マイクロウェル・アレイ内の物質のスクリーニングの方法
【課題】液体や懸濁液内に存在する細胞を含む材料を大量の微小サンプルとして操作し、解析するための装置を生産し使用する方法を提供する。
【解決手段】平行な貫通穴がプラテン内に形成され、これに液体が充填される。貫通穴の位置に関係して、特定の物質の濃度あるいはその他の物理量の傾きが生じるような方法で充填が行われる。既に充填されたマイクロ・ウェル・アレイを個々の貫通穴が一致するように互いに接触させることによって、貫通穴の内容物の混合が行われる。
【解決手段】平行な貫通穴がプラテン内に形成され、これに液体が充填される。貫通穴の位置に関係して、特定の物質の濃度あるいはその他の物理量の傾きが生じるような方法で充填が行われる。既に充填されたマイクロ・ウェル・アレイを個々の貫通穴が一致するように互いに接触させることによって、貫通穴の内容物の混合が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や懸濁液内に存在する細胞を含む材料を大量の微小サンプルとして操作、移送、解析するための装置を生産し使用する方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
マイクロリッターのオーダまたはそれよりも更に少量で、多数の試薬やアナライト(analytes)を反応させ、その後に分析を行うような、微小領域における化学は製薬業界やその他の産業において新しい物質を開発する観点から、ますます重要になってきている。このような反応や分析は、様々な条件下で行うことが必要になるものであり、100万もの化合物を含むような巨大なライブラリーを準備するようなことになるかもしれない。重要な問題は、莫大な数の化合物とその反応を並行して扱う必要があるということであり、莫大な数量(もしかすると、1日当たり何十万または何百万のオーダーの数)の化合物の化学分析を行わなければならないという問題に直面している現在の技術に関係するものである。従来の技術では、1個のウェル(well)当たり概略1マイクロリッターから1ミリリッターの間の量の液体化合物を収納する96個、384個、あるいは1536個のウェルを備えたウェル・プレートを使用するのが一般的であり、ポリスチレンのような材料を使用し、平らな表面上に設けられた一ヶ所の開口部を有するウェル内で化学反応と分析が行われる。100万個のマイクロリッター・レベルのウェル・プレートを形成するために、従来の技術を適用することは実用的ではない。即ち、実験室レベルで100万個の試料を分析できるようにする新しいアプローチに対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の好適な実施例においては、複数の異なったサンプル・コンテナにサンプルを充填する方法であって、サンプル・コンテナが全体の構造を構成し、各コンテナ内の特定の物質の濃度が構造内におけるコンテナの位置に関係した傾きによって特徴付けられる。この方法は第一の液体を異なったコンテナの中に充填するステップとコンテナを第二の液体に接触させるステップを有し、第二の液体が特定の物質を含み、この特定の物質が異なったコンテナの中へ拡散する程度を制御して、コンテナの間で異なるようにしている。
【0004】
本発明の別の実施例においては、異なったコンテナの間で、第二の液体に接触する時間が異なるようになっている。コンテナの中に入る特定の物質の拡散速度は変えることができる。その方法は、第二の液体の中で特定の物質の傾きを作り出すステップを更に含んでいても良く、その傾きが電気泳動を適用することによって作り出されるものであっても良い。膜の位置によって異なった透過性を持つ膜を通して第二の液体とコンテナとを接触させることによって拡散速度を変えることもできる。
【0005】
コンテナに液体を充填するステップが、プラテン内の複数の本質的に平行な貫通穴内に液体を充填するステップを含むこともできる。この液体の充填は以下のプロセスで実施することができる。即ち、液体移送装置の端部に液体の小滴を形成するステップと、プラテンの上面を横切って小滴を引きずり、充填すべき貫通穴を覆うように液体移送装置を動かすステップと、小滴を使い尽くすようにして液体を分配するステップと、貫通穴が充填された後、表面から小滴を引っ込めるステップとから成るプロセスである。
【0006】
本発明の更に別の実施例によれば、プラテンの複数の貫通穴の中に液体サンプルを充填するための方法が提供されている。この方法は、分配のための端部を有する毛細管チューブのアレイを充填するステップと、異なった貫通穴の近くに各分配のための端部を配置するステップと、毛細管チューブを通してプラテンの貫通穴へ液体を移送するステップとを有する。別の方法では、電気泳動のように、液体中の特定の物質の濃度が異なった領域を作り出すステップと、液体を異なった領域から異なったコンテナに移送するステップとを有する。その液体は毛細管チューブによって移送されるか、または貫通穴を備えた構造物を液体の表面に接触させるかして移送される。
【0007】
本発明の更に別の実施例によれば、二つの実質的に平行な平坦面と、平坦面に実質的に垂直に配置された複数の貫通穴とを備えたプラテンの製造のための方法が提供されている。この方法は、一枚の熱可塑性プラスチック材料を準備するステップと、複数の穴を有する型の表面に、熱可塑性プラスチック材料のシートを接触させて置くステップと、特定の断面を持った複数の突起を有するパンチを、熱可塑性プラスチック材料に貫通穴を明けることができるように、突起が型の穴と整列するようにして熱可塑性プラスチック材料のシートに接触させるステップと、を備えている。本発明の別の実施例では、一枚の導電性材料が複数の穴を有する型の表面に接触させて置かれ、特定の断面を持った複数の突起を有するEDMマンドレルを、導電性材料に貫通穴を明けることができるように、突起が型の穴と整列するようにして導電性材料のシートの近くに運ばれる。
【0008】
本発明の更に別の実施例では、第一と第二の表面を有し、これらの表面が本質的に平行であり、表面に実質的に垂直に配置された複数の貫通穴とを備えたシリコン製プラテンに疎水性のコーティングを適用するための方法を提供している。この方法は、第一の表面を酸化させるステップと、酸化された第一の表面をクリーニングするステップと、第二の表面の方向から複数の貫通穴へ不活性ガスの正圧をかけるステップと、シラン・カップリング剤蒸気に第一の表面を晒すステップと、を備えている。
【0009】
本発明の更に別の実施例によれば、プラテンの複数の貫通穴の中へ液体を充填する方法が提供されている。この方法は、少なくとも一つの連続したチャンネルを形成するように、各プラテンの複数の貫通穴の少なくとも一つが、互いに隣接するプラテンの貫通穴と一致するようにして少なくとも二つのプラテンを一緒にスタックするステップと、各連続したチャンネルに液体を移送するステップとを備えている。各プラテンは空隙によって各隣り合うプラテンから離しておくことができ、また液体を毛細管チューブ、または少なくとも一つのカニューレによって移送することもできる。
【0010】
少なくとも二つのプラテンの貫通穴内に保持されている液体を混合する方法が提供される。この方法は、結合された貫通穴の間で液体が拡散できるように、各プラテンの複数の貫通穴の内の少なくとも一つが他のプラテンの対応する貫通穴と結合されるような方法で、特定の時間の間、複数のプラテンを一緒にスタックするステップを含む。これらのプラテンは、混合後に分離してもよい。
【0011】
本発明の更に別の実施例によれば、システムを加湿するための方法が提供されている。この方法は、複数の平行なマイクロ・チャンネルを有するマイクロ・チャンネル・プレートに液体を充填するステップと、加湿すべきシステムの周辺に充填したマイクロ・チャンネル・プレートを配置するステップと、から成る。
【0012】
本発明の更に別の実施例では、散光のための方法を提供している。この方法では、液体が基部側および先端側端部を有する複数の平行なマイクロ・チャンネルの中へ入れられ、マイクロ・チャンネルがマイクロ・チャンネル・プレーとを構成する。複数の平行なマイクロ・チャンネルの各々の基部側端部はライトで照明され、マイクロ・チャンネルの先端側端部から散光を発生する。
【0013】
本発明の更に別の実施例では、1マイクロリッターよりも小さい体積の異なった液体サンプルを扱うための、穴を明けたプラテンが提供される。このプラテンは、親水性の材料からできた内層と、内層の外側両面に結合され、疎水性材料からできた二つの外層から成る。そして貫通穴が構成する二次元アレイは、異なった液体サンプルを保持するための、少なくとも二つの穴が異なった体積を持ち、貫通穴は、各々300μm以下の直径を持ち、プラテンの二つの各平坦面に実質的に垂直な方向であって、内層と二つの外層を貫通する貫通穴が配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、添付する図面に関する以下の説明によって、更に容易に理解することができるようになる。
【図1a】図1aは、本発明の一つの実施例である、高密度貫通穴アレイの平面図を示したものである。
【図1b】図1bは、本発明の一つの実施例である、高密度貫通穴アレイの断面図を示したものである。
【図1c】図1cは、本発明の別の実施例である、貫通穴の連続シート・アレイの側方からの概要図を示したものである。
【図2a】図2aは、図1aに示したプラテンの一部分の平面図であり、四角形状に貫通穴の中心を配置した形態のものを示す。
【図2b】図2bは、図1aに示したプラテンの一部分の平面図であり、六角形状に密集させて貫通穴の中心を配置した形態のものを示す。
【図3】図3は、本発明の好適な実施例であり、液体サンプルの解析のために複数の貫通穴を備えた積層プラテンの一部分を、側方からの断面図として示したものである。
【図4】図4 は、本発明の実施例の一つであり、貫通穴を設けた丸型のサンプル・ウェハーの平面図を示したものである。
【図5a】図5aは、アレイの位置の関数として貫通穴の体積が決まるように設計されたアレイの例を示す。
【図5b】図5bも同様に、アレイの位置の関数として貫通穴の体積が決まるように設計されたアレイの例を示す。
【図5c】図5c も同様に、アレイの位置の関数として貫通穴の体積が決まるように設計されたアレイの例を示す。
【図5d】図5dも同様に、アレイの位置の関数として貫通穴の体積が決まるように設計されたアレイの例を示す。
【図5e】図 5e は、本発明の実施例を示すものであり、全体として平行な形状を有し、液体クロマトグラフィあるいは電気泳動に使用される貫通穴プリズムの断面図を示したものである。
【図5f】図 5f は、本発明の実施例を示すものであり、全体として平行な形状を有し、液体クロマトグラフィあるいは電気泳動に使用される貫通穴プリズムの断面図を示したものである。
【図6】図6は、連結アレイの例を示したものである。
【図7】図7は、本発明の実施例の一つを示したものであり、貫通穴のアレイを圧縮成形するための圧縮型の形態を描いたものである。
【図8】図8は、本発明の実施例の一つを示したものであり、EDMによる貫通穴アレイの製造ステップを示したフローチャートである。
【図9a】図9aは、第一の液体で貫通穴アレイを充填する操作のシーケンスの一部を示したものである。
【図9b】図9bは、第一の液体で貫通穴アレイを充填する操作のシーケンスの一部を示したものである。
【図9c】図9cは、第一の液体で貫通穴アレイを充填する操作のシーケンスの一部を示したものである。
【図10】図10は、本発明の実施例の一つを示したものであり、大きな構成のマイクロ・タイター・プレートの内容物をサンプリングし、それを貫通穴アレイのサブ・アレイに充填する方法を概念的に描いたものである。
【図11】図11は、本発明の実施例の一つを示したものであり、大きな構成のマイクロ・タイター・プレートの内容物をサンプリングし、それを多数の貫通穴アレイのサブ・アレイに充填する方法を概念的に描いたものである。
【図12a】図12aは、本発明の実施例を示したものであり、多数積み重ねたマイクロ・ウェル・アレイのサブ・アレイへ並行して液体を充填する状況を描いたものである。
【図12b】図12bは、本発明の実施例を示したものであり、フレキシブルな要素を使用することによって、マイクロ・ウェル・アレイのサブ・アレイへ並行して液体を充填する状況を描いたものである。
【図12c】図12cは、本発明の実施例を示したものであり、フレキシブルな要素を使用することによって、マイクロ・ウェル・アレイのサブ・アレイへ並行して液体を充填する状況を描いたものである。
【図13】図13は、本発明の実施例の一つを示したものであり、マイクロ・ウェル・アレイの内容物を連続的に希釈するための方法を説明するフローチャートである。
【図14a】図14aは、本発明の実施例の一つを示したものであり、貫通穴アレイの各貫通穴を第二の液体に浸し、アレイ内の貫通穴の位置によって特定の特性を有する傾きを作り出すための必要な操作シーケンスの一部を描いたものである。
【図14b】図14bも同様に、本発明の実施例の一つを示したものであり、貫通穴アレイの各貫通穴を第二の液体に浸し、アレイ内の貫通穴の位置によって特定の特性を有する傾きを作り出すための必要な操作シーケンスの一部を描いたものである。
【図14c】図14cも同様に、本発明の実施例の一つを示したものであり、貫通穴アレイの各貫通穴を第二の液体に浸し、アレイ内の貫通穴の位置によって特定の特性を有する傾きを作り出すための必要な操作シーケンスの一部を描いたものである。
【図14d】図14dは、本発明の実施例の一つを示したものであり、密度の傾きを作り出すために、徐々に変化するフィルターを装着した貫通穴アレイ・プレートの側面図を示したものである。
【図15】図15は、本発明の実施例を示したものであり、貫通穴アレイの内容物を、貫通穴の位置を一致させた別の貫通穴アレイの内容物と混合させる状態を描いたものである。
【図16】図16は、本発明の実施例を示したものであり、貫通穴アレイの内容物を、貫通穴の位置を一致させた別の貫通穴アレイの内容物と混合させるときの、シーケンスの一状態を描いたものである。
【図17】図17も同様に、本発明の実施例を示したものであり、貫通穴アレイの内容物を、貫通穴の位置を一致させた別の貫通穴アレイの内容物と混合させるときの、シーケンスの一状態を描いたものである。
【図18】図18は、本発明の実施例を示したものであり、外部圧力を作用させることにより、貫通穴アレイの内容物を、別の貫通穴アレイの内容物と混合させる状態を描いたものである。
【図19】図19は、本発明の実施例を示したものであり、十分に充填された貫通穴アレイの内容物を、貫通穴の位置を一致させた、別の十分に充填されていない貫通穴アレイの内容物と混合させる状態を描いたものである。
【図20】図20は、水の小滴の蒸発に要する時間の計算値を、周囲の相対湿度の関数としてプロットしたものである。
【図21】図21は、本発明の実施例の一つを示したものであり、アレイの周辺環境を高い相対湿度に維持しつつ、貫通穴に液体を充填し、または除去するために使用する加湿チャンバーを描いたものである。
【図22a】図22aは、蛍光画像解析、培養、そして別の加湿環境の間でトレイを移動させる間に、アレイから液体が蒸発するのを防止するために使用するホータブルな加湿チャンバーの分解斜視図を示したものである。
【図22b】図22bは、図22aで示した、ホータブルな加湿チャンバーの側方断面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
貫通穴アレイ
本発明は、貫通穴のあいたアレイ(array)内において異なった化学反応を発生させるための方法を提供する。本発明は、例えばスクリーニング処理を行うときに、異なる反応条件をアレイの種々の貫通穴に適切に提供できることから、都合よく使用することができる。本発明を利用する形態は多くあるが、その中の一つの例として、アレイに設けられた異なった貫通穴に、異なる化学種を入れることができ、また、種々の化学種の濃度を、種々の貫通穴間で異なるようにすることもできる。従って、本発明は、例えば、患者に吸収される各化合物の機能を予測するために、化合物のライブラリーをスクリーニングする方法を提供することができる。
【0016】
図1aと1bに関連して説明する。本発明の好適な実施例によれば、貫通穴を有する高密度アレイが提供される。図1aはプラテン (platen) 10、またはこの呼び方とは別に「基板」、「サンプル・ウエハー」あるいは「貫通穴プレート」とここで呼ばれているものの平面図を示す。図1bに示す横断面の図中に示すように、プラテン10は、プラテンの一方の表面14から反対側表面16までプラテンを貫通して設けられた貫通穴12の担体である。用語「プラテン」は実質上平行な面を持ち、その構造の厚さよりも横方向の寸法の方が実質的に大きい構造を指す一方、これに替る幾何学的形状を持つものであっても本発明の範囲内に含まれる。そして用語「プラテン」は限定的なものではない。例えば、プリズム状の幾何学的形状をした「プラテン」についても後述している。
【0017】
本発明の実施例によれば、貫通穴12は、検定ウェル (well) (あるいは「マイクロウェル」と呼ぶ)を構成する。(従って、本明細書においては、「貫通穴」、「ウェル」、および「マイクロウェル」のことを総称して「サンプル・コンテナ」と呼ぶものとする。)貫通穴12は直円柱とすることができ、あるいはこれに代えて、長方形断面とすることもできる。この他の形態に形成された貫通穴もまた、本発明の範囲内にある。貫通穴プレート10は導電性のケイ素で作られているが、その材料が試料物質に対して化学的に不活性な場合や、適切な表面処理によって不活性にしてあるならば、金属、グラス、あるいはプラスチックのような剛性のある材料も使用することができる。
【0018】
円や長方形の断面をした幾何学的形状のものも使うことができるが、各貫通穴12は、典型的にはほぼ正方形断面をしている。また、貫通穴12は「チャンネル」とも呼ばれる。
【0019】
図2aに示すように、貫通穴12の中心が長方形のグリッドの交点に配置されるか、あるいは図2bに示すように、六角形の格子状に密集させて配置することもできる。図3について説明すると、貫通穴12の典型的な寸法特性(直径であるが)36が、100〜400μm程度であるのに対して、プラテン10の典型的な厚さ20は0.5から2mmのオーダーである。従って、面14から面16の間の各貫通穴の体積は、10-7cm3のオーダーかそれより大きい程度である。いずれの配置形態であっても、添付した特許請求の範囲に記載の発明の範囲内に含まれるが、貫通穴は、典型的には穴の直径の2倍程度の中心間距離を持って配置されている。特に、穴と穴の間隔38として、典型的には500μmのものが使用されており、プレートの1平方センチメートル当り400個の穴密度を有する。後述するような製造方法を採ることにより、各マイクロウェルの体積が100ナノリッター (nL) (10-7cm3)以下であるような化学物質または生化学の検定のためのマイクロウェルを生産することができる。従って、ウェルの配置密度は、従来技術に比べて数オーダーも増加してきている。
【0020】
小さいサブ・アレイを構成するため、貫通穴をグルーピングすることも行われる。更に、再生産することができる貫通穴のパターンが複数のサブ・アレイに使用される。各貫通穴12は、アレイ内の各固有のアドレスによって識別することができる。
【0021】
再び、図1bについて説明すると、プラテン10は、中央の層24と外層22からなる積層材料として形成することもできる。本発明の好適な実施例においては、毛細管現象を利用してサンプル30をマイクロウェルの中に充填し易くし、また毛細管現象によるサンプル液体の流失を防止するために、プラテン10の表面14と16であって、マイクロウェルの外側部分22は疎水性を有する壁面となっている。他方、貫通穴の内部24の壁面は、親水性の表面を有し、そのため、水のような液体サンプルを特別によく引き付ける。同様な方法によって、親水性の面と疎水性の貫通穴を持つアレイは、アルカン(alkane)のような低表面張力の液体によって均一に充填することができる。貫通穴壁面の両端部にある疎水性の層は1ミクロンまたはそれより小さいオーダーの厚さである。マイクロウェルへ液体サンプルを充填する際、マイクロウェルの4つの壁面によって囲まれる体積の約10%程度余分のサンプルを各ウェルに充填するのが一般的である。このように過充填することにより、液体サンプル30はそのサンプルの上面および下面の両方の面において、凸状のメニスカス(筒内の液体が表面張力によって凹または凸状になる現象のことを言う)表面34を形成する。充填不足のマイクロウェル26の場合には、液体サンプル30の上面および下面の両方の面に、凹状のメニスカス28が生じる。
【0022】
貫通穴12の開口部は正方形である必要はない。また、本発明の他の実施例では、貫通穴の全てまたはその内のいくつかの周辺の平坦な面上14にフランジ8が形成され、他方その反対側の面16の貫通穴12のエッジ部分は丸められた窪ませた部分6が形成される。後で詳述するように、プラテンが重ねられる場合、混合または希釈化のプロセスにおいて、フランジ8と窪ませた部分6は連続してプラテン10を重ねる時に、穴位置を一致させるのに都合のよいものとなる。
【0023】
貫通穴12には第一のサンプル18を液体の状態で充填することができる。サンプル18は第二のサンプルと反応することができ、第二のサンプルには種々のテストサンプルを含めることができると共に、例えば光学的マーカーを使用し、反応した後またはそれと並行して反応生成物を解析することにより、多数の反応プロセスを実現でき、解析も並行して実施することができる。例えば、生物学的分析に使用するときには、第一のサンプル18として、薬理学的に関連する蛋白質やその他の分子を含む溶液を使用することができる。ここで特許請求の範囲に記載しているように、この他の生物学的あるいは非生物学的分析への応用も本発明の範囲内である。上述した溶液には、例えば、水の懸濁液内の細胞、真核(動物、酵母菌)の細胞や原核(バクテリア)の細胞、ハイブリッド細胞、そして抗体や酵素を含む生物学上の分子が含まれる。このような全ての試薬は明細書、および添付する特許請求の範囲において「ターゲット」として言及されている。溶液1ミリリッター(mL)中107個の細胞を有する濃度の酵母菌細胞を使用すれば、100ナノリッター(nL)のウェル中に1000個のオーダーの細胞を含むようにすることができる。基本的には、チップ全体またはプラテン10の貫通穴ウェルのサブ・セットには単一の細胞の株を保持することができる。ここで、貫通穴ウェルのサブ・セットとはプラテン10の中の隣接した一つの領域を意味する。
【0024】
製薬のための研究で使用される一般的な検定手順においては、一つ又は二つ以上の貫通穴から成るサブ・セットに選択した材料を充填し、更に一つ又は二つ以上のアナライト(analytes)を含むテスト・サンプルを貫通穴ウェルに充填することになるが、このとき貫通穴ウェルのアドレスを明確にすることが必要になる。
【0025】
アドレスが判るようにして、貫通穴のサブ・セットに充填されるテスト・サンプルには、薬品の候補または既知の薬品を含めることができる。テスト・サンプルは複数の成分から構成されていてもよく、同時に充填しても、順番に充填しても良い。テスト・サンプルの成分として、アナライト、拮抗薬、試薬、溶液、あるいはその他の材料を含んでもよく、液体の状態で充填しても、その他の状態で充填しても良い。本発明の好適な実施例においては、貫通穴の中に既に液体の状態で存在する第一のサンプルの中へ拡散し、容易にかつ速く反応させるようにするため、テスト・サンプルは液体の状態で貫通穴ウェルに充填される。特定の貫通穴のサイトへ割り当てられる第二のサンプルとして使用される物質の群については、この明細書と添付する特許請求の範囲において、物質の「ライブラリ」として記述されている。典型的な応用例においては、ライブラリは実質的に規模の大きいものであり、従って非常に多くの物質の反応と解析を容易に並行して実行できるようにするために、本発明の機能を利用している。特に製薬のための研究で利用する場合には、ライブラリは103から109の間の数にのぼる物質および物質の組み合わせとなる。
【0026】
次に、図1cについて説明する。貫通穴サンプル容器のアレイを組み入れたスクリーニング・システムの処理量は、貫通穴12の連続シート300を使用することによって更に増加する。図1bに関連して前述したように、貫通穴の内部は親水性であり、シート300の表面は、これも前述したように疎水性である。流体槽304に入れられた水の媒体302の中を通ってシート300を送ることにより、貫通穴12を連続的に充填することができる。貫通穴12が充填された後、シート300はスプール306に巻き取られるか、あるいは保存しておくためのカセットに巻き取られ、その後に検定が行われるか、あるいは直ぐに検定することもできる。検定は、蛍光吸収度(fluorescence absorbance)、や化学発光(chemi-luminescence)測定のような光学的な読み取りによって行われ、これらの全てはCCDアレイのような光学的検出装置の前を横切って、シートを送ることによって行われる。
【0027】
サンプル・アレイ・シート300は、好ましくは、高精度の生産工程を使用し、あるいはマッチド・セット(matched sets)を使用して、位置合わせされた穴と共に製造される。シートは、ポリマー、エラストマー、あるいはアモルファス・メタルを含む金属から作られる。例えば、図16-19に関連して後で詳述するように、反応を行わせるため、またはその他の目的で貫通穴を設けたプラテンを重ねて使用しているが、この場合においても、これと同じ方法で複数のシートを合わせて使用することもできる。図1cは各貫通穴に収納されている液体を混合させるために、ミキシング・エリア312内において、貫通穴310を備えた第二のシート308をシート300と接触させている状態を示している。この実施例を含めた応用例の中には、ポリマー・ビーズの表面に付着させた遺伝子ライブラリまたは化学物質ライブラリのスクリーニングが含まれる。本発明におけるこれらの実施例では、極めて多くの処理量が要求されるものであるが、高コストの自動化コンポーネントを低減又は排除し、サンプルの取り扱いおよび検出モジュールを備えたコンパクト・サイズのスクリーニング・システムを構成している。シートに設けられた穴は、もし必要があれば、パンチ・アレイまたはUVレーザーでオン・ラインにて生産することもできる。一ステップでの検定によって改善した酵素を探し出すために、遺伝子ライブラリをスクリーニングする応用例として、β―ガラクトシターゼ酵素(beta galactosidase enzyme)中に突然変異体が含まれるE. coli遺伝子ライブラリが使用される。E. coli細胞はホスフェート (phosphate) に限定した媒体の中で200nlの液体中に平均1細胞が存在するような濃度にまで成長する。この媒体はMUG、即ちβ―ガラクトシターゼに対する蛍光物質をも含んでいる。貫通穴シートには、外部が疎水性で内部が親水性の貫通穴が、1平方メートル当たり107個の密度で設けられている。位置合わせした穴は精度良く計量分配するためにテープ内に固定される。各貫通穴には70nlの液体を保持するこができる。貫通穴のシートはスプールから巻き戻され、各貫通穴を充填することができるように、細胞の溶剤を貯めた槽の中をガイドされて通される。その後、そのシートはスペーサの上へ乗せられ巻き取り側のスプールに巻き取られる。スペーサは液体が汚染されるのを防止し、スプールからのガスの出入りをし易くする。スプールは加湿した37℃の環境で24時間保管され、その間細胞は培養される。その後シートはスプールから巻き戻され、波長350nmの均一な光学照明源と、450nmのフィルターを備えたCCD画像システムの間を通過させられる。非常に活動的な状態にあるシート内の酵素の群体が記録され、これらの群体は更に別の解析をするために微小流体を取り扱うロボット・システムによって回収される。この検定は、一緒に位置合わせを行い、バクテリアを入れた第一のシートと、これと同一のシートに蛍光物質を入れた第二のシートを組み合わせることによって行うこともできる。多数のバクテリアに対する出力信号を標準化するために、吸収度測定を行うこともできる。
【0028】
図4に示した、本発明の別の実施例の場合には、ハンドリング装置に対応させて、センターリングするために中央に穴322が設けられており、この円形状サンプル・ウェハー320内のアレイには貫通穴12が配置されている。
【0029】
本発明に関係する他の実施例を示した図5について説明する。これまでに述べてきたものの他に、別の幾何学的形状をした貫通穴12が考えられる。アレイ内における空間的な位置の関数として、貫通穴の体積を変えることもできる。V=k s2 lで与えられる貫通穴の体積は、穴の横方向寸法 s、長さ l、および特定の穴の断面形状に依存する定数 kの関数となる。図5aで示したように、穴の横方向寸法を変えることにより、アレイ中の空間的な位置の関数として断面積を変えることができる。穴の体積を表す一つの変数s2は穴の寸法が3.3倍になれば体積が10倍になる係数であることを表す。一つの例として、平行な平面を有するプレートで、穴の寸法が、プレートの横方向の一軸方向または二軸方向に線形的に増加していくものが考えられる。アレイ中の位置によって異なった体積の貫通穴を作る別の方法として、図5bに示すように、穴の長さ52を決定することになるプレートの上面および下面の間の寸法を変化させる方法がある。別の特殊な例として、図5cに示すように、クサビ又はプリズムのようにプレートの上面14と底面16を互いにある角度を持たせて傾けることもできる。この例では、アレイ内において表面が傾いた方向に沿って移動した場合には体積はその移動距離に対して線形に変化する一方、これと直行する方向の穴の列では、穴の長さと体積は一定である。本発明の別の実施例では、アレイの二次元的な広がりの中の二つの方向で貫通穴の体積が変化するように、一次元的または二次元的に互いに傾いた連続した平面によって作られるアレイもある。更に、別の実施例では、図5dに示すように、半球状の曲面を有するような平面的でない曲面54を有するものも作られている。
【0030】
本発明の別の実施例として、種々の幾何学的形状を有するアレイにおいて、図6に示すように、アレイを容易に重ねることができるようにするために、第一のアレイの幾何学的形状を補間する表面を有する第二のアレイが使用される。突起した部分68をこれに対応する窪ませた部分70に挿入することによって、プレート60の貫通穴64とプレート62の貫通穴66とのアライメントを調整することができる。アレイ表面に垂直な回転軸に対して回転対称となる幾何学的形状を有し、4つ折り以上の回転対称性を有するような幾何学的特徴を有するようなアレイでは、幾何学的に突起した部分と窪んだ部分を合わせることにより、インターロックと自己調芯を簡単に行うことができ、これも本発明の範囲に含まれる。このような幾何学的な配列にすることにより、好都合にも、平面状のアレイを積み重ねて、位置合わせを行うために通常必要となるアライメント・ピンは必要ない。
【0031】
体積が一定でないアレイの応用
体積が一定でない貫通穴を有するアレイの一つの応用として、後述するような、希釈シーケンスのように異なった体積の液体を混合する場合が考えられる。この方法の利点は、これも後述することであるが、幅広い範囲の希釈が可能となる一方、数多くのアレイを重ねる必要がないことである。
【0032】
体積が一定か、または一定でない貫通穴のいずれかを備えたアレイの別の応用としては、クロマトグラフィーの溶離液からごく少量の物質を収集する場合である。貫通穴アレイは、後述するように、好都合にもごく少量のものを非常に数多く集める能力を有しており、そのため貫通穴アレイの中に分離して取り込むことができる。このことにより、従来技術よりもクロマトグラフィーの分離の分解能を都合よく高めることになる。
【0033】
標準的な幾何学形状を有していないアレイの更に別の応用例として、大規模に並行して行う液体クロマトグラフィーまたは電気泳動がある。更に詳細に説明すると、図5eに示すような貫通穴プレート56が使用される。この貫通穴プレート56は横方向の一方向において板厚が増加(プレートがプリズム状の形状となる)し、その結果アレイの中の位置によって穴の長さが線形的に増加する。第二の貫通穴プリズム57は、共通する直角三角形の斜辺58に沿って第一のプリズムと一体化しており、このことによって、実質的に同じ長さを持つ貫通穴12のアレイを作ることができる。この構造を液体クロマトグラフィのカラムとして使用する際には、各穴が液体クロマトグラフィの特徴でもあるポーラスなゲル55で満たされることになる。解析すべきサンプル51は、サンプル・プレート53を形成し、アレイの一方の端面に配置され、そして例えば、各穴の中へ流体サンプルを移動させるために圧力がかけられる。混合物内の各成分はゲル状マトリックスの中を異なった速度で移動し、その結果、カラムの全長に沿って、混合物が分離することになる。例えば、小さい分子のものはチャンネル内を反対側の端部に向かって速く移動するのに対し、より大きい分子のものは移動速度が遅く、同じ時間経過しても、小さい分子の移動距離の一部分だけを移動することになる。プリズム状のアレイを結合した際にできる三角形の斜辺と貫通穴が交差する位置で考えると、クロマトグラフィのカラムに沿って異なった移動距離を有する貫通穴を提供することになる。図5fに示すように、二つのプリズムを分離することにより、混合物成分の各途中段階での状態がアレイの位置によって分布して存在し、これらのデータを得ることができる。時間の関数以外に、時間またはそれと等価な長さとして表すことができる中間カラムを間に置き、既知の時間だけ遅延させてアレイの中を同一のサンプルを移動させることによって、クロマトグラフィを位置の関数に変換することができる。プレートの板厚が増加する方向に沿って、各貫通穴から出力される材料をシーケンシャルに解析することによって、等価なクロマトグラフが再現できる。クサビの方向に対して直行する方向のアレイにおいて、ゲルのポロシティが異なるようにすることにより、更に混合物の分離が可能になる。ゲルのポロシティが減少すれば、更に各成分を保持する時間が増加するので、混合物の成分のより細かい分離が可能になる。同様な方法によって、電気泳動による分離が可能であり、この場合適用される電界がドライビング・フォースとなる。
【0034】
貫通穴アレイの製造
図7について説明する。プラテン10に使用される材料に合った適切な手段によって、プラテン10内に貫通穴を形成することができる。例えば、貫通穴を形成する方法としては、ガラスまたはポリマーに100μmの貫通穴を形成することができる紫外線(UV)エキシマ・レーザーを使用したレーザー・アブレーションによる方法がある。貫通穴を形成することができる更に別の技術的手段として、機械的なドリリング、微小放電加工(EDM)、導電性材料のイオン化除去のための高周波パルスによる技術、あるいは、本発明の別の実施例であるが、選択的化学エッチングまたは荷電粒子エッチング技術がある。また、種々の組成を持ったガラスファイバーからできた微小毛細管の束をプリフォームとして引き揃え、これをスライスすることによってプラテンを形成し、その後に貫通穴を形成するためにエッチング処理して製作する方法もある。
【0035】
図7に示すように、サーモプラスチックやポリカーバイドのような材料を使い、高圧ラムと共にパンチ・アレイ402とダイ・アレイ404を使用してプラテンのブランク400をパンチングすることによって貫通穴12を形成することもできる。後で詳細に説明するように、パンチング・ピン406はパンチング・ブロック408にマイクロ・ワイヤEDM(micro-electrical spark discharge machining)を使用して形成する。あるいは、化学エッチングまたは荷電粒子エッチングのようなマイクロ・エッチングの技術を使用することもできる。また、パンチ・アレイ402はマイクロソーイング(microsawing)の技術を使って形成することもできる。ダイ・アレイ404も同様に、製造技術上良く知られた微小加工技術を使用して形成することができる。
【0036】
高密度の貫通穴を有するアレイは導電性(>10Ω-1cm-1)シリコン・ウェハーを含む導電性の材料を使い、ワイヤおよび型を使用したシンク式EDMを使用して加工される。一般的には、EDMはインジェクション・モールド用の成形型を加工するために使用されているものである。良く知られているようにEDM加工のプロセスは、導電性の材料(典型的には金属であるが)である金属の表面をイオン化させて除去することにより行われるものである。EDMはチップ状の電極またはワイヤを使用して行われる。ワイヤEDMは、きれいな仕上げ表面が必要になるとき、またはチップ電極では得ることのできない微妙な加工上の特徴が必要なときに使用される。従来のワイヤEDM加工では、約250μmの径を有するワイヤが使われている。本発明では寸法が小さく、密度高く配置しているため、直径30μmまで小さくしたワイヤを使用するマイクロワイヤEDMを適用している。このシステムの場合、表面の仕上げ状態を100nmまで高めることができ、実質的には鏡面仕上げとなる。図8について説明すると、マイクロEDM加工を使用して貫通穴を加工する際のアプローチとして、2ステップのプロセスをとるのが一般的である。第一ステップは、オス型またはマスター型を作り出すステップである。第二のステップでは、「シンク式EDM」と呼ばれる別のEDMマシーンが使われる。シンク式EDMでは電極としてマスター型が使用され、それによって機械加工された導電性材料にメス型がコピーされる。メス型が、結果的にマイクロアレイとなる。マスター電極を使用することによって、1個の電極で多数のメス型を生産することができ、その結果チップの生産性を向上させることができる。
【0037】
深く反応するイオン・エッチングと比べて、(このプロセスは、一般にシリコンを使用した高アスペクト比を有する構造の場合に使用されるものであるが)、ここで述べたEDM加工は、好都合にも加工時間とコストの両方を低減することができる。
【0038】
マスター型をワイヤEDMで加工した後、マスター型によって0.5mm板厚のシリコン・ウェハーを貫通するマイクロ・チャンネルのアレイを2分以下で堀り下げる。アレイの平面内をマスター型が大きく動く間には、必要な寸法にまで穴径を大きくしたり、表面の仕上げ状態を良くするために追加的な加工時間が必要になる。ここで述べた加工プロセスは断面が<300μm x300μmで貫通穴の間隔が<500μmである10,000個までのマイクロ・チャンネルを掘り下げる際のことを述べたものである。この加工技術のその他の利点として、本明細書で述べているミキシングや光学的読み取り用のアライメントを調整するために使用されるステンレス鋼製の高精度アライメント治具を製造するためにも使用することができることである。
【0039】
高精度アライメント治具との関係から説明すれば、このEDM加工の位置制度は、アレイ全体にわたってチャンネルを配置した場合に、チャンネルのセンター間の総合誤差は<10μmとなる。このことはアレイに加工された穴のアライメントの精度を保証するものであり、疎水性の外部コーティングと組み合わせたときに、チャンネル間のズレを最小にするものである。
【0040】
再び、図7について説明する。これまでその概要を説明した製造工程によって作られたマスター型408は、プラスチック・ブランク400から貫通穴アレイを作り出すために使用される。この製造方法の場合、プラスチックのブロックから貫通穴アレイを作り出すために、一種のパンチとしてマスター型が使用される。しかし、パンチと違って、マスター型はプラスチックを貫通する穴を力で明けるわけではない。マスター型がプラスチックに衝撃を与えるように、適切な運動エネルギーを持たせることによって、基本的にプラスチックを蒸発させ、低い分子重量のガスに変える(残りのエネルギーは熱として消散するが)ことによって穴を明ける。このような方法にすることよって、マスター型はその中で溶融することなく、加工された貫通穴から取り出すことができる。加工したチップからマスター型を容易に取り出すことができるようにするために、チャンネルを形成するマスター型の突起部分には、わずかにテーパーが付けられている。マイクロ・ウェル・アレイの製造においては特に大きな貫通深さ(1mm程度の深さまで)を必要とされるが、この点を除けばこのプロセスは、DVD’sの製造に使用される工程と同様である。この方法の代わりに、EDMで成形されたマスターを使用してインジェクション・モールドによってプラスチック製のマイクロ・ウェルのプレートを作ることもできる。
【0041】
図1bにおいて説明したように、疎水性コーティング22でプラテンの表面をコーティングすることにより、充填作業またはその他の操作中に、多くの貫通穴が充填した液体で連通してしまうことのないようにすることが必要になる。また、液体を保持することができるように親水性のコーティング24で貫通穴の内面をコーティングすることも必要になる。本発明の実施例によれば、内側のコーティング24は、不特定の化学結合や類似の付着分子で派生物が生じるのを化学的にブロックすることができる。
【0042】
本発明の好適な実施例によれば、貫通穴12を高密度に配置したアレイは、シリコンによって作られており、その表面を酸化することによってシリコン酸化物がコーティングされ、導電性シリコンの表面は、薄い酸化膜で覆われる。その後、ウェハーは過酸化水素と硫酸の混合液、またはその他の腐食性溶剤を使用したクリーニング溶液の中に浸され、有機物が除去される。従ってでき上がったクリーンな酸化シリコンは高い表面エネルギーを有する。揮発性の溶剤に溶解した適切なシラン化剤(ユナイテッド・ケミカル・テクノロジー社によってGlassclad 216TMとして販売されている、ポリジメチルシロキサンのようなもの)から生じる蒸気中にアレイを晒すことによって、アレイの上面および下面には、疎水性の膜が形成される。シラン化剤は水酸化物とシラノール基とアレイ表面上で反応し、疎水性のアルキル基と共有結合する。コーティングされたアレイは、アレイを水の溶液の中に浸すことによって水の溶液を均一に充填することができるようになる。液体は、毛細管圧力によって、チャンネルの中へ直ぐに充填され、その他の面が濡れることはない。この方法によって作られた疎水性コーティングは、高湿度の環境下でも安定であり、数日間にわたって繰り返し使用することができる。これとは別の表面の化学的性質であっても、他の材料からできたアレイの表面に疎水性の化学物質を付着させるために利用することができる。例えば、金コーティングした面は、疎水性のアルキル基を付着させるためにアルカン・チオール(alkane thiols)と反応する。これはC.D. Bain他著のJ. Am. Chem. Soc., vol. 111, pp. 321-325 (1989)に記載されている。
【0043】
本発明の他の実施例では、アレイ表面の化学的性質はポリジメチルシロキサン・テロマー(polydimethylsiloxane telomer)を、他のシラン化剤によって置き換えることにより選択的に改質することができる。この方法によれば、アレイに充填中にアレイ表面に水の溶液が張り付くのを防止することができ、更に、隣接する貫通穴内にある水の溶液との間の、物理的バリヤーとしても機能する。この処理を行うときには、アレイの反対側から不活性ガスの圧力がかけられ、貫通穴内に作用する圧力によって、シアン化蒸気が貫通穴内部の表面に到達するのを防止することができる。この方法によれば、好都合にも疎水性コーティングの除去および再施工が可能である。
【0044】
アレイへの充填技術
沈浸による充填方法
図9a-9cについて説明する。貫通穴12を有するアレイ10は、次のいずれかの手法を使って充填される。一つは特定の貫通穴に直接処理する方法であり、もう一つは物質の組成や濃度、その他の特性に基づいて特定のパターンに従ってアレイの全体に充填する手法である。
【0045】
例えば、沈浸による充填は、アレイ全体に同じ溶液を充填するために使用される。貫通穴アレイは加工され、アレイの表面が疎水性に、そして貫通穴の内面が親水性になるように化学的な処理が行われる。図9aに示すように、貫通穴12を備えたプレート10は、第一の液体82を入れた容器90の中に最初に入れられる。いったん、プレート10が第一の液体の中に浸されると、各貫通穴の中にある空気を第一の液体で置き換えるようにするために、プレート10は振られ、そして全ての貫通穴12には第一の液体82が充填される。振る方法、プレート10の一方の面から真空に引く方法、静電気の力を使用する方法、浮力によって空気が置き換えられるように傾ける方法、あるいはその他の方法(これらは例として引用したものであり、限定するものではない)に限らず、貫通穴内の空気を置き換える全ての手段は、本発明の範囲内にある。貫通穴が充填された後、図9cに示すように、プレート10は第一の液体中から取り出される。濡れないアレイの表面から余分についた液体をリザーバ内の液体表面に引き込ませるように、アレイはゆっくりと引上げられる。この他に、沈浸による充填を行う前に、閉じ込められた空気の泡を取り除くために、アレイに水をスプレーするか、水をいれたリザーバ内で音圧をかけるかしてアレイ内を水で充填する。このようにしておけば、より容易にアレイ内に溶液を均一に充填できる。
【0046】
マイクロ・チャンネル内の流体を混合させるために対流と拡散の二つの物理現象が利用される。このことは次のような方法によって検証することができる。即ち、青い染料を含んだ水の溶液でマイクロ・アレイを充填し、水を入れたビーカーの中へマイクロ・アレイを浸すことによって、拡散による希釈が生じることを実証することができる。小さな機械的外乱(ビーカーの側壁を指先でたたくような外乱)を与えると、青色の染料が水によって急速に置換される。沈浸による充填を行う前に、閉じ込められている空気の泡を取り除くために、アレイに水をスプレーするか、水をいれたリザーバ内で音圧をかけるかしてアレイ内を水で充填する方法も本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
同様に、疎水性の表面を持ち、親水性の貫通穴を有するアレイには、アルカンのように表面張力の小さい流体でも均一に充填することができる。
【0048】
アレイ表面上に液滴を流すことにより充填する方法
アレイ表面上に液滴を流すことにより充填する方法は、アレイ全体または一つのアレイ中の一つのグループを構成するチャンネルに、同じ流体を充填するために使用される。これは、コストとロスを少なくしなければならないサンプルを充填するのに適している。液滴を流すことにより充填するために、充填する溶液の液滴は注射針の先端、マイクロ・ピペット、あるいはその他の液体注入毛細管が利用される。液滴は充填すべき貫通穴の上のアレイ面上に置かれる。液滴をアレイの表面に沿って、充填すべきチャンネルの上に流すために毛細管を移動させる。毛細管の先端と液滴の間は、表面張力によって接触し続ける。液滴が使い尽くされると、充填すべき全ての貫通穴が充填されるまで更に別の液滴が置かれる。その後毛細管と残った液滴はアレイの表面から取り除かれる。
【0049】
マイクロ・タイターと貫通穴アレイの間の液体の移送
本発明の更に別の実施例においては、標準的なマイクロ・タイター・プレート(microtiter plate: 滴定量に使用するプレート)(例えば、96, 384, あるいは1536個のウェルを有するもの)から貫通穴を有する単一のアレイまたは多数のアレイに液体を移送するための方法が提供されている。ここで、多数のアレイの場合には、一つのアレイと、次に配置する別のアレイの穴が同じ空間的関係を持って配置され、この穴が互いに一致するように垂直に積み重ねられる(スタックされる)。ここで使用されている、「一致する」という用語は、貫通穴を有する一枚のプレートと貫通穴を有する他の少なくとも一枚のプレートのアライメントが調整されており、そのため、複数のプレートのうちの一枚のプレートに設けられた複数の貫通穴の上部と、複数のプレートのうちの他の一枚のプレートまたは複数のプレートに設けられた貫通穴の底部とが一致していることを言い、それによって連結された複数のチャンネルを形成するものである。
【0050】
ここで述べる充填例では、複数の毛細管チューブ束によって、別々のマイクロ・タイター・プレートあるいは同じマイクロ・タイター・プレートから液体を吸引し、一枚のアレイ内に並行的に充填が行われる。この方法によれば、96-または384-ウェルのマイクロ・タイター・プレートに保存された化学物質ライブラリから極めて早く液体を移送することができる。例えば、一枚のアレイ当たり105個の貫通穴を有する100枚のアレイを、96-ウェルのプレートに保存された液体で充填しようとした場合、各移送操作(プレートの交換、液体の充填および移送)に約20秒かかるとすると、全てのアレイを約6時間で充填することができる。充填操作は、以下に述べるように、環境を制御したチャンバー内(温度、湿度、大気等)でおこなうのが望ましい。
【0051】
マイクロ・タイター・プレートから一又は二以上の貫通穴を設けたアレイへの液体の移送
図10と11について説明する。本発明の更に別の実施例として、標準的なマイクロ・タイター・プレート(96-, 384-, あるいは1536-のウェルの構成のもの)から貫通穴を有する一枚のアレイまたは多数のアレイに液体を移送するために特に適した装置および方法が提供されている。ここで、多数のアレイの場合には、一つのアレイと、次に配置する別のアレイの穴が同じ空間的関係を持って配置され、この穴が互いに一致するように垂直に積み重ねられる(スタックされる)。分子または細胞のライブラリの複製を作るために上述した積み重ねられたアレイが使用される。
【0052】
毛細管チューブの束
断面とって見ると、毛細管チューブの束100は、貫通穴マイクロ・ウェルのアレイ10に設けた貫通穴の中に精度よく適合する外径を持った毛細管チューブ102から構成されている。チューブ102の端部104ではチューブの中心間距離106が貫通穴アレイ10の穴間距離(あるいは、必要であれば複数の穴間距離)に等しくなっており、チューブの反対側端部108ではチューブの中心間距離はマイクロ・タイター・プレート114のウェル112の穴間距離110に等しくなるように設計されている。プレート116,118,および120は貫通穴を備え、中間に分離して配置され、規則正しくチューブを保持する治具として機能する。チューブの中心間距離は長手方向で変化するので、両端の間に配置された追加的な貫通穴プレート116,118,および120は、チューブの束を支持するスペーサー治具としての役割も果たす。
【0053】
一枚の貫通穴マイクロ・ウェル・アレイ10へ液体を充填する場合の他、図10に示す方法によれば、穴位置を一致させたマイクロ・ウェル・アレイのスタック全体122に液体を充填するために使用することができる。毛細管束100内の各チューブ102の内部の体積は、アレイ・スタック122の整列された穴のカラムを合計した体積よりわずかに大きい。例えば、もしアレイ中の貫通穴の寸法が、250μmx1000μmであるとすると、貫通穴1個当たりの体積は62.5nlに等しくなり、100アレイのスタック内にある1セットの穴の体積は6.26μl (100x6.25nl)となる。内径200μmで外径245μmを持った毛細管チューブであれば十分に利用することができる。即ち、最小チューブ長さ200mmでこの1セット分の貫通穴を充填するのに必要な液体の体積を内蔵するこができる。
【0054】
チューブの束100の一方の端部108は、マイクロ・タイター・プレート114のウェルの中に挿入される。即ち、各チューブは対応するウェル112の中に挿入される。次に、各ウェルから対応するチューブへ液体を吸い上げるためにチューブ102の内部には図中に示す126の方向に負の差圧が付加される。負圧は各チューブに個別にかけることもできるし、または図10に示すようにチューブの束の端部を、排気チャンバー124の中へ連結することによって行うこともできる。各チューブを充填した後、マイクロ・タイター・プレート114が取り外される。液体はチューブの束の中にある時間の間、凍らせて保存するか、または加湿した環境の中で保存することもできる。この状態でチューブの束を他の場所へ移すことも容易にできる。複数のチューブの束へ、同じマイクロ・タイター・プレートから液体を充填することができ(各ウェルには十分な量の液体があると仮定して)、または異なったチューブの束へ異なったマイクロ・タイター・プレートから液体を充填することもできる。
【0055】
近接充填
本発明の別の実施例として、図11に断面図として示すものがある。これは、チューブの束130の端部をアレイ・スタック122(アレイを積み重ねたもの)の積み重ねた貫通穴のごく近くに近接させることによって、アレイ・スタックに液体を充填するための方法を提供するものである。液体を入れる貫通穴と同じ中心間距離を有する貫通穴を備えたアライメント・プレート128を使用することにより、チューブの束をアレイ・スタックに対応して整列させることができる。スタック122における各アレイは、貫通穴の穴間隔と同じ寸法(これに限定するものではないが)の小さい間隔sを持たせて配置されている。加圧された容器132の中に配置されているチューブの束の端部に圧力をかけることによって、各毛細管チューブ102から反対側の貫通穴に液体を強制移送できる。貫通穴が充填された後、液滴は二つのプレートの間のスペースの中で成長をし始める。液滴のサイズが液滴がプレートの貫通穴に接触するようになったときに、表面張力によって液体の一部が貫通穴の中に入り込む。いったん、液路が作られると、液体は貫通穴の中に容易に流れ込み、チューブの束の反対側に負荷される圧力によって流入しつづける。圧力負荷を中止すると、貫通穴に入った液滴は後退してプレート間の液路は破断される。その結果、充填後のアレイ・プレートの分離を容易に行うことができるようになる。(即ち、表面張力による抵抗が存在しなくなるからである。) 充填されたプレート10はそこから取り出され、チューブの束も図中に示す128の方向に引き下げられる。従って、垂直方向に穴位置を一致させた貫通穴のセットは、液体の流路となるチャンネルとして機能する。アレイの外部表面には、疎水性のコーティング処理が行われているので、液体が隣の穴に流れ込むのを阻止することができる。この技術は、細胞の懸濁液をアレイ・スタックに充填して、細胞ライブラリの複製プレートを作る場合にも都合よく使用される。
【0056】
マイクロ・タイター・プレートに合わせた穴間距離
本発明の他の実施例によってアレイ・スタックの貫通穴に液体を充填する方法が図12に示されている。この方法は、マイクロ・タイター・プレート114と同じ横方向寸法を有し、マイクロ・タイター・プレート114に配置されたウェルの内、使用する部分の穴間隔と同じ穴間隔を有する貫通穴アレイ10を使用する。アレイ10がマイクロ・タイター・プレートの上面に置かれたとき、一つまたは二つ以上の貫通穴12がマイクロ・タイター・プレート114内の各ウェル112に一致して整列する。従って、中心間距離をウェルの中心間距離と等しくした注射器132のアレイ130を、マイクロ・タイター・プレートと穴位置を一致させた貫通穴スタックの上に配置することができる。注射器のアレイは貫通穴プレート134の中へ挿入され、注射器がアレイ・スタックに沿って動くことができるように、アレイ・プレートは注射器のチューブの機械的なガイドとなる。注射器のプランジャは機械的に固定されており、機械的または電気-機械的ドライバー・モジュール136によって駆動され、並行的に液体は吸い込まれ、あるいは各注射器から液体が押し出される。注射器のチューブの外径は、好適には、それがスライドしてフィットできるように貫通穴の横方向寸法によって決められる。そして注射器のチューブは、アレイ・スタック122の中を通り、マイクロ・タイター・プレート内の各ウェル112に収容されている液体の中へ挿入できるようにその長さが決められている。
【0057】
各注射器に吸入される液体の体積は、アレイ・スタックの整列した貫通穴のカラム内にはいる液体の体積と等しくすることが好ましい。その液体は、注射器アレイをアレイ・スタックから引き上げるときに分配され、分配する速度は引き上げる速度に同調し、注射器アレイが置かれた各貫通穴へ液体を充填する。この操作がいったん完了すると、同じマイクロ・タイター・プレートから新しいアレイ・スタックの穴のセットに液体を更に充填するか、または注射器アレイを洗浄し、別のマイクロ・タイター・プレートから新しいアレイ・スタックの穴のセットに液体が充填される。
【0058】
上述した液体充填の全ての例では、別のマイクロ・タイター・プレートからの液体、あるいは同一のマイクロ・タイター・プレートからの液体で充填された多数の毛細管チューブによってアレイ・スタックが一枚だけのときでも同様に充填することができる。この手法を使って96-, あるいは384-ウェルのマイクロ・タイター・プレートに保存された化学物質ライブラリから液体を移送する時間は極めて短いものである。例えば、96-ウェルのプレート内に保存された液体で、1枚当たり10,000個の貫通穴を有する100枚のアレイを充填するものとし、各移送操作(プレートの交換、液体の注入および移送の各操作)に約20秒かかるものと考えると、全てのアレイを充填するのに約6時間かかることになる。液体の充填作業は、環境制御されたチャンバー内(温度、湿度、大気等)で行われる。本発明では、更に、患者によって吸収される各合成物の作用を予測するために、合成物ライブラリのスクリーニングのための方法をも提供している。
【0059】
フレキシブルな要素の束によるマイクロ・タイター・プレートからの移送
図12b, 12cに示すように、フレキシブルな要素142の束140、例えば形状記憶合金製のファイバー、を用いてマイクロ・タイター・プレート114の個々のウェル112から液体を移送することができる。そのファイバーの外径は、液体を移送するアレイ10の貫通穴12の内径より小さいか等しい。束の中のファイバーの本数は、マイクロ・タイター・プレート114の中のウェルの数と等しくすることができる。ファイバーの束の一方の端部における中心間距離は、貫通穴アレイの穴の中心間距離と等しくし、一方、反対側の端部におけるファイバーの束の中心間距離は、マイクロ・タイター・プレートのウェルの中心間距離と等しくする。このファイバーは、ファイバーの束の一方の端部から他方の端部の間において中心間距離が徐々に大きくなるように設計された一連の貫通穴治具を使用して、一定の位置で保持する。特定の位置でいったん固定されると、形状記憶合金ファイバーを変形させた後の形状が永続するようにするために、変態温度以上にまで加熱する。加熱後室温まで冷却することにより、ファイバーの中心間距離は変化することなく、形状記憶合金ファイバーを保持治具から取り外すことができる。ファイバーの束の一方の端部は、マイクロ・タイター・プレートの各ウェルからの液体を充填する貫通穴アレイの中に挿入することができる。他方の端部は、各ファイバーがマイクロ・タイター・プレートのウェル上に並べて配置できるようになっており、そのファイバーの端部は各ウェル内に収納された液体の中へ浸すことができる。ファイバーの束をマイクロ・タイター・プレートから引上げると、図12cに示すように、小さい体積の液滴144が(例えば表面張力によって)各ファイバー142の端部に付着して残る。貫通穴アレイ10の穴12を通って引っ張るようにしてそのファイバーの束の反対側端部に力を作用させると、その液体は対応する貫通穴と接触しその中へ入り込む。ファイバー142を穴12を通って引っ張られると、ファイバーが取り出されるときに、表面張力が作用し、液体を貫通穴の中に保持することができる。
【0060】
連続的な希釈
アドレスを特定できる注入方法を使用することにより、同じ溶質で異なった特定の濃度を有する液体を一連の貫通穴に充填することができる。貫通穴を溶媒の中に浸すか、微小な注射器232によって溶媒を分配するか(図21に示す)、あるいはその他の液体移送装置を使用した充填によって、選択された一連の貫通穴に、Z ナノリッター(nL)と表示された量の溶媒を充填する。これは図13のフロー・チャートに第一のステップ120として示されている。ステップ121では、微小な注射器232、またはその他の液体移送装置が、Xモル/リッターの溶質の入った溶液で充填され、それから第一の貫通穴の上に配置される。この溶液Y nLを注射器の先端から押し出し、注射器のチップの端部において小滴をつくる。ここで(Y+Z) nLは凸状のメニスカスができるようにするのに十分な体積である。注射器の先端にできた溶媒の小滴が第一の貫通穴に入っている溶液の表面に接触するまで注射器のチップを下げていき、二つの液体を混合122することによって、濃度YX/(Y+Z)モル/リッターの溶液を作り出す。注射器のチップの外側表面およびアレイの表面は、分配される溶液によって濡れてはならない。更に、ステップ123で注射器のプランジャは、稀釈化された溶液Y nLを吸い上げ、引出される。注射器のチップは次の(N+1)の貫通穴124の上に配置され、Y nLの稀釈された溶液を、別の係数Y/(Y+Z)で稀釈125すべき溶媒の中へ分配される。このプロセスは、一連の個々の貫通穴に溶液を分配しながら繰り返され、いずれの場合も係数Y/(Y+Z)で稀釈される。
【0061】
化学的傾斜法
本発明の好適な実施例によれば、特定の化学物質の種がアレイの全ての穴に均一に注入されず、むしろ、二次元的な貫通穴アレイにおいて少なくとも一次元的な方向で化学物質の種の傾きが生じるように注入することができる。この明細書および添付する特許請求の範囲のいずれかに使われているように、用語「傾き」は、通常の数学的な意味として使用されている。即ち、一方向またはそれ以上の方向に沿い、明示された量が変化していることを意味する。ここで、方向は貫通穴アレイの表面に沿ってとられる。従って、貫通穴内に充填された特定の化学物質の種の濃度の傾きは、特定の方向に対応して存在するか、あるいはいくつかの方向に対応して存在すると言うことができる。従って、特定の傾きは、単調なものであっても良く(必ずしも単調である必要はないが)、特定の方向において化学物質の種の濃度は上がったり、下がったりする。
【0062】
ここで、図9a-9cおよび14a-14cについて説明する。前述した沈浸による充填法は貫通穴のアレイ内において濃度の傾きを作り出すために使用することができる。この方法では、溶液内の化学物質が種々の貫通穴の中で拡散によって他の物質と混合し、又は反応するための時間が異なるように、入れる速度を制御した上で、アレイは化学物質の溶液の中へ沈浸される。
【0063】
図9a-9cについて説明したように、沈浸による充填法を使用してアレイを第一の液体82によって充填した後、続いて図14aに示すように、プレート10を第二の液体86を入れた第二の容器84の中へ入れる。プレート10の貫通穴は既に第一の液体82が充填されているので、第二の液体86は拡散により中へ入り、貫通穴12の内容物と混合し、置き替わり、あるいは反応する。これらのプロセスは速度に強く影響を受ける。物理的あるいは化学的な反応である特定の反応が完了するまでプレートを十分に浸さないで、図14bに示すように、プレート10を第二の液体86の中へ部分的に浸すことができる。特定の時間浸したあと、図14cに示すように全体を引上げるか、部分的に引上げることもできる。もし、プレート10を異なった深さ88まで浸したり、特定の時間だけ第二の液体86の中へ再度浸したりすると、貫通穴12のある部分には、違った物理的、あるいは化学的プロセスを受けた材料が含まれることになる。従って、貫通穴アレイの横方向(図中に示すZの方向)向かって傾きが作り出される。当然、このプロセスは特定の傾きを作り出すために、繰り返したり、あるいは修正したりすることができる。
【0064】
本発明の別の実施例では、アレイ内の特定の位置に配置された貫通穴の中へ拡散させる、特定の化学物質の種の濃度を空間的に調整するために、他の手段が使用されている。図14dには、液体86の中へ浸された貫通穴アレイ・プレートの側面図が示されている。貫通穴12の中への液体86の拡散を、膜またはフィルター87によって調整することができる。例えば、膜またはフィルター87にテーパを設けたりまたは別の方法によって、アレイ内貫通穴の位置に応じて特定の化学物質の種に傾きが生じる。
【0065】
これに関係する例として、最初に溶液の薄いエッジを形成するゲルで充填された貫通穴アレイを、混合を開始するポリメリゼーション(polymerization;ポリマーを作るプロセス)の中へゆっくり入れていくことにより、穴の中のゲルの密度が異なるようになる。y軸周りにプレートを90°回転させ、それから自由陽イオンとともにゲルを生じさせる試薬の中へゆっくり浸し、更にy軸周りに180°回転させ、陰イオンとともにゲルを生じさせる試薬の中へゆっくり浸すことによって、2-Dポリアクリルアミドのゲルと類似しているが、それよりも分離速度が大きく、分離した蛋白質にアクセスしやすい、蛋白質混合物を分離するために有用な二次元的な広がりと電荷を持った選択的マトリックスが作り出される。
【0066】
他の実施例においては、試薬Aと試薬Bの2成分系の反応においてAとBの濃度を最適化するために貫通穴アレイ内の濃度の傾きが利用される。混合プロセスについて、以下に詳細に説明する。図15は貫通穴アレイの断面を示したものであり、番号90を付した第一の貫通穴アレイには試薬Aが充填されている。この試薬Aは化学的傾斜法を使用して充填されており、アレイのX方向である行に沿った方向の貫通穴内においてはAの濃度は同じであり、これと直行する方向であるアレイの列においては濃度の傾きを持っている。
【0067】
番号92を付した第二の貫通穴アレイには試薬Bが充填されている。この試薬Bは、アレイのX方向である行に沿った方向においては濃度の傾きを有し、これと直行する方向であるアレイの列においては同一の濃度となっている。二つのアレイを接触させることによって相対する貫通穴12の間で混合が行われる。結合されたアレイの各行および列に沿っては、混合物内のBに対するAの相対的な濃度は変化し、その濃度は既知である。アレイの対角線上では、混合した液体の中の濃度は等しいが、全体としての濃度は変化している。AとBの相対的な比率を、予め定めた二次元的な傾きを持つようにするための方法の変形として、対角線に沿って浸すことによってAとBのアレイを充填する方法、Bに対するAの比率の二次元的傾きを持った2つのアレイを直交させて組み合わせる方法、あるいはいくつかの貫通穴は空であって、試薬AまたはBを充填したアレイを用いて希釈する方法がある。各貫通穴の中での反応条件は既知なので、貫通穴の内容物を解析することによって、簡単に最適な反応条件を決定できる。溶液内に作り出される溶質の濃度以外の物理量の傾きについても、本発明の範囲内に含まれるものであると理解すべきである。そして、限定するものではないが、そのような傾きには温度、電界、磁場等の傾きが含まれる。
【0068】
混合と希釈
次のセクションで詳細に述べるように、混合や希釈する目的のために、マイクロ・ウェル・プレートを都合よく積み重ねる(スタックする)ことができる。一つの例として、貫通穴に細胞のサンプルを割り当てる場合がある。例示のために、一辺が250μmの正方形断面をした500μmの深さを有する一枚のプレート上の貫通穴を考える。このようなマイクロ・チャンネルを有する3枚のプレートを積み重ねる(2ステップ検定の例となるものであるが)と、チャンネルの合計の体積(即ち、三つの貫通穴を結合した体積である)は、ほぼ100 nLとなる。もし、全体のチャンネルが濃度の濃いイースト菌の培養細胞(〜107 /mL)で充填されると、各チャンネルは約103のイースト菌の細胞を含むことになる。70μm3のイースト菌細胞の体積によれば、100 nLのチャンネル当りの細胞の最大数は106のオーダーである。そして、生物試験に反応するイースト菌細胞として必要となるマイクロ・チャンネル当りの最小細胞数は100であり、これらの値と対応するものである。
【0069】
図15-19について説明する。これらの図には実質的に平坦な2つの貫通穴アレイ・プレート90,92(即ち、フランジも窪ませた部分もないアレイ・プレートである)の内容物を混合し、希釈するプロセスが示されている。特に図15では、貫通穴アレイ90,92の部分的な断面図が示されている。各プラテンの上面および下面は、前に詳細に述べたように、疎水性の表面である。貫通穴の側面24は親水性であることが望ましい。両プラテンの貫通穴12は、例えば、水の溶液のような表面エネルギーの高い液体150によって過充填されており、各貫通穴12は凸状の曲面を持ったメニスカス152を有し、これがプラテンの表面154の上へ突起している。プラテンの表面154は疎水性であるため、例えば、アルカンのような表面エネルギーの低い液体であっても凸状のメニスカス152を形成させるのに、十分な量の液体を貫通穴12に充填することができる。図16は、二つのプラテン90,92の断面図を示したものであり、穴位置を一致させた貫通穴12の各液体150の表面を接触させた状態にある。表面張力が解放されることにより、互いに反対側のプラテン90,92に保持される液体との間で、対流による混合が行われる。プラテンの二つの表面が互いにいったん接触すると、穴位置を一致させた二つの貫通穴の各セットは、図17に示すように長いチャンネル170を形成する。長いチャンネル内の混合は対流と静的な拡散の結合によって行われる。
【0070】
図18について説明する。アレイ90,92の内の一つまたは両方の貫通穴12が不足充填の状態にあり(プレートが接触した状態であっても、液体180と182を分離するようなエアー・ギャップが存在するような状態であるが)、二つのプラテン90,92の表面の間に小さな隙間188が存在していたとしても、二つの液体の表面を接触させるために、図中の矢印184で示す方向に、わずかに正の圧力を負荷することができる。
【0071】
更に、図19に関連する本発明の別の実施例では、第一のプラテン90は凸状のメニスカス190、192を形成するために、十分な量の液体150が充填されており、一方第二のプラテン92は、凸状のメニスカスを形成するには至らないが、二つのプラテンを積み重ねた時に、第一のプラテンのメニスカスの表面190と接触するに十分な量の液体194が充填されている。この場合にも、前に述べたのと同じように、液体の表面を接触させることにより混合させることができる。
【0072】
環境因子の制御
本発明の実施例における方法および装置は、種々の操作中、貫通穴の周辺環境は高い相対湿度(典型的には95%以上)が維持された状態に置かれる。高湿度状態を維持することによって、貫通穴アレイ中に保持される溶液の蒸発を生じないようにすることはできないまでも、最小に押さえることができる。体積の減少量は、雰囲気温度や各貫通穴の中に保持される液体の体積、並びに必要な操作を行うのに必要となる時間の長さにも依存する。高い相対湿度環境は、体積減少を許容できるレベルに維持するために必要となる。温度が21℃のときに、水の小滴からの蒸発ロスは、図20に示すようにフィックの法則(Fick’s law)によって予測することができる。50μLの小滴の場合(曲線200)と50 nLの小滴の場合(曲線202)に10%の蒸発ロスが生じる時間(秒単位で)を、相対湿度の関数としてプロットしてある。もし湿度レベルが100%近くでなければ、小さい小滴の場合、非常に早く蒸発してしまい、相対湿度65%の時には、11秒で10%の質量ロスが生じる。
【0073】
アドレスを特定できる充填または除去作業中の湿度制御
図21に示す装置は、湿度制御の対象となる閉環境の容積を小さくするために提供されたものである。本発明の実施例によれば、貫通穴アレイ10は水のリザーバー210の上に固定される。96-ウェル、384-ウェル、あるいは更に高い密度のマイクロ・タイター・プレート212は貫通穴アレイに隣接して、同じリザーバーの上に固定される。リザーバー210にはリザーバーが動いた時に、液体が揺れないようにするために、スポンジ214のような水を吸収する材料が入っている。光学的に透明なプレート216が、例えば、シリコン・グリースのような粘性流体の薄い層218の分だけリザーバーの側壁から離されて、リザーバーの上に配置される。一つまたは二つ以上の小さな穴220が透明なプレート216に明けられている。各穴を通して、微小注射器の針222、微小毛細管、ピン、カニューレ(排管)、あるいはその他の液体移送用の要素が挿入される。
【0074】
液体移送要素224がy軸に沿って、貫通穴10の上面226へ近づいたり、または離れたりすることができるように、コンピュータ制御されたモーター駆動による移動ステージが準備されている。液体移送要素224には、例えば、プランジャ234を備えた注射器232がある。更に、アレイとリザーバーは液体移送要素に対してx軸とy軸でできる面内を移動することができ、望ましくはコントローラ230の制御によるモーター駆動のステージにより移動することができるものである。もし必要であるなら、例えば液体移送装置を駆動するために、更にコンピュータ制御のステージを準備することもできる。マイクロ・タイター・プレートと貫通穴アレイの間の材料の移送は、図10-12に関連して説明した方法によって行われる。液体移送要素を清掃または殺菌するための溶液を収納した追加のリザーバーが、上述した装置の入ったチャンバー236の内に備えることもできる。追加のリザーバに代えて、清掃または殺菌する目的のために大きなリザーバー210の中に入れられた水を使うこともできる。充填または除去作業中に目視またはビデオ・カメラ240による光学的検査のために、アレイを照明する照明源238も備えられている。
【0075】
沈浸による充填と混合中の湿度制御
沈浸による充填と混合中に貫通穴アレイからの液体の蒸発を防止するため、図21に示すような閉環境である密閉チャンバー236が使用される。密閉チャンバー236は、例えば、混合操作のためのアライメント治具156(図15に示す)、モーターや移送ステージ228、種々の操作を行うために必要となる装置、およびアレイを収納するのに十分な大きさを有する。冷水蒸気が外部の加湿器によって生成され、ポートを通ってチャンバー内へ放出される。超音波加湿器は、0.13立方メートルのチャンバーを95%以上のレベルの湿度を維持するために十分な蒸気を発生させることができる。チヤンバー全体に水の蒸気を均一に分配するために、ファンと隔壁からなる循環システムが備えられている。種々のドアー、ハッチ、および目視ポートがチャンバーの中へアクセスするために準備されている。ボックス内の温度は、抵抗加熱器と温度制御器によって制御される。このようなチャンバーは、商業生産されている乳幼児の保育器に別途加湿器を取り付けることによって組み立てることができる。
【0076】
光学観測用の窓のように、乾燥した状態を維持しなければならない面や腐食性の金属は、結露を防ぐため周辺温度よりわずかに高い温度に加熱してある。チャンバー内の湿度レベルをモニターするために湿度センサーが備えられている。全てのコンピュータや電気的なハードウェアはチャンバーの外に配置され、ワイヤ・ハーネスを経由してチャンバー内のコンポーネントと接続されている。貫通穴アレイはチャンバー内で充填され、あるいは外部で充填された後、加湿した密閉カセットの状態にあるチャンバー内へ移される。
【0077】
光学的解析中および充填ステーション間の移送中における湿度制御
図22aについて説明する。この図は、番号250を付したコンパクトな移動用カセットの分解斜視図を示したものである。このカセットは、加湿充填チャンバー236(図21参照)から、例えば光学的解析を行うために、アレイを取り出したときに、相対的湿度を95%以上に維持するためのものである。図22bは図22aに示す加湿カセット250の側方断面を示したものである。貫通穴アレイ10と水のマイクロ・レンズ・アレイ252が密閉空間内にコンパクトに固定されている。貫通穴アレイは、アライメント・ピン256またはその他の手段によって配置されかつ保持される。アレイ・マウント258とカバー・ホルダ260は、接着剤またはその他の機械的な手段によってマウントに固定された光学的に透明なプレート262によってカバーされる。光学的解析装置の内部にアレイを容易に配置するために、マウントには、マグネット、ピン、溝、あるいはその他の物理的な手段を備えることもできる。透明なガラス製の微小な毛細管の束252(あるいは、マイクロ・チャンネル・アレイという) (ガラス製の微小な毛細管の束は、マサチューセッツ州サウスブリッジにあるスコット・ファイバー・オプティクスによって製造されたものである。) が,貫通穴アレイの下に取り付けられ、固定ネジまたはその他の機械的な手段によって固定されている。この毛細管の束252の中に保持された水が蒸発することによって湿度は上昇する。各毛細管264の代表的な寸法は、直径が200μmで長さが1mmである。マイクロ・チャンネル・アレイ252の上面266と下面268とは、上述した手順に従って疎水性の表面に仕上げられている。毛細管264のアレイ内における配列は規則的である必要はない。毛細管内の水270は、光源272からの光をアレイを通過して散光するのに役立つマイクロ・レンズのセットを形成し、それによって光学的解析のための均一な照明環境を提供することができる。この液体のマイクロ・レンズ・アレイを使用することも、本発明の範囲内に含まれる。
【0078】
水のレンズ・アレイを使用するもう一つの利点は、水が表面張力によって内部に保持されるということである。従って、オペレータはカセット内の湿度を維持するための特別な操作を必要とせず、プレートを部屋の中で移動させる場合に、水平な面上に置いたりするときに生じる加速度が大きくならないように配慮する必要もない。更に、アレイの内部で細胞の成長を促進させるために、培養中にそのカセットを揺り動かすこともできる。
【0079】
その他の環境因子の制御
適切に組み立てられたチャンバー内にアレイを閉じ込め、従来から用いられている方法によってチャンバー内の環境を制御することにより圧力、光、および温度を制御することができる。蒸散を防止するため、そのチャンバーは高い相対湿度を維持するための装置を備えていなくてはならない。
【0080】
本発明の実施例についてその利点、およびオプショナルな特徴について説明してきたが、これらの実施例は単に例示するためのものであって、けっしてこれらに限定するものではない。この技術分野に精通したものであれば、本発明の基本的な考え方およびその範囲から逸脱することなく、ここで述べた実施例に対する代替案を考案し、改造することは、実施例を追加することと同様、容易に行うことができる。このような修正ないし改造は特許請求の範囲に記載した発明の範囲内に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や懸濁液内に存在する細胞を含む材料を大量の微小サンプルとして操作、移送、解析するための装置を生産し使用する方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
マイクロリッターのオーダまたはそれよりも更に少量で、多数の試薬やアナライト(analytes)を反応させ、その後に分析を行うような、微小領域における化学は製薬業界やその他の産業において新しい物質を開発する観点から、ますます重要になってきている。このような反応や分析は、様々な条件下で行うことが必要になるものであり、100万もの化合物を含むような巨大なライブラリーを準備するようなことになるかもしれない。重要な問題は、莫大な数の化合物とその反応を並行して扱う必要があるということであり、莫大な数量(もしかすると、1日当たり何十万または何百万のオーダーの数)の化合物の化学分析を行わなければならないという問題に直面している現在の技術に関係するものである。従来の技術では、1個のウェル(well)当たり概略1マイクロリッターから1ミリリッターの間の量の液体化合物を収納する96個、384個、あるいは1536個のウェルを備えたウェル・プレートを使用するのが一般的であり、ポリスチレンのような材料を使用し、平らな表面上に設けられた一ヶ所の開口部を有するウェル内で化学反応と分析が行われる。100万個のマイクロリッター・レベルのウェル・プレートを形成するために、従来の技術を適用することは実用的ではない。即ち、実験室レベルで100万個の試料を分析できるようにする新しいアプローチに対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の好適な実施例においては、複数の異なったサンプル・コンテナにサンプルを充填する方法であって、サンプル・コンテナが全体の構造を構成し、各コンテナ内の特定の物質の濃度が構造内におけるコンテナの位置に関係した傾きによって特徴付けられる。この方法は第一の液体を異なったコンテナの中に充填するステップとコンテナを第二の液体に接触させるステップを有し、第二の液体が特定の物質を含み、この特定の物質が異なったコンテナの中へ拡散する程度を制御して、コンテナの間で異なるようにしている。
【0004】
本発明の別の実施例においては、異なったコンテナの間で、第二の液体に接触する時間が異なるようになっている。コンテナの中に入る特定の物質の拡散速度は変えることができる。その方法は、第二の液体の中で特定の物質の傾きを作り出すステップを更に含んでいても良く、その傾きが電気泳動を適用することによって作り出されるものであっても良い。膜の位置によって異なった透過性を持つ膜を通して第二の液体とコンテナとを接触させることによって拡散速度を変えることもできる。
【0005】
コンテナに液体を充填するステップが、プラテン内の複数の本質的に平行な貫通穴内に液体を充填するステップを含むこともできる。この液体の充填は以下のプロセスで実施することができる。即ち、液体移送装置の端部に液体の小滴を形成するステップと、プラテンの上面を横切って小滴を引きずり、充填すべき貫通穴を覆うように液体移送装置を動かすステップと、小滴を使い尽くすようにして液体を分配するステップと、貫通穴が充填された後、表面から小滴を引っ込めるステップとから成るプロセスである。
【0006】
本発明の更に別の実施例によれば、プラテンの複数の貫通穴の中に液体サンプルを充填するための方法が提供されている。この方法は、分配のための端部を有する毛細管チューブのアレイを充填するステップと、異なった貫通穴の近くに各分配のための端部を配置するステップと、毛細管チューブを通してプラテンの貫通穴へ液体を移送するステップとを有する。別の方法では、電気泳動のように、液体中の特定の物質の濃度が異なった領域を作り出すステップと、液体を異なった領域から異なったコンテナに移送するステップとを有する。その液体は毛細管チューブによって移送されるか、または貫通穴を備えた構造物を液体の表面に接触させるかして移送される。
【0007】
本発明の更に別の実施例によれば、二つの実質的に平行な平坦面と、平坦面に実質的に垂直に配置された複数の貫通穴とを備えたプラテンの製造のための方法が提供されている。この方法は、一枚の熱可塑性プラスチック材料を準備するステップと、複数の穴を有する型の表面に、熱可塑性プラスチック材料のシートを接触させて置くステップと、特定の断面を持った複数の突起を有するパンチを、熱可塑性プラスチック材料に貫通穴を明けることができるように、突起が型の穴と整列するようにして熱可塑性プラスチック材料のシートに接触させるステップと、を備えている。本発明の別の実施例では、一枚の導電性材料が複数の穴を有する型の表面に接触させて置かれ、特定の断面を持った複数の突起を有するEDMマンドレルを、導電性材料に貫通穴を明けることができるように、突起が型の穴と整列するようにして導電性材料のシートの近くに運ばれる。
【0008】
本発明の更に別の実施例では、第一と第二の表面を有し、これらの表面が本質的に平行であり、表面に実質的に垂直に配置された複数の貫通穴とを備えたシリコン製プラテンに疎水性のコーティングを適用するための方法を提供している。この方法は、第一の表面を酸化させるステップと、酸化された第一の表面をクリーニングするステップと、第二の表面の方向から複数の貫通穴へ不活性ガスの正圧をかけるステップと、シラン・カップリング剤蒸気に第一の表面を晒すステップと、を備えている。
【0009】
本発明の更に別の実施例によれば、プラテンの複数の貫通穴の中へ液体を充填する方法が提供されている。この方法は、少なくとも一つの連続したチャンネルを形成するように、各プラテンの複数の貫通穴の少なくとも一つが、互いに隣接するプラテンの貫通穴と一致するようにして少なくとも二つのプラテンを一緒にスタックするステップと、各連続したチャンネルに液体を移送するステップとを備えている。各プラテンは空隙によって各隣り合うプラテンから離しておくことができ、また液体を毛細管チューブ、または少なくとも一つのカニューレによって移送することもできる。
【0010】
少なくとも二つのプラテンの貫通穴内に保持されている液体を混合する方法が提供される。この方法は、結合された貫通穴の間で液体が拡散できるように、各プラテンの複数の貫通穴の内の少なくとも一つが他のプラテンの対応する貫通穴と結合されるような方法で、特定の時間の間、複数のプラテンを一緒にスタックするステップを含む。これらのプラテンは、混合後に分離してもよい。
【0011】
本発明の更に別の実施例によれば、システムを加湿するための方法が提供されている。この方法は、複数の平行なマイクロ・チャンネルを有するマイクロ・チャンネル・プレートに液体を充填するステップと、加湿すべきシステムの周辺に充填したマイクロ・チャンネル・プレートを配置するステップと、から成る。
【0012】
本発明の更に別の実施例では、散光のための方法を提供している。この方法では、液体が基部側および先端側端部を有する複数の平行なマイクロ・チャンネルの中へ入れられ、マイクロ・チャンネルがマイクロ・チャンネル・プレーとを構成する。複数の平行なマイクロ・チャンネルの各々の基部側端部はライトで照明され、マイクロ・チャンネルの先端側端部から散光を発生する。
【0013】
本発明の更に別の実施例では、1マイクロリッターよりも小さい体積の異なった液体サンプルを扱うための、穴を明けたプラテンが提供される。このプラテンは、親水性の材料からできた内層と、内層の外側両面に結合され、疎水性材料からできた二つの外層から成る。そして貫通穴が構成する二次元アレイは、異なった液体サンプルを保持するための、少なくとも二つの穴が異なった体積を持ち、貫通穴は、各々300μm以下の直径を持ち、プラテンの二つの各平坦面に実質的に垂直な方向であって、内層と二つの外層を貫通する貫通穴が配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、添付する図面に関する以下の説明によって、更に容易に理解することができるようになる。
【図1a】図1aは、本発明の一つの実施例である、高密度貫通穴アレイの平面図を示したものである。
【図1b】図1bは、本発明の一つの実施例である、高密度貫通穴アレイの断面図を示したものである。
【図1c】図1cは、本発明の別の実施例である、貫通穴の連続シート・アレイの側方からの概要図を示したものである。
【図2a】図2aは、図1aに示したプラテンの一部分の平面図であり、四角形状に貫通穴の中心を配置した形態のものを示す。
【図2b】図2bは、図1aに示したプラテンの一部分の平面図であり、六角形状に密集させて貫通穴の中心を配置した形態のものを示す。
【図3】図3は、本発明の好適な実施例であり、液体サンプルの解析のために複数の貫通穴を備えた積層プラテンの一部分を、側方からの断面図として示したものである。
【図4】図4 は、本発明の実施例の一つであり、貫通穴を設けた丸型のサンプル・ウェハーの平面図を示したものである。
【図5a】図5aは、アレイの位置の関数として貫通穴の体積が決まるように設計されたアレイの例を示す。
【図5b】図5bも同様に、アレイの位置の関数として貫通穴の体積が決まるように設計されたアレイの例を示す。
【図5c】図5c も同様に、アレイの位置の関数として貫通穴の体積が決まるように設計されたアレイの例を示す。
【図5d】図5dも同様に、アレイの位置の関数として貫通穴の体積が決まるように設計されたアレイの例を示す。
【図5e】図 5e は、本発明の実施例を示すものであり、全体として平行な形状を有し、液体クロマトグラフィあるいは電気泳動に使用される貫通穴プリズムの断面図を示したものである。
【図5f】図 5f は、本発明の実施例を示すものであり、全体として平行な形状を有し、液体クロマトグラフィあるいは電気泳動に使用される貫通穴プリズムの断面図を示したものである。
【図6】図6は、連結アレイの例を示したものである。
【図7】図7は、本発明の実施例の一つを示したものであり、貫通穴のアレイを圧縮成形するための圧縮型の形態を描いたものである。
【図8】図8は、本発明の実施例の一つを示したものであり、EDMによる貫通穴アレイの製造ステップを示したフローチャートである。
【図9a】図9aは、第一の液体で貫通穴アレイを充填する操作のシーケンスの一部を示したものである。
【図9b】図9bは、第一の液体で貫通穴アレイを充填する操作のシーケンスの一部を示したものである。
【図9c】図9cは、第一の液体で貫通穴アレイを充填する操作のシーケンスの一部を示したものである。
【図10】図10は、本発明の実施例の一つを示したものであり、大きな構成のマイクロ・タイター・プレートの内容物をサンプリングし、それを貫通穴アレイのサブ・アレイに充填する方法を概念的に描いたものである。
【図11】図11は、本発明の実施例の一つを示したものであり、大きな構成のマイクロ・タイター・プレートの内容物をサンプリングし、それを多数の貫通穴アレイのサブ・アレイに充填する方法を概念的に描いたものである。
【図12a】図12aは、本発明の実施例を示したものであり、多数積み重ねたマイクロ・ウェル・アレイのサブ・アレイへ並行して液体を充填する状況を描いたものである。
【図12b】図12bは、本発明の実施例を示したものであり、フレキシブルな要素を使用することによって、マイクロ・ウェル・アレイのサブ・アレイへ並行して液体を充填する状況を描いたものである。
【図12c】図12cは、本発明の実施例を示したものであり、フレキシブルな要素を使用することによって、マイクロ・ウェル・アレイのサブ・アレイへ並行して液体を充填する状況を描いたものである。
【図13】図13は、本発明の実施例の一つを示したものであり、マイクロ・ウェル・アレイの内容物を連続的に希釈するための方法を説明するフローチャートである。
【図14a】図14aは、本発明の実施例の一つを示したものであり、貫通穴アレイの各貫通穴を第二の液体に浸し、アレイ内の貫通穴の位置によって特定の特性を有する傾きを作り出すための必要な操作シーケンスの一部を描いたものである。
【図14b】図14bも同様に、本発明の実施例の一つを示したものであり、貫通穴アレイの各貫通穴を第二の液体に浸し、アレイ内の貫通穴の位置によって特定の特性を有する傾きを作り出すための必要な操作シーケンスの一部を描いたものである。
【図14c】図14cも同様に、本発明の実施例の一つを示したものであり、貫通穴アレイの各貫通穴を第二の液体に浸し、アレイ内の貫通穴の位置によって特定の特性を有する傾きを作り出すための必要な操作シーケンスの一部を描いたものである。
【図14d】図14dは、本発明の実施例の一つを示したものであり、密度の傾きを作り出すために、徐々に変化するフィルターを装着した貫通穴アレイ・プレートの側面図を示したものである。
【図15】図15は、本発明の実施例を示したものであり、貫通穴アレイの内容物を、貫通穴の位置を一致させた別の貫通穴アレイの内容物と混合させる状態を描いたものである。
【図16】図16は、本発明の実施例を示したものであり、貫通穴アレイの内容物を、貫通穴の位置を一致させた別の貫通穴アレイの内容物と混合させるときの、シーケンスの一状態を描いたものである。
【図17】図17も同様に、本発明の実施例を示したものであり、貫通穴アレイの内容物を、貫通穴の位置を一致させた別の貫通穴アレイの内容物と混合させるときの、シーケンスの一状態を描いたものである。
【図18】図18は、本発明の実施例を示したものであり、外部圧力を作用させることにより、貫通穴アレイの内容物を、別の貫通穴アレイの内容物と混合させる状態を描いたものである。
【図19】図19は、本発明の実施例を示したものであり、十分に充填された貫通穴アレイの内容物を、貫通穴の位置を一致させた、別の十分に充填されていない貫通穴アレイの内容物と混合させる状態を描いたものである。
【図20】図20は、水の小滴の蒸発に要する時間の計算値を、周囲の相対湿度の関数としてプロットしたものである。
【図21】図21は、本発明の実施例の一つを示したものであり、アレイの周辺環境を高い相対湿度に維持しつつ、貫通穴に液体を充填し、または除去するために使用する加湿チャンバーを描いたものである。
【図22a】図22aは、蛍光画像解析、培養、そして別の加湿環境の間でトレイを移動させる間に、アレイから液体が蒸発するのを防止するために使用するホータブルな加湿チャンバーの分解斜視図を示したものである。
【図22b】図22bは、図22aで示した、ホータブルな加湿チャンバーの側方断面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
貫通穴アレイ
本発明は、貫通穴のあいたアレイ(array)内において異なった化学反応を発生させるための方法を提供する。本発明は、例えばスクリーニング処理を行うときに、異なる反応条件をアレイの種々の貫通穴に適切に提供できることから、都合よく使用することができる。本発明を利用する形態は多くあるが、その中の一つの例として、アレイに設けられた異なった貫通穴に、異なる化学種を入れることができ、また、種々の化学種の濃度を、種々の貫通穴間で異なるようにすることもできる。従って、本発明は、例えば、患者に吸収される各化合物の機能を予測するために、化合物のライブラリーをスクリーニングする方法を提供することができる。
【0016】
図1aと1bに関連して説明する。本発明の好適な実施例によれば、貫通穴を有する高密度アレイが提供される。図1aはプラテン (platen) 10、またはこの呼び方とは別に「基板」、「サンプル・ウエハー」あるいは「貫通穴プレート」とここで呼ばれているものの平面図を示す。図1bに示す横断面の図中に示すように、プラテン10は、プラテンの一方の表面14から反対側表面16までプラテンを貫通して設けられた貫通穴12の担体である。用語「プラテン」は実質上平行な面を持ち、その構造の厚さよりも横方向の寸法の方が実質的に大きい構造を指す一方、これに替る幾何学的形状を持つものであっても本発明の範囲内に含まれる。そして用語「プラテン」は限定的なものではない。例えば、プリズム状の幾何学的形状をした「プラテン」についても後述している。
【0017】
本発明の実施例によれば、貫通穴12は、検定ウェル (well) (あるいは「マイクロウェル」と呼ぶ)を構成する。(従って、本明細書においては、「貫通穴」、「ウェル」、および「マイクロウェル」のことを総称して「サンプル・コンテナ」と呼ぶものとする。)貫通穴12は直円柱とすることができ、あるいはこれに代えて、長方形断面とすることもできる。この他の形態に形成された貫通穴もまた、本発明の範囲内にある。貫通穴プレート10は導電性のケイ素で作られているが、その材料が試料物質に対して化学的に不活性な場合や、適切な表面処理によって不活性にしてあるならば、金属、グラス、あるいはプラスチックのような剛性のある材料も使用することができる。
【0018】
円や長方形の断面をした幾何学的形状のものも使うことができるが、各貫通穴12は、典型的にはほぼ正方形断面をしている。また、貫通穴12は「チャンネル」とも呼ばれる。
【0019】
図2aに示すように、貫通穴12の中心が長方形のグリッドの交点に配置されるか、あるいは図2bに示すように、六角形の格子状に密集させて配置することもできる。図3について説明すると、貫通穴12の典型的な寸法特性(直径であるが)36が、100〜400μm程度であるのに対して、プラテン10の典型的な厚さ20は0.5から2mmのオーダーである。従って、面14から面16の間の各貫通穴の体積は、10-7cm3のオーダーかそれより大きい程度である。いずれの配置形態であっても、添付した特許請求の範囲に記載の発明の範囲内に含まれるが、貫通穴は、典型的には穴の直径の2倍程度の中心間距離を持って配置されている。特に、穴と穴の間隔38として、典型的には500μmのものが使用されており、プレートの1平方センチメートル当り400個の穴密度を有する。後述するような製造方法を採ることにより、各マイクロウェルの体積が100ナノリッター (nL) (10-7cm3)以下であるような化学物質または生化学の検定のためのマイクロウェルを生産することができる。従って、ウェルの配置密度は、従来技術に比べて数オーダーも増加してきている。
【0020】
小さいサブ・アレイを構成するため、貫通穴をグルーピングすることも行われる。更に、再生産することができる貫通穴のパターンが複数のサブ・アレイに使用される。各貫通穴12は、アレイ内の各固有のアドレスによって識別することができる。
【0021】
再び、図1bについて説明すると、プラテン10は、中央の層24と外層22からなる積層材料として形成することもできる。本発明の好適な実施例においては、毛細管現象を利用してサンプル30をマイクロウェルの中に充填し易くし、また毛細管現象によるサンプル液体の流失を防止するために、プラテン10の表面14と16であって、マイクロウェルの外側部分22は疎水性を有する壁面となっている。他方、貫通穴の内部24の壁面は、親水性の表面を有し、そのため、水のような液体サンプルを特別によく引き付ける。同様な方法によって、親水性の面と疎水性の貫通穴を持つアレイは、アルカン(alkane)のような低表面張力の液体によって均一に充填することができる。貫通穴壁面の両端部にある疎水性の層は1ミクロンまたはそれより小さいオーダーの厚さである。マイクロウェルへ液体サンプルを充填する際、マイクロウェルの4つの壁面によって囲まれる体積の約10%程度余分のサンプルを各ウェルに充填するのが一般的である。このように過充填することにより、液体サンプル30はそのサンプルの上面および下面の両方の面において、凸状のメニスカス(筒内の液体が表面張力によって凹または凸状になる現象のことを言う)表面34を形成する。充填不足のマイクロウェル26の場合には、液体サンプル30の上面および下面の両方の面に、凹状のメニスカス28が生じる。
【0022】
貫通穴12の開口部は正方形である必要はない。また、本発明の他の実施例では、貫通穴の全てまたはその内のいくつかの周辺の平坦な面上14にフランジ8が形成され、他方その反対側の面16の貫通穴12のエッジ部分は丸められた窪ませた部分6が形成される。後で詳述するように、プラテンが重ねられる場合、混合または希釈化のプロセスにおいて、フランジ8と窪ませた部分6は連続してプラテン10を重ねる時に、穴位置を一致させるのに都合のよいものとなる。
【0023】
貫通穴12には第一のサンプル18を液体の状態で充填することができる。サンプル18は第二のサンプルと反応することができ、第二のサンプルには種々のテストサンプルを含めることができると共に、例えば光学的マーカーを使用し、反応した後またはそれと並行して反応生成物を解析することにより、多数の反応プロセスを実現でき、解析も並行して実施することができる。例えば、生物学的分析に使用するときには、第一のサンプル18として、薬理学的に関連する蛋白質やその他の分子を含む溶液を使用することができる。ここで特許請求の範囲に記載しているように、この他の生物学的あるいは非生物学的分析への応用も本発明の範囲内である。上述した溶液には、例えば、水の懸濁液内の細胞、真核(動物、酵母菌)の細胞や原核(バクテリア)の細胞、ハイブリッド細胞、そして抗体や酵素を含む生物学上の分子が含まれる。このような全ての試薬は明細書、および添付する特許請求の範囲において「ターゲット」として言及されている。溶液1ミリリッター(mL)中107個の細胞を有する濃度の酵母菌細胞を使用すれば、100ナノリッター(nL)のウェル中に1000個のオーダーの細胞を含むようにすることができる。基本的には、チップ全体またはプラテン10の貫通穴ウェルのサブ・セットには単一の細胞の株を保持することができる。ここで、貫通穴ウェルのサブ・セットとはプラテン10の中の隣接した一つの領域を意味する。
【0024】
製薬のための研究で使用される一般的な検定手順においては、一つ又は二つ以上の貫通穴から成るサブ・セットに選択した材料を充填し、更に一つ又は二つ以上のアナライト(analytes)を含むテスト・サンプルを貫通穴ウェルに充填することになるが、このとき貫通穴ウェルのアドレスを明確にすることが必要になる。
【0025】
アドレスが判るようにして、貫通穴のサブ・セットに充填されるテスト・サンプルには、薬品の候補または既知の薬品を含めることができる。テスト・サンプルは複数の成分から構成されていてもよく、同時に充填しても、順番に充填しても良い。テスト・サンプルの成分として、アナライト、拮抗薬、試薬、溶液、あるいはその他の材料を含んでもよく、液体の状態で充填しても、その他の状態で充填しても良い。本発明の好適な実施例においては、貫通穴の中に既に液体の状態で存在する第一のサンプルの中へ拡散し、容易にかつ速く反応させるようにするため、テスト・サンプルは液体の状態で貫通穴ウェルに充填される。特定の貫通穴のサイトへ割り当てられる第二のサンプルとして使用される物質の群については、この明細書と添付する特許請求の範囲において、物質の「ライブラリ」として記述されている。典型的な応用例においては、ライブラリは実質的に規模の大きいものであり、従って非常に多くの物質の反応と解析を容易に並行して実行できるようにするために、本発明の機能を利用している。特に製薬のための研究で利用する場合には、ライブラリは103から109の間の数にのぼる物質および物質の組み合わせとなる。
【0026】
次に、図1cについて説明する。貫通穴サンプル容器のアレイを組み入れたスクリーニング・システムの処理量は、貫通穴12の連続シート300を使用することによって更に増加する。図1bに関連して前述したように、貫通穴の内部は親水性であり、シート300の表面は、これも前述したように疎水性である。流体槽304に入れられた水の媒体302の中を通ってシート300を送ることにより、貫通穴12を連続的に充填することができる。貫通穴12が充填された後、シート300はスプール306に巻き取られるか、あるいは保存しておくためのカセットに巻き取られ、その後に検定が行われるか、あるいは直ぐに検定することもできる。検定は、蛍光吸収度(fluorescence absorbance)、や化学発光(chemi-luminescence)測定のような光学的な読み取りによって行われ、これらの全てはCCDアレイのような光学的検出装置の前を横切って、シートを送ることによって行われる。
【0027】
サンプル・アレイ・シート300は、好ましくは、高精度の生産工程を使用し、あるいはマッチド・セット(matched sets)を使用して、位置合わせされた穴と共に製造される。シートは、ポリマー、エラストマー、あるいはアモルファス・メタルを含む金属から作られる。例えば、図16-19に関連して後で詳述するように、反応を行わせるため、またはその他の目的で貫通穴を設けたプラテンを重ねて使用しているが、この場合においても、これと同じ方法で複数のシートを合わせて使用することもできる。図1cは各貫通穴に収納されている液体を混合させるために、ミキシング・エリア312内において、貫通穴310を備えた第二のシート308をシート300と接触させている状態を示している。この実施例を含めた応用例の中には、ポリマー・ビーズの表面に付着させた遺伝子ライブラリまたは化学物質ライブラリのスクリーニングが含まれる。本発明におけるこれらの実施例では、極めて多くの処理量が要求されるものであるが、高コストの自動化コンポーネントを低減又は排除し、サンプルの取り扱いおよび検出モジュールを備えたコンパクト・サイズのスクリーニング・システムを構成している。シートに設けられた穴は、もし必要があれば、パンチ・アレイまたはUVレーザーでオン・ラインにて生産することもできる。一ステップでの検定によって改善した酵素を探し出すために、遺伝子ライブラリをスクリーニングする応用例として、β―ガラクトシターゼ酵素(beta galactosidase enzyme)中に突然変異体が含まれるE. coli遺伝子ライブラリが使用される。E. coli細胞はホスフェート (phosphate) に限定した媒体の中で200nlの液体中に平均1細胞が存在するような濃度にまで成長する。この媒体はMUG、即ちβ―ガラクトシターゼに対する蛍光物質をも含んでいる。貫通穴シートには、外部が疎水性で内部が親水性の貫通穴が、1平方メートル当たり107個の密度で設けられている。位置合わせした穴は精度良く計量分配するためにテープ内に固定される。各貫通穴には70nlの液体を保持するこができる。貫通穴のシートはスプールから巻き戻され、各貫通穴を充填することができるように、細胞の溶剤を貯めた槽の中をガイドされて通される。その後、そのシートはスペーサの上へ乗せられ巻き取り側のスプールに巻き取られる。スペーサは液体が汚染されるのを防止し、スプールからのガスの出入りをし易くする。スプールは加湿した37℃の環境で24時間保管され、その間細胞は培養される。その後シートはスプールから巻き戻され、波長350nmの均一な光学照明源と、450nmのフィルターを備えたCCD画像システムの間を通過させられる。非常に活動的な状態にあるシート内の酵素の群体が記録され、これらの群体は更に別の解析をするために微小流体を取り扱うロボット・システムによって回収される。この検定は、一緒に位置合わせを行い、バクテリアを入れた第一のシートと、これと同一のシートに蛍光物質を入れた第二のシートを組み合わせることによって行うこともできる。多数のバクテリアに対する出力信号を標準化するために、吸収度測定を行うこともできる。
【0028】
図4に示した、本発明の別の実施例の場合には、ハンドリング装置に対応させて、センターリングするために中央に穴322が設けられており、この円形状サンプル・ウェハー320内のアレイには貫通穴12が配置されている。
【0029】
本発明に関係する他の実施例を示した図5について説明する。これまでに述べてきたものの他に、別の幾何学的形状をした貫通穴12が考えられる。アレイ内における空間的な位置の関数として、貫通穴の体積を変えることもできる。V=k s2 lで与えられる貫通穴の体積は、穴の横方向寸法 s、長さ l、および特定の穴の断面形状に依存する定数 kの関数となる。図5aで示したように、穴の横方向寸法を変えることにより、アレイ中の空間的な位置の関数として断面積を変えることができる。穴の体積を表す一つの変数s2は穴の寸法が3.3倍になれば体積が10倍になる係数であることを表す。一つの例として、平行な平面を有するプレートで、穴の寸法が、プレートの横方向の一軸方向または二軸方向に線形的に増加していくものが考えられる。アレイ中の位置によって異なった体積の貫通穴を作る別の方法として、図5bに示すように、穴の長さ52を決定することになるプレートの上面および下面の間の寸法を変化させる方法がある。別の特殊な例として、図5cに示すように、クサビ又はプリズムのようにプレートの上面14と底面16を互いにある角度を持たせて傾けることもできる。この例では、アレイ内において表面が傾いた方向に沿って移動した場合には体積はその移動距離に対して線形に変化する一方、これと直行する方向の穴の列では、穴の長さと体積は一定である。本発明の別の実施例では、アレイの二次元的な広がりの中の二つの方向で貫通穴の体積が変化するように、一次元的または二次元的に互いに傾いた連続した平面によって作られるアレイもある。更に、別の実施例では、図5dに示すように、半球状の曲面を有するような平面的でない曲面54を有するものも作られている。
【0030】
本発明の別の実施例として、種々の幾何学的形状を有するアレイにおいて、図6に示すように、アレイを容易に重ねることができるようにするために、第一のアレイの幾何学的形状を補間する表面を有する第二のアレイが使用される。突起した部分68をこれに対応する窪ませた部分70に挿入することによって、プレート60の貫通穴64とプレート62の貫通穴66とのアライメントを調整することができる。アレイ表面に垂直な回転軸に対して回転対称となる幾何学的形状を有し、4つ折り以上の回転対称性を有するような幾何学的特徴を有するようなアレイでは、幾何学的に突起した部分と窪んだ部分を合わせることにより、インターロックと自己調芯を簡単に行うことができ、これも本発明の範囲に含まれる。このような幾何学的な配列にすることにより、好都合にも、平面状のアレイを積み重ねて、位置合わせを行うために通常必要となるアライメント・ピンは必要ない。
【0031】
体積が一定でないアレイの応用
体積が一定でない貫通穴を有するアレイの一つの応用として、後述するような、希釈シーケンスのように異なった体積の液体を混合する場合が考えられる。この方法の利点は、これも後述することであるが、幅広い範囲の希釈が可能となる一方、数多くのアレイを重ねる必要がないことである。
【0032】
体積が一定か、または一定でない貫通穴のいずれかを備えたアレイの別の応用としては、クロマトグラフィーの溶離液からごく少量の物質を収集する場合である。貫通穴アレイは、後述するように、好都合にもごく少量のものを非常に数多く集める能力を有しており、そのため貫通穴アレイの中に分離して取り込むことができる。このことにより、従来技術よりもクロマトグラフィーの分離の分解能を都合よく高めることになる。
【0033】
標準的な幾何学形状を有していないアレイの更に別の応用例として、大規模に並行して行う液体クロマトグラフィーまたは電気泳動がある。更に詳細に説明すると、図5eに示すような貫通穴プレート56が使用される。この貫通穴プレート56は横方向の一方向において板厚が増加(プレートがプリズム状の形状となる)し、その結果アレイの中の位置によって穴の長さが線形的に増加する。第二の貫通穴プリズム57は、共通する直角三角形の斜辺58に沿って第一のプリズムと一体化しており、このことによって、実質的に同じ長さを持つ貫通穴12のアレイを作ることができる。この構造を液体クロマトグラフィのカラムとして使用する際には、各穴が液体クロマトグラフィの特徴でもあるポーラスなゲル55で満たされることになる。解析すべきサンプル51は、サンプル・プレート53を形成し、アレイの一方の端面に配置され、そして例えば、各穴の中へ流体サンプルを移動させるために圧力がかけられる。混合物内の各成分はゲル状マトリックスの中を異なった速度で移動し、その結果、カラムの全長に沿って、混合物が分離することになる。例えば、小さい分子のものはチャンネル内を反対側の端部に向かって速く移動するのに対し、より大きい分子のものは移動速度が遅く、同じ時間経過しても、小さい分子の移動距離の一部分だけを移動することになる。プリズム状のアレイを結合した際にできる三角形の斜辺と貫通穴が交差する位置で考えると、クロマトグラフィのカラムに沿って異なった移動距離を有する貫通穴を提供することになる。図5fに示すように、二つのプリズムを分離することにより、混合物成分の各途中段階での状態がアレイの位置によって分布して存在し、これらのデータを得ることができる。時間の関数以外に、時間またはそれと等価な長さとして表すことができる中間カラムを間に置き、既知の時間だけ遅延させてアレイの中を同一のサンプルを移動させることによって、クロマトグラフィを位置の関数に変換することができる。プレートの板厚が増加する方向に沿って、各貫通穴から出力される材料をシーケンシャルに解析することによって、等価なクロマトグラフが再現できる。クサビの方向に対して直行する方向のアレイにおいて、ゲルのポロシティが異なるようにすることにより、更に混合物の分離が可能になる。ゲルのポロシティが減少すれば、更に各成分を保持する時間が増加するので、混合物の成分のより細かい分離が可能になる。同様な方法によって、電気泳動による分離が可能であり、この場合適用される電界がドライビング・フォースとなる。
【0034】
貫通穴アレイの製造
図7について説明する。プラテン10に使用される材料に合った適切な手段によって、プラテン10内に貫通穴を形成することができる。例えば、貫通穴を形成する方法としては、ガラスまたはポリマーに100μmの貫通穴を形成することができる紫外線(UV)エキシマ・レーザーを使用したレーザー・アブレーションによる方法がある。貫通穴を形成することができる更に別の技術的手段として、機械的なドリリング、微小放電加工(EDM)、導電性材料のイオン化除去のための高周波パルスによる技術、あるいは、本発明の別の実施例であるが、選択的化学エッチングまたは荷電粒子エッチング技術がある。また、種々の組成を持ったガラスファイバーからできた微小毛細管の束をプリフォームとして引き揃え、これをスライスすることによってプラテンを形成し、その後に貫通穴を形成するためにエッチング処理して製作する方法もある。
【0035】
図7に示すように、サーモプラスチックやポリカーバイドのような材料を使い、高圧ラムと共にパンチ・アレイ402とダイ・アレイ404を使用してプラテンのブランク400をパンチングすることによって貫通穴12を形成することもできる。後で詳細に説明するように、パンチング・ピン406はパンチング・ブロック408にマイクロ・ワイヤEDM(micro-electrical spark discharge machining)を使用して形成する。あるいは、化学エッチングまたは荷電粒子エッチングのようなマイクロ・エッチングの技術を使用することもできる。また、パンチ・アレイ402はマイクロソーイング(microsawing)の技術を使って形成することもできる。ダイ・アレイ404も同様に、製造技術上良く知られた微小加工技術を使用して形成することができる。
【0036】
高密度の貫通穴を有するアレイは導電性(>10Ω-1cm-1)シリコン・ウェハーを含む導電性の材料を使い、ワイヤおよび型を使用したシンク式EDMを使用して加工される。一般的には、EDMはインジェクション・モールド用の成形型を加工するために使用されているものである。良く知られているようにEDM加工のプロセスは、導電性の材料(典型的には金属であるが)である金属の表面をイオン化させて除去することにより行われるものである。EDMはチップ状の電極またはワイヤを使用して行われる。ワイヤEDMは、きれいな仕上げ表面が必要になるとき、またはチップ電極では得ることのできない微妙な加工上の特徴が必要なときに使用される。従来のワイヤEDM加工では、約250μmの径を有するワイヤが使われている。本発明では寸法が小さく、密度高く配置しているため、直径30μmまで小さくしたワイヤを使用するマイクロワイヤEDMを適用している。このシステムの場合、表面の仕上げ状態を100nmまで高めることができ、実質的には鏡面仕上げとなる。図8について説明すると、マイクロEDM加工を使用して貫通穴を加工する際のアプローチとして、2ステップのプロセスをとるのが一般的である。第一ステップは、オス型またはマスター型を作り出すステップである。第二のステップでは、「シンク式EDM」と呼ばれる別のEDMマシーンが使われる。シンク式EDMでは電極としてマスター型が使用され、それによって機械加工された導電性材料にメス型がコピーされる。メス型が、結果的にマイクロアレイとなる。マスター電極を使用することによって、1個の電極で多数のメス型を生産することができ、その結果チップの生産性を向上させることができる。
【0037】
深く反応するイオン・エッチングと比べて、(このプロセスは、一般にシリコンを使用した高アスペクト比を有する構造の場合に使用されるものであるが)、ここで述べたEDM加工は、好都合にも加工時間とコストの両方を低減することができる。
【0038】
マスター型をワイヤEDMで加工した後、マスター型によって0.5mm板厚のシリコン・ウェハーを貫通するマイクロ・チャンネルのアレイを2分以下で堀り下げる。アレイの平面内をマスター型が大きく動く間には、必要な寸法にまで穴径を大きくしたり、表面の仕上げ状態を良くするために追加的な加工時間が必要になる。ここで述べた加工プロセスは断面が<300μm x300μmで貫通穴の間隔が<500μmである10,000個までのマイクロ・チャンネルを掘り下げる際のことを述べたものである。この加工技術のその他の利点として、本明細書で述べているミキシングや光学的読み取り用のアライメントを調整するために使用されるステンレス鋼製の高精度アライメント治具を製造するためにも使用することができることである。
【0039】
高精度アライメント治具との関係から説明すれば、このEDM加工の位置制度は、アレイ全体にわたってチャンネルを配置した場合に、チャンネルのセンター間の総合誤差は<10μmとなる。このことはアレイに加工された穴のアライメントの精度を保証するものであり、疎水性の外部コーティングと組み合わせたときに、チャンネル間のズレを最小にするものである。
【0040】
再び、図7について説明する。これまでその概要を説明した製造工程によって作られたマスター型408は、プラスチック・ブランク400から貫通穴アレイを作り出すために使用される。この製造方法の場合、プラスチックのブロックから貫通穴アレイを作り出すために、一種のパンチとしてマスター型が使用される。しかし、パンチと違って、マスター型はプラスチックを貫通する穴を力で明けるわけではない。マスター型がプラスチックに衝撃を与えるように、適切な運動エネルギーを持たせることによって、基本的にプラスチックを蒸発させ、低い分子重量のガスに変える(残りのエネルギーは熱として消散するが)ことによって穴を明ける。このような方法にすることよって、マスター型はその中で溶融することなく、加工された貫通穴から取り出すことができる。加工したチップからマスター型を容易に取り出すことができるようにするために、チャンネルを形成するマスター型の突起部分には、わずかにテーパーが付けられている。マイクロ・ウェル・アレイの製造においては特に大きな貫通深さ(1mm程度の深さまで)を必要とされるが、この点を除けばこのプロセスは、DVD’sの製造に使用される工程と同様である。この方法の代わりに、EDMで成形されたマスターを使用してインジェクション・モールドによってプラスチック製のマイクロ・ウェルのプレートを作ることもできる。
【0041】
図1bにおいて説明したように、疎水性コーティング22でプラテンの表面をコーティングすることにより、充填作業またはその他の操作中に、多くの貫通穴が充填した液体で連通してしまうことのないようにすることが必要になる。また、液体を保持することができるように親水性のコーティング24で貫通穴の内面をコーティングすることも必要になる。本発明の実施例によれば、内側のコーティング24は、不特定の化学結合や類似の付着分子で派生物が生じるのを化学的にブロックすることができる。
【0042】
本発明の好適な実施例によれば、貫通穴12を高密度に配置したアレイは、シリコンによって作られており、その表面を酸化することによってシリコン酸化物がコーティングされ、導電性シリコンの表面は、薄い酸化膜で覆われる。その後、ウェハーは過酸化水素と硫酸の混合液、またはその他の腐食性溶剤を使用したクリーニング溶液の中に浸され、有機物が除去される。従ってでき上がったクリーンな酸化シリコンは高い表面エネルギーを有する。揮発性の溶剤に溶解した適切なシラン化剤(ユナイテッド・ケミカル・テクノロジー社によってGlassclad 216TMとして販売されている、ポリジメチルシロキサンのようなもの)から生じる蒸気中にアレイを晒すことによって、アレイの上面および下面には、疎水性の膜が形成される。シラン化剤は水酸化物とシラノール基とアレイ表面上で反応し、疎水性のアルキル基と共有結合する。コーティングされたアレイは、アレイを水の溶液の中に浸すことによって水の溶液を均一に充填することができるようになる。液体は、毛細管圧力によって、チャンネルの中へ直ぐに充填され、その他の面が濡れることはない。この方法によって作られた疎水性コーティングは、高湿度の環境下でも安定であり、数日間にわたって繰り返し使用することができる。これとは別の表面の化学的性質であっても、他の材料からできたアレイの表面に疎水性の化学物質を付着させるために利用することができる。例えば、金コーティングした面は、疎水性のアルキル基を付着させるためにアルカン・チオール(alkane thiols)と反応する。これはC.D. Bain他著のJ. Am. Chem. Soc., vol. 111, pp. 321-325 (1989)に記載されている。
【0043】
本発明の他の実施例では、アレイ表面の化学的性質はポリジメチルシロキサン・テロマー(polydimethylsiloxane telomer)を、他のシラン化剤によって置き換えることにより選択的に改質することができる。この方法によれば、アレイに充填中にアレイ表面に水の溶液が張り付くのを防止することができ、更に、隣接する貫通穴内にある水の溶液との間の、物理的バリヤーとしても機能する。この処理を行うときには、アレイの反対側から不活性ガスの圧力がかけられ、貫通穴内に作用する圧力によって、シアン化蒸気が貫通穴内部の表面に到達するのを防止することができる。この方法によれば、好都合にも疎水性コーティングの除去および再施工が可能である。
【0044】
アレイへの充填技術
沈浸による充填方法
図9a-9cについて説明する。貫通穴12を有するアレイ10は、次のいずれかの手法を使って充填される。一つは特定の貫通穴に直接処理する方法であり、もう一つは物質の組成や濃度、その他の特性に基づいて特定のパターンに従ってアレイの全体に充填する手法である。
【0045】
例えば、沈浸による充填は、アレイ全体に同じ溶液を充填するために使用される。貫通穴アレイは加工され、アレイの表面が疎水性に、そして貫通穴の内面が親水性になるように化学的な処理が行われる。図9aに示すように、貫通穴12を備えたプレート10は、第一の液体82を入れた容器90の中に最初に入れられる。いったん、プレート10が第一の液体の中に浸されると、各貫通穴の中にある空気を第一の液体で置き換えるようにするために、プレート10は振られ、そして全ての貫通穴12には第一の液体82が充填される。振る方法、プレート10の一方の面から真空に引く方法、静電気の力を使用する方法、浮力によって空気が置き換えられるように傾ける方法、あるいはその他の方法(これらは例として引用したものであり、限定するものではない)に限らず、貫通穴内の空気を置き換える全ての手段は、本発明の範囲内にある。貫通穴が充填された後、図9cに示すように、プレート10は第一の液体中から取り出される。濡れないアレイの表面から余分についた液体をリザーバ内の液体表面に引き込ませるように、アレイはゆっくりと引上げられる。この他に、沈浸による充填を行う前に、閉じ込められた空気の泡を取り除くために、アレイに水をスプレーするか、水をいれたリザーバ内で音圧をかけるかしてアレイ内を水で充填する。このようにしておけば、より容易にアレイ内に溶液を均一に充填できる。
【0046】
マイクロ・チャンネル内の流体を混合させるために対流と拡散の二つの物理現象が利用される。このことは次のような方法によって検証することができる。即ち、青い染料を含んだ水の溶液でマイクロ・アレイを充填し、水を入れたビーカーの中へマイクロ・アレイを浸すことによって、拡散による希釈が生じることを実証することができる。小さな機械的外乱(ビーカーの側壁を指先でたたくような外乱)を与えると、青色の染料が水によって急速に置換される。沈浸による充填を行う前に、閉じ込められている空気の泡を取り除くために、アレイに水をスプレーするか、水をいれたリザーバ内で音圧をかけるかしてアレイ内を水で充填する方法も本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
同様に、疎水性の表面を持ち、親水性の貫通穴を有するアレイには、アルカンのように表面張力の小さい流体でも均一に充填することができる。
【0048】
アレイ表面上に液滴を流すことにより充填する方法
アレイ表面上に液滴を流すことにより充填する方法は、アレイ全体または一つのアレイ中の一つのグループを構成するチャンネルに、同じ流体を充填するために使用される。これは、コストとロスを少なくしなければならないサンプルを充填するのに適している。液滴を流すことにより充填するために、充填する溶液の液滴は注射針の先端、マイクロ・ピペット、あるいはその他の液体注入毛細管が利用される。液滴は充填すべき貫通穴の上のアレイ面上に置かれる。液滴をアレイの表面に沿って、充填すべきチャンネルの上に流すために毛細管を移動させる。毛細管の先端と液滴の間は、表面張力によって接触し続ける。液滴が使い尽くされると、充填すべき全ての貫通穴が充填されるまで更に別の液滴が置かれる。その後毛細管と残った液滴はアレイの表面から取り除かれる。
【0049】
マイクロ・タイターと貫通穴アレイの間の液体の移送
本発明の更に別の実施例においては、標準的なマイクロ・タイター・プレート(microtiter plate: 滴定量に使用するプレート)(例えば、96, 384, あるいは1536個のウェルを有するもの)から貫通穴を有する単一のアレイまたは多数のアレイに液体を移送するための方法が提供されている。ここで、多数のアレイの場合には、一つのアレイと、次に配置する別のアレイの穴が同じ空間的関係を持って配置され、この穴が互いに一致するように垂直に積み重ねられる(スタックされる)。ここで使用されている、「一致する」という用語は、貫通穴を有する一枚のプレートと貫通穴を有する他の少なくとも一枚のプレートのアライメントが調整されており、そのため、複数のプレートのうちの一枚のプレートに設けられた複数の貫通穴の上部と、複数のプレートのうちの他の一枚のプレートまたは複数のプレートに設けられた貫通穴の底部とが一致していることを言い、それによって連結された複数のチャンネルを形成するものである。
【0050】
ここで述べる充填例では、複数の毛細管チューブ束によって、別々のマイクロ・タイター・プレートあるいは同じマイクロ・タイター・プレートから液体を吸引し、一枚のアレイ内に並行的に充填が行われる。この方法によれば、96-または384-ウェルのマイクロ・タイター・プレートに保存された化学物質ライブラリから極めて早く液体を移送することができる。例えば、一枚のアレイ当たり105個の貫通穴を有する100枚のアレイを、96-ウェルのプレートに保存された液体で充填しようとした場合、各移送操作(プレートの交換、液体の充填および移送)に約20秒かかるとすると、全てのアレイを約6時間で充填することができる。充填操作は、以下に述べるように、環境を制御したチャンバー内(温度、湿度、大気等)でおこなうのが望ましい。
【0051】
マイクロ・タイター・プレートから一又は二以上の貫通穴を設けたアレイへの液体の移送
図10と11について説明する。本発明の更に別の実施例として、標準的なマイクロ・タイター・プレート(96-, 384-, あるいは1536-のウェルの構成のもの)から貫通穴を有する一枚のアレイまたは多数のアレイに液体を移送するために特に適した装置および方法が提供されている。ここで、多数のアレイの場合には、一つのアレイと、次に配置する別のアレイの穴が同じ空間的関係を持って配置され、この穴が互いに一致するように垂直に積み重ねられる(スタックされる)。分子または細胞のライブラリの複製を作るために上述した積み重ねられたアレイが使用される。
【0052】
毛細管チューブの束
断面とって見ると、毛細管チューブの束100は、貫通穴マイクロ・ウェルのアレイ10に設けた貫通穴の中に精度よく適合する外径を持った毛細管チューブ102から構成されている。チューブ102の端部104ではチューブの中心間距離106が貫通穴アレイ10の穴間距離(あるいは、必要であれば複数の穴間距離)に等しくなっており、チューブの反対側端部108ではチューブの中心間距離はマイクロ・タイター・プレート114のウェル112の穴間距離110に等しくなるように設計されている。プレート116,118,および120は貫通穴を備え、中間に分離して配置され、規則正しくチューブを保持する治具として機能する。チューブの中心間距離は長手方向で変化するので、両端の間に配置された追加的な貫通穴プレート116,118,および120は、チューブの束を支持するスペーサー治具としての役割も果たす。
【0053】
一枚の貫通穴マイクロ・ウェル・アレイ10へ液体を充填する場合の他、図10に示す方法によれば、穴位置を一致させたマイクロ・ウェル・アレイのスタック全体122に液体を充填するために使用することができる。毛細管束100内の各チューブ102の内部の体積は、アレイ・スタック122の整列された穴のカラムを合計した体積よりわずかに大きい。例えば、もしアレイ中の貫通穴の寸法が、250μmx1000μmであるとすると、貫通穴1個当たりの体積は62.5nlに等しくなり、100アレイのスタック内にある1セットの穴の体積は6.26μl (100x6.25nl)となる。内径200μmで外径245μmを持った毛細管チューブであれば十分に利用することができる。即ち、最小チューブ長さ200mmでこの1セット分の貫通穴を充填するのに必要な液体の体積を内蔵するこができる。
【0054】
チューブの束100の一方の端部108は、マイクロ・タイター・プレート114のウェルの中に挿入される。即ち、各チューブは対応するウェル112の中に挿入される。次に、各ウェルから対応するチューブへ液体を吸い上げるためにチューブ102の内部には図中に示す126の方向に負の差圧が付加される。負圧は各チューブに個別にかけることもできるし、または図10に示すようにチューブの束の端部を、排気チャンバー124の中へ連結することによって行うこともできる。各チューブを充填した後、マイクロ・タイター・プレート114が取り外される。液体はチューブの束の中にある時間の間、凍らせて保存するか、または加湿した環境の中で保存することもできる。この状態でチューブの束を他の場所へ移すことも容易にできる。複数のチューブの束へ、同じマイクロ・タイター・プレートから液体を充填することができ(各ウェルには十分な量の液体があると仮定して)、または異なったチューブの束へ異なったマイクロ・タイター・プレートから液体を充填することもできる。
【0055】
近接充填
本発明の別の実施例として、図11に断面図として示すものがある。これは、チューブの束130の端部をアレイ・スタック122(アレイを積み重ねたもの)の積み重ねた貫通穴のごく近くに近接させることによって、アレイ・スタックに液体を充填するための方法を提供するものである。液体を入れる貫通穴と同じ中心間距離を有する貫通穴を備えたアライメント・プレート128を使用することにより、チューブの束をアレイ・スタックに対応して整列させることができる。スタック122における各アレイは、貫通穴の穴間隔と同じ寸法(これに限定するものではないが)の小さい間隔sを持たせて配置されている。加圧された容器132の中に配置されているチューブの束の端部に圧力をかけることによって、各毛細管チューブ102から反対側の貫通穴に液体を強制移送できる。貫通穴が充填された後、液滴は二つのプレートの間のスペースの中で成長をし始める。液滴のサイズが液滴がプレートの貫通穴に接触するようになったときに、表面張力によって液体の一部が貫通穴の中に入り込む。いったん、液路が作られると、液体は貫通穴の中に容易に流れ込み、チューブの束の反対側に負荷される圧力によって流入しつづける。圧力負荷を中止すると、貫通穴に入った液滴は後退してプレート間の液路は破断される。その結果、充填後のアレイ・プレートの分離を容易に行うことができるようになる。(即ち、表面張力による抵抗が存在しなくなるからである。) 充填されたプレート10はそこから取り出され、チューブの束も図中に示す128の方向に引き下げられる。従って、垂直方向に穴位置を一致させた貫通穴のセットは、液体の流路となるチャンネルとして機能する。アレイの外部表面には、疎水性のコーティング処理が行われているので、液体が隣の穴に流れ込むのを阻止することができる。この技術は、細胞の懸濁液をアレイ・スタックに充填して、細胞ライブラリの複製プレートを作る場合にも都合よく使用される。
【0056】
マイクロ・タイター・プレートに合わせた穴間距離
本発明の他の実施例によってアレイ・スタックの貫通穴に液体を充填する方法が図12に示されている。この方法は、マイクロ・タイター・プレート114と同じ横方向寸法を有し、マイクロ・タイター・プレート114に配置されたウェルの内、使用する部分の穴間隔と同じ穴間隔を有する貫通穴アレイ10を使用する。アレイ10がマイクロ・タイター・プレートの上面に置かれたとき、一つまたは二つ以上の貫通穴12がマイクロ・タイター・プレート114内の各ウェル112に一致して整列する。従って、中心間距離をウェルの中心間距離と等しくした注射器132のアレイ130を、マイクロ・タイター・プレートと穴位置を一致させた貫通穴スタックの上に配置することができる。注射器のアレイは貫通穴プレート134の中へ挿入され、注射器がアレイ・スタックに沿って動くことができるように、アレイ・プレートは注射器のチューブの機械的なガイドとなる。注射器のプランジャは機械的に固定されており、機械的または電気-機械的ドライバー・モジュール136によって駆動され、並行的に液体は吸い込まれ、あるいは各注射器から液体が押し出される。注射器のチューブの外径は、好適には、それがスライドしてフィットできるように貫通穴の横方向寸法によって決められる。そして注射器のチューブは、アレイ・スタック122の中を通り、マイクロ・タイター・プレート内の各ウェル112に収容されている液体の中へ挿入できるようにその長さが決められている。
【0057】
各注射器に吸入される液体の体積は、アレイ・スタックの整列した貫通穴のカラム内にはいる液体の体積と等しくすることが好ましい。その液体は、注射器アレイをアレイ・スタックから引き上げるときに分配され、分配する速度は引き上げる速度に同調し、注射器アレイが置かれた各貫通穴へ液体を充填する。この操作がいったん完了すると、同じマイクロ・タイター・プレートから新しいアレイ・スタックの穴のセットに液体を更に充填するか、または注射器アレイを洗浄し、別のマイクロ・タイター・プレートから新しいアレイ・スタックの穴のセットに液体が充填される。
【0058】
上述した液体充填の全ての例では、別のマイクロ・タイター・プレートからの液体、あるいは同一のマイクロ・タイター・プレートからの液体で充填された多数の毛細管チューブによってアレイ・スタックが一枚だけのときでも同様に充填することができる。この手法を使って96-, あるいは384-ウェルのマイクロ・タイター・プレートに保存された化学物質ライブラリから液体を移送する時間は極めて短いものである。例えば、96-ウェルのプレート内に保存された液体で、1枚当たり10,000個の貫通穴を有する100枚のアレイを充填するものとし、各移送操作(プレートの交換、液体の注入および移送の各操作)に約20秒かかるものと考えると、全てのアレイを充填するのに約6時間かかることになる。液体の充填作業は、環境制御されたチャンバー内(温度、湿度、大気等)で行われる。本発明では、更に、患者によって吸収される各合成物の作用を予測するために、合成物ライブラリのスクリーニングのための方法をも提供している。
【0059】
フレキシブルな要素の束によるマイクロ・タイター・プレートからの移送
図12b, 12cに示すように、フレキシブルな要素142の束140、例えば形状記憶合金製のファイバー、を用いてマイクロ・タイター・プレート114の個々のウェル112から液体を移送することができる。そのファイバーの外径は、液体を移送するアレイ10の貫通穴12の内径より小さいか等しい。束の中のファイバーの本数は、マイクロ・タイター・プレート114の中のウェルの数と等しくすることができる。ファイバーの束の一方の端部における中心間距離は、貫通穴アレイの穴の中心間距離と等しくし、一方、反対側の端部におけるファイバーの束の中心間距離は、マイクロ・タイター・プレートのウェルの中心間距離と等しくする。このファイバーは、ファイバーの束の一方の端部から他方の端部の間において中心間距離が徐々に大きくなるように設計された一連の貫通穴治具を使用して、一定の位置で保持する。特定の位置でいったん固定されると、形状記憶合金ファイバーを変形させた後の形状が永続するようにするために、変態温度以上にまで加熱する。加熱後室温まで冷却することにより、ファイバーの中心間距離は変化することなく、形状記憶合金ファイバーを保持治具から取り外すことができる。ファイバーの束の一方の端部は、マイクロ・タイター・プレートの各ウェルからの液体を充填する貫通穴アレイの中に挿入することができる。他方の端部は、各ファイバーがマイクロ・タイター・プレートのウェル上に並べて配置できるようになっており、そのファイバーの端部は各ウェル内に収納された液体の中へ浸すことができる。ファイバーの束をマイクロ・タイター・プレートから引上げると、図12cに示すように、小さい体積の液滴144が(例えば表面張力によって)各ファイバー142の端部に付着して残る。貫通穴アレイ10の穴12を通って引っ張るようにしてそのファイバーの束の反対側端部に力を作用させると、その液体は対応する貫通穴と接触しその中へ入り込む。ファイバー142を穴12を通って引っ張られると、ファイバーが取り出されるときに、表面張力が作用し、液体を貫通穴の中に保持することができる。
【0060】
連続的な希釈
アドレスを特定できる注入方法を使用することにより、同じ溶質で異なった特定の濃度を有する液体を一連の貫通穴に充填することができる。貫通穴を溶媒の中に浸すか、微小な注射器232によって溶媒を分配するか(図21に示す)、あるいはその他の液体移送装置を使用した充填によって、選択された一連の貫通穴に、Z ナノリッター(nL)と表示された量の溶媒を充填する。これは図13のフロー・チャートに第一のステップ120として示されている。ステップ121では、微小な注射器232、またはその他の液体移送装置が、Xモル/リッターの溶質の入った溶液で充填され、それから第一の貫通穴の上に配置される。この溶液Y nLを注射器の先端から押し出し、注射器のチップの端部において小滴をつくる。ここで(Y+Z) nLは凸状のメニスカスができるようにするのに十分な体積である。注射器の先端にできた溶媒の小滴が第一の貫通穴に入っている溶液の表面に接触するまで注射器のチップを下げていき、二つの液体を混合122することによって、濃度YX/(Y+Z)モル/リッターの溶液を作り出す。注射器のチップの外側表面およびアレイの表面は、分配される溶液によって濡れてはならない。更に、ステップ123で注射器のプランジャは、稀釈化された溶液Y nLを吸い上げ、引出される。注射器のチップは次の(N+1)の貫通穴124の上に配置され、Y nLの稀釈された溶液を、別の係数Y/(Y+Z)で稀釈125すべき溶媒の中へ分配される。このプロセスは、一連の個々の貫通穴に溶液を分配しながら繰り返され、いずれの場合も係数Y/(Y+Z)で稀釈される。
【0061】
化学的傾斜法
本発明の好適な実施例によれば、特定の化学物質の種がアレイの全ての穴に均一に注入されず、むしろ、二次元的な貫通穴アレイにおいて少なくとも一次元的な方向で化学物質の種の傾きが生じるように注入することができる。この明細書および添付する特許請求の範囲のいずれかに使われているように、用語「傾き」は、通常の数学的な意味として使用されている。即ち、一方向またはそれ以上の方向に沿い、明示された量が変化していることを意味する。ここで、方向は貫通穴アレイの表面に沿ってとられる。従って、貫通穴内に充填された特定の化学物質の種の濃度の傾きは、特定の方向に対応して存在するか、あるいはいくつかの方向に対応して存在すると言うことができる。従って、特定の傾きは、単調なものであっても良く(必ずしも単調である必要はないが)、特定の方向において化学物質の種の濃度は上がったり、下がったりする。
【0062】
ここで、図9a-9cおよび14a-14cについて説明する。前述した沈浸による充填法は貫通穴のアレイ内において濃度の傾きを作り出すために使用することができる。この方法では、溶液内の化学物質が種々の貫通穴の中で拡散によって他の物質と混合し、又は反応するための時間が異なるように、入れる速度を制御した上で、アレイは化学物質の溶液の中へ沈浸される。
【0063】
図9a-9cについて説明したように、沈浸による充填法を使用してアレイを第一の液体82によって充填した後、続いて図14aに示すように、プレート10を第二の液体86を入れた第二の容器84の中へ入れる。プレート10の貫通穴は既に第一の液体82が充填されているので、第二の液体86は拡散により中へ入り、貫通穴12の内容物と混合し、置き替わり、あるいは反応する。これらのプロセスは速度に強く影響を受ける。物理的あるいは化学的な反応である特定の反応が完了するまでプレートを十分に浸さないで、図14bに示すように、プレート10を第二の液体86の中へ部分的に浸すことができる。特定の時間浸したあと、図14cに示すように全体を引上げるか、部分的に引上げることもできる。もし、プレート10を異なった深さ88まで浸したり、特定の時間だけ第二の液体86の中へ再度浸したりすると、貫通穴12のある部分には、違った物理的、あるいは化学的プロセスを受けた材料が含まれることになる。従って、貫通穴アレイの横方向(図中に示すZの方向)向かって傾きが作り出される。当然、このプロセスは特定の傾きを作り出すために、繰り返したり、あるいは修正したりすることができる。
【0064】
本発明の別の実施例では、アレイ内の特定の位置に配置された貫通穴の中へ拡散させる、特定の化学物質の種の濃度を空間的に調整するために、他の手段が使用されている。図14dには、液体86の中へ浸された貫通穴アレイ・プレートの側面図が示されている。貫通穴12の中への液体86の拡散を、膜またはフィルター87によって調整することができる。例えば、膜またはフィルター87にテーパを設けたりまたは別の方法によって、アレイ内貫通穴の位置に応じて特定の化学物質の種に傾きが生じる。
【0065】
これに関係する例として、最初に溶液の薄いエッジを形成するゲルで充填された貫通穴アレイを、混合を開始するポリメリゼーション(polymerization;ポリマーを作るプロセス)の中へゆっくり入れていくことにより、穴の中のゲルの密度が異なるようになる。y軸周りにプレートを90°回転させ、それから自由陽イオンとともにゲルを生じさせる試薬の中へゆっくり浸し、更にy軸周りに180°回転させ、陰イオンとともにゲルを生じさせる試薬の中へゆっくり浸すことによって、2-Dポリアクリルアミドのゲルと類似しているが、それよりも分離速度が大きく、分離した蛋白質にアクセスしやすい、蛋白質混合物を分離するために有用な二次元的な広がりと電荷を持った選択的マトリックスが作り出される。
【0066】
他の実施例においては、試薬Aと試薬Bの2成分系の反応においてAとBの濃度を最適化するために貫通穴アレイ内の濃度の傾きが利用される。混合プロセスについて、以下に詳細に説明する。図15は貫通穴アレイの断面を示したものであり、番号90を付した第一の貫通穴アレイには試薬Aが充填されている。この試薬Aは化学的傾斜法を使用して充填されており、アレイのX方向である行に沿った方向の貫通穴内においてはAの濃度は同じであり、これと直行する方向であるアレイの列においては濃度の傾きを持っている。
【0067】
番号92を付した第二の貫通穴アレイには試薬Bが充填されている。この試薬Bは、アレイのX方向である行に沿った方向においては濃度の傾きを有し、これと直行する方向であるアレイの列においては同一の濃度となっている。二つのアレイを接触させることによって相対する貫通穴12の間で混合が行われる。結合されたアレイの各行および列に沿っては、混合物内のBに対するAの相対的な濃度は変化し、その濃度は既知である。アレイの対角線上では、混合した液体の中の濃度は等しいが、全体としての濃度は変化している。AとBの相対的な比率を、予め定めた二次元的な傾きを持つようにするための方法の変形として、対角線に沿って浸すことによってAとBのアレイを充填する方法、Bに対するAの比率の二次元的傾きを持った2つのアレイを直交させて組み合わせる方法、あるいはいくつかの貫通穴は空であって、試薬AまたはBを充填したアレイを用いて希釈する方法がある。各貫通穴の中での反応条件は既知なので、貫通穴の内容物を解析することによって、簡単に最適な反応条件を決定できる。溶液内に作り出される溶質の濃度以外の物理量の傾きについても、本発明の範囲内に含まれるものであると理解すべきである。そして、限定するものではないが、そのような傾きには温度、電界、磁場等の傾きが含まれる。
【0068】
混合と希釈
次のセクションで詳細に述べるように、混合や希釈する目的のために、マイクロ・ウェル・プレートを都合よく積み重ねる(スタックする)ことができる。一つの例として、貫通穴に細胞のサンプルを割り当てる場合がある。例示のために、一辺が250μmの正方形断面をした500μmの深さを有する一枚のプレート上の貫通穴を考える。このようなマイクロ・チャンネルを有する3枚のプレートを積み重ねる(2ステップ検定の例となるものであるが)と、チャンネルの合計の体積(即ち、三つの貫通穴を結合した体積である)は、ほぼ100 nLとなる。もし、全体のチャンネルが濃度の濃いイースト菌の培養細胞(〜107 /mL)で充填されると、各チャンネルは約103のイースト菌の細胞を含むことになる。70μm3のイースト菌細胞の体積によれば、100 nLのチャンネル当りの細胞の最大数は106のオーダーである。そして、生物試験に反応するイースト菌細胞として必要となるマイクロ・チャンネル当りの最小細胞数は100であり、これらの値と対応するものである。
【0069】
図15-19について説明する。これらの図には実質的に平坦な2つの貫通穴アレイ・プレート90,92(即ち、フランジも窪ませた部分もないアレイ・プレートである)の内容物を混合し、希釈するプロセスが示されている。特に図15では、貫通穴アレイ90,92の部分的な断面図が示されている。各プラテンの上面および下面は、前に詳細に述べたように、疎水性の表面である。貫通穴の側面24は親水性であることが望ましい。両プラテンの貫通穴12は、例えば、水の溶液のような表面エネルギーの高い液体150によって過充填されており、各貫通穴12は凸状の曲面を持ったメニスカス152を有し、これがプラテンの表面154の上へ突起している。プラテンの表面154は疎水性であるため、例えば、アルカンのような表面エネルギーの低い液体であっても凸状のメニスカス152を形成させるのに、十分な量の液体を貫通穴12に充填することができる。図16は、二つのプラテン90,92の断面図を示したものであり、穴位置を一致させた貫通穴12の各液体150の表面を接触させた状態にある。表面張力が解放されることにより、互いに反対側のプラテン90,92に保持される液体との間で、対流による混合が行われる。プラテンの二つの表面が互いにいったん接触すると、穴位置を一致させた二つの貫通穴の各セットは、図17に示すように長いチャンネル170を形成する。長いチャンネル内の混合は対流と静的な拡散の結合によって行われる。
【0070】
図18について説明する。アレイ90,92の内の一つまたは両方の貫通穴12が不足充填の状態にあり(プレートが接触した状態であっても、液体180と182を分離するようなエアー・ギャップが存在するような状態であるが)、二つのプラテン90,92の表面の間に小さな隙間188が存在していたとしても、二つの液体の表面を接触させるために、図中の矢印184で示す方向に、わずかに正の圧力を負荷することができる。
【0071】
更に、図19に関連する本発明の別の実施例では、第一のプラテン90は凸状のメニスカス190、192を形成するために、十分な量の液体150が充填されており、一方第二のプラテン92は、凸状のメニスカスを形成するには至らないが、二つのプラテンを積み重ねた時に、第一のプラテンのメニスカスの表面190と接触するに十分な量の液体194が充填されている。この場合にも、前に述べたのと同じように、液体の表面を接触させることにより混合させることができる。
【0072】
環境因子の制御
本発明の実施例における方法および装置は、種々の操作中、貫通穴の周辺環境は高い相対湿度(典型的には95%以上)が維持された状態に置かれる。高湿度状態を維持することによって、貫通穴アレイ中に保持される溶液の蒸発を生じないようにすることはできないまでも、最小に押さえることができる。体積の減少量は、雰囲気温度や各貫通穴の中に保持される液体の体積、並びに必要な操作を行うのに必要となる時間の長さにも依存する。高い相対湿度環境は、体積減少を許容できるレベルに維持するために必要となる。温度が21℃のときに、水の小滴からの蒸発ロスは、図20に示すようにフィックの法則(Fick’s law)によって予測することができる。50μLの小滴の場合(曲線200)と50 nLの小滴の場合(曲線202)に10%の蒸発ロスが生じる時間(秒単位で)を、相対湿度の関数としてプロットしてある。もし湿度レベルが100%近くでなければ、小さい小滴の場合、非常に早く蒸発してしまい、相対湿度65%の時には、11秒で10%の質量ロスが生じる。
【0073】
アドレスを特定できる充填または除去作業中の湿度制御
図21に示す装置は、湿度制御の対象となる閉環境の容積を小さくするために提供されたものである。本発明の実施例によれば、貫通穴アレイ10は水のリザーバー210の上に固定される。96-ウェル、384-ウェル、あるいは更に高い密度のマイクロ・タイター・プレート212は貫通穴アレイに隣接して、同じリザーバーの上に固定される。リザーバー210にはリザーバーが動いた時に、液体が揺れないようにするために、スポンジ214のような水を吸収する材料が入っている。光学的に透明なプレート216が、例えば、シリコン・グリースのような粘性流体の薄い層218の分だけリザーバーの側壁から離されて、リザーバーの上に配置される。一つまたは二つ以上の小さな穴220が透明なプレート216に明けられている。各穴を通して、微小注射器の針222、微小毛細管、ピン、カニューレ(排管)、あるいはその他の液体移送用の要素が挿入される。
【0074】
液体移送要素224がy軸に沿って、貫通穴10の上面226へ近づいたり、または離れたりすることができるように、コンピュータ制御されたモーター駆動による移動ステージが準備されている。液体移送要素224には、例えば、プランジャ234を備えた注射器232がある。更に、アレイとリザーバーは液体移送要素に対してx軸とy軸でできる面内を移動することができ、望ましくはコントローラ230の制御によるモーター駆動のステージにより移動することができるものである。もし必要であるなら、例えば液体移送装置を駆動するために、更にコンピュータ制御のステージを準備することもできる。マイクロ・タイター・プレートと貫通穴アレイの間の材料の移送は、図10-12に関連して説明した方法によって行われる。液体移送要素を清掃または殺菌するための溶液を収納した追加のリザーバーが、上述した装置の入ったチャンバー236の内に備えることもできる。追加のリザーバに代えて、清掃または殺菌する目的のために大きなリザーバー210の中に入れられた水を使うこともできる。充填または除去作業中に目視またはビデオ・カメラ240による光学的検査のために、アレイを照明する照明源238も備えられている。
【0075】
沈浸による充填と混合中の湿度制御
沈浸による充填と混合中に貫通穴アレイからの液体の蒸発を防止するため、図21に示すような閉環境である密閉チャンバー236が使用される。密閉チャンバー236は、例えば、混合操作のためのアライメント治具156(図15に示す)、モーターや移送ステージ228、種々の操作を行うために必要となる装置、およびアレイを収納するのに十分な大きさを有する。冷水蒸気が外部の加湿器によって生成され、ポートを通ってチャンバー内へ放出される。超音波加湿器は、0.13立方メートルのチャンバーを95%以上のレベルの湿度を維持するために十分な蒸気を発生させることができる。チヤンバー全体に水の蒸気を均一に分配するために、ファンと隔壁からなる循環システムが備えられている。種々のドアー、ハッチ、および目視ポートがチャンバーの中へアクセスするために準備されている。ボックス内の温度は、抵抗加熱器と温度制御器によって制御される。このようなチャンバーは、商業生産されている乳幼児の保育器に別途加湿器を取り付けることによって組み立てることができる。
【0076】
光学観測用の窓のように、乾燥した状態を維持しなければならない面や腐食性の金属は、結露を防ぐため周辺温度よりわずかに高い温度に加熱してある。チャンバー内の湿度レベルをモニターするために湿度センサーが備えられている。全てのコンピュータや電気的なハードウェアはチャンバーの外に配置され、ワイヤ・ハーネスを経由してチャンバー内のコンポーネントと接続されている。貫通穴アレイはチャンバー内で充填され、あるいは外部で充填された後、加湿した密閉カセットの状態にあるチャンバー内へ移される。
【0077】
光学的解析中および充填ステーション間の移送中における湿度制御
図22aについて説明する。この図は、番号250を付したコンパクトな移動用カセットの分解斜視図を示したものである。このカセットは、加湿充填チャンバー236(図21参照)から、例えば光学的解析を行うために、アレイを取り出したときに、相対的湿度を95%以上に維持するためのものである。図22bは図22aに示す加湿カセット250の側方断面を示したものである。貫通穴アレイ10と水のマイクロ・レンズ・アレイ252が密閉空間内にコンパクトに固定されている。貫通穴アレイは、アライメント・ピン256またはその他の手段によって配置されかつ保持される。アレイ・マウント258とカバー・ホルダ260は、接着剤またはその他の機械的な手段によってマウントに固定された光学的に透明なプレート262によってカバーされる。光学的解析装置の内部にアレイを容易に配置するために、マウントには、マグネット、ピン、溝、あるいはその他の物理的な手段を備えることもできる。透明なガラス製の微小な毛細管の束252(あるいは、マイクロ・チャンネル・アレイという) (ガラス製の微小な毛細管の束は、マサチューセッツ州サウスブリッジにあるスコット・ファイバー・オプティクスによって製造されたものである。) が,貫通穴アレイの下に取り付けられ、固定ネジまたはその他の機械的な手段によって固定されている。この毛細管の束252の中に保持された水が蒸発することによって湿度は上昇する。各毛細管264の代表的な寸法は、直径が200μmで長さが1mmである。マイクロ・チャンネル・アレイ252の上面266と下面268とは、上述した手順に従って疎水性の表面に仕上げられている。毛細管264のアレイ内における配列は規則的である必要はない。毛細管内の水270は、光源272からの光をアレイを通過して散光するのに役立つマイクロ・レンズのセットを形成し、それによって光学的解析のための均一な照明環境を提供することができる。この液体のマイクロ・レンズ・アレイを使用することも、本発明の範囲内に含まれる。
【0078】
水のレンズ・アレイを使用するもう一つの利点は、水が表面張力によって内部に保持されるということである。従って、オペレータはカセット内の湿度を維持するための特別な操作を必要とせず、プレートを部屋の中で移動させる場合に、水平な面上に置いたりするときに生じる加速度が大きくならないように配慮する必要もない。更に、アレイの内部で細胞の成長を促進させるために、培養中にそのカセットを揺り動かすこともできる。
【0079】
その他の環境因子の制御
適切に組み立てられたチャンバー内にアレイを閉じ込め、従来から用いられている方法によってチャンバー内の環境を制御することにより圧力、光、および温度を制御することができる。蒸散を防止するため、そのチャンバーは高い相対湿度を維持するための装置を備えていなくてはならない。
【0080】
本発明の実施例についてその利点、およびオプショナルな特徴について説明してきたが、これらの実施例は単に例示するためのものであって、けっしてこれらに限定するものではない。この技術分野に精通したものであれば、本発明の基本的な考え方およびその範囲から逸脱することなく、ここで述べた実施例に対する代替案を考案し、改造することは、実施例を追加することと同様、容易に行うことができる。このような修正ないし改造は特許請求の範囲に記載した発明の範囲内に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル・コンテナのアレイにサンプルを充填する方法であって、各サンプル・コンテナ内の特定の物質の濃度が当該アレイ内におけるサンプル・コンテナの位置によって異なり、その結果濃度の傾きがアレイ内において生じることを特徴とし、
a. 第一の液体をサンプル・コンテナの中に導入するステップと、
b. 前記サンプル・コンテナを第二の液体に接触させるステップであって、当該アレイ内におけるサンプル・コンテナの位置によって透過性を変えることができる膜を通じて前記サンプル・コンテナを第二の液体に接触させ、第二の液体が特定の物質を含み、当該特定の物質がサンプル・コンテナの中へ拡散する程度を制御して、前記サンプル・コンテナの間で特定物質の拡散の程度が異なるようにすることができるような接触方法であるステップとから構成され、
ここで、各サンプル・コンテナは同じ第二の液体に接触するものであることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第一の液体を前記サンプル・コンテナの中に充填するステップが、複数の貫通穴を備えたプラテンを充填するステップであることを特徴とする方法。
【請求項1】
サンプル・コンテナのアレイにサンプルを充填する方法であって、各サンプル・コンテナ内の特定の物質の濃度が当該アレイ内におけるサンプル・コンテナの位置によって異なり、その結果濃度の傾きがアレイ内において生じることを特徴とし、
a. 第一の液体をサンプル・コンテナの中に導入するステップと、
b. 前記サンプル・コンテナを第二の液体に接触させるステップであって、当該アレイ内におけるサンプル・コンテナの位置によって透過性を変えることができる膜を通じて前記サンプル・コンテナを第二の液体に接触させ、第二の液体が特定の物質を含み、当該特定の物質がサンプル・コンテナの中へ拡散する程度を制御して、前記サンプル・コンテナの間で特定物質の拡散の程度が異なるようにすることができるような接触方法であるステップとから構成され、
ここで、各サンプル・コンテナは同じ第二の液体に接触するものであることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第一の液体を前記サンプル・コンテナの中に充填するステップが、複数の貫通穴を備えたプラテンを充填するステップであることを特徴とする方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図14d】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22a】
【図22b】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図14d】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22a】
【図22b】
【公開番号】特開2011−95271(P2011−95271A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3611(P2011−3611)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【分割の表示】特願2002−587105(P2002−587105)の分割
【原出願日】平成14年5月7日(2002.5.7)
【出願人】(500219537)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】77 Massachusetts Avenue, Cambridge, Massachussetts 02139,U.S.A
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【分割の表示】特願2002−587105(P2002−587105)の分割
【原出願日】平成14年5月7日(2002.5.7)
【出願人】(500219537)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】77 Massachusetts Avenue, Cambridge, Massachussetts 02139,U.S.A
【Fターム(参考)】
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