説明

ポンプ装置

【課題】 ポンプ装置において、軸受部の寸法精度のバラツキによる回転体の振れが大きくなることを防止すること。
【解決手段】 外周に永久磁石11aが固定されるロータ11に一体に連結され、流体室80に回転自在に収容され流体室80に形成された吸入口51から流体を吸入し、吐出口52から流体を吐出するインペラ12を有する回転体10と、流体室80を画成する隔壁部30の外周に配置されロータ11を回転駆動する回転磁界を生成する駆動部20と、隔壁部30と共に流体室80を画成するケース50と、隔壁部30とケース50とにその両端を固定され、回転体10を回転自在に支持するシャフト60と、から構成されるポンプ装置1において、回転体10は、軸方向隔壁部30側に形成されシャフト60と係合する第1軸受部10aと、軸方向ケース50側に形成されシャフト60と係合する第2軸受部10bが一体に成形し形成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポンプ装置の構造に関するものである。特に、ポンプ装置の軸受け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外周に永久磁石が固定されるロータに一体に連結され、流体室に回転自在に収容され流体室に形成された吸入口から流体を吸入し、吐出口から流体を吐出するインペラを有する回転体と、流体室を画成する隔壁部の外周に配置されロータを回転駆動する回転磁界を生成する駆動部と、隔壁部と共に流体室を画成するケースとを備える流体ポンプにおいて、回転体を保持する保持構造としては、回転体を隔壁部およびケースに設けた軸受部を介して回転自在に保持する構造、又は、隔壁部およびケースに固定されたシャフトに回転体に設けた軸受部を介して回転自在に保持する構造がある。
【0003】
回転体を隔壁部およびケースに設けた軸受部を介して回転自在に保持する構造は、回転体の振れは少なくなるが、ケースの吸入口に軸受部を有する軸受けが配置されるため、流体の吸入面積が減少し、性能を悪化させていた。また、隔壁部への軸受部の固定に伴う圧入部の真円度や同軸の悪化による回転体の振れ増大の懸念もあった。
【0004】
一方、隔壁部およびケースに固定されたシャフトに回転体を回転体に設けた軸受部を介して回転自在に保持する構造は、軸受部を分割してインサート成形する構造が採用される。しかしながら、軸受部をインサート成形する構造は、インサート成形時の射出圧が軸受けに加わるため、軸受部が変形し、このため軸受部の真円度や同軸の悪化し回転体の振れが増大する問題があった。
【0005】
更に、これら回転体の支持構造は、軸受部が別体のため、軸受部およびケースの寸法のバラツキが累積され、同軸の悪化が避けられない構造であった(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−222095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、ポンプ装置において、軸受部の寸法のバラツキによる回転体の振れが大きくなることを防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明にて講じた技術的手段は、外周に永久磁石が固定されるロータに一体に連結され、流体室に回転自在に収容され流体室に形成された吸入口から流体を吸入し、吐出口から流体を吐出するインペラを有する回転体と、前記流体室を画成する隔壁部の外周に配置され前記ロータを回転駆動する回転磁界を生成する駆動部と、前記隔壁部と共に前記流体室を画成するケースと、前記隔壁部と前記ケースとにその両端を固定され、前記回転体を回転自在に支持するシャフトと、から構成されるポンプ装置において、前記回転体は、軸方向隔壁部側に形成され前記シャフトと係合する第1軸受部と、軸方向ケース側に形成され前記シャフトと係合する第2軸受部が一体に成形されていることである。
【0008】
上記手段によれば、回転体は、軸方向隔壁部側に形成されシャフトと係合する第1軸受部と、軸方向ケース側に形成されシャフトと係合する第2軸受部が一体に形成されていることにより、軸受部と回転体の夫々の寸法バラツキが排除され、軸受部の寸法精度を向上することができる。
【0009】
上記課題を解決するために、請求項2の発明にて講じた技術的手段は、前記第1および第2軸受部は、少なくとも1つが径方向内方に環状に突出する内突部から形成されていることである。
【0010】
上記手段によれば、第1および第2軸受部は、少なくとも1つが径方向内方に環状に突出する内突部から形成されていることにより、第1軸受部と第2軸受部との間に容積部を形成し流体を保持することができ、第1および第2軸受部の潤滑を促進することができる。
【0011】
上記課題を解決するために、請求項3の発明にて講じた技術的手段は、前記シャフトは、前記第1および第2軸受部にそれぞれ対向し係合する第1および第2係合部が形成され、少なくとも1つが径方向外方に環状に突出する外突部から形成されていることである。
【0012】
上記手段によれば、シャフトは、第1および第2軸受部にそれぞれ対向し係合する第1および第2係合部が形成され、少なくとも1つが径方向外方に環状に突出する外突部から形成されていることにより、第1軸受部と第2軸受部との間に容積部を形成し流体を保持することができ、第1および第2軸受部の潤滑を促進することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、請求項4の発明にて講じた技術的手段は、前記第1軸受部の内径は、前記第2軸受部の内径より大きいことである。
【0014】
上記手段によれば、第1軸受部の内径は、第2軸受部の内径より大きいことにより、回転体の軸受部を成形する場合、一方向から加工ができ成形性が向上できる。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項5の発明にて講じた技術的手段は、前記第1軸受部の内径は、前記第2軸受部の内径と略同一であることである。
【0016】
上記手段によれば、第1軸受部の内径は、第2軸受部の内径と略同一であることにより、軸受部の内径の精度管理が行い易くなり、内径の精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1乃至5の発明によれば、軸受部の寸法精度のバラツキによる回転体の振れが大きくなることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図1乃至図2を用いて説明する。
【0019】
電動ウォータポンプ(ポンプ装置)1は、冷却水(流体)を、例えば図示しない車両のエンジン及びラジエータを有する図示しない冷却回路内に循環させる。冷却水は、エンジンで発熱した熱量を吸収し温められ、ラジエータで熱量を放射し冷却され、エンジンを冷却する。
【0020】
図1に示すように、電動ウォータポンプ1は、主に、外周に永久磁石11aが固定されるロータ11に一体に連結されるインペラ12からなる回転体10と、ロータ11を回転駆動する回転磁界を生成する駆動部20と、インペラ12が回転自在に収容される水室(流体室)80から構成されている。水室80は後述する隔壁部30とケース50により画成されている。電動ウォータポンプ1は、駆動部20により生成された回転磁界によりロータ11が回転駆動され、ロータ11と一体のインペラ12が水室内で回転し、冷却水を冷却回路内に循環させる。
【0021】
図2に示すように、回転体10はインペラ12が一体成形された円筒部11cを有している。円筒部11cの外周には、磁性部材11bが一体に固定され、更に、磁性部材11bの外周には周状に複数(例えば、N極とS極とが交互になった4極)の極性をもつ永久磁石11aが固定されている。円筒部11cは、その内周面が、後述するシャフト60に回転自在に支持されている。ロータ11は、円筒部11cと磁性部材11bおよび永久磁石11aから構成されている。
【0022】
インペラ12は、円筒部11cに対して垂直となる略円板の基部12aと基部12aの円筒部11cと反対側に設けられた羽根12bとから構成されている。羽根12bは、インペラ12の回転により、冷却水を冷却回路内に循環させる。
【0023】
回転体10の円筒部11cは、軸方向隔壁部30側に形成されシャフト60と係合する第1軸受部10aと、軸方向ケース50側に形成されシャフト60と係合する第2軸受部10bが一体に成形され形成されている。軸受部10a,10bと回転体10が一体に成形され形成されているため、別部材で作製され結合される場合の夫々の寸法のバラツキの累積が排除される。これにより、軸受部の寸法精度を向上することができ、回転体10の振れが大きくなることを防止できる。本実施形態では、円筒部11cの内径は段付き形状を呈し、第1軸受部10aの内径は、軸受部10a,10bを除いた部分の内径と同一となっており、第2軸受部10bは、径方向内方に環状に突出する内突部から形成され、その内径は縮径している。つまり、第1軸受部10aの内径は、第2軸受部10bの内径より大きいため、回転体の軸受部を成形する場合、第1軸受部10a側の一方向から加工ができ成形性が向上する。なお、第1軸受部10aおよび第2軸受部10bは、共に径方向内方に環状に突出する内突部から形成されていても良い。この場合は、軸方向に2カ所で回転体10がシャフト60に支持され、回転体10の振れが大きくなることを防止することができる。また、第1軸受部10aの内径は、第2軸受部部10bの内径と略同一であっても良い。これにより、軸受部の内径の精度管理が行い易くなり、内径の精度を向上することができる。
【0024】
本実施形態では、駆動部20は、回転体10と駆動部20との間に配置される隔壁部30と、駆動部20への電流を制御する通電制御手段40が一体的に構成されている。
【0025】
駆動部20は、永久磁石11aに向けて突出する突出部を有するコア21とコア21に巻回されるコイル22等から構成され、樹脂成形により一体に形成されている。また、駆動部20は、コイル22への通電を制御する通電制御手段40に接続されている。通電制御手段40は、図示しないハーネスに接続されるコネクタ41が設けられている。
【0026】
隔壁部30は、図2に示すように、略有底円筒形状を呈し、開口側外周には隔壁部30と共に水室80を画成するケース50が取り付けられるフランジ部31が一体に形成されている。また、底部32には、水室80側に延びるシャフト60が固定されている。シャフト60は、回転体10を回転自在に支持している。
【0027】
シャフト60は、回転体10の軸方向の移動を規制するスラストワッシャ65を軸方向に位置決めする段付部61が形成されている。段付部61に続いて、スラストワッシャ65を段付部61に固定するナット70が締結されるおねじ部62が形成されている。なお、段付部61、スラストワッシャ65、おねじ部62及びナット70は、規制手段Lを構成している。シャフト60の底部32側の端部から段付部61までの距離は、回転体10の軸方向長さと略同一になるように設定されている。これにより、回転体と軸方向の移動を小さくすることができる。シャフト60の水室80側端部は、ケース50に形成される支持部53に固定されている。シャフト60の段付部61から水室80側端部までは、軸径が減少している。
【0028】
シャフト60は、第1軸受部10aおよび第2軸受部10bにそれぞれ対向し係合する第1係合部60aおよび第2係合部60bが形成されている。第1係合部60aおよび第2係合部60bは、それぞれ径方向外方に環状に突出する外突部から形成されている。第1係合部60aと第2係合部60bとの間、又は第1軸受部10aと第2軸受部10bとの間には、容積部Vが形成され冷却水を保持することができ、第1軸受部10aおよび第2軸受部10bの潤滑を促進することができる。
【0029】
ケース50は、ラジエータに接続されて冷却水の吸入を行う吸入部51と、エンジンに接続されて冷却水をエンジンへと吐出する吐出部52とを備えている。また、ケース50は、締結部材56により、隔壁部30のフランジ部31にシール部材55を介して水密的に固定され、隔壁部30と共に水室80を画成している。前述したように、シャフト60の段付部61から水室80側端部までは径が減少されていることにより、水室80の容積及び吸入部51の面積を拡大することができ、ポンプ性能を向上することができる。
【0030】
次に、電動ウォータポンプ1の動作について説明する。
【0031】
駆動部20が通電を制御する通電制御手段40を介して、外部からの信号により通電されると、周方向に複数の磁極を有する永久磁石11aが回転を行う。永久磁石11aが固着された円筒部11cが回転することによって、円筒部11cに一体成形されたインペラ12が回転し、羽根12bにより冷却水を吸入部51から吸入し、吐出部52より吐出する。このとき、回転体10は、規制手段Lにより、シャフト60に軸方向の移動を規制しているため、ケース50の支持部53に回転体10の軸方向の移動を規制する規制面を設けなくても良く、流体室80の容積及び吸入部の面積を減少することなく、回転体10を支持することができる。これにより、流体室80の容積或いは流体室80に形成される吸入部51の面積を確保することができ、ポンプ効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態における、ポンプ装置1の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における、回転体10の組み立て図である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・電動ウォータポンプ(ポンプ装置)
10・・・回転体
10a・・・第1軸受部
10b・・・第2軸受部
11・・・ロータ
11a・・・永久磁石
12・・・インペラ
20・・・駆動部
30・・・隔壁部
50・・・ケース
51・・・吸入口
52・・・吐出口
60・・・シャフト
60a・・・第1係合部
60b・・・第2係合部
80・・・流体室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に永久磁石が固定されるロータに一体に連結され、流体室に回転自在に収容され流体室に形成された吸入口から流体を吸入し、吐出口から流体を吐出するインペラを有する回転体と、
前記流体室を画成する隔壁部の外周に配置され前記ロータを回転駆動する回転磁界を生成する駆動部と、
前記隔壁部と共に前記流体室を画成するケースと、
前記隔壁部と前記ケースとにその両端を固定され、前記回転体を回転自在に支持するシャフトと、から構成されるポンプ装置において、
前記回転体は、軸方向隔壁部側に形成され前記シャフトと係合する第1軸受部と、軸方向ケース側に形成され前記シャフトと係合する第2軸受部が一体に形成されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記第1および第2軸受部は、少なくとも1つが径方向内方に環状に突出する内突部から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記シャフトは、前記第1および第2軸受部にそれぞれ対向し係合する第1および第2係合部が形成され、少なくとも1つが径方向外方に環状に突出する外突部から形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記第1軸受部の内径は、前記第2軸受部の内径より大きいことを特徴とする請求項1乃至3に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記第1軸受部の内径は、前記第2軸受部の内径と略同一であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のポンプ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−9707(P2006−9707A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188808(P2004−188808)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】