説明

マグネット式ロッドレスシリンダ

【課題】接続マウントを設置するしないにかかわらず、常にピストンとスライド体とが衝接位置にて停止可能なマグネット式ロッドレスシリンダを提供する。
【解決手段】接続マウント5を設置しないでロッドレスシリンダ1を使用する場合、各ピストンが衝接位置に位置する際の、スライド体4のエンドキャップ7との距離が、接続マウント5が取り外されたことにより衝接距離よりも遠くなる。そこで、両エンドキャップ7、7にスライド体4側へと張り出し、スライド体4と衝接可能な外部ダンパ30、30を夫々取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダチューブの両端に連結されるエンドキャップ又はシリンダチューブに外装されるスライド体に、外部ダンパを着脱自在に設けてなるマグネット式ロッドレスシリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピストン本体とスライド体(シリンダチューブの外部にてスライド自在に設けられたもの)とを一体成形してなるスリット式ロッドレスシリンダにおいては、シリンダチューブの両端に連結されるエンドキャップとピストンとの衝突時に、そのショック等を吸収するため、エンドキャップに各種ダンパを取り付けることがある。このようなダンパを備えたスリット式ロッドレスシリンダとしては、たとえば特許文献1や特許文献2に開示されているようなものがある。
一方、従来より、マグネットを利用してシリンダチューブ内に収納されるピストンとシリンダチューブ外に設置されるスライド体とを連結してなるマグネット式ロッドレスシリンダが知られており、たとえば特許文献3に開示されているようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−318210号公報
【特許文献2】特開平11−13712号公報
【特許文献3】実公平7−28403号公報
【0004】
ここで、特許文献1に開示されているスリット式ロッドレスシリンダのダンパに係る構成について図8を基に説明する。図8は、スリット式ロッドレスシリンダ71の説明部分断面図である。
スリット式ロッドレスシリンダ71は、従来より一般的に知られているスリット式ロッドレスシリンダと略同様の構成を備えたものであって、図示しないスリットが設けられたシリンダチューブ72内に、シリンダチューブ72の軸方向にそってスライド自在にピストン73を収納してなるものである。また、ピストン73は、スリットを通ってシリンダチューブ72外部へと延設され、スライド体74として成形されている。スライド体74の上面には、ガイドレール76に案内される接続マウント75が取り付けられており、該接続マウント75上にワーク等を載置可能としている。
【0005】
また、シリンダチューブ72の両端(図8では左端のみ示す)にはエンドキャップ77が連結されており、ピストン73との間にシリンダ室78が形成されている。そして、該シリンダ室78へと流体が供給されることによって、ピストン73、すなわちスライド体74と接続マウント75とがスライド移動する。このスライド移動によるエンドキャップ77とピストン73との衝突によるショックを吸収するため、エンドキャップ77のピストン73との衝突位置に内部ダンパ79が設けられている。
【0006】
一方、特許文献2に開示されているスリット式ロッドレスシリンダは、特許文献1のスリット式ロッドレスシリンダ71と略同様の構成を備えたものであって、エンドキャップに、内部ダンパに加えて、スライド体と衝突する外部ダンパを備えている。尚、特許文献2のスリット式ロッドレスシリンダは、接続マウントを使用しないタイプのものである。そして、外部ダンパ及び内部ダンパによって、スライド体及びピストンとエンドキャップとの衝突によるショックを同時に吸収しようとするものである。
【0007】
さらに、特許文献3に開示されているマグネット式ロッドレスシリンダ81について図9を基に説明する。図9は、マグネット式ロッドレスシリンダ81の部分説明図である。
マグネット式ロッドレスシリンダ81は、従来より一般的に知られているマグネット式ロッドレスシリンダと略同様の構成を備えており、シリンダチューブ82内に内側磁石を有したピストン(図示せず)をスライド自在に収容するとともに、外側磁石を有したスライド体84をシリンダチューブ82越しにピストンと磁気結合させたものである。そして、シリンダチューブ82内でピストンを移動させることによって、ピストンと磁気結合したスライド体84をピストンとともに移動させる。尚、シリンダチューブ82の左右両端には図示しないエンドキャップが連結されており、スライド体84及びピストンはエンドキャップとの衝接位置まで移動可能となっている。また、スライド体84の上面には、連結金具88を介して接続マウント85が取り付けられている。該接続マウント85は、ガイドレール86に案内されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に開示されているような一般的なマグネット式ロッドレスシリンダの問題点として、ピストン及びスライド体がエンドキャップとの衝接位置まで移動して停止する際、ピストン及びスライド体が有する慣性エネルギーが原因となって、ピストンとスライド体との間に位置ズレが生じ、ピストンとスライド体との磁気結合が外れる事態が発生するというものがある。特に、接続マウントを利用する場合には、接続マウントの厚み分だけ、接続マウントを取り付けていない状態よりも手前位置(エンドキャップに対して)でスライド体が停止することになる(すなわち、スライド体が衝接位置まで移動できない)。したがって、ピストンの停止位置(衝接位置)とのズレが大きくなり、磁気結合が外れやすくなってしまう。また、特許文献3に開示されているようなマグネット式ロッドレスシリンダでは、接続マウントの組付け作業が非常に煩わしく、ワークの大きさや種類によって接続マウントを着脱して使用するといった使用者側の要求に応えることができない。
そのため、接続マウントの着脱が容易である上、接続マウントを取り付けたとしても磁気結合が外れやすくならないマグネット式ロッドレスシリンダが所望されている。
【0009】
ここで、特許文献1及び2に開示されているような各種ダンパが存在するものの、スリット式ロッドレスシリンダとマグネット式ロッドレスシリンダとではダンパを取り付ける目的が大きく異なる。つまり、スリット式ロッドレスシリンダでは、位置ズレにより磁気結合が外れる問題が発生しないため、特許文献1及び2に開示されているように、スライド体とエンドキャップとの衝突時における衝撃を吸収するためのものでしかない。したがって、このようなダンパを不用意にマグネット式ロッドレスシリンダに用いると、たとえば設置した外部ダンパが大きすぎたことにより、ピストンの衝接位置とスライド体の停止位置とのズレが更に大きくなってしまう等、上記問題点をより助長するといった事態になり兼ねない。
【0010】
本発明は、上述したような問題に鑑みなされたものであって、接続マウントを設置するしないにかかわらず、常にピストンとスライド体とが衝接位置にて停止可能なマグネット式ロッドレスシリンダを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンドキャップの対向面間に架設させた非磁性体からなるシリンダチューブ内に、ピストンを前記シリンダチューブの軸方向へ前記エンドキャップとの衝接位置まで移動可能に収納するとともに、前記シリンダチューブの外周面に沿って非磁性体のスライド体を移動可能に設けており、前記ピストンには内側磁石を、前記スライド体には、前記内側磁石との間に磁気吸引力を作用させる外側磁石又は磁性体を夫々設けて、前記ピストンの移動に前記スライド体が追従可能とする一方、前記スライド体の上部に、設置状態において少なくとも前記スライド体の移動方向へと突出する接続マウントを着脱自在に備え、前記ピストンが衝接位置に位置する際に、前記接続マウントと前記エンドキャップとが衝接するマグネット式ロッドレスシリンダであって、前記エンドキャップ又は前記スライド体に、前記ピストンが衝接位置に位置した際、前記接続マウントを外した前記スライド体又は前記エンドキャップと衝接する外部ダンパを着脱自在に備えてなることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、エンドキャップ又はスライド体からの外部ダンパの突出量を、接続マウントのスライド体からの移動方向への突出量と略同程度としたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2の発明において、エンドキャップに、接続マウントのスライド体の移動方向への突出部の少なくとも一部を収容可能な収容空間を設けたことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の発明において、外部ダンパに、基部に該基部よりも大径な部分を有する嵌着部を連設してなる弾性を有した合成樹脂製の嵌着突起を設ける一方、エンドキャップ又はスライド体に、前記嵌着部よりも小径な挿通孔を設け、前記嵌着部を弾性変形させて前記挿通孔に嵌入させて前記外部ダンパを前記エンドキャップ又は前記スライド体に取り付け可能としたことを特徴とするものである。
尚、本明細書において、衝接とは、実際に両者が当接すること及び両者が限度まで近接する(すなわち、当接はしない)ことを意味する。また、請求項2における略同程度とは、同量及びピストンとスライド体との磁気結合が外れない程度の若干の長短を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接続マウントを設置していないスライド体と衝接する外部ダンパを備えているため、接続マウントを設置していない状態であってもスライド体とピストンとが衝接距離以上に位置ズレを起こすことがなく、ピストンとスライド体との磁気結合が外れてしまうといった事態を確実に防止することができる。また、外部ダンパを着脱自在としているため、接続マウントを設置するしないに容易に対応可能であり、非常に使い勝手が良い。
また、請求項2の発明によれば、エンドキャップからの外部ダンパの突出量を、接続マウントのスライド体からの移動方向への突出量と略同程度とすることにより、ピストンとスライド体との磁気結合が外れてしまうといった事態を極めて確実に防止することができる。
さらに、請求項3の発明によれば、スライド体より突出する接続マウントの一部を、衝接位置においてエンドキャップに収容するため、スライド体、すなわちピストンの可動範囲を広くとることができ、実用性に富む。また、スライド体からの突出量の大きな大型の接続マウント等にも対応可能である。
加えて、請求項4の発明によれば、外部ダンパの着脱が極めて容易であるため、接続マウントを設置するしないに迅速に対応可能であり、極めて使い勝手が良い。また、挿通孔内における嵌着部の孔壁面に対する押圧力により、外部ダンパの不用意な脱落等を防止することができる上、部品点数も少なく、構造も簡素であるため、低コスト化等をも図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態となるマグネット式ロッドレスシリンダについて図面を基に説明する。
【0014】
図1は、接続マウント5を設置した状態のマグネット式ロッドレスシリンダ(以下、ロッドレスシリンダと称す)1の説明図であって、図1(a)はロッドレスシリンダ1を上面側から見た説明図、図1(b)はロッドレスシリンダ1を側面側から見た説明図、図1(c)はロッドレスシリンダ1を正面側から見た説明図である。また、図2は、ロッドレスシリンダ1のシリンダチューブ2内を示した説明断面図である。
尚、図1において、スライド体4に設置された接続マウント5が、正面側のエンドキャップ7との衝接位置に位置している。
【0015】
ロッドレスシリンダ1は、エンドキャップ7、7の対向面間に架設させた非磁性材料からなるシリンダチューブ2に、横断面外形が矩形状のスライド体4をシリンダチューブ2の軸方向へスライド可能に外装したものである。シリンダチューブ2は、外形が扁平な楕円形状を呈しており、スライド体4を貫通することで、スライド体4を水平姿勢のまま軸方向へと案内可能となっている。また、5は、スライド体4の上面に設置された接続マウントである。該接続マウント5は、同程度の厚みを有する正面壁5aと後面壁5bとを側壁5c、5cで一体的に連結してなる環状体であり、その外周はスライド体4よりも一回り大きく、少なくとも設置時にスライド体4の正面側及び後面側へと突出するような大きさに形成されている。そして、正面壁5a、後面壁5b、及び側壁5c、5cで囲まれてなる収容空間を利用して、その上面に載置されるワークを保持する。尚、図1(c)に示されているように、正面壁5a及び後面壁5bの中央部は、左右両端に比べて薄肉に形成されており、正面側(或いは後面側)から見ると断面M字型となっている。
【0016】
さらに、シリンダチューブ2の内部には、図1(c)及び図2に示されているように、横断面が真円の一対のシリンダ孔10、10が並設されており、各シリンダ孔10内にピストン3が、シリンダチューブ2の軸方向へ移動可能に収容され、各シリンダ孔10内を前後のシリンダ室8、8に区画している。各ピストン3は、中央のピストンシャフト13に、ドーナツ状の内側磁石14、14・・と、同じくドーナツ状の内側ヨーク15、15・・とを交互に嵌め込み、両端をピストンエンド16、16によって締付固定した構造となっている。各内側磁石14の磁極は、軸線方向において、NS、SN、NS、SNと同極同士が対応するように配設されている。そのため、隣接するピストン3、3間では、内側磁石14の同極同士が対応することになる。
【0017】
加えて、スライド体4におけるシリンダチューブ2の貫通部には、シリンダチューブ2の周囲を囲む同じ楕円形でドーナツ状の外側磁石17、17・・と、同じ形状の外側ヨーク18、18・・とが交互に軸線方向へ並設されて、両端に配置した外側ウエアリング19、19を介して夫々エンドプレート20、20を固定することで、外側磁石17及び外側ヨーク18を軸線方向で規制している。この外側磁石17の磁極は、軸線方向では同極同士が対応し、且つピストン3側の内側磁石14の磁極とは異極同士となるように、SN、NS、SN、NSと配設されており、両磁石同士の磁気吸引力によって両ピストン3、3とスライド体4とは結合している。
【0018】
一方、図2及び図3を基に、エンドキャップ7について説明する。図3(a)は、エンドキャップ7のシリンダチューブ2架設側面(以下、エンドキャップ7の内面とする)を示した説明図であり、図3(b)は、エンドキャップ7の側面を示した説明図である。
各エンドキャップ7には、給排ポート11と、給排ポート11から当該側の両シリンダ室8、8に連通する流路12とが形成されている。そして、ロッドレスシリンダ1において、前後両側のエンドキャップ7に夫々設けられた給排ポート11、11から圧縮空気を交互に供給することにより、ピストン3、3が各シリンダ孔10内を同調して往復動する。
【0019】
また、エンドキャップ7の内側面上端縁には、収容空間である切り欠き段部21が左右方向(図3(a)において)に亘って設けられている。該切り欠き段部21の底面中央部分(左右方向において)には、隆起部22が設けられている。一方、切り欠き段部21の壁面には、後述する外部ダンパ30を取り付けるための挿入孔23、23が、エンドキャップ7の外面まで貫通した状態で穿設されている。各挿入孔23は、図3(b)に示されているように、その内側(エンドキャップ7の内面側)を小径部24として、外側(エンドキャップ7の外面側)を大径部25として形成されている。そして、小径部24と大径部25との境界に形成される壁面は、後述の如く外部ダンパ30(図4に示す)を取り付ける際に係止壁26として作用する。
【0020】
以上のように構成されるロッドレスシリンダ1は、前後のエンドキャップ7、7の給排ポート11、11から圧縮空気を交互に供給すると、エンドキャップ7、7と衝接するまでピストン3、3がシリンダチューブ2内の各シリンダ孔10内を同調して往復動する。すると、内側磁石14と外側磁石17との磁気結合によってピストン3、3と一体化されるスライド体4が追従してシリンダチューブ2に沿って往復動する。
【0021】
該往復動において、各ピストン3が衝接位置付近に位置する際、スライド体4に設置された接続マウント5の正面壁5a或いは後面壁5bが切り欠き段部21上に収容されることになる。したがって、スライド体4もエンドキャップ7と衝接するまで、すなわち、接続マウント5とエンドキャップ7とが衝接するまで移動することができる。尚、隆起部22上には、正面壁5a或いは後面壁5bの薄肉な中央部が位置する。
【0022】
通常、衝接位置においてスライド体4や接続マウント5とエンドキャップ7とが実際に当接することはない。しかしながら、往復動により各ピストン3及びスライド体4は慣性エネルギーを有するため、衝接位置において各ピストン3を停止させる際、スライド体4のみが磁気結合に抗して軸方向へ若干位置ズレを起こす場合がある。そして、図6に示されているように、該位置ズレによる軸方向変位量が一般的に4mm(図6におけるy幅)を超えると各ピストン3とスライド体4との磁気結合が外れてしまう。
したがって、このような事態を防止するために、その衝接位置において、接続マウント5の正面壁5a或いは後面壁5bと切り欠き段部21の壁面との距離が3mm(図6におけるx幅)以内(以下、衝接距離という)となるように、切り欠き段部21はその前後方向幅を設定されて設けられている。
【0023】
以上のようなロッドレスシリンダ1によれば、各ピストン3が衝接位置に位置する際、接続マウント5の正面壁5a或いは後面壁5bと切り欠き段部21の壁面(エンドキャップ7)との距離が衝接距離となるように設けられているため、各ピストン3とスライド体4との磁気結合が外れてしまうといった事態を確実に防止することができる。
また、切り欠き段部21の底面に隆起部22が設けられており、各ピストン3が衝接位置に位置する際、接続マウント5の正面壁5a或いは後面壁5bの厚肉部によって隆起部22が挟みこまれる状態となるため、接続マウント5ひいてはスライド体4の左右方向へのズレも防止することができる。
【0024】
次に、接続マウント5を設置しないでロッドレスシリンダ1を使用する場合について説明する。図4は、接続マウント5を設置しないで使用する場合のロッドレスシリンダ1を示した説明図であって、図4(a)はロッドレスシリンダ1を上面側から見た説明図、図4(b)はロッドレスシリンダ1を側面側から見た説明図である。
接続マウント5を設置しないでロッドレスシリンダ1を使用する場合、各ピストン3が衝接位置に位置する際、スライド体4のエンドキャップ7との距離が、接続マウント5が取り外されたことにより衝接距離よりも遠くなる。そこで、両エンドキャップ7、7にスライド体4側へと張り出す外部ダンパ30、30が夫々取り付けられる。
【0025】
ここで、外部ダンパ30について、図5を基に説明する。図5(a)は外部ダンパ30を正面側から見た説明図であり、図5(b)は外部ダンパ30を上面側から見るとともに、その一部を拡大して示した説明図である。
外部ダンパ30は、弾性を有する合成樹脂により略直方体状に形成されたものであって、その背面左右両端部にはスライド体4との衝突時のショックを吸収するための突部31、31・・が一体的に複数突設されている。該外部ダンパ30は、エンドキャップ7の切り欠き段部21上に設置されるものであり、外部ダンパ30の前後方向幅(突部31、31・・及び後述する嵌着突起32を除く)及び上下方向高さは、切り欠き段部21の前後方向幅及び壁面の高さと略一致するように設けられている。また、外部ダンパ30の底面は、切り欠き段部21の底面と対応するように凹凸が設けられている。尚、外部ダンパ30の正面から突部31までの長さが接続マウント5の正面壁5a或いは後面壁5bと略同程度となるように、すなわち各ピストン3が衝接位置に位置する際、スライド体4と外部ダンパ30の突部31、31・・とが衝接距離内となるように設定されている。
【0026】
一方、外部ダンパ30の正面左右両端部には、切り欠き段部21の壁面に穿設された挿通孔23、23に嵌入可能な嵌着突起32、32が一体的に突設されている。該嵌着突起32は、弾性を有する合成樹脂によって略円柱状体に形成されたものであって、挿通孔23の略同じ径を有する基部33と、該基部33よりも先端側に設けられた嵌着部34とを一体的に備えてなる。嵌着部34は、基部33よりも大径な部分を有したものであって、軸方向における中央部分が最も大径となるような膨出状に形成されている。該嵌着部34の先端面(正面)には、丸孔35が穿設されており、該丸孔35によって嵌着部34の大変形(挿通孔23への嵌入を可能とするまでの変形)を可能としている。
【0027】
また、外部ダンパ30正面からの嵌着突起32の全体の突出量は、挿通孔23の軸方向長さよりも短くなっているとともに、嵌着突起32の基部33の突出量は、挿通孔23の小径部24の軸方向長さと略同じに形成されている。そして、外部ダンパ30は、嵌着突起32、32の嵌着部34、34を挿通孔23、23の小径部24側から嵌入させて、エンドキャップ7に取り付けられる。該嵌入時、各嵌着突起32の嵌着部34に丸孔35が形成されているため、小径部24よりも大径な部分を有する嵌着部34を小径部24へと嵌入することができる。また、外部ダンパ30の取り付け状態において、各嵌着突起32は上述の如く構成されているため、嵌着部34は、挿通孔23の大径部25に位置することになる。したがって、膨出状に形成された嵌着部34が挿入孔23内の係止壁26に係止され、外部ダンパ30の不用意な脱却を防止している。尚、外部ダンパ30を取り外したい場合には、挿通孔23内で嵌着部34が変形する程度の力を、挿通孔23から嵌着突起32を引き抜く方向へと加えればよい。
【0028】
以上のような外部ダンパ30を備えたロッドレスシリンダ1によれば、各ピストン3が衝接位置に位置する際、スライド体4と外部ダンパ30とが衝接可能であるため、スライド体4が各ピストン3に対して衝接距離以上に位置ズレを起こすことがなく、各ピストン3とスライド体4との磁気結合が外れてしまうといった事態を確実に防止することができる。
また、外部ダンパ30に複数の突部31、31・・が設けられているため、スライド体4の有する慣性エネルギーを効果的に吸収することができ、たとえばスライド体4上に載置されるワーク等を衝突時のショックから守ることができる。
【0029】
さらに、外部ダンパ30は、嵌着突起32、32を挿通孔23、23に嵌入するだけでエンドキャップ7、7に取り付け可能となっている。さらにまた、嵌着部34に丸孔35を穿設しているため、嵌着部34より小径な挿通孔23の小径部24へも容易に嵌入することができる。逆に、一度取り付けた外部ダンパ30を取り外す場合にも、挿通孔23内で嵌着部34が変形する程度の力を、挿通孔23から嵌着突起32を引き抜く方向へと加えるだけで良く、工具等を必要としない。すなわち、その着脱作業等が煩わしくなく、ロッドレスシリンダ1の使用時において、接続マウント5を設置するしないに迅速に対応可能であり、非常に使い勝手が良い。
さらにまた、挿通孔23を小径部24と大径部25との二段構えに構成し、その境目を係止壁26とする一方、嵌着突起32に小径部24よりも大径な部分を有する嵌着部34を備えることで、外部ダンパ30の取り付け状態において、嵌着部34が係止壁26に係止された状態となるため、外部ダンパ30の不用意な脱却等を防止することができる。
【0030】
なお、本発明のマグネット式ロッドレスシリンダの構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、シリンダチューブ、ピストン、スライド体、エンドキャップ、接続マウント、外部ダンパの材質、形状、構造、取り付け位置等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0031】
たとえば、外部ダンパをスライド体に着脱可能とするようにしてもよい。該構成を有するマグネット式ロッドレスシリンダ1’について、図7を基に説明する。図7(a)はスライド体4’に外部ダンパ30’を設置したマグネット式ロッドレスシリンダ1’を上面側から見た説明図であり、図7(b)はスライド体4’に外部ダンパ30’を設置したマグネット式ロッドレスシリンダ1’を側面側から見た説明図である。
【0032】
マグネット式ロッドレスシリンダ1’は、スライド体4’に外部ダンパ30’を着脱可能としたものであって、スライド体4’に外部ダンパ30’を取り付けるための挿通孔23’が設けられている点、エンドキャップ7’に切り欠き段部や挿通孔等が設けられていない点を除いて、上記実施形態のマグネット式ロッドレスシリンダ1と略同様に構成されるものである。
外部ダンパ30’も上記実施形態の外部ダンパ30と略同様の構成を備えたものであって、その前後方向の長さは、スライド体4’に設置可能な接続マウントの正面壁或いは後面壁の厚みと略同様となるように設計されてなる。そして、その左右両端に突設された各嵌着突起32’を挿通孔23’へと嵌入させることで、スライド体4’に取り付けられる。
【0033】
このような外部ダンパ30’をスライド体4’に着脱可能に設置するマグネット式ロッドレスシリンダ1’は、接続マウントを設置しない場合であっても、ピストン(図示せず)とスライド体4’との磁気結合が外れるといった事態を防止でき、接続マウントを設置するしないに容易に対応することができる等といった上記実施形態のマグネット式ロッドレスシリンダ1と同様の効果を奏し得る。また、スライド体4’に外部ダンパ30’を着脱可能とすることで、エンドキャップ7’の構成を簡素化することができるというメリットもある。
尚、スライド体4’の可動範囲をより広く取るため、エンドキャップ7’に、図1の実施形態のような接続マウント及び外部ダンパ30’を収容可能な切り欠き段部(収容空間)を設けてもよい。
【0034】
一方、ピストンとスライド体との磁気結合が外れてしまう軸方向変位量は、内側磁石や外側磁石の数や大きさ、ピストンやスライド体の大きさや重量等によって決まるものであるため、衝接距離は、3mmに何等限定されるものではない。したがって、エンドキャップに設ける切り欠き段部の前後方向幅や、外部ダンパにおける突部の突出量等は、マグネット式ロッドレスシリンダ毎に任意に変更設定可能である。
【0035】
また、上記実施形態や変更例では、嵌着突起の嵌着部に、その変形を容易とするために丸孔を設ける構成を採用しているが、丸孔を設ける代わりに、表面に複数の切り込みや溝を設けることで変形しやすい嵌着部とすることも当然可能である。また、嵌着部や嵌着突起を外部ダンパと別体成形することも当然可能であるし、嵌着突起の数や設置位置等も適宜変更可能である。また、挿通孔内において壁面を押圧する力のみで不用意な脱落を防止できるのであれば、挿通孔に小径部や大径部、係止壁等を設ける必要はない。
さらに、上記実施形態や変更例では、一のエンドキャップ(或いはスライド体)に一の外部ダンパを取り付ける構成としているが、たとえば上記実施形態や変更例における外部ダンパをその左右で分断する等して小型化し、一のエンドキャップ(或いはスライド体)に複数の外部ダンパを備える構成としても何等問題はない。加えて、切り欠き段部といった収容空間に外部ダンパを取り付ける必要もなく、その取り付け位置も適宜変更可能である。
【0036】
さらにまた、ピストンの衝接位置を調節することにより、エンドキャップに必ずしも接続マウントの収容空間を設ける必要はない。つまり、接続マウントと収容空間を有さないエンドキャップとが衝接する位置を、ピストンの衝接位置とするとともに、接続マウントの正面壁或いは後面壁と略同様の突出量を有する外部ダンパをエンドキャップに着脱自在に設ける構成とすれば、本願発明の目的を達成することができる。またさらに、収容空間を設ける場合であっても、上記実施形態のような切り欠き段部ではなく、接続マウントと接触する位置のみに収容空間を設ける構成であっても何等問題はない。また、一のエンドキャップに複数の収容空間を設けても当然良い。
【0037】
一方、マグネット式ロッドレスシリンダ自体の構成も、上記実施形態や変更例では楕円形状の1つのシリンダチューブ内に一対のシリンダ孔及びピストンを並設しているが、3以上のシリンダ孔及びピストンを並設することもできるし、1つのシリンダチューブではなく、夫々シリンダ孔及びピストンを収容した真円のシリンダチューブを複数並設したものも採用できる。逆に、シリンダ孔及びピストンを収容した単一のシリンダチューブのみを備えたものであっても本発明の採用は可能である。
加えて、シリンダ孔も真円の他、矩形や多角形等の各種形状が採用可能で、ピストンやスライダ、内側磁石や外側磁石もシリンダチューブの形態に合わせて適宜変更できる。また、スライダでは、内側磁石と磁気結合可能な磁性体があれば、外側磁石を省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)は接続マウントを設置したマグネット式ロッドレスシリンダを上面側から見た説明図であり、(b)は接続マウントを設置したマグネット式ロッドレスシリンダを側面側から見た説明図であり、(c)は接続マウントを設置したマグネット式ロッドレスシリンダを正面側から見た説明図である。
【図2】マグネット式ロッドレスシリンダのシリンダチューブ内を示した説明断面図である。
【図3】(a)はエンドキャップのシリンダチューブ架設側面を示した説明図であり、(b)はエンドキャップの側面を示した説明図である。
【図4】(a)は接続マウントを設置しないマグネット式ロッドレスシリンダを上面側から見た説明図であり、(b)は接続マウントを設置しないマグネット式ロッドレスシリンダを側面側から見た説明図である。
【図5】(a)は外部ダンパを正面側から見た説明図であり、(b)は外部ダンパを上面側から見るとともに、その一部を拡大して示した説明図である。
【図6】ピストンとスライド体との磁気結合力と軸方向変位量との関係を示した図である。
【図7】(a)はスライド体に外部ダンパを設置したマグネット式ロッドレスシリンダを上面側から見た説明図であり、(b)はスライド体に外部ダンパを設置したマグネット式ロッドレスシリンダを側面側から見た説明図である。
【図8】従来のスリット式ロッドレスシリンダを示した説明部分断面図である。
【図9】従来のマグネット式ロッドレスシリンダを示した部分説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・マグネット式ロッドレスシリンダ、2・・シリンダチューブ、3・・ピストン、4・・スライド体、5・・接続マウント、7・・エンドキャップ、21・・切り欠き段部、22・・隆起部、23・・挿通孔、24・・小径部、25・・大径部、26・・係止壁、30・・外部ダンパ、31・・突部、32・・嵌着突起、33・・基部、34・・嵌着部、35・・丸孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドキャップの対向面間に架設させた非磁性体からなるシリンダチューブ内に、ピストンを前記シリンダチューブの軸方向へ前記エンドキャップとの衝接位置まで移動可能に収納するとともに、前記シリンダチューブの外周面に沿って非磁性体のスライド体を移動可能に設けており、前記ピストンには内側磁石を、前記スライド体には、前記内側磁石との間に磁気吸引力を作用させる外側磁石又は磁性体を夫々設けて、前記ピストンの移動に前記スライド体が追従可能とする一方、
前記スライド体の上部に、設置状態において少なくとも前記スライド体の移動方向へと突出する接続マウントを着脱自在に備え、前記ピストンが衝接位置に位置する際に、前記接続マウントと前記エンドキャップとが衝接するマグネット式ロッドレスシリンダであって、
前記エンドキャップ又は前記スライド体に、前記ピストンが衝接位置に位置した際、前記接続マウントを外した前記スライド体又は前記エンドキャップと衝接する外部ダンパを着脱自在に備えてなることを特徴とするマグネット式ロッドレスシリンダ。
【請求項2】
エンドキャップ又はスライド体からの外部ダンパの突出量を、接続マウントのスライド体からの移動方向への突出量と略同程度としたことを特徴とする請求項1に記載のマグネット式ロッドレスシリンダ。
【請求項3】
エンドキャップに、接続マウントのスライド体の移動方向への突出部の少なくとも一部を収容可能な収容空間を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のマグネット式ロッドレスシリンダ。
【請求項4】
外部ダンパに、基部に該基部よりも大径な部分を有する嵌着部を連設してなる弾性を有した合成樹脂製の嵌着突起を設ける一方、エンドキャップ又はスライド体に、前記嵌着部よりも小径な挿通孔を設け、前記嵌着部を弾性変形させて前記挿通孔に嵌入させて前記外部ダンパを前記エンドキャップ又は前記スライド体に取り付け可能とした請求項1〜3のいずれかに記載のマグネット式ロッドレスシリンダ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドキャップの対向面間に架設させた非磁性体からなるシリンダチューブ内に、ピストンを前記シリンダチューブの軸方向へ前記エンドキャップとの衝接位置まで移動可能に収納するとともに、前記シリンダチューブの外周面に沿って非磁性体のスライド体を移動可能に設けており、前記ピストンには内側磁石を、前記スライド体には前記内側磁石との間に磁気吸引力を作用させる外側磁石又は磁性体を夫々設けて、前記ピストンの移動に前記スライド体が追従可能とする一方、
前記スライド体の上部に、設置状態において少なくとも前記スライド体の移動方向へと突出する接続マウントを着脱自在に備え、前記ピストンが衝接位置に位置する際に、前記接続マウントと前記エンドキャップとが衝接するマグネット式ロッドレスシリンダであって、
記ピストンが衝接位置に位置した際、前記接続マウントを外した前記スライド体と衝接する外部ダンパを、前記エンドキャップに着脱自在に備えてなることを特徴とするマグネット式ロッドレスシリンダ。
【請求項2】
エンドキャップの対向面間に架設させた非磁性体からなるシリンダチューブ内に、ピストンを前記シリンダチューブの軸方向へ前記エンドキャップとの衝接位置まで移動可能に収納するとともに、前記シリンダチューブの外周面に沿って非磁性体のスライド体を移動可能に設けており、前記ピストンには内側磁石を、前記スライド体には前記内側磁石との間に磁気吸引力を作用させる外側磁石又は磁性体を夫々設けて、前記ピストンの移動に前記スライド体が追従可能とする一方、
前記スライド体の上部に、設置状態において少なくとも前記スライド体の移動方向へと突出する接続マウントを着脱自在に備え、前記ピストンが衝接位置に位置する際に、前記接続マウントと前記エンドキャップとが衝接するマグネット式ロッドレスシリンダであって、
前記ピストンが衝接位置に位置した際、前記エンドキャップと衝接する外部ダンパを、前記接続マウントを外したスライド体に着脱自在に備えてなることを特徴とするマグネット式ロッドレスシリンダ。
【請求項3】
エンドキャップ又はスライド体からの外部ダンパの突出量を、接続マウントのスライド体からの移動方向への突出量と略同程度としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネット式ロッドレスシリンダ。
【請求項4】
エンドキャップに、接続マウントのスライド体の移動方向への突出部の少なくとも一部を収容可能な収容空間を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマグネット式ロッドレスシリンダ。
【請求項5】
外部ダンパに、基部に該基部よりも大径な部分を有する嵌着部を連設してなる弾性を有した合成樹脂製の嵌着突起を設ける一方、エンドキャップ又はスライド体に、前記嵌着部よりも小径な挿通孔を設け、前記嵌着部を弾性変形させて前記挿通孔に嵌入させて前記外部ダンパを前記エンドキャップ又は前記スライド体に取り付け可能とした請求項1〜4のいずれかに記載のマグネット式ロッドレスシリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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