説明

マスキング方法

【課題】本発明は、凹部や孔部を有する部材に塗装を施す際、塗装部分と非塗装部分との境界の見切り線を明確に仕上げることを課題とする。
【解決手段】周縁に全周的または部分的に立壁3,3Aを有する被保護面5,5Aに下面に粘着層8を有するマスキングシート6を貼着して該被保護面5,5Aを塗装から保護した上で塗装を施して該立壁3,3Aから被保護面5,5Aにかけて塗膜Cを形成し、該塗膜Cを加熱キュアーする場合、該マスキングシート6の端縁と該立壁3,3Aの立上り縁4,4Aとの間隔を0.1〜2mmに設ける。このように設定すると、塗膜Cの加熱キュアー時に該マスキングシート6端縁において塗膜Cが明確に切断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部材の所定個所を塗装から保護するためのマスキング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図8に示すように例えば部材1の凹部2の底面5(被保護面)に塗装が施されないように保護するには、例えば熱可塑性プラスチックシート7の下面に粘着層8を設けたマスキングシート6を該底面5に貼着した上で塗装を施し、塗膜Cを形成している。
【0003】
【特許文献1】特開平06−277584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来にあっては該マスキングシート6の端縁を該凹部2周縁の立壁3の立上り縁4と隙間なく突合わせた状態とされ、該マスキングシート6の基材である熱可塑性プラスチックシートはシート製造時の延伸力に基づく残存応力を有するので、塗膜Cを加熱キュアーする際に該マスキングシート6は収縮する。該マスキングシート6が収縮すると、該凹部2の底面5の周縁部分において該塗膜Cが該シート6に引張られて切断される。しかし塗膜Cは隅角41において引張られ切断されるため、立壁3の立上り縁4を被覆する塗膜Cには剥離方向(直角方向)の外力が及ぼされ、切断部分がぎざぎざになって綺麗な見切り線が得られない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、周縁に全周的または部分的に立壁3,3Aを有する被保護面5,5Aに下面に粘着層8を有するマスキングシート6を貼着して該被保護面5,5Aを塗装から保護した上で塗装を施して該立壁3,3Aから被保護面5,5Aにかけて塗膜Cを形成し、該塗膜Cを加熱キュアーする場合、該マスキングシート6の端縁と該立壁3,3Aの立上り縁4,4Aとの間隔を0.1〜2mmに設けるマスキング方法を提供するものである。
該マスキングシート6の基材7は熱可塑性プラスチックのシートであり、該塗膜キュアー温度は該熱可塑性プラスチックの軟化点以上に設定されることが望ましく、その場合該マスキングシート6は下の被保護面が透視出来る程度に透明または半透明であることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
該マスキングシート6の端縁は該立壁3の立上り縁4と0.1mm以上の間隔に設定されるため、塗膜Cの加熱キュアー時の該マスキングシート6の収縮によっては、該塗膜Cの該立上り縁4から該マスキングシート6の端縁までの部分に引張り方向の外力が及ぼされ、該立上り縁4を被覆する塗膜Cに及ぼされる剥離方向の力は該塗膜部分の伸びにより殆んど吸収されてしまう。しかし上記間隔が2mm以上になると、間隔部分の底面5の塗膜Cが剥離しにくくなり、残存するおそれがある。
【0007】
塗膜加熱キュアーの際、該マスキングシート6を効率良く収縮せしめるには、該マスキングシート6の基材7である熱可塑性プラスチックシートの材料である熱可塑性プラスチックの軟化点を該加熱キュアーの温度と略同じに設定するか、あるいは該加熱キュアーの温度を該熱可塑性プラスチックの軟化点よりも高く設定する。
【0008】
該マスキングシート6を下の被保護面5が透視出来る程度に透明または半透明にすると、該マスキングシート6を被保護面5に貼着する場合、該マスキングシート6を透かして被保護面5やその周囲が見えるので、マスキングシート6の位置合わせが容易になる。
【0009】
〔効果〕
したがって本発明においては、塗装部分と非塗装部分の境界線(見切り線)が綺麗に仕上がり、外観が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を図1〜図5に示す一実施例によって以下に詳細に説明する。
図1に示すのは部材1の凹部2であり、該凹部2の底面5が被保護面である。該底部5の周縁からは段状の立上り縁4を介して立壁3が立上がっている。
上記部材1の塗装に際しては、あらかじめ被保護面である凹部2の底面5にマスキングシート6を貼着する。該マスキングシート6はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性プラスチックからなる基材シート7と、該基材シート7の裏面に形成されている粘着層8とからなり、透明性または半透明性を有する。
【0011】
該シート6を該凹部2の底面5に貼着する場合には、該シート6から底面5およびその周囲を透視しつつ位置合わせを行う。該シート6を該凹部2の底面5に貼着した状態で、図2に示すように該シート6の端縁と該立壁3の立上り縁4との間の間隔dを設定する。該間隔dは0.1〜2mmとする。
【0012】
該シート6を該凹部2の底面に貼着した後、該部材1には塗装が施され、図3に示すように塗膜Cが形成される。塗装の後該塗膜Cは加熱することによってキュアーされる。この場合、該シート6の基材7の材料である熱可塑性プラスチックの軟化点は、該加熱キュアーの温度と略等しいかそれよりも低くなるように設定する。例えば加熱温度は通常150℃前後であり、基材7の材料としてポリプロピレンを選択した場合には、該ポリプロピレンの軟化温度は80℃であるから、該マスキングシート6は該加熱キュアー工程において軟化収縮する。
【0013】
そして該マスキングシート6の端縁部分において、図4に示すように塗膜Cは該シート6の収縮力に引張られて切断される。上記したように該シート6端縁と該立壁3の立上り縁4との間隔が0.1〜2mmの範囲に設定されているから、該塗膜Cは立上り縁4の位置で明瞭に切断され、綺麗な見切り線Lが得られる。
【0014】
塗膜Cの加熱キュアーの後は、図5に示すように該マスキングシート6を剥離する。該凹部2の底面5は該マスキングシート6で塗装の間保護されていたから、該底面5には塗膜Cが形成されていない。
【0015】
上記実施例以外、図6に示すように該凹部2の立壁3は段状の立上り縁4を介することなく、底面5からストレートに立上がっていてもよい。この場合もマスキングシート6端縁と該立壁3の立上り縁4との間隔dは0.1〜2mmに設定する。
【0016】
また図7に示すように本発明は部材1Aの孔部2Aに適用されてもよい。この場合該孔部2Aの開口部内周壁が立壁3Aとなり、該立壁3Aから段状の立上り縁4Aを介して孔内周壁面5Aが続き、該孔内周壁面5Aが被保護面であり、該孔内周壁面5Aにマスキングシート6が貼着されるが、該マスキングシート6の端縁と該立上り縁4Aとの間の間隔dが0.1〜2mmの範囲に設定される。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明では凹部や孔部を有する部材を塗装する際、塗装が及ぼされるべきでない凹部の底面や孔部の内周壁面と塗装部分との境界線(見切り線)がはっきり綺麗に仕上がるので、良好な外観が提供されるから、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1〜図5は本発明の一実施例を説明する図である。
【図1】塗装前凹部側断面図
【図2】マスキングシート端縁部分拡大図
【図3】塗装後凹部側断面図
【図4】塗膜加熱キュアー後凹部部分側断面図
【図5】マスキングシート剥離除去状態の凹部側断面図
【図6】他の実施例の凹部部分側断面図
【図7】更に他の実施例の孔部部分側断面図 図8および図9は従来のマスキング方法を説明する図である。
【図8】塗装後凹部部分側断面図
【図9】加熱キュアー後凹部部分側断面図
【符号の説明】
【0019】
1,1A 部材
2 凹部
2A 孔部
3,3A 立壁
4,4A 立上り縁
5,5A 被保護面
6 マスキングシート
7 基材
8 粘着層
C 塗膜
L 見切り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁に全周的または部分的に立壁を有する被保護面に下面に粘着層を有するマスキングシートを貼着して該被保護面を塗装から保護した上で塗装を施して該立壁から被保護面にかけて塗膜を形成し、該塗膜を加熱キュアーする場合、該マスキングシートの端縁と該立壁の立上り縁との間隔を0.1〜2mmに設けることを特徴とするマスキング方法。
【請求項2】
該マスキングシートの基材は熱可塑性プラスチックのシートであり、該塗膜キュアー温度は該熱可塑性プラスチックの軟化点以上に設定される請求項1に記載のマスキング方法。
【請求項3】
該マスキングシートは下の被保護面が透視出来る程度に透明または半透明である請求項2に記載のマスキング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−155131(P2008−155131A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346970(P2006−346970)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】