説明

ポリ(5HV)および5炭素化合物を製造するための環境に優しい方法および組成物

ポリヒドロキシアルカノアートを製造するための組換え宿主、および再生可能な炭素基質からポリヒドロキシアルカノアートを製造するための方法を提供する。5炭素化合物、例えば5−アミノペンタノアート(5AP)、5−ヒドロキシバレラート(5HV)、グルタラートおよび1,5ペンタンジオール(PDO)を産生する或る組換え宿主も提供する。1つの実施形態は、ポリヒドロキシアルカノアートシンターゼおよび5−ヒドロキシバレラート−CoA(5HV−CoA)トランスフェラーゼからなる群から選択される異種酵素をコードする遺伝子を発現する組換え宿主を提供し、ここで、該宿主は、5−ヒドロキシバレラートを含有する重合体を産生する。好ましくは、該宿主はポリヒドロキシアルカノアートシンターゼおよび5HV−CoAトランスフェラーゼの両方を発現する。該宿主は原核生物または真核生物でありうる。好ましい原核宿主は大腸菌(E.coli)である。該組換え宿主により産生される重合体は5−ヒドロキシバレラートの同種重合体または共重合体でありうる。好ましい共重合体はポリ(3−ヒドロキシブチラート−コ−5−ヒドロキシバレラート)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、5−ヒドロキシバレラートおよび5炭素含有化学的中間体(C5化合物)を含有するポリヒドロキシアルカノアートおよびその共重合体を産生するトランスジェニック生物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)は、フィルム(例えば、包装用フィルム、農業用フィルム、マルチングフィルム)、ゴルフティー、キャップおよびクロージャー、農業用支柱および杭、紙およびボードコーティング(例えば、カップ、板、箱などに対するもの)、熱成形品(例えば、トレー、容器、ヨーグルトポット、植木鉢、ヌードルボウル、成形品など)、ハウジング(例えば、電子製品用のもの)、袋(バッグ)(例えば、ゴミ袋、食料雑貨用袋、食品用袋、堆肥袋など)、衛生用品(例えば、おむつ、女性用衛生用品、失禁用品、使い捨てワイプなど)およびペレット化製品(例えば、ペレット化肥料、除草剤、農薬、種子など)用のコーティング(これらに限定されるものではない)を製造するために使用されうる生分解性プラスチックである。PHAは、縫合材、修復用装置、修復用パッチ、吊色帯、心血管パッチ、整形外科用ピン、癒着バリヤー、ステント、誘導組織修復/再生装置、関節軟骨修復装置、神経誘導装置、腱修復装置、骨髄基礎構造、および創傷用包帯を含む生物医学的装置を開発するためにも使用されている。
【0003】
ポリヒドロキシアルカノアートは発酵法により製造されうる。ポリヒドロキシアルカノアートを製造するための既存の発酵法は、所望のPHA重合体組成を得るために特異的基質上で培養される野生型またはトランスジェニック微生物を利用する。多くの場合、関心のある重合体は、1つの他の3、4、または5−ヒドロキシ酸と共重合した3−ヒドロキシブチラートの(D)−異性体の共重合体である。これらの共重合体は該細胞の内部の顆粒状細胞含有物として産生され、ランダム共重合体である。共重合体であるポリ(3−ヒドロキシブチラート−コ−5−ヒドロキシバレラート)(PHB5HV)および同種重合体(ホモポリマー)であるポリ(5−ヒドロキシバレラート)(P5HV)は、生分解性および生物再吸収性物質であるという利点を有する材料およびプラスチックとして産業上有用である。現在のところ、これらの物質は、5−ヒドロキシ吉草酸(5HV)または1,5−ペンタンジオールのような石油由来5炭素基質を、これらの物質を活性化単量体5HV−補酵素Aへと代謝しPHAポリメラーゼの作用によりそれを重合してPHB5HVまたはP5HV重合体を形成する能力を有する微生物に供給することにより製造されているが、これらの方法により製造されるPHB5HVおよびP5HV重合体は、再生可能な資源からは部分的に製造されるに過ぎず、そして該5炭素基質の高いコストのため高い経費を要する。コストを低下させること、および再生可能な資源から完全に製造される物質を得ることの両方を達成するためには、PHV5HVおよびP5HV重合体の製造のための供給原料として、非石油系の再生可能な炭素基質を使用することが非常に望ましい。また、温室効果ガスの生成を減少させるこれらの重合体の製造方法を開発することが望ましい。適当な再生可能な資源には、デンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトース、アラビノースおよびアミノ酸供給原料(リシンおよびプロリンを含む)から選択される1以上の供給原料を含む、農業から入手可能な炭水化物供給原料が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、石油由来ではない基質から製造される例えば5−ヒドロキシバレラートのような単量体を合成する新規株を作製するために野生型または遺伝的に操作されたポリヒドロキシアルカノアート産生体に遺伝子を導入することを可能にする方法および組換え生物を提供することが本発明の1つの目的である。
【0005】
本発明のもう1つの目的は、唯一の構成成分として又はコモノマーとして5−ヒドロキシバレラートを含有するPHAを合成する組換え生物を安定に操作するための技術および手法を提供することである。
【0006】
例えば5−アミノペンタノアート(5AP)、グルタラートおよび1,5ペンタンジオール(PDO)のような5炭素化合物を合成する組換え生物を安定に操作するための技術および手法を提供することが、本発明のもう1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概括
5HV含有PHAバイオポリマー
5−ヒドロキシバレラート(5HV)単量体を含むポリヒドロキシアルカノアート(PHA)を製造するための組換え宿主、および再生可能な炭素基質から、5HV単量体を含むPHAを製造するための方法を提供する。5炭素化合物、例えば5−アミノペンタノアート(5AP)、5HV、グルタラートおよび1,5ペンタンジオール(PDO)を産生する或る組換え宿主も提供する。
【0008】
1つの実施形態は、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)シンターゼおよび5−ヒドロキシバレラート−CoA(5HV−CoA)トランスフェラーゼまたは5HV−CoAシンターゼと、リシン異化経路に関与する異種酵素をコードする少なくとも1つのトランスジーンとをコードする遺伝子を発現する組換え宿主を提供し、ここで、リシン、デンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトース、アラビノースまたはそれらの組合せから選択される再生可能な炭素基質を該生物に供給した場合、該宿主は、5HV単量体を含むPHA重合体を産生し、産生される5HV単量体のレベルは該トランスジーンの発現の非存在下より高い。典型的な宿主は、リシン2−モノオキシゲナーゼ、5−アミノペンタンアミダーゼ、5−アミノペンタノアートトランスアミナーゼ、グルタラートセミアルデヒドレダクターゼ、5−ヒドロキシバレラートCoA−トランスフェラーゼおよびポリヒドロキシアルカノアートシンターゼをコードする1以上の遺伝子を発現して、5HV単量体を含有するPHA重合体を産生する。好ましくは、該宿主は、グルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび/またはリシン輸出体コード遺伝子をコードする遺伝子において欠失または突然変異を有する。特に好適な宿主はまた、リシンを過剰産生する能力を有し、S−(2−アミノエチル)システインのような毒性リシン類似体に抵抗性である。
【0009】
もう1つの実施形態においては、PHAシンターゼ、5HV−CoAトランスフェラーゼまたは5HV−CoAシンテターゼをコードする遺伝子の1以上もトランスジーンから発現される。
【0010】
もう1つの実施形態においては、5HV含有PHA重合体が産生され、該重合体が該細胞から回収されるよう、デンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトース、アラビノースまたはそれらの組合せから選択される1以上の再生可能な炭素基質と共にリシンを該組換え生物に供給する。
【0011】
もう1つの実施形態においては、5HV含有PHA重合体が産生され、該重合体が該細胞から回収されるよう、デンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトース、アラビノースまたはそれらの組合せから選択される1以上の再生可能な炭素基質を組換え生物に供給する。
【0012】
該組換え宿主により産生される重合体は5HV単量体の同種重合体または共重合体でありうる。好ましい共重合体はPHB5HVである。該組換え宿主により産生される他の有用な重合体は、共重合体ポリ(3−ヒドロキシプロピオナート−コ−5−ヒドロキシバレラート)およびポリ(4−ヒドロキシブチラート−コ−5−ヒドロキシバレラート)ならびに同種重合体P5HVである。
【0013】
該宿主は原核生物または真核生物でありうる。好ましい原核生物宿主は大腸菌(E.coli)、ラルストニア(Ralstonia)、ユートロファ(Eutropha)、アルカリゲネス・ラツス(Alcaligenes latus)およびシー・グルタミカム(C.glutamicum)である。
【0014】
リシン、またはデンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトース、アラビノースまたはそれらの組合せから選択される1以上の再生可能な炭素基質からPHA重合体を製造するための組換え宿主も提供する。典型的な宿主はリシン2−モノオキシゲナーゼ、5−アミノペンタンアミダーゼ、5−アミノペンタノアートトランスアミナーゼ、グルタラートセミアルデヒドレダクターゼ、5−ヒドロキシバレラートCoA−トランスフェラーゼおよびポリヒドロキシアルカノアートシンターゼを発現して、5HVを含む重合体を産生する。該重合体は、リシン、およびデンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトースおよびアラビノースから選択される1以上の再生可能な炭素基質を供給原料として使用して製造される。好ましくは、該宿主は、グルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびリシン輸出体コード遺伝子における欠失を有する。
【0015】
1,5−ペンタンジオールの製造
もう1つの組換え宿主は、5−ヒドロキシバレラートCoAトランスフェラーゼ、CoA依存性プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび1,3−プロパンジオールデヒドロゲナーゼを過剰発現して1,5ペンタンジオールを産生するよう遺伝的に操作される。1,5ペンタンジオールは、5−ヒドロキシバレラート、リシン、デンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトースおよびアラビノースを単独で又は組合せて供給原料として使用して製造される。好ましくは、該組換え宿主はadhE、ldhAおよびackA−ptaにおける欠失を有し、リシン2−モノオキシゲナーゼ、5−アミノペンタンアミダーゼ、5−アミノペンタノアートトランスアミナーゼおよび1以上のグルタラートまたはスクシナートセミアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子を発現する。特に好適な宿主は、リシンを過剰産生する能力を有し、S−(2−アミノエチル)システインのような毒性リシン類似体に抵抗性である。好ましくは、該生物は、低下したグルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するか、または該活性を有さない。
【0016】
再生可能な炭素基質からの1,5−ペンタンジオールの製造方法を提供し、該製造方法においては、再生可能な炭素基質を組換え生物に供給し、1,5−ペンタンジオールを産生させ、培地に分泌させ、該培地から回収する。
【0017】
もう1つの実施形態においては、本発明は、再生可能な資源から製造された1,5−ペンタンジオールを提供する。
【0018】
グルタル酸の製造
リシン、またはデンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトースおよびアラビノースまたはそれらの組合せから選択される1以上の再生可能な炭素基質からグルタラート(グルタル酸)を過剰産生させるための組換え宿主も提供する。典型的な宿主はリシン2−モノオキシゲナーゼ、5−アミノペンタンアミダーゼ、5−アミノペンタノアートトランスアミナーゼおよび1以上のグルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を発現する。特に好適な宿主は、リシンを過剰産生する能力を有し、S−(2−アミノエチル)システインのような毒性リシン類似体に抵抗性である。
【0019】
再生可能な炭素基質からグルタラートを過剰産生させるための方法を提供し、該製造方法においては、リシン、デンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトースおよびアラビノースまたはそれらの組合せから選択される再生可能な炭素基質を組換え生物に供給し、グルタラートを過剰産生させ、培地に分泌させ、該培地から回収する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、再生可能な資源から生物学的に製造されうる種々の5炭素分子を示す概要図である。場合によっては、これらの再生可能な資源に基づく分子は、標準的な化学法を用いて相互変換されることが可能であり、化学重合法により重合体などを製造するために使用されうる。
【図2A】図2Aは、5−ヒドロキシバレラート含有ポリヒドロキシアルカノアート重合体、ならびに5炭素化合物、例えば5−アミノペンタノアート(5−APO)、グルタラート、δ−バレロラクトン(DVL)および1,5ペンタンジオールへの生化学的経路を示す概要図である。前記の所望の産物への最適な炭素流動を達成するために排除される又は活性低下される必要がありうる競合代謝経路(十字型記号(X)により示されている)も示されている。
【図2B】図2Bは、生合成反応を触媒する以下の酵素を示す:(1)リシン2−モノオキシゲナーゼ,EC 1.13.12.2;(2)5−アミノペンタンアミダーゼ(別名:δ−アミノバレロアミダーゼ),EC 3.5.1.30;(3)5−アミノペンタノアートトランスアミナーゼ(別名:δ−アミノバレラートトランスアミナーゼ),EC 2.6.1.48;(4)スクシナートセミアルデヒドレダクターゼ(別名:5−オキソペンタノアートレダクターゼ),EC 1.1.1.61;(5)CoA−トランスフェラーゼ,EC 2.8.3.n;(6)アシル−CoAシンテターゼ,EC 6.2.1.3;(7)PHAシンターゼ,EC 2.3.1.n;(8)β−ケトアシル−CoAチオラーゼ,EC 2.3.1.9;(9)アセトアセチル−CoAレダクターゼ,EC 1.1.1.36;(10)グルタラート−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ,EC 1.2.1.20。
【図3】図3は、カダベリンおよび5−アミノペンタナールを経由する、L−リシンから5−アミノペンタノアートへの代替経路の生化学的経路を示す概要図である。
【図4】図4は、L−プロリンから5−アミノペンタノアートへの生化学的経路を示す概要図である。
【図5】図5は、アルファ−ケトグルタラートからグルタラートセミアルデヒド(5−ヒドロキシバレラートおよびその誘導体ならびにグルタラートを産生する代謝中間体である)への生化学的経路を示す概要図である。
【図6】図6は、オキサロ酢酸(TCA回路の中間体である)からL−リシンへの生化学的経路を示す概要図である。
【図7】図7は、1,5ペンタンジオールへの生化学的経路を示す概要図である。
【図8】図8Aは、株3291からの加工細胞培養の総イオン存在量を時間(分)に対して示すクロマトグラムである。図8Bは、質量電荷比「m/z」に対してそのイオン存在量(相対単位)を示す、株3291からの加工細胞培養のイオンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
I.定義
本明細書中で用いる幾つかの用語を以下の節において定義し明らかにする。
【0022】
「PHA共重合体」なる語は、少なくとも2つの異なるヒドロキシアルカン酸単量体から構成される重合体を意味する。
【0023】
「PHA同種重合体」なる語は、単一のヒドロキシアルカン酸単量体から構成される重合体を意味する。
【0024】
本明細書中で用いる「ベクター」は、別のDNAセグメントが挿入されて該挿入セグメントの複製を引き起こしうるレプリコン、例えばプラスミド、ファージまたはコスミドである。該ベクターは発現ベクターである。
【0025】
本明細書中で用いる「発現ベクター」は、1以上の発現制御配列を含むベクターである。
【0026】
本明細書中で用いる「発現制御配列」は、別のDNA配列の転写および/または翻訳を制御し調節するDNA配列である。
【0027】
本明細書中で用いる「機能的に連結」は、関心のあるコード配列の発現を発現制御配列が有効に制御するような、遺伝的構築物内への組込みを意味する。
【0028】
本明細書中で用いる「形質転換」および「トランスフェクト」は、当技術分野で公知の多数の技術による細胞内への核酸の導入を含む。
【0029】
本明細書中で用いる「過剰産生」は、操作された生物において、未操作生物の場合より大量に特定の化合物が産生されることを意味する。
【0030】
本明細書中で用いる「再生可能な供給原料」、「再生可能な炭素基質」および「再生可能な基質」なる語は全て、互換的に用いられる。
【0031】
「プラスミド」は大文字および/または数字の前および/または後の小文字「p」により示される。
【0032】
本明細書中で用いる「異種」なる語は、別の宿主に由来することを意味する。他方の宿主は、同じ又は異なる種でありうる。
【0033】
II.ポリヒドロキシアルカノアートおよび5炭素化合物を産生する代謝経路
5−ヒドロキシバレラート含有ポリヒドロキシアルカノアート重合体、ならびに5炭素化合物、例えば5−アミノペンタノアート(5AP)、5−ヒドロキシバレラート(5HV)、グルタラートおよび1,5ペンタンジオール(PDO)を産生する生化学的経路のための酵素を有する組換え生物を提供する。原核生物または真核生物宿主は、再生可能な資源に基づく供給原料から5−ヒドロキシバレラート、その重合体または開示されている5炭素化合物を産生するのに必要な酵素を発現するよう、遺伝的に操作される。所望の産物を産生する酵素経路を以下に説明する。
【0034】
A.5−アミノペンタノアート
5−アミノペンタノアート(5AP)は、5−アミノペンタンアミドを中間体として、α−アミノ酸であるL−リシンから2つの酵素段階で産生されうる(図2)。これらの酵素のうちの第1の酵素であるリシン2−モノオキシゲナーゼは種々のシュードモナス菌のリシン分解経路における第1の酵素段階である(TakedaおよびHayaishi,J.Biol.Chem.241:2733−2736;(1966);Hayaishi,Bacteriol.Rev.30:720−731(1966);ReitzおよびRodwell,J.Biol Chem.245:3091−3096(1970);FlashnerおよびMassey,J.Biol.Chem.249:2579−2586(1974))。リシン2−モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子がシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)において特定され、davBと命名された(Revellesら,J.Bacteriol.187:7500−7510(2005))。第2の酵素段階は、5−アミノペンタンアミドを5APに変換し、5−アミノペンタンアミダーゼにより触媒され(Reitzら,Anal.Biochem.28:269−272(1969);ReitzおよびRodwell,J.Biol.Chem.245:3091−3096(1970))、これはシュードモナス・プチダ(P.putida)においてはdavAによりコードされる(Revellesら,J.Bacteriol.187:7500−7510(2005))。
【0035】
図3に示すとおり、カダベリンを産生するリシンデカルボキシラーゼ、5−アミノペンテナールを生成するプトレッシントランスアミナーゼ、および5APを生合成するγ−アミノブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む3つの酵素反応でL−リシンを5APに変換する代替経路が利用されうる。
【0036】
図4に示すとおり、D−プロリンを生合成するプロリンラセマーゼおよび5APを生成するプロリンレダクターゼを含む2つの酵素反応で、5APは、L−リシンの代わりにL−プロリンからも産生されうる。
【0037】
B.5−ヒドロキシバレラート
もう1つの5炭素化合物である5HVの生合成は、図2に示されているとおり、2つの酵素段階で5APから生じうる。5APは5APトランスアミナーゼによりグルタラートセミアルデヒドに変換される(ReitzおよびRodwell,J.Biol.Chem.245:3091−3096(1970))。そのシュードモナス・プチダ(P.putida)由来遺伝子が特定され、davTと命名された(Espinosa−UrgelおよびRamos,Appl.Environ.Microbiol.67:5219−5224(2001))。実施例7に示されているとおり、どのコード化酵素がグルタラートセミアルデヒドを5HVに効率的に変換するのかを調べるために、幾つかの組換えセミアルデヒドレダクターゼ遺伝子をクローニングし、試験した。推定タンパク質ATEG 00539がこの反応を効率的に触媒することが見出され、したがって、lutarate emialdehyde eductase(グルタラート・セミアルデヒド・レダクターゼ)にちなんでgsaRと改名された。
【0038】
幾つかの好熱性細菌、および酵母を含む下等真菌においては、リシンはα−アミノケトアジピン酸経路により合成され(Xu,Cell Biochem.Biophys.46:43−64(2006))、この場合、2−ケトアジパートが第4の中間体であり、したがって、グルタラートおよび5HVのようなC5化合物ならびに5HV含有PHV重合体の潜在的前駆体である。図5に示されているとおり、この経路はα−ケトグルタラートおよびアセチル−CoAから出発して、2−ケトアジパートを生合成する。これらの4つの酵素を発現する組換え大腸菌(E.coli)宿主株は2−ケトアジパートを産生することが示された(Andiら,Biochem.43:11790−11795(2004);Jiaら,Biochem.J.396:479−485(2006);Miyazakiら,J.Biol.Chem.278:1864−1871(2003))。2−ケトアジパートは、α−ケトグルタラートと2−ケトアジパートとの構造的類似性により、α−ケトグルタラートデヒドロゲナーゼによりグルタリル−CoAに変換されうる。グルタリル−CoAは、この場合もスクシニル−CoAとグルタリル−CoAとの構造類似性により、コハク酸セミアルデヒド(SSA)デヒドロゲナーゼ、例えばスクシニル−CoAシンテターゼ(SucD)により変換されうる(SohlingおよびGottschalk J.Bacterid.178:871−880(1996))。
【0039】
C.グルタラート
5炭素化合物であるグルタラートの生合成は、図2に示されているとおり、デヒドロゲナーゼ反応によりグルタラートセミアルデヒドから進行する(Ischiharaら,J.Biochem.(Tokyo)49:154−157(1961);ReitzおよびRodwell,J.Biol.Chem.245:3091−3096(1970))。シュードモナス・プチダ(P.putida)においてはdavD遺伝子がそのようなグルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性をコードすることが確認された(Espinosa−UrgelおよびRamos,Appl.Environ.Microbiol.67:5219−5224(2001);Revellesら,J.Bacteriol.186:3439−3446(2004))。グルタラートはポリエステル、ポリエステルポリオールおよびポリアミドのような重合体の製造に有用である。奇数(すなわち、5)の炭素原子数は、例えば、重合体の弾性を減少させるのに有用である。また、1,5−ペンタンジオールは一般的な可塑剤であり、グルタラートおよびその誘導体の水素化により製造されるポリエステルの前駆体である(WerleおよびMorawietz,“Alcohols,Polyhydric” in: Ulhnann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry:2002,Wiley−VCH:Weinheim.DOI 10.1002/14356007.a01 305)。
【0040】
D.ポリ(5−ヒドロキシバレラート)
ポリ(5−ヒドロキシバレラート)(別名:P(5HV))PHAよりなる同種重合体の生合成は5HVから5−ヒドロキシバレラート−CoAを経て進行しうる。2つの異なる酵素反応、すなわち、Huismanら(米国特許第7,229,804号)、SohlingおよびGottschalk(J.Bacteriol.178:871−880(1996))ならびにEikmannsおよびBuckel(Biol.Chem.Hoppe−Seyler 371:1077−1082(1990))により記載されているCoA−トランスフェラーゼによる酵素反応、またはvan Beilenら(Molec.Microbiol.6:3121−3136(1992))により記載されているCoA−シンテターゼによる酵素反応が、第1段階を触媒しうる。5−ヒドロキシバレラート−CoAの重合は、例えばラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)phaC1によりコードされるPHAポリメラーゼにより触媒されうる(PeoplesおよびSinskey,J.Biol.Chem.264:15298−15303(1989))。あるいは、Huismanら(米国特許第6,316,262号)により記載されているとおりに、PhaC3/C5シンターゼ融合タンパク質が使用されうる。
【0041】
E.ポリ(3−ヒドロキシブチラート−コ−5−ヒドロキシバレラート)
ポリ(3−ヒドロキシブチラート−コ−5−ヒドロキシバレラート)(別名:P(3HB−コ−5HV))を含む共重合体の生合成は、3−ヒドロキシブチリル−CoA(3HB−CoA)および5−HV−CoA単量体前駆体分子を供給することにより生じうる。図2に示されているとおり、3HB−CoAは、アセチル−CoAから、以下の2つの酵素段階を経て生合成されうる:(i)例えばラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のbktB(Slaterら,J.Bacteriol.180(8):1979−1987(1998))(これらに限定されるものではない)のような適当な遺伝子を使用してアセチル−CoAをアセトアセチル−CoAに変換するβ−ケトアシル−CoAチオラーゼ反応(Nishimuraら,J.Biol.Chem.116:21−27(1978))、および(ii)バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のphaB(McCoolおよびCannon,J.Bacteriol.181(2):585−592(1999))のような適当な遺伝子を使用してアセトアセチル−CoAを3HB−CoAに変換するアセトアセチル−CoAレダクターゼ反応(Fukuiら,Biochim.Biophys.Acta 917:365−371(1987))。前記のとおり、PHA共重合体は種々のPHA合成により合成されうる。
【0042】
F.リシン
図6は大腸菌(E.coli)におけるリシン代謝の生合成経路を示す。図の中央部の点線および実線は、それぞれ、L−リシンによるアロステリックフィードバック阻害および転写抑制を示し、これらは、組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))におけるL−リシン産生を増加させるのに必要な遺伝的修飾の標的となる。
【0043】
G.1,5−ペンタンジオール
図7は5HVから1,5−ペンタンジオール(PDO)の産生の概要を示す。5HVは、Huismanら(米国特許第7,229,804号)、SohlingおよびGottschalk(J.Bacteriol.178:871−880(1996))ならびにEikmannsおよびBuckel(Biol.Chem.Hoppe−Seyler 371:1077−1082(1990))により記載されているCoA−トランスフェラーゼにより、またはvan Beilenら(Molec.Microbiol.6:3121−3136(1992))により記載されているCoA−シンテターゼにより、5HV−CoAに変換されうる。5HVは、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼ、例えば、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)由来のpduP(Leal,Arch.Microbiol.180:353−361(2003))または大腸菌(E.coli)由来のeutE(Skraly,WO特許番号2004/024876)により、5−ヒドロキシペンテナールに変換されうる。5−ヒドロキシペンテナールは、1,3−プロパンジオールデヒドロゲナーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼ、例えばクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)由来のdhaT(Tongら,Appl.Environ.Microbiol.57(12):3541−3546(1991))により、PDOに変換されうる。
【0044】
H.5−ヒドロキシバレラート−コ−3−ヒドロキシプロピオナート
5−ヒドロキシバレラート−コ−ヒドロキシプロプリオナートを含有する共重合体は5HVから製造されうる。fadR(脂肪酸分解(FAD))またはfadR(構成的FAD)のいずれかである大腸菌(E.coli)K12株を、ポリヒドロキシアルカノアートおよび5−ヒドロキシバレラートCoAトランスフェラーゼを発現する核酸でトランスフェクトする。好ましい大腸菌(E.coli)株には、MG1655およびLS5218が含まれる(Sprattら,J.Bacteriol 146(3):1166−1169(1981))。表6に示すとおり、GC−FID分析は、LS5218[pMS93]が、52% 5HVおよび48% 3HPの重合体組成を有する6.4% dcwのPHAを産生することを示した。一方、MG1655[pMS93]は、5HVのみからなる63.1% dcwのPHAを与えた。さらに、LS5218[pM93]のGC−MS分析は該重合体サンプル中の3HPの存在を証明した。したがって、LS5218における活性FAD系はNa5HVから3HPを合成しうる。
【0045】
III.ポリヒドロキシアルカノアートおよび5炭素化合物を産生するトランスジェニック生物の製造
ポリヒドロキシアルカノアートおよび5炭素化合物を産生するトランスジェニック生物は、当技術分野で公知の通常の技術を用いて製造される。
【0046】
A.トランスジェニックP(5HV)産生体を製造するための遺伝子
5HV含有PHAおよび5炭素化合物を産生する宿主系統に関して評価および/またはクローニングされた遺伝子を、適当な酵素委員会番号(EC番号)および参照事項と共に、以下の表1Aに示す。後記で更に詳しく説明するとおり、コドン最適化のために合成された遺伝子もあれば、天然または野生型生物のゲノムDNAからのPCRによりクローニングされた遺伝子もある。
【0047】
【表1】


表1Aに挙げた反応を触媒しうる他のタンパク質は、科学文献、特許を参照することにより、あるいは例えばNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)におけるヌクレオチドもしくはタンパク質データベースに対するBLAST検索により見出されうる。ついで、配列データベースから物質的なDNAへの容易なパスを得るために、合成遺伝子が作製されうる。異種タンパク質発現を増強し、発現系および宿主に必要な特性を最適化するコドンを使用して、そのような合成遺伝子は基本構造から設計され構築される。企業、例えばDNA2.0(Menlo Park,CA 94025,USA)はそのような常套的サービスを提供するであろう。表1Aに挙げられている生化学反応を触媒しうるタンパク質を表1B〜1AAに示す。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
【表9】

【0056】
【表10】

【0057】
【表11】

【0058】
【表12】

【0059】
【表13】

【0060】
【表14】

【0061】
【表15】

【0062】
【表16】

【0063】
【表17】

【0064】
【表18】

【0065】
【表19】

【0066】
【表20】

【0067】
【表21】

【0068】
【表22】

【0069】
【表23】

【0070】
【表24】

【0071】
【表25】

【0072】
【表26】

【0073】
【表27】

【0074】
1つの実施形態は、P(5HV)または他の5HV単量体含有PHAを産生するトランスジェニックまたは組換え生物を提供する。該生物は原核生物または真核生物でありうる。適当な原核生物には、細菌、例えば大腸菌(E.coli)が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0075】
B.組換え生物または細胞を製造するための方法および材料
1.修飾すべき生物または細胞
5HV含有PHA生体高分子、5−アミノペンタノアート(5AP)、5−ヒドロキシバレラート(5HV)、グルタラートおよび1,5−ペンタンジオール(PDO)を製造するために修飾されうる生物または細胞には、真核生物および原核生物が含まれる。適当な原核生物には、細菌が含まれる。多数の細菌が、ポリヒドロキシアルカノアートを産生するよう遺伝的に操作されうる。具体例には、大腸菌(E.coli)、アルカリゲネス・ラツス(Alcaligenes latus)、アルカリゲネス・ユートロフス(Alcaligenese eutrophus)、アゾトバクター(Azotobacter)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、サルモネラ(Salmonella)、クレブシエラ(Klebsiella)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ロドコッカス(Rhodoccocus)およびブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)が含まれる。追加的な原核生物には、真性細菌、例えばグラム陰性またはグラム陽性生物、例えばエンテロバクテリアセエ(Enterobacteriaceae)、例えば大腸菌(E.coli)が含まれるが、これらに限定されるものではない。種々の大腸菌(E.coli)株、例えば大腸菌(E.coli)K12株MM294(ATCC 31,446);大腸菌(E.coli)X1776(ATCC 31,537);(ATCC 27,325)およびK5772(ATCC 53,635)が、公に入手可能である。
【0076】
これらには、代替的基質を利用するように又は追加的単量体を組込むように又は産生量を増加するように修飾された、ポリヒドロキシアルカノアートを既に産生する生物、およびポリヒドロキシアルカノアートを産生せず、ポリヒドロキシアルカノアートの産生に要求される酵素を全く又は一部しか発現しない生物が含まれる。ラルストニア・ユートロファ(R.eutropha)は、PHAを天然で産生する生物の一例である。大腸菌(E.coli)およびコリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)は、PHA産生のための酵素をコードするトランスジーンを導入することが必要であろう生物の具体例である。
【0077】
C5化合物である5−アミノペンタノアート(5AP)、5−ヒドロキシバレラート(5HV)、グルタラートおよび1,5−ペンタンジオールの製造の場合、それらが5−ヒドロキシバレラート含有PHAへと重合しないが培地内に分泌される場合には、リシンを製造するために使用される工業用微生物を使用することが有用である。L−リシンの工業生産に使用されているコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)[その亜種ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)およびブレビバクテリウム・ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)を含む](Microbiol.Monogr.5:39−70(2007))は、グルタラート、1,5−ペンタンジオール、5−ヒドロキシバレラート、および本発明において記載されているリシン分解経路によりリシンから産生されうる他の産物の製造のために開発されうる微生物の一例である。操作された大腸菌(E.coli)はリシンの製造にも使用されている。L−リシンの製造のためのコリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)株を得るための手法、例えば、ランダム突然変異誘発、およびそれに続く、S−(2−アミノエチル)システインのような毒性リシン類似体に抵抗性の突然変異体の選択、およびそれぞれアスパラギン酸キナーゼおよびホモセリンデヒドロゲナーゼをコードするlysCおよびhomのような遺伝子標的の突然変異対立遺伝子の導入は、十分に確立されており、既に記載されている(Curr.Opin.Microbiol.9:268−274(2007))。アスパラギン酸キナーゼはトレオニンおよびリシンによりフィードバック阻害に付される。フィードバック阻害からのこの酵素の解放は、リシン産生株を開発するための主要課題の1つと考えられる。リシン分解経路に由来する化合物を産生しうる株の開発のための操作のもう1つの標的は、コリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)におけるLysEのようなリシン輸出体である。L−リシンを産生するコリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)株のlysE遺伝子の突然変異誘発は細胞質からのリシンの排出を妨げ、したがって、リシンを産物に変換するように工夫された経路による産物の収率を増加させるであろう。PHBのようなPHAの製造のためのコリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)株を構築するための方法も当技術分野で公知である(Jo,S−Jら,2006.J.Bioscience and Bioengineering 102:233−236)。
【0078】
適当な真核生物または細胞には、真菌、例えば糸状菌または酵母が含まれる。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、一般的に使用される下等真核宿主微生物である。
【0079】
2.トランスジェニック生物の作製方法
i.染色体外トランスフェクション
ベクターDNAは通常の形質転換またはトランスフェクション技術により原核または真核細胞内に導入されうる。本明細書中で用いる「形質転換」および「トランスフェクション」は、化学的形質転換、例えばリン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを含む、宿主細胞内に外来核酸(例えば、DNA)を導入するための、当技術分野で認識されている種々の技術を意味する。通常の形質転換技術は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2001に記載されている。酵母内への形質転換は、典型的には、Van Solingenら,J Bact,130:946(1977)およびHsiaoら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:3829(1979)の方法により行われる。
【0080】
ii.染色体組込み
操作された遺伝子構築物をグラム陰性およびグラム陽性細菌細胞の染色体DNA内に組込むための方法は当業者によく知られている。典型的な組込みメカニズムは、recBCまたはrecD株における線状化DNAを使用する相同組換え、およびそれに続く、P1形質導入(Miller 1992,A Short Course in Bacterial Genetics:A Laboratory Manual & Handbook for Escherichia coli and Related Bacteria.Cold Spring Harbor laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)、特別なプラスミド(Hamiltonら,J Bacteriol.171:4617(1989);Metcalfら,Plasmid 35:1(1996);Mascarenhasら,米国特許第5,470,727号)、またはトランスポゾンに基づく系を使用するランダム挿入(Herreroら,J Bacteriol.172:6557(1990);Peredelchuk & Bennett,Gene 187:231(1997);Richaudら,米国特許第5,595,889号;Tuckerら,米国特許第5,102,797号)を含む。一般に、挿入を含有する微生物株は、該組込み構築物により供与される獲得抗生物質耐性遺伝子に基づいて選択される。しかし、栄養要求性突然変異体の相補も用いられうる。本明細書に記載されている種々の代謝経路をコードするトランスジーンのいずれかを導入するために、同じ方法が用いられうる。これらの方法の幾つかを、pha遺伝子に関して、以下に詳細に説明する。
【0081】
染色体組込みのための関心のある遺伝子の発現は、組込まれるDNA構築物において転写活性化配列(プロモーター)を含有させることにより達成されうる。Ingramら,米国特許第5,000,000号に記載されているとおり、部位特異的相同組換えは、関心のある遺伝子の発現の増幅と組合されうる。
【0082】
染色体組込みは、DatsenkoおよびWanner(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.97:6640−6645(2000))の方法により、そして後記実施例7において用いられているとおりに達成されうる。
【0083】
細菌染色体内に異種遺伝子を挿入するための一連の発現カセットが開発されている。これらのカセットは、Herreroら,J Bacterial.172:6557−67(1990);de Lorenzoら,J Bacterid.172:6568(1990)に記載されているトランスポゾン運搬系に基づく。これらの系はRP4媒介接合導入をもたらし、トランスポゾンTn10およびTn5のみを使用するが、トランスポゾン末端および運搬系の任意の組合せが、記載されている技術に応用されて、持続的かつ均一なPHA産生をもたらしうるであろう。
【0084】
トランスジェニック大腸菌(E.coli)PHB産生体を作製するためには、以下の一般的アプローチが用いられる:(1)無プロモーター抗生物質耐性(abr)遺伝子を、適当なプラスミド、例えばpUC18NotIまたはpUC18SfiIのポリリンカー内に、該ポリリンカーの主要部分がabrの上流になるようにクローニングする;(2)ついで、GABAトランスアミナーゼ、コハク酸セミアルデヒドレダクターゼおよび4−ヒドロキシブチラート−CoAトランスフェラーゼをコードする遺伝子であるpha遺伝子をabr遺伝子の上流に、それと同じ配向でクローニングする;(3)pha−abrカセットをNotIまたはAvrII断片(AvrIIはpUC18SfiIにおけるSfiI部位を認識する)として切り出し、pUT系またはpLOF系由来のもののようないずれかのプラスミドの対応部位内にクローニングする;(4)得られたプラスミドを大腸菌(E.coli)λpir株内で維持し、これらのプラスミドが複製されない選択された大腸菌(E.coli)株内にエレクトロポレーションまたは接合し;(5)該pha−abrカセットが染色体内に成功裏に組込まれた新たな株を、該宿主に関して(例えば、該宿主がナリジクス酸耐性の場合にはナリジクス酸)、および該カセットに関して(例えば、クロラムフェニコール、カナマイシン、テトラサイクリン、塩化水銀、ビアラホス(bialaphos))、選択培地上で選択する。得られたpha組込み体を、グルコースの存在下、増殖およびPHB形成に関して最少培地上でスクリーニングする。
【0085】
この方法の幾つかの修飾が行われうる。該無プロモーター抗生物質耐性マーカーを使用しない場合には、該PHA遺伝子の挿入物は、該ベクター内に存在するマーカーに基づいて選択され、所望のレベルのPHAを産生する組込み株は、PHA産生に関してスクリーニングすることにより検出される。pha遺伝子は、内因性転写配列、例えば上流活性化配列、RNAポリメラーゼ結合部位および/またはオペレーター配列を有しうるが、それらを必要とするわけではない。pha遺伝子がそのような配列を有さない場合、記載されているアプローチは、挿入配列を介して転写が進行しうるpUT系のようなベクターの使用に限定される。この限定は、RNAポリメラーゼがpLOFプラスミドのTn10フランキング領域をリードスルーできないことによるものである。abr遺伝子は、所望により、それ自身の発現配列を有しうる。該宿主株が対応野生遺伝子内に突然変異を有する場合、abr遺伝子の代わりに必須遺伝子が選択マーカーとして働くように、該構築物は設計されうる。この目的に有用な遺伝子の具体例は当技術分野で一般に公知である。異なる複数の構築物は、両方の構築物が、異なるマーカー遺伝子を担持する限り、連続的または同時に1つの宿主内に組込まれうる。複数の組込み事象を用いて、pha遺伝子は別々に組込まれうる。例えば、まず、phaC−catカセットとしてPHBポリメラーゼ遺伝子が組込まれ、ついで、phaAB−kanカセットとしてチオラーゼおよびレダクターゼ遺伝子の組込みが生じる。あるいは、1つのカセットが全てのpha遺伝子を含有することが可能であり、一方、もう1つのカセットは、所望のPHA重合体を産生するのに必要な幾つかのpha遺伝子のみを含有する。
【0086】
幾つかの場合には、組込み株の染色体から該選択マーカーが切り出されうるよう、トランスポゾン組込みベクター、例えばpJMS11(Pankeら,Appl.Enviro.Microbiol.64:748−751)が使用されうる。これは、各挿入事象後にマーカーを切り出すことにより同一マーカー遺伝子を用いて複数のトランスポゾン構築物を挿入するメカニズムの付与を含む幾つかの理由により有用である。
【0087】
3.PHA形成に関与するphaおよび他の遺伝子の起源
PHA形成に関与する遺伝子の一般的参考文献としては、MadisonおよびHuisman,1999,Microbiology and Molecular Biology Reviews 63:21−53が挙げられる。該pha遺伝子は、異なる起源に由来して単一生物において合体されることが可能であり、あるいは同一起源に由来することが可能である。
【0088】
i.レダクターゼをコードする遺伝子
レダクターゼをコードする遺伝子は、アルカリゲネス・ラツス(A.latus),ラルストニア・ユートロファ(R.eutropha)(Peoples & Sinskey,J Biol.Chem.264(26):15298−303(1989))、アシネトバクター属種(Acinetobacter sp.)(Schembriら,J Bacteriol.177(15):4501−7(1995))、シー・ビノスム(C.vinosum)(Liebergesell & Steinbuchel,Eur.J.Biochem.209(1):135−50(1992))、ピー・アシドフィラ(P.acidophila)、ピー・デニトリフィカンス(P.denitriflcans)(Yabutaniら,FEMS Microbiol.Lett.133(l−2):85−90(1995))、アール・メリロチ(R.meliloti)(Tomboliniら,Microbiology 141:2553−59(1995))、およびゼット・ラミゲラ(Z.ramigera)(Peoplesら,J.Biol.Chem.262(1):97−102(1987))から単離されている。米国特許第7,229,804号は、シー・クルイベリ(C.kluyveri)由来の4−ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼをコードする4hbD遺伝子(SohlingおよびGottschalk,J Bacteriol 178,871 880(1996))を用いてP4HBを産生するトランスジェニック生物を開示している。4hbDはNADHを要する。好ましいレダクターゼには、NADHを要さないものが含まれるが、これらに限定されるものではない。典型的なレダクターゼには、ムス・ムスクルス(Mus musculus)由来のAKR7A5(Genlnfo識別番号:27659727)(Hinshelwood,A.ら,FEBS Letters 523:213−218(2002))、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)由来のGHBDH(GI:145338934)(Breitkreuz,K.ら.J.Biol.Chem.278:41552−41556)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)由来のATEG 00539(GI:115491994)が含まれる。
【0089】
ii.CoAトランスフェラーゼおよびCoAシンテターゼ
適当なCoAトランスフェラーゼ(EC 2.8.3.n)には、シー・クルイベリ(C.kluyveri)由来のorfZが含まれるが、これに限定されるものではない。orfZの配列はHuismanらの米国特許第7,229,804号に記載されており、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。もう1つの適当なCoAトランスフェラーゼには、シー・アミノブチリカム(C.aminobutyricum)由来のabfT(Gerhardtら,Arch Microbiol 74:189−199(2000))が含まれる。アシル−CoAを産生しうる他の酵素には、CoAシンテターゼ(EC 6.2.1.3)が含まれる。これらの酵素は、カルボン酸へのCoAの共有結合性付加を触媒するためにATPおよび遊離CoAを利用し、van Beilenら(Molec Microbiol(1992)6:3121−3136)およびAquinら(WO 02/40690 A2)に記載されている。
【0090】
iii.PHAポリメラーゼをコードする遺伝子
PHAポリメラーゼをコードする遺伝子は、エロモナス・キャビエ(Fukui & Doi,J Bacteriol.179(15):4821−30(1997))、アルカリゲネス・ラツス(A.latus),ラルストニア・ユートロファ(R.eutropha)(Peoples & Sinskey,J.Biol.Chem.264(26):15298−303(1989))、アシネトバクター(Acinetobacter)(Schembriら,J.Bacteriol.177(15):4501−7(1995))、シー・ビノスム(C.vinosum)(Liebergesell & Steinbuchel,Eur.J.Biochem.209(1):135−50(1992))、メチロバクテリウム・エクストークエンス(Methylobacterium extorquens)(Valentin & Steinbuchel,Appl.Microbiol.Biotechnol 39(3):309−17(1993))、ノカルジア・コラリナ(Nocardia corallina)(GenBankアクセッション番号AF019964)、ノカルジア・サルモニコロル(Nocardia salmonicolor)、ピー・アシドフィラ(P. acidophila)、ピー・デニトリフィカンス(P.denitrificans)(Uedaら,J.Bacteriol 178(3):774−79(1996))、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(Timm & Steinbuchel,Eur.J.Biochem.209(1):15−30(1992))、シュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)(Huismanら,J.Biol.Chem.266:2191−98(1991))、リゾビウム・エトリ(Rhizobium etli)(Cevallosら,J.Bacteriol.178(6):1646−54(1996))、アール・メリロティ(R.meliloti)(Tomboliniら,Microbiology 141(Pt 10):2553−59(1995))、ロドコッカス・ルベル(Rhodococcus ruber)(Pieper & Steinbuchel,FEMS Microbiol Lett.96(1):73−80(1992))、ロドスピリルム・ルブルム(Rhodospirrilum rubrum)(Hustedeら,FEMS Microbiol.Lett.93:285−90(1992))、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)(Steinbuchelら,FEMS Microbiol.Rev.9(2−4):217−30(1992);Hustedeら,Biotechnol Lett.15:709−14(1993))、シネコシスチス属種(Synechocystis sp.)(Kaneko,DNA Res.3(3):109−36(1996))、ティー・ビオラセエ(T.violaceae)(Liebergesell & Steinbuchel,Appl.Microbiol.Biotechnol.38(4:493−501(1993))およびゼット・ラミゲラ(Z.ramigera)(GenBankアクセッション番号U66242)から単離されている。
【0091】
PHA形成に関連づけられていないがpha遺伝子および/または対応遺伝子産物に対して有意な相同性を共有する他の遺伝子も使用されうる。アセトアセチルCoAレダクターゼをコードするphaB遺伝子に対して有意な相同性を有する遺伝子は、アゾスピリルム・ブラシリエンス(Azospirillum brasiliense)(NCBIアクセッション番号X64772、X52913)、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)(NCBIアクセッション番号U53327、Y00604)、大腸菌(E.coli)(NCBIアクセッション番号D90745)、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)(NCBIアクセッション番号U39441)、ヘモフィルス・インフルエンゼ(H.influenzae)(NCBIアクセッション番号U32701)、バシラス・サチリス(B.subtilis)(NCBIアクセッション番号U59433)、シュードモナス・エルジノーサ(P.aeruginosa)(NCBIアクセッション番号U91631)、シネコシスチス属種(Synechocystis sp.)(NCBIアクセッション番号D90907)、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)(NCBIアクセッション番号AE000570)、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)(NCBIアクセッション番号X64464)、クフェア・ランセオラタ(Cuphea lanceolata)(NCBIアクセッション番号X64566)およびマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)(NCBIアクセッション番号U66800)を含む幾つかの生物から単離されている。
【0092】
III.5HVおよびC5化合物を含有するPHAの製造方法
再生可能な炭素源を供給原料として使用するポリヒドロキシアルカノアートの製造方法を提供する。好ましい実施形態においては、再生可能な資源から5−アミノペンタノアート(5AP)、5−ヒドロキシバレラート(5HV)、グルタラートおよび1,5−ペンタンジオール(PDO)ならびにそれらの重合体を産生するのに必要な遺伝子をコードする1以上の核酸構築物で細菌を形質転換またはトランスフェクトする。
【0093】
IV.使用方法
開示されているトランスジェニック生物は、C5化合物、例えば5−アミノペンタノアート(5AP)、5−ヒドロキシバレラート(5HV)、グルタラートおよび1,5−ペンタンジオール(PDO)、ならびに5HV単量体を含むPHA生体高分子を製造するために使用されうる。該C5化合物の製造の場合、適当なトランスジーンを発現する組換え生物(場合によっては、競合経路をコードする遺伝子が不活性化されている又は欠失している場合を含む)を、再生可能な発酵基質上で増殖させる。該基質は、炭水化物、リシン、プロリン、植物油、脂肪酸またはそれらの組合せから選択される。幾つかの実施形態に関する有用な組合せはグルコースとリシンとの混合物であろう。もう1つの適当な組合せはスクロースおよびリシンであろう。好ましくは、該供給原料は、主として、1つの基質、例えばグルコースまたはスクロースを含む。適当な炭水化物基質は、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、スクロース、ラクトースおよびマルトースから選択される1以上の糖を含む。C5化合物の製造のためには、所望の最終産物が増殖培地内に蓄積するまで、再生可能な基質上で該組換え生物を増殖させ、この時点でフロキュレーション、沈降、遠心分離または濾過により該細胞を除去し、該無細胞培地から該産物を標準的な方法により取り出す。そのような方法は、発酵製造された他の酸およびジオール、例えば乳酸、コハク酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールの回収に関して当技術分野で公知である。
【0094】
該組換え生物は、再生可能な炭素源、例えばグルコース、リシンなどの存在下または所望の重合体または共重合体を与えるように選択された他の基質の存在下で該生物を培養することにより、同種重合体P5HVおよび5HV含有PHA共重合体を含む5HV含有PHA生体高分子の発酵製造のために使用されうる。該PHA重合体が該細胞の内部に蓄積するまで、該組換え生物を該基質上で増殖させ、この時点で、当業者に公知の方法により該PHA重合体を該細胞から抽出する。該生物から得られた5HV含有PHA重合体は、広範な産業用プラスチック用途、例えばフィルム、繊維、発泡体、射出成形品、吹込成形品、紙コーティングなどにおいて使用されうる。それらは、組織増強を含む生物医学的用途、および心臓弁を製造するために、および縫合材として、および脈管移植片を製造するためにも使用されうる。典型的な共重合体には、PHB5HVおよびp(3−ヒドロキシプロピオナート−コ−5−ヒドロキシバレラート)p(4−ヒドロキシブチラート−コ−5−ヒドロキシバレラート)が含まれるが、これらに限定されるものではない。該組換え生物は、共重合体の製造のために必要に応じて、追加的な遺伝子、例えばベータ−ケトチオラーゼおよびアセトアセチル−CoAレダクターゼを含むように遺伝的に操作されうる。
【0095】
特に示さない限り、本明細書中で用いる全ての科学技術用語は、開示されている本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0096】
実施例
【実施例1】
【0097】
ナトリウム5−ヒドロキシバレラートからのP(5HV)同種重合体の生合成
5HV含有PHAが合成可能であることの最初の実例として、ナトリウム5−ヒドロキシバレラート(Na5HV)を、CoAトランスフェラーゼまたはCoAシンテターゼとPHAシンターゼとの両方を発現する大腸菌(E.coli)株に供給して、供給された5HV単量体が許容され、P(5HV)同種重合体内に直接的に取り込まれるかどうかを確認した。Na5HVはδ−バレロラクトン(DVL)の塩基加水分解により合成された。この方法は、0.1molのNaOHを50mLのメタノールに、溶解されるまで攪拌しながら加えることを含むものであった。得られた沈殿物を乾燥させ、水に溶解し、8.5にpH調節し、0.2μM フィルターで濾過滅菌した。該DVLの全てがけん化されたことを確認するために、Waters Alliance HPLC上で該塩溶液の分析を行った。
【0098】
P(5HV)の製造に適した最良の組合せを見出すために、CoAトランスフェラーゼ/シンテターゼおよびPHAシンターゼ遺伝子の種々の組合せを試験した。試験したCoAトランスフェラーゼ/シンテターゼはシー・クルイベリ(C.kluyveri)orfZおよびピー・オレオボランス(P.oleovorans)alkKであり、該PHAシンターゼはアール・ユートロファ(R.eutropha)phaCおよびティー・プフェニジイ(T.pfenigii)phaECであった(表1A)。この実験で使用した全ての株はMG1655(Jensen,J.Bacteriol,175(11):3401−3407(1993))から誘導された。CoAトランスフェラーゼ/シンテターゼとPHAシンターゼとの異なる組合せをそれぞれが含有する4つの発現プラスミド(pFS92、pMS96、pMS93およびpMS102)を、以下の段落に記載されているとおりに構築した。
【0099】
プラスミドの構築
pAET41(PeoplesおよびSinskey,J.Biol Chem.264(26):15298−15303(1989))をXmaIおよびStuIで消化して、アール・ユートロファ(R.eutropha)phaCおよびその天然プロモーター(PRe)を含有する断片を取り出すことにより、プラスミドpFS30を構築した。プラスミドpAET41は、phaC遺伝子を含むアール・ユートロファ(R.eutropha)H16からの染色体断片を含有するpUC18ベクター(アクセッション番号L08752)である。PTrcプロモーター下でシー・クルイベリ(C.kluyveri)からのorfZ遺伝子(表1A)を含有するpTrc99a(Pharmacia,Uppsala,Sweden)の誘導体であるプラスミドpFS16(SkralyおよびPeoples,米国特許第6,323,010号)をBamHIで消化し、T4ポリメラーゼで平滑末端化し、XmnIで再度消化した後、該PRe−phaC XmaI−StuI断片と連結した。得られたプラスミドをpFS30と命名した。これは構成発現PReプロモーター下でpha−orfZオペロン融合体を含有していた。
【0100】
プラスミドpFS92は多段階法で作製した。まず、ティー・プフェニジイ(T.pfenigii)phaEを、操作されたEcoRIおよびAcc65I制限部位を含有するプライマーFS−E5’およびFS−E3’でpMON25893(Reiserら,Appl.Microbiol,Biotechnol 53(2):209−218(2000))から増幅した。ついで該phaE PCR産物を制限酵素EcoRIおよびAcc65Iで消化し、同様にして消化されたpTrcN(Gerngrossら,Biochemistry 33:9311−9320(1994))に連結して、pFS89を得た。FS−E5’のプライマー配列は(5’)−GGAATTCAGGAGGTTTTTATGAACGATACGGCCAACAAGACCAGC(配列番号1)であり、FS−E3’のプライマー配列は(5’)−GGGGTACCTCACTGGCCGGTGGTGGGCTTGGTGGTCTTGCGGCG(配列番号2)である。次にティー・プフェニジイ(T.pfenigii)phaCを、操作されたAcc65IおよびBamHI制限部位を含有するFS−C5’およびFS−C3’でpMON25894(Reiserら,Appl,Microbiol.Biotechnol.53(2):209−218(2000))から増幅した。ついで該phaC PCR産物を制限酵素Acc65IおよびBamHIで消化し、同様にして消化されたpTrcNに連結して、pFS90を得た。FS−C5’のプライマー配列は(5’)−GGGGTACCAGGAGGTTTTTATGTCCCCATTCCCGATCGACATCCG(配列番号3)であり、FS−C3’のプライマー配列は(5’)−CGGGATCCTCAGCCGCGTTCGTTCAGCCAGCGGCCGATCGCCG(配列番号4)である。にティー・プフェニジイ(T.pfenigii)phaEおよびphaCをpTrcN内に個々にクローニングして、それぞれpFS89およびpFS90を得た後、pFS89をMluIおよびAcc65Iで消化し、該phaE含有断片を単離し、それを、同様に消化されたpFS90の調製物に連結することにより、phaEをphaCの上流にクローニングした。得られたプラスミドpFS91はPTrcプロモーター下にphaCオペロン融合体を含有していた。最後に、phaECを含有するpFS91からのMluI−BamHI断片を、MluIおよびBamHIで消化されたpFS16に連結することにより、pFS92を作製した。プラスミドpFS92はPTrcプロモーター下にphaEC−orfZオペロン融合体を含有する。
【0101】
alkK(表1Aを参照されたい)をphaECの下流のpFS91内にクローニングすることにより、プラスミドpMS96を作製した。まず、PCR産物の末端にBamHI部位を含むように操作されたプライマーK5−1およびK3−1を使用して、ピー・オレオボランス(P.oleovorans)ゲノムDNAからalkKをPCR増幅した。プライマーK5−1の配列は(5’)−GCTGAGGATCCAGGAGGTTTTTATGTTAGGTCAGATGATGCGTAATC(配列番号5)であり、プライマーK3−1の配列はCTAGAGGATCCTTATTCACAGACAGAAGAACTACTG(配列番号6)である。増幅後、alkK PCR断片およびpFS91(前記段落に記載されている)をBamHIで消化し、連結してpMS96を得た。pMS96におけるalkKの配向はphaECと同じ方向であることが制限酵素消化により確認された。したがって、これはPTrcプロモーター下のphaEC−alkKオペロン融合体の適切な構築を保証するものである。
【0102】
pACYC177(アクセッション番号X06402)を、まず、BspHIで消化してkanマーカーを取り出し、それをpFS30の唯一のBspHI部位内に連結してpFS73(これは縦列プロモーターPTrcおよびPReの制御下にphaC−orfZを含有する)を得ることにより、プラスミドpMS93およびpMS102を構築した。PReとphaC CDSの5’末端からの837bpとの両方を含有するpFS73のEcoRI−BspEI断片を、phaCの5’末端からの837bpのみを含有するpKAS4(Peoplesら,米国特許第5,480,794号)からのEcoRI−BspEI断片で置換することにより、該PReプロモーター領域を除去した。この得られたプラスミドはPTrcプロモーターのみの制御下でphaC−orfZを含有し、該プラスミドをpMS93と命名した。pMS102を作製するために、該orfZ遺伝子をpFS73から除去した。これは、DraIで消化し、該プラスミドバックボーンを自己連結してpMS74を得ることにより行った。プライマーK5−2およびK3−2を使用して、プラスミドpTrcN−A.eut−AlkK(後記)からalkK遺伝子をPCR増幅した。プライマーK5−2の配列は(5’)−AATTCAGGAGGTTTTTATGTTAGGTCAGATGATGCGTAATC(配列番号7)であり、プライマーK3−2の配列は(5’)−GATCCTTATTCACAGACAGAAGAACTACTG(配列番号8)である。ついでプラスミドpMS74をSpeIおよびSbfIで消化し、ついでクレノウ・フィル・イン(クレノウを使用して埋めること)により平滑末端化し、該alkK PCR断片を該平滑化pMS74バックボーンに連結してpMS92を得た。したがってプラスミドpMS92は縦列プロモーターPTrcおよびPReの制御下にphaC−alkKオペロン融合体を含有する。該オペロンを専らIPTG誘導性PTrcプロモーターから発現させるために、PReとphaC CDSの5’末端からの837bpとの両方を含有するpFS73のEcoRI−BspEI断片を、phaCの5’末端からの837bpのみを含有するpMS93からのEcoRI−BspEI断片で置換することにより、該PReプロモーター領域を除去した。この得られたプラスミドはPTrcプロモーターのみの制御下でphaC−alkKを含有し、該プラスミドをpMS102と命名した。
【0103】
プライマーPosynrbs.c(5’−GGAATTCAGGAGGTTTTTATGTTAGGTCAGATGATGCGTAATCAG)(配列番号9)およびPosynrbs.r(5’−CGGGATCCTTATTCACAGACAGAAGAACTACTGCG)(配列番号10)を使用して、ピー・オレオボランス(P.oleovorans)ゲノムDNAからのalkKを、まず、PCR増幅し、プラスミドpTrcN−A.eut−AlkKを作製した。得られたPCR産物をEcoRIおよびBamHIで消化し、同様にして消化されたpTrcNに連結して、pTrcN−AlkKを得た。ついで、プライマーA.eutPhaG.c(5’−GGAATTCGGATCCCAAGTACCTTGCCGACATCTATGCGCTGGC)(配列番号11)およびA.eut.EcoRI.r(5’−GGAATTCCCGGCTCCGGGATTGCCCTGGCCGGACT)(配列番号12)を使用して、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)ゲノムDNAから該PReプロモーターをPCR増幅した。得られたPCR産物をEcoRIで消化し、同様にして消化されたpTrcN−AlkKに連結してpTrcN−A.eut−AlkKを得た。
【0104】
プラスミドpFS92、pMS96、pMS93およびpMS102を個々にMG1655(Jensen,J.Bacteriol.175(11):3401−3407(1993))内に形質転換して、CoAトランスフェラーゼ/シンテターゼ(orfZまたはalkK)とPHAシンターゼ(phaCまたはphaEC)との異なる組合せを含有する4プラスミド含有株を得た。以下の節に記載されているとおり、P(5HV)同種重合体の産生を特徴づけるために、これらの株を250mLの振とうフラスコ内で増殖させた。
【0105】
振とうフラスコ培養におけるP(5HV)同種重合体の製造のための培地、増殖条件および試験
適当な抗生物質で補足された3mLのLB(SambrookおよびRussell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(2001))を含有する試験管内で各プラスミド含有MG1655株を37℃で250rpmの振とうで一晩増殖させた。各株に適した抗生物質は以下のとおりである:pFS92およびpMS96含有MG1655株の一晩培養に100μg/mL アンピシリンを加え、pMS93およびpMS102含有MG1655株の一晩培養に50μg/mL Kmを加えた。翌日、0.5mLの一晩培養を使用して、適当な抗生物質で補足された50mLの新鮮なLBを含有する振とうフラスコに接種し、37℃で250rpmの振とうで増殖させた。3.5時間の時点で0.1mM IPTGを該液体培養に加え、5時間の時点で該培養を4150rpm(Sorvall Legend RT卓上遠心機)で遠心沈殿させ、0.1mM IPTGおよび同じ抗生物質を含有する50mLの生産培地に再懸濁させた。該生産培地は、10g/L グルコース、2.5g/L LB、10g/L Na5HV、2mM MgSOおよび1×微量塩溶液を含有する1×E2最少塩溶液からなる。50×E2ストック溶液は1.275M NaNHHPO・4HO、1.643M KHPOおよび1.36M KHPOからなる。1000×ストック微量塩溶液は、1.5N HCL、50g FeSO・7HO、11g ZnSO・7HO、2.5g MnSO・4HO、5g CuSO・5HO、0.5g (NHMo24・4HO、0.1g Naおよび10g CaCl・2HOを1L当たりに加えることにより調製される。
【0106】
該再懸濁培養を250mLの振とうフラスコに移し、振とうしながら30℃で24〜72時間温置した。該実験の終了時に、培養を4150rpmで遠心沈殿させ、蒸留水で1回洗浄し、少なくとも30分間にわたり−80℃で凍結させ、一晩にわたり凍結乾燥させた。翌日、測定された量の凍結乾燥細胞ペレットをガラス管に加え、ついで、2mg/mL ジフェニルメタンを内部標準として含有するジオキサン中の99.9% n−ブタノールおよび4.0N HClの等容量混合物からなる3mLのブタノリシス試薬を加えた。該管に蓋をした後、それらを手短にボルテックスし、93℃に設定された加熱ブロック上に、定期的にボルテックスしながら6時間配置した。ついで該管を室温に冷却した後、3mLの蒸留水を加えた。該管を約10秒間ボルテックスした後、620rpm(Sorvall Legend RT卓上遠心機)で2分間遠心沈殿させた。1mLの有機相をGCバイアル内にピペッティングし、ついでこれをガスクロマトグラフィー−フレームイオン化検出器(GC−FID)(Hewlett−Packard 5890 Series II)により分析した。別のブタノリシス反応において一定量のDVLを加えることにより作成した標準曲線と比較することにより、該細胞ペレット中のP(5HV)同種重合体の量を決定した。該標準曲線を作成するために、2〜6mgの範囲の3つのDVL標準物を使用した。
【0107】
実験結果
表2は、全ての構築物がP(5HV)を産生することが可能であったことを示している。しかし、MG1655[pMS93]は、その他の株のいずれよりも有意に大量のP(5HV)を産生した。このことは、P(5HV)を重合するための最適な遺伝子の組合せがphaCおよびorfZであることを示している。
【0108】
【表28】

【実施例2】
【0109】
ナトリウム5−ヒドロキシバレラートからのP(3HB−コ−5HV)共重合体の生合成
次の実験は、3HB−CoAおよび5HV−CoA単量体を合成しそれらをPHA内に組込みうる大腸菌(E.coli)株におけるP(3HB−コ−5HV)共重合体の製造を示すためのものであった。
【0110】
株の構築
この実験で使用した株はMBX2641であった。これは、染色体内にランダムに組込まれるアール・ユートロファ(R.eutropha)H16 bktB−B.メガテリウム(megaterium)phaB−kanからなるオペロンを含有するMG1655誘導体である。該オペロン組込みを行うために、文献(De LorenzoおよびTimmis,Methods Enzymol 235:386−405(1994))から選ばれたプロトコールを用いて、pCJ022(後記)を含有する株S17−1λpir(MillerおよびMekalanos,J.Bacteriol.170(6):2575−2583(1988))を、MG1655のナリジクス酸耐性突然変異体であるMBX1987と接合させた。染色体内に該bktB−phaB−kanカセットを含有するMBX1987の誘導体を、30μg/mL ナリジクス酸(NI)および50μg/mL カナマイシン(Km)を含有するLBプレート上で選択した。NlKm表現型を示す1つのそのような組込み体をMBX2079として確保した。ついで、組込みベクターpUT−C16−cat(後記)を含有するS17−1λpir株との接合により、phaEC−catをMBX2079の染色体内にランダムに組込んだ。染色体内にphaEC−catカセットを含有するMBX2079の組込み体を、25μg/mL クロラムフェニコール(Cm)を含有するLBプレート上で選択した。NlKmCm表現型を含有する幾つかの組込み体をプールし、100μg/mL Cmを含有するLBプレート上での選択を伴うニトロソグアニジン突然変異誘発(Miller,Experiments in Molecular Genetics,Cold Spring Harbor Laboratory(1972))に付した。1つの突然変異体を単離し、MBX2114と命名した。最後に、Miller(Experiments in Molecular Genetics,Cold Spring Harbor Laboratory(1972))により記載されているとおり、Kmを選択因子として用いて、P1ライセートをMBX2114上で産生させ、MG1655内に形質導入することにより、MBX2641を作製した。1つのそのような形質導入体を確保し、MBX2641と命名した。これは、ゲノム内にランダムに組込まれたbktB−phaB−kan遺伝子カセットを含有するMG1655である。
【0111】
プラスミドpFS92(実施例1を参照されたい)およびpJB84(構築は後記)を、染色体内にランダムに組込まれたbktB−phaB−kanを含有するMBX2641内に個々に形質転換した。
【0112】
プラスミドの構築
kanマーカーの上流にbktB−phaBを含有する小型Tn5組込みベクターを作製することにより、プラスミドpCJ022を作製した。これを行うために、まず、pMON25765(Slaterら,J.Bacteriol.180(8):1979−1987(1998))からプライマーMS069およびMS070でbktBをPCR増幅することにより、bktB−phaBオペロンをpSE380(Invitrogen,Carlsbad,CA)上で合体させた。プライマーMS069の配列は(5’)−GGTGGATCCTTAAGAGGAGGTTTTTATGACGCGTGAAGTGGTAGTGG(配列番号13)であり、プライマーMS070の配列は(5’)−GGTGCTAGCTCAGATACGCTCGAAGATGGCG(配列番号14)である。得られたPCR断片をBamHIおよびNheIで消化し、同じ酵素で切断されたpSE380に連結した。得られたプラスミドをpSE380−bktBと命名した。次に、プライマーMS071およびMS072でphaBをpGM10(McCoolおよびCannon,J.Bacteriol.181(2):585−592(1999))からPCR増幅した。プライマーMS071の配列は(5’)−GGTCCTAGGTTAAGAGGAGGTTTTTATGACAACATTACAAGGTAAAG(配列番号15)Tであり、プライマーMS072の配列は(5’)−GGTGCGGCCGCTTACATGTATAAGCCGCCGTTAAT(配列番号16)である。得られたPCR断片をAvrIIおよびNotIで消化し、同じ酵素で処理されたpSE380−bktBに連結した。得られたプラスミドをpSE380−bktBphaB19と命名した。該オペロンを合体させた後、pSE380−bktBphaB19をEcoRIおよびSpeIで消化し、bktB−phaB含有断片を、EcoRIおよびXbaIで切断されたpTrcN−kanに連結することにより、該オペロンをpTrcN−kan(bla遺伝子がkan遺伝子で置換されているpTrcNの誘導体)に移した。得られたプラスミドをpMS115と命名した。ついでbktB−phaBオペロンをpMS115からpBSL118組込みベクター(Alexeyevら,Can.J.Microbiol.41:1053−1055(1995))に移した。これは、pMS115およびpBSL118をBamHIで消化し、互いに連結してプラスミドpCJ022を得ることにより行った。該プラスミドを使用して、bktB−phaBをMG1655の染色体内に組込んだ。
【0113】
EcoRIおよびXbaIでphaECをpFS91から取り出し、クレノウを使用して粘着末端を平滑化することにより、プラスミドpUT−C16catを作製した。組込みベクターpUT−cat(De LorenzoおよびTimmis,Methods Enzymol.235:386−405(1994))をAvrIIで消化し、クレノウ・フィル・インを用いて平滑化し、ついで該phaEC断片に連結した。phaECが下流catマーカーと同じ配向であることを確認した後、該プラスミドをpUT−C16catと命名した。
【0114】
5’隣接末端にBspHI部位を含むように操作されたJB123bおよびJB124aを使用してpBSL202(Alexeyevら,Can.J,Microbiol.41:1053−1055(1995))からaacC(Gm)マーカーをPCR増幅することにより、プラスミドpJB84を構築した。プライマーJB123bの配列は(5’)−TTATTTCATGAACCCTCGAATTGACGCGCTC(配列番号17)であり、プライマーJB124aの配列は(5’)−TTATTTCATGAGCTTATCGATACCGTCGACC(配列番号18)である。aacC遺伝子を含有する得られたPCR断片をBspHIで消化し、同じ酵素で消化されたpMS93に連結してpJB84を得た。この最終工程は、pMS93上の元のbla(Ap)マーカーを同じ配向でaacC(Gm)で置換するために行ったことに注目されたい。
【0115】
実験結果
実施例1に記載されているとおりに、プラスミドpFS92(実施例1に記載されている)またはpJB84を含有するMBX2641株を増殖させ、GC−FID分析のために調製した。表3に示すとおり、MBX2641[pJB84]は、より大量の共重合体を産生し(69.5% dcw)、より大量の5HVを共重合体内に組込んだ(82.3% PHA)。
【0116】
【表29】

【実施例3】
【0117】
P(3HB−コ−5HV)共重合体における調節可能な5HV単量体組成および物質特性に対する効果
生産培地に加えるNa5HVおよびグルコースの量を変化させることにより、共重合体組成を調節した。これを達成するための代替方法は、(1)実施例6に示すとおり、L−リシンから5HVを産生しうる組換え細胞の増殖培地に種々の量のL−リシンを供給し、または(2)実施例9および10に示されているとおり、グルコースからL−リシンを経由して5HVを産生しうる組換え細胞におけるL−リシン経路の遺伝子を脱調節することを含む。
【0118】
P(3HB−コ−5HV)共重合体における調節可能な5HV単量体組成を実証するために、CoA−トランスフェラーゼ(orfZ)およびPHAシンターゼ(phaC)に加えて3HB経路の酵素(bktBおよびphaB)を発現する株MBX2641[pFS30]を使用した。MBX2641[pFS30]の並行実験用培養物を、漸減濃度のグルコース(10、5、1、0.5、0.1、0g/L)またはNa5HV(10、5、1、0.5、0.1、0g/L)のいずれかにおいて増殖させ、実施例1に記載されているとおりに重合体含量に関して分析した。表4は、種々の量の5HVがP(3HB−コ−5HV)共重合体内に組込まれうることを示している。
【0119】
【表30】

【0120】
もう1つの実験において、広範な5HV組成を有する合計10個のP(3HB−コ−5HV)共重合体サンプルを調製し、ついで示差走査熱量測定(DSC)分析のために抽出した。表5は、該P(3HB−コ−5HV)共重合体における5HVの組成比率が増加するにつれてガラス転移温度(T)が減少したことを示している。これは、5HVコモノマー組成を調節することにより広範な物質特性が得られうることを示している。
【0121】
【表31】

【実施例4】
【0122】
脂肪酸分解系を経由するNa5HVからの3−ヒドロキシプロピオナートの合成
大腸菌(E.coli)の脂肪酸分解(FAD)系が5HVをアセチル−CoAおよび3−ヒドロキシプロピオニル−CoA(3HP−CoA)に分解しうるかどうかを判定するために、プラスミドpMS93(PtrcプロモーターからphaC−orfZを発現する;実施例1を参照されたい)を、fadR,atoC(抑制FAD)またはfadR,atoCconst(脱抑制FAD)のいずれかである大腸菌(E.coli)K12株内に形質転換した。MG1655およびLS5218(Sprattら,J.Bacteriol.146(3):1166−1169(1981))を、それぞれfadR,atoCおよびfadR,atoCconst株として使用した。実施例1に記載されているとおりに振とうフラスコ内にNa5HVを供給することにより、MG1655[pMS93]およびLS5218[pMS93]を試験した。LS5218[pMS93]はP(5HV−コ−3HP)を産生するが、MG1655[pMS93]はそれを産生しないことを、GC−FIDおよびGC−質量分析(MS)分析は示した(表6)。これは、活性脂肪酸の分解が5HVから3HPを産生することを示している。
【0123】
【表32】

【実施例5】
【0124】
L−リシンからのP(5HV)同種重合体の生合成
L−リシンをP(5HV)に変換するために案出された経路を図2Bに図示する。該経路は、以下の6つの異種遺伝子がクローニングされ大腸菌(E.coli)内で発現されることを要する:ピー・プチダ(P.putida)davB、ピー・プチダ(P.putida)davA、ピー・プチダ(P.putida)davT、エイ・サリアナ(A.thaliana)gsaRAt、シー・クルイベリ(C.kluyveri)orfZおよびアール・ユートロファ(R.eutropha)phaC(表1Aを参照されたい)。davBAT遺伝子がpACYC184(ChangおよびCohen,J.Bacteriol.134:1141−1156(1978))内にクローニングされ、gsaRAt、orfZおよびphaCがpSE380内にクローニングされるよう、クローニング法を計画した。これらのプラスミドは、それぞれpJB91およびpMZ28と称され、それらの構築を次節で説明する。
【0125】
プラスミドの構築
プライマーJB134(5’−TGAGCGGATAACAATTTCAC)(配列番号19)およびJB135(5’−AATAACACGTCAACGCAAAAAGGCCATCCGT)(配列番号20)でプラスミドpSE380のマルチクローニング部位をPCR増幅した。得られたPCR産物をBmgBIで消化し、EcoRVおよびNruIで消化されたプラスミドpACYC184内にクローニングしてpJB78を得た。
【0126】
プラスミドpJB91を3工程法で構築した。まず、NdeIおよびBsrGI制限部位をdavBA PCR産物のそれぞれ5’および3’末端に組込むように操作されたJB136およびJB137を使用して、ピー・プチダ(P.putida)由来のdavBAをゲノムDNA調製物からPCR増幅した。プライマーJB136の配列は(5’)−TTTTTCATATGAGGAGGTTTTTATGAACAAGAAGAACCGCCA(配列番号21)であり、プライマーJB137の配列は(5’)−TTTTTTGTACATCAGCCTTTACGCAGGTGCA(配列番号22)である。得られたPCR産物をNdeIおよびBsrGIで消化し、同じ酵素で処理されたpJB78に連結してプラスミドpJB79を得た。次に、SpeIおよびApaLI制限部位をdavT PCR産物のそれぞれ5’および3’末端に組込むように操作されたJB138およびJB139を使用して、ピー・プチダ(P.putida)由来のdavT遺伝子をゲノムDNAからPCR増幅した。プライマーJB138の配列は(5’)−TATATACTAGTAGGAGGATAATATGAGCAAAACCAACGAATC(配列番号23)であり、プライマーJB139の配列は(5’)−TTTTTGTGCACTCAGGCGATTTCAGCGAAGC(配列番号24)である。得られたPCR産物をSpeIおよびApaLIで消化し、同じ酵素で処理されたpJB79に連結してプラスミドpJB80を得た。最後に、BmgBIおよびAseI制限部位を5’および3’末端に組込むように操作されたJB141およびJB142を使用して、ompAプロモーターを大腸菌(E.coli)K12ゲノムDNAからPCR増幅した。得られたPCR産物をBmgBIおよびAseIで消化し、SnaBIおよびNdeIで処理されたpJB80に連結してプラスミドpJB82を得た。プライマーJB136およびJB137(前記のとおり)を使用して得られたdavBA PCR産物をDraIIIで消化し、同じ酵素で消化されたpJB82に該507bp断片を連結してプラスミドpJB91を得ることにより、プラスミドpJB91を構築した。この構築は、pJB82のdavB CDSにおいて見出されたナンセンス突然変異を矯正するために行った。プラスミドpJB80は構成的Ptetプロモーター下にdavBATオペロンを含有し、プラスミドpJB91は強力なPompAプロモーター下に同じオペロンを含有する。
【0127】
大腸菌(E.coli)K12内での発現に関してコドン最適化されたgsaRAtを含有する、DNA2.0(Menlo Park,CA)により作製される構築物であるプラスミドpJ31:7950をBsrGIで消化することにより、プラスミドpMZ28を構築した。gsaRAtを含有する得られた断片を、同様にBsrGIで切断されたpFS30に連結した。gsaRAtの配向がphaC−orfZと同じ方向であることを制限酵素消化により確認した後、得られたプラスミドをpMZ28と命名した。
【0128】
実験結果
L−リシンからP(5HV)への不完全な経路を発現するMG1655[pMZ28]、およびL−リシンからP(5HV)への完全な経路を発現するMG1655[pMZ28、pJB91]を、適当な抗生物質(pJB91では25μg/mL クロラムフェニコール;pMZ28では100μg/mL アンピシリン)で補足された3mLのLBを含有する試験管内に接種し、250rpmで振とうしながら37℃で一晩増殖させた。翌日、0.5mLの各一晩培養物を使用して、適当な抗生物質で補足された50mLの新鮮なLBを含有する振とうフラスコに接種し、250rpmで振とうしながら37℃で増殖させた。3.5時間の時点で0.1mM IPTGを該液体培養に加え、5時間の時点で該培養を4150rpm(Sorvall Legend RT卓上遠心機)で遠心沈殿させ、10g/L グルコース、2.5g/L LB、10g/L L−リシン、2mM MgSO、1×微量塩溶液および0.1mM IPTGを含有する1×E2最少塩溶液からなる50mLの生産培地に再懸濁させた。E2塩および微量塩溶液の調製法は実施例1に記載されている。
【0129】
振とうフラスコ増殖条件、およびPHA含量に関する分析法は、実施例1に記載されているとおりである。表7は、davBATオペロンの導入後に8倍多いP(5HV)が産生されたことを示している。
【0130】
【表33】

【実施例6】
【0131】
L−リシンからのP(3HB−コ−5HV)共重合体の生合成
また、L−リシンから、そして結局はグルコースからP(3HB−コ−5HV)共重合体を産生させるために、L−リシンをP(5HV)に変換するために案出された経路を、bktBおよびphaBを発現する株MBX2641内に導入した。
【0132】
プラスミドの構築
この実施例における経路を含む遺伝子には、ピー・プチダ(P.putida)davB、ピー・プチダ(P.putida)davA、ピー・プチダ(P.putida)davT、シー・クルイベリ(C.kluyveri)orfZ、アール・ユートロファ(R.eutropha)phaC、およびエイ・サリアナ(A.thaliana)gsaRAtまたはエイ・テレウス(A terreus)gsaRAt2(表1Aを参照されたい)が含まれる。
【0133】
gsaRAt2、phaCおよびorfZ遺伝子からなる代替経路を含有するプラスミドpJB90を以下のとおりに作製した。大腸菌(E.coli)K12における発現に関してコドン最適化されたエイ・テレウス(A terreus)gsaRAt2遺伝子を、プライマーJB145およびJB146を使用して、pSG40(DNA2.0(Menlo Park,CA)により作製された構築物)からPCR増幅した。どちらのプライマーも5’末端にBglII部位を含有していた。プライマーJB145の配列は(5’)−TTTTTAGATCTAGGAGGTTTTTATGCTGCGTGCTGCTTCTCG(配列番号25)であり、プライマーJB146の配列は(5’)−TTTTTAGATCTTTAGCGGAAATAGTTTGGAC(配列番号26)である。得られたPCR断片をBglIIで消化し、pJB84の対応部位内に連結してpJB90を得た。
【0134】
実験結果
L−リシンおよびグルコースからのP(3HB−コ−5HV)の産生を特徴づけるために、実施例1および2に記載されているとおりに、株MBX2641[pJB78、pJB84]、MBX2641[pJB91、pMZ28]およびMBX2641[pJB91、pJB90]を振とうフラスコ内で増殖させ、PHA含量および組成に関して分析した。MBX2641[pJB78、pJB84]、MBX2641[pJB91、pMZ28]およびMBX2641[pJB91、pJB90]を、25μg/mL クロラムフェニコールおよび100μg/mL アンピシリンで補足された3mLのLBを含有する試験管内に接種し、250rpmで振とうしながら37℃で一晩増殖させた。翌日、0.5mLの各一晩培養物を使用して、同じ抗生物質で補足された50mLの新鮮なLBを含有する振とうフラスコに接種し、250rpmで振とうしながら37℃で増殖させた。3.5時間の時点で0.1mM IPTGを該液体培養に加え、5時間の時点で該培養を4150rpm(Sorvall Legend RT卓上遠心機)で遠心沈殿させ、10g/L グルコース、2.5g/L LB、10g/L L−リシン、2mM MgSO、1×微量塩溶液および0.1mM IPTGを含有する1×E2最少塩溶液からなる50mLの生産培地に再懸濁させた。E2塩および微量塩溶液の調製法は実施例1に記載されている。
【0135】
表8に示されているとおり、L−リシンを5HVに変換する遺伝子を有さない株MBX2641[pJB78、pJB84]はL−リシンから5HVを産生できず、P(3HB)同種重合体のみを産生した。L−リシンから5HV−CoAへの全経路を共に含有する株MBX2641[pJB91、pMZ28]およびMBX2641[pJB91、pJB90]は全共重合体のそれぞれ2.5%wtおよび5%wtまで5HVを組込んだ。これは、L−リシンから5HV含有共重合体を産生させるためにはdavBATおよびgsaR遺伝子が発現される必要があることを示している。
【0136】
【表34】

【実施例7】
【0137】
L−リシンからの5HV含有PHA重合体の生合成の改善
5HVは意外に低レベルで組込まれたため、競合経路の存在に注目した。グルタラートがL−リシンから産生されうるかどうかを調べるために、該プラスミドからdavBAT遺伝子を発現するMG1655[pJB91]を、25mg/L クロラムフェニコールを含有するLB培地内で、振とうしながら30℃で6時間増殖させた。25μLの中期対数相の培養物のアリコートを475μLのE0最少培地に接種し、250rpmで振とうしながら30℃で48時間温置した。該E0最少培地は10g/L グルコース、4g/L リシン、58mM KHPO、27mM KHPO、2mM MgSO、25μg/mL クロラムフェニコール、0.1mM IPTGおよび微量元素からなるものであった。上清中に存在するグルタラートを以下のとおりにGC−MSにより測定した。遠心分離により発酵ブロスからの上清を得、該サンプルの1μLを、1μLの1g/L 4−アミノブチラート(GABA)を内部標準として含有する新鮮なエッペンドルフ管にピペッティングした。サンプルをLabconcoセントリバプ(centrivap)において乾燥させ、100μLのアセトニトリル(ACN):N−(t−ブチルジメチルシリル)−N−メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA)1:1溶液に3時間にわたり音波処理により再懸濁させた。ついでサンプルを65℃で30分間誘導体化し、遠心分離して不溶性物質を除去し、以下の獲得パラメーターを用いて、HP−5msカラムを備えたAgilent 5975 GC−MS内に上清を注入した:キャリヤーガス ヘリウム流量2ml/分、走査モードm/z65〜700、溶媒遅延3.5分間、オーブンプログラム:150℃で2分間、ついで3℃/分で280℃まで上昇、イオン源温度230℃、四重極質量フィルター温度150℃。
【0138】
興味深いことに、davBATオペロンがMG1655において過剰発現された場合に、0.6g/L グルタラートがL−リシンから産生された。該davBATオペロンは、L−リシンをGSAに変換する酵素をコードする遺伝子を発現する。グルタラートは、コード化酵素がGSAをグルタラートへと酸化する内因性大腸菌(E.coli)遺伝子により産生されうる。
【0139】
GSAからグルタラートへの有りそうな酵素反応の精査は2つの可能な内因性大腸菌(E.coli)GSAデヒドロゲナーゼ遺伝子gabDおよび/またはyneIの特定をもたらした(表1Aを参照されたい)。これらの2つの遺伝子はコハク酸セミアルデヒドをコハク酸へと酸化することが既に確認されているが(DennisおよびValentin,米国特許第6,117,658号)、GSAをグルタラートへと酸化することは未だ示されていない。gabD−およびyneI−陰性株がL−リシンからグルタラートを尚も産生するかどうかを試験するために、以下の株を構築した。
【0140】
DatsenkoおよびWanner(Proc.Natl,Acad.Sci.USA.97:6640−6645(2000))により記載されているRed/ETリコンビニアリング(Recombineering)法により、単一のヌルgabDおよびyneI突然変異体を構築した。MG1655の染色体からgabDを欠失させる方法は、PCR媒介相同組換えによるFRT隣接kanマーカーでのgabDの置換を含むものであった。プライマー
【0141】
【化1】

を使用して、該FRT隣接kanマーカーをプラスミドpKD4(DatsenkoおよびWarmer,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.97:6640−6645(2000))からPCR増幅した。
【0142】
FRT隣接kanマーカーでの置換によりMG1655の染色体から該yneI遺伝子を欠失させた。欠失すべき遺伝子に対して相同な50bpの隣接領域を導入するプライマーMS220 5’−GCAAGAGTAAATCTGCGTATCTTCATACCATGACTCATAAAGGAGATACCCCGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC(配列番号29)およびMS217 5’−ACCGCAGGTCTGAAAAGACCTGCGAGTATATCAGAGCTGAATATGTCGCGCATATGAATATCCTCCTTAGT(配列番号30)を使用して、このマーカーをプラスミドpKD4からPCR増幅した。このDNA断片でのyneIの置換は機能しなかったため、遺伝子置換のための相同性の増強された領域を有する別のPCR断片を作製した。これを達成するために、前記で作製されたPCR断片を鋳型として使用し、プライマーMS223 5’−TCGATTCGTGAATAAGTGGCTTAATATTATTCATTTTAAAGCAAGAGTAAATCTGCGTATC(配列番号31)およびMS224 5’−GCCACTTTCTACTCCTGGACCGCAGGTCTGAAAAGACCTGCGAGTATATCAGAGCTG(配列番号32)を使用して、追加的なラウンドのPCRを行った。FRT−kan−FRTでのyneIの置換の成功がもたらされた。ついでDatsenkoおよびWanner(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.97:6640−6645(2000))に記載されているとおりに該kanマーカーを除去した。
【0143】
MG1655ΔgabD::FRT−kan−FRTからMG1655ΔyneI::FRTへのP1媒介形質導入によりMG1655ΔgabD::FRT−kan−FRT,ΔyneI::FRTを構築し、前記と同じ方法を用いて残存kanマーカーを更に除去した。得られた株MG1655ΔgabD::FRT,ΔyneI::FRTをpJB91で形質転換し、davBAT遺伝子を対応プラスミドから発現するMG1655[pJB91]を使用する前記のものに類似した実験において、L−リシンからのグルタラート産生に関して分析した。
【0144】
L−リシンから0.6g/L グルタラートを産生したMG1655[pJB91]とは対照的に、株MG1655ΔgabD::FRT,ΔyneI::FRT[pJB91]はL−リシンからグルタラートを全く産生しなかった。このことは、大腸菌(E.coli)内因性gabDおよび/またはyneIがGSAからグルタラートへの変換をもたらしたことを示している。
【0145】
L−リシンからのP(3HB−コ−5HV)共重合体の産生の改善
3HB−コ−5HV共重合体を産生する株において内因性GSAデヒドロゲナーゼコード遺伝子gabDおよびyneIを欠失させることにより、L−リシンからの5HV流動の改善が達成された。
【0146】
プラスミドpJB91およびpJB90を株MBX2641内に形質転換することにより、MBX2855を構築した。この株は、グルコースおよびL−リシンからP(3HB−コ−5HV)を産生するための全ての遺伝子を有する。
【0147】
MG1655ΔgabD::FRT,ΔyneI::FRTを、実施例2に記載されているとおり、PHB産生能を付与するドナー株MBX2114でP1形質導入した。この株を更に、それぞれ実施例6および5に記載されているとおりにL−リシンからP(5HV)への経路の遺伝子を発現するpJB90およびpJB91で形質転換した。得られた株をMBX3378と命名した。該株は、グルコースおよびL−リシンからP(3HB−コ−5HV)を産生するための全ての遺伝子を有するが、MBX2855とは異なり、gabDおよびyneI遺伝子の両方が該ゲノムから除去されている。
【0148】
株MBX2855およびそのGSAデヒドロゲナーゼ欠損対応物MBX3378を使用して、振とうプレート発酵を行った。前記と同じ条件下(30℃で300rpmでの振とう)で、細胞を温置し、分析した。前実施例に記載されているとおり、E0最少培地は10g/L グルコース、2g/L L−リシン、58mM KHPO、27mM KHPO、2mM MgSO、25μg/mL クロラムフェニコール、5μg/mL ゲンタマイシン、0.1mM IPTGおよび微量元素からなるものであった。表9に示すとおり、野生型GSAデヒドロゲナーゼ活性を含有するMBX2855と比較してGSAデヒドロゲナーゼ欠損株MBX3378においては、L−リシンから5HVへの炭素流動が劇的に改善された。5HV含有PHAの産生を有意に改善するためには、GSAデヒドロゲナーゼ遺伝子、例えばgabDおよびyneIが産生宿主のゲノムから除去される必要がある。
【0149】
【表35】

【実施例8】
【0150】
グルコースからのL−リシンの生合成
L−リシン経路においては、遺伝子lysCおよびdapAによりアロステリックフィードバック調節が生じる。したがって、グルコースからのL−リシン産生の増大を可能にするためには、この制御が排除される必要がある。これを行うための方法は十分に確立されており、両方に遺伝子に関して既に記載されている(Kojimaら,米国特許第6,040,160号)。脱調節lysCおよびdapAを有する大腸菌(E.coli)突然変異体は、まず、大腸菌(E.coli)からmetLおよびthrAを欠失させることにより得られうる。LysC、MetLおよびThrAは、全て同一アスパルタートキナーゼ反応を触媒するアイソザイムであるため、lysCにおける突然変異が陽性選択されうる前に後者の2つを除去することが必要であろう。ΔmetLΔthrA株が作製されたら、それはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)で突然変異されうる。ついで、得られた突然変異体プールは、lysCおよびdpaAに対して圧をかけるためにL−リシンの非代謝可能類似体であるS−2−アミノエチルシステイン(AEC)を含有する最少培地内で増殖されるであろう。metLおよびthrAが欠失しているため、lysCおよびdpaAをL−リシン(またはそのAEC類似体)に対して脱感作する突然変異のみが、該細胞がL−リシン、トレオニンおよびメチオニンを合成して生存することを可能にするであろう。流動能を増加させ、転写調節を排除するために、脱調節lysC、脱調節dpaAおよび他の経路遺伝子を組換えプロモーターから過剰発現させることにより、更なる操作が行われうる。
【実施例9】
【0151】
グルコースからのP(5HV)同種重合体の生合成
5HV−CoA単量体をグルコースから合成しそれをPHA内に組込みうる大腸菌(E.coli)株において、唯一の炭素源としてのグルコースからP(5HV)を製造した。そのために、L−リシンからP(5HV)同種重合体を産生するのに要求される遺伝子を発現するばかりでなく、L−リシンフィードバック耐性ジヒドロジピコリナートシンターゼをコードするdapAfbrと称される突然変異dpaA遺伝子をも発現する株を構築した。この実施例の第1部では、この能力を示すのに必要なプラスミドの構築を説明することとする。
【0152】
プラスミドの構築
大腸菌(E.coli)においては、それぞれlysCおよびdpaA遺伝子によりコードされるアスパルタートキナーゼIIIおよびジヒドロジピコリナートシンターゼによりL−リシン経路においてアロステリック調節が生じる(図6)。グルコースからのL−リシンおよび最終的にはP(5HV)同種重合体の産生を増加させるためには、該アロステリック調節が低下または完全に排除される必要がある。これを行うための方法は十分に確立されており、両方の遺伝子に関して既に記載されている(Kojimaら,米国特許第6,040,160号)。第352ヌクレオチド残基がシトシンからチミンに変化したL−リシンフィードバック耐性dapAfbr遺伝子(dapAC352T)を構築した。これは、所望の塩基変化を導入するプライマーを使用する、2つのDNA断片を与える染色体大腸菌(E.coli)dpaA遺伝子のPCR増幅、およびそれに続く、それらの2つのDNA断片を融合する重複伸長PCR(SOE−PCR)スプライシングにより得た。SOE−PCR法は既に記載されている(Hoら,Gene 77(1):51−9(1989))。詳細には、一方のDNA断片は、プライマーDE081(5’−AAAAGAATTCTTAATTAATTCTAGAAGGAGGTTTCATATGTTCACGGGAAGTATTGTC)(配列番号33)およびDE082(5’−AGCGATGGCTTTGAAATACTGATACAAACCTTC)(配列番号34)で増幅された、dpaA遺伝子の第1〜第366ヌクレオチド対を含有し、もう一方のDNA断片は、プライマーDE083(5’−GAAGGTTTGTATCAGTATTTCAAAGCCATCGCT)(配列番号35)およびDE084(5’−CCCGAGCTCGTTTAAACTTAATTAAGACTAGTTTTACAGCAAACCGGCATGCTT)(配列番号36)で増幅された、dpaAの第337〜第879ヌクレオチド対を含有していた。プライマーDE082およびDE083は逆相補的であり、第352ヌクレオチド残基においてシトシンからチミンへの塩基変化を導入するように設計された。第1ラウンドのPCRからの2つのDNA断片を、プライマーDE081およびDE084を使用して、SOE−PCRにより融合させた。得られたPCR産物をXbaIおよびSacIで消化し、SpeIおよびSacIで消化されたpDE031に連結してプラスミドpDE035を得た。合成された63bpの二本鎖DNA断片(5’−TTTTTCTAGATTGACAGCTAGCTCAGTCCTAGGTATAATGCTAGCACTAGTGTTTAAACCCCC)(配列番号37)をXbaIおよびPmeIで消化し、これらの部位を含有するように予め操作されたpBluescriptII SK(+)プラスミド(Stratagene,La Jolla,CA)の同じ制限酵素部位内に連結することにより、合成構成的プロモーター(PsynI)を含有するプラスミドpDE031を構築した。pDE035内のPsynI−dapAC352T遺伝子構築物をXhoIおよびPmeIで消化し、ついで、BsrGIで消化されヤエナリヌクレアーゼで平滑化されXhoIで再度消化されたプラスミドpJB90(実施例6に記載されている)に連結して、PtrcプロモーターからphaC−gsaRAt−orfZオペロンを、そしてPsynIプロモーターからdapAC352Tを発現するプラスミドpJGを得た。
【0153】
実験結果
プラスミドpJG22をプラスミドpJB91(実施例5に記載されている)と共に株MBX3342(MG1655 ΔgabD::FRT,ΔyneI::FRT)内に形質転換して、株MBX3342[pJB91、pJG22]を得た。また、プラスミドpSE380およびpACYC184(それぞれpJG22およびpJB91を構築するために使用した空ベクター)を株MBX3342内に形質転換して陰性対照株MBX3342[pSE380,pACYC184]を得た。これらの株を、2×E2培地内で、300rpmで振とうしながら30℃で48時間温置し、前記実施例に記載されているとおりに分析した。該培地は、15g/L グルコース、52mM NaNHHPO、66mM KHPO、54mM KHPO、2mM MgSO、0.1mM IPTGおよび微量元素(前記のとおり)からなるものであった。MBX3342[pJB91,pJG22]の培地では25μg/mL クロラムフェニコールおよび5μg/mL ゲンタマイシンで補足し、MBX3342[pSE380,pACYC184]には100μg/mL アンピシリンを加えた。MBX3342[pJB91,pJG22]は2.60%乾燥細胞重量(DCW)のP(5HV)同種重合体を産生したが、株MBX3342[pSE380,pACYC184]はPHAを全く産生しなかったことを、表10におけるデータは示している。これらの結果は、L−リシンからP(5HV)への経路の遺伝子に加えてフィードバック耐性dapA遺伝子を発現する株が唯一の炭素源としてのグルコースからP(5HV)を産生しうることを示している。
【0154】
【表36】

【実施例10】
【0155】
グルコースからのP(3HB−コ−5HV)共重合体の生合成
次の実験は、3HB−CoAおよび5HV−CoA単量体を合成しそれらをPHA内に組込みうる大腸菌(E.coli)株におけるグルコースからのP(3HB−コ−5HV)共重合体の産生を示すためのものであった。
【0156】
実験結果
株MBX2114からのbtkB−phaB−kan遺伝子をMBX3342内にP1形質導入して株MBX3344を得た。MBX3344をプラスミドpJB91およびpJG22で形質転換して株MBX3344[pJB91,pJG22]を得た。また、pJG22およびpJB91を構築するために使用した空ベクターであるそれぞれプラスミドpSE380およびpACYC184をMBX3344内に形質転換して陰性対照株MBX3344[pSE380,pACYC184]を得た。これらの株を、2×E2培地内で、300rpmで振とうしながら30℃で48時間温置し、前記実施例に記載されているとおりに分析した。該培地は、15g/L グルコース、52mM NaNHHPO、66mM KHPO、54mM KHPO、2mM MgSO、0.1mM IPTGおよび微量元素(前記のとおり)からなるものであった。MBX3342[pJB91,pJG22]の培地では25μg/mL クロラムフェニコールおよび5μg/mL ゲンタマイシンで補足し、MBX3344[pSE380,pACYC184]には25μg/mL クロラムフェニコールおよび100μg/mL アンピシリンを加えた。24時間の温置の後、該培養ブロスを10g/L グルコースで補足した。表11は、唯一の炭素源としてのグルコースから、P(3HB−コ−5HV)代謝経路遺伝子の全てを含有する株内に5HVが組込まれることが可能であったことを示している。
【0157】
【表37】

【0158】
次に、株MBX3824(W3110 ΔgabD::FRT ΔyneI::FRT ΔcadA::FRT ΔldcC::FRT ΔargO::FRT bktB−phaB−kan)を、グルコースからP(3HB−コ−5HV)共重合体を産生させるための宿主株として試験した。この株においては、L−リシンを5HV−CoAコモノマーからそらしうる競合経路を該大腸菌(E.coli)ゲノムから除去した。
【0159】
第1競合経路はL−リシンをカダベリンに変換することが可能であり、cadA(MengおよびBennett,J.Bacteriol.174(8):2659−2669(1992);EcoCycアクセッション番号:EG10131)およびldcC(表1Aを参照されたい;Yamamotoら,Genes Genet.Syst.72(3):167−72(1997);EcoCycアクセッション番号:G6094)によりコードされる2つのL−リシンデカルボキシラーゼ酵素(EC番号4.1.1.18)からなるものであった。
【0160】
第2競合経路は、L−リシンを微生物細胞から輸出しうる。コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、該L−リシン輸出タンパク質はLysEとして特定されている(表1A;Vrljicら,Mol.Microbiol.22(5):815−826(1996))。大腸菌(E.coli)における推定L−リシン輸出遺伝子を特定するために、幾つかの文献および特許検索ならびにBLASTおよびPsi−BLAST検索(C.glutamicum LysEを問合せ配列として使用するもの)を行った。6つのタンパク質が、該細胞から外部へのL−リシン輸送を妨げるための大腸菌(E.coli)ゲノムからの除去のための標的であることが判明した。それらには以下のものが含まれる:(1)ArgO(別名YggA,NandineniおよびGowrishankar,J.Bacteriol.186:3539−3546(2004))、(2)YfiK(別名EamB;Frankeら,J.Bacteriol.185:1161−1166(2003))、(3)RhtB(旧名YigK;Zakataevaら,FEBS Lett.452(3):228−32(1999))、(4)YahN(Kutukovaら,Mol.Biol.(Mosk.)39(3);374−378(2005))、(5)RhtC(旧名YigJ;Zakataevaら,FEBS Lett.452(3):228−32(1999))および(6)YeaS(別名LeuE;Kutukovaら,FEBS Lett.579(21):4629−34(2005))。ArgOは、コリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)を問合せ体として使用するBLASTP検索における2e−22のその最低e値、コリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)LysEおよび6つの大腸菌(E.coli)ホモログでのClustalX(Thompsonら,Nucleic Acids Res.25:4876−4882(1997))の後の近隣結合木(Neighbor Join Tree)におけるLysEに対する最接近クラスタリング、ならびにL−リシンに対する3倍増加耐性およびargOが過剰発現された場合にベクター単独対照株より38%高いL−リシン蓄積の報告(Livshitsら,米国特許第6,979,560号)に基づいて、大腸菌(E.coli)細胞からL−リシンを輸出する最も可能性の高い候補であると思われた。しかし、その他の特定されたタンパク質もL−リシンを輸出する可能性があり、したがって同様に遺伝子欠失の標的である。
【0161】
もう1つの競合経路はL−リシンを(R)−β−リシンに変換することが可能であり、これは、大腸菌(E.coli)のyjeK(EcoCycアクセッション番号:G7836;Behshadら,Biochemistry 45(42):12639−46(2006))によりコードされるリシン2,3−アミノムターゼ(EC番号5.4.3.−)により触媒される。
【0162】
以下のプライマーを使用して、既に記載されているとおりに、Gene BridgesのRed/ETリコンビニアリング(Recombineering)法により、単一のヌルcadAおよびldcC突然変異体を構築した:ΔcadA::FRT−kan−FRT突然変異に関してはDE118(5’−TGTCCCATGTGTTGGGAGGGGCCTTTTTTACCTGGAGATATGACTGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC)(配列番号38)およびDE119(5’−GAGCAAAAAAGGGAAGTGGCAAGCCACTTCCCTTGTACGAGCTAAATGGGAATTAGCCATGGTCC)(配列番号39)、ならびにΔldcC::FRT−cat−FRT突然変異に関してはDE122(5’−GTTTGAGCAGGCTATGATTAAGGAAGGATTTTCCAGGAGGAACACGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC)(配列番号40)およびDE123(5’−TATTTGTTAACAGCACGTTACTCGCCCGGAAGCCGCTCTGGCAAGATGGGAATTAGCCATGGTCC)(配列番号41)。プライマーDE106(5’−GTGTTTTCTTATTACTTTCAAGGTCTTGCACTTGGGGCGGCTATGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC)(配列番号42)およびDE107(5’−CTAACTGAACAAGGCTTGTGCATGAGCAATACCGTCTCTCGCCAGATGGGAATTAGCCATGGTCC)(配列番号43)を使用して、Red/ETリコンビニアリング法により、単一のヌルargO突然変異を構築した。株W3110(Bachmann,Bacteriol.Rev.,36(4):525−557(1972))内へのΔgabD::FRT−kan−FRT、ΔyneI::FRT−kan−FRT、ΔcadA::FRT−kan−FRT、ΔldcC::FRT−cat−FRT、ΔcadA::FRT−kan−FRTカセットの反復P1媒介形質導入、およびそれに続く、前記実施例に記載されているとおりの各P1媒介形質導入後のkanまたはcatマーカーの除去により、W3110 ΔgabD::FRT ΔyneI::FRT ΔcadA::FRT ΔldcC::FRT ΔargO::FRTを構築した。得られた株MBX3818を供与株MBX2114でP1形質導入して、MBX3824の構築を完了した。プラスミドpJG22およびpJB91をMBX3824内に形質転換し、得られた株MBX3824[pJG22,pJB91]をMBX3344[pJG22,pJB91]と共にP(3HB−コ−5HV)共重合体の産生に関して試験した。これらの株を、1.5×E2培地内で、300rpmで振とうしながら30℃で48時間温置し、前記実施例に記載されているとおりに分析した。該培地は、15g/L グルコース、39mM NaNHHPO、49.5mM KHPO、40.5mM KHPO、2mM MgSO、0.1mM IPTGおよび微量元素(前記のとおり)からなるものであった。該培地を25μg/mL クロラムフェニコールおよび5μg/mL ゲンタマイシンで補足した。表12は、種々の遺伝的背景を有する種々の株が、重合体において5HVの種々の組成を有するP(3HB−コ−5HV)をグルコースから産生する能力を有することを示している。特に、5HV−CoAから炭素をそらす競合経路の除去、例えば、L−リシン輸出タンパク質argOまたは2つのリシンデカルボキシラーゼ遺伝子cadAおよびldcCの除去は、PHA内への5HVの組込みを増加させる。
【0163】
【表38】

【実施例11】
【0164】
ナトリウム4−ヒドロキシブチラートおよびナトリウム5−ヒドロキシバレラートからのP(4HB−コ−5HV)共重合体の生合成
次の実験は、4HB−CoAおよび5HV−CoA単量体を合成しそれらをPHA内に組込みうる大腸菌(E.coli)株におけるP(4HB−コ−5HV)共重合体の産生を示すためのものであった。組換え生物において4HBコモノマーを操作するための方法は、米国特許第6,117,658号、米国特許第6,316,262号、米国特許第6,689,589号、米国特許第7,081,357号、米国特許第7,229,804号、米国特許第6,759,219号および米国特許出願公開第2004/0253693号(それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に詳細に記載されている。実施例1に記載されているものに類似した実験において、ナトリウム5−ヒドロキシバレラート(Na5HV)をナトリウム4−ヒドロキシブチラート(Na4HB)と共に株MG1655[pMS93]に供給した。株MG1655[pMS93]は遺伝子orfZおよびphaCを含有し、それらは共に、Na4HBおよびNa5HVからそれぞれ4HB−CoAおよび5HV−CoAを産生させるために、ならびに該前駆体をP(4HB−コ−5HV)共重合体に重合させるために必要である。基質として使用するNa4HBは、実施例1にNa5HVの製造に関して記載されているのと同様の方法で、DVLの代わりにγ−ブチロラクトン(GBL)を使用して製造した。共重合体の製造に用いた培養条件も、生産培地に4g/LのNa4HBを加えたこと以外は、実施例1に記載されているものと同じであった。PHA産生期間の後、MG1655[pMS93]培養物の重合体含量の分析を、実施例1に記載されているとおりに進めた。ただし、この場合は、5HV含量の決定のために作成された標準曲線のほかにGBL標準物を使用して、4HB含量を決定するための標準曲線を作成した。この分析は、Na4HBおよびNa5HVが同時供給されたMG1655[pMS93]培養が、67% 4HBおよび33% 5HVの組成を有し67%dcwを含むP(4HB−コ−5HV)共重合体を与えることを示した。この重合体の抽出サンプルを、DSCを用いて分析したところ、該サンプルは−54.9℃のTgを有し、検出可能なTmを有さないことが確認された。
【実施例12】
【0165】
グルコースからのグルタラートの生合成
2つの遺伝子産物のどちらが、実施例7において特定された主要GSAデヒドロゲナーゼであるのかを識別するために、野生型株MG1655[pJB91]、MG1655ΔyneI::FRT[pJB91]およびMG1655ΔgabD::FRT[pJB91]を、L−リシンとGSAとの間の中間代謝産物である5−アミノペンタノアートからグルタラートを産生するそれらの能力に関して比較した(図2を参照されたい)。3つの株は全て、実施例5に記載されているとおりPompAプロモーターからdavBATを発現するプラスミドpJB91を含有する。それらの3つの株を、前記のとおりに2g/L 5−アミノペンタノアートを含有するE0最少培地内で増殖させ、培養上清からのグルタラートをGC−MS法により測定した。該温置方法および条件は、実施例7に記載されているものと同じであった。
【0166】
MG1655ΔgabD[pJB91]は、残りの2つの株とは異なり、検出可能なグルタラートを全く蓄積しなかった。したがって、gabDによりコードされるデヒドロゲナーゼはGSAに対する主要活性を有する。したがって、大量のグルタラートを産生させたい場合には、生産宿主はgabDまたはそのホモログ(表1Pを参照されたい)を発現する必要がある。しかし、MG1655ΔyneI[pJB91]は、MG1655[pJB91]と比較して若干低い量の、5−アミノペンタノアートからのグルタラートを蓄積したため(それぞれ0.75g/L グルタラートおよび1.0g/L グルタラート)、yneIによりコードされるデヒドロゲナーゼもGSAに対する中等度の活性を有する。したがって、yneIまたはそのホモログ(表1Qを参照されたい)の過剰発現もGSA、L−リシンまたはグルコースから大量のグルタラートを産生しうる。
【0167】
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)において存在する2つの最良のGabDホモログは、(1)NAD依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼ(アクセッション番号NP 599302)および(2)仮想的タンパク質cgR 0068(アクセッション番号YP 001136931)を含む。意外にも、これらの2つのコリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)タンパク質は、大腸菌(E.coli)YneIに最も近い2つのホモログとしても特定された。
【0168】
次に、グルコースからグルタラートを産生させた。L−リシン過剰産生株を得るために、L−リシンフィードバック耐性dapAC352T遺伝子を含有するプラスミドpDE033を以下のとおりに構築した。実施例9に記載されているdapAC352T遺伝子の構築のためのSOE−PCRの産物をEcoRIおよびSacIで消化し、ついで、同じ酵素で消化されたpSE380に連結して、プラスミドpDE033を得た。pDE033におけるdapAC352T遺伝子はIPTG誘導性プロモーターPtrc下にある。プラスミドpDE033およびpJB91(前記)をMG1655株内に形質転換して株MG1655[pDE033,pJB91]を得た。株MG1655およびMG1655[pDE033,pJB91]を、25g/L グルコース、16g/L (NHSO、1g/L KHPO、1g/L MgSO、2g/L 酵母エキス、30g/L CaCO、0.1mM IPTGおよび微量元素(前記のとおり)を含有する培地内で、300rpmで振とうしながら30℃で48時間温置した。MG1655[pDE033,pJB91]の培地を100μg/mL アンピシリンおよび25μ/mL クロラムフェニコールで補足した。実施例7に記載されているとおりにグルタラートを測定した。MG1655[pDE033,pJB91]は0.7g/L グルタラートを培地内に分泌したが、陰性対照株MG1655はグルタラートを全く産生しなかったことを、表13に示すデータは実証している。この結果は、GSAデヒドロゲナーゼをコードする宿主細胞において、L−リシンをGSAに変換するためのdavBATオペロンと共に、L−リシンを蓄積するためのフィードバック耐性dapA遺伝子を使用することが、唯一の炭素源としてのグルコースからグルタラートを産生させるために十分なものであることを、明らかに示している。
【0169】
【表39】

【実施例13】
【0170】
ナトリウム5−ヒドロキシバレラートからの1,5−ペンタンジオールの生合成
株の構築
1,5−ペンタンジオール(PDO)が蓄積され培地内に分泌されうるかどうかを評価するための宿主株として、株MBX3017(LS5218 ΔadhE::FRT,ΔldhA::FRT,ΔackA−pta::FRT)およびK−12株MG1655を使用した。Gene BridgesのRed/ET法により各単一欠失株を構築した。それらの3つの経路に関するノックアウトカセットを構築するためのプライマーを表14に示す。簡潔に説明すると、種々の染色体欠失体の構築のために以下のプライマーを使用した:ΔadhEカセットにはMS286およびMS287;ΔackA−ptaカセットにはMS289およびMS290;ならびにΔldhAカセットにはMS292およびMS293。前記実施例に記載されているとおりに、各単一ヌル突然変異をLS5218内に反復的にP1形質導入し、該マーカーを除去することにより、LS5218 ΔadhE::FRT,ΔldhA::FRT,ΔackA−pta::FRTを得た。
【0171】
【表40】

【0172】
CoA依存性プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするサルモネラ・ティフィムリウム(S.typhimurium)由来のpduPをプライマーJRG47およびJRG48により増幅した。1,3−プロパンジオールデヒドロゲナーゼをコードするクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)由来のdhaT(表1Aを参照されたい;Tongら,Appl.Environ.Microbiol.57(12):3541−3546(1991))をプライマーJRG49およびJRG50で増幅した。それらの2つの遺伝子を、プライマーJRG47およびJRG50を使用するSOE−PCRにより互いに融合させた。得られたDNA断片をBamHIおよびBspHI部位を介してpJB78内にクローニングし、得られたプラスミドをpJG10と命名した。
【0173】
pFS16またはpSE380およびpJG10またはpJB78を含有する株MBX3017またはMG1655をPDO研究に使用した。
【0174】
5HV含有E2培地内で酸素制限条件下で株を40時間増殖させた。該培地は、10g/L グルコース、2g/L 5HV、26mM NaNHHPO、33mM KHPO、27mM KHPO、2mM MgSO、25μg/mL クロラムフェニコール、100μg/mL アンピシリン、0.1mM IPTGおよび微量元素(前記のとおり)からなるものであった。新鮮な培地を含有する密封培養チューブ内に一晩培養物を約0.2の最終OD600まで接種した。該培養の酸素制限が確保されるよう、該培養チューブの上部空間は小さかった。該培養を30℃で温置した。48時間の温置の後、100μLのサンプルを取り出し、遠心分離し、得られた上清に内部標準としての1,4−ブタンジオール(0.1g/L)を添加し、それをLabconcoセントリバプ(centrivap)において乾燥させ、100μLのアセトニトリル(ACN)に3時間にわたり音波処理により再懸濁させた。該アセトニトリル溶液を遠心分離して不溶性物質を除去し、以下の獲得パラメーターを用いて、DB−225msカラムを備えたAgilent 5975 GC−MS内に上清を注入した:キャリヤーガス ヘリウム流量1ml/分、走査モードm/z30〜400、オーブンプログラム:40℃で2分間、ついで10℃/分で220℃まで上昇、イオン源温度230℃、四重極質量フィルター温度150℃。
【0175】
測定されたPDOの結果を表14に示す。宿主株MBX3017とorfZ−dhaT−pduPの過剰発現との組合せが0.32g/Lの最高PDO収量を与えた。これらの3つの遺伝子を含有する株MG1655は、0.22g/Lの、より低い収量を与えたが、これは恐らく、公知電子受容体(Clark,FEMS Microbiol.Rev.5:223−34(1989))でありNAD(P)Hに関して5HV経路と競合しうるその活性エタノール、アセタートおよびラクタート経路によるものであろう。興味深いことに、orfZのみを含有するMG1655も少量のPDOを産生し、一方、MBX3017宿主は検出可能なPDOを全く産生しなかった(表15)。これは、内因性アルコールデヒドロゲナーゼ、例えばadhEが、5HV−CoAに対する弱い活性を有することを示している。図8に示すとおり、測定されたPDOはPDO標準およびNISTライブラリーPDO基準スペクトルに対するGC−MSにより確認された。これらの結果は、orfZ遺伝子が発現されて5HV−CoAを産生し、pduP−dhaT遺伝子が発現されて5HV−CoAを5−ヒドロキシペンテナールおよびPDOに変換すると、Na5HVからPDOが産生されうることを示している。
【0176】
【表41】

【0177】
遺伝子ID001 ヌクレオチド配列:アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)NIH2624グルタラートセミアルデヒドレダクターゼ遺伝子gsaRAt2
【0178】
【化2】

【0179】
遺伝子ID001 アミノ酸配列:アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)NIH2624グルタラートセミアルデヒドレダクターゼ遺伝子gsaRAt2
【0180】
【化3】

【0181】
遺伝子ID002 ヌクレオチド配列:アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)グルタラートセミアルデヒドレダクターゼ遺伝子gsaRAt
【0182】
【化4】

【0183】
遺伝子ID002 アミノ酸配列:アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)グルタラートセミアルデヒドレダクターゼ遺伝子gsaRAt
【0184】
【化5】

【0185】
遺伝子ID003 ヌクレオチド配列:シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)/ズーグレア・ラミゲラ(Zoogloea ramigera)ポリヒドロキシアルカノアートシンターゼ融合遺伝子phaC3/C5
【0186】
【化6】

【0187】
遺伝子ID003 アミノ酸配列:シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)/ズーグレア・ラミゲラ(Zoogloea ramigera)ポリヒドロキシアルカノアートシンターゼ融合遺伝子phaC3/C5
【0188】
【化7】

【0189】
遺伝子ID004 ヌクレオチド配列:チオカプサ・フェニジイ(Thiocapsa phenigii)ポリヒドロキシアルカノアートシンターゼサブユニットphaE
【0190】
【化8】

【0191】
遺伝子ID004 アミノ酸配列:チオカプサ・フェニジイ(Thiocapsa phenigii)ポリヒドロキシアルカノアートシンターゼサブユニットphaE
【0192】
【化9】

【0193】
遺伝子ID005 ヌクレオチド配列:チオカプサ・フェニジイ(Thiocapsa phenigii)ポリヒドロキシアルカノアートシンターゼサブユニットphaC
【0194】
【化10】

【0195】
遺伝子ID005 アミノ酸配列:チオカプサ・フェニジイ(Thiocapsa phenigii)ポリヒドロキシアルカノアートシンターゼサブユニットphaC
【0196】
【化11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルタラートセミアルデヒドまたは5−アミノペンタノアートを5炭素単量体、その重合体または共重合体に変換するように遺伝的に操作された組換え生物であって、該組換え生物が、リシン2−モノオキシゲナーゼ,EC 1.13.12.2;5−アミノペンタンアミダーゼ(δ−アミノバレロアミダーゼ),EC 3.5.1.30;5−アミノペンタノアートトランスアミナーゼ(δ−アミノバレラートトランスアミナーゼ),EC 2.6.1.48;リシンデカルボキシラーゼ,EC 4.1.1.18;スクシナートセミアルデヒドレダクターゼ(別名:グルタラートセミアルデヒドレダクターゼ),EC 1.1.1.61;CoA−トランスフェラーゼ,EC 2.8.3.14およびEC 2.8.3.n;アシル−CoAシンテターゼ,EC 6.2.1.3;PHAシンターゼ,EC 2.3.1.n;β−ケトアシル−CoAチオラーゼ,EC 2.3.1.9;アセトアセチル−CoAレダクターゼ,EC 1.1.1.36;グルタラート−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ,EC 1.2.1.20;プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ,EC 1.2.1.3;アルコールデヒドロゲナーゼ,EC1.1.1.1;1,3−プロパンジオールデヒドロゲナーゼ EC 1.1.1.202からなる群から選択される1以上の酵素をコードする少なくとも1つ又はそれ以上の遺伝子を発現し、ならびに該組換え生物が、未修飾生物の場合より大量のグルタラートセミアルデヒドまたは5−アミノペンタノアートを産生し、ならびに該グルタラートセミアルデヒドまたは5−アミノペンタノアートが該組換え生物により該5炭素単量体、その重合体または共重合体に変換される、組換え生物。
【請求項2】
5炭素単量体が、グルタラート、1,5ペンタンジオール、5−アミノバレラートおよび5−ヒドロキシバレラートからなる群から選択される、請求項1の組換え生物。
【請求項3】
重合体または共重合体がポリヒドロキシアルカノアートを含む、請求項1から2のいずれか一項の組換え生物。
【請求項4】
単量体が5−ヒドロキシバレラートを含む、請求項1から3のいずれか一項の組換え生物。
【請求項5】
組換え生物が5−アミノペンタノアートをグルタラートセミアルデヒドに変換する、請求項1から4のいずれか一項の組換え生物。
【請求項6】
組換え生物がリシンを5−アミノペンタノアートに変換する、請求項1から5のいずれか一項の組換え生物。
【請求項7】
リシンを生物に供給する、請求項6の組換え生物。
【請求項8】
組換え生物を構築するために使用した生物が、未修飾生物と比較してリシンを過剰産生するように修飾されている、請求項1から7のいずれか一項の組換え生物。
【請求項9】
組換え生物が毒性リシン類似体S−(2−アミノエチル)システインに対して耐性である、請求項1から8のいずれか一項の組換え生物。
【請求項10】
組換え生物が、リシンフィードバック耐性ジヒドロジピコリナートシンターゼを発現する、請求項1から8のいずれか一項の組換え生物。
【請求項11】
組換え生物がリシンフィードバック耐性アスパルタートキナーゼIIIを発現する、請求項1から9のいずれか一項の組換え生物。
【請求項12】
再生可能な炭素基質を生物に供給する、請求項8から1のいずれか一項の組換え生物。
【請求項13】
組換え生物が、リシン輸出を抑制または阻止するように更に操作されている、請求項1から12のいずれか一項の組換え生物。
【請求項14】
組換え生物がグルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼを発現または過剰発現し、ならびに5炭素単量体がグルタラートである、請求項1から13のいずれか一項の組換え生物。
【請求項15】
グルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼが、davD、yneIおよびgabDからなる群から選択される遺伝子によりコードされる、請求項14の組換え生物。
【請求項16】
組換え生物がグルタラートを細胞外環境中に遊離する、請求項1から13のいずれか一項の組換え生物。
【請求項17】
生物が、グルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を軽減または排除するように修飾されており、ならびに5炭素単量体がグルタラートではない、請求項1から13のいずれか一項の組換え生物。
【請求項18】
グルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼが、davD、yneIおよびgabDまたはそれらのホモログからなる群から選択される1以上の遺伝子を欠失させ又は破壊することにより軽減または排除される、請求項17の組換え生物。
【請求項19】
組換え生物が5−ヒドロキシバレラートを細胞外環境中に遊離する、請求項1から13および17から18のいずれか一項の組換え生物。
【請求項20】
組換え生物が5−ヒドロキシバレラートを細胞外環境中に遊離し、ならびに5−ヒドロキシバレラートがデルタ−バレロラクトンと平衡状態にある、請求項17から18のいずれか一項の組換え生物。
【請求項21】
組換え生物が5−ヒドロキシバレラートを5−ヒドロキシバレラートCoAに変換する、請求項1から13および17から18のいずれか一項の組換え生物。
【請求項22】
組換え生物が5−ヒドロキシバレラート−CoAをポリヒドロキシアルカノアートに変換する、請求項1から13および21のいずれか一項の組換え生物。
【請求項23】
組換え生物が5−ヒドロキシバレラートを1,5ペンタンジオールに変換する、請求項1から13および21のいずれか一項の組換え生物。
【請求項24】
組換え生物が5−ヒドロキシバレラートをポリ(5−ヒドロキシバレラート)またはその共重合体に変換する、請求項1から13および21のいずれか一項の組換え生物。
【請求項25】
共重合体が、ポリ(3−ヒドロキシプロピオナート−コ−5HV)、ポリ(3−ヒドロキシブチラート−コ−5HV)およびポリ(4−ヒドロキシブチラート−コ−5HV)からなる群から選択される、請求項24の組換え生物。
【請求項26】
組換え生物が原核生物である、請求項1から25のいずれか一項の組換え生物。
【請求項27】
組換え生物が大腸菌(E.coli)である、請求項1から26のいずれか一項の組換え生物。
【請求項28】
組換え生物が真核微生物である、請求項1から25のいずれか一項の組換え生物。
【請求項29】
リシンから重合体を製造するための組換え生物であって、該組換え生物が、5−ヒドロキシバレラート単量体を含むポリヒドロキシアルカノアートを産生するために、リシン2−モノオキシゲナーゼ,EC 1.13.12.2;5−アミノペンタンアミダーゼ(δ−アミノバレロアミダーゼ),EC 3.5.1.30;5−アミノペンタノアートトランスアミナーゼ(δ−アミノバレラートトランスアミナーゼ),EC 2.6.1.48;リシンデカルボキシラーゼ,EC 4.1.1.18;スクシナートセミアルデヒドレダクターゼ(別名:グルタラートセミアルデヒドレダクターゼ),EC 1.1.1.61;CoA−トランスフェラーゼ,EC 2.8.3.14およびEC 2.8.3.n;アシル−CoAシンテターゼ,EC 6.2.1.3;PHAシンターゼ,EC 2.3.1.nからなる群から選択される少なくとも1つの酵素を発現するように遺伝的に操作されている、組換え生物。
【請求項30】
組換え生物がリシンを産生しない、請求項29の組換え生物。
【請求項31】
組換え生物が機能性グルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ酵素活性を発現しない、請求項29の組換え生物。
【請求項32】
リシンから1,5−ペンタンジオールを製造するための組換え生物であって、該組換え生物が、リシン2−モノオキシゲナーゼ,EC 1.13.12.2;5−アミノペンタンアミダーゼ(δ−アミノバレロアミダーゼ),EC 3.5.1.30;5−アミノペンタノアートトランスアミナーゼ(δ−アミノバレラートトランスアミナーゼ),EC 2.6.1.48;リシンデカルボキシラーゼ,EC 4.1.1.18;スクシナートセミアルデヒドレダクターゼ(別名:グルタラートセミアルデヒドレダクターゼ),EC 1.1.1.61;CoA−トランスフェラーゼ,EC 2.8.3.14およびEC 2.8.3.n;アシル−CoAシンテターゼ,EC 6.2.1.3、およびプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ,EC 1.2.1.3;アルコールデヒドロゲナーゼ,EC 1.1.1.1;1,3−プロパンジオールデヒドロゲナーゼ EC 1.1.1.202からなる群から選択される少なくとも1つの酵素を発現するように遺伝的に操作されている、組換え生物。
【請求項33】
組換え生物がリシンを産生しない、請求項32の組換え生物。
【請求項34】
組換え生物が機能性グルタラートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ酵素活性を発現しない、請求項32の組換え生物。
【請求項35】
リシンからの重合体の製造方法であって、該重合体が製造されるように、リシンおよび他の再生可能な炭素供給原料を請求項29の組換え生物に供給することを含む、製造方法。
【請求項36】
リシンまたは他の再生可能な炭素供給原料を請求項1記載の遺伝的に操作された細胞に供給することを含む、5炭素に基づく単量体、その重合体または共重合体の製造方法であって、前記の遺伝的に操作された細胞が、未修飾細胞の場合より大量のグルタラートセミアルデヒドまたは5−アミノペンタノアートを産生するように操作されており、該グルタラートセミアルデヒドまたは5−アミノペンタノアートが、前記の遺伝的に操作された細胞により、5炭素単量体、その重合体または共重合体に変換される、製造方法。
【請求項37】
再生可能な炭素供給原料が、デンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトースおよびアラビノースまたはそれらの組合せから選択される、請求項36の製造方法。
【請求項38】
単量体が、グルタラート、1,5−ペンタンジオールおよび5−ヒドロキシバレラートからなる群から選択される、請求項36の製造方法。
【請求項39】
重合体がポリヒドロキシアルカノアートを含む、請求項36のいずれか一項の製造方法。
【請求項40】
ポリヒドロキシアルカノアートが5−ヒドロキシバレラートを含む、請求項39の製造方法。
【請求項41】
ポリヒドロキシアルカノアートが、ポリ(5−ヒドロキシバレラート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピオナート−コ−5HV)、ポリ(3−ヒドロキシブチラート−コ−5HV)およびポリ(4−ヒドロキシブチラート−コ−5HV)から選択される、請求項40の製造方法。
【請求項42】
ポリヒドロキシアルカノアート、その重合体または共重合体を回収することを更に含む、請求項39の製造方法。
【請求項43】
ポリヒドロキシアルカノアート重合体または共重合体を溶媒抽出または水性加工により回収する、請求項42の製造方法。
【請求項44】
リシン、デンプン、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、キシロース、マルトースおよびアラビノースまたはそれらの組合せから選択される再生可能な炭素基質を請求項1から12の組換え生物に供給し、ならびにグルタラートを過剰産生させ、培地に分泌させ、それから回収することを含む、再生可能な炭素基質からグルタラートを過剰産生させるための方法が提供される。
【請求項45】
再生可能な炭素基質から製造された1,5ペンタンジオール。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−511912(P2012−511912A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540960(P2011−540960)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067943
【国際公開番号】WO2010/068953
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(398055233)メタボリックス,インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】