説明

マイクロ波治療のための照射アプリケータ

アンテナを取り巻く誘電体(2)を有する照射アプリケータ。誘電体(2)は3つの誘電率の異なるセクション(3,4,5)で構成される。これにより、周辺物質にアプリケータを広帯域でマッチングさせることができる。ワッシャー(10)、(11)はアンテナにマウントされ、リフレクタとして動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照射アプリケータ(radiation applicator)に関する。特にマイクロ波治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波治療装置として公知の照射アプリケータはPCT/GB00/00682に開示されている。同装置はマイクロ波エネルギーを同軸ケーブル(coaxial conductor)を介し導体の末端のチップ領域(tip region:先端領域)に供給するジェネレータを備えている。同軸ケーブルの内側、外側導体の間に誘導体パッキングが設けられている。照射を行うアンテナを形成するために、チップにおける内側導体は外側導体を越えて突き出している。同アンテナは誘電体の円筒形胴体に、軸方向に埋め込まれている。誘電体の先端部のチップは生物学的物質(biological matter)に侵入しやすいように尖っている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1つのアスペクトによれば、照射アプリケータは1つの端部における電力入力部(power input)と、その端部でアプリケータの軸方向に延びるアンテナと、同アンテナを取り巻き、周辺の物質(surrounding material)にマイクロ波を照射する誘電体を有するものであって、同誘電体は異なる誘電率を持つ複数のセクションから構成されることを特徴とする。前記複数のセクションはアンテナに沿って互いに軸方向に配置される。
【0004】
誘電体の各セクションの誘電率は前記アプリケータが特定周波数又は最適動作の周波数レンジで動作するように選択される。この結果、所定の誘電率を持つ周辺部を構成する物質(material)にエネルギーを送ることができる。例えば、前記アプリケータから周辺物質へのエネルギー伝播(transfer)は物質の物理的性質を変える。いくつかの実施例では、誘電体のセクションごとの性質(sectioned nature)によりアプリケータが周辺物質に広帯域で適合するのを可能にする。これにより、同物質へ効率的にエネルギーを連続伝播することが可能になる。もっとも物質の性質は変化するけれども。
【0005】
誘電体は3つの連続したセクションから構成されることが好ましい。第1セクションは電力ユニットに隣接して、第2セクションは照射の主要エミッター部として構成され、第3セクションはチップ部である。第2セクションの誘電率は第1セクションの誘電率より大きい。第2セクションの誘電率が大きいので、誘電体の全長は誘電体を第1セクションの物質で全体を構成する場合より短く出来る。前記長さは誘電体における照射波長に関係する。第3セクション(チップセクション)は、他の2セクションからの誘電値を持つ物質から構成され、周囲の物質に適合するように選択される。異なる誘電率をもつ複数のセクションを使用すると、誘電インターフェースからの反射を電力の入力部におけるマッチング又はチューニングのために使うことができ、最適電力伝播を行うようにできる。
【0006】
誘電体のチップセクションを電力入力部から最も離れて配置することが好ましい。前記チップは周囲物質に侵入できるように尖っている。チップは誘電体から構成され導体ではないから、局部的な表面過熱を避けることができる。チップの誘電率は第2セクションの誘電率より小さいことが好ましい。更には、第1セクションと第2セクションの誘電率の中間であることが好ましい。
【0007】
複数セクションを一体として構成してもよいし、別々の部品(separate components)として構成することもできる。後者の場合、端部端部を相互に合わせアセンブルする。
【0008】
本発明は更に、誘電体のセクション間のインターフェースにおいて照射リフレクタを設け、照射伝播(transmission of radiation)を変調し、更にアプリケータをチューンする点に特徴がある。照射リフレクタは周囲の物質に照射するセクションの両側に設けられることが好ましい。電力入力部から遠い側のリフレクタは広い面積を有するので、電力入力部に近いリフレクタより大きいエネルギーを反射でき、アプリケータのチップへ送る照射伝播を減らすことができる。従って、誘電体からの照射エミッションは1つのセクションに制限することができる。
従って、誘電体からの照射は1つのセクションではより局所的になる。第2セクションからより大きいエネンルギーを照射するように設計されることが好ましい。
【0009】
本発明の第2のアスペクトによれば、照射アプリケータは1つの端部に電力入力部と、周辺物質を照射するために端部で軸方向に延びる細長いアンテナとを有し、照射の送信を変調するために1つ又は複数の照射リフレクタが誘電体内でアンテナに沿って軸方向に配置される。
【0010】
2つのリフレクタは誘電体の中間セクションにおいて離間して配置されることが好ましい。このセクションが周辺物質に照射を行うように設計される。電力入力部から遠い側のリフレクタが電力入力部に近い側のリフレクタより広い面積をもつので、アプリケータのチップへの照射伝播を低減できる。
【0011】
本発明の第1アスペクト又は第2アスペクトに関連して使用されるリフレクタは誘電体の個々に対応するセクションの間のインターフェースに配置され、アプリケータに対し構造上のサポートを与える。例えば、リフレクタは誘電体のセクション及びアンテナに溶接(soldered)又は接合される(bonded)。
図面を参照して、実施例を使って本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[本発明の実施例]
図1で示される照射アプリケータは同軸ケーブル1を有する。同ケーブルは剛体でもフレキシブルでもよく、一端は図示しないマイクロ波電源に接続され、他端は照射チップ2で終端している。同チップ2は3つのセクション3、4、5を持つ円筒形誘電体から構成されている。同セクションは軸上に並んで、セクションの間のインターフェース部で相互に接触し連続体を形成している。
1つの外部セクション3は同軸ケーブル1の端部に接続されている。セクション3の一端部の一部分6の直径が削られ、同軸ケーブルの外側導体7に短い長さ挿入され確実に接続されている。同軸ケーブルの中心部導体8は本体2の軸穴9を通して3つのセクションを介して延長し、外側の第3セクション5で終端している。組み立てにおいて、メタルワッシャー10はセクション4のインターフェース部でセクション3に溶接され、中心部導体8に溶接される。第2メタルワッシャー11は第3セクション5とのインターフェース部で中央セクション4に溶接され、中央部導体8に溶接される。ワッシャー10と11は中心部導体8を介して誘電体の2つのセクション3,4を同軸ケーブル1の端部に固定する。第3セクション5は第2ワッシャーと中心部導体8に接合される(bonded)。
【0013】
アプリケータの第3セクション5は治療する物質に挿入しやすくするために先の尖った形態を有している。これは、例えば、肝臓ガンの治療のように使用目的のために必要な程度先を尖らせて形成される。
【0014】
動作において、中央部導体8のその部分(that portion)は外側導体7に比して長く延長して、照射のためのアンテナとなる。誘電体内の照射の波長は供給電力周波数と各種部品の誘電率に基づいて決められる。従って、照射波長は3つのセクション3,4,5毎に異なる。これら3つのセクションの誘電率を適当に選ぶことによりアプリケータをチューンして最適に動作させることができる。同誘電率は、セクション相互及びアプリケータが使用される周囲物質に関係するものである。
【0015】
アプリケータのチューニングに影響する別のファクタはメタルガスケット10,11である。これらは照射リフレクターとして機能する。両ガスケットは入力に対し照射を反射する。入力部において適切のマッチングを行えば、チップ2へのエネルギー伝播を最大にできる。ガスケット11の表面面積をガスケット10の表面面積より大きくして、第3セクション5へ伝播するエネルギー量を減らしている。
【0016】
チューニングに影響を与えるファクタは、外側導体7を超えて延びる中央部導体8の長さ、各誘電体セクション3,4,5の直径と軸長さ、ワッシャー10,11の厚みと直径である。
【0017】
考慮しなければならないことは、誘電物質と各種部品の大きさの選択により、照射アプリケータの設計で大きな自由度が与えられ、広範囲の応用と性能要件に適合が可能になることである。
【0018】
例えば、医療用照射アプリケータは図1に示される大きさを有する。以下更に詳述する。:ワッシャー10の外径は、1.9mmで、ワッシャー11の直径は2.7mmで、中心部導体8は外側導体より8.5mm長く突出している。;誘電セクション3,4,5はそれぞれ、誘電率10のアルミナ、誘電率100の酸化チタン、誘電率47のCa−Ti−Nd−Alである。この例のアプリケータは特に2.45GHzの周波数、電力50wでの動作に適合している。
【0019】
上記例のアプリケータの性能を図2に示す。これは、動作周波数に対するアプリケータのチップから反射される電力の関係を示すものである。2.45GHz付近で反射波の落込み(dip)がある。これはこの周波数でチップへのエネルギー移送が最大であることに対応する。図2における落込み幅は約0.6GHzである。これはアプリケータに広帯域特性を与えるもので、様々な誘電率値の周辺物質に適応することが可能になる。
【0020】
本発明の別の実施例では、空気を含め別の誘電物質が使用される。誘電セクションは3つに代え2つであったり、4つ又はそれ以上であったりする。誘電体セクションの各々又は何れかの外側の周囲に溝が形成される。また、誘電セクションは縦方向に細く形成される。
【0021】
また、画像技術が使って、所望の位置にアプリケータをガイドする。アプリケータの直径は十分小さいのでガイドワイヤを介して挿入される。例えば、正確な治療を行うために超音波画像技術が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に基づく、照射アプリケータのチップを通る軸セクションである。
【図2】入力周波数に対する〔図1〕の照射アプリケータの入力における反射照射(retlected radiation)のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1端部における電力入力部と、その端部でその軸上に延びる細長いアンテナと、アンテナを取り巻き、周辺物質にアンテナの半径方向に照射を行う誘電体とを有し、前記誘電体は異なる誘電率の複数セクションから構成され、アンテナに沿って軸方向に互いに配置されていることを特徴とする照射アプリケータ。
【請求項2】
前記誘電体が照射を行うように構成された第2セクションと、前記第2セクションと電極入力部と間に第1セクションとを有し、その誘電率は第2セクションの誘電率より低いことを特徴とする請求項1記載の照射アプリケータ。
【請求項3】
前記誘電体は電力入力部から遠い外側セクションを有し、その誘電率は、第2セクションの誘電率より低いことを特徴とする請求項2記載のアプリケータ。
【請求項4】
前記外側セクションの誘電率は第1と第2セクションの誘電率の中間であることを特徴とする請求項3記載のアプリケータ。
【請求項5】
複数セクションが別々の部材から構成され、端部端部相互に接してアセンブルされることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一記載のアプリケータ。
【請求項6】
照射リフレクタを誘電体の2つのセクション間のインターフェースに配置し、照射伝播を変調しアプリケータをチューンすることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一記載のアプリケータ。
【請求項7】
照射リフレクタが周辺物質に照射を行うように構成されたセクションの各側に設けられ、電力入力部から遠い側のリフレクタの面積は電力入力部に近い側のリフレクタの面積より広く、アプリケータのチップへの照射伝播を低減することを特徴とする請求項6記載のアプリケータ。
【請求項8】
1つの端部に設けられた電力入力部と、周辺物質を照射するために末端へ軸方向に延びる細長いアンテナとを有し、照射の送信を変調するために1つ又は複数の照射リフレクタが誘電体内でアンテナに沿って軸方向に配置されることを特徴とするアプリケータ。
【請求項9】
周辺物質に照射を行うように2つのリフレクタは誘電体の中間セクションに関し離間して配置され、電力入力部から遠い側のリフレクタの面積は電力入力部に近い側のリフレクタの面積より広く、アプリケータのチップへの照射伝播を低減することを特徴とする請求項8記載のアプリケータ。
【請求項10】
各リフレクタは誘電体の別々のセクションの間のインターフェースに配置され、アプリケータに対し構造上のサポートを与えることを特徴とする請求項6ないし9の何れか一記載のアプリケータ。
【請求項11】
電力入力部から遠い誘電体の外側端部が尖っていることを特徴とする請求項1ないし10の何れか一記載のアプリケータ。
【請求項12】
電力入力部が、中心導体が外部導体から延長し前記細長いアンテナを形成する同軸ケーブルを含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項記載のアプリケータ。
【請求項13】
前記誘電体は縮小された直径を持ち、外部導電体のオープンエンドに挿入されることを特徴とする請求項12記載のアプリケータ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−520245(P2007−520245A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516442(P2006−516442)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002620
【国際公開番号】WO2004/112628
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(500511486)マイクロスリス リミティド (2)
【Fターム(参考)】