説明

ポンプ

【課題】ダイアフラムを適正に動作させて所望の出力状態が得られるポンプを提供する。
【解決手段】流体を一時的に貯留する貯留室を備えたハウジングと、貯留室と一方向弁を介して連通連結して貯留室に流体を送給する送給管と、貯留室と一方向弁を介して連通連結して貯留室から押し出された流体を下流側に送出する送出管と、貯留室に面して配置して進退駆動させることにより送給管から流体を貯留室に吸引した後に送出管に押し出す振動板と、この振動板を進退駆動させる駆動部とを備えたポンプにおいて、振動板には、一方の側面をN極、他方の側面をS極とした平板状の磁石板を装着し、駆動部は、磁石板の一方の側面に対向させてハウジングに配設した複数のコイルと、磁石板の他方の側面に対向させてハウジングに配設した複数のコイルにそれぞれ通電して、磁石板を進退駆動させることにより振動板を進退駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムポンプのダイアフラムの換わりに板状の振動板を進退駆動させて流体の送給を行うダイアフラム型のポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体物の送給の駆動源としてダイアフラムポンプがよく用いられている。このようなダイアフラムポンプでは、ダイアフラムポンプの外枠を構成するハウジングに流体を一時的に貯留する貯留室を設けるとともに、この貯留室に面してダイアフラムを設けており、さらに、一方向弁を介して貯留室と送給管及び送出管をそれぞれ接続している。
【0003】
そして、ダイアフラムが弾性変形して貯留室に対して後退状態となることにより、貯留室内の圧力を低下させて送給管から貯留室内に流体を吸引し、ダイアフラムが貯留室に対して進出状態となるように弾性変形することにより、ダイアフラムによって貯留室内の流体を送出管に吐出させており、この動作を繰り返すことにより流体を断続的に吐出可能としている。
【0004】
ダイアフラムを進退駆動させる駆動手段としては、ダイアフラムの中央部にクランク軸を接続して、このクランク軸を進退駆動させたり(例えば、特許文献1参照。)、あるいはダイアフラムの中央部に磁石を装着して、磁極を交互に切り替える電磁石で磁石をリニア駆動させたり(例えば、特許文献2参照。)することによって駆動させる駆動手段が知られている。
【0005】
このようなダイアフラム型のポンプでは、弾性体で構成したダイアフラムを弾性変形させることによりポンプとしての機能を果たすようにしているが、ダイアフラムには剛性が比較的高い材料が用いられる場合が多く、弾性変形させにくく、ダイアフラムを弾性変形させるために大きな駆動力を必要とすることとなっていた。
【0006】
そこで、昨今では、ダイアフラムの外周縁を固定したフレーム体に沿って、ダイアフラムにはリング状に変形抵抗を低減させた変形領域を設け、ダイアフラムを弾性変形させやすくすることにより比較的小さい駆動力で駆動可能とすることが行われている。
【0007】
変形領域では、ダイアフラムの肉厚を小さくすることにより変形抵抗を低減させたり、あるいは、ダイアフラムの断面形状を円弧形状とすることにより変形代を設けて変形抵抗を低減させたりすることが行われている。
【特許文献1】特開2004−257337号公報
【特許文献2】特開2004−060641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したようにダイアフラムに変形領域を設けダイアフラムを弾性変形させやすくした場合には、ダイアフラムの振動時にダイアフラムに貯留室内の圧力によって膨出状の撓みが生じやすく、この膨出状の撓みによってポンプが適正に動作しなくなるおそれがあった。
【0009】
本発明者らはこのような現状に鑑み、ダイアフラムを適正に動作させて所望の出力状態が得られるポンプを提供すべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポンプでは、流体を一時的に貯留する貯留室を備えたハウジングと、貯留室と一方向弁を介して連通連結して貯留室に流体を送給する送給管と、貯留室と一方向弁を介して連通連結して貯留室から押し出された流体を下流側に送出する送出管と、貯留室に面して配置して進退駆動させることにより送給管から流体を貯留室に吸引した後に送出管に押し出す振動板と、この振動板を進退駆動させる駆動部とを備えたポンプにおいて、振動板には、一方の側面をN極、他方の側面をS極とした平板状の磁石板を装着し、駆動部は、磁石板の一方の側面に対向させてハウジングに配設した複数のコイルと、磁石板の他方の側面に対向させてハウジングに配設した複数のコイルにそれぞれ通電して、磁石板を進退駆動させることにより振動板を進退駆動させることとした。
【0011】
さらに、本発明のポンプでは、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)ハウジングには、磁石板の位置を検出するセンサを設け、駆動部は、センサで検出された磁石板の位置の情報に基づいて、コイルに通電する電流を調整すること。
(2)ハウジングには、貯留室内の圧力を検出する圧力センサを設け、駆動部は、圧力センサで検出された圧力情報に基づいて、コイルに通電する電流を調整すること。
(3)駆動部は、各コイルから磁石板までの距離が、各コイルから磁石板の振動中心までの距離よりも長くなった場合に、コイルへの通電を停止するとともに、このコイルに誘導された電流を検出して磁石板の位置を検出し、コイルに通電する電流を調整すること。
(4)振動板には外周縁に沿ってリング状バルーンを設け、このリング状バルーンを介して振動板をハウジングに装着したこと。
(5)リング状バルーンには、貯留室内の流体の圧力と同じ圧力、または貯留室内の流体の圧力よりも高い圧力で気体または液体を内部に封入していること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、振動板には、一方の側面をN極、他方の側面をS極とした平板状の磁石板を装着し、駆動部は、磁石板の一方の側面に対向させてハウジングに配設した複数のコイルと、磁石板の他方の側面に対向させてハウジングに配設した複数のコイルにそれぞれ通電して、磁石板を進退駆動させることにより振動板を進退駆動させることによって、各コイルの磁力を調整することにより振動板の姿勢を制御することができ、膨出状の撓みを生じさせることなく、振動板を常に安定的に振動させることができる。特に、低駆動時においても高駆動時においても振動板の移動制御を精度よく行うことができ、流体の安定した送給を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のポンプは、一般のダイアフラムポンプと同様に、送給管及び送出管とそれぞれ一方向弁を介して連通して流体を一時的に貯留する貯留室を備えたハウジングと、貯留室に面して配置して進退駆動させることにより送給管から流体を貯留室に吸引した後に送出管に押出する振動体と、この振動体を進退駆動させる駆動部とを備えているものである。
【0014】
特に、本発明のポンプでは、振動板に、一方の側面をN極、他方の側面をS極とした平板状の磁石板を装着するとともに、ハウジングに、磁石板の一方の側面及び他方の側面にそれぞれ対向させた複数のコイルを設けて、これらのコイルへの通電を制御することにより磁石板をリニア駆動して、振動板を進退駆動させているものである。
【0015】
磁石板は、複数のコイルで駆動されることにより、各コイルへの通電を制御することによって磁石板の姿勢を制御することができるので、振動板の姿勢制御が可能となって振動板を常に適正に振動させることができる。
【0016】
さらに、ハウジングには、ホール素子などの磁場を検出するセンサを設けて磁石板の位置を検出し、検出された磁石板の位置の情報に基づいてコイルに通電する電流を駆動部で調整した場合には、振動板の姿勢制御をより精度よく行うことができ、流体の適正な吐出を可能とすることができる。
【0017】
あるいは、ハウジングに、貯留室内の圧力を検出する圧力センサを設け、検出された圧力情報に基づいてコイルに通電する電流を駆動部で調整し、振動板の移動速度を調整した場合には、振動板による流体の吐出制御をより精度よく行うことができ、安定した流体の吐出を可能とすることができる。
【0018】
あるいは、ホール素子などのセンサを設けるのではなく、磁石板の駆動に用いているコイル自体をセンサとして用いることもできる。
【0019】
すなわち、駆動部では、各コイルから振動板における磁石板までの距離が、各コイルから磁石板の振動中心までの距離よりも長くなった場合に、コイルへの通電を停止する一方で、磁石板の移動によってコイルに誘導された電流を検出し、この誘導電流の大きさから磁石板の位置を検出して、コイルに通電する電流を調整してもよい。このようにコイル自体をセンサとして用いることにより、それ以外のセンサを不要としてポンプをできるだけ簡潔な構造とすることができるので、ポンプのメンテナンス性を向上させることができる。
【0020】
なお、本発明のポンプでは、振動板に磁石板を装着しているのでいわゆるダイアフラム部分が高剛性となっている。
【0021】
そこで、振動板には外周縁に沿ってリング状バルーンを設け、このリング状バルーンを介して振動板をハウジングに装着し、リング状バルーンを弾性変形させることにより振動板をスムーズに進退駆動させている。
【0022】
特に、リング状バルーンには、貯留室内の流体の圧力と同じ圧力、または貯留室内の流体の圧力よりも高い圧力で気体または液体を内部に封入していることによって、リング状バルーンの一側面に作用した圧力が全体に分散され、リング状バルーンの弾性変形を阻害されにくくすることができ、振動板を安定的に進退させることができる。
【0023】
リング状バルーンは、その構成材料自体はゴムなどの高弾性の材料で形成することにより、従来のダイアフラムよりも耐久性を向上させることができ、ポンプの長寿命化を図ることができる。
【0024】
なお、リング状バルーンは、内圧によって大きく膨張しない方が望ましく、この条件下でリング状バルーンの肉厚寸法を適宜選択することが望ましい。あるいは、リング状バルーンはゴムなどの弾性材料による単層構造とするだけでなく、異種の弾性材料や、リング状バルーンの膨張を抑制する布などの補強シートを積層させた積層構造としてもよく、さらには、リング状バルーンの表面には流体との反応を抑制するために所要のコーティングを施して保護膜を形成してもよい。
【0025】
また、中空としたバルーンの内圧は、適宜の液体や気体などであらかじめ調整するだけでなく、貯留室内に送給される流体をバルーンの内部に送給可能して、ポンプの駆動にともなってバルーンの内圧を、ポンプによる最大吐出圧と同じ圧力となるようにしてもよい。
【0026】
さらに、リング状バルーンには外周縁に沿って外側方に突出させたフランジを設けるとともに、ハウジングにはフランジと嵌合する嵌合溝を設けて、この嵌合溝とフランジとを嵌合させて振動板をハウジングに装着することにより、リング状バルーンがハウジング内を滑ることによる振動板の位置ズレが生じることを防止できるとともに、振動板のハウジングへの装着作業を極めて容易に行うことができ、ポンプのメンテナンス性を向上させることができる。
【0027】
以下において、図面に基づいて本発明の実施形態を詳説する。図1及び図2は、本実施形態のポンプPの縦断面模式図である。
【0028】
本実施形態のポンプPは、第1ハウジング10と第2ハウジング20とを振動板30を挟んで螺合させることにより、第1ハウジング10と振動板30とで囲まれた第1貯留室11を形成するとともに、第2ハウジング20と振動板30とで囲まれた第2貯留室21を形成している。すなわち、振動板30を挟んで第1貯留室11と第2貯留室21を設けている。
【0029】
第1ハウジング10及び第2ハウジング20は、それぞれ円柱体状とした基体で構成し、第1ハウジング10の一方の端部には雄ネジ部12を形成し、第2ハウジング20の一方の端部には前記雄ネジ部12と螺合する雌ネジ部22を形成している。
【0030】
第1ハウジング10の雄ネジ部12形成側の側面には、第1凹部13を扁平半球形状に形成している。この第1凹部13で形成される空間を第1貯留室11としている。また、第2ハウジング20の雌ネジ部22形成側の側面には、第2凹部23を扁平半球形状に形成している。この第2凹部23で形成される空間を第2貯留室21としている。
【0031】
第1ハウジング10には、円柱体状とした基体の中心軸の近傍に基体を貫通させて形成した第1送給路14と第1送出路15を設け、この第1送給路14の中途部及び第1送出路15の中途部にはそれぞれ一方向弁が装着される一方向弁装着部14a,15aを設け、第1送給路14の一方向弁装着部14aに第1送給用一方向弁14bを装着し、第1送出路15の一方向弁装着部15aに第1送出用一方向弁15bを装着している。第2ハウジング20には、円柱体状とした基体の中心軸の近傍に基体を貫通させて形成した第2送給路24と第2送出路25を設け、この第2送給路24の中途部及び第2送出路25の中途部にはそれぞれ一方向弁が装着される一方向弁装着部24a,25aを設け、第2送給路24の一方向弁装着部24aに第2送給用一方向弁24bを装着し、第2送出路25の一方向弁装着部25aに第2送出用一方向弁25bを装着している。
【0032】
また、第1ハウジング10には、雄ネジ部12形成側の側面とは反対側の側面に、図3に示すように、後述する第1コイルL1、第2コイルL2、第3コイルL3をそれぞれ装着する第1コイル収容凹部h1、第2コイル収容凹部h2、第3コイル収容凹部h3を形成している。同様に、第2ハウジング20には、雌ネジ部22形成側の側面とは反対側の側面に、後述する第4コイルL4、第5コイルL5、第6コイルL6をそれぞれ装着する第4コイル収容凹部h4、第5コイル収容凹部、第6コイル収容凹部を形成している。本実施形態では、図1及び図2に示すように、第1コイル収容凹部h1と第コイル収容4凹部h4とが対向した状態となっているが、第1コイル収容凹部h1と第4コイル収容凹部h4とは必ずしも対向状態となる必要はなく、第1ハウジング10に装着した各コイルL1〜L3と、第2ハウジング20に装着した各コイルL4〜L6とにズレが生じていてもよい。
【0033】
図1〜3に示すように、本実施形態の第1ハウジング10には、第1コイル収容凹部h1、第2コイル収容凹部h2、第3コイル収容凹部h3の各底部にホール素子16を設けている。同様に、第2ハウジング20には、第4コイル収容凹部h4、第5コイル収容凹部、第6コイル収容凹部の各底部にホール素子26を設けている。
【0034】
また、図1及び図2に示すように、本実施形態の第1ハウジング10には、第1凹部13の表面に圧力センサ17を設けている。同様に、第2ハウジング20には、第2凹部23の表面に圧力センサ27を設けている。
【0035】
第1ハウジング10には、第1凹部13の開口端縁に前記振動板30を固定するための第1嵌合用凹部18を設けている。同様に、第2ハウジング20には、第2凹部23の開口端縁に前記振動板30を固定するための第2嵌合用凹部28を設けている。本実施形態では、第1嵌合用凹部18と第2嵌合用凹部28は、第1ハウジング10と第2ハウジング20を螺合した際に断面形状が半円弧形状となるように、断面形状を四分の一円弧形状としている。
【0036】
第1ハウジング10及び第2ハウジング20に設けられた各コイル収容凹部には、それぞれ同一の巻き数とし、外形形状も略一とした第1〜6コイルL1〜L6を装着している。第1〜6コイルL1〜L6は、図4に示すように、それぞれ第1〜6電源回路51〜56に接続され、制御回路50によって第1〜6電源回路51〜56の駆動制御を行うことにより、第1〜6コイルL1〜L6にそれぞれ所要に磁場を生成している。なお、本実施形態では、第1ハウジング10及び第2ハウジング20にそれぞれ3つのコイルを配置しているが、コイルは複数であればいくつであってもよい。
【0037】
制御回路50には、各ホール素子16,26を接続するとともに、各圧力センサ17,27を接続し、これらのセンサの出力結果に基づいて、制御回路50は第1〜6電源回路51〜56を制御している。
【0038】
本実施形態では、制御回路50による制御を簡便とするために、第1〜6コイルL1〜L6をそれぞれ同一の巻き数とし、外形形状も略一としているが、制御回路50によって制御可能であるならば、各コイルの巻き数や外形形状を適宜とすることもできる。また、第1〜6コイルL1〜L6をそれぞれ同一の巻き数とし、外形形状も略一としていることにより、図3に示すように、第1〜3コイルL1〜L3をそれぞれ等距離に、すなわち正三角形の頂点に配置しているが、各コイルの巻き数や外形形状を適宜とした場合には、コイルが生成する磁場に合わせて適宜の配置としてよい。
【0039】
振動板30は、円形のシート体33と、このシート体33の外周縁に沿って設けたリング状バルーン34と、前記シート体33の一方の側面に装着した円板状の第1磁石板31と、前記シート体33の他方の側面に装着した円板状の第2磁石板32とで構成している。シート体33とリング状バルーン34とは一体的に形成している。
【0040】
本実施形態では、シート体33と、第1磁石板31と、第2磁石板32は、略同一な大きさの円形体としており、第1磁石板31と第2磁石板32の間にシート体33を介設している。第1磁石板31と第2磁石板32の間にシート体33を介設したことにより、シート体33によって第1磁石板31及び第2磁石板32に作用した応力が緩和されやすく、比較的脆い第1磁石板31及び第2磁石板32に破損が生じることを抑制できる。
【0041】
第1磁石板31及び第2磁石板32は、一方の側面をN極、他方の側面をS極とした円板状の磁石であり、互いの磁界の向きを合わせてシート体33に装着している。すなわち、第1磁石板31と第2磁石板32は、それぞれ接着剤によってシート体33に貼着されるとともに、第1磁石板31と第2磁石板32の間に作用する引力によって、強固に一体化している。
【0042】
なお、シート体33は、必ずしも第1磁石板31や第2磁石板32と同形となっている必要はなく、貼り合わせた第1磁石板31と、シート体33と、第2磁石板32を流体が通過しなければ、どのような形状であってもよい。
【0043】
また、本実施形態では、第1磁石板31及び第2磁石板32が、第1貯留室11及び第2貯留室21に対して露出した状態となっているが、第1磁石板31及び第2磁石板32の表面にはテフロン(登録商標)などの適宜の樹脂材料などでコーティングを施してもよい。
【0044】
リング状バルーン34は、本実施形態では、シート体33と同材質としたゴム製の中空筒体とし、内部に空気を注入して所定の空気圧状態としている。リング状バルーン34内には、空気を注入する場合だけでなく、たとえば窒素ガスを注入してもよいし、所要の粘性を有する液体を注入してもよい。
【0045】
さらに、リング状バルーン34には、外周縁に沿って外側方に突出させたフランジ35を設けている。このフランジ35は、振動板30をハウジング10に装着するために用いるものであって、第1ハウジング10の第1嵌合用凹部18と、第2ハウジング20の第2嵌合用凹部28とで形成される嵌合用凹部に嵌合させることにより、振動板30を第1ハウジング10と第2ハウジング20の間に安定的に配置可能としている。
【0046】
このように、本実施形態のポンプPは、振動板30を挟んで第1ハウジング10と第2ハウジング20とを螺合して形成し、第1ハウジング10の第1送給路14には、連結ソケット14cを介して第1送給管14dを連結し、第1ハウジング10の第1送出路15には、連結ソケット15cを介して第1送出管15dを連結し、第2ハウジング20の第2送給路24には、連結ソケット24cを介して第2送給管24dを連結し、第2ハウジング20の第2送出路25には、連結ソケット25cを介して第2送出管25dを連結して、第1送給管14dから第1貯留室11に送給された流体を第1送出管15dから送り出し可能とするとともに、第2送給管24dから第2貯留室21に送給された流体を第2送出管25dから送り出し可能としている。
【0047】
振動板30は、第1磁石板31及び第2磁石板32を第1〜6コイルL1〜L6に生じさせた磁場と相互作用させることにより、第1ハウジング10及び第2ハウジング20の中心軸方向に沿って進退駆動し、この振動板30の進退駆動にともなって、第1送給管14dから流体を第1貯留室11に吸引した後に第1送出管15dに押し出し、第2送給管24dから流体を第2貯留室21に吸引した後に第2送出管25dに押し出している。第1送出管15d及び第2送出管25dからは、交互に流体が送り出されている。
【0048】
すなわち、図1の状態において、第1〜3コイルL1〜L3と振動板30の第1磁石板31との間には引力を生じさせるとともに、第4〜6コイルL4〜L6と振動板30の第2磁石板32との間には斥力を生じさせるように制御回路50によって第1〜6電源回路51〜56を制御することにより、振動板30を第1ハウジング10側に移動させている。このとき、振動板30によって第1貯留室11から第1送出管15dに流体を押し出すとともに、第2送給管24dから第2貯留室21に流体を吸引している。
【0049】
次いで、振動板30が移動して図2の状態になると、第1〜3コイルL1〜L3と振動板30の第1磁石板31との間には斥力を生じさせるとともに、第4〜6コイルL4〜L6と振動板30の第2磁石板32との間には引力を生じさせるように制御回路50によって第1〜6電源回路51〜56を制御することにより、振動板30を第2ハウジング20側に移動させている。このとき、振動板30によって第1送給管14dから第1貯留室11に流体を吸引するとともに、第2貯留室21から第2送出管25dに流体を押し出している。
【0050】
このように、第1〜6コイルL1〜L6と、この第1〜6コイルL1〜L6を駆動させている第1〜6電源回路51〜56及びは、本実施形態のポンプPの駆動部となっている。
【0051】
なお、振動板30には、斥力と引力の両方を作用させるのではなく、いずれか一方でもよい。特に、斥力を利用した場合には、各コイルL1〜L6から振動板30が離れるにつれて斥力の作用を弱めることができるので、振動板30を安定的に動作させやすくすることができる。
【0052】
このように、本実施形態のポンプPでは、第1ハウジング10及び第2ハウジング20に複数のコイルL1〜L6を設け、それぞれのコイルL1〜L6に通電することにより磁力を生じさせて振動板30を進退駆動させることにより、各コイルコイルL1〜L6に生じさせる磁力を調整することによって振動板30の姿勢を制御することができ、振動板30を常に安定的に振動させることができる。
【0053】
特に、制御回路50は、各コイルL1〜L6に略正弦波形の電流を通電させて振動板30を単に正弦振動させるのではなく、例えば振動板30が振動方向に対して傾斜姿勢となった場合には、振動板30の傾斜姿勢に応じて制御回路50によって第1〜3コイルL1〜L3及び第4〜6コイルL4〜L6に生じさせる磁力をそれぞれ調整して、振動板30の傾斜姿勢を正すことができ、正常な振動状態とさせることができる。
【0054】
したがって、振動板30が振動方向に対して傾斜姿勢となったまま振動することにより、振動板30に進退方向以外の振動があらわれて、振動板30の振動状態が不安定となり、最悪の場合、振動板30が第1ハウジング10または第2ハウジング20に接触することによって、振動板30や、第1ハウジング10または第2ハウジング20に破損を生じることを抑制できる。
【0055】
なお、振動板30が振動方向に対して傾斜姿勢となっていることは、第1ハウジング10及び第2ハウジング20に振動板30の第1磁石板31または第2磁石板32の位置を検出するセンサを複数設けることにより容易に検出できる。
【0056】
本実施形態では、センサはホール素子16,26としており、各コイル収容凹部内にそれぞれ配設されており、制御回路50にそれぞれ接続することにより、制御回路50は各ホール素子16,26から振動板30までの距離をそれぞれ検出することができ、この距離のデータから振動板30の姿勢を検出することができる。
【0057】
あるいは、ホール素子16,26を用いるのではなく、各コイルL1〜L6をセンサとして用いることもできる。すなわち、例えば、コイルL1〜L6と振動板30との間に斥力を作用させることにより振動板30を進退駆動させている場合に、コイルL1〜L6から振動板30までの距離が、コイルL1〜L6から振動板30の振動中心までの距離よりも長くなったところで、制御回路50はコイルL1〜L6への通電を停止する。
【0058】
さらに、制御回路50は振動板30の移動にともなってコイルL1〜L6に誘導された電流を検出する。そして、制御回路50は、この誘電された電流の大きさから振動板30までの距離を推定することにより振動板30の姿勢を検出することができる。
【0059】
制御回路50は、検出された振動板30から各コイルL1〜L6までの距離に応じて、各コイルL1〜L6に通電する電流量を調整して誘導する磁力を調整し、振動板30の姿勢を補正している。なお、振動板30の位置ではなく、振動板30の位置の変動量から振動板30の速度を算出して、所定の速度以下となるように各コイルL1〜L6に通電する電流量を調整することもできる。
【0060】
このように、振動板30に装着されている第1磁石板31及び第2磁石板32の磁力を利用して振動板30までの距離を複数の箇所で検出することにより、振動方向に対する振動板30の姿勢を検出することができ、姿勢を補正できるので、振動板30を常に適正に振動させることができるポンプを提供できる。
【0061】
特に、振動板30にはリング状バルーン34を設け、このリング状バルーン34を介して振動板30を第1ハウジング10と第2ハウジング20に装着していることにより、振動板30の姿勢が不安定となりやすく、しかも、振動板30には比較的大きな重量を有する第1磁石板31及び第2磁石板32を装着していることにより重力の影響を受けやすくなっているので、振動板30が傾斜姿勢となりやすくなっているが、各コイルL1〜L6で生成した磁力で振動板30を進退駆動させるとともに、姿勢制御することにより、振動板30を常に適正に振動させることができる。
【0062】
しかも、リング状バルーン34を介して振動板30を第1ハウジング10と第2ハウジング20に装着していることにより、振動板30の振幅を従来のダイアフラムポンプよりも大きくすることができ、吐出量を増大させることができる。そのうえ、振動板30を磁気駆動させることにより、振動板30の移動速度を向上させることができるので、高吐出圧とすることができる。
【0063】
特に、リング状バルーン34には、第1貯留室11内及び第2貯留室21内の流体の圧力と同じ圧力、または第1貯留室11内及び第2貯留室21内の流体の圧力よりも高い圧力で気体または液体を内部に封入することにより、第1貯留室11内の圧力及び第2貯留室21内の圧力によってリング状バルーン34の弾性変形が阻害されて振動板30のスムーズな振動駆動が阻害されることを防止できる。
【0064】
あるいは、リング状バルーン34は、中空として内部に基体や液体の封入するのではなく、適宜の弾性体で形成してもよい。
【0065】
また、上記したように、制御回路50によって振動板30を振動駆動させる際に、適宜のセンサで振動板30の位置を検出するのではなく、第1貯留室11内及び第2貯留室21内に設けた圧力センサ17,27で第1貯留室11内及び第2貯留室21内の圧力を検出し、第1送出路15及び第2送出路25から送り出される流体の圧力を一定としてもよい。
【0066】
すなわち、第1送出路15及び第2送出路25から送り出される流体の圧力が所定値となった以降では、制御回路50で各コイルL1〜L6に通電する電流を調整して各コイルL1〜L6の磁力を調整することにより、振動板30を一定速度で移動させることができる。なお、吐出圧力は、圧力センサ17,27で検出する場合だけでなく、振動板30の位置の変動量から算出することもでき、例えば無負荷で振動板30を振動駆動させた場合に、振動板30の速度が大きくなりすぎる場合には、各コイルL1〜L6に通電する電流を調整して振動板30を所定速度で移動させることにより、振動板30に損傷が生じることを抑制してもよい。
【0067】
このように、振動板30の移動速度を調整することにより、吐出される流体の圧力を一定とすることができ、一般的なダイアフラムよりも吐出圧の変動を少なくすることができるとともに、脈動の低減を図ることができる。
【0068】
上述した実施形態では、ポンプPにホール素子16,26と圧力センサ17,27とを設けているが、いずれか一方だけを配設してもよいし、あるいはホール素子16,26と圧力センサ17,27を設けずに、各コイルL1〜L6をセンサとして用いてもよい。なお、各コイルL1〜L6は、空芯であっても、鉄心入りであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係るポンプの断面概略模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るポンプの断面概略模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係るポンプの側面概略模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係るポンプの駆動部の説明図である。
【符号の説明】
【0070】
P ポンプ
10 第1ハウジング
11 第1貯留室
12 雄ネジ部
13 第1凹部
14 第1送給路
14a 一方向弁装着部
14b 第1送給用一方向弁
14c 連結ソケット
14d 第1送給管
15 第1送出路
15a 一方向弁装着部
15b 第1送出用一方向弁
15c 連結ソケット
15d 第1送出管
16 ホール素子
17 圧力センサ
18 第1嵌合用凹部
20 第2ハウジング
21 第2貯留室
22 雌ネジ部
23 第2凹部
24 第2送給路
24a 一方向弁装着部
24b 第2送給用一方向弁
24c 連結ソケット
24d 第2送給管
25 第2送出路
25a 一方向弁装着部
25b 第2送出用一方向弁
25c 連結ソケット
25d 第2送出管
26 ホール素子
27 圧力センサ
28 第2嵌合用凹部
30 振動板
31 第1磁石板
32 第2磁石板
33 シート体
34 リング状バルーン
35 フランジ
L1 第1コイル
L2 第2コイル
L3 第3コイル
L4 第4コイル
L5 第5コイル
L6 第6コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を一時的に貯留する貯留室を備えたハウジングと、
前記貯留室と一方向弁を介して連通連結して前記貯留室に流体を送給する送給管と、
前記貯留室と一方向弁を介して連通連結して前記貯留室から押し出された流体を下流側に送出する送出管と、
前記貯留室に面して配置して進退駆動させることにより前記送給管から前記流体を前記貯留室に吸引した後に前記送出管に押し出す振動板と、
この振動板を進退駆動させる駆動部と
を備えたポンプにおいて、
前記振動板には、一方の側面をN極、他方の側面をS極とした平板状の磁石板を装着し、
前記駆動部は、前記磁石板の一方の側面に対向させて前記ハウジングに配設した複数のコイルと、前記磁石板の他方の側面に対向させて前記ハウジングに配設した複数のコイルにそれぞれ通電して、前記磁石板を進退駆動させることにより前記振動板を進退駆動させていることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記磁石板の位置を検出するセンサを設け、
前記駆動部は、前記センサで検出された前記磁石板の位置の情報に基づいて、前記コイルに通電する電流を調整することを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記ハウジングには、前記貯留室内の圧力を検出する圧力センサを設け、
前記駆動部は、前記圧力センサで検出された圧力情報に基づいて、前記コイルに通電する電流を調整することを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項4】
前記駆動部は、前記の各コイルから前記磁石板までの距離が、前記の各コイルから前記磁石板の振動中心までの距離よりも長くなった場合に、前記コイルへの通電を停止するとともに、このコイルに誘導された電流を検出して前記磁石板の位置を検出し、前記コイルに通電する電流を調整することを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項5】
前記振動板には外周縁に沿ってリング状バルーンを設け、このリング状バルーンを介して前記振動板を前記ハウジングに装着したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項6】
前記リング状バルーンには、前記貯留室内の前記流体の圧力と同じ圧力、または前記貯留室内の前記流体の圧力よりも高い圧力で気体または液体を内部に封入していることを特徴とする請求項5に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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