説明

ポリ乳酸ポリマー、アジピン酸コポリマーおよびケイ酸マグネシウムを含む生分解性組成物

本発明は、有機過酸化物と無機粒子とを混合したポリ乳酸およびアジピン酸とのコポリエステルポリマーを含む生分解性ポリマー組成物に関する。さらに、本発明は、そのような組成物に基づいて製造された製品、例えば成形品および押出成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリケートと有機過酸化物とを配合したポリ乳酸およびアジピン酸とのコポリエステルポリマーを含む生分解性ポリマー組成物に関する。さらに、本発明は、また、その組成物に基づいて製造された製品に関する。
【0002】
発明の背景
包装材料ならびに使い捨てビーカー、カップおよびカテラリーは、今日、広く使用され、食品材料が衛生的な状態で販売および/または消費されることを可能としている。そのような使い捨て材料および物品は、それらは使用後簡単に捨てることができ、また従来の皿、グラスまたはカテラリーのように洗浄したり、清潔にしたりする必要がないので、消費者および小売業者により高く評価されている。
【0003】
しかし、そのような材料が広範囲に、且つさらに増加して使用されていることは、毎日出されるゴミの量の増大を招いている。現在、プラスチック廃棄物は、ゴミ焼却炉に供給されているか、または廃棄物処理場に蓄積しているが、廃棄物投棄についての上記の解決策の双方には、環境問題が付きまとう。
【0004】
そこで、上記の問題を未然に防ぎ、且つ、現在使用されているプラスチック材料の長所を兼ね備え、そして環境汚染を増やさない材料を提供することがこの分野において求められている。
【0005】
上記の物品を製造するために、いくつかの生分解性ポリマーが従来技術で既に公知であり、例えば、ポリグリコール酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ乳酸、およびポリジオキサノンに基づく材料を含む。しかしながら、これらのポリマーの製造は、かなり煩雑で高価であるため、その使用は、現在のところ、主に生体吸収性材料を必要とする高価値の医療用途に限定されている。少数の生分解性樹脂が、上記のような用途に使用されているが、それらは消費者にとってコスト的に負担しきれないものとなっている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、従来のプラスチック材料、例えばポリエチレンの分解に要する時間に比べて、有意に短い時間で自然環境において分解する組成物を提供することである。コンポスト化サイトのような管理された環境において、その組成物は、ASTMにより設定されたUS規格(ASTM6400 D99)により設定された時間要件の一つである、180日を超えない期間で生分解される。また、そのような組成物は、また、それぞれの目的に対して望ましい特性を示す、袋、瓶またはカテラリーの製造を可能にする。
【0007】
本発明は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、40〜97重量%のポリ乳酸ポリマーと、0.5〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーと、2〜20%のケイ酸マグネシウムとを含む組成物を提供するものであり、これらの目的および他の目的は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0008】
発明の要約
本発明の組成物は、そのプラスチックに適切な標準的な方法により測定しうる特性の低下をもたらす特定の環境条件(例えばコンポスト化)に暴露されたときに、且つその等級分けを決定する期間での適用において、生分解性である。例えば、コンポスト化は、生分解性材料をコンポストと呼ばれる腐植土様物質へ生物学的に分解し、且つ変換することを制御する管理されたプロセスであり、コンポストを製造するための有機物の好気性で中温性および好熱性の分解;中温性および好熱性の相を介して進行し、且つ二酸化炭素、水、無機物、および安定化された有機物(コンポストまたは腐植土)の製造をもたらす管理された生物酸化プロセスを経ての生物学的に分解性の材料の変換である(ASTM術語用語法)。その結果、全ての主な成分、ポリ乳酸およびポリ(ε−カプロラクトン)は、小さな有機断片に分解され、その断片は、安定化された有機物を作り出し、いかなる危険または重金属をも土壌中に導入しないであろう。
【0009】
結果として、本発明の組成物から製造される物品は、廃棄物処理場の更なる増加をもたらさず、逆に、コンポストのような有機肥料を作り出すことを可能にし、そのような物品は、消費者や製造者が高く評価する使い捨て物品の全ての利点を同時に備えている。本発明に係る組成物から製造される物品は、使用後に捨てられ、本質的に軽量であり、且つそれらが清浄化される場所に運ぶ必要がない。特に、本発明に係る組成物から製造される物品は、公園や海岸で投げ捨てられた物品が、ある時間の後に、分解し、消失するという利点をもたらす。しかしながら、本発明は、環境を汚すことを許可するものとして宣伝されるべきものではない。
【0010】
また、本発明に係る組成物は、完全にまたは部分的に、所望ならば、再生可能な資源から製造することができる。さらに、本発明に係る組成物は、この分野で公知の種々の加工法に適応し得る。
【0011】
また、本発明に係る組成物は、ポリ乳酸に固有ではない物性を付与し、且つ改善された柔軟性および延性と共に、加工性、製造コストおよび耐熱性についても改善をもたらす。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、生分解性プラスチックに関する。用語「生分解性プラスチック」は、分解が、細菌、菌類および藻類等の天然由来微生物の作用の結果生じる分解性プラスチックに関する。分解性プラスチックは、特定の環境条件下で化学構造に有意な変化が生じるように設計されたプラスチックであり、その等級分けを決定する期間での適用で、プラスチックに適切な標準的な試験方法により測定しうるある特性の低下を招来する。組成物中に存在する付加的な成分および生分解性材料から製造された物品の寸法に応じて、分解に要する時間は変化し、所望により調節することができる。一般に、生分解のためのタイムスパンは、できる限り長持ちするように設計されている同じ寸法の従来のプラスチック材料、例えばポリエチレンから製造された物品の分解に要するタイムスパンよりも有意に短い。例えば、セルロースおよびクラフト紙は、コンポスト化環境で、83日以内に生分解される。本組成物は、より短い時間で生分解し、且つコンポスト化可能なプラスチックは180日以内に生分解することを求めているASTM6400 D99が要求している試験をパスする。PEから製造された物品は、通常のコンポスト化条件下では分解せず、PLA系物品は、コンポスト化環境で数週(約6〜8週)で分解する。
【0013】
生分解性ポリマーは、微生物が触媒する分解によりフィルムまたは繊維強度が低下する成分を含む。生分解性ポリマーは、モノマーまたは短い鎖へと小さくなり、それらは次いで、微生物により資化される。好気性環境において、これらのモノマーまたは短い鎖は、究極的にはCO、HOおよび新たな細胞バイオマスに酸化される。嫌気性環境では、モノマーまたは短い鎖は、究極的にはCO、HO、アセテート、メタンおよび細胞バイオマスに酸化される。生分解が成功するためには、生分解性ポリマーと活性な微生物個体群または活性な微生物個体群により産生された酵素との直接の物理的接触が必要である。また、ある種の最低限の物理的および化学的な要件、例えば適切なpH、温度、酸素濃度、適切な栄養素および湿度レベルを満たす必要がある(米国特許第6,020,393号明細書参照)。
【0014】
本発明に係る生分解性組成物は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、40〜97重量%のポリ乳酸ポリマーと、0.5〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーと、1〜32%、好ましくは2〜20%のケイ酸マグネシウムとを含む。
【0015】
本発明に係る組成物は、所望の量のそれぞれの成分を混合またはブレンドすることにより得ることができる。これは、当業者に公知の任意の方法により行うことができる。例えば、ポリ乳酸ポリマーおよびアジピン酸とのコポリエステルポリマーを純粋な形態で混合し、例えばロールミルを用いてブレンドし、次いで上記の成分の少なくとも一方が部分的にまたは実質的に完全に溶融するようなこの分野での一般的な知識に従って選択される温度に加熱する。
【0016】
ポリ乳酸は、以下の構造:
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、nは、例えば、10〜250の整数であることができる)で表すことができる。ポリ乳酸は、従来技術で公知の任意の方法に従って製造することができる。例えば、ポリ乳酸は、乳酸および/または1以上のD−ラクチド(すなわち、D−乳酸のジラクトンまたは環状ダイマー)、L−ラクチド(すなわち、L−乳酸のジラクトンまたは環状ダイマー)、メソD,L−ラクチド(すなわち、D−およびL−乳酸の環状ダイマー)、およびラセミ体のD,L−ラクチド(DおよびL−ラクチドの1/1混合物からなるラセミ体のD,L−ラクチド)から製造することができる。
【0019】
ポリエステルおよびコポリエステルの製造は、米国特許第2、012,267号明細書に開示されているように、この分野で周知である。そのような反応は、典型的には、150℃〜300℃の温度で、縮合触媒、例えばチタンイソプロポキシド、二酢酸マンガン、酸化アンチモン、二酢酸ジブチルスズ、塩化亜鉛またはそれらの組合せの存在下に行われる。触媒は、典型的には、反応体の全重量に対して、10〜1000ppmの量で使用される(米国特許第6,020,393号明細書参照)。
【0020】
ポリ乳酸およびコポリエステル以外に、組成物には、マグネシウムおよび/またはシリケートを含む無機物を配合する。
【0021】
もう一つのアプローチによれば、本願に係る組成物は、ポリ乳酸ポリマー前駆体およびアジピン酸とのコポリエステルポリマーのそれぞれの量、またはポリ乳酸ポリマーおよびアジピン酸とのコポリエステルポリマーの前駆体のそれぞれの量を、溶媒と共に、または溶媒なしで混合し、次いで得られた混合物を重合反応に付すことにより得ることができる。ポリ乳酸ポリマー前駆体は、例えば、乳酸、2〜50乳酸単位の縮合反応から得られる乳酸の環状または直鎖状オリゴマー(例えば上記のラクチド)であり、任意の立体配置を有し得る。他のポリ乳酸ポリマー前駆体および/またはアジピン酸とのコポリエステルポリマーの前駆体から調製される組成物は、また、当業者の一般的な知識に従って使用することができる。
【0022】
特に、本発明に係る生分解性組成物は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、50〜85重量%のポリ乳酸ポリマー、とりわけ55〜82重量%のポリ乳酸ポリマー、特に、2〜20重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、4〜17重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーを含むことができる。
【0023】
生分解性組成物は、さらに、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、1〜32重量%、好ましくは2〜25重量%、より好ましくは5〜15重量%の無機粒子を含み、その無機粒子は、マグネシウムおよびシリケートの少なくとも1つを含み、好ましくはマグネシウムおよびシリケートよりなる群から選択される少なくとも2つの元素を含み、より好ましくはマグネシウムおよびシリケートを含む。そのような無機物の例は、例えばモンモリロナイトである。無機物は、充填剤として作用すると考えられ、強度を増大させ、且つ剛性を付与する。例えば、無機粒子は、0.2〜4.0μm、とりわけより好ましくは1〜2μm、最も好ましくは1〜μmのサイズを有する。
【0024】
また、本発明に係る生分解性組成物の製造中に、有機過酸化物を、生分解性組成物の全重量に基づいて、5重量%未満の量で、反応混合物に添加してもよい。
【0025】
本発明に係る組成物を製造するために使用しうる有機過酸化物の例は、例えば、ジアセチルペルオキシド、クミルヒドロペルオキシドおよびジベンゾイルペルオキシドである。当業者に公知の他の有機過酸化物も同様に使用することができる。有機過酸化物は、重合を開始するラジカル開始分子として作用し、本発明に係る組成物中に存在する成分間の結合、特に共有結合をもたらすのを助ける。
【0026】
それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、好ましくは2%未満の有機過酸化物、より好ましくは0.1〜1.8%、さらにより好ましくは約1%の有機過酸化物が、本発明に係る生分解性ポリマー組成物を製造するための反応混合物に添加される。
【0027】
本発明の生分解性ポリマー組成物はまた、生分解性組成物の全重量に基づいて、5〜45重量%のポリ(ε−カプロラクトン)を含むことができる。好ましくは、組成物は、生分解性の最終ポリマー組成物の全重量に基づいて、20〜40重量%のポリ(ε−カプロラクトン)、より好ましくは21〜35重量%のポリ(ε−カプロラクトン)を含むことができる。特に、ポリ(ε−カプロラクトン)の添加は、フィルムまたはコーティングが本発明に従って製造される場合に利点をもたらす。PCLは、柔軟性を改善し、よりクリアでより透明なフィルムの製造を可能とする。
【0028】
また、生分解性ポリマー組成物は、さらに、生分解性組成物の全重量に基づいて、5重量%までのモノエステル、好ましくは0.1〜4.5重量%のモノエステルを含むことができる。モノエステルは、例えば2〜20個の炭素原子を有し、脂肪族(分枝状または直鎖状)および/または芳香族構造単位を含む、カルボン酸、スルホン酸またはリン酸である。特に、上記モノエステルは、少なくとも2個のカルボキシル基を含む化合物のモノエステルであることができ、例えば、アジピン酸および乳酸よりなる群から選択しうる。特に、モノエステルの添加は、射出成形用配合物を成形する際に有用でありうる。これは、加工助剤として作用し、且つ熱的に過酷な取扱いからポリマーを保護するであろう。
【0029】
さらに、本発明の生分解性ポリマー組成物はまた、1以上の可塑剤を含むことができる。本発明に係る組成物中で使用される可塑剤およびそれから得られる分解生成物は、好ましくは、本発明の組成物の分解によって、分解が生じたそれぞれの場所が全く汚染されないか、または実質的に汚染されないような、実質的に環境リスクを全く伴わないか、または少しの環境リスクのみを伴うものであるべきである。したがって、本発明に係る組成物中で使用する可塑剤は、例えば、天然由来の化合物であることができる。可塑剤の例は、例えば、有機クエン酸エステルである(米国特許第5,556,905号明細書参照)。
【0030】
所望の特定の用途に応じて、本発明の生分解性ポリマー組成物はまた、この分野で周知の付加的な添加剤または化合物、例えば、天然着色剤、付加的なポリマー化合物、セルロース等を含むことができる。
【0031】
さらに、本発明に係る組成物はまた、担体材料、例えば、紙、複合材料、プラスチック、金属、木等の上に適用してもよい。
【0032】
本生分解性ポリマー組成物は、種々の用途に使用することができ、また、本明細書中で例示されたものに限定されるものではない。例えば、医療分野における用途、例えば、縫合糸および薬物放出マトリックスまたは印刷産業における用途が考えられる。
【0033】
本発明の組成物は、種々の物品、例えば、成形品および/または押出成形品の製造に使用することができる。本発明で使用される用語「成形品」(または「押出成形品」)は、成形プロセス(または押出成形プロセス)に従って製造された物品を含む。「成形品」(または「押出成形品」)はまた、他の物品の一部、例えば、容器のインサートまたはナイフの刃または対応するハンドル中のフォーク状のインサートでありうる。
【0034】
本発明に係る成形品は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、40〜97重量%のポリ乳酸ポリマー、および0.5〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーを含む、生分解性組成物を含む。特に、本発明に係る成形品用の生分解性組成物は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、50〜85重量%のポリ乳酸ポリマー、とりわけ55〜82重量%のポリ乳酸ポリマー、特に2〜20重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、とりわけ4〜17重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーを含むことができる。先に詳細に述べたように、そのような成形品の製造用の組成物は、上記の成分以外に、マグネシウムおよびケイ素の少なくとも1種を含む無機粒子、有機過酸化物、モノエステルならびに/または天然可塑剤を含むことができる。
【0035】
種々の成形品の例は、台所用品、フォーク、スプーン、ナイフ、箸、容器、カップ、発泡材料製品およびポットである。
【0036】
射出成形用配合物を製造する場合、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、80〜97重量%のポリ乳酸ポリマー、2〜10重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、および5重量%未満のモノエステル、より好ましくは、82〜95重量%のポリ乳酸ポリマー、3〜8重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、および0.1〜4重量%未満のモノエステル、最も好ましくは、85〜90重量%のポリ乳酸ポリマー、5〜7重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、および1〜3重量%のモノエステルを含む、本発明に係る組成物を使用することができる。
【0037】
あるいは、射出成形用配合物は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、50〜75重量%のポリ乳酸ポリマー、5〜15重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、10〜30重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、および2重量%未満の有機過酸化物、より好ましくは、55〜70重量%のポリ乳酸ポリマー、8〜12重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、15〜25重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、および0.1〜1.8重量%の有機過酸化物、最も好ましくは、58〜67重量%のポリ乳酸ポリマー、9〜11重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、18〜22重量%のマグネシウムよりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、および0.5〜1.0重量%の有機過酸化物を含むことができる。
【0038】
本発明に係る押出成形品は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、40〜97重量%のポリ乳酸ポリマー、および0.5〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーを含む、生分解性組成物を含む。特に、本発明に係る押出成形品用の生分解性組成物は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、50〜85重量%のポリ乳酸ポリマー、とりわけ55〜82重量%のポリ乳酸ポリマー、特に2〜20重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、とりわけ4〜17重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーを含むことができる。先に詳細に述べたように、そのような押出成形品の製造用の組成物は、上記の成分以外に、マグネシウムおよびケイ素の少なくとも1つを含む無機粒子、有機過酸化物、モノエステルならびに/または天然可塑剤を含むことができる。
【0039】
押出成形品は、例えば、フィルム、ゴミ袋、食料雑貨袋、容器密封フィルム、管、飲用ストロー、スパン結合不織材料およびシートであり得る。
【0040】
インフレーションフィルム用(Blown Film Extrusion)の配合物を製造する場合、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、40〜60重量%のポリ乳酸ポリマー、5重量%未満のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、20〜40重量%のポリ(ε−カプロラクトン)、5〜10重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、5重量%未満の有機過酸化物、および10重量%未満の可塑剤、好ましくは、45〜55重量%のポリ乳酸ポリマー、0.1〜4.5重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、22〜35重量%のポリ(ε−カプロラクトン)、6〜9重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、0.1〜4.5重量%の有機過酸化物、および0.1〜8重量%の可塑剤、より好ましくは、47〜52重量%のポリ乳酸ポリマー、1〜4重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、25〜30重量%のポリ(ε−カプロラクトン)、7〜8重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、1〜4重量%の有機過酸化物、および0.5〜6重量%の可塑剤を含む、本発明に係る組成物を使用することができる。
【0041】
本発明に係る組成物に基づく柔軟性フィルム製造用の配合物は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、40〜60重量%のポリ乳酸ポリマー、15〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、10〜20重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、および5重量%未満の有機過酸化物、好ましくは、43〜57重量%のポリ乳酸ポリマー、20〜30重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、12〜18重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、および0.1〜4.5重量%の有機過酸化物、より好ましくは、45〜52重量%のポリ乳酸ポリマー、22〜27重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、14〜17重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、および1〜4重量%の有機過酸化物を含むことができる。
【0042】
インフレーション法用の配合物または柔軟性フィルム用の配合物に基づいて製造される本発明の物品は、例えば、ゴミ袋および食料雑貨袋等の袋用のフィルム、または容器密封用のフィルムである。
【0043】
本発明に係る組成物に基づく異形押出プロセス用(profile extrusion process)の配合物は、例えば、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、65〜85重量%のポリ乳酸ポリマー、10〜20重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、および2〜15重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、好ましくは、68〜80重量%のポリ乳酸ポリマー、12〜18重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、および3〜12重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、より好ましくは、70〜77重量%のポリ乳酸ポリマー、14〜17重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、および4〜10重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子を含むことができる。
【0044】
異形押出用の配合物から製造される本発明に係る物品は、例えば、飲用ストローおよび管である。
【0045】
本発明に係る組成物に基づく熱成形押出プロセス用の配合物は、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、75〜85重量%のポリ乳酸ポリマー、5〜15重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、5〜15重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、および5重量%未満の有機過酸化物、好ましくは、78〜84重量%のポリ乳酸ポリマー、7〜12重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、7〜12重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、および0.1〜4.5重量%の有機過酸化物、より好ましくは、79〜83重量%のポリ乳酸ポリマー、8〜11重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマー、8〜11重量%のマグネシウムおよびケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子、および0.5〜4重量%の有機過酸化物を含むことができる。
【0046】
熱成形押出法から製造される本発明に係る物品は、例えば、カップ、プレートおよび瓶を製造するためのシートならびに食品サービス産業以外のものであることができる他の物品である。
【0047】
さらに、本発明は、生分解性組成物を含む物品の製造方法であって、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、40〜97重量%のポリ乳酸ポリマー、および0.5〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーを含む生分解性組成物を提供し、次いで、その生分解性組成物を、射出成形法、インフレーション法、異形押出法および熱成形押出法よりなる群から選択されるプロセスに付す工程を含む方法を提供する。
【0048】
射出成形法、インフレーション法、異形押出法および熱成形押出法は、当業者に公知のプロセスであり、例えば、McGraw-Hill社刊、Modern Plastics Encyclopedia, 1991年10月中旬版に記載されている。
【0049】
現在の好ましい実施態様の説明
本発明は、例示目的のみで記載されている非限定的な実施例に基づいて、ここに詳細に説明される。
【0050】
実施例1
射出成形用配合物I
ポリ乳酸ポリマー 94重量%、
アジピン酸とのコポリエステルポリマー 5重量%、
ステアリン酸亜鉛 1重量%
を含む射出成形用配合物を製造した。
上記の化合物を、押出混合により、160℃の温度で、約2〜10分間混合した。次いで、得られた混合物を、約160℃の温度で射出成形装置に満たし、射出成形カップを得るために、約20℃の温度で型に射出した。
【0051】
実施例2
射出成形用配合物II
ポリ乳酸ポリマー 74.5重量%、
アジピン酸とのコポリエステルポリマー 5重量%、
ケイ酸マグネシウム 20重量%、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン 0.5重量%
を含む射出成形用配合物を製造した。
射出成形用配合物を実施例1に記載したとおりに製造し、射出成形製品を、その実施例1に記載の工程に従って得た。
【0052】
実施例3
インフレーション法用配合物
ポリ乳酸ポリマー 55重量%、
アジピン酸とのコポリエステルポリマー 0〜15重量%、
ポリ(ε−カプロラクトン) 25重量%
ケイ酸マグネシウム 4重量%、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン 1.0重量%、
クエン酸トリブチル 15重量%
を含むインフレーション法用配合物を製造した。
得られた混合物を、インフレーション法装置に満たし、そして、ゴミ袋や食料雑貨袋に使用される厚さが10〜90μmの自己保持性フィルムを得た。
【0053】
実施例4
柔軟性フィルム用配合物
ポリ乳酸ポリマー 70重量%、
アジピン酸とのコポリエステルポリマー 19重量%、
クエン酸トリブチル 10重量%、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン 1重量%
を含む柔軟性フィルム用配合物を製造した。
上記の化合物を、二軸混合により混合した。得られた混合物を、160℃の温度で押出装置に満たし、そして、密封容器に使用される厚さが約10mmの自己保持性フィルムを得た。
【0054】
実施例5
異形押出用配合物
ポリ乳酸ポリマー 75重量%、
アジピン酸とのコポリエステルポリマー 20重量%、
ケイ酸マグネシウム 5重量%
を含む異形押出用配合物を製造した。
上記の化合物を、二軸混合により混合した。得られた混合物を、約160℃の温度で異形押出装置に満たし、そして、飲用ストローとして使用されるチューブを得た。
【0055】
実施例6
熱成形押出用配合物
ポリ乳酸ポリマー 75重量%、
アジピン酸とのコポリエステルポリマー 15重量%、
ケイ酸マグネシウム 9重量%、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン 1重量
を含む熱成形押出用配合物を製造した。
上記の化合物を、二軸混合により混合した。得られた混合物を、160℃の温度で熱成形押出装置に満たし、そして、カップ、プレートおよび瓶を形成するために使用される厚さが0.1〜45mmのシートを得た。
【0056】
上記の教示を踏まえて、本発明の数多くの修正や変形が可能である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に記載された以外の形で実施しうることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、
40〜97重量%のポリ乳酸ポリマーと、
0.5〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーと、
1〜32重量%のケイ酸マグネシウムを含む無機粒子と、
5重量%未満の有機過酸化物と
を含む、食品材料に接触する物品の製造用の生分解性組成物。
【請求項2】
無機粒子がマグネシウムおよびシリケートの少なくとも2つを含む、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項3】
有機過酸化物の量が2%未満である、請求項1に記載の生分解性組成物。
【請求項4】
有機過酸化物の量が、最終的な生分解性組成物の全重量に基づいて、0.1〜1.8%の間である、請求項3に記載の生分解性組成物。
【請求項5】
有機過酸化物が、ジアセチルペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、およびジベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、2,5−メチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンまたはそれらの混合物よりなる群から選択されるものである、請求項4に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項6】
組成物がさらに、生分解性組成物の全重量に基づいて、5〜45重量%のポリ(ε−カプロラクトン)を含む、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項7】
組成物がさらに可塑剤を含む、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項8】
生分解性組成物を含む成形品であって、生分解性組成物が、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、
40〜97重量%のポリ乳酸ポリマーと、
0.5〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーと、
1〜32重量%のケイ酸マグネシウムを含む無機粒子と、
を含む成形品。
【請求項9】
成形品が、台所用品、食品サービス用品、フォーク、スプーン、ナイフ、箸、容器、カップ、発泡材料製品、プレートおよびポットよりなる群から選択される、請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
無機粒子がケイ酸マグネシウムを含む、請求項8に記載の成形品。
【請求項11】
製造中に、生分解性組成物の全重量に基づいて、5%未満の有機過酸化物が組成物に添加されている、請求項8に記載の成形品。
【請求項12】
製造中に、生分解性組成物の全重量に基づいて、2%未満の有機過酸化物が組成物に添加される、請求項11に記載の成形品。
【請求項13】
製造中に、生分解性組成物の全重量に基づいて、0.1%〜1.8%の有機過酸化物が組成物に添加される、請求項12に記載の成形品。
【請求項14】
組成物が、生分解性組成物の全重量に基づいて、5%までのモノエステルおよび/または可塑剤をさらに含む、請求項8に記載の成形品。
【請求項15】
生分解性組成物を含む押出成形品であって、生分解性組成物が、それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、
40〜97重量%のポリ乳酸ポリマーと、
0.5〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーと、
1〜32重量%のケイ酸マグネシウムを含む無機粒子と
を含む押出成形品。
【請求項16】
押出成形品が、フィルム、ゴミ袋、食料雑貨袋、容器密封フィルム、管、飲用ストロー、スパン結合不織材料およびシートよりなる群から選択される、請求項15に記載の押出成形品。
【請求項17】
組成物がマグネシウムおよびシリケートの少なくとも2つをさらに含み、且つ無機粒子がより好ましくはマグネシウムおよびシリケートを含む、請求項15に記載の押出成形品。
【請求項18】
製造中に、組成物に、生分解性組成物の全重量に基づいて、5%未満の有機過酸化物、5〜45重量%のポリ(ε−カプロラクトン)がある、請求項15に記載の押出成形品。
【請求項19】
組成物が、生分解性組成物の全重量に基づいて、5%までのモノエステルおよび/または可塑剤をさらに含む、請求項15に記載の押出成形品。
【請求項20】
生分解性組成物を含む物品の製造方法であって、
(i)それぞれ生分解性組成物の全重量に基づいて、40〜97重量%のポリ乳酸ポリマーと、0.5〜35重量%のアジピン酸とのコポリエステルポリマーと、1〜32重量%のマグネシウムとシリケートの少なくとも1つを含む無機粒子と、5重量%未満の有機過酸化物とを含む、生分解性組成物を準備し、
(ii)(i)の成分を混合し;
(iii)混合物を150〜200℃の温度に加熱し、そして
(iv)得られた混合物を成形して,所望の形状を得る、
工程を含む製造方法。
【請求項21】
成形工程が、生分解性組成物を、射出成形法、インフレーション法、異形押出法、および熱成形押出法から選択されるプロセスに付すことを含む、請求項20の方法。

【公表番号】特表2007−524751(P2007−524751A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500306(P2007−500306)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002517
【国際公開番号】WO2005/085350
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506291461)セレプラスト・インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CEREPLAST,INC.
【Fターム(参考)】