説明

ポンプ装置

【課題】アウタギアの中心軸線の傾きを抑制すると共に、モータロータの外径寸法を小さくして小型化を図ることができるポンプ装置を提供する。
【解決手段】ポンプハウジング10のポンプ組込空間13に対し、インナギア41及びアウタギア45を有する内接ギアポンプ40と、アウタギア41の外周に配設されてアウタギア41を駆動するモータステータ31及びモータロータ33を有する電動モータ30とが組み込まれる。モータステータ31は、ポンプ組込空間3の内周壁面に固定され、かつ内周面の周方向に複数のコイル32bが配設される。モータロータ33は、アウタギア45の外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石34が配列されることで構成される。モータロータ33の外周側には、複数の永久磁石34の外周を覆う非磁性体よりなるカバー部材70が装着される。カバー部材70の外周面には、モータステータ31の内周面に摺動案内される摺動面71が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプハウジングのポンプ組込空間に対し、インナギア及びアウタギアを有する内接ギアポンプと、この内接ギアポンプのアウタギアを駆動する電動モータとが組み込まれたポンプ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
このようなポンプ装置においては、図10に示すように、ポンプハウジング210の相対する内壁面のうち、一方の内壁面にアウタギア245の外周面を摺動案内するための摺動案内面281を内周面に有する突輪280が一体に形成される。
そして、突輪280の外周面に、モータロータ233が所定の隙間を隔てて配設される。
また、ポンプハウジング210の相対する内壁面のうち、突輪280が形成されていない他方の内壁面側に位置するモータロータ233の端部内周面には、アウタギア245の外周面にトルク伝達可能に連結される内鍔体235が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−137440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図10に示す従来のポンプ装置において、アウタギア245は外周面は、肩持ち状態で突輪280によって支持(案内)される。
このため、アウタギア245の中心軸線が不測に傾き、アウタギア245と突輪280との間で焼き付きが発生することがないように、突輪280の肉厚(径方向の肉厚)を厚くして剛性を高め、アウタギア245と突輪280との嵌合長さを長くしてアウタギア245の中心軸線の傾きを抑制する必要がある。
また、アウタギア245を摺動案内する突輪280の外周にモータロータ233が配設される構造上、突輪280に対応する分だけモータロータ233の外径寸法が大きくなって大型化する。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、アウタギアの中心軸線の傾きを抑制すると共に、モータロータの外径寸法を小さくして小型化を図ることができるポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るポンプ装置は、ポンプハウジングのポンプ組込空間に対し、インナギア及びアウタギアを有する内接ギアポンプと、前記アウタギアの外周に配設されて前記アウタギアを駆動するモータステータ及びモータロータを有する電動モータとが組み込まれ、
前記モータロータは、前記アウタギアの外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石が配列されることで構成され、
前記モータロータの外周側には、前記複数の永久磁石の外周を覆う非磁性体よりなるカバー部材が装着され、
前記カバー部材の外周面には、前記モータステータの内周面に摺動案内される摺動面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、アウタギアの外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石が配列されることでモータロータが構成される。
さらに、モータロータの複数の永久磁石の外周を覆う非磁性体のカバー部材の外周面に形成された摺動面が、モータステータの内周面に摺動案内される。
このため、モータロータ及びアウタギアの中心軸線の傾きを、モータステータの内周面に摺動案内されるカバー部材の摺動面によって抑制することができる。
さらに、従来のアウタギアを摺動案内する突輪の外周にモータロータを所定の隙間を隔てて配設するものと比べ、突輪に相当する分だけモータロータの外径寸法を小さくして小型化を図ることができる。
【0008】
請求項2に係るポンプ装置は、請求項1に記載のポンプ装置であって、
インナギアは、エンジンに接続される駆動軸に一方向クラッチ機構を介して接続され、 エンジンの作動時には前記駆動軸のトルクが前記一方向クラッチ機構を介して前記インナギアに伝達される構成にしてあることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、エンジンの作動時には、モータステータが非通電状態であっても、駆動軸のトルクが一方向クラッチ機構を介してインナギアに伝達される。これによって、インナギアが回転し、インナギアの回転に伴ってアウタギアが追従回転することで、車両の各種機構の潤滑、作動、制御等がなされる。
また、エンジンの一時停止(アイドルストップ)時には、モータステータが通電状態にされることで、モータロータと共にアウタギアが回転する。そして、アウタギアの回転に伴ってインナギアが追従回転することで、自動変速機内のクラッチ機構等にオイル(油圧)が供給される。
この際、インナギアの回転方向は、駆動軸に対する一方向クラッチ機構のトルク伝達方向とは逆方向となる。
【0010】
請求項3に係るポンプ装置は、請求項1に記載のポンプ装置であって、
外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石が配列されるアウタギアを有する内接ギアポンプを第2の内接ギアポンプとし、
ポンプ組込空間には、前記第2の内接ギアポンプと、この第2の内接ギアポンプとは別の第1の内接ギアポンプとが軸方向に隣接して組み込まれ、
前記第1の内接ギアポンプのインナギアは、エンジンに接続される駆動軸にトルク伝達可能に接続され、
前記第1の内接ギアポンプのアウタギアと前記第2の内接ギアポンプのアウタギアとの間には、前記第1の内接ギアポンプ側から前記第2の内接ギアポンプ側へのトルクは伝達し、前記第2の内接ギアポンプ側から前記第1の内接ギアポンプ側へのトルク伝達は遮断する一方向クラッチ機構が配設されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、エンジンの作動時には、駆動軸のトルクが第1の内接ギアポンプのインナギアに伝達される。そして、第1の内接ギアポンプのインナギアの回転に伴ってアウタギアが追従回転する。
さらに、第1の内接ギアポンプのアウタギアのトルクが、一方向クラッチ機構を介して第2の内接ギアポンプのアウタギアに伝達される。これによって、第2の内接ギアポンプのアウタギアが回転される。第2の内接ギアポンプのアウタギアの回転に伴って、インナギアが追従回転する。
このため、エンジンの作動時には、モータステータが非通電状態であっても、第1、第2の両内接ギアポンプが共に駆動される。これによって吐出されるオイルによって車両の各種機構の潤滑、作動、制御等がなされる。
また、エンジンの一時停止(アイドルストップ)時には、モータステータが通電状態にされることで、モータロータと共に第2の内接ギアポンプのアウタギアが回転する。そして、アウタギアの回転に伴ってインナギアが追従回転することで、自動変速機内のクラッチ機構等にオイル(油圧)が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例1に係るポンプ装置を示す縦断面図である。
【図2】同じくポンプハウジングに第1の内接ギアポンプと、第2の内接ギアポンプと、電動モータとが組み付けられた状態を拡大して示す縦断面図である。
【図3】同じく第1の内接ギアポンプを示す図2のIII−III線に沿う横断面図である。
【図4】同じく第2の内接ギアポンプと電動モータとを示す図2のIV−IV線に沿う横断面図である。
【図5】同じく電動モータのモータロータのカバー部材とモータステータの樹脂層との関係を拡大して示す説明図である。
【図6】同じく第2の内接ギアポンプのアウタギアの外周に設けられるモータロータの複数の永久磁石がカバー部材によって覆われた状態を拡大して示す図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】この発明の実施例2に係るポンプ装置を示す縦断面図である。
【図8】同じくポンプハウジングに内接ギアポンプとが組み付けられた状態を拡大して示す縦断面図である。
【図9】同じく内接ギアポンプと電動モータとを示す図8のIX−IX線に沿う横断面図である。
【図10】従来のポンプ装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0014】
この発明の実施例1に係るポンプ装置を図1〜図6にしたがって説明する。
図1に示すように、自動変速機のトルクコンバータ1に組み付けられるポンプ装置において、自動変速機のケーシング(図示しない)にボルトによって固定されるポンプハウジング10は、図1において左右に分割された第1、第2の両ハウジング体11、12がボルト(図示しない)によって結合されることで構成される。そして、第1、第2の両ハウジング体11、12の間には、ポンプ組込空間13が形成される。より具体的には、ポンプ組込空間13は、第1ハウジング体11の第2ハウジング体12に対向する内壁面の中心部に軸方向へ凹んで形成された組込凹部と、第2ハウジング体12の第1ハウジング体11に対向する内壁面とにより形成される。
また、第1、第2の両ハウジング体11、12の対向内壁面には、吸入ポート15、17と吐出ポート16、18とがそれぞれ形成されている。
また、第2ハウジング体12の中心部には、トルクコンバータ1のスリーブ2内に向けてステータシャフト5が形成されている。
【0015】
図1と図2に示すように、ポンプハウジング10のポンプ組込空間13には、第1の内接ギアポンプ20と、第2の内接ギアポンプ40とが軸方向に隣接して組み込まれている。さらに、ポンプ組込空間13には、第2の内接ギアポンプ40のアウタギア45の外周に配設されて第2の内接ギアポンプ40を駆動する電動モータ30が組み込まれている。
【0016】
図2と図3に示すように、第1の内接ギアポンプ20は、インナギア21と、アウタギア25とを備え、ポンプ組込空間13の第1ハウジング体11側に組み込まれている。
第1の内接ギアポンプ20のインナギア21は、外周面の周方向には複数の外歯22が形成され、内周面にはエンジンに接続される駆動軸としてのトルクコンバータ1のスリーブ2にトルク伝達可能に結合される中心孔を有している。
また、第1の内接ギアポンプ20のアウタギア25は、インナギア21の中心と偏心(図3中、偏心量Aだけ偏心)し、かつ内周面の周方向には、インナギア21の複数の外歯と噛み合う複数の内歯26が形成されている。
また、インナギア21の外歯22と、アウタギア25の内歯26との間にはオイル閉込め部27が形成されており、トルクコンバータ1のスリーブ2からのトルク伝達を受けてインナギア21が回転し、これに伴ってアウタギア25が追従回転することでポンプ作用をなすようになっている。
【0017】
図2と図4に示すように、第2の内接ギアポンプ40は、インナギア41と、アウタギア45とを備え、ポンプ組込空間13の第2ハウジング体12側に組み込まれている。
第2の内接ギアポンプ40のインナギア41は、外周面の周方向には複数の外歯42が形成され、内周面にはステータシャフト5の外周面に回転可能に嵌挿される中心孔を有している。
また、第2の内接ギアポンプ40のアウタギア45は、インナギア41の中心と偏心(図4中、偏心量Bだけ偏心)し、かつ内周面の周方向には、インナギア41の複数の外歯と噛み合う複数の内歯46が形成されている。
また、インナギア41の外歯42と、アウタギア45の内歯46との間にはオイル閉込め部47が形成されている。
そして、第2の内接ギアポンプ40は、電動モータ30からのトルク伝達を受けてアウタギア45が回転し、これに伴ってインナギア41が追従回転することでポンプ作用をなすようになっている。
【0018】
図2と図4に示すように、電動モータ30は、モータステータ31とモータロータ33とを有する。
モータステータ31は、ポンプ組込空間13の内周壁面に回り止めされて固定される鉄心部32aと、その鉄心部32aの内周面の周方向に形成された複数のコイル装着部に装着された複数のコイル32bとを備える。
モータロータ33は、複数のコイル32bに対応してアウタギア45の外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石34が配列されることで構成される。
【0019】
図5と図6に示すように、モータロータ33の外周側には、複数の永久磁石34の外周を覆う非磁性体(例えば、非磁性のステンレス鋼板等の金属板、耐熱性、耐摩耗性の合成樹脂材)よりなるカバー部材70が装着されている。
また、カバー部材70は、複数の永久磁石34の外周を覆う円筒部70aと、この円筒部70aの両端から径方向内方へ直角状に曲げられて複数の永久磁石34の両端面を覆う環状部70bとを備えている。
そして、円筒部70aの外周面には、モータステータ31の内周面に摺動案内される摺動面71が形成されている。
また、この実施例1において、モータステータ31の内周面には、合成樹脂材よりなる樹脂層75が形成され、この樹脂層75の内周面(円筒面)には、カバー部材70の摺動面71を摺動案内する摺動案内面76が形成されている。
なお、電動モータ30は、図示しない制御装置に接続され、設定されたプログラムに基づいて回転制御されるようになっている。
【0020】
また、この実施例1において、図1と図2に示すように、第1の内接ギアポンプ20と、第2の内接ギアポンプ40との間には、円板状の遮蔽板50が配設されている。この遮蔽板50は、ステータシャフト5の外周面に回り止めされて取り付けられている。また、遮蔽板50の一側面には、第1ハウジング体11の吸入ポート15及び吐出ポート16とオイル圧を均等に保つために、吸入ポート15及び吐出ポート16と同じ大きさ形状のポート溝が必要に応じて形成される。さらに、遮蔽板50の他側面には、第2ハウジング体12の吸入ポート17及び吐出ポート18とオイル圧を均等に保つために、吸入ポート17及び吐出ポート18と同じ大きさ形状のポート溝が必要に応じて形成される。
【0021】
また、この実施例1において、図2に示すように、第1の内接ギアポンプ20と第2の内接ギアポンプ40との間には、第1の内接ギアポンプ20側から第2の内接ギアポンプ40側へのトルクは伝達し、第2の内接ギアポンプ40側から第1の内接ギアポンプ20側へのトルク伝達は遮断する一方向クラッチ機構60が配設されている。
一方向クラッチ機構60は、第1の内接ギアポンプ20のアウタギア25と、第2の内接ギアポンプ40のアウタギア45とのうち、一方の部材の対向面の周縁部の複数箇所に配設され、付勢手段としてのばね63により突出方向へ付勢された連動ピン62と、他方の部材の対向面の周縁部の複数箇所に配設され、連動ピン62に係脱可能に係合する連動溝61とにより構成されている。
そして、エンジンの作動時に駆動される第1の内接ギアポンプ20のアウタギア25のトルクが、一方向クラッチ機構60の連動溝61と連動ピン62との係合力によって第2の内接ギアポンプ40のアウタギア45に伝達され、第1の内接ギアポンプ20と共に、第2の内接ギアポンプ40が駆動される。
【0022】
この実施例1に係るポンプ装置は上述したように構成される。
したがって、第2の内接ギアポンプ40のアウタギア45の外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石34が配列されることでモータロータ33が構成される。
さらに、モータロータ33の複数の永久磁石34の外周を覆うカバー部材70の円筒部70a外周面に形成された摺動面71が、モータステータ31の樹脂層75の摺動案内面76によって摺動案内される。
このため、第2の内接ギアポンプ40のアウタギア45及びモータロータ33の中心軸線の傾きを、摺動面71と摺動案内面76によって良好に抑制することができる。
さらに、従来のアウタギアを摺動案内する突輪の外周にモータロータを所定の隙間を隔てて配設するものと比べ、突輪に相当する分だけモータロータ33の外径寸法を小さくして小型化を図ることができる。
【0023】
また、この実施例1において、エンジンの作動時には、エンジンに接続される駆動軸としてのトルクコンバータ1のスリーブ2からのトルク伝達を受けて、第1の内接ギアポンプ20のインナギア21が回転し、これに伴ってアウタギア25が追従回転することでポンプ作用をなす。
また、第1の内接ギアポンプ20のアウタギア25のトルクが、一方向クラッチ機構60の連動溝61と連動ピン62との係合力によって第2の内接ギアポンプ40のアウタギア45に伝達され、第1の内接ギアポンプ20と共に、第2の内接ギアポンプ40が駆動される。このため、エンジンの作動時には、モータステータ31のコイル32bが非通電状態であっても、第1、第2の両内接ギアポンプが共に駆動される。
そして、第1、第2の両内接ギアポンプ20、40から吐出されるオイルによって各種機構の潤滑、作動、制御等がなされる。
この結果、第1の内接ギアポンプ20の駆動時に第2の内接ギアポンプ40が停止される場合と比較して、第2の内接ギアポンプ40によるオイルの供給量に相当する分だけ第1の内接ギアポンプ20を小型化することができる。ひいては、ポンプハウジング10のポンプ組込空間13を小さくすることができる。
【0024】
エンジンの一時停止(アイドルストップ)時には、モータステータ31のコイル32bが通電状態にされることで、モータロータ33を構成している第2の内接ギアポンプ40のアウタギア45が回転する。そして、アウタギア45の回転に伴ってインナギア41が追従回転することで、自動変速機内のクラッチ機構等にオイル(油圧)が供給される。
この際、一方向クラッチ機構60の連動溝61と連動ピン62とは、その係合が外れる方向となり、第2の内接ギアポンプ40から第1の内接ギアポンプ20側へのトルク伝達は一方向クラッチ機構60により遮断される。
【実施例2】
【0025】
次に、この発明の実施例2に係るポンプ装置を図7〜図9にしたがって説明する。
図7〜図9に示すように、この実施例2においては、ポンプハウジング110のポンプ組込空間113には、一つの内接ギアポンプ140と、内接ギアポンプ140のアウタギア145の外周に配設されて内接ギアポンプ140を駆動する電動モータ130とが組み込まれている。
内接ギアポンプ140のインナギア141は、外周面の周方向には複数の外歯142が形成され、内周面には、ステータシャフト5の外周面にトルク伝達可能に嵌込まれた筒部材108の外周面に嵌挿される中心孔が形成されている。
そして、インナギア141の中心孔と筒部材108との間には、エンジンに接続される駆動軸してのスリーブ102のトルクを筒部材108を介してインナギア141に伝達する一方向クラッチ機構160が配設されている。
【0026】
図8に示すように、一方向クラッチ機構160は、インナギア141の内周面と、筒部材108の外周面とのうち、一方の部材の周面の複数箇所に配設され、付勢手段としてのばね163により突出方向へ付勢された連動ピン162と、他方の部材の周面の複数箇所に配設され、連動ピン162に係脱可能に係合する連動溝161とにより構成されている。
そして、エンジンの作動時にスリーブ102と一体状をなして駆動される筒部材108のトルクが、一方向クラッチ機構160の連動溝161と連動ピン162との係合力によってインナギア141に伝達されることで、内接ギアポンプ140が駆動される。
【0027】
また、内接ギアポンプ140のアウタギア145は、インナギア141の中心と偏心(図9中、偏心量Cだけ偏心)し、かつ内周面の周方向には、インナギア141の複数の外歯142と噛み合う複数の内歯146が形成されている。
また、インナギア141の外歯142と、アウタギア145の内歯146との間にはオイル閉込め部147が形成されている。
【0028】
図8と図9に示すように、電動モータ130は、モータステータ131とモータロータ133とを有する。
モータステータ131は、ポンプ組込空間13の内周壁面に回り止めされて固定される鉄心部132aと、その鉄心部132aの内周面の周方向に形成された複数のコイル装着部に装着された複数のコイル132bとを備える。
モータロータ133は、複数のコイル132bに対応してアウタギア145の外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石134が配列されることで構成される。
【0029】
図8と図9に示すように、モータロータ133の外周側には、実施例1と同様にして、複数の永久磁石134の外周を覆う非磁性体よりなるカバー部材170が装着されている。
このカバー部材170は、実施例1と同様にして、複数の永久磁石134の外周を覆う円筒部170aと、この円筒部170aの両端から径方向内方へ直角状に曲げられて複数の永久磁石134の両端面を覆う環状部170bとを備えている。
そして、円筒部170aの外周面には、モータステータ131の内周面に摺動案内される摺動面171が形成されている。
また、モータステータ131の内周面には、合成樹脂材による樹脂層175が形成され、この樹脂層175の内周面には、カバー部材170の摺動面171を摺動案内する摺動案内面176が形成されている。
なお、電動モータ130は、図示しない制御装置に接続され、設定されたプログラムに基づいて回転制御されるようになっている。
【0030】
この実施例2に係るポンプ装置は上述したように構成される。
したがって、この実施例2においても、実施例1と同様にして、内接ギアポンプ140のアウタギア145の外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石134が配列されることでモータロータ133が構成される。
さらに、モータロータ133の複数の永久磁石134の外周を覆うカバー部材170の円筒部170a外周面に形成された摺動面171が、モータステータ131の樹脂層175の摺動案内面176によって摺動案内される。
このため、第2の内接ギアポンプ140のアウタギア145及びモータロータ133の中心軸線の傾きを、摺動面171と摺動案内面176によって良好に抑制することができる。
さらに、従来のアウタギアを摺動案内する突輪の外周にモータロータを所定の隙間を隔てて配設するものと比べ、突輪に相当する分だけモータロータ33の外径寸法を小さくして小型化を図ることができる。
【0031】
また、エンジンの作動時には、トルクコンバータ101のスリーブ102と一体状をなして回転する筒部材108のトルクが一方向クラッチ機構160を介して内接ギアポンプ140のインナギア141に伝達される。これによって、インナギア141が回転し、これに伴ってアウタギア145が追従回転することでポンプ作用をなす。そして、内接ギアポンプ140から吐出されるオイルによって各種機構の潤滑、作動、制御等がなされる。
【0032】
エンジンの一時停止(アイドルストップ)時には、モータステータ131のコイル132bが通電状態にされることで、モータロータ133を構成しているアウタギア145が回転する。そして、アウタギア145の回転に伴ってインナギア141が追従回転することで、自動変速機内のクラッチ機構等にオイル(油圧)が供給される。
この際、一方向クラッチ機構160の連動溝161と連動ピン162とは、その係合が外れる方向となる。
【0033】
なお、この発明は前記実施例1及び2に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、この発明に係るポンプ装置は、特許文献1に開示されているポンプ装置に対しても採用することができる。この場合においても、アウタギアの中心軸線の傾きを抑制することができると共に、モータロータの外径寸法を小さくして小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 ポンプハウジング
11 第1ハウジング体
12 第2ハウジング体
13 ポンプ組込空間
20 第1の内接ギアポンプ
21 インナギア
25 アウタギア
30 電動モータ
31 モータステータ
33 モータロータ
34 永久磁石
40 第2の内接ギアポンプ(内接ギアポンプ)
41 インナギア
45 アウタギア
70 カバー部材
71 摺動面
60 一方向クラッチ機構
130 電動モータ
131 モータステータ
133 モータロータ
134 永久磁石
140 内接ギアポンプ
141 インナギア
145 アウタギア
160 一方向クラッチ機構
170 カバー部材
171 摺動面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングのポンプ組込空間に対し、インナギア及びアウタギアを有する内接ギアポンプと、前記アウタギアの外周に配設されて前記アウタギアを駆動するモータステータ及びモータロータを有する電動モータとが組み込まれ、
前記モータロータは、前記アウタギアの外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石が配列されることで構成され、
前記モータロータの外周側には、前記複数の永久磁石の外周を覆う非磁性体よりなるカバー部材が装着され、
前記カバー部材の外周面には、前記モータステータの内周面に摺動案内される摺動面が形成されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ装置であって、
インナギアは、エンジンに接続される駆動軸に一方向クラッチ機構を介して接続され、 エンジンの作動時には前記駆動軸のトルクが前記一方向クラッチ機構を介して前記インナギアに伝達される構成にしてあることを特徴とするポンプ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のポンプ装置であって、
外周面の周方向にS極と、N極の複数の永久磁石が配列されるアウタギアを有する内接ギアポンプを第2の内接ギアポンプとし、
ポンプ組込空間には、前記第2の内接ギアポンプと、この第2の内接ギアポンプとは別の第1の内接ギアポンプとが軸方向に隣接して組み込まれ、
前記第1の内接ギアポンプのインナギアは、エンジンに接続される駆動軸にトルク伝達可能に接続され、
前記第1の内接ギアポンプのアウタギアと前記第2の内接ギアポンプのアウタギアとの間には、前記第1の内接ギアポンプ側から前記第2の内接ギアポンプ側へのトルクは伝達し、前記第2の内接ギアポンプ側から前記第1の内接ギアポンプ側へのトルク伝達は遮断する一方向クラッチ機構が配設されていることを特徴とするポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−72369(P2013−72369A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212253(P2011−212253)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】