ポリ臭素化有機化合物分解微生物
【課題】ポリ臭素化有機化合物分解能を有する微生物、ならびにその微生物を使用する有機化合物分解方法及び浄化システムの提供。
【解決手段】ポリ臭素化有機化合物としてヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、トリブロモフェノール(TBP)、テトラブロモビスフェノールA(TBPA)を効率よく分解する微生物としてPseudomonas putida、Stenotrophomonas属、Rhodococcus属の細菌を分離し、環境浄化、有害物質除去に利用する。
【解決手段】ポリ臭素化有機化合物としてヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、トリブロモフェノール(TBP)、テトラブロモビスフェノールA(TBPA)を効率よく分解する微生物としてPseudomonas putida、Stenotrophomonas属、Rhodococcus属の細菌を分離し、環境浄化、有害物質除去に利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ臭素化有機化合物を分解する能力を有する微生物、並びにその微生物を使用する有機化合物分解方法及び浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ臭素化有機化合物の1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン(以下、「HBCD」ともいう)は、主にポリスチレン樹脂やラテックス、カーテン、及びカーペットなどの繊維に添加される環状脂肪族系の難燃剤である。製品のHBCDにはα、β、γ体の異性体が混在しているが、その主要成分はγ体であり、約90%を占める。HBCDの生産量は全世界で約20,000t/年である。難燃剤全体に占めるHBCDの割合は低く10%程度であるが、化学的には安定であるので環境中に残留しやすい。その上、脂溶性であることから生体内に取り込まれ蓄積する性質を持つ。人体への影響は不明であるが魚毒性が高く、第一種監視化学物質に認定されている。しかし、現段階では、適当な代替品はなく生産量は伸びており、低コストのHBCD処理方法が求められている。
【0003】
また、同じくポリ臭素化有機化合物の2,4,6−トリブロモフェノール(以下、「TBP」ともいう)はプラスチックポリマーや電子基盤、ケーブルなどの製造過程において反応型難燃剤として使用されるほか、製材時において防腐剤としても使用されている。TBPは化学的に難分解性で環境中に残留しやすい。生体内に取り込まれると蓄積する性質をもち、魚類や藻類などの水系生物に対し高い毒性を示す。現在人体への影響は確認されていないが人の血清において検出される芳香族ハロゲン100種のうち最も主要な化合物の1つである。インビトロではチロイドホルモン輸送タンパクに競合的に結合し、また神経細胞を分化誘導するなどの活性が示されている。現在難燃剤の需要は全世界で大きな市場(100万トン/年)を持ち、その中でも臭素系難燃剤の使用量が最も多く、全体の約40%を占めている。そのうちTBPの使用量は全臭素系難燃剤の10%弱である。臭素系難燃剤の生産量は今なお伸びており、現在生産と使用が規制されている塩素系難燃剤とは対照的である。このため今後も工業排水などから環境中に漏出し河川におけるTBP汚染が懸念され、省エネルギー型の浄化システムを確立することが求められている。
【0004】
同じくポリ臭素化有機化合物のテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)は、臭素系難燃剤としては世界で最も多く生産され、需要量は臭素系難燃剤全体の約50%を占めている。TBBPAは、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、エポキシ、ポリカーボネートの各樹脂、耐衝撃性ポリスチレンフェノール樹脂、接着剤などとして、反応性あるいは添加難燃剤として用いられる。一方で化学工場が隣接する河川の汚泥などにおいてTBBPAが蓄積していることが確認されており、また水系の藻類や魚類に対し、高い急性毒性を示す。現在までヒトへの生物濃縮性や毒性は観察されていないが、インビトロではチロキシン結合タンパク質に結合し、内分泌系に影響を及ぼす事が懸念されている。したがってTBBPAの汚染の拡大を防ぐと共に、増え続ける廃プラスチック中のTBBPAを処理するシステムを確立する技術の開発が求められている。
【0005】
ハロゲン化有機化合物などの化合物については、それらを微生物で分解することにより土壌や海水などの環境を浄化する方法は知られている(特許文献1〜4)。
一方、ポリ臭素化有機化合物については、例えば、HBCDの微生物分解が報告されているが、その分解メカニズムは好気的、嫌気的条件ともに不明であり、しかも極低濃度でのHBCDの微生物分解しか測定されておらず、その上堆積物などを用いての分解を調べただけで、分解菌そのものを単離していない(非特許文献1)。
他のポリ臭素化有機化合物の分解についても、河川堆積物においてTBBPAは嫌気的に脱臭素化されてビスフェノールAになり、続いて好気的に分解されて無機化されること(非特許文献2)、河口堆積物においてTBBPAは嫌気的に脱臭素化されてビスフェノールAとなること(非特許文献3)が、それぞれ報告されているが、分解菌そのものは単離されていない。
【特許文献1】特開平9−149786号公報
【特許文献2】特開平8−140665号公報
【特許文献3】特開平10−52259号公報
【特許文献4】特表2001−507567号公報
【非特許文献1】J. W. Davis, S. Gonsior, G. Marty, and J. Ariano: The transformation of hexabromocyclododecane in aerobic and anaerobic soil and aquatic sediments, Water Research, vol. 39, page 1075-1084, 2005.
【非特許文献2】James W. Voordeckers, Donna E. Fennell, Kristi Jones, Max M. Haggbom: Anaerobic Biotransformation of Tetratbromobisphenol A, Tetrachlorobisphenol A, and Bisphenol A in Estuarine Sediments, Environ. Sci. Technol., vol. 36, page 696-701, 2002.
【非特許文献3】Zeev Ronen, Aharon Abeliovich: Anaerobic-Aerobic Process for Microbial Degradation of Tetrabromobisphenol A, Applied and Environmental Microbiology. vol. 66, no. 6, page 2372-2377, 2000.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリ臭素化有機化合物分解能を有する微生物、ならびにその微生物を使用する有機化合物分解方法及び浄化システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、土壌及び海水からポリ臭素化有機化合物分解能を有する微生物を単離し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、配列番号1〜17よりなる群から選択される配列の一つと95%以上の相同性を示す16SrDNAの部分塩基配列を有する微生物であって、ポリ臭素化有機化合物を分解する能力を有する微生物、ならびにその微生物を使用した有機化合物分解方法及び浄化システムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の微生物は、HBCD、TBP、及び/又はTBBPAを資化する能力を有し、環境中に存在する有機化合物、特にHBCD、とりわけα−及びγ−HBCD、TBP、及び/又はTBBPAなどのポリ臭素化有機化合物を資化又は分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の微生物としては、配列番号1〜17よりなる群から選択される配列の一つと95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは100%の相同性を示す16SrDNAの部分塩基配列を有する、HBCD、TBP、及び/又はTBBPAを分解する能力を有する微生物であれば特に制限されない。あるいは、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)種などのシュードモナス属(Pseudomonas)、ステノトロフォモナス属(Stenotrophomonas)、又はロドコッカス属(Rhodococcus)に属する、HBCD、TBP、及び/又はTBBPAを分解する能力を有する微生物であれば特に制限されない。
例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許寄微生物寄託センターに寄託された、下表64、65、及び66に示す微生物が挙げられる。
ハロゲン化脂環式炭化水素及び/又はハロゲン化芳香族炭化水素、特にポリ臭素化有機化合物の分解能に優れている点から、シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-180菌株、シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-181菌株、オクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)NITE P-204菌株、及びシュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-311菌株が好ましい。
上記微生物の単離方法及び分類学的特性は実施例に具体的に記載する。
【0010】
上記微生物を自然に又は人工的手段によって変異させて得た変異株も、HBCD、TBP、及び/又はTBBPA分解能を有する限り、本発明に適用できることは明らかなので、このような変異株又はそれを使用した分解処理方法は本発明の範囲内に包含される。
【0011】
本発明の微生物は、常用の炭素源及び窒素源の存在下、必要によりさらに無機塩類やビタミン類等の微量要素を含有する培地中で培養することができる。炭素源としては、本発明の微生物が好んで資化する炭水化物、特にグルコースが好ましいが、これらに限定されず、例えばマルトース、フラクトースなども使用可能である。培地中の炭素源の濃度は、炭素源の種類により異なるが、好ましくは、例えば1〜10g/Lである。窒素源としては、有機窒素源、例えば酵母エキス、ペプトン、肉エキス、等を使用することができ、無機窒素源としては、アンモニウム塩、硝酸塩、等を使用することができる。窒素源の濃度はその種類により異なるが、好ましくは1〜5g/Lである。無機塩類としてはカリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄(II)イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン等の金属イオンと、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の陰イオンとから成る塩類が好ましい。
上記培養における温度条件は、通常微生物の生育温度の範囲、好ましくはその最適生育温度に設定するのが好ましい。例えば、20〜30℃、好ましくは28℃に設定することができる。培地のpHは、通常使用される微生物が生育できるpHの範囲、好ましくはその最適pHに設定する。通常pH6.5〜7.5の範囲に設定すればよい。培養時間は、栄養源の量や種類により異なるが、通常1日、好ましくは2〜3日である。
また、培養は通常好気的に行われ、例えば振とう培養、あるいは大規模の培養においては、通気・撹拌培養が好ましい。
【0012】
本発明の微生物はHBCD、TBP、又はTBBPAを分解する能力を有する。これはHBCD、TBP、又はTBBPAを資化又は分解して減少させさえすればよく、減少率の程度は問わないが、例えば、実施例に記載されたHBCD、TBP、又はTBBPAの分解能の測定方法に従い、×1/4LB液体培地中28℃で6日間培養して、γ−HBCD、TBP、又はTBBPAを20%以上、特に60%以上、とりわけ70%以上分解するのが好ましい。
【0013】
本発明の微生物は、有機化合物、特に排水、廃液、河川、湖沼、海水、地下水、及び土壌などの環境に含まれている有機化合物の分解に使用することができる。
上記有機化合物として、鎖状アルカンなどの鎖状炭化水素、環状アルカンなどの脂環式炭化水素、及び芳香族化合物などが例示され、これらは場合によりハロゲンなどで一置換又は多置換されたモノ又はポリハロゲン化有機化合物であってもよく、例えば、モノ及びポリハロゲン化鎖状炭化水素、モノ及びポリハロゲン化脂環式炭化水素、ならびにモノ及びポリハロゲン化芳香族炭化水素などが挙げられる。
上記鎖状アルカンとしては、ドデカン及びオクタンなどの炭素数8〜12の直鎖状又は分枝鎖状アルカンが例示され、これらはカルボキシル基などの置換基によって場合により置換されていてもよく、ドデカンジカルボン酸が例示される。
上記環状アルカンとして、シクロドデカン及びシクロオクタンなどの8〜12員環のシクロアルカンが例示され、これらはカルボニル基又はヒドロキシ基などの置換基によって場合により置換されていてもよく、シクロドデカノン及びシクロドデカノールなどが例示される。
上記芳香族化合物として、安息香酸及びフェノールなどが例示される。
上記モノ及びポリハロゲン化鎖状炭化水素としては、炭素数8〜12の直鎖状又は分枝鎖状のモノ及びポリハロゲン化アルカンが例示される。例えば、ブロモドデカン、特にジブロモドデカン、とりわけ1,12−ジブロモドデカンが挙げられる。
上記モノ及びポリハロゲン化脂環式炭化水素として、8〜12員環のモノ及びポリハロゲン化シクロアルカンが例示され、例えば、ハロゲン化シクロドテカンである。より具体的には、ブロモ化シクロオクタン及びブロモ化シクロドテカン、例えばテトラブロモシクロオクタン及びヘキサブロモシクロドデカン、特にHBCD、とりわけα−及びγ−HBCDである。
上記モノ及びポリハロゲン化芳香族炭化水素として、モノ又はポリハロゲン化フェノールが例示され、例えば、モノブロモフェノール、例えば4−ブロモフェノール;ジブロモフェノール、例えば2,6−ジブロモフェノール;トリブロモフェノール、例えば2,4,6−トリブロモフェノール(TBP);ブロモビスフェノール、例えばテトラブロモビスフェノール、特にテトラブロモビスフェノールA(TBBPA);ならびにモノ又はポリクロロフェノール、特にトリクロロフェノール、とりわけ2,4,6−トリクロロフェノールなどが挙げられる。
本発明の微生物は、上記の有機化合物の中でモノ又はポリ臭素化有機化合物、特にポリ臭素化有機化合物の分解に有用である。このようなモノ及びポリ臭素化有機化合物として、上記の有機化合物中のモノ及びポリ臭素化鎖状炭化水素、モノ及びポリ臭素化脂環式炭化水素、ならびにモノ及びポリ臭素化芳香族炭化水素などが例示される。
【0014】
本発明では、本発明のいずれの微生物を使用しても、上記のポリ臭素化有機化合物を分解できるが、良好な分解が得られる点から、好適な組み合わせとしては、シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-180菌株を使用したγ−HBCDの分解、オクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)NITE P-204菌株を使用したTBPの分解、及びシュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-311菌株を使用したTBBPAの分解が例示される。
【0015】
上記の有機化合物の分解処理は、本発明の微生物と分解処理すべき有機化合物とを接触させて行うことができる。例えば、本発明の微生物を上記環境中に添加して行うか、あるいは本発明の微生物を用いる浄化システムに上記排水や廃液、土壌などを導入して行うことができる。
上記微生物は、培養液の形態で使用してもよく、あるいは培養液から分離した菌体(細胞)として、又は菌体処理物として使用してもよい。菌体処理物とは、菌体を加工したものをいい、菌体破砕抽出物、菌体の凍結乾燥物若しくはスプレードライ物、それらをペレット状に固めた物、又は菌体を多孔質担体に担持したものなどが例示される。あるいは、本発明の微生物を含む土壌、スラッジ(汚泥)、コンポスト、又は土壌改良剤として使用してもよい。
【0016】
本発明の微生物を用いての上記の有機化合物の分解は、例えば、前記した本発明の微生物の生育条件下で行うのが好ましい。すなわち、本発明の微生物の増殖を促進させるために、水や前記の培養条件で示した微生物の増殖を補助する無機栄養塩類(窒素源、リン源など)、ビタミン類、炭素源などを同時に添加して好気条件下で培養することが好ましい。特に、本発明では、HBCD、TBP、及び/又はTBBPAを良好に分解できる観点から、LB培地にて培養するのが好ましい。
有機化合物の分解において、本発明の微生物は、HBCD、TBP、及び/又はTBBPA分解能、処理すべき有機化合物の量や種類などに応じて、1菌株のみを使用してもよいし、2菌株以上併用してもよい。
菌体(細胞)の添加量は、使用する微生物の種類及びそのHBCD、TBP、及び/又はTBBPA分解能、処理すべき有機化合物の量や種類などにより異なるが、処理すべき溶液又は土壌などの量を基準にして106〜109細胞/g、好ましくは106〜108細胞/gである。
処理すべき有機化合物の溶解度を高めるため有機溶媒(ベンゼン、アセトン、ヘキサンなど)を添加してもよい。
処理に要する時間は、使用する微生物の種類、そのHBCD、TBP、及び/又はTBBPA分解能、及び添加量、処理すべき有機化合物の量や種類などにより異なるが、1〜10日間、好ましくは1〜6日間である。
【0017】
上記有機化合物の分解を本発明の微生物を用いる浄化システムにおいて行うことができる。
この浄化システムは、微生物を使用する慣用の環境浄化システムでよい。例えば、処理すべき排水、廃液、河川水、湖沼水、海水、地下水、又は土壌などを、本発明の微生物が存在する処理槽に投入し、そこにおいてこれら廃液などの有機化合物を分解して浄化し、次いでこの浄化された廃液などを外部に排泄するようなシステムである。
【0018】
前述した本発明の微生物は、廃液などの環境中やプラスチックなどの製品中のHBCD、TBP、又はTBBPAなどの臭素系難燃剤を資化又は分解して、これらを資源化合物などとして有用な有機酸、例えばコハク酸、ピルビン酸などに変換することができる。
すなわち、本発明は、本発明の微生物を用いる、HBCD、TBP、又はTBBPAなどの臭素系難燃剤を有機酸に変換する方法及びその方法を使用した資源化合物変換システムにも関する。
【実施例】
【0019】
1.菌の単離
(1)HBCD資化性菌の単離
土壌又は海水からサンプルを採取し、集積培養を行ってHBCD資化性菌を単離した。
先ず、100ml容三角フラスコに×10PA(表1)を1ml、H2Oを8mlそれぞれ加えオートクレーブ(120℃,20分)をした。室温程度まで冷ました後にフィルター濾過した×10MS(表1)を1ml、炭素源としてα−HBCD又はγ−HBCDを10mgそれぞれ加えた。これをPAS集積培養用液体培地として、そこに上記サンプルを植菌して28℃、150rpmで培養した。
14日間ごとに新たなPAS集積培養用液体培地に100μlを植え継ぐことによってサンプル由来の炭素源が希釈され、その結果、α−HBCD又はγ−HBCDを分解する微生物を単離することが出来る。この作業を9〜10回程度行ってから、寒天培地(表1)に塗布し30℃で7日間培養して菌を単離した。
また、弱アルカリ性条件下でも集積培養を行った。PAS集積培養用液体培地に10%Na2CO3を1ml加えpH9.5にし、上記と同様に集積培養を行い(但し、炭素源としてγ−HBCDを使用した)、菌を単離した。
その結果、γ−HBCDを炭素源とした集積培地から6株(それぞれHB09、HB01、HB10、HB11、HB02、HB12株と名付けた)、α−HBCDを炭素源とした集積培地から6株(それぞれHB03、HB04、HB05、HB06、HB07、HB08株と名付けた)、アルカリ条件下(炭素源としてγ−HBCDを使用)の集積培地から1株(HB13株と名付けた)の合計13株のHBCD資化性菌を得た。
【0020】
【表1】
【0021】
(2)TBP資化性菌の単離
土壌からサンプルを採取し、集積培養を行ってTBP資化性菌を単離した。
先ず、100ml容三角フラスコに×10PA(表1)を1ml、H2Oを8mlそれぞれ加えオートクレーブ(120℃,20分)をした。室温程度まで冷ました後にフィルター濾過した×10MS(表1)を1ml、炭素源としてTBPを10mg加えた。これをPAS集積培養用液体培地として、そこに上記サンプルを植菌して28℃、150rpmで培養した。
14日間ごとに新たなPAS集積培養用液体培地に100μlを植え継ぐことによってサンプル由来の炭素源が希釈され、その結果、TBPを分解する微生物を単離することが出来る。この作業を9〜10回程度行ってから、寒天培地(表1、但し、1Lに100mM HBCD/DMSOを0.1ml添加する代わり10mM TBP/DMSOを1ml添加した)に塗布し30℃で7日間培養して菌を単離した。
その結果、グラム陰性を示す桿菌6株(それぞれTB01〜TB07株と名付けた)の計7株のTBP資化性菌を得た。
【0022】
(3)TBBPA資化性菌の単離
土壌又は海水からサンプルを採取し、集積培養を行ってTBBPA資化性菌を単離した。
先ず、100ml容三角フラスコに×10PA(表1)を1ml、H2Oを8mlそれぞれ加えオートクレーブ(120℃,20分)をした。室温程度まで冷ました後にフィルター濾過した×10MS(表1)を1ml、炭素源としてTBBPAを10mg加えた。これをPAS集積培養用液体培地として、そこに上記サンプルを植菌して28℃、150rpmで培養した。
14日間ごとに新たなPAS集積培養用液体培地に100μlを植え継ぐことによってサンプル由来の炭素源が希釈され、その結果、TBBPAを分解する微生物を単離することが出来る。この作業を9〜10回程度行ってから、寒天培地(表1、但し、1Lに100mM HBCD/DMSOを0.1ml添加する代わり10mM TBBPA/DMSOを1ml添加した)に塗布し30℃で7日間培養して菌を単離した。
その結果、1株(TA01株と名付けた)のTBBPA資化性菌を得た。
【0023】
2.菌学的性質
上記単離したHBCD、TBP、及びTBBPA資化性菌の表現形質による菌学的性質は以下の通りである。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
【表6】
【0029】
【表7】
【0030】
【表8】
【0031】
【表9】
【0032】
【表10】
【0033】
3.16SrDNAの塩基配列分析
(1)菌体からのDNA抽出
Applied BiosystemsのPrep Man Ultra Reagentを使用した。
前記単離したHBCD、TBP、及びTBBPA資化性菌の菌体プレートから数個のコロニーを100μlのPrep Man Ultra Reagentに懸濁し、100℃で10分間インキュベートした。懸濁液を13,000rpm、5分間遠心し、得られた上清をDNA溶液として用いた。
(2)16SrDNA領域の遺伝子増幅
Applied BiosystemsのMicroSeq(登録商標)500 16S rDNA Bacterial Identification Kitを使用した。
<PCR反応>
上記3.(1)で調製したDNA溶液の濃度を測定した後、DNA 20ngを使用してMicroSeq(登録商標)のPCR Master Mixにて以下の条件でPCR反応を行った。
【0034】
【表11】
【0035】
(3)シーケンス解析
上記反応産物を精製後、MicroSeq(登録商標)を使用してシーケンス反応を実施、ABI Prism(登録商標)3100 Genetic Analyzerを用いて16SrDNAの上流領域約500bp(490bp以上)の塩基配列を決定した。シーケンス反応は各サンプルFW、RVの両方向から実施し、得られた結果のアセンブルを行い各検体より得られた16SrDNA増幅産物の塩基配列を決定した(表12〜28)。なお、塩基配列は、5’末端から3’末端方向に、左から右へと記載した。また、塩基は一文字記号で表記した。
HB03及びHB09株;HB04、HB01、及びHB07株;ならびにHB06及びHB11株は、ほぼ同様の塩基配列を有することが認められた。HB03及びHB09株ならびにHB04、HB01、及びHB07株については100%一致し、HB06及びHB11株についてはHB06株において不特定塩基がHB11株より二塩基多く含まれているが、他は完全に一致した。
また、HB05及びHB02株はほぼ同様の塩基配列を有することが認められた。HB13、HB12、HB10、及びHB08株はそれぞれ異なる塩基配列を示した。
【0036】
【表12】
【0037】
【表13】
【0038】
【表14】
【0039】
【表15】
【0040】
【表16】
【0041】
【表17】
【0042】
【表18】
【0043】
【表19】
【0044】
【表20】
【0045】
【表21】
【0046】
【表22】
【0047】
【表23】
【0048】
【表24】
【0049】
【表25】
【0050】
【表26】
【0051】
【表27】
【0052】
【表28】
【0053】
上記配列表で、部分的にピークの重複した不特定塩基は「n」と表記した。もっとも、「n」のいくつかは、下表29のとおり塩基が特定された。
【0054】
【表29】
【0055】
4.菌の分類
(1)16SrDNA塩基配列のデーターベースによる相同性検索
各HBCD、TBP、及びTBBPA資化性菌の上記16SrDNAの塩基配列を用いて、NCBIホームページ(HBCD及びTBP資化性菌については2005年11月25日現在、TBBPA資化性菌については2006年2月10日現在)においてBLASTによる相同性検索を行った(URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。各菌株の検索結果を表30〜63に示す。
【0056】
【表30】
【0057】
【表31】
【0058】
【表32】
【0059】
【表33】
【0060】
【表34】
【0061】
【表35】
【0062】
【表36】
【0063】
【表37】
【0064】
【表38】
【0065】
【表39】
【0066】
【表40】
【0067】
【表41】
【0068】
【表42】
【0069】
【表43】
【0070】
【表44】
【0071】
【表45】
【0072】
【表46】
【0073】
【表47】
【0074】
【表48】
【0075】
【表49】
【0076】
【表50】
【0077】
【表51】
【0078】
【表52】
【0079】
【表53】
【0080】
【表54】
【0081】
【表55】
【0082】
【表56】
【0083】
【表57】
【0084】
【表58】
【0085】
【表59】
【0086】
【表60】
【0087】
【表61】
【0088】
【表62】
【0089】
【表63】
【0090】
上記のBLASTによる相同性検索の結果を以下に示す。
HB01株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.6%であった。HB02株は、Pseudomonas fluorescensと最も高い相同性を示し、その相同性は98.8%であった。HB03株は、Pseudomonas citronellolisと最も高い相同性を示し、その相同性は98.1%であった。HB04株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.8%であった。HB05株は、Pseudomonas fluorescensと最も高い相同性を示し、その相同性は98.4%であった。HB06株は、Pseudomonas citronellolisと最も高い相同性を示し、その相同性は98.9%であった。HB07株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.8%であった。HB08株は、Stenotrophomonas maltrophiliaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.2%であった。HB09株は、Pseudomonas citronellolisと最も高い相同性を示し、その相同性は97.9%であった。HB10株は、Stenotrophomonas rhizophilaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.8%であった。HB11株は、Pseudomonas citronellolisと最も高い相同性を示し、その相同性は99.6%であった。HB12株は、Pseudomonas alcaligenesと最も高い相同性を示し、その相同性は99.0%であった。HB13株は、Rhodococcus erythropolisと最も高い相同性を示し、その相同性は99.6%であった。TB01株は、Ochrobactrum triticiと最も高い相同性を示し、その相同性は100%であった。TB02株は、Burkholderia fungorumと最も高い相同性を示し、その相同性は99.4%であった。TB03株は、Pseudomonas nitroredencesと最も高い相同性を示し、その相同性は99.6%であった。TB04株は、Achromobacter xylosoxidansと最も高い相同性を示し、その相同性は99.4%であった。TB05株は、Pseudomonas veroniiと最も高い相同性を示し、その相同性は98.9%であった。TB06株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.2%であった。TB07株は、Pseudomonas plecoglossicida並びにPseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.2%であった。TA01株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.0%であった。
【0091】
(2)分類・同定の結果
前記の菌株の分類学的性質に基づき、Bergey's Manual of Systemic Bacteriology, Vol.1又はVol.2, N.R. Krieg, J. G. Holt (ed), Williams & Wilkins, Baltimore (1984)及びBergey's Manual of Determinative Bacteriology (9th ed), J. G. Holt, N.R. Krieg, P.H.A. Sneath, J. T. Staley, S. T. Williams (ed), Williams & Wilkins, Baltimore (1994)を参考に分類・同定を行った結果を以下に示す。
HB01株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB02株は、Pseudomonas fluorescensと同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB03株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB04株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB05株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB06株は、本株はPseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB07株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB08株は、Stenotrophomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもStenotrophomonas属であることが示された。
HB09株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB10株は、本株はStenotrophomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもStenotrophomonas属であることが示された。
HB11株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB12株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB13株は、Rhodococcus属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもRhodococcus属であることが示された。
TB01株は、Ochrobactrum属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもOchrobactrum属であることが示された。
TB02株は、Burkholderia属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもBurkholderia属であることが示された。
TB03株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
TB04株は、Achromobacter属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもAchromobacter属であることが示された。
TB05株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
TB06株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
TB07株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
TA01株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
上記の各菌株の分類等を以下に示す(表64、65、及び66)。
【0092】
【表64】
【0093】
【表65】
【0094】
【表66】
【0095】
HB01株及びTB01株について、上記の相同性の結果に基づいて、MicroSeqTM Analysis software(Applied Biosystems)を用いて系統樹を作成した(図15、16)。分子系統樹の推定は近接結合法を用い、樹型の妥当性を示すブートストラップは1000回発生させた。
【0096】
5.菌の分解性の検討
HBCD、TBP、TBBPA、及びそれらの類縁物資を基質とした生育テスト
集積培養で得られた上記各資化性菌の性質を調べるため生育テストを試みた。HBCD、TBP、TBBPA、又はこれらに構造式が類縁の化合物を基質としてPAS寒天培地に加えて培養し、各資化性菌の生育を調べた。本実験で用いた化合物を表67に、結果を表68及び69に示した。
なお、+++:大変良く資化する(寒天培地上で大きなコロニーを形成する)、++:良く資化する(寒天培地上で直径1〜2mm程度のコロニーを形成する)、+:資化する(寒天培地上で小さなコロニーを形成する)、−:資化しない、である。
【0097】
【表67】
【0098】
【表68】
【0099】
【表69】
【0100】
HBCD、TBP、及びTBBPAの分解能の測定
(1)HBCDの分析方法
100ml容三角フラスコに×1/4LB液体培地(表70)を10ml加え、DMSOに溶解させた100mMγ−HBCDを100μl添加した。その培地に上記単離した資化性菌の生理食塩水懸濁液100μl(菌体数にして約105〜106個/ml)を植菌して、0日目から5又は7日目まで、28℃、150rpmで培養を行った。一日ごとにOD600とpHを測定するとともにγ−HBCDを抽出しその濃度を測定した。
休止菌体反応は以下のように行った。上記×1/4LB培地で培養した菌体を遠心分離(3,000×g、5分)によって回収し、カリウムリン酸バッファー(KPB;50mM、pH7.0)で3回洗浄した後、0D600=1.0となるようにKPBに懸濁した。100ml容三角フラスコに菌体液10mlを加え、さらに100mM γ−HBCD100μlを添加して、28℃、150rpmで反応させた。
抽出方法は以下のとおりである。先ず上記培養液又は菌体反応液を遠心管に移しジエチルエーテル10mlを加えボルテックスミキサーで1分間撹拌した後、遠心分離(2,000×g、5分)し上層を三角フラスコに移した。無水硫酸ナトリウムを適量入れ脱水して濾過し、2.5mlをバイアル瓶に移しロータリーエバポレーターで乾固した。バイアル瓶にDMSOを1ml加えてγ−HBCDを溶かし、MeOHで100倍に希釈した。続いてLC−MS(Waters Quattro Micro)でγ−HBCD量を分析した(表70)。
【0101】
【表70】
【0102】
(2)TBPの分析方法
100ml容三角フラスコに×1/4LB液体培地(表70)を10ml加え、DMSOに溶解させた10mMTBPを100μl添加した。その培地に上記単離した資化性菌の生理食塩水懸濁液100μl(菌体数にして約105〜106個/ml)を植菌して、0日目から5又は6日目まで、28℃、150rpmで培養を行った。一日ごとにOD600とpHを測定するとともにTBPを抽出しその濃度を測定した。
休止菌体反応は以下のように行った。上記×1/4LB培地で培養した菌体を遠心分離(3,000×g、5分)によって回収し、カリウムリン酸バッファー(KPB;50mM、pH7.0)で3回洗浄した後、0D600=0.5となるようにKPBに懸濁した。100ml容三角フラスコに菌体液10mlを加え、さらに10mM TBP100μlを添加して、28℃、150rpmで反応させた。
抽出方法は以下のとおりである。先ず上記培養液又は菌体反応液を遠心管に移しジエチルエーテル10mlを加えボルテックスミキサーで1分間撹拌した後、遠心分離(3,000×g、5分)し上層を三角フラスコに移した。無水硫酸ナトリウムを適量入れ脱水して濾過し、2.5mlをバイアル瓶に移しロータリーエバポレーターで乾固した。バイアル瓶にMeOHを1ml加えてTBPを溶かした。続いてHPLC(Hitachi L-7100)でTBP量を分析した(表71)。
【0103】
【表71】
【0104】
(3)TBBPAの分析方法
100ml容三角フラスコに×1/4LB液体培地(表70)を10ml加え、DMSOに溶解させた10mMTBBPAを100μl添加した。その培地に上記単離した資化性菌の生理食塩水懸濁液100μl(菌体数にして約105〜106個/ml)を植菌して、0日目から5〜8日目まで、28℃、150rpmで培養を行った。一日ごとにOD600とpHを測定するとともにTBBPAを抽出しその濃度を測定した。
休止菌体反応は以下のように行った。上記×1/4LB培地で培養した菌体を遠心分離(3,000×g、5分)によって回収し、カリウムリン酸バッファー(KPB;50mM、pH7.0)で3回洗浄した後、0D600=0.5となるようにKPBに懸濁した。100ml容三角フラスコに菌体液10mlを加え、さらに10mM TBBPA100μlを添加して、28℃、150rpmで反応させた。
抽出方法は以下のとおりである。先ず上記培養液又は菌体反応液を遠心管に移しジエチルエーテル10mlを加えボルテックスミキサーで1分間撹拌した後、遠心分離(3,000×g、5分)し上層を三角フラスコに移した。無水硫酸ナトリウムを適量入れ脱水して濾過し、2.5mlをバイアル瓶に移しロータリーエバポレーターで乾固した。バイアル瓶にMeOHを1ml加えてTBBPAを溶かした。続いてHPLC(Hitachi L-7100)でTBP量を分析した(表71)。
【0105】
(4)HBCDの定量系の確立
γ−HBCDをMSで測定した結果、m/z 640.4付近に5つの主要なフラグメントが認められた(図1)。もっとも主要な640.4のイオンをLC−MSで分析し、11.30分付近にピークを検出することが出来た(図2)。検出限界は5ppmであった。γ−HBCDの検量線を作成した(図3)。
(5)TBPの定量系の確立
表71のHPLC分析条件で、溶出時間約8.6分にTBPのピークが検出された(図4)。そのTBPの検量線を図5に示す。
(6)TBBPAの定量系の確立
表71の分析条件で、溶出時間12.2分にTBBPAのピークが検出された(図18)。そのTBBPAの検量線を図19に示す。
【0106】
(7)HBCD資化性菌におけるHBCD分解(1)
HB01、HB02、HB08、HB09、HB12株のγ−HBCDの分解能を、上記のHBCD分析方法に従い調べた。6日間の培養において、HB01株では73.9%、HB02株では60%、HB08及びHB09株では27.0%、HB12株では73.1%のγ−HBCD分解率が、それぞれ認められた。
(8)TBP資化性菌おけるTBP分解
TB01〜TB05株について、上記のTBP分析方法に従いTBPの分解能を調べた。5日間の培養において、TB05株では60%、特にTB01〜TB04株については各々100%のTBP分解率が認められた。
(9)TBBPA資化性菌おけるTBBPA分解
TA01株について、上記のTBBPA分析方法に従いTBBPAの分解能を調べた。5日間の培養において、約50%のTBBPA分解率が認められた(図14)。
【0107】
(10)HB01株の生育曲線とγ−HBCDの経時的分解
上記のHBCD分析方法に従いHB01株を培養したところ、菌の濃度は培地のpHと共に培養後2日目まで上昇し、以降プラトーに達した。一方、γ−HBCD濃度は培養後4日目まで減少を続け、約80%が分解された。
(11)TB01株の生育曲線とTBPの経時的分解(1)
上記のTBP分析方法に準じてTB01株を培養したところ、菌の濃度は培養後24時間から上昇し、対数増殖を示した。一方TBP濃度は培養後12時間から36時間にかけて減少し、100%分解された。
【0108】
(12)HB01株の休止菌体反応におけるγ−HBCDの分解(1)
上記のHBCD分析方法に従いHB01株の休止菌体反応によるγ−HBCDの分解を調べた。菌体濃度をOD600=1.0としたとき1mMγ−HBCDは4日目で63%分解された。
(13)TB01株の休止菌体反応におけるTBPの経時的分解(1)
上記のTBP分析方法に従いTB01株の休止菌体反応によるTBPの分解を調べた。菌体濃度をOD600=0.5としたとき100μMTBPは24時間で80%分解され、48時間で100%分解された。
【0109】
(14)HBCD資化性菌におけるHBCD分解(2)
HB01株のγ−HBCDの分解能に及ぼす培地の影響を、前記のHBCD分析方法に準じて調べた。但し、培地として×1/4LB液体培地(表70)、LB液体培地(ポリペプトン:10g、酵母エキス:5g、NaCl:5g、グルコース:1g、pH7.0)、及びPAS培地(表1の×10PA及び×10MSをそれぞれ1容量部加え、さらに水を8容量部加えて調製する、組成はK2HPO4:4.35g、KH2PO4:1.7g、NH4Cl:2.1g、MgSO4:0.2g、MnSO4:0.05g、FeSO4・7H2O:0.01g、CaCl2・2H2O:0.03g)を用いた。LB液体培地を使用したときに最もHBCD分解能が高まり、培養3日程度で約80%程度まで分解されることが認められた(図6)。
【0110】
(15)HBCD資化性菌におけるHBCD分解(3)
前記のHBCD分析方法に準じて、HB01株を植菌して、5日間培養後、ジエチルエーテル抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)によってγ―HBCDの残量を調べた。展開液としてヘキサン:酢酸エチル=4:1の混液を用いた。培養液中からγ−HBCDの消失が確認でき、また脂溶性の中間体の蓄積は認められなかった(図7)。
【0111】
(16)HB01株の休止菌体反応におけるγ−HBCDの分解(2)
前記のHBCD分析方法で示した菌体反応に準じた。すなわち、HB01株を培養し、得られた菌体を遠心分離(14,000×g、10分)によって回収し、KPBに懸濁した。この懸濁液にγ−HBCDを1mMの濃度になるように添加し、次いでグルコースを1mMの濃度になるように添加するか又は添加せずに、28℃、150rpmで反応させ、ジエチルエーテル抽出し、γ−HBCD量を分析した。その結果、γ−HBCDの分解は、グルコースの有無に関わらず認められるが、グルコースがあると分解が高まることが認められた(図8)。
【0112】
(17)HB01株の培養液上清及び菌体粗抽出物によるγ−HBCDの分解
前記のHBCDの分析方法に準じてHB01株を培養し、培養液120mlを遠心分離(14,400×g、10分)して上清を得、この上清を濾過して菌体を除去した。この得られたろ液にγ−HBCDを1mMの濃度になるように添加し、28℃、150rpmで、48時間反応させてから、前記のHBCDの分析方法に準じてジエチルエーテルで抽出し、γ−HBCD量を分析した。
同様に、前記のHBCDの分析方法に準じてHB01株を培養し、培養液60mlを遠心分離(12,000×g、10分)して菌体を回収し、KPBに懸濁した。この懸濁液を5分間ソニケーションにかけて菌体を破壊してから、そこにγ−HBCDを1mMの濃度になるように添加して、30℃で30分間反応させさせてから、前記のHBCDの分析方法に準じてジエチルエーテルで抽出し、γ−HBCD量を分析した。
その結果、培養液上清ではγ−HBCDの分解は認められなかったが、菌体粗抽出物ではγ−HBCDの分解は認められた(図9)。
【0113】
(18)HBCD資化性菌における工場廃水中のHBCD分解
HB01株による工場廃水中のHBCD分解を、前記のHBCDの分析方法に準じて調べた。但し、DMSOに溶解させた100mMγ−HBCDを100μl添加する代わりに、採取してきた工場廃水を5%になるように培地に添加した。その結果、工場廃水中のγ−HBCDの分解が認められた(図10)。
【0114】
(19)Pseudomonas putida KT2440におけるHBCD分解
Pseudomonas putida KT2440のγ−HBCDの分解能を、前記のHBCDの分析方法に従い調べた。5日間の培養により、γ−HBCDの分解が認められた(図11)。
【0115】
(20)TB01株の生育曲線とTBPの経時的分解(2)
前記のTBPの分析方法に準じてTB01株を培養したところ、菌の濃度は培養後24時間から上昇して対数増殖を示し、60時間後にプラトーに達した。一方、TBP濃度は培養後12時間から36時間にかけて減少し、100%分解された(図12)。
【0116】
(21)TB01株の休止菌体反応によるTBPの経時的分解(2)
前記のTBP分析方法に従いTB01株の休止菌体反応によるTBPの分解及び臭素イオンの発生を調べた。臭素イオン量はイオンクロマトグラフィー法で測定した。TBPの分解が進むに連れて、臭素イオン量が増加することが確認できた(図13)。
【0117】
(22)HB01株の工場廃水に対する馴化
100ml容三角フラスコにPAS培地を10ml加え、採取してきた工場廃水を10%になるように添加した。その培地に上記単離したHB01株及びHB02株の生理食塩水懸濁液100μl(菌体数にして約105〜106個/ml)をそれぞれ植菌して、2週間、28℃、150rpmで培養を行った。その後、この菌培養液100μlを、工場廃水を11%含むPAS培地に植菌して同様に2週間培養した。以下、同様にして、工場廃水を12%、13%、14%と増やしていったPAS培地に順に菌培養液を植え継いでいったところ、各培地にて菌の生育が観察できた。図17に13%のPAS培地で2週間培養した状態を示す。HB01株及びHB02株を培養させた培地の入ったフラスコは、植菌しなかったブランクのフラスコと比べて白濁しており、菌の生育が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の微生物は、排水、廃液、河川、湖沼、海水、地下水、及び土壌などの環境に含まれている有機化合物の分解処理に使用でき、これら環境の浄化又はこれら環境の汚染防止などに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】γ−HBCDのマススペクトルである。
【図2】γ−HBCDのLC−MSの液体クロマトグラムである。
【図3】γ−HBCDの検量線である。
【図4】TBPのHPLCの液体クロマトグラムである。
【図5】TBPの検量線である。
【図6】HB01株によるγ−HBCDの経時的分解を示す図である。
【図7】HB01株の培養液中のγ−HBCDの薄層クロマトグラムである。
【図8】HB01株の休止菌体反応によるγ−HBCDの分解を示す図である。Aはグルコース非存在下での、Bはグルコース存在下での分解をそれぞれ示す図である。
【図9】HB01株の培養液上清及び菌体粗抽出物によるγ−HBCDの分解を示す図である。Aは培養液上清による、Bは菌体抽出物による分解を、それぞれ示す図である。
【図10】HB01株による工場廃水中のγ−HBCDの分解を示す図である。
【図11】Pseudomonas putida KT2440によるγ−HBCDの分解を示す図である。
【図12】TB01株の生育曲線とTBPの経時的分解を示す図である。
【図13】TB01株の休止菌体反応によるTBPの経時的分解を示す図である。
【図14】TA01株におけるTBBPAの分解を示す図である。
【図15】HB01株の系統樹を示す図である。分岐点に示された点はブートストラップ信頼値である。
【図16】TB01株の系統樹を示す図である。分岐点に示された点はブートストラップ信頼値である。
【図17】HB01株を2週間培養した13%工場廃水含有PAS培地の状態を示す図である。
【図18】TBBPAのHPLCの液体クロマトグラムである。
【図19】TBBPAの検量線である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ臭素化有機化合物を分解する能力を有する微生物、並びにその微生物を使用する有機化合物分解方法及び浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ臭素化有機化合物の1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン(以下、「HBCD」ともいう)は、主にポリスチレン樹脂やラテックス、カーテン、及びカーペットなどの繊維に添加される環状脂肪族系の難燃剤である。製品のHBCDにはα、β、γ体の異性体が混在しているが、その主要成分はγ体であり、約90%を占める。HBCDの生産量は全世界で約20,000t/年である。難燃剤全体に占めるHBCDの割合は低く10%程度であるが、化学的には安定であるので環境中に残留しやすい。その上、脂溶性であることから生体内に取り込まれ蓄積する性質を持つ。人体への影響は不明であるが魚毒性が高く、第一種監視化学物質に認定されている。しかし、現段階では、適当な代替品はなく生産量は伸びており、低コストのHBCD処理方法が求められている。
【0003】
また、同じくポリ臭素化有機化合物の2,4,6−トリブロモフェノール(以下、「TBP」ともいう)はプラスチックポリマーや電子基盤、ケーブルなどの製造過程において反応型難燃剤として使用されるほか、製材時において防腐剤としても使用されている。TBPは化学的に難分解性で環境中に残留しやすい。生体内に取り込まれると蓄積する性質をもち、魚類や藻類などの水系生物に対し高い毒性を示す。現在人体への影響は確認されていないが人の血清において検出される芳香族ハロゲン100種のうち最も主要な化合物の1つである。インビトロではチロイドホルモン輸送タンパクに競合的に結合し、また神経細胞を分化誘導するなどの活性が示されている。現在難燃剤の需要は全世界で大きな市場(100万トン/年)を持ち、その中でも臭素系難燃剤の使用量が最も多く、全体の約40%を占めている。そのうちTBPの使用量は全臭素系難燃剤の10%弱である。臭素系難燃剤の生産量は今なお伸びており、現在生産と使用が規制されている塩素系難燃剤とは対照的である。このため今後も工業排水などから環境中に漏出し河川におけるTBP汚染が懸念され、省エネルギー型の浄化システムを確立することが求められている。
【0004】
同じくポリ臭素化有機化合物のテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)は、臭素系難燃剤としては世界で最も多く生産され、需要量は臭素系難燃剤全体の約50%を占めている。TBBPAは、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、エポキシ、ポリカーボネートの各樹脂、耐衝撃性ポリスチレンフェノール樹脂、接着剤などとして、反応性あるいは添加難燃剤として用いられる。一方で化学工場が隣接する河川の汚泥などにおいてTBBPAが蓄積していることが確認されており、また水系の藻類や魚類に対し、高い急性毒性を示す。現在までヒトへの生物濃縮性や毒性は観察されていないが、インビトロではチロキシン結合タンパク質に結合し、内分泌系に影響を及ぼす事が懸念されている。したがってTBBPAの汚染の拡大を防ぐと共に、増え続ける廃プラスチック中のTBBPAを処理するシステムを確立する技術の開発が求められている。
【0005】
ハロゲン化有機化合物などの化合物については、それらを微生物で分解することにより土壌や海水などの環境を浄化する方法は知られている(特許文献1〜4)。
一方、ポリ臭素化有機化合物については、例えば、HBCDの微生物分解が報告されているが、その分解メカニズムは好気的、嫌気的条件ともに不明であり、しかも極低濃度でのHBCDの微生物分解しか測定されておらず、その上堆積物などを用いての分解を調べただけで、分解菌そのものを単離していない(非特許文献1)。
他のポリ臭素化有機化合物の分解についても、河川堆積物においてTBBPAは嫌気的に脱臭素化されてビスフェノールAになり、続いて好気的に分解されて無機化されること(非特許文献2)、河口堆積物においてTBBPAは嫌気的に脱臭素化されてビスフェノールAとなること(非特許文献3)が、それぞれ報告されているが、分解菌そのものは単離されていない。
【特許文献1】特開平9−149786号公報
【特許文献2】特開平8−140665号公報
【特許文献3】特開平10−52259号公報
【特許文献4】特表2001−507567号公報
【非特許文献1】J. W. Davis, S. Gonsior, G. Marty, and J. Ariano: The transformation of hexabromocyclododecane in aerobic and anaerobic soil and aquatic sediments, Water Research, vol. 39, page 1075-1084, 2005.
【非特許文献2】James W. Voordeckers, Donna E. Fennell, Kristi Jones, Max M. Haggbom: Anaerobic Biotransformation of Tetratbromobisphenol A, Tetrachlorobisphenol A, and Bisphenol A in Estuarine Sediments, Environ. Sci. Technol., vol. 36, page 696-701, 2002.
【非特許文献3】Zeev Ronen, Aharon Abeliovich: Anaerobic-Aerobic Process for Microbial Degradation of Tetrabromobisphenol A, Applied and Environmental Microbiology. vol. 66, no. 6, page 2372-2377, 2000.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリ臭素化有機化合物分解能を有する微生物、ならびにその微生物を使用する有機化合物分解方法及び浄化システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、土壌及び海水からポリ臭素化有機化合物分解能を有する微生物を単離し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、配列番号1〜17よりなる群から選択される配列の一つと95%以上の相同性を示す16SrDNAの部分塩基配列を有する微生物であって、ポリ臭素化有機化合物を分解する能力を有する微生物、ならびにその微生物を使用した有機化合物分解方法及び浄化システムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の微生物は、HBCD、TBP、及び/又はTBBPAを資化する能力を有し、環境中に存在する有機化合物、特にHBCD、とりわけα−及びγ−HBCD、TBP、及び/又はTBBPAなどのポリ臭素化有機化合物を資化又は分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の微生物としては、配列番号1〜17よりなる群から選択される配列の一つと95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは100%の相同性を示す16SrDNAの部分塩基配列を有する、HBCD、TBP、及び/又はTBBPAを分解する能力を有する微生物であれば特に制限されない。あるいは、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)種などのシュードモナス属(Pseudomonas)、ステノトロフォモナス属(Stenotrophomonas)、又はロドコッカス属(Rhodococcus)に属する、HBCD、TBP、及び/又はTBBPAを分解する能力を有する微生物であれば特に制限されない。
例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許寄微生物寄託センターに寄託された、下表64、65、及び66に示す微生物が挙げられる。
ハロゲン化脂環式炭化水素及び/又はハロゲン化芳香族炭化水素、特にポリ臭素化有機化合物の分解能に優れている点から、シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-180菌株、シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-181菌株、オクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)NITE P-204菌株、及びシュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-311菌株が好ましい。
上記微生物の単離方法及び分類学的特性は実施例に具体的に記載する。
【0010】
上記微生物を自然に又は人工的手段によって変異させて得た変異株も、HBCD、TBP、及び/又はTBBPA分解能を有する限り、本発明に適用できることは明らかなので、このような変異株又はそれを使用した分解処理方法は本発明の範囲内に包含される。
【0011】
本発明の微生物は、常用の炭素源及び窒素源の存在下、必要によりさらに無機塩類やビタミン類等の微量要素を含有する培地中で培養することができる。炭素源としては、本発明の微生物が好んで資化する炭水化物、特にグルコースが好ましいが、これらに限定されず、例えばマルトース、フラクトースなども使用可能である。培地中の炭素源の濃度は、炭素源の種類により異なるが、好ましくは、例えば1〜10g/Lである。窒素源としては、有機窒素源、例えば酵母エキス、ペプトン、肉エキス、等を使用することができ、無機窒素源としては、アンモニウム塩、硝酸塩、等を使用することができる。窒素源の濃度はその種類により異なるが、好ましくは1〜5g/Lである。無機塩類としてはカリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄(II)イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン等の金属イオンと、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の陰イオンとから成る塩類が好ましい。
上記培養における温度条件は、通常微生物の生育温度の範囲、好ましくはその最適生育温度に設定するのが好ましい。例えば、20〜30℃、好ましくは28℃に設定することができる。培地のpHは、通常使用される微生物が生育できるpHの範囲、好ましくはその最適pHに設定する。通常pH6.5〜7.5の範囲に設定すればよい。培養時間は、栄養源の量や種類により異なるが、通常1日、好ましくは2〜3日である。
また、培養は通常好気的に行われ、例えば振とう培養、あるいは大規模の培養においては、通気・撹拌培養が好ましい。
【0012】
本発明の微生物はHBCD、TBP、又はTBBPAを分解する能力を有する。これはHBCD、TBP、又はTBBPAを資化又は分解して減少させさえすればよく、減少率の程度は問わないが、例えば、実施例に記載されたHBCD、TBP、又はTBBPAの分解能の測定方法に従い、×1/4LB液体培地中28℃で6日間培養して、γ−HBCD、TBP、又はTBBPAを20%以上、特に60%以上、とりわけ70%以上分解するのが好ましい。
【0013】
本発明の微生物は、有機化合物、特に排水、廃液、河川、湖沼、海水、地下水、及び土壌などの環境に含まれている有機化合物の分解に使用することができる。
上記有機化合物として、鎖状アルカンなどの鎖状炭化水素、環状アルカンなどの脂環式炭化水素、及び芳香族化合物などが例示され、これらは場合によりハロゲンなどで一置換又は多置換されたモノ又はポリハロゲン化有機化合物であってもよく、例えば、モノ及びポリハロゲン化鎖状炭化水素、モノ及びポリハロゲン化脂環式炭化水素、ならびにモノ及びポリハロゲン化芳香族炭化水素などが挙げられる。
上記鎖状アルカンとしては、ドデカン及びオクタンなどの炭素数8〜12の直鎖状又は分枝鎖状アルカンが例示され、これらはカルボキシル基などの置換基によって場合により置換されていてもよく、ドデカンジカルボン酸が例示される。
上記環状アルカンとして、シクロドデカン及びシクロオクタンなどの8〜12員環のシクロアルカンが例示され、これらはカルボニル基又はヒドロキシ基などの置換基によって場合により置換されていてもよく、シクロドデカノン及びシクロドデカノールなどが例示される。
上記芳香族化合物として、安息香酸及びフェノールなどが例示される。
上記モノ及びポリハロゲン化鎖状炭化水素としては、炭素数8〜12の直鎖状又は分枝鎖状のモノ及びポリハロゲン化アルカンが例示される。例えば、ブロモドデカン、特にジブロモドデカン、とりわけ1,12−ジブロモドデカンが挙げられる。
上記モノ及びポリハロゲン化脂環式炭化水素として、8〜12員環のモノ及びポリハロゲン化シクロアルカンが例示され、例えば、ハロゲン化シクロドテカンである。より具体的には、ブロモ化シクロオクタン及びブロモ化シクロドテカン、例えばテトラブロモシクロオクタン及びヘキサブロモシクロドデカン、特にHBCD、とりわけα−及びγ−HBCDである。
上記モノ及びポリハロゲン化芳香族炭化水素として、モノ又はポリハロゲン化フェノールが例示され、例えば、モノブロモフェノール、例えば4−ブロモフェノール;ジブロモフェノール、例えば2,6−ジブロモフェノール;トリブロモフェノール、例えば2,4,6−トリブロモフェノール(TBP);ブロモビスフェノール、例えばテトラブロモビスフェノール、特にテトラブロモビスフェノールA(TBBPA);ならびにモノ又はポリクロロフェノール、特にトリクロロフェノール、とりわけ2,4,6−トリクロロフェノールなどが挙げられる。
本発明の微生物は、上記の有機化合物の中でモノ又はポリ臭素化有機化合物、特にポリ臭素化有機化合物の分解に有用である。このようなモノ及びポリ臭素化有機化合物として、上記の有機化合物中のモノ及びポリ臭素化鎖状炭化水素、モノ及びポリ臭素化脂環式炭化水素、ならびにモノ及びポリ臭素化芳香族炭化水素などが例示される。
【0014】
本発明では、本発明のいずれの微生物を使用しても、上記のポリ臭素化有機化合物を分解できるが、良好な分解が得られる点から、好適な組み合わせとしては、シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-180菌株を使用したγ−HBCDの分解、オクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)NITE P-204菌株を使用したTBPの分解、及びシュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-311菌株を使用したTBBPAの分解が例示される。
【0015】
上記の有機化合物の分解処理は、本発明の微生物と分解処理すべき有機化合物とを接触させて行うことができる。例えば、本発明の微生物を上記環境中に添加して行うか、あるいは本発明の微生物を用いる浄化システムに上記排水や廃液、土壌などを導入して行うことができる。
上記微生物は、培養液の形態で使用してもよく、あるいは培養液から分離した菌体(細胞)として、又は菌体処理物として使用してもよい。菌体処理物とは、菌体を加工したものをいい、菌体破砕抽出物、菌体の凍結乾燥物若しくはスプレードライ物、それらをペレット状に固めた物、又は菌体を多孔質担体に担持したものなどが例示される。あるいは、本発明の微生物を含む土壌、スラッジ(汚泥)、コンポスト、又は土壌改良剤として使用してもよい。
【0016】
本発明の微生物を用いての上記の有機化合物の分解は、例えば、前記した本発明の微生物の生育条件下で行うのが好ましい。すなわち、本発明の微生物の増殖を促進させるために、水や前記の培養条件で示した微生物の増殖を補助する無機栄養塩類(窒素源、リン源など)、ビタミン類、炭素源などを同時に添加して好気条件下で培養することが好ましい。特に、本発明では、HBCD、TBP、及び/又はTBBPAを良好に分解できる観点から、LB培地にて培養するのが好ましい。
有機化合物の分解において、本発明の微生物は、HBCD、TBP、及び/又はTBBPA分解能、処理すべき有機化合物の量や種類などに応じて、1菌株のみを使用してもよいし、2菌株以上併用してもよい。
菌体(細胞)の添加量は、使用する微生物の種類及びそのHBCD、TBP、及び/又はTBBPA分解能、処理すべき有機化合物の量や種類などにより異なるが、処理すべき溶液又は土壌などの量を基準にして106〜109細胞/g、好ましくは106〜108細胞/gである。
処理すべき有機化合物の溶解度を高めるため有機溶媒(ベンゼン、アセトン、ヘキサンなど)を添加してもよい。
処理に要する時間は、使用する微生物の種類、そのHBCD、TBP、及び/又はTBBPA分解能、及び添加量、処理すべき有機化合物の量や種類などにより異なるが、1〜10日間、好ましくは1〜6日間である。
【0017】
上記有機化合物の分解を本発明の微生物を用いる浄化システムにおいて行うことができる。
この浄化システムは、微生物を使用する慣用の環境浄化システムでよい。例えば、処理すべき排水、廃液、河川水、湖沼水、海水、地下水、又は土壌などを、本発明の微生物が存在する処理槽に投入し、そこにおいてこれら廃液などの有機化合物を分解して浄化し、次いでこの浄化された廃液などを外部に排泄するようなシステムである。
【0018】
前述した本発明の微生物は、廃液などの環境中やプラスチックなどの製品中のHBCD、TBP、又はTBBPAなどの臭素系難燃剤を資化又は分解して、これらを資源化合物などとして有用な有機酸、例えばコハク酸、ピルビン酸などに変換することができる。
すなわち、本発明は、本発明の微生物を用いる、HBCD、TBP、又はTBBPAなどの臭素系難燃剤を有機酸に変換する方法及びその方法を使用した資源化合物変換システムにも関する。
【実施例】
【0019】
1.菌の単離
(1)HBCD資化性菌の単離
土壌又は海水からサンプルを採取し、集積培養を行ってHBCD資化性菌を単離した。
先ず、100ml容三角フラスコに×10PA(表1)を1ml、H2Oを8mlそれぞれ加えオートクレーブ(120℃,20分)をした。室温程度まで冷ました後にフィルター濾過した×10MS(表1)を1ml、炭素源としてα−HBCD又はγ−HBCDを10mgそれぞれ加えた。これをPAS集積培養用液体培地として、そこに上記サンプルを植菌して28℃、150rpmで培養した。
14日間ごとに新たなPAS集積培養用液体培地に100μlを植え継ぐことによってサンプル由来の炭素源が希釈され、その結果、α−HBCD又はγ−HBCDを分解する微生物を単離することが出来る。この作業を9〜10回程度行ってから、寒天培地(表1)に塗布し30℃で7日間培養して菌を単離した。
また、弱アルカリ性条件下でも集積培養を行った。PAS集積培養用液体培地に10%Na2CO3を1ml加えpH9.5にし、上記と同様に集積培養を行い(但し、炭素源としてγ−HBCDを使用した)、菌を単離した。
その結果、γ−HBCDを炭素源とした集積培地から6株(それぞれHB09、HB01、HB10、HB11、HB02、HB12株と名付けた)、α−HBCDを炭素源とした集積培地から6株(それぞれHB03、HB04、HB05、HB06、HB07、HB08株と名付けた)、アルカリ条件下(炭素源としてγ−HBCDを使用)の集積培地から1株(HB13株と名付けた)の合計13株のHBCD資化性菌を得た。
【0020】
【表1】
【0021】
(2)TBP資化性菌の単離
土壌からサンプルを採取し、集積培養を行ってTBP資化性菌を単離した。
先ず、100ml容三角フラスコに×10PA(表1)を1ml、H2Oを8mlそれぞれ加えオートクレーブ(120℃,20分)をした。室温程度まで冷ました後にフィルター濾過した×10MS(表1)を1ml、炭素源としてTBPを10mg加えた。これをPAS集積培養用液体培地として、そこに上記サンプルを植菌して28℃、150rpmで培養した。
14日間ごとに新たなPAS集積培養用液体培地に100μlを植え継ぐことによってサンプル由来の炭素源が希釈され、その結果、TBPを分解する微生物を単離することが出来る。この作業を9〜10回程度行ってから、寒天培地(表1、但し、1Lに100mM HBCD/DMSOを0.1ml添加する代わり10mM TBP/DMSOを1ml添加した)に塗布し30℃で7日間培養して菌を単離した。
その結果、グラム陰性を示す桿菌6株(それぞれTB01〜TB07株と名付けた)の計7株のTBP資化性菌を得た。
【0022】
(3)TBBPA資化性菌の単離
土壌又は海水からサンプルを採取し、集積培養を行ってTBBPA資化性菌を単離した。
先ず、100ml容三角フラスコに×10PA(表1)を1ml、H2Oを8mlそれぞれ加えオートクレーブ(120℃,20分)をした。室温程度まで冷ました後にフィルター濾過した×10MS(表1)を1ml、炭素源としてTBBPAを10mg加えた。これをPAS集積培養用液体培地として、そこに上記サンプルを植菌して28℃、150rpmで培養した。
14日間ごとに新たなPAS集積培養用液体培地に100μlを植え継ぐことによってサンプル由来の炭素源が希釈され、その結果、TBBPAを分解する微生物を単離することが出来る。この作業を9〜10回程度行ってから、寒天培地(表1、但し、1Lに100mM HBCD/DMSOを0.1ml添加する代わり10mM TBBPA/DMSOを1ml添加した)に塗布し30℃で7日間培養して菌を単離した。
その結果、1株(TA01株と名付けた)のTBBPA資化性菌を得た。
【0023】
2.菌学的性質
上記単離したHBCD、TBP、及びTBBPA資化性菌の表現形質による菌学的性質は以下の通りである。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
【表6】
【0029】
【表7】
【0030】
【表8】
【0031】
【表9】
【0032】
【表10】
【0033】
3.16SrDNAの塩基配列分析
(1)菌体からのDNA抽出
Applied BiosystemsのPrep Man Ultra Reagentを使用した。
前記単離したHBCD、TBP、及びTBBPA資化性菌の菌体プレートから数個のコロニーを100μlのPrep Man Ultra Reagentに懸濁し、100℃で10分間インキュベートした。懸濁液を13,000rpm、5分間遠心し、得られた上清をDNA溶液として用いた。
(2)16SrDNA領域の遺伝子増幅
Applied BiosystemsのMicroSeq(登録商標)500 16S rDNA Bacterial Identification Kitを使用した。
<PCR反応>
上記3.(1)で調製したDNA溶液の濃度を測定した後、DNA 20ngを使用してMicroSeq(登録商標)のPCR Master Mixにて以下の条件でPCR反応を行った。
【0034】
【表11】
【0035】
(3)シーケンス解析
上記反応産物を精製後、MicroSeq(登録商標)を使用してシーケンス反応を実施、ABI Prism(登録商標)3100 Genetic Analyzerを用いて16SrDNAの上流領域約500bp(490bp以上)の塩基配列を決定した。シーケンス反応は各サンプルFW、RVの両方向から実施し、得られた結果のアセンブルを行い各検体より得られた16SrDNA増幅産物の塩基配列を決定した(表12〜28)。なお、塩基配列は、5’末端から3’末端方向に、左から右へと記載した。また、塩基は一文字記号で表記した。
HB03及びHB09株;HB04、HB01、及びHB07株;ならびにHB06及びHB11株は、ほぼ同様の塩基配列を有することが認められた。HB03及びHB09株ならびにHB04、HB01、及びHB07株については100%一致し、HB06及びHB11株についてはHB06株において不特定塩基がHB11株より二塩基多く含まれているが、他は完全に一致した。
また、HB05及びHB02株はほぼ同様の塩基配列を有することが認められた。HB13、HB12、HB10、及びHB08株はそれぞれ異なる塩基配列を示した。
【0036】
【表12】
【0037】
【表13】
【0038】
【表14】
【0039】
【表15】
【0040】
【表16】
【0041】
【表17】
【0042】
【表18】
【0043】
【表19】
【0044】
【表20】
【0045】
【表21】
【0046】
【表22】
【0047】
【表23】
【0048】
【表24】
【0049】
【表25】
【0050】
【表26】
【0051】
【表27】
【0052】
【表28】
【0053】
上記配列表で、部分的にピークの重複した不特定塩基は「n」と表記した。もっとも、「n」のいくつかは、下表29のとおり塩基が特定された。
【0054】
【表29】
【0055】
4.菌の分類
(1)16SrDNA塩基配列のデーターベースによる相同性検索
各HBCD、TBP、及びTBBPA資化性菌の上記16SrDNAの塩基配列を用いて、NCBIホームページ(HBCD及びTBP資化性菌については2005年11月25日現在、TBBPA資化性菌については2006年2月10日現在)においてBLASTによる相同性検索を行った(URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。各菌株の検索結果を表30〜63に示す。
【0056】
【表30】
【0057】
【表31】
【0058】
【表32】
【0059】
【表33】
【0060】
【表34】
【0061】
【表35】
【0062】
【表36】
【0063】
【表37】
【0064】
【表38】
【0065】
【表39】
【0066】
【表40】
【0067】
【表41】
【0068】
【表42】
【0069】
【表43】
【0070】
【表44】
【0071】
【表45】
【0072】
【表46】
【0073】
【表47】
【0074】
【表48】
【0075】
【表49】
【0076】
【表50】
【0077】
【表51】
【0078】
【表52】
【0079】
【表53】
【0080】
【表54】
【0081】
【表55】
【0082】
【表56】
【0083】
【表57】
【0084】
【表58】
【0085】
【表59】
【0086】
【表60】
【0087】
【表61】
【0088】
【表62】
【0089】
【表63】
【0090】
上記のBLASTによる相同性検索の結果を以下に示す。
HB01株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.6%であった。HB02株は、Pseudomonas fluorescensと最も高い相同性を示し、その相同性は98.8%であった。HB03株は、Pseudomonas citronellolisと最も高い相同性を示し、その相同性は98.1%であった。HB04株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.8%であった。HB05株は、Pseudomonas fluorescensと最も高い相同性を示し、その相同性は98.4%であった。HB06株は、Pseudomonas citronellolisと最も高い相同性を示し、その相同性は98.9%であった。HB07株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.8%であった。HB08株は、Stenotrophomonas maltrophiliaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.2%であった。HB09株は、Pseudomonas citronellolisと最も高い相同性を示し、その相同性は97.9%であった。HB10株は、Stenotrophomonas rhizophilaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.8%であった。HB11株は、Pseudomonas citronellolisと最も高い相同性を示し、その相同性は99.6%であった。HB12株は、Pseudomonas alcaligenesと最も高い相同性を示し、その相同性は99.0%であった。HB13株は、Rhodococcus erythropolisと最も高い相同性を示し、その相同性は99.6%であった。TB01株は、Ochrobactrum triticiと最も高い相同性を示し、その相同性は100%であった。TB02株は、Burkholderia fungorumと最も高い相同性を示し、その相同性は99.4%であった。TB03株は、Pseudomonas nitroredencesと最も高い相同性を示し、その相同性は99.6%であった。TB04株は、Achromobacter xylosoxidansと最も高い相同性を示し、その相同性は99.4%であった。TB05株は、Pseudomonas veroniiと最も高い相同性を示し、その相同性は98.9%であった。TB06株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.2%であった。TB07株は、Pseudomonas plecoglossicida並びにPseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.2%であった。TA01株は、Pseudomonas putidaと最も高い相同性を示し、その相同性は99.0%であった。
【0091】
(2)分類・同定の結果
前記の菌株の分類学的性質に基づき、Bergey's Manual of Systemic Bacteriology, Vol.1又はVol.2, N.R. Krieg, J. G. Holt (ed), Williams & Wilkins, Baltimore (1984)及びBergey's Manual of Determinative Bacteriology (9th ed), J. G. Holt, N.R. Krieg, P.H.A. Sneath, J. T. Staley, S. T. Williams (ed), Williams & Wilkins, Baltimore (1994)を参考に分類・同定を行った結果を以下に示す。
HB01株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB02株は、Pseudomonas fluorescensと同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB03株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB04株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB05株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB06株は、本株はPseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB07株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB08株は、Stenotrophomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもStenotrophomonas属であることが示された。
HB09株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB10株は、本株はStenotrophomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもStenotrophomonas属であることが示された。
HB11株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB12株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
HB13株は、Rhodococcus属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもRhodococcus属であることが示された。
TB01株は、Ochrobactrum属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもOchrobactrum属であることが示された。
TB02株は、Burkholderia属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもBurkholderia属であることが示された。
TB03株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
TB04株は、Achromobacter属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもAchromobacter属であることが示された。
TB05株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
TB06株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
TB07株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
TA01株は、Pseudomonas属と同定された。また本菌株の16SrDNAの塩基配列に基づく相同性解析の結果においてもPseudomonas属であることが示された。
上記の各菌株の分類等を以下に示す(表64、65、及び66)。
【0092】
【表64】
【0093】
【表65】
【0094】
【表66】
【0095】
HB01株及びTB01株について、上記の相同性の結果に基づいて、MicroSeqTM Analysis software(Applied Biosystems)を用いて系統樹を作成した(図15、16)。分子系統樹の推定は近接結合法を用い、樹型の妥当性を示すブートストラップは1000回発生させた。
【0096】
5.菌の分解性の検討
HBCD、TBP、TBBPA、及びそれらの類縁物資を基質とした生育テスト
集積培養で得られた上記各資化性菌の性質を調べるため生育テストを試みた。HBCD、TBP、TBBPA、又はこれらに構造式が類縁の化合物を基質としてPAS寒天培地に加えて培養し、各資化性菌の生育を調べた。本実験で用いた化合物を表67に、結果を表68及び69に示した。
なお、+++:大変良く資化する(寒天培地上で大きなコロニーを形成する)、++:良く資化する(寒天培地上で直径1〜2mm程度のコロニーを形成する)、+:資化する(寒天培地上で小さなコロニーを形成する)、−:資化しない、である。
【0097】
【表67】
【0098】
【表68】
【0099】
【表69】
【0100】
HBCD、TBP、及びTBBPAの分解能の測定
(1)HBCDの分析方法
100ml容三角フラスコに×1/4LB液体培地(表70)を10ml加え、DMSOに溶解させた100mMγ−HBCDを100μl添加した。その培地に上記単離した資化性菌の生理食塩水懸濁液100μl(菌体数にして約105〜106個/ml)を植菌して、0日目から5又は7日目まで、28℃、150rpmで培養を行った。一日ごとにOD600とpHを測定するとともにγ−HBCDを抽出しその濃度を測定した。
休止菌体反応は以下のように行った。上記×1/4LB培地で培養した菌体を遠心分離(3,000×g、5分)によって回収し、カリウムリン酸バッファー(KPB;50mM、pH7.0)で3回洗浄した後、0D600=1.0となるようにKPBに懸濁した。100ml容三角フラスコに菌体液10mlを加え、さらに100mM γ−HBCD100μlを添加して、28℃、150rpmで反応させた。
抽出方法は以下のとおりである。先ず上記培養液又は菌体反応液を遠心管に移しジエチルエーテル10mlを加えボルテックスミキサーで1分間撹拌した後、遠心分離(2,000×g、5分)し上層を三角フラスコに移した。無水硫酸ナトリウムを適量入れ脱水して濾過し、2.5mlをバイアル瓶に移しロータリーエバポレーターで乾固した。バイアル瓶にDMSOを1ml加えてγ−HBCDを溶かし、MeOHで100倍に希釈した。続いてLC−MS(Waters Quattro Micro)でγ−HBCD量を分析した(表70)。
【0101】
【表70】
【0102】
(2)TBPの分析方法
100ml容三角フラスコに×1/4LB液体培地(表70)を10ml加え、DMSOに溶解させた10mMTBPを100μl添加した。その培地に上記単離した資化性菌の生理食塩水懸濁液100μl(菌体数にして約105〜106個/ml)を植菌して、0日目から5又は6日目まで、28℃、150rpmで培養を行った。一日ごとにOD600とpHを測定するとともにTBPを抽出しその濃度を測定した。
休止菌体反応は以下のように行った。上記×1/4LB培地で培養した菌体を遠心分離(3,000×g、5分)によって回収し、カリウムリン酸バッファー(KPB;50mM、pH7.0)で3回洗浄した後、0D600=0.5となるようにKPBに懸濁した。100ml容三角フラスコに菌体液10mlを加え、さらに10mM TBP100μlを添加して、28℃、150rpmで反応させた。
抽出方法は以下のとおりである。先ず上記培養液又は菌体反応液を遠心管に移しジエチルエーテル10mlを加えボルテックスミキサーで1分間撹拌した後、遠心分離(3,000×g、5分)し上層を三角フラスコに移した。無水硫酸ナトリウムを適量入れ脱水して濾過し、2.5mlをバイアル瓶に移しロータリーエバポレーターで乾固した。バイアル瓶にMeOHを1ml加えてTBPを溶かした。続いてHPLC(Hitachi L-7100)でTBP量を分析した(表71)。
【0103】
【表71】
【0104】
(3)TBBPAの分析方法
100ml容三角フラスコに×1/4LB液体培地(表70)を10ml加え、DMSOに溶解させた10mMTBBPAを100μl添加した。その培地に上記単離した資化性菌の生理食塩水懸濁液100μl(菌体数にして約105〜106個/ml)を植菌して、0日目から5〜8日目まで、28℃、150rpmで培養を行った。一日ごとにOD600とpHを測定するとともにTBBPAを抽出しその濃度を測定した。
休止菌体反応は以下のように行った。上記×1/4LB培地で培養した菌体を遠心分離(3,000×g、5分)によって回収し、カリウムリン酸バッファー(KPB;50mM、pH7.0)で3回洗浄した後、0D600=0.5となるようにKPBに懸濁した。100ml容三角フラスコに菌体液10mlを加え、さらに10mM TBBPA100μlを添加して、28℃、150rpmで反応させた。
抽出方法は以下のとおりである。先ず上記培養液又は菌体反応液を遠心管に移しジエチルエーテル10mlを加えボルテックスミキサーで1分間撹拌した後、遠心分離(3,000×g、5分)し上層を三角フラスコに移した。無水硫酸ナトリウムを適量入れ脱水して濾過し、2.5mlをバイアル瓶に移しロータリーエバポレーターで乾固した。バイアル瓶にMeOHを1ml加えてTBBPAを溶かした。続いてHPLC(Hitachi L-7100)でTBP量を分析した(表71)。
【0105】
(4)HBCDの定量系の確立
γ−HBCDをMSで測定した結果、m/z 640.4付近に5つの主要なフラグメントが認められた(図1)。もっとも主要な640.4のイオンをLC−MSで分析し、11.30分付近にピークを検出することが出来た(図2)。検出限界は5ppmであった。γ−HBCDの検量線を作成した(図3)。
(5)TBPの定量系の確立
表71のHPLC分析条件で、溶出時間約8.6分にTBPのピークが検出された(図4)。そのTBPの検量線を図5に示す。
(6)TBBPAの定量系の確立
表71の分析条件で、溶出時間12.2分にTBBPAのピークが検出された(図18)。そのTBBPAの検量線を図19に示す。
【0106】
(7)HBCD資化性菌におけるHBCD分解(1)
HB01、HB02、HB08、HB09、HB12株のγ−HBCDの分解能を、上記のHBCD分析方法に従い調べた。6日間の培養において、HB01株では73.9%、HB02株では60%、HB08及びHB09株では27.0%、HB12株では73.1%のγ−HBCD分解率が、それぞれ認められた。
(8)TBP資化性菌おけるTBP分解
TB01〜TB05株について、上記のTBP分析方法に従いTBPの分解能を調べた。5日間の培養において、TB05株では60%、特にTB01〜TB04株については各々100%のTBP分解率が認められた。
(9)TBBPA資化性菌おけるTBBPA分解
TA01株について、上記のTBBPA分析方法に従いTBBPAの分解能を調べた。5日間の培養において、約50%のTBBPA分解率が認められた(図14)。
【0107】
(10)HB01株の生育曲線とγ−HBCDの経時的分解
上記のHBCD分析方法に従いHB01株を培養したところ、菌の濃度は培地のpHと共に培養後2日目まで上昇し、以降プラトーに達した。一方、γ−HBCD濃度は培養後4日目まで減少を続け、約80%が分解された。
(11)TB01株の生育曲線とTBPの経時的分解(1)
上記のTBP分析方法に準じてTB01株を培養したところ、菌の濃度は培養後24時間から上昇し、対数増殖を示した。一方TBP濃度は培養後12時間から36時間にかけて減少し、100%分解された。
【0108】
(12)HB01株の休止菌体反応におけるγ−HBCDの分解(1)
上記のHBCD分析方法に従いHB01株の休止菌体反応によるγ−HBCDの分解を調べた。菌体濃度をOD600=1.0としたとき1mMγ−HBCDは4日目で63%分解された。
(13)TB01株の休止菌体反応におけるTBPの経時的分解(1)
上記のTBP分析方法に従いTB01株の休止菌体反応によるTBPの分解を調べた。菌体濃度をOD600=0.5としたとき100μMTBPは24時間で80%分解され、48時間で100%分解された。
【0109】
(14)HBCD資化性菌におけるHBCD分解(2)
HB01株のγ−HBCDの分解能に及ぼす培地の影響を、前記のHBCD分析方法に準じて調べた。但し、培地として×1/4LB液体培地(表70)、LB液体培地(ポリペプトン:10g、酵母エキス:5g、NaCl:5g、グルコース:1g、pH7.0)、及びPAS培地(表1の×10PA及び×10MSをそれぞれ1容量部加え、さらに水を8容量部加えて調製する、組成はK2HPO4:4.35g、KH2PO4:1.7g、NH4Cl:2.1g、MgSO4:0.2g、MnSO4:0.05g、FeSO4・7H2O:0.01g、CaCl2・2H2O:0.03g)を用いた。LB液体培地を使用したときに最もHBCD分解能が高まり、培養3日程度で約80%程度まで分解されることが認められた(図6)。
【0110】
(15)HBCD資化性菌におけるHBCD分解(3)
前記のHBCD分析方法に準じて、HB01株を植菌して、5日間培養後、ジエチルエーテル抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)によってγ―HBCDの残量を調べた。展開液としてヘキサン:酢酸エチル=4:1の混液を用いた。培養液中からγ−HBCDの消失が確認でき、また脂溶性の中間体の蓄積は認められなかった(図7)。
【0111】
(16)HB01株の休止菌体反応におけるγ−HBCDの分解(2)
前記のHBCD分析方法で示した菌体反応に準じた。すなわち、HB01株を培養し、得られた菌体を遠心分離(14,000×g、10分)によって回収し、KPBに懸濁した。この懸濁液にγ−HBCDを1mMの濃度になるように添加し、次いでグルコースを1mMの濃度になるように添加するか又は添加せずに、28℃、150rpmで反応させ、ジエチルエーテル抽出し、γ−HBCD量を分析した。その結果、γ−HBCDの分解は、グルコースの有無に関わらず認められるが、グルコースがあると分解が高まることが認められた(図8)。
【0112】
(17)HB01株の培養液上清及び菌体粗抽出物によるγ−HBCDの分解
前記のHBCDの分析方法に準じてHB01株を培養し、培養液120mlを遠心分離(14,400×g、10分)して上清を得、この上清を濾過して菌体を除去した。この得られたろ液にγ−HBCDを1mMの濃度になるように添加し、28℃、150rpmで、48時間反応させてから、前記のHBCDの分析方法に準じてジエチルエーテルで抽出し、γ−HBCD量を分析した。
同様に、前記のHBCDの分析方法に準じてHB01株を培養し、培養液60mlを遠心分離(12,000×g、10分)して菌体を回収し、KPBに懸濁した。この懸濁液を5分間ソニケーションにかけて菌体を破壊してから、そこにγ−HBCDを1mMの濃度になるように添加して、30℃で30分間反応させさせてから、前記のHBCDの分析方法に準じてジエチルエーテルで抽出し、γ−HBCD量を分析した。
その結果、培養液上清ではγ−HBCDの分解は認められなかったが、菌体粗抽出物ではγ−HBCDの分解は認められた(図9)。
【0113】
(18)HBCD資化性菌における工場廃水中のHBCD分解
HB01株による工場廃水中のHBCD分解を、前記のHBCDの分析方法に準じて調べた。但し、DMSOに溶解させた100mMγ−HBCDを100μl添加する代わりに、採取してきた工場廃水を5%になるように培地に添加した。その結果、工場廃水中のγ−HBCDの分解が認められた(図10)。
【0114】
(19)Pseudomonas putida KT2440におけるHBCD分解
Pseudomonas putida KT2440のγ−HBCDの分解能を、前記のHBCDの分析方法に従い調べた。5日間の培養により、γ−HBCDの分解が認められた(図11)。
【0115】
(20)TB01株の生育曲線とTBPの経時的分解(2)
前記のTBPの分析方法に準じてTB01株を培養したところ、菌の濃度は培養後24時間から上昇して対数増殖を示し、60時間後にプラトーに達した。一方、TBP濃度は培養後12時間から36時間にかけて減少し、100%分解された(図12)。
【0116】
(21)TB01株の休止菌体反応によるTBPの経時的分解(2)
前記のTBP分析方法に従いTB01株の休止菌体反応によるTBPの分解及び臭素イオンの発生を調べた。臭素イオン量はイオンクロマトグラフィー法で測定した。TBPの分解が進むに連れて、臭素イオン量が増加することが確認できた(図13)。
【0117】
(22)HB01株の工場廃水に対する馴化
100ml容三角フラスコにPAS培地を10ml加え、採取してきた工場廃水を10%になるように添加した。その培地に上記単離したHB01株及びHB02株の生理食塩水懸濁液100μl(菌体数にして約105〜106個/ml)をそれぞれ植菌して、2週間、28℃、150rpmで培養を行った。その後、この菌培養液100μlを、工場廃水を11%含むPAS培地に植菌して同様に2週間培養した。以下、同様にして、工場廃水を12%、13%、14%と増やしていったPAS培地に順に菌培養液を植え継いでいったところ、各培地にて菌の生育が観察できた。図17に13%のPAS培地で2週間培養した状態を示す。HB01株及びHB02株を培養させた培地の入ったフラスコは、植菌しなかったブランクのフラスコと比べて白濁しており、菌の生育が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の微生物は、排水、廃液、河川、湖沼、海水、地下水、及び土壌などの環境に含まれている有機化合物の分解処理に使用でき、これら環境の浄化又はこれら環境の汚染防止などに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】γ−HBCDのマススペクトルである。
【図2】γ−HBCDのLC−MSの液体クロマトグラムである。
【図3】γ−HBCDの検量線である。
【図4】TBPのHPLCの液体クロマトグラムである。
【図5】TBPの検量線である。
【図6】HB01株によるγ−HBCDの経時的分解を示す図である。
【図7】HB01株の培養液中のγ−HBCDの薄層クロマトグラムである。
【図8】HB01株の休止菌体反応によるγ−HBCDの分解を示す図である。Aはグルコース非存在下での、Bはグルコース存在下での分解をそれぞれ示す図である。
【図9】HB01株の培養液上清及び菌体粗抽出物によるγ−HBCDの分解を示す図である。Aは培養液上清による、Bは菌体抽出物による分解を、それぞれ示す図である。
【図10】HB01株による工場廃水中のγ−HBCDの分解を示す図である。
【図11】Pseudomonas putida KT2440によるγ−HBCDの分解を示す図である。
【図12】TB01株の生育曲線とTBPの経時的分解を示す図である。
【図13】TB01株の休止菌体反応によるTBPの経時的分解を示す図である。
【図14】TA01株におけるTBBPAの分解を示す図である。
【図15】HB01株の系統樹を示す図である。分岐点に示された点はブートストラップ信頼値である。
【図16】TB01株の系統樹を示す図である。分岐点に示された点はブートストラップ信頼値である。
【図17】HB01株を2週間培養した13%工場廃水含有PAS培地の状態を示す図である。
【図18】TBBPAのHPLCの液体クロマトグラムである。
【図19】TBBPAの検量線である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜17よりなる群から選択される配列の一つと95%以上の相同性を示す16SrDNAの部分塩基配列を有する、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン、2,4,6−トリブロモフェノール、又はテトラブロモビスフェノールAを分解する能力を有する微生物。
【請求項2】
シュードモナス属(Pseudomonas)、ステノトロフォモナス属(Stenotrophomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、オクロバクトラム(Ochrobactrum)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、又はアクロモバクター(Achromobacter)属に属する、請求項1記載の微生物。
【請求項3】
シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-180菌株、
シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-181菌株、
オクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)NITE P-204菌株、及び
シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-311菌株
から選択される微生物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物を使用することを特徴とする、ハロゲン化脂環式炭化水素及び/又はハロゲン化芳香族炭化水素を分解する方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物を使用することを特徴とする、ポリ臭素化有機化合物を分解する方法。
【請求項6】
ポリ臭素化有機化合物が1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン、2,4,6−トリブロモフェノール、又はテトラブロモビスフェノールAである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物を使用することを特徴とする、浄化システム。
【請求項1】
配列番号1〜17よりなる群から選択される配列の一つと95%以上の相同性を示す16SrDNAの部分塩基配列を有する、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン、2,4,6−トリブロモフェノール、又はテトラブロモビスフェノールAを分解する能力を有する微生物。
【請求項2】
シュードモナス属(Pseudomonas)、ステノトロフォモナス属(Stenotrophomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、オクロバクトラム(Ochrobactrum)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、又はアクロモバクター(Achromobacter)属に属する、請求項1記載の微生物。
【請求項3】
シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-180菌株、
シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-181菌株、
オクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)NITE P-204菌株、及び
シュードモナス(Pseudomonas sp.)NITE P-311菌株
から選択される微生物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物を使用することを特徴とする、ハロゲン化脂環式炭化水素及び/又はハロゲン化芳香族炭化水素を分解する方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物を使用することを特徴とする、ポリ臭素化有機化合物を分解する方法。
【請求項6】
ポリ臭素化有機化合物が1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン、2,4,6−トリブロモフェノール、又はテトラブロモビスフェノールAである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物を使用することを特徴とする、浄化システム。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図1】
【図7】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図1】
【図7】
【図17】
【公開番号】特開2008−194023(P2008−194023A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68945(P2007−68945)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(505065984)学校法人 福山大学 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(505065984)学校法人 福山大学 (1)
【Fターム(参考)】
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