説明

ポリマー複合成形体およびポリマー複合成形体の製造方法

【課題】防着効果を長期間発揮するポリマー複合成形体およびポリマー複合成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とし、デュロメータ硬さがA30以下であるポリマー成形物の表面に、ウィスカを含む防着剤を添加したポリマー複合成形体である。ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とし、デュロメータ硬さがA30以下であるポリマー成形物の表面に、ウィスカを含む防着剤を打粉により添加する工程を含むポリマー複合成形体の製造方法である。ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とし、デュロメータ硬さがA30以下であるポリマー成形物を、ウィスカを含む防着剤を分散させた溶媒に浸漬させることにより、ポリマー成形物の表面に防着剤を添加する工程を含むポリマー複合成形体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー複合成形体およびポリマー複合成形体の製造方法に関し、特に防着剤の脱落を有効に防止することにより、防着効果を長期間発揮するポリマー複合成形体およびポリマー複合成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば防振材等のゴム成分または熱可塑性エラストマー成分を主材とするポリマー成形物においては、防振材どうしの粘着およびその表面に接触する接触物との粘着性を低減させるため、防着剤を添加することがある。すなわち、防振材においては振動減衰性を持たせるため共振周波数を低く設定する手法が用いられるが、そのためにはポリマー成形物の硬さあるいはバネ定数を低くすることが一般的であり、ポリマー成形物に軟化剤または可塑剤を多量に配合することが多い。しかしこの場合には防振材表面の粘着性が増してしまうため、特に光ディスク機器等に用いられる防振材には防振材を取り付けるシャーシや固定ネジとの粘着を防止する必要があることから防着剤が添加されている。
【0003】
このような防着剤としては、従来から炭酸カルシウムまたはタルク等の無機系粒状物質が用いられている。しかし、無機系粒状物質は吸湿性および吸油性が大きくゴムまたは熱可塑性エラストマーに配合されているオイル等の低分子成分を吸収してしまうことがあった。また、粒状であることから転がって脱落しやすいため、防着効果を長期間発揮しないという問題もあった。
【0004】
また、シリコーンオイルまたはシリコーンポリマー等のシリコーン系コーティング材も防着剤として用いられている。しかし、シリコーン系コーティング材は揮発する可能性が高いため電気的に接点不良を起こすことが懸念され、また高価であるため製造コストが高くなることがあった。
【0005】
また、特開2001−64445公報には、平均粒径が500μm以下の有機系粒状物質からなる防着剤が開示されている。しかし、この防着剤も粒状であるため脱落しやすく、防着効果を長期間発揮しないことがあった。
【0006】
したがって、たとえばこれら従来の防着剤を添加した防振材を光ディスク機器に用いた場合には、防振材とその表面に接触するシャーシ面や固定ネジとが短期間で密着してしまい、防振特性に悪影響を及ぼすことがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑みて、本発明は、防着剤の脱落を有効に防止することにより、防着効果を長期間発揮するポリマー複合成形体およびポリマー複合成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とし、デュロメータ硬さがA30以下であるポリマー成形物の表面に、ウィスカを含む防着剤を添加したポリマー複合成形体であることを特徴としている。
【0009】
ここで、本発明のポリマー複合成形体においては、ウィスカに無機系ウィスカが含まれていてもよい。
【0010】
また、本発明のポリマー複合成形体においては、ウィスカにチタン酸カリウムウィスカが含まれていることが好ましい。
【0011】
また、本発明のポリマー複合成形体においては、ウィスカの繊維径が0.1〜10μmの範囲内にあることが好ましい。
【0012】
また、本発明のポリマー複合成形体においては、ウィスカの平均繊維長が10〜50μmの範囲内にあることが好ましい。
【0013】
また、本発明のポリマー複合成形体においては、ポリマー成形物がブチルゴムを主材とするゴム組成物からなることが好ましい。
【0014】
また、本発明のポリマー複合成形体においては、ポリマー成形物がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)および/またはスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)を主材とする熱可塑性エラストマー組成物からなることが好ましい。
【0015】
また、本発明のポリマー複合成形体においては、ポリマー成形物の損失係数tanδが0.2〜0.8であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のポリマー複合成形体においては、ポリマー成形物のJIS−K6262に準じて測定した70℃−24時間における圧縮永久歪が5〜20%であることが好ましい。
【0017】
また、本発明のポリマー複合成形体においては、ウィスカがポリマー成形物の表面に突き刺さっていることが好ましい。
【0018】
また、本発明のポリマー複合成形体は、防振材として用いられることが好ましい。
また、本発明は、ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とし、デュロメータ硬さがA30以下であるポリマー成形物の表面に、ウィスカを含む防着剤を打粉により添加する工程を含むポリマー複合成形体の製造方法であることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明は、ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とし、デュロメータ硬さがA30以下であるポリマー成形物を、ウィスカを含む防着剤を分散させた溶媒に浸漬させることにより、ポリマー成形物の表面に防着剤を添加する工程を含むポリマー複合成形体の製造方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、防着剤の脱落を有効に防止することができ、防着効果を長期間発揮することができるポリマー複合成形体およびポリマー複合成形体の製造方法を提供することができる。したがって、本発明のポリマー複合成形体は、特に防振材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(防着剤)
本発明の防着剤にはウィスカが含まれている。このウィスカを含む防着剤は、ポリマー成形物の表面、内部またはこれらの双方に添加することができる。特にウィスカを含む防着剤をゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とするポリマー成形物の表面に添加した場合には、従来の表面添加用防着剤に比べて防着効果が長期間維持されることが明らかとなった。これは、防着剤に含まれるウィスカが針状結晶であるため従来技術のような粒状物質よりも転がりにくく、またポリマー成形物に突き刺ささりやすいためと考えられる。
【0022】
また、特に防着剤の脱落をより有効に防止することができるという観点から、防着剤に含まれるウィスカがポリマー成形物の表面に突き刺さっていることが好ましい。たとえば、図1はウィスカ1がポリマー成形物2の表面に突き刺さっている状態の一例を概念的に示している。
【0023】
上記防着剤に含まれるウィスカとしては、無機系ウィスカ、有機系ウィスカまたはこれらの双方が用いられ得る。無機系ウィスカには、たとえばチタン酸カリウムウィスカ、炭化珪素ウィスカ、窒化珪素ウィスカ、炭酸カリウムウィスカ、炭化ホウ素ウィスカまたは酸化亜鉛ウィスカ等がある。有機系ウィスカには、たとえばポリオキシメチレンウィスカ、共重合ポリエステルウィスカ等がある。好適にはチタン酸カリウムウィスカである。チタン酸カリウムウィスカは高温高湿環境にさらされても特性が変化しにくく、また安価であるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0024】
また、防着剤に含まれるウィスカの繊維径は、0.1〜10μmの範囲内にあることが好ましく、0.1〜1μmの範囲内にあることがさらに好ましい。また、ウィスカの平均繊維長は、10〜50μmの範囲内にあることが好ましく、10〜20μmの範囲内にあることがさらに好ましい。このような繊維径または平均繊維長を持つウィスカを防着剤に含めることにより、デュロメータ硬さがA30以下の低硬度ゴム成形品に対して有効な防着効果を発揮することができる。
【0025】
なお、本発明の防着剤には、上記ウィスカと併用して、炭酸カルシウム、タルク等の公知の防着剤を含めることもできるが、本発明の防着剤には上記ウィスカのみが含まれていることが好ましい。この場合には防着剤がより脱落しにくくなることから、本発明の防着剤の防着効果がより長期間継続する。
【0026】
(ポリマー成形物)
本発明に用いられるポリマー成形物はゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とするポリマー組成物を成形したものである。ここで、ポリマー組成物としては、1種類以上のゴム成分を主材とするゴム組成物、1種類以上の熱可塑性エラストマー成分を主材とする熱可塑性エラストマー組成物またはこれらの混合物がある。
【0027】
本発明に用いられ得るゴム組成物は、たとえばブチルゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンスチレンゴム、ニトリルゴム、ポリノルボルネンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムまたはエピクロルヒドリンゴム等のゴム成分を主材とする。なかでも、上記ゴム組成物はブチルゴムを主材とすることが好ましい。このゴム組成物はより良好な振動衝撃吸収性を有するため、本発明のポリマー複合成形体が接触物から受ける振動および衝撃をより吸収することができるようになる。
【0028】
本発明に用いられ得る熱可塑性エラストマー組成物は、たとえばスチレン系、オレフィン系、エステル系、ポリアミド系、塩化ビニル系またはウレタン系等の熱可塑性エラストマー成分を主材とする。なかでも、熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン系の熱可塑性エラストマー成分であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)および/またはスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)を主材とすることが好ましい。この場合には、本発明のポリマー複合成形体の耐候性および熱安定性がより向上する。
【0029】
また、上記ゴム組成物または熱可塑性エラストマー組成物にはその他の添加剤が含まれ得る。添加剤としては、たとえば可塑剤、充填剤、架橋剤、加硫促進剤、滑剤または老化防止剤等がある。
【0030】
可塑剤としては、たとえばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−デシル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油またはヤシ油等がある。可塑剤は、ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分100質量部に対して20〜100質量部、より好ましくは25〜80質量部の割合で配合される。可塑剤の量が20質量部より少ないとデュロメータ硬さがA30以下の低硬度のポリマー成形物を得ることが困難となる傾向にある。可塑剤の量が100質量部より多いとポリマー成形物から可塑剤がブリードしやすくなり、本発明の防着剤の防着効果があまり得られなくなる傾向にある。
【0031】
充填剤としては、たとえばカーボンブラック、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、マイカ、アルミナ、硫酸バリウムまたは硫酸カルシウム等がある。充填剤は、ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分100質量部に対して5〜100質量部、より好ましくは10〜70質量部、さらに好ましくは15〜50質量部の割合で配合される。充填剤の量が5質量部より少ないと補強性があまり得られなくなり、ポリマー成形物の機械強度が低下する傾向にある。充填剤の量が100質量部より多いとデュロメータ硬さがA30以下の低硬度のポリマー成形物を得ることが困難となる。
【0032】
また、架橋剤としては、たとえばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物または硫黄等がある。また、加硫促進剤としては、たとえばスルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、グアニジン系またはチオウレア系等の加硫促進剤がある。滑剤としては、たとえば炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系またはエステル系等の滑剤がある。
【0033】
本発明に用いられるポリマー成形物は、上記ポリマー組成物を公知の方法で混練りし、たとえば圧縮プレス成形、好ましくはトランスファー成形によって所定の形状に成形すること等により得ることができる。
【0034】
また、本発明に用いられるポリマー成形物のデュロメータ硬さはA30以下であることが好ましく、A10以下であることがさらに好ましい。この場合には、本発明のポリマー成形物を防振材として用いた場合の共振周波数をより下げることができ、除振領域をより広げることができる。ここで、デュロメータ硬さの下限値はA0に限りなく近くてもよい。なお、デュロメータ硬さはJIS−K6253に準じて測定した値である。
【0035】
また、本発明に用いられるポリマー成形物の損失係数tanδは、0.2〜0.8であることが好ましく、0.25〜0.5であることがさらに好ましい。tanδが0.2よりも小さいと本発明のポリマー成形物を防振材として用いた場合に十分な防振性能が得られない傾向にある。一方、ポリマー成形物の硬さを下げた場合、一般的にtanδの値は小さくなるが、tanδの値を上記範囲とすることにより、低硬度化と防振性能とのバランスの取れたポリマー成形物を得ることができる。
【0036】
また、本発明に用いられるポリマー成形物のJIS−K6262に準じて測定した70℃−24時間における圧縮永久歪は、5〜20%であることが好ましく、5〜10%であることがさらに好ましい。この場合には、たとえば本発明のポリマー成形物からなる製品を接触物に長時間圧着させて使用した場合であっても製品に歪みが生じにくくなる。
【0037】
(ポリマー複合成形体の製造方法)
本発明によるポリマー複合成形体は、上記ウィスカを含む防着剤を上記ポリマー成形物の表面、内部またはこれらの双方に添加する工程を含む製造方法により製造される。特に本発明のポリマー複合成形体の製造方法は、上記ウィスカを含む防着剤を上記ポリマー成形物の表面に添加する工程を含むことが好ましい。
【0038】
上記ポリマー成形物の表面に上記防着剤を添加する工程は、たとえば上記防着剤を上記ポリマー成形物の表面に打粉する方法または上記防着剤を分散させた溶媒に上記ポリマー成形物を浸漬させる方法により行なわれることが好ましい。これらの方法を用いた場合には、容易に上記防着剤を添加させることができるため製造コストの低減につながる。ここで、溶媒としては、たとえば水、アルコール等がある。
【0039】
また、上記ポリマー成形物の内部に上記防着剤を添加する工程としては、たとえば、上記ポリマー組成物中に上記防着剤を混合する方法等がある。
【0040】
また、ポリマー成形物の表面へ添加する上記防着剤の添加量としては、上記防着剤が添加される上記ポリマー成形物の表面積1m2当たり0.1〜5gであることが好ましく、0.1〜3gであることがより好ましい。また、上記ポリマー成形物の内部へ添加する上記防着剤の添加量としては、ポリマー成分100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。本発明の防着剤はこの程度の添加量があれば防着効果を向上させることができ、あまり多く添加すると製造コストが高くなる上、機械強度、圧縮永久歪等のゴム物性の低下を招く可能性がある。
【0041】
(ポリマー複合成形体の用途)
上記ポリマー成形物に上記ウィスカを含む防着剤が添加された本発明のポリマー複合成形体は、特に限定されずあらゆるゴム、熱可塑性エラストマー製品に用いられ得る。長期間の防着効果を有するという特性から、特に低硬度の防振材として好適に用いることができる。ここで、防振材としては、たとえば図2および図3に示す防振材3のような形状を有するものがある。防振材の用途も特に限定されないが、たとえばCD、MD、DVD、HDD、CD−ROM、DVD−ROM、CD−RW、DVD−RAM等のコンピュータ周辺機器等の光ディスク機器全般に特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
(1) 試料の作製
表1に実施例1〜2および比較例1〜2の試料の配合を示す。実施例1〜2の試料は、表1に示す配合のブチルゴム組成物からなる加硫ゴムシート(30mm×60mm×厚み2mm)にチタン酸カリウムウィスカ(商品名「ティスモD(R)」、大塚化学(株)製)を打粉して添加することにより作製した。
【0044】
また、比較例1〜2の試料は、それぞれタルク(商品名「PKP−59」、富士タルク工業(株)製、比較例1)、合成樹脂エマルジョンと界面活性剤の化合物(商品名「GP−7」、一方社油脂工業(株)製、比較例2)を水中に分散させ、実施例1の試料と同じ配合の加硫ゴムシートを浸漬させることにより作製した。
【0045】
(2) 防着性の評価方法
実施例および比較例の試料の防着性の評価は、静摩擦係数およびスベリ角度を測定することにより行なった。
【0046】
(i) 静摩擦係数の測定
実施例1〜2および比較例1〜2の試料とアクリル板との静摩擦係数(μ)を測定することにより行なった。静摩擦係数の測定には摩擦係数測定機(規格「HEIDON−14」、HEIDON(株)製)を用いた。ここで、上記試料とアクリル板との圧着力を2.0Nに設定した。その測定結果から、下記の基準において実施例1〜2および比較例1〜2の試料の防着性を評価した。その評価結果を表1に示す。
○…静摩擦係数が1未満であった。
△…静摩擦係数が1以上1.5未満であった。
×…静摩擦係数が1.5以上であった。
【0047】
(ii) スベリ角度の測定
スベリ角度(θ)は実施例1〜2および比較例1〜2の試料を用い、圧縮プレス成形によって図2、図3に示すような高さ10mmの防振材を成形し、これを横向きにしてアクリル板上に置いた後、アクリル板を傾斜させていき、試料が動き出す時のアクリル板の地面に対する角度を測定することにより行なった。その測定結果から、下記の基準において実施例および比較例の試料の防着性を評価した。その評価結果を表1に示す。
○…スベリ角度が30°未満であった。
△…スベリ角度が30°以上40°未満であった。
×…スベリ角度が40°以上であった。
【0048】
【表1】

【0049】
(注1)塩素化ブチルゴム。JSR(株)製の「クロロブチル1066」。
(注2)カーボンブラック。旭カーボン(株)製の「旭#55」。
(注3)プロセスオイル。日本サン石油(株)製の「サンパー110」。
(注4)酸化亜鉛。正同化学(株)製の「亜鉛華特号」。
(注5)チオカルバミン酸亜鉛。大内新興化学工業(株)製の「ノクセラーEZ」。
(注6)ステアリン酸。花王(株)製の「ルナックS−40」。
【0050】
なお、表1においてポリマー成形物の硬さはJIS−K6253に準じて測定したものであり、圧縮永久歪はJIS−K6262に準じて測定(温度:70℃、時間:24時間)したものである。また、損失係数は(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータにて測定(温度:25℃、周波数:30Hz、振幅:1mm、初期荷重:1.5〜2N)したものである。
【0051】
また、表1の評価結果における初期とはゴムシートにウィスカを添加した直後の試料の評価結果のことであり、擦付後とは上記試料をアクリル板に3回強く擦り付けた後の評価結果のことである。
【0052】
(3) 評価結果
表1に示した評価結果から、実施例1〜2の試料は、比較例1〜2の試料よりも静摩擦係数が低く、スベリ角度も小さいことから、防着性に優れていることがわかった。
【0053】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ウィスカがポリマー成形物の表面に突き刺さっている状態の一例を示す模式的な概念図である。
【図2】本発明のポリマー複合成形体を用いた防振材の一例の模式的な概念図である。
【図3】本発明のポリマー複合成形体を用いた防振材の一例の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ウィスカ、2 ポリマー成形物、3 防振材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とし、デュロメータ硬さがA30以下であるポリマー成形物の表面に、ウィスカを含む防着剤を添加したことを特徴とするポリマー複合成形体。
【請求項2】
前記ウィスカには無機系ウィスカが含まれていることを特徴とする請求項1に記載のポリマー複合成形体。
【請求項3】
前記ウィスカにはチタン酸カリウムウィスカが含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載のポリマー複合成形体。
【請求項4】
前記ウィスカの繊維径が0.1〜10μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のポリマー複合成形体。
【請求項5】
前記ウィスカの平均繊維長が10〜50μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のポリマー複合成形体。
【請求項6】
前記ポリマー成形物がブチルゴムを主材とするゴム組成物からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のポリマー複合成形体。
【請求項7】
前記ポリマー成形物がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)および/またはスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)を主材とする熱可塑性エラストマー組成物からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のポリマー複合成形体。
【請求項8】
前記ポリマー成形物の損失係数tanδが0.2〜0.8であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のポリマー複合成形体。
【請求項9】
前記ポリマー成形物のJIS−K6262に準じて測定した70℃−24時間における圧縮永久歪が5〜20%であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のポリマー複合成形体。
【請求項10】
前記ウィスカが前記ポリマー成形物の表面に突き刺さっていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のポリマー複合成形体。
【請求項11】
防振材として用いられることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のポリマー複合成形体。
【請求項12】
ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とし、デュロメータ硬さがA30以下であるポリマー成形物の表面に、ウィスカを含む防着剤を打粉により添加する工程を含むことを特徴とするポリマー複合成形体の製造方法。
【請求項13】
ゴム成分および/または熱可塑性エラストマー成分を主材とし、デュロメータ硬さがA30以下であるポリマー成形物を、ウィスカを含む防着剤を分散させた溶媒に浸漬させることにより、前記ポリマー成形物の表面に前記防着剤を添加する工程を含むことを特徴とするポリマー複合成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−299284(P2006−299284A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206597(P2006−206597)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【分割の表示】特願2002−74029(P2002−74029)の分割
【原出願日】平成14年3月18日(2002.3.18)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】