説明

ポルフィランの製造方法

【課題】乾燥海苔からポルフィランを製造するにあたり、製造のための海苔の加熱に要するエネルギー量を飛躍的に低減し、生産設備の小型化を図って設備費用を安価にできるようにし、更に生産に要する時間を短縮するなど生産効率を高めて生産コストを下げることにより、ポルフィランをより安価に提供できるようにする。
【解決手段】変色した乾燥海苔を密閉できる瓶に入れて加熱し、蒸し処理を行うことにより、海苔の色が全体に緑色を呈した。加熱処理した乾燥海苔に水を加えて流動体として容器内で静置した。流動体を遠心分離機にかけてポルフィランを含む抽出液と残渣物に固液分離し、抽出液をセラミックフィルタで濾過し、濃縮抽出液が得られた。この濃縮抽出液をスプレードライ方式の噴霧乾燥機に注入し、ポルフィランを粉末化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポルフィランの製造方法に関するものである。更に詳しくは、製造のための海苔の加熱に要するエネルギー量を飛躍的に低減し、生産設備を小型化して設備費用を安価にし、更に生産効率を高めて生産コストを下げることにより、ポルフィランをより安価に提供できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
ポルフィランは、紅藻類のアマノリ属の藻体から抽出される硫酸基を含む高分子量多糖類の一種であり、海苔乾燥質量の30%程度を占める。ポルフィランは、保水性、紫外線不透過性など、生体の生理機能に対する種々の有用性から、例えば食品、化粧品あるいは医薬品など、様々な分野での利用が期待されている。ここで海苔とは、アマノリ属の紅藻類に属し、スサビノリ、アサクサノリ、檀紫菜、ウップルイノリ等を指す。
【0003】
このポルフィランの製造方法は様々であるが、その多くが、まず板海苔などの乾燥海苔を熱水抽出し、ポルフィランを含む抽出液を得る工程を含んでいる(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載のものは、熱水抽出液を濃縮したものに酢酸及び酢酸カルシウムを加え、pHを適正に調節した後、エチルアルコールを加えて静置し、沈殿を形成させ、この沈殿物を80%−エチルアルコールで洗浄後、100%−エチルアルコールで脱水する方法である。
【0004】
【特許文献1】特開平10−60003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のポルフィランの製造方法を始めとする従来の方法には次のような課題があった。
すなわち、板海苔などの乾燥海苔を熱水抽出する工程においては、乾燥海苔の量に比べて大量の水を使用し、これを比較的長時間(例えば1〜24時間)にわたり煮沸する必要がある。この工程においては、沸騰までの昇温と常温までの降温に長い時間がかかるだけでなく、多大なエネルギーが消費されることになり、これらがポルフィランの生産性を低くし、生産コストを引き上げる大きな要因となっている。
【0006】
また、熱水抽出する工程においては、乾燥海苔に大量の水を加水するので、その混合物は量が増えて極めて嵩高となる。このため、乾燥海苔の処理量を基準とした場合、加熱容器なども容量の大きなものが必要になり、更には広い作業スペースが必要になるなど、生産設備が全体に大きくなって、設備費用も高額になる。
このようなことから、結果的にポルフィランの生産コストが上がり、ポルフィランを安価に提供することができなかった。
【0007】
(本発明の目的)
本発明の目的は、乾燥海苔からポルフィランを製造するにあたり、製造のための海苔の加熱に要するエネルギー量を飛躍的に低減し、生産設備の小型化を図って設備費用を安価にできるようにし、更に生産に要する時間を短縮するなど生産効率を高めて生産コストを下げることにより、ポルフィランをより安価に提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
第1の発明にあっては、
乾燥海苔からポルフィランを製造する方法であって、
密閉容器に入っている乾燥海苔を所要時間加熱して蒸す工程、
上記加熱処理した乾燥海苔に所要量の水を加えて流動体とし、ポルフィランを含む抽出液と残渣物に固液分離する工程、
を含むことを特徴とする、ポルフィランの製造方法である。
【0009】
第2の発明にあっては、
乾燥海苔からポルフィランを製造する方法であって、
密閉容器に入っており固形分重量に対して含水率を1〜10%とした乾燥海苔を100〜130℃で所要時間加熱して蒸す工程、
上記加熱処理した乾燥海苔に所要量の水を加えて流動体とし、遠心分離機によりポルフィランを含む抽出液と残渣物に固液分離する工程、
を含むことを特徴とする、ポルフィランの製造方法である。
【0010】
第3の発明にあっては、
ポルフィランを含む抽出液を濃縮する工程を含むことを特徴とする、
第1または第2の発明に係るポルフィランの製造方法である。
【0011】
第4の発明にあっては、
抽出液に含まれるポルフィランを粉末化する工程を含むことを特徴とする、
第1、第2または第3の発明に係るポルフィランの製造方法である。
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「乾燥海苔」とは、上記したようにアマノリ属の紅藻類を指し、スサビノリ、アサクサノリ、檀紫菜、ウップルイノリ等である。また、その形態は特に限定するものではなく、例えば生海苔を加熱しないで乾燥させただけのもの(未加熱処理の乾燥海苔)、紙葉状の海苔(加熱処理した乾燥海苔:板海苔ともいう)を含むものである。
「乾燥海苔」は水分が全くないものを意味するのではなく、多少の水分を含むことはいうまでもないが、含水率を特に限定するものではない。また、例えば板海苔の場合、市場に出ている高級な海苔から市場に出ていない下級な海苔までを含む。更には、板海苔を粉砕したもの、あるいは乾燥海苔と同等の含水率を有する海苔の原藻をも含む。
【0013】
例えば、原料となる市場に出ているような高級な板海苔や市場に出ていない下級な板海苔の含水率は、通常5〜10%の範囲で製造されている。
本発明の目的である、少ないエネルギーで硬い海苔の細胞壁を破壊し、細胞壁内にあるポルフィランを抽出するためには、含水率が低いほど消費するエネルギーが少ないことはいうまでもないが、極端に乾燥した海苔、例えば1%の含水率の板海苔でも、本発明の製法によりポルフィランが抽出できる。
【0014】
乾燥海苔の含水率が高い場合など、乾燥海苔の含水率を固形分重量に対して例えば1〜10%とするために、前処理として原料の乾燥海苔を乾燥させる工程を設けることもできる。この場合の乾燥方法としては、例えば開放容器内で加熱する方法、天日に乾す方法、送風による方法など、各種の乾燥方法が採用できる。
なお、この工程において、乾燥海苔の含水率が1%に満たないと水分が少なすぎて実質的に蒸し加工がしにくくなり、ポルフィランを抽出しにくいので好ましくない。
【0015】
含水率の上限については特に限定しないが、含水率が高すぎると加熱エネルギーが多く必要であり、ポルフィランの抽出にかかる効率が下がるうえ、紅藻素(フィコエリスリン)が水に溶け出して、全体が褐色化する傾向にあることから、含水率は1〜10%がより好適である。
【0016】
乾燥海苔を加熱する温度が100℃に満たないと海苔の細胞壁は壊れにくくポルフィランを抽出しにくいという傾向にあり、不適である。温度の上限については特に限定されないが、130℃を超えると、その熱の影響でポルフィランを含む多糖類が低分子化する傾向にある。したがって、加熱温度は、より好適には100〜130℃である。
【0017】
本発明に於ける加熱処理は、密閉容器で行うことが肝要である。開放容器で加熱した場合には、含水率に関わらずポルフィランの抽出率が低いことから、不適である。本発明におけるポルフィラン抽出の原理として、乾燥海苔に含まれる水分が加熱されて水蒸気となり、これが抽出における抽出溶媒の役割を果たすものであることが推察されている。開放容器の場合は乾燥海苔と水蒸気を接触させることが難しい。水蒸気で蒸す条件にするためには、乾燥海苔を密閉容器で加熱することが好適である。
【0018】
加熱処理した乾燥海苔に加える水の割合または量は、例えば柔泥状となるようにするのが生産の効率化を図る上では好ましいが、水を加え、流動性を持たせることができれば特に限定しない。また、水を加え、乾燥海苔が解けて流動体となった後、遠心分離機や圧搾脱水機にかけるが、かけるまでの時間は特に限定しない。なお、数分から数十分等、ある程度時間をおく方が、ポルフィランを抽出分離する上では好ましい。更には、ポルフィランをより多く抽出させるために、流動体を撹拌混練することもできる。
【0019】
ポルフィランの抽出においては、乾海苔を乾燥設備で乾燥させた後、密閉容器に所定量封入するようにしてもよいし、あるいは、先に密閉可能な容器に入れた後に各種手段で乾燥させ、密閉した容器内の湿度が飽和水蒸気量以下になるように水分を調整して供給することもできる。
なお、通常の状態で、乾燥海苔は1〜10%程度の水分を自身に含んでいる。また、乾燥海苔からポルフィランを抽出するためには、少量の水分があれば抽出可能である。これにより、容器内の湿度は低くてよく、容器内で下溜まらない程度の水分量、例えばスチーム状態が最も適している(飽和水蒸気量を超える水分は容器内に下溜まる)。
【0020】
乾海苔に多量に加水したり、容器内の湿度が高い場合は、水が媒体となってポルフィランの抽出にある程度有効に働くが、その分、水蒸気の加熱にかかる熱エネルギーが多く必要となり、処理時間も長くなる。また、容器内において高温で蒸す時間があまり長くなると、生産性が悪くなると共に、海苔が変質して品質を落とすことになってしまう。従って、最適な抽出方法としては、密閉された容器内の湿度が飽和水蒸気量以下の範囲であるのが好ましい。
【0021】
更に、乾海苔は板海苔の状態あるいは若干砕いた程度のものである方が良い。微粉砕した海苔(特に、直径0.5mm以下の微粉末)では細胞壁が破壊されているため抽出液に不純物が溶け込んでしまい、タンパク質成分が変質しやすく腐敗しやすいため非常に短時間での処理が必要であり、生産設備が高度化するため、生産コスト的に好ましくない。
【0022】
抽出液からポルフィランを取り出す方法としては、例えばセラミックフィルタなどの各種フィルタを使用して濾過するのが効率的で好ましい。なお、煮沸やエタノール使用など他の方法を採用することもできる。
【0023】
抽出液に含まれるポルフィランを粉末化する方法としては、例えば噴霧乾燥法(スプレードライ)を採用するのが好ましい。噴霧乾燥法によれば、サイクロンにより乾燥空気は上へ排出され、ポルフィランを含む固形分は下にたまるので、粉末化が効率よくできる。なお、凍結乾燥法(フリーズドライ)など、他の乾燥法を採用することもできる。
【発明の効果】
【0024】
(a)乾燥海苔からポルフィランを製造するにあたり、乾燥海苔に水を加えて流動体とする前の加熱工程では水をほとんど使用しないので、従来のように多量の水を加熱する必要がなく、加熱に要するエネルギー量を飛躍的に低減することができると共に昇温と降温に要する時間を短縮できる。
また、加熱工程で水をほとんど使用しない分だけ、加熱される乾燥海苔が嵩高にならない。これにより、原料として使用する海苔の量を基準とすれば、加熱する密閉容器などを含む装置をより小型化することが可能になり、更にスペース効率が向上することなどとも相まって、生産設備の設備費用を安価にできる。
更には、上記昇温と降温に要する時間を短縮できることと相まって、固液分離を遠心分離機や圧搾脱水機により行うことにより、短時間で効率的な生産が可能となる。このようなことから、ポルフィランの生産コストを下げることができ、ポルフィランを安価に提供することができる。
【0025】
(b)水をほとんど使用しないで密閉容器内で蒸す加熱工程によって、例えば原料の乾燥海苔が赤紫色や茶褐色に変色し色味が悪いものであっても、熱によって熱に弱い紅色の色素(フィコエリスリン)や藍色の色素(フィコシアニン)が変成して色素が壊れ、熱に強い緑色の色素(クロロフィル)が残ることにより、海苔本来の色である緑色に変わる。
海苔の色は、以後は海苔本来の自然な緑色を呈し安定するので、抽出後に残った海苔をふりかけなどの食品に二次使用する際に、海苔からできた自然食品としての価値を高めることができる。
【0026】
(c)ポルフィランを含む抽出液を濃縮する工程、または抽出液に含まれるポルフィランを粉末化する工程を含むものは、それぞれポルフィランを飲料や食物などの添加物として利用しやすい形態とすることができる。また、ポルフィランを粉末化したものは、保存性に優れ、一般家庭などでの使用においてもより使いやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
次のようにして、乾燥海苔からポルフィランを製造した。
【0029】
(1)原料の乾燥海苔として、全体に若干、赤紫色を呈する板海苔を360g用意した。この乾燥海苔の固形分重量に対する含水率を測ると5%であった。
(2)上記乾燥海苔を密閉できる瓶に入れて120℃の温度で30分間加熱した。内部が密閉された瓶の内部では、乾燥海苔に含まれる水分が蒸気となって実質上は蒸し処理が行われた。これにより、海苔の色が変わり、全体に緑色を呈した。
【0030】
(3)上記加熱処理した乾燥海苔を別の容器に移し、6.1Lの水を加えて60分間静置した。加水によって海苔は解れて、海苔と水の混合物は柔泥状の流動体となった。
(4)このようにしてつくった流動体を遠心分離機にかけてポルフィランを含む抽出液と残渣物に固液分離した。これにより、4.2L(4.2kg)の抽出液と、水分を含む2.26gの残渣物が得られた。そして、この抽出液のpHを4.5に調整した。
【0031】
(5)ポルフィランを含む抽出液をセラミックフィルタ(500Å)で濾過し、濃縮した。これにより1.4L(1.4kg)の濃縮抽出液が得られた。なお、セラミックフィルタを通過した濾過液は残渣物に戻した。
(6)スプレードライ方式の噴霧乾燥機に濃縮抽出液を注入し、抽出液に含まれているポルフィランを粉末化した。これによって、75gのポルフィランの粉末が得られた。また、全工程に要した時間は16時間であった。
【0032】
(考察)
上記方法によって、360gの乾燥海苔から75g(約21重量%)のポルフィランが得られた。これは、乾燥海苔に約30重量%のポルフィランが含まれているとして、そのうちの70%であり、極めて高い抽出率で製造できることがわかった。また、作業に長時間を要し、しかも多大なエネルギーを消費する熱水抽出をせず、更に固液分離を遠心分離機で行うことにより比較的短時間でポルフィランを製造することができた。これにより、上記製造方法は、上記抽出率の高さと相まって、優れた低コスト性と生産性を有していることが確認できた。
【0033】
また、水をほとんど使用しないで密閉された瓶内で乾燥海苔を蒸す加熱工程によって、海苔本来の色である緑色に変わり、以後は海苔本来の自然な緑色を呈し安定した。なお、抽出後に残った水分を含む海苔の残渣物を乾燥させて粉砕することによって、ふりかけなどの食品に二次使用することができる粉体をつくることができた。この粉体は、上記残渣物と同様に自然な緑色を呈しており、海苔からできた自然食品としての価値を高めることができた。
【0034】
(比較実験1)
(1)原料の乾燥海苔として、全体に若干、赤紫色を呈する板海苔を360g用意した。この乾燥海苔の固形分重量に対する含水率を測ると5%であった。
(2)上記乾燥海苔を瓶に入れて、キャップを閉めることなく開放容器とした恒温器で120℃の温度で30分間加熱した。その結果、海苔の色および性状には全く変化がなかった。
(3)上記加熱処理した乾燥海苔を別の容器に移し、6.1Lの水を加えて60分間静置した。加水によって両方とも全体に赤色を呈する分散液が得られたが、加水によって海苔は解れて、海苔と水の混合物は柔泥状の流動体となった。
【0035】
(4)このようにしてつくった分散液を遠心分離機にかけてポルフィランを含む抽出液と残渣物に固液分離した。抽出液を分子量100000Daでカットオフする限外濾過膜付き遠心フィルター(Millipore社製 Ultrafree Biomax-5K)で限外濾過し、透過液を得た。抽出液および透過液に含まれる糖濃度をアンスロン−硫酸法で測定し、抽出液の糖含量から透過液の糖含量を差し引くことで抽出液中のポルフィラン濃度を得た。
(5)上記の方法で得たポルフィラン含量を、上記実施例の(4)の工程で得られた抽出液のポルフィラン含量と比較した。
【0036】
図1はポルフィランの製造工程においてできる抽出液に含まれる糖質の含有量を、本発明に記載の方法と、開放容器で実施したものとで比較したグラフである。
【0037】
(考察)
図1から分かるとおり、本発明と異なり、120℃で開放容器にて加熱した乾燥海苔から得られた抽出液は、ポルフィラン濃度が本発明品と比較して少なく、未処理品と同程度であった。この結果により、効率的なポルフィランの抽出を達成するためには乾燥海苔の密閉下での加熱が必要であることがわかった。
【0038】
(比較実験2)
次に、上記実施例における工程において、原料となる乾燥海苔の含水率を違えたもの及び加熱温度を違えたものから得られる抽出液に含まれる糖質と蛋白質の含有量に関する比較実験を行った。
【0039】
なお、ポルフィランを含む抽出液及び粉体などの品質と、糖質及び蛋白質の含有量との関係は次のように説明できる。抽出液に含まれる糖質が多いと、高分子量多糖類であるポルフィランの抽出率及び含有率が高いことを意味する。また、蛋白質が少ないと抽出液の透明度が高くなり、多種製品に使用しやすく、腐敗や変色も起こりにくくなる。従って、抽出液に含まれる糖質の含有率が高いほど、またタンパク質の含有率が低いほど、ポルフィランを含む抽出液及び粉体などの品質が優れているといえる。
【0040】
比較実験を行うために、含水率の異なる四種類の乾燥海苔を用意した。それぞれの固形分重量に対する含水率は1%、3%、5%、10%とした。更にそれらをそれぞれ四つに分け、96℃の熱水で加熱し含水率が異なるA群、加水しないで106℃で加熱し含水率が異なるB群、加水しないで120℃で加熱し含水率が異なるC群、加水しないで130℃で加熱し含水率が異なるD群に分けた(表1参照)。
【0041】
なお、実験に使用する海苔は、一般的に用いられる常圧加熱乾燥法により、基準となる乾燥した海苔をつくり、密封容器に海苔を入れ、海苔の重量を計測しながら、スポイトで水分を滴下して、規定の含水率とした海苔にて実験を行った。
【0042】
【表1】

【0043】
上記条件で加熱した各サンプル(16サンプル)をそれぞれ40℃の温水に浸漬し、1.5時間静置した。そしてこれらを遠心分離機にかけてポルフィランを含む抽出液を得た。各抽出液に含まれる糖質と蛋白質の量を計って比較した。なお、含有量は、計測値である濃度(mg/mL)で表した(図2、図3参照)。ここで、糖質はアンスロン-硫酸法で、タンパク質はローリー法で測定した。
【0044】
図2はポルフィランの製造工程においてできる抽出液に含まれる糖質の含有量を加熱温度別に表したグラフ、
図3はポルフィランの製造工程においてできる抽出液に含まれる蛋白質の含有量を加熱温度別に表したグラフである。
【0045】
(考察)
図2、図3から分かるとおり、本発明と異なり、96℃で熱湯浸漬して加熱したものから得られたA群の抽出液は、糖質(ポルフィラン)の含有量が他の群と比較して最も少なく、蛋白質の含有量は最も多かった。すなわち、A群から得られた抽出液の品質は、本発明に係るB群、C群、D群より劣ることが分かった。
【0046】
また、本発明に係るB群、C群、D群については、一部に例外(糖質のデータにおいては含水率10%のC群とD群、蛋白質のデータにおいては含水率3%のC群とD群)はあるが、おおむね加熱温度が高いほど糖質の含有量が多く、蛋白質の含有量が少なくなり、品質が優れている傾向が表れた。
【0047】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ポルフィランの製造工程においてできる抽出液に含まれる糖質の含有量を、本発明に記載の方法と、開放容器で実施したものとで比較したグラフ。
【図2】ポルフィランの製造工程においてできる抽出液に含まれる糖質の含有量を加熱温度別に表したグラフ。
【図3】ポルフィランの製造工程においてできる抽出液に含まれる蛋白質の含有量を加熱温度別に表したグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥海苔からポルフィランを製造する方法であって、
密閉容器に入っている乾燥海苔を所要時間加熱して蒸す工程、
上記加熱処理した乾燥海苔に所要量の水を加えて流動体とし、ポルフィランを含む抽出液と残渣物に固液分離する工程、
を含むことを特徴とする、ポルフィランの製造方法。
【請求項2】
乾燥海苔からポルフィランを製造する方法であって、
密閉容器に入っており固形分重量に対して含水率を1〜10%とした乾燥海苔を100〜130℃で所要時間加熱して蒸す工程、
上記加熱処理した乾燥海苔に所要量の水を加えて流動体とし、ポルフィランを含む抽出液と残渣物に固液分離する工程、
を含むことを特徴とする、ポルフィランの製造方法。
【請求項3】
ポルフィランを含む抽出液を濃縮する工程を含むことを特徴とする、
請求項1または2記載のポルフィランの製造方法。
【請求項4】
抽出液に含まれるポルフィランを粉末化する工程を含むことを特徴とする、
請求項1、2または3記載のポルフィランの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−186552(P2007−186552A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4068(P2006−4068)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(590003722)佐賀県 (38)
【出願人】(000003171)株式会社戸上電機製作所 (29)
【Fターム(参考)】