説明

ポータル

検知器を備えるポータルまたはゲートウェイであって、前記検知器は:チャープレーザと;オープン光学試料セルと、セルを透過したチャープレーザからの光を検出するための検出器とを備える。チャープレーザは量子カスケードレーザであっても構わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質検出、具体的には、危険物または有害物の検出に利用されるポータルまたはゲートウェイに関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティは、例えば空港など多くの環境において、ますます大きな課題になっている。テロリズムの脅威が高まる中で、潜在的危険物、特に、空港のセキュリティゲートを通して持ち込まれる危険物の検出がますます重要になってきている。実際、多くの場合、物質の痕跡程度しか存在しないため、既存システムの大半の検出感度ではこうした低レベルを感知できない。
【0003】
空港環境における危険物検出のための周知のシステムとして、イオン移動度分光分析(IMS)を使用している。典型的に、セキュリティゲートであるサンプル領域から粒子を収集し、空気流またはサンプルラインを通じて、試料収集室に輸送する。所定の濃度の試料を収集するまでこれを行う。所定濃度の試料を得たら、気相に達するまで粒子を加熱し、続いてイオン化することで、2個の帯電板の飛行時間測定により質量を判断できる。分子量は、収集した粒子の正体を示唆する。
【0004】
IMSの課題は、多数の異なる分子が類似の質量を有するため、偽陽性や偽陰性の誤検出を起こしやすい。別の課題は、粒子を収集するサンプル領域が相対的に制限されるため、関心のある粒子の可能性を捕え損なうことが懸念される。さらに、サンプルを予め凝縮、加熱、イオン化する必要があり、測定反応時間は、典型的に数十秒程度となる。これは、保安用途としては、遅過ぎる。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、チャープレーザと;オープン光学試料セルと;セルを透過したチャープレーザからの光を、好ましくは複数回、検出するための検出器と、を備えるガス検知器を具備して成るポータルまたはゲートウェイを提供する。好ましくは、オープン光学試料セルは、非共鳴セルである。
【0006】
オープン光学試料セルは、実質的に、ポータルの全長に沿って伸長可能である。オープン光学試料セルの長さは、1メートルを超え、理想的には1.5メートルより長くて構わない。
【0007】
波長チャープ自身によって生じる波長変動を利用して、波長走査を行う。従って、例えば、パルス列に重ね合わさる緩やかな直流電流ランプなどの使用によってスペクトル領域を横切る有効発光線幅を調整する必要がない。これは、サンプリングレートが高く、完全スペクトル解析をすばやく実行できることを意味する。高速チャープの使用は、乱流効果と振動騒音を克服できることを意味する。これは有意に好都合である。
【0008】
チャープレーザは、例えば、半導体ダイオードレーザなどの半導体レーザであっても構わない。半導体ダイオードレーザに1個または一連の実質的段階関数電気パルスを適用することで、光学セルに注入するための1個または複数のパルス出力をレーザに生じさせて、チャープ光を生成する。このとき各パルスは連続波長チャープを有する。レーザは量子カスケードレーザであっても構わない。
【0009】
各々の適用パルスの持続時間は、150nsより長く、具体的には、200nsより長い。各適用パルスの持続時間は、150nsから300nsの範囲内で、好ましくは、200から300nsである。これは、約60GHzの同調レンジを提供できる。
【0010】
チャープ率を選択することで、光の干渉を実質的に防止できる程度に非共鳴セルの反射素子のスポット間に時間遅延を生じさせることができる。この場合、スポットは、セル壁が注入チャープを反射する位置を定義する。
【0011】
各検出パルスの持続時間は、150nsより長く、具体的には、200nsより長い。各検出パルスの持続時間は、150nsから300nsの範囲内で、好ましくは、200から300nsである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による単一ポータルの回路図である。
【図2】複数のポータル配置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、本発明を実施例の形で説明する。図1は、例えば空港などのような保安区域または管理区域に、ヒトが入るために通過しなければならないポータルまたはゲートウェイ10を示す。このポータルは、上部の水平リンテル14と、2つの対向する垂直支柱16,17を持つアルミニウム製のオープンな骨組み(open aluminium framework)12を備えている。一方の垂直支柱16内に、オープンな非共鳴光学試料セル(open non-resonant optical sample cell)18が設けられ、その両端にミラー20が配置されている。ここで、"オープン"とは、光学セル18とポータル開口部22との間に何ら物的障害物が無いことを意味する。なるべく多数の分子を吸収損失無しに、セル18に入れるため、そのセル18は、支柱16の垂直方向の全範囲にわたって延設されている。従って、事実上、オープン試料セル18の長さは、好ましくは1メール以上で、理想的には、1.5メートル以上である。
【0014】
完全にオープンで相対的に長い光学セル18を使用することは、例えば、10億分の1など濃度の低い気体を検出する上で重要な利点である。気体をクローズドセルに圧入すると、分子がセル壁に付着し、セルのリフレッシュ後、長い時間検出できない。これは、誤検出を招き、応答時間を減少させる。この問題を避けるために、セル全体を加熱する。しかし、本発明のオープンな骨組みを使用すれば、セルの加熱は必要ない。長さが長く、オープンな骨組み構造が、分子のセルへの付着を防ぎ、セルを高速なリフレッシュと、極めて迅速な測定を可能にする。
【0015】
試料セル18と対向する支柱17には、一連のファン24が配置され、これらは試料セル18に向かって実質的に水平に空気を吹き付ける。これにより、空気流全体の方向が確実に試料セル18に向かうことになる。任意に、試料セルの支柱16にファン26を設けて、空気を吸い込み、セル18への分子の引き付けを増加させることもできる。これらのファン26は、セルのリフレッシュレートを速めるのにも有効である。
【0016】
光ファイバ・ケーブル30を使って、量子カスケードレーザ28からの光をセルと結合させる。段階関数の電気パルスを量子カスケードレーザ28に当てて、連続波長チャープを出力させる。好ましくは、当てた各パルスの持続時間は、150nsより長く、特に200nsより長い。当てた各パルスの持続時間は、150nsから300nsの、好ましくは200から300nsの範囲内である。これにより約60GHzの同調レンジが提供できる。
【0017】
光ファイバ結合30によって、連続波長チャープが光学セル18に注入される。この注入によって引き起こされる波長変動が、イントラパルススキャンとして使用される。光学セルで発生する光の干渉を実質的に防ぐために、チャープ率が選択される。具体的には、光の干渉を実質的に防止するに十分な非共鳴セルの反射素子上のスポット間に、時間遅延が生じるように、チャープ率が選択される。ここで、上記のスポットは、注入されたチャープが、セルの壁から反射する場所を言う。チャープ率の選択により、検出器操作のフリンジフリー(fringe free)が保証される。このような技術は、WO03087787に開示されていて、その内容を参照用に本明細書は援用する。
【0018】
セル18に注入された光は、複数回セルを通過する。高レベル感度を実現するために、セル18は、光が好ましくは100またはそれ以上の通過するように配置される。セル18から放出される光は、光ファイバ・ケーブル34を通じて検知器32と結合される。適用されたチャープパルスの波長変動によって、例えば過酸化物やEGDNなどの所定の物質の化学的フィンガープリントが検出される。この手法では、例えば、検出したフィンガープリントを保存した公知物質のフィンガープリントと比較することにより、検出光を使って、特に危険物または有害物などの所定の化学薬品を明確に特定できる。理想的には、化学薬品を確実に確認するが、任意で、正体不明の信号を利用して、低レベルの警報を出すこともできる。
【0019】
この構成に量子カスケードレーザを用いることは、多くの利点をもたらす。まず、応答速度が極めて速いため、他の構成と比べて、測定時間を有意に削減できる。また、試料セル18は完全にオープンなので、輸送ラインまたはその他の試料収集構成による損失が起こらない。さらに、従来型の測定結果と比較して、測定感度が有意に向上する。
【0020】
発明の範囲から逸脱することなく、多様な変更が可能なことは当業者であれば理解されよう。例えば、本発明をヒトが通過するポータルの見地から説明したが、例えば、保安区域または管理区域に進入する前に物品を通過させるポータル、開口部、またはゲートウェイであっても構わない。同様に、図1には単一ポータルが記載されているが、図2に示すように、複数のポータルを備え、それらの出力を単一検出器に送ることもできる。従って、本書に記載する特定の実施例は、あくまで参考例であって、本発明を限定するものではない。開示内容に有意な変更を加えることなく、若干の応用が可能なことは当業者であれば理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャープレーザと、オープンな光学試料セルと、当該セルを透過したチャープレーザからの光を検出する検出器とを包含するポータルまたはゲートウェイ。
【請求項2】
光がセル中を多数回通過するように、前記の光学試料セルを配置した請求項1に記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項3】
光がセル中を100回もしくはそれ以上通過するように、前記の光学試料セルを配置した請求項2に記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項4】
オープンな試料セルが実質的にポータルの全長にわたって延在した前記請求項の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項5】
オープンな試料セルの長さが1メートルより長い、好ましくは、1.5メートルより長い前記請求項の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項6】
ポータル内の気体をオープンな試料セルに道案内する手段を備える前記請求項の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項7】
前記の道案内手段が1つまたはそれ以上のファンである請求項6に記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項8】
オープンな試料セルがポータルまたはゲートウェイの垂直支柱に組み込まれている前記請求項の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項9】
チャープレーザが、半導体ダイオードレーザで例示される半導体レーザ、好ましくは、量子カスケードレーザである前記請求項の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項10】
それぞれが連続波長チャープを持つところの、前記の光学試料セルに注入するための1個またはそれ以上のパルスをレーザから出力させるために、半導体ダイオードレーザに1個または一連の実質的段階関数の電気パルスを当ててチャープ光を発生させる請求項8に記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項11】
半導体ダイオードレーザに当てるパルスの持続時間が、150nsより長い、とりわけ200nsより長い請求項10に記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項12】
半導体ダイオードレーザに当てるパルスの持続時間が、150nsから300nsの、好ましくは、200から300nsの範囲内にある請求項10に記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項13】
光の干渉を実質的に防止できる程度にセルの反射素子上のスポット間(当該スポットは、注入チャープがセル壁から反射する場所を意味する)に時間遅延が生起するように、チャープ率が選択される請求項10〜12の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項14】
各検出パルスの持続時間が、150nsより長い、とりわけ、200nsより長い請求項10〜13の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項15】
各検出パルスの持続時間が、150nsから300nsの、好ましくは200から300nsの範囲内にある請求項10〜14の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項16】
光学セルが非共鳴である前記請求項の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイ。
【請求項17】
前記請求項の何れかに記載のポータルまたはゲートウェイを複数個備えたシステム。
【請求項18】
複数のポータルまたはゲートウェイが、単一の検出器を共有する請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
複数のポータルまたはゲートウェイからの光を、光ファイバ・ケーブルを使って単一の検出器に送る請求項18に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−511168(P2010−511168A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538764(P2009−538764)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004333
【国際公開番号】WO2008/065338
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(509151979)カスケイド テクノロジーズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】