説明

ポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造のための混合装置および方法

【課題】大容量の混合容器およびその中に含まれる大セメント体積を回避しつつできる限り脱気されているポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストを製造することができる装置を提供すること。
【解決手段】本発明の装置は、入力側に第1の開口部(30)を、および出力側に第2の開口部(20)を有する管状中空体(10)と、管状中空体(10)の中に軸方向に配置された少なくとも1つの回転可能に取り付けられたシャフト(40)と、シャフト(40)の外側に沿って軸方向に配置されたスクリュー羽根(50)であって、シャフト(40)はピッチが第2の開口部(20)の方向に減少するスクリュー羽根(50)を有する少なくとも1つのセクションを有する、スクリュー羽根(50)と、シャフト(40)上に配置された少なくとも1つの撹拌ブレード(60)と、管状中空体(10)の内側に配置された剛体の混合要素(70)とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ペースト様のポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造のための混合装置および方法である。
【背景技術】
【0002】
従来のPMMA系骨セメントは数十年にわたって知られており、Charnley卿の基礎研究(非特許文献1)に由来している。そのPMMA骨セメントの基本構成は、原理上はそのとき以来同じのままである。PMMA骨セメントは、液体モノマー成分および粉末成分を含む。このモノマー成分は、一般に、(i)モノマーであるメタクリル酸メチルおよび(ii)このモノマーに溶解された活性化剤(例えばN,N−ジメチル−p−トルイジン)を含有する。上記粉末成分は、(i)メタクリル酸メチルおよびコモノマー(スチレンおよびアクリル酸メチル、または類似のモノマーなど)に基づいて、重合、好ましくは懸濁重合により製造された1以上のポリマー、(ii)放射線不透過性物質、および(iii)開始剤、(例えば)ジベンゾイルペルオキシドを含む。この粉末成分が上記モノマー成分と混合されると、このモノマー成分のメタクリル酸メチルの中でのこの粉末成分のポリマーの膨潤に起因して、塑性変形できるペーストが製造される。同時に、活性化剤であるN,N−ジメチル−p−トルイジンはこのジベンゾイルペルオキシドと反応し、このジベンゾイルペルオキシドはラジカルの形成を伴って分解する。形成されたラジカルはメタクリル酸メチルの重合を開始する。このメタクリル酸メチルの重合の進行に伴って、当該セメントペーストの粘度は、このペーストが固化しそして硬化するまで、上昇する。
【0003】
医療関係の使用者にとっての先行技術のPMMA骨セメントの著しい不都合は、使用者は、その液体モノマー成分を、そのセメントの施用の直前に混合システムの中またはるつぼの中で粉末成分と混合しなければならないということにある。この場合、混合のエラーが容易に起こる可能性があり、これが起こるとそのセメントの品質に悪影響を及ぼしかねない。さらに、この成分の混合は、中断されることのないプロセスで実施される必要がある。この場合、セメント粉末全体が集塊の形成なしに当該モノマー成分と混合されること、およびその混合プロセスの間に気泡の入り込みが回避されることが重要である。真空混合システムを用いると、手による混合とは対照的に、セメントペーストの中での気泡の形成はほぼ防止される。混合システムの例は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示されている。しかしながら、真空混合システムは付加的な真空ポンプが必要となり、それゆえ相対的に費用がかかる。さらには、そのモノマー成分を粉末成分と混合した後、セメントの種類によっては、そのセメントペーストが不粘着性であり施用することができるようになるまで、ある程度の長さの時間が経過しなければならない。従来のPMMA骨セメントの混合の際に多くのエラーが起こりうるため、適切に訓練された人材も必要とされる。この適切な訓練には、かなりのコストが伴う。さらには、上記液体モノマー成分と上記粉末成分との混合は、使用者がモノマー蒸気に曝露されることおよび粉末状セメント粒子が放出されることにつながる。
【0004】
ペースト様の骨セメントは、粉末成分および液体成分から配合される従来のセメントの興味深い代替物の典型例である。このようなペースト様の骨セメントは、例えば特許文献4および特許文献5に記載されている。2成分系ペーストセメントは、2つの貯蔵安定性のある、ペースト様の成分から配合され、これらの成分は、混合後には、数分以内に硬化するセメントペーストを与える。これらのペーストは、カートリッジまたはチューブ状のバッグで医療関係者が利用できるようにされている。これらの骨セメントペーストは、少なくとも(i)モノマー,(ii)このモノマーに可溶なポリマー、および(iii)このモノマーに不溶性のポリマーおよび/または他の充填剤を含有する。加えて、レドックス開始剤系の成分がセメントペーストの中に含有される。さらには、2成分系とは対照的に、例えば磁場を変えることによる、エネルギーの作用によって重合へと導かれる一成分系ペースト骨セメントを製造することも可能である。
【0005】
これらのセメントペーストの製造のために、粉末様のセメント成分Aおよび液体モノマー成分Bが混合される。粉末様の成分Aは、モノマー成分Bのモノマーに可溶なポリマー、モノマー成分Bのモノマーに不溶性のポリマーおよび/または充填剤を含む。粉末様のセメント成分Aを液体モノマー成分Bと混合すると、このモノマーまたはモノマー混合物に可溶なポリマーは膨潤し、その後に当該ポリマーはそのモノマー/モノマー混合物に溶解する。この混合物の粘度はここで大きく上昇し、その結果、混合物はペーストを形成する。ペーストの粘度は高いため、当該不溶性のポリマーおよび/または充填剤は沈降しない。素早く膨潤する、可溶性ポリマーを使用すると、このプロセスは5〜30分以内に起こる。この膨潤段階の間、沈降によって相分離が起こらないように、この混合物を撹拌することまたは混練することが必要である。この後、この可溶性ポリマーはわずかに膨潤するだけである。
【0006】
ペーストの製造は、食品および接着剤工業においては典型的なプロセスであり、これは、大容量の混合容器を用いて実施される。このとき、ペースト成分の少なくとも1つの混合は、従来のブレード型撹拌機またはロッド撹拌機(rod stirrer)を用いて実施される。形成されたペーストは、嵌めこまれた可動式のカバーを通して混合容器からカートリッジまたはチューブ状のバッグ、およびチューブなどの適切なパッケージング手段の中へと、圧迫の助けを借りて押し出される。しかしながら、非常に高い粘度が一部には原因で、形成されたペースト様の物質の脱気は、問題がある。
【0007】
主成分として骨セメントペーストの中に含有されるモノマーであるメタクリル酸メチルは、非常に反応性が高くかつ揮発性の液体を伴う。メタクリル酸メチルに加えて、例えばポリ(メタクリル酸メチル)などの溶解されたポリマーも、骨セメントペーストの中に含有される。ポリ(メタクリル酸メチル)をメタクリル酸メチルと混合すると、ゲルが形成される。それゆえ、セメントペーストはゲル様の状態にある。セメントペーストがゲル様の状態にあるときは、セメントペーストの中に含有されるモノマー混合物は、すでに極めて反応性が高い。その結果、これらの系は、自発的な重合に向けた特定の傾向を有する。
【0008】
ラジカル重合では、メタクリル酸メチルは−59kJ/molの反応エンタルピーを放出する。典型的な調製容器は、約200リットルの保有容量を有する。約40重量%のモノマーを含有する約200kgのペーストセメントの開始時には、約80kg(800molに対応する)のメタクリル酸メチルが含まれている。これらの出発物質の望ましくない自発的な重合があると、およそ−47,200kJのエネルギーが数分以内に放出されることになり、これは、大火または爆発につながりかねない。さらに、セメントペーストの自発的な重合の後は、硬化した骨セメントペーストは機械的に非常に耐久性があるため、非常に高価な調製容器はもはや使用できなくなる。それゆえ、骨セメントペーストの製造のための従来の調製容器の使用は、非常に問題がある。さらに、形成されたセメントペーストの脱気も問題があることが判明している。セメントペーストの中に閉じ込められた空気の残留分は、一方で、含まれた酸素に起因してペーストの貯蔵能力に悪影響を及ぼす可能性があり、他方、空気が含まれることは、硬化したセメントの機械的安定性を低下させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4015945号明細書
【特許文献2】欧州特許第0674888号明細書
【特許文献3】特開2003−181270号公報
【特許文献4】欧州特許第2052747号明細書
【特許文献5】欧州特許第2052748号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Charnley,J.、「Anchorage of the femoral head prosthesis of the shaft of the femur」、J.Bone Joint Surg.、1960年、第42巻、28−30頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ本発明は、大容量の混合容器およびこれらの容器の中に含有される大きいセメント体積を回避しつつできる限り脱気されているポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストを製造する際に用いることができる装置を提供するという目的に基づく。さらには、できる限り脱気されているポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造のための方法が利用可能であるべきであり、大容量の混合容器の使用なしにこの方法が進行するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る目的は、独立請求項の主題により成し遂げられる。
【0013】
結果として、本発明は、粉末様のセメント成分Aおよび液体モノマー成分Bからのポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造のための装置であって、入力側に第1の開口部を、および出力側に第2の開口部を有する管状中空体と、この管状中空体の中に軸方向に配置された少なくとも1つの回転可能に取り付けられたシャフトと、このシャフトの外側に沿って軸方向に配置されたスクリュー羽根(thread turns)であって、当該シャフトは、ピッチが第2の開口部の方向に減少するスクリュー羽根を有する少なくとも1つのセクションを有する、スクリュー羽根と、シャフトの上に配置された少なくとも1つの撹拌ブレードと、この管状中空体の内側に配置された剛直な混合要素と、を具える装置を提供する。
【0014】
さらには、本発明は、上記の装置を使用する、粉末様のセメント成分Aおよび液体モノマー成分Bからのポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造のための方法であって、粉末様のセメント成分Aが第1の供給用開口部を通して連続的に導入され、液体モノマー成分Bが第2の供給用開口部を通して管状中空体の中へと導入され、セメント混合物Cが膨潤によって形成され、シャフトの軸方向の回転運動が引き起こされ、これによりセメント混合物Cの質量流量が第1の開口部から第2の開口部の方向に生成され、当該セメント混合物が第2の開口部から押し出される方法を提供する。
【0015】
本発明に係る装置により、ほぼ脱気されたセメントペーストの連続製造が可能になる。
【0016】
本発明は、図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造のための本発明に係る装置の実施形態。
【図2】異なる断面の管状中空体を有する、ポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造のための本発明に係る装置の実施形態。矢印は、シャフトの他の可能な回転方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る装置により、ポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造が可能になる。ポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストは、ポリマーであるポリ(メタクリル酸メチル)を含有しかつ骨セメントの製造のために好ましく使用されるペースト様の組成物を含む。当該ポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストは、一方で、適切な開始剤系とは対照的に、例えばエネルギーの作用により直接に、従ってさらなる成分と混合することなく重合させて、骨セメントを製造することができる。他方、その骨セメントは複数の骨セメントペーストの混合および硬化により製造することもできる。これらの骨セメントペースト自体は、本願明細書に記載される装置を用いて本発明に従って生成される。この場合、少なくとも1つの粉末様のセメント成分Aおよび1つの液体モノマー成分Bが互いに混合される。
【0019】
モノマー成分Bは少なくとも1つのモノマーを含む。このモノマーは、例えば一官能性メタクリル酸エステルを含むことができる。とりわけ好ましいメタクリル酸エステルはメタクリル酸メチルである。粉末様のセメント成分Aは、モノマー成分Bのモノマーに可溶なポリマー、ならびにモノマー成分Bのモノマーに不溶性のポリマーおよび/または充填剤を含有することが好ましい。加えて、粉末様のセメント成分Aまたはモノマー成分Bは、さらなる成分、特に重合開始剤、重合促進剤、医薬物質(例えば、抗生物質)、放射線不透過性物質、および/または染料を有することもできる。
【0020】
本発明に係る装置(10)の1つの実施形態を、図1を参照して詳細に説明する。
【0021】
本発明に係る装置は管状中空体(10)を有する。好ましくは、管状中空体(10)は、円形または楕円形の断面を有する。加えて、しかしながら、本発明に係よれば、管状中空体(10)が異なる断面を有することも可能である。例えば、断面は、2以上、例えば3つの互いに隣接した円形要素により形成されてもよい(図2を参照)。管状中空体(10)の内側は、好ましくは、耐摩耗性の材料を有するか、またはこのような耐摩耗性の材料(セラミックなど)で覆われている。このようにして、管状中空体(10)の内側が損傷を受けること、および管状中空体(10)の内側から分離される可能性がある成分が骨セメントペーストに到達して骨セメントの品質に悪影響を及ぼすことは、防止することができる。
【0022】
管状中空体(10)は、好ましくは鉛直方向に配置されており、第1の開口部(30)および第2の開口部(20)を有する。好ましくは、第1の開口部(30)は頂部で管状中空体(10)の境界となり、第2の開口部(20)は底部で管状中空体(10)の境界となる。第1の開口部(30)は入力側開口部であり、第2の開口部(20)は出力側開口部である。
【0023】
本発明に係る装置は、少なくとも1つの回転可能に取り付けられたシャフト(40)をさらに有し、これは管状中空体(10)の中に軸方向に配置されている。シャフト(40)自体は、本発明によれば、軸方向に回転することができる。好ましくは、シャフト(40)は、シャフト(40)を軸方向に回転運動させることができる駆動部に連結されている。本発明の1つの実施形態によれば、この管状中空体の断面は、2以上、例えば3つの互いに隣接した円形要素によって形成される。この場合、管状中空体(10)の中に収容されるシャフト(40)の数は互いに隣接した円形要素の数に対応することが好ましい可能性がある。好ましくは、この場合、シャフト(40)は円形要素によって形成される管状中空体(10)の各セクションの中に収容される。
【0024】
スクリュー羽根(50)が、少なくとも1つのシャフト(40)の外側に配置される。好ましくは、スクリュー羽根(50)は、シャフト(40)の軸に対して垂直に広がる仮想平面に対して斜めになっておりかつそのシャフトの周りにらせんのように配置されている任意の要素であると理解される。この要素によって形成されるらせんは、連続的であってもよいし(古典的なねじ山の意味で)、または断続的なものであってもよい。仮想平面に対するこの要素の傾斜角は、1〜30°に等しいことが好ましく、より好ましくは5〜20°に等しい。
【0025】
本発明によれば、シャフト(40)は、スクリュー羽根(50)のピッチが第2の開口部(20)の方向に減少する少なくとも1つのセクションを有する。本発明によれば、ピッチは、シャフト(40)の軸に平行でかつシャフト(40)に沿った直線上での隣合うスクリュー羽根の距離であると理解される。結果として、第1の開口部(30)から第2の開口部(20)の方向にスクリュー羽根(50)のピッチが連続的に減少することが好ましい可能性がある。他方、本発明によれば、スクリュー羽根(50)のピッチが第2の開口部(20)の方向に減少するセクションに加えて、スクリュー羽根(50)のピッチが第2の開口部(20)の方向に減少しない少なくとも1つのさらなるセクションが存在することもまた提示される。1つの実施形態によれば、シャフト(40)はスクリュー羽根(50)を具える軸方向に配置されたいくつかのセクションを有し、少なくとも1つのセクションでは、スクリュー羽根(50)のピッチは第2の開口部(20)の方向に減少する。好ましくは、このセクションは、第2の開口部(20)の方向でスクリュー羽根(50)を有する次の隣合うセクションである。
【0026】
本発明に係る装置は、シャフト(40)上に配置された少なくとも1つの撹拌ブレード(60)をさらに有する。いくつかの撹拌ブレード(60)がシャフト(40)に沿って軸方向に置かれることが好ましい場合がある。撹拌ブレード(60)は、この装置の方向に、入力側開口部(30)から出力側開口部(20)の方向に質量流量が生成されるように配置されることが好ましい。例えば、撹拌ブレード(60)がシャフト(40)の軸に対して垂直に広がる仮想平面に対して斜めになっているという点で、これは成し遂げることができる。撹拌ブレード(60)の形状およびシャフト(40)の軸に対して垂直な仮想平面上に配置される撹拌ブレード(60)の数は限定されない。本発明によれば、撹拌ブレード(60)が棒形状の構成を有する場合は好ましい可能性がある。2つ、3つ、4つ、5つ、またはこれよりも多い撹拌ブレード(60)がシャフト(40)の軸に対して平行な平面に置かれる場合がさらに好ましい可能性がある。好ましくは、シャフト(40)の軸に対して平行な平面に取り付けられた撹拌ブレード(60)は、それらの距離が最大であるように配置される。従って、撹拌ブレード(60)は、シャフト(40)の軸に対して垂直な平面の中に、互いに対しておよそ180°、120°、90°、72°、またはこれら未満の角度で立つことが好ましい。
【0027】
加えて、本発明に係る装置は、管状体(10)の内側に配置された剛体の混合要素(70)を有する。剛体の混合要素(70)は、管状体(10)の内側と一体的に連結されていることが好ましい。1つの好ましい実施形態によれば、剛体の混合要素(70)は棒様の構成を有する。いくつかの剛体の混合要素(70)、特に2つ、3つ、4つ、5つ、またはこれより多い剛体の混合要素(70)が、シャフト(40)の軸に対して垂直に広がる平面上に置かれてもよい。好ましくは、シャフト(40)の軸に対して垂直な平面の中に配置される剛体の混合要素(70)は最大の間隔を有する。従って、剛体の混合要素(70)は、シャフト(40)の軸に対して垂直な平面の中に、互いに対しておよそ180°、120°、90°、72°またはこれら未満の角度で立つことが好ましい。
【0028】
好ましくは、撹拌ブレード(60)および剛体の混合要素(70)は、互いに対して交互に配置される。その結果、少なくとも1つの撹拌ブレード(60)は、好ましくはシャフト(40)に沿って取り付けられ、このブレードは、シャフト(40)の軸に対して垂直な同じ面内に置かれてはいない少なくとも2つの剛体の混合要素(70)に隣接している。少なくとも1つの剛体の混合要素(70)は管状中空体(10)の内側に取り付けられ、この剛体の混合要素は、シャフト(40)の軸に対して垂直な同じ面内に置かれてはいない少なくとも2つの撹拌ブレード(60)に隣接していることがさらに好ましい。
【0029】
本発明によれば、撹拌ブレード(60)、混合要素(70)、およびスクリュー羽根(50)は、シャフト(40)の回転運動が、第1の開口部(30)から第2の開口部(20)の方向への、当該装置の中に置かれた物質の質量流量を導くように配置される。好ましくは、この物質としては、粉末様の成分A、液体モノマー成分B、または粉末様の成分Aおよび液体モノマー成分Bから製造されるセメント混合物Cが挙げられる。セメント混合物Cはペースト様であることが好ましい。その結果、撹拌ブレード(60)は、シャフト(40)の回転運動に伴い、セメント混合物Cが開口部(20)の方向に移動するように配向される。さらには、スクリュー羽根(50)は、シャフト(40)の回転運動に伴い、セメント混合物Cが開口部(20)の方向に移動するように配置される。
【0030】
撹拌ブレード(60)、混合要素(70)、およびスクリュー羽根(50)はさらに、シャフト(40)の回転運動に伴い、撹拌ブレード(60)が剛体の混合要素(70)においてセメント混合物Cにせん断を加え、かつスクリュー羽根(50)がせん断を受けたセメント混合物Cを開口部(20)の方向に運搬および圧縮し、そしてそれを開口部(20)から外へ押し出すことができるように配置される。セメント混合物Cの圧縮によって、含まれている空気および気体の残留分が除去される。
【0031】
1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、スクリュー羽根(50)を有するシャフト(40)のセクションは、撹拌ブレード(60)を有するシャフト(40)のセクションの後に配置される。この実施形態によれば、スクリュー羽根(50)を有するシャフト(40)のセクションは、出力側開口部(20)の方向に撹拌ブレード(60)を有するシャフト(40)のセクションよりも遠くに置かれる。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、スクリュー羽根(50)の外径は、最大でも管状中空体(10)の内径に等しい。
【0033】
管状中空体(10)が第2の開口部(20)でノズル管(80)として構築されており、かつ任意に滑動部(slide)(95)もノズル管(80)の軸に垂直にノズル管(80)に配置される場合は、さらに有利である可能性がある。
【0034】
別の好ましい実施形態によれば、第1の開口部(30)は、1以上のシャフト(40)に対する1以上の軸受筒(91)、粉末成分のための少なくとも1つの供給用開口部(100)、およびモノマー液体のための少なくとも1つの供給用開口部(110)、および任意に排気用開口部(120)および任意に気体供給用開口部(130)を具えるキャップ(90)で閉じられる。
【0035】
さらには、温度均等化ジャケット(140)が管状中空体の周りに取り付けられている場合は有利である。この温度均等化ジャケット(140)は、温度自動調節用の水または他の適切な流体の流れを運ぶことができる。さらには、温度均等化ジャケット(140)の中に電熱器および/またはペルチエ冷却器を設けることが可能である。セメント混合物Cの圧縮の間、温度均等化ジャケット(140)は、自発的な重合を促進しかねないセメント混合物Cの望ましくない加熱を妨げることができる。さらには、セメントペーストの粘度および体積が後の充填プロセスの間一定に留まるように、セメントペーストCの一定温度が望ましい。
【0036】
本発明に係る方法を用いて、粉末様のセメント成分Aは第1の供給用開口部(100)を通して導入され、液体モノマー成分Bは第2の供給用開口部(110)を通して中空体(10)の中へと連続的に導入される。粉末様のセメント成分Aおよび液体モノマー成分Bの混合の際、膨潤によってセメント混合物Cが形成される。シャフト(40)の軸方向の回転運動を引き起こすことにより、セメント混合物Cの質量流量が第1の開口部(30)から第2の開口部(20)の方向に生成され、このセメント混合物は第2の開口部(20)から押し出される。
【0037】
シャフト(40)の軸方向の回転運動を通して、セメント混合物Cは撹拌ブレード(60)によって剛体の混合要素(70)の方向に移動され、これにより、当該セメント混合物Cのせん断が導かれる。剛体の混合要素(70)におけるセメント混合物Cのせん断を通して、これによりセメント混合物Cの急速な膨潤が導かれる。それゆえ、混合装置の中でのセメント混合物Cの滞留時間は、大幅に短縮することができる。この後の出力側開口部(20)の方向へのセメント混合物Cの運搬により、シャフト(40)上に配置されたスクリュー羽根(50)のピッチが減少するため、セメント混合物Cは圧縮される。圧縮の際、セメント混合物Cの中に含まれる気泡は除去される。それゆえ、ほぼ脱気されたセメントペーストの製造が可能になる。最後に、セメント混合物Cは、開口部(20)から押し出される。
【0038】
一方ではセメント混合物Cの急速な膨潤を通して、他方ではセメント混合物Cからの気泡の除去を通して、本発明によれば、粉末様のセメント成分Aおよび液体モノマー成分Bから短時間のうちにほぼ気泡のないポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストを製造してそれを装置から排出することが可能である。それゆえ、本発明によればポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストを連続的に製造することができ、かつ混合容器の容積を小さいまま保つことができる。
【0039】
このように本発明に係る方法は、ポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの連続製造を可能にする。
【0040】
好ましい実施形態によれば、粉末様のセメント成分Aと液体モノマー成分Bとの混合は、−30℃〜+60℃の範囲の温度で行われる。好ましくは、粉末様のセメント成分Aは、この温度で5〜20分の範囲内で液体モノマー成分Bと混合され、その結果、ペースト様のセメント塊Cが連続的に生成する。
【0041】
好ましくは、この混合は、混合プロセスの間に、溶解プロセスおよび膨潤プロセスがセメント成分Cにおいて起こるように実施される。
【0042】
混合プロセスの間に、ラジカル重合がセメント混合物Cの中で開始されないことも好ましい。結果として、本発明に係る方法は、反応射出成形プロセスの態様を伴わない。
【0043】
混合プロセスの間にセメント混合物Cの成分の部分的な融解または溶融は起こらないことがさらに好ましい。その結果、当該混合プロセスはまた、プラスチック工業で典型的である押出プロセスも伴わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末様のセメント成分Aおよび液体モノマー成分Bからのポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造のための装置であって、
入力側に第1の開口部(30)を、および出力側に第2の開口部(20)を有する管状中空体(10)と、
前記管状中空体(10)の中に軸方向に配置された少なくとも1つの回転可能に取り付けられたシャフト(40)と、
前記シャフト(40)の外側に沿って軸方向に配置されたスクリュー羽根(50)であって、前記シャフト(40)は、ピッチが前記第2の開口部(20)の方向に減少するスクリュー羽根(50)を有する少なくとも1つのセクションを有する、スクリュー羽根(50)と、
前記シャフト(40)の上に配置された少なくとも1つの撹拌ブレード(60)と、
前記管状中空体(10)の内側に配置された剛体の混合要素(70)と、
を具える装置。
【請求項2】
前記管状中空体(10)は鉛直方向に配置され、前記第1の開口部(30)は頂部で前記管状中空体(10)の境界となり、前記第2の開口部(20)は底部で前記管状中空体(10)の境界となる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スクリュー羽根(50)の外径は、最大でも前記管状中空体(10)の内径に等しい、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記管状中空体は前記第2の開口部(20)でノズル管(80)として構築されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
滑動部(95)が前記ノズル管(80)の軸に垂直に、ノズル管(80)に配置される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の開口部(30)は、少なくとも1つの前記シャフト(40)に対する1以上の軸受筒(91)、前記粉末様のセメント成分Aのための第1の供給用開口部(100)、および前記液体モノマー成分Bのための第2の供給用開口部(110)を有するキャップ(90)で閉じられる、請求項1から請求項5いずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記キャップ(90)は排気用開口部(120)を有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記キャップ(90)は気体供給用開口部(130)を有する、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記撹拌ブレード(60)は、前記シャフト(40)の回転運動によって、混合されるべきセメント混合物Cが前記開口部(20)の方向に移動するように配向される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記スクリュー羽根(50)は、混合されるべきセメント塊Cが前記シャフト(40)の回転運動によって前記開口部(20)の方向に移動されるように配置される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
温度均等化ジャケット(140)が前記管状中空体の周りに取り付けられている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の装置を使用する、粉末様のセメント成分Aおよび液体モノマー成分Bからのポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントペーストの製造のための方法であって、
前記粉末様のセメント成分Aが前記第1の供給用開口部(100)を通して導入され、前記液体モノマー成分Bが前記第2の供給用開口部(110)を通して前記管状中空体(10)の中へと連続的に導入され、セメント混合物Cが膨潤によって形成され、
前記シャフト(40)の軸方向の回転運動が引き起こされ、これにより前記セメント混合物Cの質量流量が前記第1の開口部(30)から前記第2の開口部(20)の方向に生成され、前記セメント混合物が前記第2の開口部(20)から押し出される、方法。
【請求項13】
前記粉末様のセメント成分Aは前記液体モノマー成分Bと−30℃〜+60℃の範囲の温度で5〜20分の範囲内で混合され、その結果、前記ペースト様のセメント塊Cは連続的に製造される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物は、前記混合プロセスの間に、溶解プロセスおよび膨潤プロセスが前記セメント成分Cの中で起こるように、実現される、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合プロセスの間に、前記セメント混合物Cの中でラジカル重合が開始されない、請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記セメント混合物Cの成分の部分的な融解または溶融は起こらない、請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−152536(P2011−152536A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−2558(P2011−2558)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(510340506)ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】