説明

マグノロールおよびその類似体化合物の合成

マグノロール、あるいはその誘導体または類似体を産生するための方法を記載する。該方法には、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を得て、そして続いて、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを、マグノロールあるいはその誘導体または類似体に変換する工程が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明の態様は、マグノロールまたはその類似体化合物を産生する方法に関する。態様はまた、本明細書記載の方法にしたがって調製されるマグノロールまたはその類似体化合物を含む、薬学的または口腔的に許容されうる組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]マグノロール(5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールまたは5,5’−ジアリル−2,2’−ビスフェノール)はホオノキオールとともに、モクレン(magnolia)抽出物中に見出される主な成分である。当該技術分野において、モクレン抽出物が、とりわけ、細菌および/または炎症関連口腔疾患を治療するための組成物において適用されてきたことがよく知られている。例えば、その開示の全体が本明細書に援用される、米国特許第6,544,409号および米国特許出願公報第U.S. 2006/0,140,885号を参照されたい。
【0003】
[0003]
【0004】
【化1】

【0005】
[0004]研究によって、独立の活性物質としてのマグノロールはまた、その抗細菌および抗炎症活性に加えて、他の薬理学的プロセスにおいても重要な役割を果たすことがさらに明らかになってきている。例えば、マグノロールは梗塞および再灌流傷害に対して、心筋を保護する有益な能力を示すことが示されてきている。マグノロールは、皮質ニューロン−星状膠細胞混合培養物において、KCNによる化学的低酸素症に対してニューロンを保護することもまた示されてきている。より最近、マグノロールが、α−トコフェロールより1000倍高い酸化防止活性を所持することが報告され、マグノロールが食品および薬学的適用において大きな潜在能力を有することが暗示されている。すべてのこれらの多岐にわたる使用は、高品質でそして手ごろな価格のマグノロールに関する大きな必要性があることを明らかにする。Wen−Hsin Huangら, The Chinese Pharmaceutical Journal, 2006, 58, 115−122; Min−Min Leeら, Chinese Journal of Physiology, 2000, 43, 61−67を参照されたい。
【0006】
[0005]現在、当該技術分野において報告されたマグノロールを産生するいくつかの合成法があり、このうちの1つが、J. Runebergによる論文、Acta Chem Scand, 1958, 12, 188−192に記載されているが、この中で、以下に示すように、主要な反応物質、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのメチルエーテルを、臭化エチルマグネシウムの存在下、テトラヒドロフラン(THF)中で臭化アリルと反応させて、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールを得た:
【0007】
【化2】

【0008】
この反応は、還流条件を必要とし、そして望ましい産物を低収量でしか提供しない。さらに、これに続く、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのメチルエーテルのメチル基を取り除く工程は、さらにより高い温度を必要とし、そして反応混合物を分離し、そして精製するのは困難であり、これによって、マグノロールの収量は低くなる。
【0009】
[0006]マグノロールを産生する、当該技術分野に報告される他の合成法もまた、類似の問題、例えば収量が低いこと、精製が困難であること、合成コストが高いこと、および/または産業規模には実際的でないかまたは適合しないことが欠点となっている。例えば、Wen−Hsin Huangら, The Chinese Pharmaceutical Journal, 2006, 58, 115−122;およびWenxin Guら, Tetrahedron: Asymmetry, 1998, 9, 1377−1380を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,544,409号
【特許文献2】米国特許出願公報第U.S. 2006/0,140,885号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Wen−Hsin Huangら, The Chinese Pharmaceutical Journal, 2006, 58, 115−122
【非特許文献2】Min−Min Leeら, Chinese Journal of Physiology, 2000, 43, 61−67
【非特許文献3】J. Runeberg, Acta Chem Scand, 1958, 12, 188−192
【非特許文献4】Wenxin Guら, Tetrahedron: Asymmetry, 1998, 9, 1377−1380
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、当該技術分野には、高品質でそして手ごろな価格のマグノロール、ならびにその誘導体および類似体を産生する合成法を開発する実質上の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0007]1つの態様において、本発明は、マグノロール(5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオール)またはその類似体化合物の産生法であって、2,2’−ビスフェノールを、有機溶媒中、臭素と室温で反応させて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールを得て、続いて5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールの2つのヒドロキシル基を、有機溶媒中、有機塩基の存在下で、メトキシメチルクロリド(MOM−Cl)で保護して、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルを得て、そして5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルをさらに、有機溶媒中、マグネシウムおよび臭化エチルとともに、置換または非置換臭化アリルと反応させて、カップリングを達成し、そしてこうして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を得て、そして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を、適切な剤で変換して、マグノロールあるいはその誘導体または類似体を得る工程を含む、前記方法を含む。
【0014】
[0008]別の態様において、本発明は、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを産生する方法であって、2,2’−ビスフェノールを、有機溶媒中、臭素と室温で反応させて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールを得て、続いて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールの2つのヒドロキシル基を、有機溶媒中、有機塩基の存在下で、メトキシメチルクロリド(MOM−Cl)で保護して、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルを得て、そしてさらに、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルを、有機溶媒中、マグネシウムおよび臭化エチルとともに、置換または非置換臭化アリルと反応させて、カップリングを達成し、そしてこうして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルまたはその類似体化合物を得る、前記方法を含む。
【0015】
[0009]さらに別の態様において、本発明は、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルの中間化合物、あるいはその誘導体または類似体を含む。
[00010]さらにさらなる態様において、本発明は、マグノロール(5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオール)あるいはその誘導体または類似体を産生するための方法であって、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体の中間化合物を得て、そして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を適切な剤で変換して、マグノロールあるいはその誘導体または類似体を得る工程を含む、前記方法を含む。
【0016】
[00011]さらにさらなる態様において、本発明は、マグノロール(5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオール)あるいはその誘導体または類似体を産生するための方法であって、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を適切な剤で変換して、マグノロールあるいはその誘導体または類似体を得る工程を含む、前記方法を含む。
【0017】
[00012]別の態様において、本発明は、口腔的にまたは薬学的に許容されうるキャリアー、および上述の方法いずれかにしたがって調製されたマグノロールあるいはその誘導体または類似体の有効量を含む、組成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[00013]本明細書に示す本発明の説明を概観する際に、以下の定義および限定しないガイドラインを考慮しなければならない。見出し(例えば「背景」および「概要」)、および小見出し(例えば「組成物」および「方法」)は、本明細書において、本発明の開示内のトピックスの一般的な構成のためのみに意図され、そして本発明の開示またはそのいかなる側面も限定するようには意図されない。特に、「背景」に開示する主題には、本発明の範囲内の技術の側面が含まれてもよく、そして該主題は先行技術の記述を構成しなくてもよい。「概要」に開示される主題は、本発明の全範囲またはその任意の態様の包括的または完全な開示ではない。本明細書のセクション内の特定の有用性を有するとしての(例えば「活性」または「キャリアー」成分であるとしての)物質の分類または考察は、便宜のために行われており、そして物質が、任意の所定の組成で用いられた際に、本明細書の分類にしたがって、必ずまたは単独で機能しなければならないという推定を引き出してはならない。
【0019】
[00014]本明細書における参考文献の引用は、これらの参考文献が先行技術であるかまたは本明細書に開示する本発明の特許性に何らかの関連性を有することの承認を構成しない。序論に引用する参考文献の内容のいかなる考察も、単に、該参考文献の著者らによってなされた主張の一般的な要約を提供すると意図され、そしてこうした参考文献の内容の正確さに関する承認を構成しない。
【0020】
[00015]説明および特定の実施例は、本発明の態様を示しつつ、例示目的のためにのみ意図され、そして本発明の範囲を限定することは意図されない。さらに、言及する特徴を有する多数の態様の列挙は、さらなる特徴を有する他の態様、または言及する特徴の異なる組み合わせを取り込む他の態様を排除することは意図されない。本発明の組成物および方法をどのように作製し、そして使用するかを例示する目的のため、特定の例を提供し、そして明らかに別に言及しない限り、こうした例は、本発明の所定の態様が作製または試験されているかまたはいないことの表明であるとは意図されない。
【0021】
[00016]本明細書全体で、範囲は、該範囲内にあるあらゆる値を記載するための省略表現として用いられる。範囲内のいかなる値を範囲の末端として選択してもよい。さらに、本明細書に引用するすべての参考文献は、その全体が本明細書に援用される。本開示中の定義および引用される参考文献の定義が対立する場合、本開示が統制する。
【0022】
[00017]別に明記しない限り、ここにおよび明細書の別の箇所に示されるすべてのパーセントおよび量は、重量パーセントを指すと理解しなければならない。提供する量は、物質の活性重量に基づく。本明細書において、特定の値の列挙は、構成要素のそれぞれの量、または態様の他の特徴に言及していても、測定における誤差を考慮するため、その値にある度合いの可変性をプラスまたはマイナスしたものを示すよう意図される。例えば、当業者によって認識されそして理解されるであろう測定における誤差の度合いを考慮して、10%の量は9.5%または10.5%を含むことも可能である。
【0023】
[00018]本明細書において、用語「アルキル」は、好ましくは1〜10の間の炭素原子を持つ、直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖を意味する。こうしたアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ならびにペンチルおよびヘキシルの適切な異性体が含まれ、このうちメチル基が好ましい。
【0024】
[00019]本明細書において、用語「置換または非置換フェニル」は、必要であればフェニル環が1回またはそれより多い回数置換されている、フェニル基を指す。さらに、用語「置換」は、指定の原子の正常の価数を超えず、そして置換が安定な化合物を生じる限り、指定の原子上の任意の1またはそれより多い水素が、示す基からの選択で置換されていることを意味する。
【0025】
[00020]本明細書において、用語「含む」は、最終結果に影響しない他の工程および他の構成要素を利用可能であることを意味する。用語「含む」は、表現「からなる」および「から本質的になる」を含む。単数形の識別子、例えば「the」、「a」、または「an」は、単一の構成要素の使用のみに限定するよう意図されず、多数の構成要素を含むことも可能である。
【0026】
[00021]本明細書において、用語「室温」は、典型的な実験室の周囲温度を意味し、これは通常、ほぼ標準温度および標準気圧(STP)のものである。本明細書において、「精製」または「単離」化合物は、該化合物が、形成された反応混合物から分離されていることを意味する。
【0027】
[00022]本明細書において、用語「増加した圧」は、当業者によって一般的に理解されるように、1気圧より高い圧を指す。逆に、本明細書において、用語「減少した圧」は、当業者によって一般的に理解されるように、1気圧未満の圧を意味する。
【0028】
[00023]本明細書において、表現「キャリアー」または「口腔的に許容されうるキャリアー」は、本明細書全体において、本明細書で使用するための安全でそして有効な任意の材料を意味する。こうした材料には、水、溶媒等が含まれ、これらは保湿剤、例えばグリセリン、ソルビトール、キシリトール等を含有してもよい。キャリアーまたは口腔的に許容されうるキャリアーにはまた、当業者に一般的に許容されうるさらなる構成要素が含まれてもよい。
【0029】
[00024]本明細書において、句「薬学的に許容されうる」は、確かな医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比と釣り合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、あるいは他の問題または合併症を伴わない、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適している、化合物、材料、組成物、キャリアー、および/または投薬型を指す。
【0030】
[00025]本明細書において、「薬学的に許容されうる塩」は、開示する化合物の誘導体を指し、ここで、その酸性塩または塩基性塩を作製することによって親化合物を修飾する。薬学的に許容されうる塩の例には、限定されるわけではないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩が含まれる。
【0031】
[00026]本明細書において、用語「有効量」は、活性成分として、単独でまたは組み合わされて投与された際に有効である、本発明の化合物、または化合物の組み合わせの量を指す。
【0032】
[00027]本発明は、費用効率が高く、容易な加工(work−up)および精製方法論を有し、そして活性物質マグノロールおよびその誘導体または類似体の産生のため、スケールアップ適合性を有する化学的合成順序を提供する。化学的合成順序は、高品質最終産物を導く、単純でそして高収率の合成工程を通じて、大規模に容易に再現可能である。本発明の態様は、式(I)
【0033】
【化3】

【0034】
式中、RはH、アルキル、置換または非置換フェニル基を示す
の化合物;あるいはその薬学的にまたは口腔的に許容されうる塩を産生する方法を含む。したがって、マグノロールの誘導体および類似体には、RがHでないものが含まれる。該方法は、好ましくは:
(a)式(II)
【0035】
【化4】

【0036】
の化合物を、有機溶媒中で臭素と反応させて、式(III)
【0037】
【化5】

【0038】
の化合物を得て;
(b)式IIIの化合物を、有機溶媒中、有機塩基の存在下で、MOM−Clと反応させて、式(IV)
【0039】
【化6】

【0040】
の化合物を産生して;
(c)式IVの化合物を、有機溶媒中、マグネシウムおよび臭化エチルとともにR−CH=CH−CH−Br、式中、Rは上に定義した通りである、と反応させて、式V
【0041】
【化7】

【0042】
の化合物を得るのに十分な期間、カップリングを達成して;
(d)式Vの化合物を、有機溶媒中、適切な剤で変換して、式Iの化合物を得て
(e)場合によって、式Iの化合物をその薬学的にまたは口腔的に許容されうる塩に変換する
工程を含む。
【0043】
[00028]1つの好ましい態様において、本発明は、Rが水素であるマグノロール、あるいはRがメチルまたはフェニルであるマグノロールの誘導体または類似体を産生する方法を含む。より好ましくは、本発明はRが水素であるマグノロールを産生する方法を含む。
【0044】
[00029]別の態様において、本発明は、マグノロールあるいはその誘導体または類似体を産生する方法であって、2,2’−ビスフェノールを、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ヘキサン、アセトン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエンからなる群より選択される有機溶媒中、室温で臭素と反応させる工程を含む、前記方法を含む。より好ましくは、有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、メタノールからなる群より選択される。
【0045】
[00030]さらに別の態様において、本発明はマグノロールあるいはその誘導体または類似体を産生する方法であって、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールの2つのヒドロキシル基を、有機溶媒中、有機塩基の存在下で、メトキシメチルクロリド(MOM−Cl)で保護する工程が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ルチジン、イミダゾールからなる群より選択される有機塩基を用いる工程を含む、前記方法を含む。より好ましくは、有機塩基は、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピペリジンおよびルチジンからなる群より選択される。
【0046】
[00031]さらにさらなる態様において、本発明は、マグノロールあるいはその誘導体または類似体を産生する方法であって、MOM基を除去するために用いられる適切な剤が、ハロゲン化ホウ素、ヨウ化トリメチルシラン、および塩化トリメチルシラン(TMS−Cl)からなる群より選択される、前記方法を含む。より好ましくは、剤は塩化トリメチルシラン(TMS−Cl)である。当業者は、本明細書に提供するガイドラインを用いて、MOM基を除去する(またはMOM含有誘導体を脱保護する)ことが可能な適切な剤を決定可能である。
【0047】
[00032]望ましい産物を得るのに十分な期間、反応を行うことも可能である。「十分な」期間は、部分的に、反応の望ましい度合いおよび反応条件、例えば温度に応じる。一般の当業者は、反応を容易に監視して、十分な期間が経過したかどうかを決定することも可能である。好ましい期間は、一般的に、約30分間〜約48時間、好ましくは約24時間である。
【0048】
[00033]本発明の好ましい態様は、マグノロール(5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオール)あるいはその誘導体または類似体を産生する方法であって、2,2’−ビスフェノールを、クロロホルムなどの有機溶媒中で臭素と反応させて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールを得て、続いて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールの2つのヒドロキシル基を、ジクロロメタンなどの有機溶媒中、ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基の存在下で、メトキシメチルクロリド(MOM−Cl)で保護して、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルを得て、そして5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルをさらに、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中、マグネシウムおよび臭化エチルとともに、置換または非置換臭化アリルと反応させて、カップリングを達成し、そして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体(臭化アリルが水素以外で置換されているかどうかに応じる)を得て、そして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルまたはその類似体化合物を、メタノールなどの有機溶媒中、塩化トリメチルシラン(TMS−Cl)などの適切な脱保護剤で変換して、マグノロールあるいはその誘導体または類似体を得る工程を含む、前記方法を含む。マグノロールあるいはその誘導体または類似体は、場合によって、一般の当業者によって、口腔的にまたは薬学的に許容されうる塩に変換することも可能である。
【0049】
[00034]別の態様において、本発明は、マグノロールを産生する方法であって、2,2’−ビスフェノールを、クロロホルム中で臭素と反応させて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールを得て、続いて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールの2つのヒドロキシル基を、ジクロロメタン中、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で、メトキシメチルクロリド(MOM−Cl)で保護して、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルを得て、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルをさらに、テトラヒドロフラン中、マグネシウムおよび臭化エチルとともに、臭化アリルと反応させて、カップリングを達成し、そして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを得て、そして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを、メタノール中、塩化トリメチルシラン(TMS−Cl)で変換して、マグノロールを得る工程を含む、前記方法を含む。マグノロールは、場合によって、一般の当業者によって、口腔的にまたは薬学的に許容されうる塩に変換されることも可能である。
【0050】
[00035]さらに別の態様において、本発明は、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を産生する方法であって、2,2’−ビスフェノールを、クロロホルムなどの有機溶媒中、臭素と室温で反応させて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールを得て、続いて5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールの2つのヒドロキシル基を、ジクロロメタンなどの有機溶媒中、ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基の存在下で、メトキシメチルクロリド(MOM−Cl)で保護して、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルを得て、そして5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルをさらに、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中、マグネシウムおよび臭化エチルとともに、置換または非置換臭化アリルと反応させて、カップリングを達成し、そして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を得る工程を含む、前記方法を含む。
【0051】
[00036]さらなる態様において、本発明は、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを産生する方法であって、2,2’−ビスフェノールを、クロロホルム中、臭素と室温で反応させて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールを得て、そして続いて5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールの2つのヒドロキシル基を、ジクロロメタン中、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で、メトキシメチルクロリド(MOM−Cl)で保護して、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルを得て、そして5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルをさらに、テトラヒドロフラン中、マグネシウム削り屑および臭化エチルの関与を通じて、臭化アリルと反応させて、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを得る工程を含む、前記方法を含む。
【0052】
[00037]さらに別の態様において、本発明は、マグノロール(5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオール)あるいはその誘導体または類似体を産生する方法であって、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を得て、そして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を変換して、マグノロールあるいはその誘導体または類似体を得る工程を含む、前記方法を含む。
【0053】
[00038]さらに別の態様において、本発明は、マグノロールを産生する方法であって、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを得て、そして5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを、メタノール中、塩化トリメチルシラン(TMS−Cl)で変換して、マグノロールを得る工程を含む、前記方法を含む。
【0054】
[00039]さらに別の態様において、本発明は、マグノロール(5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオール)あるいはその誘導体または類似体を産生する方法であって、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルあるいはその誘導体または類似体を、有機溶媒中、適切な剤で変換して、マグノロールあるいはその誘導体または類似体を得る工程を含む、前記方法を含む。
【0055】
[00040]さらに別の態様において、本発明は、マグノロール(5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオール)を産生する方法であって、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを、メタノール中、塩化トリメチルシランで変換して、マグノロールを得る工程を含む、前記方法を含む。別の態様において、本発明は、口腔的にまたは薬学的に許容されうるキャリアー、および本明細書記載の方法のいずれかにしたがって産生された有効量のマグノロールあるいはその誘導体または類似体を含む、組成物を含む。別の態様において、本発明は、口腔的にまたは薬学的に許容されうるキャリアー、および本明細書記載の方法のいずれかにしたがって産生された有効量のマグノロールを含む、組成物を含む。
【実施例】
【0056】
[00041]以下の実施例は、マグノロールあるいはその誘導体または類似体を産生するための方法の特定の態様を例示する。
[00042]5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノール(式III)
【0057】
【化8】

【0058】
の調製
[00043]クロロホルム(20mL)中の2,2’−ビスフェノール(1.0g、5.3mmol)の攪拌溶液に、クロロホルム(10mL)中の臭素(1.97ml、16.1mmol)の溶液をゆっくりと一滴ずつ室温で添加した。2時間後、反応混合物を10%亜硫酸水素ナトリウムで反応停止し、そして次いで酢酸エチル(2x50mL)で抽出した。合わせた抽出物を塩水で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。生じた未精製残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色固体、m.p.186〜189℃として、1.72g(93%収率)の5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールを得た。
【0059】
5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノール(式IV)
【0060】
【化9】

【0061】
のMOMエーテルの調製
[00044]乾燥ジクロロメタン中の5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノール(1.0g、2.9mmol)の溶液を、0℃で、ジイソプロピルエチルアミン(7.3ml、21.5mmol)に添加した。生じた溶液を30分間に渡って攪拌し、そして次いで、同じ温度でMOM−Clを添加した(1.7ml、10.75mmol)。混合物を一晩攪拌し、そして次いで水で反応停止した。水性層をジクロロメタン(2x50mL)で2回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。生じた未精製産物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、白色固体、m.p.120〜122として、1.19g(95%収率)のMOMエーテルを得た。
【0062】
5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルの調製
【0063】
【化10】

【0064】
[00045]臭化エチル(0.34mL、4.64mmol)の溶液を、一部ずつ、テトラヒドロフラン(10mL)中のマグネシウム削り屑(0.222g、9.3mmol)に、窒素大気下で添加した。臭化エチルがすべて反応したら(マグネシウムの半量が存在する)、反応混合物を氷槽で冷却し、そして乾燥THF(20mL)中の5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノール(1.0g、2.32mmol)のMOMエーテルの溶液を1滴ずつゆっくりと窒素大気下で添加した。生じた混合物を室温で24時間攪拌し、そして次いで臭化アリル(2mL)をゆっくりと0℃で添加した。混合物を室温でさらに3時間攪拌し、そして次いで、塩化アンモニウム溶液(15mL)で反応停止した。水性層を酢酸エチル(2x50mL)で2回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。生じた未精製産物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、無色液体として、0.59g、80%収率で、純粋アリル誘導体を得た。
【0065】
5,5’−ジ((E)−ブト−2−エニル)−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)−ビフェニルのMOMエーテルの調製
【0066】
【化11】

【0067】
[00046]5,5’−ジ((E)−ブト−2−エニル)ビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルの合成を、マグノロールのMOMエーテルの合成に関して記載するのと同様に行い、そして5,5’−ジ((E)−ブト−2−エニル)ビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを70%収率で得た。
【0068】
5,5’−ジシンナミルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルの調製
【0069】
【化12】

【0070】
[00047]5,5’−ジシンナミルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルの合成もまた、マグノロールのMOMエーテルの合成に関して記載するのと同様に行い、そして5,5’−ジシンナミルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを72%収率で得た。
【0071】
5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオール(マグノロール)の調製
【0072】
【化13】

【0073】
[00048]メタノール(10mL)中の5,5’−ジアリル−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテル(1g、2.8mmol)の攪拌溶液に、TMSCl(0.35mL、2.8mmol)を、0℃で1滴ずつ添加した。生じた溶液を25℃で1時間攪拌した。完了後、TLCによって示すように、混合物を飽和重炭酸ナトリウムの溶液で反応停止し、そして酢酸エチル(2x50mL)で2回抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。生じた未精製産物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色固体、m.p.101〜103℃として、0.6g(90%収率)の純粋マグノロールを得た。
【0074】
5,5’−ジ((E)−ブト−2−エニル)ビフェニル−2,2’−ジオールの調製
【0075】
【化14】

【0076】
[00049]5,5’−ジ((E)−ブト−2−エニル)ビフェニル−2,2’−ジオールの合成もまた、マグノロールの合成に関して記載するのと同様に行い、そして5,5’−ジ((E)−ブト−2−エニル)ビフェニル−2,2’−ジオールを91%収率で得た。
【0077】
5,5’−ジシンナミルビフェニル−2,2’−ジオールの調製
【0078】
【化15】

【0079】
[00050]5,5’−ジシンナミルビフェニル−2,2’−ジオールの合成もまた、マグノロールの合成に関して記載するのと同様に行い、そして5,5’−ジシンナミルビフェニル−2,2’−ジオールを89%収率で得た。
【0080】
[00051]本発明は、例示的な実施例に言及して上述されてきているが、本発明は開示する態様に限定されないことが理解されるものとする。明細書を読んだ際に当業者に思い浮かぶであろう改変および修飾もまた本発明の範囲内であり、こうした範囲は、付随する請求項に定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中、RはH、アルキル、置換または非置換フェニルを示す
の化合物;あるいはその薬学的にまたは口腔的に許容されうる塩を産生する方法であって:
(a)式(II)
【化2】

の化合物を、有機溶媒中で臭素と反応させて、式(III)
【化3】

の化合物を得て;
(b)式IIIの化合物を、有機溶媒中、有機塩基の存在下で、MOM−Clと反応させて、式(IV)
【化4】

の化合物を得て;
(c)式IVの化合物を、有機溶媒中、マグネシウムおよび臭化エチルとともにR−CH=CH−CH−Br、式中、Rは上に定義した通りである、と反応させて、式V
【化5】

の化合物を得て;
(d)式Vの化合物を、有機溶媒中、適切な脱保護剤で変換して、式Iの化合物を得て;そして
(e)場合によって、式Iの化合物をその薬学的にまたは口腔的に許容されうる塩に変換する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
Rが水素である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Rがメチルである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
Rがフェニルである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
(a)における有機溶媒がクロロホルムである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
(c)における有機溶媒がテトラヒドロフランである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
(c)における有機溶媒がテトラヒドロフランである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
(d)における適切な脱保護剤が塩化トリメチルシランである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
(d)における適切な脱保護剤が塩化トリメチルシランである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
マグノロール(5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオール)を産生する方法であって:
(a)2,2’−ビスフェノールをクロロホルム中で臭素と反応させて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールを得て;
(b)5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールを、ジクロロメタン中、ジイソプロピルエチルアミンとともにメトキシメチルクロリド(MOM−Cl)と反応させて、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールのMOMエーテルを得て;
(c)5,5’−ジブロモ−2,2’−ビスフェノールの前記MOMエーテルを、テトラヒドロフラン中、マグネシウムおよび臭化エチルともに、臭化アリルと反応させて、5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールのMOMエーテルを得て;
(d)5,5’−ジアリルビフェニル−2,2’−ジオールの前記MOMエーテルを、適切な脱保護剤で変換して、マグノロールを得て;そして
(e)場合によって、マグノロールを薬学的にまたは口腔的に許容されうる塩に変換する
工程を含む、前記方法。
【請求項11】
(c)の反応を室温で行う、請求項10記載の方法。
【請求項12】
(d)における適切な脱保護剤が塩化トリメチルシランである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
式V
【化6】

の化合物を産生する方法であって:
式IV
【化7】

の化合物を、R−CH=CH−CH−Br、式中、RはH、アルキル、置換または非置換フェニルを示す、と、有機溶媒中、式Vの化合物を得るのに十分な期間反応させ、そして場合によって、式Vの化合物を式I
【化8】

の化合物に変換する
工程を含む、前記方法。
【請求項14】
有機溶媒がテトラヒドロフランである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
反応をマグネシウムおよび臭化エチルとともに行って、カップリングを達成する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
反応を室温で行う、請求項15記載の方法。
【請求項17】
マグネシウムおよび臭化エチルのモル比が約2対1である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
Rが水素である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
式Vの化合物をメタノール中で塩化トリメチルシランと反応させ、式Iの化合物を得る、請求項13記載の方法。
【請求項20】
Rが水素である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
口腔的にまたは薬学的に許容されうるキャリアー、および請求項1の方法にしたがって調製された抗細菌に有効な量の式I
【化9】

式中、RはH、アルキル、置換または非置換フェニルを示す
の化合物を含む、組成物。
【請求項22】
請求項1にしたがって調製されたマグノロールの有効量、および口腔的にまたは薬学的に許容されうるキャリアーを含む、組成物。

【公表番号】特表2013−520495(P2013−520495A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554971(P2012−554971)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025378
【国際公開番号】WO2011/106003
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【出願人】(512221094)インディアン・インスティチュート・オブ・ケミカル・テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】