説明

ポリメチレン尿素を含む電着プライマー

少なくとも一種の結着剤と、少なくとも一種の架橋剤と、少なくとも一種のビスマス化合物を含み、ビスマス化合物として塩基性硝酸ビスマスと他の成分としてポリメチレン尿素とを含むことを特徴とする陰極析出型の電着プライマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一種の結着剤と、少なくとも一種の架橋剤と、少なくとも一種のビスマス化合物とを含む陰極析出型の電着プライマー、この電着プライマーの製造方法、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献中には電着プライマーの製造に関する例が数多く見られる。特に、スズ化合物及び/又はビスマス化合物が、これらの材料中で架橋触媒として使用されている。最近では、ビスマス化合物がスズ化合物と較べて高活性で低毒性であるため、架橋触媒として優先的に使用されてきている。イソシアネート基とヒドロキシル基からウレタン構造を形成する際の触媒としてのビスマス化合物の利用は、すでによく確立されている(J.H. Saunders and K.C. Frisch, Polyurethanes, Chemistry and Technology, from High Polymers, Vol. XVI, Part 1, Interscience Publishers, a division of John Wiley and Sons, New York, 4th Printing, July 1967, page 167)。しかしながら、今まで、電着プライマーの製造においてビスマス化合物を触媒とて用いることは非常に限られていた。EP0642558には、電着プライマー用途に使用できるビスマス化合物は、容易に入手可能な比較的長鎖の酸の塩は、カチオン性結着剤中で使用すると、油状滲出物のため電着プライマーを分解させるため、かなり制限されている。また、結着剤または顔料ペースト中に混合する場合、無機ビスマス化合物は分散が困難であり、この形では触媒活性が低いといわれている。ドイツ特許出願DE10236350A1には、平準度の高い次サリチル酸ビスマス含有電着プライマーには表面欠陥がなく、腐食防止効果が高いことが述べられている。しかしながら、これら既知の電着プライマーでは、十分な架橋を行うのに比較的高い焼結温度が必要であった。未公開特許出願DE102007038824A1には、塩基性硝酸ビスマスを含む電着プライマーが記載されている。この結果、架橋反応を低い焼付温度で行うことができる。
【0003】
欧州特許出願EP0433783A1には、分散したポリマー粒子を含む水性の電着膜が述べられている。このポリマー粒子は、尿素−アルデヒド樹脂を含み、これが架橋不融性物質を形成する。WO98/33835には、アルキル化尿素−ホルムアルデヒド樹脂などのアミノ樹脂架橋剤を含む陰極析出型の電着プライマーが記載されている。WO87/02717に特許請求されている電着プライマーも、アルキル化尿素−ホルムアルデヒド樹脂などの架橋剤を含んでいるようである。
【0004】
しかしながら、先行技術に知られる電着プライマーのフィルムは、均一で均質な表面を持たず、低い焼付温度で弾性を持っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP0642558
【特許文献2】DE10236350A1
【特許文献3】DE102007038824A1
【特許文献4】EP0433783A1
【特許文献5】WO98/33835
【特許文献6】WO87/02717
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.H. Saunders and K.C. Frisch, Polyurethanes, Chemistry and Technology, from High Polymers, Vol. XVI, Part 1, Interscience Publishers, a division of John Wiley and Sons, New York, 4th Printing, July 1967, page 167
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、非常に低い焼付温度で架橋反応が進行する電着プライマーを提供することである。同時に、電着プライマーのフィルムは、最端縁部においてでも均一で均質な表面を持つ必要がある。また、このフィルムが弾性を持つ必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、本目的が、ポリメチレン尿素と、架橋触媒としての塩基性硝酸ビスマスの組合せにより達成できることが明らかとなった。基板上に析出するフィルムは、比較的低温で焼結可能である。このフィルムは、最端縁部においても均一で均質な表面を持ち、弾性をもつ。
【0009】
したがって、本発明は、ビスマス化合物として塩基性硝酸ビスマスと他の成分としてのポリメチレン尿素とからなる冒頭に規定した種類の電着プライマーを提供する。
【0010】
したがって、本発明は、少なくとも一種の結着剤と、少なくとも一種の架橋剤と、少なくとも一種のビスマス化合物の成分と、を含み前記ビスマス化合物として塩基性硝酸ビスマスを、前記他の成分としてポリメチレン尿素を含む陰極析出型の電着プライマー(cathodically depositable electrodeposition primer)を提供する。
【0011】
先行技術を照らし合わせると、本発明の目的が、塩基性硝酸ビスマスとポリメチレン尿素の組合せで達成可能であるということは、驚くべきことであり、熟練者にも予測できないことである。特に大きな驚きは、本発明の電着プライマーが、容易に製造可能で、貯蔵安定性がよく、分散成分が最適な粒度を持ち、ろ過性が非常に良いことである。これらは、導電性基板上に電気泳動的に容易に問題なく析出させることができる。得られる電着膜は、流動性が良好で、表面欠陥や峡雑物がなく、極めて優れた腐食防止効果や辺縁保護効果をもつ。
【0012】
ポリメチレン尿素(PMU)とその製造は、よく確立されている。例えば、尿素−ホルムアルデヒド溶液または水希釈可能な尿素−ホルムアルデヒド濃縮物の酸触媒によるゲル化を、PMUの製造に使うことができる (例えば、Renner, Makromolekulare Chemie, 1971, 1, 149に記載)。また、例えば、ドイツ公開特許DE 1907914には、水性媒体中での酸触媒重縮合による尿素−ホルムアルデヒド縮合物系の微細アミノ樹脂固体物の製造が記載されている。
【0013】
PMUは、例えば吸収材中の自由流動物質としての用途をもっている(WO98/43684)。ここに記載の製造方法では、尿素とホルムアルデヒドをまず反応させて、化学量論的な比率によりモノメチロール尿素またはジメチロール尿素を製造する。好適な反応条件(例えば、アルカリ性pH、50℃〜100℃の温度)では、この反応生成物が脱水を伴う反応を起こし、前縮合物を与える。この前縮合物を酸触媒により架橋させて、PMUを製造する。この場合には、PMUはエーテル基を持つPMU部分をも有することとなりうる。
【0014】
本発明の電着プライマーは、少なくとも一種のポリメチレン尿素を含む。PMUは、例えばメチレンジアミノメチルエーテル重縮合物と考えてもよい。この種の化合物は、例えばドイテロン(R)という名前で、ドイテロン社(ドイツ)から、水性及び油性塗料系用の艶消し剤として販売されている。PMUは、メチロール基、メチロールエーテル基及び/又はエーテル基を含んでいてもよい。好ましくは、PMUはエーテル基を含まない。ポリメチレン尿素は、好ましくは、ポリメチレン尿素の総質量に対して0.2〜3.0質量%のメチロール基及び/又はメチロールエーテル基を含む。特に好ましいのは、0.5〜2.0質量%である。
【0015】
本発明の電着プライマーは、電着プライマーの総質量に対して、好ましくは0.01〜2.0質量%のポリメチレン尿素を含む。0.05〜1.0質量%が好ましく、0.05〜0.2質量%が特に好ましい。
【0016】
本発明の電着プライマーの固体含量は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは5〜35質量%である。この固体含量は、上記の材料から電着膜を形成する電着プライマーの部分である。本発明の電着プライマーは、少なくとも一種の結着剤を含む。
【0017】
この結着剤は、架橋剤中に存在する相補的な反応性官能基と熱架橋反応することのできる反応性官能基を含んでいる。
【0018】
好適な反応性官能基の例としては、ヒドロキシル基、チオール基、第一級及び第二級アミノ基があげられ、特に好ましいのはヒドロキシル基である。
【0019】
この結着剤は、カチオン性基及び/又は潜在的カチオン性基をもっていてもよい。この種の結着剤は、陰極析出型の電着プライマーで使用される。
【0020】
好適な、中和剤及び/又は四級化剤によりカチオンに変換可能な潜在的カチオン性基の例としては、第一級、第二級または第三級のアミノ基、第二級スルフイド基または第三級ホスフィン基があげられ、特に第三級アミノ基または第二級スルフイド基があげられる。
【0021】
好適なカチオン性基は、第一級、第二級、第三級または第四級のアンモニウム基、第三級のスルホニウム基または第四級のホスホニウム基であり、好ましくは第四級アンモニウム基または第三級スルホニウム基であり、より好ましくは第四級アンモニウム基である。
【0022】
潜在的カチオン性基用の好適な中和剤は、有機酸や無機酸、例えば硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、クエン酸またはアミドスルホン酸等のスルホン酸、メタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸であり、特にギ酸、酢酸または乳酸である。
【0023】
好適な電着プライマー用結着剤の例は、EP0082291A1や、EP0234395A1、EP0227975A1、EP0178531A1、EP0333327、EP0310971A1、EP0456270A1、US3,922,253A、EP0261385A1、EP0245786A1、EP0414199A1、EP0476514A1、EP0817684A1、 EP0639660A1、EP0595186A1、DE4126476A1、WO98/33835、DE3300570A1、DE3738220A1、DE3518732A1 DE19618379A1の文献より既知である。第一級、第二級、第三級または第四級のアミノ基またはアンモニウム基及び/又は第三級のスルホニウム基を持ち、アミン価が20〜250mg−KOH/gで、重量平均分子量が300〜10000ダルトンである樹脂が好ましい。特に、アミノ(メタ)クリレート樹脂、アミノ−エポキシ樹脂、末端二重結合を有するアミノ−エポキシ樹脂、第一級及び/又は第二級ヒドロキシル基をもつアミノ−エポキシ樹脂、アミノ−ポリウレタン樹脂、アミノ含有ポリブタジエン樹脂、または変性エポキシ樹脂/炭素ジオキシド/アミン反応生成物が用いられる。
【0024】
好適な架橋剤には、適当な相補的な反応性官能基を有する既知の典型的な架橋剤が含まれる。これらの架橋剤は、好ましくはブロック化ポリイソシアネート、メラミンーホルムアルデヒド樹脂、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン、及びポリエポキシドからなる群から選ばれる。これらの架橋剤は、より好ましくは、ブロック化ポリイソシアネートおよび高反応性メラミンーホルムアルデヒド樹脂からなる群から選ばれる。ブロック化ポリイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0025】
これらのブロック化ポリイソシアネートは、脂肪族的、環式脂肪族的、芳香脂肪族的、及び/又は芳香族的に結合したイソシアネート基を有する既知の典型的な塗料ポリイソシアネートから製造される。
【0026】
好適な塗料ポリイソシアネートの例が、例えば、“Methoden der Methoden der organischen Chemie”, Houben−Weyl, volume 14/2, 4th edition, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1963, pages61 to 70, and by W. Siefken, Liebigs Annalen der Chemie, volume 562, pages 75 to 136に記載されている。
【0027】
好適な塗料ポリイソシアネートの他の例は、イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、尿素基、カルボジイミド基及び/又はウレトジオン基を有する、既知の典型的なジイソシアネートから製造可能なポリイソシアネート類である。好ましく用いられるジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネートまたは1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(BIC)、二量体油脂系の酸に由来するジイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナト−メチルヘプタン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサン、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートまたはこれらのポリイソシアネートの混合物である。
【0028】
好適な、ブロック化ポリイソシアネート製造用のブロッキング剤の例としては、次のものがあげられる。
【0029】
i)フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、この酸のエステル、または2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンなどのフェノール類;
ii)ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムまたはp−プロピオラクタムなとのラクタム類;
iii)ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、エチルまたはメチルアセトアセテートまたはアセチルアセトンなどの活性メチレン化合物類;
iv)メタノール、エタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、t−アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、グリコール酸、グリコール酸エステル類、乳酸、乳酸エステル類、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレン−ブロモヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−シクロヘキシルジメタノールまたはアセトシアノヒドリンなどのアルコール類;
v)ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノールまたはエチルチオフェノールなどのメルカプタン類;
vi)アセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセトアミド、ステアリン酸アミドまたはベンズアミドなどの酸アミド類;
vii)スクシンイミド、フタルイミドまたはマレインイミドなどのイミド類;
viii)ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミンまたはブチルフェニルアミンなどのアミン類;
ix)イミダゾールまたは2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール類;
x)尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素または1,3−ジフェニル尿素などの尿素類;
xi)フェニルN−フェニルカルバメートまたは2−オキサゾリドンなどのカルバメート類;
xii)エチレンイミンなどのイミン類;
xiii)アセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシムまたはクロロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;
xiv)重亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;
xv)ベンジルメタクリロヒドロキサム酸エステル(BMH)またはアリルメタクリロヒドロキサム酸エステルなどのヒドロキサム酸エステル類;または
xvi)置換されたピラゾール類、イミダゾール類またはトリアゾール類;
xvii)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオールなどの1,2−ポリオール類;
xviii)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの2−ヒドロキシエステル類;
xix)これらのブロッキング剤の混合物。
【0030】
本発明の電着プライマーは、経験式4(BiNO(OH))・BiO(OH)で示される次硝酸ビスマスを含む。ドイツ薬局方(DAB)7に記載のように、そのビスマス含量は、71〜74質量%である。次硝酸ビスマスは市販の化合物であり、例えば、MCP−HEK社(ルーベック、ドイツ)から販売されている。本発明の電着プライマーは、個体総量に対して、好ましくは0.05〜5%の、より好ましくは0.1〜4%、特に好ましくは0.2〜3質量%の次硝酸ビスマスを含む。
【0031】
本発明の電着プライマーは、次硝酸ビスマス以外の触媒、顔料、凹み防止剤、ポリビニルアルコール、熱硬化性反応性希釈剤、分子的に分散した可溶性染料、UV吸収剤や可逆的フリーラジカル捕捉剤(HALS)などの光安定剤、酸化防止剤、低沸点及び高沸点(“長鎖”)有機溶媒、蒸発防止剤、界面活性剤、乳化剤、スリップ添加物、重合防止剤、熱分解性フリーラジカル開始剤、接着促進剤、流動制御剤、フィルム成形助剤、湿潤分散剤、充填剤、難燃剤、腐食防止剤、自由流動助剤、ワックス、乾燥剤、殺菌剤、および艶消し剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の既知で典型的な添加物を効果的な量で含むことができる。
【0032】
好適な添加物の他の例が、教科書“Lackadditive”[塗料用添加物]by Johan Bieleman, Wiley−VCH, Weinheim, New York, 1998, in D. Stoye and W. Freitag (Editors), “Paints, Coatings and Solvents”, Second, Completely Revised Edition, Wiley−VCH, Weinheim, New York, 1998, “
14.9. Solvent Groups”, pages 327 to 373に記載されている。
【0033】
顔料が、好ましく用いられる添加物である。これらの顔料は、既知で典型的な着色性、効果性、導電性、磁気遮蔽性、蛍光性、体質性、あるいは腐食防止性の有機顔料及び無機顔料からなる群から選ばれることが好ましい。
【0034】
本発明の電着プライマーは、結着剤と架橋剤と塩基性のビスマス硝酸化合物と、いずれかの他の好ましい成分とポリメチレン尿素とを混合して製造される。これらの成分を均質化させてもよい。適当なら、本発明の電着プライマーは、攪拌槽、攪拌ミル、押出機、配合機、ウルトラタラックス装置、インラインディソルバー、スタチックミキサー、マイクロミキサー、歯車型デスパーザー、圧力放出ノズル及び/又はマイクロフルイダイザーなどの既知で典型的な混合方法や混合装置により製造できる。この場合には、PMUは、顔料ペーストまたは顔料組成物の形で電着プライマー中に導入することが好ましい。
(cf. Rompp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, “Pigment preparations”, page 452)
【0035】
本発明の電着プライマーを、例えば陰極浸漬塗装に用いてもよい。本発明の電着プライマーからの陰極析出は、通常、導電性基板上に行うことができ、このような基板の例としては、導電性の基板または導電加工された基板(具体例、金属で導電性としたプラスチック基板)があげられ、特に金属基板があげられる。したがって、本発明はまた、本発明の電着プライマーをこのような基板上に陰極析出させる方法を提供する。また、本発明の電着プライマーを、導電性表面を持つ基板上へnの陰極浸漬塗装によるプライマー膜の製造に用いることができる。用いることのできる金属基板は、あらゆる典型的な金属部品であり、具体的には自動車産業に通常用いられる金属部品、特に自動車ボディーやその部品である。したがって、本発明の電着プライマーはまた、自動車やその部品の仕上げに用いることができる。
【0036】
以下、本発明を実施例を参照しながら説明する。
【実施例】
【0037】
製造例1(架橋剤)
EP0961797B1(6頁43〜52行)の架橋剤を用いた。攪拌器、還流冷却器、内部温度計および不活性のガス導入部を備えた反応器に、窒素雰囲気下で、1084gの、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート系の多官能性オリゴマー異性体で、NCO相当重量が135であるもの(BasonatR A270、BASF;NCO価:約2.7;2,2’−及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量:<5%)を投入する。2gのジブチルスズジラウレートを添加し、さらに1314gのブチルジグリコールを、生成物の温度が70℃未満となるような速度で滴下する。この混合物を冷却する必要がでることもある。添加終了後、温度をさらに70℃で120分間維持する。次いで試験を行うと、NCO基はもはや検出できない。この混合物を65℃に冷却する。固体含量は、>97%(1時間、130℃)である。
【0038】
製造例2(結着剤分散液)
EP0961797B1(7頁4〜30行)の結着剤分散液Aを用いた。攪拌器、還流冷却器、温度計、および不活性のガス導入部チューブを備え、伝熱油により加熱された試験室反応器に、1128部の、エポキシド相当重量(EEW)が188である市販ビスフェノールA系エポキシ樹脂と、262部のドデシルフェノールと、31.4部のキシレンと、228部のビスフェノールAとを投入し、この初期投入物を、窒素下にて127℃で加熱する。撹拌下、1.6gのトリフェニルフォスフィンを添加すると、発熱反応が起こり温度が160℃に上昇する。この温度を130℃まで放冷し、エポキシド含量を測定する。EEWは532であり、>98%のフェノール性OH基が反応していることを示す。次いで、297.5部のプルリオールP900(ポリプロピレングリコール、MW900、BASF)を冷却しながら添加する。5分後、さらに冷却しながら105部のジエタノールアミンを120℃で添加する。短時間の発熱(最高温度:127℃)後に、温度が110℃(30分間)に下がると、51部のN,N−ジメチルアミノプロピルアミンを添加する。短時間の発熱(最高温度:140℃)後、さらに130℃で2時間、粘度が一定(1.8dPas、円錐/円板型粘度計、23℃、40%、ソルベノン(BASF)中)となるまで、この混合物の反応を続ける。次いで、冷却しながら、58.5部のブチルグリコールと887.8部の架橋剤(製造例1)とを添加し、生成物を105℃で放出する。
【0039】
2100部のこの熱の残る混合物に、1945部の純水と33.1部の氷酢酸の混合物を投入し、激しく攪拌して直ちに分散させる。短時間の均質化の後に、さらに1404部の純水で希釈し、この分散液をK900板状フィルター(ザイツ社)でろ過する。分散液の性質を以下に示す。
【0040】
固形物(1時間、130℃):35.7%
MEQ塩基=0.657meq/g樹脂固体
MEQ酸=0.283meq/g樹脂固体、pH=5.4
平均粒度=1250A(光散乱法)
沈降安定性=3ヶ月の室温保管で沈降物なし
粘度=14sec.(DIN4カップ、23℃)
【0041】
製造例3(研磨樹脂)
EP0961797(9頁17〜21行)の研磨樹脂Aを用いる。攪拌器、内部温度計、窒素導入口、及び還流冷却器付き水分離器を備えた反応器に、30.29部の、エポキシド相当重量(EEW)が188のビスフェノールA系エポキシ樹脂と、9.18部のビスフェノールAと、7.04部のドデシルフェノールと、2.37部のブチルグリコールとを投入する。この初期投入物を110℃で加熱し、1.85部のキシレンを添加して、穏やかな真空下で、発生の可能性のある微量の水とともにキシレンを蒸発除去する。次いで、0.07部のトリフェニルフォスフィンを添加し、混合物を130℃に加熱する。150℃まで発熱後、反応をさらに一時間130℃で継続する。この時点での反応混合物のEEWは860である。この混合物を冷却し、その間に、9.91部のブチルグリコールと17.88部の、EEWが333のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(DER732、ダウケミカル)を添加する。90℃で、4.23部の2−2’−アミノエトキシエタノール(HN−CH−CH−O−CH−CH−OH)を添加し、10分間後に、1.37部のN.N−ジメチルアミノプロピルアミンを添加する。短時間の発熱後、粘度が一定となるまで反応混合物を90℃で2時間保持し、次いで17.66部のブチルグリコールで希釈する。この樹脂の固体含量(1時間130℃で測定)は69.8%であり、粘度(円錐/円板型粘度計で23℃で、プロピレングリコールモノメチルエーテル(ソルベノンPM、BASF社)で40%に希釈した樹脂液で測定)は5.5dPasである。取扱いを簡単とするため、この樹脂をさらに2.82部の氷酢酸と13.84部の純水で中和、希釈する。この結果、元の固体含量を60%にまで下げる。
【0042】
製造例4(水性顔料ペースト)
EP0505445B1(10頁35〜42行)に記載の方法と同様にして、下の表1に示す出発原料を用いて、水性顔料ペーストを製造する。このために、まず脱イオン水と製造例3の研磨樹脂とを前もって混合する。次いで、残る成分を、表1に示す量で添加し、この混合物を30分間高速ディソルバー攪拌機中で混合する。次いで、小型試験室摩砕機中で、1〜1.5時間、この混合物を、ヘグマン値が12未満となるまで分散する。上記の量は重量部である。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例B、C、D及び比較例A(本発明の陰極電着プライマーと従来の陰極電着プライマー)
従来の電着プライマーと本発明の陰極電着プライマーを製造するために、製造例2の結着剤分散液を、表1に記載の一つの水性顔料ペースト(製造例4)及び純水とを表2に記載の量(重量部)で混合する。この方法では、結着剤分散液を最初に投入し、純水で希釈する。次いで顔料ペーストを撹拌下で投入する。この結果、本発明の電着プライマー(試作品B〜D)と従来の電着プライマーAができる。
【0045】
【表2】

【0046】
機械的性質の試験
陰極電着プライマーとして使用する前に、これらの電着プライマー撹拌下で室温で3日間保存する。この塗料フィルムを、溶着電圧が220ボルト、破過電圧が350ボルト(浴温:29℃)で2分間、陰極に連結された、前処理工程でCr(IV)洗浄を行っていないリン酸亜鉛化スチール試験パネル上に析出させた。析出フィルムを脱イオン水で洗浄し、175℃(パネル温度)で15分間焼結する(塗布厚:20μm)。
【0047】
【表3】

【0048】
本発明の電着プライマーの結果の塗料の機械的性質を、従来の電着プライマーの結果の塗料と比較しながら表3にまとめる。このように、本発明の電着プライマーは、従来の電着プライマーと較べて極めて優れた機械的性質をもつ塗料を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の結着剤と、少なくとも一種の架橋剤と、少なくとも一種のビスマス化合物の成分と、を含み前記ビスマス化合物として塩基性硝酸ビスマスを、前記他の成分としてポリメチレン尿素を含む陰極析出型の電着プライマー。
【請求項2】
前記ポリメチレン尿素が、メチロール基、メチロールエーテル基及び/又はエーテル基を含む請求項1に記載の電着プライマー。
【請求項3】
前記ポリメチレン尿素が、ポリメチレン尿素の総質量に対して0.2〜3.0質量%のメチロール基及び/又はメチロールエーテル基を含む請求項1に記載の電着プライマー。
【請求項4】
前記プライマーの総質量に対して0.01〜2.0質量%のポリメチレン尿素を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項5】
前記プライマーの総質量に対して0.05〜1.0質量%のポリメチレン尿素を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項6】
前記プライマーの総質量に対して0.05〜0.2質量%のポリメチレン尿素を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項7】
前記塩基性硝酸ビスマスのビスマス含量が71質量%〜74質量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項8】
前記塩基性硝酸ビスマスが、経験式4(BiNO(OH))BiO(OH)の次硝酸ビスマスである請求項1〜7のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項9】
固体含量に対して0.05〜5質量%の塩基性硝酸ビスマスを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項10】
前記結着剤がカチオン性基及び/又は潜在的カチオン性基を含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項11】
前記架橋剤が、ブロック化ポリイソシアネート、メラミンーホルムアルデヒド樹脂、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)−トリアジン、およびポリエポキシドからなる群から選ばれる請求項1〜10のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項12】
少なくとも一種の添加物を含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項13】
前記結着剤と前記架橋剤と前記塩基性ビスマス硝酸化合物とすべての他の成分とをポリメチレン尿素と混合することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の電着プライマー。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電着プライマーを陰極浸漬塗装用に使用する方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電着プライマーを導電性表面をもつ基板の陰極浸漬塗装によるプライマー膜の製造のために使用する方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電着プライマーを自動車またはその部品の仕上げのために使用する方法。

【公表番号】特表2011−515546(P2011−515546A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501143(P2011−501143)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002185
【国際公開番号】WO2009/118172
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】