説明

ポンプ装置

水塊内の設置用波力ポンプ装置が記載される。当該ポンプ装置は、前記水塊の底に固定される潜水可能なシリンダを有し、このシリンダはボアを形成している。前記シリンダに対して水中フロートが作用し、このフロートは前記シリンダを水中に直立状態に付勢するように構成されている。波動及び潮汐動に応じて水中を上下に移動するように表面フロートが水面又はその十分な近傍に配設される。この表面フロートから長手部材が垂下している。当該長手部材は、前記潜水可能シリンダのボア内に伸縮自在に延出してシリンダ内にポンプチャンバを形成する。波動とともにこのポンプチャンバの容積がポンピングサイクルで変化して、前記長手部材の上昇ストロークによってこのポンプチャンバ内に流体を取り込み、前記長手部材の下降ストロークによってポンプチャンバ内から流体を排水する。水底に対して前記シリンダを動かす必要無く有効ポンプサイクルが潮汐範囲にわたって連続しながら、前記長手部材を前記シリンダに対して伸長又は退避させることによって、ポンプチャンバの長さが変化する潮汐深さに対して適合する。前記長手部材が前記シリンダのボア内に退避する程度に、前記長手部材は前記ボアの断面積の大きな部分を占める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波力ポンプ装置に関する。より詳しくは、本発明は、潮汐水用のポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波力ポンプ装置が知られている。典型的には、これらの装置は、水塊の表面、例えば海面、に位置するフロートの垂直変位によって駆動されるポンプを有している。波力ポンプ装置は、水力電気を作り出すためにタービンを通して水を送り込むのに使用することができ、或いは、後の使用のため、例えば必要があったときに水力電気を作り出すために、保管される陸上の貯蔵庫へ水を送り込むために使用することができる。
【0003】
公知のポンプ装置の一例が本出願人の特許文献1に記載されており、それがここでは図1に図示されている。この図1を参照すると、この公知のポンプ装置は、潜水プラットフォーム30上に支持されたポンプを備えている。当該プラットフォーム30は、チエーン28によって海底31に接続され、水中フロート21によって水中で直立状態に支持されている。ポンプは、シリンダ9内で往復移動するように構成されたピストン12を備えている。ピストン12は、接続部材5によって海面に配設された重し付きフロート2に接続されている。
【0004】
使用時、当該重し付きフロート2は波高の増大に伴って上昇し、波の通過に伴って下降する。通過する波によるこの重し付きフロート2の垂直変位によってピストン12および接続部材5のシリンダ9内での往復移動が駆動される。ポンプは複動式であって以下のように作動する。即ち、ピストン12の上昇ストローク時、水が吸入弁14を介してシリンダ9内に引きこまれ、それと同時に水がシリンダ9からマニホルド10を介して排出弁8から排出される。反対にピストン12の下降ストローク時は、水が吸入弁7を介してシリンダ9内に取り込まれ、同時に水がマニホルド10を介して排出弁13から排出される。
【0005】
ポンプの高さを変化する潮汐状態に適合させるべくプラットフォーム30を水中で上下させることができる。この目的のためにプラットフォーム30は、空気が充填されたカラム22を有し、これが浸水シリンダ23に対して伸縮自在出入り移動可能に構成されている。水塊において、例えば上げ潮によって水位が上昇すると、重し付きフロート2も上昇して接続部材5をシリンダ9に対して持ち上げる。この接続部材5がシリンダ9からのその最大延出量に達すると、上げ潮に伴って重し付きフロート2が更に上昇移動を続けることによって空気充填カラム22が浸水したシリンダ23に対して延出する。
【0006】
その基部において浸水シリンダ23は、吸引リリーフ弁25と圧力リリーフ排出弁26とを備えている。上げ潮に伴って空気充填カラム22が延出すると、吸引リリーフ吸引弁25を介して、カラム22とシリンダ23との間のチャンバに水が引きこまれる。反対に、ポンプの高さを下げるべく下げ潮に伴ってカラム22の退避を可能にするために、前記圧力リリーフ排出弁26を介してチャンバから水が排出される。吸引リリーフ吸引弁25と圧力リリーフ排出弁26とは、ポンプ9がその正常なストローク範囲内で作動することを可能にするように前記カラム22を位置保持するための流体固着現象(hydraulic lock)を提供するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】イギリス特許第2453670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポンプの水中での高さを調節することが重要である。なぜなら、それによってポンプは正常に作動するための正しい高さになる、即ち、重し付きフロート2が上下移動することが可能になるからであり、又、それによってポンプ装置の上述した諸部材が極度の負荷や力から保護されるからである。例えば、もしもポンプの高さが固定されるならば、満潮時において、ポンプの水中での位置は低すぎるものとなるであろう。そして、これによって重し付きフロート2の均衡位置がポンプから離れすぎるものとなり、そのことからピストン12が最大ストロークで作動することが妨げられるであろう。
【0009】
満潮時において、もしも重し付きフロート2の均衡位置がポンプから離れすぎたものになれば、接続部材5が余りにも長い時間、ポンプから大きく延出することになる。この延出状態において、接続部材5はシリンダ9によって保護されず、水の波動による激しい側方の力に晒されることになる。接続部材5は金属から成り、シリンダ9の内径と比較して小さな径を有する。接続部材5はポンプシリンダを通って延出するので、上昇ポンプストローク時において装置のポンプ能力を最大化するためには小さな径が必要である。その小さな径により、接続部材5は、もしも長時間にわたってシリンダ9から延出すると、側方からの力を受けて曲がったり、座屈するであろう。その結果、接続部材5が長時間にわたってシリンダ9から延出されることを防止するために高さ調節可能なプラットフォームを設けることが必要となる。
【0010】
図1を参照して上述したシステムは良好に作動するものではあるが、本発明は、簡単な構造の別のポンプ装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様に拠れば、水塊中の位置用の波力ポンプ装置が提供され、当該装置は、前記水塊の底に固定されるように構成されボアを形成している潜水可能シリンダと、当該シリンダに作用し、この潜水可能シリンダを水中において直立状態に付勢するように構成された水中フロートと、波動及び潮汐動に応じて前記水塊中を上下に移動するように水面又はその十分な近傍に配設される表面フロートと、この表面フロートから垂下するとともに、前記潜水可能シリンダのボア内に伸縮自在に延出して潜水可能シリンダ内にポンプチャンバを形成する長手部材とを有し、ここで、波動とともにこのポンプチャンバの容積がポンプサイクルで変化して、前記長手部材の上昇ストロークによってこのポンプチャンバ内に流体を取り込み、前記長手部材の下降ストロークによってポンプチャンバ内から流体を吐き出し、水底に対して前記潜水可能シリンダを動かす必要無く、有効ポンプサイクルが潮汐範囲にわたって連続しながら、前記長手部材を前記シリンダに対して伸長又は退避させることによって、ポンプチャンバの長さが変化する潮汐深さに対して適合し、前記長手部材が前記潜水可能シリンダのボア内に退避する程度に、前記長手部材は前記ボアの断面積の大きな部分を占める。
【0012】
本発明は、従来のシステムよりも、より単純で安価でしかも効果的である。コスト節約は、少なくともその一部は、公知のシステムよりも数の少ないパーツを使用することによるものである。例えば、本発明は、別体の高さ調節可能プラットフォームや、それに対応した潮位変化に対応するべくシリンダを上下させる弁を必要としない。その代わりに、本発明では、潮位変化に対応するためにシリンダに対して長手部材を伸長、退避させる。満潮時には長手部材はシリンダから大きく延出するのに対して、干潮時には長手部材はその大部分がシリンダ内に退避する。
【0013】
長手部材は、公知のシステムの対応の長手部材(又は接続ロッド)よりも遥かに大きい。従来のシステムと異なり、本発明の長手部材は大きな径を有し、シリンダ内に退避した時にボアの断面積の大きな部分を占める。
【0014】
この大径の長手部材は、シリンダから延出した時に、水中において受ける強い側方からの力による曲げや座屈に耐えることができる。このように変形に耐えることができる能力によって、この長手部材は、従来技術のシステムと比較してより長い時間、大きな延出状態または露出位置に留まることが可能である。その結果、従来技術のシステムでは、接続ロッドが長時間延出状態となることを防止するために高さ調節可能なシリンダを利用しているのに対して、本発明の装置は、潮位変化に対して伸縮自在に対応することができる。
【0015】
通常、長手部材は、ボアの直径の少なくとも90%の直径を有する。当該ボアの直径は500〜1600mmの範囲とすることができる。好ましくは、ボアは少なくとも550mmの直径を有する。長手部材の直径は500〜1500mmの範囲とすることができる。勿論、この装置を非常に深い水中で使用したり、波又は潮位変化の非常に大きな水中で使用する場合においては、前記装置は遥かに大きなものとなることが理解されるであろう。前記装置は、又、更に大量の流体を揚水/排水するべくスケールアップすることも可能である。その結果、前述した種々の部材の大きさはこれらの範囲を超えることがありうることが理解されるであろう。
【0016】
長手部材は、ほぼ円形の断面を備えたものとしたり、或いは、その長さ方向に沿って実質的に均一な断面積を備えるものとすることができる。長手部材はピストンとして作用する。この長手部材の表面フロートから離間した下端部に、ピストンヘッドを設けることができる。このピストンヘッドは、長手部材に接続される別体のパーツとして構成してもよいし、或いは、長手部材の閉じられた下端部によってそれを形成してもよい。別の実施例では、端部開口長手部材を使用することができる。長手部材の上端部に出口を設けることができる。この出口は長手部材の上方に取り付けられた発電機と連通することができる。
【0017】
前記装置は、好ましくは、長手部材の下降ストロークが主たる(或いは唯一の)作用ストロークであるものとして構成される。長手部材が閉じられた下端部を備える実施例において、シリンダが直立状態にある時、主ポンプチャンバは長手部材の下方に位置する。但し、長手部材が開口した端部を有する場合には、ポンプチャンバは、長手部材内を上方に延出することができる。これらの両方の場合において、シリンダが直立状態にある時、ポンプチャンバの少なくとも大部分が前記シリンダの最上端部の下方にあることが好ましい。又、これら両方の場合において、長手部材はポンプチャンバを占有もしないし、又それを通して延出しない。従って、本発明においては長手部材のサイズを制限する必要が無い。
【0018】
伸縮式潮汐調節を容易にするために、長手部材は従来技術の接続ロッドよりも遥かに長い。同様に、シリンダは、従来技術のシリンダよりも遥かに高い。通常、シリンダと長手部材とは、それぞれ10〜20メートルの長さにされる。但し、特定の水塊に適合するべくそれよりも長いパーツ又は短いパーツを製造することも可能である。好ましくは、潜水可能シリンダと長手部材とは少なくとも10メートルの長さである。前記装置は、潮によって深さの極端な変化が生じる水塊での使用に適している。例えばある種の水塊では12メートルに達する深さの変化が起こる。このような潮汐範囲に対応するために、15メートルのシリンダと15メートルの長手部材とが使用されるかもしれない。これによっても、満潮時において長手部材が更に3メートル波動往復移動することが可能である。勿論、必要な場合、更に大きな波に対応するためにシリンダと長手部材とを更に長くすることも可能であろう。
【0019】
長手部材は、金属又は強化コンクリートから形成することができ。或いは、長手部材はプラスチック材から形成することも可能である。好ましくは、長手部材は、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成される。更に、長手部材は複合構造にすることも可能である。特に、長手部材は強化複合材から形成することができる。例えば、長手部材をガラス又はナイロン繊維強化HDPE等の繊維強化プラスチック材から形成することができる。
【0020】
好適には、長手部材は中空構造、若しくは、内部空洞を形成するものとして構成される。例えば長手部材を筒状にして、実質的に円形の断面を有するものとすることができる。そして、その空洞に骨材、水、金属又はその他の高密度材などのバラストを設けることによって水中において長手部材を安定化することができる。前記バラストは、又、長手部材の重量を増大させ、その下降ポンピングストロークを補助する。
【0021】
ボア内においてシリンダと長手部材との間に形成されるクリアランス領域は環状にすることができる。そして、このクリアランス領域の幅を長手部材の直径の5%未満にすることができる。好ましくは、このクリアランス領域の幅は、長手部材の直径の2%未満、より好ましくは1.5%未満である。通常、クリアランス領域の幅は5〜10mmの範囲である。好ましくは、前記クリアランス領域の幅は約7mmである。
【0022】
前記長手部材は、好ましくはボア内にスライド可能に装着される。このスライド自在装着を容易にするために、クリアランス領域内にベアリングを設けてもよい。長手部材の外側表面に第1のベアリングを取り付けることができる。この第1ベアリングは長手部材の下端部に装着することができる。シリンダの内壁に第2ベアリングを装着することができる。この第2ベアリングはシリンダの上端部に配置することができる。このようなベアリング構成は、長手部材をシリンダ内において同心状に維持するのに役立つ。
【0023】
前記装置は、その使用時において、クリアランス領域に、植物や藻が堆積してシリンダ内での長手部材の移動を潤滑するように構成することができる。シリンダ内での長手部材の移動中に、過剰な厚みの植物又は藻を除去するために、クリアランス領域の入口にスクレーパを設けることができる。このスクレーパは、又、シリンダのこの部分に、フジツボや軟体動物が付着することも防止する。前記装置は、その使用時において、クリアランス領域に形成される水膜によってシリンダ内での長手部材の移動が潤滑されるように構成することも可能である。
【0024】
表面フロートは、ブイ部分とバラスト部分とを備えたものとすることができる。そしてそのブイ部分には空気を充填することができる。バラスト部分はタンクを備えたものとすることができ、このタンクには、骨材又は水をバラストとして格納することができる。水を使用する場合、必要な場合、バラストを変化させるべく、タンク内の水の量を動的に制御することができる。例えば、荒れた状態においては、表面フロートを水中に沈めるべくタンクに十分な水が入るようにすることができる。穏やかな状態では、例えば、アキュムレータから、空気をタンクに送り込んで、タンク内の水の一部又は全部を追い出して表面フロートを再び上昇させるように構成することができる。或いは、所望の場合、通常の使用状態において表面フロートが波動に応じて往復移動するために水面に十分に近い状態で、水中に沈められるように構成することも可能である。バラスト部分は、追加的に、又は、代替的に、コンクリート又は鋳鉄等の金属からなるウエイトを備えることができる。
【0025】
前記シリンダは、ロープ、鎖、ケーブル等の繋ぎ具によって水底に固定することができる。繋ぎ具を使用することは、リジッドな連結構造と比較して、簡便かつ安価である。但し、本発明にはシリンダを直立位置回りで回動可能にするボールジョイントなどのリジッドな連結も含まれる。繋ぎ具は、必要とあれば、水中におけるシリンダの高さを容易に決定および/又は調節することを可能にする。シリンダは、繋ぎ具を取り付けることが可能なフランジを備えることができる。シリンダには、単数又は複数の繋ぎ具をそれに取り付けることが可能な単一の繋ぎポイントを備えさせることができる。好ましくは、単一の繋ぎ具が水底に対してシリンダを連結するのに使用される。単一の繋ぎ具によって、一般的な潮流に対して調節するべく装置を固定ポイント回りで自由に移動させることが可能となる。単一の繋ぎ具によって、複数の繋ぎシステムの場合に問題となりうる、「引っ掛け(snatching)」が防止される。
【0026】
水中フロートは、下降ポンプストローク中において前記長手部材と表面フロートの下方の力に耐えるために十分な浮力を持ったものとされる。繋留システムにおいて、水中フロートは、繋ぎ具が下降ポンプストローク中においてピンと張った状態を維持するのに十分な浮力を有する。この構成は、下降ストロークを作用ストロークとして利用する場合、水底にリジッドに接続される必要のある、又は、固定されたプラットフォームにリジッドに連結される必要のある大半の従来システムと対照的である。その結果、本発明のポンプ装置は、自立、独立式である。多くの従来技術システムと対照的に、ポンプ装置は、それ自身を水中で直立に支持するための追加の安定化手段を必要としない。
【0027】
水中フロートは、好適にはシリンダの上端部に対し作用する。本発明の好適実施例において水中フロートは、シリンダの上端部回りに固定されたジャケットの形状である。このジャケットには空気を充填することができる。この構成において、長手部材が閉鎖端部構造である場合、ポンプチャンバを形成する前記ボアの一部は、水中フロートの下方のレベルまでシリンダ内を延出する。同様に、長手部材が開口端部構造である場合も、ポンプチャンバの大部分はそれでも水中フロートの下方に位置することになる。これは、同等のボアとポンプチャンバが水中フロートの上方に位置する従来技術システムと対照的である。本発明は、重心の位置が低く、従って、自立型の従来技術装置よりも安定性が高いという利点を提供する。
【0028】
ポンプ装置は、ポンプチャンバと連通する出口を有する。送り出される流体を遠隔地に導くために当該出口にパイプ又はホースを接続することができる。好適には、前記出口は、シリンダの下端部領域に設けることができる。この出口を低いレベルに設けることによって、パイプ又はホースがシリンダを水中においてその直立位置から引っ張ることのないようにすることができる。更に、出口を低いレベルに設けることは、装置が自動フラッシュ式であるということを意味し、シリンダの底部に沈んだ沈泥やその他のデブリをこの出口を通して下降ポンプストローク時に流し出すことができる。
【0029】
ポンプ装置は、更に、ポンプチャンバと連通する入口を備えることができる。同様に、この入口はシリンダの下端部領域に設けることができる。この位置において、周囲の水はその深さにより比較的高い圧力を受ける。従って、この入口からポンプチャンバに入る流体によって、上昇ストロークにおける長手部材の上方移動が補助され加速される。前記入口を十分に低いレベルに設けることによって、この作用が、長手部材がシリンダ内において最大限まで退避する干潮時を含むあらゆる潮汐状態で実現される。入口を低いレベルに設けることのもう一つの利点は、これによって、直射日光に対する入口の露出が最小限になって、それによって、この入口上又はその周りでの、藻の成長、植物、藻、軟体動物やフジツボの堆積が最小化されることである。
【0030】
ポンプ装置は、好ましくは周囲の水塊から揚水するように構成される。この場合、前記入口を周囲の水と連通するように構成することができる。汲み上げられた水は、水力電気の発電又は淡水化に利用することができる。或いは、ポンプ装置は、前記入口を適当な流体リザーバに接続することによって、オイル又はガスなどのその他のタイプの流体をポンピングするように構成することができる。
【0031】
好ましくは、前記装置は単動式である。但し、複動式の装置も本発明の範囲に含まれる。
【0032】
本発明の第2の態様に拠れば、波動ポンプ装置を使用して流体をポンピングする方法が提供され、前記ポンプ装置が、浮力によって直立位置に対して付勢される潜水可能シリンダと、当該シリンダに対して往復移動するように構成された長手部材と、前記シリンダの上方に配設され、かつ、前記長手部材に接続されたフロートとを備え、前記フロートと前記長手部材とが水塊の波動及び潮力に応じて前記潜水可能シリンダに対して往復移動するように構成されたものにおいて、前記方法は、波動ポンプサイクル中に流体をポンピングし、それによって前記水塊の波動によって前記フロートと長手部材とがある周波数で、かつ前記水塊の波の周波数と振幅とによって駆動される程度に前記潜水可能シリンダに対して往復移動される工程と、そして、潮汐周期中に前記長手部材を前記潜水可能シリンダに対して伸縮移動させることによって、この潮汐周期中全体を通じて流体をポンピングする波動ポンプサイクルを維持しながら前記水塊の潮汐変動に対して調節する工程と、を有する。
【0033】
海洋における連続する波のピーク間の時間は、7〜12秒間の範囲で変動する可能性があり、より一般的にはそれは8〜9秒間であり、それは、典型的には約8.5秒間である。波動ポンプ周期は、これらの連続する波のピーク間の時間間隔にほぼ等しい時間を有する。
【0034】
ここで、連続する満潮間の時間として定義される潮汐周期は水塊に依存するが、通常は、約2.5時間である。この潮汐周期を有する水塊中に載置された場合、長手部材のシリンダからの平均延出は、満潮時において最大約2.5時間毎になる。
【0035】
前記方法は、最大で12メートルの潮汐範囲を有する水塊中で前記装置を作動させることを含むことができる。潮汐範囲とは、干潮と満潮との間での水の平均深さの変化を意味する。尚、水塊の潮汐範囲は太陰周期によって変化し、最大の潮汐範囲は大潮間に生じ、最小の潮汐範囲は小潮潮流間で生じることが理解されるであろう。シリンダと長手部材とは、好ましくは波動往復移動が満潮時においても継続されることを許容しながら、大潮を含む、完全潮汐範囲を許容するのに十分な長さを有する。その結果、前記方法は、満潮に対して適合するべく、長手部材を前記シリンダから最大で12メートル(そして大潮時には更にそれ以上)延出させ、満潮時には波動往復動を許容するべく長手部材が前記シリンダから更にそれ以上延出することを許容する工程を含むことができる。風力6の状態、即ち雄風の状態において、海における波の山から谷の高さは典型的には3〜4メートルである。風力9の状態、即ち大強風の状態において、波の高さは7〜10メートルにも達し、風力11あるいは12の風、即ち大嵐やハリケーンにおいて、波の高さは16メートルにも達する可能性がある。従って、前記方法は、このような大きさの波を有する水塊中においてポンプ装置を作動させることを含みうる。
【0036】
前記方法は、潮汐期間中において水塊中で前記シリンダの高さを実質的に維持する工程を含むことができる。シリンダの高さを維持することは、水底と前記シリンダの底部との間に実質的に一定の分離を維持することを含みうる。
【0037】
本発明の概念は、以下を有する単動式波動ポンプ装置を含む。即ち、水底に繋ぎ止められるとともに、水中フロートによって水中で直立状態に支持される潜水可能シリンダ、このシリンダはその内部において長手ピストン部材が伸縮自在に受け入れられるボアを形成している。ピストン部材は、その上端部において、ボア内において当該ピストン部材を駆動するべく、波動に対応して水中で往復移動するようにシリンダの上方に配設された表面フロートに接続されている。ピストン部材は、少なくとも使用時において前記ボア内に受け入れられるその長さ部分に渡って実質的に均一な断面を有し、前記断面は前記ボアの断面の大きな部分を占める。
【0038】
本発明の概念は、更に、波動ポンプ装置を使用して流体をポンピングする方法も含み、この方法は以下の工程を有する。水塊にシリンダを浸水させる。このシリンダはボアを形成している。水底にシリンダーを連結する。浸水フロートを使用して前記シリンダを実質的に直立姿勢に維持する。表面フロートを、波動及び潮動に応じて水塊中を上下に移動するように水塊の表面又はこの表面の十分近傍に配設する。シリンダ内にポンプチャンバを形成するべくシリンダのボア内に長手部材を伸縮自在に延出させる。長手部材は表面フロートの上端部に接続されている。長手部材の上昇ストロークを利用して波高の増加に伴ってポンプチャンバ内に流体を引き入れる。長手部材の下降ストロークを利用して波高の減少に伴って前記ポンプチャンバから流体を排出する。有効なポンプサイクルを潮汐範囲にわたって連続させながら、前記装置を変化する潮の深さに適合させるためにポンプチャンバの長さを変化させるべく潮汐移動に応じてシリンダに対して長手部材を延出又は退避させる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の背景をなす公知のポンプ装置を示す図である。
【図2a】本発明の第1実施例による単動式ポンプ装置の干潮状態にある断面図である。
【図2b】図2aのA−A線に沿った断面図である。
【図2c】図2aに対応し、満潮状態にあるポンプ装置を示す図である。
【図3】本発明の第2実施例による単動式ポンプ装置の側方断面である。
【図4】本発明の第3実施例による単動式ポンプ装置の断面図である。
【図5】本発明の第4実施例による複動式ポンプ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図2aを参照すると、本発明の第1実施例によるポンプ装置100が海に設置されている状態で図示されている。概観すると、ポンプ装置100は、海の表面104の下方に潜水された筒状シリンダ102を有する。この筒状シリンダ102は、チエーン110を介して海底108上のコンクリートブロック106に繋ぎとめられ、かつ水中フロート114によって水112中において実質的に直立状態で支持されている。筒状シリンダ102は、当該筒状シリンダ102の中央内壁117によって形成される筒状ボア116を備えている。この筒状ボア116内には長手部材118が伸縮自在に受け入れられている。長手部材118は、ピストンヘッド122に接続された下端部120と海の表面104に配設された表面フロート126に接続された上端部124とを有している。表面フロート126が波動によって駆動されて水112中で上下に移動すると、ピストンヘッド122と長手部材118とは筒状ボア116内で往復移動する。図示されている状態において長手部材118は、干潮時においてその下降ストロークの底部に位置している。
【0041】
次に、引き続き図2aを参照して、ポンプ装置の様々な構成要素について更に詳細に説明する。尚、この図面は原寸に比例してはいない。
【0042】
表面フロート126は約10メートルの直径を有し、空気充填ブイ部128と、海水を含むタンク形状のバラスト部130とを有する。必要な場合、バラストを調節するためにタンク内の水の容量を動的に制御することができる。例えば嵐状態においては、表面フロート126を海の表面104の下方に沈めるために十分な水をタンク内に取り入れることができる。より穏やかな状態においては、表面フロート126を再び浮かせるために、タンクからその水の一部又は全部を追い出すために、例えばアキュムレータタンクから、タンクに空気を注入することができる。
【0043】
シリンダ102は長さが約15メートルで、閉じられた下端部132から開口した上端部134に向けて延出している。下端部132は、逆Y字の腕部136,137が海底108に向けて外側に向けられた逆Y字形状を有している。開口上端部134はボア116への入口138を形成している。この入口138は、シリンダ102が図示されているように直立姿勢にある時に海面104に向く。
【0044】
シリンダ102は、逆Y字形状下端部132の各腕136,137によってそれぞれ形成される入口140と出口142とを備えている。これらの入口140と出口142とは、吸入弁144と排出弁146とを有し、これらがボア116内に形成されたポンプチャンバ148と連通している。遠隔地にポンピングされる流体を送る出口パイプ150又は搬送ホースがシリンダ102の出口分岐部137に取り付けられている。逆Y字形状下端部132の腕136,137間には接続フランジ152が設けられている。チエーン110の上端部154がこの接続フランジ152に接続され、これに対してチエーン110の下端部156が海底108上のコンクリートブロック106に取り付けられてシリンダ102を海底108に固定している。
【0045】
筒状長手部材118は長さが約15メートルであり、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されている。長手部材118の内側空洞158には骨材160が収納され、これが水中112において長手部材118を安定化させるバラストとして作用する。
【0046】
長手部材118の下端部120には第1案内ベアリング162が外付けされ、シリンダ102の開口上端部134においてボア116内には第2案内ベアリング164が取り付けられている。これら第1及び第2案内ベアリング162,164は長手部材118とシリンダ102とを互いに対して保持して、長手部材118と連動のピストンヘッド122とがボア116内で往復移動する時に、これらの部材のスムースな移動を補助する。
【0047】
次に図2bを参照すると、ここにはシリンダ102と長手部材118との図2a中のA−A線に沿った断面が図示されている。長手部材118の外面167とシリンダ102の内壁117との間に狭いクリアランス領域166が形成されている。矢印168によって示す、シリンダ102と長手部材118との間の径方向クリアランスは、約7センチメートルであって、これは図2aに図示の第1案内ベアリング162を収納するのに丁度の大きさである。双方向矢印170によって示すボア116の直径は、550mmである。双方向矢印172によって示す長手部材118の外径は、536mmである。これにより、長手部材118は、ボア116の断面積の大きな部分を占有している。この構成が、例えば図1に図示の従来のシステムと対照的であることが重要な事実として銘記される。この従来システムでは、対応のボアよりも遥かに小さな直径の長手部材5を利用しており、その結果として、その長手部材5はボアの断面積の小さな部分を占有している。
【0048】
再び図2aを参照すると、潜水フロート114は、シリンダ102の上端部134回りを接続するカラーの形状を有する。この潜水フロート114は、長手部材118と連動するピストンヘッド122とのボア116内における激しい下降ストローク時においてもチエーン110がピンと張った状態に維持されるように、シリンダ102を水中112で直立姿勢に支持するのに十分に大きな浮力を有する。
【0049】
ピストンヘッド122はディスク形状であり、ボア116の長手軸心174に対して直交する平面に位置している。このピストンヘッド122の周囲には環状シールリング(図示せず)が配置され、これがシリンダ117の内壁に接当して、ポンプチャンバ148とクリアランス領域166との間にシールを形成する。
【0050】
シリンダ102が図2aに図示されているように直立状態にある時、容量の変化するポンプチャンバ148はピストンヘッド122の下方に位置する。長手部材118とこれに連動するピストンヘッド12とがボア116内で往復移動することによるシリンダ102のスイープ容積に応じて、ポンプチャンバ148の容積が変化する。スイープ容積は、表面フロート126の往復運動に依存し、この往復運動は、任意の時点における水112の波の高さに依存する。
【0051】
次に、ポンプ装置100の作動について再び図2aと図2cとを参照して説明する。
【0052】
まず図2aを参照すると、使用時において、海面104において波の高さが増加すると、表面フロート126の浮力によって、上昇する波と共にこの表面フロートが上方に移動する。この上方移動によって、長手部材118とピストンヘッド122とがボア116内で持ち上げられる。この上昇ストローク中、上昇移動するピストンヘッド122によってポンプチャンバ148内に負圧が発生し、これによって吸引弁部材144がそのシートから離間移動して、入口144から水がポンプチャンバ148内と引きこまれる。
【0053】
波が通り過ぎると、表面フロート126が重力により、又、その内部のバラスト部130の重量と、更に長手部材118と骨材160との重力にも補助された状態で下降する。表面フロート126のこの下降ストロークによって、長手部材118とピストンヘッド122とがボア116内において下方に駆動される。この下降ストローク中、ピストンヘッド122がポンプチャンバ148内の水を加圧し、それによって前記排出弁部材146がそのシートから離間移動されて出口142を通してポンプチャンバ148から水が排出される。この水が、出口パイプ150を通して、水力発電タービン又はその水が後の利用のために保管されるリザーバ(共に図示せず)へとポンピングされる。或いは、ポンプ装置100を使用して逆浸透システムに水をポンピングしてもよい。
【0054】
上昇ストロークとその後の下降ストロークとによってポンプ装置100の一つの完全なサイクルが構成される。特に図2aのポンプ装置100は単動式であって、主ポンプストローク又は主作用ストロークとして長手部材118とピストンヘッド122の下降ストロークを利用する。これは、一般に作用ストロークとして長手部材とピストンヘッドとの上昇ストロークを利用する大半の従来の単動式ポンプ装置と対照的であって、そのような装置の場合には、長手部材がポンプチャンバの一部を占有し、それによってポンプチャンバの有効容積を減少させるという欠点がある。図2aに図示の構成において下降ストロークを主ポンプストロークとして利用することによって、長手部材118はポンプチャンバ148を占有することが無く、従って、主作用ストロークにおいてくみ出される水の容積はピストンヘッド122によるシリンダ102のスイープ容積に対応したものとなる。
【0055】
又、多くの従来技術装置と異なり、図2aの単動式ポンプ装置100は、ピストンヘッド122回りのシールリングによって提供されるシールによってこのポイントにおける圧力損失が問題ではないので、シリンダ102の開口上端部134でのシリンダ102と長手部材118との間にシールを必要としない。ポンプ装置は自動潤滑構造であって、潤滑剤として周囲の水112を利用する。更に前記装置は自動フラッシュ式であって、シリンダ102の底部に沈む沈泥やその他のデブリは出口142および出口パイプ150を通して下降ポンプストローク時に流し出される。
【0056】
次に、潮の満ち引きに対して自動調節するポンプ装置100の能力について図2cを参照して説明する。図2cを参照すると、満ち潮によって水112の深さが増大すると、表面フロート126が長手部材118と連動のピストンヘッド122とを持ち上げて、水112中での新たな均衡を確立する。この満潮均衡位置において、長手部材118はシリンダ102から大幅に延出する。この延出位置において長手部材118の大きな部分は、数時間、波の移動からの側方の力に晒される。しかしながら従来技術装置とは異なり、長手部材118は、シリンダ102の直径とほとんど同じ大きさであるその大きな直径によりこれらの力に耐えることができる。
【0057】
チエーン110によって、装置100が潮の上下に対して自動的に調節することによりシリンダ102の下端部132と海底108との間の距離が実質的に一定に維持される。換言すると、長手部材118が潮の上下移動に対して伸縮自在に適合しながら、シリンダ102の高さは実質的に固定状態に留まる。
【0058】
図3を参照すると、この図は、本発明の第2実施例によるポンプ装置176を図示している。図3と図2aとにおいて均等な要素を示すのに同じ参照番号が使用されている。このポンプ装置176は、以下の点を除いて図2aのポンプ装置100に大半の点において類似している。即ち、このポンプ装置176には長手部材118の下端部120にピストンヘッドを持たず、その代わりに長手部材118は開口下端部120を有している。又、第1実施例と共通して長手部材118は中空である。その結果、ポンプチャンバ148は長手部材118内の長手空間178内に更に上方に延出している。
【0059】
この実施例においては、水がクリアランス領域166から逃げることを防止するためにシリンダ102の上端部134において、シリンダ102と長手部材118との間にシール180が設けられている。この実施例は、長手部材118とシリンダ102の内壁117との間にベアリングは設けられていない。その代わり、クリアランス領域116に設けられた海水の膜がシリンダ102のボア116内での長手部材118の摺動を潤滑させる。更に、藻やその他の植物がクリアランス領域166に堆積して、これが追加の潤滑剤として作用する。図3では出口パイプと海底への連結部は図示を省略しているが、これらの部材は図2aに図示のものに類似したものとなることが理解される。
【0060】
図4を参照すると、これは本発明の第3実施例によるポンプ装置182を図示している。この図4において図3と図2aとにおける均等な要素を示すのに同じ参照番号が使用されている。図4のポンプ装置182は、ベアリングを持たず、シリンダ102の上端部134に端部開口長手部材118とシール180とを備えている点において図3のポンプ装置176に類似している。しかし、この図4のポンプ装置182は、長手部材118の上端部124に表面配送出口184が設けられるように改造されている。
【0061】
表面配送出口184は、ポンプチャンバ148の一部である、長手部材118の長手内部178と連通している。それを通る流体の流れを制御するために、表面配送出口184にはボールバルブ部材186が設けられている。表面配送出口184は、オンボード発電機又はその他の表面装置と連通することができる。シリンダ102の下端部132の出口142は、この実施例においては不要であるので省略されている。図4において海底に対する連結部がここでも省略されているが、図2aに図示したものに類似の構成を使用することも可能であると理解されるであろう。
【0062】
次に、図5を参照すると、これは本発明の第4実施例によるポンプ装置200を図示している。図5と図2aとにおいて均等な要素を示すのに同じ参照番号が使用されている。ポンプ装置200は複動式になるように改造されていることを除いて、大半の点において、図2aのポンプ装置100に類似している。従って、第1実施例と異なり、このポンプ装置200は、長手部材118と連動のピストンロッド122との上昇ストロークと下降ストロークとの両方において揚水/排水する。
【0063】
図2aに関連して上述した主要要素に加えて、図5のポンプ装置は、シリンダ102に対して平行かつ外部に延出する導管202として構成されたマニホルドを備えている。導管は、シリンダ102の出口142と連通するマニホルド排出弁206を備える下端部204を有している。導管202の上方部208は、潜水フロート114を通って延出し、この潜水フロート114の上面212と実質的に面一な上端部210で終端している。導管202の上端部210は、マニホルド吸入弁214を介して周囲の海水112と連通する。導管202の上方部208も、シリンダ102と長手部材118との間のクリアランス領域166と連通するマニホルド供給通路216を備えている。この実施例において、水がクリアランス領域166から逃げることを防止するためにシリンダ102の上端部134において、シリンダ102と長手部材118との間にシール218が設けられている。
【0064】
下降ストローク時、図2の装置100と同様に、出口142を通してかつ出口パイプ150に沿って、下降する長手部材118と連動のピストンヘッド122とがポンプチャンバ148から水を押し出す。しかしながら、図5のポンプ装置200は、更に、下降ストローク時に、マニホルド吸入弁214を介してかつマニホルド供給通路216を通してシールされたクリアランス領域166に水を引きこむ。
【0065】
上昇ストローク時、シリンダ入口140を介したポンプチャンバ148内への水の引き込みに加えて、上昇する長手部材118と連動のピストンヘッド122とは、マニホルド供給流路216を通して、導管202を通して下方に、かつマニホルド排出弁206とシリンダ出口142とを介して出口パイプ150に沿って、クリアランス領域166からの水を押し出す。
【0066】
クリアランス領域166は狭いので、ポンプ装置200は、上昇ストローク時よりも下降ストローク時においてのほうが遥かに多量の水をポンピングする。しかしながら、上昇ストローク時においてポンピングされる水の寄与によって、このポンプ装置200によってポンピングされる水の総量が増大する。
【0067】
第4実施例は、上述した第1実施例と同様に上下する潮に対して伸縮自在に適合するように構成されている。
【0068】
添付の請求項に定義されている本発明の範囲から逸脱することなく、上述した実施例に対して様々な改変を行うことが可能である。例えば上述した実施例では、チエーン110を使用してシリンダ102を海底108に連結することを記載したが、他の方法によってシリンダ102を海底108に取り付けることも可能である。例えばシリンダ102を枢支連結によって保持することができる。
【0069】
又、上述した実施例のいくつかは長手部材118の下端部120に連結されたディスク状のピストンヘッド122を備えるものであったが、本発明の他の実施例において、このピストンヘッド122を長手部材118内に一体形成することができる。例えばピストンヘッド122を、長手部材118の下端部120によって形成することができる。
【0070】
更に、上述した装置100,176,182,200は水塊から水112をポンピングするように構成されたが、入口140を適当な流体リザーバに接続することによって、その他の流体、例えばオイルやガス、をポンピングすることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水塊中に配置される波動ポンプ装置であって、
水底に固定され、ボアを形成している潜水可能シリンダと、
前記潜水可能シリンダに対して作用し、前記潜水可能シリンダを水中において直立姿勢に付勢する水中フロートと、
使用時において、波動及び潮動に応じて、前記水塊中を上下に移動するべく前記水塊の表面又はその十分近傍に配設される表面フロートと、
前記表面フロートから垂下するとともに、当該長手部材は前記潜水可能シリンダの前記ボア内に伸縮自在に延出して前記潜水可能シリンダ内にポンピングチャンバを形成する長手部材と、を備え、
前記ポンピングチャンバの容積がポンピングサイクルにおいて波動と共に変化して、前記長手部材の上昇ストローク時に前記ポンピングチャンバ内に流体を取り込み、前記長手部材の下降ストローク時に前記ポンピングチャンバから流体を吐出し、
前記水塊の底に対して前記潜水可能シリンダを移動させる必要無く、有効ポンピングサイクルが潮汐範囲に渡って連続しながら、前記長手部材を前記潜水可能シリンダに対して伸長又は退避させることによって、変化する潮の深さに適合するべく潮汐移動と共に前記ポンピングチャンバの長さが変化し、
前記長手部材が前記潜水可能シリンダの前記ボア内に退避する程度に、前記長手部材は前記ボアの断面積を大きな部分を占める波動ポンプ装置。
【請求項2】
前記長手部材の下降ストロークが主たる又は唯一の作用ストロークとなるように構成されている請求項1に記載の波動ポンプ装置。
【請求項3】
単動式である請求項1または2に記載の波動ポンプ装置。
【請求項4】
前記ポンピングチャンバは、前記潜水可能シリンダが直立姿勢の時に、前記長手部材の下方の前記ボアの領域に形成される請求項1〜3の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項5】
前記長手部材の下端部であり、前記表面フロートから離間した下端部に設けられたピストンを有する請求項1〜4の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項6】
前記水中フロートは前記潜水可能シリンダの上端部に対して作用し、前記ボアは前記潜水可能シリンダ内において前記水中フロートの下のレベルまで延出している請求項1〜5の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項7】
更に、前記潜水可能シリンダの下端部領域に設けられた出口を有し、この出口は前記ポンピングチャンバと連通している請求項1〜6の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項8】
前記出口は前記ポンピングチャンバから流体を離間位置へと搬送する出口導管と連通している請求項7に記載の波動ポンプ装置。
【請求項9】
更に、前記潜水可能シリンダの下端部領域に設けられた入口を有し、この入口は前記ポンピングチャンバと連通するとともに、前記長手部材の上昇ストローク時に前記ポンピングチャンバへと流体を取り入れるように構成されている請求項1〜8の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項10】
前記長手部材はプラスチック材から形成されている請求項1〜9の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項11】
前記長手部材は内部空洞を有する請求項1〜10の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項12】
前記空洞はバラストを収納している請求項11に記載の波動ポンプ装置。
【請求項13】
前記ボア内において前記潜水可能シリンダと前記長手部材との間にクリアランス領域が形成されている請求項1〜12の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項14】
前記クリアランス領域は、前記長手部材の直径の2%未満である請求項13に記載の波動ポンプ装置。
【請求項15】
前記クリアランス領域は5〜10mmの範囲である請求項14に記載の波動ポンプ装置。
【請求項16】
前記長手部材は、前記ボア内にスライド取り付けされている請求項13〜15の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項17】
前記クリアランス領域内にベアリングが設けられている請求項16に記載の波動ポンプ装置。
【請求項18】
前記長手部材の外面に第1ベアリングが取り付けられている請求項17に記載の波動ポンプ装置。
【請求項19】
前記第1ベアリングは、前記長手部材の下端部に取り付けられている請求項18に記載の波動ポンプ装置。
【請求項20】
前記潜水可能シリンダの内壁に第2ベアリングが取り付けられている請求項17〜19の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項21】
前記第2ベアリングは、前記潜水可能シリンダの上端部内に取り付けられている請求項20に記載の波動ポンプ装置。
【請求項22】
使用時において、植物又は藻が前記クリアランス領域に堆積して前記長手部材の前記潜水可能シリンダ内での移動を潤滑するように構成されている請求項13〜21の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項23】
前記長手部材の前記潜水可能シリンダ内での移動中に過剰な厚みの植物を除去するために前記クリアランス領域の入口にスクレーパが設けられている請求項22に記載の波動ポンプ装置。
【請求項24】
前記装置は、使用時において、前記クリアランス領域の水膜が前記長手部材の前記潜水可能シリンダ内での移動を潤滑するように構成されている請求項13〜23の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項25】
前記潜水可能シリンダを前記水塊の底に固定するために繋ぎ具を取り付けることが可能な単一の繋ぎポイントを有している請求項1〜24の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項26】
前記潜水可能シリンダは少なくとも10mの長さを有する請求項1〜25の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項27】
前記長手部材は少なくとも10mの長さを有する請求項1〜26の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項28】
前記長手部材は、前記ボアの直径の少なくとも90%である直径を有する請求項1〜27の何れか一項に記載の波動ポンプ装置。
【請求項29】
前記長手部材の前記直径は500〜1500mmの範囲である請求項28に記載の波動ポンプ装置。
【請求項30】
波動ポンプ装置を使用する流体のポンピング方法であって、
前記ポンプ装置が、浮力によって直立姿勢に向けて付勢される潜水可能シリンダと、当該潜水可能シリンダに対して伸縮する長手部材と、前記潜水可能シリンダの上方に配設されるとともに前記長手部材に接続されるフロートとを有し、前記フロートと前記長手部材とが水塊における波動と潮動とによって前記潜水可能シリンダに対して往復移動するように構成されたものにおいて、
前記方法は、
波動ポンピングサイクル中に流体をポンピングし、これによって水塊の波動によって前記フロートと前記長手部材とが或る周波数で、かつ前記水塊の波の周波数と振幅とによって駆動される程度に前記潜水可能シリンダに対して往復移動される工程と、
潮汐期間全体を通して流体をポンピングするべく前記波動ポンピングサイクルを維持しながら、前記潜水可能シリンダに対して前記長手部材を伸縮自在に延出、退避させることによって、潮汐期間中に前記水塊の潮振動に対して調節する工程と、を有する流体のポンピング方法。
【請求項31】
更に、潮汐周期中に前記水塊中において前記潜水可能シリンダの高さを実質的に維持する工程を有する請求項30に記載の流体のポンピング方法。
【請求項32】
更に、前記ポンプ装置を、満潮と干潮との間の水の平均深さの変化が最大で12mである水塊中において作動させる工程を有する請求項30または31に記載の流体のポンピング方法。
【請求項33】
更に、高潮時における水塊の波に対応するべく前記長手部材が前記潜水可能シリンダから更に延出することを許容しながら、高潮に対して適合するべく前記長手部材を前記潜水可能シリンダから最大12mまで延出させる工程を有する請求項32に記載の流体のポンピング方法。
【請求項34】
更に、山から谷への高さが6〜8mである波を有する水塊中で前記ポンプ装置を作動させる工程を有する請求項30〜33の何れか一項に記載の流体のポンピング方法。
【請求項35】
添付の図2a〜5のいずれかを参照して実質的にここに記載される、又はこれらに図示される波動ポンプ装置。
【請求項36】
添付の図2a〜5のいずれかを参照して実質的にここに記載される、又はこれらに図示される流体のポンピング方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504710(P2013−504710A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528452(P2012−528452)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051501
【国際公開番号】WO2011/030149
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509209144)ダートマス・ウェーブ・エナジー・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】