説明

マイクロカプセル化触媒−リガンドシステム

透過性を有し、かつポリマーから形成されるマイクロカプセルシェル内に触媒およびリガンドを含み、リガンドはポリマーリガンドであり、マイクロカプセル化した触媒−リガンドシステムが提供される。また、マイクロカプセル化した触媒−リガンドシステムの調製方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒システム、特にマイクロカプセル化触媒システムおよびその調製プロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
WO 03/006151は、カプセル化触媒システムおよびその産生方法について記載している。特に本公報は、カップリング反応に用途を見出すパラジウムベースのカプセル化触媒について記載している。これらのパラジウムベースのシステムはほとんどの場合、酢酸パラジウムのマイクロカプセル化に由来する。
【0003】
WO 2005/016510は、金属触媒がリガンドの存在下でマイクロカプセル化されるプロセスについて記載している。本公報は、リガンドの使用がカプセル化プロセス中に触媒滲出を減少させ得ることを記載している。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、使用中のマイクロカプセル化触媒−リガンドシステムからの触媒滲出がポリマーリガンドを使用すると減少され得るという発見に基づいている。理論に縛られたくはないが、ポリマーリガンドはマイクロカプセルのポリマーマトリクス内に固く結合され、それにより触媒をマイクロカプセル内に保持することが考えられる。本結合は、立体相互作用(例えば鎖絡み合いまたはより大きい分子の大幅に低下した拡散速度)によって、あるいはマイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)との重合によって形成されたイオン結合、静電結合または共有結合などの化学結合によって生じ得る。
【0005】
本発明の第1の態様により、透過性ポリマーマイクロカプセルシェル内にマイクロカプセル化された触媒およびリガンドを含むマイクロカプセル化触媒−リガンドシステムが提供され、リガンドはポリマーリガンドである。
【0006】
本発明の第2の態様により、マイクロカプセル化触媒−リガンドシステムの調製プロセスであって、
(i)触媒およびリガンドの存在下で界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成する工程、
(ii)触媒の存在下で界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成して、マイクロカプセルシェルをリガンドによって処理する工程、または
(iii)リガンドの存在下で界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成して、マイクロカプセルシェルを触媒溶液によって処理する工程を含み、
リガンドが重合性リガンドであり、プロセスがマイクロカプセルシェルの形成の前、最中または後にリガンドを重合する工程をさらに含む、プロセスが提供される。
【0007】
(各種の実施形態の説明)
(リガンド)
本発明のマイクロカプセル化触媒−リガンドシステムは、ポリマーリガンドを含む。前記システムは、重合性リガンド、すなわち重合を受けることができるリガンドの重合を含むプロセスによって得ることができる。
【0008】
多様な種類の重合が本発明に含まれる。例えばリガンドは自己重合を受けて、マイクロカプセルマトリクスとの立体相互作用によってマイクロカプセルシェル内に結合されたポリマーを形成し得る。あるいはリガンドは、別の種、例えばマイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と共重合し得る。リガンドはしたがって、マイクロカプセルマトリクスに結合した1つまたは複数のペンダント基の形であり得る。あるいは、または加えて、リガンドは別のリガンド種と共重合して、マイクロカプセルマトリクスに結合する、または結合しないコポリマーリガンドを形成し得る。リガンドは、当分野で既知のいずれの適切な重合によっても、例えばフリーラジカル重合、付加重合または縮重合によって重合され得る。
【0009】
ポリマーリガンドは、有機リガンドであり得る。有機リガンドは通例、触媒の金属原子に配位し得る少なくとも1個の官能基またはヘテロ原子を含む有機部分を含む。有機リガンドは、単官能性、2官能性および多官能性リガンドを含む。単官能性リガンドは、金属に配位し得る1個のみの官能基またはヘテロ原子を含む。2官能性リガンドまたは多官能性リガンドは、金属に配位し得る1個を超える官能基またはヘテロ原子を含む。
【0010】
有機リガンドは、N、O、PおよびSより選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含む有機部分であり得る。
【0011】
特に有機リガンドは、1つまたは複数のP原子を含む有機部分であり得る。
【0012】
特に言及されるのが、式(1)
【化1】

の有機リガンドであり、
式中、
、RおよびRはそれぞれ独立して、場合により置換されたヒドロカルビル基、場合により置換されたヒドロカルビルオキシ基、基における1つまたは複数の炭素原子が硫黄、酸素または窒素原子によって置換された、場合により置換されたヒドロカルビル基、または場合により置換されたヘテロシクリル基であり、あるいはR&R、R&R、R&Rの1つまたは複数が、場合により置換された(複数の)環を形成するような方法で場合により結合され;
、RおよびRの少なくとも1つが重合性基を含む。
【0013】
1−3によって表され得るヒドロカルビル基は独立して、アルキル、アルケニルおよびアリール基、ならびにそのいずれかの組合せ、例えば、アラルキルとアルカリールの組み合わせであるベンジル基を含む。
【0014】
1−3によって表され得るアルキル基としては、20個までの炭素原子、詳細には1〜7個の炭素原子、さらに詳細には1〜5個の炭素原子を含む、直鎖または分岐アルキル基を含む。アルキル基が分岐しているとき、基は10個までの分岐鎖炭素原子、特に4個までの分岐鎖原子を含むことが多い。ある実施形態において、アルキル基は環式であり、一般に最も大きい環に3〜10個の炭素原子を含み、1つまたは複数の架橋環を場合により特徴とすることがある。R1−3によって表され得るアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル、2−ブチル、t−ブチルおよびシクロヘキシル基が挙げられる。
【0015】
1−3によって表され得るアルケニル基としては、C2−20、特にC2−6アルケニル基が挙げられる。1つまたは複数の炭素間二重結合が存在し得る。アルケニル基は、1つまたは複数の置換基、特にフェニル置換基を保持し得る。アルケニル基の例としては、ビニル、アリル、スチリルおよびインデニル基が挙げられる。
【0016】
1−3によって表され得るアリール基は、シクロアルキル、アリールおよび複素環式環を含み得る、1個の環または2個以上の縮合環を含有し得る。R1−3によって表され得るアリール基の例としては、フェニル、トリル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、トリフルオロメチルフェニル、アニシル、ナフチルおよびフェロセニル基が挙げられる。
【0017】
1−3によって表され得る複素環式基は独立して、芳香族、飽和および部分不飽和環系を含み、シクロアルキル、アリールまたは複素環式環を含み得る1個の環または2個以上の縮合環を構成し得る。複素環式基は、少なくとも1個の複素環式環を含有し、その最大のものは一般に3〜7個の環原子を含み、その中で少なくとも1個の原子が炭素であり、少なくとも1個の原子がN、O、SまたはPのいずれかである。R1−3によって表され得る複素環式環の例としては、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾイルおよびトリアゾイルが挙げられる。
【0018】
1−3のいずれも、1つまたは複数の他の置換基をさらに含み得る。この場合、触媒の活性または重合を受ける基の能力に悪影響を及ぼさないように、1つまたは複数の他の置換基が通常、選択されるべきである。適切な任意の置換基の例としては、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アシル、ヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ヒドロカルビルオキシ、モノまたはジ−ヒドロカルビルアミノ、ヒドロカルビルチオ、エステル、カルボキシラート、カーボネート、アミド、スルホナート、スルホニルおよびスルホンアミド基が挙げられ、ヒドロカルビル基は、上のRで定義した通りである。1つまたは複数の置換基が存在することがあり、R、RまたはRのいずれかが過ハロゲン化ヒドロカルビル基であるときを含む。R1−3によって表され得る過ハロゲン化ヒドロカルビル基の例としては、−CFおよび−Cおよびペンタフルオロフェニルが挙げられる。
【0019】
およびR、RおよびR、ならびにRおよびRのいずれかが、それらが結合しているリン原子とともに、環が形成されるように結合された場合、環は5、6または7員環であることが多い。
【0020】
リガンドは、遊離ラジカル重合を受けることができる。「フリーラジカル」という用語は本明細書で使用するように、不対電子を含有する原子種または分子種への言及を含む。それゆえリガンドは、フリーラジカル重合を受けやすい1つまたは複数の原子または基を含み得る。特に言及されるのは、前記原子または基の1つまたは複数を含む有機リガンドである。式(1)に関して、R、RおよびRの少なくとも1つは、フリーラジカル重合を受けることができる基を含み得る。
【0021】
一例として、リガンドは、場合により置換されたアルケニル基、例えばビニル、ビニリデン、アリル、ブタジエニル、イソプレニル、アクリレート、メタクリレート、ビニルカルボキシラートおよびビニルエーテル;脂肪族または芳香族チオール(チオフェノール);および水素化スズより選択される1つまたは複数の基を含み得る。それゆえ重合性リガンドが式(1)のリガンドである場合、R、RおよびRの少なくとも1つがこれらの基の1つを含み得る。特に好ましいのは、1つまたは複数のスチリル、ビニルまたはアリル基を含むリガンド、例えば式(1)のリガンドである。
【0022】
特に言及されるのは、(4−スチリル)ジフェニルホスフィン、ジ−(4−スチリル)フェニルホスフィン、トリ−4−スチリルホスフィン、ならびにその対応する2−スチリルおよび3−スチリル異性体、(4−スチリル)ジ−2−トリルホスフィン、ジ−(4−スチリル)−2−トリルホスフィン、(4−スチリル)ジ−2−トリルホスフィン、ジ−(4−スチリル)−2−トリルホスフィンならびにその対応する2−スチリルおよび3−スチリル異性体、アリルジフェニルホスフィン、ジアリルフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、アリルジブチルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、ジビニルフェニルホスフィン、トリビニルホスフィンを含む式(1)のリン系リガンド、または次のリガンドの1つ
【化2】

である。
【0023】
重合性リガンドは、置換され得る、または非置換であり得るシクロペンタジエニル基を含み得る。例えばシクロペンタジエニル基の環炭素原子の1つまたは複数が、ポリマー構造に結合できる基によって置換され得る。特に言及されるのは、次の式のシクロペンタジエニルリガンドである。
【化3】

式中、
、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、Hあるいは場合により置換されたヒドロカルビル基、場合により置換されたヒドロカルビルオキシ基、場合により1つまたは複数の炭素原子が硫黄、酸素または窒素原子によって置換されたヒドロカルビル基、または場合により置換されたヘテロシクリル基であり、あるいはR、R、R、RおよびRの2つ以上が、場合により置換された(複数の)環を形成するような方法で場合により結合され;
、R、R、RおよびRの少なくとも1つが重合性基を含む。
【0024】
4−8によって表され得るヒドロカルビル基は独立して、アルキル、アルケニルおよびアリール基、ならびにそのいずれかの組合せ、例えばアラルキルおよびアルカリール、例えばベンジル基を含む。
【0025】
4−8によって表され得るアルキル基としては、20個までの炭素原子、詳細には1〜7個の炭素原子、さらに詳細には1〜5個の炭素原子を含む、直鎖または分岐アルキル基を含む。アルキル基が分岐しているとき、基は10個までの分岐鎖炭素原子、特に4個までの分岐鎖原子を含むことが多い。ある実施形態において、アルキル基は環式であり、一般に最大環に3〜10個の炭素原子を含み、場合により1つまたは複数の架橋環により特徴付けられる。R4−8によって表され得るアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル、2−ブチル、t−ブチルおよびシクロヘキシル基が挙げられる。
【0026】
4−8によって表され得るアルケニル基としては、C2−20、特にC2−6アルケニル基が挙げられる。1つまたは複数の炭素−炭素間二重結合が存在し得る。アルケニル基は、1つまたは複数の置換基、特にフェニル置換基を保持し得る。アルケニル基の例としては、ビニル、アリル、スチリルおよびインデニル基が挙げられる。
【0027】
4−8によって表され得るアリール基は、シクロアルキル、アリールおよび複素環式環を含み得る、1個の環または2個以上の縮合環を含有し得る。R4−8によって表され得るアリール基の例としては、フェニル、トリル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、トリフルオロメチルフェニル、アニシル、ナフチルおよびフェロセニル基が挙げられる。
【0028】
4−8によって表され得る複素環式基は独立して、芳香族、飽和および部分不飽和環系を含み、シクロアルキル、アリールまたは複素環式環を含み得る1個の環または2個以上の縮合環を構成し得る。複素環式基は、少なくとも1個の複素環式環を含有し、その最大のものは一般に3〜7個の環原子を含み、その中で少なくとも1個の原子が炭素であり、少なくとも1個の原子がN、O、SまたはPのいずれかである。R4−8によって表され得る複素環式環の例としては、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾイルおよびトリアゾイル基が挙げられる。
【0029】
4−8のいずれも、1つまたは複数の他の置換基をさらに含み得る。この場合、触媒の活性または重合を受ける基の能力に悪影響を及ぼさないように、1つまたは複数の他の置換基が通常、選択されるべきである。適切な任意の置換基の例としては、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アシル、ヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ヒドロカルビルオキシ、モノまたはジ−ヒドロカルビルアミノ、ヒドロカルビルチオ、エステル、カルボキシラート、カーボネート、アミド、スルホナート、スルホニルおよびスルホンアミド基が挙げられ、ヒドロカルビル基は、上のR4−8で定義した通りである。
【0030】
重合性シクロペンタジエニルリガンドは、非錯体化(例えば飽和炭素原子に2個の置換基を有する、1個はプロトンである)で、またはシクロペンタジエニルアニオンの金属錯体の形でマイクロカプセル化ポリマー中に含有され得る。このような錯体は、当業者に既知の方法、例えば脱プロトン化または金属塩との反応を使用して調製され得る。
【0031】
重合性シクロペンタジエニルリガンドとして言及されるのは、R、R、R、RおよびRの1つまたは複数がヒドロキシアルキル、アミノアルキルまたはアルケニル基を含むものである。
【0032】
重合性シクロペンタジエニルリガンドとして特に言及されるのは、1−(3−ヒドロキシプロピル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン、1−(4−ヒドロキシブチル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン、1−(5−ヒドロキシペンチル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン、1−(3−アミノプロピル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン、1−(4−アミノブチル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン、1−(5−アミノペンチル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエンおよび1−(8−ヘプタデセニル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエンである。
【0033】
リガンドの重合は、フリーラジカル重合を受けることができるリガンドがフリーラジカル開始剤に接触されるフリーラジカル重合プロセスを使用して実施され得る。「フリーラジカル開始」は、フリーラジカルを発生するいずれの方法も指す。
【0034】
フリーラジカル重合は、当業者に既知の多数の方法によって実施され得る。ラジカル開始法の例としては、官能基が熱の影響のみでフリーラジカルまたはフリーラジカルの対を自発的に生成できる、熱活性化;官能基が電磁放射の影響のみでフリーラジカルまたはフリーラジカルの対を自発的に生成できる、光分解活性化;およびある条件、例えば熱または電磁放射を加えたときにフリーラジカル源を供給する化学化合物または化学化合物の組合せを使用する活性化が挙げられる。通常、ある条件を、例えば熱(熱開始剤として既知)または電磁放射(光開始剤として既知)を加えたときにフリーラジカル源を供給する化学化合物または化学化合物の組合せが、フリーラジカル源として利用される。
【0035】
熱活性化は、ビニル型重合性基などの比較的弱い結合を持つ化合物からラジカルを生成できる。例えば純スチレン(すなわちラジカル阻害剤を含有しない)の加熱は、π−π結合の熱ホモリテック開裂によってフリーラジカルを生成し、このことが次にスチレンの重合を開始させる役割を果たし、最終的にはゲルを生じることが既知である。
【0036】
有用な熱開始剤としては、アゾ、過酸化物、過硫酸塩、および酸化還元開始剤が挙げられる。
【0037】
適切なアゾ開始剤としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(VAZO(商標)52);2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO(商標)64);2,2’−アゾビス−2−メチルイソブチロニトリル(VAZO(商標)67);および(1,1’−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)(VAZO(商標)88)が挙げられ、そのすべてがDuPont Chemicalsより入手可能であり、2,2’−アゾビス(メチルイソブチラート)(V−601)および2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロライド(V−50(商標))はWako Chemicalsより入手可能である。DuPont ChemicalsからVAZO(商標)33として先に入手可能であった2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)も適切である。
【0038】
適切な過酸化物開始剤としては、過酸化ジアシル、ペルオキシ二炭酸塩、モノペルオキシ二炭酸塩、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、過酸化ジアルキル、ヒドロペルオキシドが挙げられる。例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ペルオキシ二炭酸ジアセチル、ペルオキシ二炭酸ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)(PERKADOX(商標)16S、AKZO Chemicalsより入手可能)、ペルオキシ二炭酸ジ(2−エチルヘキシル)、ペルオキシ安息香酸t−ブチル、ペルオキシピバル酸t−ブチル(LUPERSOL(商標)1、Atochemより入手可能)、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート(TRIGONOX(商標)21−C50、Akzo Chemicals,Inc.より入手可能)、および過酸化ジクミルが挙げられる。
【0039】
適切な過硫酸塩開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、および過硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0040】
適切なレドックス(酸化−還元)開始剤としては、上の過硫酸塩開始剤とメタ重亜硫酸ナトリウムおよび重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤との組合せ;有機過酸化物および3級アミンに基づく系(例えばジメチルアニリンを加えた過酸化ベンゾイル);ならびに有機ヒドロペルオキシドまたは過酸化水素および遷移金属に基づく系、例えばナフテン酸コバルトを加えたクメンヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0041】
有用な光開始剤としては、例えば約250nm〜約450nmの、例えば約351nmの波長でのUV放射によって活性化することができる光開始剤が挙げられる。有用な光開始剤としては、例えばベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル、置換ベンゾインエーテル、アリールホスフィンオキシド、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの置換アセトフェノン、および置換α−ケトール(α−ヒドロキシケトン)が挙げられる。市販の光開始剤の例としては、Irgacure(商標)819およびDarocur(商標)1173(どちらもCiba−Geigy Corp.より入手可能)、Lucern TPO(商標)(BASFより入手可能)ならびにIrgacure(商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−エタノン、Ciba−Geigy corporationより入手可能)が挙げられる。
【0042】
フリーラジカル開始剤系として特に言及されるのが、アゾ化合物およびその混合物である。
【0043】
本発明のプロセスは、カプセル化プロセスの組成物に含まれ得るフリーラジカル開始剤を使用して実施され得る。この場合、フリーラジカル開始剤は好ましくは、カプセル化プロセスの有機相に添加される。フリーラジカル開始剤は、10/1〜1/10000の、好ましくは1/2〜1/5000の、さらに好ましくは1/10〜1/2000の、非常に好ましくは1/20〜1/1000のフリーラジカル開始による攻撃を受けやすい官能基を含むリガンドに対する重量比で使用され得る。
【0044】
リガンドは、マイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と共重合し得る。適切な重合方法は、当業者に明らかになる。例えばポリイソシアナート(例えばジイソシアナート)を含むプレポリマーの場合、ポリイソシアナートと反応できるリガンドは、ポリイソシアナートと接触することができ、リガンドがプレポリマーに共有結合されている組成物を生じる。次のマイクロカプセル物質の重合は、マイクロカプセルシェルに共有結合されているリガンドを含むマイクロカプセルを生じる。式(1)に関して、R、RおよびRの少なくとも1つは、マイクロカプセル物質との重合を受けることができる。
【0045】
一例として、リガンドは、イソシアナート化合物と反応できる基を含み得る。このような基としては、求核基、例えばヒドロキシ、アミノおよびメルカプト基が挙げられる。それゆえ重合性リガンドが式(1)のリガンドである場合、R、RおよびRの少なくとも1つがこれらの基の1つを含み得る。例示的なリガンドは、3−(ジフェニルホスフィノ)プロピル−1−アミン、すなわち
【化4】

である。
【0046】
イソシアナート化合物と反応できる他の化合物としては、β−ジケトン、β−ケトエステル、β−ケトアミド、およびβ−ジカルボン酸などの活性メチレン化合物およびその誘導体が挙げられる。詳細な化合物としては、マロン酸およびそのエステルまたはアミド、マロンニトリル、シアノ酢酸およびそのエステルまたはアミド、ならびにアセトアセテート化合物が挙げられる。
【0047】
リガンドおよびポリイソシアナートの共重合を含む例示的プロセスを下に示す。
【化5】

EWG=電子吸引基
【0048】
ある場合では、金属、特に金属触媒と錯化された重合性リガンドを使用することが所望であり得る。例えばβ−ジケトン、β−ケトエステル、β−ケトアミド、およびβ−ジカルボン酸などの活性メチレン化合物およびその誘導体は、遷移金属(例えばNi、Pd、Pt、Rh、Ru、OsまたはIr)と錯化され、リガンドは続いてマイクロカプセル物質と重合され得る。特に言及されるのは、テトラメチルヘプタンジオナート、アセトアセテートおよびアセトアセトナートリガンドなどの、β−ジケトンリガンドによって生成された遷移金属(特にニッケル)錯体である。このような錯体の使用は、そうでなければカプセル化が困難であることが判明し得る、ニッケルおよび他の遷移金属触媒をうまくカプセル化する方法を提供し得る。
【0049】
リガンドは、重合を受けることができる複数の部分を含み得る。それゆえリガンドは、フリーラジカル重合を受けることができ、マイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と結合することもできる。例えばリガンドは、フリーラジカル重合を受けることができる基(ビニル基など)および活性メチレン部分を含む基(例えばβ−ジケトン、β−ケトエステル、β−ケトアミド、β−ジカルボン酸、アリールおよびヘテロアリール基より選択される基)を含み得る。このようなリガンドの例としては、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンおよび1−アリルイミダゾールが挙げられる。
【0050】
リガンドは、マイクロカプセルシェルまたはその構成要素と重合できる複数の基を含むことができ、このようなリガンドの例としては、1つまたは複数のヒドロキシ、アミノおよびメルカプトと置換されたアセトアセトキシエチルリガンドが挙げられる;このようなリガンドは、ケトあるいはヒドロキシ、アミノまたはメルカプト官能基のどちらかによってマイクロカプセル物質と重合され得る。詳細なリガンドは、2−アセトアセトキシエタノール、すなわちCHC(O)CHC(O)OCHCHOHである。
【0051】
(触媒)
触媒は無機触媒、特に遷移金属触媒であり得る。「遷移金属触媒」という用語は本明細書で使用するように、(a)通常は微粉化またはコロイド形の遷移金属自体;(b)遷移金属の錯体;または(c)遷移金属を含有する化合物への言及を含む。所望ならば、触媒の前駆物質をポリマーマイクロカプセルシェル内にマイクロカプセル化して、続いて例えば加熱によって触媒に変換させることができる。それゆえ「触媒」という用語は本明細書で使用するように、触媒前駆物質も含む。
【0052】
本発明で使用する触媒がベースとする遷移金属としては、プラチナ、パラジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、レニウム、スカンジウム、セリウム、サマリウム、イットリウム、イッテルビウム、ルテチウム、コバルト、チタン、クロム、銅、鉄、ニッケル、マンガン、スズ、水銀、銀、金、亜鉛、バナジウム、タングステン、およびモリブデンが挙げられる。ベースとされ得る本発明で使用する詳細な触媒としては、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、プラチナ、チタン、ニッケル、バナジウムおよびクロム、特にパラジウムが挙げられる。空気不安定性触媒は、空気を排除するための在来の技法を使用して扱われ得る。
【0053】
各種の形のパラジウムは、本発明によりマイクロカプセル化でき、幅広い反応の触媒として有用である。
【0054】
好ましくは、パラジウムは有機溶媒可溶形の形で直接使用され、さらに好ましくは酢酸パラジウムである。それゆえ例えば酢酸パラジウムは懸濁させるか、さらに好ましくは、炭化水素溶媒または塩素化炭化水素溶媒などの適切な溶媒に溶解させることができ、得られた溶液を本発明に従ってマイクロカプセル化できる。クロロホルムは、酢酸パラジウムのマイクロカプセル化での使用に好ましい溶媒である。
【0055】
文献源により、酢酸パラジウムは熱の作用で金属に分解する。パラジウムが金属の形で存在しているか、または酢酸パラジウムとして残存しているかは現在不明であるが、酢酸パラジウムに由来する本発明の触媒は有効であることが判明している。
【0056】
1つまたは複数のリガンドおよび/または1つまたは複数の触媒が本発明のプロセスで利用され得ることが理解される。複数のリガンドおよび/または複数の触媒が利用される場合、同じまたは同様の反応タイプを強化または触媒する能力について、あるいは異なる反応タイプを強化または触媒する能力についてそれぞれ独立して選択され得る。
【0057】
(マイクロカプセルの調製)
本発明のマイクロカプセル化触媒−リガンドシステムは通常、界面重合プロセスによって調製される。界面重合プロセスは、例えばWO 03/006151に記載されている。
【0058】
各種の界面重合技法があるが、すべてエマルジョン系における分散相と連続相との界面での反応を含む。通例、分散相は油相であり、連続相は水相であるが、連続油相および分散水相の界面における界面重合反応も可能である。それゆえ例えば油相または有機相を、水および界面活性剤を含む連続水相へ分散させる。有機相は乳化によって水相全体に離散した液滴として分散され、離散した有機相液滴と周囲の連続水相溶液との間の界面が生成される。この界面での重合は、分散相液滴を包囲するマイクロカプセルシェルを形成する。
【0059】
1種類の界面縮重合マイクロカプセル化プロセスにおいて、油および水相に含有されるモノマーそれぞれは油/水界面でひとまとめにされて、そこで縮合によって反応してマイクロカプセル壁を形成する。別の種類の重合反応である、インサイチュー界面縮重合反応において、壁形成モノマーのすべてが油相に含有される。壁形成物質のインサイチュー縮合および有機−水相界面でのポリマーの硬化は、エマルジョンを約20℃〜約100℃の温度に加熱することと、場合によりpHを調整することとによって開始され得る。加熱は、有機液滴を、有機コア物質を捕捉する固体透過性ポリマーシェルよりなるカプセルに変換するために、プレポリマーのインサイチュー縮合の実質的な完了を可能にするのに十分な期間にわたって行う。
【0060】
インサイチュー縮合によって調製され、当分野で既知である1種類のマイクロカプセルは、米国特許第4,956,129号および5,332,584号に例示されている。一般に「アミノプラスト」マイクロカプセルと呼ばれるこれらのマイクロカプセルは、メチロール基の約50〜約98%がC〜C10アルコール(好ましくはn−ブタノール)によってエーテル化されているエーテル化尿素−ホルムアルデヒド樹脂またはプレポリマーの自己縮合および/または架橋によって調製される。プレポリマーは、油/水エマルジョンの有機相に添加または包含される。プレポリマーの自己縮合は、低pHにおける熱作用の下で場合により起こる。マイクロカプセルを形成するために、2相エマルジョンの温度を、約20℃〜約90℃の、好ましくは約40℃〜約90℃の、最も好ましくは約40℃〜約60℃の値まで上昇させる。系に応じてpH値は適切なレベルに調整され得る。本発明の目的では、約1.5〜3のpHが適切である。
【化6】

【0061】
米国特許第4,285,720号に記載されているように、本発明での使用に最も適したプレポリマーは、有機相での高度の溶解性および水中での低溶解性を持つ、部分エーテル化尿素−ホルムアルデヒドプレポリマーである。アルコール中で、またはアルコールおよびキシレンの混合物中のエーテル化尿素−ホルムアルデヒドプレポリマーが市販されている。好ましい市販のプレポリマーの例としては、BIPによって製造されたBeetleエーテル化尿素樹脂(例えばBE607、BE610、BE660、BE676)またはDyno CyanamidからのDynomin N−ブチル化尿素樹脂(例えばDynomin UB−24−BX、UB−90−BXなど)が挙げられる。
【0062】
マイクロカプセル形成を強化できる酸重合触媒は、水相または有機相のどちらかに配置され得る。コア物質があまりに疎水性であるときに酸重合触媒が一般に使用されるのは、それらがプロトンを有機相へ引き付ける役割を果たすためである。有機相へ高い親和性を有するいずれの水溶性酸重合触媒も使用され得る。カルボン酸およびスルホン酸が特に有用である。
【0063】
米国特許第4,285,720号に例示されているような、インサイチュー縮合によって調製され、当分野で見いだされるさらなる1つの種類のマイクロカプセルは、壁形成物質としてポリメチレンポリフェニレンイソシアナート(PMPPI)および/またはトリレンジシアナート(TDI)などの少なくとも1つのポリイソシアナートの使用を含むポリ尿素マイクロカプセルである。ポリ尿素マイクロカプセルの生成において、壁形成反応は一般に、エマルジョンを高温へ加熱することによって開始され、その高温ではイソシアナート基の一部が界面にて加水分解されてアミンを形成し、アミンが次に加水分解されていないイソシアナート基と反応してポリ尿素マイクロカプセル壁を形成する。イソシアナートモノマーの加水分解の間に、二酸化炭素が遊離される。連続液相、すなわち水相中で有機相の液滴を安定させる分散体が完成すれば、他の反応物質の添加は不要である。その後、好ましくは分散体の適度な撹拌を用いて、連続液層を加熱することによって、あるいはイソシアナート加水分解の速度を上昇させることができるアルキルスズまたは3級アミンなどの重合触媒を導入することによって、ポリ尿素マイクロカプセルの形成が引き起こされ得る。
【0064】
有機相の量は、反応容器内に存在する水相の約1体積%〜約75体積%で変化し得る。有機相の好ましい量は、約10体積%〜約50体積%である。本プロセスで使用した有機ポリイソシアナートとしては、芳香族および脂肪族単官能性または多官能性イソシアナートの両方が挙げられる。適切な芳香族ジイソシアナートおよび他のポリイソシアナートの例としては、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアナート、m−フェニレンジイソシアナート(およびその水素化誘導体)、p−フェニレンジイソシアナート(およびその水素化誘導体)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、2,4−トリレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート(60% 2,4−異性体、40% 2,6−異性体)、2,6−トリレンジイソシアナート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、3,3−ジメトキシ−4,4’ビフェニレンジイソシアナート、2,2’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、80%が2,4−異性体で20%が2,6−異性体であるトリレンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート(PMPPI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナートおよび1,5−ナフチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとする親水性脂肪族ポリイソシアナート(例えばBayhydur 3100、Bayhydur VP LS2319およびBayhydur VP LS2336)およびイソホロンジイソシアナートをベースとする親水性脂肪族ポリイソシアナート(例えばBayhydur VP LS2150/1)が挙げられる。
【0065】
上に挙げたポリイソシアナートの組合せを使用することが所望であり得る。詳細なポリイソシアナートは、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート(PMPPI)およびポリメチレンポリフェニルイソシアナート(PMPPI)とトリレンジイソシアナートあるいは他の2官能性芳香族または脂肪族イソシアナートとの混合物である。
【0066】
ポリマー前駆物質の1つの他のクラスは、共に反応して水/油界面で界面重合を受ける、主に油溶性の成分および主に水溶性の成分よりなる。このような前駆物質の典型は、鎖伸長および/または架橋が起きるようにするための、上で挙げたもののような油溶性イソシアナートおよびエチレンジアミンおよび/またはジエチレントリアミンなどの水溶性ポリアミンである。架橋の変形は、アミンの官能性を増加させることによって達成され得る。それゆえ例えば架橋は、エチレンジアミンがDETA(ジエチレントリアミン)、TEPA(テトラエチレンペンタミン)などの多官能性アミンおよび他の十分に確立された架橋アミンによって置換された場合に増加される。イソシアナート官能性は、トルエンジイソシアナートなどのモノマーイソシアナートからPMPPIに移動することによって変化され得る(それゆえ架橋も変化され得る)。イソシアナートの混合物、例えばトリレンジイソシアナートおよびPMPPIの混合物も使用され得る。その上、芳香族イソシアナートからヘキサメチレンジイソシアナートおよびイソホロンジイソシアナートなどの脂肪族イソシアナートまで、化学的性質は多様であり得る。さらなる修飾は、壁の化学的性質に異なる特性を誘発するイソシアナートの化学的性質の範囲内のある量のポリウレタンを産生させるために、(ポリ)イソシアナートにポリオールを部分的に反応させることによって達成され得る。例えば適切なポリオールは、単純な低分子量脂肪族ジ、トリまたはテトラオールあるいはポリマーポリオールを含み得る。ポリマーポリオールは、いずれのクラスのポリマーポリオールの一員でもよく、例えば、ポリエーテル、ポリTHF、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエステルアミドであり得る。当業者は、エマルジョン液滴周囲のポリマー壁の産生に利用できる他の多くの化学的性質について認識する。ポリ尿素壁の化学的性質を生じさせるための確立されたイソシアナート/アミン反応と同様に、例えばイソシアナートの加水分解がアミンに引き起こされ、それが次にさらに内部で反応してポリ尿素の化学的性質を生じさせる改良を含む、本技術に対する改良が利用され得る(例えば米国特許第4,285,720号に記載されているように)。架橋度の変化は、モノマーイソシアナートのポリマーイソシアナートに対する比を変化させることにより達成され得る。上述の在来のイソシアナート技術と同様に、他のいずれのイソシアナートも本実施形態で利用され得る。
【0067】
当業者は、ポリ尿素マイクロカプセルを産生させるための先に記載された各種の方法が通例、未反応アミン(通常は芳香族アミン)基をポリマーマトリクスに結合されたまま残すことを認識する。一部の場合ではこのようなアミン基を実質的に不活性な官能基に変換することが好都合であり得る。好ましいのは、モノイソシアナート、酸塩化物またはクロロホルメートそれぞれとの有機溶媒中でのマイクロカプセルの後反応による、このようなアミン基の尿素、アミドまたはウレタン基への変換方法である。
【0068】
米国特許第6,020,066号(Bayer AGに譲渡)は、ポリ尿素およびポリイミノ尿素の壁を有するマイクロカプセルを形成する別のプロセスを開示し、そこでは壁がイソシアナートと共にNH基を含有する架橋剤の反応生成物よりなることを特徴としている。壁形成に必要な架橋剤としては、ジまたはポリアミン、ジオール、ポリオール、多官能性アミノアルコール、グアニジン、グアニジン塩、およびそれに由来する化合物が挙げられる。これらの薬剤は、壁を形成するためにイソシアナート基と相界面で反応できる。
【0069】
好ましいマイクロカプセル用の物質としては、米国特許第4,285,720号に記載されているように形成されたポリ尿素、または米国特許第4,956,129号に記載されているような尿素−ホルムアルデヒドポリマーが挙げられる。ポリ尿素は、マイクロカプセルが非常に穏やかな条件下で形成され、重合を促進するために酸性pHを必要としないので好ましく、そのため酸不安定性触媒をカプセル化するときの使用に適している。マイクロカプセルに最も好ましいポリマーの種類は、単独での、あるいは他の芳香族2官能性または多官能性イソシアナートとの組合せのどちらかのPMPPIポリイソシアナートをベースとする米国特許第4,285,720号に記載されているようなポリ尿素である。
【0070】
上記のマイクロカプセル化技法は最も一般的に、連続水相中に分散された油相のマイクロカプセル化を含み、このような系では、触媒はマイクロカプセル化油相中に懸濁させることが適切に可能であるか、またはさらに好ましくは、マイクロカプセル化技法において分散相としての使用に適した水混和性有機溶媒に溶解性である。本発明の範囲はしかしながら、水中油型マイクロカプセル化系の使用に限定されず、水溶性触媒は油中水型エマルジョン系の界面マイクロカプセル化によってカプセル化され得る。水溶性触媒も、水中油中水型エマルジョン系の界面マイクロカプセル化によってカプセル化され得る。
【0071】
マイクロカプセル壁形成物質は例えば、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーであり、物質の重合は、界面での壁形成物質の重合および/または硬化によりインサイチューで起こり得る。代案として、重合は連続相によって添加された第1壁形成物質と、不連続相中の第2壁形成物質を合せることによって界面にて行われる。
【0072】
リガンドは、有機相の成分として金属触媒と共にカプセル化され得る。それゆえリガンド、金属触媒、溶媒、壁形成物質および1つまたは複数の任意の他の成分(例えばフリーラジカル開始剤)は、連続水相中に単一の有機相として分散され得る。しかしながら成分のいずれかが相互に不適合性である場合、すべての成分を個別に、または組合せて分散させることが好都合であり、そこでの連続相条件は、個別の有機成分が拡散ならびに粒子癒着および分割によって混合されるまでマイクロカプセル重合が遅延されるようになっている。例えばリガンドは有機溶媒に溶解されて、次に他の有機成分と同時に、または金属触媒、壁形成物質および任意の成分(例えばフリーラジカル開始剤)の有機溶液の分散後に水相中へ分散させることができる。特に有機溶解性リガンドは、金属触媒、重合性壁形成反応物質、いずれの任意の成分(例えばフリーラジカル開始剤)と共に溶解させることができ、これが次に単一の溶液として連続水相中に分散させられる。リガンドはマイクロカプセルシェル形成の前、最中または後に重合され得る。リガンドは自己重合し得るか、あるいはマイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と共重合し得る。
【0073】
本発明のプロセスはしたがって、
(a)触媒およびリガンドを第1相に溶解または分散させる工程と、
(b)エマルジョンを形成するために第1相を第2の連続相に分散させる工程と、
(c)分散された第1相コアをカプセル化するマイクロカプセルポリマーシェルを形成するために、分散された第1相と第2相との間の界面にて1つまたは複数のマイクロカプセル壁形成物質を反応させる工程と、場合により、
(d)マイクロカプセルを連続相から回収する工程と、
を含み得る。
【0074】
好ましくは、第1相は有機相であり、第2の連続相は水相である。適切には、エマルジョンを安定させるために保護コロイド(界面活性剤)を使用する。所望ならば、第1相を、そして特にコアからの有機相溶媒および緩く結合したいずれの金属触媒またはリガンドも抽出するために、回収したマイクロカプセルは適切な溶媒で洗浄され得る。適切な溶媒、通常、水は、保護コロイドまたは界面活性剤を除去するためにも使用され得る。上記のように、リガンドはマイクロカプセルシェル形成の前、最中または後に重合され得る。リガンドは自己重合し得るか、あるいはマイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と共重合し得る。
【0075】
一部の状況、特にリガンドが非常に反応性であるか、または界面重合プロセスを妨害し得る場合では、界面重合後にリガンドを導入することが好都合であり得る。マイクロカプセルシェルはしたがって、触媒の存在下での界面重合することにより形成され、リガンドによって処理され得る。マイクロカプセル化触媒は、リガンドによる次の処理前に単離され得る。リガンドによる処理は、透過性ポリマーマイクロカプセルシェルを膨潤させる必要を伴って、または伴わずに実施され得る。リガンドは自己重合し得るか、あるいはマイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と共重合し得る。通例、マイクロカプセルは、続いて重合される重合性リガンドによって処理される。
【0076】
本発明のプロセスはしたがって、
(a)触媒を第1相に溶解または分散させる工程と、
(b)エマルジョンを形成するために第1相を第2の連続相に分散させる工程と、
(c)分散された第1相コアをカプセル化するマイクロカプセルポリマーシェルを形成するために、分散された第1相と第2相との間の界面にて1つまたは複数のマイクロカプセル壁形成物質を反応させる工程と、
(d)マイクロカプセルをリガンドによって処理する工程と、
を含み得る。
【0077】
マイクロカプセルは、工程(d)でのリガンドによる処理前に工程(c)の連続相から回収され得る。リガンド処理されたマイクロカプセルは単離されて、溶媒によって洗浄され得る。リガンドは自己重合し得るか、あるいはマイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と共重合し得る。通例、マイクロカプセルは、続いて重合される重合性リガンドによって処理される。
【0078】
一部の状況、特に金属触媒が非常に反応性であるか、または界面重合プロセスを妨害し得る場合では、マイクロカプセル形成後に金属触媒を導入することが好都合であり得る。本発明のプロセスはしたがって、リガントの存在下で界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成して、次にマイクロカプセルシェルを触媒溶液によって処理する工程を含む。マイクロカプセル化リガンドは、触媒による次の処理前に単離され得る。金属触媒による処理は、透過性ポリマーマイクロカプセルシェルを膨潤させる必要を伴って、または伴わずに実施され得る。リガンドはマイクロカプセルシェル形成の前、最中または後に重合され得る。通例、リガンドは触媒溶液による処理の前に、例えばマイクロカプセルシェル形成の前または最中に重合される。リガンドは自己重合し得るか、あるいはマイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と共重合し得る。
【0079】
本発明のプロセスはしたがって、
(a)リガンドを第1相に溶解または分散させる工程と、
(b)エマルジョンを形成するために第1相を第2の連続相に分散させる工程と、
(c)分散された第1相コアをカプセル化するマイクロカプセルポリマーシェルを形成するために、分散された第1相と連続第2相との間の界面にて1つまたは複数のマイクロカプセル壁形成物質を反応させる工程と、
(d)マイクロカプセルを触媒の溶液によって処理する工程と、
を含み得る。
【0080】
マイクロカプセルは、工程(d)での触媒による処理前に工程(c)の連続相から回収され得る。触媒処理されたマイクロカプセルは単離されて、溶媒によって洗浄され得る。上記のように、リガンドはマイクロカプセルシェル形成の前、最中または後に重合され得る。通例、リガンドは触媒溶液による処理の前に重合される。リガンドは自己重合し得るか、あるいはマイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と共重合し得る。
【0081】
上のプロセスに関して、特に言及されるのは、重合性リガンドが有機相の成分としての金属触媒と共にカプセル化されるプロセスである。重合性リガンドが最初に有機相の成分としてカプセル化され、次に捕捉されたリガンドを金属触媒の溶液に曝露させることによって金属触媒がカプセル化ポリマーリガンド中へ後吸着されるプロセスにも言及される。捕捉された金属をリガンドの有機溶液に曝露させることによって重合性リガンドがマイクロカプセル化金属触媒中に後吸着されるプロセスにも言及される。
【0082】
リガンドの金属触媒に対するモル比は、1/100〜100/1の範囲に、さらに好ましくは1/20〜20/1の範囲に、そしてさらに好ましくは1/10〜10/1の範囲にあり得る。
【0083】
好ましいリガンドとしては、有機溶媒に溶解性であり、水に不安定でないリガンドが挙げられる。
【0084】
好ましくは、連続相は水である。水相に分散された有機相の量は、リアクタ内に存在する水相の1体積%〜約75体積%で変化し得る。好ましくは、有機相の量は、約10体積%〜50体積%である。
【0085】
(1つまたは複数のリガンド、触媒および溶媒を含み得る)有機相中の壁形成物質の重量%は、5〜95%の、さらに好ましくは10〜70%の、最も好ましくは10〜50%の範囲内にある。
【0086】
(1つまたは複数のリガンド、触媒および溶媒を含み得る)有機相中の溶媒の重量%は、5〜95%の、さらに好ましくは15〜90%の、最も好ましくは40〜80%の範囲内にある。
【0087】
マイクロカプセル化触媒の装填レベルは変化させることができる。特に装填量が金属含量に基づく場合に、装填量0.01mmol/g〜0.8mmol/gのマイクロカプセル化触媒が典型的である。0.05mmol/g〜0.6mmol/gの装填量が好ましい。
【0088】
触媒およびリガンドのマイクロカプセル化は、当分野で周知の技法に従って行われる。通例、触媒は油相に溶解または分散され、油相は連続水相中へ乳化されて、一般に適切な界面活性剤系によって安定化されるエマルジョンを形成する。このようなエマルジョンを形成および安定化するのに適した多種多様の界面活性剤が市販され、唯一の界面活性剤として、または組合せのどちらかとして使用され得る。エマルジョンは、粒径要件に応じて、在来の低または高剪断ミキサーあるいはホモジナイズシステムによって形成され得る。広範囲の連続混合技法も利用され得る。特に利用され得る適切なミキサーとしては、混合要素が可動部品を含有するダイナミックミキサーおよび内部に可動部品のない混合要素を利用するスタティックミキサーが挙げられる。ミキサーの組合せ(通例は直列)が好都合であり得る。利用され得るミキサーの種類の例は、参照により本明細書に組み入れられている米国特許第627132号で議論されている。あるいはエマルジョンは、膜乳化法によって形成され得る。膜乳化法の例としては、参照により本明細書に組み入れられているJournal of Membrane Science 169(2000)107−117で総説されている。
【0089】
適切な界面活性剤の代表的な例としては、
a)アルキル(例えばオクチル、ノニルまたはポリアリール)フェノールとエチレンオキシドおよび場合によりプロピレンオキシドとの縮合物ならびにそのアニオン性誘導体、例えば対応するエーテルサルフェート、エーテルカルボキシラートおよびホスフェートエステル、
b)ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのブロックコポリマー、例えば商標名PLURONIC(PLURONICはBASFの商標である)で市販されている一連の界面活性剤、
c)各種のモル比のエチレンオキシドと縮合されたさまざまなソルビタンエステルを含む、一連の乳化剤であるTWEEN界面活性剤、
d)C〜C30アルカノールと2〜80モル比のエチレンオキシドおよび場合によりプロピレンオキシドとの縮合物、
e)カルボキシル化およびスルホン化生成物を含む、ポリビニルアルコール、
が挙げられる。
【0090】
さらにWO 01/94001は、1つまたは複数の壁改質化合物(表面改質剤と呼ばれる)は壁形成物質との反応により、マイクロカプセル壁に包含されて、固有の界面活性剤および/またはコロイド安定剤特性を備えた改質マイクロカプセル表面を生成する。このような改質化合物の使用は、おそらく追加のコロイド安定剤または界面活性剤なしで、および/または低減された撹拌を伴って、有機相壁形成物質が水相へただちに分散できるようにする。WO 01/94001の教示は、参照により本明細書に組み入れられている。本発明に詳細な用途を見出し得る壁改質化合物の例としては、スルホナートまたはカルボキシラートなどのアニオン性基、ポリエチレンオキシドなどの非イオン性基あるいは4級アンモニウム塩などのカチオン性基が挙げられる。
【0091】
加えて水相は、分散のプロセスまたは反応プロセスの助剤として作用し得る他の添加剤を含有し得る。例えば泡の蓄積、特にガス発生による発泡を減少させるために消泡剤が添加され得る。
【0092】
当業者は、油相としての使用に適した多種多様の物質を思いつく。例としては、ディーゼル油、イソパラフィン、芳香族溶媒、特にアルキル置換ベンゼン、例えばキシレンまたはプロピルベンゼン画分、ならびに混合されたナフタレンおよびアルキルナフタレン画分;鉱油、白油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ケロシン、脂肪酸のジアルキルアミド、特にカプリル酸などの脂肪酸のジメチルアミド;塩素化脂肪族および芳香族炭化水素、例えば1,1,1−トリクロロエタンおよびクロロベンゼン、グリコール誘導体のエステル、例えばジエチレングリコールのn−ブチル、エチル、またはメチルのアセテート、ジプロピレングリコールのメチルエーテルのアセテート、ケトン、例えばイソホロンおよびトリメチルシクロヘキサノン(ジヒドロイソホロン)ならびにヘキシル、またはヘプチルアセテートなどのアセテート生成物が挙げられる。マイクロカプセル化プロセスでの使用のための通常好ましい有機液体は、キシレン、ディーゼル油、イソパラフィンおよびアルキル置換ベンゼンであるが、油相への触媒の十分な溶解を達成するために溶媒の多少の変更も所望であり得る。
【0093】
ある触媒は、界面重合の間に壁形成反応を触媒し得る。一般に、このことを考慮するためにマイクロカプセル化条件を変更することが可能である。触媒とポリマーシェルとの間の一部の相互作用、錯化または結合は、微粉化またはコロイド状触媒の凝集を防止し得るので、当然所望であり得る。
【0094】
一部の例では、カプセル化される触媒および/またはリガンドは、界面重合反応の速度を上昇させ得る。このような場合、有機相が分散される間に界面重合が大幅に防止されるので、有機相および連続水相の一方または両方を冷却することが好都合であり得る。所望の有機液滴サイズが達成されたら、反応は次に制御された方法での加温によって開始される。例えばある反応において、水相は油相の添加前に10℃未満に、通例は0℃〜10℃に冷却することができ、次に有機相が分散されているときに、水相を加熱して温度を15℃超に上昇させて重合を開始させる。
【0095】
触媒およびリガンドを含有する油相液滴のマイクロカプセル化は、不活性雰囲気下での上述のような界面重合反応によって起こり得る。触媒およびリガンドを含有するマイクロカプセルの水性分散体は、さらなる処理なしに適切な反応を触媒するために使用され得る。好ましくは、しかしながら触媒およびリガンドを含有するマイクロカプセルは、濾過により水相から除去される。回収されたマイクロカプセルは、いずれの残存する界面活性剤系も除去するために水によって、そしてマイクロカプセル中に含有される有機相を抽出できる溶媒によって洗浄することが特に好ましい。ハロゲン化炭化水素溶媒、例えばクロロホルムなどの比較的揮発性の溶媒は一般に、アルキル置換ベンゼンなどの在来のマイクロカプセル化溶媒よりも、洗浄によって、または減圧下でただちに除去される。溶媒の大半が除去される場合、得られたマイクロカプセルは実際に、マイクロカプセルポリマーシェル内に効率的に分散された触媒を含有する実質的に溶媒を含まないポリマービーズであり得る。有機相を抽出するプロセスは、マイクロカプセル壁を内向きに潰すが、一般に球形状は維持される。所望ならば、乾燥マイクロカプセルをふるいにかけて、微細なもの、例えば約20ミクロン未満の直径を有する粒子を除去できる。
【0096】
マイクロカプセル化酢酸パラジウム微粒子の場合、回収された水で濡れたマイクロカプセルを大量の脱イオン水によって洗浄し、順次、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール、トルエン洗浄と、最後にヘキサンまたはヘプタン洗浄を続ける。マイクロカプセルを次に50℃の真空乾燥機で約4時間乾燥させて、95%超の不揮発性含有率(徹底的な乾燥により)を、好ましくは98%超の不揮発性含有率を含む生成物を得る。
【0097】
(使用)
調製の条件、そして特に触媒、リガンドおよび壁形成物質との間の相互作用度に応じて、本発明のマイクロカプセル化触媒−リガンドシステムは、一極では微粉化された触媒およびリガンド(固体として、または残留溶媒の存在下でのどちらかで)が一体化された外側ポリマーシェルが結合した内腔に含有された「リザーバー」として、または他極では微粉化触媒およびリガンドが全体に分布した固体アモルファスポリマービーズとして見なされ得る。実際に、位置は2つの極の間であると思われる。本発明のカプセル化触媒−リガンドの物理形とは無関係に、そして触媒への反応物質の接近(透過性ポリマーを通じた拡散または多孔性ポリマービーズ中への吸収)が起こる抽出機構とは無関係に、本発明のカプセル化された触媒およびリガンドが、触媒およびリガンドを回収され得る、または所望ならば再使用され得る形で与えながら、触媒への反応物質の効果的な接近を可能にすることが見出されている。さらに好ましい実施形態において、ポリマーシェル/ビーズが(ポリマーの有機溶液からの制御されない被着とは対照的に)制御された界面重合によってインサイチューで形成されるので、本発明のマイクロカプセル化触媒−リガンドシステムは、幅広い有機溶媒系反応で使用され得る。
【0098】
本発明のマイクロカプセルは、それらが高度に架橋しているという事実のために、最も一般的な有機溶媒に不溶性であると見なされる。結果として、マイクロカプセルは広範囲の有機溶媒系反応で使用され得る。
【0099】
マイクロカプセルは、触媒される反応系に添加されて、反応の完了後に例えば濾過によって回収され得る。回収したマイクロカプセルはさらなる反応を触媒するために戻され、所望ならばリサイクルされ得る。あるいは触媒およびリガンドを含有するマイクロカプセルは、連続反応における固定触媒として使用され得る。例えばマイクロカプセル粒子は、多孔性支持マトリクス(例えば膜)によって固定化され得る。マイクロカプセルは、触媒作用が、ポリマーシェル壁を通じた反応媒質の拡散またはマイクロカプセルの孔構造を通じた反応媒質の吸収のどちらかによって起こり得る程度まで透過性である。
【0100】
次の実施例は、本発明を説明する。
【実施例1】
【0101】
多様な種類のマイクロカプセル化酢酸パラジウム−リガンドシステムが産生された。系を次に鈴木型反応で使用して、粗生成物のパラジウム含量を決定した。
【0102】
系1Aおよび1Bにおいて、酢酸パラジウムをp−スチリルジフェニルホスフィンリガンドと同時カプセル化した。系1Cは、トリフェニルホスフィンリガンドを含有する点を除いて同様の系であった。
【0103】
系2において、酢酸パラジウムをトリフェニルホスフィンリガンドと同時カプセル化した。
【0104】
系3Aおよび3Bは、本発明のプロセスを使用して得た。酢酸パラジウムをp−スチリルジフェニルホスフィンリガンドと共にカプセル化して、フリーラジカル重合プロセスを使用してリガンドを重合した。
【0105】
次の手順において、GOSHENOLは、ポリビニルアルコールである;SOLVESSO200は、芳香族(主としてナフタレン)の高沸点(230〜257℃)混合物である;TERGITOL XDは、ブチルアルコールのポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテルである;REAX 100Mは、ナトリウムリグノスルホナートである。REAX、TERGITOLおよびGOSHENOLは、コロイド状安定剤および洗剤として添加される。
【0106】
(系1A、1Bおよび1Cの調製)
有機相はクロロホルムに溶解させた酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc))から形成され、次に10分間撹拌して、p−スチリルジフェニルホスフィンまたはトリフェニルホスフィンリガンドの添加を続け、次にさらに30分間撹拌した。この混合物に、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアナート(PMPPI)を添加して、内容物をさらに60分間撹拌した。
【0107】
水相は、脱イオン水中、40% REAX 100M水溶液、20% TERGITOL XD水溶液および25%ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)(Gohsenol GL03)水溶液よりなり、ラドリー冷却カルーセルユニットのラドリーカルーセル管に注入した。
【0108】
有機相混合物は、次に水相へ注射器によって約30秒間添加して、スターラーをスターラーホットプレート上で8に設定して剪断しながら(十字型磁気スターラーを使用して)、1℃に維持した。反応物を不活性雰囲気(N)下でずっと維持した。3分後、スターラー設定を6に下げて、(二酸化炭素発生によって検出された)重合開始の間に消泡剤(DrewPLus S−4382)を2、3滴添加した。このように得た懸濁物を室温まで1時間にわたって加温して、さらに18時間撹拌した。カルーセル管を次に加熱したカルーセルユニットに移して、65℃にてさらに2時間加熱した。得られたマイクロカプセルを次にポリエチレンフリット(20ミクロン多孔性)で濾過して、次の順序:脱イオン水(5×10ml)、DMF(2×10ml)、エタノール(3×10ml)、トルエン(2×10ml)およびヘキサン(2×10ml)によってフィルタ床で洗浄して、最後に45℃の真空乾燥機で乾燥させた。
【0109】
系1A、1Bおよび1Cの装填特性を、その調製で使用した試薬の量および比と共に表1に与える。
【0110】
【表1】

【0111】
(系2の調製)
有機相は窒素下でクロロホルム(44.7g)に溶解させたPd(OAc)(2.00g、98%)から形成され、次に10分間撹拌して、トリフェニルホスフィン(2.40g、1:1 Pd/Pモル比)の添加を続け、次にさらに30分間撹拌した。 この混合物に、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアナート(PMPPI)(17.60g)を添加して、内容物をさらに60分間撹拌した。
【0112】
水相は、脱イオン水(112g)中に40% REAX 100M溶液(13.34g)、20% TERGITOL XD溶液(6.67g)および25%ポリ(ビニルアルコール) (PVOH)溶液(10.67g)を含有して構成された。
【0113】
有機相混合物は次に、425rpmにて8分間にわたって剪断しながら(FISHER4ブレード・リトリート・カーブ・スターラーを使用)、水相に添加して、1℃に維持した。反応物を不活性雰囲気(N)下でずっと維持した。8分後、剪断速度を225rpmに下げて、(二酸化炭素発生によって検出された)重合開始の間に消泡剤(DrewPLus S−4382)を2、3滴添加した。このように得た懸濁体を12℃まで加温して、さらに16時間撹拌し、次に40℃にて5時間撹拌した。得られたマイクロカプセルを次にポリエチレンフリット(20ミクロン多孔性)で濾過して、次の順序:脱イオン水(5×100ml)、エタノール(3×100ml)、ヘキサン(3×100ml)によってフィルタ床で洗浄して、最後に50℃の真空乾燥機で乾燥させた。
【0114】
ICP分析:4.0% Pd wt/wt、装填量:0.38mmol/g(95% Pdカプセル化)
1.2% P wt/wt、装填量:0.39mmol/g(93% Pカプセル化)。
【0115】
(系3Aおよび3Bの調製)
有機相はクロロホルムに溶解させた酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc))から形成され、次に10分間撹拌して、p−スチリルジフェニルホスフィンの添加を続け、次にさらに30分間撹拌した。この混合物に、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアナート(PMPPI)および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を添加して、内容物をさらに60分間撹拌した。
【0116】
水相は、脱イオン水中、40% REAX 100M水溶液、20% TERGITOL XD水溶液および25%ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)(Gohsenol GL03)水溶液よりなり、ラドリー冷却カルーセルユニットのラドリーカルーセル管に注入した。
【0117】
有機相混合物は、次に水相へ注射器によって約30秒間添加して、スターラーをスターラーホットプレート上で8に設定して剪断しながら(十字型磁気スターラーを使用して)、1℃に維持した。反応物を不活性雰囲気(N)下でずっと維持した。3分後、スターラー設定を6に下げて、(二酸化炭素発生によって検出された)重合開始の間に消泡剤(DrewPLus S−4382)を2、3滴添加した。このように得た懸濁物を室温まで1時間にわたって加温して、さらに18時間撹拌した。カルーセル管を次に加熱したカルーセルユニットに移して、65℃にてさらに2時間加熱した。得られたマイクロカプセルを次にポリエチレンフリット(20ミクロン多孔性)で濾過して、次の順序:脱イオン水(5×10ml)、DMF(2×10ml)、エタノール(3×10ml)、トルエン(2×10ml)およびヘキサン(2×10ml)によってフィルタ床で洗浄して、最後に45℃の真空乾燥機で乾燥させた。
【0118】
系3Aおよび3Bの装填特性を、その調製で使用した試薬の量および比と共に表2に与える。
【0119】
【表2】

【0120】
(鈴木型反応の一般手順)
各系を鈴木型反応で4−メトキシフェニルボロン酸および4−ブロモフルオロベンゼンと反応させて、粗生成物のパラジウム含量を決定した。
【化7】

25mlラドリーカルーセル反応容器に4−メトキシフェニルボロン酸(0.26g、 1.72mmol、1.5当量)、4−ブロモフルオロベンゼン(0.20g、1.14mmol、1当量)、炭酸カリウム(0.47g、3.42mmol、3当量)およびIPA/HO(20:1)10mlを注入した。これにマイクロカプセル化酢酸パラジウム触媒系(3mol%;重量を下の表3に与える)を添加した。
【0121】
【表3】

【0122】
混合物を窒素下にて十字形状の磁気スターラーで撹拌して、ラドリーカルーセル反応ステーションを使用して85℃まで加熱した。反応の進行は、反応混合物のサンプルを規則正しい時間間隔で採取して、HPLCによって生成物を量的に分析することによって監視した。22時間後、焼成漏斗を通じた濾過によって固体触媒を除去して、濾液を減圧下(回転蒸発器)で濃縮して溶媒を除去した。次に粗生成物のICP分析を実施した。本手順を各系について繰り返した。
【0123】
(結果)
ICP分析の結果を、定量的HPLC法を使用した計時間隔での生成物への変換レベルを示す下の表4に与える。本発明の系(系3)は、他の系と比較してより低いレベルの粗生成物中のパラジウム残渣を示し、ホスフィンがポリ尿素マイクロカプセルマトリクスに効果的に結合されたことを示した。特に系3Aを比較系1Aと比較したとき(そのどちらも、AIBNフリーラジカル開始剤の存在を除いて、同じ方法で得た)、ポリマーホスフィンの使用がパラジウム滲出の著しい低下をもたらすことがわかる。系3の触媒の反応性は、他の系の触媒の反応性と匹敵していた。
【0124】
【表4】

【実施例2】
【0125】
系4は、アミン官能性ホスフィンリガンド、すなわち(ジフェニルホスフィノ)プロピル−1−アミンにイソシアナートプレポリマーを反応させて最終的なポリ尿素マイクロカプセルに共有結合されたポリマーリガンドを生成することによって得た。リガンドの空気に不安定な性質のために、油相およびマイクロカプセル化プロセスを不活性(N)雰囲気下で維持した。
【0126】
Pd(OAc)(1.30g、98%)をクロロホルム(37g)に溶解させて、注射器による3−(ジフェニルホスフィノ)プロピル−1−アミン(1g、99%、1:0.8 Pd/P)の添加を続け、得られた溶液を10分間撹拌した。本混合物に、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアナート(PMPPI)(15g)を添加して、内容物を密閉スクリューキャップ瓶内のN雰囲気下でさらに60分間撹拌した。混合物を次に、500rpmにて8分間にわたって剪断しながら(FISHER4ブレード・リトリーブ・カーブ・スターラーを使用)、脱気脱イオン水(108ml)中に40%REAX 100M溶液(10.86g)、20% TERGITOL XD溶液(5.43g)および25%ポリビニルアルコール(PVOH)溶液(8.69g)を含有する冷却(0〜1℃)水性混合物に添加した。剪断速度を次に250rpmに低下させて、1℃での60分後にバッチ温度を周囲温度まで徐々に加温させる。重合開始の間に泡を分散させるために、消泡剤(DrewPLus S−4382)2、3滴を添加した。このように得たマイクロエマルジョンを室温にて24時間撹拌した。マイクロカプセルを次にポリエチレンフリット(20ミクロン多孔性)で濾過して、ビーズを次の順序:脱イオン水(5×100ml)、DMF(2×100ml)、エタノール(3×100ml)、トルエン(2×100ml)およびヘキサン(3×100ml)で洗浄した。暗赤褐色ビーズを次に45℃の真空乾燥機で4時間乾燥させた。
【0127】
(分析結果)
ICP分析:3.3% Pd wt/wt、装填量:0.31mmol/g(96% Pdカプセル化)
0.62% P wt/wt、装填量:0.20mmol/g(95% Pカプセル化)。
粒径分布:60〜350μm(平均:195μm)
【実施例3】
【0128】
系5、6および7は、イソシアナートプレポリマーと反応させたニッケル(II)β−ジケトン錯体を使用して得た。
【0129】
(系5)
系5では、ニッケル(II)β−ジケトン錯体をプレポリマー中でイソシアナートと反応させた。結果として、得られた有機相は容易に分散されて、安定なマイクロエマルジョンに変換され、良好な品質の有用なマイクロカプセルを生成した。
【0130】
ニッケルテトラメチルヘプタンジオナート(0.20g、0.47mmol)を窒素雰囲気下でクロロホルム(2.6g)の撹拌溶液に添加した。トルエン−2,4−ジイソシアナート(0.20g、1.00mmol)を添加して、溶液を40℃まで加温して、次に45分間にわたって室温まで冷却させて、透明緑色溶液を得た。ポリメチレンポリフェニルイソシアナート(1.0g、2.71mmol)を添加して、溶液を40℃でさらに15分間撹拌した。
【0131】
水(8.4g)、20% w/w Tergitol XD aq(0.50 g)、25% w/w PVOH aq(0.80g)および40% w/w Reax 100M aq(1.00 g)の水相を、プロペラ形オーバーヘッド撹拌を用いて50ml丸底フラスコ内で生成させた。有機相をピペットによって約1分間にわたって、撹拌(460rpm)水相中に分散させた。油相添加開始後に撹拌をこの速度で5分間継続して、次に剪断を250rpmに低下させた。マイクロエマルジョンを室温にて1時間、次に40℃にて14〜18時間撹拌した。冷却後、ポリマービーズを濾過して、水(4×50ml)で洗浄し、薄緑色ビーズを得た。
【0132】
(系6)
系6では、マイクロエマルジョンを行う前に、ニッケル(II)β−ジケトン錯体をイソシアナートと反応させた。錯体はクロロホルムに部分的にのみ溶解性であったが、イソシアナートとの反応後に溶解されるようになる。イソシアナートとの反応後に、β−ジケトンリガンドは、ニッケルがマイクロカプセルの安定化を妨害するのを防止することによって、安定なマイクロエマルジョンを形成させた。分散後に形成されたマイクロカプセルは、高レベルのニッケル保持を有した。
【0133】
ニッケルアセトアセテート(0.20g、0.78mmol)を窒素雰囲気下でクロロホルム(2.75g)の撹拌溶液に添加した。トルエン−2,4−ジイソシアナート(0.30g、1.50mmol)を添加して、得られた懸濁体の温度を40℃まで上昇させた。2時間後、混合物は透明緑色溶液となり、イソシアナートとアセトアセトナートリガンドとの反応が起こったことを示した。室温まで冷却した後、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート(1.0g、2.71mmol)を添加して、溶液を室温にてさらに1時間撹拌した。
【0134】
水(10.7g)、20% w/w Tergitol XD aq(0.64g)、25% w/w PVOH aq(1.02g)および40% w/w Reax 100M aq(1.28g)の水相を、プロペラ形オーバーヘッド撹拌を用いて50ml丸底フラスコ内で生成させた。有機相をピペットによって約1分間にわたって、撹拌(460rpm)水相中に分散させた。油相添加開始後に撹拌をこの速度で5分間継続して、次に剪断を250rpmに低下させた。マイクロエマルジョンを室温にて14〜18時間、次に45℃にて9時間撹拌した。冷却後、ポリマービーズを濾過して、水(4×5ml)、次にDMF(5ml)、IMS(2×5ml)、トルエン(5ml)およびヘキサン(2×5ml)で洗浄して、次に40℃にて4時間真空乾燥させて、薄緑色ビーズ(1.1g、73%)を得た。
【0135】
ICPによるニッケル分析はビーズ中に、0.41mmol/g Niの装填量(目標装填量の80%)に相当する2.4% w/w Niを示した。
【0136】
(系7)
ニッケル(II)ビス(アセトアセテート)(1.20g、4.67mmol)を窒素雰囲気下でクロロホルム(31g)の撹拌溶液に添加した。トルエン−2,4−ジイソシアナート(1.95g、9.81mmol)を添加して、得られた懸濁体の温度を40℃まで上昇させた。2時間後、混合物は透明緑色溶液となり、イソシアナートとアセトアセトナートリガンドとの反応が起こったことを示した。ポリメチレンポリフェニルイソシアナート(12.0g、32.5mmol)を添加して、溶液を室温にてさらに1時間撹拌すると、混合物は透明なままであった。
【0137】
水(85.5g)、20% w/w Tergitol XD aq(11.6g)、25% w/w PVOH aq(13.8g)および40% w/w Reax 100M aq(17.3g)の水相を、プロペラ形オーバーヘッド撹拌を用いてジャケット付きフランジリアクタ内で生成させて、加熱/冷却ユニットを使用して30℃まで加温した。有機相を均圧滴下漏斗によって約1分間にわたって、撹拌(390rpm)水相中に分散させた。油相添加開始後に撹拌をこの速度で5分間継続して、次に剪断を240rpmに低下させた。マイクロエマルジョンを30℃にて14〜18時間、次に45℃にてさらに5時間撹拌した。
【0138】
冷却後、ポリマービーズを濾過して、水(4×50ml)、次にDMF(2×25ml)、IMS(2×25ml)、トルエン(25ml)およびヘキサン(2×25ml)で洗浄して、次に40℃にて4時間真空乾燥させて、薄緑色ビーズ(12.6g、83%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性を有し、かつポリマーから形成されるマイクロカプセルシェル内に触媒とリガンドとを含むマイクロカプセル化した触媒−リガンドシステムであって、前記リガンドがポリマーリガンドであるマイクロカプセル化した触媒−リガンドシステム。
【請求項2】
前記マイクロカプセルシェルが界面重合によって得られる請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
触媒およびリガンドの存在下で界面重合することにより透過性マイクロカプセルシェルを形成する工程を含む方法によって得られる請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記マイクロカプセルシェルが、エーテル化尿素−ホルムアルデヒド樹脂またはプレポリマーの自己縮合または架橋による生成物であって、前記樹脂またはプレポリマーのメチロール基の約50〜約98%が炭素数C〜C10のアルコールによってエーテル化されている請求項1〜3に記載のシステム。
【請求項5】
透過性を有し、かつポリマーから形成される前記マイクロカプセルシェルが、ポリイソシアナートまたはトリレンジイソシアナートのうち少なくとも1つより調製されたポリ尿素マイクロカプセルである請求項1〜3のいずれかに一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ポリイソシアナートまたは前記トリレンジイソシアナートが1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアナート、m−フェニレンジイソシアナート(およびその水素化誘導体)、p−フェニレンジイソシアナート(およびその水素化誘導体)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、2,4−トリレンジイソシアナート、60%が2,4−異性体で、40%が2,6−異性体で存在するトリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、3,3−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、2,2’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、80%が2,4−異性体で20%が2,6−異性体で存在するトリレンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート(PMPPI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナートおよび1,5−ナフチレンジイソシアナートからなる群より選択される請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記触媒が無機触媒、好ましくは遷移金属触媒である請求項1〜6に記載のシステム。
【請求項8】
前記触媒が遷移金属触媒であり、遷移金属がプラチナ、パラジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、レニウム、スカンジウム、セリウム、サマリウム、イットリウム、イッテルビウム、ルテチウム、コバルト、チタン、クロム、銅、鉄、ニッケル、マンガン、スズ、水銀、銀、金、亜鉛、バナジウム、タングステン、およびモリブデンである請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記触媒が遷移金属触媒であり、前記遷移金属がパラジウムであり、好ましくは前記パラジウムが有機溶媒可溶形の形であり、例えば前記パラジウムは酢酸パラジウムである請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記リガンドが、式(I)で表わされるリガンドの重合によって得られるものである請求項1〜9に記載のシステム。
【化1】

(式中、
、RおよびRはそれぞれ独立して、場合により置換されたヒドロカルビル基、場合により置換されたヒドロカルビルオキシ基、もしくは場合により置換されたヘテロシクリル基であり、またはRとR、RとR、RとRの1つまたは複数が、場合により置換された環構造を形成するように結合され、
、RおよびRのうち少なくとも1つが重合性官能基を含む)
【請求項11】
、RおよびRのうち少なくとも1つがスチリル基を含む請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
式(I)で表わされる前記リガンドが、(4−スチリル)ジフェニルホスフィン、ジ−(4−スチリル)フェニルホスフィン、トリ−4−スチリルホスフィン、およびその対応する2−スチリルおよび3−スチリル異性体、(4−スチリル)ジ−2−トリルホスフィン、ジ−(4−スチリル)−2−トリルホスフィン、(4−スチリル)ジ−2−トリルホスフィン、ジ−(4−スチリル)−2−トリルホスフィンおよびその対応する2−スチリル異性体および3−スチリル異性体、アリルジフェニルホスフィン、ジアリルフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、アリルジブチルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、ジビニルフェニルホスフィン、トリビニルホスフィン、ならびに以下に示すリガンドより選択される請求項11に記載のシステム。
【化2】

【請求項13】
前記リガンドが、シクロペンタジエニル基を含むリガンドの重合によって得られる請求項1〜9のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記リガンドが、重合性リガンドのフリーラジカル重合によって得られる請求項1〜13に記載のシステム。
【請求項15】
前記リガンドが、マイクロカプセルシェルと共重合される請求項1〜14に記載のシステム。
【請求項16】
前記リガンドが、ヒドロキシ基、アミノ基またはメルカプト基を含む重合性リガンドと、ポリイソシアナートとの共重合によって得られる請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記リガンドが、β−ジケトン、β−ケトエステル、β−ケトアミド、β−ジカルボン酸、およびそれらの誘導体より選択される重合性リガンドと、ポリイソシアナートとの共重合によって得られる請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記重合性リガンドが、マロン酸およびそのエステルまたはそのアミドと、マロンニトリルと、シアノ酢酸およびそのエステルまたはそのアミドと、アセトアセテート化合物とから選択される請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記重合性リガンドが、例えばNi、Pd、Pt、Rh、Ru、OsおよびIrより選択される遷移金属によって錯体化される請求項17または請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記錯体がニッケル(II)−β−ジケトン錯体である請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
マイクロカプセル化した触媒−リガンドシステムの調製方法であって、
(i)触媒およびリガンドの存在下で界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成する工程、
(ii)触媒の存在下で界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成して、マイクロカプセルシェルをリガンドによって処理する工程、または
(iii)リガンドの存在下で界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成して、マイクロカプセルシェルを触媒溶液によって処理する工程を含み、
前記リガンドが重合性リガンドであり、マイクロカプセルシェルの形成の前、最中または後に前記リガンドを重合する工程をさらに含むマイクロカプセル化した触媒−リガンドシステムの調製方法。
【請求項22】
触媒およびリガンドの存在下で、界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成する工程を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)前記触媒およびリガンドを第1相に溶解または分散させる工程と、
(b)エマルジョンを形成するために第1相を連続相である第2相に分散させる工程と、
(c)分散された前記第1相のコアをカプセル化するマイクロカプセルポリマーシェルを形成するために、分散された第1相と前記第2相との間の界面にて1つまたは複数のマイクロカプセル壁形成物質を反応させる工程と、場合により
(d)マイクロカプセルを前記連続相から回収する工程と
を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
触媒の存在下で、界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成する工程と、マイクロカプセルシェルをリガンドによって処理する工程とを含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
(a)前記触媒を第1相に溶解または分散させる工程と
(b)エマルジョンを形成するために第1相を連続相である第2相に分散させる工程と、
(c)分散された前記第1相のコアをカプセル化するマイクロカプセルポリマーシェルを形成するために、分散された前記第1相と前記第2相との間の界面にて1つまたは複数のマイクロカプセル壁形成物質を反応させる工程と、
(d)マイクロカプセルをリガンドによって処理する工程と
を含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
リガンドの存在下で、界面重合することによりマイクロカプセルシェルを形成する工程と、マイクロカプセルシェルを触媒溶液によって処理する工程とを含む請求項21に記載の方法。
【請求項27】
(a)前記リガンドを第1相に溶解または分散させる工程と、
(b)エマルジョンを形成するために前記第1相を連続相である第2相に分散させる工程と、
(c)分散された前記第1相のコアをカプセル化するマイクロカプセルポリマーシェルを形成するために、分散された前記第1相と前記第2相との間の界面にて1つまたは複数のマイクロカプセル壁形成物質を反応させる工程と、
(d)マイクロカプセルを触媒の溶液によって処理する工程と
を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記界面重合が、エーテル化尿素−ホルムアルデヒド樹脂またはプレポリマーの自己縮合または架橋を含み、前記樹脂またはプレポリマーのメチロール基の約50〜約98%が炭素数C〜C10のアルコールによってエーテル化されている請求項21〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
界面重合が少なくとも1つのポリイソシアナートまたはトリレンジイソシアナートの縮合を含む請求項21〜27のいずれかに記載のプロセス。
【請求項30】
ポリイソシアナートまたはトリレンジイソシアナートが1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアナート、m−フェニレンジイソシアナート(およびその水素化誘導体)、p−フェニレンジイソシアナート(およびその水素化誘導体)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、2,4−トリレンジイソシアナート、60%が2,4−異性体で、40%が2,6−異性体で存在するトリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、3,3−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、2,2’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、80%が2,4−異性体で20%が2,6−異性体で存在するトリレンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート(PMPPI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナートおよび1,5−ナフチレンジイソシアナートからなる群より選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
架橋試薬が存在する請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
未反応アミン基がモノイソシアナート、酸塩化物またはクロロホルメートとの反応後に尿素、アミドまたはウレタン基に変換される請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記触媒が無機触媒、好ましくは遷移金属触媒である請求項21〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記触媒が遷移金属触媒であり、前記遷移金属がプラチナ、パラジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、レニウム、スカンジウム、セリウム、サマリウム、イットリウム、イッテルビウム、ルテチウム、コバルト、チタン、クロム、銅、鉄、ニッケル、マンガン、スズ、水銀、銀、金、亜鉛、バナジウム、タングステン、およびモリブデンである請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記触媒が遷移金属触媒であり、前記遷移金属がパラジウムであり、好ましくは前記パラジウムが有機溶媒可溶形の形であり、最も好ましくは前記パラジウムが酢酸パラジウムである請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記リガンドが、マイクロカプセルシェルの形成前に重合される請求項21〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記リガンドが、マイクロカプセルシェルの形成中に重合される請求項21〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記リガンドが、マイクロカプセルシェルの形成後に重合される請求項21〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記リガンドが、N、O、PおよびSより選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含む有機部分を有する求項21〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記リガンドが式(I)で表わされる有機リガンドである請求項39に記載の方法。
【化3】

(式中、
、RおよびRはそれぞれ独立して、場合により置換されたヒドロカルビル基、場合により置換されたヒドロカルビルオキシ基、もしくは場合により置換されたヘテロシクリル基であり、またはRとR、RとR、RとRの1つまたは複数が、場合により置換された環構造を形成するように結合され、
、RおよびRのうち少なくとも1つが重合性官能基を含む)
【請求項41】
、RおよびRのうち少なくとも1つがスチリル基を含む請求項39に記載の方法。
【請求項42】
式(1)で表わされる前記リガンドが、(4−スチリル)ジフェニルホスフィン、ジ−(4−スチリル)フェニルホスフィン、トリ−4−スチリルホスフィン、ならびにその対応する2−スチリルおよび3−スチリル異性体、(4−スチリル)ジ−2−トリルホスフィン、ジ−(4−スチリル)−2−トリルホスフィン、(4−スチリル)ジ−2−トリルホスフィン、ジ−(4−スチリル)−2−トリルホスフィンならびにその対応する2−スチリル3−スチリル異性体、アリルジフェニルホスフィン、ジアリルフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、アリルジブチルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、ジビニルフェニルホスフィン、トリビニルホスフィン、ならびに次のリガンドより選択される請求項40に記載の方法。
【化4】

【請求項43】
前記リガンドがシクロペンタジエニル基を含む請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記リガンドがフリーラジカル重合によって重合される請求項21〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記リガンドが前記マイクロカプセルシェルまたはその構成成分(例えばモノマーまたはプレポリマー)と共重合される請求項21〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記リガンドがヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基を含み、前記マイクロカプセルシェルまたはその構成成分がポリイソシアナートを含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記リガンドが、β−ジケトン、β−ケトエステル、β−ケトアミド、β−ジカルボン酸、およびそれらの誘導体より選択され、前記マイクロカプセルシェルまたはその構成成分がポリイソシアナートを含む請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記リガンドが、マロン酸およびそのエステルまたはそのアミドと、マロンニトリルと、シアノ酢酸およびそのエステルまたはそのアミドと、アセトアセテート化合物とから選択される請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記リガンドが例えばNi、Pd、Pt、Rh、Ru、OsおよびIrより選択される遷移金属によって錯体化される請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記錯体がニッケル(II)−β−ジケトン錯体である請求項49に記載の方法。
【請求項51】
請求項21〜50のいずれか一項に記載の方法によって得られるマイクロカプセル化した触媒−リガンドシステム。

【公表番号】特表2009−527352(P2009−527352A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555859(P2008−555859)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000567
【国際公開番号】WO2007/096592
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(506051636)リアクサ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】