説明

ポートプラグ

【課題】ポートから取り外す際に、ポートプラグの周囲に溜まっていた異物を引掛けて除去可能なポートプラグを提供すること。
【解決手段】
ポート端面2に開口して形成されるポート1の内周に嵌合する嵌合部7,9を備え、嵌合部7,9がポート1に嵌合して当該ポート1を閉塞するポートプラグ100であって、嵌合部9の外周には、ポートプラグ100がポート1から引き抜かれる際にポートプラグ100の周囲に溜まっていた異物が侵入可能な異物溜めとしての環状溝12が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機器等のねじポートを閉塞するためのポートプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポートを有する油圧機器等では、塗装時や運搬時に内部へのダスト等の異物の進入や残り油等の出入りを防止するためにポートを閉塞しておく必要がある。そのため、ポートに一時的に嵌入してポートを塞ぐ部材として、ゴム等の弾性を有する材料によって形成されたポートプラグが広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、ポートプラグをポートに嵌入してポートからの液漏れ等を防止する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−121082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなポートプラグでは、ポートに嵌入されたポートプラグの周囲に異物が溜まり、ポートからポートプラグを引き抜いた際に異物がポート内に進入するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明ではポートプラグを引き抜く際にポートプラグの周囲に溜まっていた異物を除去できるポートプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポート端面に開口して形成されるポートの内周に嵌合する嵌合部を備え、前記嵌合部が前記ポートに嵌合して当該ポートを閉塞するポートプラグであって、前記嵌合部の外周には、当該ポートプラグが前記ポートから引き抜かれる際にポートプラグの周囲に溜まっていた異物が侵入可能な異物溜めが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ポートからポートプラグを引き抜く際に、ポートプラグの周囲に溜まっていた異物が異物溜めに進入する。したがって、ポートプラグを引き抜く際にポートプラグの周囲に溜まっていた異物を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るポートプラグを断面で示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態に係るポートプラグ100について説明する。
【0011】
ポートプラグ100は、油圧機器に形成されるポート1に嵌入されて用いられる。ポートプラグ100は、油圧機器の運搬時や塗装時などにダスト等の異物の進入や残り油の出入りなどを防止するために、一時的にポート1を閉塞しておくためのものである。ポートプラグ100は、ポート1を閉塞する手段として、油圧機器の他に例えば空圧機器などにも使用可能である。ダスト等の異物は残り油に混ざって存在することが多くあるため、以下ではダスト等の異物や残り油などをまとめて「異物」という。
【0012】
まず、ポートプラグ100が嵌入されるポート1について説明する。
【0013】
ポート1は、油圧機器に形成される孔である。ポート1は、ポート端面2から垂直に形成される円柱形の深穴である第1嵌合孔3と、第1嵌合孔3の底面から更にポート1の奥に形成され第1嵌合孔3よりも小径な円柱形の深穴である第2嵌合孔4とを備える。第1嵌合孔3と第2嵌合孔4は同軸に形成される。
【0014】
第1嵌合孔3には、管用平行雌ねじが形成される。管用平行雌ねじではなく管用テーパ雌ねじであってもよい。ポート端面2に開口する第1嵌合孔3の端部は、管用平行雄ねじやポートプラグ100を嵌入しやすいように面取り部3bが形成されている。第1嵌合孔3の底部3aは、中心に向かうほどポート1の奥へと傾斜して形成される。
【0015】
油圧機器の実際の使用状態においてポート1をシールして閉塞する場合には、第1嵌合孔3の管用平行雌ねじと対応する管用平行雄ねじ又は管用テーパ雄ねじが、必要に応じてシールテープなどのシール材を介して第1嵌合孔3の管用平行雌ねじに螺合される。
【0016】
第2嵌合孔4の底部は、油圧機器内に形成される管11に連結される。この第2嵌合孔4には、必要に応じてフェルールと呼ばれるシート吸材が挿入される。
【0017】
次に、ポートプラグ100について説明する。
【0018】
ポートプラグ100は、円盤状の鍔部6と、鍔部6の下部に突出して形成され鍔部6よりも径の小さい円筒状の第1嵌合部7と、第1嵌合部7の下部に突出して形成され第1嵌合部7よりも径の小さい円筒状の中間部8と、中間部8の下部に突出して形成され中間部8よりも径の小さい円筒状の第2嵌合部9とを備える。鍔部6,第1嵌合部7,中間部8,及び第2嵌合部9は、同軸に形成される。ポートプラグ100、即ち鍔部6,第1嵌合部7,中間部8,及び第2嵌合部9は、ゴム等の弾性を有する材料で例えば射出成型によって形成される。
【0019】
鍔部6は、ポート1の表面であるポート端面2に密着して当接するように設けられる。鍔部6がポート端面2と当接することによってポート1は閉塞される。
【0020】
第1嵌合部7は、ポート端面2から形成される第1嵌合孔3に嵌合するように設けられる。第1嵌合部7が第1嵌合孔3と嵌合することによって、ポート1はシールされる。第1嵌合孔3には管用平行雌ねじが形成されているため、第1嵌合部7は管用平行雌ねじのねじ山に合わせた大きさで同径に形成される。第1嵌合部7に管用テーパ雌ねじが形成されている場合には、第1嵌合部7の管用平行雌ねじのネジ山に合わせた大きさのテーパ状に形成される。
【0021】
第2嵌合部9は、ポート1の第2嵌合孔4に嵌合するように設けられる。第2嵌合部9が第2嵌合孔4と嵌合することによって、ポート1はシールされる。第2嵌合部9の底部9aは、閉じられるように形成される。第2嵌合部9は、第1嵌合部7よりも小径に形成される。径の異なる第1嵌合部7と第2嵌合部9との間は、中間部8によって連結される。
【0022】
中間部8は、ポート1の第1嵌合孔3及び第2嵌合孔4のいずれとも嵌合せずに、ポート1との間に空間10を形成する。第1嵌合部7と中間部8との連結部8a、及び中間部8と第2嵌合部9との連結部8bは、緩やかな曲線によって連結される。
【0023】
ここで、第1嵌合孔3には雌ねじが形成されているため、ポート1を備える油圧機器の作動確認を行う際に使用した作動油が雌ねじの谷の部分に溜まる可能性がある。そして、第1嵌合孔3の雌ねじ部分に溜まった作動油の表面に異物が付着することがある。
【0024】
その状態で、ポートプラグ100をポート1に嵌入すると、ポートプラグ100の嵌入に伴って空間10に異物が溜まる。特に、ポート1が図1に示すようにポート端面2から下方へ向かって形成されている場合、その異物は重力によって第1嵌合孔3の底部3aに形成された傾斜面に溜まることとなる。
【0025】
そして、そのままポートプラグ100をポート1から引き抜くと、溜まっていた異物はポート1の内部へと進入するおそれがある。そこで、第2嵌合部9には異物溜めとしての環状溝12が形成される。
【0026】
環状溝12は、第2嵌合部9の外周に環状に形成される。環状溝12は、ポートプラグ100を引き抜くときにポート1とポートプラグ100との嵌合時に空間10に溜まっていた異物を引掛けて除去することができる。環状溝12は、ポート1の奥へと向かうほど内周面が第2嵌合部9の外周から内周へと傾斜して、即ちポートプラグ100の軸心方向に対して傾いて形成される。
【0027】
環状溝12の替わりに、環状でなく円弧状の溝を複数形成してもよい。また、環状溝12をポートプラグ100の軸方向に複数並べて形成してもよい。環状溝12は、第2嵌合部9のポートプラグ100先端に近い位置に形成される。
【0028】
また、環状溝12の替わりに、第2嵌合部9から第2嵌合部9の外周へと環状に突出して形成される突出部を形成してもよい。突出部は、ポート1に嵌入した際に自由端が押しつぶされて第2嵌合部9に密着するように形成される。
【0029】
ここで、第2嵌合部9は円筒形に形成されるため、内周は空洞である。環状溝12が形成された第2嵌合部9の内周は、環状溝12に対応する部分の肉厚を確保するために空洞にせり出すように厚肉部9bが形成される。
【0030】
また、環状溝12や突出部のポート1入口側端部から、第2嵌合部9の内周の空洞へと連通する通孔を形成してもよい。この通孔は1つであってもよいが複数であってもよい。このとき、環状溝12や突出部に溜まった異物が、第2嵌合部9の内周の空洞へと流入する。つまり、第2嵌合部9の内周の空洞は、ポートプラグ100を引き抜くときに環状溝12又は突出部の上部に溜まった異物を溜める集積部となる。このとき、第2嵌合部9の外周から、ポート1の奥に向けて傾斜するように通孔を形成すると、第2嵌合部9内周の空洞へと異物を案内しやすい。
【0031】
このように構成することで、空間10に溜まった作動油や異物などが多い場合にも、第2嵌合孔9の内周の空洞に溜めることができる。よって、異物を確実にポートプラグ100に引掛けて除去することが可能である。
【0032】
以下、ポートプラグ100の作用について説明する。
【0033】
ポートプラグ100は、ポート1に嵌入されるときに、第2嵌合部9の先端がポート1の第1嵌合孔3を通過し第2嵌合孔4の最上部に接触すると同時に、第1嵌合部7の先端が第1嵌合孔3の最上部に接触するように構成されている。このように構成することによって、ポート1に対するポートプラグ100の位置決めが容易にできる。その後は作業者が鍔部6を強く押すことによって、図1に示すように第2嵌合部9を第2嵌合孔4に嵌合させると同時に、第1嵌合部7を第1嵌合孔3に嵌合させて、ポート1は確実にシールされる。また、鍔部6がポート端面2に密着することによって、ポート1は更にシールされる。
【0034】
ポートプラグ100をポート1から引き抜くときには、ポート端面2に密着して当接していた鍔部6が、まず作業者によってポート端面2から離間させられる。このとき、作業者が摘むための図示しない突起を鍔部6から外側に向けて設けておくと作業性を向上できる。
【0035】
そして、作業者によってポートプラグ100がポート1から引き抜かれる途中で、環状溝12が第1嵌合孔3の底部3aと、即ち空間10の最下部と対峙する。空間10の最下部に異物が溜まっていた場合には、第2嵌合部9に形成された環状溝12に異物が進入する。よって、異物は環状溝12に引っ掛かってポートプラグ100と一緒にポート1から取り外される。即ち、ポートプラグ100を取り外す際に、環状溝12に異物を引掛けて除去することが可能である。
【0036】
環状溝12の替わりに突出部を形成した場合も同様に、作業者によってポートプラグ100がポート1から引き抜かれる途中で、突出部が空間10の最下部と対峙する。このとき、第2嵌合部9に密接していた突出部の自由端は第2嵌合部9から離間するように開かれる。すると、空間10の最下部に溜まっていた異物は、突出部の上部へと流入する。よって、異物は突出部に引っ掛かってポートプラグ100と一緒にポート1から取り外される。即ち環状溝12を形成した場合と同様に、ポートプラグ100を取り外す際に、環状溝12に異物を引掛けて除去することが可能である。
【0037】
ここで、環状溝12又は突起部は斜めに形成されているため、異物が侵入して引掛かりやすくなっている。また、第1嵌合孔3の底部3aは傾斜して形成されているため、環状溝12又は突起部の上部に異物を進入させやすくなっている。よって、空間10に溜まっていた異物を確実に除去することが可能である。
【0038】
以上の実施の形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0039】
ポート1とポートプラグ100との間の空間10には、異物が溜まっているおそれがある。ポートプラグ100では、第2嵌合部9に環状溝12を形成しているので、ポート1からポートプラグ100を取り外す際に環状溝12が空間10の最下部に面したとき、異物は環状溝12に進入する。したがって、空間10に溜まっていた異物を引掛けて除去することが可能である。
【0040】
また、環状溝12は斜めに形成されているため、異物が侵入して引掛かりやすくなっており、第1嵌合孔3の底部は傾斜して形成されているため、環状溝12に異物を進入させやすくなっている。よって、空間10に溜まっていた異物を確実に除去することが可能である。
【0041】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るポートプラグは、油圧機器や空圧機器などに設けられるポートを閉塞するために利用できる。
【符号の説明】
【0043】
100 ポートプラグ
1 ポート
2 ポート端面
3 第1嵌合孔
6 鍔部
7 第1嵌合部
8 中間部
9 第2嵌合部
10 空間
11 管
12 環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポート端面に開口して形成されるポートの内周に嵌合する嵌合部を備え、
前記嵌合部が前記ポートに嵌合して当該ポートを閉塞するポートプラグであって、
前記嵌合部の外周には、当該ポートプラグが前記ポートから引き抜かれる際にポートプラグの周囲に溜まっていた異物が侵入可能な異物溜めが形成されることを特徴とするポートプラグ。
【請求項2】
前記ポートは、
前記ポート端面から形成される第1嵌合孔と、
前記第1嵌合孔と同軸であり前記第1嵌合孔よりも小径に、かつ前記第1嵌合孔よりも奥に形成される第2嵌合孔と、を備え、
前記嵌合部は、
前記第1嵌合孔と嵌合する第1嵌合部と、
前記第2嵌合孔と嵌合する第2嵌合部と、を備え、
前記異物溜めは、前記第2嵌合部の外周に形成されることを特徴とする請求項1に記載のポートプラグ。
【請求項3】
前記異物溜めは、環状に形成される環状溝であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポートプラグ。
【請求項4】
前記環状溝は、前記ポートの奥に向かって傾斜して形成されることを特徴とする請求項3に記載のポートプラグ。
【請求項5】
前記環状溝には、ポートプラグの内周と連通する通孔が形成されることを特徴とする請求項4に記載のポートプラグ。
【請求項6】
前記異物溜めは、外周へと環状に突出して形成される突出部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポートプラグ。
【請求項7】
前記突出部は、前記ポートの入口に向かって傾斜して形成されることを特徴とする請求項6に記載のポートプラグ。
【請求項8】
前記突出部の前記ポート入口側端部には、ポートプラグの内周と連通する通孔が形成されることを特徴とする請求項7に記載のポートプラグ。

【図1】
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