説明

ポリマー薄膜上の設計された細胞増殖およびその生物工学的応用

犠牲ポリマー層でコーティングされ、次いで柔軟ポリマー層でコーティングされた基層を含む構造物から、自立型薄膜を製作する。次に、柔軟ポリマー層上に細胞を播種して、組織を形成させるために培養する。次に、柔軟ポリマー層上に組織を含む自立型薄膜を生成するために、柔軟ポリマー層を基層から放出させる。一つの態様において、細胞は筋細胞であり、自立型薄膜を推進または変位させるように作動させることができる。別の態様において、損傷を受けたヒト組織を処置するために、自立型薄膜を使用する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
本発明は、全体的にまたは部分的に、米国国防総省(the United States Department of Defense)の国防高等研究計画局(the Defense Advanced Research Projects Agency)からの助成金Prime Award第FA9550-01-1-0015号によって支援されている。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
背景
天然において、生細胞は、分裂し、マイクロメートルからメートル規模に渡る構造‐機能階層を創出する複雑な生物系の形成において相互に連結する。このボトムアップ式のアプローチは、細胞の自己集合、ならびに分化した組織および器官への器官形成に方向付けるための遺伝的プログラミングおよび環境刺激に影響力を及ぼす。神経ネットワークの並列処理、横紋筋の、力、ひずみ、および効率の組み合わせ、ならびに病原体への免疫応答を含む能力は、人工の系において達成され得るものをはるかに上回る。したがって、人工的な、一体化した構成要素として生細胞を使用することを取り入れることにより、合成系は、生物学および工学グレードの材料の利点を組み合わせるハイブリッド装置の種類を創出するための能力の前兆となる。これらの構造‐機能関係を要約する、生合成材料または設計された組織を作る努力は、細胞の集団からこの挙動をうまく手に入れるインビボ条件を複製することができないために、しばしば失敗する。例えば、機能的な筋肉組織を設計するには、筋節および筋原線維形成がミクロンの長さの規模で制御されることが必要であり、一方、細胞の整列および連続的な組織の形成は、ミリメートルを超えてセンチメートルの長さの規模の組織的な合図を必要とする。したがって、機能的な生合成材料を作るために、生物‐無生物界面は、マルチスケールの結合を支持する化学的および機械的特性を含む必要がある。
【発明の開示】
【0003】
概要
本明細書において説明されているのは、分子モーターの集団によって作動される堅牢な、本質的に収縮性の生合成材料である。集団は、一つまたは数多くの筋肉細胞、例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞、または心筋細胞を含む。または、細胞の混合物、例えば、筋肉細胞およびニューロン細胞が使用される。
【0004】
横紋筋細胞は骨格筋および心筋を含む。天然において、横紋筋組織は、筋節と呼ばれる収縮性のサブユニットに組織化された高密度の数多くのアクチン‐ミオシン運動複合体を利用し、筋節は心筋細胞および骨格筋芽細胞の長さに渡る筋原線維へと連続的に集合する。これらの筋肉細胞は、グルコースをATPに変換し、Ca2+濃度の制御により興奮‐収縮連関を制御することによって、運動タンパク質のためにエネルギーを供給する。これらの特性に基づいて、筋細胞は単細胞線形アクチュエータとして活用されてきた。これらのアクチュエータは、心筋層などの機械的および電気的に連続している二次元(2D)筋肉組織を形成するように相互に連結することによって、運動タンパク質の作動を同時に進行するために使用される。例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)で形成された自立型(Free-standing)の表面修飾された薄膜は、パターン化された細胞外マトリクス(ECM)タンパク質を用いて、連続的に整列した筋節の筋細胞自己集合および筋原線維の平行束化(parallel bundling)を支持する。筋細胞は収縮機能を提供するが、ポリジメチルシロキサン薄膜は、回復性の弾性および改善された取り扱い特性を提供する。具体的には、ポリジメチルシロキサン薄膜の厚さが筋肉シートの曲げ剛性を規定し、一方、ポリジメチルシロキサン薄膜の構造的完全性が、2D筋細胞組織を崩壊させることなく筋肉組織がほぼ任意の平面形状に形成されることを可能にする。
【0005】
筋肉薄膜(MTF)と呼ばれるこれらの構築物は、所望の機能性に対して設計される。例えば、具体的な態様は、自律的にもしくは外部電気刺激の下で、または両方で、遊泳したりまたは歩行したりする、ソフトロボットアクチュエータおよび半自律的な運動性構築物を含む。空間的に組織化された筋節は、収縮の開始および伝播を制御するための固有の制御系を有する、効率的な線形アクチュエータとして作用する。同期の協調的な収縮の間の筋細胞の短縮は、ポリジメチルシロキサン薄膜を、収縮期中に曲げ、弛緩期中に元の形状に戻す。筋肉薄膜の所望の性能特性は、大きさ、形状、厚さ、組織微細構造、および作動のペーシングを設計することによって得ることができる。一つの例において、これらの可変部分はスイマーの所望の速度を得るために操作される。さらに、半自律的なスイマーにおいて方向付けられた運動性を生じさせるために、本明細書において利用される空間的および時間的な対称性の破壊は、生体模倣的なウナギ状運動のためのモデルとして働く。これらの例に基づいて、筋肉薄膜は、補綴学、組織工学、筋肉駆動微小装置、卓上薬物解析、ならびに機械的および化学的センサーにおいて有用である。
【0006】
筋肉の収縮性を測定するための方法は、筋肉でコーティングされた柔軟ポリマー層を含む筋肉薄膜を提供する段階;筋肉薄膜の末端を、装備する構造に取り付けるかまたは固定する段階;筋肉を収縮させるために刺激を加える段階;および筋肉が収縮した際に筋肉薄膜の変位を測定する段階、によって実施される。薄膜の変位を測定する段階は、筋肉が弛緩した際と比較して筋肉が収縮した際に、筋肉薄膜の曲率半径における変化を検出すること、ならびに収縮速度を測定することによって実施される。本方法は、収縮(例えば、血管収縮(vasocontraction))または弛緩(例えば、血管拡張)を促進する薬物、異常な筋肉活性(例えば、過収縮、過弛緩(excession relaxation)、収縮機能の調節不全(disregulation)(例えば、心臓不整脈または血管痙攣))によって特徴付けられる障害の重症度を、処置または軽減する薬物のための候補化合物をスクリーニングするのに有用である。例えば、収縮性刺激を加える前に筋肉細胞を候補化合物と接触させ、候補化合物の存在下における収縮の程度または収縮の速度を測定して候補化合物の非存在下における変位に対して比較する。薄膜上の細胞は、通常の野生型細胞、罹患した細胞、物理的に損傷を受けた細胞、または遺伝的に改変された細胞である。程度または速度の間の差異は、候補化合物が筋肉機能を変化させる、すなわち、収縮機能を増加させるかまたは収縮機能を減少させることを示す。
【0007】
他の態様において、ニューロン、線維芽細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、または皮膚細胞が、筋肉細胞の代わりに使用される。細胞は機能的に活性であり、このことは、付着した細胞がその細胞型の天然の環境における少なくとも一つの機能を果たすことを意味する。例えば、筋細胞は収縮し、例えば、心筋細胞は単一の軸に沿って特定の方向に収縮する。神経細胞は、別の神経細胞に電気信号を変換するかまたは伝達する。ニューロンは、例えば信号伝播のために使用される。線維芽細胞は、ECM沈着のために使用される。内皮細胞は、血管の構築または修復のために使用される。平滑筋細胞は、ゆっくりとした持続性収縮のために使用される。
【0008】
本明細書において説明される設計された組織構造の一つの使用は、哺乳動物、例えば損傷を受けたかまたは罹患したヒト対象において、対応する組織を修復および/または強化することである。例えば、細胞が播種された薄膜/ポリマーは、補綴装置、組織インプラント、および創傷包帯として、またはそれらにおいて使用される。そのような創傷包帯は、処置することがしばしば困難である外傷、例えば、熱傷、褥瘡、および擦過傷の改善された治癒をもたらす。構造物はまた、他の組織欠損を修復するため、例えば、胃壁破裂症などの出生時の欠損または変性疾患による欠損のための器官修復に有用である。創傷包帯組成物は、携帯可能であり、病院(例えば手術室)での使用ならびに野外(例えば戦場)での使用の両方に適用可能である。
【0009】
本発明の前記および他の特徴および利点は、以下のより詳細な説明から明らかであると考えられる。
【0010】
詳細な説明
生物工学的応用のために、細胞および/またはタンパク質で機能化された自立型の薄膜を作るために使用された製作段階の略図を、図1〜5に提供する。図1に示されるように、基板10は、犠牲ポリマー層14でコーティングされた剛性基材12として製作され;柔軟ポリマー層16は犠牲ポリマー層14を介して剛性基材12に一時的に結合し、設計された表面化学18は、細胞および/またはタンパク質の接着を増強または阻害するために柔軟ポリマー層16上に提供される。細胞20は、図2に示されるように、柔軟ポリマー層18上に播種され、本態様において、パターン化された異方性心筋層を含む組織22を形成するために培養される。次いで、図3に示されるように、柔軟ポリマー層の所望の形状24を切ることができ;図4に示されるように、柔軟ポリマー層16を放出するように犠牲ポリマー層14が溶解するため、ポリマー層16および組織22を含む柔軟な薄膜を一本のピンセット23で剥離することができ、次に作動され得るかまたはさらに改変され得る、図5に示された自立型薄膜26が生成する。
【0011】
基材12は、例えば1 MPaより大きい弾性率を有する金属、セラミック、またはポリマーなどの剛性または半剛性材料から形成される。適した基板の例は、ガラスカバースリップ、ポリエチレンテレフタレート膜、シリコンウェハーなどを含む。一つの態様において、基材は、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAM)から形成された犠牲ポリマー層でコーティングされたガラスカバースリップである。犠牲ポリマー層14は、スピンコーティング、浸漬流延、吹き付けなどを介して剛性基材12に適用され、ここで、基材12は真空下でチャックに装備されて対称軸の周りに基部をスピンさせるように回転され;液体ポリマーを基部12の表面を渡って実質的に均等に広げさせるスピンによって生じた遠心力で、ポリマーが基部12上に滴下される。結果として生じた犠牲ポリマー層14は、続いてその上に形成される追加的なコーティングを一時的に固定する役割を果たす。
【0012】
一つの態様において、犠牲ポリマーは、融解または溶解して、柔軟ポリマー層16の放出をもたらす熱感受性ポリマーである。そのようなポリマーの例は、脱水された際に固体であり、かつ37℃で固体である(この場合、ポリマーは水和しているが比較的疎水性である)、直鎖状の非架橋ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)である。しかしながら、温度が32℃またはそれより低くなると(この場合、ポリマーは水和しているが比較的親水性である)、ポリマーは液体となり、その結果柔軟ポリマー層16を放出する。
【0013】
別の態様において、犠牲ポリマーは温度の変化で親水性となり、その結果疎水性のコーティングを放出する。例えば、犠牲ポリマーは、37℃で疎水性でありかつ32℃で親水性である、水和した架橋N-イソプロピルアクリルアミドであり得る。
【0014】
さらに別の態様において、犠牲ポリマーは、電位の印加時に親水性となり、その結果その上にコーティングされた疎水性構造(例えば、柔軟ポリマー層としてのPDMS)を放出する、電気的に作動されるポリマーである。そのようなポリマーの例には、酸化された際に比較的疎水性であり、かつ還元された際に親水性であるポリ(ピロール)が挙げられる。電気的に作動され得るポリマーの他の例は、ポリ(アセチレン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリナフタレン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、およびポリ(パラ-フェニレンビニレン)などが挙げられる。
【0015】
さらに別の態様において、犠牲ポリマーは、その上にコーティングされた構造物を放出するために溶解され得る分解性バイオポリマーである。一つの例において、ポリマー(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸‐グリコール酸)コポリマー、ナイロンなど)は、加水分解による時間依存的な分解を受ける。別の例において、ポリマーは、酵素作用による時間依存的な分解(例えば、プラスミンによるフィブリン分解、コラゲナーゼによるコラーゲン分解、マトリクスメタロプロテアーゼによるフィブロネクチン分解など)を受ける。
【0016】
犠牲ポリマー層14は、柔軟ポリマー層16への基材12の一時的な接着を提供し、柔軟ポリマー層16は、例えばスピンコーティングを介して同様に適用される。犠牲ポリマー層14の痕跡は、柔軟ポリマー層16からの除去後にその上に検出されてもよい。柔軟ポリマー層16を形成するのに使用され得るエラストマーの例は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)およびポリウレタンを含む。他の態様において、熱可塑性または熱硬化性ポリマーが、柔軟ポリマー層16を形成するために使用される。代替的な非分解性ポリマーには、ポリウレタン、シリコーン‐ウレタンコポリマー、カルボナート‐ウレタンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリスチレンおよびポリブタジエンのコポリマー、クロロプレンゴム、**ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー、ペルフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレン/プロピレンゴム(FEPM)ならびにエチレンビニルアセテート(EVA)が挙げられる。さらに他の態様において、コラーゲン、エラスチン、および他の細胞外マトリクスタンパク質などのバイオポリマーが、柔軟ポリマー層16を形成するために使用される。適した生分解性エラストマーには、ヒドロゲル、エラスチン様ペプチド、ポリヒドロキシアルカノアート、およびポリ(グリセロール‐セバケート)が挙げられる。適した非エラストマー生分解性ポリマーには、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸コポリマーが挙げられる。
【0017】
ポリジメチルシロキサン柔軟ポリマー層16の厚さは、PDMSプレポリマーの粘度およびスピンコーティング速度によって制御されてもよく、硬化後は14〜60μmの厚さの範囲である。ポリジメチルシロキサンプレポリマーを混合した後、その粘度は架橋密度が増加するにつれて増加し始める。混合(0時間)からゲル化(9時間)の間での粘度のこの変化は、異なる厚さのポリジメチルシロキサン薄膜をスピンコーティングするのに利用される。スピンコーティングに続いて、ポリジメチルシロキサン薄膜は、室温(約22℃)または65℃のいずれかで完全に硬化される。
【0018】
次に、柔軟ポリマー層16は、特定の細胞増殖および機能を誘発する(または阻害する)ために設計された表面化学18を用いて、均質にまたは選択的にパターン化される。設計された表面化学18は、表面の親水性を増加させるために、紫外線放射もしくはオゾンへの曝露を介して、または、酸もしくは塩基洗浄、またはプラズマ処理を介して提供され得る。他の態様において、表面化学18は、以下の群より選択することができる。
(a)細胞接着を方向付けるための細胞外マトリクスタンパク質(例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなど);
(b)細胞型に特異的な細胞機能を方向付けるための増殖因子(例えば、神経成長因子、骨形成タンパク質、血管内皮増殖因子など);
(c)脂質、脂肪酸、およびステロイド(例えば、グリセリド、非グリセリド、飽和および不飽和脂肪酸、コレステロール、コルチコステロイド、性ステロイドなど);
(d)糖および他の生物学的に活性を有する糖質(例えば、単糖、オリゴ糖、スクロース、グルコース、グリコーゲンなど);
(e)プロテオグリカン(コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、および/またはケラタン硫酸の付加された側鎖を有するタンパク質コア);糖タンパク質[例えば、セレクチン、免疫グロブリン、ヒト絨毛性ゴナドトロピンなどのホルモン、α-フェトプロテイン、およびエリスロポエチン(EPO)など];プロテオリピド(例えば、N-ミリストイル化、パルミトイル化、およびプレニル化タンパク質);および糖脂質(例えば、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、グリコホスファチジルイノシトールなど)などの、糖質、脂質、ならびに/またはタンパク質の組み合わせ;
(f)ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにポリ-L-リジンなどの、生物学的に誘導されたホモポリマー;
(g)核酸(例えば、DNA、RNAなど);
(h)ホルモン(例えば、タンパク質同化ステロイド、性ホルモン、インスリン、アンジオテンシンなど);
(i)酵素(種類:酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、脱離酵素、異性化酵素、リガーゼ、例:トリプシン、コラゲナーゼ、マトリクスメタロプロテアーゼなど);
(j)薬剤(例えば、βブロッカー、血管拡張薬、血管収縮薬、鎮痛薬、遺伝子治療、ウイルスベクター、抗炎症薬など);
(k)細胞表面リガンドおよび受容体(例えば、インテグリン、セレクチン、カドヘリンなど);
(l)細胞骨格フィラメントおよび/または運動タンパク質(例えば、中間フィラメント、微小管、アクチンフィラメント、ダイニン、キネシン、ミオシンなど);ならびに
(m)親水性ポリマー(例えば、ポリエチレンオキシドまたはpluronics)、が細胞/タンパク質接着を減少させるか、または妨ぐために適用される。
【0019】
表面化学におけるこれらの変化は、ソフトリソグラフィー、自己集合、蒸着、およびフォトリソグラフィーなどの、しかしこれらに限定されない技術を用いて、表面に渡って、均質であってもまたは空間的にパターン化されていても(例えば、5、10、20、50、100ナノメートルからより大きな規模の1〜1,000マイクロメートルの範囲の寸法を有する特徴で)よい。これらの技術の各々が、次に下記で議論される。
【0020】
a)ソフトリソグラフィー
ソフトリソグラフィーにおいて、構造物(特に1nm〜1μmの規模で測定される特徴を有するもの)は、エラストマースタンプ、金型、および適合したフォトマスクを用いて製作または複製される。一つのそのようなソフトリソグラフィー法は、ポリジメチルシロキサンスタンプを用いたマイクロコンタクトプリンティングである。マイクロコンタクトプリンティングは、フィブロネクチンを用いて実現されてきており、ラミニン、コラーゲン、フィブリンなどを含むがこれらに限定されない他の細胞外マトリクスタンパク質に拡張され得る。本ソフトリソグラフィー法はかなり用途が広いため、他のバイオポリマーが同様に使用され得る。マイクロコンタクトプリンティングに使用されるポリジメチルシロキサンスタンプで創出され得るパターンの型以外のバイオポリマー構造物の幾何学的配置には、たとえあったとしても少しの限界しかない。次に、スタンプにおけるパターンの範囲は、集積回路の製造において使用される現今の超小型演算処理技術で取得可能なもの全体に及ぶ。そのように、利用可能な設計は、現代のコンピュータ支援設計ソフトウェアにおいて作成され得るほぼ任意のものを包含する。続いて放出されて使用され得る柔軟ポリマー層16の上部に、一体型のポリ-タンパク質(ポリ-バイオポリマー)層を形成するために、同一または異なるタンパク質を有する同一または異なるスタンプを用いて、多層のバイオポリマーを互いの上部にプリントすることができる。
【0021】
b)自己集合
種々のバイオポリマーは、自発的に自己集合構造物を形成すると考えられる。非限定的に、自己集合の例は、原線維へのコラーゲンの集合、フィラメントへのアクチンの集合、ならびに、塩基対配列に依存した二本鎖および他の構造物へのDNAの集合を含む。ナノメートルからミリメートル規模の空間的に組織化されたバイオポリマー層を創出するために、自己集合を柔軟ポリマー層16上で起こるように方向付けることができる。さらに、自己集合を、ソフトリソグラフィー的に(soft-lithographically)パターン化されたバイオポリマーの上部に、自己集合層を創出するためにソフトリソグラフィーと組み合わせることができる。あるいは、過程を逆の順序で実施することができる。自己集合バイオポリマーは、分子間力の強度および安定性に依存して、柔軟ポリマー層16上でバイオポリマー層の完全性を維持するために架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなど)を用いて安定化されてもよいし、またはされなくてもよい。さもなければ、ファンデルワールス相互作用、水素結合、疎水性/親水性相互作用などに由来する既存の分子間力が、柔軟ポリマー層16上にバイオポリマー骨格を一緒に保持するのに十分強くてもよい。
【0022】
c)蒸着
柔軟ポリマー層16の表面への接触を選択的に制御するために、固体マスクを使用して、バイオポリマーを蒸気相からの凝縮を介して接触可能な領域に沈着させることができる。バイオポリマーを蒸気相に追い込むために、バイオポリマーの蒸気圧が環境チャンバー中の圧力に達するように、圧力を減少させ、かつ温度を上昇させることができる、制御された環境チャンバーにおいて沈着が行われる。蒸着を介して生成されたバイオポリマー表面は、自己集合および/またはソフトリソグラフィーによって創出されたバイオポリマー表面と組み合わせることができる。
【0023】
d)パターン化された光架橋
パターン化された光、X線、電子または他の電磁放射は、フォトリソグラフィーによってマスクを通過させることができる。あるいは、柔軟ポリマー層16上でバイオポリマーが付着する場所を制御するために、ステレオリソグラフィーにおけるような集束ビームの形態で放射を適用することができる。フォトリソグラフィーは、光に曝露される表面領域が、所望のパターンのみを完全なままにするために曝露されたバイオポリマーにその後適用される現像液に可溶かまたは不溶にされるように、本質的に光架橋するか、または、光責任(photoliable)基の放出を介して、またはポリマー鎖の架橋もしくは破壊を促進する二次的な感光性化合物を介して反応性を変化させるバイオポリマーと共に、使用され得る。バイオポリマーは、本質的に感光性であるか、またはさらなる感光性化合物を含むバイオポリマーの水性溶液で提供される。
【0024】
利用可能な光架橋過程の例には、(a)RNAへのタンパク質の紫外線光架橋[A. Paleologue, et al.,“Photo-Induced Protein Cross-Linking to 5S RNA and 28-5.8S RNA within Rat-Liver 60S Ribosomal Subunits,”Eur. J. Biochem. 149, 525-529 (1985)に記載されたような];(b)光反応性アミノ酸の部位特異的組込みによる哺乳動物細胞におけるタンパク質光架橋[N. Hino, et al., “Protein Photo-Cross-Linking in Mammalian Cells by Site-Specific Incorporation of a Photoreactive Amino Acid,”Nature Methods 2, 201-206 (2005)に記載されたような];(c)タンパク質用の光による活性化可能な架橋剤としてのルテニウムビピリジルまたはパラジウムポルフィリンの使用[米国特許第6,613,582号(Kodadek et al.)に記載されたような];および(d)架橋試薬2-(4-アジドフェニルアミノ)-4-(1-アンモニオ-4-アザビシクロ[2,2,2]オクト-1-イル)-6-モルフォ-リノ-1,3,5-トリアジンクロライドを介した結合タンパク質へのヘパリンの光架橋[Y.Suda, et al.,“Novel Photo Affinity Cross-Linking Resin for the Isolation of Heparin Binding Proteins,”Journal of Bioactive and Compatible Polymers 15, 468-477 (2000)に記載されたような]が挙げられる。
【0025】
細胞を付着させるために、図2に示されるように、細胞20が表面18に安定して付着するのを可能にする基板を、細胞懸濁液を有する培養物中に配置する。付着性表面処理の場合は、細胞は表面化学によって規定される様式で材料に結合する。パターン化された化学について、細胞は増殖および機能に関するパターニングに応答する。付着される細胞型の例には、筋肉ベースの運動のための筋細胞(例えば、心筋細胞);電気信号伝播のためのニューロン;細胞外マトリクス伝播のための線維芽細胞;血液接触のための内皮細胞;ゆっくりとした持続性収縮のための平滑筋細胞;および皮膚細胞が挙げられる。
【0026】
基板上の細胞は、その異方性または等方性が設計された表面化学によって決定される二次元(2D)組織(すなわち、200ミクロンの厚さより薄い、または特定の態様において100ミクロンの厚さより薄い、または正に細胞の単層でさえある、細胞層)を細胞が形成するまで、生理的条件の下で(例えば、37℃で)インキュベーターで培養される。特定の形状24(意図された適用に調整された)が、メス32(図3に示されるような)、穿孔装置、打ち抜き型、またはレーザーを用いて柔軟ポリマー薄膜16において切られる。次に、柔軟ポリマー16を剛体基部12から放出するために、犠牲層14が溶解されるかまたは作動され(例えば、温度を35℃より下に下げることによって)、その後、図4に示されるように、切り出された形状24は、遊離して浮かぶかまたは優しく剥離される。所望の形状の自立型柔軟薄膜26を、図5に示されるように、三次元(3D)コンフォメーションを採用する/形成することによってさらに修飾することができ、次に、多構造装置中に一体化することができるか、または、例えば、生物学的に作動された制御装置、卓上薬物解析、創傷包帯、人工器官、ならびに軟組織および硬組織を修復するためのグラフトの製造および使用のための、組織工学/再生の足場として使用するために調製することができる。
【0027】
特定の態様において、細胞外マトリクスタンパク質であるフィブロネクチンは、ポリジメチルシロキサンに吸着される。種々の、均質でマイクロパターン化されたフィブロネクチンの層上に培養された心筋細胞は、異なる微細構造を有する2D心筋層を生成する。均質なフィブロネクチンコーティングは、長い距離の秩序を有さない等方性2D心筋層(図6Aおよび6Bに示されるような)を生成する。筋節α-アクチニンを染色することによって、任意の軸に沿った筋節の選択的な整列が無いことが明らかとなる。高密度および低密度の、20μmの幅のフィブロネクチン線が交互に並ぶマイクロパターン(図6Cおよび6Dに示されるような)は、連続的な異方性2D心筋層を生成する。筋節α-アクチニンを染色することによって、単一の軸に沿った筋節の一軸性の整列が明らかとなる。2D組織の異方性は、スタンピングの相対濃度およびバックグラウンドの細胞外マトリクスタンパク質によって制御される。20μmの幅の線の高密度フィブロネクチンおよびPluronicが交互に並ぶマイクロパターン(図6Eおよび6Fに示されるような)は、異方性1D心筋ストリップの不連続のアレイを生成する。これらの組織ストリップは、筋肉薄膜全体の協調的、自発的な収縮を妨ぐため、互いに電気的に隔離される。筋節α-アクチニンを染色することによって、単一の軸に沿った筋節の一軸性の整列が明らかとなる。画像は、10×の位相;核、F-アクチン、および筋節α-アクチニンの63×の免疫蛍光;ならびに筋節整列の方向を強調する筋節α-アクチニン単独由来のシグナルを示す。
【0028】
一つの態様において、初代新生児ラット心室筋細胞を、フィブロネクチンでコーティングされたポリジメチルシロキサン上に播種し、使用に先立って3〜6日間37℃で培養する。筋細胞は自発的にフィブロネクチンと共に整列し、パターン化された細胞外マトリクスの幾何学によって筋原線維形成が指示される。隣接した筋細胞は、コスタメア(costamere)を介した機械的連続性、および遺伝的にプログラムされた経路を介した電気的連続性を確立するようにギャップ結合形成を自発的に生じる。ひとたび心筋層が生じると、筋肉薄膜をインキュベーターから除去して、持続性収縮に必要なイオンおよびグルコース濃度を提供するために培養培地をタイロード液に交換する。室温に冷却された際に、メスを用いて所望の筋肉薄膜の形状が手動で調製され、これによりPIPAAm層の水溶解および筋肉薄膜の溶液中への放出が同時に可能となる。組織微細構造および筋肉薄膜の形状に依存して、構築物は自発的に収縮するか、または電場刺激電極(field stimulation electrode)によってより正確に制御され得る。こうして、組織構造、薄膜の形状および厚さ、ならびに外部ペーシングにより、設計された機能が達成される。
【0029】
本明細書において開示される方法を用いて入手可能な対称性薄膜の形状および組織異方性の例が、図7に示される。この構築物は正味の変位を生じないが、アクチュエータとして応用可能である。異方性2D組織は、収縮の主軸を規定する。収縮時の変形は異方性の方向において追加的であり、したがって連続した筋原線維のより長い長さのために最大化される。図7において左に示されるように、試料は、長さyに平行な異方性を有する長方形36であり(すなわち、長方形36の長さyに沿って整列した筋細胞を有し)、より大きな一軸変位が、この場合においては長さyに沿ってのみ明らかである。筋細胞の整列が線によって示され、収縮の間に平面の外へ曲がる末端が矢印によって示されている。この概略図の右は、時間0.00秒での弛緩状態(弛緩期の項目の下)および約0.25秒後の収縮状態(収縮期の項目の下)における構築物を示す二つのビデオスチールである。追跡された位置が、x軸について円42で、y軸について円44によって示され、右のグラフに単一の収縮についてプロットされている。画像の各々におけるスケールバーは1 mmである。
【0030】
この場合、ならびに筋細胞整列の異なる形状(例えば、正方形および三角形)および異なる向きを有する他の場合において、筋肉薄膜は、直交する軸に沿った最小の収縮のみを有する心筋層の整列の軸に沿って収縮した。筋肉薄膜の曲げの程度は、ポリジメチルシロキサン薄膜の曲げ剛性および筋肉収縮の強度の二つの因子によって決定される。同様の大きさの長方形について、筋細胞は長さyに沿って整列して約800μm収縮し(図7のグラフに示されるように)、一方、筋細胞は同様の大きさの長方形の幅xに沿って整列して約175μm収縮した。任意の与えられた軸に沿った筋肉薄膜の曲げ剛性は、片持ち梁に酷似して、弾性率、厚さ、および幅と共に増加し、長さと共に減少する。
【0031】
ポリジメチルシロキサン薄膜は、カバースリップから放出された際に、もはや剛性基板によって制限されず、自由に3Dコンフォメーションを採用できる。対称性の長方形、正方形、および三角形の例に使用されるものなどのより厚い薄膜は、筋細胞収縮の間に平面の外へ曲がるのみである。しかしながら、より薄い薄膜は、筋肉薄膜がカバースリップから放出されるとすぐに曲がり始め、収縮の間に二つの可能な薄膜の曲げモードを生じる。凸状表面上に筋細胞を有する構築物25'(図8A)は、収縮して薄膜26'を平面の背後に曲げ、薄膜曲率半径を増加させる(または逆にさえする)。対照的に、凹状表面上に筋細胞を有する構築物25''および25'''(図8Bおよび8C)は、収縮して薄膜26''および26'''をさらに平面の外へ曲げ、薄膜曲率半径を減少させる。これらの二つの異なる薄膜コンフォメーションは、収縮の間に薄膜曲率半径を増加させるかまたは減少させる、様々な異なる構築物を設計するために活用され得る。
【0032】
広範なアクチュエータおよび他の装置が、本技術を用いて生成され得る。一つの態様において、薄膜の長軸に対して軸外に配向された筋肉線維を有する高アスペクト比の長方形薄膜26'から形成されたらせん状線形アクチュエータは、周期性、軸性の伸張が可能であり、角度が付いて可変ピッチで反対方向に回転され得る(図8Aに示されるように)。65℃で硬化されたポリジメチルシロキサンを用いて、弛緩したほぼ平らな状態で始まり、次に収縮時にらせん形に巻き上がる筋肉薄膜構築物が生じる。ソフトロボットアクチュエータとして、平らな長方形から3Dらせん形への移行が、非常に単純な製作段階を有する軸性変位および回転を可能にする。この系を用いて、複雑な3D形状に折りたたむと考えられる様々な2D形状が生成され得る。薄膜ストリップ26'は、0.5 Hzおよび20 Vでペーシングされた際に、筋細胞収縮の間に回転して延び、約55°回転すると共に約200μmの収縮期伸張を示す。
【0033】
薄い長方形ストリップの形態におけるグリッパー26''が、図8Bに図示される。グリッパー26''は、筋細胞の収縮時に先端を引き合わせる、長さに沿って(および凹状表面上に)整列した異方性筋細胞を有する。収縮の間に、グリッパー26''の末端は、その接触力のために接触して止まるまで一箇所に来る。グリッパー26''は、単に一度開閉するのではなく、筋肉薄膜の2D心筋層が強縮に入るまでペーシング速度を増加させることによって、開放状態(弛緩期)から閉鎖状態(ピーク収縮期)へ切り替わることができる。図8Bにおいて、閉鎖したグリップは、1〜2 Hzのペーシングの間に中間開放/閉鎖状態を伴う、5 Hzのペーシングで達成され、それによって電気的ペーシングによる筋肉薄膜ベースのソフトロボットアクチュエータの機能性および時間状態を制御する能力を示す。
【0034】
図8Cにおいて、コイル状薄膜ストリップ26'''は、長さに沿って整列した異方性心筋層(凹状表面上の)を有する長方形であり、自発的な筋細胞の収縮の間にコイル状および非コイル状状態の間を移行する。この配置において、筋肉薄膜26''は巻いた状態から巻いていない状態へ移行し、外部ペーシングの必要なく反復した周期性の収縮を受ける。この自己ペーシングは、劇的な機械的変形によって誘発される伸展活性化(stretch-activated)イオンチャンネルによる可能性が高い。
【0035】
各構築物の種類について、線で示された異方性筋細胞整列を有するカバースリップから放出される前の、形状25'、25''、および25'''の概略図が与えられる。側面外形は、薄膜がカバースリップからの放出時に採用する3Dコンフォメーションを示し、薄膜の曲げの方向が矢印によって示される。ビデオスチールは、(a)図8Aにおいて時間0.00秒での弛緩状態における薄膜ストリップ26';(b)図8Bにおいて0.60秒での収縮状態における薄膜ストリップ26'';および(c)図8Cにおいてそれぞれ0.60秒および0.000秒での両方の状態における薄膜ストリップ26'''を示す。画像の各々におけるスケールバーは1mmである。
【0036】
筋肉収縮は弛緩より急速であり、ポリジメチルシロキサンの復元的弾性力により駆動される。これは、凹面表面上で長さに沿って整列した筋細胞を有する高アスペクト比の長方形ストリップ26'''(図8Cに示されるような)によって明示される。
【0037】
図9Aにおいて、ミオポッド(myopod)は、等方性心筋層(凹状表面上の)を有する三角形筋肉薄膜54から、対称性を破壊するようにそれを手動で3Dコンフォメーション56に折りたたむことによって形成される。筋肉薄膜は本来二等辺三角形54の形状であるが、三角形の高さに沿って下部に半分に三角形54の先端58を折りたたむために(図9Aに示されるように右から)ピンセットが使用される。室温で硬化されたポリジメチルシロキサンは、疎水性であり、かつ水性溶液中でそれ自体に固着し、複雑な3Dコンフォメーションを製作するのに便利な方法を提供する。これにより、接触の角度のために一つの方向のみに滑走する角度が付いたフットパッド60が形成され、脚62の変位を介する三角形の残り部分から、押し進める段階からの推進力の下で方向付けられた動きが維持される。図9Aの概略図は、均一の陰影によって示された等方性心筋層を有する、カバースリップからの放出より前の三角形54の形状を図示する。側面外形は、放出後に手動で形成された3Dコンフォメーション56を示し、薄膜の曲げの方向が矢印によって示される。ビデオフレームの解析により、弛緩(0.00 s)状態から収縮(0.60 s)状態へ後部の脚62を伸ばすことによって、ミオポッドがペトリ皿の底を横切って歩いたことが示される。図9Bのグラフは、1 Hzおよび20 Vで(C)約8 mm/minの平均速度でペーシングした際に、一定の方向に沿って一貫した方向付けられた移動を示すミオポッドの前部を追跡する。スケールバーは1 mmである。
【0038】
図10において、三角形スイマー64は、ウナギ状の水中の遊泳を再現するために、マルチスケールでの対称性の破壊を利用する。対称性を破壊することは、組み合わせにより、収縮の間に方向付けられた推進力を生じ、したがって水中移動のための極度に単純化されたモデルとして働く。方向付けられた動きは、空間的時間的な対称性の破壊を介して達成され、ウナギなどの水生動物の形状および筋肉編成を模倣することによって、運動性から移動性への移行を特徴付ける。ポリジメチルシロキサン基板および筋肉組織構造の形状を通じて、筋肉薄膜の空間的編成を変化させることによって、移動性の空間要件が達成される。三角形スイマー64において、ポリジメチルシロキサン薄膜は、約30μmの厚さであり、高さに沿って整列した(水平に、図10Aの上部の図解に示されるように)異方性心筋層を有する二等辺三角形に切られた筋肉薄膜を有し、この軸のみに沿って収縮を生じる。この形状は、三角形64の高さに沿った心筋層が三角形の先端68を尾のようにはためかすために発生したひずみを最大化するように、基部66から三角形64の先端68へ減少する剛性をもたらす。筋肉薄膜のこの二等辺三角形の形状は、対称性を破壊するために利用される。長さに沿って整列した筋細胞を有する同様の大きさの長方形(図7に示されるような)は、同じ場所で振動する。
【0039】
等方性(三角形70)に対して異方性(三角形64)の2D心筋層を有し、1 Hz、20 Vでペーシングされた同様な形状の三角形スイマーの動きが、図10Aに図示されている。運動性における明瞭な差異が示された。両方の構築物が同じ時点で開始された際、13秒後に異方性三角形スイマーは等方性三角形スイマーよりも遠くに移動する。スイマー64および70両方の追跡により、異方性スイマー64は等方性スイマー70よりも約5倍速いことが示された。筋肉薄膜異方性三角形スイマー64は、三角形の非対称軸(すなわち、高さ)に平行に筋細胞を整列させることによって現実化される。筋細胞の整列は図10Bにおいて線によって示され、また薄膜の曲げの方向が矢印によって示されており、筋細胞収縮時に紙の平面中に下に曲がる点を表す。その後のビデオフレームを通して収縮の間の三角形スイマー64を追跡することにより、三角形上の尾(先端)を基部に向けて引き入れることによって弛緩した構築物が収縮することが示された。筋細胞が弛緩すると、三角形は本来の形状に戻り、構築物を前に駆動する推進力を生じた。三角形の遊泳速度は、ペーシング速度の機能である。自発的な収縮は、散発的な時間間隔をあけて0.5〜0.75 mmの変位を生じた。0.5 Hz、1.0 Hz、および2.0 Hzでのペーシングは、1.0 Hzのペーシングで約24 mm/分の遊泳速度のピークを示す周期性収縮を生じた。
【0040】
筋肉薄膜の形状は、単独では遊泳移動を可能にするのに十分ではない。同様の三角形スイマーと比較して、等方性心筋層を有する三角形スイマー64および異方性心筋層を有するもう一方の三角形スイマー70(図10A)は、組織微細構造、具体的には異方性組織の増加した一軸のひずみおよび力が、推進力を生成することを明らかにする。13秒の時間の間に、異方性スイマー64は、0.3 mm/分の速度で側方に横滑りする等方性スイマー70と比較して、一定の方向に3 mm/分の速度で約5倍遠くに移動した。さらに、等方性スイマー70の経路は、異方性スイマー64の方向付けられた動きと比較してランダムである。
【0041】
三角形スイマーの外部ペーシングは、遊泳速度を最大化するため、すなわち時間的対称性を破壊するために使用され得る。速度を最大化するため、スイマーは絶えず移動する必要がある。頻度が低すぎる場合は、スイマーは収縮ストロークの間に止まると考えられ、一方で頻度が高すぎる場合は、完全なストロークの前に収縮が反復し、スイマーを同じ場所で痙攣させると考えられる。ペーシング速度における「スイートスポット(sweet spot)」は、筋肉薄膜三角形スイマーについて24 mm/分の遊泳速度を達成するための1 Hzのペーシングで見出される。生物学的妥当性の点から見ると、スリップによって決定される遊泳の機械効率は0.024であって、バイオロボットの魚およびウナギによって生成されるものより一桁分低いが、単一の筋細胞の単層によって動力が供給される大規模な装置としてなお印象的である。
【0042】
筋肉薄膜は、ソフトロボティクス、組織工学、および心臓の生体力学の研究において広範に渡る応用性を有する、自立型ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー薄膜上の、設計された2D心筋層を生成するための堅牢な技術を示す。多くのソフトロボットアクチュエータが、曲げ、ねじれ、線形並進、回転、つかみ、汲み出し(pumping)、歩行、および遊泳を含む独特の機能性を生じるように制御され得る様々な過程および応用パラメータを証明することが示されてきた。これらの能力は、複雑な動きのために弾性の筋肉性付属器を使用するタコなどの生物から生物学的な設計原理を借用することによって、より進歩したソフトロボット装置を作るために活用され得る。タコの腕は、関節継ぎ手を擬態することができ、機能するために脳を必要としない末梢運動プログラムを用いて二足性移動をもたらすことさえできる。加えて、筋細胞は、ATP合成を促進するためにグルコース分子内の高密度化学エネルギーをうまく利用する、印象的な内蔵の制御系を提供し、電気的連続性を有する単層へと自動的に自己集合し、かつ、電気刺激、機械的摂動、および薬物相互作用などの外部刺激に基づく収縮を制御する。心筋などのいくつかの種類の筋肉は分裂せず、したがって最初の動物供給源を必要とするため、筋肉薄膜は、製作に関する筋細胞の現実味のある供給源に依存し、大量生産についての潜在的な課題を提示する。結果として、大量生産のためにスケールアップされた筋肉薄膜は、哺乳動物骨格筋、またはゼブラフィッシュなどの生物由来の心筋細胞に基づき、両方ともインビボおよびインビトロで複製し得る筋肉組織となる。
【0043】
本明細書において説明される方法を介して生成される筋肉薄膜は、多種多様な応用において使用され得る。図11〜13に示される第一の態様一式において、筋肉薄膜26は、一つの末端(ヒンジとして作用する)84に装備されて、マイクロ流体工学装置において弁(またはスイッチ)80として働く。筋肉薄膜26は、流体流路82中に装備されて、収縮状態(図11に示されるような)または弛緩状態(図12に示されるような)のいずれかにおいて通路82を閉鎖するように、かつ、反対の状態において通路82を開放したままにするように配置される。したがって、弁80は、弛緩状態における筋肉薄膜26について選択された向きに基づいてデフォルトの開放または閉鎖設計を有するように設計され得る。図13の態様において、筋肉薄膜26は、流体の流れを方向付けるための分岐でスイッチとして装備される。示されるように、弛緩状態における筋肉薄膜26は、より低い右への通路86を閉鎖して、左の通路82から流入する流体を、右にあるより上の通路88に再び方向付けると考えられる。筋肉薄膜26(薄膜の上側に筋肉組織を有する)は収縮する際、より上の通路88を封鎖して新たに開いたより低い通路86中へ流体の流れを方向付けるように、上向きに曲がると考えられる。筋肉薄膜26の弛緩および収縮状態は、外部刺激によるかまたは流体からの直接の刺激に応答して制御される。流体からの刺激の例は、流体における筋肉弛緩薬の存在であり、例えば、ラボ・オン・チップ装置(例えば、その中のスマート弁として)または血管拡張薬(治療剤に基づく)において利用され得る。
【0044】
別の態様において、筋肉薄膜は、例えばラボ・オン・チップ装置における区画のための戸、ハッチ、またはカバーとして同様に使用され、ここで、弛緩状態における筋肉薄膜によって覆われる区画は、関心対象の薬物または他の組成物の効果を無効にする組成物を含み、かつ、筋肉薄膜は関心対象の組成物に曝露された際に収縮し、それによって反発する組成物を放出すると考えられる。例えば、筋肉薄膜を収縮するように設計することができ、それによって、筋肉薄膜が血管収縮薬に曝露された際に、血管拡張薬が含まれる区画への筋肉薄膜の接触をもたらすことができる。
【0045】
さらに別の態様において、筋肉薄膜(特に円管に巻かれた際)はポンプとして使用され、薄膜の収縮または弛緩が流体を移動させる。さらに他の態様において、筋肉薄膜は、以前に議論されたようにウォーカーまたはスイマーの形態の場合があり、かつ、輸送される物体に取り付けることが可能である。したがって、ウォーカーまたはスイマーは、取り付けられる物体のためのプロペラまたはパドルとして働く。実際に、スイマーを物体に装備し、かつ魚のひれと同じ様式で稼動するように配置することができ、ここでスイマーのはばたきが流体を通して取り付けられた物体を推進させる。
【0046】
筋肉薄膜はまた、聴覚的応用においても使用できる。一つの態様において、心筋でコーティングされた薄膜は、特定の聴覚信号への曝露時に収縮し、それによって信号を送るように整調される。他の態様において、筋肉薄膜は生体模倣感覚系として使用される。例えば、筋肉薄膜はロボット工学のための触覚感覚系として働き、ここで、筋肉薄膜は、生物、またはその上の物体もしくはそれに接する物体の動きなどの物理的刺激への曝露に応答して収縮する。筋肉薄膜がグリッパーとして構築される場合には、薄膜を周りに折りたたみ、そして物体または生物を含むかまたは捕えることができる。
【0047】
さらにまた、筋肉薄膜は、細胞ベースのアナログコンピュータにおいて使用することができ、ここで、薄膜は電位またはひずみなどの刺激源と連動する。筋肉薄膜は、刺激に曝露された際に信号を出力し(スイッチを入れるのに酷似して)、例えば、ずっとより大きな収縮に伴う小さなひずみに応答すると考えられる力の増幅器として貢献する。
【0048】
弾性シートグラフト材料の形態における筋肉薄膜はまた、筋肉組織を結合させ、組織再生および/または増強された機能のための導管を提供するために使用される。グラフトは、永久的であるかまたは時間はかかるが生分解性であり得る。さらにグラフトは、両面で筋肉に接着するか、または接着性面および非接着性面の両方を有するかのいずれかである。グラフトは、特定の応用のための予め切られた/成形された断片の形態にあり、および、標的とされる応用のための特定の大きさの薄膜をあつらえて切るために剥離シートの形態で提供される。グラフトは受動装置として稼動し得、または宿主組織の機能を補うように動的に作動され得る。グラフトはまた、再生した組織の異方性(パターン化された)増殖のための鋳型として機能することが可能であり、外傷性損傷または消耗病に適する。
【0049】
一つの態様において、筋肉薄膜は、眼の筋肉の置換物として働くように眼に移植されて取り付けられる。
【0050】
他の態様において、図14〜19に示されるように、筋肉薄膜は外部創傷包帯として使用される。PDMSなどのエラストマーが柔軟ポリマーとして使用される。薄膜PDMSは、カフ90(例えば、ドラム上のスピンコーティングを介して)またはラップ(リボン)の形態で製作される。マイクロパターン化された細胞外マトリクスタンパク質が、線維芽細胞および免疫細胞の増殖を方向付けるために(治癒を増強して瘢痕化を最小にするために)PDMS層に適用され、かつ/または感染と闘うために抗生物質と共に充填される。
【0051】
例えば、図14〜16に示されるように、創傷包帯は、可能であれば、出血を制御し損傷部位を清潔にする措置が取られた後に、銃撃創傷94を受けた肢92に適用され得る(図14に示されるように)。この例において、創傷包帯は、抗生物質層などの処理でコーティングされた内部表面96を有する弾性カフ90の形態である(図15に示されるように)。弾性カフ90を引き伸ばして患者の足98上に滑り込ませ、創傷94の上に配置する(図16に示されるように)。または、同じ材料のラップを、カフの代わりに利用することができ、ACE包帯が適用されるのと同じ様式で創傷部位の肢の周りに巻くことができる。したがって、ラップは、より広い種類の体および創傷の形状を覆うために適用され得る。
【0052】
別の例において、図17〜19に示されるように、切断された付属器を保護するための一時的なシールとして筋肉薄膜が使用される。図17に示されるように、脚100の切断された部分をまず清潔にし、そしてシールされた末端104および内部が処理された表面(例えば、抗生物質で処理された)を有するカフ102の形態の筋肉薄膜を、付属器の切断された末端106をシールするようにその上に滑り込ませる(図19に示されるように)。PDMSは、呼吸を可能にするように酸素透過性である。しかしながら、再接着のために、生存能力を延長させるように、切断された肢100を氷で冷やす。同じ型のカフ102はまた、出血を制御し損傷部位を清潔にした後に患者に適用される。シールされたカフ102を、体にまだ付随している付属器の部分の切断された末端上に滑り込ませる。
【0053】
さらに別の態様において、図20〜25に示されるように、筋肉薄膜は、軟組織または硬組織の修復および再生のためのグラフトとして使用される。薄膜の機械的特性は、組織の機械的特性に調和され、表面化学の選択はグラフトの役割に依存している。選択された表面化学は、細胞接着を促進して細胞増殖を方向付けるか、または外科的接着を回避するために細胞付着を妨げるかのいずれかである。薄膜は、組織の種類、支持体の必要性、および再生能力に依存して生分解性でもよいか、または生分解性でなくてもよい。
【0054】
例えば、筋肉薄膜は、外傷性の損傷を受けた筋肉を修復および再生するためのグラフトとして適用され得る。外傷性の損傷を受けたふくらはぎ108が図20に示される。この場合に、再増殖筋肉を有する伸展可能な弾性グラフト110を付着する。図21に示されるように、グラフト110は、骨格筋細胞および組織断片(抗生物質と共に充填される)の整列した増殖物を接着させて方向付けるように、両面が細胞外マトリクスタンパク質でパターン化されたPDMS薄膜である。図22に示されるように、筋肉薄膜グラフト110を、ふくらはぎ108の外傷性の損傷を受けた筋肉の部位に移植して、既存の筋肉に縫合する。そして薄膜グラフト110を移植した後に創傷を縫合する。
【0055】
別の例において、図23〜25に示されるように、筋肉薄膜は、例えば、損傷、癌などのために患者が筋肉中に穴114を有する場所で、筋肉空隙を修復および再生するためのグラフト112として使用される。グラフト112は、片面上が細胞外マトリクスタンパク質および増殖因子で処理され、反対の面が非接着性材料(例えば、pluronics、ポリエチレンオキシドなど)で処理されたPDMS薄膜である。または、PDMSは、ポリウレタン、熱可塑性エラストマーなどのような任意の匹敵するエラストマーによって置換され得る。
【0056】
収縮機能の評価および薬物スクリーニング
筋肉細胞の収縮機能は以下のように評価される。2D心筋層の収縮性を測定するための筋肉薄膜の使用が、図26および27に示される。例えば、筋肉薄膜は、長さに沿って異方性に整列した筋細胞を有する長方形に成形される。筋肉薄膜を、PDMSブロックの一つの末端で固定する。弛緩状態における筋細胞および対応して実質的に平面の筋肉薄膜を有する、固定された筋肉薄膜が、図26に示される。図27に示されるように、筋細胞は収縮する際に、筋肉薄膜を曲げる。PDMSの機械的特性が公知であるため、収縮の間に筋細胞によって生成される圧力は、筋肉薄膜の曲率半径を測定することによって決定される。図27に示されるように、曲率半径を見出すのを補助するために画像処理ソフトウェアが使用され、曲率半径を有する円が破線で図示される。本器具は、疾患状態(筋障害)または薬理療法の効果を模擬する筋肉薄膜における収縮性を調査するための、卓上システムとして有用である。例えば、薄膜は、薬物スクリーニングのために異なる筋障害の収縮性における差異を決定するため、および薬物が正常筋肉および筋障害の収縮性にいかに影響を及ぼすかを決定するために、使用される。本手順は、心筋細胞、平滑筋細胞、または骨格筋で製作された2D筋肉で使用され得る。
【0057】
薬物スクリーニングのために、筋肉細胞(筋肉薄膜)を候補化合物と接触させる。例えば、薬物を含む培地槽に筋肉薄膜を浸漬して、筋肉機能への薬物の効果を測定する。あるいは、候補化合物を含む培地に筋肉薄膜を浸し、その後筋肉機能を測定する前に細胞を洗浄する。薄膜上に播種された細胞は、正常筋肉細胞(心筋、平滑筋、または骨格筋細胞)、異常筋肉細胞(例えば、罹患した組織由来の細胞であるか、または、異常もしくは病理学的な表現型もしくは機能を達成するように、物理的もしくは遺伝的に改変された細胞)、または、異常もしくは異所の配置で薄膜上に播種/プリントされた正常細胞である。いくつかの場合には、筋肉細胞およびニューロン細胞の両方が薄膜上に存在する。筋肉機能の評価は、収縮の程度、すなわち、筋肉薄膜の曲率または曲げの程度、および、候補化合物の非存在下における正常対照または対照薄膜と比較して、収縮の速度または頻度/弛緩の速度を決定する段階を含む。収縮の程度または収縮の速度における増加は、筋力低下または筋肉消耗などの筋障害と関連する病理の処置または改善に、化合物が有用であることを示す。そのようなプロファイルはまた、薬剤が血管収縮薬として有用であることを示す。収縮の程度または収縮の速度における減少は、化合物が血管拡張薬、および、機能を損なう過剰な収縮または筋肉肥厚によって特徴付けられる筋肉または神経筋障害のための治療剤として有用であることを示した。
【0058】
本様式において評価される化合物は、下記で説明されるものなどの筋肉および神経筋病理の症状の処置または改善に有用である。筋ジストロフィーには、デュシェーヌ筋ジストロフィー(DMD)(偽肥大性としても公知である)、ベッカー筋ジストロフィー(BMD)、エメリー‐ドライフス筋ジストロフィー(EDMD)、肢帯筋ジストロフィー(LGMD)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHまたはFSHD)(ランドジー‐デジェリーヌとしても公知である)、筋緊張性ジストロフィー(MMD)(シュタイネルト病としても公知である)、眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)、遠位型筋ジストロフィー(DD)、および先天性筋ジストロフィー(CMD)が挙げられる。運動神経疾患には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)(ルー・ゲーリグ病としても公知である)、小児進行性脊髄性筋萎縮症(SMA、SMA1、またはWH)(SMA1型、ヴェルドニッヒ‐ホフマンとしても公知である)、間欠性(intermediate)脊髄性筋萎縮症(SMAまたはSMA2)(SMA2型としても公知である)、若年性脊髄性筋萎縮症(SMA、SMA3、またはKW)(SMA3型、クーゲルベルク‐ヴェランデルとしても公知である)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)(ケネディ病およびX連鎖SBMAとしても公知である)、成人脊髄性筋萎縮症(SMA)が挙げられる。炎症性筋障害には、皮膚筋炎(PM/DM)、多発性筋炎(PM/DM)、封入体筋炎(IBM)が挙げられる。神経筋接合部病理には、重症筋無力症(MG)、ランバート‐イートン症候群(LES)、および先天性筋無力症症候群(CMS)が挙げられる。内分泌異常による筋障害には、甲状腺機能亢進性筋障害(HYPTM)、および甲状腺機能低下性筋障害(HYPOTM)が挙げられる。末梢神経の疾患には、シャルコー‐マリー‐ツース病(CMT)(遺伝性運動感覚性ニューロパシー(HMSN)または腓骨筋萎縮症(PMA)としても公知である)、ドゥジュリーヌ‐ソッタ病(DS)(CMT3型または進行性肥厚性間質性ニューロパシーとしても公知である)、およびフリートライヒ運動失調(FA)が挙げられる。他の筋障害には、先天性ミオトニー(MC)(二つの形態:トムセン病およびベッカー病)、先天性パラミオトニア(PC)、中心コア病(CCD)、ネマリン筋障害(NM)、筋細管筋障害(MTMまたはMM)、周期性四肢麻痺(PP)(二つの形態:低カリウム性-HYPOPおよび高カリウム性-HYPP)、ならびにHIV/AIDSと関連する筋障害が挙げられる。本方法および薄膜はまた、ホスホリラーゼ欠損症(MPDまたはPYGM)(マッカードル病としても公知である)、酸性マルターゼ欠損症(AMD)(ポーンプ病としても公知である)、ホスホフルクトキナーゼ欠損症(PFKM)(垂井病(Tarui's Disease)としても公知である)、脱分枝酵素欠損症(DBD)(コーリ病またはフォーブズ病としても公知である)、ミトコンドリア性筋障害(MITO)、カルニチン欠損症(CD)、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症(CPT)、ホスホグリセレートキナーゼ欠損症(PGK)、ホスホグリセレートムターゼ欠損症(PGAMまたはPGAMM)、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症(LDHA)、およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症(MAD)などの代謝性筋肉障害の症状を処置または改善するための治療剤を同定するのに有用である。上記で列挙された障害に加えて、血管痙攣、心臓不整脈、心筋症を軽減する薬剤を同定するために、本スクリーニング方法が使用される。
【0059】
上述されたように同定された血管拡張薬は、高血圧およびアテローム性動脈硬化プラークと関連して筋肉機能が損なわれるのを軽減させるために使用される。アテローム性動脈硬化プラークと関連する平滑筋細胞は、変形した細胞の形状および異常な収縮機能によって特徴付けられる。そのような細胞が、薄膜を占めるように使用され、上述されたような候補化合物に曝露され、筋肉機能が上述のように評価される。細胞の形状および機能を改善する薬剤は、そのような障害の症状を処置または軽減するのに有用である。
【0060】
平滑筋細胞および/または横紋筋細胞は、気道、胃腸組織(例えば、食道、腸)、および泌尿器組織などの体の多数の管腔構造に並ぶ。筋肉収縮の病理学的程度または速度と関連する症状を処置または軽減するための、収縮の程度または速度を増加または減少させる薬剤を同定するために、候補化合物の存在下および非存在下での薄膜上の平滑筋細胞の機能が、上述のように評価される。例えば、そのような薬剤は、胃腸運動障害を処置するために使用される。
【0061】
例証
a.基板の製作
ポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜基板を、多段階のスピンコーティング過程を介して製作した。ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)(Polysciences, Inc.)を99.4%の1-ブタノール(w/v)に10 wt%で溶解して、ガラスカバースリップ上にスピンコーティングした。Sylgard 184(Dow Corning)ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーを、ベース対硬化剤比10:1で混合し、PIPAAmでコーティングされたガラスカバースリップの上部にスピンコーティングした。その後、ポリジメチルシロキサンでコーティングしたカバースリップを硬化させた。
【0062】
b.フィブロネクチン等方性および異方性パターン化
ポリジメチルシロキサン薄膜を、フィブロネクチン(FN)の等方性または異方性層のいずれかでコーティングした。各場合において、フィブロネクチン処理の直前に、表面を滅菌しかつ親水性を増加させるために、ポリジメチルシロキサンでコーティングしたカバースリップを8分間UVオゾン処理した。全てのその後の過程は、滅菌条件の下でバイオフード(biohood)において行った。ポリジメチルシロキサン上に滅菌脱イオン(DI)水中の25μg/mLフィブロネクチンの1 mLのレンズを置き、そして15分間インキュベーションすることによって、等方性フィブロネクチンを沈着させた。インキュベーションに続いて、DI水で3回洗浄することによって過剰のフィブロネクチンを除去し、その後、3時間以内の心筋細胞の播種に先立って風乾した。
【0063】
フィブロネクチンの異方性パターン化は、マイクロコンタクトプリンティング(μCP)を用いて行った。基本的なμCP技術はよく確立されており、この技術によりポリジメチルシロキサンスタンプを用いる様々な平面の基板上での生体分子の急速なパターン化が可能となる。本明細書で使用された変形物は、異方性2D心筋層を形成するようにポリジメチルシロキサンでコーティングしたガラスカバースリップ上にフィブロネクチンをパターン化するため、ポリジメチルシロキサンスタンプを用いた。1分間の等角接触を行うことによって、フィブロネクチンをスタンプからポリジメチルシロキサン薄膜へ移した。
【0064】
c.心筋細胞の播種と培養
新生児ラット心室筋細胞を、刊行された方法に基づいて、2日齢の新生児Sprague-Dawleyラットから単離した。細胞を、播種培地(SM)(10% FBSを添加したM199培地)に1 mLあたり〜350,000個の濃度で希釈して、3 mLを各カバースリップ上に播種した。24時間のインキュベーションの後、非接着細胞を除去するためにリン酸緩衝食塩水(PBS)でカバースリップを3回洗浄し、SMで回収した。さらに24時間後、最初に採取した心筋細胞集団に必然的に存在する線維芽細胞の増殖を最小にするために、培地を維持培地(MM)[2%のウシ胎児血清(FBS)を添加したM199培地]に交換した。
【0065】
d.形状の創出、放出、および3Dコンフォメーションの創出
ひとたび心筋細胞が適切な2D心筋層微細構造を形成すると、ポリジメチルシロキサン薄膜を形が定まるように形成してカバースリップから放出する準備が整った。ペトリ皿を暗視野照明を有する実体顕微鏡上に置いて、ポリジメチルシロキサン薄膜を切り離すように手術用メスを用いて手で形状を切る。タイロード液が35℃より下に冷えると、PIPAAm層が疎水性状態から親水性状態に移行し、溶解し始める。PIPAAm層が溶解すると、ポリジメチルシロキサン薄膜上の筋細胞が収縮し、切り出された形状がカバースリップから遊離されて溶液中に引っ張られる。ひとたびポリジメチルシロキサン薄膜がカバースリップから放出されると、そのコンフォメーションは、心筋層微細構造、切り出された形状、および硬化条件に依存する。室温で硬化された20μmの厚さより薄いポリジメチルシロキサン薄膜は、薄膜を曲げて筋細胞で覆われていない面を共に接触させることによって、ピンセットでさらに操作することができた。
【0066】
e.実験的試験パラメータ(タイロード、ペーシング、ビデオ記録)
筋細胞‐ポリジメチルシロキサン構築物の全ての作動および観察を、30分毎に交換されるタイロード液中で、室温で実施した。ポリジメチルシロキサン薄膜の切り出し、放出、自発的収縮、およびペーシングを、暗視野照明を有する実体顕微鏡上で行った。〜1 cm間隔の平行白金ワイヤー電極を用いて構築物を電気的にペーシングし、ペトリ皿の中心に直接下ろした。外部電場刺激装置(Myopacer, IonOptix)を使用し、2分までの持続時間に0.1〜5 Hzのペーシング速度で、電極間に20V、10ミリ秒の持続方形波を印加した。
【0067】
f.固定化および染色
組織微細構造を視覚化するため、免疫蛍光画像化のために試料を固定化して染色した。4日目の試料をインキュベーターから除去し、PBSで3回洗浄して、PBS中の4%パラホルムアルデヒドおよび2.5% TritonX-100中で15分間固定化した。PBS中で1時間、1:200希釈の筋節α-アクチニンモノクローナル一次抗体で、試料を染色した。次に、PBS中で1時間、1:200希釈の4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、Alexa-Fluor 488結合ファロイジン、およびローダミン結合ヤギ抗マウス二次抗体で、同時に試料を染色した。落射蛍光照明および4メガピクセルのCCDカメラで捕捉されたデジタルを用いて、Leica DMI 6000B倒立光学顕微鏡で試料を画像化した。
【0068】
g.ビデオおよび画像解析
アクチュエータの動きの定量化および解析を、ImageJ(NIH)ソフトウェアを用いて行った。次に、手動の追跡プラグインを用いて、フレームの各スタックを通してアクチュエータを手動で追跡した。追跡結果をテキストファイルにエクスポートし、全ての構築物について時間対変位曲線に変換し、かつスイマーおよびウォーカーについてはXY経路に変換した。
【0069】
本発明の態様の説明において、明瞭化の目的のために特定の用語法が使用される。説明の目的のため、各々の特定の用語は、同様の目的を達成するために同様の様式で稼動する全ての技術的および機能的同等物を少なくとも含むことが意図される。加えて、本発明の特定の態様が多数のシステム要素または方法段階を含むいくつかの場合において、それらの要素または段階は、単一の要素または段階で置換されてもよく、同様に、単一の要素または段階は、同じ目的を果たす多数の要素または段階で置換されてもよい。さらに、種々の特性についてのパラメータが本明細書において本発明の態様のために明記される場合、それらのパラメータは、他の方法で明記されない限り、1/20、1/10、1/5、1/3、1/2などによって、またはそれらを概数にする近似法によって、上または下に調整され得る。さらに、本発明がその特定の態様と関連して示され、かつ説明される間に、形態および詳細における種々の置換および改変が本発明の範囲から逸脱することなくその中において作成されてもよく、さらに、他の局面、機能、および利点もまた本発明の範囲内であることを当業者は理解すると考えられる。本出願に渡って引用された、特許および特許出願を含む全ての参照文献の内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。これらの参照文献の適切な成分および方法が、本発明およびその態様のために選択されてもよい。なおさらに、背景の節において同定された成分および方法は本開示に統合され、本発明の範囲内の開示における他の場所で説明された成分および方法と関連して、またはその代わりに使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
添付の図面において、参照のように文字は異なる図を通して同一または同様の部分に言及する。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、それよりも下記で考察される特定の原理を例証することに重点が置かれる。
【0071】
【図1】細胞および/またはタンパク質で機能化された自立型薄膜を製作するために使用されてもよい製作段階の概略図を示す。
【図2】細胞および/またはタンパク質で機能化された自立型薄膜を製作するために使用されてもよい製作段階の概略図を示す。
【図3】細胞および/またはタンパク質で機能化された自立型薄膜を製作するために使用されてもよい製作段階の概略図を示す。
【図4】細胞および/またはタンパク質で機能化された自立型薄膜を製作するために使用されてもよい製作段階の概略図を示す。
【図5】細胞および/またはタンパク質で機能化された自立型薄膜を製作するために使用されてもよい製作段階の概略図を示す。
【図6】異なる微細構造を有する2D心筋層を生成するために、フィブロネクチンの異なる均質なマイクロパターン化された層上に培養された心筋細胞の一連の画像である。
【図7】非対称的な薄膜の形状および組織異方性の例を図示する。
【図8】筋肉薄膜から作られたソフトロボットアクチュエータの種々の態様についての図解および画像を提供する。
【図9】三角形筋肉薄膜から形成されたミオポッドについての図解、画像およびグラフを提供する。
【図10】三角形筋肉薄膜から形成されたミオポッドの図解を提供する。
【図11】生物学的微小制御装置、ならびに、微小流体系における弁および/またはスイッチとしてのその使用を図示する。
【図12】生物学的微小制御装置、ならびに、微小流体系における弁および/またはスイッチとしてのその使用を図示する。
【図13】生物学的微小制御装置、ならびに、微小流体系における弁および/またはスイッチとしてのその使用を図示する。
【図14】創傷包帯のための外部カフまたはラップの形態での筋肉薄膜の適用、ならびに、銃撃創傷をふさぐため、および切断された付属器のための一時的シーラントとしてのその使用を図示する。
【図15】創傷包帯のための外部カフまたはラップの形態での筋肉薄膜の適用、ならびに、銃撃創傷をふさぐため、および切断された付属器のための一時的シーラントとしてのその使用を図示する。
【図16】創傷包帯のための外部カフまたはラップの形態での筋肉薄膜の適用、ならびに、銃撃創傷をふさぐため、および切断された付属器のための一時的シーラントとしてのその使用を図示する。
【図17】創傷包帯のための外部カフまたはラップの形態での筋肉薄膜の適用、ならびに、銃撃創傷をふさぐため、および切断された付属器のための一時的シーラントとしてのその使用を図示する。
【図18】創傷包帯のための外部カフまたはラップの形態での筋肉薄膜の適用、ならびに、銃撃創傷をふさぐため、および切断された付属器のための一時的シーラントとしてのその使用を図示する。
【図19】創傷包帯のための外部カフまたはラップの形態での筋肉薄膜の適用、ならびに、銃撃創傷をふさぐため、および切断された付属器のための一時的シーラントとしてのその使用を図示する。
【図20】硬組織および/または軟組織の修復および/または再生のためのグラフトとしての筋肉薄膜の適用、ならびに、外傷性の筋肉損傷を融合させて再生させるため、および筋肉組織における空隙を満たすための足場としてのその使用を図示する。
【図21】硬組織および/または軟組織の修復および/または再生のためのグラフトとしての筋肉薄膜の適用、ならびに、外傷性の筋肉損傷を融合させて再生させるため、および筋肉組織における空隙を満たすための足場としてのその使用を図示する。
【図22】硬組織および/または軟組織の修復および/または再生のためのグラフトとしての筋肉薄膜の適用、ならびに、外傷性の筋肉損傷を融合させて再生させるため、および筋肉組織における空隙を満たすための足場としてのその使用を図示する。
【図23】硬組織および/または軟組織の修復および/または再生のためのグラフトとしての筋肉薄膜の適用、ならびに、外傷性の筋肉損傷を融合させて再生させるため、および筋肉組織における空隙を満たすための足場としてのその使用を図示する。
【図24】硬組織および/または軟組織の修復および/または再生のためのグラフトとしての筋肉薄膜の適用、ならびに、外傷性の筋肉損傷を融合させて再生させるため、および筋肉組織における空隙を満たすための足場としてのその使用を図示する。
【図25】硬組織および/または軟組織の修復および/または再生のためのグラフトとしての筋肉薄膜の適用、ならびに、外傷性の筋肉損傷を融合させて再生させるため、および筋肉組織における空隙を満たすための足場としてのその使用を図示する。
【図26】筋肉薄膜がPDMSブロックにおいて一方の末端で固定されている、その長さに沿って異方性に整列した筋細胞を有する長方形の筋肉薄膜を示す。
【図27】筋肉薄膜において曲率半径を生成するように収縮した筋細胞を有する、図26の固定された筋肉薄膜を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層を提供する段階;
該基層上に犠牲ポリマー層をコーティングする段階;
該犠牲ポリマー層上に、基層よりも柔軟である柔軟ポリマー層をコーティングする段階;
該柔軟ポリマー層上に細胞を播種する段階;
組織を形成させるために該細胞を培養する段階;および次に
柔軟ポリマー層上に組織を含む自立型(free-standing)薄膜を生成するために、該基層から該柔軟ポリマー層を放出する段階
を含む、自立型薄膜を製作するための方法。
【請求項2】
基層が1 MPAより大きい弾性率を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基層がガラスカバースリップである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
犠牲ポリマー層がポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
柔軟ポリマー層がポリジメチルシロキサンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
細胞が、以下の群:筋細胞、ニューロン、線維芽細胞、内皮細胞、および皮膚細胞より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
細胞が心筋細胞である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
異方性組織を生成するように筋細胞を整列させる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
犠牲ポリマー層が、スピンコーティングを介して基層上にコーティングされる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
柔軟ポリマー層が、スピンコーティングを介して犠牲ポリマー層上にコーティングされる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
犠牲ポリマーが非架橋ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)であり、かつ、温度を32℃またはそれより低く下げることによって柔軟ポリマーが放出されて犠牲ポリマーが液化される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
犠牲ポリマーが架橋N-イソプロピルアクリルアミドであり、かつ、温度を32℃またはそれより低く下げることによって柔軟ポリマーが放出されて犠牲ポリマーが親水性にされる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
犠牲ポリマーが電気的に作動されるポリマーであり、かつ、犠牲ポリマーに電位を印加することによって柔軟ポリマーが放出される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
犠牲ポリマーが分解性バイオポリマーであり、かつ、犠牲ポリマーを溶解することによって柔軟ポリマーが放出される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
柔軟ポリマー層上に細胞を播種する前に、柔軟ポリマー層に対し、設計された表面化学を供給する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
設計された表面化学が細胞外マトリクスタンパク質を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
設計された表面化学が、ギャップを含むパターンで提供される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
柔軟ポリマー層が放出される際に、培養組織が200マイクロメートルまたはそれ未満の厚さを有する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
所望の形状を生成するために、柔軟ポリマー層および組織を切る段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
放出後、アクチュエータとして薄膜を利用する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
薄膜が、生物学的物質への曝露を介して作動される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
薄膜が外部から作動される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
二つの末端を接触させるように組織を作動させて、薄膜がグリッパーとして機能することを可能にする段階をさらに含む方法であって、薄膜が二つの末端を有するストリップであり、かつ細胞が筋細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項24】
ストリップを巻き付けるかまたはほどくように組織を作動させる段階をさらに含む方法であって、薄膜がストリップであり、かつ細胞が筋細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
薄膜を推進させるように組織を作動させる段階をさらに含む方法であって、細胞が筋細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
対称性の破壊を提供するように薄膜が折りたたまれ、かつ、表面を横切る歩行運動を介して薄膜が推進される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
薄膜が、液体を通じた遊泳運動を介して推進される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
放出された薄膜を流体の流れの通路に装備する段階、および、流体の流れのためにゲートを開放するかまたは閉鎖するように薄膜を作動させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
放出された薄膜を区画の出入口に装備する段階、および、区画の出入口を開放するかまたは閉鎖するように薄膜を作動させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
流体を汲み出すように薄膜を作動させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項31】
薄膜の放出後に、損傷を受けたヒト組織に対し、薄膜を適用する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
薄膜の放出後に、切断された付属器に対し、薄膜を適用する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項33】
基層;
該基層上にコーティングされた犠牲ポリマー層;
該犠牲ポリマー層上にコーティングされた、該基層より柔軟である柔軟ポリマー層;および
該柔軟ポリマー層上に播種された細胞
を含む、薄膜を生成するための構築物。
【請求項34】
柔軟ポリマー層;および
予め決定されたパターンで該柔軟ポリマー層上にコーティングされた単離された細胞の集団
を含む自立型薄膜であって、該細胞が機能的な組織構造を形成する、自立型薄膜。
【請求項35】
組織構造が整列した筋肉細胞を含む、請求項34記載の自立型薄膜。
【請求項36】
組織構造が、200マイクロメートルまたはそれ未満の厚さを有する、請求項35記載の自立型薄膜。
【請求項37】
筋肉でコーティングされた柔軟ポリマー層を含む筋肉薄膜を提供する段階;
該筋肉薄膜の末端を、装備する構造に取り付ける段階;
筋肉を収縮させるために刺激を加える段階;および
筋肉が収縮した際に該筋肉薄膜の変位を測定する段階
を含む、筋肉の収縮性を測定するための方法。
【請求項38】
筋肉薄膜の曲率半径が、筋肉が収縮した際に測定される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
収縮の速度が測定される、請求項37記載の方法。
【請求項40】
刺激を加える前に、筋肉薄膜を候補化合物と接触させる段階、および候補化合物の存在下における収縮の程度または収縮の速度を、候補化合物の非存在下における変位に対して比較する段階をさらに含む方法であって、程度または速度の間の差異が、候補化合物が筋肉機能を変化させることを示す、請求項37記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2009−525144(P2009−525144A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553400(P2008−553400)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/003051
【国際公開番号】WO2008/051265
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(507244910)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (18)
【Fターム(参考)】