説明

ポリ乳酸系シートまたはフィルム、およびその製造方法。

【課題】特殊な成形条件や成形装置を使用することなく乳酸を主成分とする重合体(A)と脂肪族ジカルボン酸および鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相を形成した、剛性、透明性、耐引裂性、耐熱性に優れるポリ乳酸系のシートまたはフィルムを得る。
【解決手段】乳酸を主成分とする重合体(A)80〜99重量%、ならびに脂肪族ジカルボン酸および鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル(B)20〜1重量%[ただし、重合体(A)+脂肪族ポリエステル(B)=100重量%]を主成分とする組成物を二軸伸長変形させ、シートまたはフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な成形条件や成形装置を使用することなく、乳酸を主成分とする重合体ならびに脂肪族ジカルボン酸および鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルが共に連続相を形成したポリ乳酸系シートまたはフィルム、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を2種類以上組み合わせて用い、望むべき特性に適合させる改質法は、ポリマーアロイやポリマーブレンドとしてすでに広く知られている。ポリマーアロイやポリマーブレンドの性質は、組み合わせに用いる熱可塑性樹脂の種類以外に、組み合わせた熱可塑性樹脂の分散状態に大きく依存し、一般的には体積分率の高い熱可塑性樹脂がマトリックス(海)となり、体積分率の低い熱可塑性樹脂がドメイン(島)となる海−島構造を形成する。そして、マトリックスとなる熱可塑性樹脂の優れた特性を維持し、マトリックスとなる熱可塑性樹脂の欠点をドメインとなる熱可塑性樹脂の特性で補われた成形体を得ることが可能である。そして、この成形体の性質の良否は、通常、ドメインの分散状態やドメインとマトリックスの境界面(界面)の接着性などによって大きく左右される。すなわち、成形体中の熱可塑性樹脂の分散状態や界面強度を如何にコントロールするかが重要な技術となる。分散状態をコントロールすることでポリマーアロイの性能を改質した例として、例えば特許文献1には、基材(ポリエチレン)とこれより溶融温度の高い分散材(ポリアミド)を含む原料を押出成形することにより、通常は海−島構造となるポリマーアロイやポリマーブレンドにおいて、基材中に分散材を層状分散させるポリマーアロイの成形方法が開示されている。また、この特許文献1によると、基材中に分散材を粒子状ではなく層状に分散させることで、機械的強度が高い基材の性質に加え、基材に不足しているガスバリア性を分散材によって高度に高められた成形体を得ることができるとされている。
【0003】
しかしながら、上記の開示された技術のみならず、ポリマーアロイにおいて海−島構造以外の分散状態は不安定であるため、上記特許文献1に開示されているように特殊な加工条件や加工設備が必要であることが欠点であり、汎用的な加工設備で海−島構造以外の分散状態を有する成形体を安定的に製造する技術が望まれている。
【0004】
一方、近年、地球温暖化や石油資源枯渇などの不安から、天然資源由来の原料から製造されたプラスチックが脚光を浴びている。中でも、トウモロコシなどの澱粉を原料にしたポリ乳酸が、炭酸ガス循環型プラスチックとして特に注目されている。しかし、ポリ乳酸のシートやフィルムは透明で高い剛性を有するという特徴があるが、脆いため裂けやすく、また、結晶化し難いために一般的な成形方法では耐熱性に乏しい成形品しか得られない。そのため、耐熱性や耐引裂性が高められたシートやフィルム製品を製造するに当たっては、二軸延伸機やブロー成形機などにより配向結晶化させる方法や、熱処理して結晶成長を促進させる方法が取られているのが現状である。そして、このように特殊な製造方法でしか耐熱性を有するシートやフィルムが製造できないことが、ポリ乳酸シートやフィルム製品の汎用化の妨げの一因になっている。従って、ポリ乳酸シートやフィルムの汎用化のためには、ポリ乳酸樹脂の特徴を維持し、欠点である耐熱性や耐引裂性の改良されたポリ乳酸のシートやフィルムを、特殊な成形装置や工程を利用することなく容易に製造する技術の開発が急務である。
【0005】
例えば、特許文献2には、ポリ乳酸重合体とポリ乳酸重合体以外の生分解性脂肪族ポリエステルの混合物を主体としてなるポリ乳酸系樹脂のフィルムまたはシートであって、フィルムまたはシートの厚み方向切断面において、ポリ乳酸重合体相中にポリ乳酸重合体以外の生分解性脂肪族ポリエステル相のドメインが、層状または棒状片を主体とする形態でフィルムまたはシートの長さ方向に対してほぼ平行にミクロ相分散しているポリ乳酸系延伸フィルムまたはシートが提案されている。このフィルムまたはシートは、例えばポリ乳酸系樹脂を溶融押出して急冷した非晶質シートを予熱してタテ、ヨコ方向に順次延伸して冷却するというもの(特許文献2の実施例1など)、または、ポリ乳酸系樹脂を溶融押出して延伸して冷却するというものがある(特許文献2の実施例2など)。しかしながら、このようなフィルムまたはシートは、ポリ乳酸重合体相中にポリ乳酸重合体以外の生分解性脂肪族ポリエステル相のドメインが層状または棒状片を主体とする形態で長さ方向に対してほぼ平行に分散しているため、幅方向に対しては引裂き強度が高いものの、長さ方向に対しては、引裂き強度が弱く、またこのような構造をとったフィルムまたはシートを得るためには高度な延伸技術が必要となることなどの難点がある。
【特許文献1】特開2005−271416号公報
【特許文献2】特許第3862557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特殊な成形条件や成形装置を使用することなく乳酸を主成分とする重合体(A)ならびに脂肪族ジカルボン酸および鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相を形成したポリ乳酸系のシートまたはフィルムを得ること、さらに詳しくは、剛性、耐熱性、透明性、耐引裂性に優れた、ポリ乳酸系のシートまたはフィルムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乳酸を主成分とする重合体(A)(以下「重合体(A)」ともいう)80〜99重量%、ならびに脂肪族ジカルボン酸および鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル(B)(以下「脂肪族ポリエステル(B)」ともいう)20〜1重量%[ただし、重合体(A)+脂肪族ポリエステル(B)=100重量%]を主成分とする組成物を二軸伸長変形させて得られたシートまたはフィルムであって、かつ重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相を形成していることを特徴とするポリ乳酸系シートまたはフィルム「以下「シートまたはフィルム」ともいう」に関する。
ここで、[脂肪族ポリエステル(B)の溶融粘度]/[重合体(A)の溶融粘度]で表される粘度比は、0.01〜2.00であることが好ましい。
また、上記連続相は、それぞれ実質的に、重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)からなり、枝状または球状粒子が連なった三次元構造であるのが好ましい。
次に、本発明は、重合体(A)80〜99重量%、ならびに脂肪族ポリエステル(B)20〜1重量%[ただし、重合体(A)+脂肪族ポリエステル(B)=100重量%]を主成分とする組成物を、カレンダー成形装置またはロール成形装置を用いて二軸伸長変形させて、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)を共に連続相とすることを特徴とするポリ乳酸系シートまたはフィルムの製造方法に関する。
ここで、シートまたはフィルムを二軸伸長変形させ成形する装置の加熱ロールの設定温度は、150〜230℃が好ましい。
また、シートまたはフィルムの厚みは、0.03mm以上1.00mm未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、重合体(A)の特性を維持し、重合体(A)に不足している特性を脂肪族ポリエステル(B)の特性により改良された、剛性、透明性、耐引裂性、耐熱性を兼ね備えたポリ乳酸系シートまたはフィルムを得ることができる。
また、特殊な成形条件や成形装置を使用することなく、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相を形成したポリ乳酸系シートまたはフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明に用いる重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)について説明する。
本発明の重合体(A)としては、一般的にポリ乳酸と称される重合体が好適に使用できる。
ポリ乳酸は、実質的にL−乳酸および/またはD−乳酸由来のモノマー単位で構成された重合体であり、例えば重合体がL−乳酸またはD−乳酸に由来するモノマー単位だけから構成されていれば、結晶性で高融点の重合体となる。一方、ポリ乳酸中にL−乳酸およびD−乳酸に由来するモノマー単位が混ざっている場合には、結晶性や融点が低下した重合体となり、モノマー単位の比率により結晶性や融点の低下度合いが調整できる。また、「実質的」にとは、重合体中にL−乳酸またはD−乳酸に由来しない、他のモノマー単位を含有している場合も含まれるという意味である。
ポリ乳酸の製造方法としては、乳酸の無水環状二量体であるラクチドを開環重合する方法(ラクチド法)や乳酸を直接縮合重合する方法が挙げられる。また、分子量としては、通常、重量平均分子量で30,000〜1,000,000であるが、成形加工性や得られた成形体の物性の点から100,000〜300,000の範囲が好適に使用される。
本発明で用いる重合体(A)には、望むべき物性や用途に応じて、ポリ乳酸の中から適宜選択し、使用することができる。また、必要に応じて2種類以上のポリ乳酸を組み合わせて用いてもかまわない。
【0010】
ちなみに、本発明に用いることが可能な重合体(A)としては、既に上市されているものがあり、例えば三井化学社より上市されているレイシア(商品名)やトヨタ自動車社より上市されているU’z(商品名)などを挙げることができる。
【0011】
次に、本発明の脂肪族ポリエステル(B)としては、一般的に脂肪族ポリエステルと称される重合体が好適に使用できる。
脂肪族ポリエステルは、実質的に脂肪族ジカルボン酸と鎖状分子ジオールの重縮合により得られる重合体である。ここで、「実質的に」とは、重合体中に脂肪族ジカルボン酸または鎖状分子ジオールに由来しない、他のモノマー単位を含有している場合も含まれるという意味である。
脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキセンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートなどを挙げることができる。
また、脂肪族ポリエステルの製造方法としては、直接法、間接法などの重合方法が挙げられ、分子量としては、重量平均分子量で20,000〜1,000,000あるが、成形加工性や得られた成形体の物性の点から80,000〜300,000の範囲が好適に使用される。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル(B)には、望むべき物性や用途に応じて、脂肪族ポリエステルの中から適宜選択し、使用することができる。また、必要に応じて2種類以上の脂肪族ポリエステルを組み合わせて用いてもかまわない。
ただし、本発明の目的である剛性、耐熱性の優れたシートまたはフィルムを得るためには、結晶性や融解温度の高い脂肪族ポリエステルが好適に使用され、具体的にはポリブチレンサクシネートが好ましい。
【0012】
ちなみに、本発明に用いることが可能な脂肪族ポリエステル(B)としては、既に上市されているものがあり、例えば日本触媒社より上市されているルナーレSE(商品名)、昭和高分子社より上市されているビオノーレ(商品名)、三菱化学社より上市されているGSPla(商品名)、利来化学社より上市されているEnPol(商品名)などを挙げることができる。
【0013】
本発明で用いる重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)の重量比は、重合体(A)80〜99重量%、脂肪族ポリエステル(B)20〜1重量%[ただし、重合体(A)+脂肪族ポリエステル(B)=100重量%]であり、好ましくは重合体(A)85〜95重量%、脂肪族ポリエステル(B)15〜5重量%である。脂肪族ポリエステル(B)が1重量%未満であると耐熱性の効果が不十分であり、一方20重量%より多くなると耐引裂性には優れるものの透明性および剛性が著しく悪くなる。
【0014】
重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)を主成分とする組成物において、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相となる構造を形成させたシートまたはフィルムを得るためには、成形時に、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)を主成分とする組成物を二軸伸長変形させることが必要である。
2種類の樹脂成分が混合されている組成物おいて、「共に連続相となる構造を形成」している状態とは、一般的に、組成物中に含まれる樹脂成分が、熱的な測定手法(例えば、示差走査熱量計による測定)や粘弾性的な測定手法(例えば、動的粘弾性による測定)、顕微鏡による観察手法(走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡による観察)などで均一な状態にはなく、海−島構造を形成している状態でもなく、各々の樹脂成分が成形体中で三次元的に連続した構造を形成している状態を指し、本発明においても本概念が適用される。
【0015】
本発明で用いられる樹脂成分は、重合体(A)(2種類以上のポリ乳酸からなる場合も含む)および脂肪族ポリエステル(B)(2種類以上の脂肪族ポリエステルからなる場合も含む)を主成分とすることから、本発明でいう「共に連続相となる構造を形成」している状態とは、体積分率が高い重合体(A)(2種類以上のポリ乳酸からなる場合も含む)と体積分率が低い脂肪族ポリエステル(B)が、シートまたはフィルム中で共に三次元的に連続した構造を形成している状態を意味する。さらに、本発明において、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)のいずれかまたは両方に、2種類以上のポリ乳酸もしくは2種類以上の脂肪族ポリエステルを用いた場合には、シートまたはフィルム中で、重合体(A)(2種類以上のポリ乳酸である場合も含む)が単独の連続相を形成している状態または2種類以上のポリ乳酸がそれぞれ連続相を形成している状態であり、脂肪族ポリエステル(B)(2種類以上の脂肪族ポリエステルである場合も含む)が単独の連続相を形成している状態または2種類以上の脂肪族ポリエステルがそれぞれ連続相を形成している状態であってもよい。
【0016】
本発明のシートまたはフィルム中における重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)が形成する連続相の構造については特に限定されないが、それぞれの樹脂成分が好ましくは0.3μm〜10.0μm、さらに好ましくは0.5〜6.0μmの厚みで枝状または球状粒子が三次元的に連続して連なった構造が好ましい。枝状または球状粒子が三次元的に連続して連なった構造の厚みが0.3μm未満である場合には、得られたシートまたはフィルムの耐熱性や耐引裂性が劣る可能性があり、一方10.0μmを超える場合には透明性が悪くなる恐れがある。
【0017】
また、二軸伸長変形とは、日本レオロジー協会編「講座・レオロジー」などに記載されている変形様式を言い、例えば、高分子組成物(ブレンド物を含む)の溶融体をロールなどの間隙に溶融樹脂だまり(通常、バンクと称される)を形成させ、その形成されているバンクよりも狭い間隙を通し圧延させる成形方法が挙げられる。具体的にはロール成形装置、カレンダー成形装置、ダイスより押し出された溶融樹脂をロールで圧延する設備を備えた押出成形装置などによる成形を挙げることができる。本発明に用いる成形装置としては、シートまたはフィルムを製造するスピードや、得られたシートもしくはフィルムの厚み精度の点から、ロール成形装置、カレンダー成形装置が好ましい。カレンダー成形あるいはロール成形においては、溶融樹脂がバンクを通過する過程でロール軸方向(TD方向)および該ロール軸方向と垂直な方向(ロール間隙の進行方向、MD方向)に同時に二次元的に引き伸ばされることにより、溶融体が二軸伸長変形される。
【0018】
ここでいう溶融体とは、組成物(ブレンド物を含む)中の樹脂が融解している状態を指し、具体的には、組成物中の樹脂の融解温度またはガラス転移温度のうち、高い温度以上(組成物中に複数の樹脂が含まれる場合には、組成物中に含まれる樹脂それぞれの融解温度またはガラス転移温度の中で、最も高い温度以上)の状態であり、組成物が著しく熱劣化などの悪影響を受けない温度での状態を指す。
【0019】
ただ、本発明のシートまたはフィルム成形時の装置の加熱ロールの設定温度は、150〜230℃が好ましく、さらには170〜200℃が好ましい。加熱ロールの設定温度が150℃未満では、溶融時の粘度が高く硬いため加工が困難となる場合あり、さらに得られたシートまたはフィルムは表面平滑性に劣っているものとなる可能性がある。一方230℃を超えると、溶融時の粘度が低く流動性が高くなるため加工が困難となる場合があり、さらに熱劣化を起こす可能性がある。
【0020】
重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)の溶融粘度については特に限定はされない。しかしながら、本発明の目的である、重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)を主成分とする組成物において、重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)とが共に連続相となる構造を形成させたシートまたはフィルムを得るには、[脂肪族ポリエステル(B)の溶融粘度]/[重合体(A)の溶融粘度]で表される粘度比が0.01〜2.00の範囲が好ましく、より好ましくは0.03〜1.75、さらに好ましくは0.05〜1.50である。[脂肪族ポリエステル(B)の溶融粘度]/[重合体(A)の溶融粘度]が0.01未満や2.00を超える場合には、粘度が低い方の樹脂に変形させるための応力が伝わり難くなるため、重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)を共に連続相とさせたシートまたはフィルムを得られない場合がある。
ここでいう溶融粘度とは、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)それぞれのガラス転移温度または融解温度のうち、高い方の温度より5〜150℃高い範囲の中で、溶融粘度の測定が可能な、任意に決めた特定の温度において、動的な歪を与えて測定されたゼロせん断粘度を指す。
【0021】
本発明のシートまたはフィルムの厚みは特に限定はされないが、1.00mm未満が好ましく、より好ましくは0.50mm以下、さらに好ましくは0.30mm以下である。シートまたはフィルムの厚みが1mm以上である場合には、シートまたはフィルムの表面平滑性が劣ったり、重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)の組成物に二軸伸張変形の力が加わりにくくなることによって、重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)とが共に連続相となる構造を形成させたシートまたはフィルムが得られない可能性がある。厚さが1.0mm以上のシートまたはフィルムを得る場合には、厚さが1.00mm未満のシートを複数枚積層することによって製造する方が好ましい。一方、厚みの下限については成形する装置にもよるが、加工性、厚みの均一性を考えると0.03mm以上が好ましく、0.05mm以上がさらに好ましい。
【0022】
本発明に用いられる重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)を主成分とする組成物、さらには本発明のシートまたはフィルムには、必要に応じて、ヒンダードフェノール系、チオエーテル系、アミン系、リン系などの酸化防止剤、可塑剤、無機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、紫外線遮蔽剤、帯電防止剤、難燃剤、着色防止剤、増粘剤、抗菌剤、防カビ剤、界面活性剤、蛍光剤、架橋剤、アクリル系ゴム、スチレン系ゴム、ポリオレフィン系ゴム、シリコーン系ゴムなどの衝撃改良材など、一般的に樹脂に添加される他の配合剤を添加してもよい。
また、必要に応じて、一般的に樹脂に添加される滑剤を単独あるいは併用して用いることが可能である。滑剤の種類は特に限定されないが、本発明のシートまたはフィルムを成形加工する場合、成形条件によっては、劣化や蒸発が起こり、成形加工が困難になる可能性があることから、炭素数20以上の脂肪酸および/または炭素数20以上の脂肪酸エステルおよび/または炭素数20以上の脂肪酸金属塩を配合することが好ましい。具体的には、ベヘン酸、ベヘン酸エステル、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸リチウム、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0023】
滑剤の配合量は、得られる成形体の機械的物性を損なわない範囲で添加されるが、通常、成形体を構成する樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくはて0.5〜2重量部であり、本発明で用いられる重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)を主成分とする組成物(成形体を構成する樹脂は、重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)の合計の重量部)においても同様である。
【0024】
本発明のシートまたはフィルムを得るに当たって予備混練が必要な場合には、通常、熱可塑性樹脂において用いられている公知の装置を利用することができる。例えば、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)、および必要に応じて滑剤や酸化防止剤などの配合剤を添加したものを高速攪拌機、低速攪拌機、ヘンシェルミキサーなどで均一に混合し、バッチ式混練ミキサー、バンバリーミキサー、コニーダ、押出機などで溶融混合し、直ちに成形してもよい。また、溶融混合した後、一旦ペレット化し、その後成形してもよい。
【0025】
本発明のシートまたはフィルムを製造する場合、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)を主成分とする組成物を二軸伸張変形させた後、次の工程で少なくとも一方向に溶融延伸することで、さらに薄いシートまたはフィルムを効率よく製造することができる。ここでいう溶融延伸とは、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)が共に融解している状態で延伸することを指す。
溶融延伸する場合の延伸倍率は、120〜500%が好ましく、より好ましくは130〜400%、さらに好ましくは150〜350%である。延伸倍率が120%未満でシートまたはフィルムを製造した場合には溶融延伸することによる生産効率の改善程度に乏しく、延伸倍率500%以上でシートまたはフィルムを製造した場合には延伸ムラなどが発生し、厚さの均一なシートまたはフィルムを得ることが困難になる可能性がある。ここで、溶融延伸する場合の延伸倍率とは、100×[溶融延伸前のシートまたはフィルムの厚み]/[溶融延伸後のシートまたはフィルムの厚み]のことを指す。
【0026】
本発明のシートまたはフィルムは、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)を主成分とする組成物を二軸伸張変形させ、必要に応じて溶融延伸した後、ドラムなどに接触させて冷却するのが好ましい。冷却するドラムの設定温度は、好ましくは30〜120℃、より好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは50〜80℃である。120℃より高い温度では冷却が不十分となり成形後のシートまたはフィルムが収縮したり、伸びたりする可能性があり、30℃より低い温度では急激な冷却によりシートまたはフィルムにしわが発生したり、成形中に切断したりする可能性があるため好ましくない。
【0027】
本発明のシートまたはフィルムは、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)を主成分とする組成物を二軸伸張変形させ、必要に応じて溶融延伸を行い、冷却した後、重合体(A)のガラス転移温度以上、溶融温度未満の温度で延伸(冷延伸)してもかまわない。このときの延伸倍率(冷延伸倍率)は、101%以上150%未満、好ましくは103%以上130%未満、さらに好ましくは、105%以上120%未満である。冷延伸倍率が101%未満の場合は、成形中にシートまたはフィルムにたるみが発生する可能性があり、150%以上の場合には、配向化して長さ方向の引裂き強度が弱くなったり、延伸ムラが発生し、均一な厚みのシートまたはフィルムが得られなくなったり、製造中にシートまたはフィルムの切断や破断が発生したりする可能性があるため、好ましくない。ここでいう、冷延伸倍率とは、100×[冷延伸前のシートまたはフィルムの厚み]/[冷延伸後のシートまたはフィルムの厚み]のことを指す。
【0028】
本発明のシートまたはフィルムは、印刷性、ラミネート性、コーティング適性を向上させるために一般的に行われる表面処理を施しても良い。表面処理方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸処理などが挙げられる。
【0029】
本発明のシートまたはフィルムは、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相を形成しているため、重合体(A)の特性を維持し、重合体(A)に不足している特性を脂肪族ポリエステル(B)の特性により改良された、剛性、透明性、耐引裂性と耐熱性を兼ね備えたシートまたはフィルムであり、建材化粧用、包装用、表示ラベル用などのシート、フィルムとして広く利用することができる。
【0030】
また、本発明のシートまたはフィルムは、重合体(A)および脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相を形成していることから、得られたシートまたはフィルム中の重合体(A)もしくは脂肪族ポリエステル(B)のみを溶解させる溶剤で処理することによって、重合体(A)または脂肪族ポリエステル(B)を主成分とした多孔質性のシートまたはフィルムを製造するための原反シートまたはフィルムとしても利用できる。例えば、重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)を主成分とするシートまたはフィルムを、クロロホルム/アセトン=50〜70/50〜30の重量比の溶剤で処理することで、シートまたはフィルム中の重合体(A)が選択的に溶解された、脂肪族ポリエステル(B)を主成分とする多孔質シートまたはフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0031】
次に、実施例より本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例または比較例に使用した材料について以下に説明し、次いで実施例・比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0032】
<重合体(A)>
A−1:DSC法におけるガラス転移点63℃および融点156℃でMFR(190℃、2.16kg荷重下)=2.4(g/10分)のペレット状のポリ乳酸樹脂(商品名レイシア H−440、三井化学社製)
A−2:DSC法におけるガラス転移点63℃および融点175℃でMFR(190℃、2.16荷重下)=3.5(g/10分)のペレット状のポリ乳酸樹脂(商品名U′z S−06、トヨタ自動車社製)
【0033】
<脂肪族ポリエステル(B)>
B−1:DSC法におけるガラス転移点−32℃および融点115℃でMFR(190℃、2.16kg荷重下)=4.5(g/10分)のペレット状のポリエステル系樹脂(商品名;GSPlaAZ91T、三菱化学社製)
B−2:DSC法におけるガラス転移点−32℃および融点115℃でMFR(190℃、2.16kg荷重下)=20.0(g/10分)のペレット状のポリエステル系樹脂(商品名;GSPlaAZ71T、三菱化学社製)

【0034】
<滑剤(D)>
D−1:モンタン酸(商品名;Licowax S、クラリアントジャパン社製)
<酸化防止剤(E)>
E−1:テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名;アデカスタブAO−60、旭電化社製)
【0035】
なお、[脂肪族ポリエステル(B)の溶融粘度]/[重合体(A)の溶融粘度]で表される粘度比は、パラレルプレートを装着したTA instruments社製の回転レオメーターを用いて、180℃でそれぞれのゼロせん断粘度を測定し、求めた。
【0036】
<実施例1〜7、比較例1〜3>(ロール成形)
表1〜2に示した重合体(A)、脂肪族ポリエステル(B)、滑剤(D)、酸化防止剤(E)からなる配合物を、容量100cc(0.0001立方メートル)のバッチ式ミキサーで5分間溶融混練した。次に、180℃に設定した10インチ(直径0.254m)の2本ロール成形装置を用いて圧延した後、直ちに溶融延伸を行い、シートを得た。
【0037】
<実施例8>(ロール成形)
表1に示した重合体(A)、脂肪族ポリエステル(B)、滑剤(D)、酸化防止剤(E)からなる配合物を、容量100cc(0.0001立方メートル)のバッチ式ミキサーで5分間溶融混練した。次に、180℃に設定した10インチ(直径0.254m)の2本ロール成形装置を用いて圧延した後、溶融延伸を行なわずにシートを得た。
【0038】
<実施例9、比較例4>(カレンダー成形)
表1〜2に示した重合体(A)、脂肪族ポリエステル(B)、滑剤(D)、酸化防止剤(E)からなる配合物を、ヘンシェルミキサーで均一に混合した後、バンバリーミキサーで樹脂温度が170℃の範囲になるまで混練した。これを180℃に設定した逆L型形4本カレンダー成形装置を用いて圧延した後、直ちに溶融延伸しシートを作製した。
【0039】
<比較例5>(プレス成形)
表2に示した重合体(A)、脂肪族ポリエステル(B)、滑剤(D)、酸化防止剤(E)からなる配合物を、180℃に設定した容量100cc(0.0001立方メートル)のバッチ式ミキサーで5分間溶融混練した。次いで、圧縮成形機を用い180℃で10分間加熱、圧縮後、30℃で5分冷却して、シートを得た。
【0040】
得られたシートを、以下の方法、基準で評価し、結果を表1〜2に記載した。
<溶剤浸漬試験>
得られたシート約0.02gを、クロロホルム(関東化学社製 高速液体クロマトグラフィー用)とアセトン(関東化学社製 特級)の60/40(w/w)溶液20g中に浸漬し、24時間後の形態を観察し、溶剤浸漬後にシートの形状が保持され残っていた試料は○、形状が保持されず残らなかった試料は×として、それぞれ表に記載した。
【0041】
<耐熱性>
実施例1〜9、比較例1〜4については得られたシートから150mm角のシートを切り出し、このシートを80℃、90℃、100℃に設定したオーブン中で20分間熱処理した後、取り出して、その熱処理前後でのシート長さ方向(MD方向)の長さの変化から加熱収縮率を求めた。比較例5については長さ方向(MD)と幅方向(TD)の区別がないため、一方向のみ測定を行った以外は、実施例1〜9および比較例1〜4と同様に評価した。結果については、加熱収縮率が5.0%未満の場合を○、5.0%以上10.0%未満の場合を△、10.0%以上の場合を×として評価し、それぞれ表に記載した。
【0042】
<透明性>(ヘーズ)
得られたシートを用いて、日本電色工業社製、HazeMeter
NDH2000にて測定し、ヘーズが10.0%未満の場合を○、10.0%以上30.0%未満の場合を△、30.0%以上の場合を×として評価し、それぞれ表に記載した。
【0043】
<引裂強度>
実施例1〜9、比較例1〜4については得られたシートを用いて、東洋精機製作所製、エレメンドルフ引裂試験機にてJIS K−7128に準拠して、それぞれ長さ方向(MD)、幅方向(TD)について測定した。比較例5については、長さ方向(MD)と幅方向(TD)の区別がないため、一方向のみ測定を行った以外は、実施例1〜9および比較例1〜4と同様に評価した。結果については、引裂強度の測定値が800mN/mm以上の場合を○、400mN/mm以上800mN/mm未満の場合を△、400mN/mm未満の場合を×として評価し、それぞれ表に記載した。
【0044】
<引張弾性率>
実施例1〜9、比較例1〜4については得られたシートを用いて、東洋精機製作所製、テンシロン引張試験機にてJIS K−7127に準拠した形にてシート長さ方向(MD方向)の引張弾性率を測定した。比較例5については、長さ方向(MD)と幅方向(TD)の区別がないため、一方向のみ測定を行った以外は、実施例1〜9および比較例1〜4と同様に評価した。結果については、引張弾性率が1,500MPa以上の場合を○、1,500MPa未満1,300MPa以上の場合を△、1,300MPa未満の場合を×として評価し、それぞれ表に記載した。



























【0045】
【表1】























【0046】
【表2】

【0047】
<試験例1>
実施例1〜9で実施した溶剤浸漬試験後、溶剤中に残ったシート状物を取り出し、室温で3日間乾燥させた後、重量を測った結果、いずれも、表1に示した脂肪族ポリエステル(B)の配合量と一致した。
次に、上記の乾燥させたシート状物をDSC(型式;Pyris1、Perkin Elmer社製)にて、
第一ステップ:室温→(80℃/分)→200℃(保持5分)
第二ステップ:200℃→(40℃/分)→−40℃
第三ステップ:−40℃→(10℃/分)→200℃
の条件で昇降温させ測定を行った結果、すべてのシート状物は第三ステップで脂肪族ポリエステル(B)に由来する融解ピークのみしか観察されず、シート状物は実施例で使用した脂肪族ポリエステル(B)が連続的に連なっているものであった。
【0048】
<試験例2>
実施例1〜9で実施した溶剤浸漬試験後、溶剤中に残ったシート状物を取り出してクロロホルム/アセトン=60/40(w/w)の溶液で3回洗浄し、メタノール溶液に24時間浸漬した後、メタノール溶液から取り出し、室温で3日間乾燥させ、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
その結果、溶け残ったシート状物(先に記載したように実施例で使用した脂肪族ポリエステル(B)のみから構成されるシート)はすべて0.3μm〜10.0μm厚みの枝状構造が観察され、枝状構造以外の空間(実施例で使用した重合体(A)が溶解した痕跡)も連続しており、実施例1〜9で作成したシートはすべて、重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)が共に連続層を形成しているものであった。
なお、実施例3で得られたシートの溶剤浸漬試験後、溶剤中に残ったシート状物(前述した方法で洗浄、乾燥したシート)の倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。また、実施例8で得られたシートの溶剤浸漬試験後、溶剤中に残ったシート状物(前述した方法で洗浄、乾燥したシート)の倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。図1および図2によれば、本発明のシートは、重合体(A)のマトリックス成分中に、脂肪族ポリエステル(B)が三次元的に枝状の構造を示しており、また枝状構造以外の空間(重合体(A)が溶解した痕跡)も連続していることから重合体(A)と脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相を形成しているものであった。
【0049】
<比較試験例1>
比較例5で実施した溶剤浸漬試験後、溶剤中で形状を保持できず浮遊していた成分を回収し、室温で3日間乾燥させた後、重量を測った結果、表2の比較例5に示した脂肪族ポリエステル(B−1)の配合量と一致した。
次に、上記の浮遊していた成分の乾燥物をDSC(型式;Pyris1、Perkin Elmer社製)にて、
第一ステップ:室温→(80℃/分)→200℃(保持5分)
第二ステップ:200℃→(40℃/分)→−40℃
第三ステップ:−40℃→(10℃/分)→200℃
の条件で昇降温させ測定を行った結果、第三ステップで脂肪族ポリエステル(B−1)に由来する融解ピークのみしか観察されず、形状を保持できず浮遊していた成分は脂肪族ポリエステル(B−1)が非連続状態で存在しているものであった。
【0050】
<比較試験例2>
比較例5で実施した溶剤浸漬試験後、溶剤中で形状を保持できず浮遊していた成分を回収してクロロホルム/アセトン=60/40(w/w)の溶液で3回洗浄し、メタノール溶液に24時間浸漬した後、メタノール溶液から回収し、室温で3日間乾燥させ、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
その結果、溶剤中で形状を保持できず浮遊していた成分(先に記載したように脂肪族ポリエステル(B−1)のみからなる成分)は直径5〜30μmの粒子であり、比較例5で作成したシート中は、脂肪族ポリエステル(B−1)が連続相を形成せず、粒子状で存在しているものであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のポリ乳酸系のシートまたはフィルムは、剛性、透明性、耐引裂性、耐熱性に優れるため、建材化粧用、包装用、表示ラベル用などのシート、フィルムとして広く利用することができる。
また、本発明のポリ乳酸系のシートまたはフィルムは、乳酸を主成分とする重合体(A)および脂肪族ジカルボン酸および鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相を形成していることから、得られたシートまたはフィルム中の該重合体(A)もしくは該脂肪族ポリエステル(B)のみを溶解させる溶剤で処理することによって、該重合体(A)または該脂肪族ポリエステル(B)を主成分とした多孔質性のシートまたはフィルムを製造するための原反シートまたはフィルムとしても利用できる。
さらに、本発明は、特殊な成形条件や成形装置を使用することなくポリ乳酸系のシートまたはフィルムを得ることができるため、既存の設備を使用し、安価に、効率よくシートまたはフィルムを製造できる。


【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例3で得られたシートの溶剤浸漬試験後、溶剤中に残ったシート状物の倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例8で得られたシートの溶剤浸漬試験後、溶剤中に残ったシート状物の倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸を主成分とする重合体(A)80〜99重量%ならびに脂肪族ジカルボン酸および鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル(B)20〜1重量%[ただし、(A)+(B)=100重量%]を主成分とする組成物を二軸伸長変形させて得られたシートまたはフィルムであって、かつ該重合体(A)および該脂肪族ポリエステル(B)が共に連続相を形成していることを特徴とするポリ乳酸系シートまたはフィルム。
【請求項2】
[上記脂肪族ポリエステル(B)の溶融粘度]/[上記重合体(A)の溶融粘度]で表される粘度比が0.01〜2.00である請求項1に記載のポリ乳酸系シートまたはフィルム。
【請求項3】
連続相が、それぞれ実質的に、上記重合体(A)と上記脂肪族ポリエステル(B)からなり、枝状または球状粒子が連なった三次元構造である請求項1または2記載のポリ乳酸系シートまたはフィルム。
【請求項4】
乳酸を主成分とする重合体(A)80〜99重量%、ならびに脂肪族ジカルボン酸および鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル(B)20〜1重量%[ただし、(A)+(B)=100重量%]を主成分とする組成物を、カレンダー成形装置またはロール成形装置を用いて二軸伸長変形させて、該重合体(A)および該脂肪族ポリエステル(B)を共に連続相とすることを特徴とするポリ乳酸系シートまたはフィルムの製造方法。
【請求項5】
シートまたはフィルムを二軸伸長変形させ成形する装置の加熱ロールの設定温度が150〜230℃である請求項4記載のポリ乳酸系シートまたはフィルムの製造方法。
【請求項6】
シートまたはフィルムの厚みが0.03mm以上1.00mm未満である請求項4〜5いずれかに記載のポリ乳酸系シートまたはフィルムの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−13271(P2009−13271A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175835(P2007−175835)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】