説明

マグネットシートに対する表示体形成方法及びこの方法で表示体が形成されたマグネットシート

【課題】 マグネットシートの着磁面に視認性よく表示体を形成することができるとともに、マグネットシートが磁着状態で高温にさらされたり、長期間磁着状態が持続したりしても着磁面に形成した表示体が被着面に転写することのないマグネットシートへの表示体形成方法及びこの方法で表示体が形成されたマグネットシートを提供する。
【解決手段】 本発明は、回転ロール1の表面に文字、図形等の表示体の鏡像2をレーザー加工により微小な細孔を密集させることで加工形成し、マグネットシート4の着磁面4aに対し加熱してなる前記回転ロールを押圧することによりマグネットシートの着磁面に所望の文字、図形等の表示体5を転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂結合剤により磁性粉末を結合した樹脂結合磁石(ボンド磁石)に表示体を形成する方法に係り、特にシート状のマグネットシートの着磁面に対し、表示体の視認性に優れ、かつ表示体が磁着面に転写することのない表示体形成方法及びこの方法で表示体が形成されたマグネットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネットシートに対する原産国表示やメーカー名の表示は、最終消費者向けの製品ではその包装等に表示形成されることはあっても、加工メーカーに提供される10、20メートル巻等のマグネットシートの原反ロールに対して表示形成されることはなかった。しかしながら、製造者責任の明確化等の社会的な趨勢により、原反ロールから細かく裁断されて小片となった商品であってもメーカー名、原産国等の表示が確実に形成され、最終消費者にまで確認され得ることが求められている。
【特許文献1】特開2004−29095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
製品としての使用時の表面となるマグネットシートの非着磁面には、表示体が形成されるカラーフィルム等の印刷シートが貼着されることから、この面にはメーカー名、原産国等を表示することができないので、これらは裏面である着磁面に形成しなければならなかった。
しかしながら、マグネットシートにおける磁性体に磁着する側となる着磁面に、印刷等のインク、塗料等で表示体を形成した場合には、そのマグネットシートが磁着した使用状態で高温にさらされたり、磁着した状態が長期間持続したりするとその表示体のインク、塗料等が被着面に転写してしまうという問題があった。また、マグネットシートそれ自体の色は、多くは黒っぽい暗色であることから、視認性よく表示体を形成することは難しい問題であった。
【0004】
そこで本発明は、視認性のよい表示体をマグネットシートの着磁面に形成することができるとともに、マグネットシートが磁着状態で高温にさらされたり、長期間磁着状態が持続したりしても着磁面に形成した表示体が被着面に転写することのないマグネットシートへの表示体形成方法及びこの方法で表示体が形成されたマグネットシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するため、本発明のマグネットシートへの表示体形成方法は、回転ロールの表面に文字、図形等の表示体の鏡像を加工形成し、マグネットシートの着磁面に対し加熱してなる前記回転ロールを押圧することによりマグネットシートの着磁面に所望の文字、図形等の表示体を転写することを特徴とするものである。
【0006】
また、回転ロールの表面に形成する表示体の鏡像は、微小な細孔を密集させて形成し、マグネットシートの着磁面に転写される表示体を粗面により形成したことを特徴とするものである。
【0007】
また、表示体の鏡像は、回転ロールの表面にレーザー加工することにより形成することを特徴とするものである。
【0008】
また、マグネットシートは、一面を各種表示体が形成される非着磁面とし他面を磁性体に磁着される着磁面としたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のマグネットシートは、着磁面を磁性体に磁着して使用されるマグネットシートであって、着磁面に対し文字、図形等の表示体の鏡像が形成された回転ロールの加熱面を押圧することにより所望の文字、図形等の表示体を着磁面に転写したことを特徴とするものである。
【0010】
また、表示体を転写形成したマグネットシートの着磁面には、移行防止剤をコーティングしたことを特徴とするものである。
【0011】
また、マグネットシートは、一面を各種表示体が表示される非着磁面とし他面を磁性体に磁着される着磁面としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、回転ロールの表面に文字、図形等の表示体の鏡像を加工形成し、マグネットシートの着磁面に対し加熱してなる前記回転ロールを押圧することによりマグネットシートの着磁面に所望の文字、図形等の表示体を転写することで、マグネットシートの着磁面に対しインク、塗料等を使わずに表示体が形成されることから、マグネットシートが磁着する磁性体に表示体が転写する恐れが全くないものである。
【0013】
また、回転ロールの表面に形成する表示体の鏡像は、微小な細孔を密集させて形成し、マグネットシートの着磁面に転写される表示体を粗面により形成したことで、マグネットシートの表示体は、ほとんど凹凸の段差を感じさせることのないざらつき程度の粗面で形成することができ、これによりマグネットシートの磁着性能に影響を与える恐れがないとともに、マグネットシート自体の暗色により良好な視認性が発揮し得なかった従来のインク等による表示体と比較して、粗面により形成したことからマグネットシートの平滑面部分から浮き上がって白く見える表示体は視認性を十分に確保することができる。
【0014】
また、表示体の鏡像は、回転ロールの表面にレーザー加工することにより形成することで、彫刻加工と比較して回転ロールへの表示体の鏡像作成が容易に行えるとともに、微小な細孔・凹みからなる点や線の密度や加工深さを容易に設定することができる。
【0015】
また、本発明のマグネットシートは、着磁面を磁性体に磁着して使用されるマグネットシートであって、着磁面に対し文字、図形等の表示体の鏡像が形成された回転ロールの加熱面を押圧することにより所望の文字、図形等の表示体を着磁面に転写したことで、着磁面に対しインク、塗料等を使わずに表示体が形成されることから、マグネットシートが磁着する磁性体に表示体が転写する恐れが全くなくなるものである。
【0016】
また、表示体を転写形成したマグネットシートの着磁面には、移行防止剤をコーティングすることで、マグネットシートが磁着する磁性体に移行する恐れがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のマグネットシートに対する表示体形成方法としては、図1に示すごとく、表面に所望する文字、図形等の表示体の鏡像2(鏡に映した像のごとく対称な像)を全周にわたってレーザー加工により微小な細孔を密集させた粗面により形成した回転ロール1と、わずかな隙間を設けて相対向してロール3とを配置する。そして、加熱した一定速度で回転する回転ロール1とロール3との間に、合成樹脂材に磁性粉を混入しこれを押出成形、カレンダー加工等でシート状に形成した長尺なマグネットシート4(一面を各種表示体が形成される非着磁面とし他面を磁性体に磁着される着磁面とする)を、その着磁面4aを回転ロール1の加熱した面に対向させて連続的に押圧状態で通過させる。これにより、マグネットシート4の着磁面4aには、図1に示すごとく、表示体の鏡像2が型となって転写され凹凸が反転した形状で所望の文字、図形等からなる表示体5が自動的に転写形成されるものである。
【0018】
回転ロール1に形成する表示体の鏡像2は、レーザー加工による微小な細孔・凹みからなる点及びその点を連続させた線からなる粗面から形成され、レーザーの制御によりその細孔・凹みの密度と深さを変えることで転写するための型の大きさや面粗度を自在に設定することができる。すなわち、点や線の密度を細かくすれば、表示体は濃く現れ、粗くすれば表示体は薄く現れる。また、点や線の深さを浅くすれば(例えば数μm)、マグネットシート4に形成される表示体5は、ざらつき程度のごくわずかな凸状の点や線からなる粗面により形成され、マグネットシート4の磁着性能に影響を与える恐れがない。また、回転ロール1に粗面により表示体の鏡像2を形成する手段としては、レーザー加工以外でもよく、例えば細かな研磨剤を圧搾空気でノズルから吹き付けることで、マスキングシートに保護されていない部分が削れて粗面となり模様となって残るサンドブラスト加工でもよいものである。
【0019】
前記回転ロール1は、表示体を形成するための専用ロールとしてもよいが、マグネットシートを製造する際に用いる圧延ロール、送りロール等を兼用させてもよいものである。また、表示体の鏡像2をレーザー加工するに際して、加熱ロール1に直接加工してもよいが、レーザー加工の深さを数μmと浅くすることができるので、回転ロール1にメッキを施して、そのメッキ層にレーザー加工で表示体の鏡像を形成することも可能となる。この回転ロール1の内側に加熱部材を組み込んで、その外周面を適宜な温度に加熱制御するものである。前記ロール3は、自ら回転駆動してもよいが、フリーロールとして回転駆動機構を備えないものであってもよい。
【0020】
また、このようにして表示体5が形成されたマグネットシート4に対し、マグネットシートが磁性体に移行することを防止するために、着磁面4aに移行防止剤を数μm程度の厚さでコーティングしてもよい。そして、着磁面4aにはN極とS極を交互に多極着磁が行われ、非着磁面には上質紙、コート紙等の紙、合成紙又は合成樹脂フィルムからなる印刷シートが被着される。尚、表示体形成・着磁・印刷シート被着の工程の順序は、特に限定されないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のマグネットシートへの表示体形成方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 回転ロール
2 表示体の鏡像
3 ロール
4 マグネットシート
4a 着磁面
5 表示体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ロールの表面に文字、図形等の表示体の鏡像を加工形成し、マグネットシートの着磁面に対し加熱してなる前記回転ロールを押圧することによりマグネットシートの着磁面に所望の文字、図形等の表示体を転写することを特徴とするマグネットシートに対する表示体形成方法。
【請求項2】
回転ロールの表面に形成する表示体の鏡像は、微小な細孔を密集させて形成し、マグネットシートの着磁面に転写される表示体を粗面により形成したことを特徴とする請求項1記載のマグネットシートに対する表示体形成方法。
【請求項3】
表示体の鏡像は、回転ロールの表面にレーザー加工することにより形成することを特徴とする請求項1記載のマグネットシートに対する表示体形成方法。
【請求項4】
マグネットシートは、一面を各種表示体が形成される非着磁面とし他面を磁性体に磁着される着磁面としたことを特徴とする請求項1記載のマグネットシートに対する表示体形成方法。
【請求項5】
着磁面を磁性体に磁着して使用されるマグネットシートであって、着磁面に対し文字、図形等の表示体の鏡像が形成された回転ロールの加熱面を押圧することにより所望の文字、図形等の表示体を着磁面に転写したことを特徴とするマグネットシート。
【請求項6】
表示体を転写形成したマグネットシートの着磁面には、移行防止剤をコーティングしたことを特徴とする請求項5記載のマグネットシート。
【請求項7】
マグネットシートは、一面を各種表示体が表示される非着磁面とし他面を磁性体に磁着される着磁面としたことを特徴とする請求項5記載のマグネットシート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−30290(P2008−30290A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205839(P2006−205839)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000137339)株式会社マグエックス (16)
【Fターム(参考)】