説明

ポリ乳酸発泡体およびその製造方法

【課題】発泡時のガス保持性に優れ、表面性の良好な高発泡倍率のポリ乳酸発泡体を、ゲル化物などの発生により操業性を低下させることなく製造することにある。
【解決手段】ポリ乳酸100質量部と平均粒子径が10μm以下のポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部を含有するポリ乳酸樹脂組成物からなるポリ乳酸発泡体であって、 ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンの合計量が50質量%以上100質量%以下であり、該ポリ乳酸樹脂組成物100重量部に対し、揮発性発泡剤を1〜10重量部を超臨界状態で注入して発泡させることを特徴とするポリ乳酸発泡体および、その製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性の良好な高発泡倍率の発泡体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリオレフィン系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体などの樹脂発泡体が軽量性、断熱性、成形性、緩衝性などに優れていることから、広く工業的に用いられてきた。
【0003】
しかしながら、これらの樹脂発泡体は、軽量ではあるものの、廃棄する場合には嵩張り、再利用が困難であった。また、これらの樹脂発泡体は、土中に埋没しても半永久的に残存し、焼却あるいは埋め立てによるゴミ廃棄場所の確保などで地球環境を汚染し、自然の景観を損なう場合も少なくなかった。
【0004】
このため、自然環境中で微生物などにより分解される生分解性樹脂を用いた発泡体の検討が実施されている。これらの生分解性樹脂の中でも、とりわけポリ乳酸については、主原料となる乳酸がコーンスターチやコーンシロップなどを発酵させることで製造できるため、植物由来のクリーンな生分解性樹脂として注目を浴び、その活用のための研究が盛んに行われている。
【0005】
しかしながら、ポリ乳酸は、重縮合時に発生する水などのために高分子量化することが難しく、発泡体を作成するために必要な溶融粘度を樹脂に付与することが困難であった。
【0006】
これを解決する方法として、例えば、α−および/またはβ−ヒドロキシカルボン酸単位を50モル%以上含有する生分解性ポリエステル樹脂100質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物0.01〜20質量部とからなることを特徴とする生分解性ポリエステル樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、有機過酸化物を分解させる温度条件では、ポリ乳酸の架橋による伸長粘度の上昇も起こりうるが、3級炭素を有するポリ乳酸ではラジカルによる分解も競合して起こるため、本発明者らが検討したところ、到達させる粘度の調整が非常に困難であり、連続生産性に劣り、かつ着色しやすい結果であった。
【0007】
また、高分子量の脂肪族ポリエステルに特定量のジイソシアネートまたはポリイソシアネートを反応させ、実用に耐えうる高分子領域まで分子量を高める方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法では再溶融時に粘度の低下が起こりやすいほか、操業時の安全性に問題がある。
【0008】
また、気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレンを用いたポリ乳酸発泡体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、発泡密度が0.13〜0.6g/cmであり、一般的に高発泡と呼ばれる0.10g/cm以下の高発泡体を得ることはできていない。
また、一般的に、通常の押出成形においては、重量平均分子量が100万以上の分子量の大きいポリマーを使用することにより、発泡体を作成するために必要な溶融粘度を付与することができるが、押出機に対する負荷が高くなったり、口金出口部で樹脂が詰まったり、ベントアップなどが発生し易いといった様々な問題点があり、高分子量ポリマーは優れた機能を有しているものの、その使用方法や添加量が制限されているのが現状である。
【特許文献1】特開2003−128901号公報
【特許文献2】特開平04−189822号公報
【特許文献3】特開2006−002137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記の従来技術の問題点を解決しようとするものであり、発泡時のガス保持性に優れ、表面性の良好な高発泡倍率のポリ乳酸発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸にポリテトラフルオロエチレンを特定量添加し特定の密度にすることによりこれを解決できることを見出した。また、発泡剤として二酸化炭素や窒素などの揮発性発泡剤を使用し、押出機内で超臨界状態となるように条件調整することで、ポリ乳酸樹脂およびポリテトラフルオロエチレンを十分可塑化し、ポリテトラフルオロエチレンの分散性を向上させることができることを見出した。
【0011】
このような超臨界流体によるポリマーの可塑化効果については、近年様々な報告がなされているが、本発明者らは溶融粘度の低いポリ乳酸に、ポリテトラフルオロエチレンを添加して発泡体を作成するに際して、超臨界流体の可塑化効果を利用することにより安定した発泡成形が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用する。すなわち、
(1) ポリ乳酸100質量部とポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部を含有するポリ乳酸樹脂組成物からなるポリ乳酸発泡体であって、
ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンの合計量が50質量%以上100質量%以下であり、発泡体密度が0.020〜0.130g/cmであることを特徴とする、ポリ乳酸発泡体。
(2) 前記ポリテトラフルオロエチレンが、粒子径10μm以下の粒子であることを特徴とする、前記(1)に記載のポリ乳酸発泡体。
(3)前記ポリ乳酸が、D−乳酸モノマーとL−乳酸モノマーの共重合体であり、該ポリ乳酸の乳酸モノマー由来成分の合計100モル%において、D−乳酸モノマー由来成分を1〜15モル%、L−乳酸モノマー由来成分を99〜85モル%含むことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のポリ乳酸発泡体。
(4)前記ポリ乳酸樹脂組成物100質量部に対し、揮発性発泡剤を1〜10重量部注入して発泡させることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸発泡体。
(5)前記揮発性発泡剤が、二酸化炭素および/または窒素であることを特徴とする、前記(4)に記載のポリ乳酸発泡体。
(6)前記揮発性発泡剤を、超臨界状態で注入することを特徴とする前記(4)または(5)に記載のポリ乳酸発泡体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、発泡時のガス保持性に優れ、表面性の良好な高発泡倍率のポリ乳酸発泡体を、ゲル化物などの発生により操業性を低下させることなく製造することができ、様々な用途に使用可能な発泡体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のポリ乳酸発泡体は、ポリ乳酸100質量部とポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部を含有するポリ乳酸樹脂組成物からなるポリ乳酸発泡体であって、ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンの合計量が50質量%以上100質量%以下であり、発泡体密度が0.020〜0.130g/cmであることを特徴とする。以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明でいうポリ乳酸とは、ポリ乳酸を構成する全モノマー由来成分100モル%において、乳酸モノマー由来成分を50モル%以上含むポリマーを言う。好ましくは全モノマー由来成分100モル%において乳酸モノマー由来成分を80モル%含む態様であり、さらに好ましくは100モル%含む態様である。
【0016】
なお、ポリ乳酸としては、乳酸モノマー以外のその他のモノマー由来成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。ポリ乳酸を構成する全モノマー由来成分100モル%において、上記の他のモノマー由来成分の共重合量は50モル%以下が重要であり、好ましくは20モル%以下含むことができる。
【0017】
なお、ポリ乳酸の原料となる乳酸には、分子中に不斉炭素原子を有するために光学活性を示し、D―乳酸、L―乳酸が存在する。
【0018】
本発明のポリ乳酸発泡体に用いるポリ乳酸の好ましい態様は、ポリ乳酸がD−乳酸モノマーとL−乳酸モノマーの共重合体であり、該共重合ポリ乳酸の乳酸モノマー由来成分の合計100モル%において、D−乳酸モノマー由来成分を1〜15モル%、L−乳酸モノマー由来成分を99〜85モル%含むことが好ましい。ポリ乳酸がD−乳酸モノマーとL−乳酸モノマーの共重合体であり、該共重合ポリ乳酸の乳酸モノマー由来成分の合計100モル%において、D−乳酸モノマー由来成分が1モル%未満であるとポリ乳酸の耐熱性が低下し、D−乳酸モノマー由来成分が15モル%を超えると、耐熱性は上がるものの、発泡体製造時に押出温度を上げる必要があり、結果としてガス保持性が低下し、発泡体の表面性が低下し、表面性の良好な高倍率発泡体を得ることが困難となる。
【0019】
また、D−乳酸とL−乳酸の割合を調整する別の方法として、D−乳酸からなるポリ(D−乳酸)とL−乳酸からなるポリ(L−乳酸)を、所定の割合でブレンド混合する方法もある。この場合、ポリ(D−乳酸)のみ、ポリ(L―乳酸)のみから発泡体を製造することはもちろんであるが、混合物とする場合、全てのポリ乳酸100重量%において、ポリ(D−乳酸)が1〜15重量%、ポリ(L―乳酸)が85〜99重量%であることが好ましい。
【0020】
このようなポリ乳酸は、従来より公知の方法、すなわち、乳酸から直接重合する方法、およびラクチドを開環重合させる方法、などにより合成されたものを用いることができる。ポリ乳酸の重量平均分子量については特に制限はないが、8万以上であることが好ましく、より好ましくは10万以上であり、特に好ましくは15万以上である。重量平均分子量が8万を下回る場合、得られた発泡体の強度が不十分となる場合があり好ましくない。また、ポリ乳酸の重量平均分子量は特に上限はないが、50万を超えるとなると製造が困難になり、経済的でなくなる可能性があるため、50万以下であることが好ましい。重量平均分子量は東ソー(株)製HLC8121GPCを用いて、クロロホルムを溶離液とし、カラム温度を40℃として、標準ポリスチレンを用いて換算・測定したものである。
【0021】
本発明では、ポリテトラフルオロエチレンを特定量含有することが重要であり、その形状は粒子状、繊維状など特に限定されない。しかし使用するポリテトラフルオロエチレンは、粒子径が10μm以下の粒子であることが好ましく、このようなポリテトラフルオロエチレンとしては、粒子径0.05〜1μmのポリテトラフルオロエチレン粒子の水分散液から凝固またスプレードライにより粉体化して回収したもの、あるいは粒子径0.05〜1μmのポリテトラフルオロエチレン粒子の水性分散液と有機重合体粒子の水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して得られたものが用いられる。また、一次粒子径が0.05〜1μmの一次粒子がある確率で結合したものであり、必ずしも粒子状である必要はなく、繊維状に結合する場合もある。
【0022】
このようなポリテトラフルオロエチレンの粉末としてはダイキン工業株式会社製のポリフロンMPAが挙げられる。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液の原料としては、旭ICIフルオロポリマー株式会社製のフルオロAD―1、AD―936やダイキン工業株式会社製のポリフロンD―1、D―2、三井デュポンフフロロカミカル株式会社製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表例として挙げることができる。
【0023】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物に用いる、ポリテトラフルオロエチレンの粒子径が10μmを上回る場合、ポリ乳酸樹脂組成物中でのポリテトラフルオロエチレン粒子の分散性が悪くなりやすく、表面性が良好な発泡体を得ることができない場合がある。ポリテトラフルオロエチレンの粒子径は、得られたポリ乳酸発泡体を200℃でプレス成形機により短冊状に成形した後、ミクロトームで超薄切片としたものを無染色のまま透過型電子顕微鏡で観察すると、ポリテトラフルオロエチレンは暗部として観察され、本発明においては、得られた画像を二値化処理し、円相当径を算出し、1画像における10点での個数平均を粒子径とした。また、ポリテトラフルオロエチレンの粒子径が1μmを下回るものは製造困難であり、また本発明者らが、確認した範囲においては、粒子径が1μmを下回るものは入手もできなかったので、そのような点からポリテトラフルオロエチレンの粒子径の下限は1μm程度と思われる。
【0024】
本発明のポリ乳酸発泡体を構成するポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸100質量部とポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部を含有することが重要であり、また該ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンの合計量が50質量%以上100質量%以下であることが重要である。
【0025】
ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンを含有するポリ乳酸樹脂組成物は、好ましくはポリ乳酸100質量部に対してポリテトラフルオロエチレン1.5〜4.5質量部を含有した態様である。本発明のポリ乳酸発泡体を構成するポリ乳酸樹脂組成物において、ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、ポリ乳酸100質量部に対して0.5質量部を下回る場合、ポリテトラフルオロエチレンの添加効果が不十分であり、表面性が良好なポリ乳酸発泡体を得ることができない。また前記ポリ乳酸樹脂組成物において、ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、ポリ乳酸100質量部に対して5質量部を超える場合、押出成形時の圧力が高くなりすぎたり、溶融粘度が高くなりすぎて運転条件に制約ができたり、押出機の中に異常滞留する可能性があるために好ましくない。
【0026】
またポリ乳酸100質量部とポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部を含有するポリ乳酸組成物は、該ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンの合計量が65質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明のポリ乳酸発泡体を構成する、ポリ乳酸100質量部とポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部を含有するポリ乳酸樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、触媒失活剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、結晶核材などの添加剤を添加することができ、より具体的には該ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において0質量%以上5質量%以下の範囲で、顔料や熱安定剤などの添加剤を添加することができる。顔料や熱安定剤などの添加剤が、ポリ乳酸樹脂組成物100質量%において5質量%を越えると、顔料および熱安定剤は、通常樹脂に比べ、高価格であり、費用対効果の観点から、生産コストが上がる割には、性能面での効果が少なく、5質量%を越えることは好ましくない。
【0028】
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが挙げられる。
【0029】
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤などが使用できるが、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミ、水酸化マグネシウム)、N含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、Mo化合物)などが挙げられる。
【0030】
触媒失活剤としては、アルキルホスフェートおよび/またはアルキルホスホネート化合物などが挙げられ、モノオクチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、モノエチルヘキシルホスフェート、ジエチルヘキシルホスフェート、モノステアリルホスフェート、ジステアリルホスフェートなどが挙げられる。
【0031】
無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、窒化ホウ素、グラファイトなどが挙げられる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、籾殻、フスマなどの天然に存在するポリマーやこれらの変性品などが挙げられる。
【0032】
無機結晶核材としては、タルク、カオリンなどが挙げられ、有機結晶核材としては、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物などを必要に応じて添加することができる。
【0033】
本発明のポリ乳酸発泡体を構成する、ポリ乳酸100質量部とポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部を含有するポリ乳酸樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレン以外の樹脂を含有しても良く、具体的には該ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において0質量%以上50質量%以下の範囲で、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレン以外の樹脂を含有することができる。これらの樹脂としては、特に生分解性を有するポリエステル樹脂であることが好ましいが、特に限定はされない。ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレン以外の樹脂は、ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において0質量%以上50質量%以下の範囲であり、50質量%を越えると、ポリ乳酸樹脂が発泡体マトリックス中で50質量%より小さくなり、植物由来のクリーンな生分解性樹脂フォームとしての基本機能を失ってしまう。
【0034】
ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレン以外の樹脂としては、例えば、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、エナントラクトンや4−メチルカプロラクトン、2,2,4−トリメチルカプロラクトンなどの各種メチル化ラクトンの単独重合体または共重合体、およびそれらの混合物などのラクトン樹脂、以下に代表される脂肪族ポリエステル、例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/カーボネートなどのジオールとジカルボン酸または該酸無水物などの誘導体を重縮合してなる脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート、ポリエチレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/アジペートなどの芳香族共重合ポリエステル、ポリヒドロキシブチレート・バリレートなどの天然直鎖状ポリエステル系樹脂、酢酸セルロース、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、硝酸酢酸セルロースなどの生分解性セルロースエステルなど、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリロイシンなどのポリペプチドや、ポリビニルアルコールなど、澱粉として、トウモロコシ澱粉、コムギ澱粉、コメ澱粉などの生澱粉、酢酸エステル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、アミロースなどの加工澱粉など、セルロース、カラギーナン、キチン・キトサン質などの天然高分子といった、生分解性を有する樹脂が挙げられる。また、上記生分解性を有する樹脂以外としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリブテン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの樹脂を添加しても良い。
【0035】
本発明のポリ乳酸発泡体の発泡体密度は、0.020g/cm〜0.130g/cmの範囲であることが重要であり、より好ましくは0.030g/cm〜0.100g/cm、さらに好ましくは0.040g/cm〜0.080g/cmの範囲である。ポリ乳酸発泡体の発泡体密度が0.130g/cmを上回ると、ポリ乳酸発泡体の強度は十分であるものの、軽量性に劣るため好ましくなく、発泡体密度が0.020g/cmを下回ると、ポリ乳酸発泡体の軽量性には優れるものの、強度が不十分であるため好ましくない。
【0036】
ポリ乳酸発泡体の発泡体密度を、0.020g/cm〜0.130g/cmの範囲とするための方法は特に限定されないが、ポリ乳酸発泡体を構成するポリ乳酸樹脂組成物が、前述した特定量のポリテトラフルオロエチレンを含有し、さらに揮発性発泡剤を超臨界状態で注入することで、高発泡倍率のポリ乳酸発泡体を作成することが容易となり、発泡体密度0.020g/cm〜0.130g/cmの高発泡倍率のものでも安定して作成することができる。
【0037】
本発明のポリ乳酸発泡体の独立気泡率は70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。独立気泡率が70%を下回ると表面性が低下する可能性があり、断熱性や二次成形性が低下する可能性があるため好ましくない。なお、独立気泡率の上限は100%である。
【0038】
本発明のポリ乳酸発泡体の平均気泡径は特に限定はされないが、20〜400μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜200μmの範囲である。また平均気泡径が100μmを下回ると頗る表面性が向上し、顔料等の特別な添加剤を入れずとも表面の白色度が向上するため、平均気泡径は30μm以上100μm未満が特に好ましい。気泡径は小さい方が表面が平滑になりやすく好ましいが、平均気泡径20μm未満の気泡径で、発泡倍率5倍以上の高発泡倍率の発泡体を作成することは困難であり、平均気泡径400μmを超えると発泡体の表面性が低下するため好ましくない。
【0039】
次に、本発明のポリ乳酸発泡体の好適な製造方法の一例について説明する。
【0040】
本発明のポリ乳酸発泡体の製造方法は、ポリ乳酸100質量部とポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部を含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、該ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンの合計量が50質量%以上100質量%以下であるポリ乳酸樹脂組成物を準備し、該ポリ乳酸樹脂組成物100重量部に対し、揮発性発泡剤1〜10重量部を超臨界状態で注入して発泡させるポリ乳酸発泡体の製造方法であることが好ましい。
【0041】
本発明で使用する揮発性発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、水、およびエタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチル、モノクロルトリフルオロメタン、ジクロルフルオロメタン、ジクロルテトラフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素などが用いられる。これらの揮発性発泡剤は単独で用いても良いし、2種類上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも二酸化炭素と窒素が安全性、環境負荷の面から最も好ましい。また二酸化炭素や窒素を超臨界状態として用いることで、ポリテトラフルオロエチレンが均一にポリ乳酸樹脂組成物中に分散し、ポリ乳酸との相溶性も向上し、かつ異常滞留や異常な圧力上昇などが見られず、押出発泡成形性が良好となる。
【0042】
ここで、超臨界状態について簡単に説明する。一般に物質は、温度や圧力などの変化により、気体・液体・固体の異なる三つの状態をとることができる。横軸に温度、縦軸に圧力をとって物質の状態図を考えると、固体と液体の境界が存在する限界は実験的に得られていないが、液体と気体の境界は臨界点が限界である。温度、圧力を上げていき、臨界点を超えると一相の流体となり、それ以上に加圧圧縮しても液体とならず、昇温しても気体にはならない。この状態を超臨界状態とよび、この状態の流体を超臨界流体という。
【0043】
超臨界流体の有する溶媒特性の一つとして、その溶解能力が挙げられる。二酸化炭素や窒素は超臨界状態が比較的得やすいことが知られており、例えば二酸化炭素は、臨界温度31.0℃、臨界圧力7.4MPa、窒素は、臨界温度−147,0℃、臨界圧力3.4MPaである。
【0044】
これら二酸化炭素や窒素などの揮発性発泡剤は、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンからなるポリ乳酸樹脂組成物100重量部に対して、1〜10重量部の範囲で用いられる。ポリ乳酸樹脂組成物100重量部に対して、揮発性発泡剤の添加量が1重量部を下回ると、得られる発泡体の発泡倍率が低くなりやすいため好ましくなく、10重量部を超えると発泡時のガス抜けが多くなりやすく、気泡が破泡しやすくなり表面性が劣る他、独立気泡率が低くなりやすくなるため好ましくない。
【0045】
本発明のポリ乳酸発泡体は、ポリ乳酸100質量部とポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部、並びにポリ乳酸樹脂組成物100質量%中にポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンの合計量を50質量%以上含むポリ乳酸樹脂組成物に、ガスおよび/または超臨界流体を含浸させる工程と、脱ガスさせて樹脂を発泡させる工程とを有する製造方法が挙げられ、この2工程を備えていることが好ましく、他の条件は特に限定されないが、より好ましい例としては、密閉したオートクレーブ中にガスおよび/または超臨界流体を封入し、一定時間含浸させたのちオートクレーブの圧力を開放して発泡させる方法、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンを特定量含有するポリ乳酸樹脂組成物を溶融押出機に投入し、シリンダーの途中からガスおよび/または超臨界流体を注入し、シリンダー内の圧力を利用してガスおよび/または超臨界流体を含浸させ、押出機のダイ出口において発泡させる方法などが挙げられる。これらの中でも高発泡倍率の発泡体を製造する場合においては、押出機などを用いて超臨界流体を含浸させダイから押し出し、発泡させる方法が連続生産性に優れている点から特に好ましい。
【0046】
押出機としては、単軸押出機、二軸押出機や、単軸押出機と単軸押出機、または二軸押出機と単軸押出機を組み合わせたタンデム型押出機などを用いることができる。これらの中でも、ポリ乳酸の場合はタンデム型押出機を用いることが最も好ましい。また、必要に応じて、押出機とダイの間にギヤポンプなどを設置してもよい。
【0047】
押出機やギヤポンプなどの先端に取り付けるダイとしては、Tダイやサーキュラーダイなどの公知のものを取り付けることができる。発泡体密度が0.020g/cm〜0.130g/cmである、高発泡倍率のポリ乳酸発泡体を作成するためには、サーキュラーダイの方が表面性の良好なポリ乳酸発泡体が得られるため好ましい。また、ダイから発泡させた発泡体は、Tダイの場合はロールなどで、サーキュラーダイの場合はマンドレルなどの公知の方法により冷却しながら表面性を整えることは好ましい態様の一つである。
【0048】
ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンを前述の特定量含有するポリ乳酸樹脂組成物を押出発泡させる時の温度としては、使用するポリ乳酸により異なるが、一般的には、溶融させるために樹脂温度を160〜230℃とした後、120〜150℃の範囲に冷却し、粘度を調整して、発泡させることが好ましい。またダイの温度は上記冷却後の樹脂温度と樹脂温度より30℃程高い温度の間に設定することで、表面性の良好な発泡体が得られる。
【0049】
サーキュラーダイを用いた場合、ポリ乳酸発泡体の冷却に用いるマンドレルは、100℃以下に設定することが好ましい。温度が高すぎるとマンドレルに沿って発泡体を進行させようとした場合に抵抗が大きくなることがある。また、発泡体のマンドレルに接しない側の面を冷却するために、エアーや水などを吹き付けることは好ましい態様の一つである。このマンドレルとサーキュラーダイの口径の比率は、目的とする発泡倍率に応じて適時設定することができるが、一般的にはマンドレル外径/サーキュラーダイ口径の比は1.5〜5の範囲である。
【0050】
さらに、ダイ部分の圧力は発泡時の樹脂温度とダイのクリアランスにも依存するが、ダイ部分の圧力は二酸化炭素を用いる場合は10MPa以上、窒素を用いる場合は5MPa以上であることが好ましい。これらの圧力を下回ると二酸化炭素や窒素などの揮発性発泡剤とポリ乳酸が分離しやすくなり、安定してポリ乳酸発泡体が得られ難くなる。好ましくは12MPa以上である。ダイ部分の圧力は高いほうが得られるポリ乳酸発泡体の気泡径が細かくなりやすく、表面性が良好となりやすい。ダイ部分の圧力には特に上限はないが、50MPaを超えると製造設備の経費が高くなり好ましくなく、通常40MPa程度までとするのが好ましい。
【0051】
また、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンを前述の特定量含有するポリ乳酸樹脂組成物、とりわけポリ乳酸は、押出機などでの溶融前に乾燥しておくことが好ましい。乾燥方法としては従来より公知のものを用いることができるが、ホッパードライヤーなどで連続的に除湿乾燥する方法、真空乾燥機で乾燥する方法などが好ましく用いられる。
【0052】
本発明のポリ乳酸発泡体は、軽量性、機械的物性、表面性に優れるため、例えば、生鮮食品用包装容器、菓子または食品用トレイ、パッキンなどの食品用途、コンテナー、コンテナーのあて材、通函、函の仕切り板、緩衝材などの包装・梱包用途、デスクマット、バインダー、カットファイル、カットボックスなどの文具、パーテーション用芯材、畳芯材、表示板、緩衝壁材、長尺屋根材、キャンプ時の敷板などの土木・建築用途、苗床、水耕栽培時の種苗基材ケースなどに、漁業網用浮き、釣り用浮き、オイルフェンス用浮きなどの農業資材・水産資材用途、パイプカバー、クーラーボックスなどの断熱用途、粘着テープ用基材、紙管巻芯などの産業資材用途などの幅広い用途に用いることができる。
【実施例】
【0053】
次に、実施例に基づいて本発明の内容を具体的に説明する。なお、実施例における各種特性の評価は以下の方法および基準で行った。
【0054】
(1)発泡体密度の測定
浮力式比重測定装置(Electronic densimetor:型式「MD−300S」;MIRAGE社製)により発泡体の見かけ比重を測定し、見かけ比重=発泡体密度とした。
【0055】
(2)独立気泡率の測定
独立気泡率は以下の式により算出した。
独立気泡率(%)=100−連続気泡率(%)
連続気泡率(%)={(Va−Vx)/Va}×100
ここで、Vx(実容積)は空気比較式比重計(型式「1000型」;東京サイエンス株式社)により測定された発泡体の容積であり、Va(見かけの容積)は発泡体表面をテープでシールし、同様に測定された容積である。
【0056】
(3)平均気泡径の測定
発泡体の平均気泡径は、発泡体を発泡体厚み方向に対して、長手方向に平行にカットし、その断面を走査型電子顕微鏡で観察(Hitachi−570)し、得られた画像を二値化処理し、円相当径を算出し、1画像における10点での個数平均を平均気泡径とした。
【0057】
(4)ポリテトラフルオロエチレン粒子径
得られた発泡体を200℃でプレス成形機により短冊状に成形した後、ミクロトームで超薄切片としたものを無染色のまま透過型電子顕微鏡(Hitachi―700H)で観察し、得られた画像を二値化処理し、円相当径を算出し、1画像における10点での個数平均を粒子径とした。
【0058】
(5)発泡体の表面性の評価
発泡体の表面性は以下の判断基準で判断した。
【0059】
表面性○・・・発泡体の表面性が良好で、表面に気泡破れ、コルゲートなどが無い。
【0060】
表面性△・・・発泡体の表面性は良好であるが、表面に気泡破れやコルゲートがある。
【0061】
表面性×・・・発泡体の表面性は悪く、表面に気泡破れやコルゲートがある。
【0062】
(6)発泡体の連続生産性
発泡体の製造を、2時間以上連続運転で行い、5秒毎に運転条件を記録した際、運転条件を固定しているにもかかわらずダイ部分の圧力変動が見られることがあり、発泡体の長手方向に厚みムラが発生しやすくなる。発泡体の2時間以上の連続生産において、ダイ部分の圧力の最大値と最小値の差で圧力変動有無を判断した。なお、圧力計はサーキュラーダイと押出機とを接続するフランジ部分に設置した。
【0063】
また、8時間以上連続運転を行った後に押出機を分解し、スクリューや単管部分にゲル化物などが付着しているかどうかを目視評価し、ゲル化物の付着の有無を目視判断した。
【0064】
連続生産性○・・・圧力変動が2MPa未満で、かつゲル化物の付着が無い。
【0065】
連続生産性△・・・圧力変動が2MPa以上であるか、もしくはゲル化物の付着がある。
【0066】
連続生産性×・・・圧力変動が2MPa以上であり、かつゲル化物の付着がある。
実施例1
L−乳酸モノマー由来成分96モル%、D−乳酸モノマー由来成分4モル%からなる共重合体であるポリ乳酸(Nature Works製 4042D)98重量%と、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン株式会社製 ポリフロンMPA FA−500)2重量%とを均一に混合し、第一段押出機がL/D(スクリュー長さ(L)とシリンダー内径(D)の比率)=32、スクリュー径40mmφ、第二段押出機がL/D=34、スクリュー径50mmφのタンデム型押出機((株)日本製鋼所製)に連続的に投入し、第一段押出機のシリンダーの途中から、二酸化炭素をポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンからなるポリ乳酸樹脂組成物100重量部に対して7重量部添加しながら、直径22mmφのサーキュラーダイから押し出し、直径80mmφのマンドレルで冷却しながら切開し、幅約220mmのシート状発泡体を作成した。
【0067】
第一段押出機の温度はシリンダー6ゾーンに対して、シリンダー1を150℃、シリンダー2〜6を200℃とし、第二段押出機の温度はシリンダー6ゾーンに対し、シリンダー1を100℃、シリンダー2を170℃に設定、シリンダー3からシリンダー6は125℃、ダイ温度を140℃とした。第二段押出機とダイとをつなぐフランジに温度計を設置し、樹脂温度を測定したところ、樹脂温度は135度、ダイ部分での圧力は22MPa、樹脂組成物の吐出量は19kg/hr、発泡体の巻き取り速度は22m/minであった。
【0068】
得られた発泡体の厚さは2.3mm、発泡体密度は0.086g/cmであり、表面性が良好で連続生産性に優れるものであった。
【0069】
ポリテトラフルオロエチレンの粒子径は、得られたポリ乳酸発泡体を200℃でプレス成形機により短冊状に成形した後、ミクロトームで超薄切片としたものを無染色のまま透過型電子顕微鏡で観察し、4.3μmであった。
実施例2〜7、比較例1〜3
実施例2〜4および比較例1〜2は、表1に示した原料組成とした以外は、実施例1と同様な条件で発泡体を作成した。結果とともに表1に示す。なおポリ乳酸樹脂組成物においては、ポリ乳酸、ポリテトラフルオロエチレンおよびその他成分の合計が100質量%となるように、表1に従ってポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンを添加した。
【0070】
なお実施例5においては、高融点のポリ乳酸を用いたため、実施例1において第二段押出機のシリンダー3〜6を140℃、ダイ温度を150℃として、表1に示した原料組成とした以外は、実施例1と同様な条件で発泡体を作成した。
【0071】
さらに、実施例3,4において添加したその他添加剤であるタルクおよびポリスチレンポリマーは、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンからなるポリ乳酸樹脂組成物と予め均一にドライブレンドしてから押出機に投入した。
【0072】
実施例1〜7においては、表面性が良好で、発泡時のガス保持性に優れ、連続生産性に優れる高発泡倍率の発泡体を、安定して再現良く製造することができた。特に実施例1〜4のD―乳酸モノマー由来4モル%とL―乳酸モノマー由来96%モル%の共重合体から生産した発泡体は、発泡体表面の光沢に非常に優れており、トレーなどのディスプレー材として好適である。また、実施例3のタルクを併用した場合は気泡径も小さく、特に表面性が優れていた。
【0073】
比較例1では、ポリテトラフルオロエチレンを使用しなかったために発泡体密度が大きく、平均気泡径も粗く、表面性の悪いサンプルしか得られなかった
比較例2では、ポリテトラフルオロエチレンにより発泡に必要な粘度を付与できているものの、連続生産性が悪く、特にゲル化物の生成がひどかった。
【0074】
比較例3では実施例1において第二段押出機のシリンダー3〜6を180℃、ダイ温度を200℃とすることで、揮発性ガス注入が超臨界状態でなくなり、得られた発泡体密度が大きく、平均気泡径も大きく、表面性も悪サンプルしか得られなかった。
【0075】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のポリ乳酸発泡体は、表面性に優れるため、例えば生鮮食品用包装容器、菓子または食品用トレイ、パッキンなどの食品用途、コンテナー、コンテナーのあて材、通函、函の仕切り板、緩衝材などの包装・梱包用途、デスクマット、バインダー、カットファイル、カットボックスなどの文具、パーテーション用芯材、畳芯材、表示板、緩衝壁材、長尺屋根材、キャンプ時の敷板などの土木・建築用途、苗床、水耕栽培時の種苗基材ケースなどに、漁業網用浮き、釣り用浮き、オイルフェンス用浮きなどの農業資材・水産資材用途、パイプカバー、クーラーボックスなどの断熱用途、粘着テープ用基材、紙管巻芯などの産業資材用途などの幅広い用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸100質量部とポリテトラフルオロエチレン0.5〜5質量部を含有するポリ乳酸樹脂組成物からなるポリ乳酸発泡体であって、
ポリ乳酸樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸とポリテトラフルオロエチレンの合計量が50質量%以上100質量%以下であり、発泡体密度が0.020g/cm〜0.130g/cmであることを特徴とする、ポリ乳酸発泡体。
【請求項2】
前記ポリテトラフルオロエチレンが、粒子径10μm以下の粒子であることを特徴とする、請求項1に記載のポリ乳酸発泡体。
【請求項3】
前記ポリ乳酸が、D−乳酸モノマーとL−乳酸モノマーの共重合体であり、
該ポリ乳酸の乳酸モノマー由来成分の合計100モル%において、D−乳酸モノマー由来成分を1〜15モル%、L−乳酸モノマー由来成分を99〜85モル%含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリ乳酸発泡体。
【請求項4】
前記ポリ乳酸樹脂組成物100質量部に対し、揮発性発泡剤を1〜10重量部注入して発泡させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸発泡体。
【請求項5】
前記揮発性発泡剤が、二酸化炭素および/または窒素であることを特徴とする、請求項4に記載のポリ乳酸発泡体。
【請求項6】
前記揮発性発泡剤を、超臨界状態で注入することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のポリ乳酸発泡体。

【公開番号】特開2010−70711(P2010−70711A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242251(P2008−242251)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】