説明

マイクロリアクタ

【課題】マイクロ流路の長さがそれほど長くなくて済み、反応が完了するまでに要する時間を短縮できるマイクロリアクタを提供する。
【解決手段】マイクロリアクタ10において、第1導入ポートP1の出口とマイクロ流路R4の入口との間に設けられ第1導入ポートP1から導入した第1被反応流体L1をマイクロ流路R4に導入するための第1スリット状流路R1と、第2導入ポートP2の出口とマイクロ流路R4の入口との間に設けられ第2導入ポートP2から導入した第2被反応流体L2をマイクロ流路R4に導入するための第2スリット状流路R2とを備え、第1スリット状流路R1と第2スリット状流路R2とは、互いに平行でない状態でマイクロ流路R4の入口に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微少な流路を用いて、流体の混合や反応を行うマイクロリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ化学プラントは、マイクロスケールの空間内での混合、化学反応、分離などを利用した生産設備であり、大型タンク等を用いた従来のバッチ方式のプラントと比較して多くの有利点を備える。例えば、複数の流体の混合や化学反応を短時間且つ微量の試料で行えること、装置が小型であるため実験室レベルで生成物の製造技術を確立できればナンバリングアップを行うことで容易に量産用の設備化ができること、爆発などの危険を伴う反応にも適用可能であること、多品種少量生産を必要とする化合物の生成などにも素早く適応できること、需要量に合わせた生産量の調整が容易にできることなどである。このため、化学工業や医薬品工業の分野では、流体の混合または反応を行い材料や製品を製造するための好適な装置として注目され、近年、その研究開発が盛んに行われている。
【0003】
マイクロ化学プラントの構成要素は、材料供給装置、マイクロミキサ、熱交換装置、マイクロリアクタ、分離装置、これらの各装置を接続する配管、及び制御装置などである。このうち、マイクロミキサ及びマイクロリアクタは、それぞれ流路幅が数μm〜1mm程度のオーダーである微少な流路を有し、この流路に導かれた複数種類の流体を互いに接触させることで混合または化学反応を生起するものである。マイクロミキサとマイクロリアクタとは、基本的には共通な構成とされ、一般にその用途が混合である場合はマイクロミキサと呼び、化学反応である場合はマイクロリアクタと呼ぶが、本明細書では、マイクロミキサもマイクロリアクタの一部として扱う。
【0004】
マイクロリアクタの一例として、特許文献1には、1つの反応流路に連通する複数の供給路を同心軸の多重筒構造にして、複数の流体をそれぞれの供給路を通して反応流路に合流させることにより、これらの流体を同心軸で積層させて該同心軸に直交する断面が環状の層流として流通させつつ、流体同士をその接触界面の法線方向へ拡散して反応を行わせるものが記載されている。
【特許文献1】特開2005−46651
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のマイクロリアクタでは、複数種類の流体をそれぞれ断面が同心円状となるように形成された複数の微少流路を通して、薄い層流として微少空間内に供給して反応させる。すなわち、層流流れで分子の拡散混合を行っているため、マイクロ流路の長さを長くする必要があると同時に、反応が完了するまでに要する時間が長いという問題があった。本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、マイクロ流路の長さがそれほど長くなくて済み、反応が完了するまでに要する時間を短縮できるマイクロリアクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1のマイクロリアクタ10は、少なくとも2種類の第1被反応流体L1及び第2被反応流体L2をそれぞれ少なくとも2つの第1導入ポートP1及び第2導入ポートP2からマイクロ流路R4に導入し、このマイクロ流路R4内で反応を進行させ、反応済み流体L4を導出ポートQ4から排出するように構成したマイクロリアクタ10において、第1導入ポートP1の出口とマイクロ流路R4の入口との間に設けられ第1導入ポートP1から導入した第1被反応流体L1をマイクロ流路R4に導入するための第1スリット状流路R1と、第2導入ポートP2の出口とマイクロ流路R4の入口との間に設けられ第2導入ポートP2から導入した第2被反応流体L2をマイクロ流路R4に導入するための第2スリット状流路R2とを備え、第1スリット状流路R1と第2スリット状流路R2とは、互いに平行でない状態でマイクロ流路R4の入口に設けられたことを特徴とする。
【0007】
請求項1のマイクロリアクタ10によると、第1被反応流体L1と第2被反応流体L2とは、互いに平行でない流れで合流して衝突し合う形となる。従って、乱流が発生し、例えば両被反応流体L1,L2が平行に合流する場合に生じ得る「層流現象」が極めて起こり難い。このため、瞬時に反応を生起することが可能となり、短い反応速度で反応を進行させることができる。なお、本発明で言う“第1スリット状流路R1と第2スリット状流路R2とが互いに平行でない”とは、両流路がそれぞれ第1被反応流体L1と第2被反応流体L2とを同一方向に流して合流させないことを意味する。従って、第1スリット状流路R1と第2スリット状流路R2とが対向している場合、つまり両流路のなす角度θの大きさが180度の場合も本発明の範囲内である。
【0008】
請求項2のマイクロリアクタでは、マイクロ流路R4は、第1スリット状流路R1と第2スリット状流路R2とのなす角θの対頂角θ’の間に設けられる

【0009】
請求項2のマイクロリアクタによると、マイクロ流路R4は、図12のように、対頂角θ’の間に設けられているため、合流した第1被反応流体L1と第2被反応流体L2とが、マイクロ流路R4内で流路壁面に直接衝突することが防止でき、少ない摩擦抵抗で流れることができる。
【0010】
請求項3のマイクロリアクタでは、第1被反応流体L1と第2被反応流体L2との反応に関与しない不関与流体L3を導入するための第3導入ポートP3と、第3導入ポートP3の出口とマイクロ流路R4の入口との間に設けられ第3導入ポートP3から導入した不関与流体L3をマイクロ流路R4に導入するための第3スリット状流路R3とを備える。
【0011】
請求項3のマイクロリアクタによると、第3スリット状流路R3は、不関与流体L3をマイクロ流路R4に導入するため、合流して反応を生起した第1被反応流体L1と第2被反応流体L2とが、合流部Dに滞留することが防止され、併せてこのとき生じた析出物の滞留も防止される。
【0012】
請求項4のマイクロリアクタは、第3スリット状流路R3は、第1スリット状流路R1と第2スリット状流路R2とのなす角θの間においてマイクロ流路R4の延長となるように設けられる。
【0013】
請求項4のマイクロリアクタによると、第3スリット状流路R3は、図12のように、角θの間においてマイクロ流路R4の延長となるように設けられるため、第1被反応流体L1と第2被反応流体L2との衝突により反応を生起した流体を、その延長上のマイクロ流路R4に向けて押し進めるように作用する。これにより、請求項3のマイクロリアクタによる作用効果をより一層顕著なものとすることができる。
【0014】
請求項5のマイクロリアクタでは、第1スリット状流路R1はスリット状の縦長円環形状とされ、第2スリット状流路R2はスリット状の扁平円環形状とされ、第3スリット状流路R3はスリット状の略逆円錐台形状とされ、マイクロ流路R4はスリット状の略逆円錐形状とされ、これら第1スリット状流路R1、第2スリット状流路R2、第3スリット状流路R3及びマイクロ流路R4は共通の中心軸Jを有する。
【0015】
請求項5のマイクロリアクタによると、各流路R1〜R4は、中心軸Jまわりの周方向への連続体をなし端面がないため、平面的に流路を形成した場合に比べて、澱みや流速の差が生じ難く且つ大量の液を処理することが可能となる。
【0016】
請求項6のマイクロリアクタでは、その入口から出口に至るまで、中心軸Jに直交する任意の平面で切断したときの断面積が略一定である
【0017】
請求項6のマイクロリアクタによると、単位時間あたりにマイクロ流路R4内を移動する流量及び通過速度が一定となり、圧損がなく安定した反応を進行させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマイクロリアクタによると、マイクロ流路の長さがそれほど長くなくて済み、反応が完了するまでに要する時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明に係るマイクロリアクタの正面一部断面図、図2は第1ブロックの正面一部断面図、図3は第2ブロックの正面一部断面図、図4は第3ブロックの正面一部断面図、図5は第4ブロックの正面一部断面図、図6は第5ブロックの正面一部断面図、図7は第6ブロックの正面一部断面図、図8は図1のA−A線矢視図、図9は図1のB−B線矢視図、図10は図1のC−C線矢視図、図11は本発明に係るマイクロリアクタの内部に形成される各流路を示す一部断面斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本発明に係るマイクロリアクタ10は、第1ブロック1、第2ブロック2、第3ブロック3、第4ブロック4、第5ブロック5、第6ブロック6、オーリング7a,7b,7c,7d,7e,7f及び六角ボルト8a,8bから構成される。第1ブロック1から第6ブロック6は、例えばステンレス鋼やアルミニウム合金等の金属またはプラスチック等の合成樹脂を材質として構成される。この材質は、被反応液及び反応済液に応じて適宜選択され、それらの液により浸食または腐食されないものとされる。
【0021】
第1ブロック1は、中空薄円盤11と有底筒体12と長尺管13とが同心一体的に結合した形状とされる。中空薄円盤11は、その上下各面における周方向の等間隔6箇所に中心軸J方向に貫通するボルト穴11hを備える。中空薄円盤11の下面には、オーリング7aを嵌装するための円環溝11aが形成される。有底筒体12の有底部には、中心軸J方向に貫通する雌ねじ穴である温度調整液入口Q5を備え、側面には、径方向に貫通する雌ねじ穴である温度調整液出口Q6を備える。長尺管13の中空部は、温度調整液入口Q5に連通している。
【0022】
第2ブロック2は、中空薄円板21と先窄筒体22とが同心一体的に結合した形状とされる。中空薄円盤21は、その上下各面における周方向の等間隔6箇所に中心軸J方向に貫通するボルト穴21hを備える。先窄筒体22は、筒体部23と逆円錐体部24とからなり、第1ブロック1における長尺管13を十分なスペースS1を確保した状態で挿設可能な中空部を備える。このスペースS1は温度調整液の循環室となる。筒体部23は、長手方向両端付近がそれぞれ径大部231,232とされ、これら2つの径大部231,232間は径小部233とされる。
【0023】
第3ブロック3は、中空厚円盤31と略逆円錐台体32とが同心一体的に結合した形状とされる。中空厚円盤31は、その上下各面における周方向の等間隔6箇所に中心軸J方向に貫通するボルト穴31hを備える。中空厚円盤31の上面には、オーリング7cを嵌装するための円環溝31aが形成される。また、中空厚円盤31は、その外周面から内周面に貫通する末細穴である第1液入口Q1を備える。略逆円錐台体32は、筒体部33と逆円錐体部34とからなり、第2ブロック2における先窄筒体22の筒体部23を挿設可能な中空部を備える。第3ブロック3の内周面中央部と第2ブロック2における筒体部23の径小部233とにより、第1液入口Q1に連通した縦長円環状の密閉空間である第1導入ポートP1が形成される。また、第3ブロック3の内周面下部と第2ブロック2における筒体部23の径大部232とにより、第1導入ポートP1に連通した縦長円環スリット状の密閉空間である第1スリット状流路R1が形成される。
【0024】
第4ブロック4は、中空厚円盤41と中空薄円盤42とが同心一体的に結合した形状とされる。中空厚円盤41は、その上下各面における周方向の等間隔6箇所に中心軸J方向に貫通したボルト穴41hを備える。中空厚円盤41の上面には、オーリング7dを嵌装するための円環溝41aが形成される。
【0025】
第4ブロック4は、第3ブロック3における略逆円錐台体32を挿設可能な中空部を備える。第4ブロック4の内周面は、筒状部43と座繰り状部44とテーパ部45とを備える。中空厚円盤41は、その外周面から内周面の座繰り状部44に貫通する末細穴である第3液入口Q3を備える。第4ブロック4の内周面における座繰り状部44と、第3ブロック3における逆円錐台部34のテーパ面とにより、第3液入口Q3に連通した円環状の密閉空間である第3導入ポートP3が形成される。また、第4ブロック4の内周面におけるテーパ部45と、第3ブロック3における逆円錐台部34のテーパ面とにより、第3導入ポートP3に連通した逆円錐台スリット状の密閉空間である第3スリット状流路R3が形成される。
【0026】
第5ブロック5は、中空厚円盤の形状とされる。第5ブロック5は、第4ブロック4における薄型円盤42を挿設可能な円環状溝51と、第2ブロック2における逆円錐状筒体22を挿設可能な逆円錐状穴52とを備える。第5ブロック5は、上面における周方向の等間隔6箇所に中心軸J方向に穿設した有底の雌ネジ穴51hを備える。第5ブロック5における上面の円環状溝51の中には、オーリング7dを嵌装するための円環溝51aが形成される。また、円環状溝51aの内側には、これと同心の円環状溝51Mが形成される。第5ブロック5は、その外周面から円環状溝51Mに連通する末細穴である第2液入口Q2を備える。
【0027】
第5ブロック5の円環状溝51Mと、第4ブロック4における中空薄円盤42とにより、第2液入口Q2に連通した扁平円環状の密閉空間である第2導入ポートP2が形成される。また、第5ブロック5における円環状溝51と、第4ブロック4における中空薄円盤42とにより、第2導入ポートP2に連通した扁平円環スリット状の密閉空間である第2スリット状流路R2が形成される。また、第5ブロック5の逆円錐状穴52と、第2ブロック2における逆円錐状筒体22の逆円錐部24とにより、逆円錐環状の密閉空間であるマイクロ流路R4が形成される。このマイクロ流路R4は、その入口から出口に至るまで、流路断面積が略一定である。すなわち中心軸Jに直交する任意の平面でマイクロ流路R4を切断したときの断面積が略一定である。
【0028】
更に、第5ブロック5は、下面から中心軸J方向に穿設され第2温度調整液が循環する有底円環状穴S2を備える。第5ブロック5の側面には、温度調整液入口Q7と温度調整液出口Q8とを備える。温度調整液入口Q7は、第5ブロック5の外周面の下方位置から有底円環状穴S2に連通するように貫通する雌ねじ穴である。温度調整液出口Q8は、中心軸Jを挟んで温度調整液入口Q7と対象な外周面の上方位置から有底円環状穴S2に連通するように貫通する雌ねじ穴である。また、第5ブロック5は、下面における周方向の等間隔6箇所に中心軸J方向に穿設した有底の雌ネジ穴51jを備える。
【0029】
第6ブロック6は、薄型円盤61と有底筒体62とが一体化した形状とされる。薄型円盤61は、中心穴を備えると共に、その上下各面における周方向の等間隔6箇所に中心軸J方向に貫通するボルト穴61hを備える。薄型円盤61の上面には、大小2つのオーリング7e,7fをそれぞれ嵌装するための円環溝61a,61bが形成される。有底筒体62の有底部は中心軸J方向に貫通し反応済液の導出ポートQ4となる雌ねじ穴を備える。
【0030】
マイクロリアクタ10は、以上のような第1ブロック1から第6ブロック6の各ブロック間にそれぞれオーリング7aから7fを介在させた状態で上からこの順に各ブロックが同心となるように重ね合わせ、第1ブロック1から第4ブロック4のそれそれのボルト穴11h,21h,31h,41hにボルト8aを挿通させた後、第5ブロック5の雌ねじ穴51hに締結すると共に、第6ブロック6のボルト穴61hにボルト8bを挿通させた後、第5ブロック5の雌ねじ穴51bに締結することで、図1に示すような一体ものとして組み上げられる。
【0031】
その内部には、図11に示すように、第1から第3導入ポートP1〜P3、第1から第3スリット状流路R1〜R3、及びマイクロ流路R4が形成される。第1導入ポートP1は縦長円環形状とされ、第2導入ポートP2は扁平円環形状とされ、第3導入ポートP3は略逆円錐台形状とされる。また、第1スリット状流路R1はスリット状の縦長円環形状とされ、第2スリット状流路R2はスリット状の扁平円環形状とされ、第3スリット状流路R3はスリット状の略逆円錐台形状とされ、マイクロ流路R4はスリット状の略逆円錐形状とされる。これら第1スリット状流路R1、第2スリット状流路R2、第3スリット状流路R3及びマイクロ流路R4は共通の中心軸Jを有する。
【0032】
マイクロリアクタ10は、図示しない各種ポンプに配管により次のように接続して用いられる。すなわち、温度調整液入口Q5は第1温度調整液ポンプの供給側に接続され、温度調整液出口Q6は第1温度調整液ポンプのリターン側に接続される。また、温度調整液入口Q7は第2温度調整液ポンプの供給側に接続され、温度調整液出口Q8は第2温度調整液ポンプのリターン側に接続される。第1温度調整液ポンプ及び第2温度調整液ポンプは、それぞれ第1温度調整液及び第2温度調整液を所定の圧力で圧送可能なポンプである。
【0033】
また、第1液入口Q1は第1液ポンプの供給側に接続され、第2液入口Q2は第2液ポンプの供給側に接続され、第3液入口Q3は第3液ポンプの供給側に接続される。第1液ポンプ、第2液ポンプ及び第3液ポンプは、それぞれ第1液L1、第2液L2及び第3液L3を所定の圧力で圧送可能なポンプである。ここで、第1液L1と第2液L2とが被反応液であり、第3液L2は第1液L1と第2液L2とのどちらとも反応を起こさない液が選択される。
【0034】
次に、図12も参照して、本発明に係るマイクロリアクタ10の機能動作について説明する。図12は本発明に係るマイクロリアクタによる機能動作を説明するための図である。第1液入口Q1から導入された第1液L1は、第1導入ポートP1を通った後、第1スリット状流路R1に導入される。第1スリット状流路R1は開口幅(外周面と内周面との距離)0.02〜0.1mm程度の幅狭流路とされており、第1導入ポートP1から導入された第1液L1は、第1スリット状流路R1において高速流となって合流部Dに流れ込む。
【0035】
同様に、第2液入口Q2から導入された第2液L2は、第2導入ポートP2を通った後、第2スリット状流路R2に導入される。第2スリット状流路R2は開口幅0.02〜0.1mm程度の幅狭流路とされており、第2導入ポートP2から導入された第2液L2は、第2スリット状流路R2において高速流となって合流部Dに流れ込む。
【0036】
第1スリット状流路R1と第2スリット状流路R2とのなす角θの大きさは90度であるため、図12に示すように、第1液L1と第2液L2とは、互いに真横から合流して衝突し合う形となる。従って、乱流が発生し、例えば両液L1,L2が平行に合流する場合に生じ得る「層流現象」が極めて起こり難い。このため、瞬時に反応を生起することが可能となり、短い反応速度で反応を進行させることができる。なお、第1スリット状流路R1と第2スリット状流路R2とのなす角θの大きさを90度よりも大きく且つ180以下とした場合も同様な効果を期待できる。
【0037】
一方、第3液入口Q3から導入された第3液L3は、第3導入ポートP3を通った後、第3スリット状流路R3に導入される。第3スリット状流路R3は開口幅0.02〜0.1mm程度の幅狭流路とされており、第3導入ポートP3から導入された第3液L3は、第3スリット状流路R3において高速流となって合流部Dに流れ込む。
【0038】
第3スリット状流路R3は、第3液L3を高速流としてマイクロ流路R4に導入するため、合流して反応を生起した第1液L1と第2液L2とが、合流部Dに滞留することが防止され、併せてこのとき生じた析出物の滞留も防止される。また、第3スリット状流路R3は、第1スリット状流路R1と第2スリット状流路R2とのなす角θの間においてマイクロ流路R4の延長となるように設けられる。このため、第3スリット状流路R3を出た第3液L3は、第1液L1と第2液L2との衝突により反応を生起した液を、その延長上のマイクロ流路R4に向けて押し進めるように作用する。これにより、上記作用効果をより一層顕著なものとすることができる。なお、中心軸Jを基準とした第3スリット状流路R3の傾き角φの大きさは、好ましくは10度以上80度以下であり、更に好ましくは20度以上60度以下である。
【0039】
第1液L1と第2液L2との反応を生起した液は、マイクロ流路R4内で反応を進行させ、導出ポートQ4に達するまでに反応を完了する。ここでマイクロ流路R4は、その入口から出口に至るまで、流路断面積が略一定である。すなわち中心軸Jに直交する任意の平面でマイクロ流路R4を切断したときの断面積が略一定である。このため、単位時間あたりにマイクロ流路R4内を移動する流量及び通過速度が一定となり、圧損がなく安定した反応を進行させることができる。なお、マイクロ流路R4の開口幅は、最狭部(最上部)で0.06mm前後、最広部(最下部)で0.7mm前後である。
【0040】
第1導入ポートP1、第1スリット状流路R1、第2導入ポートP2、第2スリット状流路R2、第3導入ポートP3、第3スリット状流路R3及びマイクロ流路R4は共通の中心軸Jを有し、中心軸Jまわりの周方向への連続体をなし端面がないため、平面的に流路を形成した場合に比べて、澱みや流速の差が生じ難く且つ大量の液を処理することが可能となる。
【0041】
また、第1温度調整液ポンプにより供給された第1温度調整液は、スペースS1を循環し各流路を通過中の液温を適当な温度に保つことができる。同様に、第2温度調整液ポンプにより供給された第2温度調整液は、有底円環状穴S2を循環し各流路を通過中の液温を適当な温度に保つことができる。以上のようにして、マイクロ流路R4内で反応を完了した反応済液は、導出ポートQ4から配管を通じて取り出され次の工程へと進む。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明を行ったが、上に開示した実施形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るマイクロリアクタの正面一部断面図である。
【図2】第1ブロックの正面一部断面図である。
【図3】第2ブロックの正面一部断面図である。
【図4】第3ブロックの正面一部断面図である。
【図5】第4ブロックの正面一部断面図である。
【図6】第5ブロックの正面一部断面図である。
【図7】第6ブロックの正面一部断面図である。
【図8】図1のA−A線矢視図である。
【図9】図1のB−B線矢視図である。
【図10】図1のC−C線矢視図である。
【図11】本発明に係るマイクロリアクタの内部に形成される各流路を示す一部断面斜視図である。
【図12】本発明に係るマイクロリアクタによる機能動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0044】
10 マイクロリアクタ
J 中心軸
L1 第1液(第1被反応流体)
L2 第2液(第2被反応流体)
L3 第3液(不関与流体)
L4 反応済み液(反応済み流体)
P1 第1導入ポート
P2 第2導入ポート
P3 第3導入ポート
Q4 導出ポート
R1 第1スリット状流路
R2 第2スリット状流路
R3 第2スリット状流路
R4 マイクロ流路
θ 角
θ’ 対頂角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の第1被反応流体(L1)及び第2被反応流体(L2)をそれぞれ少なくとも2つの第1導入ポート(P1)及び第2導入ポート(P2)からマイクロ流路(R4)に導入し、このマイクロ流路(R4)内で反応を進行させ、反応済み流体(L4)を導出ポート(Q4)から排出するように構成したマイクロリアクタ(10)において、
第1導入ポート(P1)の出口とマイクロ流路(R4)の入口との間に設けられ第1導入ポート(P1)から導入した第1被反応流体(L1)をマイクロ流路(R4)に導入するための第1スリット状流路(R1)と、
第2導入ポート(P2)の出口とマイクロ流路(R4)の入口との間に設けられ第2導入ポート(P2)から導入した第2被反応流体(L2)をマイクロ流路(R4)に導入するための第2スリット状流路(R2)とを備え、
第1スリット状流路(R1)と第2スリット状流路(R2)とは、互いに平行でない状態でマイクロ流路(R4)の入口に設けられたことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項2】
マイクロ流路(R4)は、第1スリット状流路(R1)と第2スリット状流路(R2)とのなす角(θ)の対頂角(θ’)の間に設けられた請求項1に記載のマイクロリアクタ。
【請求項3】
第1被反応流体(L1)と第2被反応流体(L2)との反応に関与しない不関与流体(L3)を導入するための第3導入ポート(P3)と、第3導入ポート(P3)の出口とマイクロ流路(R4)の入口との間に設けられ第3導入ポート(P3)から導入した不関与流体(L3)をマイクロ流路(R4)に導入するための第3スリット状流路(R3)とを備える請求項1または請求項2に記載のマイクロリアクタ。
【請求項4】
第3スリット状流路(R3)は、第1スリット状流路(R1)と第2スリット状流路(R2)とのなす角(θ)の間においてマイクロ流路(R4)の延長となるように設けられた請求項3に記載のマイクロリアクタ。
【請求項5】
第1スリット状流路(R1)はスリット状の縦長円環形状とされ、第2スリット状流路(R2)はスリット状の扁平円環形状とされ、第3スリット状流路(R3)はスリット状の略逆円錐台形状とされ、マイクロ流路(R4)はスリット状の略逆円錐形状とされ、これら第1スリット状流路(R1)、第2スリット状流路(R2)、第3スリット状流路(R3)及びマイクロ流路(R4)は共通の中心軸(J)を有する請求項3または請求項4に記載のマイクロリアクタ。
【請求項6】
マイクロ流路(R4)は、その入口から出口に至るまで、中心軸(J)に直交する任意の平面で切断したときの断面積が略一定である請求項5に記載のマイクロリアクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−319813(P2007−319813A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154299(P2006−154299)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】