説明

ポリ乳酸極細繊維

【課題】本発明の目的は、高強度で繊維径が均質なポリ乳酸極細繊維を提供することにある。
【解決手段】海島型複合繊維の海成分を熱水溶解除去して島成分からなる極細繊維とする方法によって得られたポリ乳酸極細繊維であって、単糸径が10〜1000nmで引張強度が1.0〜6.0cN/dtexであり、伸度が10〜80%であるポリ乳酸極細繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量で衣料用用途として耐摩耗性に優れた実用性を有するポリ乳酸極細繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
極細繊維は、その柔らかい風合から織編み物や人工皮革にして衣料用途やインテリア用途に用いられている。また、紙や不織布の形態にして、フィルター、絶縁紙、ワイパー、包装材、衛材等の用途にも用いられている。これらの用途に用いられた極細繊維はその使用後、焼却処分か埋め立て処分しなければならず、大気汚染や埋め立て後放置による環境負荷は大きいものであった。近年、地球環境保全の見地から環境に対する負荷低減が求められている。しかしながら従来の極細繊維に用いられている6ナイロンやポリエチレンテレフターレート、ポリプロピレン等は土中やコンポスト中で分解しないために、使用後、焼却処分か埋め立て処分しなければならず、大気汚染や埋め立て後放置による環境負荷は大きいものであった。使用後の極細繊維の廃棄の際、環境負荷が小さくなるように土壌中やコンポスト中で分解する極細繊維が求められている。
【0003】
極細繊維の製造方法としては、海島型複合紡糸法、直接紡糸法、さらに最近注目を集めているエレクトロスピニングなどがある。このうち、直接紡糸法は細繊度化が難しいため繊度に限界があり、エレクトロスピニング法では数十nmレベルの平均繊維径を持つ不織布を製造可能であるが、特許文献1に記載されているように繊維径のばらつきが大きく、強度が弱いために応用面で限界があり、製造方法も溶剤や高電圧を使用するなど、設備面の安全性や環境負荷の観点から問題がある。
【0004】
これに対して、海島型複合紡糸法では、特許文献2には島成分としてポリ乳酸、海成分として熱水可溶性ポリエステルを用いて、島数100以下の複合繊維とし、熱水で海成分を溶解除去して極細ポリ乳酸を得る方法が開示されている。
【0005】
上記方法によりある程度のポリ乳酸極細繊維は可能であるが布帛としての風合いの点で十分でなく、また強度や伸度の点でも十分なものではなく広範囲の用途が制限されており、より細繊度で高強度のポリ乳酸繊維が大いに求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3972092号公報
【特許文献2】特許第4221801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を解決するものであり、単糸径が1000nm以下、引張強さが1.0cN/dtex以上で繊維径が均質なポリ乳酸極細繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
海島型複合繊維の海成分を熱水溶解除去して島成分とする方法で得られたポリ乳酸極細繊維であって、
単糸径が10〜1000nmで引張強度が1.0〜6.0cN/dtexであり、伸度が10〜80%であることを特徴とするポリ乳酸極細繊維、
好ましくは、繊維直径のばらつき(CV%)が、0〜25%であるポリ乳酸極細繊維、
及び上記ポリ乳酸極細繊維を含む繊維製品、
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により平均単糸径が1000nm以下、引張強さが1.0cN/dtex以上の繊維径が均質なポリ乳酸極細繊維が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の極細繊維の側面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリ乳酸としては、L−乳酸を主たる繰り返し単位とするポリL乳酸及び/又はD−乳酸を主たる繰り返し単位よりなるポリD乳酸からなる。
また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸の他にエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸など分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0012】
ポリ乳酸の融点は、100℃以上、好ましくは140℃以上、最も好ましくは160℃ 以上である。融点が100℃に満たない場合には、単糸間の融着の発生による延伸性不良や、染色加工時、熱セット時、摩擦加熱時に溶融欠点が生じるなど、製品の品位が著しく低いものとなるため、衣料用途に用いることができない。ここで融点とはDSC測定によって得られたファーストラン溶融ピークのピーク温度を意味する。
【0013】
そのため耐熱性繊維とするためには、ポリL乳酸であればL−乳酸の比率が95モル%以上、より好ましく98モル%以上であることが好ましく、ポリD乳酸であればD乳酸の比率は95モル%以上、より好ましくは98モル%以上であることが好ましい。
【0014】
より好ましくは上記ポリL−乳酸とポリD−乳酸とが対となるステレオコンプレックス結晶を形成しているものである。ステレオコンプレックス構造とすることにより高強度、高耐熱性ポリ乳酸繊維が得られる。
【0015】
ポリ乳酸の製造方法には、L−乳酸および/またはD−乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、L−乳酸および/またはD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られている。本発明で用いるポリ乳酸はいずれの製法によって得られたものであってもよい。
【0016】
ポリ乳酸の平均重量分子量は、通常少なくとも5万、好ましくは少なくとも15万、好ましくは15〜30万である。平均重量分子量が5万よりも低い場合には繊維の強度物性が低いものしか得られないため好ましくない。
【0017】
また、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーを内部可塑剤として、あるいは外部可塑剤として用いることができる。
【0018】
また、耐加水分解性を向上させるため、ポリ乳酸のカルボキシル末端基を、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物、ジオール化合物、長鎖アルコール化合物などの末端封鎖剤によって封鎖したポリ乳酸であってもよい。この場合、ポリ乳酸の末端カルボキシル基濃度が0〜10eq/tであると、熱水処理時の強力低下を抑制することができるので、リラックス精練や染色加工などの風合い出しのための加工を十分に行うことができるようになる。
さらには、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料などとして無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
【0019】
本発明のポリ乳酸極細繊維は、単糸径が10〜1000nmであることが必要である。島成分の径が10nm未満の場合には、繊維構造自身が不安定で、物性及び繊維形態を不安定になるので好ましくなく、一方1000nmを越える場合には超極細繊維特有の柔らかさや風合いが得られず、好ましくない。また、複合繊維断面内の各島成分は、その径が均一であるほど海成分を除去して得られる極細繊維からなるハイマルチフィラメント糸の品位及び耐久性が向上する。
【0020】
本発明で得られる、ポリ乳酸極細繊維の引張り強度は1.0〜6.0cN/dtexであり、その切断伸度が10〜80%であることが必要である。前記極細繊維の物性、特に引張り強度が1.0cN/dtex以上であることが重要である。引張り強さが1.0cN/dtex未満の場合用途が限定されてしまう。本発明によって、様々な用途に応用展開可能な強度を持ち、かつ従来にない特徴を有するポリ乳酸極細繊維を得ることができる。
【0021】
本発明のポリ乳酸極細繊維は、海成分として熱水可溶性ポリエステルを用いた海島型複合繊維の海成分を溶解除去することで得られる島成分からなるポリ乳酸極細繊維で、本発明でいう熱水可溶性とは、95℃の熱水に60分間浸した際に完全に熱水中に溶解することを意味するものであり、熱水可溶性ポリエステルを海成分とした複合繊維とすることによって、織編物加工工程で一般的な精練工程において、アルカリなどの薬品を用いずに海成分を溶解除去し、複合繊維中の島成分を各々に完全に分割することでポリ乳酸極細繊維が得られる。
【0022】
本発明で使用する海島型複合繊維においては、溶融紡糸時における海成分と島成分の溶融粘度比を0.8〜2.5とすることにより島成分ポリマーの方を多くして、海成分の複合重量比率が40%以下のように低くなっても、島同士が互に接合することがない。また溶融粘度比を上記の範囲とすることにより島径が均一となり、島径が均一であることにより高延伸でき従来にない超極細繊度、高強度繊維が得られるものである。
【0023】
上記の海成分と島成分の溶融粘度比(海/島)は、好ましくは1.1〜2.0、最も好ましくは1.3〜1.5の範囲内であることが好ましい。この比が0.8倍未満の場合には、工程の安定性溶融紡糸時に島成分が互に接合しやすくなり、一方それが2.5倍を超える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸工程の安定性が低下しやすい。
【0024】
さらに、本発明の海島型複合繊維は、その海島複合重量比率(海:島)は、95:5〜5:95の範囲内にあることが必要であり、好ましくは30:70〜10:90の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは40:60〜10:90である。上記範囲内にあれば、島成分間の海成分の厚さを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になる。ここで海成分の割合が5%未満の場合には、海成分の量が少なくなりすぎて、島間に相互接合が発生しやすくなる。
【0025】
また海島型複合繊維における島成分数は、多いほど海成分を溶解除去して極細繊維を製造する場合の生産性が高くなり、しかも得られる極細繊維も顕著に細くなって、超極細繊維特有の柔らかさ、滑らかさ、光沢感などを発現することができるので、島成分数は100以上であることが重要であり好ましくは500以上である。ここで島成分数が100未満の場合には、生産効率が悪く好ましくない。なお、島成分数があまりに多くなりすぎると、紡糸口金の製造コストが高くなるだけでなく、紡糸口金の加工精度自体も低下しやすくなるので、島成分数を1000以下とすることが好ましい。
【0026】
本発明で用いられる海島型複合繊維の海成分は熱水可溶性ポリエステルであることが好ましく、特開平1−272820号公報、特開昭61−296120号公報、特開昭63−165516号公報および特開昭63−159520号公報等に記載されているような、5−ナトリウムスルホイソフタル酸およびイソフタル酸を特定量共重合した共重合ポリエステル、5−ナトリウムイソフタル酸、イソフタル酸およびポリアルキレングリコールもしくはその誘導体を特定量共重合した共重合ポリエステル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、イソフタル酸および脂肪族ジカルボン酸を特定量共重合した共重合ポリエステルなどが挙げられる。好ましくは7〜13モル%の5−ナトリウムスルホイソフタル酸および8〜30重量%のイソフタル酸が共重合されている共重合ポリエステルから選ばれることが好ましい。5−ナトリウムスルホイソフタル酸が7モル%未満の場合では、充分な熱水可溶性が得られず、13モル%を超える場合は、複合繊維紡糸時の断糸が増加し、工程安定性が悪化する傾向があるので不適切である。また、イソフタル酸が8モル%未満の場合では、充分な熱水可溶性が得られず、30モル%を超える場合は、複合繊維紡糸時の断糸が増加し、工程安定性が悪化するだけでなく、非晶性となり軟化点が低下するため、延伸後の熱セット温度が上げられず、海成分を溶解除去して得られるポリ乳酸極細繊維は充分な強度を保持できないので不適切である。
【0027】
本発明で使用する海島型複合繊維から海成分を溶解除去して得られる直径10〜1000nmの極細単繊維の繊度のばらつきを表すCV%値は、0〜25%であることが必要である。より好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0〜15%である。このCV値が低いことは、繊度のばらつきが少ないことを意味する。ここで海島成分の溶融粘度比を0.8〜2.5とすることによりCV%を上記の範囲とすることが可能となったものである。
【0028】
本発明のポリ乳酸極細繊維はナノレベルの繊維径でばらつきも少なく、用途に合わせた商品設計が可能となる。例えば、フィルター用途では、極細単繊維径において吸着できる物質を選択しておけば、用途に合わせて繊維径の設計をすることが可能になり、非常に効率的に商品設計を行うことが可能になる。
【0029】
従来にない特徴のひとつに、本発明の極細繊維は、比表面積が大きいという特徴がある。このため、優れた吸着・吸収特性を有する。また、ポリ乳酸は再生産可能な資源から合成される繊維で、ポリ乳酸の特性として生分解性、抗菌性、生体適合性などがある。これらの効果を生かして、例えば、機能性薬剤を吸収させて新たな用途展開が可能となる。機能性薬剤とは例えばたんぱく質、ビタミン類など健康・美容促進のための薬剤、そのほか抗炎症剤や消毒剤などの医薬品なども用いることができる。一方で、吸収・吸着特性だけではなく、優れた除放特性を持つ。この効果を生かして先述した機能性薬剤を除放させるなど、ドラッグデリバリーシステムをはじめとし、さまざまな医薬・衛生用途に展開可能である。
【0030】
本発明の極細繊維束を少なくとも一部に有する繊維製品は糸、組み紐状糸、短繊維からなる紡績状糸、織物、編物、フェルト、不織布、人工皮革などの中間製品とすることができる。これらをジャケット、スカート、パンツ、下着などの衣料、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途や研磨布、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途に使うことができる。
【実施例】
【0031】
本発明を下記実施例によりさらに説明する。
下記実施例及び比較例において、下記の測定及び評価を行った。
【0032】
(1)極細繊維の繊維径と繊度
海成分溶解除去後の極細繊維の10000 倍の走査型電子顕微鏡観察により、1 本の複合繊維内の極細繊維について、平均繊維直径を算出した。繊維径より繊度を算出した。
【0033】
(2)繊維径の均一性
繊維径の均一性を、繊維直径のばらつき(CV)を算出し、評価した。
海成分溶解除去後の極細繊維の10000倍の走査型電子顕微鏡観察により、繊維径を求めた。ランダムに選択した50本の極細繊維の繊維径データにおいて、平均繊維径(r)と標準偏差(σ)を算出し、以下で定義する繊維径変動係数(CV)を算出した。
繊維径変動係数(CV)=σ/r
前記平均極細単繊維径(r)は、極細繊維の横断面を走査型電子顕微鏡を用い、倍率10000倍で観察し、測定された微細単繊維の長径と、短径の平均値である。
【0034】
(3)極細繊維の引張強度、伸度
室温(25℃)で、初期試料長=200mm、引っ張り速度=200mm/分とし、JIS L−1013に示される条件で荷重−伸長曲線を求めた。次に破断時の荷重値を初期の繊度で割った値を引張り強度とし、破断時の伸長値を伸度として強伸度曲線を求めた。
【0035】
(4)極細繊維の風合い
モニター10人に対して官能試験を実施し、3段階評価した。
○: 極細繊維特有のぬめり感あると評価した人が8人以上
△: 極細繊維特有のぬめり感あると評価した人が4人以上
×: 極細繊維特有のぬめり感があると評価した人が4人以下
【0036】
[実施例1〜3、比較例1]
島成分として融点172℃、260℃/1000sec−1における溶融粘度が1500poiseであるポリL−乳酸(重量平均分子量 26万、L体比率100%)を用い、海成分として260℃/1000sec−1における溶融粘度が2100poiseである5−ナトリウムスルホイソフタル酸12モル%、およびイソフタル酸19モル%を共重合した熱水溶解性ポリエステルを用い、島成分数900、ホール数10の海島型複合紡糸用口金を用いて、公知の複合紡糸機にて複合重量比率(海:島)を実施例1、2、3、比較例1で20:80、30:70、40:60、70:30とそれぞれ変更して、紡糸温度260℃、引き取り速度1000m/分で巻き取った。続いて、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール系延伸機を用いて、延伸温度80℃、熱セット温度120℃で延伸糸の伸度が35%となるように延伸倍率を合わせて延伸を行い、マルチフィラメント延伸糸(複合繊維)を得た。得られたマルチフィラメント延伸糸を、95℃の熱水で精練と同時に海成分を溶解除去した後、得られた極細繊維について表1に示す。
実施例1〜3では、得られた極細繊維の直径は600〜700nmで、CV%は全て10%以下となり、繊維径は均一であった。
一方比較例1では、海成分の複合比率が70%と高いため、延伸性が劣るため単繊維径は太く、非常にもろい極細繊維しか得られなかった。CV%は、30%と繊維径は不均一であった。
【0037】
[比較例2]
島成分として融点172℃、260℃/1000sec−1における溶融粘度が1250poiseであるポリL−乳酸(重量平均分子量 17万、L体比率100%)を用い、海成分として実施例1と同様のポリマーを用い、島成分数70、ホール数10の海島型複合用口金を用いて、複合紡糸機にて複合比率(海:島)を70:30として、紡糸温度260℃、引き取り速度1000m/分で巻き取った。続いて、得られた未延伸糸を通常のホットロール−ホットロール系延伸機を用いて、延伸温度80℃、熱セット温度120℃で延伸糸の伸度が35%となるように延伸倍率を合わせて延伸を行い、マルチフィラメント延伸糸(複合繊維)を得た。島成分数が70と少ないため、海成分溶解後に得られた繊維は、直径2300nmの極細繊維しか得られなかった。
【0038】
[比較例3]
ポリ乳酸樹脂10質量部とジメチルホルムアミド45質量部とを混合し、60℃に加熱してポリ乳酸樹脂をDMFに溶解し、ポリ乳酸含有溶液(固形分18質量%)55質量部を得た。このポリ乳酸含有溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧20KV、(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径は500nmであった。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のポリ乳酸極細繊維により、環境負荷が小さくなるように土壌中やコンポスト中で分解する極細繊維が得られるので、衣料用途やインテリア用途、また、紙や不織布の形態にして、フィルター、絶縁紙、ワイパー、包装材、衛材等の用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海島型複合繊維の海成分を熱水溶解除去して島成分からなる極細繊維とする方法によって得られたポリ乳酸極細繊維であって、単糸径が10〜1000nmで引張強度が1.0〜6.0cN/dtexであり、伸度が10〜80%であることを特徴とするポリ乳酸極細繊維。
【請求項2】
繊維直径のばらつき(CV%)が、0〜25%である請求項1記載のポリ乳酸極細繊維。
【請求項3】
請求項1〜2記載のポリ乳酸極細繊維を含む繊維製品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−58124(P2011−58124A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209432(P2009−209432)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】