マイクロチップ
【課題】液体試薬保持部内の液体試薬量および/または液体試薬保持部内における液体試薬の位置を簡便に検知することができ、液体試薬量および/または液体試薬の位置が適正かどうかを容易に評価することができるマイクロチップを提供する。
【解決手段】第1の基板と、該第1の基板上に積層された透明基板である第2の基板とを含み、第1の基板表面に形成された溝と第2の基板表面とから構成される空洞部、または、第1の基板表面と第2の基板表面に形成された溝とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、該流体回路は、液体試薬を収容するための液体試薬保持部を含み、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部を備えるマイクロチップである。
【解決手段】第1の基板と、該第1の基板上に積層された透明基板である第2の基板とを含み、第1の基板表面に形成された溝と第2の基板表面とから構成される空洞部、または、第1の基板表面と第2の基板表面に形成された溝とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、該流体回路は、液体試薬を収容するための液体試薬保持部を含み、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部を備えるマイクロチップである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA、タンパク質、細胞、免疫および血液等の生化学検査、化学合成ならびに、環境分析などに好適に使用されるμ−TAS(Micro Total Analysis System)などとして有用なマイクロチップに関し、特には、検査・分析等の対象となる検体と混合または反応させるための液体試薬を、あらかじめマイクロチップ内に内蔵する液体試薬内蔵型マイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や健康、食品、創薬などの分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルスおよび細胞などの生体物質、ならびに化学物質を検知、検出あるいは定量する重要性が増してきており、それらを簡便に測定できる様々なバイオチップおよびマイクロ化学チップ(以下、これらを総称してマイクロチップと称する。)が提案されている。マイクロチップは、実験室で行なっている一連の実験・分析操作を、数cm角で厚さ数mm程度のチップ内で行なえることから、検体および試薬が微量で済み、コストが安く、反応速度が速く、ハイスループットな検査ができ、検体を採取した現場で直ちに検査結果を得ることができるなど多くの利点を有し、たとえば血液検査等の生化学検査用として好適に用いられている。
【0003】
マイクロチップは、通常、その内部に流体回路を有しており、該流体回路を利用して、流体回路内に導入された検体(たとえば、血液等)の計量、検体と試薬との混合などの種々の流体処理が行なわれる。このような流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を印加することにより行なうことができる。
【0004】
上記マイクロチップのうち、液体試薬内蔵型マイクロチップは、検体または検体中の特定成分と混合あるいは反応させるための液体試薬を流体回路内にあらかじめ保持しているマイクロチップであり、その流体回路には、液体試薬を保持するための1または複数の液体試薬保持部が設けられる(液体試薬保持部を有するマイクロチップについては、たとえば特許文献1参照)。また、液体試薬内蔵型マイクロチップには、その一方の表面に、液体試薬保持部内に液体試薬を注入するための、該液体試薬保持部まで貫通する試薬注入口が1または2以上形成されるのが通常であり、該試薬注入口は、液体試薬が注入された後、たとえば封止用ラベル(シール)などをマイクロチップ表面に貼付することにより封止される。
【0005】
ここで、液体試薬保持部に液体試薬を注入する際には、注入量が不足していたり、あるいは注入された液体試薬の液体試薬保持部内における位置が適切でないなどの不良が生じ得、このような不良品は、マイクロチップ製造において効率的に選別され、排除されることが肝要である。液体試薬注入量が不足していると、液体試薬と検体とが適切な割合で混合されない可能性があり、これにより、検体と液体試薬との混合液の検査・分析を正確に行なえない恐れがある。また、液体試薬が、たとえば液体試薬保持部の排出口近傍に位置すると、微小な温度、圧力変化により液体試薬が該排出口から流体回路内へ漏れ出す恐れがあり、このことは、検体との混合、反応に悪影響を及ぼしたり、検体と液体試薬との混合液の検査・分析結果に悪影響を及ぼし得る。
【特許文献1】特開2007−285792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または液体試薬保持部内における液体試薬の位置を簡便に検知することができ、液体試薬量および/または液体試薬の位置が適正かどうかを容易に評価することができるマイクロチップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の基板と、該第1の基板上に積層された透明基板である第2の基板とを含み、第1の基板表面に形成された溝と第2の基板表面とから構成される空洞部、または、第1の基板表面と第2の基板表面に形成された溝とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、該流体回路は、液体試薬を収容するための液体試薬保持部を含み、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部を備えるマイクロチップを提供する。
【0008】
本発明の第1の実施形態において、上記検知部は、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、該突起部は、液体試薬保持部の底面と略平行な微細凹凸表面を有する。
【0009】
本発明の第2の実施形態において、上記検知部は、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、該突起部は、液体試薬保持部の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状部を有しており、該テーパー形状部における、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面の少なくとも一部には、微細凹凸が形成されている。
【0010】
本発明の第3の実施形態において、上記検知部は、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、該突起部は、液体試薬保持部の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状部を有しており、該テーパー形状部を構成する、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面は、該表面に照射される光を全反射する全反射面である。上記テーパー形状部は、たとえば円錐状または三角柱状である。
【0011】
また、本発明の第4の実施形態において、上記検知部は、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に形成された微細凹凸からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマイクロチップによれば、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または液体試薬保持部内における液体試薬の位置を簡便に検知することができ、液体試薬量および/または液体試薬の位置が正常であるかどうかを容易に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のマイクロチップは、各種化学合成、検査・分析等を、それが有する流体回路を用いて行なうことができるチップであり、本発明の1つの好ましい態様において、マイクロチップは、第1の基板と、該第1の基板上に積層、貼合された透明基板である第2の基板とからなり、より具体的には、第1の基板と基板表面に溝を備える第2の基板とを、第2の基板の溝形成側表面が第1の基板に対向するように貼り合わせてなる。したがって、かかる2枚の基板からなるマイクロチップは、その内部に、第2の基板表面に設けられた溝と第1の基板における第2の基板に対向する側の表面とから構成される空洞部からなる流体回路を備える。
【0014】
また、別の好ましい態様において、本発明のマイクロチップは、基板の両表面に設けられた溝を備える第1の基板と、該第1の基板を狭むようにして積層、貼合された透明基板である第2の基板および第3の基板とからなる。かかる3枚の基板からなるマイクロチップは、第2の基板における第1の基板に対向する側の表面および第1の基板における第2の基板に対向する側の表面に設けられた溝から構成される空洞部からなる第1の流体回路と、第3の基板における第1の基板に対向する側の表面および第1の基板における第3の基板に対向する側の表面に設けられた溝から構成される空洞部からなる第2の流体回路と、の2層の流体回路を備えている。ここで、「2層」とは、マイクロチップの厚み方向に関して異なる2つの位置に流体回路が設けられていることを意味する。第1の流体回路と第2の流体回路とは、第1の基板に形成された厚み方向に貫通する1または2以上の貫通穴によって連結されていてもよい。
【0015】
基板同士を貼り合わせる方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば貼り合わせる基板のうち、少なくとも一方の基板の貼り合わせ面を融解させて溶着させる方法(溶着法)、接着剤を用いて接着させる方法などを挙げることができる。溶着法としては、基板を加熱して溶着させる方法;レーザ等の光を照射して、光吸収時に発生する熱により溶着する方法;超音波を用いて溶着する方法などを挙げることができる。
【0016】
本発明のマイクロチップの大きさは、特に限定されず、たとえば縦横数cm程度、厚さ数mm〜1cm程度とすることができる。
【0017】
本発明のマイクロチップを構成する上記各基板の材質は、特に制限されず、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの有機材料;シリコン、ガラス、石英などの無機材料等を用いることができる。
【0018】
マイクロチップを第1および第2の基板の2枚から構成する場合において、第1の基板上に積層される、表面に溝を備える第2の基板は透明基板である。これは、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または位置を検知する際、第2の基板側から照射した光が、液体試薬保持部内に設けられた検知部まで到達できるようにするためである。この点については、実施の形態を示して後で詳細に説明する。第1の基板は、透明基板であってもよいし、基板を樹脂から構成し、該樹脂中にカーボンブラック等を添加することにより黒色基板とするなど着色基板としてもよいが、着色基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。第1の基板を着色基板とすることにより、レーザなどの光を用いた溶着法を用いることができる。また、レーザ溶着法により基板の貼り合わせを行なう場合、着色基板の貼り合わせ表面が主に融解されて貼合されることとなるため、第2の基板である透明基板に形成された溝の変形を最小限に抑えることができる。
【0019】
また、マイクロチップを第1の基板、第2の基板および第3の基板の3枚から構成する場合、同様に、第1の基板上に積層される第2の基板は透明基板とする。第1の基板の下側(第2の基板とは反対側)に貼合される第3の基板は、透明基板とすることが好ましい。これにより、流体回路の一部として、第1の基板をその厚み方向に貫通する貫通穴と、透明な第2および第3の基板表面から構成されるキュベットを形成することができ、該キュベットに検査・分析の対象となる検体と液体試薬との混合液を導入し、該キュベットに対してマイクロチップ表面と垂直な方向の光を、マイクロチップ上面(または下面)側から照射し、その反対側から透過した光の強度(透過率)を検出するなどの光学測定を該混合液について行なうことが可能となる。第2の基板と第3の基板との間に位置する第1の基板は、着色基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。
【0020】
第1の基板表面または第2の基板表面に、流体回路を構成する溝(流路パターン)を形成する方法としては、特に制限されず、転写構造を有する金型を用いた射出成形法、インプリント法などを挙げることができる。無機材料を用いて基板を形成する場合には、エッチング法などを用いることができる。
【0021】
本発明のマイクロチップにおいて、流体回路(2層の流体回路を備える場合には、第1の流体回路および第2の流体回路)は、流体回路内の液体に対して適切な様々な処理を行なうことができるよう、流体回路内の適切な位置に配置された種々の部位を備えており、これらの部位は、微細な流路を介して適切に接続されている。
【0022】
本発明のマイクロチップは、液体試薬をあらかじめチップ内部に保持している液体試薬内蔵型マイクロチップであり、その流体回路は、これを構成する部位の1つとして、液体試薬を保持するための液体試薬保持部を備える。液体試薬保持部は1つのみであってもよいし、2以上あってもよい。「液体試薬」とは、検査・分析の対象となる検体と混合または反応させるための液体物質である。液体試薬は、1つのマイクロチップ内に1種のみ内蔵されていてもよいし、2種以上内蔵されていてもよい。また、「検体」とは、流体回路内に導入される検査・分析の対象となる物質(たとえば血液)自体、または、該物質中の特定成分(たとえば血漿成分)を意味する。
【0023】
本発明のマイクロチップは、通常、その上側表面(すなわち第2の基板表面)に、内部の液体試薬保持部まで貫通する(第2の基板をその厚み方向に貫通する)貫通穴である試薬注入口が設けられる。このような本発明のマイクロチップは、通常、試薬注入口から液体試薬が注入された後、マイクロチップ表面(第2の基板表面)に当該試薬注入口を封止するためのラベルまたはシールが貼着されて、使用に供される。
【0024】
本発明において流体回路は、液体試薬保持部以外の部位を備えていてもよく、かかる部位としては、たとえば流体回路内に導入された検体から特定成分を取り出すための分離部;検体(検体中の特定成分を含む。以下同じ。)を計量するための検体計量部;液体試薬を計量するための液体試薬計量部;検体と液体試薬とを混合するための混合部;得られた混合液についての検査・分析(たとえば、混合液中の特定成分の検出または定量)を行なうための検出部(光学測定を行なうためのキュベット)などを挙げることができる。本発明のマイクロチップは、これら例示された部位のすべてを有していてもよく、いずれか1以上を有していなくてもよい。また、これら例示された部位以外の部位を有していてもよい。これらの部位は、所望する流体処理を行なうことができるよう、流体回路内の適切な位置に配置され、かつ微細な流路を介して接続されている。
【0025】
検体と液体試薬とを混合させることによって最終的に得られた混合液は、特に限定されないが、たとえば、該混合液が収容された部位(たとえば検出部)に光を照射して透過する光の強度(透過率)を検出する方法等の光学測定などに供され、検査・分析が行なわれる。
【0026】
検体からの特定成分の抽出(不要成分の分離)、検体および/または液体試薬の計量、検体と液体試薬との混合、得られた混合液の検出部への導入などのような流体回路内における種々の流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を順次印加することにより行なうことができる。マイクロチップへの遠心力の印加は、マイクロチップを、遠心力を印加可能な装置(遠心装置)に載置して行なうことができる。遠心装置は、回転自在なローター(回転子)と、該ローター上に配置された回転自在なステージとを備えている。該ステージ上にマイクロチップを載置し、該ステージを回転させてローターに対するマイクロチップの角度を任意に設定することにより、マイクロチップに対して任意の方向の遠心力を印加することができる。
【0027】
ここで、本発明のマイクロチップは、上記した液体試薬保持部内に、収容された液体試薬の量および液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部を備えている。このような検知部を備えることにより、簡便な操作で、収容されている液体試薬の量および/または位置が正常であるかを評価することができる。以下、実施の形態を示して、本発明の検知部を備えるマイクロチップについて詳細に説明する。
【0028】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。本実施形態のマイクロチップ100は、表面に溝を備える第1の基板101上に透明基板である第2の基板102を貼り合わせてなり、第2の基板102の第1の基板101側表面と第1の基板101表面に形成された溝とから構成される流体回路を内部に有している。図1は、当該流体回路のうち、液体試薬保持部106周辺を拡大して示す図である。第1の基板101および第2の基板102はともに、上記したようなプラスチック基板である。液体試薬保持部106には、液体試薬排出口104が設けられており、遠心力の印加により、液体試薬保持部106内の液体試薬が排出可能となっている。また、液体試薬保持部106上部には、第2の基板102を厚み方向に貫通する試薬注入口105が設けられており、この試薬注入口105を介して液体試薬の注入が行なわれる。なお、本実施形態のマイクロチップ100は、第1の基板101の下側表面に第3の基板(図示せず)が貼合された3枚の基板からなるマイクロチップであってもよい。
【0029】
ここで、マイクロチップ100は、液体試薬保持部106内に、液体試薬の量および液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部103を備える。より具体的には、検知部103は、液体試薬保持部106の天井面を構成する第2の基板102の基板表面に設けられた、断面形状が長方形である突起部からなるものであり、その液体試薬保持部106底面側表面には、微細凹凸が形成されている。この微細凹凸表面103aは、その液体試薬保持部106底面と平行または略平行である。また、検知部103は、液体試薬保持部106の天井面を構成する第2の基板102の基板表面のうち、液体試薬排出口104から遠い領域に設けられている。
【0030】
上記微細凹凸の高さ(凹部の底点から凸部の頂点までの距離)は、特に制限されず、たとえば0.1〜10μmの範囲内であり、好ましくは、1〜5μmの範囲内である。また、微細凹凸のピッチ、すなわち、凸部の頂部から次の頂部までの距離は、特に限定されず、たとえば0.1〜10μm程度である。かかる微細凹凸表面は、いわゆる梨地処理面であり、従来公知の方法、たとえば、基板を射出成形により作製する際に、ブラスト処理、放電処理またはエッチング処理が施され、微細凹凸が形成された金型を用いる方法;基板の成形後、研磨紙等を用いて基板表面を研磨して微細凹凸を形成する方法などにより形成できる。
【0031】
かかる構成の検知部を備えるマイクロチップによれば、簡便な操作で、液体試薬保持部内に収容された液体試薬の量および液体試薬の位置を検知することができ、これらが適正であるかを簡単に評価することができる。図2は、本実施形態のマイクロチップ100における液体試薬の量および液体試薬の位置を検知するための方法を示す概略断面図である。図2(a)に示されるように、検知部103の微細凹凸表面103aが、試薬注入口105から注入された液体試薬201中に浸漬されると、表面凹凸は液体試薬201によって埋められているため、第2の基板102側から検知部103に照射光202を照射した際、表面凹凸による乱反射が生じず、該照射光202の光源側(マイクロチップ上面側)に反射される反射光は観測されないか、または該反射光は極めて弱い。一方、液体試薬201の注入量の不足が生じている(図2(b)参照)もしくは液体試薬201が検知部103の直下に位置しないことにより、微細凹凸表面103aの少なくとも一部が、液体試薬201中に浸漬されていない場合には、第2の基板102側から検知部103に照射光202を照射した際、表面凹凸による乱反射が生じ、該照射光202の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光203が観測される。
【0032】
上記現象を利用することにより、液体試薬保持部内の液体試薬の液量を簡便に検知することができる。すなわち、第2の基板102側から検知部103に、照射光202を、たとえばマイクロチップ基板表面と垂直な方向から照射し、反射光203が観測されなければ、液体試薬の量が十分であると判断することができる。この際、所望される最少の液体試薬注入量が、微細凹凸表面103aが浸漬される程度の量またはそれ以上の量となるように、検知部103の突起高さ(液体試薬保持部106の天井面から微細凹凸表面103aまでの距離)および、液体試薬保持部の容量または高さ(天井面から底面までの距離)を適宜調整し、最適化しておく。
【0033】
また、本実施形態では、検知部103を液体試薬排出口104から離れた位置に配置していることから、反射光203が観測されなければ、液体試薬201が液体試薬排出口104から離れた領域(検知部103の直下領域)に位置することが確認されたことになり、液体試薬の位置が適正であると評価することができる。すなわち、液体試薬が液体試薬排出口近傍に位置する、特には、液体試薬が液体試薬排出口を塞ぐように位置する場合には、微小な温度、圧力変化により液体試薬が該排出口から流体回路内へ漏れ出し、検体との混合、反応に悪影響を及ぼしたり、検体と液体試薬との混合液の検査・分析結果に悪影響を及ぼし得るが、検知部103直下に液体試薬が位置する場合には、このような恐れがなく、好ましい位置であるといえる。
【0034】
一方、照射光202の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光203が検出される場合には、液体試薬注入量が十分でないか、または、液体試薬が検知部103直下ではなく、液体試薬排出口近傍を含めた他の領域に位置すると判断することができる。したがって、本実施形態のマイクロチップによれば、反射光の有無を検出することにより、簡便に液体試薬の量およびその位置を検知、評価することができ、不良品を簡便な操作で選別することができる。
【0035】
反射光を検出する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、たとえばフォトダイオード(PD)のような光検出器を用いて検出する方法を用いることができる。また、CCDカメラなどの画像認識装置を用い、得られた画像における検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を測定することによっても反射光の検出を行なうことができる。照射光の種類は特に制限されず、白色光であってもよいし、単色光であってもよい。
【0036】
図3は、本実施形態のマイクロチップ100における液体試薬保持部を拡大して示す概略上面図である。検知部103は、たとえば図3(a)に示されるように、液体試薬保持部106の天井面を構成する第2の基板102表面に、スポット的に形成されてもよく、あるいは、たとえば図3(b)に示されるように、帯状に形成されてもよい。帯状に形成した方が、液体試薬の量および/または位置が適正であるかの判断をより精度よく行なうことができるが、スポット的に形成することでも十分に正確な判断を行なうことが可能である。マイクロチップ上面からみたときの検知部の形状および液体試薬保持部に占める面積は、特に制限されるものではない。
【0037】
本実施形態のマイクロチップは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施すことができ、たとえば、次に示す(1)〜(4)のような変形を施すことができる。
【0038】
(1)本実施形態のマイクロチップにおいて、検知部は、液体試薬保持部底面と平行または略平行な微細凹凸表面を有していればよい。したがって、図1に示される検知部103のように、その断面形状が長方形である必要は必ずしもなく、たとえば、正方形、台形などであってよい。また、検知部である突起部の形状についても特に制限はなく、たとえば円柱状、直方体形状などとすることができる。
【0039】
(2)図4に示されるマイクロチップ400のように、液体試薬保持部を含む流体回路を構成する溝は、第1の基板ではなく、第2の基板表面に形成されてもよい。図4において、液体試薬保持部406を含む流体回路は、第2の基板402の表面に形成された溝と第1の基板401基板表面とから形成されている。その他の構成については図1に示されるマイクロチップ100と同様であり、液体試薬保持部406は、液体試薬を排出するための液体試薬排出口404および微細凹凸表面403aを有する検知部403を備え、また、第2の基板402には、その厚み方向に貫通する貫通穴である試薬注入口405が形成されている。
【0040】
(3)図5に示されるマイクロチップ500のように、検知部は、液体試薬排出口近傍または液体試薬排出口に隣接して形成されてもよい。図5に示されるマイクロチップ500は、第2の基板502の表面に形成された溝と第1の基板501基板表面とから構成される液体試薬保持部506を有する。液体試薬保持部506は、液体試薬排出口504に隣接して形成された、微細凹凸表面503aを有する検知部503を備える。このような位置に検知部を設けることで、反射光の有無を検出することにより、簡便に液体試薬の位置が不良であるかどうかを評価することができる。すなわち、第2の基板502側から検知部503へ光を照射したときに、反射光が検出されなければ、検知部503の直下に液体試薬が存在することになり、液体試薬の位置が不良であると判断することができる。一方、反射光が検出されれば、液体試薬が検知部503の直下あるいはその近傍に存在しないと判断できる。
【0041】
(4)図1に示されるマイクロチップ100が有する液体試薬保持部106は、その断面形状が横長(図1に示される液体試薬保持部断面において、その横方向の長さが高さよりも長い)であるがこれに限定されるものではなく、縦長であってもよい。すなわち、液体試薬保持部は、その横方向の長さが高さよりも短くてもよい。液体試薬保持部がこのような縦長構造である場合には、液体試薬の位置はさほど問題とならず、通常、検知部への光照射により、液体試薬の注入量のみが評価される。液体試薬保持部が縦長構造である場合、検知部の微細凹凸表面が液体試薬中に浸漬されており、反射光が観測されないとき、液体試薬の量が十分であると判断することができる。
【0042】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。本実施形態のマイクロチップ600は、表面に溝を備える第1の基板601上に透明基板である第2の基板602を貼り合わせてなり、第2の基板602の第1の基板601側表面と第1の基板601表面に形成された溝とから構成される流体回路を内部に有している。図6は、当該流体回路のうち、液体試薬保持部606周辺を拡大して示す図である。第1の基板601および第2の基板602はともに、プラスチック基板である。液体試薬保持部606には、液体試薬排出口604が設けられており、遠心力の印加により、液体試薬保持部606内の液体試薬が排出可能となっている。また、液体試薬保持部606上部には、第2の基板602を厚み方向に貫通する試薬注入口605が設けられている。なお、本実施形態のマイクロチップ600は、第1の基板601の下側表面に第3の基板(図示せず)が貼合された3枚の基板からなるマイクロチップであってもよい。
【0043】
マイクロチップ600は、液体試薬保持部606内に、液体試薬の量を検知するための検知部603を備える。検知部603は、液体試薬保持部606の天井面を構成する第2の基板602の基板表面に設けられた、液体試薬保持部606の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状を有する突起部からなる。そして、検知部603が有する、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面(以下、テーパー面と称する)には、微細凹凸が形成されている(図6における微細凹凸表面603a)。微細凹凸表面603aの微細凹凸の高さおよびピッチは、第1の実施形態と同様である。
【0044】
本実施形態において、検知部603である突起部の形状は円錐状であり、したがって、マイクロチップ600は、これを上からみたとき、図3(a)と同様の構成を有している。円錐の先端部の角度は特に制限されない。なお、検知部603の形状は、円錐状に制限されるものではなく、たとえば三角柱状とすることができる。
【0045】
かかる構成の検知部を備えるマイクロチップによっても、簡便な操作で、液体試薬保持部内に収容された液体試薬の量を検知することができ、これが適正であるかを簡単に評価することができる。図7は、本実施形態のマイクロチップ600における検知部603周辺をさらに拡大して示す概略断面図であり、検知部603の一部が液体試薬701に浸漬された状態を示す図である。図7に示される状態において、第2の基板602側から検知部603に向けて光を照射した場合、液体試薬701に浸漬されていない領域の微細凹凸表面603aに到達した照射光702aは、表面凹凸により乱反射され、結果、照射光の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光703を生じさせる。一方、液体試薬701中に浸漬された領域の微細凹凸表面603aに到達した照射光702bは、表面凹凸が液体試薬701によって埋められているため、表面凹凸による乱反射が生じず、反射光を生じさせない。したがって、第2の基板602側から検知部603に向けて光を照射し、検知部603直上の第2の基板602表面の表面輝度(明るさ)をCCDカメラなどの画像認識装置を用いて画像表示させると、図8に示されるように、リング状に明るく(白っぽく)見える領域が観測される。
【0046】
ここで、液体試薬保持部606の天井面と検知部603の微細凹凸表面603aとの交点をA、微細凹凸表面603aと液体試薬701の液面との交点を液体試薬保持部606の天井面に投影させたときの投影点をBとすると、得られる画像における明るく見えるリングの幅W1’は、A−B間の距離W1に相当する(図7参照)。また、当該リング内の暗く見える円の直径W2’は、液体試薬701の液面位置における検知部603の幅W2に相当する(図7参照)。したがって、本実施形態のマイクロチップによれば、画像認識装置を用いて、第2の基板602表面の表面輝度(明るさ)を示す画像を得、明るく見えるリングの幅W1’および/または当該リング内の暗く見える円の直径W2’を測定することにより、液体試薬保持部606内の液体試薬の液面位置を検知できるため、液体試薬保持部606内の液体試薬量を定量することが可能である。液体試薬量の定量化により、液体試薬が所望される量注入されているかどうかをより正確に評価することができる。なお、所望される最少の液体試薬注入量が、検知部603の先端が浸漬される程度の量またはそれ以上の量となるように、検知部603の突起高さ(液体試薬保持部606の天井面から検知部603の先端部までの距離)および、液体試薬保持部の容量または高さ(天井面から底面までの距離)を適宜調整し、最適化しておく。
【0047】
照射光の種類は特に制限されず、第1の実施形態と同様に、白色光であってもよいし、単色光であってもよい。
【0048】
本実施形態のマイクロチップは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施すことができる。たとえば、本実施形態のマイクロチップにおいて、検知部は、微細凹凸が形成されたテーパー面を有していればよく、したがって、検知部の形状は、たとえば図9に示される形状を有していてもよい。図9(a)に示されるマイクロチップ900の検知部903は、三角柱状の形状を有しており、それが有するテーパー面には、微細凹凸が形成されている(図9における微細凹凸表面903a)。図9(a)は、検知部903の一部が液体試薬907に浸漬された状態を示している。図9(a)に示される状態において、第2の基板902側から検知部903に向けて光を照射した場合、液体試薬907に浸漬されていない領域の微細凹凸表面903aに到達した照射光908aは、表面凹凸により乱反射され、結果、照射光の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光909を生じさせる。一方、液体試薬907中に浸漬された領域の微細凹凸表面903aに到達した照射光908bは、表面凹凸による乱反射が生じず、反射光を生じさせない。したがって、第2の基板902側から検知部903に向けて光を照射し、検知部903直上の第2の基板902表面の表面輝度(明るさ)をCCDカメラなどの画像認識装置を用いて画像表示させることにより、マイクロチップ600の場合と同様にして液体試薬の量および位置を検知することができる。マイクロチップ900の場合、得られる画像における明るく見える領域は、ライン状となる(図9(b)参照)。このラインの幅W3’を測定することにより、液体試薬保持部906内の液体試薬の液面位置を検知できるため、液体試薬保持部906内の液体試薬量を定量することが可能である。
【0049】
また、検知部は、図10に示されるような形状であってもよい。図10(a)に示されるマイクロチップ1000の検知部1003は、図6に示される検知部603の先端部に平坦面が形成されるよう、該先端部を切り欠いた形状を有する。この場合、画像認識装置を用いて得られる画像における明るく見えるリングの幅W4’を測定することにより、液体試薬量の定量を行なう(図10(b)参照)。
【0050】
また、検知部は、図11に示されるような形状であってもよい。上述してきた検知部は、いずれも検知部である突起部が、テーパー面を有するテーパー形状部のみからなる構造であったが、これに限定されるものではない。すなわち、図11に示されるマイクロチップ1100の検知部1103は、テーパー面を有しない突出部1104と、微細凹凸表面1103aを備えるテーパー形状部1105から構成されている。突出部1104の液体試薬保持部1106底面側表面には、図11に示されるように、微細凹凸が形成されているが、省略されてもよい。
【0051】
また、検知部は、第1の実施形態と同様に、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面に、スポット的に形成されてもよく、帯状に形成されてもよい。
【0052】
上記第1の実施形態について示した変形例(2)および(3)は、本実施形態にも適用することができる。
【0053】
<第3の実施形態>
図12は、本発明の第3の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。本実施形態のマイクロチップ1200は、表面に溝を備える第1の基板1201上に透明基板である第2の基板1202を貼り合わせてなり、第2の基板1202の第1の基板1201側表面と第1の基板1201表面に形成された溝とから構成される流体回路を内部に有している。図12は、当該流体回路のうち、液体試薬保持部1206周辺を拡大して示す図である。第1の基板1201および第2の基板1202はともに、プラスチック基板である。液体試薬保持部1206には、液体試薬排出口1204が設けられており、遠心力の印加により、液体試薬保持部1206内の液体試薬が排出可能となっている。また、液体試薬保持部1206上部には、第2の基板1202を厚み方向に貫通する試薬注入口1205が設けられている。なお、本実施形態のマイクロチップ1200は、第1の基板1201の下側表面に第3の基板(図示せず)が貼合された3枚の基板からなるマイクロチップであってもよい。
【0054】
マイクロチップ1200は、液体試薬保持部1206内に、液体試薬の量を検知するための検知部1203を備える。検知部1203は、液体試薬保持部1206の天井面を構成する第2の基板1202の基板表面に設けられた、液体試薬保持部1206の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状を有する突起部からなる。このテーパー面は、該突起部が液体と接触しない場合には、照射された光を全反射する全反射面1203aとなっている。
【0055】
本実施形態において、検知部1203である突起部の形状は円錐状であり、したがって、マイクロチップ1200は、これを上からみたとき、図3(a)と同様の構成を有している。なお、検知部1203の形状は、円錐状に制限されるものではなく、たとえば三角柱状とすることができる。
【0056】
かかる構成の検知部を備えるマイクロチップによっても、簡便な操作で、液体試薬保持部内に収容された液体試薬の量を検知することができ、これが適正であるかを簡単に評価することができる。図13は、本実施形態のマイクロチップ1200における検知部1203周辺をさらに拡大して示す概略断面図であり、検知部1203の一部が液体試薬1301に浸漬された状態を示す図である。図13に示される状態において、第2の基板1202側から検知部1203に向けて光を照射した場合、液体試薬1301に浸漬されていない領域の全反射面1203aに到達した照射光1302aは、全反射面1203aによって全反射され、結果、照射光の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光1303を生じさせる。一方、液体試薬1301中に浸漬された領域のテーパー面に到達した照射光1302bは、全反射されず、反射光を生じさせない。よって、第2の基板1202側から検知部1203に向けて光を照射し、検知部1203直上の第2の基板1202表面の表面輝度(明るさ)をCCDカメラなどの画像認識装置を用いて画像表示させると、図14に示されるように、リング状に明るく(白っぽく)見える領域が観測される。したがって、本実施形態のマイクロチップによれば、画像認識装置を用いて、第2の基板1202表面の表面輝度(明るさ)を示す画像を得、第2の実施形態と同様に、明るく見えるリングの幅W5’および/または当該リング内の暗く見える円の直径W6’を測定することにより、液体試薬保持部1206内の液体試薬の液面位置を検知できるため、液体試薬保持部1206内の液体試薬量を定量することが可能である。なお、所望される最少の液体試薬注入量が、検知部1203の先端が浸漬される程度の量またはそれ以上の量となるように、検知部1203の突起高さ(液体試薬保持部1206の天井面から検知部1203の先端部までの距離)および、液体試薬保持部の容量または高さ(天井面から底面までの距離)を適宜調整し、最適化しておく。
【0057】
照射光の種類は特に制限されず、第1の実施形態と同様に、白色光であってもよいし、単色光であってもよい。
【0058】
ここで、検知部1203の側面を全反射面とするために、円錐先端(もしくは三角柱先端)の角度(図13における角度θ)は、90度とする。また、液体試薬は、通常水系であり、その屈折率が1.33程度であることから、空気と接する(液体試薬中に浸漬されていない)テーパー面において照射光が全反射され、かつ、液体試薬と接する(液体試薬中に浸漬された)テーパー面において照射光が全反射されないためには、検知部を構成する(典型的には、第2の基板を構成する)材料の屈折率ηは、21/2(約1.41)<η<1.88を満たす必要がある。多くのプラスチック材料(たとえば、上で例示された有機材料)の屈折率は、約1.5〜1.6であり、上記条件を満たすことから、好適に用いられる。
【0059】
本実施形態のマイクロチップは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施すことができる。たとえば、本実施形態の検知部は、図11に示される検知部と同様に、テーパー面を有しない突出部と、全反射面であるテーパー面を備えるテーパー形状部から構成されていてもよい。また、上記第1の実施形態について示した変形例(2)および(3)は、本実施形態にも適用することができる。
【0060】
<第4の実施形態>
検知部は、必ずしも液体試薬保持部の天井面に設けられた突起部から構成される必要はなく、該天井面に直接、微細凹凸を形成することにより検知部とすることもできる。図15は、本発明の第4の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。本実施形態のマイクロチップ1500は、表面に溝を備える第1の基板1501上に透明基板である第2の基板1502を貼り合わせてなり、第2の基板1502の第1の基板1501側表面と第1の基板1501表面に形成された溝とから構成される流体回路を内部に有している。図15は、当該流体回路のうち、液体試薬保持部1506周辺を拡大して示す図である。第1の基板1501および第2の基板1502はともに、プラスチック基板である。液体試薬保持部1506には、液体試薬排出口1504が設けられており、遠心力の印加により、液体試薬保持部1506内の液体試薬が排出可能となっている。また、液体試薬保持部1506上部には、第2の基板1502を厚み方向に貫通する試薬注入口1505が設けられている。なお、本実施形態のマイクロチップ1500は、第1の基板1501の下側表面に第3の基板(図示せず)が貼合された3枚の基板からなるマイクロチップであってもよい。
【0061】
マイクロチップ1500は、液体試薬保持部1506の天井面を構成する第2の基板1502表面に形成された微細凹凸表面からなる検知部1503を備える。微細凹凸表面の微細凹凸の高さおよびピッチは、第1の実施形態と同様である。微細凹凸表面からなる検知部1503は、第1の実施形態と同様に、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面上に、スポット的に形成されてもよく、帯状に形成されてもよい。また、検知部1503が液体試薬保持部1506の天井面に占める面積は特に制限されない。
【0062】
かかる構成の検知部を備えるマイクロチップによっても、第1の実施形態と同様に、簡便な操作で、液体試薬保持部内に収容された液体試薬の量および液体試薬の位置を検知することができ、これらが適正であるかを簡単に評価することができる。
【0063】
なお、上記第1の実施形態について示した変形例(2)および(3)は、本実施形態にも適用することができる。
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
<実施例1>
図16は、本実施例のマイクロチップの上面の一部(液体試薬保持部周辺)を示すCCD画像である。本実施例のマイクロチップは、一方の表面に流体回路を構成する溝を有する、透明基板である第2の基板と、黒色基板である第1の基板とを、第2の基板の溝形成側表面が第1の基板と対向するように貼り合わせてなる。このマイクロチップの液体試薬保持部は、図1に示される検知部と同様の微細凹凸表面を有する検知部を備えており、図16に示されるように、その検知部は、液体試薬保持部の天井面に帯状に形成されている。
【0066】
図16(a)は、液体試薬保持部に液体試薬を注入する前の状態を示すCCD画像であり、図16(b)は、試薬注入口から液体試薬を注入した後のCCD画像である。液体試薬注入前においては、帯状の検知部形成領域が明るく(白く)表示されており、液体試薬が注入されると、微細凹凸表面が液体試薬中に浸漬されるために、暗く表示されることがわかる。このことから、液体試薬の量および位置が適正であると評価できる。
【0067】
図17は、本実施例のマイクロチップの流体回路構造を示す上面図である。実際には、流体回路を構成する溝は、第2の基板における図17に示される表面とは反対側の表面に形成されているが、流体回路構造を明確に示すため、図17においては、流体回路を実線で示している。本実施例のマイクロチップは、被験者から採取された全血を含むキャピラリー等のサンプル管を組み込むためのサンプル管載置部1701、サンプル管より導出された全血から血球などを除去して血漿成分を得る血漿分離部1702、分離された血漿成分を計量する検体計量部1703、液体試薬を保持するための2つの液体試薬保持部1704a、1704b、液体試薬を計量する2つの液体試薬計量部1705a、1705b、血漿成分と液体試薬とを混合する混合部1706a〜1706d、ならびに、得られた混合液についての検査・分析が行なわれる検出部1707から主に構成される。2つの液体試薬保持部部1704a、1704bは、液体試薬を注入するための試薬注入口1710a、1710bをそれぞれ有している。
【0068】
本実施例のマイクロチップの動作方法は、概略以下のとおりである。なお、以下に説明する動作方法は一例を示したものであり、この方法に限定されるものではない。まず、全血サンプルを採取したサンプル管をサンプル管載置部1701に挿入する。次に、マイクロチップに対して、図17における右向き方向(以下、単に右向きという。他の方向についても以下同様。)に遠心力を印加し、サンプル管内の全血サンプルを取り出した後、下向きの遠心力により、全血サンプルを血漿分離部1702に導入して遠心分離を行ない、血漿成分と血球成分とに分離する。全血サンプルを血漿分離部1702に導入した際、血漿分離部1702から溢れ出た全血サンプルは、廃液溜め部1708に収容される。この下向き遠心力により、液体試薬保持部1704a内の液体試薬Mは、液体試薬計量部1705aにて計量される。
【0069】
ついで、分離された血漿成分を、左向き遠心力により検体計量部1703に導入する。この際、計量された液体試薬Mは、混合部1706bに移動するとともに、液体試薬保持部1704b内の液体試薬Nは、液体試薬保持部1704bから排出される。
【0070】
次に、下向き遠心力により、計量された血漿成分と液体試薬Mとが混合部1706aにて混合されるとともに、液体試薬Nは、液体試薬計量部1705bにて計量される。ついで、左向き、下向き、左向き遠心力を順次印加して、混合液を混合部1706aおよび1706b間で行き来させることにより、混合液の十分な混合を行なう。次に、上向き遠心力により、液体試薬Mおよび血漿成分からなる混合液と計量された液体試薬Nとを混合部1706cにて混合させる。ついで、右向き、上向き、右向き、上向き遠心力を順次印加して、混合液を混合部1706cおよび1706d間で行き来させることにより、混合液の十分な混合を行なう。最後に、左向き遠心力により、混合部1706c内の混合液を検出部1707に導入する。検出部1707内の混合液は、たとえば、検出部1707に光を照射し、その透過光の強度を測定するなどの光学測定に供される。
【0071】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬の量および液体試薬の位置を検知するための方法を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略上面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のマイクロチップの変形例の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のマイクロチップの変形例の別の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態のマイクロチップにおける検知部周辺をさらに拡大して示す概略断面図であり、検知部の一部が液体試薬に浸漬された状態を示す図である。
【図8】図7に示されるマイクロチップの第2の基板側から光を照射したときに、検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を画像認識装置を用いて画像表示させることにより得られる画像を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態のマイクロチップの変形例を示す概略断面図およびその第2の基板側から光を照射したときに、検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を画像認識装置を用いて画像表示させることにより得られる画像を示す模式図である。
【図10】本発明の第2の実施形態のマイクロチップの変形例の別の一例を示す概略断面図およびその第2の基板側から光を照射したときに、検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を画像認識装置を用いて画像表示させることにより得られる画像を示す模式図である。
【図11】本発明の第2の実施形態のマイクロチップの変形例の別の一例を示す概略断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態のマイクロチップにおける検知部周辺をさらに拡大して示す概略断面図であり、検知部の一部が液体試薬に浸漬された状態を示す図である。
【図14】図13に示されるマイクロチップの第2の基板側から光を照射したときに、検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を画像認識装置を用いて画像表示させることにより得られる画像を示す模式図である。
【図15】本発明の第4の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。
【図16】実施例1のマイクロチップの上面の一部を示すCCD画像であり、図16(a)は液体試薬保持部に液体試薬を注入する前の状態、図16(b)は液体試薬注入後の状態を示す画像である。
【図17】実施例1のマイクロチップの流体回路構造を示す上面図である。
【符号の説明】
【0073】
100,400,500,600,900,1000,1100,1200,1500 マイクロチップ、101,401,501,601,901,1001,1101,1201,1501 第1の基板、102,402,502,602,902,1002,1102,1202,1502 第2の基板、103,403,503,603,903,1003,1103,1203,1503 検知部、103a,403a,503a,603a,903a,1003a,1103a 微細凹凸表面、104,404,504,604,1204,1504 液体試薬排出口、105,405,505,605,1205,1505,1710a,1710b 試薬注入口、106,406,506,606,906,1006,1106,1206,1506,1704a,1704b 液体試薬保持部、201,701,907,1007,1301 液体試薬、202,702a,702b,908a,908b,1302a,1302b 照射光、203,703,909,1303 反射光、1104 突出部、1105 テーパー形状部、1203a 全反射面、1701 サンプル管載置部、1702 血漿分離部、1703 検体計量部、1705a,1705b 液体試薬計量部、1706a,1706b,1706c,1706d 混合部、1707 検出部、1708 廃液溜め部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA、タンパク質、細胞、免疫および血液等の生化学検査、化学合成ならびに、環境分析などに好適に使用されるμ−TAS(Micro Total Analysis System)などとして有用なマイクロチップに関し、特には、検査・分析等の対象となる検体と混合または反応させるための液体試薬を、あらかじめマイクロチップ内に内蔵する液体試薬内蔵型マイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や健康、食品、創薬などの分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルスおよび細胞などの生体物質、ならびに化学物質を検知、検出あるいは定量する重要性が増してきており、それらを簡便に測定できる様々なバイオチップおよびマイクロ化学チップ(以下、これらを総称してマイクロチップと称する。)が提案されている。マイクロチップは、実験室で行なっている一連の実験・分析操作を、数cm角で厚さ数mm程度のチップ内で行なえることから、検体および試薬が微量で済み、コストが安く、反応速度が速く、ハイスループットな検査ができ、検体を採取した現場で直ちに検査結果を得ることができるなど多くの利点を有し、たとえば血液検査等の生化学検査用として好適に用いられている。
【0003】
マイクロチップは、通常、その内部に流体回路を有しており、該流体回路を利用して、流体回路内に導入された検体(たとえば、血液等)の計量、検体と試薬との混合などの種々の流体処理が行なわれる。このような流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を印加することにより行なうことができる。
【0004】
上記マイクロチップのうち、液体試薬内蔵型マイクロチップは、検体または検体中の特定成分と混合あるいは反応させるための液体試薬を流体回路内にあらかじめ保持しているマイクロチップであり、その流体回路には、液体試薬を保持するための1または複数の液体試薬保持部が設けられる(液体試薬保持部を有するマイクロチップについては、たとえば特許文献1参照)。また、液体試薬内蔵型マイクロチップには、その一方の表面に、液体試薬保持部内に液体試薬を注入するための、該液体試薬保持部まで貫通する試薬注入口が1または2以上形成されるのが通常であり、該試薬注入口は、液体試薬が注入された後、たとえば封止用ラベル(シール)などをマイクロチップ表面に貼付することにより封止される。
【0005】
ここで、液体試薬保持部に液体試薬を注入する際には、注入量が不足していたり、あるいは注入された液体試薬の液体試薬保持部内における位置が適切でないなどの不良が生じ得、このような不良品は、マイクロチップ製造において効率的に選別され、排除されることが肝要である。液体試薬注入量が不足していると、液体試薬と検体とが適切な割合で混合されない可能性があり、これにより、検体と液体試薬との混合液の検査・分析を正確に行なえない恐れがある。また、液体試薬が、たとえば液体試薬保持部の排出口近傍に位置すると、微小な温度、圧力変化により液体試薬が該排出口から流体回路内へ漏れ出す恐れがあり、このことは、検体との混合、反応に悪影響を及ぼしたり、検体と液体試薬との混合液の検査・分析結果に悪影響を及ぼし得る。
【特許文献1】特開2007−285792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または液体試薬保持部内における液体試薬の位置を簡便に検知することができ、液体試薬量および/または液体試薬の位置が適正かどうかを容易に評価することができるマイクロチップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の基板と、該第1の基板上に積層された透明基板である第2の基板とを含み、第1の基板表面に形成された溝と第2の基板表面とから構成される空洞部、または、第1の基板表面と第2の基板表面に形成された溝とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、該流体回路は、液体試薬を収容するための液体試薬保持部を含み、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部を備えるマイクロチップを提供する。
【0008】
本発明の第1の実施形態において、上記検知部は、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、該突起部は、液体試薬保持部の底面と略平行な微細凹凸表面を有する。
【0009】
本発明の第2の実施形態において、上記検知部は、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、該突起部は、液体試薬保持部の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状部を有しており、該テーパー形状部における、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面の少なくとも一部には、微細凹凸が形成されている。
【0010】
本発明の第3の実施形態において、上記検知部は、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、該突起部は、液体試薬保持部の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状部を有しており、該テーパー形状部を構成する、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面は、該表面に照射される光を全反射する全反射面である。上記テーパー形状部は、たとえば円錐状または三角柱状である。
【0011】
また、本発明の第4の実施形態において、上記検知部は、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面または第2の基板の溝底面に形成された微細凹凸からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマイクロチップによれば、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または液体試薬保持部内における液体試薬の位置を簡便に検知することができ、液体試薬量および/または液体試薬の位置が正常であるかどうかを容易に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のマイクロチップは、各種化学合成、検査・分析等を、それが有する流体回路を用いて行なうことができるチップであり、本発明の1つの好ましい態様において、マイクロチップは、第1の基板と、該第1の基板上に積層、貼合された透明基板である第2の基板とからなり、より具体的には、第1の基板と基板表面に溝を備える第2の基板とを、第2の基板の溝形成側表面が第1の基板に対向するように貼り合わせてなる。したがって、かかる2枚の基板からなるマイクロチップは、その内部に、第2の基板表面に設けられた溝と第1の基板における第2の基板に対向する側の表面とから構成される空洞部からなる流体回路を備える。
【0014】
また、別の好ましい態様において、本発明のマイクロチップは、基板の両表面に設けられた溝を備える第1の基板と、該第1の基板を狭むようにして積層、貼合された透明基板である第2の基板および第3の基板とからなる。かかる3枚の基板からなるマイクロチップは、第2の基板における第1の基板に対向する側の表面および第1の基板における第2の基板に対向する側の表面に設けられた溝から構成される空洞部からなる第1の流体回路と、第3の基板における第1の基板に対向する側の表面および第1の基板における第3の基板に対向する側の表面に設けられた溝から構成される空洞部からなる第2の流体回路と、の2層の流体回路を備えている。ここで、「2層」とは、マイクロチップの厚み方向に関して異なる2つの位置に流体回路が設けられていることを意味する。第1の流体回路と第2の流体回路とは、第1の基板に形成された厚み方向に貫通する1または2以上の貫通穴によって連結されていてもよい。
【0015】
基板同士を貼り合わせる方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば貼り合わせる基板のうち、少なくとも一方の基板の貼り合わせ面を融解させて溶着させる方法(溶着法)、接着剤を用いて接着させる方法などを挙げることができる。溶着法としては、基板を加熱して溶着させる方法;レーザ等の光を照射して、光吸収時に発生する熱により溶着する方法;超音波を用いて溶着する方法などを挙げることができる。
【0016】
本発明のマイクロチップの大きさは、特に限定されず、たとえば縦横数cm程度、厚さ数mm〜1cm程度とすることができる。
【0017】
本発明のマイクロチップを構成する上記各基板の材質は、特に制限されず、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの有機材料;シリコン、ガラス、石英などの無機材料等を用いることができる。
【0018】
マイクロチップを第1および第2の基板の2枚から構成する場合において、第1の基板上に積層される、表面に溝を備える第2の基板は透明基板である。これは、液体試薬保持部内の液体試薬量および/または位置を検知する際、第2の基板側から照射した光が、液体試薬保持部内に設けられた検知部まで到達できるようにするためである。この点については、実施の形態を示して後で詳細に説明する。第1の基板は、透明基板であってもよいし、基板を樹脂から構成し、該樹脂中にカーボンブラック等を添加することにより黒色基板とするなど着色基板としてもよいが、着色基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。第1の基板を着色基板とすることにより、レーザなどの光を用いた溶着法を用いることができる。また、レーザ溶着法により基板の貼り合わせを行なう場合、着色基板の貼り合わせ表面が主に融解されて貼合されることとなるため、第2の基板である透明基板に形成された溝の変形を最小限に抑えることができる。
【0019】
また、マイクロチップを第1の基板、第2の基板および第3の基板の3枚から構成する場合、同様に、第1の基板上に積層される第2の基板は透明基板とする。第1の基板の下側(第2の基板とは反対側)に貼合される第3の基板は、透明基板とすることが好ましい。これにより、流体回路の一部として、第1の基板をその厚み方向に貫通する貫通穴と、透明な第2および第3の基板表面から構成されるキュベットを形成することができ、該キュベットに検査・分析の対象となる検体と液体試薬との混合液を導入し、該キュベットに対してマイクロチップ表面と垂直な方向の光を、マイクロチップ上面(または下面)側から照射し、その反対側から透過した光の強度(透過率)を検出するなどの光学測定を該混合液について行なうことが可能となる。第2の基板と第3の基板との間に位置する第1の基板は、着色基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。
【0020】
第1の基板表面または第2の基板表面に、流体回路を構成する溝(流路パターン)を形成する方法としては、特に制限されず、転写構造を有する金型を用いた射出成形法、インプリント法などを挙げることができる。無機材料を用いて基板を形成する場合には、エッチング法などを用いることができる。
【0021】
本発明のマイクロチップにおいて、流体回路(2層の流体回路を備える場合には、第1の流体回路および第2の流体回路)は、流体回路内の液体に対して適切な様々な処理を行なうことができるよう、流体回路内の適切な位置に配置された種々の部位を備えており、これらの部位は、微細な流路を介して適切に接続されている。
【0022】
本発明のマイクロチップは、液体試薬をあらかじめチップ内部に保持している液体試薬内蔵型マイクロチップであり、その流体回路は、これを構成する部位の1つとして、液体試薬を保持するための液体試薬保持部を備える。液体試薬保持部は1つのみであってもよいし、2以上あってもよい。「液体試薬」とは、検査・分析の対象となる検体と混合または反応させるための液体物質である。液体試薬は、1つのマイクロチップ内に1種のみ内蔵されていてもよいし、2種以上内蔵されていてもよい。また、「検体」とは、流体回路内に導入される検査・分析の対象となる物質(たとえば血液)自体、または、該物質中の特定成分(たとえば血漿成分)を意味する。
【0023】
本発明のマイクロチップは、通常、その上側表面(すなわち第2の基板表面)に、内部の液体試薬保持部まで貫通する(第2の基板をその厚み方向に貫通する)貫通穴である試薬注入口が設けられる。このような本発明のマイクロチップは、通常、試薬注入口から液体試薬が注入された後、マイクロチップ表面(第2の基板表面)に当該試薬注入口を封止するためのラベルまたはシールが貼着されて、使用に供される。
【0024】
本発明において流体回路は、液体試薬保持部以外の部位を備えていてもよく、かかる部位としては、たとえば流体回路内に導入された検体から特定成分を取り出すための分離部;検体(検体中の特定成分を含む。以下同じ。)を計量するための検体計量部;液体試薬を計量するための液体試薬計量部;検体と液体試薬とを混合するための混合部;得られた混合液についての検査・分析(たとえば、混合液中の特定成分の検出または定量)を行なうための検出部(光学測定を行なうためのキュベット)などを挙げることができる。本発明のマイクロチップは、これら例示された部位のすべてを有していてもよく、いずれか1以上を有していなくてもよい。また、これら例示された部位以外の部位を有していてもよい。これらの部位は、所望する流体処理を行なうことができるよう、流体回路内の適切な位置に配置され、かつ微細な流路を介して接続されている。
【0025】
検体と液体試薬とを混合させることによって最終的に得られた混合液は、特に限定されないが、たとえば、該混合液が収容された部位(たとえば検出部)に光を照射して透過する光の強度(透過率)を検出する方法等の光学測定などに供され、検査・分析が行なわれる。
【0026】
検体からの特定成分の抽出(不要成分の分離)、検体および/または液体試薬の計量、検体と液体試薬との混合、得られた混合液の検出部への導入などのような流体回路内における種々の流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を順次印加することにより行なうことができる。マイクロチップへの遠心力の印加は、マイクロチップを、遠心力を印加可能な装置(遠心装置)に載置して行なうことができる。遠心装置は、回転自在なローター(回転子)と、該ローター上に配置された回転自在なステージとを備えている。該ステージ上にマイクロチップを載置し、該ステージを回転させてローターに対するマイクロチップの角度を任意に設定することにより、マイクロチップに対して任意の方向の遠心力を印加することができる。
【0027】
ここで、本発明のマイクロチップは、上記した液体試薬保持部内に、収容された液体試薬の量および液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部を備えている。このような検知部を備えることにより、簡便な操作で、収容されている液体試薬の量および/または位置が正常であるかを評価することができる。以下、実施の形態を示して、本発明の検知部を備えるマイクロチップについて詳細に説明する。
【0028】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。本実施形態のマイクロチップ100は、表面に溝を備える第1の基板101上に透明基板である第2の基板102を貼り合わせてなり、第2の基板102の第1の基板101側表面と第1の基板101表面に形成された溝とから構成される流体回路を内部に有している。図1は、当該流体回路のうち、液体試薬保持部106周辺を拡大して示す図である。第1の基板101および第2の基板102はともに、上記したようなプラスチック基板である。液体試薬保持部106には、液体試薬排出口104が設けられており、遠心力の印加により、液体試薬保持部106内の液体試薬が排出可能となっている。また、液体試薬保持部106上部には、第2の基板102を厚み方向に貫通する試薬注入口105が設けられており、この試薬注入口105を介して液体試薬の注入が行なわれる。なお、本実施形態のマイクロチップ100は、第1の基板101の下側表面に第3の基板(図示せず)が貼合された3枚の基板からなるマイクロチップであってもよい。
【0029】
ここで、マイクロチップ100は、液体試薬保持部106内に、液体試薬の量および液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部103を備える。より具体的には、検知部103は、液体試薬保持部106の天井面を構成する第2の基板102の基板表面に設けられた、断面形状が長方形である突起部からなるものであり、その液体試薬保持部106底面側表面には、微細凹凸が形成されている。この微細凹凸表面103aは、その液体試薬保持部106底面と平行または略平行である。また、検知部103は、液体試薬保持部106の天井面を構成する第2の基板102の基板表面のうち、液体試薬排出口104から遠い領域に設けられている。
【0030】
上記微細凹凸の高さ(凹部の底点から凸部の頂点までの距離)は、特に制限されず、たとえば0.1〜10μmの範囲内であり、好ましくは、1〜5μmの範囲内である。また、微細凹凸のピッチ、すなわち、凸部の頂部から次の頂部までの距離は、特に限定されず、たとえば0.1〜10μm程度である。かかる微細凹凸表面は、いわゆる梨地処理面であり、従来公知の方法、たとえば、基板を射出成形により作製する際に、ブラスト処理、放電処理またはエッチング処理が施され、微細凹凸が形成された金型を用いる方法;基板の成形後、研磨紙等を用いて基板表面を研磨して微細凹凸を形成する方法などにより形成できる。
【0031】
かかる構成の検知部を備えるマイクロチップによれば、簡便な操作で、液体試薬保持部内に収容された液体試薬の量および液体試薬の位置を検知することができ、これらが適正であるかを簡単に評価することができる。図2は、本実施形態のマイクロチップ100における液体試薬の量および液体試薬の位置を検知するための方法を示す概略断面図である。図2(a)に示されるように、検知部103の微細凹凸表面103aが、試薬注入口105から注入された液体試薬201中に浸漬されると、表面凹凸は液体試薬201によって埋められているため、第2の基板102側から検知部103に照射光202を照射した際、表面凹凸による乱反射が生じず、該照射光202の光源側(マイクロチップ上面側)に反射される反射光は観測されないか、または該反射光は極めて弱い。一方、液体試薬201の注入量の不足が生じている(図2(b)参照)もしくは液体試薬201が検知部103の直下に位置しないことにより、微細凹凸表面103aの少なくとも一部が、液体試薬201中に浸漬されていない場合には、第2の基板102側から検知部103に照射光202を照射した際、表面凹凸による乱反射が生じ、該照射光202の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光203が観測される。
【0032】
上記現象を利用することにより、液体試薬保持部内の液体試薬の液量を簡便に検知することができる。すなわち、第2の基板102側から検知部103に、照射光202を、たとえばマイクロチップ基板表面と垂直な方向から照射し、反射光203が観測されなければ、液体試薬の量が十分であると判断することができる。この際、所望される最少の液体試薬注入量が、微細凹凸表面103aが浸漬される程度の量またはそれ以上の量となるように、検知部103の突起高さ(液体試薬保持部106の天井面から微細凹凸表面103aまでの距離)および、液体試薬保持部の容量または高さ(天井面から底面までの距離)を適宜調整し、最適化しておく。
【0033】
また、本実施形態では、検知部103を液体試薬排出口104から離れた位置に配置していることから、反射光203が観測されなければ、液体試薬201が液体試薬排出口104から離れた領域(検知部103の直下領域)に位置することが確認されたことになり、液体試薬の位置が適正であると評価することができる。すなわち、液体試薬が液体試薬排出口近傍に位置する、特には、液体試薬が液体試薬排出口を塞ぐように位置する場合には、微小な温度、圧力変化により液体試薬が該排出口から流体回路内へ漏れ出し、検体との混合、反応に悪影響を及ぼしたり、検体と液体試薬との混合液の検査・分析結果に悪影響を及ぼし得るが、検知部103直下に液体試薬が位置する場合には、このような恐れがなく、好ましい位置であるといえる。
【0034】
一方、照射光202の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光203が検出される場合には、液体試薬注入量が十分でないか、または、液体試薬が検知部103直下ではなく、液体試薬排出口近傍を含めた他の領域に位置すると判断することができる。したがって、本実施形態のマイクロチップによれば、反射光の有無を検出することにより、簡便に液体試薬の量およびその位置を検知、評価することができ、不良品を簡便な操作で選別することができる。
【0035】
反射光を検出する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、たとえばフォトダイオード(PD)のような光検出器を用いて検出する方法を用いることができる。また、CCDカメラなどの画像認識装置を用い、得られた画像における検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を測定することによっても反射光の検出を行なうことができる。照射光の種類は特に制限されず、白色光であってもよいし、単色光であってもよい。
【0036】
図3は、本実施形態のマイクロチップ100における液体試薬保持部を拡大して示す概略上面図である。検知部103は、たとえば図3(a)に示されるように、液体試薬保持部106の天井面を構成する第2の基板102表面に、スポット的に形成されてもよく、あるいは、たとえば図3(b)に示されるように、帯状に形成されてもよい。帯状に形成した方が、液体試薬の量および/または位置が適正であるかの判断をより精度よく行なうことができるが、スポット的に形成することでも十分に正確な判断を行なうことが可能である。マイクロチップ上面からみたときの検知部の形状および液体試薬保持部に占める面積は、特に制限されるものではない。
【0037】
本実施形態のマイクロチップは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施すことができ、たとえば、次に示す(1)〜(4)のような変形を施すことができる。
【0038】
(1)本実施形態のマイクロチップにおいて、検知部は、液体試薬保持部底面と平行または略平行な微細凹凸表面を有していればよい。したがって、図1に示される検知部103のように、その断面形状が長方形である必要は必ずしもなく、たとえば、正方形、台形などであってよい。また、検知部である突起部の形状についても特に制限はなく、たとえば円柱状、直方体形状などとすることができる。
【0039】
(2)図4に示されるマイクロチップ400のように、液体試薬保持部を含む流体回路を構成する溝は、第1の基板ではなく、第2の基板表面に形成されてもよい。図4において、液体試薬保持部406を含む流体回路は、第2の基板402の表面に形成された溝と第1の基板401基板表面とから形成されている。その他の構成については図1に示されるマイクロチップ100と同様であり、液体試薬保持部406は、液体試薬を排出するための液体試薬排出口404および微細凹凸表面403aを有する検知部403を備え、また、第2の基板402には、その厚み方向に貫通する貫通穴である試薬注入口405が形成されている。
【0040】
(3)図5に示されるマイクロチップ500のように、検知部は、液体試薬排出口近傍または液体試薬排出口に隣接して形成されてもよい。図5に示されるマイクロチップ500は、第2の基板502の表面に形成された溝と第1の基板501基板表面とから構成される液体試薬保持部506を有する。液体試薬保持部506は、液体試薬排出口504に隣接して形成された、微細凹凸表面503aを有する検知部503を備える。このような位置に検知部を設けることで、反射光の有無を検出することにより、簡便に液体試薬の位置が不良であるかどうかを評価することができる。すなわち、第2の基板502側から検知部503へ光を照射したときに、反射光が検出されなければ、検知部503の直下に液体試薬が存在することになり、液体試薬の位置が不良であると判断することができる。一方、反射光が検出されれば、液体試薬が検知部503の直下あるいはその近傍に存在しないと判断できる。
【0041】
(4)図1に示されるマイクロチップ100が有する液体試薬保持部106は、その断面形状が横長(図1に示される液体試薬保持部断面において、その横方向の長さが高さよりも長い)であるがこれに限定されるものではなく、縦長であってもよい。すなわち、液体試薬保持部は、その横方向の長さが高さよりも短くてもよい。液体試薬保持部がこのような縦長構造である場合には、液体試薬の位置はさほど問題とならず、通常、検知部への光照射により、液体試薬の注入量のみが評価される。液体試薬保持部が縦長構造である場合、検知部の微細凹凸表面が液体試薬中に浸漬されており、反射光が観測されないとき、液体試薬の量が十分であると判断することができる。
【0042】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。本実施形態のマイクロチップ600は、表面に溝を備える第1の基板601上に透明基板である第2の基板602を貼り合わせてなり、第2の基板602の第1の基板601側表面と第1の基板601表面に形成された溝とから構成される流体回路を内部に有している。図6は、当該流体回路のうち、液体試薬保持部606周辺を拡大して示す図である。第1の基板601および第2の基板602はともに、プラスチック基板である。液体試薬保持部606には、液体試薬排出口604が設けられており、遠心力の印加により、液体試薬保持部606内の液体試薬が排出可能となっている。また、液体試薬保持部606上部には、第2の基板602を厚み方向に貫通する試薬注入口605が設けられている。なお、本実施形態のマイクロチップ600は、第1の基板601の下側表面に第3の基板(図示せず)が貼合された3枚の基板からなるマイクロチップであってもよい。
【0043】
マイクロチップ600は、液体試薬保持部606内に、液体試薬の量を検知するための検知部603を備える。検知部603は、液体試薬保持部606の天井面を構成する第2の基板602の基板表面に設けられた、液体試薬保持部606の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状を有する突起部からなる。そして、検知部603が有する、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面(以下、テーパー面と称する)には、微細凹凸が形成されている(図6における微細凹凸表面603a)。微細凹凸表面603aの微細凹凸の高さおよびピッチは、第1の実施形態と同様である。
【0044】
本実施形態において、検知部603である突起部の形状は円錐状であり、したがって、マイクロチップ600は、これを上からみたとき、図3(a)と同様の構成を有している。円錐の先端部の角度は特に制限されない。なお、検知部603の形状は、円錐状に制限されるものではなく、たとえば三角柱状とすることができる。
【0045】
かかる構成の検知部を備えるマイクロチップによっても、簡便な操作で、液体試薬保持部内に収容された液体試薬の量を検知することができ、これが適正であるかを簡単に評価することができる。図7は、本実施形態のマイクロチップ600における検知部603周辺をさらに拡大して示す概略断面図であり、検知部603の一部が液体試薬701に浸漬された状態を示す図である。図7に示される状態において、第2の基板602側から検知部603に向けて光を照射した場合、液体試薬701に浸漬されていない領域の微細凹凸表面603aに到達した照射光702aは、表面凹凸により乱反射され、結果、照射光の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光703を生じさせる。一方、液体試薬701中に浸漬された領域の微細凹凸表面603aに到達した照射光702bは、表面凹凸が液体試薬701によって埋められているため、表面凹凸による乱反射が生じず、反射光を生じさせない。したがって、第2の基板602側から検知部603に向けて光を照射し、検知部603直上の第2の基板602表面の表面輝度(明るさ)をCCDカメラなどの画像認識装置を用いて画像表示させると、図8に示されるように、リング状に明るく(白っぽく)見える領域が観測される。
【0046】
ここで、液体試薬保持部606の天井面と検知部603の微細凹凸表面603aとの交点をA、微細凹凸表面603aと液体試薬701の液面との交点を液体試薬保持部606の天井面に投影させたときの投影点をBとすると、得られる画像における明るく見えるリングの幅W1’は、A−B間の距離W1に相当する(図7参照)。また、当該リング内の暗く見える円の直径W2’は、液体試薬701の液面位置における検知部603の幅W2に相当する(図7参照)。したがって、本実施形態のマイクロチップによれば、画像認識装置を用いて、第2の基板602表面の表面輝度(明るさ)を示す画像を得、明るく見えるリングの幅W1’および/または当該リング内の暗く見える円の直径W2’を測定することにより、液体試薬保持部606内の液体試薬の液面位置を検知できるため、液体試薬保持部606内の液体試薬量を定量することが可能である。液体試薬量の定量化により、液体試薬が所望される量注入されているかどうかをより正確に評価することができる。なお、所望される最少の液体試薬注入量が、検知部603の先端が浸漬される程度の量またはそれ以上の量となるように、検知部603の突起高さ(液体試薬保持部606の天井面から検知部603の先端部までの距離)および、液体試薬保持部の容量または高さ(天井面から底面までの距離)を適宜調整し、最適化しておく。
【0047】
照射光の種類は特に制限されず、第1の実施形態と同様に、白色光であってもよいし、単色光であってもよい。
【0048】
本実施形態のマイクロチップは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施すことができる。たとえば、本実施形態のマイクロチップにおいて、検知部は、微細凹凸が形成されたテーパー面を有していればよく、したがって、検知部の形状は、たとえば図9に示される形状を有していてもよい。図9(a)に示されるマイクロチップ900の検知部903は、三角柱状の形状を有しており、それが有するテーパー面には、微細凹凸が形成されている(図9における微細凹凸表面903a)。図9(a)は、検知部903の一部が液体試薬907に浸漬された状態を示している。図9(a)に示される状態において、第2の基板902側から検知部903に向けて光を照射した場合、液体試薬907に浸漬されていない領域の微細凹凸表面903aに到達した照射光908aは、表面凹凸により乱反射され、結果、照射光の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光909を生じさせる。一方、液体試薬907中に浸漬された領域の微細凹凸表面903aに到達した照射光908bは、表面凹凸による乱反射が生じず、反射光を生じさせない。したがって、第2の基板902側から検知部903に向けて光を照射し、検知部903直上の第2の基板902表面の表面輝度(明るさ)をCCDカメラなどの画像認識装置を用いて画像表示させることにより、マイクロチップ600の場合と同様にして液体試薬の量および位置を検知することができる。マイクロチップ900の場合、得られる画像における明るく見える領域は、ライン状となる(図9(b)参照)。このラインの幅W3’を測定することにより、液体試薬保持部906内の液体試薬の液面位置を検知できるため、液体試薬保持部906内の液体試薬量を定量することが可能である。
【0049】
また、検知部は、図10に示されるような形状であってもよい。図10(a)に示されるマイクロチップ1000の検知部1003は、図6に示される検知部603の先端部に平坦面が形成されるよう、該先端部を切り欠いた形状を有する。この場合、画像認識装置を用いて得られる画像における明るく見えるリングの幅W4’を測定することにより、液体試薬量の定量を行なう(図10(b)参照)。
【0050】
また、検知部は、図11に示されるような形状であってもよい。上述してきた検知部は、いずれも検知部である突起部が、テーパー面を有するテーパー形状部のみからなる構造であったが、これに限定されるものではない。すなわち、図11に示されるマイクロチップ1100の検知部1103は、テーパー面を有しない突出部1104と、微細凹凸表面1103aを備えるテーパー形状部1105から構成されている。突出部1104の液体試薬保持部1106底面側表面には、図11に示されるように、微細凹凸が形成されているが、省略されてもよい。
【0051】
また、検知部は、第1の実施形態と同様に、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面に、スポット的に形成されてもよく、帯状に形成されてもよい。
【0052】
上記第1の実施形態について示した変形例(2)および(3)は、本実施形態にも適用することができる。
【0053】
<第3の実施形態>
図12は、本発明の第3の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。本実施形態のマイクロチップ1200は、表面に溝を備える第1の基板1201上に透明基板である第2の基板1202を貼り合わせてなり、第2の基板1202の第1の基板1201側表面と第1の基板1201表面に形成された溝とから構成される流体回路を内部に有している。図12は、当該流体回路のうち、液体試薬保持部1206周辺を拡大して示す図である。第1の基板1201および第2の基板1202はともに、プラスチック基板である。液体試薬保持部1206には、液体試薬排出口1204が設けられており、遠心力の印加により、液体試薬保持部1206内の液体試薬が排出可能となっている。また、液体試薬保持部1206上部には、第2の基板1202を厚み方向に貫通する試薬注入口1205が設けられている。なお、本実施形態のマイクロチップ1200は、第1の基板1201の下側表面に第3の基板(図示せず)が貼合された3枚の基板からなるマイクロチップであってもよい。
【0054】
マイクロチップ1200は、液体試薬保持部1206内に、液体試薬の量を検知するための検知部1203を備える。検知部1203は、液体試薬保持部1206の天井面を構成する第2の基板1202の基板表面に設けられた、液体試薬保持部1206の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状を有する突起部からなる。このテーパー面は、該突起部が液体と接触しない場合には、照射された光を全反射する全反射面1203aとなっている。
【0055】
本実施形態において、検知部1203である突起部の形状は円錐状であり、したがって、マイクロチップ1200は、これを上からみたとき、図3(a)と同様の構成を有している。なお、検知部1203の形状は、円錐状に制限されるものではなく、たとえば三角柱状とすることができる。
【0056】
かかる構成の検知部を備えるマイクロチップによっても、簡便な操作で、液体試薬保持部内に収容された液体試薬の量を検知することができ、これが適正であるかを簡単に評価することができる。図13は、本実施形態のマイクロチップ1200における検知部1203周辺をさらに拡大して示す概略断面図であり、検知部1203の一部が液体試薬1301に浸漬された状態を示す図である。図13に示される状態において、第2の基板1202側から検知部1203に向けて光を照射した場合、液体試薬1301に浸漬されていない領域の全反射面1203aに到達した照射光1302aは、全反射面1203aによって全反射され、結果、照射光の光源側(マイクロチップ上面側)への反射光1303を生じさせる。一方、液体試薬1301中に浸漬された領域のテーパー面に到達した照射光1302bは、全反射されず、反射光を生じさせない。よって、第2の基板1202側から検知部1203に向けて光を照射し、検知部1203直上の第2の基板1202表面の表面輝度(明るさ)をCCDカメラなどの画像認識装置を用いて画像表示させると、図14に示されるように、リング状に明るく(白っぽく)見える領域が観測される。したがって、本実施形態のマイクロチップによれば、画像認識装置を用いて、第2の基板1202表面の表面輝度(明るさ)を示す画像を得、第2の実施形態と同様に、明るく見えるリングの幅W5’および/または当該リング内の暗く見える円の直径W6’を測定することにより、液体試薬保持部1206内の液体試薬の液面位置を検知できるため、液体試薬保持部1206内の液体試薬量を定量することが可能である。なお、所望される最少の液体試薬注入量が、検知部1203の先端が浸漬される程度の量またはそれ以上の量となるように、検知部1203の突起高さ(液体試薬保持部1206の天井面から検知部1203の先端部までの距離)および、液体試薬保持部の容量または高さ(天井面から底面までの距離)を適宜調整し、最適化しておく。
【0057】
照射光の種類は特に制限されず、第1の実施形態と同様に、白色光であってもよいし、単色光であってもよい。
【0058】
ここで、検知部1203の側面を全反射面とするために、円錐先端(もしくは三角柱先端)の角度(図13における角度θ)は、90度とする。また、液体試薬は、通常水系であり、その屈折率が1.33程度であることから、空気と接する(液体試薬中に浸漬されていない)テーパー面において照射光が全反射され、かつ、液体試薬と接する(液体試薬中に浸漬された)テーパー面において照射光が全反射されないためには、検知部を構成する(典型的には、第2の基板を構成する)材料の屈折率ηは、21/2(約1.41)<η<1.88を満たす必要がある。多くのプラスチック材料(たとえば、上で例示された有機材料)の屈折率は、約1.5〜1.6であり、上記条件を満たすことから、好適に用いられる。
【0059】
本実施形態のマイクロチップは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施すことができる。たとえば、本実施形態の検知部は、図11に示される検知部と同様に、テーパー面を有しない突出部と、全反射面であるテーパー面を備えるテーパー形状部から構成されていてもよい。また、上記第1の実施形態について示した変形例(2)および(3)は、本実施形態にも適用することができる。
【0060】
<第4の実施形態>
検知部は、必ずしも液体試薬保持部の天井面に設けられた突起部から構成される必要はなく、該天井面に直接、微細凹凸を形成することにより検知部とすることもできる。図15は、本発明の第4の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。本実施形態のマイクロチップ1500は、表面に溝を備える第1の基板1501上に透明基板である第2の基板1502を貼り合わせてなり、第2の基板1502の第1の基板1501側表面と第1の基板1501表面に形成された溝とから構成される流体回路を内部に有している。図15は、当該流体回路のうち、液体試薬保持部1506周辺を拡大して示す図である。第1の基板1501および第2の基板1502はともに、プラスチック基板である。液体試薬保持部1506には、液体試薬排出口1504が設けられており、遠心力の印加により、液体試薬保持部1506内の液体試薬が排出可能となっている。また、液体試薬保持部1506上部には、第2の基板1502を厚み方向に貫通する試薬注入口1505が設けられている。なお、本実施形態のマイクロチップ1500は、第1の基板1501の下側表面に第3の基板(図示せず)が貼合された3枚の基板からなるマイクロチップであってもよい。
【0061】
マイクロチップ1500は、液体試薬保持部1506の天井面を構成する第2の基板1502表面に形成された微細凹凸表面からなる検知部1503を備える。微細凹凸表面の微細凹凸の高さおよびピッチは、第1の実施形態と同様である。微細凹凸表面からなる検知部1503は、第1の実施形態と同様に、液体試薬保持部の天井面を構成する第2の基板表面上に、スポット的に形成されてもよく、帯状に形成されてもよい。また、検知部1503が液体試薬保持部1506の天井面に占める面積は特に制限されない。
【0062】
かかる構成の検知部を備えるマイクロチップによっても、第1の実施形態と同様に、簡便な操作で、液体試薬保持部内に収容された液体試薬の量および液体試薬の位置を検知することができ、これらが適正であるかを簡単に評価することができる。
【0063】
なお、上記第1の実施形態について示した変形例(2)および(3)は、本実施形態にも適用することができる。
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
<実施例1>
図16は、本実施例のマイクロチップの上面の一部(液体試薬保持部周辺)を示すCCD画像である。本実施例のマイクロチップは、一方の表面に流体回路を構成する溝を有する、透明基板である第2の基板と、黒色基板である第1の基板とを、第2の基板の溝形成側表面が第1の基板と対向するように貼り合わせてなる。このマイクロチップの液体試薬保持部は、図1に示される検知部と同様の微細凹凸表面を有する検知部を備えており、図16に示されるように、その検知部は、液体試薬保持部の天井面に帯状に形成されている。
【0066】
図16(a)は、液体試薬保持部に液体試薬を注入する前の状態を示すCCD画像であり、図16(b)は、試薬注入口から液体試薬を注入した後のCCD画像である。液体試薬注入前においては、帯状の検知部形成領域が明るく(白く)表示されており、液体試薬が注入されると、微細凹凸表面が液体試薬中に浸漬されるために、暗く表示されることがわかる。このことから、液体試薬の量および位置が適正であると評価できる。
【0067】
図17は、本実施例のマイクロチップの流体回路構造を示す上面図である。実際には、流体回路を構成する溝は、第2の基板における図17に示される表面とは反対側の表面に形成されているが、流体回路構造を明確に示すため、図17においては、流体回路を実線で示している。本実施例のマイクロチップは、被験者から採取された全血を含むキャピラリー等のサンプル管を組み込むためのサンプル管載置部1701、サンプル管より導出された全血から血球などを除去して血漿成分を得る血漿分離部1702、分離された血漿成分を計量する検体計量部1703、液体試薬を保持するための2つの液体試薬保持部1704a、1704b、液体試薬を計量する2つの液体試薬計量部1705a、1705b、血漿成分と液体試薬とを混合する混合部1706a〜1706d、ならびに、得られた混合液についての検査・分析が行なわれる検出部1707から主に構成される。2つの液体試薬保持部部1704a、1704bは、液体試薬を注入するための試薬注入口1710a、1710bをそれぞれ有している。
【0068】
本実施例のマイクロチップの動作方法は、概略以下のとおりである。なお、以下に説明する動作方法は一例を示したものであり、この方法に限定されるものではない。まず、全血サンプルを採取したサンプル管をサンプル管載置部1701に挿入する。次に、マイクロチップに対して、図17における右向き方向(以下、単に右向きという。他の方向についても以下同様。)に遠心力を印加し、サンプル管内の全血サンプルを取り出した後、下向きの遠心力により、全血サンプルを血漿分離部1702に導入して遠心分離を行ない、血漿成分と血球成分とに分離する。全血サンプルを血漿分離部1702に導入した際、血漿分離部1702から溢れ出た全血サンプルは、廃液溜め部1708に収容される。この下向き遠心力により、液体試薬保持部1704a内の液体試薬Mは、液体試薬計量部1705aにて計量される。
【0069】
ついで、分離された血漿成分を、左向き遠心力により検体計量部1703に導入する。この際、計量された液体試薬Mは、混合部1706bに移動するとともに、液体試薬保持部1704b内の液体試薬Nは、液体試薬保持部1704bから排出される。
【0070】
次に、下向き遠心力により、計量された血漿成分と液体試薬Mとが混合部1706aにて混合されるとともに、液体試薬Nは、液体試薬計量部1705bにて計量される。ついで、左向き、下向き、左向き遠心力を順次印加して、混合液を混合部1706aおよび1706b間で行き来させることにより、混合液の十分な混合を行なう。次に、上向き遠心力により、液体試薬Mおよび血漿成分からなる混合液と計量された液体試薬Nとを混合部1706cにて混合させる。ついで、右向き、上向き、右向き、上向き遠心力を順次印加して、混合液を混合部1706cおよび1706d間で行き来させることにより、混合液の十分な混合を行なう。最後に、左向き遠心力により、混合部1706c内の混合液を検出部1707に導入する。検出部1707内の混合液は、たとえば、検出部1707に光を照射し、その透過光の強度を測定するなどの光学測定に供される。
【0071】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬の量および液体試薬の位置を検知するための方法を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略上面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のマイクロチップの変形例の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のマイクロチップの変形例の別の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態のマイクロチップにおける検知部周辺をさらに拡大して示す概略断面図であり、検知部の一部が液体試薬に浸漬された状態を示す図である。
【図8】図7に示されるマイクロチップの第2の基板側から光を照射したときに、検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を画像認識装置を用いて画像表示させることにより得られる画像を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態のマイクロチップの変形例を示す概略断面図およびその第2の基板側から光を照射したときに、検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を画像認識装置を用いて画像表示させることにより得られる画像を示す模式図である。
【図10】本発明の第2の実施形態のマイクロチップの変形例の別の一例を示す概略断面図およびその第2の基板側から光を照射したときに、検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を画像認識装置を用いて画像表示させることにより得られる画像を示す模式図である。
【図11】本発明の第2の実施形態のマイクロチップの変形例の別の一例を示す概略断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態のマイクロチップにおける検知部周辺をさらに拡大して示す概略断面図であり、検知部の一部が液体試薬に浸漬された状態を示す図である。
【図14】図13に示されるマイクロチップの第2の基板側から光を照射したときに、検知部直上の第2の基板表面の表面輝度(明るさ)を画像認識装置を用いて画像表示させることにより得られる画像を示す模式図である。
【図15】本発明の第4の実施形態のマイクロチップにおける液体試薬保持部を拡大して示す概略断面図である。
【図16】実施例1のマイクロチップの上面の一部を示すCCD画像であり、図16(a)は液体試薬保持部に液体試薬を注入する前の状態、図16(b)は液体試薬注入後の状態を示す画像である。
【図17】実施例1のマイクロチップの流体回路構造を示す上面図である。
【符号の説明】
【0073】
100,400,500,600,900,1000,1100,1200,1500 マイクロチップ、101,401,501,601,901,1001,1101,1201,1501 第1の基板、102,402,502,602,902,1002,1102,1202,1502 第2の基板、103,403,503,603,903,1003,1103,1203,1503 検知部、103a,403a,503a,603a,903a,1003a,1103a 微細凹凸表面、104,404,504,604,1204,1504 液体試薬排出口、105,405,505,605,1205,1505,1710a,1710b 試薬注入口、106,406,506,606,906,1006,1106,1206,1506,1704a,1704b 液体試薬保持部、201,701,907,1007,1301 液体試薬、202,702a,702b,908a,908b,1302a,1302b 照射光、203,703,909,1303 反射光、1104 突出部、1105 テーパー形状部、1203a 全反射面、1701 サンプル管載置部、1702 血漿分離部、1703 検体計量部、1705a,1705b 液体試薬計量部、1706a,1706b,1706c,1706d 混合部、1707 検出部、1708 廃液溜め部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、前記第1の基板上に積層された透明基板である第2の基板とを含み、
前記第1の基板表面に形成された溝と前記第2の基板表面とから構成される空洞部、または、前記第1の基板表面と前記第2の基板表面に形成された溝とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、
前記流体回路は、液体試薬を収容するための液体試薬保持部を含み、
前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に、前記液体試薬保持部内の液体試薬量および/または前記液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部を備えるマイクロチップ。
【請求項2】
前記検知部は、前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、
前記突起部は、前記液体試薬保持部の底面と略平行な微細凹凸表面を有する請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記検知部は、前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、
前記突起部は、前記液体試薬保持部の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状部を有しており、
前記テーパー形状部における、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面の少なくとも一部には、微細凹凸が形成されている請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記検知部は、前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、
前記突起部は、前記液体試薬保持部の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状部を有しており、
前記テーパー形状部を構成する、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面は、該表面に照射される光を全反射する全反射面である請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項5】
前記テーパー形状部は、円錐状または三角柱状である請求項3または4に記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記検知部は、前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に形成された微細凹凸からなる請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項1】
第1の基板と、前記第1の基板上に積層された透明基板である第2の基板とを含み、
前記第1の基板表面に形成された溝と前記第2の基板表面とから構成される空洞部、または、前記第1の基板表面と前記第2の基板表面に形成された溝とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、
前記流体回路は、液体試薬を収容するための液体試薬保持部を含み、
前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に、前記液体試薬保持部内の液体試薬量および/または前記液体試薬保持部内における液体試薬の位置を検知するための検知部を備えるマイクロチップ。
【請求項2】
前記検知部は、前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、
前記突起部は、前記液体試薬保持部の底面と略平行な微細凹凸表面を有する請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記検知部は、前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、
前記突起部は、前記液体試薬保持部の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状部を有しており、
前記テーパー形状部における、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面の少なくとも一部には、微細凹凸が形成されている請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記検知部は、前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に設けられた突起部からなり、
前記突起部は、前記液体試薬保持部の天井面側から底面側へ向かうに従い細くなるテーパー形状部を有しており、
前記テーパー形状部を構成する、マイクロチップ厚み方向に対して傾斜した表面は、該表面に照射される光を全反射する全反射面である請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項5】
前記テーパー形状部は、円錐状または三角柱状である請求項3または4に記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記検知部は、前記液体試薬保持部の天井面を構成する前記第2の基板表面または前記第2の基板の溝底面に形成された微細凹凸からなる請求項1に記載のマイクロチップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図16】
【公開番号】特開2009−250710(P2009−250710A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97118(P2008−97118)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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