説明

マイクロカプセルシート

【課題】 マイクロカプセル自体に対する細かい処理を達成する。
【解決手段】 可食性フィルムまたは可溶性フィルムからなる基材1の所定範囲のみに、第1のシェル膜と第2のシェル膜とでコア層を包囲してなるマイクロカプセル5を所定のパターンで配列している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア材を微細なシェルに封じ込めてなるマイクロカプセルを所定のパターンで配列してなるマイクロカプセルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有効成分の劣化防止、必要な時にコア物質を放出、徐放性(少しずつコア物質を放出)という機能に着目して、マイクロカプセルが種々の分野で使用されるようになってきている。
【0003】
そして、マイクロカプセルの製造方法としては、特許文献1に記載されているように、相分離法、液中硬化被覆法、インシチュー(In Situ)重合法、界面重合法などが知られている。
【特許文献1】特開2003−344881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相分離法は、ポリマー溶液に分離させた着色荷電粒子と分散媒とからなるコア物質のまわりにポリマーの濃厚相を分離させる方法であるから、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができないという不都合がある。
【0005】
液中硬化被覆法は、ポリマー溶液中のコア物質のまわりにポリマーの硬化試験薬等を適用することによりポリマーを硬化させる方法であるから、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができないという不都合がある。
【0006】
インシチュー(In Situ)重合法は、コア物質を分散させたエマルジョンの内相或いは外相の何れか一方からモノマーや重合触媒を供給し、コア物質をポリマーで覆う方法であるから、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができないという不都合がある。
【0007】
界面重合法は、コア物質を分散させたエマルジョンの内相および外相の双方からモノマーを供給する方法であるから、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができないという不都合がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コア材を微細なシェルに封じ込めてなるマイクロカプセルを所定のパターンで配列してなるマイクロカプセルシートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマイクロカプセルシートは、可食性フィルムまたは可溶性フィルムからなる基材の所定範囲のみに、第1のシェル膜と第2のシェル膜とでコア層を包囲してなるマイクロカプセルを所定のパターンで配列してなるものである。
【0010】
この場合には、第1のシェル材、第2のシェル材として任意の材質のものを採用することができるので、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができる。そして、基材が可食性フィルムまたは可溶性フィルムであるから、医薬品用途に使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマイクロカプセルシートは、医薬品用途に使用することができるという特有の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明のマイクロカプセルシートの実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、マイクロカプセル製造装置の一例を示す概略図である。
【0014】
このマイクロカプセル製造装置は、可食性フィルムまたは可溶性フィルムからなる基材1を支承して2次元的に移動させるXYステージ2と、基材1の上方から第1のシェル材を含む液滴、コア材、第2のシェル材を含む液滴をそれぞれ供給し、基材1の表面に付着させる3つの液滴供給ノズルを有するノズル装置3と、付着した液滴を乾燥させて第1のシェル膜、コア材、第2のシェル膜を乾燥させるための乾燥装置4とを有している。
【0015】
前記液滴供給ノズルは、インクジェットプリンタに使用されているインクノズルのように、例えば、圧電セラミックが歪む性質を利用して液滴を吐出するピエゾヘッドや、熱エネルギーを利用して液滴を吐出するサーマルインクジェットヘッドによって液滴を吐出するので、吐出量を高精度に制御することができる。
【0016】
また、ノズル装置3は、3つの液滴供給ノズルを有している関係上、同一位置で順次3つの液滴供給ノズルを動作させるために、3つの液滴供給ノズルの配列に対応させて往復動されるよう構成されている。
【0017】
前記乾燥装置4としては、例えば、赤外線ヒータを採用することができる。
【0018】
次いで、図2を参照して、図1のマイクロカプセル製造装置の作用を説明する。
【0019】
XYステージ2によって基材1を所定位置に移動させ、ノズル装置3の3つの液滴供給ノズルのうちの1つを駆動して、第1のシェル材を含む液滴を基材1に付着させる。この状態では、液滴はほぼ半球状である{図2中(A)参照}。
【0020】
次いで、乾燥装置4を動作させれば、先ず表面が乾燥して膜が形成され、その後も乾燥動作を継続することにより、内部の溶剤などが蒸発し、最初に形成された膜が凹状にされる{図2中(B)参照}。ただし、シェル材、液滴の種類などによっては、膜が単に扁平にされるだけの場合もある。
【0021】
その後、ノズル装置3の3つの液滴供給ノズルのうちの他の1つを駆動して、コア材を含む液滴を第1のシェル膜上に付着させて、乾燥装置4で乾燥させる{図2中(C)参照}。
【0022】
その後、ノズル装置3の3つの液滴供給ノズルのうちのさらに他の1つを駆動して、第2のシェル材を含む液滴を、コア層を覆うように付着させる。
【0023】
次いで、乾燥装置4を動作させれば、第2のシェル材を含む液滴が乾燥され、第2のシェル層が形成される{図2中(D)参照}。
【0024】
以上のようにして、可食性フィルムまたは可溶性フィルムからなる基材1上にマイクロカプセル5を製造することができる。
【0025】
また、基材1をXYステージ2によって移動させることができるので、基材1上の所望の領域のみに、所定のパターンでマイクロカプセル5を配列して、マイクロカプセルシートを作製することができる(図3参照)。
【0026】
上記のように製造されたマイクロカプセルシートの用途としては、ビタミシ類、DDS(ドラッグデリバリーシステム)などの医薬が例示できる。
【0027】
そして、これらの用途に応じて、シェル材、コア材を適宜選択することが必要になる。特に、上記の製造方法、製造装置により製造されるマイクロカプセルシートにおいては、第1のシェル材と第2のシェル材とを互いに独立に選択することができるので、用途に応じて、例えば、一方のシェル材と、他方のシェル材を、異なる材質のものとすることができる。
【0028】
また、シェル材としては、アラビアガム、アルギン酸ソーダ、エチルセルロースなどが例示できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】マイクロカプセル製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明によるマイクロカプセルシートの製造プロセスを説明する概略図である。
【図3】基材に対してマイクロカプセルを配置してなるマイクロカプセルシートの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0030】
1 基材
3 ノズル装置
4 乾燥装置
5 マイクロカプセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性フィルムまたは可溶性フィルムからなる基材(1)の所定範囲のみに、第1のシェル膜と第2のシェル膜とでコア層を包囲してなるマイクロカプセル(5)を所定のパターンで配列してなることを特徴とするマイクロカプセルシート。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−44547(P2007−44547A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278540(P2006−278540)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【分割の表示】特願2005−116454(P2005−116454)の分割
【原出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】