ポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法
【課題】2種類以上の複数の高分子材料を混合したポリマ材料について、高価な装置を用いることなく、簡易に相分離状態を評価できるポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法を提供する。
【解決手段】2種類以上の高分子材料を混合したポリマ材料の相分離状態測定方法において、前記高分子材料でポリマ試験片を形成し、該ポリマ試験片をガス状あるいは水溶液状の電子染色剤に曝露して該ポリマ試験片に電子染色層を形成し、曝露時間に対応して変化した前記電子染色層厚さが計測されて曝露時間に対する電子染色層厚さがデータ化され、データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さが、データ処理装置の画面に、一方の軸を曝露時間とし、他方の軸を電子染色層厚さとした座標に、前記ポリマ材料の相分離傾向の相関線として画面表示されることを特徴とする。
【解決手段】2種類以上の高分子材料を混合したポリマ材料の相分離状態測定方法において、前記高分子材料でポリマ試験片を形成し、該ポリマ試験片をガス状あるいは水溶液状の電子染色剤に曝露して該ポリマ試験片に電子染色層を形成し、曝露時間に対応して変化した前記電子染色層厚さが計測されて曝露時間に対する電子染色層厚さがデータ化され、データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さが、データ処理装置の画面に、一方の軸を曝露時間とし、他方の軸を電子染色層厚さとした座標に、前記ポリマ材料の相分離傾向の相関線として画面表示されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法に関するものであり、特に複数の高分子材料を混合して構成されるポリマ材料の相分離状態の測定方法および評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の要求特性を満足しなければならないポリマ材料は、2種類以上の複数の高分子材料をブレンドして作製される場合がある。このようなポリマ材料では、ブレンドした高分子材料の相分離構造が材料の特性に影響を与える。このため、ポリマ材料に用いられる複数の高分子材料の相分離構造を制御し、評価することは、ポリマ材料の最適化、及び品質管理を行う上で非常に重要である。
【0003】
例えば、特許文献1には架橋ゴムと結晶性樹脂を混合したポリマ材料が記載されている。特許文献1では、ゴムを混練中に動的架橋することにより、結晶性樹脂が連続相、架橋ゴムが分散相となる相分離構造を取っていることが透過型電子顕微鏡で確認されている。
【0004】
また、非特許文献1には観察の一例が記載されている。非特許文献1に記載の観察の一例を図10に示す。非特許文献1には、結晶性樹脂を連続相とすることで、使用時(室温)に大きな機械強度、加工時(結晶性樹脂の融点以上)に高い流動性を付与できる旨が記載されている。逆に、架橋ゴムが連続相になる相分離構造を取ると、機械強度、リサイクル性(熱可塑性)が損なわれる。
【0005】
ポリマ材料の相分離構造の評価に用いられる透過型電子顕微鏡は、100ナノメートル程度の膜厚に薄片化した試料に電子線を入射して、透過した電子線で像を形成する観察手段である。ここで、透過型電子顕微鏡で用いられる電子線の透過性は試料の元素組成に依存する。このため、軽元素からなる高分子材料が主体のポリマ材料の場合は、相分離した各相の元素構成に大きな差がなく、試料をそのまま観察したのでは相構造の識別が非常に困難である。このため、このようなポリマ材料では重金属を含む電子染色剤が利用され、電子染色剤と各相の反応性の差を利用して、各相の重金属吸収量の差でコントラストを付与する手段が用いられる。
【0006】
特許文献2には、透過型電子顕微鏡用試料について、ミクロトーム(試料の薄片化装置)にセットできる形状に作製した試料ブロックに、一つまたは複数の染色剤を個別に作用させて染色を行う際に、少なくとも一つの染色を加熱状態で行う透過型電子顕微鏡用試料の作製方法、及び当該方法に用いられる装置が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、2種以上の高分子材料成分より構成される樹脂混合物を透過型電子顕微鏡を用い観察する際に、含有される高分子材料成分のガラス転移温度範囲よりも上下に20℃ずつ広い温度範囲で電子染色する透過型電子顕微鏡観察用試料作製方法が記載されている。
【0008】
ポリマ材料の他の評価方法として、非特許文献2には、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用い、探針を圧電素子で振動させながら試料表面を走査し、探針を振動させるための入力信号と探針の先端位置の検出器の出力信号との位相差をマッピングすることにより、試料表面の硬さ分布像を得るDynamic Force Mode(DFM)で測定した例が記載されている。すなわち、軟らかい相は位相差が大きく、硬い相は位相差が小さくなり、これにより相が識別される。非特許文献2ではゴムと結晶性樹脂を70対30の比率で混練した材料系で、単純に混練した場合はゴムが連続相、樹脂が分散相になっているのに対し、混練中にゴムを架橋しながら混練する動的架橋をさせると、ゴムが微細分散し、結晶性樹脂が連続相になることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−31354号公報
【特許文献2】特開平06−288882号公報
【特許文献3】特開平07−318470号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「日立電線」No.27(2008)5頁
【非特許文献2】第19回日本化学会関東支部茨城地区研究交流会予稿集(平成20年)39頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ポリマ材料は、試料を電子染色して透過型電子顕微鏡で観察することで相分離構造が測定可能である。しかし、透過型電子顕微鏡観察には以下の問題点がある。
【0012】
まず、透過型電子顕微鏡観察にあっては、電子線が透過するように100ナノメートル程度の極薄の試料片を作製する必要があるが、これには極低温で試料を精度良く切り出すクライオウルトラミクロトームなどの高価な実験機器が必要である。なによりも、透過型電子顕微鏡自体が非常に高価である。
【0013】
また、透過型電子顕微鏡観察のために切り出したポリマ材料の試料の薄片を電子染色剤と反応させるためには適切な反応条件を用いる必要があり、透過型電子顕微鏡を用いた相分離構造の観察には習熟が必要である。もし、電子染色条件(曝露時間)が適切でない場合は明瞭なコントラストが得られず、最適化のために試料作製と測定を繰り返す必要がある。この点については、ポリマ材料を構成する高分子材料のガラス転移温度よりも広い温度範囲内で加熱しながら電子染色する特許文献3に記載の方法にあっても同様である。
【0014】
さらに、得られた透過像からどの成分が連続相、あるいは分散相かを実験者が判断するが、試料の厚み全体の情報が重なるため、構造が膜厚(100ナノメートル程度)に比較して微細であると境界部がぼやけて、判断を困難にする。また、定量的なパラメータを抽出するためには複雑な画像解析を施す必要がある。
【0015】
以上のように、透過型電子顕微鏡による相分離構造評価には、装置が高価であること、その操作に習熟(熟練)が必要であること、相分離構造が微細な場合の解像度の低下、定量的なパラメータ抽出が難解であること等の問題点がある。
【0016】
一方、走査型プローブ顕微鏡を用いた観察方法の場合、観察面の凹凸も位相差に影響を及ぼすため、相を正確に識別するためには極めて平滑な観察面を形成する必要がある。実際には、相分離して硬さの異なる相が分散したポリマ材料を切削すると、異なる相の境界で段差が生じ易く、相識別精度が低下する。さらに、透過型電子顕微鏡と同様、定量的なパラメータを抽出するために高度な画像解析を施す必要がある。
【0017】
上記の問題点を踏まえ、本発明は、2種類以上の複数の高分子材料を混合したポリマ材料について、高価な装置を用いることなく、簡易に相分離状態を評価できるポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明は、2種類以上の高分子材料を混合したポリマ材料の相分離状態測定方法において、前記高分子材料でポリマ試験片を形成し、該ポリマ試験片をガス状あるいは水溶液状の電子染色剤に曝露して該ポリマ試験片に電子染色層を形成し、曝露時間に対応して変化した前記電子染色層厚さが計測されて曝露時間に対する電子染色層厚さがデータ化され、データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さに基づき導き出された前記ポリマ材料の相分離傾向の相関線によりポリマ材料の相分離状態を測定することを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記相関線に基づいて取得された、曝露時間に対する電子染色層厚さの飽和値を飽和値パラメータとして用いることを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記相関線に基づいて取得された、該相関線についての傾きを表す指数を傾きパラメータとして用いることを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記相関線に基づいて取得された、曝露時間に対する電子染色層厚さの飽和値からなる飽和値パラメータ、及び前記相関線に基づいて取得された、該相関線についての傾きを表す指数からなる傾きパラメータ指数を下記式にパラメータフィッテングすることを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0022】
【数1】
(ただし、ここでdは電子染色層厚さ(μm)、tは曝露時間(分)、cは電子染色剤がガス状化または水溶液化するまでの遅れ時間、Aは飽和値パラメータ、Bは傾きパラメータ指数、Dは曝露時間の累乗を示すパラメータ)
【0023】
また、本発明は、前記データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さが下記式を演算処理し、前記曝露時間に対する電子染色層厚さの増加率を示すパラメータ(下記式のX)を用いてポリマの相分離状態を測定することを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0024】
【数2】
【0025】
また、本発明は、前記ポリマ材料の相分離状態測定方法を用いたポリマ材料の相分離状態評価方法において、前記データ処理装置が、データベースに、ポリマ材料の相分離状態と曝露時間および電子染色層厚さについてのポリマ材料の相分離傾向の相関線とを予め相関データとして格納し、前記画面表示された相関線と前記データベースに格納した相関線とが対比され、前記データベースに格納した近似した相関線から当該ポリマ材料の相分離状態が特定されることを特徴とするポリマ材料の相分離状態評価方法を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、2種類以上の複数の高分子材料を混合したポリマ材料について、高価な装置を用いることなく、簡易に相分離状態を評価できるポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る相分離状態測定手順を示すフローチャートである。
【図2】試料5(ゴム比率70%、動的架橋なし)を電子染色剤に60分曝露後、断面をスライスしたものを光学顕微鏡で透過観察した像である。
【図3】試料6(ゴム比率70%、動的架橋あり)を電子染色剤に60分曝露後、断面をスライスしたものを光学顕微鏡で透過観察した像である。
【図4】原料1(結晶性樹脂)、原料2(ゴム)と動的架橋していない試料1(ゴム比率30%)、試料3(ゴム比率50%)、試料5(ゴム比率70%)の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係をプロットしたものである。
【図5】原料1(結晶性樹脂)、原料2(ゴム)と動的架橋した試料2(ゴム比率30%)、試料4(ゴム比率50%)、試料6(ゴム比率70%)の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係をプロットしたものである。
【図6】原料1、原料2、試料1〜6の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係を式1でフィッティングしたときのパラメータAのフィッティング値をゴム比率に対してプロットした結果である。
【図7】原料1、原料2、試料1〜6の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係を式1でフィッティングしたときのパラメータBのフィッティング結果をゴム比率に対してプロットしたものである。
【図8】原料1、原料2、試料1〜6の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係を式1でフィッティングしたときのパラメータDのフィッティング結果をゴム比率に対してプロットしたものである。
【図9】原料1、原料2、試料1〜6の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係から式2で計算されるパラメータXの結果をゴム比率に対してプロットしたものである。
【図10】透過型電子顕微鏡にて架橋ゴムと結晶性樹脂からなるポリマ材料の相分離構造を観察した例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0029】
本発明の実施の形態に係るポリマ材料の相分離状態測定手順を図1に示す。図1に示すS101において、ポリマ材料を試験片として切り出す。切り出した試験片の表面はある程度平滑であることが望ましい。これは、電子染色は試験片の表面から進行するため本実施の形態においてはポリマ材料を電子染色後、電子染色層膜厚を測定評価するためである。
【0030】
試験片の大きさは、電子染色するための反応容器の中に入る程度の大きさであれば良いが、切削、観察時の作業性を考えれば、試験片の大きさは数mm〜数cmのオーダが良い。また、試料の異方性を確認したい場合には、比較したい面をそれぞれ切り出し、比較すれば良い。ポリマ材料がペレット状などで当初から適当なサイズであれば、そのまま試験片として使用しても構わない。
【0031】
本実施の形態において、ポリマ材料としては、ゴムと結晶性樹脂から構成されるものがより好適である。
【0032】
本実施の形態で用いられるゴムとしては、エチレン酢酸ビニル共重合体やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体などが好適である。
【0033】
本実施の形態で用いられる結晶性樹脂としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体の中から選ばれる少なくとも1種を含み、単独もしくは2種以上をブレンドして用いられる結晶性ポリオレフィン系樹脂が好適である。
【0034】
ここで、本実施の形態で用いられるポリプロピレンとしては、ホモポリマーの他にエチレンに代表されるα−オレフィンを共重合したブロック共重合体やランダム共重合体およびエチレンプロピレンゴムに代表されるゴム成分を重合段階で導入したポリプロピレンを含むものとする。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体としては結晶性を有した酢酸ビニル含有量が30wt%より少ないものが好適である。その他には、低密度ポリエチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、エチレン−ブテン−ヘキセン三元共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などが好適である。
【0035】
次に、S102において、試験片を電子染色剤に曝露して電子染色する。本実施の形態で用いる電子染色剤としては、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウムが好適である。四酸化ルテニウムは酸化力が強く、ほとんどの高分子材料と反応するため、適用対象材料が広い。逆に、四酸化オスミウムなど他の電子染色剤は高分子材料の種類によって反応するものと反応しないものでの差が大きいので、相分離構造の差による違いを極端に得られる場合もあるので、対象材料により使い分けると良い。
【0036】
これらの電子染色剤は常温で昇華するため、ガラス容器あるいは金属容器に試験片と電子染色剤の結晶を入れて、所定の曝露時間密閉後取り出すことで、試験片表面は電子染色される。
【0037】
また、これらの電子染色剤は水溶性でもあるので、水に溶解し、その中に試料を浸漬して、浸漬時間を曝露時間として用いても良い。電子染色剤を水に溶解した水溶液を用いる場合、電子染色剤の試験片内への進入が緩やかになるため、その分、曝露時間を長くする必要がある。
【0038】
溶液で使用できる電子染色剤としてはこの他、酢酸ウラニル、リンタングステン酸などがある。
【0039】
S102において、電子染色は複数の曝露時間で実施される。ここで、電子染色の傾向を把握するために3点以上の曝露時間での実施が望ましい。曝露時間は電子染色層厚さの変化をプロットするときのバランスを考慮し、等間隔や等倍で設定すると良い。電子染色剤の濃度、温度が高い方が短い時間で電子染色反応が進行する傾向があるので、これらの条件が比較する試料間で大きく変化しないように配慮するべきである。
【0040】
次に、S103において、電子染色した試験片を切断し、断面をスライスしてスライス片を作製する。本実施の形態において、スライス片の厚みは10〜100マイクロメートル程度であれば良い。このため、本実施の形態における試験片断面のスライスにはウルトラミクロトームではなく、一般のミクロトームなどの加工機や、カミソリなどの工具を用いれば良い。スライス片の厚みが薄すぎると電子染色層が見え難くなり、ハンドリング性が悪くなる。逆に厚すぎると、電子染色層の境界が厚み方向に広がって見えるため、測定精度が悪くなる恐れがある。よって、スライスは染色表面に対し垂直な断面を切り出すのが良い。
【0041】
次にS104において、S103で得たスライス片を観察し、電子染色層厚さを見積もる。電子染色層厚さ見積もりの手段としては、例えばスケール付きの光学顕微鏡で読み取ったり、写真撮影して、観察条件から倍率を見積もって電子染色層厚さを求めれば良い。また、デジタル顕微鏡などの撮像素子でスライス片の透過像あるいは反射像をコンピュータに取り込み、電子染色層厚さを算出すると作業性が良く、より好適である。
【0042】
次に、S105において、曝露時間に対する電子染色層厚さの相関を検討する。曝露時間に対する電子染色層厚さの変化をプロットし、大まかな傾向を把握した上で、モデル関数を仮定してフィッティングをかけて、定量的なパラメータ求めることで、ポリマ材料の相分離構造を判定するためである。
【0043】
本実施の形態において、曝露時間に対する電子染色層厚さの相関を取ることでポリマ材料の相分離構造を判定することができるのは以下の理由による。すなわち、ポリマ材料にあっては、電子染色剤の拡散速度や反応速度が高分子材料の種類によって異なり、電子染色剤の進入量、沈着量に差が出るため、相分離構造により電子染色層厚さの変化の染色時間依存性に差が生じるためである。
【0044】
例えば、ポリマ材料を構成する高分子材料としてのゴムと結晶性樹脂をそれぞれ単体で電子染色した場合、ゴムの方が結晶性樹脂よりも電子染色層が早く厚くなるが、電子染色層厚さの増加が頭打ち(飽和)に達するのも早い傾向がある。逆に、結晶性樹脂はゴムに比較して、電子染色層厚さの初期の増加は遅いが、飽和に達するのも遅い傾向がある。
【0045】
そして、これらをブレンドしたポリマ材料で比較すると、連続相がゴムになっているポリマ材料ではゴム単体の場合と同様、早い時点で電子染色層が厚くなり、また早く飽和に達する。これに対し、連続相が結晶性樹脂になっているポリマ材料では、結晶性樹脂単体の場合と同様、早い時点での電子染色層厚さの増加が遅いが、飽和に達するのも遅い傾向が見られる。
【0046】
このようにして、電子染色層厚さの変化の曝露時間依存性を調べることによって、いずれの高分子材料が連続相になっているかの相分離構造の判断材料が得られる。そして、S106においてポリマ材料の相分離状態が評価、判定される。
【0047】
本実施の形態においては、ポリマ材料に異方性がある場合には、電子染色剤に曝露する面により電子染色層厚さの変化の曝露時間依存性が異なることも容易に推測でき、そうした解析も応用可能と考えられる。
【0048】
また、もっと簡易に測定値同士で比や差を取るなどして、その変化率を判定基準としても良い。
【実施例】
【0049】
以下に本発明の実施例を具体的に説明する。
【0050】
評価用の試料として、表1に示す配合の材料を用いて試料を作製した。ゴム成分としてシラングラフト共重合したエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量42wt%)、結晶性樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量14wt%)を原料として用いた。これらを37mm二軸押出し機(L/D=60)に投入し混練を行った。試料1、3、5は混練されるだけであるが、試料2、4、6は添加されたジブチル錫ジラクレートの作用で、混練中にシラン架橋反応が起こり、動的架橋が進行する。
【0051】
【表1】
【0052】
作製した試料をSPM位相差像で観察した結果と引張強度、曲げ弾性率を評価した結果を表2に示す。SPM位相差像の観察は冷却した試料片をミクロトームで切削して得た断面を計測した。
【0053】
表2に示すSPM位相差像から、結晶性樹脂の原料比が大きい試料1と試料2は、いずれも連続相が結晶性樹脂になっていることが分かる。ゴムの比率が50%を超える試料3、試料5は連続相がゴム相であるが、動的架橋している試料4、試料6は連続相が結晶性樹脂になっている。
【0054】
全体的に動的架橋している試料2、試料4、試料6は、同じゴム比率の試料1、試料3、試料5とそれぞれ比較すると、ゴム相の分散サイズが小さく、結晶性樹脂の連続性が高いことがわかる。
【0055】
機械特性を比較すると、曲げ強度はゴム比率が同じであればほぼ同等の強度を示しているが、引張強度は結晶性樹脂の連続性が高い試料2、試料4、試料6が大きい数値を示している。
【0056】
このようにSPM位相差像により評価された相分散構造と、引張強度の間に相関が見られる。しかし、表2に示すようなSPM位相差像には試料表面の凹凸によるコントラストも重畳しており、この2次元像から定量的なパラメータを抽出することは容易ではない。
【0057】
【表2】
[実施例1]
次にこれらの試料を本発明の実施の形態に係る方法で評価した。
【0058】
まず、各試料から2mm角の試験片をカミソリで切り出し、密封可能な50ccのガラス瓶に入れた。ここに、電子染色剤として凍結した40mgの四酸化ルテニウム結晶を入れた後、密封し、25℃で所定の曝露時間放置した。本実施例では、所定の曝露時間として10分、60分、360分の3段階を用いた。
【0059】
所定の曝露時間を経過後、ガラス瓶を開栓し、試験片を取り出した。本作業は局所排気機能を有するドラフト内で実施した。取り出した試料は半日放置したのち、カミソリで2分割し、切断面をミクロトームで切削(スライス)し、膜厚20μmのスライス片を切り出した。
【0060】
次に光学顕微鏡でスライス片を観察し、写真を撮影した。撮影した結果の一例を図2、図3に示す。図2は試料5(ゴム70%、動的架橋なし)、図3は試料6(ゴム70%、動的架橋あり)を染色剤に60分曝露し、断面をスライスしたものである。倍率校正用の目盛りを事前に撮影し、それを参考にしてスケールを入れた。図2に示す1a、図3に示す1bは試料表面側の電子染色層を表す。図2に示す2a、図3に示す2bは試料内部の試料層を表す。
【0061】
図2、図3に示すように、概ね一定の膜厚で電子染色剤による染色が進み、電子染色層と試料層の間に境界が認められる。図2の電子染色層厚さ1aは198μm、図3の電子染色層厚さ1bは157μmであった。
【0062】
こうして観察された各試料の電子染色層厚さと曝露時間の相関のプロットを図4と図5に示す。縦軸の電子染色層厚さはリニアでプロットしたが、横軸の曝露時間は対数表示とした。
【0063】
図4、図5においては、電子染色層厚さdと曝露時間tの相関の近似式として式1を仮定し、パラメータフィッティングした結果を実線、点線で示している。
【0064】
【数3】
ここで、dは電子染色層厚さ(μm)、tは曝露時間(分)、A〜Dはフィッティングパラメータであり、Aは飽和値パラメータ、Bは傾きパラメータ指数、Dは曝露時間の累乗を示すパラメータを示す。この中でCは、凍結した電子染色剤である四酸化ルテニウム結晶が室温放置で昇温し、昇華してガス化するまでの遅れ時間を想定しており、本実施例では1.5分としている。実際の実験でも電子染色剤が昇華して、ガスの褐色が顕著になるまで1〜2分を要していた。
【0065】
パラメータフィッティングで求めたパラメータA、B、Dとゴム比率の相関をそれぞれ図6、図7、図8に示す。ここで、パラメータAは電子染色層厚さの飽和点であり、パラメータB、Cは、図4、図5に記載のグラフの傾きを表す。
【0066】
ここで、図7のパラメータBのフィッティング結果において、連続相が結晶性樹脂のグループ11と連続相がゴムのグループ12において、連続相がゴムの場合にパラメータBが大きめになる傾向があることが分かる。
【0067】
また、同じゴム比率を有しながら、相分離構造が異なる試料1と試料2、試料3と試料4、試料5と試料6で、パラメータA、パラメータDの差が大きい。
【0068】
表2と比較すると、連続相が結晶性樹脂で、ゴムが微細分散するとパラメータAは大きく、パラメータBとパラメータDは小さくなる傾向が見られる。
【0069】
このようにして電子染色層厚さdと曝露時間tの相関から相分離構造に関する情報が得られ、ポリマ材料の相分離状態を測定することが可能となる。
[実施例2]
【0070】
本発明の実施例としては、曝露時間と、電子染色層厚さとの相関関係から抽出されるパラメータを、式2に示すパラメータXとしても良い。式2に示すパラメータXは、曝露時間10分から曝露時間60分までの電子染色層厚さの変化率から曝露時間60分から曝露時間360分までの電子染色層厚さの変化率の差分をとったものである。
【0071】
【数4】
本実施例で用いられる試料からパラメータXを抽出した結果を図9に示す。図9に示すようにパラメータXは、曝露時間が増えたときに電子染色層厚さの増加率が大きく減少しているものほど大きくなり、電子染色層厚さの増加率の減少が少ないほど小さくなることが分かる。表2と図9の比較から、パラメータXは、連続相が結晶性樹脂で、ゴムが微細分散すると小さくなる傾向があることが分かる。
【0072】
このようにして、本実施例においては、電子染色層厚さdと曝露時間tの相関から相分離構造に関する情報が得られ、ポリマ材料の相分離状態を測定することが可能となる。
【0073】
以上、本発明の実施例として式1、式2で数値パラメータを抽出した。しかし、本発明の実施例としては、電子染色層厚さと曝露時間の測定データ群から数値パラメータを抽出する式は式1、式2に限定されるものではない。
【0074】
以上のように、本発明において、2種類以上の複数の高分子材料を原料として混合したポリマ材料において、原料の高分子材料の内の少なくとも1種類以上と反応して重金属化合物を形成して材料を電子染色する染色ガスあるいは染色液に、ポリマ材料の試験片を複数の時間で曝露し、その後、断面をスライスし、曝露時間に対する電子染色層厚さの変化を計測し、電子染色層厚さと曝露時間の相関から相分離構造に関する情報を得ることができる。
【0075】
本発明によれば、高価な観察装置を用いず、簡易な観察、計算により、ポリマ材料の相分離構造についての数値パラメータを抽出でき、ポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法が得られる。
【符号の説明】
【0076】
1a,1b…電子染色層、2a,2b…試料層、11…連続相が結晶性樹脂である試料のグループ、21…連続相がゴムである試料のグループ。
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法に関するものであり、特に複数の高分子材料を混合して構成されるポリマ材料の相分離状態の測定方法および評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の要求特性を満足しなければならないポリマ材料は、2種類以上の複数の高分子材料をブレンドして作製される場合がある。このようなポリマ材料では、ブレンドした高分子材料の相分離構造が材料の特性に影響を与える。このため、ポリマ材料に用いられる複数の高分子材料の相分離構造を制御し、評価することは、ポリマ材料の最適化、及び品質管理を行う上で非常に重要である。
【0003】
例えば、特許文献1には架橋ゴムと結晶性樹脂を混合したポリマ材料が記載されている。特許文献1では、ゴムを混練中に動的架橋することにより、結晶性樹脂が連続相、架橋ゴムが分散相となる相分離構造を取っていることが透過型電子顕微鏡で確認されている。
【0004】
また、非特許文献1には観察の一例が記載されている。非特許文献1に記載の観察の一例を図10に示す。非特許文献1には、結晶性樹脂を連続相とすることで、使用時(室温)に大きな機械強度、加工時(結晶性樹脂の融点以上)に高い流動性を付与できる旨が記載されている。逆に、架橋ゴムが連続相になる相分離構造を取ると、機械強度、リサイクル性(熱可塑性)が損なわれる。
【0005】
ポリマ材料の相分離構造の評価に用いられる透過型電子顕微鏡は、100ナノメートル程度の膜厚に薄片化した試料に電子線を入射して、透過した電子線で像を形成する観察手段である。ここで、透過型電子顕微鏡で用いられる電子線の透過性は試料の元素組成に依存する。このため、軽元素からなる高分子材料が主体のポリマ材料の場合は、相分離した各相の元素構成に大きな差がなく、試料をそのまま観察したのでは相構造の識別が非常に困難である。このため、このようなポリマ材料では重金属を含む電子染色剤が利用され、電子染色剤と各相の反応性の差を利用して、各相の重金属吸収量の差でコントラストを付与する手段が用いられる。
【0006】
特許文献2には、透過型電子顕微鏡用試料について、ミクロトーム(試料の薄片化装置)にセットできる形状に作製した試料ブロックに、一つまたは複数の染色剤を個別に作用させて染色を行う際に、少なくとも一つの染色を加熱状態で行う透過型電子顕微鏡用試料の作製方法、及び当該方法に用いられる装置が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、2種以上の高分子材料成分より構成される樹脂混合物を透過型電子顕微鏡を用い観察する際に、含有される高分子材料成分のガラス転移温度範囲よりも上下に20℃ずつ広い温度範囲で電子染色する透過型電子顕微鏡観察用試料作製方法が記載されている。
【0008】
ポリマ材料の他の評価方法として、非特許文献2には、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用い、探針を圧電素子で振動させながら試料表面を走査し、探針を振動させるための入力信号と探針の先端位置の検出器の出力信号との位相差をマッピングすることにより、試料表面の硬さ分布像を得るDynamic Force Mode(DFM)で測定した例が記載されている。すなわち、軟らかい相は位相差が大きく、硬い相は位相差が小さくなり、これにより相が識別される。非特許文献2ではゴムと結晶性樹脂を70対30の比率で混練した材料系で、単純に混練した場合はゴムが連続相、樹脂が分散相になっているのに対し、混練中にゴムを架橋しながら混練する動的架橋をさせると、ゴムが微細分散し、結晶性樹脂が連続相になることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−31354号公報
【特許文献2】特開平06−288882号公報
【特許文献3】特開平07−318470号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「日立電線」No.27(2008)5頁
【非特許文献2】第19回日本化学会関東支部茨城地区研究交流会予稿集(平成20年)39頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ポリマ材料は、試料を電子染色して透過型電子顕微鏡で観察することで相分離構造が測定可能である。しかし、透過型電子顕微鏡観察には以下の問題点がある。
【0012】
まず、透過型電子顕微鏡観察にあっては、電子線が透過するように100ナノメートル程度の極薄の試料片を作製する必要があるが、これには極低温で試料を精度良く切り出すクライオウルトラミクロトームなどの高価な実験機器が必要である。なによりも、透過型電子顕微鏡自体が非常に高価である。
【0013】
また、透過型電子顕微鏡観察のために切り出したポリマ材料の試料の薄片を電子染色剤と反応させるためには適切な反応条件を用いる必要があり、透過型電子顕微鏡を用いた相分離構造の観察には習熟が必要である。もし、電子染色条件(曝露時間)が適切でない場合は明瞭なコントラストが得られず、最適化のために試料作製と測定を繰り返す必要がある。この点については、ポリマ材料を構成する高分子材料のガラス転移温度よりも広い温度範囲内で加熱しながら電子染色する特許文献3に記載の方法にあっても同様である。
【0014】
さらに、得られた透過像からどの成分が連続相、あるいは分散相かを実験者が判断するが、試料の厚み全体の情報が重なるため、構造が膜厚(100ナノメートル程度)に比較して微細であると境界部がぼやけて、判断を困難にする。また、定量的なパラメータを抽出するためには複雑な画像解析を施す必要がある。
【0015】
以上のように、透過型電子顕微鏡による相分離構造評価には、装置が高価であること、その操作に習熟(熟練)が必要であること、相分離構造が微細な場合の解像度の低下、定量的なパラメータ抽出が難解であること等の問題点がある。
【0016】
一方、走査型プローブ顕微鏡を用いた観察方法の場合、観察面の凹凸も位相差に影響を及ぼすため、相を正確に識別するためには極めて平滑な観察面を形成する必要がある。実際には、相分離して硬さの異なる相が分散したポリマ材料を切削すると、異なる相の境界で段差が生じ易く、相識別精度が低下する。さらに、透過型電子顕微鏡と同様、定量的なパラメータを抽出するために高度な画像解析を施す必要がある。
【0017】
上記の問題点を踏まえ、本発明は、2種類以上の複数の高分子材料を混合したポリマ材料について、高価な装置を用いることなく、簡易に相分離状態を評価できるポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明は、2種類以上の高分子材料を混合したポリマ材料の相分離状態測定方法において、前記高分子材料でポリマ試験片を形成し、該ポリマ試験片をガス状あるいは水溶液状の電子染色剤に曝露して該ポリマ試験片に電子染色層を形成し、曝露時間に対応して変化した前記電子染色層厚さが計測されて曝露時間に対する電子染色層厚さがデータ化され、データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さに基づき導き出された前記ポリマ材料の相分離傾向の相関線によりポリマ材料の相分離状態を測定することを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記相関線に基づいて取得された、曝露時間に対する電子染色層厚さの飽和値を飽和値パラメータとして用いることを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記相関線に基づいて取得された、該相関線についての傾きを表す指数を傾きパラメータとして用いることを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記相関線に基づいて取得された、曝露時間に対する電子染色層厚さの飽和値からなる飽和値パラメータ、及び前記相関線に基づいて取得された、該相関線についての傾きを表す指数からなる傾きパラメータ指数を下記式にパラメータフィッテングすることを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0022】
【数1】
(ただし、ここでdは電子染色層厚さ(μm)、tは曝露時間(分)、cは電子染色剤がガス状化または水溶液化するまでの遅れ時間、Aは飽和値パラメータ、Bは傾きパラメータ指数、Dは曝露時間の累乗を示すパラメータ)
【0023】
また、本発明は、前記データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さが下記式を演算処理し、前記曝露時間に対する電子染色層厚さの増加率を示すパラメータ(下記式のX)を用いてポリマの相分離状態を測定することを特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法を提供する。
【0024】
【数2】
【0025】
また、本発明は、前記ポリマ材料の相分離状態測定方法を用いたポリマ材料の相分離状態評価方法において、前記データ処理装置が、データベースに、ポリマ材料の相分離状態と曝露時間および電子染色層厚さについてのポリマ材料の相分離傾向の相関線とを予め相関データとして格納し、前記画面表示された相関線と前記データベースに格納した相関線とが対比され、前記データベースに格納した近似した相関線から当該ポリマ材料の相分離状態が特定されることを特徴とするポリマ材料の相分離状態評価方法を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、2種類以上の複数の高分子材料を混合したポリマ材料について、高価な装置を用いることなく、簡易に相分離状態を評価できるポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る相分離状態測定手順を示すフローチャートである。
【図2】試料5(ゴム比率70%、動的架橋なし)を電子染色剤に60分曝露後、断面をスライスしたものを光学顕微鏡で透過観察した像である。
【図3】試料6(ゴム比率70%、動的架橋あり)を電子染色剤に60分曝露後、断面をスライスしたものを光学顕微鏡で透過観察した像である。
【図4】原料1(結晶性樹脂)、原料2(ゴム)と動的架橋していない試料1(ゴム比率30%)、試料3(ゴム比率50%)、試料5(ゴム比率70%)の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係をプロットしたものである。
【図5】原料1(結晶性樹脂)、原料2(ゴム)と動的架橋した試料2(ゴム比率30%)、試料4(ゴム比率50%)、試料6(ゴム比率70%)の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係をプロットしたものである。
【図6】原料1、原料2、試料1〜6の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係を式1でフィッティングしたときのパラメータAのフィッティング値をゴム比率に対してプロットした結果である。
【図7】原料1、原料2、試料1〜6の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係を式1でフィッティングしたときのパラメータBのフィッティング結果をゴム比率に対してプロットしたものである。
【図8】原料1、原料2、試料1〜6の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係を式1でフィッティングしたときのパラメータDのフィッティング結果をゴム比率に対してプロットしたものである。
【図9】原料1、原料2、試料1〜6の電子染色剤への曝露時間と電子染色層厚さの関係から式2で計算されるパラメータXの結果をゴム比率に対してプロットしたものである。
【図10】透過型電子顕微鏡にて架橋ゴムと結晶性樹脂からなるポリマ材料の相分離構造を観察した例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0029】
本発明の実施の形態に係るポリマ材料の相分離状態測定手順を図1に示す。図1に示すS101において、ポリマ材料を試験片として切り出す。切り出した試験片の表面はある程度平滑であることが望ましい。これは、電子染色は試験片の表面から進行するため本実施の形態においてはポリマ材料を電子染色後、電子染色層膜厚を測定評価するためである。
【0030】
試験片の大きさは、電子染色するための反応容器の中に入る程度の大きさであれば良いが、切削、観察時の作業性を考えれば、試験片の大きさは数mm〜数cmのオーダが良い。また、試料の異方性を確認したい場合には、比較したい面をそれぞれ切り出し、比較すれば良い。ポリマ材料がペレット状などで当初から適当なサイズであれば、そのまま試験片として使用しても構わない。
【0031】
本実施の形態において、ポリマ材料としては、ゴムと結晶性樹脂から構成されるものがより好適である。
【0032】
本実施の形態で用いられるゴムとしては、エチレン酢酸ビニル共重合体やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体などが好適である。
【0033】
本実施の形態で用いられる結晶性樹脂としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体の中から選ばれる少なくとも1種を含み、単独もしくは2種以上をブレンドして用いられる結晶性ポリオレフィン系樹脂が好適である。
【0034】
ここで、本実施の形態で用いられるポリプロピレンとしては、ホモポリマーの他にエチレンに代表されるα−オレフィンを共重合したブロック共重合体やランダム共重合体およびエチレンプロピレンゴムに代表されるゴム成分を重合段階で導入したポリプロピレンを含むものとする。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体としては結晶性を有した酢酸ビニル含有量が30wt%より少ないものが好適である。その他には、低密度ポリエチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、エチレン−ブテン−ヘキセン三元共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などが好適である。
【0035】
次に、S102において、試験片を電子染色剤に曝露して電子染色する。本実施の形態で用いる電子染色剤としては、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウムが好適である。四酸化ルテニウムは酸化力が強く、ほとんどの高分子材料と反応するため、適用対象材料が広い。逆に、四酸化オスミウムなど他の電子染色剤は高分子材料の種類によって反応するものと反応しないものでの差が大きいので、相分離構造の差による違いを極端に得られる場合もあるので、対象材料により使い分けると良い。
【0036】
これらの電子染色剤は常温で昇華するため、ガラス容器あるいは金属容器に試験片と電子染色剤の結晶を入れて、所定の曝露時間密閉後取り出すことで、試験片表面は電子染色される。
【0037】
また、これらの電子染色剤は水溶性でもあるので、水に溶解し、その中に試料を浸漬して、浸漬時間を曝露時間として用いても良い。電子染色剤を水に溶解した水溶液を用いる場合、電子染色剤の試験片内への進入が緩やかになるため、その分、曝露時間を長くする必要がある。
【0038】
溶液で使用できる電子染色剤としてはこの他、酢酸ウラニル、リンタングステン酸などがある。
【0039】
S102において、電子染色は複数の曝露時間で実施される。ここで、電子染色の傾向を把握するために3点以上の曝露時間での実施が望ましい。曝露時間は電子染色層厚さの変化をプロットするときのバランスを考慮し、等間隔や等倍で設定すると良い。電子染色剤の濃度、温度が高い方が短い時間で電子染色反応が進行する傾向があるので、これらの条件が比較する試料間で大きく変化しないように配慮するべきである。
【0040】
次に、S103において、電子染色した試験片を切断し、断面をスライスしてスライス片を作製する。本実施の形態において、スライス片の厚みは10〜100マイクロメートル程度であれば良い。このため、本実施の形態における試験片断面のスライスにはウルトラミクロトームではなく、一般のミクロトームなどの加工機や、カミソリなどの工具を用いれば良い。スライス片の厚みが薄すぎると電子染色層が見え難くなり、ハンドリング性が悪くなる。逆に厚すぎると、電子染色層の境界が厚み方向に広がって見えるため、測定精度が悪くなる恐れがある。よって、スライスは染色表面に対し垂直な断面を切り出すのが良い。
【0041】
次にS104において、S103で得たスライス片を観察し、電子染色層厚さを見積もる。電子染色層厚さ見積もりの手段としては、例えばスケール付きの光学顕微鏡で読み取ったり、写真撮影して、観察条件から倍率を見積もって電子染色層厚さを求めれば良い。また、デジタル顕微鏡などの撮像素子でスライス片の透過像あるいは反射像をコンピュータに取り込み、電子染色層厚さを算出すると作業性が良く、より好適である。
【0042】
次に、S105において、曝露時間に対する電子染色層厚さの相関を検討する。曝露時間に対する電子染色層厚さの変化をプロットし、大まかな傾向を把握した上で、モデル関数を仮定してフィッティングをかけて、定量的なパラメータ求めることで、ポリマ材料の相分離構造を判定するためである。
【0043】
本実施の形態において、曝露時間に対する電子染色層厚さの相関を取ることでポリマ材料の相分離構造を判定することができるのは以下の理由による。すなわち、ポリマ材料にあっては、電子染色剤の拡散速度や反応速度が高分子材料の種類によって異なり、電子染色剤の進入量、沈着量に差が出るため、相分離構造により電子染色層厚さの変化の染色時間依存性に差が生じるためである。
【0044】
例えば、ポリマ材料を構成する高分子材料としてのゴムと結晶性樹脂をそれぞれ単体で電子染色した場合、ゴムの方が結晶性樹脂よりも電子染色層が早く厚くなるが、電子染色層厚さの増加が頭打ち(飽和)に達するのも早い傾向がある。逆に、結晶性樹脂はゴムに比較して、電子染色層厚さの初期の増加は遅いが、飽和に達するのも遅い傾向がある。
【0045】
そして、これらをブレンドしたポリマ材料で比較すると、連続相がゴムになっているポリマ材料ではゴム単体の場合と同様、早い時点で電子染色層が厚くなり、また早く飽和に達する。これに対し、連続相が結晶性樹脂になっているポリマ材料では、結晶性樹脂単体の場合と同様、早い時点での電子染色層厚さの増加が遅いが、飽和に達するのも遅い傾向が見られる。
【0046】
このようにして、電子染色層厚さの変化の曝露時間依存性を調べることによって、いずれの高分子材料が連続相になっているかの相分離構造の判断材料が得られる。そして、S106においてポリマ材料の相分離状態が評価、判定される。
【0047】
本実施の形態においては、ポリマ材料に異方性がある場合には、電子染色剤に曝露する面により電子染色層厚さの変化の曝露時間依存性が異なることも容易に推測でき、そうした解析も応用可能と考えられる。
【0048】
また、もっと簡易に測定値同士で比や差を取るなどして、その変化率を判定基準としても良い。
【実施例】
【0049】
以下に本発明の実施例を具体的に説明する。
【0050】
評価用の試料として、表1に示す配合の材料を用いて試料を作製した。ゴム成分としてシラングラフト共重合したエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量42wt%)、結晶性樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量14wt%)を原料として用いた。これらを37mm二軸押出し機(L/D=60)に投入し混練を行った。試料1、3、5は混練されるだけであるが、試料2、4、6は添加されたジブチル錫ジラクレートの作用で、混練中にシラン架橋反応が起こり、動的架橋が進行する。
【0051】
【表1】
【0052】
作製した試料をSPM位相差像で観察した結果と引張強度、曲げ弾性率を評価した結果を表2に示す。SPM位相差像の観察は冷却した試料片をミクロトームで切削して得た断面を計測した。
【0053】
表2に示すSPM位相差像から、結晶性樹脂の原料比が大きい試料1と試料2は、いずれも連続相が結晶性樹脂になっていることが分かる。ゴムの比率が50%を超える試料3、試料5は連続相がゴム相であるが、動的架橋している試料4、試料6は連続相が結晶性樹脂になっている。
【0054】
全体的に動的架橋している試料2、試料4、試料6は、同じゴム比率の試料1、試料3、試料5とそれぞれ比較すると、ゴム相の分散サイズが小さく、結晶性樹脂の連続性が高いことがわかる。
【0055】
機械特性を比較すると、曲げ強度はゴム比率が同じであればほぼ同等の強度を示しているが、引張強度は結晶性樹脂の連続性が高い試料2、試料4、試料6が大きい数値を示している。
【0056】
このようにSPM位相差像により評価された相分散構造と、引張強度の間に相関が見られる。しかし、表2に示すようなSPM位相差像には試料表面の凹凸によるコントラストも重畳しており、この2次元像から定量的なパラメータを抽出することは容易ではない。
【0057】
【表2】
[実施例1]
次にこれらの試料を本発明の実施の形態に係る方法で評価した。
【0058】
まず、各試料から2mm角の試験片をカミソリで切り出し、密封可能な50ccのガラス瓶に入れた。ここに、電子染色剤として凍結した40mgの四酸化ルテニウム結晶を入れた後、密封し、25℃で所定の曝露時間放置した。本実施例では、所定の曝露時間として10分、60分、360分の3段階を用いた。
【0059】
所定の曝露時間を経過後、ガラス瓶を開栓し、試験片を取り出した。本作業は局所排気機能を有するドラフト内で実施した。取り出した試料は半日放置したのち、カミソリで2分割し、切断面をミクロトームで切削(スライス)し、膜厚20μmのスライス片を切り出した。
【0060】
次に光学顕微鏡でスライス片を観察し、写真を撮影した。撮影した結果の一例を図2、図3に示す。図2は試料5(ゴム70%、動的架橋なし)、図3は試料6(ゴム70%、動的架橋あり)を染色剤に60分曝露し、断面をスライスしたものである。倍率校正用の目盛りを事前に撮影し、それを参考にしてスケールを入れた。図2に示す1a、図3に示す1bは試料表面側の電子染色層を表す。図2に示す2a、図3に示す2bは試料内部の試料層を表す。
【0061】
図2、図3に示すように、概ね一定の膜厚で電子染色剤による染色が進み、電子染色層と試料層の間に境界が認められる。図2の電子染色層厚さ1aは198μm、図3の電子染色層厚さ1bは157μmであった。
【0062】
こうして観察された各試料の電子染色層厚さと曝露時間の相関のプロットを図4と図5に示す。縦軸の電子染色層厚さはリニアでプロットしたが、横軸の曝露時間は対数表示とした。
【0063】
図4、図5においては、電子染色層厚さdと曝露時間tの相関の近似式として式1を仮定し、パラメータフィッティングした結果を実線、点線で示している。
【0064】
【数3】
ここで、dは電子染色層厚さ(μm)、tは曝露時間(分)、A〜Dはフィッティングパラメータであり、Aは飽和値パラメータ、Bは傾きパラメータ指数、Dは曝露時間の累乗を示すパラメータを示す。この中でCは、凍結した電子染色剤である四酸化ルテニウム結晶が室温放置で昇温し、昇華してガス化するまでの遅れ時間を想定しており、本実施例では1.5分としている。実際の実験でも電子染色剤が昇華して、ガスの褐色が顕著になるまで1〜2分を要していた。
【0065】
パラメータフィッティングで求めたパラメータA、B、Dとゴム比率の相関をそれぞれ図6、図7、図8に示す。ここで、パラメータAは電子染色層厚さの飽和点であり、パラメータB、Cは、図4、図5に記載のグラフの傾きを表す。
【0066】
ここで、図7のパラメータBのフィッティング結果において、連続相が結晶性樹脂のグループ11と連続相がゴムのグループ12において、連続相がゴムの場合にパラメータBが大きめになる傾向があることが分かる。
【0067】
また、同じゴム比率を有しながら、相分離構造が異なる試料1と試料2、試料3と試料4、試料5と試料6で、パラメータA、パラメータDの差が大きい。
【0068】
表2と比較すると、連続相が結晶性樹脂で、ゴムが微細分散するとパラメータAは大きく、パラメータBとパラメータDは小さくなる傾向が見られる。
【0069】
このようにして電子染色層厚さdと曝露時間tの相関から相分離構造に関する情報が得られ、ポリマ材料の相分離状態を測定することが可能となる。
[実施例2]
【0070】
本発明の実施例としては、曝露時間と、電子染色層厚さとの相関関係から抽出されるパラメータを、式2に示すパラメータXとしても良い。式2に示すパラメータXは、曝露時間10分から曝露時間60分までの電子染色層厚さの変化率から曝露時間60分から曝露時間360分までの電子染色層厚さの変化率の差分をとったものである。
【0071】
【数4】
本実施例で用いられる試料からパラメータXを抽出した結果を図9に示す。図9に示すようにパラメータXは、曝露時間が増えたときに電子染色層厚さの増加率が大きく減少しているものほど大きくなり、電子染色層厚さの増加率の減少が少ないほど小さくなることが分かる。表2と図9の比較から、パラメータXは、連続相が結晶性樹脂で、ゴムが微細分散すると小さくなる傾向があることが分かる。
【0072】
このようにして、本実施例においては、電子染色層厚さdと曝露時間tの相関から相分離構造に関する情報が得られ、ポリマ材料の相分離状態を測定することが可能となる。
【0073】
以上、本発明の実施例として式1、式2で数値パラメータを抽出した。しかし、本発明の実施例としては、電子染色層厚さと曝露時間の測定データ群から数値パラメータを抽出する式は式1、式2に限定されるものではない。
【0074】
以上のように、本発明において、2種類以上の複数の高分子材料を原料として混合したポリマ材料において、原料の高分子材料の内の少なくとも1種類以上と反応して重金属化合物を形成して材料を電子染色する染色ガスあるいは染色液に、ポリマ材料の試験片を複数の時間で曝露し、その後、断面をスライスし、曝露時間に対する電子染色層厚さの変化を計測し、電子染色層厚さと曝露時間の相関から相分離構造に関する情報を得ることができる。
【0075】
本発明によれば、高価な観察装置を用いず、簡易な観察、計算により、ポリマ材料の相分離構造についての数値パラメータを抽出でき、ポリマ材料の相分離状態測定方法および相分離状態評価方法が得られる。
【符号の説明】
【0076】
1a,1b…電子染色層、2a,2b…試料層、11…連続相が結晶性樹脂である試料のグループ、21…連続相がゴムである試料のグループ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の高分子材料を混合したポリマ材料の相分離状態測定方法において、
前記高分子材料でポリマ試験片を形成し、
該ポリマ試験片をガス状あるいは水溶液状の電子染色剤に曝露して該ポリマ試験片に電子染色層を形成し、
曝露時間に対応して変化した前記電子染色層厚さが計測されて曝露時間に対する電子染色層厚さがデータ化され、
データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さに基づき導き出された前記ポリマ材料の相分離傾向の相関線によりポリマ材料の層分離状態を測定すること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法。
【請求項2】
請求項1において、前記相関線に基づいて取得された、曝露時間に対する電子染色層厚さの飽和値を飽和値パラメータとして用いること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法。
【請求項3】
請求項1において、前記相関線に基づいて取得された、該相関線についての傾きを表す指数を傾きパラメータとして用いること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法。
【請求項4】
請求項1において、前記相関線に基づいて取得された、曝露時間に対する電子染色層厚さの飽和値からなる飽和値パラメータ及び前記相関線に基づいて取得された、該相関線についての傾きを表す指数からなる傾きパラメータ指数を下記式にパラメータフィッテングすることを特徴とするポリマ材料の層分離状態測定方法。
(ただし、ここでdは電子染色層厚さ(μm)、tは曝露時間(分)、Cは電子染色剤がガス状化または水溶液化するまでの遅れ時間、Aは飽和値パラメータ、Bは傾きパラメータ指数、Dは曝露時間の累乗を示すパラメータ)
【請求項5】
請求項1において、前記データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さにより
を演算処理し(ただし、ここでXは曝露時間に対する電子染色層厚さの増加率を示すパラメータ)、
前記曝露時間に対する電子染色層厚さの増加率を示すパラメータを用いてポリマの総分離状態を測定すること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法。
【請求項6】
請求項1に記載したポリマ材料の相分離状態測定方法を用いたポリマ材料の相分離状態評価方法において、
前記データ処理装置が、データベースに、ポリマ材料の相分離状態と曝露時間および電子染色層厚さについてのポリマ材料の相分離傾向の相関線とを予め相関データとして格納し、前記画面表示された相関線と前記データベースに格納した相関線とが対比され、前記データベースに格納した近似した相関線から当該ポリマ材料の相分離状態が特定されること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態評価方法。
【請求項1】
2種類以上の高分子材料を混合したポリマ材料の相分離状態測定方法において、
前記高分子材料でポリマ試験片を形成し、
該ポリマ試験片をガス状あるいは水溶液状の電子染色剤に曝露して該ポリマ試験片に電子染色層を形成し、
曝露時間に対応して変化した前記電子染色層厚さが計測されて曝露時間に対する電子染色層厚さがデータ化され、
データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さに基づき導き出された前記ポリマ材料の相分離傾向の相関線によりポリマ材料の層分離状態を測定すること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法。
【請求項2】
請求項1において、前記相関線に基づいて取得された、曝露時間に対する電子染色層厚さの飽和値を飽和値パラメータとして用いること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法。
【請求項3】
請求項1において、前記相関線に基づいて取得された、該相関線についての傾きを表す指数を傾きパラメータとして用いること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法。
【請求項4】
請求項1において、前記相関線に基づいて取得された、曝露時間に対する電子染色層厚さの飽和値からなる飽和値パラメータ及び前記相関線に基づいて取得された、該相関線についての傾きを表す指数からなる傾きパラメータ指数を下記式にパラメータフィッテングすることを特徴とするポリマ材料の層分離状態測定方法。
(ただし、ここでdは電子染色層厚さ(μm)、tは曝露時間(分)、Cは電子染色剤がガス状化または水溶液化するまでの遅れ時間、Aは飽和値パラメータ、Bは傾きパラメータ指数、Dは曝露時間の累乗を示すパラメータ)
【請求項5】
請求項1において、前記データ化された曝露時間に対する電子染色層厚さにより
を演算処理し(ただし、ここでXは曝露時間に対する電子染色層厚さの増加率を示すパラメータ)、
前記曝露時間に対する電子染色層厚さの増加率を示すパラメータを用いてポリマの総分離状態を測定すること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態測定方法。
【請求項6】
請求項1に記載したポリマ材料の相分離状態測定方法を用いたポリマ材料の相分離状態評価方法において、
前記データ処理装置が、データベースに、ポリマ材料の相分離状態と曝露時間および電子染色層厚さについてのポリマ材料の相分離傾向の相関線とを予め相関データとして格納し、前記画面表示された相関線と前記データベースに格納した相関線とが対比され、前記データベースに格納した近似した相関線から当該ポリマ材料の相分離状態が特定されること
を特徴とするポリマ材料の相分離状態評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−169763(P2011−169763A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34189(P2010−34189)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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