説明

マイクロマニピュレータ

【課題】1本のプローブでも容易に試料の採取が行うことができるマイクロマニピュレータを提供する。
【解決手段】プローブ7は、中心部15と、中心部15を同心円状に覆う外周部16とからなり、中心部15の先端17を外周部16から露出させている。中心部15はガラス15などの絶縁体で形成されており、電源9に接続されて、電源9に接続されて選択的に正極性もしくは負極性の電圧が印加されることで静電気を帯びる。また、外周部16は、鉄14などの導電体で形成されており、アース接続されて電気を帯びない状態となる。したがって、半導体ウエハ2上の試料3を採取した時に、試料3が外周部16の表面には吸着せず、先端17に吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を採取するプローブを備えたマイクロマニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や液晶パネルのガラス基板等の製造工程では、微小な異物やゴミがこれらの基板上に付着したことが原因で不良品となってしまうことがある。このような異物やゴミは、一般的にマイクロマニピュレータと呼ばれる装置によって基板上から試料として採取されて分析される。このマイクロマニピュレータは、顕微鏡等で基板表面を観察しつつ、細長いプローブを自在に駆動して試料を採取し、分析を行う。これにより異物やゴミが製造工程に混入した原因等を究明し、その結果を元に製造工程の改善などが行われている。
【0003】
特許文献1では、採取対象である試料に応じて正極性もしくは負極性の電圧を金属キャピラリーに印加して、発生する静電気によって試料を吸着するマイクロマニピュレータが提案されている。また、特許文献2では、基板上に付着した微小な異物の分析をする前段階として、異物の検出、観察、採取を同時に行い、短時間で確実に異物の分析試料を作成することが可能なマイクロサンプリング装置が提案されている。
【特許文献1】特開平5−208387号公報
【特許文献2】特開平11−271036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されたマイクロマニピュレータによると、金属キャピラリー(プローブ)の全体に静電気を帯びるために試料を採取した際に、先端に上手く吸着できないことがあるため、2本のキャピラリー(プローブ)を用いて作業を行わなければならない。また、吸着した試料を静電気の反発力で離して容器などに収容する際、上手く目標点に落とせず試料を紛失する恐れもあるため、作業者に熟練度が必要となる。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、1本のプローブでも容易に試料の採取が行うことができるマイクロマニピュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明のマイクロマニピュレータは、絶縁体で形成した中心部と、前記中心部を覆う導電体で形成した外周部とを有する針状のプローブを自在に駆動できるようにして、電圧を前記中心部に印加する電圧印加手段を備え、前記外周部をアース接続するとともに前記中心部の先端のみを前記外周部から露出させ、前記電圧印加手段で前記先端のみに静電気による吸引力を発生させることで、微小な試料を前記先端に吸着するようにしている。
【0007】
また、本発明のマイクロマニピュレータは、導電体で形成した中心部と、前記中心部を覆う絶縁体で形成した第一の外周部と、前記第一の外周部を覆う導電体で形成した第二の外周部とを有する針状のプローブを自在に駆動できるようにして、電圧を前記中心部に印加する電圧印加手段を備え、前記第二の外周部をアース接続するとともに前記中心部の先端のみを前記第一及び第二の外周部から露出させ、前記電圧印加手段で前記先端のみに静電気による吸引力を発生させることで、微小な試料を前記先端に吸着するようにしてもよい。
【0008】
なお、本発明のマイクロマニピュレータにおいて、前記導電体の表面に帯電防止材を塗布し、さらに前記電圧を選択自在に正極性もしくは負極性となるようにするのもよい。
【発明の効果】
【0009】
プローブの先端のみに吸引力を発生させることより、プローブの先端以外の部位に試料が付着しないため、1本のプローブで容易に試料の採取を行うことができる。
【0010】
また、導電体の表面に帯電防止材が塗布することで、上記効果がより確実になる。
【0011】
さらに、電圧を選択自在に正極性もしくは負極性となるようにすることで、試料の極性に対応することができ、マイクロマニピュレータの利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に本発明に係るマイクロマニピュレータの構成を示して説明する。製造工程において表面に微小なゴミや異物などが付着した半導体ウエハ2は、支持柱5によって保持された載置台4の上に設置され、そのゴミや異物などを試料3として解析するために採取処理が行われる。載置台4は、マイクロマニピュレータ1の操作端末11からの操作によって支持柱5の長さを変化させることで、適当な高さに調節できる。光学顕微鏡6は、CCDカメラを内蔵しており、載置台4の上方に設置され、載置台4に設置された半導体ウエハ2の基板表面の画像を操作端末11に送信し、その映像がモニタ12に表示される。
【0013】
プローブ7は、針状の採取器具であり、電源9から印加される電圧により静電気を帯びて、試料3との間に発生するクーロン力によって試料3を吸着する。プローブ7は、支柱10に支持された駆動部8に連結され、この駆動部8の内部に備えられたモータ(図示せず)によって3次元的に自在に駆動することができる。プローブ7の操作は、操作端末11から可能となっている。
【0014】
電源9は、プローブ7への電圧印加手段であり、駆動部8を指示する支柱10に取り付けられ、図示しない配線によってプローブ7と電気的に接続されている。電源9が印加する電圧は、操作端末11からの設定によって正極性もしくは負極性の何れか選択自在となっている。なお、電源9を取り付ける場所は、本実施形態に限られず、例えば駆動部8の内部でもよい。
【0015】
操作端末11は、マイクロマニピュレータ1の各部位の操作や設定を行うためのもので、パソコンなどで実現される。操作端末11は、画面を表示するモニタ12と、入力を行うマウスやキーボードからなる操作部13と、本体14とから構成されており、マニピュレータ1を操作するためのソフトウェアが予めインストールされている。このソフトウェアによって、載置台4の高さ調節と、電源9の印加電圧の極性設定と、プローブ7の操作が実行でき、また、光学顕微鏡6の画像をモニタ12に表示できる。なお、プローブ7の操作のため、操作部13に専用のジョイスティックなどを備えてもよい。
【0016】
次に、図2にプローブ7の縦方向の断面及び電気的接続を示して説明する。プローブ7は、中心部15と、中心部15を同心円状に覆う外周部16とからなり、中心部15の先端17を外周部16から露出させている。中心部15はガラスなどの絶縁体で形成されており、電源9に接続されて選択的に正極性もしくは負極性の電圧が印加されることで電界が発生し、いわゆる誘電分極を引き起こす。すなわち、正極性の電圧を印加した場合、負の電荷が電源9側に偏るために先端17は正極性の静電気を帯び、一方、負極性の電圧を印加した場合、正の電荷が電源9側に偏るために先端17は負極性の静電気を帯びる。また、外周部16は、鉄などの導電体で形成されており、アース接続されて表面の電荷がなくなるために静電気を帯びない状態となる。したがって、半導体ウエハ2上の試料3を採取した時に、試料3が外周部16の表面には吸着せず、先端17に吸着する。なお、中心部15に印加する電圧の極性は、対象となる試料3の極性に応じて設定する。例えば、試料3が人毛である場合は負極性の電圧を、また、試料3が銅粒である場合は正極性の電圧を中心部15に印加する。また、試料3を先端17から離す場合は、反対極性の電圧を中心部15に印加することで、試料3と中心部15の間にクーロン力(反発力)を発生して離す。なお、中心部15と外周部16の素材は本実施形態に限られず、それぞれ絶縁体と導電体であれば他の素材でもよい。
【0017】
次に、マイクロマニピュレータ1の作用を説明する。まず、試料3の付着した半導体ウエハ2を載置台4の上に設置する。作業者は、操作端末11のモニタ12で光学顕微鏡6から送られてくる半導体ウエハ2の表面の拡大映像を確認しながら採取すべき試料3を探し出す。そして、試料3にフォーカスを合わせるように、操作端末11から載置台4の高さ調整を行った後、操作端末11から試料3の極性に応じた電圧をプローブ7に印加するように電源9の設定を行う。最後に、操作端末11からプローブ7を操作して、試料3を採取し、図示しない容器などへ試料3を収容する。この時、試料3がプローブ7の先端17に吸着しているために容易に目標位置に落下させることができる。
【0018】
このように、プローブ7を先端17のみに試料3を吸着できるような構造とすることで、1本のプローブ7でも容易に試料3の採取を行うことができる。なお、外周部16の表面にアクリル樹脂などで構成される帯電防止剤を塗布することで、先端17への吸着の効果をより確実にすることができる。
【0019】
また、プローブ7について他の実施形態を図2と同様の構成で図3に示して説明する。プローブ7は、中心部18と、中心部18を同心円状に覆う第一外周部19と、さらにその第一外周部19を同心円状に覆う第二外周部20からなり、中心部18の先端21を第一及び第二外周部19、20から露出させている。中心部18及び第二外周部20は、鉄などの導電体で形成されており、このうち第二外周部20はアース接続されて表面の電荷がなくなるために電気を帯びない状態となる。また、第一外周部19はガラスなどの絶縁体で形成されており、電源9に接続されて、選択的に正極性もしくは負極性の電圧が印加されることで、前述した誘電分極により先端21付近に正極性もしくは負極性の静電気を帯びた状態となる。また、中心部18の先端21は、第一外周部19の静電気によって発生した電界によって、いわゆる静電誘導を引き起こし、その表面に第一外周部19とは逆極性の静電気を帯びた状態となる。したがって、半導体ウエハ2上の試料3を採取した時に、試料3が第二外周部20の表面には吸着せず、先端21に吸着する。なお、中心部18と第一及び第二外周部19、20の素材は本実施形態に限られず、それぞれ絶縁体と導電体であれば他の素材でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のマイクロマニピュレータの構成図である。
【図2】プローブの断面及び電気的接続である。
【図3】他の実施形態のプローブの断面及び電気的接続である。
【符号の説明】
【0021】
1 マイクロマニピュレータ
2 半導体ウエハ
3 試料
4 載置台
5 支持柱
6 光学顕微鏡
7 プローブ
8 駆動部
9 電源
10 支柱
11 操作端末
12 モニタ
13 操作部
14 本体
15,18 中心部
16 外周部
17,21 先端
19 第一外周部
20 第二外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体で形成した中心部と、前記中心部を覆う導電体で形成した外周部とを有する針状のプローブを自在に駆動して微小な試料を採取するマイクロマニピュレータにおいて、
電圧を前記中心部に印加する電圧印加手段を備え、
前記外周部をアース接続するとともに前記中心部の先端のみを前記外周部から露出させ、前記電圧印加手段で前記先端のみに静電気による吸引力を発生させることで、前記試料を前記先端に吸着することを特徴とするマイクロマニピュレータ。
【請求項2】
導電体で形成した中心部と、前記中心部を覆う絶縁体で形成した第一の外周部と、前記第一の外周部を覆う導電体で形成した第二の外周部とを有する針状のプローブを自在に駆動して微小な試料を採取するマイクロマニピュレータにおいて、
電圧を前記中心部に印加する電圧印加手段を備え、
前記第二の外周部をアース接続するとともに前記中心部の先端のみを前記第一及び第二の外周部から露出させ、前記電圧印加手段で前記先端のみに静電気による吸引力を発生させることで、前記試料を前記先端に吸着することを特徴とするマイクロマニピュレータ。
【請求項3】
前記導電体の表面に帯電防止材が塗布されていることを特徴とする請求項1ないし2記載のマイクロマニピュレータ。
【請求項4】
前記電圧は選択自在に正極性もしくは負極性となることを特徴とする請求項1ないし3記載のマイクロマニピュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−326158(P2007−326158A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157461(P2006−157461)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】