説明

マグネシウム合金加工部品溶接方法

【課題】マグネシウム合金加工部品溶接方法を提供する。
【解決手段】マグネシウム合金加工部品溶接方法は、2つの新技術を含み、その1つは、マグネシウム合金表面を改質し、無電解ニッケル鍍金を経過するプロセス技術であり、その2つ目は、特用の溶接補助剤を製作し、数種の無鉛を配合した錫合金溶接料である。前記溶接方法が経過する工程は、マグネシウム加工部品表面が先ず中リン(リン含有量3〜7%)無電解ニッケル鍍金プロセスを経て、更に、高リン(リン含有量7〜12%)無電解ニッケル鍍金プロセスを経て、最後に錫溶接プロセスを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が属する技術分野は、マグネシウム合金、溶接、表面処理とプリント鍍金である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、台湾専利出願番号095117849の延伸的運用発明である。マグネシウム合金加工部品の性質は、熱処理に対して極めて敏感であり、マグネシウム合金の熱膨張係数は、一般の金属の2〜3倍であり、受熱が不均等である場合、マグネシウム合金内部に変形及び内応力の問題が残される。また、受熱の温度が高すぎる場合も、偏析変性の問題が残される。従って、従来の熱溶接(溶接温度が素材の融点を超える)の方法は、合金加工部品の溶接に適合しておらず、薄板材の溶接は、特に困難である。薄板材にとって好適な方法として、冷却溶接(溶接温度が素材の融点より低い)で前記の欠陥を回避することが考慮されているが、前人の努力の成果は多くない。
【0003】
US Patent 4,613,069中falke,et al等は、銅ニッケル合金を用いてマグネシウム合金表面に電気鍍金し、錫鉛合金を用いてマグネシウム合金に冷却溶接しているが、このプロセスは、溶接補助剤のマグネシウム合金に対する腐蝕の問題が考慮されていない。
【0004】
US Patent 4,925,084中Perssonは、局部爆破法を使用し、アルミマグネシウム合金を溶接しているが、使用するアルミマグネシウム合金は、超塑性能力を有した合金類に制限され、同時に加工部品の形状及びコストの制限を受ける。
【0005】
US Patent 4,739,920中Kujasは、ステアリン酸(stearic acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、オレイン酸(oleic acid)を使用して溶接補助剤の主成分としているが、このプロセスは、溶接補助剤のマグネシウム合金に対する腐蝕の問題が考慮されていない。
【特許文献1】台湾専利出願番号095117849号明細書
【特許文献1】US Patent 4,613,069号公報
【特許文献1】US Patent 4,925,084号公報
【特許文献1】US Patent 4,739,920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目標は以下のとおりである:
好適な無電解ニッケル鍍金プロセスを開発し、マグネシウム合金を変質し、冷却溶接に適した素材表面を達成する。
【0007】
特に溶接補助剤として用い、無鉛錫合金溶接量を配合し、マグネシウム合金加工部品の冷却溶接に適用する目的を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
無電解ニッケル鍍金プロセスに関し、無電解ニッケル鍍金層と半田との間の湿潤性質と界面反応が接点の信頼性を有するので、無電解ニッケル鍍金は、はんだ工芸中の拡散隔絶層と半田層の役割として用いられる。湿潤性質については、無鉛はんだ(純錫、錫、銀、銅共晶はんだ)の無電解ニッケル鍍金層上におけるその潤湿性とリン含有量に関係する。無電解ニッケル鍍金層のリンの含有量の増加に伴い、はんだと無電解ニッケル鍍金層との間の湿潤性は、好転の趨勢を有する。そのうち、純錫と無電解ニッケル鍍金層との間の湿潤性が錫銀はんだよりも優れているが、錫ビスマスはんだは、無電解ニッケル鍍金層上では比較的良好ではない湿潤性を表し、総合的に、無電解ニッケル鍍金層のリン含有量が9wt%より大きい時、上記三種の無鉛はんだ系統に対して好適な湿潤性質を有する。無電解ニッケル鍍金層の表面がニッケルの酸化物の生成を有し、溶接補助剤を使用し、先ず表面の酸化物を除去する溶接の状況の下、はんだと無電解ニッケル鍍金層との間は、湿潤しておらず、はんだと無電解ニッケル鍍金層間の付着強度は明らかに悪い。溶接補助剤を加え、加工部品表面の酸化物を除去した後、その潤湿性質は大幅に改善される。この状態は、マグネシウム合金加工部品においてより複雑であり、無電解ニッケル鍍金層が十分な厚さ(通常20μm)を有していない限り、無電解ニッケル鍍金層の大部分は、微小な孔が残るので、加工部品表面がEDX観察によってマグネシウムの酸化物、窒酸化物、炭酸化物を検測し、本発明中、ニッケルの窒化物と同一ステップで解決する必要がある。
【0009】
また、界面反応について、42Sn-58Biはんだと中リン無電解ニッケル鍍金(Ni-5.52wt%P)層とのはんだ接合界面箇所にNiSnの金属化合物の生成を有し(通常は、疲労断裂の要因である)、高いリンの含有量の無電解ニッケル鍍金と電気鍍金ニッケルの例では、この金属化合物は発生しない。これは、高リン無電解ニッケル層をマグネシウム合金加工部品表面と冷却溶接する第1の原因である。次に、高リン無電解ニッケル鍍金層は、通常、圧縮内応力(compressive stress)を表し、溶接時の温度を耐受でき、マグネシウム合金素材の熱膨張係数が一般の金属の2〜3倍である条件では、引張内応力(tensile stress)を呈する中リン無電解ニッケル鍍金層が高い付着性を有する。
【0010】
冷却溶接材料は2つの成分を有する:その1つは、はんだ材料合金であり、世界各国組織が提案する冷却用無鉛錫合金の範囲は、(1)米国NEMI協会(Sn95.5/Ag3.9/Cu0.6)、(2)日本JEITA協会(Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5)、(3)IDEAL(Sn96.5/Ag3.8/Cu0.7)であり、成分の差異に従い、合金の融解温度も異なり、およそ217±4℃の間にあり、また、(4)米国NEMI協会は、(Sn42/Bi58)融解本土139℃も推奨しているが、既に統一の趨勢を有している。銅成分は、マグネシウム合金電解腐蝕の可能性を増加させるが、成分の含有量が低いので、錫と合金を形成する趨勢が大きい。熱循環実験と耐久性実験中、電解腐蝕の現象は発生しない。従って、以上4種のはんだ材料はいずれも本発明のテスト項目の内にある。
【0011】
冷却材料のもう1つの主成分は、溶接補助剤であり、現存の各式配合方法は、多く、いずれもキャリア剤(Carrier Materials)、活性剤(Activator)、溶剤(Solvent)、潤湿剤(Wetting Agent)を含み、配合方法の設計の基礎とし、はんだ待ち表面の軽度の酸化物と付着汚物を削除し、還元反応を発生し、酸化物を分解させ、除去させる。この種の効率的な清掃効用は、はんだ材料(solder)とはんだ待ち表面に迅速にIMCを発生させ、はんだ付け(Wetting)のプロセスが機能を発生することができる。但し、マグネシウム合金加工部品に面する時、3つの問題を解決する必要がある。その1つは、マグネシウム合金が活発過ぎ、溶接補助剤中の活性成分が開放する酸類または塩類がマグネシウム合金加工部品に対して腐蝕するのを回避しなければならず、2つ目は、同一の理由であり、マグネシウム合金加工部品が冷却過程中、時間に伴い鈍化させ、マグネシウム合金酸化膜が金属面の間に生成されることを回避する必要があり、3つ目は、塩性のマグネシウム合金酸化物が融解溶接補助剤表面に大量の浮汚物を発生し大量の噴出除去用気体を与えなければならない。本発明は、以上の3つの問題に以下の解決試案を提供する。
【0012】
その1つは、溶接補助剤に特別にマグネシウムとニッケルの酸化物、窒化物、炭酸化物に融解除去能力を与えた油融解性接合剤(簡易に接合剤と呼ぶ)を加えて達成され、選択できる油融解性接合剤は、コハク酸(Succinic acid)、イタコン酸(Itaconic acid)、アジピン酸(Adipic acid)、グルタル酸(Glutaric acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、セバシン酸(sebacic acid)、2−ブチルオクタル酸(2-butyloctanoic acid)、2−ブチルデカル酸(2-butyldecanoic acid)、2−ヘキシルデカン酸(2-hexyldecanoic acid)、クエン酸(Citric acid)のジエチレントリアミンまたはエチレンジアミンまたはトリエチレンテトラミンの酸塩中和化合物を含み、前記の酸塩中和が達するpH範囲は、8〜11であり、マグネシウム合金に対する腐蝕を回避し、油融解性接合剤の添加濃度範囲は、0.1〜0.5meq/kgfluxにある。
【0013】
その2つ目は、溶接補助剤に特別にマグネシウムとニッケル金属表面に暫定的に鈍化保護を施し、溶接時の高温を耐受し、酸化する操作の条件を容易にする。前記能力は溶接補助剤中に鈍化能力を有するマイナスイオン(簡単に鈍化剤と呼ぶ)を添加し、達成され、選択できるマイナスイオンは、フッ素イオン、ケイ酸イオン、モリブデン酸イオン、アルミ酸イオン、バナジウム酸イオンを含み、マイナスイオンの添加濃度範囲は、0.01〜0.05mol/kg fluxである。
【0014】
その3つ目は、溶接補助剤に特別に溶接温度以下で開放される惰性気体を加え、溶化した溶接補助剤表面の浮きカスを溶接作業領域から吹き離す能力であり、前記能力は、溶接補助剤中に温度上昇気化能力を有する物質(簡単に揮発剤)を添加して達成され、選択できる物質は、ヒドラジン(hydrazine)が加熱し酸化される時、放出する窒素ガス、ヒドロキシルアミン ヒドロフルオリド(hydroxylamine hydrofluoride)が加熱時に放出するアンモニアガス、メラミンリン酸塩(melamine phosphate) が加熱時に放出する
アンモニアガスを含み、その添加濃度の範囲が気体量0.1〜0.5mol/kg fluxにある。
【発明の効果】
【0015】
好適な無電解ニッケル鍍金プロセスを開発し、マグネシウム合金を変質し、冷却溶接に適した素材表面を達成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
マグネシウム合金AZ31板材試片、厚さ0.4mmが、熱プレス成型を経て、3mm外径の銅製ナットをその上に溶接することを試す。専利出願第095117849号の例1が示すプロセスは、初回の無電解ニッケル鍍金の工程(この段階の板材試片は、簡易に試片Aと呼ぶ)を行い、水洗いせずに、直接、操作条件表1が示すような高リン無電解ニッケル鍍金を処理槽中に放入し、ニッケルに化学蒸着のプロセス(この段階の板材試片は、簡易に試片Bと呼ぶ)を行う。
【0017】
(表1)高リン無電解ニッケル鍍金操作条件

【0018】
表2が示す商品化溶接補助剤(アルファ100T2)を整備し、対応する錫合金微粒子と調整し異なる成分のソルダークリームに攪拌し、表2が示すようにリフロー後にナットをマグネシウム合金試片上に溶接し、その後、引張試験を行い、表2が示す結果を得ることができる。
【0019】
(表2)マグネシウム冷却溶接試験条件と結果

【0020】
符号注釈:
1.溶接料A:Sn95.5/Ag3.9/Cu0.6合金の組み合わせである。
2.溶接料B:Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5合金の組み合わせである。
3.溶接料C:Sn96.5/Ag3.8/Cu0.7合金の組み合わせである。
4.溶接料D:Sn42/Bi58合金の組み合わせである。
5.FLUX0:アルファ100T2、アルファ金属株式会社により提供。
6.FLUX1:アルファ100T2が基質であり、5%のコハク酸接合剤を混入。
7.FLUX2:アルファ100T2が基質であり、1%の鈍化剤フッ化アンモニアを混入。
8.FLUX3:アルファ100T2が基質であり、2%の揮発剤メラミンリン酸塩を混入。
9.FLUX12:アルファ100T2が基質であり、5%のコハク酸と1%の鈍化フッ化アンモニアを混入。
10.FLUX13:アルファ100T2が基質であり、5%のコハク酸と2%の揮発剤メラミンリン酸塩を混入。
11.FLUX23:アルファ100T2が基質であり、1%の鈍化剤フッ化アンモニアと2%の揮発剤メラミンリン酸塩を混入。
12.FLUX123:アルファ100T2が基質であり、5%のコハク酸接合剤と1%の鈍化剤フッ化アンモニアと2%の揮発剤メラミンリン酸塩を混入。
13.引張強度の単位kgf/cm
○:湿潤性有り、溶接完成。
●:湿潤性無し、溶接失敗。
△:腐蝕状態無し。
▲:腐蝕状態有り。
◇:ステッチ溶接、空溶接現象無し。
◆:ステッチ溶接、空溶接現象有り。
□:60日腐蝕発生無し。
■:60日徐々に腐蝕発生有り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの新技術を含む溶接方法であって、
その1つ目は、マグネシウム合金表面を改質し、無電解ニッケル鍍金を経過するプロセス技術であり、
その2つ目は、溶接補助剤を製作し、数種の無鉛を配合した錫合金溶接料であり、
溶接方法が経過する工程は、マグネシウム加工部品表面が先ず中リン(リン含有量3〜7%)無電解ニッケル鍍金プロセスを経て、更に、高リン(リン含有量7〜12%)無電解ニッケル鍍金プロセスを経て、最後に錫溶接プロセスを行うマグネシウム合金加工部品溶接方法。
【請求項2】
前記「高リン(リン含有量7〜12%)無電解ニッケル鍍金プロセス」の組成物は、水、フッ素イオン、アンモニアイオン、ニッケルイオン、次亜リン酸イオン、錯化剤および緩衝材となるC2−C8有機酸イオンを含み、そのうち、該錯化剤は、ジエチレントリアミンまたはエチレンジアミンまたはトリエチレンテトラミンまたは、その組み合わせから選択する請求項1記載のマグネシウム合金加工部品溶接方法。
【請求項3】
前記有機酸イオンはクエン酸イオンである請求項2記載のマグネシウム合金加工部品溶接方法。
【請求項4】
前記高リン無電解ニッケル鍍金組成物は、80−97℃に介在する温度を維持され、且つ3〜4に介在するpH値を有し、そのうち、フッ素イオン、アンモニアイオン、ニッケルイオン、次亜リン酸イオン、該錯化剤濃度及び有機酸イオンの濃度は、それぞれ0.35−0.53M、0.35−0.53M、0.13−0.15M、0.1−0.2M、0.005−0.01M、及び0.07−0.1Mである請求項2記載のマグネシウム合金加工部品溶接方法。
【請求項5】
使用される溶接料が無鉛の錫合金溶接料であり、選択できる合金の種類は、錫銀銅及び錫ビスマス合金を含む前記請求項1記載の錫溶接。
【請求項6】
溶接およびリフロープロセスを含む請求項1記載の錫溶接プロセス。
【請求項7】
マグネシウム及びニッケルのフッ化物、窒酸化物、炭酸化物が与える融解除去能力を有する溶接補助剤を指し、前記能力が溶接補助剤中に油融解性接合剤(簡易に接合剤と呼ぶ)を加えて達成され、選択できる油融解性接合剤は、2−ブチルオクタル酸(2-butyloctanoic acid)、2−ブチルデカル酸(2-butyldecanoic acid)、2−ヘキシルデカン酸(2-hexyldecanoic acid)、コハク酸(Succinic acid)、イタコン酸(Itaconic acid)、アジピン酸(Adipic acid)、グルタル酸(Glutaric acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、セバシン酸(sebacic acid)、クエン酸(Citric acid)のジエチレントリアミンまたはエチレンジアミンまたはトリエチレンテトラミンの酸塩中和化合物を含み、前記の酸塩中和が達するpH範囲は、8〜11であり、マグネシウム合金に対する腐蝕を回避し、油融解性接合剤の添加濃度範囲は、0.1〜0.5meq/kgfluxにある請求項1記載の特用溶接補助剤。
【請求項8】
マグネシウムとニッケル金属表面に暫定的に鈍化保護を施し、溶接時の高温を耐受し、酸化する操作の条件を容易にし、前記能力は溶接補助剤中に鈍化能力を有するマイナスイオン(簡単に鈍化剤と呼ぶ)を添加し、達成され、選択できるマイナスイオンは、フッ素イオン、ケイ酸イオン、モリブデン酸イオン、アルミ酸イオン、バナジウム酸イオンを含み、マイナスイオンの添加濃度範囲は、0.01〜0.05mol/kg fluxである請求項1記載の特用溶接補助剤。
【請求項9】
溶接温度以下で開放される惰性気体を有し、溶化した溶接補助剤表面の浮きカスを溶接作業領域から吹き離す能力であり、前記能力は、溶接補助剤中に温度上昇気化能力を有する物質(簡単に揮発剤)を添加して達成され、選択できる物質は、ヒドラジン(hydrazine)が加熱し酸化される時、放出する窒素ガス、ヒドロキシルアミン ヒドロフルオリド(hydroxylamine hydrofluoride)が加熱時に放出するアンモニアガス、メラミンリン酸塩(melamine phosphate) が加熱時に放出するアンモニアガスを含み、その添加濃度の範囲が気体量0.1〜0.5mol/kg fluxにある請求項1記載の特用溶接補助剤。

【公開番号】特開2009−113114(P2009−113114A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67387(P2008−67387)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(508082304)▲めい▼鋭科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】