説明

ポリ乳酸系繊維およびポリ乳酸系不織布

【課題】製糸性が良好であり、製造工程時の不快な刺激臭の発生を伴わず、かつ実用に供することのできる耐加水分解性や一定期間経過後の強度保持率を有するポリ乳酸系繊維およびポリ乳酸系不織布を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸系繊維およびこの繊維にて構成される不織布である。この繊維は、耐加水分解剤によりカルボキシル基末端の少なくとも一部が封鎖されている第1のポリ乳酸系重合体と、耐加水分解剤によるカルボキシル基末端の封鎖がなされていない第2のポリ乳酸系重合体とを構成成分とし、繊維横断面において第1のポリ乳酸系重合体が内側部分を形成し第2のポリ乳酸系重合体が前記第1のポリ乳酸系重合体を被覆する外側部分を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸系繊維およびポリ乳酸系不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
(はじめに)
従来のポリマーはその殆どが石油を原料とするものであるが、石油資源を大量消費することにより、地質時代より地中に蓄えられていた二酸化炭素が大気中に放出され、さらに地球温暖化が深刻化することが懸念されている。また、20世紀の高度成長期における石油を原料とする化学製品の大量生産、大量消費、大量廃棄社会は、これまで私達の生活を豊かにしてきた反面、環境問題や化石資源の枯渇問題などを提起するに至っている。
【0003】
これに対し、二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源を原料としてポリマーが合成できれば、二酸化炭素循環により地球温暖化を抑制できることが期待できるのみならず、資源枯渇の問題も同時に解決できる可能性がある。このため植物資源を原料とするポリマー、すなわちバイオマスポリマーに注目が集まっている。また自然環境中で分解するポリマー素材の開発が切望されており、脂肪族ポリエステル等、様々なポリマーの研究開発および実用化の試みが活発化している。特に、微生物により分解されるポリマー、すなわち生分解性ポリマーに注目が集まっている。
【0004】
上記の点から、バイオマス利用の生分解性ポリマーが大きな注目を集め、石油資源を原料とする従来のポリマーを代替していくことが期待されている。しかしながら、バイオマス利用の生分解性ポリマーは一般に力学特性、耐熱性が低く、また高コストとなるといった問題点がある。これらを解決できるバイオマス利用の生分解性ポリマーとして、現在、最も注目されているのはポリ乳酸である。
【0005】
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸は、植物から抽出したでんぷんを発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中では、力学特性、耐熱性、コストのバランスが最も優れている。そして、これを利用した繊維の開発が種々行われている。
【0006】
(ポリ乳酸の用途・欠点)
ポリ乳酸繊維の開発は、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く大型の用途として、衣料用途、カーテン、カーペット等のインテリア用途、車両内装用途、産業資材用途への応用も期待されている。しかしながら、衣料用途や産業資材用途に適用する場合には、ポリ乳酸は加水分解性が高いことが大きな問題となる。たとえばポリ乳酸繊維を衣料用途に供する際には、ほとんどの場合において染色されるが、濃色に染めることが難しい。そのため、染料の吸尽率を高めるのに110℃以上の染色温度が必須となる。しかしながら、110℃以上の温度で染色すると、ポリ乳酸の加水分解が急激に進んで分子量低下が起こるため、布帛の引裂強力が実用レベルを満たさなくなるという問題がある。
【0007】
また、使用環境下においても加水分解が進むため、特に高い強度保持率が要求される産業資材用途においては、製品寿命が短いという問題がある。
【0008】
(耐加水分解剤の添加とそれによる副作用)
この問題を解決するため、耐加水分解剤たとえばカルボジイミド化合物を添加して耐加水分解性を向上させたポリ乳酸繊維が開発されている(特許文献1〜4)。しかしながら、カルボジイミド化合物は耐熱性が悪く、これに起因して、カルボジイミド化合物を添加したポリマーを溶融紡糸すると、ポリ乳酸中の反応活性末端と反応していない、いわゆる未反応のカルボジイミド化合物が、ポリ乳酸の溶融紡糸温度である200〜250℃で急激に熱分解する。これにより刺激性の熱分解ガスが発生して、作業環境が悪化するという問題がある(特許文献3[0009])。
【特許文献1】特開平11−80522号公報
【特許文献2】特開2002−180328号公報
【特許文献3】特開2004−332166号公報
【特許文献4】特開2005−350829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、製糸性が良好であり、製造工程時の不快な刺激臭の発生を伴わず、かつ実用に供することのできる耐加水分解性や一定期間経過後の強度保持率を有するポリ乳酸系繊維およびポリ乳酸系不織布を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明における課題を解決するための手段は、下記の通りである。
【0011】
(1)耐加水分解剤によりカルボキシル基末端の少なくとも一部が封鎖されている第1のポリ乳酸系重合体と、耐加水分解剤によるカルボキシル基末端の封鎖がなされていない第2のポリ乳酸系重合体とを構成成分とし、繊維横断面において第1のポリ乳酸系重合体が内側部分を形成し第2のポリ乳酸系重合体が前記第1のポリ乳酸系重合体を被覆する外側部分を形成していることを特徴とするポリ乳酸系繊維。
【0012】
(2)繊維横断面が、第1のポリ乳酸系重合体が芯部を形成し第2のポリ乳酸系重合体が鞘部を形成した芯鞘複合型断面と、第1のポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、第2のポリ乳酸系重合体が芯部の外周を取り囲むように複数の突起状の葉部を形成した多葉複合型断面とのいずれかであることを特徴とする(1)のポリ乳酸系繊維。
【0013】
(3)第1のポリ乳酸系重合体と第2のポリ乳酸系重合体との複合比が、質量比で、(第1のポリ乳酸系重合体)/(第2のポリ乳酸系重合体)=3/1〜1/1であり、第1のポリ乳酸系重合体は、耐加水分解剤含有濃度が1.0〜3.0質量%であるポリ乳酸系重合体を原料として得られたものであることを特徴とする(1)または(2)のポリ乳酸系繊維。
【0014】
(4)上記(1)から(3)までのいずれかのポリ乳酸系繊維を構成繊維としたものであることを特徴とするポリ乳酸系不織布。
【0015】
(5)長繊維不織布であり、部分的に熱圧着されることによって構成繊維同士が一体化され不織布化されていることを特徴とする(4)のポリ乳酸系不織布。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリ乳酸系繊維は、製糸性が良好であり、製造工程時の不快な刺激臭の発生を伴わず、かつ実用に供することのできる耐加水分解性を有し、一定期間経過後の強度保持率に優れている。このため、衣料用、産業資材用途等の様々な用途に使用することが可能である。また、製品の保管中や輸送中に強度低下の恐れがなく、高品質を保持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
(ポリ乳酸系重合体)
まず、ポリ乳酸系重合体について説明する。
【0019】
本発明に用いるポリ乳酸系重合体としては、ポリ−D−乳酸と、ポリ−L−乳酸と、D−乳酸とL−乳酸との共重合体と、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、D−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体との群から選ばれる重合体、あるいはこれらのブレンド体が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸を共重合体する際のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられるが、これらの中でも特に、ヒドロキシカプロン酸やグリコール酸が、分解性能や低コストの点から好ましい。
【0020】
本発明においては、上記ポリ乳酸系重合体であって、融点が150℃以上の重合体あるいはこれらのブレンド体を用いることが好適である。ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であると、高い結晶性を有しているため、熱処理加工時の収縮が発生しにくく、また、熱処理加工を安定して行うことができ、さらには、得られる繊維や不織布が耐熱性に優れる。
【0021】
ポリ乳酸のホモポリマーであるポリ−L−乳酸やポリ−D−乳酸の融点は、約180℃である。ポリ乳酸系重合体として、ホモポリマーではなく、共重合体を用いる場合には、共重合体の融点が150℃以上となるようにモノマー成分の共重合比率を決定することが好ましい。L−乳酸とD−乳酸との共重合体の場合であると、L−乳酸とD−乳酸との共重合比が、モル比で、(L−乳酸)/(D−乳酸)=5/95〜0/100、あるいは(L−乳酸)/(D−乳酸)=95/5〜100/0のものを用いる。
【0022】
結晶性を有するポリ乳酸を用いることで、引張強度を上げ、乾熱収縮率を下げることを目的として、ポリ乳酸のL−体(L−乳酸)の比率は95%以上であることが好ましく、より好ましくは98%以上である。これは、L−体(L−乳酸)の比率が低下すると、非晶構造になり、紡糸延伸工程で配向結晶が進まず、得られる繊維の物性が劣ることになるためである。ポリ乳酸が非晶構造となると、特に、引張強度が著しく低下したり、乾熱収縮率が過大となったりして、布帛として使用することが困難になる。
【0023】
(耐加水分解剤)
次に、本発明においてポリ乳酸系重合体に配合される耐加水分解剤について説明する。
【0024】
ポリ乳酸の分解は、その初期に加水分解が始まり、加水分解によって低分子量になった後に微生物により分解される、というものである。加水分解を抑えるための手法として、耐加水分解剤を添加する方法が広く知られている。
【0025】
本発明においてポリ乳酸系重合体に配合される耐加水分解剤は、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物からなる群から選択される少なくとも一つのものであることが好適である。
【0026】
このような特定の耐加水分解剤を添加することにより、残存モノマーや分解により生じたカルボキシル基末端が封止され、加水分解の連鎖反応が十分に抑制されることにより、耐湿熱性および耐熱性が向上することとなる。なお、かかる耐加水分解剤の中でもカルボジイミド化合物が好ましい。カルボジイミド化合物は、カルボキシル基の封鎖性に優れており、さらに脂肪族ポリエステルとの溶融混練性により優れており、少量の添加で加水分解をより抑制できる傾向にある。
【0027】
(カルボジイミド化合物)
本発明において耐加水分解剤として使用されるカルボジイミド化合物としては、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物(モノカルボジイミド化合物およびポリカルボジイミド化合物など)が好ましく、一般的によく知られた方法で合成されたものを使用することができる。
【0028】
(耐加水分解剤の添加濃度)
本発明においては、ポリ乳酸系重合体に対する耐加水分解剤(カルボジイミド化合物)の添加量は、0.1〜3.0質量%であることが好適である。加水分解防止剤の添加量が0.1質量%より少ないと、耐加水分解性能に効果が見られない。また3.0質量%より多いと、効果は十分であるが、未反応カルボジイミド化合物が過多となり、溶融粘度の低下あるいは増加に伴って、製糸性が著しく悪化する傾向が生じる。また、一般に耐加水分解剤は高価であり、コストの点からもよくない。このため、添加量のより好ましい範囲は、1.0〜3.0質量%である。
【0029】
ただし、耐加水分解剤の添加濃度とは、チップブレンド時および溶融押出機内での溶融混練以前における、ポリ乳酸系重合体に対する質量比での含有濃度のことをいう。実際上は、添加した耐加水分解剤は全て反応成分として存在するわけではなく、(1)反応成分、(2)未反応成分、(3)熱分解分として分けられる。
【0030】
(耐加水分解剤とポリ乳酸系重合体チップとの混合方法)
カルボジイミド化合物などの耐加水分解剤をポリ乳酸系重合体チップに混合する方法としては、ポリ乳酸系重合体チップとカルボジイミド化合物とをそれぞれ別々に乾燥した後、混練機によりいったんマスターチップを作成しておき、マスターチップとポリ乳酸系重合体チップとをチップブレンド(マスターバッチ法)して溶融紡糸してもよいし、乾燥した粉末状のカルボジイミド化合物を直接、ポリ乳酸チップに添加して混合(ドライブレンド法)してから溶融紡糸してもよい。また、予めポリ乳酸系重合体チップとカルボジイミド化合物を溶融混練により混合しチップ化したものを用意してから、溶融してもよい(コンパウンド法)。
【0031】
(繊維の複合形態)
本発明のポリ乳酸系繊維は、繊維横断面において、耐加水分解剤を含有した第1のポリ乳酸系重合体が内側部分を形成し、耐加水分解剤を含有しない第2のポリ乳酸系重合体が外側部分を形成した構成である。このような複合形態としては、耐加水分解剤を含有した第1のポリ乳酸系重合体が芯部を形成し耐加水分解剤を含有しない第2のポリ乳酸系重合体が鞘部を形成する芯鞘複合形態や、耐加水分解剤を含有した第1のポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、耐加水分解剤を含有しない第2のポリ乳酸系重合体が前記芯部の外周を取り囲むように複数の突起状の葉部を形成した多葉複合形態などを挙げることができる。
【0032】
このように、耐加水分解剤によりカルボキシル基末端の少なくとも一部が封鎖されている第1のポリ乳酸系重合体を繊維横断面の中央の芯部に配置し、それを耐加水分解剤を含有しない第2のポリ乳酸系重合体にて囲むことにより、繊維の製造のために第1のポリ乳酸系重合体を高温で溶融紡糸したときにこの芯部の第1のポリ乳酸系重合体に含まれるカルボジイミド化合物などの耐加水分解剤に由来して発生する刺激性の分解ガスを、繊維の外部、つまり第1のポリ乳酸系重合体を囲む第2のポリ乳酸系重合体よりも外側の部分へは放出しにくい形態とすることができる。これによって、溶融紡糸ノズルの口金直下での紡出糸条からの刺激臭や、目への刺激や、熱圧接ロール付近での刺激臭などによって作業環境が悪化するという欠点をカバーすることができる。
【0033】
(多葉複合型断面についての詳しい説明)
多葉複合形態の繊維横断面の例を図1に示す。ここで、1は、芯部であって、耐加水分解剤を含有した第1のポリ乳酸系重合体にて形成されている。2は、芯部1の外周に沿って複数設けられた葉部で、耐加水分解剤を含有しない第2のポリ乳酸系重合体にて形成されている。芯部1は、その外周が複数の葉部2によって完全に覆われていることが必要である。たとえば、周方向に隣り合う一対の葉部2、2どうしの間で芯部1の外面が部分的に露出してしまうと、本発明の効果が半減することになる。
【0034】
また、図1に示す繊維断面構造であると、葉部2が突起状に突出していることから異型度が高くなり、このため繊維製造工程において溶融紡糸した繊維が冷えやすく、しかも開繊性が向上するという効果も奏する。
【0035】
以上のことから、多葉複合型における葉部2の数は、3〜10個であることが好ましい。突起状の葉部2の数が少ないと、個々の葉部2の大きさによっては、芯部1である耐加水分解剤を含有した第1のポリ乳酸系重合体が繊維の表面に露出されやすく、本発明の目的である第2のポリ乳酸系重合体による被覆効果(分解ガス抑制効果)が達成されにくい傾向となる。なお、葉部2の数が多くなると、それぞれの葉部2同士が接触して、芯部1を完全に覆ったいわゆる芯鞘型の断面形状となりやすく、異型度が小さくなる傾向にある。
【0036】
(複合比)
内側の耐加水分解剤を含有した第1のポリ乳酸系重合体と、外側の耐加水分解剤を含有しない第2のポリ乳酸系重合体との複合比(質量比)は、内側部/外側部=3/1〜1/1であることが好ましい。
【0037】
内側部の比率が3/1を超えると、繊維全体に占める耐加水分解剤(カルボジイミド化合物)の割合が高くなり、その結果、溶融紡糸工程において、カルボジイミド化合物などの耐加水分解剤に由来した刺激性の分解ガスが発生しやすい傾向となる。また、得られた繊維を用いて不織布を製造する際の熱接着工程においても刺激臭が発生しやすい傾向となる。一方、内側部の比率が1/1未満となると、繊維全体に対する、耐加水分解剤(カルボジイミド化合物)により末端封鎖されたポリ乳酸重合体の末端カルボキシル基量が低下する。その結果、耐加水分解性が低下してしまう傾向が生じる。
【0038】
この複合比と、上述の耐加水分解剤の添加濃度とを、それぞれ上述の範囲とすることで、特に、複合構造ではない単相の繊維の場合と同様の耐加水分解性を維持することができ、かつ良好な製糸性を奪性することができ、さらに発煙を抑えて操業性を向上させることができる。
【0039】
(第1および第2のポリ乳酸系重合体)
第1および第2のポリ乳酸系重合体としては、同一のポリ乳酸系重合体を用いても、あるいは、同種であって、粘度の異なるポリ乳酸系重合体を用いても、あるいは、共重合比率が異なることにより融点の異なるポリ乳酸系重合体を用いてもよい。第1のポリ乳酸系重合体を高融点のものとし、第2のポリ乳酸系重合体を低融点のものとすることにより、得られる繊維に熱接着性を付与することもできる。
【0040】
(繊維の単糸繊度)
本発明において、複合構造のポリ乳酸系繊維の単糸繊度は、0.5デシテックス〜11デシテックス程度であることが好ましい。単糸繊度が0.5デシテックス未満であると、紡糸・延伸工程において糸切れが頻繁に発生しやすく、このため操業性が悪化しやすくなるとともに、得られる長繊維不織布の機械的強度が劣りやすくなるため、実用的でなくなりやすくなる。一方、単糸繊度が11デシテックスを超えると、紡糸糸条の冷却性に劣りやすくなって、糸条同士が密着しやすくなる。これらの理由により、単糸繊度は、1〜8デシテックスであることがより好ましい。
【0041】
なお、本発明のポリ乳酸系繊維は、マルチフィラメント、モノフィラメントのいずれでも使用することができる。
【0042】
(不織布の目付)
本発明によれば、得られたポリ乳酸系繊維を用いて不織布を構成することができる。この不織布の目付は、その不織布の用途によって適宜選択すればよく、特に限定するものではないが、一般的には10〜300g/mの範囲が好ましい。より好ましくは15〜200g/mの範囲である。目付が10g/m未満では、地合および機械的強力に劣り、実用的でなくなりやすくなる。逆に、目付が300g/mを超えると、コスト面で不利となりやすくなる。
【0043】
(添加剤)
本発明の繊維を形成するための重合体および本発明の不織布を構成する繊維を形成するための重合体には、本発明の目的を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、艶消し剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離形剤、帯電防止剤、結晶核剤、充填剤等を添加することも可能である。とりわけ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の結晶核剤を、繊維の内側部分を形成する第1のポリ乳酸系重合体と、繊維の外側部分を形成する第2のポリ乳酸系重合体との双方に配合することが、紡出・冷却工程での糸条間の融着(ブロッキング)を防止するために好ましい。この結晶核剤は、0.1〜3質量%の範囲で用いるのが好ましい。
【0044】
(ポリ乳酸系繊維の製造方法)
次に、本発明のポリ乳酸系繊維の好ましい製造方法について説明する。
【0045】
まず、耐加水分解剤によりカルボキシル基末端の少なくとも一部が封鎖されている第1のポリ乳酸系重合体と、耐加水分解剤によるカルボキシル基末端の封鎖がなされていない第2のポリ乳酸系重合体とを用意する。用意したそれぞれの重合体を個別に計量し、たとえば第1ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、かつ第2のポリ乳酸系重合体が鞘部を形成する芯鞘型複合紡糸口金を介して、あるいは、第1のポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、かつ第2のポリ乳酸系重合体が葉部を構成する多葉型複合紡糸口金を介して溶融紡糸し、紡出糸条を従来公知の横吹き付けや環状吹き付け等の冷却装置を用いて冷却せしめた後、油剤を付与し、引き取りローラを介して未延伸糸として巻取機に巻取る。繊維の形態として短繊維を得たい場合は、巻取った未延伸糸を、公知の延伸機にて周速の異なるローラ群間で延伸し、押し込み型の捲縮機などで捲縮を付与した後に、ECカッターなどのカッターで目的とする長さに切断すればよい。繊維の形態として長繊維を得たい場合は、延伸機にて延伸後、巻取り、必要に応じて、撚糸加工、仮撚糸加工等の加工を行うとよい。
【0046】
(ポリ乳酸系不織布の製造方法)
本発明のポリ乳酸系不織布は、スパンボンド法によって効率よく製造することができる。
【0047】
(溶融紡糸・延伸・ウエブ形成)
まず、上記と同様にして、溶融紡糸および牽引細化を行い、ポリ乳酸系長繊維を得る。このときの牽引速度は、4000〜6000m/分と設定することが好ましい。牽引速度が4000m/分未満であると、糸条において十分に分子配向が促進されず、得られる繊維の寸法安定性が劣りやすくなる。一方、牽引速度が高すぎると紡糸安定性に劣りやすくなる。そして、牽引細化した長繊維は、公知の開繊器具にて開繊した後、スクリーンコンベアなどの移動式捕集面上に開繊堆積させて、構成繊維がランダムに分布した不織ウエブとする。
【0048】
(熱接着工程)
次いで、得られたウエブに熱処理を施し、少なくとも繊維表面の第2のポリ乳酸系重合体を溶融または軟化させることにより、繊維同士を熱接着して、本発明のポリ乳酸系長繊維不織布を得る。
【0049】
熱処理方法としては、熱風を吹き付けによる方法、熱エンボス装置に通す方法等が挙げられるが、機械的強力と柔軟性との両方に優れた不織布を得ることが可能である点において、熱エンボス装置に通すことが好ましい。すなわち、加熱されたエンボスロールと表面が平滑な金属ロールとを用いて不織ウエブを部分的に熱圧着し、構成繊維同士を一体化して不織布とする方法が好ましい。
【0050】
熱処理時の温度は、少なくとも繊維表面の第2のポリ乳酸系重合体が溶融、または軟化する温度に設定するとよいが、処理時間等に応じて適宜選択する。
例えば、ウエブを熱エンボス装置に通すことにより形成される部分的な熱圧着部において、ポリ乳酸系重合体が溶融または軟化することで長繊維不織布を形態保持させるものの場合は、熱エンボス装置に通すときの熱処理ロールの表面温度は、ポリ乳酸系重合体の融点よりも10〜50℃低い温度に設定することが好ましい。ポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃を超えた低い温度に設定すると、ポリ乳酸系重合体が十分に溶融または軟化しにくいため、構成繊維同士が十分に一体化されにくく、このため長繊維不織布の機械的性能が劣り、毛羽立ちやすいものとなる。一方、ポリ乳酸系重合体の融点よりも10℃低い温度を超えた高い温度に設定すると、重合体が溶融した溶融物がロールに固着して、操業性を損ないやすくなる。
【0051】
(三次元交絡工程および樹脂付着)
また、長繊維不織布の形態として、熱エンボス装置を用いた仮熱圧着処理の後にニードルパンチなどの三次元的交絡処理により交絡一体化させた不織布を採用することもできる。この三次元的交絡処理を施すと、部分的な仮熱圧着部を構成していた繊維が仮熱圧着部から一部あるいは全部剥離して自由な状態になり、それによって繊維同士が十分に三次元的に交絡することになる。
【0052】
このような不織布を得るための処理を行う場合において、ウエブを仮熱圧着のために熱エンボス装置に通すときのロールの表面温度は、ポリ乳酸系重合体の融点よりも60〜100℃低い温度に設定することが好ましい。ポリ乳酸系重合体の融点よりも100℃を超えて低い温度に設定すると、仮の熱圧着が必要程度に行われず、このため長繊維不織布を製造するためのウエブの搬送工程等において、工程中の張力に耐えきれずにウエブより繊維が素抜けて、ウエブ形態を保持できないという問題が発生しやすい。一方、ポリ乳酸系重合体の融点よりも60℃以上低い温度ではない高め温度に設定すると、熱圧着部における繊維が融着しすぎてしまい、ニードルパンチなどの三次元的交絡処理を施しても、剥離による自由な繊維の状態とはなりにくくなる。反対に、三次元的交絡処理を施すと、その力によって圧着部から繊維が切断されてしまい、毛羽立ちの発生や機械的強力の低下等を生じる傾向になりやすくなる。
【0053】
その後、ニードルパンチ処理により交絡一体化されたポリ乳酸系繊維に、必要に応じてバインダー樹脂を所望量付着させれば、構成繊維同士がその接触部において強固に付着した不織布を得ることができる。このような不織布は、カーペット一次基布や自動車内装材、その他産業資材に適用することができる。
【実施例】
【0054】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値は、下記の方法により測定した。
【0055】
(1)メルトフローレート(g/10分):
ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて、温度210℃、荷重21.2N(2160gf)で測定した。以降、メルトフローレートを「MFR」と略記する。
【0056】
(2)融点(℃):
示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、DSC−2型)を用い、試料質量を5mg、昇温速度を10℃/分として測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
【0057】
(3)繊度(デシテックス 以下、「dtex」と略記する):
ウエブ状態における50本の繊維の繊維径を光学顕微鏡で測定し、密度補正して求めた平均値を繊度とした。
【0058】
(4)目付(g/m):
標準状態の試料から試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、平衡水分にした後、各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算して、目付(g/m)とした。
【0059】
(5)製糸性:
溶融紡糸された紡出糸条を冷却装置にて冷却した後、紡糸口金の下方に設けたエアサッカーにて牽引細化(延伸)する際の糸切れ度合いで、下記のように評価した。このうち、「良好」「やや良好」のレベルであれば、問題なく操業可能であり、糸の品質も良好となる。
【0060】
良好・・・糸切れがほとんどなく安定した牽引細化が可能。
やや良好・・・糸切れが時々発生するが、堆積ウエブ内への未延伸糸の混入とはなりにくい状況であり、安定した牽引細化が可能。
【0061】
不良・・・糸切れが多く、堆積ウエブ内に未延伸糸が混入するため、欠点が発生、または連続して安定した牽引細化が困難。
【0062】
(6)初期の引張強力(N/5cm幅)、初期の引張伸度(%):
後述の加水分解処理を行う前に、不織布の縦方向(MD)および横方向(TD)について、幅5cm×長さ20cmの短冊状試験片を10個準備し、常温雰囲気下にて、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用いて、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分で引張試験を行い、JIS−L−1906に準じて測定した。そして、測定値10点についての平均値を、引張強力(N/5cm幅)とした。また、上記条件での引張試験の際の破断時の伸度を引張伸度(%)とした。
【0063】
(7)耐加水分解性:
得られたポリ乳酸系長繊維不織布を、1000hrにわたって、温度60℃、湿度80%中の恒温恒湿器内に入れ、各曝露時間ごとに、上記(6)と同様にして、引張強度、引張伸度を求めた。
【0064】
また、1000hr後の引張強度を測定して、下記の4段階で評価した。
◎:1000hr後でも初期引張強度と同等の強度を保持している。
○:1000hr後において、初期引張強度と比べてやや劣る程度の強度を保持している。
【0065】
△:1000hr後において、初期引張強度と比べて強度は半分程度に低下しているが、形態は保持している。
×:1000hr後において、形態が保持されていないほど劣化している。
【0066】
(8)強力保持率(%)、伸度保持率(%):
上記(7)における各曝露時間毎に求めた引張強力、引張伸度の値から、次式により算出した。
【0067】
強力保持率(%)=(加水分解処理後の引張強力/初期引張強力)×100
伸度保持率(%)=(加水分解処理後の引張伸度/初期引張伸度)×100
【0068】
(9)総合評価:加水分解性と製造工程の作業環境とから、下記の3段階で総合評価を行った。
【0069】
○:耐加水分解性に優れており、製造工程(作業環境)も優れている。
△:製造工程(作業環境)は優れているが、耐加水分解性にやや劣る。
×:作業環境が悪化する。
【0070】
実施例1
<溶融紡糸工程>
鞘部を形成するための第2のポリ乳酸系重合体として、融点168℃、MFR65g/10分、L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4モル%の、L−乳酸/D−乳酸共重合体を用意した。芯部を形成するための第1ポリ乳酸系重合体として、鞘部と同様のポリ乳酸系重合体に、耐加水分解剤としての粉末状のカルボジイミド化合物(松本油脂社製、品番EN−160)を、ポリ乳酸系重合体に対し含有量2.0質量%となるようにドライブレンド法にて混合したものを用意した。
【0071】
第1のポリ乳酸系共重合体を芯部、第2のポリ乳酸系共重合体を鞘部として、芯部/鞘部=1/1(質量比)である芯鞘型複合断面となるように、またタルクが芯部、鞘部両方の溶融ポリ乳酸系重合体中に0.5質量%となるように、個別に計量した後、それぞれの重合体を個別のエクストルーダ型溶融押し出し機を用いて温度210℃で溶融し、単孔吐出量1.38g/分の条件で溶融紡糸した。
【0072】
<延伸・開繊工程>
次に紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアサッカーにて牽引速度5000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上に複合長繊維のウエブとして捕集堆積させた。堆積させたポリ乳酸系重合体長繊維からなる長繊維不織ウエブの単糸繊度は、2.7dtexであった。このとき、口金直下での紡出糸条から、刺激臭や、目への刺激などは感じられなかった。また、紡糸時の糸切れはなく、製糸性は良好であった。
【0073】
<熱接着工程>
得られた長繊維ウエブを、エンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる部分熱圧着装置に通し、ロール温度135℃、圧着面積率14.9%、圧着点密度21.9個/cm、線圧60kg/cmの条件にて熱圧着し、目付50g/mの長繊維不織布を得た。このときのロール付近での刺激臭はなかった。
【0074】
得られた長繊維不織布の物性等を表1に示す。この長繊維不織布は、1000hrにわたって恒温恒湿器内に入れたときに、強度および伸度は低下しているが形態は保持されている程度の良好な耐加水分解性を示した。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例2
実施例1に比べ、芯鞘比を、芯部/鞘部=2/1(質量比)とした。そして、それ以外は実施例1と同様の紡糸・延伸・開繊・熱接着工程を経て、長繊維不織布を得た。
【0077】
このとき、熱圧接ロール付近では若干の刺激臭があった。しかし、実施例1の場合と同様に、口金直下での紡出糸条からの刺激臭や目への刺激は感じられず、また紡糸時の糸切れもなく製糸性は良好であった。
【0078】
得られた長繊維不織布の物性等を表1に示す。この長繊維不織布は、優れた耐加水分解性を示した。
【0079】
実施例3
実施例1に比べ、芯鞘比を、芯部/鞘部=3/1(質量比)とした。そして、それ以外は実施例1と同様の紡糸・延伸・開繊・熱接着工程を経て、長繊維不織布を得た。ただし、エアーサッカーによる牽引速度は4900m/分とし、長繊維の単糸繊度は2.8dtexであった。
【0080】
このとき、紡糸時に若干の糸切れがあったが、不織ウエブ化および不織布化できない程度ではなかった。熱圧接ロール付近では若干の刺激臭があったが、実施例1の場合と同様に、口金直下での目への刺激は感じられず、紡出糸条からの刺激臭は若干あったが気になる程ではなかった。
【0081】
得られた長繊維不織布の物性等を表1に示す。この長繊維不織布は、特に優れた耐加水分解性を示した。
【0082】
比較例1
<溶融紡糸工程>
ポリ乳酸系重合体からなる不織ウエブのみにて不織布を製造した。すなわち、融点が168℃、MFRが65g/10分であるL−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4モル%のL−乳酸/D−乳酸共重合体に、添加剤としてタルクを0.5質量%を配合して、丸型の紡糸口金より、紡糸温度210℃、単孔吐出量1.67g/分の条件下で単相で溶融紡糸した。
【0083】
<延伸・開繊工程>
次に紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアサッカーにて牽引速度5000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上に複合長繊維のウエブとして捕集堆積させた。この長繊維不織ウエブの単糸繊度は3.3dtexであった。口金直下での紡出糸条からの刺激臭や目への刺激は感じられず、紡糸時の糸切れもなく、製糸性は良好であった。
【0084】
<熱接着工程>
得られた長繊維ウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる部分熱圧着装置に通し、ロール温度135℃、圧着面積率14.9%、圧着点密度21.9個/cm、線圧60kg/cmの条件にて熱圧着し、目付50g/mの長繊維不織布を得た。
【0085】
このとき、熱圧接ロール付近での刺激性ガスは確認されなかった。
しかし、得られた長繊維不織布は、耐加水分解性を測定する際に600hrでボロボロに破けて劣化するほど、著しく劣っていた。
【0086】
得られた長繊維不織布の物性等を表1に示す。
【0087】
比較例2
比較例1のようなポリ乳酸系重合体のみではなく、ポリ乳酸系重合体に、耐加水分解剤として粉末状のカルボジイミド化合物(松本油脂社製、品番EN−160)を、ポリ乳酸系重合体中に含有量1.0質量%となるようにドライブレンド法にて混合したものを用いた。そして、それ以外は比較例1と同様の紡糸・延伸・開繊・熱接着工程を経て、長繊維不織布を得た。
【0088】
このとき、紡糸時の糸切れもなく製糸性は良好であったが、口金直下での紡出糸条からの刺激臭や目への刺激はやや有り、作業環境が悪いものであった。熱圧接ロール付近では刺激臭がやや多かった。
【0089】
得られた長繊維不織布の物性等を表1に示す。この長繊維不織布は、耐加水分解性を測定する際に800hrでボロボロに破けて劣化する程度であり、やや劣ったものであった。
【0090】
比較例3
比較例2に比べ、ポリ乳酸重合体中におけるカルボジイミド化合物の含有量を2.0質量%にした。そして、それ以外は比較例2と同様の紡糸・延伸・開繊・熱接着工程を経て、長繊維不織布を得た。
【0091】
このとき、紡糸時の糸切れはなく、製糸性は良好であった。しかし、口金直下での刺激性ガスの発生が酷く、溶融紡糸工程での作業環境が極めて悪いものであった。また、熱圧接ロール付近での刺激性ガスも多量に発生した。
【0092】
得られた長繊維不織布の物性等を表1に示す。この長繊維不織布は、優れた耐加水分解性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明にもとづく多葉複合形態の繊維横断面の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐加水分解剤によりカルボキシル基末端の少なくとも一部が封鎖されている第1のポリ乳酸系重合体と、耐加水分解剤によるカルボキシル基末端の封鎖がなされていない第2のポリ乳酸系重合体とを構成成分とし、繊維横断面において第1のポリ乳酸系重合体が内側部分を形成し第2のポリ乳酸系重合体が前記第1のポリ乳酸系重合体を被覆する外側部分を形成していることを特徴とするポリ乳酸系繊維。
【請求項2】
繊維横断面が、第1のポリ乳酸系重合体が芯部を形成し第2のポリ乳酸系重合体が鞘部を形成した芯鞘複合型断面と、第1のポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、第2のポリ乳酸系重合体が芯部の外周を取り囲むように複数の突起状の葉部を形成した多葉複合型断面とのいずれかであることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系繊維。
【請求項3】
第1のポリ乳酸系重合体と第2のポリ乳酸系重合体との複合比が、質量比で、(第1のポリ乳酸系重合体)/(第2のポリ乳酸系重合体)=3/1〜1/1であり、第1のポリ乳酸系重合体は、耐加水分解剤含有濃度が1.0〜3.0質量%であるポリ乳酸系重合体を原料として得られたものであることを特徴とする請求項1または2記載のポリ乳酸系繊維。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリ乳酸系繊維を構成繊維としたものであることを特徴とするポリ乳酸系不織布。
【請求項5】
長繊維不織布であり、部分的に熱圧着されることによって構成繊維同士が一体化され不織布化されていることを特徴とする請求項4記載のポリ乳酸系不織布。

【図1】
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【公開番号】特開2008−57057(P2008−57057A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232886(P2006−232886)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】