説明

マイクロカプセルの製造法ならびにマイクロカプセル及びそれを用いた磁気表示媒体

【課題】 アルデヒド類を使用せず、皮膜の膨潤が少ないマイクロカプセルと、それを製造する方法等の提供。
【解決手段】 コンプレックス・コアセルベーション法を用いる、タンパク質皮膜を有するマイクロカプセルの製造法であって、コアセルベート皮膜を硬化させるに際し、10重量%水溶液としたときの電気伝導度が0.005〜1.2S/mである水溶性高分子化合物またはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される水溶性高分子化合物を共存させることを特徴とするマイクロカプセルの製造法と、前記のいずれかの水溶性高分子化合物を皮膜に含むマイクロカプセル。これらのマイクロカプセルは、磁気表示媒体等に有用な物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセルの製造法、およびそれによって製造されたマイクロカプセルに関するものである。より詳しくは、コンプレックス・コアセルベーション法を利用したマイクロカプセルの製造法であって、マイクロカプセルの製造時に特定の水溶性高分子化合物を共存させるマイクロカプセルの製造法、並びに、皮膜としてタンパク質と特定の水溶性高分子化合物を含むマイクロカプセルに関するものである。
本発明は、さらにそのようなマイクロカプセルを具備してなる磁気表示媒体等の記録材料にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロカプセルは種々の用途に応用されており、その製造法に関しても多くの提案がなされている。中でもコンプレックス・コアセルベーション法は工業的に応用されているマイクロカプセル化法の一つとして挙げられる。
【0003】
一般的なコンプレックス・コアセルベーション法は、以下のような処理によってマイクロカプセルを製造するものである。
(1)皮膜物質(ポリカチオン)を含む水溶液中に芯物質(油性物質)を分散させ、油滴が水溶液中に分散したO/Wエマルジョンとする。
(2)エマルジョンにポリアニオンを添加して混合し、酸を添加してpHを3〜5程度に調整する。これによりコアセルベーションが生じ、コアセルベート皮膜が形成される。
(3)温度を低温にしてコアセルベート滴の皮膜をゲル化させ、さらに硬化剤を添加して皮膜を硬化(架橋および/または変性)させる。
【0004】
このような方法でマイクロカプセルの皮膜に硬化剤として用いられるのはホルムアルデヒドやグルタルアルデヒド等のアルデヒド類が一般的であった。しかし、アルデヒド類は効果的な硬化剤であるが、毒性の観点や環境への配慮の観点から使用することが好ましくない。ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドは共にPRTR法第1種指定化学物質に指定されており、特にホルムアルデヒドは、近年シックハウス症候群の原因物質として関連性が疑われており、更に揮発性有機化合物(以下、VOCという)として排出規制対象物質に位置付けられている。
【0005】
このためにアルデヒド類に代わる硬化剤の種々の検討がなされている。その代表的なものとしてトランスグルタミナーゼが挙げられる(特許文献1〜3)。ところが、本発明者の検討によれば、タンパク質皮膜のコアセルベーション及びコアセルベート皮膜のゲル化は酸性領域、すなわち低pHで行う必要があるのに対して、トランスグルタミナーゼの硬化反応はpH5〜9の比較的高いpHで行う必要がある。このような高いpH領域ではタンパク質皮膜の著しい膨潤が起こり、ひいてはカプセルの体積膨張による形状の歪み、製造工程中のカプセル分散液の増粘、カプセル化後の加工性低下、芯物質の保持能力低下などの問題が起こることがある。
【0006】
このような皮膜の膨潤を防ぐための技術も検討されている(特許文献4または5)。これらの方法は、オリフィス法やシンプルコアセルベーション法の一種である塩析法を用いた例であり、トランスグルタミナーゼによる皮膜の硬化に際して、皮膜の膨潤を抑制するためにリン酸塩、メタリン酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の電解質を共存させるものである。シンプルコアセルベーション法は皮膜物質を良溶媒に溶解した溶液に芯物質を乳化・分散した後、塩や皮膜物質の貧溶媒を添加することにより、皮膜物質の溶解度を減少させ、芯物質の周囲に壁膜を形成させる方法である。これに対し、コンプレックス・コアセルベーション法は皮膜物質にポリカチオン、及びポリアニオンを用いた電気的相互作用により壁膜を形成させる方法であるため、製法として大きく異なる。また、前述のような電解質を用いた場合には、マイクロカプセルの使用に先立って電解質の除去(脱塩工程)が必要となる場合がある。すなわちマイクロカプセルを磁気表示媒体や感熱性記録材料等の表示媒体として利用するに際し、支持体上にマイクロカプセルを塗布・配列させる場合、マイクロカプセル分散液を支持体上にそのまま塗布・乾燥を行うと溶解していた塩等は表示媒体中に固形物として析出し、表示媒体としての視認性に悪影響を与えることがある。このような場合には脱塩工程により塩の除去を行うことが一般的である。さらに、コンプレックス・コアセルベーション法では皮膜形成後に添加する必要があるため、必ずしも適した方法とはいえない。
【0007】
また、コンプレックス・コアセルベーション法を広いpH領域で行うことを可能とするために、非イオン系水溶性高分子化合物を添加剤として用いる方法が検討されている(特許文献6)。この方法では、各種の非イオン系水溶性高分子化合物を添加しているが、皮膜の硬化時における膨潤抑制については触れられていない。
【0008】
一方、マイクロカプセルを利用した磁気表示媒体や感熱性記録材料も検討されている(特許文献7)。しかし、これらの材料は、従来の方法により製造されたマイクロカプセルを用いるものであり、有害なアルデヒド類を含んだマイクロカプセルが用いられるのが一般的であった。
【特許文献1】特開平10−249184号公報
【特許文献2】特開平02−086741号公報
【特許文献3】特開平05−292899号公報
【特許文献4】特開平09−248137公報
【特許文献5】特開2000−079337号公報
【特許文献6】特開昭57−171432号公報
【特許文献7】特開2001−075510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来用いられていた高い有害性を有するアルデヒド類を使用せず、かつ磁気表示媒体等の表示媒体に適した、皮膜の膨潤が少ないマイクロカプセルを製造する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるマイクロカプセルの製造法は、コンプレックス・コアセルベーション法を用いる、タンパク質皮膜を有するマイクロカプセルを製造するに際し、10重量%水溶液としたときの電気伝導度が0.005〜1.2S/mである水溶性高分子化合物を共存させること、を特徴とするものである。
【0011】
また、本発明によるもうひとつのマイクロカプセル製造法は、コンプレックス・コアセルベーション法を用いてタンパク質皮膜を有するマイクロカプセルを製造するに際し、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、およびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される水溶性高分子化合物を共存させること、を特徴とするものである。
【0012】
さらに本発明における他のマイクロカプセルの製造法は、前記の方法においてタンパク質皮膜の硬化剤がトランスグルタミナーゼであるものである。
【0013】
また、本発明によるマイクロカプセルは、皮膜が、タンパク質と、10重量%水溶液としたときの電気伝導度が0.005〜1.2S/mである水溶性高分子化合物とを含んでなること、を特徴とするものである。
【0014】
また、本発明によるもうひとつのマイクロカプセルは、皮膜が、タンパク質と、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、およびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される水溶性高分子化合物とを含んでなること、を特徴とするものである。
【0015】
さらに、本発明による磁気表示媒体は、前記のマイクロカプセルを具備してなること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、VOCとして、またシックハウス症候群の原因となりうる高い有害性を有するアルデヒド類を使用せずに形状の膨張や歪みの少ないマイクロカプセルを製造することができる。そして、この方法により得られたマイクロカプセルを用いることにより、有害物質を含まない上、解像度に優れた表示媒体または記録材料を形成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
マイクロカプセルの製造法
本発明によるマイクロカプセルの製造法はコンプレックス・コアセルベーション法、を用いるものであり、タンパク質皮膜を硬化(架橋および/または変性)させるに際し、水溶性高分子化合物を共存させることを特徴とする。本発明の方法を製造工程の順序に従って説明すると以下の通りである。
【0018】
まず、皮膜物質を含む水溶液中に芯物質(油性物質)を分散させ、油滴が水溶液中に分散したO/Wエマルジョンを形成させる。
【0019】
用いられる芯物質は、目的とするマイクロカプセルに応じて任意に選択される。例えば粘着剤、接着剤、色材などが挙げられる。また、表示媒体の素子等、例えば磁気表示媒体の微小磁性粒子などを分散物として含む油性物質、または加熱により変色する感熱記録材料を用いることもできる。また、そのほか食品、医薬品、医薬部外品、香料、洗浄剤等、水に不混和なものを芯物質とすることができる。
【0020】
皮膜物質は、ポリカチオンとして等電点を有する、ゲル化し得る親水性コロイドが使用され、一般に水溶性タンパク質が用いられる。より具体的にはゼラチン、寒天、カゼイン、大豆蛋白、コラーゲン、アルブミンなどが挙げられる。中でも酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等のゼラチンが好ましく、更に酸処理ゼラチンを用いることが最も好ましい。
【0021】
芯物質を皮膜物質を含む水溶液中に分散させるには、通常水溶液中に芯物質を添加し、撹拌や超音波照射などの方法を用いることができる。芯物質、皮膜物質の濃度は、目的とするマイクロカプセルに求められる性質や形状によって任意に選択される。また、分散により得られる芯物質の液滴の大きさは、最終的に得られるマイクロカプセルの大きさに関係する。マイクロカプセルの大きさはその目的に応じて選択され、エマルジョンの液滴の大きさがほぼマイクロカプセルの粒子径として反映される。最終的なマイクロカプセルの大きさ、具体的には球換算の直径が一般に0.1〜3000μm、好ましくは0.1〜2000μm、更に好ましくは0.1〜1000μmに応じた油滴が得られるように分散を行う。
【0022】
続いて得られたO/Wエマルジョンにポリアニオンを混合し、均一とした後にpHを酸性にしてコアセルベート皮膜を形成させる。
【0023】
用いられるポリアニオンは、必要に応じて選択されるが、具体的にはアラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル・無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。これらのうち、アラビアゴムやカルボキシメチルセルロースナトリウムが好適に用いられる。さらにその中では、アラビアゴムは100μm以上の比較的大きい粒径のエマルジョンに対して、コアセルベート皮膜の形成能がやや劣る傾向にあるが、カルボキシメチルセルロースナトリウムはこのような大粒径のエマルジョンに対しても十分なコアセルベート皮膜を容易に形成することができるので特に好ましい。
【0024】
ポリアニオンを混合した後、エマルジョンのpHは酸性、例えばpH3〜5、好ましくは4〜4.5、に調整される。このときに用いられる酸は、芯物質や皮膜材料の性質を損なわないものを選択することが好ましい。一般には酢酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、乳酸、サリチル酸等の有機酸、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸が用いられる。
【0025】
コアセルベート皮膜が形成されたエマルジョンを、皮膜のゲル化を行うために引き続き冷却する。通常はエマルジョンを5〜25℃、好ましくは5〜10℃、に冷却して皮膜をゲル化させる。
【0026】
ゲル化した皮膜を硬化させるために、続いてエマルジョンに硬化剤を混合する。硬化剤としては従来知られている任意の硬化剤、例えばトランスグルタミナーゼ、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ミョウバン、没食子酸、タンニン酸などが挙げられる。これらのうち、ホルムアルデヒドやグルタルアルデヒド等のアルデヒド類は毒性の観点や環境への配慮の観点から使用することが好ましくない。ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドは共にPRTR法第1種指定化学物質に指定されており、特にホルムアルデヒドは、近年シックハウス症候群の原因物質として関連性が疑われており、更にVOCとして排出規制対象物質に位置付けられている。
【0027】
一般に硬化剤として毒性や環境へ負荷の少ない硬化剤を用いることが好ましく、具体的には、トランスグルタミナーゼ、ミョウバン、没食子酸、タンニン酸等を用いることが好ましい。ミョウバン、没食子酸、タンニン酸等の硬化剤も毒性や環境への負荷の点で問題ないが、硬化能の不十分や着臭等の観点から特にトランスグルタミナーゼを用いることが好ましい。トランスグルタミナーゼは中性、具体的にはpH5〜9の領域で高い活性を発揮する酵素であるため、トランスグルタミナーゼを用いた硬化反応はpH5〜9、好ましくは6〜8の領域で行うのが一般的である。また、アルデヒド類を硬化剤として用いる場合にも迅速な反応を進行させる為にはpHをアルカリ性、具体的にはpH9以上とする必要がある。
【0028】
このように皮膜を硬化させた後、必要に応じて濾過やデカンテーション、乾燥等の操作により目的のマイクロカプセルを得ることができる。
【0029】
本発明によるマイクロカプセルの製造法は、前記したコンプレックス・コアセルベーション法において、水溶性高分子化合物を共存させることを特徴とする。特にコアセルベート皮膜を形成させた後、pHを調整してから皮膜を硬化させる場合には、pHを任意の反応条件に変化させる前までの段階で、水溶性高分子化合物を系に導入することが好ましい。
【0030】
本発明によるマイクロカプセルの製造法においては、水溶性高分子化合物を共存させる方法は任意であるが、水溶性高分子化合物、またはその水溶液を系に添加するのが一般的である。水溶性高分子化合物の添加時期は特に制限されない。すなわち、芯物質を分散させる前の水溶性タンパク質を含む水溶液に予め添加しておくことも、またポリアニオン添加の前後における任意の時期に添加することもできる。更に、硬化剤を添加した後の膨潤皮膜を有するマイクロカプセル分散液に前記水溶性高分子化合物を添加しても皮膜の収縮効果がある。しかしながら、水溶性高分子化合物を添加することによる水溶液の粘度上昇、皮膜膨潤による分散液の粘度上昇、コアセルベート条件の変化等の観点から、水溶性高分子化合物はコアセルベート皮膜形成後の時点で添加することが好ましい。特にコアセルベート皮膜をゲル化させた後、pHを調整する場合は、その前に水溶性高分子化合物を添加しておくことが好ましい。ゲル膨潤による粘度上昇が所望の範囲を超えると、撹拌条件を維持するのに、より大きなせん断力を掛ける必要があり、せん断力が強すぎるとカプセル皮膜の破壊にもつながり好ましくないからである。
【0031】
また、pH上昇に伴い、コアセルベート皮膜が膨潤する傾向が強いが、本発明における水溶性高分子化合物は皮膜の膨潤を抑制または軽減するので、硬化条件を整えるためにpHを調整する場合には、調整前に水溶性高分子化合物を添加することが特に好ましい。従って、最も好ましいのは、ポリアニオンを添加した後、系内にコアセルベート皮膜の形成及びゲル化後であって、皮膜を硬化させるためにpH調整剤および/または硬化剤を添加する前である。このような時期に水溶性高分子化合物を添加することで、水溶性高分子化合物がコアセルベート皮膜の形成に影響を与えず、さらにコアセルベート皮膜の表面が有効に高分子化合物により処理される。
【0032】
また、トランスグルタミナーゼを硬化剤として用いる場合には、硬化条件として前記のようにpHを5〜9、好ましくは6〜8に調整することが必須となるが、水溶性高分子化合物の共存により、皮膜の膨潤が抑制または軽減される。
【0033】
なお、仮に水溶性高分子化合物を添加しないか添加が不十分なままpHを中性域に調整した場合、皮膜の膨潤が起こりやすいが、皮膜が膨潤した後であっても水溶性高分子化合物の添加によって皮膜の膨潤が軽減される。既存の製造工程に対して本発明の製造法を適用するには、このような添加時期を採用することも容易であって好ましい。
【0034】
本発明による第一のマイクロカプセルの製造法に用いられる水溶性高分子化合物は、10重量%水溶液としたときの電気伝導度が0.005〜1.2S/mであり、好ましくは0.005〜0.3S/mである。
【0035】
また、本発明による第二のマイクロカプセルの製造法に用いられる水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、およびそれらの混合物が挙げられる。これらはいずれも、前記したような皮膜の膨潤を抑制または軽減するものであり、本発明においては上記のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレンオキサイドとの用語はその誘導体を含むものとする。
【0036】
水溶性高分子化合物は、その一部または全部が変性された化合物であってもよい。特にイオン性基を含む化学種によって適度に変性された場合においては、水溶性高分子化合物自体が適度なイオン性を有する構成とすることができ、タンパク質皮膜との相互作用が生じて、より有効に作用するので好ましい(詳細後記)。
【0037】
そのようなイオン性の基としては、スルホン基、カルボキシル基、リン酸基、などが挙げられる。本発明によるマイクロカプセルの製造法においては、スルホン酸および/またはカルボン酸変性されたポリビニルアルコールから選ばれる1または2以上が水溶性高分子化合物として特に好ましい。
【0038】
また、ポリビニルピロリドンを重合単位として有する共重合体など、前記の水溶性高分子化合物を重合単位として含む共重合体も用いることができる。ポリビニルピロリドンおよびその誘導体は、タンパク質としてアルカリ処理ゼラチンを用いる際に、他の水溶性高分子に比較してより好適に作用する場合があり、その組合せにおいて、より好ましい。
【0039】
これらの水溶性高分子化合物の分子量は特に限定されないが、一般に重量平均分子量が2000〜200000、好ましくは2000〜20000、のものが用いられる。通常、分子量の大きな水溶性高分子化合物は水溶液とした時の粘度が大きくなることから、マイクロカプセル調製時における撹拌動力に対する負荷や撹拌によりマイクロカプセルに対する過度のせん断が生じるため注意を要する。また、ポリビニルアルコールは、完全ケン化型でも部分ケン化型でも特に限定されないが、水に対する溶解性の観点から部分ケン化型の方が好ましい。
【0040】
本発明のマイクロカプセルの製造法においては、このように比較的低い電気伝導度の水溶性高分子化合物を用いることで、コアセルベート皮膜をゲル化した後、例えばpHを中性領域にした場合であっても皮膜の膨潤が起こりにくくなる。このような皮膜の膨潤は、膨潤度により評価することができる。本発明において、膨潤度とは、以下の方法を用いて算出したものである。
1) 撹拌しているゲル化終了後のマイクロカプセル分散液(pH=4.3)から一定重量採取し、規定の遠沈管(内径14mm、高さ105mm:IWAKI GLASS リム付・16.5×105m/m)を用いて遠心機(株式会社コクサン製 遠心機H−18)にて2000rpm、1minで遠心分離を行い、マイクロカプセル層と水溶液層に分離する。
2) 分離したマイクロカプセル層の長さを測定し、遠沈管の内径から算出した面積の積よりマイクロカプセル層の体積とする。
3) 採取したマイクロカプセル分散液重量と配合比から分散液中における芯物質の体積を算出し、マイクロカプセル層の体積の差により、pH調整前のマイクロカプセル皮膜の体積を算出する。
4) 所望の添加時期により行われる水溶性高分子化合物の添加、pHの調整、硬化剤の添加及び硬化が終了したマイクロカプセル分散液より試料を採取し、同様の方法でpH調整後のマイクロカプセル皮膜の体積を算出する。
5)pH変化前の皮膜体積を基準とし、pH調整後の皮膜体積から体積の増加量を下式に従って算出し、百分率にて表示する膨潤度とする。
膨潤度(%)={(pH調整後の皮膜体積−pH調整前の皮膜体積)/pH調整前の皮膜体積}×100
【0041】
本発明において特定された水溶性高分子化合物を用いた場合、前記した方法により測定される膨潤度は一般に0%〜60%、好ましくは0%〜20%、さらに好ましくは0%〜10%である。
【0042】
中性領域においてタンパク質皮膜が膨潤するのは、pHが上昇することによって皮膜を構成するタンパク質が有するカルボキシル基の解離が促進されるために、タンパク質分子内のカルボキシル基のアニオン性量が増大し、同符号の電荷を有するカルボキシル基同士が電気的に反発するためと考えられる。コンプレックス・コアセルベーション法はポリカチオンとポリアニオンの電気的なイオンコンプレックスが駆動力となっている。系内の温度がタンパク質皮膜のゲル化点以下である為、タンパク質の溶解には至らないが、アニオン性に帯電したタンパク質分子は電気的な斥力によりタンパク質皮膜の膨張または膨潤といった現象が生じると考えられる。本発明によるマイクロカプセルの製造法において、特定の水溶性高分子化合物を共存させることによってそのようなタンパク質皮膜の膨潤が抑制される理由は明確ではないが、電気的な斥力によって膨潤しようとするタンパク質皮膜に対して水溶性高分子化合物が分子会合的に配位することで膨潤が抑制または軽減されるものと推定される。この時、電気伝導度が高い水溶性高分子化合物を用いると、配位した水溶性高分子化合物の強力なイオン性に起因すると考えられるイオンバランスの破壊が起こるため、逆に膨潤が促進されてしまう。これは配位する水溶性高分子化合物が分子構造中に有するイオン性基の密度に影響していると考えられる。これに対して電気伝導度の低い水溶性高分子化合物、とりわけイオン性基を適度に有する比較的電気伝導度の低い水溶性高分子化合物を共存させると、タンパク質皮膜に対して水溶性高分子化合物が効果的に配位すると同時に、イオンバランスを破壊することもないため、膨潤が抑制されると推定される。
【0043】
マイクロカプセル
本発明による第一のマイクロカプセルは、皮膜がタンパク質と、10重量%水溶液としたときの電気伝導度が0.005〜1.2S/mである水溶性高分子とを含んでなるものである。また、本発明による第二のマイクロカプセルは、皮膜が、タンパク質と、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、およびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される水溶性高分子化合物とを含んでなるものである。これらのマイクロカプセルは、皮膜に特定の水溶性高分子化合物を含むことによって、皮膜の膨潤が抑制または軽減されており、pH変化などによる形状の歪みが少ないものである。
【0044】
本発明によるマイクロカプセルは、芯物質および皮膜物質を選択することによって各種の用途に用いることができる。具体的には、粘着剤、接着剤、色材、食品、医薬品、医薬部外品、香料、洗浄剤などへの用途が挙げられる。これらの用途においては、毒性に対する配慮が必要となるため、マイクロカプセルの材料として毒性を有するアルデヒド類、例えばホルムアルデヒドやグルタルアルデヒド、を用いないことが好ましい。また、表示媒体、玩具、文具等においてもVOCであるホルムアルデヒドの揮発や、誤った使用方法による事故等も想定され、好ましくない。すなわち、皮膜が排出規制対象物質であるVOCやシックハウス症候群の原因となりうる高い有害性を有するアルデヒド類を実質的に含まないことが好ましい。さらに、本発明によるマイクロカプセルを用いて表示媒体または記録材料を形成させることもできる。例えば、微小磁性粒子を分散物として含む油性物質を芯物質として用いることにより、磁気表示媒体の素子として用いることができる。また、加熱により変色する感熱性変色物質を芯物質として用いれば感熱性記録材料の素子とすることもできる。特に感熱性変色物質として、熱により発色、消色、および発消色が可能な物質、例えば電子受容性化合物と電子供与性呈色化合物との組み合わせ、を用いることで可逆性感熱記録材料を形成させることもできる。
【0045】
マイクロカプセルを利用した磁気表示媒体や感熱記録材料はすでに知られている(例えば特許文献7)。しかしながら、それに用いられるマイクロカプセルの製造法においてはタンパク質皮膜の硬化にアルデヒド類を用いていることが多い。毒性や環境への配慮からこのようなアルデヒド類の使用は好ましくないが、アルデヒド類に変わる硬化剤として例えば前記のトランスグルタミナーゼを用いただけでは、コアセルベート皮膜の形状に歪みや皮膜の体積膨張が発生する。このため、最終的なマイクロカプセルは芯物質に対して皮膜の体積量が大きくなってしまう。表示媒体または記録材料としてマイクロカプセルを用いるには、通常、支持体上にマイクロカプセルを配列させるが、マイクロカプセルの皮膜が膨張していると高密度に配列したとしても芯物質間に膨潤した皮膜厚み分の隙間が生じやすくなり、解像度やコントラストの低下原因となる。しかしながら、本発明によるマイクロカプセルは芯物質の体積に比較して皮膜の体積が小さいため、支持体上に芯物質を高密度で配列させることが可能となるので、解像度やコントラストに優れ、かつ有害なアルデヒド類を実質的に含まない、磁気表示媒体や感熱記録材料を提供することができる。
【0046】
このような用途に用いることのできる本発明によるマイクロカプセルは、例えば前記したマイクロカプセルの製造法により製造することができる。このマイクロカプセルはその用途に応じて適当なサイズが選択されるが、一般に球換算の直径が0.1〜3000μm、好ましくは0.1〜2000μm、が選択される。中でも磁気表示媒体としては50〜1000μm、感熱性記録材料としては0.1〜10μmが好ましい。皮膜の厚さも用途に応じて適当な厚さが選択される。
【0047】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
【0048】
実施例1
系の温度を40℃に保ち、10重量%酸処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 AP200) 90重量部を撹拌しながら、40℃の温水(イオン交換水) 120重量部、イソパラフィン(エッソ化学社製 アイソパーM) 120重量部を順に添加して乳化・分散させてO/Wエマルジョンを形成させた。さらにポリアニオンとして1.25重量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(第一工業製薬株式会社製 セロゲンF−7A)90重量部を混合して均一にした。酢酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加してpHを4.3に調整し、コアセルベート皮膜を形成させた。このエマルジョンを撹拌しながら5℃まで徐々に冷却して皮膜をゲル化させ、30min5℃に保ち安定化させた。再び系の温度を15℃まで昇温させ、スルホン酸変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製 ゴーセランL3266)の10重量%水溶液を30重量部添加した。50重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7.2に調整し、トランスグルタミナーゼ(味の素株式会社製 アクティバTG−S)を0.18重量部添加した。系の温度を15℃に保ったまま16h撹拌を継続し、皮膜が硬化したマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルは皮膜の膨潤が無く、耐熱性を持った単核のマイクロカプセルであった。
【0049】
系の水溶液における酸処理ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびスルホン酸変性ポリビニルアルコールの最終濃度はそれぞれ2.73重量%、0.34重量%、および0.91重量%であった。
【0050】
比較例1
上記実施例1において、水溶性高分子化合物を添加しなかった他は同様にしてマイクロカプセルの製造を行った。
【0051】
実施例2〜9、比較例2〜4
また水溶性高分子化合物およびpH調整値を表1に記載のものに変えた他は実施例1と同様にしてマイクロカプセルの製造を行った。
【0052】
各例における水溶性高分子化合物、最終濃度、電気伝導度、膨潤度、pH調整値、完成時(pH6〜8)における皮膜厚みは表1に示すとおりであった。
【0053】
表1

ここで、
電気伝導度は電気伝導度0.0004S/mのイオン交換水を用いて水溶性高分子化合物を10重量%水溶液としたときの電気伝導度値(東亜ディーケーケー株式会社製 電気伝導率計CM−30V 測定温度25℃)である。
【0054】
膨潤度は、以下の方法を用いて算出した。
1) 撹拌しているゲル化終了後のマイクロカプセル分散液(pH=4.3)から一定重量採取し、規定の遠沈管(内径14mm、高さ105mm:IWAKI GLASS リム付・16.5×105m/m)を用いて遠心機(株式会社コクサン製 遠心機H−18)にて2000rpm、1minで遠心分離を行い、マイクロカプセル層と水溶液層に分離する。温度条件は、使用する硬化剤の種類により適宜決定し、硬化剤投入直前の温度条件を使用した。(硬化剤としてトランスグルタミナーゼを用いる場合は15℃、ホルムアルデヒドを用いる場合は5℃。)
2) 分離したマイクロカプセル層の長さを測定し、遠沈管の内径から算出した面積の積よりマイクロカプセル層の体積とする。
3) 採取したマイクロカプセル分散液重量と配合比から分散液中における芯物質の体積を算出し、マイクロカプセル層の体積の差により、pH調整前のマイクロカプセル皮膜の体積を算出する。
4) 所望の添加時期により行われる水溶性高分子化合物の添加、pHの調整、硬化剤の添加及び硬化が終了したマイクロカプセル分散液より試料を採取し、同様の方法でpH調整後のマイクロカプセル皮膜の体積を算出する。温度条件は、硬化剤としてトランスグルタミナーゼを用いる場合は15℃、ホルムアルデヒドを用いる場合は20℃を用いた。
5)pH変化前の皮膜体積を基準とし、pH調整後の皮膜体積から体積の増加量を下式に従って算出し、百分率にて表示する膨潤度とする。
膨潤度(%)={(pH調整後の皮膜体積−pH調整前の皮膜体積)/pH調整前の皮膜体積}×100
【0055】
皮膜厚みは500μm前後の芯物質粒径を有するマイクロカプセルを顕微鏡にて実測した値である。
【0056】
pH測定は、ガラス電極式水素イオン濃度計(東亜ディーケーケー株式会社製 HM−30S)により測定した。
【0057】
また、各例に用いた水溶性高分子化合物は下記のものである。
スルホン酸変性ポリビニルアルコール: 日本合成化学工業株式会社製 ゴーセランL−3266
カルボン酸変性ポリビニルアルコール: 日本合成化学工業株式会社製 ゴーセナールT−330
ポリビニルアルコール(ケン化度86.5〜89.5%): 日本合成化学工業株式会社製 ゴーセノールGL−05
ポリビニルピロリドン:アイエスピー・ジャパン株式会社製 PVP K−15
酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体: アイエスピー・ジャパン株式会社製 PVP/VA S−630
ポリエチレンオキサイド:明成化学工業株式会社製 アルコックスR−150
アラビアゴム: 和光純薬工業株式会社製 試薬
カルボキシメチルセルロースナトリウム: 第一工業製薬株式会社製 セロゲンF−7A
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム: 和光純薬工業株式会社製 試薬
イソブチレン/無水マレイン酸共重合体: 株式会社クラレ製 イソバン−104
スルホン酸変性イソプレンポリマー: JSR株式会社製 ダイナフローDK106
【0058】
実施例10
系の温度を40℃に保ち、10重量%アルカリ処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 ST1) 90重量部を撹拌しながら、40℃の温水(イオン交換水) 120重量部、イソパラフィン(エッソ化学社製 アイソパーM) 120重量部を順に添加して乳化・分散させてO/Wエマルジョンを形成させた。さらにポリアニオンとして1.25重量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(第一工業製薬株式会社製 セロゲンF−7A)90重量部を混合して均一にした。酢酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加してpHを4.0に調整し、コアセルベート皮膜を形成させた。このエマルジョンを撹拌しながら5℃まで徐々に冷却して皮膜をゲル化させ、30min5℃に保ち安定化させた。再び系の温度を15℃まで昇温させ、ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン株式会社製 PVP K−15)の10重量%水溶液を30重量部添加した。50重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7.3に調整し、トランスグルタミナーゼ(味の素株式会社製 アクティバTG−S)を0.18重量部添加した。系の温度を15℃に保ったまま16h撹拌を継続し、皮膜が硬化したマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルは皮膜の膨潤が少なく、耐熱性を持った単核のマイクロカプセルであった。
【0059】
系の水溶液におけるアルカリ処理ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリビニルピロリドンの最終濃度はそれぞれ2.73重量%、0.34重量%、および0.91重量%であった。
得られた結果は表2に示すとおりであった。
【0060】
実施例11
系の温度を40℃に保ち、10重量%酸処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 AP200) 90重量部を撹拌しながら、40℃の温水(イオン交換水) 120重量部、イソパラフィン(エッソ化学社製 アイソパーM) 120重量部を順に添加して乳化・分散させてO/Wエマルジョンを形成させた。さらにポリアニオンとして1.25重量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(第一工業製薬株式会社製 セロゲンF−7A)90重量部を混合して均一にした。酢酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加してpHを4.3に調整し、コアセルベート皮膜を形成させた。このエマルジョンを撹拌しながら5℃まで徐々に冷却して皮膜をゲル化させ、30min5℃に保ち安定化させた。系の温度を5℃に保ちながらスルホン酸変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製 ゴーセランL3266)を12重量部添加し、完全に溶解させた。37重量%ホルムアルデヒド液(和光純薬工業株式会社製 試薬)3重量部を加え、30min撹拌した後、50重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.0に調整した。系の温度を50℃まで徐々に昇温させ、30min保持した後、撹拌しながら20℃に冷却し、皮膜が硬化したマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルは皮膜の膨潤が少なく、耐熱性を持った単核のマイクロカプセルであった。
【0061】
系の水溶液における酸処理ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびスルホン酸変性ポリビニルアルコールの最終濃度はそれぞれ2.86重量%、0.36重量%、および3.8重量%であった。
得られた結果は表2に示すとおりであった。
【0062】
比較例5〜6
上記実施例10および11において、水溶性高分子化合物を添加せず、pH調整値を表2に記載のものとした他は同様にしてマイクロカプセルの製造を行った。
得られた結果は表2に示すとおりであった。
【0063】
表2

【0064】
応用実施例1
芯物質として微粒子磁性体とイソパラフィン(エッソ化学社製 アイソパーM)を主成分とする油性塑性液を混合した塑性分散液132重量部を、系の温度を40℃に保ちながら、10重量%の酸処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 AP200)90重量部、40℃の温水(イオン交換水)120重量部を均一に混合した水溶液に乳化・分散させてS/O/Wエマルジョンを形成させた。さらにポリアニオンとして1.25重量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(第一工業製薬株式会社製 セロゲンF−7A)90重量部を混合して均一にした。酢酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加してpHを4.3に調整し、コアセルベート皮膜を形成させた。このエマルジョンを撹拌しながら5℃まで徐々に冷却して皮膜をゲル化させ、30min5℃に保ち安定化させた。再び系の温度を15℃に昇温させ、スルホン酸変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製 ゴーセランL3266)の10重量%水溶液を30重量部添加した。50重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6.8に調整し、トランスグルタミナーゼ(味の素株式会社製 アクティバTG−S)を0.18重量部添加した。系の温度を15℃に保ったまま16h撹拌を継続し、皮膜が硬化したマイクロカプセル分散液を得た。
得られたマイクロカプセル分散液を厚さ125μmのPETフィルムを支持体として塗布し、磁気表示媒体を形成させた。得られた磁気表示媒体は十分な解像度を有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレックス・コアセルベーション法を用いてタンパク質皮膜を有するマイクロカプセルを製造するに際し、10重量%水溶液としたときの電気伝導度が0.005〜1.2S/mである水溶性高分子化合物を共存させることを特徴とする、マイクロカプセルの製造法。
【請求項2】
コンプレックス・コアセルベーション法を用いてタンパク質皮膜を有するマイクロカプセルを製造するに際し、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、およびそれらの混合物からなる群から選択される水溶性高分子化合物を共存させることを特徴とする、マイクロカプセルの製造法。
【請求項3】
前記水溶性高分子化合物が、スルホン酸および/またはカルボン酸変性されたポリビニルアルコールから選ばれる1または2以上である、請求項1または2に記載のマイクロカプセルの製造法。
【請求項4】
タンパク質皮膜の硬化剤がトランスグルタミナーゼである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造法。
【請求項5】
皮膜が、タンパク質と、10重量%水溶液としたときの電気伝導度が0.005〜1.2S/mである水溶性高分子化合物とを含んでなることを特徴とする、マイクロカプセル。
【請求項6】
皮膜が、タンパク質と、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、およびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される水溶性高分子化合物とを含んでなることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項7】
前記水溶性高分子化合物が、スルホン酸変性ポリビニルアルコールまたはカルボン酸変性ポリビニルアルコールである、請求項5または6に記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
皮膜がトランスグルタミナーゼにより硬化されたものである、請求項5〜7のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
皮膜が実質的にアルデヒド類を含有していない、請求項5〜8のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載のマイクロカプセルを具備してなることを特徴とする、磁気表示媒体。

【公開番号】特開2006−61826(P2006−61826A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247309(P2004−247309)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】