説明

マイクロリアクタ、解離定数測定装置、解離定数測定方法、及び解離定数測定プログラム

【課題】 反応の初期段階において解離定数の予測を行えるようにすること。
【解決手段】 質量センサの下流側にサンプルの濃度センサを備える。これにより質量センサで質量が検出された際のサンプル液の濃度を知ることができる。濃度と質量を所定の理論式に代入すると解離定数の予測値を得ることができる。濃度センサは、対向する電極で構成されたコンデンサとする。電極間にアナライトが存在すると誘電率が変化するため、誘電率によりアナライト濃度を検出することができる。また、コンデンサは小型化できるため、マイクロリアクタを小型に保つことができる。なお、質量センサは水晶振動子の共振周波数を出力し、測定装置はこの周波数の遷移から質量を算出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリアクタ、解離定数測定装置、解離定数測定方法、及び解離定数測定プログラムに関し、例えば、異常蛋白質と結合する化合物の探索に用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトゲノム(ヒトの遺伝子情報)の解析が終了し、異常な遺伝子構造が生成する異常蛋白質と病気との関係解明が進められつつある。
【0003】
この関係の解明により、新薬の開発手法が、開発者の薬剤や化合物に対する経験と勘を頼りに行う既存手法から、異常蛋白質に直接作用する化合物を探索して新薬とする手法へと変化している。この手法の採用により、20年近く必要としていた新薬開発の期間が、今後5年程度に短縮すると見込まれている。
【0004】
新薬候補の化合物の探索には、異常蛋白質と新薬候補の化合物との物理的な結合力を表す定数である解離定数を指標として用いるのが一般的である。
【0005】
解離定数の測定方法としては、以前は、酵素、発光物質、放射性同位元素などの標識物質を結合させた化合物を用い、この化合物と異常蛋白を結合させた後、標識物質の量を測定することで、結合した化合物を定量し、解離定数の算出を行っていたが、現在では、標識物質を用いずにマイクロリアクタで行う測定が注目されている。
【0006】
マイクロリアクタとは、半導体やガラス、樹脂などで構成されたチップの中に導入路と廃液路を形成し、その間に反応槽を設けたデバイスである。反応槽には、予め異常蛋白質を固定したセンサが設置される。
【0007】
このように構成されたマイクロリアクタにおいて、導入路から化合物を含むサンプル液を流し込むと、サンプル液中の化合物が反応槽に予め設置された異常蛋白質と反応し、反応後の廃液が廃液路から排出される。
【0008】
なお、反応槽で予め固定されている物質はリガンドと呼ばれ、溶液として供給される物質はアナライトと呼ばれるため、以下ではこの用語を用いる。
【0009】
反応槽においては、サンプル液中のアナライトのうちあるものはリガンドと結合してセンサに固定される。一方、センサに固定されていたアナライトのうち、リガンドから離れてサンプル液中に放出されるものもある。
【0010】
アナライトとリガンドの反応が平衡状態に達すると(即ち、センサに固定されるアナライトの量と、センサから離れるアナライトの量が等しくなると)、リガンドに固定されているアナライトの量が一定量となる。このとき計測されるアナライトとリガンドとが結合した化合物、結合していないリガンド、結合していないアナライトの個数(モル濃度)から解離定数が算出され、この解離定数が新薬の探索で必要なデータとなる。
【0011】
このようなマイクロリアクタに関する技術としては、次の「マイクロリアクタ」がある。
【特許文献1】特表2003−526359公報 この技術は、微小な混合室、加熱/分散ユニット、反応室、分離ユニットといった微小反応器をチップに並列に形成し、大量の生成物を生産するものである。
【0012】
また、リガンドとアナライトの結合を計測する技術としては次の「免疫検査方法」がある。
【特許文献2】特許2962031 この技術は、リガンドとアナライトの結合を音響センサを用いて検出するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来は、解離定数を求めるためにはリガンドとアナライトの反応が平衡状態に達する必要があり、平衡状態に達するまでに長時間を要するため、解離定数を得るのに時間がかかるという問題があった。探索に係るリガンドとアナライトの組み合わせは膨大であるため、全ての組み合わせに対して反応が平衡に達するまで実験を継続するのはコスト的に問題があった。
【0014】
また、長時間実験を行うことにより高価なサンプルを多量に消費するという問題もあった。
【0015】
反応の初期の段階で、有望な組み合わせであるか否かをある程度予測できるようにしたいとの要望もあるが、正確な予測は困難であった。ここで、その理由について説明する。
【0016】
図10(a)は、センサに固定されるアナライトの質量の時間変化を表したグラフである。縦軸は、センサに固定されたアナライトの質量を表し、横軸は時間軸を表している。
【0017】
まず、区間101では、緩衝液がマイクロリアクタに供給される。緩衝液にはアナライトが含まれていないため、センサに固定されるアナライトの質量は0である。このように、サンプル液に先立って緩衝液を流すのは、センサにリガンドとして固定されている異常蛋白質を乾燥させないためである。
【0018】
マイクロリアクタに供給する溶液を緩衝液からサンプル液に切り替えると、区間102に示したようにセンサで固定されるアナライトの質量が徐々に増加してくる。そして、リガンドとアナライトの反応が平衡に達すると区間103で示したようにセンサで固定されるアナライトの質量は一定値となる。
【0019】
ここで、例えば、図10(b)の時点105において、それまでの曲線の形からその後のアナライトの質量を曲線107のように予測したとする。しかし、実際に計測を続行すると例えば曲線108が得られ、予測値から大きく外れたものとなる。
【0020】
このように予測が困難となる大きな原因としては、センサに供給する溶液を緩衝液からサンプル液への切り替える際に、センサでサンプルの濃度が徐々に変化するため、センサでのサンプル液の濃度が反応初期段階ではわからないことが挙げられる。
【0021】
図10(c)はセンサでのサンプル濃度の時間変化を示したグラフである。曲線110に示したように、サンプルの濃度は時間と共に徐々に上昇する。これは、供給する溶液を緩衝液からサンプル液に切り替えた後、導入路内において両者が拡散混合したり、あるいは、流路内の流速分布により、重いアナライトが流れの速い流速域に集中したり、あるいは、センサに至るまでの導入路壁にアナライトが吸着するために起こるものである。
【0022】
破線111に示したように、緩衝液からサンプル液にある時点で二者択一的に変化するのであれば、センサでのサンプルの濃度がわかるが、実際はセンサで質量変化が検出されても、その時点に至るまでのサンプルの濃度変化の経過がわからないため、予測が困難となる。
【0023】
そこで、本発明の目的は、反応の初期段階において解離定数の予測を行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、前記目的を達成するために、試料を含む溶液を流す流路と、前記流路上に設けられた獲得物質によって獲得された前記溶液中の試料の質量を表す質量情報を取得する質量取得手段と、前記獲得物質によって試料が獲得された際における、前記溶液中の前記試料の濃度を表す濃度情報を取得する濃度取得手段と、を具備したことを特徴とするマイクロリアクタを提供する(第1の構成)。
【0025】
第1の構成において、前記質量取得手段は、前記獲得物質を固定する共振部材の共振周波数を質量情報として取得するように構成することもできる(第2の構成)。
【0026】
第1の構成において、前記質量取得手段は、前記獲得物質の上を流れる溶液を伝播する弾性波の速度を質量情報として取得するように構成することもできる(第3の構成)。
【0027】
第1の構成、第2の構成、又は第3の構成において、前記濃度取得手段は、試料が獲得された後の溶液の誘電率情報を濃度情報として取得するように構成することもできる(第4の構成)。
【0028】
また、本発明は、試料を含む溶液を流す流路上に設けられた獲得物質によって獲得された前記溶液中の試料の質量を表す質量情報を取得する質量取得手段と、前記獲得物質によって試料が獲得された際における、前記溶液中の前記試料の濃度を表す濃度情報を取得する濃度取得手段と、前記取得した質量情報と濃度情報を用いて、前記試料と前記獲得物質の解離定数を算出する解離定数算出手段と、を具備したことを特徴とする解離定数測定装置を提供する(第5の構成)。
【0029】
また、本発明は、第1の構成から第4の構成までのうちの何れか1の構成のマイクロリアクタを用いて前記試料の前記獲得物質に対する解離定数を求める解離定数算出方法であって、結合物質量算出手段と、未獲得量算出手段と、解離定数算出手段と、を備えたコンピュータにおいて、前記結合物質量算出手段によって、前記質量取得手段で取得された質量情報を用いて、前記試料と前記獲得物質が結合した結合物質の量を算出する結合物質量算出ステップと、前記未獲得量算出手段によって、前記算出した結合物質の量を用いて、前記試料を獲得していない獲得物質の量を算出する未獲得量算出ステップと、前記解離定数算出手段によって、前記濃度取得手段で取得した濃度情報、前記算出した結合物質の量、及び前記算出した獲得物質の量と、を用いて前記試料と前記獲得物質の解離定数を算出する解離定数算出ステップと、から構成されたことを特徴とする解離定数算出方法を提供する(第6の構成)。
【0030】
また、本発明は、第1の構成から第4の構成までのうちの何れか1の構成のマイクロリアクタを用いて前記試料の前記獲得物質に対する解離定数を求めるための解離定数算出プログラムであって、前記質量取得手段で取得された質量情報を用いて、前記試料と前記獲得物質が結合した結合物質の量を算出する結合物質量算出機能と、前記算出した結合物質の量の時間変化を用いて、前記試料を獲得していない獲得物質の量を算出する未獲得量算出機能と、前記濃度取得手段で取得した濃度情報、前記算出した結合物質の量、及び前記算出した獲得物質の量と、を用いて前記試料と前記獲得物質の解離定数を算出する解離定数算出機能と、をコンピュータで実現する解離定数算出プログラムを提供する(第7の構成)。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、リガンドとアナライトの反応の初期段階において解離定数を予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(実施の形態の概要)
アナライトを獲得する質量センサの下流側近傍にサンプルの濃度センサを備える。これにより質量センサで質量が検出された際のサンプル液の濃度を知ることができる。
【0033】
濃度と質量を後述の所定の理論式に代入すると解離定数の予測値を得ることができる。
【0034】
濃度センサは、対向する電極からなるコンデンサで構成する。電極間にアナライトが存在すると誘電率が変化するため、電気容量を計測することによりアナライト濃度を検出することができる。
【0035】
また、コンデンサは後述のすだれ構造の採用などにより小型化できるため、マイクロリアクタを小型に保つことができる。
(実施の形態の詳細)
図1は、本実施の形態のマイクロリアクタの構造を模式的に表した平面図である。
【0036】
マイクロリアクタ1は、例えばガラスなどで構成された筐体部材により構成されており、この筐体部材内に各種の構成要素が形成されている。
【0037】
マイクロリアクタ1の外寸は、長さ(導入路3の方向)が50〜100[mm]程度、幅が10〜20[mm]程度、厚さが数[mm]程度である。
【0038】
マイクロリアクタ1には、導入路3、反応槽4、廃液路5などが形成されている。そして、反応槽4には質量センサ7が設置され、質量センサ7の廃液路5側には質量センサ7と近接して濃度センサ9が設けられている。
【0039】
なお、緩衝液とサンプル液の流れを制御するバルブや、質量センサ7、濃度センサ9を構成する配線などは図示していない。
【0040】
導入路3は、マイクロリアクタ1の外部から反応槽4に溶液を導く流路であり、緩衝液、及びアナライトを含んだサンプル液はこの管を通って反応槽4に導かれる。
【0041】
一方、廃液路5は、反応槽4から排出される溶液をマイクロリアクタ1の外部に導く流路であり、反応槽4で反応を終えたサンプル液はこの管を通って排出される。
【0042】
本実施の形態では、廃液路5の側から溶液を吸引することにより、導入路3から溶液が供給されるように構成した。
【0043】
導入路3の側にポンプを設置して、溶液をマイクロリアクタ1に供給することも可能であるが、この場合、ポンプなどに前の実験で使用したアナライトが残留し、今回の測定に混入してしまうことで、測定精度に影響する場合があり(コンタミネーション)、本実施の形態では、溶液を吸引してマイクロリアクタ1に供給することにより、このような問題を防止した。
【0044】
質量センサ7(質量取得手段)は、表面にリガンドが固定してあり、着脱可能に構成されている。以下に図2を用いて質量センサ7の構造について説明する。
【0045】
図2は反応槽4の断面を表している。質量センサ7は、金薄膜13、リガンド11、水晶振動子14などから構成されている。
【0046】
金薄膜13の上には、図示しない自己組織化膜を介してリガンド11が予め固定されている。また、金薄膜13の下面には水晶振動子14が設けられている。水晶振動子14は、コルピッツ発信回路の一部を成しており、水晶振動子14を厚みすべり振動モードで共振させ、金薄膜13をサンプルの流れと平行な面内で振動させるようになっている。ここで、金薄膜13、リガンド11、水晶振動子14は共振部材を構成している。
【0047】
質量センサ7の上を流れるアナライト16のうち、あるものはリガンド11と結合して(例えば、アナライト16a)質量センサ7に固定される。
【0048】
また、一旦質量センサ7に固定されたアナライトであっても、アナライト16bのように、リガンドとの結合が切れて再びサンプル液中に放出されるものもある。
【0049】
このように、リガンド11は、試料(アナライト16)を含む溶液から試料を獲得する獲得物質を構成している。
【0050】
質量センサ7にアナライトが固定されると質量センサ7の質量が増すため、質量センサ7の共振周波数がfrからfr+Δfへシフトする。このシフト量Δfに次の式(1)を適用することにより質量センサ7に固定されたアナライトの質量Δmを計算することができる。ここで、Aは金薄膜13の面積であり、ρqは水晶の密度であり、μqは水晶の剪断応力である。
【0051】
なお、共振周波数は質量センサ7に固定されたアナライトの質量を表す質量情報を構成している。
【0052】
Δf=2fr2Δm/{A(ρqμq1/2}・・・(1)
次に、濃度センサ9(濃度取得手段)について説明する。
【0053】
濃度センサ9は、図3(a)に示したように、電極21と電極22からなるコンデンサにより構成されている。図3(b)は、電極21、22の断面を示している。
【0054】
濃度センサ9は、質量センサ7と同一平面上に近接して配置されている。濃度変化は流路の高さ方向で異なるので、質量センサ7と同一平面に濃度センサ9を設けることで、解離定数の高精度予測が可能となる。
【0055】
電極21、22は、廃液路5の底面に凸状に形成された電極部が廃液路5内で対向するように配置されて構成されている。
【0056】
濃度センサ9の上をサンプル液が通過すると、対向した電極21、22の間にサンプル液中のアナライトが出入りし、このアナライトの量で電極21、22間の誘電率が変化する。
【0057】
誘電率の変化と電気容量の変化は対応させることができるため、電極21、22間の電気容量によりサンプル液の濃度を計測することができる。ここで、電気容量は誘電率情報、及び濃度情報を構成している。
【0058】
また、本実施の形態では、電極21、電極22の形状を1対のすだれ形状とすることにより、小さい設置領域面積で大きな電気容量の変化を得ることができるようにしてある。
【0059】
即ち、すだれ状に電極を配置することにより、図3(b)に示したように、電極21aと電極22a、電極22aと電極21b、電極21bと電極22bの3つのコンデンサを形成することができる。
【0060】
このように濃度センサ9を小型化できることから、濃度センサ9の設置によるマイクロリアクタ1の大型化を防ぐことができ、これによって、貴重な試料の使用量を抑えることができる。
【0061】
以上のようにマイクロリアクタ1は、質量センサ7の下流側近傍に濃度センサ9を設けたため、質量センサ7でΔmが検出された際のサンプル液の濃度を知ることができる。
【0062】
なお、マイクロリアクタ1では、水晶振動子14の共振周波数の遷移からΔmを求めたが、弾性波の伝播速度によりΔmを測定することも可能である。
【0063】
一般に、共振周波数を用いるタイプの質量センサはQCM(Quartz Crystal Microbalance)と呼ばれ、弾性波を用いるタイプのものはSAW(Surface Acoustic Wave)センサと呼ばれている。
【0064】
図4は、SAWセンサを搭載したマイクロリアクタ1aの構成を模式的に示した図である。
【0065】
質量センサ7の上流側近傍には弾性波発生電極25が設けられている。
【0066】
弾性波発生電極25の構成は、濃度センサ9と同じであり、1対の電極がすだれ状に配置されている。弾性波発生電極25に電圧を印可すると、例えば、図示しない圧電素子が伸縮して弾性波が発生する。
【0067】
濃度センサ9は、弾性波の検出を行うと共に、弾性波の検出の合間においてサンプル液の濃度の検出も行う。
【0068】
このように、SAWセンサを搭載したマイクロリアクタでは、下流側のコンデンサに濃度検出手段と、弾性波検出手段を兼用させることができる。
【0069】
弾性波発生電極25と濃度センサ9の間の距離は予めわかっているため、弾性波発生電極25が弾性波を発生してから濃度センサ9がこの弾性波を検出するまでの時間差により質量センサ7上を通過した弾性波の速度を求めることができる。
【0070】
質量センサ7でアナライトが捕獲されると弾性波の伝達速度が遅くなることが知られており、所定の理論式により、弾性波の速度から質量センサ7で固定されたアナライトの量を計算することができる。
【0071】
なお、SAWセンサを搭載したマイクロリアクタの場合、質量を検出するための領域(質量センサ7)は、対向する弾性波発生電極25と濃度センサ9の幅で十分であり(これら電極の幅以外の領域はアナライトを結合しても検出できないため)、反応漕を円形にする必要はない。また、流路の幅を一定にすることができるため、この領域での圧力損失がなく、サンプル液の送液制御が容易になるという利点もある。
【0072】
次に、マイクロリアクタ1を用いた解離定数の予測方法について説明する。
【0073】
ここでは、まず、図5を用いて予測に用いる理論式について説明する。以下では、リガンドをLで表し、アナライトをAで表す。更にリガンドとアナライトが結合した化合物をLAで表す。なお、[]は、その内部に記された物質のモル濃度を示す。
【0074】
まず、LA、L、Aの間には図5の式(2)で表した関係が成り立つ。
【0075】
即ち、リガンドとアナライトの結合により質量センサ7で固定されているLAのモル数[LA]の微小時間内での変化量は、質量センサ7でアナライトが固定されて生成されるLAのモル数(kp[L][A])から、一旦捕らえられたアナライトが質量センサ7から放たれて減少するモル数(km[LA])を減算した値となる。平衡状態では、右辺の第1項と第2項は等しくなる。
【0076】
なお、質量センサ7で、L+A→LAの反応式により固定されるLAのモル数は、質量センサ7でまだアナライトと結合していないリガンドのモル数[L]とサンプル液中のアナライトの濃度(モル濃度)[A]をかけたものに比例し、その比例定数をkpとしている。
【0077】
また、質量センサ7で形成されたLAのうち、LA→L+Aの反応式により結合しているアナライトがサンプル液中に離脱するもののモル数は、質量センサ7で形成されているLAのモル数に比例し、その比例定数をkmとしている。
【0078】
式(2)をkp、kmについて解くと、それぞれ式(3)、式(4)が得られる。
【0079】
一方、式(2)を差分で表すと、式(5)が得られる。これは、微小時間dTの間隔で、[LA]、[L]、[A]をサンプリングした値を用いて式(2)を書き換えたものである。添え字のiは、何番目のサンプリング値であるかを示している。更に、式(5)を[LA]iについて解くと式(6)が得られる。
【0080】
ところで解離定数Kdはkm/kpで表され、また平衡状態ではd[LA]/dt=0であるので、平衡状態cでの解離定数Kdは、式(7)で表される。
【0081】
また、[L]c=[L]0−[LA]c([L]0はLAが形成される前のリガンドのモル数)となるので式(8)が導かれ、更に式(8)から式(9)が導かれる。
【0082】
次に、データのサンプリングについて説明する。
【0083】
後述する測定装置は、サンプリング周期dTでマイクロリアクタ1から質量センサ7の共振周波数と濃度センサ9の電気容量を取得し、これらを解析して質量センサ7に固定されたアナライトの質量Δmと、その時のサンプル液中のアナライトのモル濃度[A]を算出する。
【0084】
これにより、dT間隔でΔmと[A]を得ることができる。
【0085】
測定装置がサンプリングしたこれらの値をプロットしたのが図6(a)、(b)である。
【0086】
図6(a)は、質量センサ7で検出されたアナライトの質量を表しており、図6(b)は、濃度センサ9で検出されたサンプル液中のアナライトのモル濃度を表している。両グラフの時間軸は対応させてある。
【0087】
図6に示したように、測定装置により、時刻T0にてΔm0と[A]0が得られ、時刻T1にてΔm1と[A]1が得られ、以下同様にして、dTごとにΔmと[A]が検出される。
【0088】
次に、図7のフローチャートを用いて、測定装置が解離定数を予測する手順について説明する。
【0089】
まず、測定装置は初期値の設定を行う(ステップ5)。この初期化では、質量センサ7に予め固定されているリガンドのモル数Leを[L]0、マイクロリアクタ導入口でのアナライトのモル濃度Acを[A]cに設定し、更にアナライトの分子量Ma、リガンドの分子量MLを設定する。これらの設定は、ユーザが測定装置に入力することにより行われる。また、測定装置は自動的に[LA]を0に設定する。
【0090】
次に、測定装置は質量センサ7の出力よりΔm0を測定し、更に濃度センサ9の出力より[A]0を測定し、これらの値を記憶装置に記憶する(ステップ10)。
【0091】
測定装置は、dT間待った後(ステップ15)、Δm1と[A]1を測定し、記憶する(ステップ20)。
【0092】
次に、測定装置は、記憶したこれらの値を用いて[LA]1と[L]1を計算する(ステップ25)。
【0093】
[LA]1(質量センサ7で形成されたLAのモル数)は、質量センサ7で検出された質量の増分(Δm1−Δm0)をアナライトの分子量Maで除すれば得られる。
【0094】
また、[L]1(質量センサ7でアナライトと結合していないリガンドのモル数)は、リガンドの初期値[L]0から生成されたLAのモル数([LA]1−[LA]0)を減算すれば得られる。
【0095】
次に、測定装置は、ここで得られている[LA]1、[L]1、[A]1を用いてkp1の仮定値を計算して記憶する(ステップ30)。計算式はフローチャートに示したとおりである。この値は式(3)においてkm[LA]=0とおいたものである。リガンドとアナライトの反応が始まった初期段階であるので、質量センサ7から放たれるアナライトの数を0としたのである。
【0096】
次に、測定装置は、dT間待った後(ステップ35)、Δm2と[A]2を測定して記憶する(ステップ40)。
【0097】
そして、測定装置は、ステップ25と同様にして、[LA]2と[L]2を計算して記憶する(ステップ45)。
【0098】
次に、測定装置は、km2とkp2の仮定値を計算して記憶する(ステップ50)。計算式はフローチャートに示したとおりである。km2の計算式は、式(5)を用いたものである。kp2は、dT間ではkp1とほとんど差がないと考えられるのでkp1と等しいとした。
【0099】
次に、測定装置は、kp2、km2などを用いて[LA]3の予測値を計算する(ステップ55)。計算式はフローチャートに示したとおりである。この計算式は式(6)から得られたものである。以下、図8のフローチャートに続く。
【0100】
次に、測定装置は、カウンタiを3にセットし、iが所定の整数Nに達するまで以下のループ処理を行う(ステップ60)。なお、以下の処理では、仮定値を用いて解離定数Kdを計算し、その評価を行うが、解離定数Kdが許容誤差の範囲に入った場合は、ループを抜けてこの解離定数Kdを予測値として出力する。また、整数Nは、解離定数Kdの予測値が求まるまでループ処理が継続するように十分に大きい値とする。
【0101】
次に、測定装置は、dT待った後(ステップ65)、Δmiと[A]iを測定して記憶する(ステップ70)。
【0102】
次に、測定装置は、ステップ25と同様にして[LA]iと[L]iを計算して記憶装置に記憶する(ステップ75)。
【0103】
次に、測定装置は[LA]iの予測値の評価を行う(ステップ80)。評価は、ステップ75で計算された[LA]iと、[LA]iの予測値(i=3の場合はステップ55で求めた値、その他の場合はステップ110で求めた値)の差を[LA]iで除した値が予め設定されている誤差許容値未満であるか否かを判定することにより行う。
【0104】
[LA]iの計算値と予測値の差が誤差許容値未満であった場合(ステップ80;Y)、測定装置は、iを1だけデクリメントし(ステップ85)、解離定数Kdと化学平衡時の[LA]cを計算して出力し(ステップ105)、処理を終了する。Kdと[LA]cの計算式はフローチャートに示したとおりである。なお、[LA]cの計算式は式(9)による。
【0105】
なお、式(9)は、リガンドとアナライトの反応が平衡している場合に成り立つ式(7)から導出した関係式であるが、最終的には、[A]cがマイクロリアクタ導入口に流し込むサンプル液濃度Acになると考えたことによる。
【0106】
一方、[LA]iの計算値と予測値の差が誤差許容値未満でなかった場合(ステップ80;N)、測定装置は、kmiとkpiの仮定値を計算し、記憶装置に記憶する。計算式はフローチャートに示したとおりである。これらの計算式は何れも式(5)を用いたものであり、現在記憶している最新の値であるkmi-1、kpi-1を用いて仮定値を更新するようになっている。
【0107】
次に、計測装置は、ステップ90で仮定したkmiとkpiを用いて、ステップ55と同様にして[LA]iの修正予測値NE[LA]iを計算して記憶装置に記憶する(ステップ95)。計算式はフローチャートに示したとおりである。
【0108】
次に、計測装置は、ステップ80と同様にして修正予測値NE[LA]iの評価を行う(ステップ100)。評価式はフローチャートに示したとおりである。
【0109】
[LA]iの計算値と修正予測値NE[LA]iの差が予め設定した誤差許容値未満の場合は(ステップ100;Y)、ステップ105にて解離定数Kdと化学平衡時の[LA]cを算出して出力する(ステップ105)。
【0110】
[LA]iの計算値と修正予測値NE[LA]iの差が予め設定した誤差許容値未満でなかった場合は(ステップ100;N)、ステップ55と同様にして次の予測値E[LA]i+1を計算する(ステップ110)。計算式はフローチャートに示したとおりである。
【0111】
そして、測定装置は、カウンタiを1だけインクリメントし(ステップ115)、ステップ60に戻る。そして、同様の処理を繰り返すことになる。
【0112】
このように、測定装置は、マイクロリアクタ1より獲得物質(リガンド)によって獲得された溶液中の試料(アナライト)の質量を表す質量情報(共振周波数)を取得する質量取得手段と、前記獲得物質によって試料が獲得された際における、前記溶液中の前記試料の濃度を表す濃度情報(電気容量)を取得する濃度取得手段と、前記取得した質量情報と濃度情報を用いて、前記試料と前記獲得物質の解離定数を算出する解離定数算出手段と、を具備している。
【0113】
また、測定装置は、結合物質量算出手段と、未獲得量算出手段と、解離定数算出手段と、を備えたコンピュータで構成することができ、当該測定装置による測定方法は、前記結合物質量算出手段によって、前記質量取得手段で取得された質量情報を用いて、前記試料と前記獲得物質が結合した結合物質の量([LA]c)を算出する結合物質量算出ステップと、前記未獲得量算出手段によって、前記算出した結合物質の量を用いて、前記試料を獲得していない獲得物質の量([L]c=[L]0−[LA]c)を算出する未獲得量算出ステップと、前記解離定数算出手段によって、前記濃度取得手段で取得した濃度情報([A])、前記算出した結合物質の量、及び前記算出した獲得物質の量と、を用いて前記試料と前記獲得物質の解離定数を算出する解離定数算出ステップと、を備えている。
【0114】
以上に説明した手順により、測定装置は、マイクロリアクタ1から出力される質量情報と濃度情報をサンプリングすることにより、リガンドとアナライトが反応を始める初期の段階で、解離定数を予測することができる。そのため、ユーザは、リガンドとアナライトの反応の初期の段階で、そのリガンドとアナライトの組み合わせが新薬候補としてどの程度有望か見当を付けることができる。
【0115】
これによって、例えば、新薬候補となる見込みがある場合は、リガンドとアナライトの結合が飽和するまで実験を継続し、見込みがない場合は次の組み合わせの実験に移行するといった運用が可能となる。
【0116】
図9は、本実施の形態に係る測定装置のハードウェア的な構成の一例を示したブロック図である。
【0117】
測定装置100は、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、ROM(Read Only Memory)53、入力装置54、表示装置55、印刷装置56、電子回路57、記憶装置58、記憶媒体駆動装置59、入出力I/F(インターフェース)60などの各機能部がバスライン50で接続されて構成されている。
【0118】
CPU51は、所定のプログラムに従って、各種の演算処理、情報処理、及び測定装置100を構成する各構成要素の制御を行ったりする中央処理装置である。
【0119】
CPU51は、電子回路57を介してマイクロリアクタ1から出力される共振周波数及び電気容量をサンプリングしたり、サンプリングしたこれらの値を用いて質量センサ7で固定されたアナライトの質量やサンプリング液の濃度を算出するほか、これらの値を用いて解離定数Kdの予測値の計算も行う。
【0120】
ROM53は、測定装置100を動作させるための基本的なプログラムやデータなどを記憶した読み出し専用の記憶装置である。
【0121】
RAM52は、CPU51が動作するためのワーキングエリアを提供する読み書き可能な記憶装置である。RAM52は、CPU51が図7で示した情報処理を行う際には、Δm0、Δm1、・・・など、予測に必要な値を記憶する。
【0122】
入力装置54は、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置を備えており、ユーザが測定装置100を使用するのに必要な情報を入力できるようになっている。図7のステップ5で示した値は入力装置54から入力することができる。
【0123】
表示装置55は、文字情報や画像情報を表示する表示デバイスを備えており、ユーザが測定装置100を使用するのに必要なメニュー画面などが表示されるようになっている。また、予測した解離定数Kdも表示装置55に表示することができる。
【0124】
表示デバイスは、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、その他のディスプレイ装置で構成することができる。
【0125】
電子回路57は、マイクロリアクタ1に電力を供給して駆動すると共に、マイクロリアクタ1から出力される質量センサ7の共振周波数や濃度センサ9の電気容量を検出する。
【0126】
更に、電子回路57は、マイクロリアクタ1の出力データ(アナログデータ)を時間間隔dTにてサンプリングしてデジタルデータに変換し、CPU51に提供する。
【0127】
CPU51は、サンプリングされたデータからΔmと[A]を計算する。これによって時間間隔dTでΔmと[A]が得られる。
【0128】
印刷装置56は、例えば、レーザプリンタやインクジェットプリンタなどの印刷装置であり、実験データを印刷できるようになっている。
【0129】
記憶媒体駆動装置59は、装着された着脱可能な記憶媒体を駆動し、データの読み書きを行う機能部である。
【0130】
読み書き可能な記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、半導体記憶装置、磁気テープ、紙テープがある。
【0131】
また、読み取り専用の記憶媒体としては、例えば、CD−ROMなどの光ディスク類がある。
【0132】
測定装置100は、記憶媒体駆動装置59に装着した記憶媒体からプログラムのインストールなどを行うことができるほか、実験データを記憶媒体に書き込むこともできる。
【0133】
記憶装置58は、例えば、ハードディスクなどで構成された大容量で読み書き可能な記憶装置である。
【0134】
記憶装置58には、プログラム類を格納したプログラム格納部61とデータ類を記憶したデータ格納部62が形成されている。
【0135】
プログラム格納部61には、OS(Operating System)、マイクロリアクタ実験プログラムなどの各種プログラムがCPU51で実行可能に記憶されている。
【0136】
OSは、ファイル入出力の管理や各種機能部を制御するなど、測定装置100を運営する基本的な機能をCPU51に発揮させるためのプログラムである。
【0137】
マイクロリアクタ実験プログラムは、マイクロリアクタ1から出力されるデータを電子回路57から取得して解離定数を予測したりなどするプログラムである。
【0138】
CPU51は、このプログラムを実行することにより図7で示した情報処理を行うことができる。
【0139】
データ格納部62には、マイクロリアクタ1による実験データなどが記憶される。
【0140】
以上に説明したように、本実施の形態のマイクロリアクタは、基板に反応槽部と分析用のサンプル液を供給するサンプル液供給路と、緩衝液を供給する緩衝液供給路と、液体を外部へ排出するための廃液路とが設けられているマイクロリアクタにおいて、圧電基板上に設けられた少なくとも2対のすだれ状電極と、圧電基板上かつすだれ状電極間に設けられた特定物質を捕獲する物質捕獲手段とが反応槽部内に設けられている。そして、少なくとも1対のすだれ状電極間の電気容量を測定する測定手段や、2対のすだれ状電極間の電気容量を測定する測定手段や、2ついのすだれ状電極間で弾性波を発生させる電気的手段を備えることもできる。
【0141】
以上、本実施の形態について説明したが、これによって次のような効果が得られる。
(1)マイクロリアクタ1内に濃度センサ9を備えることができる。
(2)濃度センサ9をすだれ状の電極で構成することにより、小型で検出感度の高い濃度センサを実現することができる。
(3)質量センサ7でアナライトが検出された際のサンプル液の濃度を濃度センサ9で検出することができる。
(4)質量センサ7と濃度センサ9の出力をサンプリングし、これを所定の理論式に代入することにより、反応の初期段階で解離定数を高い精度で予測することができる。
(5)解離定数の予測値を用いて、研究資源を有望な新薬候補に集中することができる。
(6)サンプル液を廃液路5側から吸引してマイクロリアクタ1に供給し、マイクロリアクタ1を使い捨て方式とすることにより、コンタミネーションを防止することができる。
【0142】
なお、本実施の形態では、リガンドを異常蛋白質とし、アナライトを新薬候補の化合物としたが、逆にリガンドを新薬候補とし、アナライトを異常蛋白質としてもよい。
【0143】
また、質量センサ7に固定されたアナライトの量を求める方法は、共振周波数や弾性波の速度を用いたものに限定せず、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本実施の形態のマイクロリアクタの構造を模式的に表した平面図である。
【図2】質量センサの構造について説明するための図である。
【図3】濃度センサの構造について説明するための図である。
【図4】SAWタイプのマイクロリアクタの構成を模式的に示した図である。
【図5】予測に用いる理論式について説明するための図である。
【図6】測定装置がサンプリングした値をプロットしたグラフである。
【図7】測定装置が解離定数を予測する手順について説明するためのフローチャートである。
【図8】フローチャートの続きである。
【図9】本実施の形態に係る測定装置のハードウェア的な構成の一例を示したブロック図である。
【図10】従来例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0145】
1 マイクロリアクタ
3 導入路
4 反応槽
5 廃液路
7 質量センサ
8 濃度センサ
11 リガンド
13 金薄膜
14 水晶振動子
16 アナライト
21 電極
22 電極
25 弾性波発生電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を含む溶液を流す流路と、
前記流路上に設けられた獲得物質によって獲得された前記溶液中の試料の質量を表す質量情報を取得する質量取得手段と、
前記獲得物質によって試料が獲得された際における、前記溶液中の前記試料の濃度を表す濃度情報を取得する濃度取得手段と、
を具備したことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項2】
前記質量取得手段は、前記獲得物質を固定する共振部材の共振周波数を質量情報として取得することを特徴とする請求項1に記載のマイクロリアクタ。
【請求項3】
前記質量取得手段は、前記獲得物質の上を流れる溶液を伝播する弾性波の速度を質量情報として取得することを特徴とする請求項1に記載のマイクロリアクタ。
【請求項4】
前記濃度取得手段は、試料が獲得された後の溶液の誘電率情報を濃度情報として取得することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のマイクロリアクタ。
【請求項5】
試料を含む溶液を流す流路上に設けられた獲得物質によって獲得された前記溶液中の試料の質量を表す質量情報を取得する質量取得手段と、
前記獲得物質によって試料が獲得された際における、前記溶液中の前記試料の濃度を表す濃度情報を取得する濃度取得手段と、
前記取得した質量情報と濃度情報を用いて、前記試料と前記獲得物質の解離定数を算出する解離定数算出手段と、
を具備したことを特徴とする解離定数測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのうちの何れか1の請求項に記載のマイクロリアクタを用いて前記試料の前記獲得物質に対する解離定数を求める解離定数算出方法であって、
結合物質量算出手段と、未獲得量算出手段と、解離定数算出手段と、を備えたコンピュータにおいて、
前記結合物質量算出手段によって、前記質量取得手段で取得された質量情報を用いて、前記試料と前記獲得物質が結合した結合物質の量を算出する結合物質量算出ステップと、
前記未獲得量算出手段によって、前記算出した結合物質の量を用いて、前記試料を獲得していない獲得物質の量を算出する未獲得量算出ステップと、
前記解離定数算出手段によって、前記濃度取得手段で取得した濃度情報、前記算出した結合物質の量、及び前記算出した獲得物質の量と、を用いて前記試料と前記獲得物質の解離定数を算出する解離定数算出ステップと、
から構成されたことを特徴とする解離定数算出方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのうちの何れか1の請求項に記載のマイクロリアクタを用いて前記試料の前記獲得物質に対する解離定数を求めるための解離定数算出プログラムであって、
前記質量取得手段で取得された質量情報を用いて、前記試料と前記獲得物質が結合した結合物質の量を算出する結合物質量算出機能と、
前記算出した結合物質の量の時間変化を用いて、前記試料を獲得していない獲得物質の量を算出する未獲得量算出機能と、
前記濃度取得手段で取得した濃度情報、前記算出した結合物質の量、及び前記算出した獲得物質の量と、を用いて前記試料と前記獲得物質の解離定数を算出する解離定数算出機能と、
をコンピュータで実現する解離定数算出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−214792(P2006−214792A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26030(P2005−26030)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】