説明

ポンプ

【課題】補助磁極部の付設に伴うギャップの増加を抑えて、モールド成形時の射出圧によるステータの軸心傾きや軸心ずれ及び補助磁極部の変形を抑制したポンプを提供する。
【解決手段】この課題を解決するために、モータ17と、モータ17によって回転し流体を流動させる羽根車16と、羽根車16を収納したポンプ室11を形成するポンプケース13及び分離板2と、を備えたポンプにおいて、モータ17が、ステータ5とこのステータ5により回転駆動され羽根車16を回転させるロータ4とを備え、ステータ5が、ロータ4に正対する磁極部63を備えると共に、磁極部63の軸方向Axにおける両端に、軸方向Axに突出した補助磁極部7を設け、分離板2がステータ5とロータ4の間に周面が介在する円筒部21を備え、円筒部21の円筒外周面21aに、磁極部63と補助磁極部7のうち磁極部63のみに当接する突起部25を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポンプとして、駆動源となるモータと、モータに回転駆動される羽根車と、ポンプ室を形成するポンプケース及び分離板とを備えたものがある。この種のポンプは内部が分離板によって、流体が流動するポンプ室と、流体から隔離されたモータ部とに区画される。ポンプ室は外殻がポンプケースによって形成されており、内部には羽根車とモータのロータとが配置される。モータ部は内部にモータのステータが配置されると共に、モールド樹脂が充填されており、モールド樹脂はステータを分離板に固定すると共に、モータ部側の外殻を形成している。
【0003】
ところで、分離板を樹脂成型で形成する場合、分離板のロータとステータとの間に配置される円筒部に、分離板を離型するための抜きテーパが設けられる。そして、この抜きテーパを設けたことで、ステータと円筒部の間に隙間(クリアランス)を生じる。そのため、モータ部の外殻をモールド樹脂で形成したものでは、モールド成形時の圧力(射出圧)によってステータが上記クリアランス内で移動し易くなる。そして、ステータが移動すると、ステータの軸心傾きや軸心ずれ等を生じて、電磁力のバランスが安定し難くなったり、性能にバラツキを生じたりし易くなる。
【0004】
そこで、特許文献1に示すポンプのように、円筒部の軸方向の略全長に亘るリブを円筒部の外周面に設け、この突起部をステータ内周面に当接することで、モールド成形時の射出圧によるステータの位置ずれを抑制したものがある。
【0005】
また、このようなポンプの駆動源となるブラシレスモータには、特許文献2に示すように、ティース部に形成したT字状歯部の上下両面に、側面視でL字状に折曲形成した収束片を取り付けたものがある。このモータでは、ロータ(ロータマグネット)から導かれる磁束を収束片で集めると共に、集めた磁束をT字状歯部に合流させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−284704号公報
【特許文献2】特開平09−285044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に示すようなモータを、特許文献1に示すようなポンプの駆動源に用いて、ステータ内周面(T字状歯部の内周面)と収束片とに突起を当接した場合、ステータとロータとの径方向における距離(ギャップ)が増大し易くなる。そして、収束片に突起を当接した場合、モールド成形時に、射出圧によって収束片が変形し易くなり、収束片のT字状歯部との接触部位に隙間を生じたり、T字状歯部から剥がれたりすることがある。そして、収束片が接触部位に隙間を生じたり離れたりすると、収束片とロータとのギャップが不均一になり、電磁力のバランスが不安定になったり、ポンプ性能にバラツキを生じたりする。
【0008】
そこで、この事情を鑑み、補助磁極部の付設に伴うギャップの増加を抑えて、モールド成形時の射出圧によるステータの軸心傾きや軸心ずれ及び補助磁極部の変形を抑制したポンプを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のポンプは、モータと、このモータによって回転されて流体を流動させる羽根車と、前記羽根車を収納したポンプ室を形成するポンプケース及び分離板とを備え、前記モータが、ステータと、このステータにより回転駆動され前記羽根車を回転させるロータとを備え、前記ロータが回転方向に沿った外周面を有し、前記ステータが前記外周面に正対する磁極部を有し、前記ロータの回転軸心を基準として、前記磁極部の軸方向における両端に、前記磁極部から軸方向に突出する補助磁極部を設け、前記分離板が前記ロータと前記ステータとの正対する間に介在する円筒部を備え、前記円筒部の前記磁極部に正対する円筒外周面に、前記磁極部と前記補助磁極部のうち前記磁極部のみに当接する突起部を設けたことを特徴とする。
【0010】
このポンプとして、前記補助磁極部の内周面が、前記磁極部の内周面より径外方向にオフセットして位置することが好ましい。
【0011】
このポンプとして、前記ロータが円周方向に並ぶ複数のマグネットを有し、前記マグネットの外周面の前記磁極部に正対する箇所を通る円周上に、前記磁極部の軸方向における寸法と同寸で軸方向に幅を有し径内方向に凹んだ溝部を設けたことが好ましい。
【0012】
このポンプとして、前記円筒部が前記円筒外周面に離型用の抜きテーパを有し、前記突起部が径外方向を向く外面に、前記円筒外周面の前記抜きテーパに比べて小さいテーパを有することが好ましい。
【0013】
このポンプとして、前記分離板が、円筒部の一端に底部を備え、前記突起部の前記底部側の端部に、前記底部に向かって勾配を有した傾斜面を設けたことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
このような構成としたことで、補助磁極部の付設に伴うギャップの増加を抑えて、モールド成形時の射出圧によるステータの軸心傾きや軸心ずれ及び補助磁極部の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のポンプの断面図である。
【図2】分離板の斜視図である。
【図3】図1の領域Aの拡大図である。
【図4】オフセット寸法の説明図である。
【図5】分離板の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を例示して説明する。
【0017】
〈第1実施形態〉
実施形態の一例のポンプ1は、図1に示すように、駆動源であるモータ17と、該モータ17に駆動される羽根車16と、モータ17の回転駆動を制御する制御部15とを備える。そして、ポンプ1は、流体を流動させるポンプ室11と、ポンプ室11内の流体から隔離されたモータ部12とに区画される。モータ部12はモータ17の構成部材の一部(詳細は後述する)と制御部15とが配置されると共に、モールド樹脂でモールドして外殻を形成してある。
【0018】
モールド樹脂は、電気絶縁性を有した熱硬化性樹脂となっており、モールド部12aはこの熱硬化性樹脂を硬化させて構成される。そして、モールド樹脂は、空気に比べて高い熱伝導性を有するものであれば、モータ部12内で生じた熱を外気やポンプ室11内の流体等のモータ部12の外部に伝達して放出する放熱手段を兼ねることができ好ましい。
【0019】
ポンプ室11は、ポンプ室11とモータ部12とを区画する分離板2と、ポンプ1のポンプ室11側の外殻を形成するポンプケース13とで主体が構成される。そして、ポンプ室11は内部に空間を有しており、この空間に羽根車16が配置される。
【0020】
ポンプケース13は、円筒状の側壁と、側壁の円筒の一端側を覆う略円状の天面部とで主体が構成される。そして、天面部の略中心には、ポンプ室11内に流体を吸入する吸入部14が設けてあり、側壁には、ポンプ室11内の流体を外部に吐出する吐出部(図示せず)が設けてある。
【0021】
羽根車16は、円盤状のシュラウドで主体が構成され、シュラウドには、流体を流動させるための羽根が設けてある。そして、モータ17の回転駆動によって、シュラウドの円周方向に沿って回転する。羽根車16は、回転時に、吸入部14を介してポンプ室11内に流体を吸い込むと共に、ポンプ室11内の流体に遠心力を加えて吐出部を介してポンプ室11外に吐出する。そのため、本実施形態のポンプ1は、モータ17を駆動源とし、羽根車16の回転によって、流体を回転中心側から径外方向に流動させる、所謂渦巻ポンプとなっている。
【0022】
分離板2は、図2に示すように、円筒部21と、円筒部21の一方の端部を閉塞する底部22と、円筒部21の開口側の端部に径外方向に延長して設けられたフランジ部23とで構成される。フランジ部23は環状で、図1に示すように、天面部に対向して面を有すると共に、その間には羽根車16が回転自在に配置される。円筒部21は、筒の内周側がポンプ室11内となり、外周側がモータ部12となり、円筒部21はモータ17の導電部材及び制御部15をポンプ室11内(流体)から保護している。底部22は軸方向Axに視て円形状の板状となっており、円の略中心に支持軸3(詳細は後述する)が取り付けてある。
【0023】
モータ17は、図1に示すように、ロータ4と、ステータ5と、支持軸3とで主体が構成される。そして、モータ17は、ロータ4及び支持軸3が円筒部21の内周側(ポンプ室11内)に配置され、ステータ5がモータ17の導電部材として円筒部21の外周側(モータ部12)に配置される。
【0024】
ロータ4は略円筒状に形成され、軸方向Axの一端にシュラウドが略同心で且つ一体に設けてある。そして、ロータ4は複数のマグネット41を有しており、この複数のマグネット41は円周方向において並んで配置されると共に、ロータ4の円筒形状の外周面4aを形成している。また、ロータ4は内周側に略同心で支持軸3が配置されており、ロータ4は支持軸3を回転中心としてステータ5に回転駆動される。
【0025】
支持軸3は、軸周りに回転自在で軸受31が取り付けてあり、この軸受31を介してロータ4を軸回りに回転自在で支持している。そして、支持軸3は、軸方向Axにおける一方の端部が、ポンプケース13に設けられた第1取付部13aに固定され、他方の端部が、底部22に設けられた第2取付部に固定される。以下の説明において、特に規定した場合を除き、ロータ4の軸方向Axを単に軸方向Axとして方向の基準とする。
【0026】
ステータ5は、磁性を有する金属材料で形成されたコア51と、コア51に励磁用の導線を巻回したコイル52と、コア51とコイル52とを電気的に絶縁する絶縁部53とを備える。
【0027】
コア51は、ロータ4と略同心で配置される環状部61と、環状部61の内周面から径内方向(ロータ4側)に突出したティース62と、ティース62のロータ4側の端部に形成された磁極部63とで主体が構成される。そして、コア51は、環状部61とティース62と磁極部63とを一体で形成する板状部材(第1板状部材8a)を軸方向Axに積層して形成される。
【0028】
ティース62は環状部61から径内方向に突出して角柱状に形成されると共に、円周方向に略等間隔で並んだ、所謂放射状で、環状部61に複数(本実施形態では六つ)設けてある。そして、ティース62は、突出方向(径内方向)に沿った角柱の側面に、銅線が絶縁部53を介して巻回されて、角柱の外側にコイル52が形成されている。また、ティース62はロータ4側の端部である突出先端がコイル52より径内方向に突出しており、この突出先端が磁極部63となっている。
【0029】
磁極部63は、ティース62に比べて円周方向における寸法が長く、軸方向Axに視て円弧状となっており、当該円弧がロータ4と略同心で、円弧の内周面63aが、径内方向に円筒部21を介してロータ4の外周面4aに正対する。そして、磁極部63は、軸方向Axにおける寸法が環状部61及びティース62の軸方向Axにおける寸法と略同じ寸法(同寸)となっている。
【0030】
また、磁極部63は軸方向Axにおける両端に補助磁極部7が設けてある。補助磁極部7は、軸方向Axに沿って磁極部63から離れる向きで、磁極部63の軸方向Axにおける端部に延長して設けた補助磁極片71で主体が構成される。
【0031】
補助磁極片71は、軸方向Axに視て磁極部63と略同心の円弧形状となっており、ステータ5のコイル52を設けた部位より径内方向側(ロータ4側)に配置される。そして、補助磁極片71は円弧の内周面71aが、磁極部63の内周面63aに比べて径外方向にオフセットして設けてあり、ロータ4の外周面4aに正対している。そのため、磁極部63及び補助磁極部7の内周面63a,Rはステータ5の磁極面5aとなっており、ステータ5は磁極部63の軸方向Axにおける寸法を抑えて、マグネット41に正対する磁極面5aを広げた構成となっている。
【0032】
更に、補助磁極片71は、円弧形状の板状部材(第2板状部材8b)を軸方向Axに積層して形成される。そして、補助磁極片71は各々、軸方向Axにおける磁極部63側の端部(第2板状部材8bの板面)を磁極部63の軸方向Axにおける端部(第1板状部材8aの板面)に当接して、磁極部63の上記端部に取り付けられる。また、補助磁極片71は、磁極部63の軸方向Axにおける一方の端部(フランジ部23側)に設けた第1磁極片72aと、磁極部63の軸方向Axにおける反対側の端部(底部22側)に設けた第2磁極片72bとに区別される。
【0033】
絶縁部53は、コア51の外面及び補助磁極部7の外周面を覆い、コア51及び補助磁極部7をコイル52から絶縁している。具体的には、絶縁部53は、磁極部63の外周面と、ティース62の巻線を巻回す外面と、環状部61の外周面の一部及び内周面及び軸方向Axの端面と、補助磁極部7の外周面及び延長先端の面とを覆っている。そのため、絶縁部53は、ティース62巻き回される導線からコア51及び補助磁極部7を絶縁している。
【0034】
そして、絶縁部53は、環状部61の軸方向Axを向く一方の端面を覆う部位に、軸方向Axにおいてフランジ部23側に突出した第1脚部53aを有する。ステータ5は第1脚部53aの突出先端をフランジ部23に当接することで、軸方向Axにおいてモータ部12内に位置規定される。また、絶縁部53は環状部61の反対側の端面を覆う部位に、第1脚部53aと反対向きに突出した第2脚部53bを有する。そして、第2脚部53bは取り付けられた端子ピン53cを介して、制御部15を軸方向Axにおいて位置規定すると共に、制御部15とコイル52と導通させている。
【0035】
更に、絶縁部53の補助磁極部7を覆う部位は、補助磁極部7の外周面を外周側から覆う立ち上がり部54aと、補助磁極部7の軸方向Axにおける延長先端を軸方向Axにおいて覆う径内突出片54bとで主体が構成される。立ち上がり部54aは軸方向Axに沿ってティース62から離れる向きで立ち上がっており、径内突出片54bは立ち上がり部54aの軸方向Axにおける立ち上がりの先端から径内方向に突出して形成される。そして、絶縁部53は、この立ち上がり部54a及び径内突出片54bで、コイル52形成時(巻線巻き回し時)やモールド成形時の圧力が、直接補助磁極部7の外周面や延長先端にかかり難くして、補助磁極部7を保護している。そのため、補助磁極部7は、コイル52形成時(巻線巻き回し時)やモールド成形時に、径内方向や軸方向Axへの変形が抑制されている。
【0036】
ところで、本実施形態における分離板2は、樹脂成型で形成した樹脂成型品となっており、図3に示すように、樹脂成型時に、成形型から分離板2を取り外す(離型する)ための抜きテーパ(図中のT2参照)が円筒部21に設けてある。そして、この抜きテーパは、例えば0.5〜1.0程度となっている。そのため、分離板2はこの抜きテーパによって、円筒部21は外径がフランジ部23側の端部で最も大きく、底部22側に向かう程小さくなるよう円筒部21の外周面(円筒外周面21a)が傾斜している。
【0037】
そして、円筒外周面21aには、図2に示すように、フランジ部23側の端部から底部22側の端部に至って突条部24が複数(本実施形態では磁極部63と同数の六つ)設けてあり、突条部24は略等間隔で円周方向に並んで位置する。突条部24は抜きテーパと略同じテーパで、円筒外周面21aから径外方向に突出して形成されている。
【0038】
そのため、突条部24は円筒外周面21aから径外方向への突出量が底部22側程大きくなっており、径外方向を向く外面が軸方向Axと略平行に位置する。また、突条部24は円周方向に並ぶ磁極部63の間に位置しており、突条部24の円周方向を向く側面に、磁極部63の円周方向における端部が当接される。そのため、突条部24は磁極部63を円周方向に位置規定して、モールド成形時等での磁極部63(コア51)の円周方向への移動を抑制している。
【0039】
更に、円筒外周面21aは、突条部24の円周方向における間の略中央に各々、径外方向に突出した突起部25が設けてある。この突起部25は、円周方向に略等間隔で複数(磁極部63と同数)形成されており、突出方向に沿った径方向に視て平面視矩形状となっている。
【0040】
そして、突起部25は、図3に示すように、磁極部63に正対し、この磁極部63と軸方向Axにおいて略同じ高さに位置する。更に、突起部25は、突条部24の間の略中央に位置するため、正対する磁極部63を形成するティース62と、径方向に並んで位置する。
【0041】
また、突起部25は磁極部63の円弧の略中央で磁極部63に当接されており、補助磁極部7には接触していない。そして、突起部25は磁極部63のみに当接することで、分離板2にステータ5を取り付ける際にコア51(ステータ5)を径方向に位置規定し、モールド成形時にはコア51の径内方向への移動を抑制する。
【0042】
そして、突起部25は径外方向を向く外面25a(磁極部63との当接面)が、抜きテーパに比べて小さい、例えば0.2程度のテーパ(図3中のT2参照)を有する。この外面25aはフランジ部23側が円筒外周面21aと連続しており、外面25aはフランジ部23側の端辺と円筒外周面21aとの軸方向Axにおける境界に段差が無い形状(軸方向Axを向く端面が無い形状)となっている。更に、突起部25は底部22側に端面(円筒外周面21aとの段差)を有し、この端面は底部22側に向かう程径内方向に近づく勾配を有した傾斜面25bとなっている。
【0043】
また、ロータ4は、マグネット41で主体が形成された外周面4aに、径内方向に凹んだ溝部42が設けてあり、溝部42は円周方向に沿って環状に形成される。そして、溝部42は、直径方向に切断した断面形状が矩形状となっており、軸方向Axにおける寸法(軸方向Ax幅)が、磁極部63の軸方向Ax幅と略同寸となっている。更に、溝部42は軸方向Axにおける高さ位置が、磁極部63の高さ位置と略同じ高さに位置し、溝部42の径外方向を向く底面42aが、磁極部63の内周面63aと正対しており、溝部42は外周面4aの磁極部63に正対する箇所を通る円周上に設けてある。
【0044】
そして、溝部42は径方向におけるロータ4の外周面4aから底面42aまでの寸法(深さL2)が、図3に示すように、径方向における磁極部63の内周面63aから補助磁極部7の内周面71aまで寸法(オフセット寸法L1)と略同じ寸法となっている。そのため、溝部42の底面42aからこの底面42aに正対する磁極部63の内周面63aまでの距離と、ロータ4の外周面4aにおける底面42a以外の部位からこの部位に正対する補助磁極部7の内周面71aまでの距離とが略等しくなっている。
【0045】
以上のように、本実施形態のポンプ1は、突起部25を設けたことで、第1磁極片72aを円筒外周面21aに接触し難くすることができ、モールド成形時に、円筒外周面21aに接触するが故の第1磁極片72aの変形を生じ難くすることができる。そして、補助磁極部7の内周面71aを磁極部63の内周面63aに対して径外方向にオフセットして配置したことで、第1磁極片72aの内周面71aと円筒外周面21aとのクリアランスを小さく抑え易くすることができる。そのため、磁極面5aとロータ4の外周面4aとのギャップを小さく抑え易くすることができ、補助磁極部7用のクリアランス確保(ギャップの増加)に伴うモータ効率の低下を抑制し易くすることができる。
【0046】
更に、マグネット41の磁極面5aに正対する面の磁極部63に正対する箇所を通る円周上に、オフセット寸法L1と略同寸の深さL2の溝部42を設けたことで、磁極部63とのギャップ及び補助磁極部7とのギャップを略同じ寸法にすることができる。そのため、オフセットした補助磁極部7を有するステータ5の磁極面5aとマグネット41とのギャップに不均一を生じ難くすることができ、電磁力バランスの悪化を抑制し易くなると共に、モータ性能(ポンプ性能)のバラツキを生じ難くすることができる。
【0047】
また、突起部25が外面25aに抜きテーパに比べて小さいテーパを有したことで、突起部25の付設に伴う離型性の低下を抑制して、分離板2の成形性を良くすると共に、分離板2取付時のステータ5の軸心傾きや軸心ずれを生じ難くすることができる。そして、突起部25の底部22側に傾斜面25bを設けたことで、ポンプの組立時に、この傾斜面25b(勾配)によってステータ5をガイドして分離板2に取り付けることができる。そのため、取付時の作業性を向上させ易くすることができると共に、ステータ5の軸心傾きや軸心ずれ等を生じ難くすることができる。
【0048】
更に、突起部25のフランジ部23側と円筒外周面21aとの間に段差を無くしたことで、磁極面5aとロータ4の外周面4aとのギャップを小さく抑え易くなり、補助磁極部7用のクリアランス確保に伴うモータ効率の低下を、抑制し易くすることができる。そして、段差を無くしたことで、分離板2の離型時に突起部25が成形型に引っ掛かり難い形状となり、分離板2成形時に、分離板2の成形と併せて突起部25を形成することができる。
【0049】
なお、オフセット寸法L1は、図4に示すように、以下の式1を満たすものが好ましい。
式1: L1≧(L3+DT1)×tan(T1)
この式1は、円筒外周面21aと磁極部63内周面63aとの間で規定されるテーパである抜きテーパをT2とし、第1磁極片72aの軸方向Axにおける寸法をL3とし、補助磁極片71の軸方向Axにおける寸法公差を±DT1とした場合の条件式となっている。
【0050】
また、渦巻ポンプにおいて、溝部42は、羽根車16回転時に、流体の流動に伴うポンプ室11内の圧力変動によって、羽根車16(ロータ4)が軸方向Axにおいて吸入部14側に移動した際に、磁極部63と径方向に並んで正対することが好ましい。この羽根車16が吸入部14側に移動した状態とは、図1に示すように、軸受31の軸方向Axにおける羽根車16側の端部が、支持軸3に固定された受け板32に接触した状態となっており、ポンプ1はこの状態で仕事(流体の流動)を行う。そして、このものでは、流体流動時に、上記移動した状態になることで、磁極部63の内周面63aの略全体が溝部42の底面42aに正対し、磁極面5aとマグネット41とのギャップが略均一になる。そのため、ポンプ1が仕事を行う際(流体流動時)に、電磁力のバランスが不安定になり難くすることができると共に、ポンプ性能にバラツキが生じ難くすることができる。
【0051】
また、分離板2形成後に円筒部21を切削する或いは突起部25を別部材で設ける等で、図5に示すように、突起部25のフランジ部23側にも段差(端面)を設けてもよい。このものでは、突起部25を磁極部63のみに当接した際に、補助磁極部7と円筒外周面21aとの間にクリアランスを形成し易くなり、磁極部63の内周面63aと補助磁極部7の内周面71aを略面一に配置することができる。更に、内周面63a,71aを略面一としたことで、磁極面5aとロータ4とのギャップを略均一にするにあたって、溝部42の無いマグネット41(ロータ4)を用いることができる。
【0052】
また、抜きテーパや突起部25のテーパ等の数値は、単なる例示であり、この数値のみに限らない。また、ポンプ1は、第1実施形態のような渦巻ポンプに限らず、渦流ポンプであってもよいのはもちろん、遠心ポンプに限らず、軸方向Axに流体を流動させる軸流ポンプ等であってもよく、これら例示の構成のみに限らない。
【符号の説明】
【0053】
1 ポンプ
11 ポンプ室
13 ポンプケース
17 モータ
16 羽根車
2 分離板
21 円筒部
21a 円筒外周面
25 突起部
4 ロータ
4a 外周面
5 ステータ
63 磁極部
7 補助磁極部
Ax 軸方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、このモータによって回転されて流体を流動させる羽根車と、前記羽根車を収納したポンプ室を形成するポンプケース及び分離板とを備え、
前記モータが、ステータと、このステータにより回転駆動され前記羽根車を回転させるロータとを備え、
前記ロータが回転方向に沿った外周面を有し、
前記ステータが前記外周面に正対する磁極部を有し、
前記ロータの回転軸心を基準として、
前記磁極部の軸方向における両端に、前記磁極部から軸方向に突出する補助磁極部を設け、
前記分離板が前記ロータと前記ステータとの正対する間に介在する円筒部を備え、
前記円筒部の前記磁極部に正対する円筒外周面に、前記磁極部と前記補助磁極部のうち前記磁極部のみに当接する突起部を設けた
ことを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記補助磁極部の内周面が、前記磁極部の内周面より径外方向にオフセットして位置する
ことを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記ロータが円周方向に並ぶ複数のマグネットを有し、
前記マグネットの外周面の前記磁極部に正対する箇所を通る円周上に、前記磁極部の軸方向における寸法と同寸で軸方向に幅を有し径内方向に凹んだ溝部を設けた
ことを特徴とする請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記円筒部が前記円筒外周面に離型用の抜きテーパを有し、
前記突起部が径外方向を向く外面に、前記円筒外周面の前記抜きテーパに比べて小さいテーパを有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項5】
前記分離板が、円筒部の一端に底部を備え、
前記突起部の前記底部側の端部に、前記底部に向かって勾配を有した傾斜面を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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