にみられなかった。
【0172】
実施例4
SCAタンパク質のPEG化
4A.材料および方法
HiPrep(登録商標)26/10およびG−25 PD−10脱塩カラム(Pharmacia Biotech,17−1408−01,New Jersey)およびPoros50ミクロンHSメディア(Applied Biosystems)を用いた。mPEG−マレイミド化合物はNektar Therapeutics (San Carlos,California; formerly Shearwater Corp.)から購入したかまたはEnzon Pharmaceuticals,Inc.にて合成した。
【0173】
この試験で使用したPEG−MALポリマーは、40kDa分枝鎖PEG2、20kDa直鎖PEG、5kDa直鎖PEG、20kDaビス−MAL二官能性PEG、および40kDa分枝鎖U−PEGを含んだ。N−エチルマレイミドおよび6−(ビオチンアミドカプロイルアミド)カプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルはSigmaから購入した。rProtein A Sepharose Fast FlowはAmersham Biosciences Corp.(Piscataway,New Jersey)から入手した。Ultralink Iodoacetyl(登録商標)はPierce Biotechnology,Inc(Rockford,Illinois)から入手した。 DMSO,(Minneapolis,Minnissota)。ストレプトアビジン−フィコエリトリンはBD Sciences (San Jose,California)から入手した。96ウェルマイクロタイタープレートはMidwest Scientific (St.Louis,Missouri)から購入した。
【0174】
ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼはSigmaから、および TMBペルオキシダーゼ基質はMoss,Inc.(Pasadena,Maryland)からであった。TNF−αはChemicon (Temecula,California)から購入した。Titrisol(登録商標)ヨウ素溶液はEM Science (Gibbstown,New Jersey)から入手した。
【0175】
4B.D2E7 SCAの還元
実施例3によって単離されたSCAのC末端遊離システイン残基またはリンカーを、MAL−PEGとの反応の前に還元した。還元溶液は、3mg/ml D2E7SCA、2mMジチオスレイトール(DTT)、2mM EDTA、および100mMリン酸ナトリウム、pH7.8を含んだ。還元は37℃にて2時間実施した。遊離DTTは15mlの試料についてはHiPrep(登録商標)脱塩カラムで、または4mlの試料についてはPD−10で除去した。カラムは100mMリン酸ナトリウムpH6.0、2mM EDTAで平衡化した。還元および脱塩後のD2E7SCAの回収率は85%であった。ベータ−メルカプトエチルアミンおよびベータ−メルカプトエタノールを含む他の還元剤もまた、改変した手順での使用に成功した。スルフヒドリル基定量を、参照により本開示に含まれるGrassetti DR et al,1967,Archives BiochemBiophys 119: 41−49,および Riddles PW et al,1979,Anal Biochem 94: 75−81による記載通りに実施した。SCA1当たり1のチオールのほぼ定量的な還元が達成された。
【0176】
4C.SCAのPEG化および精製
方法
実施例3によって単離されたSCAタンパク質を、PEGマレイミド化合物とのシステイン特異的反応によってPEG化した。2−7−SC−2および2−7−SC−5を、PEG−SCA特徴づけの広範囲な試験のために選択した。これらのSCAタンパク質に関して、5kDa、20kDa、40kDa(分枝鎖)およびビス−マレイミド化合物とのマレイミド−PEG複合体を調べた。N−エチルマレイミドとのSCAタンパク質の反応は、遊離チオールをブロックするが加わる分子量が最小である対照結合反応を提供した。他のD2E7SCAタンパク質を、BIAcore分析の項に列挙する通りの選択されたPEG−マレイミドポリマーを用いて修飾した。
【0177】
反応緩衝液は、1mg/ml還元SCA、100mMリン酸ナトリウムpH6.0、2mM EDTA、およびPEGマレイミド化合物を、10:1の反応モル比(PEG:D2E7)で含んだ。反応は25℃にて窒素中で2時間実施した。
【0178】
SDS−PAGEで分析した複合体化の典型的な収率は80%であった。未反応SCA、高分子量不純物、遊離PEG、副反応産物、およびエンドトキシンからのPEG−SCAの精製にHSカラムを用いた。より好ましくない方法では、SおよびSPカラムもまた使用に成功した。カラム平衡化緩衝液は10mMリン酸ナトリウム、pH5.0を含み、および溶出緩衝液は1M NaClを含む10mMリン酸ナトリウム、pH5.0から成った。遊離PEGは素通り画分に含まれた。PEG−D2E7SCA複合体は、結合したPEGをより多数有する複合体が先に溶出し、単一のポリマーが結合した複合体が続き、および最後に未反応D2E7SCAが、連続的に溶出した。異なるサイズのPEG−D2E7複合体は、したがって、異なる濃度のNaClで溶出した。
【0179】
4D.D2E7SCAの還元−結果要約
Pichia pastoris中で作製されおよび 記載の通り精製されたD2E7 SCAは、MAL−PEG.との反応の前に還元しなければならない。
【0180】
濃度0.5mMから50mMのDTTを試験した。二量体を単量体に還元するためには0.5mMが十分であることが示された。10mMより高濃度のDTTはいくらかの沈澱を生じた。使用したDTTの濃度が高いほど、沈澱したD2E7 SCAの量は多かった。沈澱は変性D2E7 SCAと思われた。2mM DTTが標準的なPEG化手順に選択された。
【0181】
2mMから10mMのベータ−メルカプトエチルアミン、グルタチオン、およびシステインもまた調べた。二量体を単量体へ還元するためには10mMより高い濃度が必要であったことが示された。
【0182】
0.5mMのDTTは、2−7−SC−2二量体から単量体への還元において、10mMの他の還元剤と同程度に効率的であった。
【0183】
還元後の複合体の収率は、開始時の還元SCAタンパク質の約80%であった。
【0184】
4E.PEG化−結果要約
1:1から10:1(MAL−PEG:D2E7SCA)にわたる反応比をPEG化収率についてpH6.0で調べた。複合体の公衆率を与えるためには、1:4の比が必要な最小限であった。
【0185】
10分から24時間の反応時間を25℃にて、および18時間4℃にて試験した。反応は25℃では10分間(試験した最短時間)で完了したことが示された。
【0186】
タンパク質の高濃度(例えば、1mg/mlより大)は、収率が低下するため、D2E7SCAの遊離システイン残基のMAL−PEGとの反応には望ましくない。このことは、非特異的複数PEG化のための最適手法とは対照的である。タンパク質濃度0.5、1.5、2.0、2.5、および3mg/mlを試験した。0.2〜1mg/mlのD2E7 SCAタンパク質が、複合体を構築するために好ましい濃度として用いられた。
【0187】
反応pH5〜8を調べた。PEG化には、pH6.0を用いた。
【0188】
複合体化していないD2E7SCAは、再複合体化に再利用することができた。第2の複合体化反応からの収率は、最初のD2E7 SCA PEG化について得られた収率と同様であった。
【0189】
複合体化の最高収率は85%であった。全体として、結果は、設計された1遊離チオール変異SCAタンパク質を用いた頑健な複合体化法によって、モノPEG化SCAタンパク質が良好な収率で生じ得ることを実証した。
【0190】
4F.精製結果要約
ポリエーテルスルホン膜を用いた限外濾過は、2−7−SC−2SCAタンパク質の大部分が膜に吸着されて失われたため、このタンパク質およびその複合体の濃縮および緩衝液交換に用いることはできない。
【0191】
Centriplus、Centricon、およびAmiconといったMillipore再生セルロース膜では本タンパク質の回収率100%であった。0.2μm低タンパク質結合無菌フィルターではタンパク質の10%損失があった。2段階の精製、2段階の濃縮、および1段階のろ過後の総収率は30〜40%であった。
【0192】
精製されたPEG−SCAタンパク質はSDSPAGE分析に供し、およびクマシーブルー染色で可視化した(データ記載せず)。分析は、痕跡量(1%以下)の未反応SCAタンパク質が精製40kDa MAL−PEGおよび20kDa MAL−PEG反応物中に残存したことを示した。SDSPAGEゲルのヨウ素染色は、ポリエチレングリコール含有化合物を示すが、また精製40kDaMAL−PEGおよび20kDa MAL−PEG反応物中に検出可能であった痕跡量(<1%)の遊離PEGを明らかにした。
【0193】
40 kDa MAL−PEG 反応物はまた時々、痕跡量(~1%) の非常に高い分子量の PEG不純物を示した。 非常に高い分子量範囲のポリマーはまた、開始材料の未反応40 kDa MAL−PEG ポリマー中にも検出可能であった。N−エチルマレイミド還元は、1個の遊離システインを有するSCA タンパク質における二量体形成を完全に遮断する。
【0194】
4G.イオン交換クロマトグラフィーによるエンドトキシンの除去
タンパク質試料中に存在するエンドトキシンを、DEAEまたはHSカラムによって除去した。pH7〜8で、エンドトキシンはDEAEカラムに結合した一方、D2E7SCAは素通り画分中に存在し、これに対してpH5.0では、エンドトキシンは素通り画分中に存在しおよびD2E7SCAはHSカラムに結合した。HSカラムはエンドトキシンをD2E7SCAタンパク質から除去するのに用いられた。カラム平衡化緩衝液は10mMリン酸ナトリウム、pH5.0を含み、および溶出緩衝液は1MNaClおよび10mMリン酸ナトリウム、pH5.0を含んだ。精製試料中の典型的なエンドトキシン値は1EU/ml未満であった。
【0195】
実施例5
SCAおよびPEG−SCAの分析的特徴づけ。
【0196】
5A.タンパク質濃度の測定
タンパク質濃度はUVによって280nmにて測定した。実施例3で得られたSCAの吸光係数は1.24ml/mg・cmであった。濃度はまた、Pierce Biotechnology,Inc(Rockford,Illinois)からのMicroBCAタンパク質検定試薬キットとして入手したビシンコニン酸検定法(「BCA」)によって、リゾチームまたはFabを標準物質として使用して確認した。BCA検定法は、取扱説明書に従って、および本質的に、参照により本開示に含まれるSmith,P.K.,et al.1985,Anal.Biochem.150,76−85の方法に従って実施した。
【0197】
タンパク質濃度測定結果
280nmでのUV(データ記載せず)および、上記で考察した通り、ヒトFabを標準物質として用いたBCAは、タンパク質濃度測定において同様の結果を与えた。
【0198】
BCA分析のために、EDTAは還元後のDTTと共に除去すべきであり、それはこれらの試薬は本検定法に干渉するからである。
【0199】
動物実験についてのすべての試料は、タンパク質含量に関してUVによって分析しおよびリゾチームを標準物質として用いてBCAによって確認した。
【0200】
5B.抗D2E7SCAポリクローナル抗体およびビオチン化抗D2E7SCA抗体
抗D2E7SCA抗体の精製
抗2−7−SC−1SCA抗体をウサギで作製し、および、プロテインAクロマトグラフィーおよびD2E7SCA−結合アフィニティカラムクロマトグラフィーによって精製した。プロテインAカラム精製のために、抗体を2倍容量のトリス緩衝液で希釈して終濃度を0.1Mトリス−HCl、pH8.0、0.02%NaN3とした。希釈した試料を、0.1Mトリス−HCl、pH8.0、0.02%NaN3で平衡化した2mlプロテインA Sepharoseカラムに、プロテインA樹脂に対して等量の抗血清として負荷した。
【0201】
抗2−7−SC−2 SCAは50mMグリシン、pH3.0を用いて、1/10容量の1Mトリス−HCl、pH8.0へ溶出した。抗体濃度は280nmにて、吸光係数0.8ml/mg・cmを用いて測定した。D2E7 SCA−結合アフィニティカラムを、2−7−SC−2SCAタンパク質の遊離システイン残基とのUltralink Iodoacetylのカップリング反応によって作製した。具体的には、2倍容量の50mMリン酸、5mM EDTA、pH7.8を用いて洗浄した7mlまでのUltralink Iodoacetyl樹脂を、6.5mlまでの1.45mg/ml 2−7−SC−2 SCAと25℃にて15分間混合した。カップリング反応を、280nmでの上清の吸光度を測定することによって監視した。上清中のタンパク質濃度は80%減少した。樹脂を3倍容量の50mMリン酸、pH7.8、5mM EDTAで洗浄し、および次いで50mMシステインで40分間処理した。試料を次いでカラムへ移し、および1M NaCl、50mMグリシン、pH3.0で洗浄し、および次にPBSで洗浄した。プロテインAカラムから精製した抗2−7−SC−2SCA抗体を、標準PBSで平衡化したD2E7SCA−結合カラムに通した。カラムをPBSでベースラインへ戻し、および抗体を、50mMグリシン、pH3.0を用いて1/10容量の1Mトリス−HCl、pH8.0へ溶出した。
【0202】
ビオチン化抗D2E7SCA抗体
試料中のグリシンおよびトリス成分を、50mMリン酸、pH7.6、100mM NaClで平衡化したPD−10脱塩カラムによって除去した。抗体溶液へ、1/10容量の活性化ビオチン含有DMSOを、反応モル比40:1(ビオチン:抗体)で加えた。25℃にて1時間後、ビオチン化抗体を、PBS(10mMリン酸ナトリウム、138mM NaCl、2.7mMKC1、pH7.4)で平衡化したPD−10脱塩カラムで精製した。
【0203】
5C.ウェスタンブロット
抗D2E7SCAウサギ抗血清を一次抗体として使用し、およびヤギ抗ウサギHRPを二次抗体として使用した。結合はTMBMペルオキシダーゼ基質を用いて測定した。ウサギ抗血清はまた、合成18残基218−リンカーペプチドに対してから以前も作製された。このリンカーを含むSCAタンパク質との反応性もまた確立された。
【0204】
ウェスタンブロット結果
精製された調製物からのゲル上に示されたすべてのバンドはウェスタンブロット陽性であった。図7は、抗2−7−SC−1抗血清を用いて検出した、D2E7SCAおよびPEG−SCA化合物のウェスタン分析の一例を示す。一次検出抗体は、精製組換えSCAタンパク質を用いて免疫されたウサギから作製された抗2−7−SC−1SCAウサギ抗血清であった。レーン1および7、分子量マーカー(250、148、98、64、50、36、22、16、6および4kDa);レーン2、2−7−SC−2SCAタンパク質;レーン3、エチル−2−7−SC−2;レーン4、PEG(5kDa)−2−7−SC−2;レーン5、PEG(20kDa)−2−7−SC−2;レーン6、PEG(40kDa)−2−7−SC−2。
【0205】
血漿中の低濃度のために、単量体および二量体として存在する2−7−SC−2SCAタンパク質がどのような比率かは動物実験で明らかにならなかった。しかし、N−エチルマレイミドで修飾された2−7−SC−2タンパク質のわずかにより速いクリアランスは、開始SCAタンパク質の一部が二量体であったことおよびより大きな質量または親和力のためにより遅いクリアランスを示したことを示唆する可能性があった。
【0206】
5D.純度分析
N−エチル−マレイミドで修飾された2−7−SC−2SCAは非還元SDS−PAGEで二量体を示さなかったため、二量体型は遊離システイン残基の架橋によって生じた。精製されたPEG−SCA複合体は、典型的には、ヨード染色によって検出された通り本質的に遊離PEGを含まず、SDS−PAGEで検出された通り1%未満の未修飾SCAおよび1%未満の高分子量分子を含んだ。
【0207】
5E.ヨード染色
SDSPAGEゲルをdH2Oで洗浄し、および5%塩化バリウム溶液に入れた。10分間緩やかに混合後、ゲルをH2Oで洗浄し、および次いで発色のために0.1M Titrisol(登録商標)ヨード溶液に入れた。
【0208】
5F.質量測定
SCAおよびPEG−SCA複合体の正確な質量値はマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(「MALDI−TOF」;Bruker Daltronics OmniFlex NT)によって、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)マトリクス上の同様の分子量を有する内部標準物質を用いて測定した。SCAタンパク質の見かけの分子量(Stoke半径)は、50mMリン酸ナトリウム、pH6.5および150mM NaClで平衡化したSuperdex 200 HR 10/30ゲルろ過カラムクロマトグラフィー[Amersham Biosciences、取扱説明書による]を用いて推定した
さらに、4〜20%SDS−PAGEゲル上での分子量の分析を、適当なタンパク質およびPEG−タンパク質標準物質を用いて実施した。サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された、PEG−40k−SCAの見かけの分子量は、670kDa、すなわち分子量の約10倍であった。
【0209】
2−7−SC−2の分子量測定結果:
分子量測定結果を表4に示す。
【表4】
【0210】
4〜20%SDSゲル上でのタンパク質サイズに対するPEGサイズの相関はY=0.00156Xであった。
【0211】
他のD2E7SCA変異体およびPEG−SCA化合物は、その分子量およびポリマーサイズと合致する同等の質量値を示した。
【0212】
5G.N末端配列決定およびペプチドマッピング:
2−7−SC−2および2−7−SC−5のN末端配列決定は、分泌されたSCAタンパク質のN末端アミノ酸がアラニンでありその後にVLの第1の残基が続くような、シグナル配列の予測されたプロセシングを確認した。
【0213】
2−7−SC−5−40kDaPEG上のペプチドマッピング
タンパク質(計0.2mg)を変性し、および、1mMEDTAおよび5mMDTTを含む6MグアニジンHCl中で還元した。溶液を37℃にて1時間インキュベートした。アルキル化試薬ヨードアセトアミドを終濃度15mMとなるように加え、および反応を室温にて1時間実施した。アルキル化後、β−メルカプトエタノールを45mM(終濃度)となるように加えることによって過剰のヨードアセトアミドを不活性化し、および、溶液をPD10脱塩カラムに供した。アルキル化されたPEG−2−7−SC−5を、Centricom10を用いて濃縮し、および次いでTPCK処理トリプシンによって、酵素対タンパク質比1:20(w/w)で用いて加水分解した。加水分解は6〜8時間、37℃にて行わせ、およびその後、同量の新しいトリプシンを加えて一夜反応させた。加水分解されたタンパク質溶液をSpeedvacによって乾燥し、およびHPLC用水で再構成した。
【0214】
結果として得られたペプチド混合物をHPLCサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex75)によってHPLC用水を用いて分画した。画分を手作業で回収しおよびヨード溶液(20mMを含む5%BaCI)を用いて染色するTricine SDS−PAGEによって分析した。ポジティブ染色された画分を、逆相HPLC(Jupiter Cl 8,2x250 mm)によって、60分間に5〜70%のアセトニトリル勾配(0.05%TFAを含む)を用いてさらに分離した。ピークを手作業で回収し、およびSpeedvacで乾燥した。ピークを10μlの水で再構成し、および5μlをTricine SDS−PAGE分析用に採取した。ヨード染色ポジティブの画分(1つのみ、保持時間40分まで)をアミノ酸シークエンサー分析(Applied Biosystems)に供した。分析から得られた配列はG□TSGSGKPG(配列番号41)であり、ここで空白の四角は修飾アミノ酸を表し、マレイミド−PEG40Kがシステイン(N末端Ala1から110位)へ正確に付加されていることを示す。
【0215】
5H.D2E7およびPEG−D2E7の安定性−結果
D2E7SCAおよびPEG−D2E7SCA複合体は凍結融解の10サイクル後に安定であることが示された。未修飾の2−7−SC−2SCA(濃度1.1mg/mlを含む50mMトリス/グリシン緩衝液、pH7.0)の部分標本を−80℃にて15分間の凍結に供し、その後37℃にて10分間の融解を行った。凍結融解の操作を3、5、および10サイクル実施し、および未修飾のSCAの完全性を、SDS−PAGEによって、および確立されたTNF感受性細胞レスキュー検定法によって分析した。SCAは非常に安定であることが見出され、およびポリアクリルアミドゲルのクマシーブルー染色によって判定された通り分解を示すことなく少なくとも10回の凍結融解サイクルに耐えられた(データ記載せず)。5回の凍結融解サイクルに際して、2−7−SC−2の生物活性に変化は無かった(IC50:224.6nM)。
【0216】
本試験においてすべてのD2E7PEG−SCAタンパク質は、30日間4℃にて20mMリン酸ナトリウム、pH6.5、150mM NaCl中で安定であることが見出された。2−7−SC−2SCAタンパク質は、pH3〜10、25℃、18時間インキュベートで安定であった。最大1.2Mまでの濃度のNaClは、25℃にて20mMリン酸ナトリウム、pH7.4中の2−7−SC−2の活性または溶解度に影響しなかった。
【0217】
5I.抗原性
PEG化D2E7SCAタンパク質は、抗D2E7SCAポリクローナル抗体との結合効率に顕著な低下を示す。PEG−SCA2−7−SC−5は、ウェスタンブロットによって抗218抗血清を用いて分析した際、抗218ペプチドウサギ血清とわずかに反応性である。
【0218】
実施例6
SCAおよびPEG−SCAタンパク質のフローサイトメトリー分析
2−7−SC−2、2−7−SC−3、2−7−SC−4、2−7−SC−5についての細胞表面受容体結合検定法
WEHI−13VAR細胞株を用いて、D2E7SCAまたはPEG−D2E7SCAの存在下での細胞受容体へのTNF−α結合を分析した。ビオチンTNF−α(0.04μg)をD2E7SCAまたはPEG−D2E7SCA(1〜4μg)と共に50μlのFACS緩衝液(1%FBSおよび0.05%NaN3を含むPBS)中で25℃にて30分間、および次いで4℃にて15分間振とうしながら予備インキュベートした。
【0219】
同時に、ビオチン化ダイズトリプシンインヒビター(0.05μg)、ポリクローナルヤギIgG抗ヒトTNF−α抗体(20μg)、およびCC49SCA(4μg)といった対照もまた、ビオチン−TNF−α(0.04μg)と共に50μlのFACS緩衝液中で予備インキュベートした。WEHI−13VAR細胞は氷冷20mMEDTA含有PBSを用いて、37℃にて2〜3分でフラスコから剥がした。細胞をRPMI1640培地に再懸濁し、および2000rpmにて5分間遠沈した。細胞を次いで培地で1回、およびFACS洗浄緩衝液で2回洗浄し、および血球計算盤を用いて計数した。
【0220】
細胞をFACS緩衝液に懸濁し、終濃度2x106細胞/mlとした。細胞に使用した褐色エッペンドルフチューブすべてを、FACS緩衝液を用いて少なくとも1時間4℃にてブロックした。細胞受容体へのTNF−α結合に対するアクチノマイシンDおよびFcブロック試薬(BD Biosciences)の作用については、細胞(105個)を0.05μgアクチノマイシンD/1x106細胞または1μgFcブロッキング/1x106細胞と共に50μlのFACS緩衝液中で15〜30分間4℃にて予備インキュベートした。TNF−αおよびPEG−D2E7SCAの混合物50μlに、50μlの1x105WEHI−13VAR細胞を加えた。60分間4℃にて暗所でのインキュベート後、細胞を遠沈し、および80μlの冷FACS緩衝液に再懸濁した。ストレプトアビジン−フィコエリトリンの全部を加えた。混合物を暗所で4℃にて30分間インキュベートした。細胞をその後冷FACS緩衝液1mlで2回洗浄し、および分析のために0.3mlFACS洗浄緩衝液に再懸濁した。
【0221】
フローサイトメトリー分析−結果
ビオチン化ダイズトリプシンインヒビター、ポリクローナルヤギ抗ヒトインターフェロン−αIgG、およびCC49SCA(Enzon)は結合を示さず、およびネガティブ対照の役割を果たした。細胞へのFcブロック試薬(BD Biosciences)およびアクチノマイシンDを用いた予備インキュベートは、TNF−α結合に対して効果が無かった。PEG−D2E7 2−7−SC−2SCA複合体(エチル−、5k、20kまたは40kPEG)は、16:1(D2E7SCA:TNF−α)より高いモル比で、細胞へのTNF−α結合を完全に消失させた。
【0222】
D2E7SCAのTNF−αに対するその同じモル比で、未修飾のD2E7SCAはまた細胞へのTNF−α結合を低下させたが完全にではなかった。したがって、この分析では、D2E7のPEG−SCA型は未修飾のSCAタンパク質よりも強力であった。
【0223】
図6A、6Bおよび6Cは、WEHI−13VAR細胞上の受容体とのビオチン標識化TNF−αの結合を妨げるこれらの化合物の能力のフローサイトメトリー分析における、2−7−SC−2SCAおよびPEG−SCA化合物の代表的なデータを示す。これらのデータは、抗TNF−αPEG−SCA化合物が、細胞系における受容体へのこのサイトカインの結合の阻害において活性が高いことを示す。
【0224】
2−7−SC−2またはPEG−2−7−SC−2の存在下での、細胞受容体へのTNF−α結合のフローサイトメトリー分析。1、蛍光標識化無しの細胞集団;2、ビオチン−TNF−αとの、および次いでストレプトアビジン−フィコエリトリンとの結合後の細胞集団;および3、細胞受容体へのTNF−α結合に及ぼす2−7−SC−2(図6A)、PEG(20k)−2−7−SC−2(図6B)、およびPEG(40k)−2−7−SC−2(図6C)の作用。2−7−SC−2またはPEG−2−7−SC−2のTNF−αに対するモル比は16:1である。低い蛍光強度へのシフトは、細胞へのTNF−αの結合の減少を示す。
【0225】
実施例7
BIACORE分析
D2E7SCAおよびPEG−SCAとの組換えhTNF−αの相互作用の動態分析
TNF−αとD2E7SCA変異体およびそのPEG化型との間の相互作用を、表面プラズモン共鳴(SPR)法によって、BiaCoreX装置(BiaCore,Inc.; Piscataway,New Jersey)を用いて分析した。純度>97%の組換えヒトTNF−α(Pierce;Rockford、IL)を、CM5チップ(BiaCore、品番BR−1000−14)上に、10μg/ml溶液pH5.0(酢酸緩衝液、BiaCore、品番BR−1003−51)として固定化した。固定化した表面を酢酸緩衝液、pH4.5(BiaCore、品番BR−1003−50)で3回洗浄し、および500 nMの未修飾SCAを用いる6サイクルのリガンド安定性分析に供した。
【0226】
D2E7SCAは分析対象となり、共にpH4.5の酢酸は再生緩衝液となった。安定なTNF−α−結合表面上で、異なる濃度のSCAまたはPEG−SCAが結合(3分間)および解離(2分間または5分間)について調べられ、およびデータを動態パラメーター(例えば、kon、koff、KA、およびKD値)についてBiaEvaluationソフトウェア(バージョン3.0)を用いて分析した。HBS−N(BiaCore、品番BR−1003−69)を本手順における泳動緩衝液として使用した。
【0227】
固定化rhTNF−αとD2E7SCAまたはPEG−SCAとの間の相互作用の動態分析
方法
TNF−α
起源:Pierce、組換え型、品番RTNFA50
MW:17.4kD、157アミノ酸
純度:>97%
再構成:蒸留水(DW)中で100μg/mlの濃度へ。調製物中に添加物は存在しない
保存:−70℃にて保存
D2E7SCA:クローン2−7−SC−2
起源:Enzon Pharmaceuticals,Inc.、組換え型、Pichiaで発現
MW:27kD、218リンカーを有する
純度:>90%
再構成:150mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液、pH7.0中
保存:4.0℃にて保存
固定化:新しいCM5チップを用いて
TNF濃度:10μg/ml、酢酸緩衝液pH5.0溶液のストックから直接希釈
流速:5.0μl/分
チャンネル:FC1〜2、1:1NHS/EDC混合物で3.0分活性化
チャンネル:FC2、15μlのTNFを手動注入、10μg/ml
(より低いRUを達成するために、より小さい容量を注入する)
チャンネル:FC1〜2、1Mメタノールアミン、pH8.5で3分間不活性化
チャンネル:FC1〜2、BSA1μg/mlを含むHBS−N緩衝液25μlを手動注入
チャンネル:FC1〜2、インジェクションポートを洗浄するため、10mM酢酸、pH4.5を1分間注入、100μl/分
最終RU(応答単位)は199であった。
【0228】
CM5チップをHBSN緩衝液で洗浄し、および少なくとも6サイクルの安定性について500nM2−7−SC−2で試験した。CM5チップを次いで動態分析に用いた。
【0229】
D2E72−7−SC−2の動態分析
2−7−SC−2の濃度:注入直前にHBS−Nで希釈
2.98g/ml(1080nM)
1.49μg/ml(540nM)
0.745μg/ml(270nM)
0.3725μg/ml(135nM)
0.186μg/ml(67.5nM)
93ng/ml(33.75nM)
46.5ng/ml(16.875nM)
23.28ng/ml(8.4375nM)
0g/ml(0nM)
流速:25μl/分(注:30μl/分は20および25l/分と同様の結合を結果として生じた)
結合期間:3分間
解離期間:2分間および5分間
再生緩衝液:10mM酢酸,pH4.5
再生は2段階で実施し、洗浄1回目として100μl/分で100μl洗浄および40
洗浄1回目の後にチップに残ったRUに応じて、洗浄2回目として100μl/分で80μl洗浄。
【0230】
データ分析
2分子結合反応について結合および解離動態曲線を、質量移動限界と適合するおよびしない1: 1 結合 を用いて分析した。質量移動パラメーターを含めることによって導体の顕著な改善は達成されず、本実験において質量移動現象は有力でなかったことを示した。
【0231】
2−7−SC−4およびPEG−40k−2−7−SC−4をこの目的のために調製した。
【0232】
FACS結果は、SCA his−タグ部分の有無でTNF−αへのD2E7/PEG−D2E7 SCA結合に差は無かったことを、独立して示した。
【0233】
Biacoreおよび細胞レスキュー試験からの結果はまた、his−タグ部分は抗原およびSCAの結合現象の原因でないことを確認した。
【0234】
直接結合動態は、TNF−αをCM5チップ上に固定化し、および結合したリガンドの上に2−7−SC−2の未修飾型およびPEG型のさまざまな濃度を流すことによって測定した。下記の表5は、異なる型の2−7−SC−2SCAのka(kon)、kd(koff)、KA、およびKD値を提供する。
【表5】
【0235】
上記の表5は、PEG化SCAタンパク質がリガンドに対する高い親和性を維持することを確認する。しかし、異なるPEG−SCA設計分子はon速度およびoff速度に差を示す。特に、2−7−SC−2の40kDaPEG型は、親SCAと比較した際に顕著に減少したon速度としかし保たれたoff速度を有する。これは、BIACoreチップ上のこの人工結合環境における、大きくおよび可塑性であるPEGポリマーによる立体障害作用を反映する可能性がある。対照的に、本研究で別に記載する細胞系検定法は、未修飾のおよび40kDaPEG化SCAタンパク質について同様の結合効力を示した。
【0236】
PEG化によるon速度およびoff速度動揺における特異的な傾向は、複合体化タンパク質に関してポリマーの化合物特異的な立体構造または配置を明らかにする可能性がある。追加の下記のPEG−SCA化合物についてのさらなる試験はこの可能性を強調する。2−7−SC−4−40kDa−PEGデータは、PEGポリマーのC末端への直接の配置は実質的にoff速度を改善したことを示す。この試験で開示された通りの、SCAシステイン配置およびPEGポリマー質量の規定のパラメーターを用いた戦略は、任意の個別のPEG−SCAタンパク質複合体について結合および活性特性の最適化を可能にする。
【0237】
2−7−SC−5および2−7−SC−7のrhTNFへの結合動態
直接結合動態は、TNF−αをCM5チップ上に固定化し、および結合したリガンドの上に2−7−SC−5および2−7−SC−7の未修飾型およびPEG型のさまざまな濃度を流すことによって測定した。下記の表は、異なる型の2−7−SC−5および2−7−SC−7のka、kd、KA、およびKD値を提供する。
【表6】
【表7A】
【表7B】
直接結合動態は、TNF−αをCM5チップ上に固定化し、および結合したリガンドの上に2−7−SC−3/2−7−SC−7の未修飾型およびPEG型のさまざまな濃度を流すことによって測定した。下記の表は、異なる型の2−7−SC−3および2−7−SC−7のka、kd、KA、およびKD値を提供する。
【表8A】
【表8B】
実施例8
TNF−α細胞毒性の中和の検定
TNF−α細胞毒性の中和の細胞系検定法を下記の通り実施した。
【0238】
WEHI−13VAR細胞(American Type Culture collectionから入手、ATCC番号CRL−2148)はアクチノマイシンDの存在下でTNF−αに対してより感受性が高く、および検定に用いられた。
【0239】
WEHI−13VAR細胞を96ウェルプレートにウェル当たり10,000細胞にて播種し、および一夜37℃にて加湿インキュベーター内で5%CO2でインキュベートした。
【0240】
D2E7SCAタンパク質およびそのPEG化型の、ある範囲の濃度を、96ウェルプレート中の播種された細胞へ、培地中の10g/mlから2.5ng/mlの段階希釈で加えた。
【0241】
D2E7 SCA化合物の添加の直後に、rhTNF−α(Pierce)を各ウェルへ1.0ng/mlの濃度で加えた。細胞を次いで24時間増殖させ、および細胞の生存を、15μlのMIT色素試薬(品番G4000,Promega Corporation [Madison,Wisconsin])(3−(4,5,ジメチルチアゾール2イル)2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)の添加によって取扱説明書に従って判定した。細胞レスキューの分析は、D2E7処理細胞の生存度を未処理細胞と、TNF−αの存在下で比較することによって実施した。
【0242】
対照ウェルは、未処理細胞、およびTNF−αだけで処理した細胞から成った。対照ウェルの細胞は、生存度の完全な消失を示した。実験ウェル中の生存細胞(またはレスキューされた細胞)の割合をD2E7濃度の対数に対してプロットし、およびデータの各セットについてIC50値を決定した。それぞれの値は3連の実験セットに由来した。
【0243】
TNF−α致死性からのD2E7SCAタンパク質による細胞レスキュー
後掲の表9A、9Bおよび9Cに列記されたもののような抗TNF−α SCAタンパク質の、細胞をTNF−αのネガティブな作用から保護する能力は、TNF−α感受性細胞株を使用し、およびその細胞を、SCAタンパク質2−7−SC−2と共にまたはそれ無しで、TNF−αと接触させることによって確認された。結果は、実施例1によって調製された他のSCAタンパク質を用いて実施された別の試験と合致した。
【0244】
材料および方法
細胞株:WEHI−13VAR細胞;ATCC番号CRL−2148、マウス細胞株
増殖:2mM G−グルタミン、1.5g/L重炭酸ナトリウム、4.5g/Lグルコース、10mM HEPES、および1.0mMピルビン酸ナトリウム、および10%FBSを含むRPMI1640培地
凍結保存用試薬:培地95%およびDMSO5%。
【0245】
測定方法
WEHI−13VAR細胞をトリプシン処理しおよび96ウェルプレートに10,000細胞/ウェルで完全RPMI−1640培地中に播種し、および12時間、37℃にて5%CO2の加湿インキュベーター内で定着させた。
【0246】
細胞をPBSで洗浄し、および各ウェルに新しい培地を加えた。後掲の表9A、9Bおよび9Cに列記されたものを含む、さまざまなD2E7SCA変異体およびそのPEG化型をウェルに加えた。SCAは10μg/mlから2.5ng/mlまで段階希釈した(完全RPMI培地で希釈)。対照細胞にはD2E7を加えなかった。
【0247】
D2E7化合物の添加直後に、組換えhTNF−α(1.0ng/ml、完全培地でないRPMI培地で希釈)を各ウェルに加えた。未処理の対照細胞にはTNF−αを加えなかった。
【0248】
細胞を24時間、37℃にて5%CO2の加湿インキュベーター内で培養した。インキュベート期間の終了時に、15μlのMTT染色試薬(品番G4000,Promega Corporation)を各ウェルに加え、および、停止溶液を各ウェルに加えるまで、プレートを4時間37℃にてインキュベートした。各ウェルの内容物をよく混合し、および結晶を一夜室温にて溶解させた。
【0249】
プレートを570nmおよび630nmにて96ウェルプレートリーダー(Molecular Devices)で読み取り、および吸光度単位における差(細胞生存度の指標)を、TNF−α細胞毒性に対して細胞をレスキューするために用いたD2E7化合物の濃度に対してプロットした。
【0250】
50%の細胞がレスキューされたD2E7SCAタンパク質濃度を、log[D2E7]をX軸および%レスキューをY軸パラメーターとして用いた生存度グラフから、実験の各セットについて決定した。
【0251】
25℃、50mMリン酸ナトリウムpH7.0、1mMEDTAでのMal−PEG(20kDa)ポリマーの安定性を、220nmから400nmまで0、2、4、22、および33時間のUV吸収スキャンによって調べた。33時間後25℃にて、3mMシステインを加え、および混合物を5分間インキュベート後にスキャンした。時間依存性300nmの特徴的なピークの時間依存的な変換が定量された。
【0252】
注:WEHI−13VAR細胞はTNF−αおよびリン補トキシンに対して、L929(ATCCCCL−1)よりも感受性が高い。アクチノマイシンDの非存在下ではこれらの細胞はTNFに対する感受性を30日以内に失う。また、アクチノマイシンDの添加はD2E7化合物による細胞のレスキューに有害であることが見出された。
【0253】
未修飾の2−7−SC−2、2−7−SC−2−NE−マレイミド、SK、20K、および40KPEG化2−7−SC−2を、細胞をTNF媒介性死滅からレスキューする能力について分析した。表9Aは2−7−SC−2の各型についてIC50値(50%のWEHI−13VAR細胞を1.0ng/ml TNFによる死滅からレスキューする)を提供する。
【表9A】
【表9B】
【表9C】
これらのデータは、D2E7 SCAの設計されたPEG化型が、サイトカインTNF−αの結合および中和における同様の生物活性をこの細胞系検定において示すことを確認する。PEG−SCA化合物は、したがって、このサイトカインを効果的に中和しおよびこれらの細胞上のTNF−α受容体へのその結合を妨げることができる。
【0254】
実施例9
D2E7SCAおよびPEG−SCAの薬物動態
試験手順:ICRマウスにおけるSCAおよびPEG−SCA複合体の薬物動態。
【0255】
試験目的
本試験は、SCAD2E7(2−7−SC−2および2−7−SC−5)、および、PEG(5kd)、PEG(20kd)およびPEG(43kd)複合体を含むPEG化型の、ICRマウスにおける血漿薬物動態を調べるために設計された。
【0256】
被験物質(投与前−20℃保存)
D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)(100%活性w/w)
PEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)(57.4%活性w/w)
PEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)(38.6%活性w/w)。
【0257】
試験システム
種:ICR(Sprague Dawley Harlan)マウス
週齢:7〜8週
性別:雌
体重:開始時体重範囲:約25g。
【0258】
動物管理:
マウスはUniversity of Medicine and Dentistry of New Jersey (「UMDNJ」)動物施設で飼育箱にケージ当たり5個体を飼育した。ケージは"Guide for the Care and Use of Laboratory Animals of the Institute of Laboratory Animal Resource",National Research Councilに準拠したサイズとした。汚物は少なくとも週2回除去した。ケージには試験、被験物質、動物数、性別、および用量レベルを示すケージカードを明瞭に標示した。動物は試験開始前1週間にわたって順化した。
【0259】
飼料
マウスは水道水および市販の実験動物飼料を自由摂取させた。
【0260】
試料調製
D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)はPBSで0.556mg/mL D2E7に希釈した;
PEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)はPBSで0.503mg/mL D2E7当量に希釈した;
PEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)はPBSで0.541mg/mL D2E7当量に希釈した;
リン酸緩衝生理食塩水;140mM NaClを含む10mMリン酸ナトリウム、pH6.5。
【0261】
投与部位
D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)、PEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)、およびPEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)複合体は単回投与(1日目)として尾静脈から静脈投与した。
【0262】
実験計画
54個体のマウスは下記の表10の図式に従って割付、投与および採血した。
【表10】
【0263】
未処理対照血清の採取のため、2個体の未処理マウスを心臓穿刺によりEDTA入り試験管へ採血した。
【0264】
マウスに個体当たり200μLのD2E7(2−7−SC−5)、個体当たり180μLのPEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−5)、および個体当たり190μLのPEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−5)複合体を静脈注射した。0.09%アベルチンを用いて鎮静後、マウスを後眼窩洞からEDTA入りバイアルへ採血した。2分、15分、30分および1時間にマウスを100μL採血し、および3時間、6時間、24時間、48時間、72時間および96時間にマウスを心臓穿刺により〜1000μL採血して死亡させた。血液の遠心分離後に血漿を回収し、およびドライアイス上で−80℃にて直ちに凍結させた。
【0265】
血漿試料を融解し、およびD2E7化合物の濃度をELISAによって測定した。データをWinNonlinソフトウェアを用いてモデル化してD2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)、PEG(20kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)、およびPEG(43kd)−D2E7(2−7−SC−2、2−7−SC−5)薬物動態パラメーターを決定した。
【0266】
臨床試験:マウスは受領時に目視検査した。臨床的異常の徴候に関する詳細な身体診察は、過剰な取り扱いを避けるために、目視評価に従って必要な場合のみに実施した。マウスを被験物質の輸液後に毎日1回、死亡および処置に対する反応の徴候に関して目視検査した。死亡および臨床徴候はすべて記録した。状況に応じて、より頻回の検査を実施した。
【0267】
動物管理規定:本試験は動物福祉に関する現行ガイドライン(NIH Publication 86−23,1985)に準拠して実施した。
【0268】
マウスにおけるD2E7SCAおよびPEG−D2E7SCA複合体の薬物動態:D2E7SCAおよびPEG−SCAの酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
試料調製
試験したSCAの直線範囲は0.2ng/mlから30ng/mlの間であった。直線範囲内のタンパク質濃度ng/mlおよび光学測定値を分析に用いた。
【0269】
標準SCAまたはPEG−SCAを、分析した血漿試料と同様の希釈係数となるように血漿で希釈したか、または直接に希釈緩衝液(0.1%BSAおよび0.05%Tween−20を含むPBS、pH7.4)で希釈した。手順を簡略化するため、標準品を血漿試料分析用の希釈緩衝液で希釈した。静脈または皮下投与による投与量は4.5mg/kgであった。静脈投与による血漿試料に関する希釈係数は、0.03〜3時間の試料について500、およびSCAの6〜96時間試料について10、PEG−5k−SCAの0.03〜24時間試料について500および4〜96時間試料について10、PEG−20k−SCAの0.033〜6時間試料について800および24〜96時間試料について100、およびPEG−40k−SCAのすべての試料について800であった。皮下投与による血漿試料の希釈係数は、SCAのすべての試料について200、およびPEG(20k)−SCA.のすべての試料について300であった。
【0270】
ELISA手順
サンドイッチELISAを用いてSCAおよびPEG−SCA複合体の血漿濃度を測定した。試料は抗体によって検出された規定の組成物に関して測定した。捕捉抗体は、プロテインAおよびD2E7−結合アフィニティカラムによって精製したポリクローナル抗D2E7抗体であった。TNF−αへの結合のために、プレートをTNF−αでコーティングした。一次および二次抗体はそれぞれ、ビオチン化抗D2E7抗体およびストレプトアビジン−ペルオキシダーゼであった。Maxisorpプレートを、400ng/ウェルの抗D2E7抗体またはTNF−αを含む50μlの50mM重炭酸ナトリウムで25℃にて一夜コーティングした。同時に、試料希釈のために、Nuncマイクロウェルプレートまたはタンパク質の吸収が最小である任意の標準96−ウェルプレートを、ブロッキング緩衝液(1%BSA、5%スクロース、および0.05%NaN3を含むPBS、pH7.4)を用いて4℃にて一夜ブロッキングした。翌日、コーティング溶液およびブロッキング溶液をELISAおよびNuncプレートの両方からアスピレーターを用いて除去した。ELISAプレートはブロッキング溶液(250ul/ウェル)を用いて少なくとも1時間25℃にてブロッキングし、およびNuncプレートは、洗浄緩衝液(0.05%Tween−20を含むPBS、pH7.4)を用いて3回洗浄したかまたは25℃にて風乾させおよび以降の分析のために4℃にて保存した。ブロッキング溶液を除去後のELISAプレートは洗浄緩衝液を用いて3回洗浄したかまたは25℃にて風乾させおよび以降の使用のために4℃にて密封して保存した。血漿試料はNuncプレートの上から下へ連続的に1:2希釈し、各ウェルに120μlを残した。希釈緩衝液を用いた前希釈後に、100μlの試料をELISAプレートへ移し、および4℃にて一夜インキュベートした。試料溶液を除去しおよびプレートを、洗浄緩衝液を用いて3回洗浄後、20ngビオチン抗D2E7抗体を含む50μlの希釈緩衝液を各ウェルに加えた。試料は25℃にて2時間インキュベートした。一次抗体を除去しおよびプレートを洗浄緩衝液で4回洗浄した後、100−ulストレプトアビジン−ペルオキシダーゼを1:16、000希釈で加えた。プレートを25℃にて1時間インキュベートした。溶液を除去しおよびプレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した100μlのTMBE基質を添加後10〜20分で発色し、および50μlの1M H2SO4を加えることによって停止した。450nmでの吸高度を記録した。
【0271】
データ取り込みおよび分析
データはMolecular Devicesマイクロプレートリーダーで取り込みおよび分析した。標準曲線は、標準物質の濃度に対する450nmでのエンドポイントの光学密度をプロットすることにより、および0.99以上の相関係数を有する最適な曲線を描くことによって得た。すべての未知試料濃度は、希釈係数を組み込んだ後に標準曲線から計算した。適当な光学密度を有するすべてのデータ点の最も近い数がその結果のために平均されている。
【0272】
マウスにおけるD2E7SCAおよびPEG−D2E7SCA複合体の薬物動態
すべての2−7−SC−2系(2−7−SC−2、エチル−2−7−SC−2、PEG−5k−2−7−SC−2、PEG−20k−2−7−SC−2、PEG−40k−2−7−SC−2)についてのPKパラメーターを決定した。2−7−SC−5、PEG−20k−2−7−SC−5、およびPEG−40k−2−7−SC−5についてのPKパラメーターを決定した。2−7−SC−2およびPEG−20k−2−7−SC−2についての皮下注射によるPKパラメーターもまた決定した。
【0273】
予備実験から、抗218リンカーを用いた2−7−SC−2のより低い検出感度(50ng/ml)が観察された。マウスにおける循環半減期の約100倍の延長が、40kDaPEG−SCA化合物(2−7−SC−2、2−7−SC−5)において、未修飾SCAタンパク質と比較した際に観察された。
【0274】
下記の表11は、静脈注射(IV)または皮下(SC)注射によって投与された2−7−SC−2、PEG−2−7−SC−2、2−7−SC−5、PEG−2−7−SC−5について決定された薬物動態パラメーターを示す。
【表11】
【0275】
これらの結果は、PEG化SCAタンパク質の循環寿命を、治療上有用な薬物動態の範囲にわたるように設計できることを実証する。40kDaPEG結合SCAにおける血清半減期の2logの延長は、これらの化合物を完全なモノクローナル抗体の薬物動態範囲に置く。抗原結合部位から離れた独特の部位でのPEGポリマーの部位特異的結合は、活性な抗原結合タンパク質の製造だけでなく、ランダムなアミン化学を用いたSCAタンパク質PEG化の相当な不均一性とは対照的な、組成が相対的に均一な製品の製造もまた可能にする。20kDaPEG化SCAタンパク質と比較した際の本試験の40kDaPEG化SCAタンパク質の循環寿命の大差は、いくぶん意外であった。約20kDaPEGでの薬物動態のプラトーの証拠があったランダムPEG化(CC49)SCAタンパク質の我々の結果に基づき、12kDaPEGは同等の循環寿命を示したため、我々はこれを予測しなかった。
【0276】
本発明がどのように作用し得るかに関してはいずれの理論または仮説にも拘束されない一方、40kDaPEG−SCA化合物の大幅に延長された循環寿命にも寄与するのは分枝鎖構造であると考えられている。特に興味深いのは、PEG−SCA(20kDaPEG)の皮下注射での使用における成功である。この投与経路は、静脈投与よりも顕著に良好なAUC値を与えた。皮下経路は、PEG−SCA治療薬の処方のために最終的に好ましい可能性がある。SCAへのPEGのリンカー結合は成功し、C末端PEG結合についての動物実験に劣らなかった。おそらく、PEGのリンカー結合はまた、SCA安定性の増大および、抗原性および/またはタンパク質分解の低下にも寄与し得る。
【0277】
実施例10
ビス−マレイミド−PEGを介する二量体D2E7PEG−SCAタンパク質
ポリマー1個当たりSCAタンパク質2個を有する2価PEG−SCA化合物を作製するために、ビス−マレイミド−PEGポリマーを使用した。これらは活性化マレイミド基をポリマーの両端に有する。SDSPAGE分析は、SCA−PEG−SCA化合物を本開示の方法を用いて合成できたことを実証した。反応pHおよび反応モル比の影響はそれぞれ表12および表13に示す。
【表12】
【0278】
データは4〜20%SDS−PAGEゲルについてのゲル画像分析によって得られた。ビス−mal−PEG(20k)を100mMリン酸ナトリウム、pH6に溶解して濃度3.7mg/mlとした。それを次いで1mg/ml D2E7 2−7−SC−2を含む100mMリン酸ナトリウム、pH6および1mM EDTAへ、D2E7 2−7−SC−2の1/30から1/10容量を徐々に加え、および反応モル比を示した。反応は25℃にて窒素中で1.5時間実施した。
【表13】
【0279】
反応は、1mg/ml D2E72−7−SC−2および0.12mg/mlビス−mal−PEG化合物を0.165:1(ビス−mal−PEG:2−7−SC−2)の反応モル比で含む100mMリン酸ナトリウムを、表記のpHで含んだ。反応は25℃にて窒素中で2時間実施した。試料は4〜20%SDS−PAGEゲルで分析し、および各化合物の相当するバンドを定量した。高分子量不純物は1%未満であり、および2−7−SC−2の二量体は5%未満であった。
【0280】
実施例11
マウスにおける抗TNF−α活性の確認
本実施例は、参照により本開示に含まれるGalanos et al.1979,Proc.Nat'l Acad Sci(USA) 76: 5939−5943に記載された通り、TNF−α曝露に基づく標準動物モデルにおいて、TNF−αによって促された炎症カスケードの中和(予防)における、PEG化抗腫瘍壊死因子−α一本鎖抗体(Peg−抗TNF−α SCA)、未修飾抗TNF−α SCA、およびHumira(登録商標)(完全なD2E7)抗TNF−α抗体の抗力を確認した。
【0281】
要約すると、TNF−αをD−ガラクトサミン(NGal)感作マウスへ腹腔内経路(i.p.)で注射することにより、C57/BL6マウスにおいてエンドトキシン血症が誘導された。要約すると、マウスを組換えヒトTNF−α(1.0μg/個体)およびN−ガラクトサミン(20mg/個体)の組合せに曝露する30分前に、C57/BL6マウスに異なる用量の未修飾SCA、PEG−SCA、およびHumira(登録商標)をi.p.注射した。生存したマウスを24時間後に安楽死させた。
【0282】
NGalおよびTNFの同時注射は、ほぼすべての動物に24時間以内に致死を生じた。1マイクログラムのTNFおよび20mgのNgalの腹腔内(「IP」)投与の30分前に、さまざまな用量のD2E7MAb(Humira(登録商標))、TNFを中和するMab、または20または40kDaPEG−SCA化合物を投与した。E2E7MAbおよびPEG−SCA化合物の両方で処理したマウスは、同等の用量で比較的高い生存率を示した。
【0283】
材料および方法
供試動物は雌C57B1/6(Sprague Dawley Harlan)マウス、7〜8週齢、開始時に体重約25gであった。マウスは水道水および市販の実験用飼料の自由摂取で維持された。TNF−αによる曝露に対する保護的性質について試験した物質は、上述の通り調製した2−7−SC−5未修飾SCA;2−7−SC−5−20K−PEG−SCA;2−7−SC−5−43K−PEG−SCA、および未修飾d2E7MAb(Abbott Immunology,Abbott Park,IllinoisからのHumira(登録商標))であった。対照はリン酸緩衝溶液(「PBS」)であった。物質は単回腹腔内(「IP」)注射によって投与した。
【0284】
マウス126個体を下記の手順書に従って割り付けた:
【表14】
【0285】
少なくとも1週間の順化後、マウスに上記に示した指定の処置をi.p.注射した。この注射(t=0)の30分後、マウスに指定の刺激物質をi.p.曝露した。(マウスは1.0μg/個体の組換えTNF−αを含む50μl PBSおよび/または20mg/個体のD−ガラクトサミンを含む200μl PBSを投与された。)
上記の実験を、その後同一の手順を用いて、しかしより高用量の被験化合物を用いて繰り返した:2−7−SC−5−20K−PEG−SCAおよび2−7−SC−5−40K−PEG−SCAのそれぞれについて1個体当たり0.125g、0.625μg、2.5gおよび10.0g。非複合体化2−7−SC−5SCAを20μgで試験し、および完全なD2E5(Humira)を0.625g/個体で試験した。
【0286】
結果
%生存データを化合物の用量に対してプロットした(データ記載せず)。TNF−αに曝露されたマウスに少なくとも70%保護を与える化合物の用量を効力比較のベースラインと考えた。同一の用量(0.625g/動物)のHumira(登録商標)およびPEG−SCA(20k−および40kDa−PEG−SCAの両方)が、TNFに誘導される致死からマウスを保護した。しかし、これらのマウスで同様のレベルの保護を達成するためには、より高用量の、未修飾の非複合体化SCA(20μg/動物すなわち約800μg/kg)が必要であった。モル比では、完全長抗体と同等の生存の等価を達成するためには、約3倍過剰の20−または40kDa−PEG−SCAが必要であることを、得られたデータは実証した。一方、TNFに誘導される致死に対する同様の保護を達成するためには100倍モル過剰の未修飾SCAが必要であった。これらのデータは、PEGによるD2E7SCAの修飾は、血漿中のタンパク質の循環半減期を増大させることによって、未修飾のタンパク質に対して明らかな長所を提供することを示唆する。
【0287】
供試動物は平均して約25グラムであったため、0.625μg/個体は約25μg/kgの用量に相当し、および10μg/個体は約400μg/kgに相当する。
【図面の簡単な説明】
【0288】
【図1A】図1Aは、構造VL−218−VH−his6を有しかつCysムテインを持たないSCA2−7−SC−1をコードするDNA分子の配列(配列番号1)、および発現されたタンパク質(配列番号10)を示す。
【図1B】図1Bは、構造VL−218−VH−his6を有しかつC末端Cysを持つSCAをコードする2−7−SC−2をコードするDNA分子の配列(配列番号2)、および発現されたタンパク質(配列番号11)を示す。
【図1C】図1Cは、構造VH−(GGGGS)3−VL−his6を有しかつC末端Cysを持つSCAをコードする2−7−SC−3をコードするDNA分子の配列(配列番号3)、および発現されたタンパク質(配列番号12)を示す。
【図1D】図1Dは、構造VL−218−VHを有しかつC末端Cysを持つSCAをコードする2−7−SC−4をコードするDNA分子の配列(配列番号4)、および発現されたタンパク質(配列番号13)を示す。
【図1E】図1Eは、構造VL−218−VH−his6を有しかつリンカー2位にCysを持つSCAをコードする2−7−SC−5をコードするDNA分子の配列(配列番号5)、および発現されたタンパク質(配列番号14)を示す。
【図1F】図1Fは、構造VL−218−VH−his6を有しかつリンカー2位にCysおよびC末端にCysを持つSCAをコードする2−7−SC−6をコードするDNA分子の配列(配列番号6)、および発現されたタンパク質(配列番号15)を示す。
【図1G】図1Gは、構造VH−(GGGGS)3−VL−his6を有しかつリンカー5位にCysを持つSCAをコードする2−7−SC−7をコードするDNA分子の配列(配列番号7)、および発現されたタンパク質(配列番号16)を示す。
【図1H】図1Hは、構造VL−218−VH−his6を有しかつN末端およびC末端の両方にCysを持つSCAをコードする2−7−SC−8をコードするDNA分子の配列(配列番号8)、および発現されたタンパク質(配列番号17)を示す。
【図1I】図1−Iは、構造VL−GGGGS−VH−his6を有しかつ遊離のCysを持たないSCAをコードする2−7−SC−9をコードするDNA分子の配列(配列番号9)、および発現されたタンパク質(配列番号18)を示す。
【図2】図2Aはクローン2−7−SC−2SCA発現を示す。SCAタンパク質の発現は、1%メタノールすなわちMeOHによってPichia培養で誘導した。27kDaを矢印(「→」)で示す。 図2Bは、クローン2−7−SC−2についての、画分のクマシーブルー染色によるSDS−PAGEゲル分析、および各工程の収率を含む、発現および精製データを示す。少量の54kDa以下のジスルフィド結合二量体を染色ゲルに見ることができる。図注:STD、Mark12タンパク質分子量標準物質;SUP、発酵採取物上清;DIA、ダイアフィルトレーション上清;DEAE、第1のDEAEクロマトグラフィー非吸着画分;Ni++、ニッケル親和性クロマトグラフィー後の溶出試料;DEAE、第2のDEAEクロマトグラフィー。ピークは、矢印(「→」)で示す通り、約27kDaに見ることができる。
【図3A】図3AはmPEG−MALの構造を示す。
【図3B】図3BはmPEG2(MAL)の構造を示す。
【図3C】図3CはmPEG(MAL)2の構造を示す。
【図3D】図3DはmPEG2(MAL)2の構造を示す。
【図3E】図3Eはチオール−SCAと活性化PEG−MALとの反応を示す。
【図3F】図3Fはビニルスルホン活性PEGを示す。
【図4】図4は、200から400nmの間の波長に対する吸収のスペクトルプロットである。曲線Aはシステイン、3mMである;曲線BはPEG−MAL(1mM)+システイン(3mM)反応後である;および曲線CはPEG−MAL 1mMである。
【図5】図5Aは、ブリリアントブルー染色によって可視化した2−7−SC−5および2−7−SC−5複合体のSDS−PAGE分析を示す。レーン1はMARK12(Invitrogen)タンパク質サイズ標準物質を提供し、レーン2は非複合体化2−7−SC−5SCAであり、レーン3はPEG(20K)2−7−SC−5SCAであり、およびレーン4はPEG(40K)2−7−SC−5SCAである。 図5Bは、ヨード染色によって可視化した2−7−SC−5および2−7−SC−5複合体のSDS−PAGE分析を示す。レーン1はMARK12タンパク質サイズ標準物質を提供し、レーン2は非複合体化2−7−SC−5SCAであり、レーン3はPEG(20K)2−7−SC−5SCAであり、およびレーン4はPEG(40K)2−7−SC−5SCAである。
【図6A】図6Aは、2−7−SC−2SCAの存在下での、細胞受容体へのビオチン化TNF−αの結合のフローサイトメトリー分析を示す。曲線1は蛍光標識化なしの細胞集団を表し、曲線2はビオチン−TNF−αおよび次いでストレプトアビジン−PEへの結合後の細胞集団を表し、曲線3はSCA、ビオチン−TNF−α、および次いでストレプトアビジン−PEとの予備インキュベート後の細胞集団を表す。
【図6B】図6Bは、2−7−SC−2PEG(20K)SCAの存在下での、細胞受容体へのビオチン化TNF−αの結合のフローサイトメトリー分析を示す。曲線1は蛍光標識化なしの細胞集団を表し、曲線2はビオチン−TNF−αおよび次いでストレプトアビジン−PEへの結合後の細胞集団を表し、曲線3はPEG−SCA、ビオチン−TNF−α、および次いでストレプトアビジン−PEとの予備インキュベート後の細胞集団を表す。
【図6C】図6Cは、2−7−SC−2PEG(40K)SCAの存在下での、細胞受容体へのビオチン化TNF−αの結合のフローサイトメトリー分析を示す。曲線1は蛍光標識化なしの細胞集団を表し、曲線2はビオチン−TNF−αおよび次いでストレプトアビジン−PEへの結合後の細胞集団を表し、曲線3はPEG−SCA、ビオチン−TNF−α、および次いでストレプトアビジン−PEとの予備インキュベート後の細胞集団を表す。
【図7】図7は、D2E72−7−SC−2SCAタンパク質およびPEG−SCA誘導体のウェスタンブロット分析を示す。一次検出抗体は、精製組換えSCAタンパク質で免疫したウサギから調製した抗2−7−SC−1SCAウサギ抗血清であった。レーン1および7、分子量マーカー(250、148、98、64、50、36、22、16、6および4kDa);レーン2、2−7−SC−2SCAタンパク質;レーン3、エチル−2−7−SC−2;レーン4、PEG(5kDa)−2−7−SC−2;レーン5、PEG(20kDa)−2−7−SC−2;レーン6、PEG(40kDa)−2−7−SC−2。
【図8】図8は、D2E72−7−SC−2およびPEG化型のバンドのスキャン画像濃度を示し、組換えSCAタンパク質およびPEG−SCA複合体とのこの抗D2E7抗血清の反応性を確認する。バンドAは2−7−SC−2であり、バンドBは2−7−SC−5であり、バンドCはPEG(20k)−2−7−SC−2であり、バンドDはPEG(20k)−2−7−SC−5であり、バンドEはPEG(40k)−2−7−SC−2であり、バンドFはPEG(40k)−2−7−SC−5である。
【図9】図9は、薬物動態試験のための代表的な一連の試料のSDSPAGE分析を示す。2−7−SC−2SCAタンパク質および2−7−SC−2PEG−SCA複合体はクマシーブルー染色ゲル上で調べた。左側のゲル上で、付加した試料は非還元であった。右側のゲル上で、試料は負荷前に3mMベータ−メルカプトエタノールで還元しおよび85℃へ2分間加熱した。約10マイクログラムのタンパク質を各レーンに負荷した。図注:MM−分子量標準物質;レーン1、2−7−SC−2SCA;レーン2、N−エチルマレイミドで修飾した2−7−SC−2SCA;レーン3、2−7−SC−2SCA−PEG(40kDa);レーン4、2−7−SC−2SCA−PEG(20kDa)。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンオキシドポリマーに部位特異的結合可能な一本鎖抗原結合ポリペプチドであって:
(a)抗体重鎖または軽鎖の可変領域の抗原結合部分を含む第1ポリペプチド;
(b)抗体重鎖または軽鎖の可変領域の抗原結合部分を含む第2ポリペプチド;および
(c)前記第1および第2ポリペプチドを繋ぐペプチドリンカー;を含み、
以下の位置より成る群から選択される位置に存在する、ポリアルキレンオキシドポリマーに結合可能な少なくとも1つのCys残基を有し:
(i)重鎖または軽鎖可変領域のC末端;
(ii)重鎖または軽鎖可変領域のN末端;
(iii)ペプチドリンカーの任意のアミノ酸位置;
(iv)N末端およびC末端の両方;
(v)リンカーの2位;
(vi)リンカーの2位およびC末端の両方;および
(vii)それらの組合せ;
かつ、少なくとも1つの抗原結合部位を有し、さらに
TNF−αと結合することを特徴とする一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項2】
前記Cys残基が、リンカーの2位、C末端およびそれらの組合せより成る群から選択される位置に存在することを特徴とする請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項3】
前記第1ポリペプチドが抗体軽鎖の可変領域を含み、かつ前記第2ポリペプチドが抗体重鎖の可変領域を含むことを特徴とする請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項4】
前記第2ポリペプチドのC末端が天然のC末端であることを特徴とする請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドリンカーの大きさが2から18残基であることを特徴とする請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項6】
請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドおよびポリアルキレンオキシドポリマーを含み、ポリアルキレンオキシドポリマーが、Cys残基で一本鎖抗原結合ポリペプチドに共有結合していることを特徴とする複合体。
【請求項7】
前記ポリアルキレンオキシドが、マレイミド、ビニルスルホン、チオール、オルトピリジルジスルフィドおよびヨードアセトアミドリンカーより成る群から選択されるリンカーを介してCys残基で一本鎖抗原結合ポリペプチドに結合していることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項8】
前記ポリアルキレンオキシドが、マレイミドリンカーを介してCys残基で一本鎖抗原結合ポリペプチドに結合していることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項9】
前記ポリアルキレンオキシドの大きさが、約5,000から約40,000ダルトンであることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項10】
前記ポリアルキレンオキシドがポリエチレンオキシドであることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項11】
前記ポリアルキレンオキシドが、少なくとも2つの一本鎖抗原結合ポリペプチドに結合しており、該一本鎖抗原結合ポリペプチドのそれぞれが同一であるかまたは異なることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項12】
前記一本鎖抗原結合ポリペプチドが、さらに別の機能部分と結合していることを特徴とする請求項11記載の複合体。
【請求項13】
前記別の機能部分が、検出可能な標識またはタグであることを特徴とする請求項12記載の複合体。
【請求項14】
請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項14記載のポリヌクレオチドを含む複製可能な発現ベクター。
【請求項16】
一本鎖抗原結合ポリペプチドを作製する方法であって:
(a)請求項15記載の発現ベクターを含む宿主細胞を培養し;さらに
(b)前記宿主細胞によって発現された一本鎖抗原結合ポリペプチドを回収する;工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
試料中に含まれることが疑われるTNF−αを検出する方法であって:
(a)前記試料に、請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドを接触させ;
(b)前記一本鎖抗原結合ポリペプチドがTNF−αに結合したか否かを検出する;工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記一本鎖抗原結合ポリペプチドが、該一本鎖抗原結合ポリペプチドのCys残基を介して、少なくとも1つのポリアルキレンオキシドポリマーに共有結合して複合体を形成していることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記複合体が固相担体に固定されていることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
哺乳類においてTNF−α関連中毒(TNF-α related toxicity)を治療または予防する方法であって、請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドを、哺乳類においてTNF−α活性を阻害するのに有効な量で該哺乳類に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記投与される一本鎖抗原結合ポリペプチドが、少なくとも1つのCys残基を介して、少なくとも1つのポリアルキレンオキシドポリマーに共有結合していることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記一本鎖抗原結合ポリペプチドが、約10μg/kgから約4,000μg/kgの量で投与されることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記一本鎖抗原結合ポリペプチドが、約20μg/kgから約400μg/kgの量で投与されることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項24】
請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドの2つ以上を含み、該一本鎖抗原結合ポリペプチドのそれぞれが同一であるかまたは異なることを特徴とするタンパク質。
【請求項25】
2価、3価または4価であることを特徴とする請求項24記載のタンパク質。
【請求項26】
構成的一本鎖抗原結合ポリペプチドが非共有結合していることを特徴とする請求項24記載のタンパク質。
【請求項27】
構成的一本鎖抗原結合ポリペプチドのペプチドリンカーの大きさが、2から18残基であることを特徴とする請求項26記載のタンパク質。
【請求項28】
構成的一本鎖抗原結合ポリペプチドが共有結合していることを特徴とする請求項24記載のタンパク質。
【請求項29】
単一の多価タンパク質としてコードされていることを特徴とする請求項24記載のタンパク質。
【請求項30】
請求項29記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項1】
ポリアルキレンオキシドポリマーに部位特異的結合可能な一本鎖抗原結合ポリペプチドであって:
(a)抗体重鎖または軽鎖の可変領域の抗原結合部分を含む第1ポリペプチド;
(b)抗体重鎖または軽鎖の可変領域の抗原結合部分を含む第2ポリペプチド;および
(c)前記第1および第2ポリペプチドを繋ぐペプチドリンカー;を含み、
以下の位置より成る群から選択される位置に存在する、ポリアルキレンオキシドポリマーに結合可能な少なくとも1つのCys残基を有し:
(i)重鎖または軽鎖可変領域のC末端;
(ii)重鎖または軽鎖可変領域のN末端;
(iii)ペプチドリンカーの任意のアミノ酸位置;
(iv)N末端およびC末端の両方;
(v)リンカーの2位;
(vi)リンカーの2位およびC末端の両方;および
(vii)それらの組合せ;
かつ、少なくとも1つの抗原結合部位を有し、さらに
TNF−αと結合することを特徴とする一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項2】
前記Cys残基が、リンカーの2位、C末端およびそれらの組合せより成る群から選択される位置に存在することを特徴とする請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項3】
前記第1ポリペプチドが抗体軽鎖の可変領域を含み、かつ前記第2ポリペプチドが抗体重鎖の可変領域を含むことを特徴とする請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項4】
前記第2ポリペプチドのC末端が天然のC末端であることを特徴とする請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドリンカーの大きさが2から18残基であることを特徴とする請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチド。
【請求項6】
請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドおよびポリアルキレンオキシドポリマーを含み、ポリアルキレンオキシドポリマーが、Cys残基で一本鎖抗原結合ポリペプチドに共有結合していることを特徴とする複合体。
【請求項7】
前記ポリアルキレンオキシドが、マレイミド、ビニルスルホン、チオール、オルトピリジルジスルフィドおよびヨードアセトアミドリンカーより成る群から選択されるリンカーを介してCys残基で一本鎖抗原結合ポリペプチドに結合していることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項8】
前記ポリアルキレンオキシドが、マレイミドリンカーを介してCys残基で一本鎖抗原結合ポリペプチドに結合していることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項9】
前記ポリアルキレンオキシドの大きさが、約5,000から約40,000ダルトンであることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項10】
前記ポリアルキレンオキシドがポリエチレンオキシドであることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項11】
前記ポリアルキレンオキシドが、少なくとも2つの一本鎖抗原結合ポリペプチドに結合しており、該一本鎖抗原結合ポリペプチドのそれぞれが同一であるかまたは異なることを特徴とする請求項6記載の複合体。
【請求項12】
前記一本鎖抗原結合ポリペプチドが、さらに別の機能部分と結合していることを特徴とする請求項11記載の複合体。
【請求項13】
前記別の機能部分が、検出可能な標識またはタグであることを特徴とする請求項12記載の複合体。
【請求項14】
請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項14記載のポリヌクレオチドを含む複製可能な発現ベクター。
【請求項16】
一本鎖抗原結合ポリペプチドを作製する方法であって:
(a)請求項15記載の発現ベクターを含む宿主細胞を培養し;さらに
(b)前記宿主細胞によって発現された一本鎖抗原結合ポリペプチドを回収する;工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
試料中に含まれることが疑われるTNF−αを検出する方法であって:
(a)前記試料に、請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドを接触させ;
(b)前記一本鎖抗原結合ポリペプチドがTNF−αに結合したか否かを検出する;工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記一本鎖抗原結合ポリペプチドが、該一本鎖抗原結合ポリペプチドのCys残基を介して、少なくとも1つのポリアルキレンオキシドポリマーに共有結合して複合体を形成していることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記複合体が固相担体に固定されていることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
哺乳類においてTNF−α関連中毒(TNF-α related toxicity)を治療または予防する方法であって、請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドを、哺乳類においてTNF−α活性を阻害するのに有効な量で該哺乳類に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記投与される一本鎖抗原結合ポリペプチドが、少なくとも1つのCys残基を介して、少なくとも1つのポリアルキレンオキシドポリマーに共有結合していることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記一本鎖抗原結合ポリペプチドが、約10μg/kgから約4,000μg/kgの量で投与されることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記一本鎖抗原結合ポリペプチドが、約20μg/kgから約400μg/kgの量で投与されることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項24】
請求項1記載の一本鎖抗原結合ポリペプチドの2つ以上を含み、該一本鎖抗原結合ポリペプチドのそれぞれが同一であるかまたは異なることを特徴とするタンパク質。
【請求項25】
2価、3価または4価であることを特徴とする請求項24記載のタンパク質。
【請求項26】
構成的一本鎖抗原結合ポリペプチドが非共有結合していることを特徴とする請求項24記載のタンパク質。
【請求項27】
構成的一本鎖抗原結合ポリペプチドのペプチドリンカーの大きさが、2から18残基であることを特徴とする請求項26記載のタンパク質。
【請求項28】
構成的一本鎖抗原結合ポリペプチドが共有結合していることを特徴とする請求項24記載のタンパク質。
【請求項29】
単一の多価タンパク質としてコードされていることを特徴とする請求項24記載のタンパク質。
【請求項30】
請求項29記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2006−524510(P2006−524510A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513225(P2006−513225)
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/012458
【国際公開番号】WO2004/096989
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/012458
【国際公開番号】WO2004/096989
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
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