説明

ポリ(ヒドロキシアルカン酸)及びそれを使った物品

ポリ(ヒドロキシアルカン酸)と約10〜約30個の炭素原子を有する1つ以上のカルボン酸とを含む組成物であって、カルボン酸が、組成物の重量を基準として、0.5〜約15%で組成物中に存在し、そしてカルボン酸が芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、ポリカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む組成物が開示される。この組成物とこの組成物を含む物品とを製造するために用いることができる方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)とカルボン酸とを含む組成物に、前記組成物の結晶化の促進方法に、および前記組成物を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸(PLA)などのポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)は、細菌発酵法による生産などの再生可能なモノマーを含む樹脂かまたはトウモロコシもしくはサツマイモを含む植物から単離される樹脂である。この樹脂は、コップ、トレイ、およびクラムシェルなどの熱成形包装品向けに使用することができる。一般に、この樹脂は先ず、非晶質シートへ押し出され、約100℃で完成品へ成形される。物品の未延伸部分は、PLAが高速熱成形装置で余りにもゆっくり結晶化するので完全には結晶化しない。熱成形によく用いられるPLA銘柄は55℃のTgを有するので、熱成形品は、温度が55℃近くまたはそれより上である場合に貯蔵中に結晶化し始めるかもしれない。結晶化は、物品がくるまるおよびくっつく原因となる。PLA物品を55℃から保護するのは、輸送トラックが65℃以上を経験するので実用的ではない。さらにPLAが高温充填食品と共に有用であるべきである場合、それは約80℃で変形に抵抗しなければならない。
【0003】
コップなどの物品を金型中でアニールしてもよいが、そうすることは物品を製造するためのコストを大きく増大させるかもしれない。好ましい方法は、PLA用の核剤を用いて結晶化度または結晶化の速度を増大させることである。タルク、サッカリンのナトリウム塩、ケイ酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、窒化ホウ素、銅フタロシアニン、アイソタクチックポリプロピレン、低分子量ポリ(ラクチド)およびポリブチレンテレフタレートなどの、多くの核剤は存在するが、使用されていない。その理由は、核剤が、核剤を使用しなければ透明なPLA物品または感覚器官感知品に曇りまたは不透明性を導入し、それによって物品の価値を損なうからである。例えば、米国特許第6,114,495号明細書、米国特許第6,417,294号明細書、および国際公開第03/014224号パンフレットを参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、曇りまたは他の好ましくない特性を導入することなくPLAを物品へ加工することを可能にするために適度に速い速度で熱成形中にPLAを結晶化させる必要性があり、ここで物品の未延伸部分はかかる速い速度で結晶化し、それによってPHAのガラス転移温度より上で耐熱性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
組成物は、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)および約10〜約30個の炭素原子を有する1つ以上のカルボン酸を含む、本質的にそれらからなる、それらからなる、またはそれらから製造される。
【0006】
方法は、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物またはポリ(ヒドロキシアルカン酸)を核剤と接触させて配合物を製造する工程と、配合物を物品へ熱成形する工程とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
PHA組成物は、2〜15個、2〜10個、2〜7個、または2〜5個の炭素原子を有する1つ以上のヒドロキシアルカン酸に由来する繰り返し単位を含むポリマーを含む。例には、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、2−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、4−ヒドロキシバレレート、5−ヒドロキシバレレート、6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。ポリマーの例には、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)およびポリ(ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、または2つ以上のPHAポリマーのブレンド物(例えば、PHBとPCLとのブレンド物)をはじめとする、それらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0008】
PHAは、バルク重合によって製造することができる。PHAは、ヒドロキシアルカン酸の脱水−重縮合によって合成されてもよい。PHAはまた、ポリグリコール酸のアルキルエステルの脱アルコール−重縮合によってか、または相当するラクトンもしくは環状二量体エステルなどの環状誘導体の開環重合によって合成されてもよい。バルク重合は、2つの製造プロセス、すなわち連続プロセスおよびバッチプロセスによって実施することができる。特開平3−502115号公報は、環状エステルのバルク重合が二軸スクリュー押出機で実施される方法を開示している。特開平7−26001号公報は、ヒドロキシカルボン酸の二分子環状エステルおよび1つ以上のラクトンが開環重合のためにスタティックミキサーを有する連続反応装置に連続的に供給される生分解性ポリマーの重合方法を開示している。特開平7−53684号公報は、ヒドロキシカルボン酸の環状二量体が触媒とともに初期重合工程に供給され、次に多軸混練機からなる後期重合工程に連続的に供給される、脂肪族ポリエステルの連続重合方法を開示している。米国特許第2,668,162号明細書および同第3,297,033号明細書はバッチプロセスを開示している。
【0009】
PHAはまた、ポリヒドロキシブチレート−ヒドロキシバレレート(PHB/V)コポリマーおよびグリコール酸と乳酸とのコポリマー(PGA/LA)などの、2つ以上のPHAを含むコポリマーを含む。コポリマーは、ポリヒドロキシアルカン酸もしくは誘導体と1つ以上の環状エステルおよび/または二量体環状エステルとの共重合によって製造することができる。かかるコモノマーには、グリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、グリコール酸の二量体環状エステル;ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン);α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロパン酸の環状エステル;β−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ酪酸の環状エステル;δ−バレロラクトン、5−ヒドロキシペンタン酸の環状エステル;ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸の環状エステル、および2−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、4−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3,3,5−トリメチル−6−ヒドロキシヘキサン酸などのようなそのメチル置換誘導体のラクトン;12−ヒドロキシドデカン酸の環状エステル;2−p−ジオキサノン;ならびに2−(2−ヒドロキシエチル)−グリコール酸の環状エステル、またはそれらの2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0010】
PHA組成物はまた、1つ以上のPHAモノマーまたは誘導体と、コハク酸、アジピン酸、およびテレフタル酸ならびにエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールなどの脂肪族および芳香族二酸およびジオールモノマーを含む、他のコモノマーとのコポリマーを含む。約100の異なるコモノマーがPHAコポリマー中へ組み入れられてきた。一般に、コポリマーがより多くのモルのコモノマーを組み込まれると、生じたコポリマーは結晶化する可能性がより少ない。コポリマーが、ある有機溶剤中のその可溶性溶液から沈殿するときに結晶化しない場合、それは、核剤と溶融混合されるときに結晶化することができない。
【0011】
PHAポリマーおよびコポリマーはまた、生物によって製造されてもまたは植物から単離されてもよい。多数の微生物がPHAポリマーの細胞内貯蔵物を蓄積する能力を有する。例えば、コポリマー・ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)(PHB/V)は、細菌ラルストニア・ユウトロファ(Ralstonia eutropha)の発酵によって生産されてきた。他のPHAタイプの発酵および回収プロセスもまた、アゾトバクター(Azotobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes latus)、コマモナス・テストステロン(Comamonas testosterone)および遺伝子操作された大腸菌(E.coli)ならびにクレブシエラ属(Klebsiella)を含む様々な細菌を用いて開発されてきた。米国特許第6,323,010号明細書は、遺伝子組み換えの生物から製造された多くのPHAコポリマーを開示している。
【0012】
グリコール酸はサトウキビから誘導される。ポリグリコール酸は、グリコリドの開環重合によって合成することができ、ポリグリコリドと呼ばれることもある。
【0013】
PLAは、3000〜1000000、10000〜700000、または20000〜300000の数平均分子量を有する、ポリ(乳酸)ホモポリマーおよび少なくとも50モル%(50%コモノマーはいかなる条件であっても、結晶化する可能性が最も少ないコポリマー組成物を生成する)の乳酸またはその誘導体(それの混合物)に由来する繰り返し単位を含有する乳酸と他のモノマーとのコポリマーを含む。PLAは、少なくとも70モル%の乳酸またはその誘導体に由来する(例えば、それらによって製造される)繰り返し単位を含有してもよい。PLAホモポリマーおよびコポリマー用の乳酸モノマーは、d−乳酸、l−乳酸、またはそれらの組み合わせに由来することができる。2つ以上のPLAポリマーの組み合わせを使用することができる。PLAは、「ラクチド」としばしばよばれる、乳酸の二量体環状エステルの触媒開環重合によって製造されてもよい。結果として、PLAはまた「ポリラクチド」ともよばれる。
【0014】
PLAはまた、乳酸またはラクチドの異なる立体異性体の特別クラスのコポリマーおよびブレンド物を含む。d−乳酸またはd−ラクチドから重合させられたPLAとl−乳酸またはl−ラクチドから重合させられたPLAとの溶融ブレンド物は、50/50比で2つの立体純粋PLA間のステレオ−コンプレックスを生成することができる。ステレオ−コンプレックスの結晶はそれ自体、2つのPLA成分のいずれよりもはるかに高い融点を有する。同様に、ステレオ−ブロックPLAは、低分子量ステレオ−コンプレックスPLAから固相重合させることができる。
【0015】
乳酸のコポリマーは典型的には、乳酸、ラクチドまたは別の乳酸誘導体と上記のような1つ以上の環状エステルおよび/または二量体環状エステルとの触媒共重合によって製造される。
【0016】
PHAは、使用されるPHAと核剤との総量を基準として、組成物の約99.8重量%までを構成してもよい。例えば、PHAは、60、70、80、85、90または95重量%の下限から97、99、99.5または99.8重量%の上限までの範囲で存在してもよい。
【0017】
カルボン酸は、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸);脂肪族カルボン酸(例えば、オレイン酸などの不飽和脂肪酸;ステアリン酸などの飽和脂肪酸;ステアリルアルコールなどの脂肪酸アルコール;ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル;およびステアリルアミドなどの脂肪酸アミド);ポリカルボン酸;脂肪族ヒドロキシカルボン酸;またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むことができる。理論によって制約されることは意図しないが、脂肪酸誘導体または長鎖(例えば、≧31個の炭素)を含むPHA組成物から製造されたフィルムもしくはシートは、これらの化合物の分散が困難である可能性があるために、またはPHAへのこれらの化合物のより少ない溶解性のために、およびPHAと添加剤との屈折率の不整合のために、光学的な無色透明性で劣るかもしれない。
【0018】
カルボン酸は、脂肪族一官能性(飽和、不飽和、または多不飽和)カルボン酸であることができる。酸は、1分子当たり約10〜約30個の、約12〜約28個の、約16〜約26個の、または18〜22個の炭素原子を有してもよい。GRAS(一般に安全と認められる)としてUS Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)(FDA)リストにある酸が特に興味深い。非公式のGRAS酸の例には、乳酸、リノール酸、リンゴ酸、プロピオン酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどの、幾つかのモノカルボン酸および幾つかのポリカルボン酸が挙げられる。
【0019】
カルボン酸は、PHAと溶融混合されるときに低い揮発性を有してもよい(PHAと溶融混合する温度で揮発しない)か、または約2μ未満の直径を有するものなどのPHA中に十分に分散させることができる粒子を有するか、または非移行性である(普通の貯蔵条件(周囲温度)下にPLAの表面にブルームしない)。すなわち、所望のカルボン酸は、本出願の別のところで開示される、PHAの溶融加工温度および圧力より高い沸点を有する。カルボン酸の例には、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0020】
組成物は、組成物が加熱されるときに結晶化が向上する量のカルボン酸を含むことができる。カルボン酸は、組成物の0.5〜約15重量%、約1〜約10重量%、1.2〜10重量%、または1.5〜10重量%、組成物中に存在することができる。
【0021】
組成物は、少なくとも1つの任意のカチオン性触媒さらに含んでもよい。かかる触媒は米国特許第4,912,167号明細書に記載されており、Al3+、Cd2+、Co2+、Cu2+、Fe2+、In3+、Mn2+、Nd3+、Sb3+、Sn2+、およびZn2+などの触媒カチオン源である。好適な触媒には、酢酸およびステアリン酸などの、炭化水素モノ−、ジ−、またはポリ−カルボン酸の塩が挙げられるが、それらに限定されない。炭酸塩などの無機塩もまた使用されてもよい。触媒の例には、オクタン酸第一スス、ステアリン酸亜鉛、炭酸亜鉛、および二酢酸亜鉛(水和または無水)が挙げられるが、それらに限定されない。使用されるとき、カチオン性触媒は、PHAおよび耐衝撃性改良剤の百重量部当たり約0.01〜約3重量部を構成してもよい。
【0022】
組成物はまた、組成物の約0.01〜約30重量%、約0.1〜約20重量%、約0.2〜約10重量%の、エチレンコポリマー、コア−シェルポリマー、またはそれらの組み合わせをはじめとする強化剤を含むことができる。
【0023】
エチレンコポリマーは、(a)エチレン;(b)式CH2=C(R3)CO24(ここで、R3は水素またはメチルなどの、1〜6個の炭素原子のアルキル基であり;R4はグリシジルである)の1つ以上のオレフィン;および任意成分である(c)式CH2=C(R1)CO22(ここで、R1は水素または1〜8個の炭素原子のアルキル基であり、R2は、メチル、エチル、またはブチルなどの、1〜8個の炭素原子のアルキル基である)の1つ以上のオレフィン、または一酸化炭素に由来する繰り返し単位を含んでもよい。モノマー(a)に由来する繰り返し単位は、コポリマー重量を基準として、約20、40または50%から約80、90または95%を構成してもよい。モノマー(b)に由来する繰り返し単位は、コポリマー重量を基準として、約0.5、2または3%から約17、20または25%を構成してもよい。エチレンコポリマーの例は、エチレンとグリシジルメタクリレートとから誘導され、EGMAとよばれる。任意のモノマー(c)はブチルアクリレートまたはCOであることができる。n−ブチルアクリレート、第三ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、および第二ブチルアクリレートの1つ以上が使用されてもよい。エチレンコポリマーの例は、エチレンと、ブチルアクリレートと、グリシジルメタクリレートとから誘導され、EBAGMAとよばれる。モノマー(c)に由来する繰り返し単位は、存在するとき、コポリマー重量を基準として、約3、15または20%から約35、40または70%を構成してもよい。
【0024】
エチレンコポリマーが組成物中に存在する場合、カルボン酸はアルキルエステルまたはアルキルアミド(ここで、アルキル基は4〜約30個または10〜約20個の炭素原子を有する)の形態にあることができる。
【0025】
エチレンコポリマーは、当業者に周知の方法によって製造することができるが、簡潔さのために本明細書では省略される。
【0026】
コア/シェルポリマーは、ビニル芳香族コモノマーを含まなくてもよく、1.5以下の屈折率を有し;コアは、ポリアルキルアクリレートを含んでも、任意選択的に架橋していてもよい1つ以上のエラストマーを含み;シェルは、ポリメチルメタクリレートを含んでも、エポキシ、カルボン酸、またはアミンをはじめとする官能基を任意選択的に含有してもよい非エラストマーポリマーを含む。
【0027】
コア−シェルポリマーはまた、米国特許第4,180,529号明細書に記載されているタイプの多段階逐次重合技法によって製造された、多層で構成されてもよい。各逐次段階は、前に重合した段階の存在下に重合させられる。このように、各層は、直前段階の上部上に層として重合させられる。
【0028】
良好な透明性(低い曇り度)を保持する強化PHA組成物を提供するために、コア−シェルポリマー化合物の成分は、PHAの屈折率(RI)と十分に適合する屈折率を有することができる。コア−シェルポリマー化合物の低弾性率の内部は、芳香族ビニルコモノマー(スチレンなどの)を含まない、好ましくはポリアクリル酸アルキル(例えばポリアクリル酸ブチル)を含む、任意のエラストマーポリマーまたはコポリマーを含むことができる。ポリアクリル酸ブチルゴムは1.47のRIを有し、コアに好適であることができる。エラストマーポリマーは場合により架橋している。
【0029】
コア−シェルポリマーのコアは、コア−シェルポリマーの総重量を基準として、コア−シェルポリマーの約50〜約90重量%を構成してもよい。
【0030】
コア−シェルポリマー、例えば、Paraloid(登録商標)EXL−2330(コアがアクリル酸ブチルモノマーから製造された)、Paraloid(登録商標)EXL−2314(コアがアクリル酸ブチルから製造された、エポキシ官能性ポリマー)、およびParaloid(登録商標)KM−365(コアがアクリル酸ブチルモノマーから製造された)は、Rohm and Haas(Philadelphia,PA)から商業的に入手することができる。
【0031】
例えば、強化剤がEBAGMAである場合、存在するEBAGMAの量は約1〜2%であることができる。理論によって制約されることを意図しないが、この量は、PHA組成物から製造されたフィルムもしくはシートの(接触透明度などの)光学的透明度を損なうことなくPHA強靱性を向上させるのに十分なものである。
【0032】
本PHA組成物は、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料もしくは顔料、フィラー、難燃剤、滑剤、フレークなどの強化剤、加工助剤、粘着防止剤、剥離剤、および/またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む1つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0033】
これらの添加剤は、0.01〜7重量%、または0.01〜5重量%で組成物中に存在してもよい。例えば、組成物は、約0.5〜約5%可塑剤;約0.1〜約5%酸化防止剤および安定剤;約3〜約20%フィラー;約0.5〜約10%ナノ複合材料;および/または約1〜約20重量%難燃剤を含有してもよい。好適なフィラーの例には、沈殿CaCO3、タルク、白雲母、モンモリロナイト、グラファイト、およびバーミキュライトなどの鉱物が挙げられる。
【0034】
組成物は、PHAとカルボン酸とを、酸が実質的にまたは一様に均質に分散するまで混合することによって製造することができる。他の耐衝撃性改良剤(例えば、エチレン−アクリレートコポリマー、アイオノマー、グラフト化剤)および添加剤もまた組成物中に分散させられてもよい。当該技術分野で公知の任意の混合方法が用いられてもよい。例えば、成分原材料は、樹脂組成物を生成するために、単軸または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、Buss Kneader、二重螺旋Atlanticミキサー、Banburyミキサー、ロールミキサーなどのメルト−ミキサーを用いて実質的に分散するかまたは均質になるまで混合されてもよい。
【0035】
あるいはまた、成分原材料の一部をメルト−ミキサーで混合し、成分原材料の残りをその後添加し、実質的に分散するまたは均質になるまでさらに溶融混合することができる。生じた組成物は、PHA中のカルボン酸のコンセントレートであり、組成物の、50〜90重量%または60〜70重量%のPHAと10〜50重量%または30〜40重量%のステアリン酸などのカルボン酸とを含むことができる。
【0036】
PHAを含む組成物の結晶化速度を高めるための方法は、配合物を製造するために先ずPHAを核剤と接触させる工程と、配合物を物品へ熱成形する工程とを含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなり、ここで、接触工程は、複合材料が物品へ熱成形されるときに結晶化速度を向上させるのに十分な条件下に実施することができる。核剤入りPHAを製造するための条件は、水分からのPHAの適切な乾燥および過度の解重合を回避するために十分に低い溶融温度および継続時間などの、用いられるPHAに普通に適用される配慮を含むべきである。核剤とPHAとの接触は、周囲圧力でまたは0〜約60MPaまたは0〜約34MPaの範囲で、約100℃〜約400℃、約170℃〜約300℃、または特に約180℃〜約230℃の、PHAの軟化点より上およびPHAの解重合温度より下の範囲の溶融混合温度を含むことができる。この条件は、核剤を小粒子へ分散させ、かつ、それらを溶融PHA中に一様に分散させるのに十分に高い剪断履歴と、PHA分子量の過度の損失およびその脆化を回避するのに十分に低い剪断履歴とを生み出す。剪断履歴は、継続時間にわたって剪断するための量の概念である。溶融物は、それが高い剪断を短時間経験するときよりもそれが高い剪断を長時間経験するときにより多くの剪断履歴を経験する。同様に溶融物は、それが非常に低い剪断を長時間経験するときよりもそれが中程度の剪断をある時間経験するときにより多くの剪断履歴を経験する。プラスチック加工装置の剪断履歴は、装置内での、例えば、ペレットを製造するサイズスクリュー押出機での異なる剪断速度および継続時間によって複雑化されるかもしれず、スクリューは、スクリューのチャネル内では低い剪断速度および長い経過時間を有するが、スクリューと押出機の壁との間では高い剪断速度および短い経過時間を有する。一般に、不十分に高い剪断履歴は、共回転または反転であってもよいローター翼ミキサーを用いる加熱回分式双ブレンドミキサー中へ周囲温度原料の導入から約2分未満の混合の使用か、または混練ブロックか後進エレメントかのいずれかである10%未満の長さのスクリューエレメントを含有し、残りが前方搬送セクションであるスクリューを用いる、10:1未満の長さ対直径比の三ツ葉状の共回転二軸スクリュー押出機の使用によって達成される。例えば、十分に高い剪断履歴は、回分式装置での少なくとも3分および連続装置での少なくとも20:1のL:D(長さ対直径)比の使用によって生じ得るし、過度に高い剪断履歴は、回分式装置での40分超または連続装置での50:1のL:D比から生じるかもしれない。単軸スクリュー押出機、反転二軸スクリュー押出機、またはロールミルなどの、他の加工装置を溶融混合のために用いることができる。同様に有用な加工機は、スクリューの終わりに混合トーピード付きの双葉状二軸スクリュー押出機および単軸スクリュー押出機を含むかもしれない。カルボン酸は、十分に高いまたは0.5%以上の結晶化を向上させ、それによって55℃以上で耐熱性を与える量で存在してもよい。理論によって制約されることなく、カルボン酸が余りにも高いレベルで存在する場合、それは、溶融ブレンド粘度および溶融強度を、ペレット、シーティング、または熱成形品へのその後の加工にとって余りにも低いものであるようにするかもしれない。例えば、PHA中のカルボン酸のコンセントレートのペレットは、核剤添加剤レベルが約50%未満である場合には水中ペレット化によって形成されるかもしれないが、非晶質シーティングは、十分に高い溶融強度のために当該レベルが約10%未満であることを必要とする。さらに、PHAとマッチしない屈折率を有する核剤粒子のサイズは、低い曇り度のために約500nm未満、約300nm未満、または80nm未満さえであるかもしれない。核剤を小サイズに分散させることの困難さは、使用される核剤の量およびPHAへのその溶解性と共に増大するかもしれない。一般に、PHA中に約2%超の核剤は、曇ったブレンド物につながるかもしれない。例えば、3%超または約5%超は、用いられる混合のタイプにかかわらず、余りにも高いレベルの曇り度を生じるかもしれない。
【0037】
以下の本開示は、例としてフィルムを使用し、フィルムより厚いシートにも適用できる。
【0038】
本明細書に開示される組成物を含むかまたはそれから製造される物品もまた開示される。組成物は、完成品への加工が高い結晶化度と一緒に低い曇り度を達成するための方法で行われるという条件で、PHAに好適な任意の溶融加工技法を用いて物品へ成形されてもよい。低い曇り度および結晶化度を達成するための当該技術分野で公知の普通に用いられる溶融成形法は、ブロー成形が続く射出成形、延伸付き異形材押出成形、または押出ブロー成形を含むことができる。組成物はまた、非晶質キャストフィルムを製造するための押出またはカレンダー掛けによってフィルムへ溶融成形されてもよい。非晶質であるそれらのキャストフィルムは、物品および構造物へさらに熱成形されてもよい。「非晶質」は、示差走査熱量測定法(DSC)で周囲温度からその融点の25℃上まで約10℃/分で加熱された場合、溶融吸熱「J/g」から結晶化発熱「J/g」を差し引いたときに約1J/g未満を示すPHAのサンプルを意味する。速い結晶化サンプルは、非晶質であり、かつ、DSCで加熱されるときに結晶化発熱で1J/g超、特に20J/g超を発現させるものである。
【0039】
組成物はまた、未延伸で結晶性であってもよく、かつ、曇り度を有するフィルム、棒、異形材、シート、繊維およびフィラメント、または未延伸で非晶質の半完成品、またはブローンフィルムなどの溶融物から延伸されたまたは射出延伸ブローン成形もしくは熱成形によるなどのほぼ非晶質の半完成品を加熱することによって後段階で延伸された半完成品を形成するために使用されてもよい。
【0040】
組成物は、キャストフィルムもしくはシートを製造するためのスロットダイか、ブローンフィルムもしくはシートを製造するための輪状ダイかのいずれかを通しての押出、溶融物からもしくは組成物の加工における後段階で延伸される物品および構造物への引き続く熱成形によってフィルムもしくはシートへ成形されてもよい。
【0041】
完全給付透明度および核剤の熱的利益を達成するために、任意の非晶質の半完成品の製造は、過度の結晶化度を望ましくは回避し、完成品の製造は、透明性を重んじる物品のそれらの部分についてPHAの不十分な結晶化度および過度に大きい結晶の両方を望ましくは回避する。物品のその後の成形または延伸を妨害するかもしれないおよび/または大きい曇り度の結晶を導入する過度の結晶化度を回避するために、PHAの非晶質シートまたは物品の製造は、偶然の核剤を回避することによって制御されたまたは一貫した量の核剤を提供するためにピーク融点より20℃超上の溶融PHAの使用を含む。
【0042】
望ましい生じた溶融物はガラス転移温度に急冷される。厚い異形材については、異形材の内部の冷却速度は、物品の外部上で実用的な最寒温度の使用によって恩恵を受けるかもしれない。当該温度は望ましくはPHAのガラス転移温度より下である。例えば、約50℃のガラス転移温度を有するPHAについては、約700μのシーティング厚さは、10℃の片側急冷温度の使用から恩恵を受けるかもしれないが、500μシートは、20℃の片側急冷条件を使用して非晶質にすることができる。約40℃より上の急冷温度は、ガラス転移温度が約40℃である場合、かかる表面と接触する溶融物は余りにもゆっくり冷え得るおよび/またはかかる表面にくっつき得るので有用なものではないかもしれない。正確な最低温度は、結晶化が本質的により遅いPHAが使用されるとき、またはより少量の核剤が使用されるとき、または物品が片側に対して全側から冷却されるかもしくは急冷されるとき、またはPHAのガラス転移温度がより低いときには下がるかもしれない。
【0043】
非晶質の半完成品を透明な結晶化シートへ加工する際に、非晶質物品は先ず伝導、対流、または放射加熱によって加熱されてもよい。放射加熱では、物品は、200℃〜約700℃の範囲の黒体放射温度に曝される。230℃黒体放射体での時間は、両側から加熱される600μ厚さの異形材については約10秒〜約70秒、または20秒〜60秒、または30秒〜50秒の範囲であってもよい。次工程で結晶化度および透明度を達成するための半完成品についての最適温度は、使用される特定のPHAについてのガラス転移点と融点とのほぼ中間である。
【0044】
加熱された非晶質の半完成品を完成した透明な結晶性物品へ成形する際に、半完成品は、結晶化をもたらし、そしてそれらの結晶子が曇りをもたらさないほど十分に小さいものであり得るのに十分に高速でおよび高延伸比で延伸されてもよい。延伸比は、1秒当たり約10%〜約1000%、または1秒当たり20%〜1秒当たり600%であってもよい。延伸比は、約20%(ポスト延伸長さはプレ延伸寸法の150%である)〜約800%、または50%〜700%、または100%〜300%であってもよい。理論によって制約されることを意図しないが、遅い延伸速度は、曇りまたは不完全に成形された物品を生成するかもしれず、余りにも高い延伸速度は、ガラス転移温度より上で不十分な寸法安定性を有する完成品をもたらす不十分に高い結晶化度を生じるかもしれない。低い延伸比は、熱成形プロセスの短い時間内に十分な結晶化度を誘導しないか、または完成品に曇りを引き起こすかもしれないし、余りにも高い延伸比は、物品の過度の薄化または引裂を引き起こすかもしれない。正確な延伸比は、不平衡のもしくは一次元延伸の物品、または真空、加圧支援の、もしくは物理的「プラグ支援」なしの場合などの延伸操作中に冷却されない物品についてはより高いかもしれない。さもなければ、延伸操作中に冷却される物品のそれらの部品は、曇りまたは不十分な寸法安定性を経験するかもしれない。
【0045】
フィルムは、PHA組成物の単層(単分子層シート)かまたはPHA組成物の層と異なる材料を含む少なくとも1つの追加の層とを含む多層フィルムもしくはシートであってもよい。
【0046】
包装用途向けには、多層フィルムは、最外構造化層すなわち露出層、内層または内部バリア層、およびパッケージの意図される内容物と接触し、それらと相溶性で、かつ、任意の必要なシールを形成することができる最内層をはじめとする3つ以上の層を含んでもよい。他の層もまた、これらの層を結び付けるのに役立つ接着層としての機能を果たすために存在してもよい。各層の厚さは約10〜約200μmの範囲であることができる。
【0047】
最外構造層または露出層は、本PHA組成物から製造されてもよい。追加の構造層は、延伸ポリエステルまたは延伸ポリプロピレンを含んでもよいが、延伸ポリアミド(ナイロン)をまた含むことができる。構造層は、例えば、グラビア法を用いる裏刷によって印刷することができる。
【0048】
内層は、その内部の製品に影響を及ぼす可能性のある水、酸素、二酸化炭素、紫外線などの電磁放射線、およびメタノールなどの試剤による層を通っての透過速度を下げるための1つ以上のバリア層を含むことができる。バリア層は、プリント層、酸化ケイ素(SiOx)、酸化アルミニウム、芳香族ナイロン、それらの関連コポリマーだけでなく同じもののブレンド物または複合材料まで通読するためなどのPHAの光学的価値を妨げないように配置された、例えば、金属化ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アルミ箔を含むことができる。
【0049】
パッケージの最内層はシーラントであることができ、最外層の溶融温度より実質的に下の温度でそれ自体にまたは他のフィルムもしくは基材に接合する(密封する)ことができるポリマー層もしくはコーティングであることができる。シーラントはよく知られており、E.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont)(Wilmington,Delaware)から商業的に入手可能であることができる。基材は、箔、紙または不織繊維材料を含むことができる。
【0050】
多層フィルムは、例えば、共押出などの当業者に周知の任意の方法によって製造することができ、1つ以上の他の層または基材上へ積層することができる。他の好適な変換技術は、例えば、ブローンフィルム(共)押出および押出コーティングである。
【0051】
フィルムは、容器などの包装材料、パウチおよび蓋、風船、ラベル、不正開封防止バンド、またはフィラメント、テープおよび革ひもなどのエンジニアリング品を製造するために使用することができる。
【0052】
物品は、造形品または成形品などの他の形態にあることができる。容器および包装材料は、真空または加圧成形によってシートから製造されたトレイ、コップ、キャップ、ボウル、または蓋をはじめとする様々な形状のものであることができる。他の形状には、未延伸シートの深絞り(すなわち、熱成形)によって、押出ブロー成形もしくは二軸延伸ブローイングパリソン(射出延伸ブロー成形)によって、射出成形、圧縮成形もしくは他の成形法によって製造されたもの;異形材押出品;カートン;スクイーズチューブ、パウチまたはボトル;容器の部品;ワインなどの液体、医療用流体、粉ミルクを小分けする硬質容器内のバッグまたはパウチ;クラムシェル、およびブリスターパックが含まれる。
【0053】
フィルムもしくはシートは、トレイ、コップ、缶、バケツ、タブ、箱またはボウルなどの凹面表面を製造するために熱成形することができよう。熱成形品は、蓋としての機能を果たす熱成形品にシールされるほぼ平面のフィルム(蓋材用フィルム)などの、追加の要素と組み合わせられてもよい。
【0054】
包装することができる製品には、飲料(例えば、炭酸飲料、オレンジジュース、アップルジュース、グレープジュース、他のフルーツジュースおよびミルク)、固形食品(例えば、肉類、チーズ、魚、鶏肉、ナッツ、コーヒー、アップルソースまたは他のソース、シチュー、乾燥果物、食品ペースト、スープおよびスープ濃縮物ならびに他の食用品目)、スパイス、香辛料(例えば、ケチャップ、マスタード、およびマヨネーズ)、ペットフード、化粧品、パーソナルケア製品(例えば、練り歯磨き、髭剃りクリーム、石鹸、シャンプー、ローションなど)、医薬品、香料、電子部品、工業化学薬品または家庭化学薬品(例えば、洗濯洗剤、柔軟剤)、農薬、医療機器および装置、薬液、燃料、ならびに生物学的物質を含む食品および非食品品目が含まれる。
【0055】
フィルムはまた、分解性縫合糸として用いるためのスリットフィルム繊維を提供するために切断されて狭いテープにされ、さらに延伸されてもよい。
【0056】
以下の実施例は例示的であるにすぎず、本明細書に記載されるおよび/または特許請求される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0057】
実施例は、熱成形コップの製造で本発明を例示する。
【0058】
原材料
PLA2002Dは、NatureWorks LLC(Minnetonka,MN USA)から購入し、190℃および100s-1で約1500Pa・s溶融粘度を有した。
【0059】
ステアリン酸(95%純度)は、Aldrich(Batch 11821LC)から入手した。
【0060】
パルミチン酸(99%純度)は、City Chemical LLC(Connecticut)(P4188)から入手した。
【0061】
ベヘン酸(99%純度)は、Aldrich Chemical Company(No.216941−5G)から入手した。
【0062】
タルク#1は、Aldrich(No.243604−25G)製の公称10μタルクであった。
【0063】
ステアリン酸ブチル(カタログ#B2188)、ステアリン酸2−エチルヘキシル(カタログ#327−27622−914)およびステアリン酸ステアリル(カタログ#324−27632−916)は、City Chemicalから入手した。
【0064】
ステアリン酸亜鉛(カタログ#557−05−1)は、City Chemicalから入手した。
【0065】
分析装置および方法
回分式混合は、装置を目標溶融温度に予熱し、次にローターを作動させ、速度計をスタートさせ、約55gの原料を約15秒間内に装入し、蓋を閉め、そしてトルク、時間、および溶融温度を記録することによって運転される、ローラー翼ローターおよび55g混合室を用いるHaake Rheocord 9000で行った。完了したとき溶融マスを冷たい容器上へ排出させ、周囲温度まで冷却し、密封した。
【0066】
連続溶融混合および非晶質シート押出は、コートハンガーダイおよび急冷ドラム付きWerner&Pfleiderer(W&P)28mm三ツ葉状二軸スクリュー押出機で行った、この押出機は830mm長さのスクリューを用いた。ペレットおよび添加剤は、固体混合物としてスクリューのトップから約70mmで入った。スクリューはその長さのほとんどについて前方搬送区分を用い、その長さの約20%は混練ブロックを用いた。この装置は、190℃〜210℃の溶融温度で125rpmで運転させた。溶融物は、Foremost容積測定ペレット供給機を用いてコートハンガーダイ(20cm幅および0.76mmダイ間隔)を約10kg/時〜20kg/時で通過した。溶融物カーテンは、10℃〜23℃に冷却された急冷ドラムまで約5cmを垂直に落下した。ドラム回転速度を最小溶融延伸に設定した。シート厚さを、ポリマー供給物の押出量を変えることによって約250ミクロン〜約750ミクロンに制御した。
【0067】
DSCは、TA Instruments(New Castle,Delaware)Model Q1000であり、約9mgのサンプルについて周囲温度から200℃か250℃かのいずれかまでの10℃/分加熱、約10℃までの10℃/分の冷却、および同様に再加熱で操作した。発熱量および吸熱量は、J/gおよび最大熱流量の温度の観点から定量化した。一次加熱中の100℃〜140℃近くでの任意の発熱は、冷たい非晶質状態からのPLA2002の結晶化を表し得た。かかる結晶化は、意図的に添加した核剤(カルボン酸)、またはサンプルの長期にわたる保管中にPLA2002Dそれ自体から、もしくはサンプルの元の成形中の徐冷から形成された偶然の核剤によって誘発することができた。偶然の核剤は、それらの存在と結晶化への影響とが予測できない、または一貫性がないので望ましくなかった。ある量のかかる結晶化は、熱成形コップにとっては有用と考えられた。例えば、未延伸域(コップのベースおよびトップ)は、成形のために必要とされる加熱への暴露中に結晶化から熱的に恩恵を受けることができた。しかしながら、過度に速い結晶化は、それらが金型のシェードに達する前に十分に結晶化するかもしれないので、ほんの部分的に熱成形したコップをもたらすかもしれない。145℃〜155℃近くでの吸熱は、元のサンプル中に存在した、そして加熱中に形成されたPLA2002Dの結晶の溶融を表し得た。サンプルを200℃まで加熱してほとんどの偶然の核剤を溶融させた。サンプルをまた、偶然の核剤の溶融をより良く確実にするために、および核剤がPLA2002Dを解重合させるかどうかを評価するために250℃に加熱した。冷却中に、90℃〜130℃近くで結晶化発熱があり得た。このタイプの過度に速い結晶化があった場合、(約600μm超の)厚い非晶質シートを製造することはより困難であり得た。DSC装置での二次加熱は、偶然のPLA2002D核剤が200℃で、特に250℃で溶融したと推測されるので、意図的に添加した核剤を評価するために用いた。そんな訳で、二次加熱中の発熱および吸熱は通常、より低い熱流量値を有した。
【0068】
曇り度は、ASTM D1003 92年改訂を用いて評価した。曇り度は、曇り度に影響を及ぼす任意の表面粗さを意味する「内部曇り度」で報告され、液体潤滑コーティングによって最小化される。曇り度について試験したサンプルは、250μ〜750ミクロン厚さの押出溶融物カーテンを10℃〜23℃に冷却された急冷ドラム上で急冷することによってそれらのPHA内容物において非晶質にした。あるいはまた、シーティングの厚いサンプルまたは回分式ブレンド物からのサンプルを、2つの微小な長い金型およびホールドサイクルを用いて254μ厚さの成形品へ190℃で圧縮形成した。金型を直ぐに移動させ、水冷金型中で急冷した。曇り度データは対応する厚さと共に報告する。
【0069】
ラン1:これは、ステアリン酸なしの、55gのPLA2002DをHaakeで125rpmおよび210℃溶融温度で、10分間加工する比較例であった。
【0070】
ラン2:54gのPLA2002Dを、追加の0.2gのステアリン酸を加えた以外は比較ラン1の通り加工した。
【0071】
ラン3:54gのPLA2002Dを、追加の1gのステアリン酸を加えた以外は比較ラン1の通り加工した。
【0072】
ラン4:53.9gのPLA2002Dを、1.1gのパルミチン酸を加え、混合時間が6分であった以外は比較ラン1の通り加工した。
【0073】
ラン5:53.9gのPLA2002Dを、1.1gのベヘン酸を加えた以外はラン4の通り加工した。
【0074】
ラン6:53.9gのPLA2002Dを、1.1gのベヘン酸#2を加えた以外はラン4の通り加工した。
【0075】
ラン7:55gのPLA2002Dを、1.1gのタルク#1を加え、そして混合を原料が溶融温度に達した後2分にわたって190℃で行った以外はラン4の通り加工した。
【0076】
上記のものの非晶質ブレンド物はラン7のもの以外は透明であった。
【0077】
ラン8:PLA2002Dを、W&P28mm押出機を用いて.非晶質シーティングへ連続的に加工した。
【0078】
ラン9:本方法は、供給物がPLA2002Dと1%ステアリン酸との固体混合物であった以外はラン8の通りであった。
【0079】
ラン10:本方法は、供給物がPLA2002Dと2%ステアリン酸との固体混合物であった以外はラン8の通りであった。
【0080】
ラン11:本方法は、供給物がPLA2002Dと2%ステアリン酸ブチルとの固体混合物であった以外はラン4の通りであった。
【0081】
ラン12:本方法は、供給物がPLA2002Dと2%ステアリン酸2−エチルヘキシルとの固体混合物であった以外はラン4の通りであった。
【0082】
ラン13:本方法は、供給物がPLA2002Dと2%ステアリン酸ステアリルとの固体混合物であった以外はラン4の通りであった。
【0083】
ラン14:本方法は、供給物がPLA2002Dと2%ステアリルアミドとの固体混合物であった以外はラン8の通りであった。DSC装置で試験した非晶質シーティングは厚さが約560ミクロンであった。曇り度は、254ミクロン厚さに圧縮成形したシートのサンプルに関して行った。
【0084】
ラン15:本方法は、供給物がPLA2002Dと2%ステアリン酸亜鉛との固体混合物であった以外はラン14の通りであった。
【0085】
ラン16:本方法は、供給物がPLA2002Dと2%ステアリルアルコールとの固体混合物であった以外はラン4の通りであった。
【0086】
ブレンド物を次表にまとめる。表中、「一次発熱」(発熱)は、「熱流量」対だんだんと高くなる温度をプロットしたときに結晶化発熱下の領域であり;「xal」温度は、最高の発熱流量があった温度、すなわち、非晶質サンプルの加熱中の結晶化温度を意味し;「一次吸熱」(吸熱)は、「熱流量」対だんだんと高くなる温度をプロットしたときに溶融吸熱下の領域であり、「溶融温度」は、溶融吸熱に関連した最大熱流量の温度であり;「二次発熱」は、サンプルが最初に200℃または250℃に加熱され、そして周囲温度に冷却された後に起こった結晶化発熱下の領域であり、「最高温度」は二次発熱の最大熱流量についての温度であり;「二次吸熱」は、それが二次加熱サイクル中に溶融するときのサンプルの融点である。二次発熱と二次吸熱の始まりとの間に幾らかの重なりがあり得るし;それ故J/g値の不確かさは約±10%であった。ラン1および2についての曇り度は、ASTM方法に従って測定しなかったが、良好であると目視により測定した。冷却結晶化吸熱についてのより高い値は、非晶質シートへ急冷されつつあるPLA溶融物が急冷プロセス中に部分結晶化を経験しているかもしれないことを示唆する。PLAの前もって熱成形されたシートが部分的に結晶性であった場合、シートは不十分に熱成形されるかもしれない(部分結晶性のシートは、より高い温度に加熱されない限り、物品へ十分には成形されないかもしれない)。二次加熱結晶化発熱のより高い値は、熱成形プロセスについての熱履歴中の熱成形品の未延伸または弱延伸部分についての十分な結晶化のより大きい程度の傾向を示唆する。低い値は、熱成形品の未延伸または弱延伸部分が非晶質のままであり、そしてPLAのTgより上に一定時間加熱された場合に寸法不安定性を受けやすいかもしれないことを示唆する。二次加熱結晶化発熱の非常に高い値、または冷却および加熱発熱の合計についての高い値は、成形プロセス中の結晶化のために不十分な熱加工性を示唆する。かかる結晶化は、たとえわずかだけであるとしても、物品に曇りを生じるかもしれない。より高いレベルの結晶化は、物品の完全熱成形を遅らせるかもしれない。高い二次加熱溶融吸熱は、冷却中および加熱中の速い結晶化の組み合わせを示唆する。
【0087】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)と、核剤と、任意成分であるエチレンコポリマー、コア−シェルポリマー、またはそれらの組み合わせとを含むかまたはそれらから製造された組成物であって、前記核剤が1つ以上のカルボン酸を含み、または、前記組成物がエチレンコポリマーを含む場合には、前記核剤が、前記カルボン酸のアルキルエステル、カルボン酸のアルキルアミド、もしくはそれらの組み合わせを含み;前記カルボン酸が約10〜約30個の炭素原子を有し;前記カルボン酸が、前記組成物の重量を基準にして、0.5〜約15%で前記組成物中に存在し;かつ、前記カルボン酸が芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、ポリカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む、組成物。
【請求項2】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が5個以下の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸に由来する繰り返し単位を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)がグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸。3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせに由来する繰り返し単位を含む請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)がポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシ−酪酸)、ポリ(ヒドロキシ−ブチレート−バレレート)コポリマー、グリコール酸と乳酸、ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせとのコポリマーを含み;前記カルボン酸が1.2〜約10%で前記組成物中に存在し;かつ、前記カルボン酸が脂肪族一官能性カルボン酸を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)がポリ(乳酸)を含み、そして前記カルボン酸がラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記コア−シェルポリマーまたは前記エチレンコポリマーをさらに含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記核剤がステアリン酸、そのアルキルエステル、そのアルキルアミド、またはそれらの2つ以上の組み合わせである請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
約25〜約50%のステアリン酸と約50〜75%のポリ(ヒドロキシアルカン酸)とを含む高濃度マスターバッチである請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物またはポリ(ヒドロキシアルカン酸)を核剤と接触させて配合物を製造する工程と、前記配合物を物品へ熱成形する工程とを含む方法であって、前記組成物またはポリ(ヒドロキシアルカン酸)が請求項1〜7のいずれか一項に記載されたようなものであり、前記方法が前記熱成形中にポリ(ヒドロキシアルカン酸)の結晶化を促進するのに有効な条件下に実施され;核剤が請求項1、5、または7に記載されたようなものであり;かつ、前記核剤が前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の前記組成物の重量を基準として、1.2〜約10%で前記組成物または前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)中に存在する方法。
【請求項10】
組成物を含むかまたはそれから製造された物品であって、フィルム、シート、成形品、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み、前記組成物が請求項1〜7のいずれか一項に記載されたようなものであり、任意選択的に熱成形品であってもよい物品。

【公表番号】特表2010−529284(P2010−529284A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512290(P2010−512290)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/066379
【国際公開番号】WO2008/154527
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】