説明

マクロラクトン誘導体、その製造方法、及びがんの処置のためのその使用

本発明は式(I)
【化1】


[式中、X及びYは互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成し;R1及びR2は互いに独立してH、Cl又はBrであり;R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり;R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり;そしてR5はメチル又はエチルである]の化合物又は式(I)の化合物の生理学的に許容しうる塩の、がん疾患の処置及び/又は予防のための使用、式(I)の化合物を含むがん疾患の処置及び/又は予防のための医薬組成物、式(I)の化合物、並びに化合物(I)の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
がんは、大部分が致死的であり、そして内在細胞の制御不能な増殖により引き起こされる、ヒト及び動物の疾患である。がんは、悪性腫瘍(マリグノーマ(malignomas))及び新生物(腫瘍又はがん腫)の形成、又は白血球の悪性変性及び成熟障害(白血病、血液のがん)についての用語である。がん細胞又は腫瘍細胞は、内在細胞の形質転換の結果として生じる。がん細胞の悪性度は、細胞が無抑制の様式でかつ器官の構造に適合することなく増殖する能力、また浸潤する様式で増殖し、それにより組織を破壊する能力における、その増殖の自律性で表される。腫瘍細胞が血液又はリンパにより広がった後の腫瘍から距離を置いた播種(転移)の形成は、悪性の確実な徴候である。がんは、ヒトにおける最も頻繁な死因の1つであり、従って悪性変性を治癒又は処置するための方法及び手段に対する大きな必要性が存在する。
【0002】
可能であれば根治的な、腫瘍の外科的除去に加えて、悪性腫瘍を処置する可能性には、X線、α線、β線及びγ線を使用する放射線学的治療、免疫療法並びに化学療法が含まれる。現在、免疫療法は限られた程度しか使用することができない。腫瘍の化学療法は、通常は局所的な外科的処置又は照射後に残存している腫瘍及び腫瘍細胞を処置するための細胞毒(細胞分裂阻害剤)の投与を意味すると理解される。これらの物質は細胞分裂の特定のプロセスに特異的に干渉し、これは、急速に増殖する腫瘍細胞のような高比率の分裂細胞を含む組織がより鋭敏に反応するということを意味する。使用される細胞分裂阻害剤は、アルキル化化合物(例えばシクロホスファミド)、代謝拮抗薬(例えばメトトレキサート)、アルカロイド(例えばビンクリスチン)及び抗生物質(例えばダウノマイシン又はアドリアマイシン)である。しかし、全てのこれらの薬剤は、大量の副作用に起因する深刻な不利益という欠点を有するので、罹患した患者の死亡が遅らされるだけで回避されない。さらに、変性した(がん)細胞は、使用される薬剤に対する耐性を発生させ;その時点で使用されている薬剤はその後細胞分裂阻害作用をもはや持たなくなるが、それらは副作用の結果として依然として毒性なままである。さらに、細胞分裂阻害剤を組み合わせて又は順々に使用することにより達成される有効性は、単一の細胞分裂阻害剤を使用すること(単剤療法)により達成される効率よりも高く、結果として、実質的な副作用は多剤化学療法に関連して付加的ではないということが見出されている。全てのこれらの理由から、新規な化学療法剤が緊急に必要とされており、従って世界中で探求されている。
【0003】
特許文献1は、式
【化1】

[式中、
X及びYは、互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成し;
R1及びR2は互いに独立してH又はClであり;
R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり;
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり;そして
R5はエチルである]
のマクロサイクル(macrocycles)又は上記化合物の生理学的許容しうる塩を記載する。
【0004】
特許文献1に記載される化合物は、微生物株ナノシスティス・エスピー(Nannocystis sp.) ST201196(DSM18870)の発酵及び任意のさらなる誘導体化により入手可能であり、そしてこれは真菌性疾患の処置及び/又は予防に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願第PCT/EP2008/004971号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(I)
【化2】

[式中、
X及びYは、互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成し;
R1及びR2は互いに独立してH、Cl又はBrであり;
R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり;
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり;そして
R5はメチル又はエチルである]
の化合物又は式(I)の化合物の生理学的に許容しうる塩の、
がん疾患の処置及び/又は予防のための使用に関する。
【0007】
さらに、本発明は、がん疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のための、式(I)の化合物の使用に関する。
【0008】
X及びYは、一緒になって好ましくは、それらが結合しているC原子間に結合を形成し、結果として上記C原子間の二重結合をさらに生じるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成し、結果として対応する好ましい化合物におけるX及びYは、それらが結合しているC原子と一緒になってエポキシド基を形成する。より好ましくは、X及びYは一緒になって基−O−を形成する。
【0009】
好ましくは、R1及びR2の少なくとも1つはCl又はBrである。より好ましくは、R1及びR2は両方ともClである。
【0010】
R3は好ましくはH又は(C1−C6)−アルキルである。より好ましくは、R3はH又はメチルである。
【0011】
R4は好ましくはHである。
【0012】
R5は好ましくはエチルである。
【0013】
特に好ましくは、本発明は、式中、X及びYは、一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは、それらが結合しているC原子間の二重結合をさらに形成し、R1及びR2は互いに独立してH、Cl又はBrであり、R3及びR4は互いに独立してH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり、そしてR5はメチル又はエチルである、式(I)の化合物に関する。
【0014】
より好ましくは、本発明は、式中、X及びYは、一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは、それらが結合しているC原子間の二重結合をさらに形成し、R1及びR2は互いに独立してH、Cl又はBrであり、R3はH又は(C1−C6)−アルキルであり、R4はHであり、そしてR5はメチル又はエチルである、式(I)の化合物に関する。
【0015】
最も好ましくは、本発明は、式中、X及びYは、一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYはそれらが結合しているC原子間の二重結合をさらに形成し、R1及びR2は両方ともClであり、R3はH又は(C1−C6)−アルキル、好ましくはH又はメチルであり、R4はHであり、そしてR5はメチル又はエチルである、式(I)の化合物に関する。
【0016】
(C1−C6)−アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル又はn−ヘキシルである。
【0017】
式(I)の化合物の例は以下のとおりである:
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
本発明はさらに、式(I)
【化5】

[式中、
X及びYは、互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成し、
R1及びR2は互いに独立して、H、Cl又はBrであり、
R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R5はメチル又はエチルであり、
ただし、
X及びYが互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYが一緒になって基−O−を形成し、
R1及びR2が互いに独立してH又はClであり、
R3がH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルである場合、
R5はエチルであることはない]
の化合物又は式(I)の化合物の生理学的に許容しうる塩に関する。
【0020】
式(I)の化合物の例は、式(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物(上記参照)である。
【0021】
式(I)の化合物中にキラル中心が存在していてもよく、別の指示がなければR又はS配置である。本発明は、光学的に純粋な化合物と、鏡像異性体混合物及びジアステレオマー混合物のような立体異性体混合物の両方に関する。
【0022】
式(I)の化合物の生理学的に許容しうる塩は、Remington's Pharmaceutical Sciences(第17版、1418頁(1985))に記載されるような、それらの有機塩及び無機塩の両方を意味すると理解される。物理的及び化学的な安定性及び溶解性の理由で、とりわけナトリウム、カリウム、カルシウム及びアンモニウム塩が酸性基に好ましく;とりわけ塩酸、硫酸、リン酸又はカルボン酸若しくはスルホン酸、例えば酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸及びp−トルエンスルホン酸の塩が、塩基性基には好ましい。
【0023】
本発明はさらに、式(I)の化合物の全ての明らかな化学的等価物、及び式(I)の化合物の明らかな化学的等価物の使用に関する。この種の等価物は、わずかな化学的差異を示し、それ故同じ作用を有するか、又は本発明の化合物に穏やかな条件下で変換される化合物である。上述の等価物には、例えば式(I)の化合物の塩、還元生成物、酸化生成物、エステル、エーテル、アセタール、又はアミド、及び当業者が標準的な方法を使用して製造することができる等価物も含まれる。
【0024】
式(I)の化合物は、一般的には特許文献1に記載されるように製造することができる。
【0025】
本発明はさらに、式(I)
【化6】

[式中、
X及びYは、互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成し、
R1及びR2は互いに独立してH、Cl又はBrであり、
R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R5はメチル又はエチルであり、
ただし、
X及びYが互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYが一緒になって基−O−を形成し、
R1及びR2が互いに独立してH又はClであり、
R3がH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルである場合、
R5はエチルであることはない]
の化合物又は式(I)の化合物の生理学的に許容しうる塩を製造するための方法に関し、該方法は、
1. 株ナノシスティス・エスピー(Nannocystis sp.) ST201196(DSM18870)又はその変異株(variants)及び/若しくは突然変異株(mutants)の1つを、適切な条件下で、Cl源及び/又はBr源を含む培地中で、式(I)の化合物の1つ又はそれ以上が培地中に蓄積するまで発酵させること、並びに
2. 培地から式(I)の化合物を単離すること、並びに
3. 場合により、式(I)の化合物を誘導体化し、そして/又はそれを生理学的に許容しうる塩に変換すること
を含む。
【0026】
好ましくは、少なくとも1つのBr源が培地中に存在する。
【0027】
微生物株ナノシスティス・エスピー ST 201196の分離菌をDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen [German Collection of Microorganisms and Cell Cultures] GmbH(DSMZ)、Mascheroder Weg 1B、38124 Braunschweig、Germanyに、ブダペスト条約(09.11.2003)の規則にしたがって以下の番号で寄託した。以下の番号が寄託番号として割り当てられた:DSM18870。
【0028】
株ナノシスティス・エスピー ST 201196(DSM18870)の栄養細胞は特徴的な杆状形態を有する。固形栄養素培地において、ナノシスティス・エスピー ST 201196(DSM18870)は橙黄色の子実体を形成し、これは丸い粘菌胞子を含む。従って株ST201196の分類はミクソバクテリア属(Myxobacterium sp.)と記載され得る。
【0029】
株ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)の代わりに、本発明の化合物の1つ又はそれ以上を合成するその突然変異株及び/又は変異株を使用することも可能である。
【0030】
突然変異株は、ゲノムの1つ又はそれ以上の遺伝子が改変されている微生物であり、ここで本発明の化合物を産生する生物の能力の原因である遺伝子(単数又は複数)は機能的でかつ遺伝可能なままである。
【0031】
この型の突然変異体は、それ自体公知のやり方で、物理的手段、例えば紫外線若しくはX線ビームを用いるような照射、又は化学変異原、例えばメタンスルホン酸エチル(EMS);2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(MOB)若しくはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、若しくはBrock et al.「Biology of Microorganisms」、Prentice Hall、304−315頁(1984)に記載されるようなものを用いて製造され得る。
【0032】
変異株は微生物の表現型である。微生物はそれらの環境に適合する能力を有し、従って顕著な生理学的柔軟性を示す。表現型適合の場合、微生物の全ての細胞が関与し、この場合改変の性質は遺伝的に条件づけられず、改変された条件下では可逆的である(H. Stolp、Microbial ecology:organisms、habitats、activities. Cambridge University Press、Cambridge、GB、page 180、1988)。
【0033】
本発明の化合物の1つ又はそれ以上を合成する突然変異株及び/又は変異株についてのスクリーニングは、以下のスキームにしたがって行われる:
− 発酵培地の凍結乾燥
− 凍結乾燥物の有機溶媒での抽出
− 固相を使用した培養物ろ液からの化合物の抽出
− HPLC、TLC又は生物学的活性の試験による分析
【0034】
記載される発酵条件はナノシスティス・エスピー ST 201196(DSM 18870)並びにその突然変異株及び/又は変異株に適用される。
【0035】
培地は栄養溶液、又は少なくとも1つの炭素源及び窒素源、並びに慣例の無機塩を含有する固形培地である。
【0036】
使用されるCl源は、例えばNaCl又はCaCl2であり得る。この場合、株ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)は好ましくは、R1及びR2の両方のラジカルがClに相当する式(I)の化合物、又はR1がClに相当しR2がHに相当する式(I)の化合物を産生する。好ましくは、本発明はR1及びR2がClに相当する式(I)の化合物を製造する方法に関する。さらに、本発明は好ましくは、R1がHに相当し、R2がClに相当する式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0037】
株ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)にCaBr2を供給することにより、3つの新規なブロモ含有マクロラクトンが得られる。使用されるBr源はアルカリ無機塩(alkali)又はアルカリ金属(alkaline)臭化物、例えばNaBr又はCaBr2であり得る。この場合、株ナノシスティス・エスピー ST 201196(DSM18870)は好ましくは、R1及びR2が互いに独立してH、Cl若しくはBrである式(I)の化合物、R1若しくはR2の少なくとも1つがBrである式(I)の化合物、好ましくはR1がClでありそしてR2がBrである式(I)の化合物、又はR1がBrでありそしてR2がHである式(I)の化合物を産生する。
【0038】
本発明の方法は、研究室規模(ミリリットルからリットルの規模)及び産業規模(立方メートル規模)の発酵に使用され得る。
【0039】
発酵に適した炭素源は、同化炭化水素及び糖アルコール、例えばグルコース、ラクトース、スクロース、又はD−マンニトール及び炭化水素含有天然物、例えば麦芽エキス又は酵母エキスである。適切な窒素含有栄養物は:アミノ酸;合成又は生合成ペプチド及びタンパク質、並びにそれらの分解産物、例えばProbion F(Applied Microbiology and Biotechnology 1984、19(1)、23−28)、カゼイン、ペプトン又はトリプトン;肉エキス;酵母エキス;グルテン;例えばトウモロコシ、小麦、豆類、ダイズ又は綿の木の粉末種子;アルコール製品からの蒸留残滓;肉粉;酵母エキス;アンモニウム塩;硝酸塩(nitrates)である。無機塩は、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属、鉄、亜鉛、コバルト及びマンガンの塩化物塩、炭酸塩、硫酸塩又はリン酸塩である。微量元素は例えばコバルト及びマンガンである。
【0040】
本発明に従うCl含有物質の形成に適した条件は以下のとおりである:本発明の従う物質の形成は、好ましくは、0.05〜5%、好ましくは0.1〜2.5%、の大豆ミール;0.05〜5%、好ましくは0.2〜2%の可溶性でんぷん;0.02〜2%、好ましくは0.05〜0.5%のグルコース;0.02〜2%、好ましくは0.2〜0.8%のHEPES;0.02〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%、のCaCl2x2H2O;0.02〜1.5%、好ましくは0.05〜0.7%、のMgSO4x7H2O、0.00001%〜0.001%のシアノコバラミン及び1〜5%の吸着樹脂(adsorber resin)XAD−16を含有する培地において進行する。パーセントで示すデータは各場合において栄養溶液全体の質量に基づく。
【0041】
本発明に従うBr含有物質の形成に適した条件は以下のとおりである:本発明に従う物質の形成は、好ましくは、0.05〜5%、好ましくは0.1〜2.5%、の大豆ミール;0.05〜5%、好ましくは0.2〜2%の可溶性でんぷん;0.02〜2%、好ましくは0.05〜0.5%のグルコース;0.02〜2%、好ましくは0.2〜0.8%のHEPES;0.02〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%、のCaBr2xH2O;0.02〜1.5%、好ましくは0.05〜0.7%、のMgSO4x7H2O、0.00001%〜0.001%のシアノコバラミン及び1〜5%の吸着樹脂XAD−16を含有する培地において進行する。パーセントで示すデータは各場合において栄養溶液全体の質量に基づく。
【0042】
微生物の培養を好気的に、すなわち震盪フラスコ若しくは発酵槽において震盪又は撹拌しながら液中(submerse)形式で、又は固型培地で、場合により空気若しくは酸素を導入しながら行われる。これは約18〜35℃の温度範囲で、好ましくは約20〜32℃、特に27〜30℃で行われ得る。pH範囲は4〜10の間、好ましくは6.5〜9の間であるべきである。微生物は一般的に、これらの条件下で3〜18日の期間、好ましくは144〜216時間の間培養される。有利には、培養は多段階で行われ、すなわち最初に1つ又はそれ以上の前培養を液体栄養培地において準備し、次いでこれを実際の産生培地中に(主培養)、例えば体積比1:10〜1:100で播種する。前培養は、例えば株を栄養細胞又は子実体の形態の株を栄養溶液中に播種し、そしてそれを約3〜13日間、好ましくは96〜240時間増殖させる。栄養細胞及び/又は子実体は、例えば株を固形又は液体の栄養培地、例えばイースト寒天で約3〜15日間、好ましくは7〜10日間増殖させることにより得ることができる。
【0043】
培地からの式(I)の物質の単離又は精製は、天然物質の化学的、物理的及び生物学的特性を考慮に入れて公知の方法にしたがって行われる。HPLCを、培地中又は個々の単離段階でのそれぞれの誘導体の濃度を試験するために使用した。
【0044】
単離のために、培養ブロスを遠心分離し、そして/又は吸引フィルターに通してろ過する。菌糸体をXADとともに凍結乾燥し、その後天然物質を凍結乾燥物から有機溶媒(例えばメタノール又は2−プロパノール)を使用して抽出する。有機溶媒相は本発明の天然物質を含有し;これを場合により真空濃縮し、そして液−液抽出により水及び有機溶媒(例えば(ジクロロメタン、酢酸エチル又はイソブチルメチルケトン)を使用してさらに精製する。
【0045】
本発明の化合物の1つ又はそれ以上のさらなる精製を、適切な物質、好ましくは例えば、分子ふるい、シリカゲル、アルミナ、イオン交換体又は吸着樹脂又は逆相(RP)でのクロマトグラフィーにより行う。このクロマトグラフィーを用いて天然物質誘導体を分離する。本発明の化合物のクロマトグラフィーを、緩衝化水溶液又は水溶液と有機溶液との混合物を使用して行う。
【0046】
水溶液と有機溶液との混合物は、0〜100%の溶媒の濃度で水と混和性の全ての有機溶媒、好ましくはメタノール、2−プロパノール、またあるいは、有機溶媒と混和性の全ての緩衝化水溶液を意味すると理解される。使用される緩衝液は上で示されるものと同じである。
【0047】
それらの異なる極性に基づく本発明の化合物の分離を、逆相クロマトグラフィーを用いて、例えばMCI(R)(吸着樹脂、Mitsubishi、Japan)若しくはAmberlite XAD(R)(TOSOHAAS)、又は別の疎水性材料、例えば、RP−8若しくはRP−18相で行う。さらに、分離を順相クロマトグラフィーを用いて、例えばシリカゲル、アルミナなどで行うことができる。
【0048】
天然物質誘導体のクロマトグラフィーを、当業者に公知の方法にしたがって、好ましくは緩衝化、塩基性若しくは酸性化された水溶液、又は水溶液とアルコール若しくはその他の水混和性有機溶媒との混合物を使用して行った。アセトニトリル及び/又はメタノールが好ましくは有機溶媒として使用される。
【0049】
緩衝化、塩基性又は酸性化水溶液は、例えば、水、0.5Mまでの濃度の、リン酸緩衝剤、酢酸アンモニウム、ぎ酸アンモニウム、クエン酸緩衝剤、及び好ましくは1%までの濃度の、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、アンモニア、トリエチルアミン又は当業者に公知の全ての市販されている酸及び塩基を意味すると理解される。緩衝化水溶液の場合、0.1%酢酸アンモニウムが特に好ましい。
【0050】
クロマトグラフィーを、例えば、水100%で開始して溶媒100%で終了するグラジエントを使用して行った;5〜95%アセトニトリルの線形グラジエントが好ましく作用した。
【0051】
あるいは、ゲルクロマトグラフィー又は疎水相でのクロマトグラフィーもまた行うことができる。ゲルクロマトグラフィーは、ポリアクリルアミド又は混合ポリマーゲル、例えば、Biogel−P 2(R)(Biorad)又はFractogel TSK HW
40(R)R(Merck、Germany)で行われる。上述のクロマトグラフィーの順序は可逆的である。
【0052】
式(I)の化合物が立体異性体混合物として存在する場合、立体異性体を、公知の手段により、例えばキラルカラムを用いた分離により分離することができる。
【0053】
式(I)の化合物の3,5−ジクロロチロシンアミノ酸上のOH基[R3がHに相当する]のアシル基[R3がC(=O)−(C1−C6)−アルキル)に相当する]への誘導体化及び/又は式(I)の化合物の3−ヒドロキシバリンアミノ酸上のOH基[R4がHに相当する]のアシル基[R4がC(=O)−(C1−C6)−アルキル)に相当する]への誘導体化は、それ自体公知の方法(J.March、Advanced Organic
Chemistry、John Wiley&Sons、6th Edition、2007)に従って、例えば塩基の存在下での酸塩化物との反応又は酸無水物との反応により行われる。
【0054】
式(I)の化合物の3,5−ジクロロチロシンアミノ酸上のOH基[R3がHに相当する]の、アルキル基でのアルキル化[R3が(C1−C6)−アルキルに相当する]及び/又は式(I)の化合物の3−ヒドロキシバリンアミノ酸上のOH基[R4がHに相当する]のアルキル基でのアルキル化[R4が(C1−C6)−アルキルに相当する]は、当業者にそれ自体公知の方法(J. March、Advanced Organic Chemistry、John Wiley & Sons、4th Edition、1992)により、例えば塩基の存在下での(C1−C6)−アルキルブロミドとの反応により、又はメチル化の場合はヨウ化メチル若しくはMe2SO4との反応により行われる。
【0055】
フェノール性OH基(R3=H)と脂肪族OH基(R4=H)との選択的差別化を、それ自体当業者に公知の保護基導入方法により行う(T.W.Greene、P.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sons、3rd Edition、1999)。例えば、Pettus et al.(J.Am.Chem.Soc.2000、122、6160−6168)は、K2CO3の存在下でアセトン中(C1−C6)−アルキルブロミドとの反応による、又は(CF3CO)2O及びCuCl2水和物の存在下でDBU中(C1−C6)−アルキル−OHとの反応による、第三級脂肪族アルコールの存在下でのフェノール性OH基の選択的アルキル化を記載する。フェノール性OH基と脂肪族OH基とのさらなる差別化の可能性は、式(I)のビス−アルキル化[R3及びR4が等しく(C1−C6)−アルキルに相当する]又はビス−アシル化[R3及びR4が等しくC(=O)−(C1−C6)−アルキル)に相当する]化合物の選択的脱保護のための、当業者にそれ自体公知の方法を用いて行われる(T. W. Greene、P. G. M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、4th Edition、2006)。例えば、Jones et al.(J. Org. Chem. 2001、66、3688−3695)は、−20℃にてフッ化tert−ブチルアンモニウム(TBAF)による、TBS−保護第三級アルコールの存在下でのtert−ブチルシリル(TBS)−保護フェノールの選択的脱保護を記載する。フェノール性OH基(R3=H)は、Cl−[(C1−C6)−アルキル]−Cl又はBr−[(C1−C6)−アルキル]−Brの存在下でのH2N−(C1−C6)−アルキルとの反応により、基−(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルへとさらに誘導体化され得る。
【0056】
式中X及びYが基−O−を形成する式(I)の化合物の、式中X及びYが互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2又はNH−(C1−C6)−アルキルである式(I)の化合物への誘導体化は、それ自体当業者に公知の方法を用いて(J.March、Advanced Organic Chemistry、John Wiley&Sons、4th Edition、1992)、例えばエポキシド基と、(C1−C6)−アルコラート[YがO−(C1−C6)−アルキルに相当する場合にXはOHに相当し、又はXがO−(C1−C6)−アルキルに相当する場合はYがOHに相当する]、NH3[YがNH2に相当する場合はXはOHに相当し、又はXがNH2に相当する場合はYがOHに相当する]、又はH2N−(C1−C6)−アルキル[YがNH−(C1−C6)−アルキルに相当する場合はXはOHに相当するか、又はXがNH−(C1−C6)−アルキルに相当する場合はYがOHに相当する]との反応により行われる。
【0057】
表1、2及び3に示されるように、式(I)の化合物の抗腫瘍活性を、種々の腫瘍細胞株の細胞増殖の阻害を測定することにより決定した:
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
従って本発明は、式(I)
[式中、
X及びYは、互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成し;
R1及びR2は互いに独立してH、Cl又はBrであり;
R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり;
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり;そして
R5はメチル又はエチルである]
化合物又はその生理学的に許容しうる塩の、がん疾患の処置及び/又は予防のため、好ましくは乳がん、腸がん、胃がん、肝臓がん、皮膚がん、脳腫瘍、卵巣(overial)がん、食道がん、腎臓がん及び筋細胞がん、特に頭部及び頸部の筋肉のがん腫を処置するための、使用に関する。
【0062】
本発明はさらに、がん疾患の処置及び/又は予防のため、好ましくは乳がん、腸がん、胃がん、肝臓がん、皮膚がん、脳腫瘍、卵巣がん、食道がん、腎臓がん及び筋細胞がん、特に頭部及び頸部の筋肉のがん腫を処置及び/又は予防するための、少なくとも1つの式(I)[式中、
X及びYは、互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2又はNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成し;
R1及びR2は互いに独立してH、Cl又はBrであり;
R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり;
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり;そして
R5はメチル又はエチルである]
の化合物又は式(I)の化合物の生理学的に許容しうる塩を含む医薬組成物に関する。
【0063】
さらに、本発明は、少なくとも1つの式(I)[式中、
X及びYは、互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成し、
R1及びR2は互いに独立してH、Cl又はBrであり、
R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R5はメチル又はエチルであり、
ただし、
X及びYが互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYが一緒になって基−O−を形成し、
R1及びR2が互いに独立してH又はClであり、
R3がH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルである場合、
R5はエチルであることはない]
の化合物又は式(I)の化合物の生理学的に許容しうる塩を含む、
好ましくはがん疾患の処置及び/又は予防のため、
より好ましくは乳がん、腸がん、胃がん、肝臓がん、皮膚がん、脳腫瘍、卵巣がん、食道がん、腎臓がん及び筋細胞がん、特に頭部及び頸部の筋肉のがん腫の処置及び/又は予防のための、医薬組成物に関する。
【0064】
式(I)の化合物(単数又は複数)は、実質的にそれ自体で投与されても、好ましくは慣例の薬理学的に適切なビヒクル又は添加剤との混合物として投与されてもよい。
【0065】
本発明の化合物は、固体状態及び2〜9の間のpH範囲(特に5〜7)の溶液で
安定であり、従って慣例の生薬製剤中に組み込まれ得る。
【0066】
本発明の医薬組成物は、経口投与されても非経口投与されてもよいが、原理上は直腸投与も可能である。適切な固形又は液状の生薬剤形は、例えば顆粒剤、散剤、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル剤、坐剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、エアゾール剤、ドロップ又はアンプル形態の注射液、及び活性物質が遅延放出される製剤であり、その製剤において、薬理学的に適切なビヒクル又は添加剤、例えば崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、流動促進剤又は滑沢剤、香味添加剤、甘味料又は可溶化剤が通常使用され、例えば炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及び他の糖類、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン類、セルロース及びその誘導体、動物又は植物油、ポリエチレングリコール類並びに溶媒、例えば、滅菌水、アルコール、グリセロール及び多価アルコールである。
【0067】
場合により、経口投与用の用量単位は、例えば、活性物質を適切なポリマー、ロウ中などで粒子形態にコーティング又は包埋することにより、放出を遅らせるか又はそれを長期にわたって延長するためにマイクロカプセル化され得る。
【0068】
好ましくは、医薬組成物は用量単位で製剤化及び投与され、ここで各単位は活性構成要素として特定用量の本発明の天然物質の1つ又はそれ以上の化合物を含む。錠剤、カプセル剤及び坐剤のような固形用量単位の場合、この用量は、1日あたり、約500mgまでであり得るが、好ましくは約0.1〜200mg、そしてアンプル形態の注射液の場合は約200mgまでであるが、好ましくは約0.5〜100mgである。
【0069】
投与される日用量は、哺乳動物の体重、年齢、性別及び状態に依存する。しかし特定の状況下において、より高いかより低い日用量も適切であり得る。日用量の投与は、個別の用量単位の形態での単回投与により、あるいは多数のより小さな用量単位で、及び特定の間隔で細分された用量の複数回投与の両方により行われ得る。
【0070】
本発明の医薬組成物は、場合により式(I)の化合物の1つ又はそれ以上を慣例のビヒクル又は添加剤と混合し、そして適切な投与形態にすることにより製造される。
【0071】
以下の実施例は、より詳細な本発明の説明に役立つことを意図され、本発明の範囲をいかなるようにも制限することはない。
【0072】
パーセントは質量に対するものである。他の特定の記載がなければ、液体の場合の混合比は体積に対するものである。
【実施例】
【0073】
実施例1:ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)の−135℃での保存
寒天プレート(0.5%新鮮なパン酵母;0.1% CaCl2x2H2O;0.477%HEPES(20mM);0.00005%シアノコバラミン;1.8%寒天;pH7.2)に、株ナノシスティス・エスピー ST 201196(DSM18870)を接種し、そして約7〜10日間30℃でインキュベートした。この表面培養の細胞を寒天表面から滅菌スパチュラを使用して削り取り、クリオチューブ(cryotube)中でカシトン(Casitone)培地1ml(1%カシトン(Difco);0.15%MgSO4x7H2O;25%グリセリン;pH7.0)に懸濁し、そして−135℃で保存した。
【0074】
実施例2:ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)の−196℃での保存
寒天プレート(0.5%新鮮なパン酵母;0.1%CaCl2x2H2O;0.477%HEPES(20mM);0.00005%シアノコバラミン;1.8%寒天;pH7.2)に、株ナノシスティス・エスピー ST 201196(DSM18870)を接種し、そして約7〜10日間30℃でインキュベートした。この表面培養の細胞を寒天表面から滅菌スパチュラを使用して削り取り、クリオチューブ中でカシトン培地1ml(1%カシトン(Difco);0.15%MgSO4x7H2O;25%グリセリン;pH7.0)に懸濁し、そして−196℃で保存した。
【0075】
実施例3:エーレンマイヤーフラスコでのST201196(DSM18870)の前培養物の製造
滅菌した300mlエーレンマイヤーフラスコ中の栄養溶液100ml(1%新鮮なパン酵母;0.1%CaCl2x2H2O;0.477%HEPES(20mM);0.00005%シアノコバラミン;pH7.2)に、株ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)を接種し、そして6〜8日間30℃及び回転式振盪機にて180rpmでインキュベートした。続いてこの前培養物の50mlを各500mlの主培養物の調製のために使用した(10%接種材料)。
【0076】
実施例4:ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)の液状主培養物の製造
以下の栄養溶液(0.5%大豆ミール;0.1%グルコース;1%可溶性でんぷん;0.1%CaCl2x2H2O;0.1%MgSO4x7H2O;0.477%HEPES(20mM);0.00005%シアノコバラミン;2%吸着樹脂XAD−16、pH7,2)500mlを含有する滅菌した2lエーレンマイヤーフラスコに、前培養物50ml(10%)(実施例3を参照のこと)又は新鮮な寒天プレート(0.5%新鮮なパン酵母;1%CaCl2x2H2O;0.477%HEPES(20mM);0.00005%シアノコバラミン;1.8%寒天;pH7.2)で増殖させた培養物を接種し、そして振盪機で180rpmにて30℃でインキュベートした。144〜216時間後に本発明の物質の最大産生に達した。
【0077】
実施例5:発酵槽における物質(II)、(III)及び(V)の製造
10l及び50lの発酵槽を以下の条件下で操作した:
種菌:20%の前培養物(実施例3を参照のこと)
栄養培地:0.5%大豆ミール;0.1%グルコース;1%可溶性でんぷん;0.1%CaCl2x2H2O;0.1%MgSO4x7H2O;0.477%HEPES(20mM);0.00005%シアノコバラミン、2%吸着樹脂XAD−16
インキュベーション温度:30℃
撹拌速度:200rpm
給気:0.5vvm
pH調節:無し、滅菌前にKOHを用いてpH7.6±0.3
pO2調節:無し
消泡剤添加物:0.05%Desmophen(Bayer)
実行時間:144〜216時間
pH調節を、10%KOH又は10%H2SO4を使用して行った。
【0078】
実施例6:臭化カルシウムを用いた、ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)の液状主培養物の製造
以下の栄養溶液500ml(0.5%大豆ミール;0.1%グルコース;1%可溶性でんぷん;0.1%CaBr2・xH2O;0.1%MgSO4x7H2O;0.477%HEPES(20mM);0.00005%シアノコバラミン;2%吸着樹脂XAD−16、pH7,2)を含む滅菌した2lエーレンマイヤーフラスコに、前培養物(実施例3を参照のこと)又は新鮮な寒天プレート(0.5%新鮮なパン酵母;1%CaCl2x2H2O;0.477%HEPES(20mM);0.00005%シアノコバラミン;1.8%寒天;pH7.2)で増殖された培養物50ml(10%)を接種し、そして振盪機で180rpm及び30℃にてインキュベートした。144〜216時間後に本発明の物質の最大産生に達した。
【0079】
実施例7:発酵槽における物質(VI)、(VII)及び(VIII)の製造
10l及び50lの発酵槽を以下の条件下で操作した:
種菌:20%前培養物(実施例3を参照のこと)
栄養培地:0.5%大豆ミール;0.1%グルコース;1%可溶性でんぷん;0.1%CaBr2・xH2O;0.1%MgSO4x7H2O;0.477%HEPES(20mM);0.00005%シアノコバラミン、2%吸着樹脂XAD−16
インキュベーション温度:30℃
撹拌速度:200rpm
給気:0.5vvm
pH調節:無し、滅菌前にKOHを用いてpH7.6±0.3
pO2調節:無し
消泡剤添加物:0.05%Desmophen(Bayer)
実行時間:144〜216時間
pH調節を、10%KOH又は10%H2SO4を用いて行った。
【0080】
実施例8:化合物(II)、(III)及び(V)の液−液抽出
微生物株ナノシスティス・エスピー ST 201196(DSM18870)の発酵が完了した後、実施例4からの培養ブロス(培養ブロス約90L)をろ過した。XADを含有するバイオマスを凍結乾燥し、続いてメタノールで抽出した(5x10L)。メタノール抽出物を真空で1lまで減らした。水1Lを加え、次いで水/メタノール層をジクロロメタン1Lで4回抽出した。その後、ジクロロメタン層を完全に乾固させて褐色油状物を得た。
【0081】
実施例9:RP−18クロマトグラフィーによる化合物(II)、(III)及び(V)の予備分離(Pre−separation)
実施例8からのジクロロメタン抽出物全部を引き続いて500mgステップ(steps)で精製した。例えば:ジクロロメタン抽出物500mgをメタノール/ジメチルスルホキシド/2−プロパノールの混合物(3ml、20:70:10)に溶解し、そしてWaters XTerra(R) Prep MS C18 10μプレカラム(寸法:19x10mm)を有するPhenomenex Luna(R)10μC18(2)カラム(寸法:50x100mm)にロードした。化合物を水中5%から95%のアセトニトリルのグラジエントで27分間にわたって流量120ml/分で溶出した。緩衝液(0.65M酢酸アンモニウム、酢酸でpH4.6に調整)を流量1.2ml/分でシステムにポンプで注入した。フラクションをUV(220nm)により集めた。フラクション23及び24は化合物(V)及び(II)を含んでいた。これらを合わせて凍結乾燥した。フラクション22も凍結乾燥し、これは化合物(III)を含んでいた。
【0082】
実施例10:化合物(II)及び(V)のRP−18クロマトグラフィーによる最終精製
実施例9からのフラクション23及び24をメタノール/ジメチルスルホキシド/2−プロパノールの混合物(1ml、20:70:10)に溶解し、そしてWaters XTerra(R) Prep MS C18 10μプレカラム(寸法:19x10mm)を有するPhenomenex Luna(R) 10μC18(2)カラム(寸法:50x100mm)にロードした。化合物を水中5%から40%のアセトニトリルのグラジエントで5分以内に、そして40%から95%で27分以内に流量120ml/分で溶出した。緩衝液(0.65M酢酸アンモニウム、アンモニア水を用いてpH9に調整)を1.2ml/分の流量でシステムにポンプで注入した。フラクションをUV(220nm)により集めてフラクション32及び33を合わせて、凍結乾燥後に純粋な(II)を得た。フラクション28及び29も合わせて凍結乾燥後に純粋な(V)を得た。
【0083】
実施例11:化合物(III)のRP−18クロマトグラフィーによる最終精製
実施例9からのフラクション22をメタノール/ジメチルスルホキシド/2−プロパノール(1 ml、20:70:10)の混合物に溶解し、そしてWaters XTerra(R) Prep MS C18 10μプレカラム(寸法:19x10mm)を有するPhenomenex Luna(R)10μC18(2)カラム(寸法:30x100mm)にロードした。化合物を、水中5%から40%のアセトニトリルのグラジエントで5分以内に、そして40%から95%で27分以内に70ml/分の流量で溶出した。緩衝液(0.65M酢酸アンモニウム、アンモニア水でpH9に調整)を0.7ml/分の流量でシステムにポンプで注入した。フラクションをUV(220nm)により集めた。フラクション13を凍結乾燥して化合物(III)を得た。
【0084】
実施例12:化合物(II)、(III)及び(V)の固相抽出
微生物株ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)の発酵が完了した後、実施例4からの培養ブロス(培養ブロス約80L)をろ過した。XADを含むバイオマスを凍結乾燥し、続いてメタノールで抽出した(5x10L)。メタノール層を体積4Lまで真空濃縮し、続いて約3.0リットルのCHP−20P材料(MCI(R)ゲル、75−150μ、Mitsubishi Chemical Corporation)を充填して準備したカラムにアプライした。10%から95%のメタノールグラジエントを使用して溶出を行った。カラムフロー(120ml/分)をフラクションで集めた(1lのフラクション)。化合物(III)、(V)及び(II)を含むフラクションを合わせて溶媒をRotavaporで除去し、続いてフラクションプールを凍結乾燥した。そのフラクションを実施例9〜11に記載される手順を使用してさらに精製することができた。
【0085】
実施例13:化合物(VI)、(VII)及び(VIII)の液−液抽出
微生物株ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)の発酵が完了した後、実施例6からの培養ブロス(培養ブロス約90L)をろ過した。XADを含むバイオマスを凍結乾燥し、続いてメタノールで抽出した(5x10L)。メタノール抽出物を真空で1Lまで減らした。水1Lを加え、次いで水/メタノール層を4回ジクロロメタンで1L抽出した。その後ジクロロメタン層を完全に乾固させて褐色油状物を得た。
【0086】
実施例14:化合物(VI)、(VII)及び(VIII)のRP−18クロマトグラフィーによる予備分離
実施例13からのジクロロメタン抽出物全部を引き続いて5gステップで精製した。例えば:ジクロロメタン抽出物5gを50mlメタノールに溶解し、そしてWaters XTerra(R) Prep MS C18 10μプレカラム(寸法:19x10mm)を有するPhenomenex Luna(R) 10μC18(2)カラム(寸法:50x250mm)にロードした。化合物を水中5%から95%のアセトニトリルのグラジエントで40分の期間にわたって流量150ml/分で溶出した。緩衝液(0.65M酢酸アンモニウム、酢酸でpH4.6に調整)を流量1.5ml/分でシステムにポンプで注入した。フラクションを時間によって集めた(フラクションあたり1分)。フラクション29は化合物(VII)及び(VI)を含んでおり、そしてフラクション31は化合物(VIII)を含んでいた。両方のフラクションを凍結乾燥した。
【0087】
実施例15:化合物(VI)及び(VII)のRP−18クロマトグラフィーによる予備分離
実施例14からのフラクション29をメタノール/ジメチルスルホキシド/2−プロパノールの混合物(1ml、20:70:10)に溶解し、そしてWaters XTerra(R)Prep MS C18 10μプレカラム(寸法:19x10mm)を有するPhenomenex Luna(R) 10μ C18(2)カラム(寸法:30x100mm)にロードした。化合物を水中5%から95%のアセトニトリルのグラジエントで27分の期間にわたって流量60ml/分で溶出した。緩衝液(0.65M酢酸アンモニウム、アンモニア水でpH9に調整)を流量0.6ml/分でシステムにポンプで注入した。フラクションをUV(220nm)により集めた。フラクション74を凍結乾燥し、これは化合物(VII)及び(VI)を含んでいた。
【0088】
実施例16:RP−18クロマトグラフィーによる化合物(VIII)の予備分離
実施例14からのフラクション31をメタノール/ジメチルスルホキシド/2−プロパノールの混合物(1ml、20:70:10)に溶解し、そしてWaters XTerra(R) Prep MS C18 10μプレカラム(寸法:19x10mm)を有するPhenomenex Luna(R) 10μ C18(2)カラム(寸法:50x100mm)にロードした。化合物を水中5%から95%のアセトニトリルのグラジエントで27分の期間にわたって流量120ml/分で溶出した。緩衝液(0.65M酢酸アンモニウム、アンモニア水でpH9に調整)を1.2ml/分でシステムにポンプで注入した。フラクションをUV(220nm)により集めた。フラクション48−50を合わせて凍結乾燥し、これは化合物(VIII)を含んでいた。
【0089】
実施例17:RP−18クロマトグラフィーによる化合物(VI)及び(VII)の最終精製
実施例15のフラクション74をメタノール/ジメチルスルホキシド/2−プロパノールの混合物(1ml、20:70:10)に溶解し、そしてWaters XTerra(R)Prep MS C18 10μプレカラム(寸法:19x10mm)を有するPhenomenex Luna(R) 10μC18(2)カラム(寸法:21x100mm)にロードした。化合物を水中5%から40%のアセトニトリルのグラジエントで5分以内に、そして40%から95%で27分以内に流量45ml/分で溶出した。緩衝液(水中10%ギ酸、pH2)を流量0.5ml/分でシステムにポンプで注入した。フラクションをUV(220nm)により集めた。フラクション24を凍結乾燥して純粋な化合物(VII)を得、そしてフラクション27を凍結乾燥して純粋な化合物(VI)を得た。
【0090】
実施例18:RP−18クロマトグラフィーによる化合物(VIII)の最終精製
実施例16からのフラクション48−50をメタノール/ジメチルスルホキシド/2−プロパノールの混合物(1ml、20:70:10)に溶解し、そしてWaters XTerra(R) Prep MS C18 10μプレカラム(寸法:19x10mm)を有するPhenomenex Luna(R) 10μ C18(2)カラム(寸法:21x100mm)にロードした。化合物を水中5%から95%のアセトニトリルのグラジエントで27分以内に流量45ml/分で溶出した。緩衝液(水中10%ギ酸、pH2)を流量0.5ml/分でシステムにポンプで注入した。フラクションをUV(220nm)により集めた。フラクション17を凍結乾燥して純粋な化合物(VIII)を得た。
【0091】
実施例19:化合物(VI)、(VII)及び(VIII)の固相抽出
微生物株ナノシスティス・エスピー ST201196(DSM18870)の発酵の完了後、実施例6からの培養ブロス(培養ブロス約90L)をろ過した。XADを含むバイオマスを凍結乾燥し、続いてメタノールで抽出した(5x10L)。メタノール層を体積4Lまで真空濃縮し、続いてCHP−20P材料約3.0リットル(MCI(R)ゲル、75−150μ、Mitsubishi Chemical Corporation)を充填して準備したカラムにアプライした。10%から95%のメタノールグラジエントを使用して溶出を行った。カラムフロー(120ml/分)を1lのフラクションで集めた。化合物(VII)、(VI)及び(VIII)を含むフラクションを合わせて、溶媒をRotavaporで除去し、続いてフラクションプールを凍結乾燥した。そのフラクションは実施例14〜18に記載される手順にしたがってさらに精製することができた。
【0092】
実施例20:化合物(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)及び(X)のダイオードアレイ及び質量分析検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC−DAD−MS)による特徴付け
マクロラクトン(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)及び(X)を、サンプルマネージャー、バイナリ溶媒マネージャー及びPDA(検出器)を備えたWaters Acquity UPLCシステムで分析した。UPLCカラムとしてWaters Acquity UPLC BEH C18(1.7μ;2.1x100mm)を使用し、そして流量0.6ml/分で水:アセトニトリル(9:1)の15分以内で100%アセトニトリルまでのグラジエントを用いて溶出し、全ての溶媒は6.5mM酢酸アンモニウムを用いてpH4.6に緩衝化されていた。UVスペクトルをPDA検出器により200〜500nmの間の波長で記録した。質量スペクトルをBruker μTOF LC−MSで直交型エレクトロスプレーイオン化、0.5Hzのサンプリングレート及び150−1500muの検出限界を使用して記録した。
【0093】
実施例21:化合物(II)の特徴付け
マクロラクトン(II)は9.22分(TIC)で溶出された。UVスペクトルはλmax 204、232及び286nmが特徴であった。
【0094】
分子イオンをネガティブモードでm/z(I):814.3、M−H(−)、(100);815.3(47);816.3(73);817.3(30);818.3(16)に観測した。分子イオンをポジティブモードでm/z(I):816.3、M+H(+)、(17);817.3(10);818.3(14);819.3(6);833.3、M+NH4(+)、(100);834.3(44);835.3(74);836.3(29);837.3(16)に観測した。
【0095】
【表4】

【0096】
実施例22:化合物(III)の特徴付け
マクロラクトン(III)は8.95分(TIC)で溶出した。UVスペクトルはλmax 207及び232nmが特徴的であった。
【0097】
分子イオンをネガティブモードでm/z(I):780.4、M−H(−)、(100);781.4(48.1);782.4(44.6);783.4(10.5)に観測した。分子イオンをポジティブモードでm/z(I):782.4、M+H(+)、(25);783.4(15);784.4(11);799.4、M+NH4(+)、(100);800.4(47.4);801.4(43.6);802.4(16);803.4(3.3)に観測した。
【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【0100】
実施例23:化合物(IV)の特徴付け
マクロラクトン(IV)は8.28分(TIC)に溶出した。UVスペクトルはλmax
231nmが特徴的であった。
【0101】
分子イオンをネガティブモードでm/z(I):746.4、M−H(−)、(100);747.4(37.6)に観測した。分子イオンをポジティブモードでm/z(I):748.4、M+H(+)、(35.2);749.4(14.9);750.4(3.4);765.4、M+NH4(+)、(100);766.5(42.3);767.5(9.3)に観測した。
【0102】
【表7】

【0103】
実施例24:化合物(V)の特徴付け
マクロラクトン(V)は9.00分(TIC)に溶出した。UVスペクトルはλmax 204、230及び286nmが特徴的であった。
【0104】
分子イオンをネガティブモードでm/z(I):800.3、M−H(−)、(100);801.3(40);802.3(70.2);803.3(24)、804.3(11.5)に観測した。分子イオンをポジティブモードでm/z(I):802.3、M+H(+)、(18);804.3(12);819.3494、M+NH4(+)、(100);820.3518(42.9);821.3479(74.5);822.3(23.7);823(14)に観測した。
【0105】
【表8】

【0106】
【表9】

【0107】
【表10】

【0108】
実施例25:化合物(VI)の特徴付け
マクロラクトン(VI)は9.50分(TIC)に溶出した。UVスペクトルはλmax
207及び232nmが特徴的であった。
【0109】
分子イオンをネガティブモードでm/z(I):858.3、M−H(−)、(67.7);859.3(30.5);860.3(100);861.3(40.9);862.3(30.2);863.3(10.4)に観測した。分子イオンをポジティブモードでm/z(I):877.3、M+NH4(+)、(70);878.3(31.1);879.3(100);880.3(42.4);881.3(30.8);882.3(11)に観測した。
【0110】
【表11】

【0111】
【表12】

【0112】
【表13】

【0113】
実施例26:化合物(VII)の特徴付け
マクロラクトン(VII)は9.05分(TIC)に溶出した。UVスペクトルはλmax 232nmが特徴的であった。
【0114】
分子イオンをネガティブモードでm/z(I):824.3、M−H(−)、(89.5);825.3(39.2);826.3(100);827.3(39.7);828.3(9.6)に観測した。分子イオンをポジティブモードでm/z(I):826.3、M+H(+)、(89.9);827.3(39.5);828.3(100);829.3(39.8);830.3(9.4)に観測した。
【0115】
【表14】

【0116】
【表15】

【0117】
【表16】

【0118】
実施例27:化合物(VIII)の特徴付け
マクロラクトン(VIII)は9.55分(TIC)に溶出した。UVスペクトルはλmax 230及び284nmが特徴的であった。
【0119】
分子イオンをネガティブモードでm/z(I):808.3、M−H(−)、(87.2);809.3(33);810.3(100);811.3(32)に観測した。分子イオンをポジティブモードでm/z(I):810.3、M+H(+)、(89.6);811.3(34.5);812.3(100);813.3(33)に観測した。
【0120】
【表17】

【0121】
【表18】

【0122】
【表19】

【0123】
実施例28:化合物(X)の特徴付け
マクロラクトン(X)は9.43分(TIC)に溶出した。UVスペクトルはλmax 231及び279nmが特徴的であった。
【0124】
分子イオンをネガティブモードでm/z(I):902.2、M−H(−)、(45.6);903.2(25.0);904.2(100);905.2(45.4);906.2(54.0);907.2(22.4)に観測した。分子イオンをポジティブモードでm/z(I):921.3、M+NH4(+)、(49.0);922.3(20.6);923.3(100);924.3(40.1);925.3(71.3);926.3(30.4);927.3(9.1)に観測した。
【0125】
【表20】

【0126】
実施例29:化合物(II)〜(IX)についての細胞増殖のインビトロでの評価
式(I)の化合物の抗腫瘍活性を、以下に記載される方法による種々の腫瘍細胞株の細胞増殖の阻害を測定することにより決定した。
【0127】
14C−チミジン取り込みアッセイの実験条件:
1)細胞を、96ウェルCytostarマイクロプレートにおいて培地(10%ウシ胎児血清を添加したDMEM)180μl中に接種した。接種密度はHCT116について2500細胞/ウェル、HT29及びPC3について5000細胞/ウェル、そしてMDA−MB231、MDA−A1、H460及びB16F10について10000細胞/ウェルであった。
2)マイクロプレートを4時間37℃にて5%CO2でインキュベートした。
3)試験化合物10μlを加えた。
4)マイクロプレートを72時間37℃にて5%CO2でインキュベートした。
5)14C−チミジンを10μCi/mlで10μl加えた。
6)マイクロプレートを24時間37℃にて5%CO2でインキュベートした。
7)細胞中に取り込まれた放射能をMicrobeta Trilux放射能シンチレーションカウンター(Wallac)で測定した。
【0128】
ATPバイアビリティーアッセイの実験条件:
1)細胞を、96ウェルマイクロプレートにおいて培地135μl中に接種した。
使用した培地は、HL60及びCEM細胞株については10%ウシ胎児血清を追加したRPMI、そして正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)については10%FCSを含むDMEMであった。接種密度は、HL60及びCEMについては25000細胞/ウェル、そしてNHDFについては7500細胞/ウェルであった。
2)マイクロプレートを4時間37℃にて5%CO2でインキュベートした。
3)試験化合物15μlを加えた。
4)マイクロプレートを96時間インキュベートした。
5)溶解試薬及びルシフェラーゼ/ルシフェリンの混合物100μlを加えた(CellTiterGlo、Promega)。発光をMicrobeta Triluxカウンター(Wallac)で測定した。
【0129】
【表21】

【0130】
細胞増殖試験の結果を表1、2及び3に示す。
【0131】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん疾患の処置及び/又は予防のための、式(I)
【化1】

[式中、
X及びYは、互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成し、
R1及びR2は互いに独立してH、Cl又はBrであり、
R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R5はメチル又はエチルである]
の化合物又は式(I)の化合物の生理学的に許容しうる塩の使用。
【請求項2】
X及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成する、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項3】
R1及びR2の少なくとも1つがCl又はBrである、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項4】
R3はH又は(C1−C6)−アルキルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項5】
R4はHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項6】
R5はエチルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項7】
X及びYは、一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは、それらが結合しているC原子間の二重結合をさらに形成し、
R1及びR2は互いに独立して、H、Cl又はBrであり、
R3及びR4は互いに独立して、H、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R5はメチル又はエチルである、
請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
X及びYは、一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは、それらが結合しているC原子間の二重結合をさらに形成し、
R1及びR2は互いに独立して、H、Cl又はBrであり、
R3はH又は(C1−C6)−アルキルであり、
R4はHであり、そして
R5はメチル又はエチルである、
請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項9】
X及びYは、一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは、それらが結合しているC原子間の二重結合をさらに形成し、
R1及びR2は両方ともClであり、
R3はH又は(C1−C6)−アルキルであり、
R4はHであり、そして
R5はメチル又はエチルである、
請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物を少なくとも1つ含む、がん疾患の処置及び/又は予防のための医薬組成物。
【請求項11】
式(I)
【化2】

[式中、
X及びYは、互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYは一緒になって基−O−を形成するか、又はX及びYは一緒になってそれらが結合しているC原子間にさらなる結合を形成し、
R1及びR2は互いに独立して、H、Cl又はBrであり、
R3はH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R5はメチル又はエチルであり、
ただし、
X及びYが互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2若しくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、又はX及びYが一緒になって基−O−を形成し、
R1及びR2が互いに独立してH又はClであり、
R3がH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキル又は(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R4はH、(C1−C6)−アルキル又はC(=O)−(C1−C6)−アルキルである場合、
R5はエチルであることはない]
の化合物、又は式(I)の化合物の生理学的に許容しうる塩。
【請求項12】
請求項11に記載の式(I)の化合物又はその生理学的に許容しうる塩の製造方法であって、
1. 株ナノシスティス・エスピー ST 201196(DSM 18870)、又はその変異株及び/若しくは突然変異株の1つを、適した条件下で、Cl源及び/又はBr源を含有する培地中で、式(I)の化合物の1つ又はそれ以上が培地中に蓄積するまで発酵させること、
2. 培地から式(I)の化合物を単離すること、並びに
3. 場合により、式(I)の化合物を誘導体化し、そして/又はそれを生理学的に許容しうる塩に変換すること
を含む、上記方法。
【請求項13】
少なくとも1つのBr源が培地中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項11に記載の式(I)の化合物を少なくとも1つ含む医薬組成物。

【公表番号】特表2012−512224(P2012−512224A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541342(P2011−541342)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066805
【国際公開番号】WO2010/069850
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】